JP2014128247A - 細胞培養容器、細胞培養用具、及び細胞培養方法 - Google Patents

細胞培養容器、細胞培養用具、及び細胞培養方法 Download PDF

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Abstract

【課題】容易な操作で拡大培養を効率よく行うことができる細胞培養容器、細胞培養用具及び細胞培養方法を提供する。
【解決手段】周囲を密封シール15で密封することで内側に密閉空間14を形成する第1容器壁11及び第2容器壁12と、密閉空間14と外部とを連通可能なポート16と、を備えた細胞培養容器10において、第1容器壁11を第2容器壁12から離間するように凹ませることで形成された複数の培養室21・・・及び各培養室21,21間の仕切り部22と、仕切り部22の頂部と第2容器壁22の頂部に対向する部位との間の間隙で形成され、隣接する培養室21,21間を連通する連通部23と、を備えた細胞培養容器。
【選択図】図1

Description

本発明は、細胞の培養に使用される培養室を細胞の増殖に合わせて増加できる細胞培養容器と、この細胞培養容器を用いた細胞培養用具と、この細胞培養容器を用いた細胞培養方法と、に関する。
従来、細胞培養容器として、柔軟性を有する一対の容器壁が内側に密閉空間を形成するように互いに対向して密封され、密閉空間と外部とがポートで連通されたものが提案されている。
例えば下記特許文献1では、凹部を有する第1の容器壁と柔軟性を有する第2の容器壁とを対向させたトレイ状容器が提案されている。この容器によれば、無菌操作が容易でトータル的な閉鎖システムを構築でき、倒立顕微鏡による培養細胞等の観察が容易であり、細胞またはクラスターを培養容器の底壁に均一に分散し易くて容器内の各位置における培養条件の差を小さくできる。
下記特許文献2では、収容物が容器壁の延在方向に移動するのを抑制するために容器壁に複数の凹部を設けたトレイ状容器が提案されている。この容器によれば、容器底壁の延在方向への細胞の移動を抑制することで、細胞が容器周縁若しくは一部に集中することを防止でき、細胞を効率よく増殖できる。
さらに、培養容器内に播種する細胞数が少数のときには小さな領域で培養し、細胞数が増えるにつれて培養領域を大きくできる、所謂拡大培養に使用可能な細胞培養容器も提案されている。
例えば下記特許文献3では、複数の培養サブ区画室を圧縮性管により接続した生体外増殖のための装置が提案されている。この装置では、圧縮性管を外部分離手段により閉塞して一部の培養サブ区画室で細胞を培養した後、外部分離手段を解除して複数の培養サブ区画室同士を連通させて培養領域を大きくできる。
しかし、この装置では複数の培養サブ区画室を作製すると共に各培養サブ区画室同士をそれぞれ圧縮性管で連結するため製造に著しく手間を要していた。
拡大培養に使用可能な細胞培養容器であって製造が容易なものも提案されている。
下記特許文献4では、一対の樹脂製の容器壁を互いに対向させて密封し、容器内の培養液の流通を阻止するように一対の容器壁を外側から阻止部材で挟み込んで培養領域を形成した細胞培養用具が提案されている。この用具では、一部の培養領域で細胞を培養した後、培養液を追加する際に阻止部材の位置を変化させることで培養領域を増加できる。
また、下記非特許文献1では、一対の樹脂製の容器壁を互いに対向させて周囲を密封することで内部に密閉空間が形成され、容器内が易剥離性のシールにより区画された細胞培養容器が記載されている。この細胞培養容器では、密閉空間の一部の領域で細胞を培養した後、培養液を追加する際に易剥離性のシールを剥離して培養領域を増加することができる。
特開2008−48654号公報 特開2009−11260号公報 特開平3−505164号公報 特開2000−125848号公報
ミルテニーバイオテク株式会社ホームページ、[on line]、[平成24年9月1日検索]、インターネット〈URL: http://www.miltenyibiotec.co.jp/jp/PG_240_486_Cell_Expansion_Bags.aspx〉
しかしながら、製造が比較的容易で拡大培養に使用可能な上記特許文献4及び非特許文献1の培養容器では、培養容器の取り扱いに手間を要していた。例えば特許文献4の容器では、阻止部材の装着位置にずれが生じると、細胞培養に使用する領域の大きさが予め設定されている大きさとずれが生じるため、阻止部材の位置合わせに手間を要していた。また、非特許文献1では誤って他の位置で易剥離性のシールが剥離されると、培養に使用する領域の大きさが大幅に変動するため、培養容器製造後から易剥離性のシールが剥離しないように取り扱わなければならなかった。
また、このような培養容器は、一対の平面状の容器壁から密閉空間が形成されているため、培養液が充填される前の二次元構造から、培養液が充填されて三次元構造となる段階で容器壁が立体形状となり、このような培養容器を水平面上に静置した場合、少なくとも下側の容器壁のシール近傍が湾曲するため、培養面となる下側の容器壁の全面を略水平に保つことが困難であった。
さらに、細胞の培養に使用される領域を増加する際、培養容器の培養液が収容される部位の立体形状が変化するため、領域を増加する前後で、例えば培養液の液深、周縁や底壁の形状、培養液と接触する容器壁の面積等を同等に保つことができないため、培養環境を保つことが困難であった。
そこで、本発明では、容易な操作で拡大培養を効率よく行うことができる細胞培養容器と、上記細胞培養容器を用いた細胞培養用具と、上記細胞培養容器を用いた細胞培養方法と、を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明の細胞培養容器は、互いに対向させて周囲を密封シールにより密封することで内側に密閉空間を形成する第1容器壁及び第2容器壁と、密閉空間と外部とを連通可能なポートと、を備えた柔軟性を有する細胞培養容器において、第1容器壁を第2容器壁から離間するように凹ませることで形成された複数の培養室及び各培養室間の仕切り部と、仕切り部の頂部と第2容器壁の頂部に対向する部位との間の間隙で形成され、隣接する培養室間を連通する連通部と、を備え、各培養室は、第1容器壁を下とし、かつ、略水平にした保持位置ではそれぞれ培養液を貯留可能であり、連通部は、保持位置を変更することで培養液を通液可能であり、複数の培養室及び連通部により1つの流路が形成され、細胞の増殖に合わせた培養液の追加に伴い、細胞の培養に使用される培養室を流路に応じて段階的に増加可能である、ことを特徴としている。
ここで第1容器壁を凹ませるとは、第1容器壁を構成する、例えばフィルム状、シート状または板状の部材に外圧を加えて成形することに限られるものではなく、予め凹んだ形状に形成された部材を使用することなども含まれる。
