JP7320225B2 - シール材の劣化診断方法および劣化診断装置 - Google Patents
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Description
シール材の材質には主に高分子材料が用いられ、とりわけゴムを主原料としたシール材が多く用いられる。ゴムは高分子材料であるため、長期間の使用で酸化劣化等の劣化が進行し、ゴム弾性が低下する。ゴム弾性とは外力によって変形したゴムが、高い内部応力によって瞬時に元の形状に復元する性質を指し、元の形状に復元しようとする力でシール性を発揮している。ゴム弾性が劣化により低下すると密閉性が低下し内部流体が漏洩する可能性が高くなることから、シール材の劣化状態を見極めて適切な時期にシール材を交換することが必要である。
そのためには、まず変圧器を電力系統から切り離し、次いで内部の絶縁油をポンプ車により抜油する。抜油後付属品をクレーン車で釣りながら、ボルトを外し変圧器本体と付属品を切り離すなどの多大な労力と時間を有する。また、仮に機器からシール材を取り外せたとしても、シール材の劣化状態に関わらず一度機器から取り外したシール材は再利用することができないため、機器に取り付けられた状態のままシール材の劣化を診断できることが望ましい。
加振試験では構造物をハンマなどで加振(打撃)し、加振により生じた振動を加速度センサ等で検出する。加振により発生する振動は構造物内部の状態を反映したものとなるため、振動特性と劣化を関連付けることが出来れば劣化診断への応用が可能である。
特許文献2に記載の技術によれば、健全部のスペクトルと比較して複雑になっている複雑さの度合を分析、あるいは、スペクトルのピークが鈍っている度合を分析することによって、測定個所のセメントの軟質化、亀裂、鉄筋のコンクリートからの遊離等の程度を測定することができる。
この技術によれば、軸ばねゴムの加振により生じた振動を検出し、新品と使用品の振動加速度の時間変化や加速度/加振力を測定し、新品と使用品の測定結果を比較することで使用品の劣化状況を判定することができる。
使用品が劣化していると判定する目安は、時間の経過とともに使用品の振動加速度の振幅が新品の振動加速度の振幅に比べて小さくなる場合や、使用品の振動加速度の周期が新品の振動加速度の周期に比べて短い場合、使用品の振動加速度/加振力の1/3オクターブバンド分析結果と、新品の振動加速度/加振力の1/3オクターブバンド分析結果との比較を行う。そして、使用品の振動加速度/加振力が新品の振動加速度/加振力に比べて全体的に高周波数側にシフトしている場合、振動波高値が使用期間の増加に対して総合的に増加する場合、振動レベル値が使用期間の増加に伴って増加する場合に、軸ばねゴムが劣化していると判定される。
この検査方法では、前記変換手段から出力された該他方の部材の振動のパワースペクトルのピーク周波数及びそのゲインを基準の振動のパワースペクトルのピーク周波数及びそのゲインと比較することにより該シール部材の良否を判定することを特徴としている。また、基準の振動のパワースペクトルのピーク周波数及びそのゲインの点を中心に、この点よりもピーク周波数及びゲインの双方について幅をもたせた領域を設定し、変換手段から出力された該他方の部材の振動のパワースペクトルのピーク周波数及びそのゲインが該領域から外れた場合、該シール部材に異常があると判定することを特徴としている。
シール材は複数の構造物に挟まれた状態で使用されるため、その共振周波数スペクトルは各構造物の共振周波数と構造物同士の接触により生じる共振周波数が重畳したものとなるため、極めて複雑な形状となる。したがって従来技術のように共振周波数スペクトルを測定するだけでは劣化状況を解析するのは困難である。
また、特許文献3では新品との差異を評価するのみであり、定量的な評価には言及していない。特許文献4ではシール材を含む構造物の良否の判定はできてもシール材の劣化の程度を定量的に示すまでには至っていない。
(3)本発明は、(2)に記載のシール材劣化診断方法において、前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が80%以下の場合に前記減衰量比が1以上であり、前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が80%超90%以下の場合に前記減衰量比が1未満0.8以上であり、前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が90%を超える場合に前記減衰量比が0.8未満であるとして、前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が1以上であると継続使用可と診断し、前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が1未満0.8以上であると要注意と診断し、前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が0.8未満であると寿命レベルと診断することを特徴とする。
(5)本発明は、(1)~(4)のいずれか一項に記載のシール材劣化診断方法において、前記振動センサで振動を検出する際、前記構造体に対し加振する位置または加振する方向を変更して複数の振動波形を観測し、これら振動波形の中に単一の振動モードが励起されている周波数スペクトルを有する振動波形が含まれていた場合、この振動波形から減衰量を算出し、該減衰量に基づいて前記シール材の劣化状況を診断することを特徴とする。
