JP2014121675A - 機能液の吐出量ばらつきの計測方法、計測機構、吐出装置、機能液の吐出方法、有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法 - Google Patents

機能液の吐出量ばらつきの計測方法、計測機構、吐出装置、機能液の吐出方法、有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】複数のノズルから吐出される機能液の吐出量ばらつきを精度よく計測可能な機能液の吐出量ばらつきの計測方法、この計測方法を用いた機能膜の形成方法、有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】本適用例に係る機能液の吐出量ばらつきの計測方法は、吐出ヘッドの複数のノズルから吐出される機能液の吐出量ばらつきの計測方法であって、受容層を有するメディアに対して、複数のノズルごとに所定量の機能液を複数の液滴D1〜D4として吐出する計測用吐出工程と、複数のノズルごとに受容層に着弾した所定量の機能液の着弾面積を計測する計測工程と、備え、計測用吐出工程は、複数の液滴D1〜D4の受容層における着弾位置が互いにわずかにずれるようにメディアに対して複数の液滴D1〜D4を吐出する。
【選択図】図8

Description

本発明は、機能層を液相プロセスにより形成する際に用いられる機能液の吐出量ばらつきの計測方法、機能液の吐出量ばらつきの計測機構、吐出装置、機能液の吐出方法、これを用いた有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(EL;Electro Luminescence)装置の発光層などを製造する方法として、機能性材料を含む機能液を、吐出ヘッド(インクジェットヘッド)の複数のノズルから液滴として被吐出物に吐出した後に乾燥させ、機能膜を形成する方法が知られている。
膜厚の均一性が高い機能膜を得るには、複数のノズル間での相対的な機能液の吐出量を揃えることが重要である。そのためには、ノズルから吐出された機能液の吐出量をノズルごとに測定し、吐出量をねらいの値あるいは適正な値にノズルごとに補正できることが重要である。
機能液の吐出量の測定方法としては、例えば、特許文献1のように、シャーレ形態を備える記録媒体にノズルから吐出された機能液を受けさせ、その後に天板で覆うことで機能液を円筒状に変形させてその面積を測ることで吐出量を測定する方法が知られている。
また、例えば、特許文献2のように、ノズルから機能液を液滴としてシート部材に着弾させ、着弾した機能液の着弾面積をノズルごとに測定し、着弾面積と吐出量との相関を求める方法が知られている。
特開2000−153603号公報 特開2010−204408号公報
しかしながら、有機EL装置の発光層などを液相プロセスを用いて形成する場合、機能液はほぼ透明であり、上記特許文献2のように機能液を液滴としてシート部材に着弾させても、機能液の着弾面積を正確に測定すること困難であるという課題がある。
具体的には、シート部材における単位面積当たりの機能液の受容量を超えて、同一箇所に液滴を着弾させた場合には、機能液がシート部材に着弾した部分(着弾痕)が滲んで着弾した部分(着弾痕)の外縁を特定することが困難になり、着弾面積の測定結果にばらつきが生じてしまう。したがって、着弾面積を正確に測定することが困難となる。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係る機能液の吐出量ばらつきの計測方法は、吐出ヘッドの複数のノズルから吐出される機能液の吐出量ばらつきの計測方法であって、受容層を有するメディアに対して、前記複数のノズルごとに所定量の前記機能液を複数の液滴として吐出する計測用吐出工程と、前記複数のノズルごとに前記受容層に着弾した前記機能液の着弾面積を計測する計測工程と、を備え、前記計測用吐出工程は、前記複数の液滴のうち少なくとも1つの液滴の前記受容層における着弾位置が他の液滴の着弾位置に対してわずかにずれるように前記メディアに対して前記複数の液滴を吐出することを特徴とする。
本適用例によれば、メディアにおける受容層の特定の場所に集中して複数の液滴が着弾することが避けられ、受容層における受容量を超えて機能液が吐出されることを防ぐことができる。したがって、機能液が受容層に着弾した後の着弾痕が滲むことを低減して、機能液の着弾面積を正確に計測することができる。ゆえに、複数のノズルごとに吐出される所定量の機能液の吐出量ばらつきを着弾面積から精度よく推し量ることが可能な機能液の吐出量ばらつきの計測方法を提供することができる。
[適用例2]上記適用例に係わる機能液の吐出量ばらつきの計測方法において、前記機能液が着色材料を含まない透明な溶液であることを特徴とする。
この方法によれば、機能液が透明な溶液であっても、着弾痕の滲みが低減されるので、複数のノズルごとの吐出量ばらつきを精度よく計測することができる。
[適用例3]上記適用例に係わる機能液の吐出量ばらつきの計測方法において、前記計測用吐出工程は、前記吐出ヘッドと前記メディアとを前記複数のノズルの配列方向と交差する第1の方向に相対的に移動させる主走査の間に、前記複数のノズルから前記複数の液滴が前記受容層に対して第1の方向にわずかにずれて着弾するように吐出することが好ましい。
この方法によれば、主走査における吐出分解能を単位として、液滴を第1の方向にずらして着弾させることができる。つまり、機能液の液滴をメディアに対して極わずかにずらして着弾させることができるので、着弾痕が滲み難くなると共に形状が歪み難くなり、着弾痕の面積すなわち着弾面積を容易に求めることができる。
[適用例4]上記適用例に係わる機能液の吐出量ばらつきの計測方法において、前記計測用吐出工程は、前記吐出ヘッドと前記メディアとを前記複数のノズルの配列方向と交差する第1の方向に相対的に移動させる主走査と、前記第1の方向に直交する第2の方向に前記複数のノズルを移動させる副走査とを組み合わせて、前記主走査における前記受容層に対する前記複数の液滴の着弾位置を前記第1の方向と前記第2の方向とにわずかにずらして着弾させるとしてもよい。
この方法によれば、メディアの特定の位置を中心として、その周りに機能液の液滴をずらして着弾させることができるので、滲みが少ない安定した形状の着弾痕が得られる。つまり、着弾面積を計測し易い。
[適用例5]上記適用例に係わる機能液の吐出量ばらつきの計測方法において、前記計測用吐出工程は、前記所定量の前記機能液を複数回の前記主走査に分けて前記前記受容層に対して液滴として吐出することを特徴とする。
この方法によれば、メディアに対して1回の主走査で液滴を着弾させる場合に比べて、複数回の主走査に分けることにより受容層の受容量を超え難くなるため、滲みが少ない安定した形状の着弾痕を得ることができる。
[適用例6]上記適用例に係わる機能液の吐出量ばらつきの計測方法において、前記計測用吐出工程では、前記複数回の前記主走査のうち少なくとも1回は前記複数のノズルから前記受容層に吐出する前記機能液の液滴の吐出数を変えて前記所定量の前記機能液を吐出し、前記計測工程では、前記主走査ごとに前記受容層に着弾した前記機能液の着弾面積を計測することを特徴とする。
この方法によれば、機能液を基板などに吐出して実際に機能膜を形成する場合の液滴の吐出数に対応させて、計測用吐出工程における液滴の吐出数を変えれば、実際の機能膜の形成を想定した複数のノズルにおける機能液の吐出量ばらつきを計測することができる。
[適用例7]本適用例に係わる計測機構は、吐出ヘッドの複数のノズルから複数の液滴として吐出された機能液の吐出量ばらつきを計測する計測機構であって、受容層を有するメディアと、前記吐出ヘッドと前記メディアとを対向配置させた状態で第1の方向に相対的に移動させる移動機構と、撮像部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の液滴のうち少なくとも1つの液滴の前記受容層における着弾位置が他の液滴の着弾位置に対して前記第1の方向にわずかにずれるように前記吐出ヘッドと前記移動機構とを制御して、前記吐出ヘッドから前記メディアに対して前記複数の液滴を吐出させ、前記複数のノズルごとに前記受容層に着弾した所定量の前記機能液の着弾痕を前記撮像部で撮像させることを特徴とする。
本適用例によれば、メディアの受容層に対して第1の方向に複数の液滴のうち少なくとも1つの液滴が着弾するので、同一箇所に複数の液滴を着弾させる場合に比べて、受容層の受容量を越えて液滴が着弾することが抑えられるので、受容層に着弾した機能液の着弾痕が滲み難くになり、撮像部によって着弾痕を明瞭に撮像することができ、着弾痕の着弾面積を精度よく計測することができる。すなわち、計測された着弾痕の着弾面積から複数のノズルごとの機能液の吐出量ばらつきを精度よく推し量ることが可能な計測機構を提供できる。
[適用例8]上記適用例に係わる計測機構において、前記メディアは、透明な前記受容層と、前記受容層を支持する透明な支持体とからなり、前記メディアを照明する照明部をさらに備えたことを特徴とする。
この構成によれば、機能液がほぼ透明であっても着弾痕を照明して精度よく撮像することができる。
[適用例9]本適用例に係わる吐出装置は、複数のノズルを有する吐出ヘッドとワークとを対向配置して、前記吐出ヘッドと前記ワークとを第1の方向に相対移動させる主走査の間に、前記ワークに対して前記吐出ヘッドの前記複数のノズルから機能液を液滴として吐出する吐出装置であって、上記適用例に記載の計測機構を備えたことを特徴とする。
本適用例の構成によれば、複数のノズルから吐出される機能液の吐出量ばらつきを低減して、精度よく所定量の機能液をワークに吐出することが可能な吐出装置を提供できる。
[適用例10]本適用例に係わる機能液の吐出方法は、複数のノズルを有する吐出ヘッドと、膜形成領域が形成された基板とを対向配置して第1の方向に相対移動させる主走査の間に、前記複数のノズルのうち前記膜形成領域に掛かるノズルから機能性材料を含む機能液を液滴として吐出する機能液の吐出方法であって、上記適用例に記載の機能液の吐出量ばらつきの計測方法を用いて求められた前記複数のノズルごとの吐出量ばらつきに基づいて、前記複数のノズルごとの吐出量ばらつきが小さくなるように前記複数のノズルごとの吐出条件を予め設定された吐出条件に対して補正する工程と、補正された前記吐出条件で前記複数のノズルのうち選択されたノズルから前記機能液を吐出する吐出工程と、を備えることを特徴とする。
本適用例によれば、吐出工程では、選択されたノズルから所定量の機能液を精度よく膜形成領域に吐出することができるので、膜厚や膜形状が安定した機能膜を形成することができる。
[適用例11]上記適用例に係わる機能液の吐出方法において、前記吐出ヘッドは前記複数のノズルから前記機能液を液滴として吐出するために前記複数のノズルごとに設けられたアクチュエーターを有し、前記吐出条件を補正する工程は、前記アクチュエーターを駆動する条件を補正することを特徴とする。
