JP2000146929A - 絶縁層の劣化診断方法および装置 - Google Patents

絶縁層の劣化診断方法および装置

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JP2000146929A
JP2000146929A JP10318666A JP31866698A JP2000146929A JP 2000146929 A JP2000146929 A JP 2000146929A JP 10318666 A JP10318666 A JP 10318666A JP 31866698 A JP31866698 A JP 31866698A JP 2000146929 A JP2000146929 A JP 2000146929A
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deterioration
breakdown voltage
vibration
diagnosis
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Shuya Hagiwara
修哉 萩原
Hiroyuki Kamiya
宏之 神谷
Mitsuru Onoda
満 小野田
Hideaki Asakawa
英章 浅川
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Hitachi Ltd
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】回転電機のコイル等の絶縁層の劣化診断の精度
を向上する。 【解決手段】電気的な非破壊特性によらず、絶縁層を打
撃したときに生じる発生音や振動の減衰率から絶縁特性
の劣化を評価する。音波や振動の減衰率と絶縁破壊電圧
の関係を予め基本特性図式として把握しておく。被検絶
縁層の音波や振動波形の減衰率を求めて、基本特性を参
照して絶縁破壊電圧を算出する。 【効果】絶縁層の局所的な劣化を高い精度で評価でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気機械用の高電
圧導体を囲む絶縁層の劣化診断に係り、機械の経年運転
に伴う絶縁層の絶縁耐力の低下を診断する方法および装
置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】発電機や電動機の高電圧絶縁構造体、特
に固定子コイルの絶縁層は高電界で使用され、運転中に
劣化して絶縁破壊すると直ちに運転不能に陥ることか
ら、高圧絶縁は機械の心臓部とも呼ばれている。このた
め、高圧絶縁には信頼性の高い材料と構成が用いられる
が、併せて使用中の劣化を的確に診断して、絶縁破壊す
る前に更新や修理することが求められる。
【0003】この絶縁診断方法として、電気的な非破壊
特性や機械の運転経歴に基づく方法が広く採用されてい
た。最近は例えば、特開平9−80029号公報に記載されて
いるように、電気的な特性をベースにして、これに加え
て打音の周波数スペクトル分布で判定した絶縁層の剥離
形態を考慮した診断方法も提案されている。
【0004】従来、打音の減衰率から構造体の劣化を診
断する方法として、例えば、特開昭62−293151号公報や
特開昭60−218063号公報に記載されている技術がある。
これらは構造体の内部にミクロな亀裂等が生じて機械的
な特性が変化すると、併せて打撃時の振動や音波の減衰
率に変化が現れることを利用した技術である。しかし絶
縁層の内部に同様にミクロな変化が生じると、機械的な
特性だけでなく、電気的な特性も変化することは認識し
ていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが絶縁層の劣化
には多種多様な形態があり、電気的な非破壊特性が必ず
しも絶縁劣化の程度を正確に表わさない場合が多かっ
た。また運転時間や起動、停止回数が多いほど絶縁劣化
が進むことは容易に推察できるが、両者は統計的な相関
