JP2014118339A - リチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢 - Google Patents

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Abstract

【課題】
匣鉢からリチウムイオン正極活物質材料への物質移動を抑えるとともに、安価で耐熱衝撃性、機械的強度に優れたリチウムイオン正極活物質製造用のセラミックコーティング匣鉢及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
無機材料からなる匣鉢本体のリチウムイオン正極活物質材料と接触する面がジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、マグネシアの何れかから選択される材料によりセラミックコーティングされたことを特徴としたリチウムイオン正極活物質製造用のセラミックコーティング匣鉢及びその製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、リチウムイオン正極活物質製造用のセラミックコーティング匣鉢に関するものである。
近年、例えば、携帯電話、ノートパソコン、ビデオカメラ等の携帯用電子機器に対する小型軽量化、駆動時間の長時間化に対する要望が高まり、これを可能とする電源としてのリチウムイオン電池の開発が進められている。リチウムイオン電池は小型軽量、高容量で充放電可能な二次電池である。
この種のリチウムイオン電池には、リチウムイオンを吸蔵、脱離し得るカーボン系材料が負極活物質材料として、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物といったリチウム含有複合酸化物が正極活物質材料として用いられており、初回の充電により、正極活物質材料から出たリチウムイオンがカーボン粒子内に入ることにより充放電が可能となる。
一般的に、正極活物質材料としてのリチウム含有複合酸化物(以下、リチウムイオン正極活物質材料と称する)は、匣鉢を用いた連続炉であるローラーハースキルン炉によって製造されている。従来、匣鉢の材質としてムライトが用いられてきたが、ムライトの欠点である高熱膨張による耐熱衝撃性を改善すべく、ムライト・コージェライトの複合材料を匣鉢の材質として用いることが主流となってきている。
また、最近では、リチウムイオン正極活物質材料の製造時に発生するアルカリ蒸気に対する耐食性を向上させるために、塩基性材料を活用したスピネル系やマグネシア系等の材質を含む匣鉢も提案されている。しかしながら、スピネル系やマグネシア系の含有率が高くなると、匣鉢の耐食性は高まるものの、熱膨張率が高くなるために、耐熱衝撃性が低くなり、かつ製造コストが高価になってしまう(例えば、特許文献1参照)。さらに、これらの材質で製造された匣鉢はその高い耐食性により、製造時に匣鉢からリチウム含有複合酸化物に物質移動が起こり、不純物が混入することがある。その結果、リチウムイオン正極活物質材料としての性能を低下させ、製品として使用することができない場合がある。
特開2009−292704号公報
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、匣鉢からリチウムイオン正極活物質材料への物質移動を抑えるとともに、安価で耐熱衝撃性、機械的強度に優れたリチウムイオン正極活物質製造用のセラミックコーティング匣鉢及びその製造方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本願発明に係るリチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢は、無機材料からなる匣鉢本体のリチウムイオン正極活物質材料と接触する面がジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、マグネシアから1種以上選択される材料によりセラミックコーティングされたことを特徴としている。
上記構成を有するリチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢は、リチウムイオン正極活物質材料から発生するアルカリイオン蒸気に対して腐食性の高いジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから1種以上選択される材料により、リチウムイオン正極活物質材料と接触する面がセラミックコーティングされている。したがって、匣鉢からリチウム含有複合酸化物への物質移動を防止することができる。
匣鉢本体を構成する無機材料としては、ムライト又はムライト・コージェライトを用いることができる。上記ジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから選択されるコーティング用材料自体で匣鉢本体を構成する場合、製造コストが極めて高価となり、耐熱衝撃性も極めて低いため、現実的ではない。これに比べ、本願発明では、耐熱衝撃性や機械的強度において最も一般的に使用されているムライト又はムライト・コージェライトといった無機材料で匣鉢本体を形成し、リチウムイオン正極活物質材料と直接接触する匣鉢本体内面のみをジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから1種以上選択されるコーティング用材料でコーティングすることにより、安価で耐熱衝撃性、機械的強度に優れたリチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢を提供することができる。
セラミックコーティングに選択される材料の純度は90.00%以上であり、かつ水と水和しないことが好ましく、純度が95.00%以上であることがより好ましい。セラミックコーティングに選択される材料の純度が90.00%未満であると、不純物のコンタミが発生しやすくなる。また、リチウムイオン正極活物質材料から発生するアルカリイオン蒸気と水和しない材料をセラミックコーティングに選択される材料として選択することで、匣鉢からリチウムイオン正極活物質材料への物質移動を防止することができる。
また、匣鉢本体のかさ比重は、0.3g/cm以上2.0g/cm以下であることが好ましい。すなわち、セラミックコーティングに供される匣鉢本体のかさ比重は、熱容量を下げて電気エネルギーを低減させ、かつ耐熱衝撃性を向上させるためには、2.0g/cm以下が好ましく、強度面等の機械的特性が匣鉢本体として使用に耐えうるには0.3g/cm以上であることが好ましい。一般的に、かさ比重が小さいほど熱容量は小さく、耐熱衝撃性も高くなる。かさ比重が0.3g/cm未満ではさらに熱容量が小さく、耐熱衝撃性も高くなるが、構造物として強度等の機械的特性が劣り、使用上において破損や亀裂が容易に発生してしまうことがある。
また、本願発明に係るリチウムイオン正極活物質製造用匣鉢の製造方法は、無機材料からなる匣鉢本体を形成する工程と、前記匣鉢本体のリチウムイオン正極活物質材料と接触する面をジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから1種以上選択される材料によりセラミックコーティングする工程とを備えることを特徴としている。