この細胞培養容器では、仕切り部の頂部が第2容器壁に密着可能であり、連通部が仕切り部の頂部と第2容器壁とが離間することで形成されるものであるのがよい。
仕切り部の頂部は連通部を構成する部位を除き第2容器壁に接着されているのが好適である。
このような仕切り部は、第1容器壁と第2容器壁との密封シールの間を幅方向に横断するように形成され、仕切り部の頂部と第2容器壁とが幅方向における一方側の密封シールから連続して接着されることで仕切りシールが形成されているのがよい。
その場合、仕切り部は第1容器壁と第2容器壁との密封シールの間を幅方向に横断して少なくとも2つ形成され、それぞれ仕切り部の1/2以上の長さを有する仕切りシールを有し、隣り合う仕切り部における一方の仕切りシールは幅方向における一方側の密封シールから連続して形成され、他方の仕切りシールは幅方向における他方側の密封シールから連続して形成されているのが好適である。
上記目的を達成する本発明の他の細胞培養容器は、互いに対向させて周囲を密封シールにより密封することで内側に密閉空間を形成する第1容器壁及び第2容器壁と、密閉空間と外部とを連通可能なポートと、を備えた柔軟性を有する細胞培養容器において、第1容器壁を第2容器壁から離間するように凹ませることで形成された複数の培養室及び各培養室間の仕切り部と、仕切り部の頂部と第2容器壁の頂部に対向する部位との間の間隙で形成され、隣接する培養室間を連通する連通部と、を備え、各培養室は、第1容器壁を下とし、かつ、略水平にした保持位置ではそれぞれ培養液を貯留可能であり、仕切り部は、密封シールの間を幅方向に横断し頂部が第2容器壁に密着可能に形成され、連通部を構成する部位を除いて頂部と第2容器壁とが幅方向における一方側の密封シールから連続して接着されることで形成された仕切りシールを有し、連通部は、保持位置を変更することで仕切り部の頂部と第2容器壁とが離間して培養液を通液可能であり、複数の培養室及び連通部により1つの流路が形成され、細胞の増殖に合わせた培養液の追加に伴い、細胞の培養に使用される培養室を流路に応じて段階的に増加可能であることを特徴としている。
上記目的を達成する本発明の細胞培養用具は、上記のような細胞培養容器と、この細胞培養容器の姿勢を保持するための姿勢保持部材とを備え、姿勢保持部材は仕切り部の形状を維持するように仕切り部に下側から係合する係合部を有し、第1容器壁を下とし、かつ、略水平となるように姿勢保持部材により細胞培養容器を保持することによって、前記各培養室内の培養液の貯留安定性を向上したことを特徴としている。
上記目的を達成する本発明の細胞培養方法は、上記のような細胞培養容器を用いて細胞を培養する細胞培養方法において、複数の培養室のうちの一部に培養液及び細胞を導入する工程と、第1容器壁を下にした保持位置で培養を行う工程と、一部の培養室に新たな培養液を追加して細胞懸濁液にする工程と、保持位置を変更することで細胞懸濁液を一部の培養室と他の培養室とに分けて収容する工程と、第1容器壁を下にした保持位置で再び培養を行う工程と、を備えたことを特徴としている。
このような培養方法においては、上記第1容器壁を下にした保持位置で培養を行う工程において、上記姿勢保持部材を用いて培養することもできる。
本発明によれば、第1容器壁を凹ませることで複数の培養室及び各培養室間の仕切り部が形成されており、第1容器壁を下にして略水平にした保持位置で各培養室にそれぞれ培養液を貯留可能である。そのため各培養室毎に培養液を貯留して細胞を培養際、各培養室の形状や大きさを保ち易く、所望の培養環境を容易に実現できる。
また、連通部が仕切り部の頂部と第2容器壁との間の間隙で形成されて、容器の保持位置を変更することで培養液を通液可能であり、複数の培養室及び連通部により1つの流路が形成されているので、細胞の増殖に合わせて培養液を追加し、細胞の培養に使用される培養室を増加する際、保持位置を変更すれば所定の収容室を増加できて操作が容易である。
しかも、各培養室の形状や大きさを保ち易いため、保持位置を変更した後、再び第1容器壁を下にして略水平にした保持位置にすれば、各培養室で所望の培養環境で培養を行うことができる。そのため、容易な操作で拡大培養を効率よく行うことが可能である。
本発明の第1実施形態の細胞培養容器を示す斜視図である。 本発明の第1実施形態の細胞培養容器の平面図である。 本発明の第1実施形態の細胞培養容器を長手方向に切断した模式的縦断面図である。 本発明の第1実施形態の細胞培養容器を用いた拡大培養の方法を説明する図であり、第1培養室における培養が終了後に培養液を追加して細胞懸濁液を調製する状態を示す図である。 本発明の第1実施形態の細胞培養容器を用いた拡大培養の方法を説明する図であり、細胞懸濁液を第1培養室と第2培養室に分けて収容する状態を示す図である。 本発明の第1実施形態の細胞培養容器を用いた拡大培養の方法を説明する図であり、第1培養室及び第2培養室における培養が終了後に培養液を追加して細胞懸濁液を調製する状態を示す図である。 本発明の第1実施形態の細胞培養容器を用いた拡大培養の方法を説明する図であり、細胞懸濁液を第1培養室と第2培養室に分けて収容する状態を示す図である。 本発明の第1実施形態の細胞培養容器を用いた拡大培養の方法を説明する図であり、細胞懸濁液を第1培養室と第2培養室と第3培養室とに分けて収容する状態を示す図である。 本発明の第1実施形態の細胞培養容器を用いた拡大培養の方法を説明する図であり、細胞懸濁液を第1培養室と第2培養室と第3培養室とに分けて収容した状態を示す図である。 本発明の第2実施形態の細胞培養容器の平面図である。 本発明の第3実施形態の細胞培養容器の平面図である。 本発明の第3実施形態の細胞培養容器の模式的縦断面図である。 本発明の第4実施形態の細胞培養容器の平面図である。 本発明の第5実施形態の細胞培養容器の平面図である。 本発明の第6実施形態の細胞培養容器の平面図である。 本発明の第7実施形態の細胞培養容器の模式的縦断面図である。 本発明の第1実施形態に係る細胞培養容器とこの細胞培養容器に使用する姿勢保持部材の模式的縦断面図である。 図17に示す細胞培養用具に用いる姿勢保持部材の斜視図である。 本発明の他の細胞培養用具に用いる姿勢保持部材の斜視図である。 図19に示す姿勢保持部材の変形例に係る姿勢保持部材の斜視図である。
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。
本発明の細胞培養容器は、細胞の培養、即ち、細胞を刺激、分化、誘導、変異、または、増殖するのに好適な容器である。
培養対象の細胞は、特に限定されるものではないが、医療分野の場合、例えばT細胞、NK細胞、B細胞、樹状細胞等の血球系細胞、角膜細胞、皮膚細胞、軟骨細胞の上皮系、あるいは間葉系の細胞等であってもよく、接着細胞、浮遊細胞の何れでもよい。