[適用例12]上記適用例に係わる機能液の吐出方法において、前記アクチュエーターが圧電素子であって、前記吐出条件を補正する工程は、前記圧電素子に印加される電気信号としての駆動波形の電位を補正することを特徴とする。
これらの方法によれば、選択されたノズルから膜形成領域に吐出される機能液の所定量をねらいの値に近づけて適正に補正することができる。
[適用例13]本適用例に係わる有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法は、基板上の複数の膜形成領域のそれぞれに発光層を含む機能層を有する有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、上記適用例に記載の機能液の吐出方法を用いて、前記複数の膜形成領域のそれぞれに所定量の前記機能液を塗布する工程と、塗布された前記機能液を固化して、前記複数の膜形成領域のそれぞれに前記機能層のうちの1つの有機層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
本適用例によれば、所望の発光特性や発光寿命を有する有機エレクトロルミネッセンス装置を歩留まりよく製造することができる。
[適用例14]上記適用例に係わる有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法において、前記機能液を塗布する工程は、発光層形成材料を含む前記機能液を塗布することを特徴とする。
この方法によれば、安定した発光特性を有する有機エレクトロルミネッセンス装置を歩留まりよく製造することができる。
吐出装置の構成を示す概略斜視図。 (a)は吐出ヘッドの構成を示す概略斜視図、(b)はノズル面における複数のノズルの配置状態を示す平面図。 ヘッドユニットにおける吐出ヘッドの配置を示す概略平面図。 (a)は着弾面積計測機構の構成を示す概略斜視図、(b)は主走査方向から見た着弾面積計測機構の各構成の配置を示す図。 吐出装置の制御系を示すブロック図。 吐出ヘッドの電気的な制御を示すブロック図。 駆動信号及び制御信号のタイミング図。 (a)〜(c)は機能液の着弾面積の計測方法を示す概略断面図。 (a)〜(c)は計測用吐出工程における液滴の着弾のさせ方を示す概略図。 比較例の液滴の着弾における着弾痕を示す写真。 実施例の液滴の着弾における着弾痕を示す写真。 (a)は厚みが35μmの受容層の機能液の受容量を示す表、(b)は厚みが15μmの受容層の機能液の受容量を示す表。 液滴のずらし量ΔLと着弾面積の計測精度との関係を示す表。 (a)は比較例の計測用吐出工程を適用したときのノズルごとの着弾面積のばらつきを示すグラフ、(b)は比較例の着弾面積の計測結果を基にして駆動信号COMを補正した後の、ノズルごとの着弾面積のばらつきを示すグラフ、(c)は比較例における補正後のノズルの駆動信号COM別の着弾面積のばらつきを示すグラフ。 (a)は実施例の計測用吐出工程を適用したときのノズルごとの着弾面積のばらつきを示すグラフ、(b)は実施例の着弾面積の計測結果を基にして駆動信号COMを補正した後の、ノズルごとの着弾面積のばらつきを示すグラフ、(c)は実施例における補正後のノズルの駆動信号COM別の着弾面積のばらつきを示すグラフ。 有機EL装置を示す概略正面図。 有機EL装置の要部概略断面図。 有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。 (a)〜(d)は有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。 (e)〜(h)は有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
(第1実施形態)
<吐出装置>
まず、機能層形成材料を含む機能液を液滴としてワークに吐出可能な吐出装置について、図1〜図7を参照して説明する。図1は吐出装置の構成を示す概略斜視図である。
図1に示すように、吐出装置10は、被吐出物である例えば平板状のワークWを第1の方向としての主走査方向(Y軸方向)に移動させるワーク移動機構20と、ヘッドユニット9を主走査方向に直交する第2の方向としての副走査方向(X軸方向)に移動させるヘッド移動機構30とを備えている。
ワーク移動機構20は、一対のガイドレール21と、一対のガイドレール21に沿って移動する移動台22と、移動台22上に回転機構6を介して配設されたワークWを載置するステージ5とを備えている。
移動台22は、ガイドレール21の内部に設けられたエアスライダーとリニアモーター(図示省略)により主走査方向(Y軸方向)に移動する。移動台22には、タイミング信号生成部としてのエンコーダー12(図5参照)が設けられている。
エンコーダー12は、移動台22の主走査方向(Y軸方向)への相対移動に伴って、ガイドレール21に並設されたリニアスケール(図示省略)の目盛を読み取って、タイミング信号としてのエンコーダパルスを生成する。なお、エンコーダー12の配設は、これに限らず、例えば、移動台22を回転軸に沿って主走査方向(Y軸方向)に相対移動するよう構成し、回転軸を回転させる駆動部を設けた場合には、エンコーダー12を駆動部に設けてもよい。駆動部としては、サーボモーターなどが挙げられる。
ステージ5はワークWを吸着固定可能であると共に、回転機構6によってワークW内の基準軸を正確に主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)に合わせることが可能となっている。
また、ワークW上において機能液が吐出される機能層形成領域(膜形成領域とも呼ぶ)の配置に応じて、ワークWを例えば90度旋回させることも可能である。
ヘッド移動機構30は、一対のガイドレール31と、一対のガイドレール31に沿って移動する移動台32とを備えている。移動台32には、回転機構7を介して吊設されたキャリッジ8が設けられている。
キャリッジ8には、複数の吐出ヘッド50(図2参照)がヘッドプレート9aに搭載されたヘッドユニット9が取り付けられている。
また、吐出ヘッド50に機能液を供給するための機能液供給機構(図示省略)と、複数の吐出ヘッド50の電気的な駆動制御を行うためのヘッドドライバー48(図5参照)とが設けられている。
移動台32がキャリッジ8を副走査方向(X軸方向)に移動させてヘッドユニット9をワークWに対して対向配置する。
吐出装置10は、上記構成の他にも、ヘッドユニット9に搭載された複数の吐出ヘッド50のノズル目詰まり解消、ノズル面の異物や汚れの除去などのメンテナンスを行うメンテナンス機構が、複数の吐出ヘッド50を臨む位置に配設されている。
また、吐出ヘッド50の複数のノズルから吐出された機能液を受けて、吐出された機能液の重量を計測する重量計測機構や、同じく吐出された機能液の着弾面積を計測する本実施形態の計測機構としての着弾面積計測機構60(図5参照)を備えている。そして、これらの構成を統括的に制御する制御部40を備えている。なお、図1では、メンテナンス機構及び重量計測機構並びに着弾面積計測機構60は、図示を省略した。
図2(a)は吐出ヘッドの構成を示す概略斜視図、図2(b)はノズル面における複数のノズルの配置状態を示す平面図である。
図2(a)に示すように、吐出ヘッド50は、所謂2連のものであり、2連の接続針54を有する機能液の導入部53と、導入部53に積層されたヘッド基板55と、ヘッド基板55上に配置され内部に機能液のヘッド内流路が形成されたヘッド本体56とを備えている。接続針54は、前述した機能液供給機構(図示省略)に配管を経由して接続され、機能液をヘッド内流路に供給する。ヘッド基板55には、フレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介してヘッドドライバー48(図5参照)に接続される2連のコネクター58が設けられている。
ヘッド本体56は、駆動手段(アクチュエーター)としての圧電素子で構成されたキャビティを有する加圧部57と、ノズル面51aに2つのノズル列52a,52bが相互に平行に形成されたノズルプレート51とを有している。
図2(b)に示すように、2つのノズル列52a,52bは、それぞれ複数(180個)のノズル52がピッチP1でほぼ等間隔に並べられており、互いにピッチP1の半分のピッチP2ずれた状態でノズル面51aに配設されている。本実施形態において、ピッチP1は、例えばおよそ141μmである。よって、2つのノズル列52a,52bによって構成されたノズル列52cに直交する方向から見ると360個のノズル52がおよそ70.5μmのノズルピッチで配列した状態となっている。また、ノズル52の径は、およそ27μmである。
吐出ヘッド50は、ヘッドドライバー48から電気信号としての駆動信号が圧電素子に印加されると加圧部57のキャビティの体積変動が起こり、これによるポンプ作用でキャビティに充填された機能液が加圧され、ノズル52から機能液を液滴として吐出することができる。
吐出ヘッド50においてノズル52ごとに設けられる駆動手段(アクチュエーター)は、圧電素子に限らない。アクチュエーターとしての振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、機能液を加熱してノズル52から液滴として吐出させる電気熱変換素子でもよい。
図3はヘッドユニットにおける吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。詳しくは、ワークWに対向する側から見た図である。
図3に示すように、ヘッドユニット9は、複数の吐出ヘッド50が配設されるヘッドプレート9aを備えている。ヘッドプレート9aには、3つの吐出ヘッド50からなるヘッド群50Aと、同じく3つの吐出ヘッド50からなるヘッド群50Bの合計6個の吐出ヘッド50が搭載されている。本実施形態では、ヘッド群50AのヘッドR1(吐出ヘッド50)とヘッド群50BのヘッドR2(吐出ヘッド50)とは同種の機能液を吐出する。他のヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様である。すなわち、3種の異なる機能液を吐出可能な構成となっている。
1つの吐出ヘッド50によって描画可能な描画幅をL0とし、これをノズル列52cの有効長とする。以降、ノズル列52cとは、360個のノズル52から構成されるものを指す。
ヘッドR1とヘッドR2は、主走査方向(Y軸方向)から見て隣り合うノズル列52cが主走査方向と直交する副走査方向(X軸方向)に1ノズルピッチを置いて連続するように主走査方向に並列して配設されている。したがって、同種の機能液を吐出するヘッドR1とヘッドR2の有効な描画幅L1は、描画幅L0の2倍となっている。ヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様に主走査方向(Y軸方向)に並列して配置されている。
なお、吐出ヘッド50に設けられるノズル列52cは、2連に限らず、1連でもよい。また、ヘッドユニット9における吐出ヘッド50の配置は、これに限定されるものではない。