(6)本発明は、(1)~(4)のいずれか一項に記載のシール材劣化診断方法において、測定した振動波形が、速く減衰する振動成分と遅く減衰する振動成分が混在された振動波形であり、複数の振動モードが重なった振動波形である場合、この振動波形から必要な周波数スペクトルを抽出し、この周波数スペクトルから特定のピークのみの振動モードの振動波形を逆演算により求め、この振動波形から減衰量を求め、この減衰量に基づいて前記シール材の劣化状況を診断することを特徴とする。
(7)本発明は、(6)に記載のシール材劣化診断方法において、特定のピークのみの振動モードの振動波形を逆演算により求める場合、逆FFT変換、wavelet変換、Hibert-Huang変換のいずれかを用いることを特徴とする。
(10)本発明の(9)に記載のシール材劣化診断装置において、前記劣化状況判定手段が、前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が80%以下の場合に前記減衰量比が1以上であり、前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が80%超90%以下の場合に前記減衰量比が1未満0.8以上であり、前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が90%を超える場合に前記減衰量比が0.8未満であるとして、前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が1以上であると継続使用可と診断し、前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が1未満0.8以上であると要注意と診断し、前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が0.8未満であると寿命レベルと診断する劣化状況判定手段であることを特徴とする。
(12)本発明の(8)~(11)のいずれかに記載のシール材劣化診断装置において、前記構造体に対し加振する位置または加振する方向を変更して複数の振動波形を前記振動センサで観測し、これら振動波形の中に単一の振動モードが励起されている周波数スペクトルを有する振動波形が含まれていた場合、この振動波形から減衰量を算出する機能を前記演算手段が具備したことが好ましい。
(13)本発明の(8)~(12)のいずれかに記載のシール材劣化診断装置において、測定した振動波形が、速く減衰する振動成分と遅く減衰する振動成分が混在された振動波形であり、複数の振動モードが重なった振動波形である場合、この振動波形から必要な周波数スペクトルを抽出し、この周波数スペクトルから特定のピークのみの振動モードの振動波形を逆演算により求め、この振動波形から減衰量を求める機能を前記演算手段が具備したことを特徴とする。
(14)本発明の(13)に記載のシール材劣化診断装置は、特定のピークのみの振動モードの振動波形を逆演算により求める機能として、逆FFT変換、wavelet変換、Hibert-Huang変換のいずれかが適用されていることを特徴とする。
従って、本発明によれば、非破壊かつ簡便な工程で機械や装置、配管などに取り付けられたシール材の劣化状況を診断し、把握することができ、シール材の交換の要否を外部診断で判定することができる。
また、圧縮永久ひずみ率100%の時の減衰量を限界減衰量と規定し、限界減衰量から一定量の裕度を定めた劣化評価基準を定めておけば、新品時の減衰量が不明なシール材であっても劣化診断ができる。
加振試験とは、図1(A)に示すように対象物3をハンマ1で加振(打撃)し、その結果生じる振動を振動センサ2で検出する試験方法である。加振により発生する振動特性は対象物3の構造によって決まり、図1(B)に示すように対象物3の内部にシール材4が存在すると、シール材4の弾性力によって対象物3の振動特性が変化することに基づいてシール材4の特性変化を検出することができる。
なお、ハンマ1の先端に交換自在なチップ1aを有するハンマを使用することが好ましい。このチップ1aを構成材料毎に複数用意しておき、チップ1aを変更することで異なる周波数帯域の加振ができる。なお、このチップ1aと周波数帯域の関係については後に詳述する。
つまり、劣化が進展し、シール材4の特性が変化すれば振動特性もそれに応じて変化することから、本手法によれば、シール材4の硬さの変化や圧縮による変形等を検出することが可能であり、稼働中の機器からシール材を採取しなくてもシール材の劣化評価が可能になると考えられる。
本発明者らは、シール材を含む構造体の振動モードについて調査した結果、加振する位置、方向を適宜な位置とするならば、特定の振動モードのみを励起させることができることを見出した。
例えば、図2(A)に示すように油入変圧器で使用されるバタフライ弁6はバタフライ弁6の前後にシール材7を介して管フランジ8が接続された構造体9となっている。この構造体9に関し、フランジ面を加振した場合はバタフライ弁6と管フランジ8が一体として動く振動モードが励起される一方で、バタフライ弁6の側面のみを加振すると、バタフライ弁単体の振動を励起させることができる。
また、特定の振動モードのみを励起できない場合であっても、予め構造物単体の固有振動数を把握しておくことができるならば、特定の周波数成分のみを抽出して振動波形を再現することにより、同様の評価が可能になると考えられる。さらに、目的の周波数成分が明らかであるならば、加振力が目的の周波数以下になるように加振することにより、余計な振動モードを除外して評価することが可能になると考えられる。
