以下、本実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大又は縮小して表示している。
(第1の実施形態)
<液滴の吐出装置>
まず、機能性材料を含む液状体を液滴として被吐出物に吐出可能な吐出装置について、図1〜図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る吐出装置の構成を示す概略斜視図である。
本実施形態の吐出装置2は、図1に示すように、被吐出物である平板状のワークWを第1の方向としての主走査方向(Y軸方向)に移動させるワーク移動機構10と、ヘッドユニット12を主走査方向に直交する第2の方向としての副走査方向(X軸方向)に移動させるヘッド移動機構14とを備えている。
ワーク移動機構10は、一対のガイドレール16と、一対のガイドレール16に沿って移動する移動台18と、移動台18上に回転機構20を介して配設されたワークWを載置するステージ22とを備えている。
移動台18は、ガイドレール16の内部に設けられたエアスライダーとリニアモーター(図示省略)により主走査方向(Y軸方向)に移動する。移動台18には、タイミング信号生成部としてのエンコーダー24(図4参照)が設けられている。
エンコーダー24は、移動台18の主走査方向(Y軸方向)への相対移動に伴って、ガイドレール16に並設されたリニアスケール(図示省略)の目盛を読み取って、タイミング信号としてのエンコーダーパルスを生成する。なお、エンコーダー24の配設は、これに限らず、例えば、移動台18を回転軸に沿って主走査方向(Y軸方向)に相対移動するよう構成し、回転軸を回転させる駆動部を設けた場合には、エンコーダー24を駆動部に設けてもよい。駆動部としては、サーボモーターなどが挙げられる。
ステージ22は、ワークWを吸着固定可能であると共に、回転機構20によってワークW内の基準軸を正確に主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)に合わせることが可能となっている。
また、ワークW上において液状体が吐出される膜形成領域の配置に応じて、ワークWを例えば90度旋回させることも可能である。
ヘッド移動機構14は、一対のガイドレール26と、一対のガイドレール26に沿って移動する移動台28とを備えている。移動台28には、回転機構30を介して吊設されたキャリッジ32が設けられている。
キャリッジ32には、複数の吐出ヘッド34(図2参照)が搭載されたヘッドユニット12が取り付けられている。
また、吐出ヘッド34に液状体を供給するための液状体供給機構(図示省略)と、複数の吐出ヘッド34の電気的な駆動制御を行うためのヘッドドライバー36(図4参照)とが設けられている。
移動台28がキャリッジ32を副走査方向(X軸方向)に移動させてヘッドユニット12をワークWに対して対向配置する。
吐出装置2は、上記構成の他にも、ヘッドユニット12に搭載された複数の吐出ヘッド34のノズル目詰まり解消、ノズル面の異物や汚れの除去などのメンテナンスを行うメンテナンス機構が、複数の吐出ヘッド34を臨む位置に配設されている。
また、吐出ヘッド34ごとに吐出された液状体を受けて、その重量を計測する電子天秤などの計測器を有する重量計測機構38(図4参照)を備えている。そして、これらの構成を統括的に制御する制御部40を備えている。なお、図1では、メンテナンス機構及び重量計測機構38は、図示省略した。
図2は、本実施形態に係る吐出ヘッドの構造を示す概略図である。図2(A)は、斜視図、図2(B)は、ノズルの配置状態を示す平面図である。
本実施形態の吐出ヘッド34は、図2(A)に示すように、所謂2連のものであり、2連の接続針42を有する液状体の導入部44と、導入部44に積層されたヘッド基板46と、ヘッド基板46上に配置され内部に液状体のヘッド内流路が形成されたヘッド本体48とを備えている。接続針42は、前述した液状体供給機構(図示省略)に配管を経由して接続され、液状体をヘッド内流路に供給する。ヘッド基板46には、フレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介してヘッドドライバー36(図4参照)に接続される2連のコネクター50が設けられている。
ヘッド本体48は、駆動手段としての圧電素子で構成されたキャビティを有する加圧部52と、ノズル面54aに2つのノズル列56a,56bが相互に平行に形成されたノズルプレート54とを有している。
2つのノズル列56a,56bは、図2(B)に示すように、それぞれ複数(180個)のノズル56がピッチP1で略等間隔に並べられており、互いにピッチP1の半分のピッチP2ずれた状態でノズル面54aに配設されている。この場合、ピッチP1は、およそ141μmである。よって、ノズル列56cに直交する方向から見ると360個のノズル56がおよそ70.5μmのノズルピッチで配列した状態となっている。また、ノズル56の径は、およそ27μmである。
吐出ヘッド34は、ヘッドドライバー36から電気信号としての駆動信号が圧電素子に印加されると加圧部52のキャビティの体積変動が起こり、これによるポンプ作用でキャビティに充填された液状体が加圧され、ノズル56から液状体を液滴として吐出することができる。
吐出ヘッド34における駆動手段は、圧電素子に限らない。アクチュエーターとしての振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、液状体を加熱してノズル56から液滴として吐出させる電気熱変換素子(サーマル方式)でもよい。
図3は、本実施形態に係るヘッドユニットにおける吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。詳しくは、ワークWに対向する側から見た図である。
本実施形態のヘッドユニット12は、図3に示すように、複数の吐出ヘッド34が配設されるヘッドプレート12aを備えている。ヘッドプレート12aには、3つの吐出ヘッド34からなるヘッド群34Aと、同じく3つの吐出ヘッド34からなるヘッド群34Bの合計6個の吐出ヘッド34が搭載されている。この場合、ヘッド群34AのヘッドR1(吐出ヘッド34)とヘッド群34BのヘッドR2(吐出ヘッド34)とは、同種の液状体を吐出する。他のヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様である。すなわち、3種の異なる液状体を吐出可能な構成となっている。
1つの吐出ヘッド34によって描画可能な描画幅をL0とし、これをノズル列56cの有効長とする。以降、ノズル列56cとは、360個のノズル56から構成されるものを指す。
この場合、ヘッドR1とヘッドR2は、主走査方向(Y軸方向)から見て隣り合うノズル列56cが主走査方向と直交する副走査方向(X軸方向)に1ノズルピッチを置いて連続するように主走査方向に並列して配設されている。したがって、同種の液状体を吐出するヘッドR1とヘッドR2の有効な描画幅L1は、描画幅L0の2倍となっている。ヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様に主走査方向(Y軸方向)に並列して配置されている。
なお、吐出ヘッド34に設けられるノズル列56cは、2連に限らず、1連でもよい。また、ヘッドユニット12における吐出ヘッド34の配置は、これに限定されるものではない。