<着弾面積計測機構>
次に、図4を参照して着弾面積計測機構について説明する。図4(a)は着弾面積計測機構の構成を示す概略斜視図、図4(b)は主走査方向から見た着弾面積計測機構の各構成の配置を示す図である。
図4(a)及び(b)に示すように、本実施形態の計測機構としての着弾面積計測機構60は、照明部61と、撮像部62と、画像処理部63と、モニター64と、移動台65と、移動台65に載置された記録用のメディア160とにより構成されている。
着弾面積計測機構60は、前述した吐出ヘッド50の複数のノズル52から機能液を液滴としてメディア160に着弾させ、メディア160に生じた着弾痕を撮像部62によって撮像して、該着弾痕の面積(着弾面積)を計測するものである。
記録用のメディア160は、機能液によって選択される。機能液が着色材料を含んでいる場合は、メディア160は不透明な例えば記録紙などが用いられる。機能液が着色材料を含まずほぼ透明な場合は、例えば表面に機能液を受け止める受容層が形成された透明なフィルムなどが用いられる。本実施形態では、メディア160は後者の透明なフィルムを用いている。
移動台65は、移動台22(図1参照)と同様に、一対のガイドレール21の内部に設けられたエアスライダーとリニアモーター(図示省略)により主走査方向(Y軸方向)に移動可能となっている。移動台65にも、タイミング信号生成部としてのエンコーダー12(図5参照)が設けられている。
移動台65上には、X軸方向に延在して例えば透明なガラスやプラスチックなどからなる支持テーブル66が配置されている。長尺のメディア160は、巻出しローラー68aと巻取りローラー68bとに捲回されて、長尺の両端が支持されている。移動台65上において、巻出しローラー68aと巻取りローラー68bとは、支持テーブル66を挟んだX軸方向における両端側に設けられた軸受け67にそれぞれ取り付けられている。これによって、メディア160は支持テーブル66上においてX軸方向に広げられ、支持テーブル66によってメディア160の背面側が支持される。
照明部61は、例えばハロゲンランプやキセノンランプなどの光源と、光源から発せられた光を所定の方向に集光させる集光手段とを備えている。集光手段は例えば反射板(鏡)や集光レンズである。照明部61は、X軸方向において一対のガイドレール21の間に配置され、移動台65に向って光源からの光を照射可能となっている。照明部61に臨む移動台65の部分には、移動台65を貫通する孔65aが形成されている。透明な支持テーブル66は孔65aを塞ぐように移動台65上に配置されている。つまり、照明部61は、移動台65と支持テーブル66とを介して、支持テーブル66上に展開された透明なメディア160を背面側から照明することができる。
なお、前述したようにメディア160として不透明な例えば記録紙を用いる場合に対応して、メディア160を上方側から照明する他の照明部を備えていてもよい。
撮像部62は、例えばCCDなどの撮像素子を備えており、照明部61の上方において照明部61を臨む位置に配置されている。撮像部62は画像処理部63に電気的に接続されている。また、画像処理部63は例えば液晶表示装置などのモニター64に電気的に接続されている。つまり、撮像部62によって撮像された画像を画像処理部63によって画像処理を施すことができると共に、撮像された元の画像だけでなく、画像処理された画像をモニター64によって確認することができる。
次に吐出装置10の制御系について図5を参照して説明する。図5は吐出装置の制御系を示すブロック図である。図5に示すように、吐出装置10の制御系は、吐出ヘッド50、ワーク移動機構20、ヘッド移動機構30、着弾面積計測機構60などを駆動する各種ドライバーを有する駆動部46と、駆動部46を含め吐出装置10を統括的に制御する制御部40とを備えている。
駆動部46は、ワーク移動機構20及びヘッド移動機構30の各リニアモーターをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバー47と、吐出ヘッド50を駆動制御するヘッドドライバー48と、着弾面積計測機構60を駆動制御する着弾面積計測用ドライバー49とを備えている。この他にもメンテナンス機構を駆動制御するメンテナンス用ドライバー、重量計測機構を駆動制御する重量計測用ドライバーなどを備えているが図示を省略した。
制御部40は、CPU41と、ROM42と、RAM43と、P−CON44とを備え、これらは互いにバス45を介して接続されている。P−CON44には、上位コンピューター11が接続されている。ROM42は、CPU41で処理する制御プログラムなどを記憶する制御プログラム領域と、描画動作や機能回復処理などを行うための制御データなどを記憶する制御データ領域とを有している。
RAM43は、ワークWに描画を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、ワークW及び吐出ヘッド50(実際には、ノズル列52c)の位置データを記憶する位置データ記憶部などの各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。P−CON44には、駆動部46の各種ドライバーなどが接続されており、CPU41の機能を補うと共に、周辺回路とのインタフェイス信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON44は、上位コンピューター11からの各種指令などをそのままあるいは加工してバス45に取り込むと共に、CPU41と連動して、CPU41などからバス45に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部46に出力する。
そして、CPU41は、ROM42内の制御プログラムに従って、P−CON44を介して各種検出信号、各種指令、各種データなどを入力し、RAM43内の各種データなどを処理した後、P−CON44を介して駆動部46などに各種の制御信号を出力することにより、吐出装置10全体を制御している。例えば、CPU41は、吐出ヘッド50、ワーク移動機構20及びヘッド移動機構30を制御して、ヘッドユニット9とワークWとを対向配置させる。そして、ヘッドユニット9とワークWとの相対移動に同期して、ヘッドユニット9に搭載された各吐出ヘッド50の複数のノズル52からワークWに機能液を液滴として吐出するようにヘッドドライバー48に制御信号を送出する。本実施形態では、Y軸方向へのワークWの移動に同期して機能液を吐出することを主走査と呼び、主走査に対してX軸方向にヘッドユニット9を移動させることを副走査と呼ぶ。本実施形態の吐出装置10は、主走査と副走査とを組み合わせて複数回繰り返すことにより機能液をワークWに吐出することができる。主走査は、吐出ヘッド50に対して一方向へのワークWの移動に限らず、ワークWを往復させて行うこともできる。
エンコーダー12は、ヘッドドライバー48に電気的に接続され、主走査に伴ってエンコーダパルスを生成する。主走査では、所定の移動速度で移動台22を移動させるので、エンコーダパルスが周期的に発生する。
例えば、主走査における移動台22の移動速度を200mm/sec、吐出ヘッド50を駆動する駆動周波数(言い換えれば、連続して液滴を吐出する場合の吐出タイミング)を20kHzとすると、主走査方向における液滴の吐出分解能は、移動速度を駆動周波数で除することにより得られるので、10μmとなる。すなわち、10μmのピッチで液滴をワークW上に配置することが可能である。移動台22の移動速度を20mm/secとすれば、1μmのピッチで液滴をワークW上に配置することが可能である。実際の液滴の吐出タイミングは、周期的に発生するエンコーダパルスをカウントして生成されるラッチ信号に基づいている。このような主走査におけるワークW上の液滴の最小配置ピッチを吐出分解能と呼ぶ。
上位コンピューター11は、制御プログラムや制御データなどの制御情報を吐出装置10に送出する。また、ワークW上の機能層形成領域(膜形成領域)ごとに所定量の機能液を液滴として配置する吐出制御データとしての配置情報を生成する配置情報生成部の機能を有している。配置情報は、機能層形成領域(膜形成領域)における液滴の吐出位置(言い換えれば、ワークWとノズル52との相対位置)、液滴の配置数(言い換えれば、ノズル52ごとの吐出数)、主走査における複数のノズル52のON/OFFすなわちノズル52の選択/非選択、吐出タイミングなどの情報を、例えば、ビットマップとして表したものである。上位コンピューター11は、上記配置情報を生成するだけでなく、RAM43に一旦格納された上記配置情報を修正することも可能である。
次に、吐出ヘッドの吐出制御方法について、図6及び図7を参照して説明する。図6は吐出ヘッドの電気的な制御を示すブロック図である。
図6に示すように、ヘッドドライバー48は、液滴の吐出量を制御する異なる複数の駆動信号COMを、それぞれ独立して生成するD/Aコンバータ(以降、DACとする)71A〜71Dと、DAC71A〜71Dが生成する駆動信号COMのスルーレートデータ(以下、波形データ(WD1〜WD4)とする)の格納メモリーを内部に有する波形データ選択回路72と、P−CON44を介して上位コンピューター11から送信される吐出制御データを格納するためのデータメモリー73と、を備えている。COM1〜COM4の各COMラインに、DAC71A〜DAC71Dで生成された駆動信号COMがそれぞれ出力される。
各吐出ヘッド50には、ノズル52ごとに設けられた駆動手段(アクチュエーター)である圧電素子59への駆動信号COMの印加をON/OFFするスイッチング回路74と、各COMラインのいずれか1つを選択して、各圧電素子59に接続したスイッチング回路74に駆動信号COMを送出する駆動信号選択回路75と、を備えている。
ノズル列52a(図2(b)参照)において、圧電素子59の一方の電極59bは、DAC71A〜71Dのグランドライン(GND)に接続されている。また、圧電素子59の他方の電極59a(以下、セグメント電極59aとする)は、スイッチング回路74、駆動信号選択回路75を介して、各COMラインに電気的に接続されている。また、スイッチング回路74、駆動信号選択回路75、波形データ選択回路72には、クロック信号(CLK)や各吐出タイミングに対応したラッチ信号(LAT)が入力されるようになっている。このような駆動回路の構成は、ノズル列52b(図2(b)参照)においても同様である。
データメモリー73には、各吐出ヘッド50の走査位置に応じて周期的に設定される吐出タイミングごとに、次のデータが格納されている。すなわち、各圧電素子59への駆動信号COMの印加(ON/OFF)を規定する吐出データDAと、各圧電素子59に対応したCOMライン(COM1〜COM4)の選択を規定する駆動信号選択データDBと、DAC71A〜71Dに入力される波形データ(WD1〜WD4)の種別を規定する波形番号データWNである。本実施形態においては、吐出データDAは、1ノズルあたり1ビット(0,1)で、駆動信号選択データDBは、1ノズルあたり2ビット(0,1,2,3)で、波形番号データWNは、1DACあたり7ビット(0〜127)で構成されている。なお、データ構造は適宜変更可能である。