容器の底壁に高低差がある状態で播種した細胞を静置培養すると、細胞は低い位置に集中して偏りが生じ、均一な細胞増殖を阻害する。以下の各実施形態における培養容器は、容器の底壁が略水平であり、すなわち、容器の底壁の高低差が少ないので均一な細胞増殖を促すことができる。
浮遊細胞については、追加した培養液中にも容易に分散し、培養室間の細胞濃度が均一になるので、本発明の容器を用いるのに好適である。また、接着細胞については、酵素または機械的刺激による培養液中への分散処理を併用したり、リン脂質等を第一容器壁にコーティングして、足場依存性の細胞を浮遊培養(特開平5−336956)したりすることで浮遊細胞と同様の効果が得られる。
[第1実施形態]
第1実施形態の細胞培養容器10は、図1乃至図3に示すように、複数の凹部20・・・を有する第1容器壁11と、略平坦に形成された第2容器壁12と、互いに対向配置された第1容器壁11及び第2容器壁12の周囲を密封して第1容器壁11と第2容器壁12との間に密封空間14を形成する密封シール15と、密封空間14と外部とを連通可能なポート16と、を備えている。
この細胞培養容器10には、複数の培養室21・・・と、隣接する培養室21,21間を仕切る仕切り部22と、隣接する培養室21,21間を連通する連通部23とが形成されている。
この実施形態では、培養室21は細胞培養容器10の長手方向に並べて3室設けられ、各仕切り部22は、細胞培養容器10の幅方向の両端部で長さ方向に延在する密封シール15,15の間を幅方向に横断して形成され、すなわち、長手方向と略直交する方向に細胞培養容器10を横断して設けられている。また、ポート16が細胞培養容器10の一端側の培養室21に直接連通可能に長手方向一端側に設けられ、他端側には左右に懸垂孔17が設けられている。
次に、細胞培養容器10の各部について分説する。
第1容器壁11は、複数位置で第2容器壁12から離間するように一方側に向けて凹ませて形成された複数の凹部20・・・と、周縁に平坦に形成されたフランジ部24と、を備える。各凹部20の内側がそれぞれ培養室21となり、隣接する凹部20,20の底壁25,25間に配置された一対の側壁26,26とこの一対の側壁26,26間の頂部27とが仕切り部22となっている。
各凹部20は平面状に形成された底壁25と、底壁25の周囲に形成された側壁26とを有する。平面状に形成された底壁25は予め平坦に形成された面でよい。なお、この平面状に形成された底壁25は、各底壁25を水平面上に静置したときに、細胞培養容器10の自重と第1容器壁11の柔軟性で各底壁25が平坦な面となるように構成してもよい。また、各凹部20に後述する培養液や細胞懸濁液を収容し、各底壁25を水平面上に静置したときに、細胞培養容器10と収容された培養液や細胞懸濁液の自重と、第1容器壁11の柔軟性で各底壁25が平坦な面となるように構成してもよい。さらに、凹部20に後述する培養液や細胞懸濁液を収容し、水平面上に載置して第2容器壁12側から押圧することで、第1容器壁11の柔軟性により各底壁25が平坦な面となるように構成してもよい。要は、各凹部20が空状態のときは、各底壁25は必ずしも平坦な面である必要はなく、上述したように各凹部20に培養液や細胞懸濁液を収容し、水平面上に載置したときに、各底壁25が平坦な面となるように構成されていればよい。
この平面状に形成された各底壁25は法線が互いに略平行となるように設けられるのが特に好適である。
各凹部20の底壁25が平面状に成形されているか、あるいは、上述したように各底壁25を水平面上に静置したときに、各底壁25が平坦な面となるように構成されていれば、細胞培養容器10を静置して各培養室21で細胞を培養する際、底壁25上の一部に細胞が偏在するのを防止できる。
仕切り部22は、隣接する凹部20,20の各側壁26,26と、両側壁26,26間の頂部27とにより構成されている。この実施形態では、仕切り部22が細胞培養容器10の両側縁の密封シール15,15間を幅方向に横断するように設けられている。
仕切り部22を構成する各側壁26の立ち上がり角度は、それぞれ底壁25に対して例えば60度以上で直角以下の範囲としてもよい。この角度が大きい程底壁25を広くできて好ましいが、直角を超えると、各培養室21内の培養液や細胞懸濁液を連通部23から移動させる際、各培養室21内に培養液が残留し易くなる。
各仕切り部22を構成する頂部27と第2容器壁12の頂部27に対向する部位との間には、両者の間隙からなる連通部23が形成されており、互いに隣接する培養室21,21間がそれぞれ各連通部23により連通している。この連通部23は、仕切り部22の頂部27と第2容器壁12とが離間することで通液可能な程度に拡開するように形成される。
この実施形態では、各仕切り部22の頂部27はフランジ部24から略平坦に連続して形成されており、各仕切り部22の頂部27が全長にわたり第2容器壁12に密着している。これにより互いに隣接する培養室21、21同士が空間的に仕切られ、培養時の取り扱いで生じる若干の波立ちによる培養室21,21間の培養液の移動が抑制される。
ここでは各仕切り部22の頂部27の一部が第2容器壁12と接着されることで仕切りシール28が形成され、残部が第2容器壁12と非接着状態で当接又は近接して連通部23となっている。
仕切りシール28は細胞培養容器10の幅方向における一方側の密封シール15から連続して形成されている。培養室21が3室以上設けられている場合、隣り合う仕切り部22における一方の仕切りシール28が幅方向における一方側の密封シール15から連続して形成され、他方の仕切りシール28は幅方向における他方側の密封シール15から連続して形成されているのがよい。各仕切りシール28は、それぞれ仕切り部22の1/2以上、より好ましくは2/3以上の長さを有するのがよい。
第2容器壁12は、平面視における第1容器壁11の外形形状に対応した外形を有する平坦なシート状又は板状に形成されている。
このような第1容器壁11及び第2容器壁12は、細胞培養容器10を使用する際に要求される物性を満足する材料からなる。
まず各培養室21内に培養液や細胞懸濁液等を収容したり排出したりする際、第1容器壁11及び第2容器壁12の一方又は双方が容易に変形できる柔軟性を有している。
また、細胞の成育に必要な酸素の供給と、細胞の代謝産物の一つである二酸化炭素の排出とが可能なように、第1容器壁11及び第2容器壁12の一方又は双方が酸素透過性を有している。例えば25℃の環境下で気体を酸素とし、JISK7126「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験」に準拠した試験方法で試験したときの酸素透過量が1000cc/m2/24h/atm以上、好ましくは2000cc/m2/24h/atm以上としてもよい。