次に吐出装置2の制御系について説明する。
図4は、本実施形態に係る吐出装置の制御系を示すブロック図である。
本実施形態の吐出装置2の制御系は、図4に示すように、吐出ヘッド34、ワーク移動機構10、ヘッド移動機構14、重量計測機構38などを駆動する各種ドライバーを有する駆動部58と、駆動部58を含め吐出装置2を統括的に制御する制御部40とを備えている。
駆動部58は、ワーク移動機構10及びヘッド移動機構14の各リニアモーターをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバー60と、吐出ヘッド34を駆動制御するヘッドドライバー36と、重量計測機構38を駆動制御する重量計測用ドライバー62とを備えている。この他にもメンテナンス機構を駆動制御するメンテナンス用ドライバーなどを備えているが図示省略した。
制御部40は、CPU64と、ROM66と、RAM68と、P−CON70とを備え、これらは互いにバス72を介して接続されている。P−CON70には、上位コンピューター74が接続されている。ROM66は、CPU64で処理する制御プログラムなどを記憶する制御プログラム領域と、描画動作や機能回復処理などを行うための制御データなどを記憶する制御データ領域とを有している。
RAM68は、ワークWに描画を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、ワークW及び吐出ヘッド34(実際には、ノズル列56c)の位置データを記憶する位置データ記憶部などの各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。P−CON70には、駆動部58の各種ドライバーなどが接続されており、CPU64の機能を補うと共に、周辺回路とのインターフェース信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON70は、上位コンピューター74からの各種指令などをそのままあるいは加工してバス72に取り込むと共に、CPU64と連動して、CPU64などからバス72に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部58に出力する。
そして、CPU64は、ROM66内の制御プログラムに従って、P−CON70を介して各種検出信号、各種指令、各種データなどを入力し、RAM68内の各種データなどを処理した後、P−CON70を介して駆動部58などに各種の制御信号を出力することにより、吐出装置2全体を制御している。例えば、CPU64は、吐出ヘッド34、ワーク移動機構10、及びヘッド移動機構14を制御して、ヘッドユニット12とワークWとを対向配置させる。そして、ヘッドユニット12とワークWとの相対移動に同期して、ヘッドユニット12に搭載された各吐出ヘッド34の複数のノズル56からワークWに液状体を液滴として吐出するようにヘッドドライバー36に制御信号を送出する。この場合、Y軸方向へのワークWの移動に同期して液状体を吐出することを主走査と呼び、X軸方向にヘッドユニット12を移動させることを副走査と呼ぶ。本実施形態の吐出装置2は、主走査と副走査とを組み合わせて複数回繰り返すことにより液状体を吐出描画することができる。主走査は、吐出ヘッド34に対して一方向へのワークWの移動に限らず、ワークWを往復させて行うこともできる。
エンコーダー24は、ヘッドドライバー36に電気的に接続され、主走査に伴ってエンコーダーパルスを生成する。主走査では、所定の移動速度で移動台18を移動させるので、エンコーダーパルスが周期的に発生する。
例えば、主走査における移動台18の移動速度を200mm/sec、吐出ヘッド34を駆動する駆動周波数(言い換えれば、連続して液滴を吐出する場合の吐出タイミング)を20kHzとすると、主走査方向における液滴の吐出分解能は、移動速度を駆動周波数で除することにより得られるので、10μmとなる。すなわち、10μmのピッチで液滴をワークW上に配置することが可能である。実際の液滴の吐出タイミングは、周期的に発生するエンコーダーパルスをカウントして生成されるラッチ信号に基づいている。
上位コンピューター74は、制御プログラムや制御データなどの制御情報を吐出装置2に送出する。また、ワークW上の膜形成領域ごとに所定量の液状体を液滴として配置する吐出制御データとしての配置情報を生成する配置情報生成部の機能を有している。配置情報は、膜形成領域における液滴の吐出位置(言い換えれば、ワークWとノズル56との相対位置)、液滴の配置数(言い換えれば、ノズル56ごとの吐出数)、主走査における複数のノズル56のON/OFF、吐出タイミングなどの情報を、例えば、ビットマップとして表したものである。上位コンピューター74は、上記配置情報を生成するだけでなく、RAM68に一旦、格納された上記配置情報を修正することも可能である。
図5は、本実施形態に係る駆動波形を示すタイミングチャートである。
複数のノズル56に対応して配設された駆動手段としての圧電素子には、図5に示すように、ラッチ信号LATのタイミングでラッチされたノズル56ごとのON/OFFデータ(吐出データ)に従い、3つの駆動波形PL1,PL2,PL3のうちから1つが選択されて供給される。そして、駆動波形が供給されるタイミングで、ノズル56から液滴が吐出される。なお、各駆動波形は、圧電素子に供給されることで規定量の液滴が吐出されるように設計されている。
駆動波形の選択は、駆動波形の供給タイミングを規定する制御信号CH1〜CH3により行われる。すなわち、制御信号CH1によって第1系統のタイミングの駆動波形PL1が、制御信号CH2によって第2系統のタイミングの駆動波形PL2が、制御信号CH3によって第3系統のタイミングの駆動波形PL3がそれぞれ選択される。
本実施形態では、膜形成領域に掛かる隣り合うノズル56に対応する圧電素子に、駆動波形の供給タイミングの系統(ラッチ信号LATを基準とした相対的な序列)を個々に対応づけることにより、吐出タイミングの重複が起こりえないように駆動波形を印加することが可能である。このような駆動波形の駆動手段(圧電素子)に対する印加の方法を時分割駆動という。時分割駆動により、少なくとも電気的なクロストークが好適に低減され、クロストークに起因するノズル56間の吐出特性(液滴の吐出量や吐出速度など)のバラツキが相対的に緩和される。
また、各系統のタイミングは、周期的となっているため、吐出条件が各吐出タイミング間で一様となり、液滴の吐出量を主走査方向に対して安定化させることができる。
また、ラッチ信号LATの1周期内(1ラッチ内)において、3つの駆動波形PL1,PL2,PL3が発生するので、同一の圧電素子に1ラッチ内で3つの駆動波形PL1,PL2,PL3を印加すれば、同一ノズル56から吐出タイミングを変えて3滴の液滴を吐出することができる。
さらに、1ラッチ内の3つの駆動波形PL1,PL2,PL3をそれぞれ別の圧電素子に印加すれば、3つのノズル56から液滴を異なる吐出タイミングで吐出することができる。すなわち、3つのノズル56が時分割駆動される。