図7は駆動信号及び制御信号のタイミング図である。上述の構成において、各吐出タイミングに係る駆動制御は次のように行われる。図7に示すように、タイミングt1〜t2の期間において、吐出データDA、駆動信号選択データDB、波形番号データWNが、それぞれシリアル信号化されて、スイッチング回路74、駆動信号選択回路75、波形データ選択回路72に送信される。そして、タイミングt2において各データがラッチされることで、吐出(ON)に係る各圧電素子59のセグメント電極59aが、駆動信号選択データDBで指定されたCOMライン(COM1〜COM4のいずれか)に接続された状態となる。例えば、圧電素子59のセグメント電極59aは、駆動信号選択データDBが「0」のときには、COM1に接続される。同様に駆動信号選択データDBが「1」のときにはCOM2に、駆動信号選択データDBが「2」のときはCOM3に、駆動信号選択データDBが「3」のときはCOM4に接続される。また、DAC71A〜71Dの生成に係る駆動信号の波形データ(WD1〜WD4)がこの選択に連動して設定される。
タイミングt3〜t4の期間においては、タイミングt2で設定された波形データに従い、それぞれ電位上昇、電位保持、電位降下の一連のステップで駆動信号COMが生成される。そして、COM1〜COM4とそれぞれ接続された状態にある圧電素子59に、生成された駆動信号COMが供給され、ノズル52に連通するキャビティの体積(圧力)制御が行われる。
駆動信号COMにおける電位上昇、電位保持、電位降下に係る時間成分、電圧成分は、その供給によって吐出される機能液の吐出量に密接に依存している。とりわけ、圧電方式の吐出ヘッド50では、電圧成分の変化に対して吐出量が良好な線形性を示すため、タイミングt3〜t4における電圧成分の変化(電位差)を駆動電圧Vh(Vh1〜Vh4)として規定し、これを吐出量制御の条件として利用することができる。すなわち、駆動電圧Vhは、液滴の吐出量を制御する駆動信号の条件の一つである。なお、生成する駆動信号COMは、本実施形態で示すような単純な台形波に限られるものではなく、例えば、矩形波など公知の様々な形状の波形を適宜採用することも可能である。また、異なる駆動方式(例えばサーマル方式)の実施形態の場合、駆動信号COMのパルス幅(時間成分)を吐出量制御の条件として利用することも可能である。
本実施形態では、駆動電圧Vhを段階的に違えた複数種の波形データを用意し、DAC71A〜71Dにそれぞれ独立した波形データ(WD1〜WD4)を入力することにより、各COMラインにそれぞれ異なる駆動電圧Vh1〜Vh4の駆動信号COMを出力することが可能である。用意できる波形データの種類は、波形番号データWNの情報量(7ビット)に相当する128種類であり、例えばこれを0.1V刻みの駆動電圧Vhに対応させている。言い換えれば、12.8Vの電位差の範囲でVh1〜Vh4の各駆動波形を0.1V刻みで設定することができる。
かくして、本実施形態の吐出装置10は、ノズル52ごとの吐出特性を考慮して、各圧電素子59(ノズル52)と各COMラインとの対応関係を規定する駆動信号選択データDBと、各COMラインと駆動信号COMの種類(駆動電圧Vh)との対応関係を規定する波形番号データWNとを適切に設定することにより、液滴の吐出量を調整して機能液を吐出することが可能である。言い換えれば、駆動信号選択データDBと波形番号データWNとの関係で定まる各ノズル52の駆動信号COMの設定を適切に行うことが、吐出量を管理するための重要事項であると言える。
上記吐出装置10において、吐出ヘッド50の吐出制御方法は、液滴の吐出ごと、言い換えれば吐出タイミングごとに駆動信号選択データDBと波形番号データWNとを更新可能となっている。また、吐出データDAに対応させて駆動信号COMを精細に設定することも可能である。したがって、ノズル52ごとに吐出される液滴の吐出量を、吐出タイミングごとに少なくとも4段階に渡って変化させることができるので、一定の駆動信号COMを各圧電素子59に印加する場合に比べて、ノズル列52a,52bの吐出特性に起因する液滴の吐出量のばらつきを、ノズル52ごと、且つ液滴の吐出ごとに調整することが可能である。ゆえに、ノズル列52a,52bの吐出特性に起因する吐出ムラを低減して機能液を吐出することが可能である。
一方で、ノズル52ごとに吐出される液滴の吐出量を、液滴の吐出ごとに少なくとも4段階に渡って変化させることができるとしても、複数のノズル52のすべてにおいて上記吐出量を一定の値、例えば、基準吐出量(あるいはねらいの吐出量)にすることは難しい。それは、例えばノズル52ごとに連通するキャビティの構造が必ずしも同じではないといった機械的な要因や、ノズル52ごとの圧電素子59の電気特性が必ずしも同じでないといった電気的な要因などがある。また、液滴の吐出ごとに4段階の駆動信号COMの割り当てを変えることは吐出制御に係わるデータ量が増えてしまい、吐出装置10の動作速度に影響し生産性が低下するおそれがある。
そこで、本実施形態では、ノズル52から機能液を複数の液滴としてメディア160に着弾させ、その着弾痕の着弾面積を計測することにより、ノズル52ごとに吐出される機能液(液滴)の吐出量ばらつきを求め、これによって4段階の駆動信号COMの駆動電圧Vhの設定を行い、設定された4段階の駆動信号COMの中から適正と考えられる1つの駆動信号COMを当該ノズル52(圧電素子59)に割り当てている。これによって、複数のノズル52から吐出される機能液(液滴)の吐出量ばらつきをある程度の範囲内に収めようとしている。それゆえに、メディア160における機能液の着弾面積の計測精度が悪いと4段階の駆動信号COMの駆動電圧Vhの設定を適正に行うことができなくなるという課題があった。
特に、機能液が不透明である場合に比べて、機能液がほぼ透明な場合には、着弾面積の計測精度を確保することが難しいという課題があった。
<機能液の吐出量ばらつきの計測方法>
以下、ほぼ透明な機能液の着弾面積の計測を精度よく行うことが可能な本実施形態の機能液の吐出量ばらつきの計測方法について図8〜図11を参照して説明する。図8(a)〜(c)は機能液の着弾面積の計測方法を示す概略断面図、図9(a)〜(c)は計測用吐出工程における液滴の着弾のさせ方を示す概略図、図10は比較例の液滴の着弾における着弾痕を示す写真、図11は実施例の液滴の着弾における着弾痕を示す写真である。
本実施形態の機能液の吐出量ばらつきの計測方法は、図8(a)に示すように、吐出ヘッド50の複数のノズル52からメディア160に対して、複数のノズル52ごとに所定量の機能液を複数の液滴Dとして吐出する計測用吐出工程と、図8(c)に示すように、複数のノズル52ごとにメディア160に着弾した機能液の着弾面積を計測する計測工程と、を備えている。メディア160は、透明なベースフィルム161と、ベースフィルム161の表面に形成され、機能液を受けて収容する受容層162とを有している。図8(b)に示すように、ノズル52から吐出され受容層162に着弾した液滴Dは、受容層162に浸透して収容され着弾痕165となる。計測工程では、照明部61によりメディア160を背面側から照明し、着弾痕165を撮像部62によって撮像する。着弾痕165の着弾面積と吐出された機能液の吐出量との間には相関関係があることが分かっているので、撮像された画像から着弾痕165の着弾面積のばらつきを求めることにより、ノズル52ごとに吐出される機能液の吐出量ばらつきを推し量ることができる。
本実施形態の機能液は、後述する有機エレクトロルミネッセンス(EL;Electro Luminescence)装置の機能層を液相プロセス(インクジェット法)で形成する際に用いられるものである。機能液は機能層形成材料と溶媒とを含んでおり、ほぼ透明である。溶媒は必ずしも1種ではなく、吐出された機能液が容易に乾燥しないように、沸点がおよそ200℃以上である溶媒を選択することが望ましい。溶媒としては、例えば脂肪族溶媒であるエチレングリコール(沸点197.3℃)や、芳香族溶媒であるシクロヘキシルベンゼン(沸点240℃)、1,4−ジメチルナフタレン(沸点247℃)などを挙げることができる。
メディア160は、ピクトリコ社製のグラフィックアーツ透明フィルムを用いている。ベースフィルム161は厚みがおよそ145μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが用いられている。受容層162の詳しい構成は開示されていないが、塗布される機能液に対応した厚みの受容層162を選択可能である。本実施形態では、受容層162の厚みが15μmと35μmの2種を用意した。
本実施形態の計測用吐出工程は、図8(a)に示すように、吐出ヘッド50とメディア160とを対向させ、吐出ヘッド50の複数のノズル52から機能液を複数の液滴Dとして吐出している。また、吐出ヘッド50とメディア160とを主走査方向に相対移動させる主走査の間に、複数の液滴Dを所定の吐出タイミングで繰り返して吐出させている。つまり、メディア160において着弾痕165は、主走査方向に複数表れると共に、吐出させたノズル52の数だけ副走査方向に複数表れる。
着弾面積の計測工程では、計測用吐出工程で生じた複数の着弾痕165の着弾面積をノズル52ごとに計測する。そして、複数の着弾痕165の着弾面積の例えば平均値を算出して、当該平均値から当該ノズル52の吐出量とそのばらつきとを推し量る。このような着弾面積の計測を複数のノズル52のそれぞれにおいて実施する。1つのノズル52あたりに計測する着弾痕165の数は例えば40個である。以降、比較例を挙げて詳しく説明する。
(比較例)
図10は比較例の計測用吐出工程によって生じた機能液の着弾痕を示す図である。詳しくは、撮像部62によって撮像され、画像処理部63によって画像処理された着弾痕165の画像である。ほぼ透明な機能液が着弾して浸透した受容層162の部分を透過する光は他の部分に比べて散乱する。したがって、機能液が着弾して浸透した受容層162の部分が他の部分よりも明るくなるので、画像処理部63により明るさの差を強調する処理が行われている。なお、機能液が着弾して浸透した受容層162の部分と他の部分との明るさの差が強調されるように照明方法を工夫して撮像してもよい。
比較例は、計測用吐出工程において、メディア160の同じ位置に複数の液滴Dを吐出するものである。また、複数回の主走査において複数のノズル52から複数の液滴Dを吐出している。このとき、複数の液滴Dの総量つまり前述した所定量が受容層162の単位面積当たりの受容量を越えてしまうと、図10に示すように、着弾痕165はメディア160において滲んでしまう。着弾痕165はほぼ円形であるものの、外縁が滲んでいるので、精度よく着弾面積を計測するのは困難である。言い換えれば、着弾面積の計測精度は低い。なお、図10に示した比較例では、シクロヘキシルベンゼンを溶媒とする機能液を用い、1回の主走査で1滴の液滴Dを受容層162の厚みが35μmのメディア160に吐出し、合計10回の主走査を行って複数のノズル52ごとに10滴ずつメディア160に着弾させている。1滴の液滴Dの吐出量はおよそ10plである。