また、培養期間中に培養室21内の細胞の顕微鏡観察を行うため、第1容器壁11及び第2容器壁12の一方又は双方が内部を透視可能な程度の透明性を有している。
このような物性を得易く、しかも、細胞培養容器10を製造する際に容易に第1容器壁11を成形したり、第2容器壁12を接着できるため、第1容器壁11及び第2容器壁12として熱可塑性樹脂からなるフィルム状、シート状、板状の材料を用いてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン酢酸ビニル共重合体,環状ポリオレフィン,メチルペンタン樹脂,ポリブタジエン樹脂,スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体,塩化ビニル等が挙げられる。この材料は単層構造に限らず、例えば内面側をシーラント等の軟質樹脂層とし、外面側を結晶化樹脂層とする等により多層構造としてもよい。
なお、このような第1容器壁11と第2容器壁12の接着方法や凹部20の形成方法は特に限定されない。例えば真空成形、圧空成形等のように軟化させて外圧を与えることで、第1容器壁11を構成するシート材に所定形状の複数の凹部20・・・を成形すると共に全周囲にフランジ部24を成形し、第2容器壁12を構成するシート材を重ねてフランジ部と溶着して密封シール15を形成してもよい。
また、射出成形等のように所定形状の複数の凹部20・・・を備えた第1容器壁11を成形し、第2容器壁12と重ねて密封シール15を形成してもよい。
さらに、ブロー成形等のように、第1容器壁11と第2容器壁12とが予め一体化した筒状又は袋状の材料等を用いて第1容器壁11と第2容器壁12とが一体化した所定形状の成形体を成形し、開口部を溶着するなどで全周に連続した密封シールを形成してもよい。
ポート16は、培養液や細胞懸濁液を密封空間14内に注入したり密封空間14から排出したりするもので、短尺状の管状体であってもよく、また、軟質のチューブ等が接続されていてもよく、その形状等は任意である。なお、外部側の端部には必要に応じて開口可能なキャップ29や注射針を刺通可能な封止栓などが装着されている。この実施形態では例えば培養液を追加し或いは細胞懸濁液を排出するためのポートとサンプリングポートとが設けられている。
本実施形態の細胞培養容器10は、このような構成を備えることに加え、複数の培養室21・・・及び連通部23・・・により1つの流路が形成されている。ここでは流路の最も上流側となる培養室21から連通部23と培養室21とが交互に配置されて全体が1つの流路となって連通している。
このような流路が形成されていると、後述するように拡大培養により細胞の増殖に合わせて培養液を追加し、細胞の培養に使用する培養室21を段階的に増加させる際、流路に応じて容易に培養室21を増加することができる。培養室21を流路に応じて段階的に増加するとは、例えば流路に沿って隣接する培養室21を順番に増加してもよい。
この流路を構成する各培養室21では、第1容器壁11を第2容器壁12より下に配置して略水平にした保持位置にすると、第1容器壁11の各凹部20の底壁25及び仕切り部22の頂部が略水平に配置される。この保持位置にすることで、各培養室21はそれぞれ底壁25から仕切り部22の高さの範囲で培養液を貯留することが可能となる。
一方、この保持位置を変更し、各仕切り部22を介して互いに隣接する各培養室21,21間の高さ関係を変更することで、培養室21に貯留された培養液や細胞分散液を流路に沿って移動させることができる。具体的には、一方の培養室21を上にし、他方の培養室21を下に配置して傾斜させた保持位置にすることで、一方の培養室21に貯留された培養液や細胞分散液が仕切り部22の頂部27に設けられた連通部23を通して重力により他方の培養室に流下する。
このとき連通部23が第1容器壁11の仕切り部22の頂部27と第2容器壁12とが非接着状態で対向しているため、流下する培養液や細胞分散液により拡開され、より容易に通液可能となる。
この細胞培養容器10においては、さらに、拡大培養時に培養室数を増やすに従って底壁の面積が下流側ほど大きくなるように、好ましくは指数的に拡大するように形成されている。
例えば各培養室21の大きさは当該培養室21より上流側の全培養室21の大きさの和と同等にする。各培養室21の大きさを上流側の全培養室21の大きさの和の80%以上120%以下としてもよい。このようにすると拡大培養により培養室21を1室増やした際、その培養室21及び上流側の全培養室21に培養液又は細胞懸濁液を収容すれば、培養領域を容易に適切に拡大することができる。
[作用効果]
以上のような細胞培養容器10によれば、シャーレ、フラスコ等を用いた培養に比べ、手間の掛かる作業を省くことができ、また、閉鎖系で拡大培養の操作を行うことができるため、細菌などの微生物やウイルス等のコンタミネーションを生じる危険性を減少できる。
この細胞培養容器10では、第1容器壁11を凹ませることで複数の培養室21・・・及び各培養室21,21間の仕切り部22が形成されており、第1容器壁11を下にして略水平にした保持位置で各培養室21にそれぞれ培養液を貯留可能である。そのため培養室21毎に培養液を貯留して細胞を培養する際、各培養室21の形状や大きさを保ち易く、所望の培養環境を容易に実現できる。
また、連通部23が仕切り部22の頂部27と第2容器壁12との間の間隙で形成されて、容器の保持位置を変更することで培養液を通液可能であり、複数の培養室21・・・及び連通部23・・・により1つの流路が形成されているので、細胞の増殖に合わせて培養液を追加し、細胞の培養に使用される培養室21を増加する際、保持位置を変更するだけで所定の培養室21を増加することが可能で操作が容易である。
しかも、各培養室21の形状や大きさを保ち易いため、保持位置を変更した後、再び第1容器壁11を下にして略水平にした保持位置にすれば、各培養室21で所望の培養環境で培養を行うことができる。そのため、容易な操作で拡大培養を効率よく行うことが可能である。
この細胞培養容器10では、仕切り部22の頂部27が第2容器壁12に密着可能であり、連通部23が仕切り部22の頂部27と第2容器壁12とを離間させることで形成されるように構成されている。そのため、培養時には各培養室23を空間的に仕切ることができて、培養期間中に培養液の液面が多少変動しても、各培養室21内に貯留された培養液を各培養室21に保持し易くできる。そして、各培養室21,21間で培養液や細胞分散液を移動させる際には、連通部23を大きく拡開させることができ、培養液や細胞分散液の移動を容易に行うことができる。