構造体内部のシール材は制振材料としても作用し、生じた振動エネルギーを熱エネルギーへと変換することで振動を減衰、抑制する。そのため、加振により生じた振動はシール材の制振作用により減衰を受ける。シール材の制振作用はシール材の弾性力に応じて変化する。
振動の減衰特性を評価する手順として、シール材を含む構造体への加振により生じた振動を加速度センサ等で計測する。その際の加振位置は構造物単体の固有振動のみを励起させるような箇所で加振を行うことが好ましい。
加振位置の決定については加振時の振動の様子を可視化することで、最も効率的に計測できる点を見極めることが出来る。振動の様子の可視化には、有限要素法や実験モード解析などを利用できる。
実験モード解析とは、対象となる構造物の形状を座標軸上に定義し、その各々のポイントにおける周波数応答関数(伝達関数)を測定し、位相とゲインの情報から、これらの構造体が共振(振動し易い周波数で振動する)した時の振動モード形を可視化する方法である。
一例として、油入変圧器のタンク本体とラジエータ等を接続するバタフライ弁の実験モード解析による加振位置決定方法について以下に説明する。まず、バタフライ弁と管フランジの構造において、図2のように座標を定義し、測定点を決める。
管フランジ8については、矩形状のフランジ面を6行×10列のセルに区分するように各セルの境界線を区分線として設定し、管フランジ8の上面と下面を6行×2列のセルに区分するように各セルの境界線を区分線として、管フランジ8の両側面については2行×10列のセルに区分するように各セルの境界線を区分線として設定する。バタフライ弁6については、その上面と下面を6行×4列のセルに区分するように区分線を設定し、両側面を4行×10列のセルに区分するように区分線を設定する。そして、これら全ての区分線の交点の部分を測定点に設定する。
図2においては管フランジ8を備えた配管10について、その厚みや長さを略して記載し、配管10の位置のみを記載し、管フランジ8、8とバタフライ弁6を貫通してこれらを一体化したボルトやナットは記載を省略している。
更に、図2では略しているが、一方の管フランジ8に接続された配管10の他端側には変圧器タンクなどの変圧器構造物が接続され、他方の管フランジ8に接続された配管10の他端側にはラジエータ、ブッシング、リレー配管などの他の変圧器構造物が接続されている。このため、図2に示す構造体9において、一方の配管10の他端側は変圧器構造物により拘束されて振動抑制され、他方の配管10の他端側も変圧器構造物により拘束されて振動抑制されている。
図2(A)(B)に例示するように、本実施形態では、面を正面から見た時の上側右の測定ポイントをS1と定め、上側中S2、上側左S3、中段をS4~6、下段をS7~9のように定めた。対面側の測定ポイントも同様にS10~18、上面をS19~26、下面をS27~35と定めた。なお、上面中段中はバタフライ弁6の図示していないハンドルがあるため、測定ポイントからは除外している。なお、後に説明する可視化の過程において、ハンドルは無いものとして扱い、他と同様にフラットな形状であると仮定して計算している。
測定はフランジ面加振であれば測定点“S1”に振動センサを取り付けた状態で測定点“S36”をハンマで加振してデータを取得する。次に、測定点“S2”に振動センサを移動し、測定点“S36”をハンマで加振してデータを取得する。測定点“S36”は、配管10の右側に位置するフランジ面の右端側の測定点である。図2(A)においては、フランジ面を左右方向に6等分する5本の区分線とフランジ面を上下方向に10等分する9本の区分線で区画した場合、フランジ面の左側から5番目の区分線とフランジ面の上側から5本目の区分線が交わる交点を加振することとする。
以降同様に測定点を移動させながらハンマで加振して順次測定を行い、定義したすべての測定点でデータを取得する。この時使用する振動センサは3次元の振動を可視化するため、3軸の振動センサを用いる。
そこでこのバタフライ弁6の構造物単体としての振動モードである膨張収縮振動をより強く励起させるため、バタフライ弁6の側面、図2(B)に示す測定点“S14”を加振した。測定は測定点“S1”に振動センサを取り付けた状態で測定点“S14”を加振してデータを取得する。次に、測定点“S2”に振動センサを移動し,測定点“S14”を加振してデータを取得する。次に、測定点“S14”を除いて測定点をS3~S35まで順次移動し、測定点“S14”を加振してデータを取得する。
以上のように測定点を移動させながら加振と測定を順次行い、定義したすべての測定点でデータを取得する。この測定データを用いて実験モード解析を行い、バタフライ弁6と管フランジ8、8の振動の様子を可視化した。
その一例を図3に示す。図3では、管フランジ8がその両側に存在する変圧器構造物により振動抑制されているが、バタフライ弁6は1つの構造物として強く振動していることが分かった。
対象物表面の振動を表現するには、対象物表面に有限個の座標点を定め、各座標点における変位の方向と大きさを再現することになる。各点の運動は複雑ではあるが、周期運動であることから、周波数の異なる単振動の重ね合わせで表すことが可能である。そこで、各点の時間軸で表される振動をフーリエ変換して周波数ごとの振幅を求める。
次に、特定の周波数について、各点がどのような相対的な位相差を持って振動しているか求める。具体的には、座標点のうち任意な2点間の位相差を求めることが必要であり、伝達関数を求めることで達成される。