また、駆動波形PL1,PL2,PL3において、振幅の幅(実質的には、中間電位との間の電位差すなわち駆動電圧)や波形の勾配などをそれぞれ変えることによって、ノズル56から吐出される液滴の吐出量を異ならせることが可能である。言い換えれば、同一ノズル56の圧電素子に異なる形状の駆動波形PL1,PL2,PL3のうち1つを選択して印加すれば液滴の吐出量の補正が可能である。
以降、ノズル56の圧電素子に駆動波形を印加することを、ノズル56に駆動波形を印加すると表現する。
前述したように吐出装置2において、吐出分解能をおよそ10μmとすると、3つの駆動波形PL1,PL2,PL3を連続的に使用するノズル56に印加したときには、吐出タイミングを変えて主走査方向におよそ3.3μmの最小ピッチで液滴を吐出することが可能である。すなわち、時分割駆動における実質的な吐出分解能は、3.3μmとなる。
<液滴の吐出方法>
次に、本実施形態の液滴の吐出方法について、実施例を挙げて説明する。本実施形態の液滴の吐出方法は、X軸方向(副走査方向)及びY軸方向(主走査方向)にマトリクス状に配置された略矩形状の膜形成領域に必要量の液状体を液滴として吐出(配置)するものである。なお、膜形成領域は、ワークW上において隔壁部により区画されている。また、隔壁部又は隔壁部の表面が液状体に対して撥液性を有している。膜形成領域内は、塗布される液状体の濡れ性を考慮して親液性を付与する表面処理を施してもよい。
液滴の吐出方法では、走査において、複数のノズル56のうち膜形成領域に掛かるノズルの加圧部52に、加圧部52に対して駆動波形PL2を印加してノズル56ごとに吐出された液滴の吐出量と基準吐出量との差から算出した補正量を取得する。取得された補正量に基づいて、駆動波形PL2を補正した駆動波形PL1,PL3を印加する。その際、駆動波形PL1,PL3間において、印加される加圧部52の数の差が、小さくなるように、駆動波形PL1,PL3の組合せを設定する。
駆動波形PL2は、図6に示すように、あるノズルに対して基準吐出量を吐出させる基準駆動波形である。また、駆動波形PL1は、基準駆動波形の基準吐出量に対して吐出量が増加する正の補正を行った吐出量を吐出させる補正駆動波形である。さらに、駆動波形PL3は、基準駆動波形の基準吐出量に対して吐出量が減少する負の補正を行った吐出量を吐出させる補正駆動波形である。
駆動波形PL1,PL3は、駆動波形PL2の基準吐出量に対して吐出量が増加する正の補正における吐出量の変化幅と吐出量が減少する負の補正における吐出量の変化幅とが略均等である。なお、複数の駆動波形PL1,PL3間において、印加される加圧部52の数が同数であってもよい。
(実施例1)
図7は、本実施例の液状体の量のばらつきと発光パワーとの関係(電流制御)を示すグラフである。図7に示すように、ある発光材料についての充填される液状体の量のばらつきと発光パワーとは、ある一定の比例関係にあり、充填される液状体のばらつきの量が増加すると、発光パワーも増加する。また、充填される液状体のばらつきの量が減少すると、発光パワーも減少する傾向にある。言い換えると、充填される液状体の量が多いと、発光パワーも大きいし、充填される液状体の量が少ないと、発光パワーも少ない傾向にある。ここで、発光ばらつきを1%以下に抑えたい場合は、充填される液状体のばらつきの量を0.8%以下に抑えなる必要がある。
図8は、本実施例の同時に駆動するノズル数とあるノズルの吐出量変化率とを示すグラフである。図8に示すように、同時に駆動するノズル数と、あるノズルの吐出量変化率とは、同時に駆動するノズル数が34〜53個の間であれば変化量が0.5%以内の関係にある。これは、補正後の液状体の量のばらつきを0.3%、上記より充填される液状体のばらつきの量の許容値を0.8%とした場合、これらの差分から同時に駆動するノズル数の差の許容値を定義すると、吐出量変化率を0.5%以内に収める必要がある。そのときの同時に駆動できるノズル数の範囲は、34〜53個である。
図9は、本実施例の補正ランクを示す表である。図9に示すように、補正ランクは、3つの波形の組合せで構成されている。データ内の番号1は、図6に示す駆動波形PL1、番号2は駆動波形PL2、及び番号3は駆動波形PL3をそれぞれ示している。補正ランクを用いることにより、ノズル56ごとの吐出量のばらつきを、最終的に各バンクに収まる液状体の量を同じにしている。具体的には、1膜形成領域に20発の液滴を打ち込む時、20発の駆動波形PL1,PL2,PL3の組合せを代えていくことで細かい補正が可能になる。例えば、一番たくさんの液滴が出てしまうノズルに対しては20発全部を駆動波形PL3で、一番少ないところには、20発全部を駆動波形PL1で打ち込むことにより最終的に各バンクに収まる液状体の量を同じにしている。補正ランクの数は、3つの波形を使って、1膜形成領域に収まる液滴が20発の時、駆動波形PL1,PL2,PL3の組合せで41通りできる。補正ランクを用いることにより、吐出ばらつきを元の1/41まで抑えることができる。補正ランクを41通り使用することで割り当てが木目細かく対応することができる。
図10は、本実施例の膜形成領域ごとの吐出量率を示すグラフである。図10に示すように、膜形成領域1〜53で示された各膜形成領域の吐出量率は、基準吐出量より吐出量率の多い膜形成領域の数は少なく、基準吐出量より吐出量率の少ない膜形成領域が殆どである。言い換えると、基準吐出量より吐出量の多い膜形成領域が少なく、基準吐出量より吐出量の少ない膜形成領域が殆どである。
基準吐出量を0.00%として膜形成領域ごとの吐出量率を規格化すると、およそ±3.52%程度のばらつきを有している。なお、基準吐出量は、元のばらつきの(最大値−最小値)/2に設定されている。つまり、最大値と最小値との真ん中に合わせるように設定されている。ここで、補正量を求めるにあたって、例えば、インクジェットのノズルの数は180個で、その両端のノズルの10個を省いた160個を使用して、60ppi程度のパターンに液滴を打ち込む場合、1ノズルで53個の膜形成領域に描画をすることになるので、53個の膜形成領域に納まる液状体の量のばらつきを測定したものである。
図11は、本実施例の膜形成領域ごとの補正ランクを示すグラフである。図11に示すように、膜形成領域1〜53で示された各膜形成領域の補正ランクは、図10に示す膜形成領域ごとの吐出量率に対して、図9に示す補正ランクが割り当てられている。基準吐出量を元のばらつきの(最大値−最小値)/2に設定して、単純にグループ分けをした場合には、基準吐出量(補正ランク21)より補正量の少ない(補正ランク22〜45)膜形成領域の数は少なく、基準吐出量より補正量の多い(補正ランク1〜20)膜形成領域が殆どである。言い換えると、基準吐出量より吐出量の多い膜形成領域の数が少なく、基準吐出量より吐出量の少ない膜形成領域が殆どである。このときの補正ランクの分布を示すグラフを図12に示す。
図12は、本実施例の補正ランクの分布(膜形成領域n=53)を示すグラフである。図12に示すように、補正ランクの分布は、基準吐出量を元のばらつきの(最大値−最小値)/2に設定して、単純にグループ分けをした場合には、基準吐出量(補正ランク21)より補正量の少ない(補正ランク22〜45)膜形成領域の数は少なく、基準吐出量より補正量の多い(補正ランク1〜20)膜形成領域が殆どである。言い換えると、基準吐出量より吐出量の多い膜形成領域の数が少なく、基準吐出量より吐出量の少ない膜形成領域が殆どである。このときの波形選択の分布を示すグラフを図13に示す。