でしかない。打音波の周波数スペクトル分布により絶縁
層の剥離を判定して電気的特性による診断を補正する方
法によれば診断精度を向上できるが、多くの劣化形態の
中にはこの方法が必ずしも適切ではなく、診断精度が十
分ではない場合が散見される。
【0006】さらに大きな問題として、電気的な非破壊
特性は課電部分の総体的な特性は表わすが、局所的な劣
化は表わせない点がある。電気的な非破壊特性のうち最
大部分放電電荷量は絶縁層の最弱点の特性を表わすと言
われているが、通常、固定子の全コイル一括か、分離し
てもせいぜいU,V,W各相毎に課電する実機の絶縁診
断においては、劣化したコイルを特定することは実質的
にできない。これは1本のコイル単体の試験においても
同様で、分割電極法のような特殊な対策を採らない限
り、劣化部位を特定することはできない。
【0007】本発明の目的は、絶縁診断精度を向上する
ことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明はこのように課題
の多い電気的な非破壊特性を基にした絶縁診断方法に代
えて、絶縁層の打音特性から直接的に、また局所的に絶
縁破壊電圧を評価するものである。上記した目的を達成
するために、本発明では絶縁層を打撃した時に発生する
音波または振動の減衰率に着目して、減衰率と絶縁破壊
電圧の関係から絶縁層の劣化の程度を診断する方法を採
用した。絶縁層の表面を打撃すると、その振動は絶縁層
中を伝搬して内部のコイル導体に伝わる。この時、絶縁
特性の良好な絶縁層では内部の空隙が微小なため、絶縁
層内部での減衰は小さいので発生する音波や振動の減衰
も小さい。そしてコイル導体に十分な振動が伝達する
が、金属のコイル導体は減衰が小さいので、やはり発生
する音波や振動の減衰は小さい。一方、劣化して絶縁耐
力が低下した絶縁層では絶縁層中の空隙が増加し、絶縁
層を打撃した時の振動のエネルギーがこの空隙で吸収さ
れる。この結果発生する音波や振動の減衰率が大きくな
る。また打撃音や振動は打撃点の周辺の限られた絶縁層
の劣化状態を表わすので、全体が7〜8m以上もあるよ
うな大型発電機のコイルでも局所的な劣化を表わすこと
になる。
【0009】本発明はこのように、絶縁層内部の空隙が
電気的な絶縁破壊特性と音波や振動の減衰率の両方を支
配することを利用するものであり、次のような特徴があ
る。 (1)非電気的な特性から電気的な絶縁破壊特性を算出
する。
【0010】(2)多くの種類の構成の絶縁層に対応し
て、減衰率と絶縁破壊電圧の関係特性を予め準備してお
き、検査者がその中から診断対象に応じた適切な特性を
選択する。
【0011】(3)絶縁破壊電圧を算出する際に用いる
減衰率と絶縁破壊電圧の関係特性が、実験的に得られた
複数のデータを基に最小二乗法で算出されている。
【0012】(4)上記(1)から(3)の減衰率が音
波や振動波形の包絡線を自由振動の減衰式に当てはめ
て、最小二乗法で算出されている。
【0013】(5)上記(1)から(4)の減衰率が、
音波や振動波形の包絡線のピークから一定比率以上の振
幅の包絡線に基づいて算出されている。
【0014】(6)上記(1)から(5)の絶縁診断を
行う診断装置を実現している。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に図面を用いて本発明の実施
形態を説明する。図1に本発明の絶縁層の劣化診断方法
の実施形態の一例と、劣化診断を実施するための診断シ
ステムの一例を示す。回転電気機械の固定子コイル11
の絶縁層12の劣化を、打撃時の発生音で診断する例を
示している。絶縁層12はコイル導体13の周囲を囲む
ように形成されている。診断システムは一例として中央
処理装置,メモリ、およびソフトウェアから成る解析診
断装置1,フィルタとAD変換器とメモリを備えた信号
前処理装置2,磁気テープや磁気ディスクといった記録
装置3,マイクロホン4,マニュアルまたは打撃ヘッド
駆動機構を備えた打撃ハンマー5で構成されている。
【0016】各装置は次の処理を行う。マイクロホン4
は打撃ハンマー5で絶縁層12を打撃した時に生じる音