よって、加振点に振動センサを設置した測定はしていないにも関わらず、各座標点間の応答関数はすべて求めることができる。また、1つの振動センサを用いて加振試験して、振動センサを順次移動させることにより、すべての座標点間の応答関数を求めることもできる。
また、同様に、振動センサを1箇所に固定して設置し、残りの座標点を順次加振していくことでもすべての応答関数を求めることが可能であり、センサ設置のし易さやハンマでの加振のし易さに応じて測定方法を選択することができる。
図3はバタフライ弁をフランジ板で挟み込んだ構造体に対し、図2(A)、(B)に示す測定点に対し、上述の手法に基づき、各測定点の単振動する様子を捉え、アニメーション表示している状態の1画面を切り取って示す説明図である。
なお、バタフライ弁側面の加振では、フランジ面加振で見られたヨーイング等の振動はほとんど励起されなかった。フランジ面加振では管フランジ8の固有振動,バタフライ弁6の固有振動,バタフライ弁構造としての固有振動が重畳して非常に複雑な周波数特性となったが、バタフライ弁6の側面加振ではバタフライ弁の固有振動が強く励起されるため、相対的にその他による振動が小さくなり、シンプルな周波数特性が得られた。
減衰量の算出は、図5(A)に示す振動波形が得られた場合、この振動波形の信号を図5(B)に示す如くデシベル表示(振動比の対数表示)へ変換する。
振動は指数関数的に減少していくため、図5(B)に示すようにデシベル表示にすると振動波形は各波の頂点を結ぶ右下がりの直線部分を描くことができる波形となり、この直線の傾きが時間あたりの減衰量(dB/sec)を表し、減衰特性の指標となる。
このような場合は、必要な周波数スペクトルのみを抽出し、逆FFTにより特定の周波数成分のみの振動波形を再現することで評価が可能となる。
この場合、振動波形をFFTによりフーリエ変換し、周波数スペクトルを求める。
前述の実験モード解析等で特定したシール材の特性を反映した振動モードに由来する振動数のみを抽出し、逆FFTにより振動波形を再現することができる。
ハードチップを備えたハンマは10kHzまで加振できることがわかり、ミディアムチップを備えたハンマは5kHzまで加振できることがわかり、硬度の高いゴム製のソフトチップを備えたハンマは4kHzまで加振できることがわかり、硬度の低いゴム製のソフトチップを備えたハンマは2kHzまで加振できることがわかる。
図8に示す結果から、ハードチップ(メタルチップ)を備えたハンマは0~10kHzまでの広い周波数領域で周波数スペクトルを得ることができるが、ミディアムチップを備えたハンマでは5kHzまでの周波数領域で周波数スペクトルを得ることができ、硬度の高いゴム製のソフトチップを備えたハンマは2kHzまでの周波数領域で周波数スペクトルを得られるとわかる。
このことから、ハンマに装着するチップを使い分けることで目的の周波数領域を励起できることがわかった。
本実施形態の劣化診断装置Aは、前述の構造体9に沿わせて配置される振動センサ(加速度センサ)2と、この振動センサ2からの出力信号を受けて増幅する信号増幅器(振動センサアンプ)25とこの信号増幅器25からの出力を受ける信号解析器26とこの信号解析器26に接続された演算装置27を主体として構成されている。なお、図10においては説明の簡略化のために、配管10、10の管フランジ8、8の間にバタフライ弁6が介在された構造体9を略記するとともに、配管10、10の他端側に接続されている変圧器のタンク28とラジエータ29を簡略記載した。
また、後に説明する図6に示す減衰量比と圧縮永久ひずみ量の関係からシール材の劣化を診断する機能が組み込まれ、図4(B)に示す周波数スペクトルの特定のピークから逆FFTにより振動波形を求める機能と、この振動波形からデシベル表示を介して減衰量を算出する機能が組み込まれている。
加振位置の特定は、先に図2(A)、(B)を基に先に説明したように構造体9の管フランジ8、8の外周面とバタフライ弁の外周面に対し複数の座標軸を設定し、ステップS1においてハンマ1による加振位置を上述のように決定し、ステップS2においてハンマ1による加振を行い、ステップS3においてハンマ1による加振に伴う振動波形を上述のように計測する。
この後、座標軸の各交点に振動センサ2の設置位置を変更しながら全ての測定点において加振と測定を繰り返す。振動波形の測定結果のグラフは全て解析器26の記憶装置に記録する。
可視化により、バタフライ弁が構造物単体としての振動モードを有していると判断できるならば、先に説明した通り、以下の順序で測定を行う。
ここでは、適当と思われる測定点(バタフライ弁であれば側面を加振して加振方向と同じ軸方向で振動を計測)で測定して振動データを取得し、周波数スペクトルを確認し、単一の周波数特性が得られればステップS7へ移行し、複雑な周波数特性が得られた場合やより詳細な評価が必要な場合にステップS6において可視化を行い、解析する周波数を特定する。
FFTによるフーリエ変換により複数のピークが現れる場合、それぞれのピークが十分に離れていれば、解析したいピーク以外の振幅は無視して逆FFT変換により解析したいピークのみの生波形(振動波形)を抽出することができ、この振動波形から減衰量を求めることができる。
その解析手法は複雑であるが、市販の計算ソフトを用いれば容易に計算できる。本実施形態ではVibrant Technology社製の解析ソフトME'scopeVESを用いて解析することができる。