図9(a)〜(c)は本実施形態の計測用吐出工程における液滴の吐出の仕方を示す概略図である。
本実施形態の機能液の吐出量ばらつきの計測方法における計測用吐出工程では、主走査において、複数の液滴Dが同じ位置に着弾せず、主走査方向に互いにずれた位置に着弾するように吐出する。例えば、図9(a)に示すように、複数回(2回)の主走査に分けて複数の液滴Dを吐出する。1回目の主走査a−1では、先に液滴D1を吐出し、次に液滴D2を主走査方向にΔLだけずれた位置に着弾するように吐出する。2回目の主走査a−2では、先に液滴D3を吐出し、次に液滴D4を同じく主走査方向にΔLだけずれた位置に着弾するように吐出する。1回目の主走査a−1の液滴D2の着弾位置と2回目の主走査a−2の液滴D3の着弾位置とは主走査方向において同じくΔLずれている。2回の主走査により、メディア160には4滴の液滴D1,D2,D3,D4がそれぞれ主走査方向にΔLだけずれて着弾して受容層162に浸透して着弾痕165が形成される。ΔLは1μm〜5μmである。ΔLを余に大きくしすぎると、着弾痕165が歪んで円形になり難く計測精度に影響を及ぼすので、着弾痕165が滲み難く且つ歪み難い範囲で設定することが好ましい。
4滴の液滴D1,D2,D3,D4を1回の主走査でΔLずつ主走査方向にずらして吐出してもよいが、2回の主走査に分けて吐出することによって、受容層162における機能液の浸透に時間差が生じ、着弾痕165が滲み難くなる。
4滴の液滴D1,D2,D3,D4を2回の主走査に分けて吐出する方法は、主走査における同一方向で吐出することに限定されない。例えば、図9(b)に示すように、1回目の主走査b−1において液滴D1と液滴D2とをΔLずらして着弾させた後に、1回目と反対方向の2回目の主走査b−2において液滴D3、液滴D4の順にΔLずらして吐出してもよい。つまり、往復の主走査において複数の液滴Dを主走査方向に着弾位置をずらして吐出してもよい。複数の液滴Dを往復の主走査で吐出するので、一定方向の主走査で吐出する場合に比べて、複数の液滴Dを吐出する吐出時間を短くできる。
さらには、複数の液滴Dがメディア160に着弾するのは主走査方向の直線上であることに限定されない。例えば、図9(c)に示すように、複数の液滴Dを主走査と副走査とを組み合わせて着弾させてもよい。具体的には、1回目の主走査c−1で液滴D1と液滴D2とを主走査方向にΔLずらして順に吐出し、吐出ヘッド50を副走査して1回目とは反対方向の2回目の主走査c−2で液滴D3を吐出する。再び、吐出ヘッド50を副走査して3回目の主走査c−3で液滴D4を吐出する。液滴D3と液滴D4の着弾位置が副走査方向(X軸方向)においてΔLずれるように副走査して吐出する。これによれば、4滴の液滴D1,D2,D3,D4は、液滴D1を基準とすると主走査方向と副走査方向とにそれぞれΔLの範囲内にずれた状態で着弾するので、機能液の着弾痕165が図9(a)及び(b)に示した計測用吐出工程よりも歪み難くなる。
メディア160における液滴Dの着弾位置のずらし量であるΔLの大きさを制御する方法としては、ノズル52の駆動手段(アクチュエーター)としての圧電素子59に駆動信号COMを印加する吐出タイミングを制御する方法があるが、前述した吐出分解能を単位として制御することが好ましい。着弾面積計測機構60において、移動台65の移動速度と、吐出ヘッド50の駆動周波数を制御することによって、前述したように1μm単位の吐出分解能を実現できるので、液滴Dの着弾位置をわずかに(1μm単位で)且つ精度よくずらすことができる。
なお、図9(a)〜(c)では、複数(4滴)の液滴D1,D2,D3,D4を互いにわずかにずらしてメディア160に着弾させたが、受容層162の受容量を越えない範囲であれば、4滴に限定されるものではなく、それ以上の吐出数で液滴Dを吐出してもよい。
また、複数の液滴Dのすべてが互いにずれて着弾することに限定されず、着弾痕165が滲まない範囲であれば、複数の液滴Dのうちいくつかの液滴Dが同じ位置に着弾してもよい。また、先に着弾した液滴Dに対して少なくとも重なるように後に着弾させる液滴Dを吐出すればよい。受容層162における機能液の浸透の仕方は、機能液の種類によっても変化するので、少なくとも複数の液滴Dが受容層162に着弾したときに互いに重なり合う範囲でずらせばよい。
さらには、着弾痕165の着弾面積の計測は、所定量の機能液に相当する複数(4滴)の液滴D1,D2,D3,D4がすべてメディア160に着弾してから行うことに限定されない。例えば、主走査ごとに着弾痕165の着弾面積を計測してもよい。このようにすれば、実際の機能液の吐出制御に近づけた状態での機能液の吐出量ばらつきを把握することができる。
図11は本実施形態の計測用吐出工程によって生じた機能液の着弾痕を示す図である。
上記のような本実施形態の計測用吐出工程によれば、図11に示すように、メディア160に複数の液滴Dが着弾してできる着弾痕165が図10に示した比較例よりも滲み難くなる。それゆえに、着弾痕165の着弾面積の計測精度が向上する。なお、図11は、比較例と同様に受容層162の厚みが35μmのメディア160に1滴が10plの液滴Dを複数のノズル52からそれぞれ10滴ずつ、互いに着弾位置を1μmずらして吐出したものである。機能液の溶媒はシクロヘキシルベンゼンである。
次に、メディア160における受容層162の厚みと機能液の受容量との関係について、図12を参照して、説明する。
図12(a)は厚みが35μmの受容層の機能液の受容量を示す表、図12(b)は厚みが15μmの受容層の機能液の受容量を示す表である。図12(a)及び(b)の表中のPassは主走査を示し、数字は主走査の回数を示すものである。また、shotは1回の主走査で吐出する液滴Dの吐出数を示し、( )内の数値は最適な吐出数を示すものである。また、ドットとは着弾痕165を示すものである。
図12(a)に示すように、メディア160の受容層162の厚みが35μmの場合、1回のPassで1滴の液滴Dを吐出して、受容層162の同じ位置に着弾させてゆくと、8回目のPassでドットが認識可能となったもののドットのコントラストはまだ不足していた。9回目のPassも8回目と同様であり、10回目のPass以降では、ドットが滲んでしまった。
次に、1回のPassで2滴の液滴Dを受容層162において着弾位置が互いにわずかにずれるように吐出してゆくと、4回目のPassでドットが認識可能となり、5回目のPassでドットが滲みがなく明瞭となった。6回目及び7回目のPassではドットが滲んでしまい、8回目のPass以降では、隣合うドットが繋がってしまった。この場合、厚みが35μmの受容層162における機能液の受容量は10shot分の液滴Dに相当する量(10滴×10pl=100pl)と考えられる。
同様にして、1回のPassで3滴の液滴Dを受容層162において着弾位置が互いにわずかにずれるように吐出する場合は4回目のPassでドットが明瞭となった。1回のPassで4滴の液滴Dを受容層162において着弾位置が互いにわずかにずれるように吐出する場合は3回目のPassでドットが明瞭となった。つまり、これらの計測用吐出における受容量は12shot分の液滴Dに相当する量(12滴×10pl=120pl)と考えられる。すなわち、液滴Dを着弾させる範囲を増やした分、受容量も増加したと考えられる。
図12(b)に示すように、メディア160の受容層162の厚みが15μmの場合、1回のPassで1滴の液滴Dを吐出して、受容層162の同じ位置に着弾させてゆくと、4回目のPassでドットが認識可能となったもののドットのコントラストはまだ不足していた。5回目のPassも4回目と同様であり、6回目のPass以降では、ドットが滲んでしまった。
次に、1回のPassで2滴の液滴Dを受容層162において着弾位置が互いにわずかにずれるように吐出してゆくと、2回目のPassでドットが認識可能となり、3回目のPassでドットが滲みがなく明瞭となった。4回目のPassではドットが滲んでしまい、5回目のPass以降では、隣合うドットが繋がってしまった。この場合、厚みが15μmの受容層162における機能液の受容量は6shot分の液滴Dに相当する量(6滴×10pl=60pl)と考えられる。
同様にして、1回のPassで3滴の液滴Dを受容層162において着弾位置が互いにわずかにずれるように吐出する場合は、2回目のPassでドットが明瞭となったので、1回のPassで2滴の液滴Dを吐出する場合と同じで、受容量は6shot分の液滴Dに相当する量(6滴×10pl=60pl)と考えられる。
同様にして、1回のPassで4滴の液滴Dを受容層162において着弾位置が互いにわずかにずれるように吐出する場合は、1回のPassでドットが明瞭になったので、受容量は4shot分の液滴Dに相当する量(4滴×10pl=40pl)と考えられる。つまり、受容層162の厚みが15μmの場合、1回のPassで吐出可能な液滴Dの吐出数は4滴までが限界と考えられる。すなわち、受容層162の受容量(厚み)によって、複数の液滴Dを複数回の主走査(Pass)に分けて吐出しても、1回の主走査(Pass)で吐出可能な液滴の吐出数に限界がある。
次に、メディア160における液滴Dのずらし量ΔLと着弾面積の計測精度との関係について、図13を参照して説明する。図13は液滴のずらし量ΔLと着弾面積の計測精度との関係を示す表である。本実施形態における計測精度とは、計測用吐出工程において、1つのノズル52から所定量の機能液を複数の液滴Dとして吐出して、主走査方向にわずかにずらして着弾させてできる着弾痕165をメディア160に40個形成する。この40個の着弾痕165の着弾面積を計測して、その平均値と標準偏差(σ)とを算出する。標準偏差(σ)は平均値を「1」としたときの平均値に対する割合(%)を示す値である。なお、受容層162の厚みが35μmのメディア160を前提とする。
図13に示すように、ずらし量ΔLが0μm、すなわち、メディア160において同じ位置に液滴Dを着弾させた場合には、図12に示したように、10滴の液滴Dを吐出したときにドットが認識できるが滲んでいるので、標準偏差(σ)の値は0.74%となった。
これに対して、本実施形態の機能液の吐出量ばらつきの計測方法を適用して、例えば、1回のPassで1滴吐出し、ΔLを1μmとしたときには、標準偏差(σ)が0.35%となった。つまり、同じ位置に液滴Dを着弾させる場合に比べて、標準偏差(σ)の値が半分以下となった。すなわち、着弾面積の計測精度が向上した。
ずらし量ΔLを1μmから3μmあるいは5μmに増やしても同様な結果が得られた。さらには、1回のPassにおける液滴Dの吐出数を1滴から2滴あるいは3滴に増やすほど、標準偏差(σ)が小さくなった。つまり、着弾面積の計測精度がさらに向上した。ちなみに、ΔLを5μmとし、1回のPassにおける吐出数を3滴とした場合には、標準偏差(σ)が0.22%となり、同じ位置に液滴Dを着弾させる場合に比べて、標準偏差(σ)の値が1/3以下となった。