この細胞培養容器10では、仕切り部22の頂部27が連通部23を構成する部位を除き第2容器壁12に接着されている。そのため、培養室21内に培養液が貯留された際、貯留された培養液の液圧や流動等により各仕切り部22に倒れ方向の荷重が負荷された際、各仕切り部22が傾斜したり変形したりするようなことを防止でき、各培養室21の形状を安定に保ち易い。
この細胞培養容器10では、幅方向に横断する仕切り部22の頂部27と第2容器壁12とが接着されることで仕切りシール28が形成され、この仕切りシール28が幅方向における一方側の密封シール15から連続して形成されているので、細胞培養容器10を幅方向における一方側、すなわち連通部23側を下に、他方側を上にして配置すれば、隣接する培養室21,21間で容易に培養液を通液できる。また、細胞培養容器10を反転させて一方側を上に、他方側を下にして配置すれば、隣接する培養室21,21間で培養液を通液することがない。そのため、隣接する培養室21,21間で培養液を移動させる操作をより容易に行うことができる。
特に、細胞培養容器10を幅方向における一方側を下に、他方側を上にして配置すれば、一方の仕切り部22では連通部23を介して隣接する培養室21,21間で容易に培養液を通液できると共に、他方の仕切り部22では仕切りシール28により隣接する培養室21,21間で培養液を通液することがない。また、細胞培養容器10を幅方向における一方側を上に、他方側を下にして配置すれば、一方の仕切り部22では仕切りシール28により隣接する培養室21,21間で培養液を通液することがなく、他方の仕切り部22では連通部23を介して隣接する培養室21,21間で容易に培養液を通液できる。そのため3室以上の培養室21が互いに隣接して形成された細胞培養容器10において、各培養室21に培養液を順番に移動させたり培養液の量を調整したりすることが容易である。
[培養方法]
次に、上記のような細胞培養容器10を用いて細胞を培養する方法について説明する。
ここでは、理解を容易にするために、具体的な例を用いて説明する。
(細胞培養容器の準備)
厚み200μmのEVAフィルムからなる第1容器壁に真空成形により3つの凹部20及びフランジ部24を成形した。この第1容器壁11に厚み140μmのEVAフィルムからなる第2容器壁12を重ね、第1容器壁11と第2容器壁12との間の所定位置に、ポート16を構成する成形体を配置した。高周波シールにより第1容器壁11のフランジ部24と第2容器壁12の周縁とを溶着して密封シール15を形成し、ポート16を所定位置に気密に溶着した。また、同時に仕切り部22の頂部27の一部と第2容器壁12とを溶着して密封シール15から連続した仕切りシール28を形成し、残部に仕切り部22の頂部27と第2容器壁12とが非接着状態で当接した連通部23を形成した。その後、γ線滅菌を施し、図1乃至3に示すような細胞培養容器10を作製した。
次に、RPMI1640を基礎とした改良培地(以下、RPMI1640改良培地という)で5μg/mLに希釈した抗ヒトCD3抗体(OKT3、ヤンセンファーマ製)2mLを、シリンジを用いてポート16が開口している流路の上流側となる第1培養室21aに注入した。
細胞培養容器10の底壁25を水平に保ちながら室温で2時間静置し、抗ヒトCD3抗体をこの第1培養室21aの内面に固相化した。
ポート16からシリンジを用いて、抗体液を吸引排除した後、第1培養室21aに10mLのリン酸緩衝生理食塩液(PBS)を注入して第1培養室21aの内面を洗浄し、吸引排除することで、固相化されずに第1培養室21a内に残留した抗ヒトCD3抗体を除去した。この状態で細胞培養容器10を培養に供した。
(細胞培養)
まず8%自己血漿を添加したRPMI1640改良培地(インターロイキン-2(IL-2)(1000 IU/ml)含有)からなる培養液15mLに健常者の末梢血から分離したリンパ球画分を含む単核球(5×106個)を懸濁させた混合物をポート16からシリンジを用いてポート16が開口している第1培養室21aに導入して貯留した。
インキュベータ内で、細胞培養容器10を第1容器壁11を下にして底壁25が水平になる保持位置に保ち、5 % 炭酸ガス、3 7 ℃ 、飽和湿度の条件下で静置し、細胞の活性化培養を開始した。
2日後に、ポート16からシリンジを用いてRPMI1640改良培地(IL-2 (1000 IU/ml)含有)からなる培養液を10mL追加し、底壁25が水平なる保持位置に保ちながら培養を続行した。
1日後に、ポート16からRPMI1640改良培地(IL-2 (1000 IU/ml)含有)からなる培養液を25mL追加し、図4に示すように細胞懸濁液をポート16が開口している第1培養室21aにすべて溜めた状態で、第1培養室21aの外面を手で揉んで細胞を均一に分散させた。
その後、図5に示すように、細胞培養容器10を幅方向の一方の側縁側を上にし、他方の側縁側を下にするように、細胞培養容器10の保持位置を変更した。このとき第1培養室21aとこの第1培養室21aに隣接する第2培養室21bとの間の連通部23が下に配置され、第1培養室21a内の細胞懸濁液と第2培養室21b内の細胞懸濁液との液面の高さがほぼ同じになるように調整した。
この状態で、第1容器壁11を下にして各培養室21a〜21cの底壁25が略水平になる保持位置に配置することで、第1培養室21aと第2培養室21bとの内部に細胞懸濁液を分けて収容した。再びインキュベータ内で保持位置を保ちながら、5 % 炭酸ガス、3 7 ℃ 、飽和湿度の条件下で静置し、培養を続行した。
2日後、ポート16からRPMI1640改良培地(IL-2 (1000 IU/ml)含有)からなる培養液を50mL追加し、図6に示すように保持位置を細胞培養容器を立てた状態に変更し、追加した培養液を含む細胞懸濁液の全てを流路の下流側に設けられた第3培養室21cに移動させた。
第3培養室21cの外面を手で揉んで細胞を均一に分散させた後、図7に示すように、細胞培養容器10を幅方向の他方の側縁側を上にし、一方の側縁側を下にするように、細胞培養容器10の保持位置を変更し、第2培養室21bと第3培養室21cとの間を連通する連通部23を下にして保持し、細胞培養液の一部を第2培養室21bに収容した。
その後、図8に示すように、細胞培養容器10を幅方向の他方の側縁側を上にし、一方の側縁側を下に配置して第2培養室21bと第3培養室21cとの間の連通部23を連通したままで、第1培養室21側が下になるように細胞培養容器10を斜めに傾けた。これにより第3培養室21c及び第2培養室21b内の細胞懸濁液の液面より低い位置に第2培養室21bと第1培養室21との間の連通部23の一部を配置し、第2培養室21bから第1培養室21aに細胞懸濁液を少量ずつ移した。