この振動波形からステップS10において先に説明したように図5(B)に示すようにデシベル表示を行い、減衰量を算出することができる。なお、この手法の詳細については後の実施例3において詳述する。
本実施形態では、シール材の劣化を圧縮永久ひずみ率で定義し、圧縮永久ひずみ率と加振試験結果を関係付けることにより、シール材の劣化診断を可能とする。
本発明者は、圧縮永久ひずみ率と加振試験結果を関係付けることを目的として、シール材の劣化と減衰量の変化を検討するため、図11に示すステンレス製のフランジボトル30のフランジ31と蓋板32の間にシール材(NBR製ゴム:硬さ60)33を圧縮率25%で挟み込み、100℃、120℃、および、150℃に設定した恒温槽内に設置し、100日経過後に取り出し、加熱前後のフランジボトル30の振動特性(減衰量比)、圧縮永久ひずみ率を評価した。
ハンマ1による加振位置は図11に示す上側の蓋板32の上面側右隅端部とし、その対角位置となる上側のフランジ板31の下面側左隅端部に振動センサ(加速度センサ)34を取り付けて測定を行った。また、ハンマ1による他の加振位置は図11に示す下側のフランジ板31の上面側右隅端部とし、その対角位置となる下側の蓋板32の下面側左隅端部に振動センサ(加速度センサ)34を取り付けて測定を行った。
また、図11に示す構造体の蓋板とフランジ間に種々の新品のシール材を挟み込んだ状態で加熱処理を行い、強制的にシール材を劣化させたときのデータを採取した。加熱処理は100℃、120℃、150℃に設定した恒温槽内に試験用の構造体を設置し、所定期間加熱処理を行った後に測定した。加熱期間は100℃が7日~60日、120℃が20日~100日、150℃が12日~64日で、圧縮永久ひずみ率が40%~100%となるよう劣化させた。
以上の測定結果を図6に示す。
図6に示すように圧縮永久ひずみ率60%までは減衰量比が増加するが、さらに劣化が進行すると減衰量比が低下し始め、シール材の寿命レベルと思われる圧縮永久ひずみ率90%まで劣化させると初期値より20%程度減衰量比が低下した。
実施例としては新品時のシール材の減衰量を計測しておき、一定の時間経過後に再度減衰量を計測し減衰量比を求めることで、以下の表1に示すような区別に従い、シール材の劣化診断ができる。
減衰量比が1以上であれば継続使用可でシール材の圧縮永久ひずみ率は80%以下(≦80%)と判断できる。減衰量比が1未満~0.8以上であれば、シール材の劣化が進んでいて圧縮永久ひずみ率としては80~90%と判断できる。減衰量比が0.8未満の場合は、シール材が寿命レベルに達しており、早期に交換などの対策が必要と判断できる。
演算装置27はこれらの判定結果をステップS12において表示装置などに表示し、シール材の劣化診断結果として出力する。
新品時のシール材の減衰量が不明の場合、圧縮永久ひずみ率100%時の減衰量を使用限界値(限界減衰量)として規定することができる。
限界減衰量に一定量の裕度を定め、構造物の減衰量からシール材の継続使用可否を診断することができる。なお、使用限界値は対象構造物の構造モデルを製作することで推定できる。また、機器の撤去時などにシール材のみを取り外した状態で加振試験を実施することや、構造物の一部を用いて構造モデルを製作することでも使用限界値を求めることが出来る。
裕度αは対象とする構造物毎に任意に設定することが出来、圧縮永久ひずみ率70~80%に相当する減衰量から設定することが望ましい。油入変圧器の本体とラジエータを接続するバタフライ弁の場合はα=500が設定値として適していると考えられる。
減衰量が限界減衰量+α以上であれば継続使用可でシール材の圧縮永久ひずみ率は<70~80%以下と判断できる。減衰量が限界減衰量以上~限界減衰量+α未満であればシール材の劣化が進んでいて圧縮永久ひずみ率としては70~80%を超過していると判断できる。減衰量が0.8未満の場合はシール材が入っていない状態と等しく、継続使用不可と判断できる。
演算装置27はこれらの判定結果をステップS12において表示装置などに表示し、シール材の劣化診断結果として出力することができる。
以下、実施例に従い本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施例に拘束されるものでは無い。
1次電圧66kV、2次電圧6.9kV、定格容量6000kVA、1969年製の油入変圧器の本体と付属品であるラジエータはバタフライ弁を介して接続されており、このバタフライ弁の接続部に使用されていたシール材の劣化状況を加振試験により診断した。この接続部は図2(A)に示す構造と同等であるため、加振位置は前述したバタフライ弁の実験モード解析結果に従い、バタフライ弁の側面とし、加振面の反対側に設置した加速度センサにより振動を計測した。
得られた振動波形をFFTによりフーリエ変換し、周波数スペクトルを求めた結果、ほぼ単一の周波数スペクトルが得られたため、振動波形から直接減衰量を求めた結果、減衰量2487dB/secと求められた。
この結果を基に減衰量比を求めると1.6となり、シール材は圧縮永久ひずみ率80%以下であり継続使用可と診断できた。また、限界減衰量から評価しても、限界減衰量+500dB/secを上回っており、継続使用可と診断できた。
後日、この油入変圧器について撤去する機会があったので、当該変圧器の撤去時にシール材を採取し、圧縮永久ひずみ率を計測した結果、圧縮永久ひずみ率48%となり、診断結果と一致し、継続使用可のシール材であった。