次に、複数のノズル52における機能液の吐出量ばらつきの補正方法について、図14及び図15を参照して説明する。図14(a)は比較例の計測用吐出工程を適用したときのノズルごとの着弾面積のばらつきを示すグラフ、図14(b)は比較例の着弾面積の計測結果を基にして駆動信号COMを補正した後の、ノズルごとの着弾面積のばらつきを示すグラフ、図14(c)は比較例における補正後のノズル52の駆動信号COM別の着弾面積のばらつきを示すグラフである。図15(a)は実施例の計測用吐出工程を適用したときのノズルごとの着弾面積のばらつきを示すグラフ、図15(b)は実施例の着弾面積の計測結果を基にして駆動信号COMを補正した後の、ノズルごとの着弾面積のばらつきを示すグラフ、図15(c)は実施例における補正後のノズル52の駆動信号COM別の着弾面積のばらつきを示すグラフである。なお、ノズル52ごとの着弾面積は、吐出ヘッド50における180個のノズル52のうちノズル列の両端に位置する10個のノズル52を除いた160個のノズル52を対象として求めている。つまり、ノズル列の両端10個を除いた160個のノズル52を有効ノズルとして扱っている。言い換えれば、ノズル列ごとに有効ノズル数を決めて、ノズル52ごとの着弾面積を計測している。
比較例の計測用吐出工程では、受容層162の厚みが35μmのメディア160を用い、メディア160の同じ位置に1回の主走査(Pass)で1滴ずつ、10回の主走査(Pass)を行って、複数のノズル52ごとに10滴の液滴Dを吐出して受容層162に着弾させた。
これに対して、実施例の計測用吐出工程では、受容層162の厚みが35μmのメディア160を用い、受容層162における着弾位置をわずかにずらして1回の主走査(Pass)で2滴ずつ、5回の主走査(Pass)を行って、複数のノズル52ごとに10滴の液滴Dを吐出して受容層162に着弾させた。ずらし量ΔLは1μmである。
図14(a)と図15(a)とを比較すると、比較例のほうが160個の有効ノズルにおける着弾面積のばらつきが大きい。これは、着弾面積の計測ばらつきを反映しているものと考えられる。なお、計測用吐出を行う前に、各ノズル52には予め4つの駆動信号COM(COM1〜COM4)のいずれかが設定されている。これは、前述した重量計測機構によって得られたノズル52ごとの機能液の吐出量の計測に基づいて割り当てられたものである。
次に、比較例と実施例のそれぞれにおいて、ノズル52ごとに得られた着弾面積のばらつき、すなわち、機能液の吐出量ばらつきを1/4にすべく、4つの駆動信号COMの駆動電圧Vh(Vh1〜Vh4)を補正して、各ノズル52に割り付ける。そして、再びノズル52ごとの着弾面積を比較例と実施例のそれぞれの計測方法で計測した結果が図14(b)と図15(b)に示されている。駆動信号COMを補正する前の図14(a)、図15(a)と比べて、いずれも着弾面積のばらつきが小さくなっている。しかしながら、補正後の駆動信号COM別の着弾面積のばらつきを示す図14(c)と図15(c)とを比較すると、駆動信号COM別の着弾面積のばらつきの中央値は、実施例のほうが着弾面積の平均値を数値として置き換えた「1.000」に近づいていることが分かる。つまり、ノズル52ごとの機能液の吐出量ばらつき(着弾面積ばらつき)を適正に補正することができている。
上記第1実施形態の機能液の吐出量ばらつきの計測方法によれば、以下の効果が得られる。
(1)計測用吐出工程において、メディア160の受容層162に対して着弾位置がたがいにわずかにずれるように、複数のノズル52からそれぞれ複数の液滴Dが吐出される。したがって、受容層162における受容量を越えて複数の液滴Dが着弾しないので、着弾痕165の滲みが抑えられ、明瞭な着弾痕165が得られる。ゆえに、着弾痕165を撮像すれば比較例よりも高い精度でノズル52ごとの着弾面積を求めることができる。つまり、ノズル52ごとに吐出される機能液の吐出量ばらつきを精度よく推し量ることができる。
(2)計測用吐出工程において、所定量の機能液をノズル52ごとに複数回の主走査に分け吐出するので、1回の主走査で所定量の機能液を液滴Dとして吐出する場合に比べて、受容層162における機能液の浸透時間が長くなり、明瞭な着弾痕165を得ることができる。すなわち、着弾面積の計測精度が向上する。
(3)計測用吐出工程において、所定量の機能液を複数回の主走査と副走査とを組み合わせ、且つ、複数回の主走査のうち少なくとも1回は他の主走査に対して液滴Dの吐出数を変えることは、実際に機能液を吐出して機能層を形成する吐出条件に近づけて計測用吐出を行うことができるので、実際の機能液の吐出を反映した、ノズル52ごとの機能液の吐出量ばらつきを求めることができる。
(4)ノズル52ごとの機能液の吐出量ばらつきを重量計測機構を用いて計測する方法は、1滴当たりの液滴Dの重量が非常に小さいので、電子天秤などで重量を測るとしても多数(例えば1000個)の液滴Dを吐出してその重量を計測し、計測された重量を吐出数で除することにより求めることになる。これに対して、着弾面積計測機構60を用いる方法は、多量の機能液を液滴として吐出する必要が無いので、効率的且つ精度よく機能液の吐出量ばらつきをノズル52ごとに計測することができる。
(第2実施形態)
<有機エレクトロルミネッセンス装置>
次に、有機エレクトロルミネッセンス(EL)装置について図16及び図17を参照して説明する。図16は有機EL装置を示す概略正面図、図17は有機EL装置の要部概略断面図である。
図16に示すように、本実施形態の有機EL装置100は、R(赤)、G(緑)、B(青)、3色の発光画素107を備えた素子基板101と、素子基板101に所定の間隔を置いて対向配置された封止基板102とを備えている。封止基板102は、複数の発光画素107が設けられた発光領域106を封着するように、高い気密性を有する封着剤を用いて素子基板101に貼り合わされている。
発光画素107は、後述する発光素子としての有機EL素子112(図17参照)を備えるものであって、同色の発光が得られる発光画素107が、図面上の縦方向に配列した所謂ストライプ方式となっている。なお、実際には、発光画素107は微細なものであり、図示の都合上拡大して現している。
素子基板101は、封止基板102よりも一回り大きく、額縁状に張り出した部分には、発光画素107を駆動する2つの走査線駆動回路部103と1つのデータ線駆動回路部104が設けられている。走査線駆動回路部103、データ線駆動回路部104は、例えば、電気回路が集積されたICとして素子基板101に実装してもよいし、走査線駆動回路部103及びデータ線駆動回路部104を素子基板101の表面に直接形成してもよい。
素子基板101の端子部101aには、これらの走査線駆動回路部103やデータ線駆動回路部104と外部駆動回路とを接続するための中継基板105が実装されている。中継基板105は、例えば、フレキシブル回路基板などを用いることができる。
図17に示すように、有機EL装置100において、有機EL素子112は、画素電極としての陽極131と、陽極131を区画する隔壁133と、陽極131上に形成された有機膜からなる発光層を含む機能層132とを有している。また、機能層132を介して陽極131と対向するように形成された共通電極としての陰極134を有している。
隔壁133は、フェノール樹脂又はポリイミド樹脂などの絶縁性を有する感光性樹脂からなり、発光画素107を構成する陽極131の周囲を一部覆って、複数の陽極131をそれぞれ区画するように設けられている。
陽極131は、素子基板101上に形成されたTFT素子108の3端子のうちの1つに接続しており、例えば、透明電極材料であるITO(Indium Tin Oxide)を厚さ100nm程度に成膜した電極である。
陰極134は、例えばAlやAgなどの光反射性を有する金属や、該金属と他の金属(例えばMg)との合金などにより形成されている。
本実施形態の有機EL装置100は、所謂ボトムエミッション型の構造となっており、陽極131と陰極134との間に駆動電流を流して機能層132で発光した光を陰極134で反射させて素子基板101側から取り出す。したがって、素子基板101はガラスなどの透明基板を用いる。また、封止基板102は、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナなどのセラミックス、ステンレススチールなどの金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
素子基板101には、有機EL素子112を駆動する回路部111が設けられている。すなわち、素子基板101の表面にはSiO2を主体とする下地保護層121が下地として形成され、その上には例えばポリシリコンなどからなる半導体層122が形成されている。この半導体層122の表面には、SiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁膜123が形成されている。
また、半導体層122のうち、ゲート絶縁膜123を挟んでゲート電極126と重なる領域がチャネル領域122aとされている。なお、このゲート電極126は、図示しない走査線の一部である。一方、半導体層122を覆い、ゲート電極126を形成したゲート絶縁膜123の表面には、SiO2を主体とする第1層間絶縁層127が形成されている。
また、半導体層122のうち、チャネル領域122aのソース側には、低濃度ソース領域及び高濃度ソース領域122cが設けられる一方、チャネル領域122aのドレイン側には低濃度ドレイン領域及び高濃度ドレイン領域122bが設けられて、所謂LDD(Light Doped Drain)構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域122cは、ゲート絶縁膜123と第1層間絶縁層127とにわたって開孔するコンタクトホール125aを介して、ソース電極125に接続されている。このソース電極125は、電源線(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域122bは、ゲート絶縁膜123と第1層間絶縁層127とを貫通するコンタクトホール124aを介して、ソース電極125と同一層からなるドレイン電極124に接続されている。
ソース電極125及びドレイン電極124が形成された第1層間絶縁層127の上層には、平坦化層128が形成されている。この平坦化層128は、アクリル系やポリイミド系などの、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、TFT素子108やソース電極125、ドレイン電極124などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