図13は、本実施例の波形選択の分布を示すグラフである。図13に示すように、波形選択の分布は、基準吐出量を元のばらつきの(最大値−最小値)/2に設定して、単純にグループ分けをした場合には、駆動波形PL1,PL2,PL3の数のバランスが必ずしも均一にならない。基準吐出量(補正ランク21)より補正量の少ない(補正ランク22〜45)膜形成領域の数は少ないので、そこで使用される駆動波形PL3の数は少なくなっている。基準吐出量より補正量の多い(補正ランク1〜20)膜形成領域が殆どなので、そこで使用されている駆動波形PL1の数は多くなっている。言い換えると、基準吐出量より吐出量の多い膜形成領域の数が少ないので、駆動波形PL3の数は少なく、基準吐出量より吐出量の少ない膜形成領域が殆どなので、駆動波形PL1の数は多くなる。これは、駆動波形PL3で負の補正を行うノズルと駆動波形PL1で正の補正を行うノズルの数が均等とはならず、結果として駆動ノズル数不均一による負荷変動の影響を受け、精度良く補正を行うことができないおそれがある。
そこで、実施例1の液滴の吐出方法は、元のばらつきの度数分布の中央値(MEDIAN)に基準吐出量を設定し、最大値−中央値の間の領域を−補正領域となるよう補正幅を拡大させる。例えば、図10に示すように、元のばらつきの中央値(−1.41%)に基準吐出量を設定し、最大値(3.52%)と中央値(−1.41%)との間の領域を−補正領域となるように補正幅を拡大させている。これにより、基準吐出量を駆動波形PL1,PL2,PL3の数の中央値にすることで、負の補正を行うノズルと正の補正を行うノズルの数を均等とすることができる。この補正条件であれば駆動ノズル数不均一による負荷変動の影響を受けることなく狙った通りの高精度な補正が可能となる。さらに、プラス補正幅とマイナス補正幅とを同じにする。このときの膜形成領域ごとの吐出量率を示すグラフを図14に示す。
図14は、本実施例の膜形成領域ごとの吐出量率を示すグラフである。図14に示すように、膜形成領域1〜53で示された各膜形成領域の吐出量率は、基準吐出量より吐出量率の多い膜形成領域の負の補正の数と、基準吐出量より吐出量率の少ない膜形成領域の正の補正の数とが同じである。言い換えると、基準吐出量より吐出量の多い膜形成領域の負の補正の数と、基準吐出量より吐出量の少ない膜形成領域の正の補正の数とが同じである。なお、基準吐出量を0.00%として膜形成領域ごとの吐出量率は、規格化されている。基準吐出量は、元の吐出量ばらつきの中央値近傍に設定されている。つまり、駆動波形PL1,PL2,PL3の数の中央値に合わせるように設定されている。
図15は、本実施例の膜形成領域ごとの補正ランクを示すグラフである。図15に示すように、膜形成領域1〜53で示された各膜形成領域の補正ランクは、図14に示す膜形成領域ごとの吐出量率に対して、図9に示す補正ランクが割り当てられている。基準吐出量を元の吐出量ばらつきの中央値近傍に設定して、単純にグループ分けをした場合には、駆動波形PL1,PL2,PL3の数が同じになる。基準吐出量(補正ランク13)より補正量の少ない(補正ランク14〜45)膜形成領域の駆動波形PL3の数と、基準吐出量より補正量の多い(補正ランク1〜12)膜形成領域の駆動波形PL1の数とが同じである。言い換えると、基準吐出量より吐出量の多い膜形成領域の駆動波形PL3の数と、基準吐出量より吐出量の少ない膜形成領域の駆動波形PL1の数とが同じである。このときの補正ランクの分布を示すグラフを図16に示す。
図16は、本実施例の補正ランクの分布(膜形成領域n=53)を示すグラフである。図16に示すように、補正ランクの分布は、基準吐出量を元の吐出量ばらつきの中央値近傍に設定して、単純にグループ分けをした場合には、駆動波形PL1,PL2,PL3の数が同じになる。基準吐出量(補正ランク13)より補正量の少ない(補正ランク14〜45)膜形成領域の駆動波形PL3の数と、基準吐出量より補正量の多い(補正ランク1〜12)膜形成領域の駆動波形PL1の数とが同じである。言い換えると、基準吐出量より吐出量の多い膜形成領域の駆動波形PL3の数と、基準吐出量より吐出量の少ない膜形成領域の駆動波形PL1の数とが同じである。このときの波形選択の分布を示すグラフを図17に示す。
図17は、本実施例の波形選択の分布を示すグラフである。図17に示すように、波形選択の分布は、基準吐出量を元の吐出量ばらつきの中央値近傍に設定して、単純にグループ分けをした場合には、駆動波形PL1,PL2,PL3の数が同じになる。基準吐出量(補正ランク13)より補正量の少ない(補正ランク14〜45)膜形成領域の駆動波形PL3の数と、基準吐出量より補正量の多い(補正ランク1〜12)膜形成領域の駆動波形PL1の数とが同じである。言い換えると、基準吐出量より吐出量の多い膜形成領域の駆動波形PL3の数と、基準吐出量より吐出量の少ない膜形成領域の駆動波形PL1の数とが同じである。
このような本実施例の液滴の吐出方法によれば、駆動波形PL3で負の補正を行うノズルの数と駆動波形PL1で正の補正を行うノズルの数とが均等になり、結果として同時に駆動するノズル数が均一になり負荷変動の影響を受けにくくなるので、精度良く補正を行うことができる。
(実施例2)
図18は、本実施例の波形選択の分布を示すグラフである。本実施例の液滴の吐出方法は、図18に示すように、駆動波形PL1,PL2,PL3の駆動ノズル数は、常に一定である。
実施例1より、波形選択の分布は、基準吐出量を元の吐出量ばらつきの中央値近傍に設定して、単純にグループ分けをした場合には、駆動波形PL1,PL2,PL3の数が同じになる。基準吐出量(補正ランク13)より補正量の少ない(補正ランク14〜45)膜形成領域の駆動波形PL3の数と、基準吐出量より補正量の多い(補正ランク1〜12)膜形成領域の駆動波形PL1の数とが同じである。言い換えると、基準吐出量より吐出量の多い膜形成領域の駆動波形PL3の数と、基準吐出量より吐出量の少ない膜形成領域の駆動波形PL1の数とが同じである。
ここで、本実施例では負の補正幅と正の補正幅が均等であることから、負の補正の吐出量+正の補正の吐出量=基準吐出量×2の式が成立する。そして、基準吐出量を負の補正の吐出量と正の補正の吐出量とに振り分けることにより、負の補正の吐出、正の補正の吐出、及び基準吐出の同時に駆動するノズル数を同一にすることができる。これによれば、高精度な補正を実現することができるようになった。例えば、53個のバンクの中に補正ランク15と言うものが2膜形成領域に有ったとして、同じ補正ランク15でも異なった波形選択が可能になる。
このような本実施例の液滴の吐出方法によれば、駆動波形PL3で負の補正を行うノズルの数と、駆動波形PL2のノズルの数と、駆動波形PL1で正の補正を行うノズルの数と、が均等になり、結果として同時に駆動するノズル数が均一になり負荷変動の影響を受けにくくなるので、さらに精度良く補正を行うことができる。
図19は、本実施例の複数のノズルにおける吐出量の補正前のばらつきと補正後のばらつきを示すグラフである。図19に示すように、本実施例の液滴の吐出方法によれば、膜形成領域1〜53において、補正前のばらつきはおよそ±4%あったが、補正後のばらつきは、±2%以内に収まっている。すなわち、膜形成領域間の液状体のばらつきの量が改善される。