1次電圧33kV、2次電圧6.9kV、定格容量6000kVA、1989年製の油入変圧器の本体と付属品であるラジエータはバタフライ弁を介して接続されており、このバタフライ弁部に使用されていたシール材の劣化状況を加振試験により診断した。
加振センサ位置は(第1実施例)と同様である。得られた振動波形をFFTによりフーリエ変換し、周波数スペクトルを求めた結果、ほぼ単一の周波数スペクトルが得られたため、振動波形から直接減衰量を求めた結果、減衰量1686dB/secと求められた。
後日、当該変圧器の撤去時にシール材を採取し、圧縮永久ひずみ率を計測した結果、圧縮永久ひずみ率70%となり、診断結果と一致した。
1次電圧66kV、2次電圧6.9kV、定格容量15000kVA、1972年製の油入変圧器の本体とラジエータを繋ぐバタフライ弁を変圧器撤去時に収集し、バタフライ弁の前後に管フランジを取り付け、バタフライ弁構造モデルとし、圧縮永久ひずみ率91%相当のシール材を挟み込み、加振試験を行った。
得られた振動波形を図12(A)に示す。図12(A)に示す振動波形には、速く減衰する振動成分と該減衰より遅く減衰する振動成分が混在しており、このままでは単一モードの減衰量を算出することはできない。
得られた振動波形をFFTによりフーリエ変換し、周波数スペクトルを求めた結果を図12(B)に示す。
図12(B)に示す周波数スペクトルに示すように、複数のピークが現れた。個々のピークはそれぞれ固有の振動モードの応答の大きさを表している。それらの振動モードのうち、シール材の粘性が運動に影響している振動成分について減衰量を評価する。
FFT変換にて複数ピークが現れる場合でも、それぞれのピークが十分に離れていれば、解析したいピーク以外の振幅は無視して逆FFT変換により解析したいピークのみの生波形を抽出することができ、減衰量を求めることができる。
その解析手法は複雑であるが、市販の計算ソフトを用いれば容易に計算できる。
ここではVibrant Technology社製の解析ソフトME‘scopeVESを用いて解析した結果を示す。
また、抽出するピークは各周波数における振動モードを解析し、シール材の運動に関係した振動モードを選択する。本実施例では周波数6.3kHzのピークが、バタフライ弁単体の固有振動であったので、6.3kHzのピークを選択した。
次に抽出した周波数スペクトルに対して逆FFT変換にて振動波形を再現することで、6.3kHzの周波数における振動波形のみが再現され、減衰量を求めることが出来る。
臨界減衰比は臨界減衰係数と実際の減衰との比をとったものであるため、劣化後の臨界減衰比(Damping(%))を劣化前の臨界減衰比(Damping(%))で除すことによっても減衰量比を求めることが出来る。
図13は本発明において構造体を加振する場合に用いて好適な加振装置の一例を示す断面図である。
この例の加振装置40は、中空の外装体41の先端側内部にハンマチップ42を備えた質量可変ハンマ43を外装体41に沿って前後方向に移動自在に備え、ハンマチップ42と質量可変ハンマ43の間にフォースセンサ45が組み込まれている。外装体41の後部側には質量可変ハンマ43に接続されたねじ軸46が接続され、このねじ軸46が外装体41の後端壁41aを貫通して外装体41の外部に突出されている。
また、外装体41の先端部下面側にフォースセンサ45の接続コネクタ55が設けられ、この接続コネクタ55に信号伝達用のケーブルが接続されている。このケーブルは図10に示す増幅器25を介し信号解析器26に接続される。
加振装置40は図14(A)に示す初期状態において、外装体41の先端より若干内側にハンマチップ42の先端を望ませた状態でハンマチップ42が外装体41内に収容されている。
この状態から、図14(B)に示すようにリリース位置調整ナット48を後方に引いてハンマスプリング50を外装体41の後端壁41aに押し付けつつハンマスプリング50を縮小させ、トリガープレート47がトリガーチップ51の後方に移動したならば、トリガーチップ51を外装体41の内部に押し込んでトリガープレート47を係止する。
この状態から、図14(C)に示すようにトリガーチップ51によるトリガープレート47の係止を解除すると、ハンマスプリング50のばね力によりハンマチップ42の先端部が前方に移動してハンマチップ42の先端部が当接板53の先方に所定量突出する。
この操作によりバタフライ弁6の側面にハンマチップ42の先端を衝突させて一定の加振力をバタフライ弁6の側面に加えることができる。
先の実施形態において説明したようにハンマ1を用いて加振する場合と比較し、加振装置40を用いることで常に一定の加振力(衝撃力)をバタフライ弁6の側面に付加することができる。
図13、図14に示す加振装置40を用いて図2(A)、(B)に示す各点に衝撃を加えて加振し、振動センサ2を用いて振動波形を記録することで、本願の目的を達成することができる。
図13、図14に示す加振装置40であるならば、常に一定の打撃力で加振できるので、人力でハンマ1により加振する場合に比べ、安定した加振による振動検出ができる。
また、加振装置40に設けたフォースセンサ45により、図7に示すように加振力と加振力の周波数特性を計測することができる。
よって、シール材の両側に配置される第1の部材と第2の部材は、バタフライ弁と配管の組み合わせである場合、配管と配管の組み合わせである場合、その他、種々の構造物どうしの組み合わせである場合のいずれの場合であっても良い。
S1、S2、~S36…測定点あるいは加振点、