そして、陽極131が、この平坦化層128の表面上に形成されると共に、該平坦化層128に設けられたコンタクトホール128aを介してドレイン電極124に接続されている。すなわち、陽極131は、ドレイン電極124を介して、半導体層122の高濃度ドレイン領域122bに接続されている。陰極134は、GNDに接続されている。したがって、スイッチング素子としてのTFT素子108により、上記電源線から陽極131に供給され陰極134との間で流れる駆動電流を制御する。これにより、回路部111は、所望の有機EL素子112を発光させカラー表示を可能としている。
なお、有機EL素子112を駆動する回路部111の構成は、これに限定されるものではない。
機能層132は、有機層である正孔注入層、中間層、発光層を含む複数の薄膜層からなり、陽極131側からこの順で積層されている。本実施形態において、これらの有機層は液相プロセス(インクジェット法)を用いて成膜されている。
正孔注入層の材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリチオフェン誘導体にドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸(PSS)を加えた混合物(PEDOT/PSS)や、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体を用いてもよい。
中間層は、正孔注入層と発光層との間に設けられ、発光層に対する正孔の輸送性(注入性)を向上させると共に、発光層から正孔注入層に電子が漏れることを抑制するために設けられている。すなわち、発光層における正孔と電子との結合による発光の効率を改善するものである。中間層の材料としては、例えば、正孔輸送性が良好なトリフェニルアミン系ポリマーを含んだものが挙げられる。
発光層の材料としては、例えば、赤色、緑色、青色の発光が得られるポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、PEDOTなどのポリチオフェニレン誘導体、ポリメチルフェニレンシラン(PMPS)などを用いることができる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクドリンなど低分子材料をドープしてもよい。
このような有機EL素子112を有する素子基板101は、熱硬化型エポキシ樹脂などを封着部材として用いた封着層135を介して封止基板102と隙間なく封止されている。
本実施形態の有機EL装置100は、上記第1実施形態で説明した吐出装置10を用いて製造されており、少なくとも発光層がほぼ一定の膜厚と安定した膜形状(断面形状)を有しているため、異なる発光色が得られる機能層132R,132G,132Bにおいてそれぞれ所望の発光特性が得られる。
なお、本実施形態の有機EL装置100は、ボトムエミッション型に限定されず、例えば陽極131を光反射性の導電材料を用いて形成し、共通電極としての陰極134を透明な導電材料を用いて形成して、有機EL素子112の発光を陽極131で反射させて、封止基板102側から取り出すトップエミッション型の構造としてもよい。また、トップエミッション型とする場合、有機EL素子112の発光色に対応させたカラーフィルターを封止基板102側に設ける構成としてもよい。さらには、封止基板102側にカラーフィルターを有する場合、有機EL素子112から白色発光が得られる構成としてもよい。
<有機EL装置の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL装置の製造方法について図18〜図20を参照して説明する。図18は有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図19(a)〜(d)及び図20(e)〜(h)は有機EL装置の製造方法を示す概略断面図である。
本実施形態の有機EL装置100の製造方法は、上記第1実施形態の吐出装置10を用いている。すなわち、本発明の機能液の吐出量ばらつきの計測方法と、当該計測方法を適用した機能液の吐出方法を用いている。
図18に示すように、本実施形態の有機EL装置100の製造方法は、隔壁形成工程(ステップS1)と、隔壁が形成された基板に表面処理を施す表面処理工程(ステップS2)と、正孔注入層形成工程(ステップS3)と、中間層形成工程(ステップS4)と、発光層形成工程(ステップS5)と、陰極形成工程(ステップS6)と、有機EL素子112が形成された素子基板101と封止基板102とを接合する封止基板接着工程(ステップS7)とを少なくとも備えている。なお、素子基板101上に回路部111(図17参照)を形成する工程や回路部111に電気的に接続した陽極131を形成する工程は、公知の製造方法を用いればよく、本実施形態では詳細の説明は省略する。したがって、図19(a)〜(d)及び図20(e)〜(h)では、回路部111の図示を省略している。
図18のステップS1は、隔壁形成工程である。ステップS1では、図19(a)に示すように、陽極131の周囲の一部を覆って陽極131ごとを区画するように隔壁133を形成する。形成方法としては、例えば、陽極131が形成された素子基板101の表面に、感光性のフェノール樹脂又はポリイミド樹脂をおよそ1μm〜3μm程度の厚みで塗布する。塗布方法としては、転写法、スリットコート法などが挙げられる。そして、発光画素107の形状に対応したマスクを用いて露光し、現像することにより隔壁133を形成する。以降、隔壁133により区画された発光画素107の領域を機能層形成領域(膜形成領域)Aと呼ぶ。そして、ステップS2へ進む。
図18のステップS2は、表面処理工程である。ステップS2では、隔壁133が形成された素子基板101の表面に親液処理と撥液処理とを施す。まず、酸素を処理ガスとするプラズマ処理を行い、主に無機材料からなる陽極131の表面に親液処理を施す。次に、CF4などのフッ素系ガスを処理ガスとするプラズマ処理を行い、有機材料からなる隔壁133の表面にフッ素を導入して撥液処理を施す。
なお、撥液性を有する隔壁133の形成は、これに限定されず。例えば、隔壁133の頭頂部に撥液性材を転写して撥液層を形成したり、上記感光性樹脂自体に撥液性材を含ませて隔壁133を形成してもよい。また、その場合、表面処理は、隔壁133を形成したときの残渣を取り除く、例えば紫外線を照射してオゾンを発生させるUVオゾン処理を採用してもよい。そして、ステップS3へ進む。
図18のステップS3は、正孔注入層形成工程である。ステップS3では、まず、図19(b)に示すように、正孔注入層形成材料を含む機能液70を機能層形成領域Aに塗布する。機能液70は、例えば、溶媒としてジエチレングリコールと水(純水)とを含んでおり、正孔注入層形成材料としてPEDOT/PSSを重量比で0.5%程度含んだものを用いた。粘度がおよそ20mPa・s以下となるように溶媒の割合が調整されている。
機能液70を塗布する方法としては、第1実施形態において説明した機能液(インク)を吐出ヘッド50のノズル52から吐出可能な吐出装置10を用いる。吐出ヘッド50とワークWである素子基板101とを対向させ、吐出ヘッド50から機能液70を吐出する。吐出された機能液70は、液滴として親液処理された陽極131に着弾して濡れ拡がる。また、乾燥後の正孔注入層の膜厚がおよそ50nm〜70nmとなるように、機能層形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。そして乾燥工程へ進む。
乾燥工程では、素子基板101を例えばランプアニールなどの方法で加熱することにより、機能液70の溶媒成分を乾燥させて除去し、図19(c)に示すように機能層形成領域Aの陽極131上に正孔注入層132aを形成する。なお、本実施形態では、各機能層形成領域Aに同一材料からなる正孔注入層132aを形成したが、後に形成される発光層に対応して正孔注入層132aの材料を発光色ごとに変えてもよい。そしてステップS4へ進む。
図18のステップS4は、中間層形成工程である。ステップS4では、図19(d)に示すように、中間層形成材料を含む機能液80を機能層形成領域Aに塗布する。
機能液80は、例えば、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを含み、中間層形成材料として、前述したトリフェニルアミン系ポリマーを重量比で0.1%程度含んだものを用いた。粘度はおよそ6mPa・sである。
機能液80を塗布する方法としては、機能液70を塗布する場合と同様に、第1実施形態の吐出装置10を用いる。乾燥後の中間層の膜厚がおよそ10nm〜20nmとなるように、機能層形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。そして乾燥工程へ進む。
乾燥工程では、素子基板101を例えばランプアニールなどの方法で加熱することにより、機能液80の溶媒成分を乾燥させて除去し、図20(e)に示すように機能層形成領域Aの正孔注入層132a上に中間層132cを形成する。そしてステップS5へ進む。
図18のステップS5は、発光層形成工程である。ステップS5では、図20(f)に示すように、発光層形成材料を含む機能液90R,90G,90Bをそれぞれ対応する機能層形成領域Aに塗布する。
機能液90R,90G,90Bは、例えば、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを含んでおり、発光層形成材料としてPFを重量比で0.7%含んだものを用いた。粘度はおよそ14mPa・sである。
機能液90R,90G,90Bを塗布する方法は、やはり第1実施形態の吐出装置10を用い、それぞれ異なる吐出ヘッド50に充填されて吐出される。また、乾燥後の発光層の膜厚がおよそ50nm〜100nmとなるように、機能層形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。そして乾燥工程へ進む。
本実施形態における吐出された機能液90R,90G,90Bの乾燥工程は、一般的な加熱乾燥に比べて溶媒成分を比較的均一に乾燥可能な減圧乾燥法を用いている。機能層形成領域Aに満遍なく必要量の機能液90R,90G,90Bが塗布されている。したがって、図20(g)に示すように、乾燥後に形成された発光層132r,132g,132bは機能層形成領域Aごとにほぼ一定の膜厚と安定した膜形状(断面形状)を有する。これによって、発光層132r,132g,132bを含む機能層132R,132G,132Bができあがる。そして、ステップS6へ進む。
図18のステップS6は、陰極形成工程である。ステップS6では、図20(h)に示すように、隔壁133と各機能層132R,132G,132Bとを覆うように陰極134を形成する。これにより、発光画素107ごとに有機EL素子112が構成される。