本実施形態によれば、補正駆動波形ごとの同時に駆動するノズル数が同一により、同時に駆動するノズル数の不均一に起因した吐出量変動の影響を無視することができ、より高精度な補正ができる。これにより、同時に駆動するノズル数不均一に起因するヘッドドライバーの負荷不均一によるインクの吐出量変動の影響を受けない液滴の吐出方法を提供できる。
(第2の実施形態)
<有機EL装置>
次に、本実施形態の有機EL素子の製造方法を適用して製造された有機EL素子を有する有機EL装置について図20及び図21を参照して説明する。図20は、本実施形態に係る有機EL装置を示す概略正面図、図21は、本実施形態に係る有機EL装置の要部概略断面図である。
本実施形態の有機EL装置4は、図20に示すように、R(赤)、G(緑)、B(青)、3色の発光画素76を備えた素子基板78と、素子基板78に所定の間隔を置いて対向配置された封止基板80とを備えている。封止基板80は、複数の発光画素76が設けられた発光領域82を封着するように、高い気密性を有する封着剤を用いて素子基板78に接合されている。
発光画素76は、後述する発光素子としての有機EL素子84(図21参照)を備えるものであって、同色の発光が得られる発光画素76が、図面上の縦方向に配列した所謂ストライプ方式となっている。なお、実際には、発光画素76は微細なものであり、図示の都合上拡大して現している。
素子基板78は、封止基板80よりも一回り大きく、額縁状に張り出した部分には、発光画素76を駆動する2つの走査線駆動回路部86と1つのデータ線駆動回路部88が設けられている。走査線駆動回路部86、データ線駆動回路部88は、例えば、電気回路が集積されたICとして素子基板78に実装してもよいし、当該駆動回路部86,88を素子基板78の表面に直接形成してもよい。
素子基板78の端子部78aには、これらの駆動回路部86,88と外部駆動回路とを接続するための中継基板90が実装されている。中継基板90は、例えば、フレキシブル回路基板などを用いることができる。
有機EL装置4において、有機EL素子84は、図21に示すように、画素電極としての陽極92と、陽極92を区画する隔壁部94と、陽極92上に形成された有機膜からなる発光層を含む機能層96とを有している。また、機能層96を介して陽極92と対向するように形成された共通電極としての陰極98を有している。
隔壁部94は、フェノール又はポリイミドなどの絶縁性を有する感光性樹脂からなり、発光画素76を構成する陽極92の周囲を一部覆って、複数の陽極92をそれぞれ区画するように設けられている。
陽極92は、素子基板78上に形成されたTFT(Thin Film Transistor)素子100の3端子のうちの1つに接続しており、例えば、透明電極材料であるITO(Indium Tin Oxide)を厚さ100nm程度に成膜した電極である。なお、図示省略したが、陽極92の下層(平坦化層102側)に、絶縁層を介してAlからなる反射層が設けられている。当該反射層は、機能層96における発光を封止基板80側に反射するものである。また、当該反射層はAlに限定されず、発光を反射する機能(反射面)を有していればよい。例えば、絶縁性の有機材料あるいは無機材料を用いて凹凸を有する反射面を形成する方法、陽極92自体を反射機能を有する導電材料で構成し、表面層にITO膜を形成する方法などが挙げられる。
陰極98は、同じく、ITOなどの透明電極材料により形成されている。
本実施形態の有機EL装置4は、いわゆるトップエミッション型の構造となっており、陽極92と陰極98との間に駆動電流を流して機能層96で発光した光を上記反射層で反射させて封止基板80側から取り出す。したがって、封止基板80は、透明なガラス等からなる基板を用いる。また、素子基板78は、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
素子基板78には、有機EL素子84を駆動する回路部104が設けられている。すなわち、素子基板78の表面には、SiO2を主体とする下地保護層106が下地として形成され、その上にはシリコン層108が形成されている。このシリコン層108の表面には、SiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層110が形成されている。
また、シリコン層108のうち、ゲート絶縁層110を挟んでゲート電極112と重なる領域がチャネル領域108aとされている。なお、このゲート電極112は、図示しない走査線の一部である。一方、シリコン層108を覆い、ゲート電極112を形成したゲート絶縁層110の表面には、SiO2を主体とする第1層間絶縁層114が形成されている。
また、シリコン層108のうち、チャネル領域108aのソース側には、低濃度ソース領域及び高濃度ソース領域108cが設けられる一方、チャネル領域108aのドレイン側には低濃度ドレイン領域及び高濃度ドレイン領域108bが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain)構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域108cは、ゲート絶縁層110と第1層間絶縁層114とにわたって開孔するコンタクトホール116aを介して、ソース電極116に接続されている。このソース電極116は、電源線(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域108bは、ゲート絶縁層110と第1層間絶縁層114とにわたって開孔するコンタクトホール118aを介して、ソース電極116と同一層からなるドレイン電極118に接続されている。
ソース電極116及びドレイン電極118が形成された第1層間絶縁層114の上層には、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする平坦化層102が形成されている。この平坦化層102は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、TFT素子100やソース電極116、ドレイン電極118などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
そして、陽極92が、この平坦化層102の表面上に形成されると共に、該平坦化層102に設けられたコンタクトホール102aを介してドレイン電極118に接続されている。すなわち、陽極92は、ドレイン電極118を介して、シリコン層108の高濃度ドレイン領域108bに接続されている。陰極98は、GNDに接続されている。したがって、スイッチング素子としてのTFT素子100により、上記電源線から陽極92に供給され陰極98との間で流れる駆動電流を制御する。これにより、回路部104は、所望の有機EL素子84を発光させカラー表示を可能としている。
なお、有機EL素子84を駆動する回路部104の構成は、これに限定されるものではない。
機能層96は、有機膜からなる正孔注入層、中間層、発光層を含む複数の薄膜層からなり、陽極92側からこの順で積層されている。本実施形態において、これらの薄膜層は、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて成膜されている。