図9に示すように、細胞培養容器10を幅方向の他方の側縁側を上に、一方の側縁側を下にして第1、第2、第3培養室21a〜21cが略水平の位置に配置されるようにした状態で、細胞懸濁液の液面の高さがほぼ同じになるように調整した。その後、第1容器壁11を下にして各培養室21a〜21cの底壁25が水平になる保持位置に配置し、第1培養室21a、第2培養室21b及び第3培養室21cの内部に細胞懸濁液を分けて収容し、再び、インキュベータ内で上記条件下で静置し、保持位置を保ちながら培養を続行した。
さらに、2日後、注入口よりRPMI1640改良培地(IL-2 (1000 IU/ml)含有)を100mL追加し、全培養室21a〜21c内の培養内容物の液面の高さがほぼ同じになるように調整してから、容器の底壁を下にし、底壁を水平に保ち培養を続行した。
なお、培養開始3日以降、すなわち、培養室を2つ以上使用する段階以降は、培養液が細胞に均一に接するように、また、培養室間の培養液が均質になるように、毎日、容器の保持位置を変更する方法で培養液を混合してから、それまでと同じように培養を続行した。このとき、細胞にダメージを与えないように、容器をもんだりせずに、ゆっくりと培養液を培養室間で移動させることで培養液の均質化をはかった。
そして、4日後に培養を終了した。その結果、細胞培養容器10内の細胞数量は、280.83×106個であった。
(比較用容器の準備)
比較例として、第1容器壁11が第2容器壁12と同様に凹部20を有しない略平坦に形成された容器壁を用い、密封シール15内側の第1容器壁11と第2容器壁12との間の密封空間14内が、複数の培養室に区画されていない1つの培養室となる他は、上記細胞培養容器10と同様にして比較用の容器を作製した。
(細胞培養)
第1容器壁11及び第2容器壁12を外側両面から幅方向に横断する着脱自在なクリップにより2つの仕切り部22と同じ位置で挟持し、平面視における面積が上記細胞培養容器10の第1培養室21a、第2培養室21b、第3培養室21cと同じにした他は、全て上記細胞培養容器10を用いた培養方法と同じにして細胞を培養した。
その結果、細胞培養容器10内の細胞数量は、264.06×106個であった。
比較容器を用いた拡大培養の操作と、上記細胞培養容器10を用いた拡大培養操作とを比較すると、上記細胞培養容器10では容器の下に透明な板を挿入して移動させ、培養途中で繰り返し顕微鏡により細胞観察を行えたが、比較容器ではクランプを使用しているために、フィルム面が歪みやすく、顕微鏡による細胞観察が困難であった。また、同様の理由から、細胞が偏ってしまい均一な状態で培養できなかった。
そして、この容器を用いた拡大培養では、上記細胞培養容器10を用いた拡大培養に比べて増殖した細胞数量は少なかった。
[第2実施形態]
図10は第2実施形態の細胞培養容器10を示す。この細胞培養容器10は、第1容器壁11に2個の凹部20が設けられ、細胞培養容器10を幅方向に横断する仕切り部22が1本設けられて、培養室21が長さ方向に2室設けられている他は、第1実施形態と同様である。
このような細胞培養容器10であっても、第1実施形態と同様に、培養室21毎に培養液を貯留して細胞を培養することができるので、所望の培養環境を容易に実現できる。また、複数の培養室21・・・及び連通部23・・・により1つの流路が形成されているので、細胞の増殖に合わせた培養液の追加に伴い、細胞の培養に使用される培養室21を増加する操作が容易である。その際、各培養室21の形状や大きさを保ち易いため、容器の保持位置を変更した後、再び第1容器壁11を下にした保持位置にすれば、各培養室21で所望の培養環境で培養を行うことができる。そのため、容易な操作で拡大培養を行うことが可能である。
[第3実施形態]
図11及び図12は第3実施形態の細胞培養容器10を示す。
この細胞培養容器10では、各仕切り部22の底壁25からの高さが低く、各仕切り部22の頂部27がそれぞれ第2容器壁12から離間した位置に配置されている。ここでは仕切り部22と第2容器壁12との間の全長が連通部23となっている。
その他は第1実施形態と同様である。
このような細胞培養容器10であっても、第1容器壁11を凹ませることで複数の培養室21・・・及び各培養室21,21間の仕切り部22が形成され、第1容器壁11を下にして略水平にした保持位置では各培養室21にそれぞれ培養液を貯留可能となっている。そのため各培養室21毎に培養液を貯留して細胞を培養することができ、その際各培養室21の形状や大きさを保ち易いため、所望の培養環境を容易に実現できる。
また、連通部23が仕切り部22の頂部27と第2容器壁12との間の間隙で形成されて、容器の保持位置を変更することで培養液を通液可能であり、複数の培養室21・・・及び連通部23・・・により1つの流路が形成されているので、細胞の増殖に合わせた培養液の追加に伴い、細胞の培養に使用される培養室21を増加する操作が容易である。
その際、各培養室21の形状や大きさを保ち易いため、容器の保持位置を変更した後、再び第1容器壁11を下にした保持位置にすれば、各培養室21で所望の培養環境で培養を行うことができる。そのため、容易な操作で拡大培養を効率よく行うことが可能である。
[第4実施形態]
図13は第4実施形態の細胞培養容器10を示す。
この細胞培養容器10では、各仕切り部22の中間部分において頂部27が第2容器壁12と接着されている他は、第1実施形態と同様である。
この細胞培養容器10であれば、各仕切り部22が第2容器壁12により支持されるため、第3実施形態に比べて各仕切り部22の強度が増加する。そのため各培養室21に細胞懸濁液を安定して貯留し易くできる。
この細胞培養容器10であっても、第1実施形態と同様に、培養室21毎に培養液を貯留して細胞を培養することができるので、所望の培養環境を容易に実現できる。また、複数の培養室21・・・及び連通部23・・・により1つの流路が形成されているので、細胞の増殖に合わせた培養液の追加に伴い、細胞の培養に使用される培養室21を増加する操作が容易である。その際、各培養室21の形状や大きさを保ち易いため、容器の保持位置を変更した後、再び第1容器壁11を下にした保持位置にすれば、各培養室21で所望の培養環境で培養を行うことができる。そのため、容易な操作で拡大培養を効率よく行うことが可能である。
[第5実施形態]
図14は第5実施形態の細胞培養容器10を示す。
この細胞培養容器10では、細胞培養容器10を幅方向に横断する方向に形成された仕切り部22の他に、異なる方向に延びる仕切り部22aを有している。この仕切り部22aは、例えば、第1実施形態におけるポート16側の培養室21内で細胞培養容器10の長手方向に延び、幅方向の仕切り部22と密封シール15との間に設けられた形態をしている。この仕切り部22aでは、仕切り部22の仕切りシール28から連続した仕切りシール28aが設けられて頂部27と第2容器壁12とが接着されており、一部に頂部27と第2容器壁12とが非接着状態の連通部23が設けられている。