陰極134の材料としては、アルミニウム(Al)や銀(Ag)とマグネシウム(Mg)の合金などが用いられる。機能層132R,132G,132Bに近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成してもよい。また、陰極134の上にSiO2、SiNなどの保護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極134の酸化を防止することができる。陰極134の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法などが挙げられる。特に機能層132R,132G,132Bの熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。そして、ステップS7へ進む。
図18のステップS7は、封止基板接着工程である。ステップS7では、有機EL素子112が形成された素子基板101に封着層135を塗布して、封止基板102と隙間なく封止する(図17参照)。さらに封止基板102の外周領域において水分や酸素などの進入を防ぐ接着層を設けて接着することが望ましい。
以上のような有機EL装置100の製造方法によれば、機能層132R,132G,132Bは、上記第1実施形態の吐出装置10を用いて液相プロセス(インクジェット法)により形成される。したがって、吐出ヘッド50のノズル52から吐出される機能液の吐出量ばらつきが精度よく計測され、計測結果に基づいて駆動波形が補正された4つの駆動信号COMの中から適切な駆動信号COMがノズル52ごとの圧電素子59に割り当てられる。これにより、機能液の吐出量ばらつきがある程度の範囲に抑えられる。ゆえに、発光領域106の各発光画素107において、ほぼ一定の膜厚と安定した膜形状(断面形状)の発光層132r,132g,132bを有する機能層132R,132G,132Bが形成される。よって、機能層132R,132G,132Bの膜厚ばらつきに起因した輝度むらが低減され、優れた発光特性すなわち表示品質を有し、見栄えのよいカラー表示が可能な有機EL装置100を製造することができる。
なお、上記第1実施形態の吐出装置10を用いた機能液の吐出方法は、少なくとも発光層形成材料を含む機能液90R,90G,90Bの塗布に適用することで、その効果を得ることができる。
<電子機器>
本発明の有機EL装置の製造方法を用いて製造された有機EL装置100は、様々な電子機器の表示部として好適に用いることができる。
電子機器としては、携帯電話機やパーソナルコンピューター、PDA、POSなどの携帯型情報端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーションシステム、テレビ、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、HUD(ヘッドアップディスプレイ)などを挙げることができる。
また、有機EL装置100は、表示部として用いられるだけでなく、例えば有機EL素子112を白色発光が得られる構成として電子機器の照明装置として用いてもよい。
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う機能液の吐出量ばらつきの計測方法及び機能液の吐出方法、有機EL装置の製造方法並びに該有機EL装置を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例1)メディア160に吐出されるほぼ透明な機能液は、必ずしも機能層形成材料を含んでいなくてもよい。機能液における機能層形成材料の含有量がわずかであって、機能層形成材料を含まなくても吐出量ばらつきの計測に影響がないなら、機能液を構成する溶媒を使って吐出量ばらつきを求めてもよい。特に、機能層形成材料が高価な場合には有効である。
(変形例2)上記着弾面積計測機構60において用いられるメディア160は、ピクトリコ社製のグラフィックアーツ透明フィルムに限定されるものではない。用いられる機能液の種類によって、メディア160のベースフィルム161や受容層162を構成すればよい。
(変形例3)上記実施形態の吐出装置10は、一対のガイドレール21において、着弾面積計測機構60の移動台65をY軸方向に移動可能としたが、これに限定されるものではない。メディア160をシート状として、移動台22のステージ5に載置して吐出ヘッド50の複数のノズル52から機能液をメディア160に向けて吐出する。そして、機能液が着弾したメディア160を別に設けた着弾面積計測機構60の支持テーブル66上に置いて着弾痕165を撮像してもよい。
10…吐出装置、20…移動機構、40…制御部、50…吐出ヘッド、52…ノズル、59…アクチュエーターとしての圧電素子、60…計測機構としての着弾面積計測機構、61…照明部、62…撮像部、90R,90G,90B…発光層形成材料を含む機能液、100…有機EL装置、101…基板としての素子基板、112…有機EL素子、132r,132g,132b…発光層、132R,132G,132B…機能層、133…隔壁、160…メディア、162…受容層、A…膜形成領域としての機能層形成領域、W…ワーク。

Claims (14)

  1. 吐出ヘッドの複数のノズルから吐出される機能液の吐出量ばらつきの計測方法であって、
    受容層を有するメディアに対して、前記複数のノズルごとに所定量の前記機能液を複数の液滴として吐出する計測用吐出工程と、
    前記複数のノズルごとに前記受容層に着弾した所定量の前記機能液の着弾面積を計測する計測工程と、を備え
    前記計測用吐出工程は、前記複数の液滴のうち少なくとも1つの液滴の前記受容層における着弾位置が他の液滴の着弾位置に対してわずかにずれるように前記メディアに対して前記複数の液滴を吐出することを特徴とする機能液の吐出量ばらつきの計測方法。
  2. 前記機能液が着色材料を含まない透明な溶液であることを特徴とする請求項1に記載の機能液の吐出量ばらつきの計測方法。
  3. 前記計測用吐出工程は、前記吐出ヘッドと前記メディアとを前記複数のノズルの配列方向と交差する第1の方向に相対的に移動させる主走査の間に、前記複数のノズルから前記複数の液滴が前記受容層に対して第1の方向にわずかにずれて着弾するように吐出することを特徴とする請求項1または2に記載の機能液の吐出量ばらつきの計測方法。
  4. 前記計測用吐出工程は、前記吐出ヘッドと前記メディアとを前記複数のノズルの配列方向と交差する第1の方向に相対的に移動させる主走査と、前記第1の方向に直交する第2の方向に前記複数のノズルを移動させる副走査とを組み合わせて、前記主走査における前記受容層に対する前記複数の液滴の着弾位置を前記第1の方向と前記第2の方向とにわずかにずらして着弾させることを特徴とする請求項1または2に記載の機能液の吐出量ばらつきの計測方法。
  5. 前記計測用吐出工程は、前記所定量の前記機能液を複数回の前記主走査に分けて前記前記受容層に対して液滴として吐出することを特徴とする請求項3または4に記載の機能液の吐出量ばらつきの計測方法。
  6. 前記計測用吐出工程では、前記複数回の前記主走査のうち少なくとも1回は前記複数のノズルから前記受容層に吐出する前記機能液の液滴の吐出数を変えて前記所定量の前記機能液を吐出し、
    前記計測工程では、前記主走査ごとに前記受容層に着弾した前記機能液の着弾面積を計測することを特徴とする請求項5に記載の機能液の吐出量ばらつきの計測方法。
  7. 吐出ヘッドの複数のノズルから複数の液滴として吐出された機能液の吐出量ばらつきを計測する計測機構であって、
    受容層を有するメディアと、
    前記吐出ヘッドと前記メディアとを対向配置させた状態で第1の方向に相対的に移動させる移動機構と、
    撮像部と、
    制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記複数の液滴のうち少なくとも1つの液滴の前記受容層における着弾位置が他の液滴の着弾位置に対して前記第1の方向にわずかにずれるように前記吐出ヘッドと前記移動機構とを制御して、前記吐出ヘッドから前記メディアに対して前記複数の液滴を吐出させ、前記複数のノズルごとに前記受容層に着弾した所定量の前記機能液の着弾痕を前記撮像部で撮像させることを特徴とする計測機構。
  8. 前記メディアは、透明な前記受容層と、前記受容層を支持する透明な支持体とからなり、
    前記メディアを照明する照明部をさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の計測機構。
  9. 複数のノズルを有する吐出ヘッドとワークとを対向配置して、前記吐出ヘッドと前記ワークとを第1の方向に相対移動させる主走査の間に、前記ワークに対して前記吐出ヘッドの前記複数のノズルから機能液を液滴として吐出する吐出装置であって、
    請求項7または8に記載の計測機構を備えたことを特徴とする吐出装置。
  10. 複数のノズルを有する吐出ヘッドと、膜形成領域が形成された基板とを対向配置して第1の方向に相対移動させる主走査の間に、前記複数のノズルのうち前記膜形成領域に掛かるノズルから機能性材料を含む機能液を液滴として吐出する機能液の吐出方法であって、
    請求項1乃至6のいずれか一項に記載の機能液の吐出量ばらつきの計測方法を用いて求められた前記複数のノズルごとの吐出量ばらつきに基づいて、前記複数のノズルごとの吐出量ばらつきが小さくなるように前記複数のノズルごとの吐出条件を予め設定された吐出条件に対して補正する工程と、
    補正された前記吐出条件で前記複数のノズルのうち選択されたノズルから前記機能液を吐出する吐出工程とを備えることを特徴とする機能液の吐出方法。
  11. 前記吐出ヘッドは前記複数のノズルから前記機能液を液滴として吐出するために前記複数のノズルごとに設けられたアクチュエーターを有し、
    前記吐出条件を補正する工程は、前記アクチュエーターを駆動する条件を補正することを特徴とする請求項10に記載の機能液の吐出方法。
  12. 前記アクチュエーターが圧電素子であって、
    前記吐出条件を補正する工程は、前記圧電素子に印加される電気信号としての駆動波形の電位を補正することを特徴とする請求項11に記載の機能液の吐出方法。
  13. 基板上の複数の膜形成領域のそれぞれに発光層を含む機能層を有する有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、
    請求項10乃至12のいずれか一項に記載の機能液の吐出方法を用いて、前記複数の膜形成領域のそれぞれに所定量の前記機能液を塗布する工程と、
    塗布された前記機能液を固化して、前記複数の膜形成領域のそれぞれに前記機能層のうちの1つの有機層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
  14. 前記機能液を塗布する工程は、発光層形成材料を含む前記機能液を塗布することを特徴とする請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
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