圧を電気信号に変換する。記録装置3は電気信号を記
録,保存する。現地試験などで診断システム全体を診断
したい電気機械の近くに設置できないような場合には記
録装置3だけを持ち込んでデータを記録し、後刻、別の
場所に設置した診断システムで診断するという方法を採
る場合もある。また診断対象機器と診断システムを近接
して配置できる場合には記録装置3を省略することも可
能である。
【0017】打撃ハンマー5による打撃は、衝撃力が大
き過ぎると絶縁層に損傷を与えて、劣化の非破壊診断の
つもりが破壊行為になってしまう恐れがある。また小さ
過ぎると発生音や振動が小さく、周囲雑音との弁別精度
が悪くなり、診断の信頼性が低下する。適正な打撃力は
診断の対象となる絶縁層の種類や寸法によって異なるの
で一概には記述できないが、電圧が10〜30kV級の
高電圧大容量発電機の例では次のような打撃ヘッド,打
撃方法が推奨できる。
【0018】(a)重量:3〜50g、(b)打撃時接
触面積0.1〜1cm2、(c)打撃時ヘッド速度0.3〜
1m/s。
【0019】本診断システムにより絶縁層の劣化診断を
行うに当たっての、データ処理,解析方法の一例を図2
にフローチャートで示す。信号前処理装置2では評価に
適した周波数帯域を選択し、アナログ信号をディジタル
データ化する。この信号前処理装置2としてはこれらの
機能を搭載した装置が例えばディジタルオシロスコープ
といった名称で市販されているので、それを用いること
で実行できる。
【0020】解析診断装置1ではまず音波や振動の波形
の包絡線を抽出する。この手順を図3で説明する。ステ
ップ111で波形のピーク点を検出する。図3では+側
の処理方法の一例を示してあり、○印が検出したピーク
点である。次いでステップ112ではピーク点を結ぶ包
絡線を決めるが、包絡線は時間が経過すると振幅が小さ
くなるように決める。すなわちステップ111で検知し
たピーク点のうち、ステップ112の●で記したピーク
点は除く。最後にステップ113では検知したピーク点
間を等時間間隔で補間するデータを生成して、包絡線を
表す数値列を得る。
【0021】次に図2のステップ120ではステップ1
10で抽出した包絡線について、最小二乗法により近似
式を決めて、減衰率βを求める。この処理は市販の表や
グラフ作成ソフトウェアに付加機能として付いている近
似曲線生成機能を用いることで実現できる。市販のソフ
トウェアの一例としてはマイクロソフト社のExcel があ
る。ステップ120の手順については、後に図5を用い
てさらに詳しく説明する。なお先にステップ110の中
でピーク点間に補間データを生成しているが、これはス
テップ120で最小二乗近似式を決定する際に、検知す
るピーク点の多少によるばらつきを排除するためであ
る。
【0022】ステップ130では予め記憶している減衰
率と絶縁破壊電圧の特性を参照して、絶縁破壊電圧を算
出する。この具体的な手順は図4を用いて、後で詳しく
説明する。
【0023】なお信号前処理装置2はフィルタとAD変
換器とメモリを備えた装置で、当然にこれらを制御する
中央処理装置が必要である。また解析診断装置1は中央
処理装置,メモリ、およびソフトウェアである。従って
両者の共通機能を一つにまとめて診断装置とすることも
可能であり、これによりシステム構成を簡素化できる効
果がある。
【0024】図1には打撃の音波を検出して絶縁劣化を
診断する例を示しているが、音波は周囲媒体、通常は空
気中に3次元的に拡散するので、マイクロホン4で容易
に収録できる効果がある。これに対して打撃時の振動波
形を検出する方法もあり、この場合には図1のマイクロ
ホン4に代えて振動計(図示は省略する)を用いて、振
動信号を電気信号に変換する。振動計では変位や加速度
を検出することになるが、この方法によれば周囲の雑音
の影響を排除できるので、周囲の雑音の大きい場所での
診断精度が向上する。
【0025】本発明の要点は絶縁層打撃時の音波や振動
波形の時間減衰率から絶縁破壊電圧を算出することであ
る。図4に本発明で用いる絶縁破壊電圧算出特性の一例