この細胞培養容器10でも、流路の上流側に設けられた一つのポート16を基準として、培養室21及び連通部23により一つの流路が形成されている。ここでは、一つの流路を形成する以外にもう一つのポート16が設けられており、各ポート16により異なる培養室21と外部とが連通している。その他は第1実施形態と同様である。
このような細胞培養容器10であっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。しかも、培養室21の数を多くでき、より多段階に拡大培養を行うことができる。 このような形態であっても、すなわち、一つの流路を形成しない付属物が設けられていたとしても、一つの流路を形成していることの作用効果が失われてはおらず、本発明の範囲に含まれる。
[第6実施形態]
図15は第6実施形態の細胞培養容器10を示す。
この細胞培養容器10では、流路の上流の培養室21と下流の培養室21とに、それぞれ2つのポート16が設けられている他は、第1実施形態と同様である。
この細胞培養容器10であっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。しかも、ポート16を上流の培養室21と下流の培養室21とに設けられているため、培養液の追加時、サンプリング時、細胞懸濁液の排出時などにおいて、使用するポート16の選択の自由度が大きく、操作性をより向上することができる。
[第7実施形態]
図16は第7実施形態の細胞培養容器10を示す。
この細胞培養容器10は、第1容器壁11の複数の凹部20・・・がそれぞれ異なる深さに底壁25が設けられている。ここでは、各底壁25表面の法線が互いに略平行となるように、複数の凹部20・・・が形成されている。そのため細胞培養容器10を同じ向きに配置することで各底壁25を略水平に配置することが可能である。
その他は第1実施形態と同様である。このような細胞培養容器10では各培養室21を略水平に静置するには、例えば各凹部20の底壁25の段差に対応した段差を有し、各面の法線が互いに平行となるように載置面が形成された載置台に載置するのが好ましい。
このような細胞培養容器10であっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。しかも、各培養室21の深さを異ならせているので、各培養室21の容積を底壁25の面積と深さとで調整することができる。そのため培養効率に影響が大きい各底壁25の面積に応じて培養液量を適切に調整し易い。
[細胞培養用具の実施形態]
次に細胞培養用具の実施形態について説明する。図17及び図18にこの実施形態の細胞培養用具を示す。
この細胞培養用具30は、第1実施形態と同じ細胞培養容器10と、細胞培養容器10の姿勢を保持するための姿勢保持部材31と、を備える。姿勢保持部材31は、図18に示すように、表面に平坦な平面からなる載置面が形成された載置台32と、載置面から突設され、細胞培養容器10の仕切り部22に下側から係合する板状の係合部33と、を有している。材質は特に限定されないが、樹脂シートや樹脂板により形成してもよい。
載置台32及び係合部33は少なくとも第1容器壁11及び第2容器壁12より硬く形成され、細胞培養容器10を載置して載置台32の両端部を持って持ち上げた際、各部、特に載置台32が撓まない程度の剛性を有するのが好ましい。この載置台32は、載置面に載置された細胞培養容器10の各凹部20の底壁25側から培養室21内の細胞を顕微鏡観察することが可能な程度の透明性を有するのが好ましい。
また、載置台32が酸素透過性を有して載置台32及び第1容器壁11を透過して外部から酸素を供給したり二酸化炭素を排出するように構成してもよい。載置台32の材料が酸素透過性が低い場合には、例えば載置台32に裏面から貫通する多数の孔を設けてもよい。
このような姿勢保持部材31を有する細胞培養用具30では、姿勢保持部材31に細胞培養容器10を保持させるには、図17に示すように、細胞培養容器10の互いに隣接する凹部20,20の側壁26,26間に姿勢保持部材31の係合部33を挿入し、細胞培養容器10の凹部20の各底壁25を姿勢保持部材31の平坦な載置面に当接させて載置する。これにより各係合部33が仕切り部22に挿入されて頂部27に係合部33の先端が当接することで、仕切り部22の形状が維持されるように下側から支持される。
この細胞培養用具30によれば、細胞培養容器10の姿勢を保持するための姿勢保持部材31が、仕切り部22の形状を維持するように仕切り部22に下側から係合する係合部33を有しているので、姿勢保持部材31により第1容器壁11を下とし、かつ、略水平となるようにして細胞培養容器10を保持すると、それぞれ培養液を貯留した状態で各培養室21を安定して維持することができて貯留安定性を向上することが可能である。
そのため細胞培養容器10をインキュベータに出し入れしたり持ち運ぶ際に、変形を防止して姿勢を維持することができて細胞培養容器10の取り扱いを容易にできる。
また、姿勢保持部材31における細胞培養容器10の各培養室21に対応する部位が透明であったり、十分な酸素透過性が得られれば、細胞培養容器10を姿勢保持部材31に保持した状態で各培養室21内の細胞を顕微鏡で観察したり、培養を継続することができ、作業性を向上できる。
[細胞培養用具の他の実施形態]
図19はこの実施形態の細胞培養用具を示す。
この細胞培養用具30では、姿勢保持部材31が枠形状に形成されており、細胞培養容器10の全ての培養室21の外周を囲むように形成された外枠部34と、外枠部34の内側の位置に架設されて細胞培養容器10の各仕切り部22に下側から係合する係合部33と、を有している。ここでは外枠部34及び係合部33で囲まれた内側は貫通した空間となっている。
この姿勢保持部材31は、細胞培養容器10を載置して端部を持ち上げた際、各部が撓まない程度の剛性を有するのが好ましい。
この姿勢保持部材31は、培養時に平坦な載置面上に載置でき、外枠部34及び係合部33の載置面からの高さが、細胞培養容器10の各凹部20及び仕切り部22の底壁25からの高さと略同じに形成されている。そのため姿勢保持部材31を平面上に載せた状態で細胞培養容器10を姿勢保持部材31に支持させると、細胞培養容器10の外周囲に設けられたフランジ部24が外枠部34の先端で支持され、仕切り部22の頂部が係合部33の先端で支持される。そして、各凹部20の底壁25が姿勢保持部材31を載置した平面に載置される。
このような姿勢保持部材31を有する細胞培養用具30でも、上記の実施形態と同様に、細胞培養容器10の姿勢を保持するための姿勢保持部材31が、仕切り部22の形状を維持するように仕切り部22に下側から係合する係合部33を有しているので、姿勢保持部材31により第1容器壁11を下とし、かつ、略水平となるようにして細胞培養容器10を保持すると、それぞれ培養液を貯留した状態で各培養室21を安定して維持することができる。