A…劣化診断装置、25…アンプ(信号増幅器)、26…信号解析器、27…演算装置、28…タンク、29…ラジエータ、30…フランジボトル30、31…フランジ、32…蓋板、33…シール材、34…振動センサ(加速度センサ)、
40…加振装置、41…外装体、42…ハンマチップ、43…質量可変ハンマ、45…フォースセンサ、46…ねじ軸、47…トリガープレート、48…リリース位置調整ナット、49…リリーススプリング、50…ハンマスプリング、51…トリガーチップ、53…当接板。
Claims (14)
- シール材を介し対向する金属フランジを突き合わせて連結した構造体であるか、または、対向する金属フランジ間にシール材を介し構造物を介在させて前記対向する金属フランジを突き合わせて連結した構造体であって、内部に存在する流体を前記シール材で封じた構造体に対し、
該構造体を加振させたときに生じる振動を前記構造体に設置した振動センサで検出し、検出した振動波形から前記シール材を介した特定の振動モードの周波数スペクトルを抽出し、該周波数スペクトルに該当する振動波形から減衰量を算出するとともに、前記構造体において新品状態の前記シール材で前述の如く求めた減衰量を把握し、一定時間経過後に再度同じ手順で減衰量を算出し、一定時間経過前後の減衰量の比である減衰量比を求め、前記減衰量比の大きさに基づいて前記シール材の劣化状況を診断することを特徴とするシール材劣化診断方法。 - 前記減衰量比の大きさに基づいて前記シール材の劣化状況を診断するにあたり、
前記シール材と同じ材料からなる新品のシール材を金属フランジで挟み込んだサンプルを加熱処理し、前記新品のシール材の加熱に伴う強制的劣化試験により前記新品のシール材の圧縮永久ひずみ率が40%~100%となるように劣化させた場合に対応する、加熱前後の減衰量の比である減衰量比を求めておき、前記新品のシール材の圧縮永久ひずみ率が90%を超える場合の減衰量比を把握し、この減衰量比を基準として前記構造体における一定時間経過前後の減衰量比の大きさを比較し、前記シール材の劣化状況を診断することを特徴とする請求項1に記載のシール材劣化診断方法。 - 前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が80%以下の場合に前記減衰量比が1以上であり、
前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が80%超90%以下の場合に前記減衰量比が1未満0.8以上であり、
前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が90%を超える場合に前記減衰量比が0.8未満であるとして、
前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が1以上であると継続使用可と診断し、前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が1未満0.8以上であると要注意と診断し、前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が0.8未満であると寿命レベルと診断することを特徴とする請求項2に記載のシール材劣化診断方法。 - シール材を介し対向する金属フランジを突き合わせて連結した構造体であるか、または、対向する金属フランジ間にシール材を介し構造物を介在させて前記対向する金属フランジを突き合わせて連結した構造体であって、内部に存在する流体を前記シール材で封じた構造体に対し、
該構造体を加振させたときに生じる振動を前記構造体に設置した振動センサで検出し、検出した振動波形から前記シール材を介した特定の振動モードの周波数スペクトルを抽出し、該周波数スペクトルに該当する振動波形から減衰量を算出するとともに、
前記構造体と同じ構造の構造モデルから求めた前記シール材の圧縮永久ひずみ率100%時の減衰量を限界減衰量として規定しておき、
前記構造モデルから求めた圧縮永久ひずみ率70~80%に相当する減衰量を裕度αと規定しておき、
前記構造体で求めた減衰量が限界減衰量以下の場合に継続使用不可と診断し、
前記構造体で求めた減衰量が限界減衰量+裕度α未満の場合に要注意と診断し、
前記構造体で求めた減衰量が限界減衰量+裕度α以上の場合に継続使用可能と判断することを特徴とするシール材劣化診断方法。 - 請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のシール材劣化診断方法において、前記振動センサで振動を検出する際、前記構造体に対し加振する位置または加振する方向を変更して複数の振動波形を観測し、これら振動波形の中に単一の振動モードが励起されている周波数スペクトルを有する振動波形が含まれていた場合、この振動波形から減衰量を算出し、該減衰量に基づいて前記シール材の劣化状況を診断することを特徴とするシール材劣化診断方法。
- 請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のシール材劣化診断方法において、測定した振動波形が、速く減衰する振動成分と遅く減衰する振動成分が混在された振動波形であり、複数の振動モードが重なった振動波形である場合、この振動波形から必要な周波数スペクトルを抽出し、この周波数スペクトルから特定のピークのみの振動モードの振動波形を逆演算により求め、この振動波形から減衰量を求め、この減衰量に基づいて前記シール材の劣化状況を診断することを特徴とするシール材劣化診断方法。