を示す。横軸は音波や振動の時間波形の減衰率(1/
s)を示す。縦軸は絶縁破壊電圧を示すが、本発明は劣
化診断方法に関するものなので、絶縁層を製作した直後
の劣化していない状態での絶縁破壊電圧値(初期値と呼
ぶ)に対して、診断しようとする絶縁層の絶縁破壊電圧
値がどの程度であるのかを知ることが主な目的である。
そこで図4の縦軸は初期値比の%で示している。図4の
特性は多くの実測データを基に統計的に導出したもの
で、中央値の特性曲線と99%信頼区間の下限を示す特
性曲線を示している。ここで中央値とは実測データを最
小2乗法で近似した結果で、信頼区間は実測データの標
準偏差からばらつきの範囲を算定したものである。工業
製品ではある確率の不良発生は避けられないことから、
個々の製造者や使用者が個別の事情に応じて信頼区間を
定めているが、通常は90%や99%信頼区間を選ぶこ
とが多い。図4では一例として99%信頼区間を示して
いる。
【0026】実際の絶縁診断においては絶縁層を打撃し
て音波や振動の時間波形を記録し、その減衰率を算出す
ると図4の横軸が決まる。そして特性曲線に従って縦軸
を読み取れば、診断したい絶縁層の絶縁破壊電圧を求め
ることができる。発電機コイルの絶縁層では通常、99
%信頼区間で評価する例が多い。もし例えば90%や9
5%信頼区間の評価が必要であれば、それらの特性曲線
を求めておくことになる。
【0027】図4には音波や振動の減衰率と絶縁破壊電
圧の関係を特性図として表わした一例を示したが、この
特性を数式で表わすことも可能である。例えば図4に対
応する特性式は式(1)のようになる。
【0028】 絶縁破壊電圧(%)=120×10^(-0.74β) …(1) ここでβは音波や振動波形の減衰率(1/s)であり、
記号^はべき乗を表わす。音波や振動の時間波形から減
衰率βを算出して(1)式に代入すれば絶縁破壊電圧を
求めることができる。
【0029】図4および式(1)は高電圧コイルの絶縁
層として広く用いられるマイカとエポキシ樹脂を組み合
わせた絶縁層の一例を示すものである。絶縁構成の相
違、例えば使用するマイカや固着に用いる樹脂の種類に
よって特性曲線は異なる場合もある。そこで実際に採用
する絶縁構成毎、あるいは類似した絶縁構成のグループ
毎に診断曲線や特性式を用意しておくことが好ましい。
【0030】図4および式(1)には絶縁破壊電圧と減
衰率を指数関数で結び付けた例を示した。これは実験デ
ータを解析した結果、指数関数で関係付けるのが最も相
関係数が大きくなったためである。この他に一次関数で
近似しても十分実用的な精度で絶縁破壊電圧を算出でき
る。一次関数であれば指数関数よりも簡単な計算で絶縁
破壊電圧を算出できる効果がある。
【0031】以上に一実施例を説明した本発明の絶縁層
の劣化診断方法によれば、電気的特性に全く頼ることな
く、絶縁層の絶縁破壊電圧を算出できる効果がある。
【0032】図1に示した実施形態において、大型発電
機などでは固定子コイル11は全長が7〜8m以上もの
長さとなるが、打撃ハンマー5でコイル表面の絶縁層を
打撃した時に発生する音波や振動は、絶縁層12のうち
の打撃点の周囲の数cmから10cm四方程度の劣化状態を
反映したものとなる。そこで本実施例によればコイル絶
縁層12の局所的な劣化を評価できる効果がある。
【0033】図5により減衰率の算出方法の一例を説明
する。まず音波や振動の時間波形から包絡線を求める。
この過程の一例は先に図2と図3で説明してある。そし
て包絡線のピークからある比率、ここでは一例として2
0%までの間の包絡線を、一般の自由振動の減衰の式
(2)で最小二乗誤差近似して(2)式のβを求め、こ
れを減衰率とする。
【0034】 y=α×exp(−βt) …(2) ここでyは音圧や振動の振幅(V)、tは時間(s)、
α(V)は時間の起点の採り方で決まる定数である。本
来は音圧の単位はPa等、振動の振幅の単位はm等であ
るが、マイクロホンや振動計で電圧に変換されて、実用
上はVとなる。また一例として音圧や振幅のピーク点を
時間の原点にとり、そのピークが1Vであればαは1.