正孔注入層の材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体にドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸(PSS)を加えた混合物(PEDOT/PSS)や、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体を用いてもよい。
中間層は、正孔注入層と発光層との間に設けられ、発光層に対する正孔の輸送性(注入性)を向上させると共に、発光層から正孔注入層に電子が浸入することを抑制するために設けられている。すなわち、発光層における正孔と電子との結合による発光の効率を改善するものである。中間層の材料としては、例えば、正孔輸送性が良好なトリフェニルアミン系ポリマーを含んだものが挙げられる。
発光層の材料としては、例えば、赤色、緑色、青色の発光が得られるポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、PEDOT等のポリチオフェニレン誘導体、ポリメチルフェニレンシラン(PMPS)等を用いることができる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等の高分子材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクドリン等低分子材料をドープしてもよい。
このような有機EL素子84を有する素子基板78は、透明な熱硬化型エポキシ樹脂等を封着部材として用いた封着層120を介して透明な封止基板80と隙間なくベタ封止されている。
本実施形態の有機EL装置4は、後述する有機EL素子84の製造方法を用いて製造されており、発光層が略一定の膜厚を有しているため、異なる発光色が得られる機能層96R,96G,96Bにおいてそれぞれ所望の発光特性が得られる。
なお、本実施形態の有機EL装置4は、トップエミッション型に限定されず、共通電極としての陰極98を反射機能を有する不透明なAl等の導電材料を用いて成膜し、有機EL素子84の発光を陰極98で反射させて、素子基板78側から取り出すボトムエミッション型の構造としてもよい。
<有機EL素子の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL素子の製造方法について図22〜図24を参照して説明する。図22は、本実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図23及び図24は、本実施形態に係る有機EL素子の製造方法を示す概略断面図である。
本実施形態の有機EL素子の製造方法は、図22に示すように、隔壁部形成工程(ステップS10)と、隔壁部が形成された基板に表面処理を施す表面処理工程(ステップS20)と、正孔注入層形成工程(ステップS30)と、中間層形成工程(ステップS40)と、発光層形成工程(ステップS50)と、陰極形成工程(ステップS60)と、有機EL素子が形成された素子基板78と封止基板80とを接合する封止基板接合工程(ステップS70)とを少なくとも備えている。なお、素子基板78上に回路部104(図21参照)を形成する工程や回路部104に電気的に接続した陽極92を形成する工程は、公知の製造方法を用いればよく、本実施形態では詳細の説明は省略する。したがって、図23(A)〜(D)及び図24(A)〜(D)では、回路部104の図示を省略している。
図22のステップS10は、隔壁部形成工程である。ステップS10では、図23(A)に示すように、陽極92の周囲の一部を覆って陽極92ごとを区画するように隔壁部94を形成する。形成方法としては、例えば、陽極92が形成された素子基板78の表面に、感光性のフェノール樹脂又はポリイミド樹脂をおよそ1〜3μm程度の厚みで塗布する。塗布方法としては、転写法、スリットコート法などが挙げられる。そして、発光画素76の形状に対応したマスクを用いて露光し、現像することにより複数の隔壁部94を形成することができる。以降、隔壁部94により区画された発光画素76の領域を膜形成領域Aと呼ぶ。そして、ステップS20へ進む。
図22のステップS20は、表面処理工程である。ステップS20では、隔壁部94が形成された素子基板78の表面に親液処理と撥液処理とを施す。まず、酸素を処理ガスとするプラズマ処理を行い、主に無機材料からなる陽極92の表面に親液処理を施す。次に、CF4などのフッ素系ガスを処理ガスとするプラズマ処理を行い、有機材料からなる隔壁部94の表面にフッ素を導入して撥液処理を施す。そして、ステップS30へ進む。
図22のステップS30は、正孔注入層形成工程である。ステップS30では、まず、図23(B)に示すように、正孔注入輸送層形成材料を含む液状体122を膜形成領域Aに塗布する。液状体122は、例えば、溶媒としてジエチレングリコールと水(純水)とを含んでおり、正孔注入層形成材料としてPEDOT/PSSを重量比で0.5%程度含んだものを用いた。粘度がおよそ20mPa・s以下となるように溶媒の割合が調整されている。
液状体122を塗布する方法としては、第1の実施形態において説明した液状体(インク)を吐出ヘッド34のノズル56から吐出可能な吐出装置2を用いる。吐出ヘッド34とワークWである素子基板78とを対向させ、吐出ヘッド34から液状体122を吐出する。吐出された液状体122は、液滴として親液処理された陽極92に着弾して濡れ拡がる。また、乾燥後の正孔注入層の膜厚がおよそ50〜70nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。そして乾燥工程へ進む。
乾燥工程では、素子基板78を例えばランプアニール等の方法で加熱することにより、液状体122の溶媒成分を乾燥させて除去し、図23(C)に示すように膜形成領域Aの陽極92上に正孔注入層96aを形成する。なお、本実施形態では、各膜形成領域Aに同一材料からなる正孔注入層96aを形成したが、後に形成される発光層に対応して正孔注入層96aの材料を発光色ごとに変えてもよい。そしてステップS40へ進む。
図22のステップS40は、中間層形成工程である。ステップS40では、図23(D)に示すように、中間層形成材料を含む液状体124を膜形成領域Aに付与する。
液状体124は、例えば、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを含み、中間層形成材料として、前述したトリフェニルアミン系ポリマーを重量比で0.1%程度含んだものを用いた。粘度はおよそ6mPa・sである。
液状体124を塗布する方法としては、液状体122を塗布する場合と同様に、第1の実施形態の吐出装置2を用いる。乾燥後の中間層の膜厚がおよそ10〜20nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。そして乾燥工程へ進む。
乾燥工程では、素子基板78を例えばランプアニール等の方法で加熱することにより、液状体124の溶媒成分を乾燥させて除去し、図24(A)に示すように膜形成領域Aの正孔注入層96a上に中間層96cを形成する。そしてステップS50へ進む。
図22のステップS50は、発光層形成工程である。ステップS50では、図24(B)に示すように、発光層形成材料を含む液状体126R,126G,126Bをそれぞれ対応する膜形成領域Aに塗布する。