そのため細胞培養容器10をインキュベータに出し入れしたり持ち運ぶ際に、変形を防止して姿勢を維持することができて細胞培養容器10の取り扱いを容易にできる。また、姿勢保持部材31における細胞培養容器10の各培養室21に対応する部位が透明であったり、十分な酸素透過性が得られれば、細胞培養容器10を姿勢保持部材31に保持した状態で各培養室21内の細胞を顕微鏡で観察したり、培養を継続することができ、作業性を向上できる。
特に、この実施形態では、姿勢保持部材31が枠形状に形成され、外枠部34及び係合部33で囲まれた内側が貫通した空間となっているため、各培養室21を構成する凹部20の底壁25を支持する部材を自在に選択でき、さらには凹部20の底壁25を露出させて支持することも容易であり、培養効率を向上したり操作性を向上したりすることが可能である。
[変形例]
図20は上記の実施形態の変形例に使用する姿勢保持部材31を示す。この姿勢保持部材31では、外枠部34及び係合部33が枠形状に形成されており、更に外枠部34の長手方向の両端に外側に突出して把持部35が設けられている。これにより細胞培養用具30の取り扱いが容易である。
10 細胞培養容器
11 第1容器壁
12 第2容器壁
14 密封空間
15 密封シール
16 ポート
20 凹部
21 培養室
21a 第1培養室
21b 第2培養室
21c 第3培養室
22,22a 仕切り部
23 連通部
24 フランジ部
25 底壁
26 側壁
27 頂部
28,28a 仕切りシール
29 キャップ
30 細胞培養用具
31 姿勢保持部材
32 載置台
33 係合部
34 外枠部
35 把持部

Claims (9)

  1. 互いに対向させて周囲を密封シールにより密封することで内側に密閉空間を形成する第1容器壁及び第2容器壁と、前記密閉空間と外部とを連通可能なポートと、を備えた柔軟性を有する細胞培養容器において、
    前記第1容器壁を前記第2容器壁から離間するように凹ませることで形成された複数の培養室及び各培養室間の仕切り部と、
    前記仕切り部の頂部と前記第2容器壁の前記頂部に対向する部位との間の間隙で形成され、隣接する前記培養室間を連通する連通部と、を備え、
    前記各培養室は、前記第1容器壁を下とし、かつ、略水平にした保持位置ではそれぞれ培養液を貯留可能であり、
    前記連通部は、前記保持位置を変更することで前記培養液を通液可能であり、
    前記複数の培養室及び連通部により1つの流路が形成され、細胞の増殖に合わせた前記培養液の追加に伴い、細胞の培養に使用される培養室を前記流路に応じて段階的に増加可能であることを特徴とする、細胞培養容器。
  2. 前記仕切り部の頂部は前記第2容器壁に密着可能であり、前記連通部は、前記仕切り部の頂部と前記第2容器壁とが離間することで形成されることを特徴とする、請求項1に記載の細胞培養容器。
  3. 前記仕切り部の頂部は、前記連通部を構成する部位を除き前記第2容器壁に接着されていることを特徴とする、請求項1に記載の細胞培養容器。
  4. 前記仕切り部は、前記第1容器壁と前記第2容器壁との前記密封シールの間を幅方向に横断するように形成され、前記仕切り部の頂部と前記第2容器壁とが幅方向における一方側の前記密封シールから連続して接着されることで仕切りシールが形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の細胞培養容器。
  5. 前記仕切り部は、前記第1容器壁と前記第2容器壁との前記密封シールの間を幅方向に横断して少なくとも2つ形成され、それぞれ仕切り部の1/2以上の長さを有する前記仕切りシールを有し、
    隣り合う前記仕切り部における一方の仕切りシールは幅方向における一方側の前記密封シールから連続して形成され、他方の仕切りシールは幅方向における他方側の前記密封シールから連続して形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の細胞培養容器。
  6. 互いに対向させて周囲を密封シールにより密封することで内側に密閉空間を形成する第1容器壁及び第2容器壁と、前記密閉空間と外部とを連通可能なポートと、を備えた柔軟性を有する細胞培養容器において、
    前記第1容器壁を前記第2容器壁から離間するように凹ませることで形成された複数の培養室及び各培養室間の仕切り部と、
    前記仕切り部の頂部と前記第2容器壁の前記頂部に対向する部位との間の間隙で形成され、隣接する前記培養室間を連通する連通部と、を備え、
    前記各培養室は、前記第1容器壁を下とし、かつ、略水平にした保持位置ではそれぞれ培養液を貯留可能であり、
    前記仕切り部は、前記密封シールの間を幅方向に横断し頂部が前記第2容器壁に密着可能に形成され、前記連通部を構成する部位を除いて前記頂部と前記第2容器壁とが幅方向における一方側の前記密封シールから連続して接着されることで形成された仕切りシールを有し、
    前記連通部は、前記保持位置を変更することで前記仕切り部の頂部と前記第2容器壁とが離間して前記培養液を通液可能であり、
    前記複数の培養室及び連通部により1つの流路が形成され、細胞の増殖に合わせた前記培養液の追加に伴い、細胞の培養に使用される培養室を前記流路に応じて段階的に増加可能であることを特徴とする、細胞培養容器。
  7. 請求項1乃至6の何れかに記載の細胞培養容器と、前記細胞培養容器の姿勢を保持するための姿勢保持部材とを備え、
    前記姿勢保持部材は、前記仕切り部の形状を維持するように前記仕切り部に下側から係合する係合部を有し、
    前記第1容器壁を下とし、かつ、略水平となるように前記姿勢保持部材により前記細胞培養容器を保持することによって、前記各培養室内の培養液の貯留安定性を向上したことを特徴とする、細胞培養用具。
  8. 請求項1乃至6の何れかに記載の細胞培養容器を用いて細胞を培養する細胞培養方法において、
    前記複数の培養室のうちの一部に培養液及び細胞を導入する工程と、前記第1容器壁を下にした保持位置で培養を行う工程と、前記一部の培養室に新たな培養液を追加して細胞懸濁液にする工程と、前記保持位置を変更することで前記細胞懸濁液を前記一部の培養室と他の培養室とに分けて収容する工程と、前記第1容器壁を下にした保持位置で再び培養を行う工程と、を備えたことを特徴とする、細胞培養方法。
  9. 前記第1容器壁を下にした保持位置で培養を行う工程において、前記姿勢保持部材を用いて培養することを特徴とする、請求項8に記載の細胞培養方法。
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