0Vとなる。
【0035】評価する包絡線の下限を一定値、図5の例
では20%で切ったのは、雑音の影響や、減衰の非常に
小さいコイル導体の振動の影響を除去するためである。
足切りが低すぎると十分除去できず、高過ぎると打撃方
法(打撃力,打撃角度,反力の受け方等)のばらつきの
影響が入りやすくなる。試行によれば10〜30%程度
が適当であり、図5には20%の例を示している。
【0036】次に音波や振動波形の収録に伴うばらつき
を低減して、診断精度を向上するための一方策例を図6
により説明する。まず1つの収録波形からは+側と−側
の2つの減衰率を求められる(ステップ301,30
2)ので、ステップ303で両者を平均することで評価
精度を上げることができる。さらに一つの打撃点につい
て繰り返し複数回の音波や振動を収録して個々の減衰率
を求め、それらをステップ304で平均化することで評
価精度をより向上することができる。なおステップ30
1から304の演算処理は図1の解析診断装置1で行
う。
【0037】本発明の有効性をより明確にするために、
高圧コイルの絶縁層の劣化形態を説明しておく。高電圧
コイルの絶縁層は通常、マイカ片をエポキシ等の有機物
樹脂で固着した複合絶縁体が用いられる。この絶縁層の
内部は理想的にはボイドは皆無であることが望ましい
が、工業的生産性を追及した材料や製法ではどうしても
わずかなボイドが存在してしまう。
【0038】電気機械に組込まれたコイルの絶縁層は運
転中にさまざまなストレスを受ける。特に劣化に寄与す
るのは電気的,熱的,機械的なストレスである。電気的
なストレスとはボイドでの部分放電であり、放電の熱や
紫外線,放電で生成されるオゾンなどにより、樹脂の高
分子鎖が切られて徐々にボイドが拡大していく。熱的な
ストレスとはコイル導体を流れる電流の損失,放電の
熱,誘電損失などによる絶縁層の温度上昇で、樹脂が熱
分解して機械的な強度が低下する。機械的なストレスと
は運転中の振動やヒートサイクルにより絶縁層に歪が加
わることであり、絶縁層中のボイドが剥離に進展した
り、亀裂が発生したりする。現実には樹脂の強度低下で
剥離が拡大し、そこでの部分放電が増大すると発熱も多
くなる、するとさらに熱劣化が加速され、強度が低下す
る、といったように各要因が相互相乗的に作用し、しか
も加速度的に進展する複合劣化である。
【0039】図7に絶縁層の劣化モデルを示す。劣化程
度の小さい絶縁層では(a)に示すように内部のボイド
は少なく、絶縁耐力は高い。中程度に劣化した絶縁層で
は(b)に示すようにボイドが剥離に進展し始めてお
り、このようになると絶縁耐力は低下してくる。さらに
劣化が進むと(c)に示すように絶縁層は大きく剥離
し、一部には亀裂が生じ始める場合もある。この状態の
絶縁層では絶縁耐力は大きく低下し、直ちにこのような
絶縁層をもつコイルを撤去して、新しいコイルと取り替
える等の対策が必要である。以上のように絶縁層の劣化
の程度は、絶縁層中のボイドや剥離や亀裂(空隙と総称
する)の量に支配され、劣化の進んだ絶縁層ほど内部の
空隙が大きくなる。
【0040】図8に絶縁層の打音波形の一例を示す。図
8(a)は図7(a)のモデルに相当する、劣化程度の
小さい絶縁層の打音波形の一例である。絶縁層内の空隙
は少なく、絶縁層とコイル導体の密着性もよいので、表
面を打撃した時の振動はあまり減衰することなくコイル
導体に伝わる。コイル導体は銅やアルミをはじめとする
金属体なので、振動の減衰率は小さい。この結果、打撃
音は図8(a)のように減衰率の小さい波形となる。
【0041】図8(b)は図7(b)のモデルに相当す
る、ある程度劣化の進んだ絶縁層の打音波形の一例であ
る。絶縁層内にボイドや剥離といった空隙が存在し、緩
衝機能を発揮するために、打撃の振動が減衰し、内部の
コイル導体への伝達も妨げられる。このために音波の減
衰率は大きくなる。
【0042】図8(c)は図7(c)のモデルに相当す
る、かなり劣化が進んだ絶縁層の打音波形の一例であ
る。絶縁層内のボイドや剥離が増大して緩衝帯となるた
めに、一層振動が吸収されて音波の減衰率はさらに大き
くなる。
【0043】なお音波に代えて振動波形を検出しても図
8とほぼ同様な態様となる。
【0044】先に図4や式(1)に例示した絶縁破壊電
圧算出特性は、多くの試料について図8に例示したよう
な音波や振動波形を観測して、図5に例示した方法によ
り減衰率を算出した後、絶縁破壊試験により絶縁破壊電
圧を測定して、それらのデータの最小二乗法による近似
曲線を求めて中央値とし、さらに標準偏差から99%信
頼区間の下限を求めたものである。
【0045】以上に説明したように、本発明は音波や振
動の減衰率と電気的な絶縁破壊特性が相関することを解
明して、これを利用することで新たな効果を創生したと
ころに特徴がある。
【0046】以上に実施例を説明した絶縁層の劣化診断
方法によれば、絶縁層の打撃音や振動の減衰率から絶縁