液状体126R,126G,126Bは、例えば、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを含んでおり、発光層形成材料としてPFを重量比で0.7%含んだものを用いた。粘度はおよそ14mPa・sである。
液状体126R,126G,126Bを塗布する方法は、やはり第1の実施形態の吐出装置2を用い、それぞれ異なる吐出ヘッド34に充填されて吐出される。
発光層の成膜にあたり、液状体126R,126G,126Bを膜形成領域Aに吐出むらなく、且つ必要量を安定的に吐出することができる第1の実施形態の液滴の吐出方法を用いた。すなわち、第1吐出工程では、液状体126R,126G,126Bが濡れ拡がり難い隔壁部94の近傍に液滴を吐出し、第2吐出工程では、時分割駆動により必要量に対して残りの液状体126R,126G,126Bを液滴として吐出した。第2吐出工程では、吐出量及び/又は吐出数が補正された液滴を吐出している。乾燥後の発光層の膜厚がおよそ50〜100nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。そして固化工程としての乾燥工程へ進む。
本実施形態における吐出された液状体126R,126G,126Bの乾燥工程は、一般的な加熱乾燥に比べて溶媒成分を比較的均一に乾燥可能な減圧乾燥法を用いている。第1吐出工程及び第2吐出工程により、膜形成領域Aに満遍なく必要量の液状体126R,126G,126Bが塗布されている。したがって、図24(C)に示すように、乾燥後に形成された発光層96r,96g,96bは、膜形成領域Aごとに略一定の膜厚を有する。そして、ステップS60へ進む。
図22のステップS60は、陰極形成工程である。ステップS60では、図24(D)に示すように、隔壁部94と各機能層96R,96G,96Bとを覆うように陰極98を形成する。これにより有機EL素子84が構成される。
陰極98の材料としては、ITOとCa、Ba、Al等の金属やLiF等のフッ化物とを組み合わせて用いるのが好ましい。特に機能層96R,96G,96Bに近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大きいITOを形成するのが好ましい。また、陰極98の上にSiO2、SiN等の保護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極98の酸化を防止することができる。陰極98の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。特に機能層96R,96G,96Bの熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。そして、ステップS70へ進む。
図22のステップS70は、封止基板接合工程である。ステップS70では、有機EL素子84が形成された素子基板78に透明な封着層120を塗布して、透明な封止基板80と隙間なくベタ封止する(図21参照)。さらに封止基板80の外周領域において水分や酸素等の進入を防ぐ接着層を設けて接合することが望ましい。
以上のような有機EL素子84の製造方法によれば、液滴吐出法により成膜された機能層96R,96G,96Bは、成膜むらが低減され、それぞれ略一定の膜厚の発光層96r,96g,96bを有している。したがって、成膜むらに起因する輝度むらが低減された有機EL素子84を製造することができる。
本実施形態によれば、塗布領域としての膜形成領域に必要量の液状体が安定的に付与されるので、固化工程で付与された液状体を固化すれば、膜形成領域ごとにほぼ一定の膜厚を有する発光層が形成される。したがって、発光層の膜厚ムラに起因する輝度ムラや発光ムラが低減され、有機EL素子を歩留りよく製造することができる。また、フルカラーの発光が得られる有機EL素子を歩留まりよく製造することができる。更に、膜形成領域に付与される液状体ごとに必要量が異なっていても、適正に吐出量の補正がなされ、所望の膜厚を有する発光層を形成することができる。
(第3の実施形態)
<液晶表示装置>
次に、本実施形態のカラーフィルターを備えた液晶表示装置について図25を参照して説明する。図25は、本実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す概略分解斜視図である。
本実施形態の液晶表示装置6は、図25に示すように、TFT透過型の液晶表示パネル128と、液晶表示パネル128を照明する照明装置130とを備えている。液晶表示パネル128は、3色の着色層132R,132G,132Bを有するカラーフィルター132を備えた対向基板134と、画素電極136に3端子のうちの1つが接続されたスイッチング素子としてのTFT素子138を有する素子基板140と、一対の基板134,140によって挟持された液晶(図示省略)とを備えている。また、液晶表示パネル128の外面側となる一対の基板134,140の表面には、透過する光を偏向させる上偏光板142と下偏光板144とが配設される。
対向基板134は、透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に隔壁部146によってマトリクス状に区画された複数の膜形成領域に、赤(R)、緑(G)、青(B)、3色の着色層132R,132G,132Bが形成されている。隔壁部146は、Crなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれる下層バンク148と、下層バンク148の上(図面では下向き)に形成された有機化合物からなる上層バンク150とにより構成されている。また、隔壁部146と着色層132R,132G,132Bとを覆う平坦化層としてのオーバーコート層(OC層)152と、OC層152を覆うように形成されたITOなどの透明導電膜からなる対向電極154とを備えている。対向基板134は、上記第1の実施形態の液滴の吐出方法を適用したカラーフィルター132の製造方法を用いて製造されている(実施例1〜実施例4の液滴の吐出方法うち、例えば実施例3を適用)。
素子基板140は、同じく透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜156を介してマトリクス状に形成された画素電極136と、画素電極136に対応して形成された複数のTFT素子138とを有している。TFT素子138の3端子のうち、画素電極136に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極136を囲むように格子状に配設された走査線158とデータ線160とに接続されている。
照明装置130は、例えば光源として白色のLED、EL、冷陰極管等を用い、これらの光源からの光を液晶表示パネル128に向かって出射することができる導光板や拡散板、反射板等の構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。
本実施形態の液晶表示装置6は、上記第1の実施形態の液滴の吐出方法を適用したカラーフィルター132の製造方法を用いて製造された着色層132R,132G,132Bを有する対向基板134を備えているので、色むら等の表示不具合の少ない高い表示品質を有する。