- 請求項6に記載のシール材劣化診断方法において、特定のピークのみの振動モードの振動波形を逆演算により求める場合、逆FFT変換、wavelet変換、Hibert-Huang変換のいずれかを用いることを特徴とするシール材劣化診断方法。
- シール材を介し対向する金属フランジを突き合わせて連結した構造体であるか、または、対向する金属フランジ間にシール材を介し構造物を介在させて前記対向する金属フランジを突き合わせて連結した構造体であって、内部に存在する流体を前記シール材で封じた構造体に対し、
該構造体を加振させたときに生じる振動による振動波形を振動センサから受け、前記振動波形から前記シール材を介した特定の振動モードの周波数スペクトルを抽出するとともに、該周波数スペクトルに該当する振動波形から減衰量を算出する演算手段を備え、
前記構造体において新品状態の前記シール材で前述の如く求めた減衰量を把握し、 一定時間経過後に再度同じ手順で減衰量を算出し、一定時間経過前後の減衰量の比である減衰量比を求め、前記減衰量比の大きさに基づいて前記シール材の劣化状況を判定する劣化状況判定手段を備えたことを特徴とするシール材劣化診断装置。 - 前記劣化状況判定手段が、前記減衰量比の大きさに基づいて前記シール材の劣化状況を診断するにあたり、
前記シール材と同じ材料からなる新品のシール材を金属フランジで挟み込んだサンプルを加熱処理し、前記新品のシール材の加熱に伴う強制的劣化試験により前記新品のシール材の圧縮永久ひずみ率が40%~100%となるように劣化させた場合に対応する、加熱前後の減衰量の比である減衰量比を求めておき、前記新品のシール材の圧縮永久ひずみ率が90%を超える場合の減衰量比を把握し、この減衰量比を基準として前記構造体における一定時間経過前後の減衰量比の大きさを比較し、前記シール材の劣化状況を診断する劣化状況判定手段であることを特徴とする請求項8に記載のシール材劣化診断装置。 - 前記劣化状況判定手段が、
前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が80%以下の場合に前記減衰量比が1以上であり、
前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が80%超90%以下の場合に前記減衰量比が1未満0.8以上であり、
前記新品のシール材の強制的劣化試験により求めた圧縮永久ひずみ率が90%を超える場合に前記減衰量比が0.8未満であるとして、
前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が1以上であると継続使用可と診断し、前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が1未満0.8以上であると要注意と診断し、前記一定時間経過後に前記構造体で求めた前記減衰量比が0.8未満であると寿命レベルと診断する劣化状況判定手段であることを特徴とする請求項9に記載のシール材劣化診断装置。 - シール材を介し対向する金属フランジを突き合わせて連結した構造体であるか、または、シール材に挟まれた他の構造物を介して対向する金属フランジを突き合わせて連結した構造体であって、内部に存在する流体を前記シール材で封じた構造体に対し、
該構造体を加振させたときに生じる振動による振動波形を振動センサから受け、前記振動波形から前記シール材を介した特定の振動モードの周波数スペクトルを抽出するとともに、該周波数スペクトルに該当する振動波形から減衰量を算出する演算手段と、
一定時間経過後に再度同じ手順で減衰量を算出し、一定時間経過前後の減衰量の比である減衰量比を求め、前記減衰量比の大きさに基づいて前記シール材の劣化状況を判定する劣化状況判定手段を備え、
前記劣化状況判定手段が、
前記構造体と同じ構造の構造モデルから求めた前記シール材の圧縮永久ひずみ率100%時の減衰量を限界減衰量として記憶しておき、
前記構造モデルから求めた圧縮永久ひずみ率70~80%に相当する減衰量を裕度αと記憶しておき、
前記構造体で求めた減衰量が限界減衰量以下の場合に継続使用不可と診断し、
前記構造体で求めた減衰量が限界減衰量+裕度α未満の場合に要注意と診断し、
前記構造体で求めた減衰量が限界減衰量+裕度α以上の場合に継続使用可能と判断する機能を有することを特徴とするシール材劣化診断装置。 - 前記構造体に対し加振する位置または加振する方向を変更して複数の振動波形を前記振動センサで観測し、これら振動波形の中に単一の振動モードが励起されている周波数スペクトルを有する振動波形が含まれていた場合、この振動波形から減衰量を算出する機能を前記演算手段が具備したことを特徴とする請求項8~請求項11のいずれか一項に記載のシール材劣化診断装置。
- 測定した振動波形が、速く減衰する振動成分と遅く減衰する振動成分が混在された振動波形であり、複数の振動モードが重なった振動波形である場合、この振動波形から必要な周波数スペクトルを抽出し、この周波数スペクトルから特定のピークのみの振動モードの振動波形を逆演算により求め、この振動波形から減衰量を求める機能を前記演算手段が具備したことを特徴とする請求項8~請求項11のいずれか一項に記載のシール材劣化診断装置。
- 特定のピークのみの振動モードの振動波形を逆演算により求める機能として、逆FFT変換、wavelet変換、Hibert-Huang変換のいずれかが適用されていることを特徴とする請求項13に記載のシール材劣化診断装置。
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