破壊電圧を算出しており、電気的な特性に比べてより直
接的に絶縁層の劣化を評価できるので、診断の精度を向
上することができる。また電気的な特性は高電圧の課電
部全体と接地電位部全体の間の絶縁層の特徴を全て表す
ため、局所的に劣化した場合にも劣化部位の特定はでき
ないのに対して、音波や振動は絶縁層の打撃した部分の
局所的な特性を表わすので、劣化部位を特定することが
できる。
【0047】
【発明の効果】本発明によれば、絶縁診断精度を向上す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の絶縁層の劣化診断方法の一実施形態
と、診断システムの一構成例を示す概念図である。
【図2】本発明の絶縁層の劣化診断方法におけるデータ
分析方法の一例を示す流れ図である。
【図3】本発明の絶縁層の劣化診断方法における包絡線
抽出方法の一例を示す流れ図である。
【図4】本発明の絶縁層の劣化診断方法で使用する絶縁
破壊電圧の算出特性の一例である。
【図5】本発明の絶縁層の劣化診断方法で用いる音波や
振動の減衰率算出方法の一実施例である。
【図6】診断精度向上のためのデータ平均化の一実施例
を示す流れ図である。
【図7】本発明の絶縁層の劣化診断方法の診断対象とな
る絶縁層の劣化形態を示す断面モデル図である。
【図8】本発明の絶縁層の劣化診断方法で取扱う打音波
形の一例である。
【符号の説明】
1…解析診断装置、2…信号前処理装置、3…記録装
置、4…マイクロホン、5…打撃ハンマー、11…固定
子コイル、12…絶縁層、13…コイル導体。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小野田 満 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 浅川 英章 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 Fターム(参考) 2G015 AA01 AA30 CA20 CA21 2G047 AC10 BA04 BC00 BC03 BC07 BC11 CA03 EA10 GG24 GG25 GG36 GG37

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】絶縁層を打撃した時に発生する音波または
    振動波形を検出し、その減衰率を算出し、予め把握して
    おいた相関特性に従ってその絶縁層の絶縁破壊電圧を算
    出することを特徴とする絶縁層の劣化診断方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の絶縁層の劣化診断方法に
    おいて、予め準備した、各種の材料や製作方法、および
    その組み合わせ方法毎に異なる複数の減衰率と絶縁破壊
    電圧の相関特性の中から、劣化診断を行う検査者が、劣
    化診断対象となる絶縁層に対応する特性を選択して、絶
    縁破壊電圧を算出することを特徴とする絶縁層の劣化診
    断方法。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2に記載の絶縁層の
    劣化診断方法において、絶縁破壊電圧算出の基となる音
    波または振動の減衰率と絶縁破壊電圧の相関特性が、実
    験的に得られた複数の相関データを基にして最小二乗法
    で算出された特性式、およびその特性式に基づいて作成
    された特性図であることを特徴とする絶縁層の劣化診断
    方法。
  4. 【請求項4】請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の
    絶縁層の劣化診断方法において、音波または振動波形の
    包絡線を、自由振動の減衰式に当てはめて最小二乗法に
    より減衰率を算出することを特徴とする絶縁層の劣化診
    断方法。
  5. 【請求項5】請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の
    絶縁層の劣化診断方法において、音波または振動波形の
    包絡線の振幅ピークから一定比率以上の振幅の包絡線デ
    ータを採取、一定比率未満のデータを棄却して診断を行
    うことを特徴とする絶縁層の劣化診断方法。
  6. 【請求項6】絶縁層を打撃した時に発生する音波または
    振動波形を数値列に変換してメモリに記録する波形処理
    装置と、その数値列から包絡線を抽出する手順と、その
    包絡線の減衰率を算出する手順と、その減衰率から打撃
    した絶縁層の絶縁破壊電圧を算出する手順を組み込んだ
    演算装置とを備えていることを特徴とする絶縁層の劣化
    診断装置。
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