なお、液晶表示パネル128は、アクティブ素子としてTFT素子138を有したものに限らず、少なくとも一方の基板にカラーフィルターを備えるものであれば、画素を構成する電極が互いに交差するように配置されるパッシブ型の液晶表示装置でもよい。また、上下偏光板142,144は、視角依存性を改善する目的等で用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合わされたものでもよい。
<カラーフィルターの製造方法>
次に、本実施形態のカラーフィルター132の製造方法について図26を参照して説明する。図26は、本実施形態に係るカラーフィルターの製造方法を示す概略断面図である。
まず、図26(A)に示すように、対向基板134の表面に、膜形成領域Aを区画するように隔壁部146を形成する(隔壁部形成工程)。形成方法としては、真空蒸着法やスパッタ法により、CrやAlなどの金属膜又は金属化合物の膜を対向基板134の表面に遮光性を有するように成膜する。そしてフォトリソグラフィ法により、感光性樹脂(フォトレジスト)を塗布して膜形成領域Aが開口するように露光・現像・エッチングして下層バンク148を形成する。続いてフォトリソグラフィ法により、感光性の隔壁部形成材料をおよそ2μmの厚みで塗布して露光・現像し、下層バンク148上に上層バンク150を形成する。隔壁部146は、下層バンク148と上層バンク150とからなる所謂二層バンク構造となっている。なお、隔壁部146は、これに限らず、遮光性を有する感光性の隔壁部形成材料を用いて形成した上層バンク150のみの一層構造としてもよい。
次に、後の液滴の吐出工程において、吐出された液状体が膜形成領域Aに着弾して濡れ拡がるように、対向基板134の表面を親液処理する。また、吐出された液状体の一部が上層バンク150に着弾したとしても膜形成領域A内に収まるように、上層バンク150の少なくとも頭頂部を撥液処理する。
表面処理方法としては、隔壁部146が形成された対向基板134に対して、O2を処理ガスとするプラズマ処理とフッ素系ガスを処理ガスとするプラズマ処理とを行う。すなわち、膜形成領域Aが親液処理され、その後感光性樹脂からなる上層バンク150の表面(壁面を含む)が撥液処理される。なお、上層バンク150を形成する材料自体が撥液性を有していれば後者の処理を省くこともできる。
続いて、吐出装置2のステージ22に表面処理されたワークWである対向基板134を載置する。そして、図26(B)に示すように、対向基板134が載置されたステージ22と吐出ヘッド34との主走査方向への相対移動に同期して、吐出ヘッド34の複数のノズル56から例えばR(赤)の着色層形成材料が含まれた液状体162Rを液滴として膜形成領域Aに吐出する(液状体の第1吐出工程及び第2吐出工程)。他の液状体162G,162Bにおいても同様である。これにより、図26(C)に示すように、吐出むらが低減され、必要量の液状体が膜形成領域Aごとに塗布される。
次に、図26(D)に示すように、対向基板134に吐出された液状体162R,162G,162Bから溶媒成分を蒸発させて、着色層形成材料からなる着色層132R,132G,132Bを成膜する(成膜工程)。本実施形態では、液状体162R,162G,162Bに含まれる溶媒を略一定速度で乾燥することが可能な減圧乾燥装置に対向基板134をセットして減圧乾燥し、R、G、B、3色の着色層132R,132G,132Bを形成した。なお、1色の液状体を吐出して乾燥する工程を3回繰り返してもよい。
先の液滴の吐出工程において、吐出むらが低減され、必要量の液状体162R,162G,162Bが膜形成領域Aごとに安定的に塗布されているので、略一定の膜厚を有する着色層132R,132G,132Bを形成することができる。なお、着色層132R,132G,132Bの膜厚は、色ごとに設定すればよく、必ずしも3色が同一でなくてもよい。必要な膜厚の設定に基づいて、必要量の液状体162R,162G,162Bを対応する膜形成領域Aに吐出すればよい。
次に、図26(E)に示すように、着色層132R,132G,132Bと上層バンク150とを覆うように平坦化層としてのOC層152を形成する(平坦化層形成工程)。形成方法としては、スピンコート法、ロールコート法などによりアクリル系樹脂をコーティングして乾燥させる方法が挙げられる。また、感光性アクリル樹脂をコーティングしてから紫外光を照射して硬化させる方法も採用することができる。膜厚は、およそ100nmである。なお、着色層132R,132G,132Bが形成された対向基板134の表面が比較的に平坦ならば、平坦化層形成工程を省いてもよい。
次に、図26(F)に示すように、OC層152の上にITOなどからなる対向電極154を成膜する(対向電極成膜工程)。成膜方法としては、ITOなどの導電材料をターゲットとして真空中で蒸着あるいはスパッタする方法が挙げられる。膜厚は、およそ10nmである。形成された対向電極154は、適宜必要な形状(パターン)に加工される。なお、液晶表示装置6の構成によっては、対向電極154を必要としない場合もある。
このようなカラーフィルター132の製造方法によれば、上記第1の実施形態の液滴の吐出方法を適用して3色の着色層形成材料を含む液状体162R,162G,162Bを対応する膜形成領域Aに吐出しているため、乾燥後に色むらが低減され、略一定の膜厚を有する着色層132R,132G,132Bを形成することができる。すなわち、所望の光学特性を有するカラーフィルター132を製造することができる。
液晶表示装置6は、このようなカラーフィルター132を備えた対向基板134を用いて構成されているため、見映えのよいカラー表示が可能である。
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例1)上記第1の実施形態における吐出装置2の構成は、これに限定されない。例えば、ヘッドプレート12aに搭載される吐出ヘッド34の配置は、吐出される液状体の種類によってその配置を変えてもよい。
(変形例2)上記第1の実施形態の液滴の吐出方法において、膜形成領域Aの形状及び配置は、これに限定されない。例えば、ストライプ方式の配置だけでなく、モザイク方式やデルタ方式の配置においても適用できる。
(変形例3)上記第1の実施形態の液滴の吐出方法において、時分割駆動を実現する駆動波形PL1,PL2,PL3の構成は、これに限定されない。例えば、2種類の波形構成としても時分割駆動は可能である。
(変形例4)上記第2の実施形態の有機EL素子84の製造方法において、上記第1の実施形態の液滴の吐出方法を適用するのは、着色層形成材料を含む液状体126R,126G,126Bの吐出工程に限定されない。例えば、正孔注入層形成材料を含む液状体122や中間層形成材料を含む液状体124の吐出工程においても適用可能である。
(変形例5)上記第2の実施形態の有機EL装置4において、発光画素76の構成は、これに限定されない。例えば、発光画素76に備えた有機EL素子84を白色発光可能な構成とする。そして、封止基板80側に3色のカラーフィルターを備える構成とする。これによれば、同様に輝度むらが低減された見映えのよいカラー表示が可能となる。
(変形例6)上記第3の実施形態のカラーフィルター132の製造方法において、吐出される液状体は、3色に限定されない。例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)に他の色を加えた多色の液状体を吐出してもよい。