上記工程を経て製造されるリチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢は、リチウムイオン正極活物質材料物から発生するアルカリイオン蒸気に対して腐食性の高いジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから1種以上選択される材料により、リチウムイオン正極活物質材料と接触する面がセラミックコーティングされている。したがって、匣鉢からリチウムイオン正極活物質材料への物質移動を防止することができる。
匣鉢本体を構成する無機材料としては、ムライト又はムライト・コージェライトを用いることができる。上記ジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから選択されるコーティング用材料自体で匣鉢本体を構成する場合、製造コストが極めて高価となり、耐熱衝撃性も極めて低いため、現実的ではない。これに比べ、本願発明では、耐熱衝撃性や機械的強度において最も一般的に使用されているムライト又はムライト・コージェライトといった無機材料で匣鉢本体を形成し、リチウムイオン正極活物質材料と直接接触する匣鉢本体内面のみをジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから1種以上選択されるコーティング用材料でコーティングすることにより、安価で耐熱衝撃性、機械的強度に優れたリチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢の製造方法を提供することができる。
セラミックコーティングに選択される材料の純度は90.00%以上であり、かつ水と水和しないことが好ましく、純度が95.00%以上であることがより好ましい。セラミックコーティングに選択される材料の純度が90.00%未満であると、不純物のコンタミが発生しやすくなる。また、リチウムイオン正極活物質材料から発生するアルカリイオン蒸気と水和しない材料をセラミックコーティングに選択される材料として選択することで、匣鉢からリチウムイオン正極活物質材料への物質移動を防止することができる。
また、匣鉢本体のかさ比重は、0.3g/cm以上2.0g/cm以下であることが好ましい。すなわち、セラミックコーティングに供される匣鉢本体のかさ比重は、熱容量を下げて電気エネルギーを低減させ、かつ耐熱衝撃性を向上させるためには、2.0g/cm以下が好ましく、強度面等の機械的特性が匣鉢本体として使用に耐えうるには0.3g/cm以上であることが好ましい。一般的に、かさ比重が小さいほど熱容量は小さく、耐熱衝撃性も高くなる。かさ比重が0.3g/cm未満ではさらに熱容量が小さく、耐熱衝撃性も高くなるが、構造物として強度等の機械的特性が劣り、使用上において破損や亀裂が容易に発生してしまうことがある。
本願発明によれば、匣鉢からリチウムイオン正極活物質材料への物質移動を抑えるとともに、安価で耐熱衝撃性、機械的強度に優れたリチウムイオン正極活物質製造用のセラミックコーティング匣鉢及びその製造方法を提供することができる。
リチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢の斜視図である。 リチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢の側面断面図である。
以下、本願発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本願発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
図1は、本願発明に係るリチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢100の全体像を説明する斜視図である。図2は、リチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢100の側面断面図である。図1及び図2に示すように、リチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢100は、無機材料からなる匣鉢本体10と、匣鉢本体10におけるリチウムイオン正極活物質材料と接触する面である内面に形成されたセラミックコーティング層20とを備える。
匣鉢本体10を構成する無機材料としては、ムライト又はムライト・コージェライトを用いることができる。匣鉢本体10は、ムライト又はムライト・コージェライトに対して適量のバインダー材質、水分を加えて混練後、所定の型枠に流し込み、脱水乾燥して形成される。
この場合、匣鉢本体のかさ比重は、0.3g/cm以上2.0g/cm以下であることが好ましい。すなわち、セラミックコーティングに供される匣鉢本体のかさ比重は、熱容量を下げて電気エネルギーを低減させ、かつ耐熱衝撃性を向上させるためには、2.0g/cm以下が好ましく、強度面等の機械的特性が匣鉢本体として使用に耐えうるには0.3g/cm以上であることが好ましい。
そして、匣鉢本体10の匣鉢本体10におけるリチウムイオン正極活物質材料と接触する面である内面には、ジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから1種以上選択される材料によってセラミックコーティング層20が形成される。
セラミックコーティングに選択される材料の純度は90.00%以上であり、かつ水と水和しないことが好ましく、純度が95.00%以上であることがより好ましい。セラミックコーティングに選択される材料の純度が90.00%未満であると、不純物のコンタミが発生しやすくなる。また、リチウムイオン正極活物質材料から発生するアルカリイオン蒸気と水和しない材料をセラミックコーティングに選択される材料として選択することで、匣鉢からリチウム含有複合酸化物への物質移動を防止することができる。
なお、上記セラミックコーティング層20に選択される材料としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアを挙げたが、これに限定されず、リチウムイオン正極活物質材料たるリチウム含有複合酸化物(リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等)に対する優れた耐食性を有する他の材料を用いてもよく、また、例えば、アルミナとスピネル、マグネシアとスピネルといった複数の材料を組み合わせてもかまわない。なお、セラミックコーティング層20の好適な材料として挙げた窒化珪素にはα型もβ型も適用可能であるが、リチウム含有複合酸化物から発生するアルカリイオン蒸気に対して反応性が低いβ型の窒化珪素を用いることがより好ましい。
セラミックコーティング層20は、ジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから1種以上選択される所定の純度の材料を純水又はイオン交換水等の溶媒に分散させ、約80%程度の粘性を有するスラリーとした後、匣鉢本体10におけるリチウムイオン正極活物質材料と接触する面である内面にスプレーコーティングして形成させる。このときのセラミックコーティング層20の厚みは、0.1mm〜1.0mmの厚みで十分であり、このセラミックコーティング層20の厚みを薄くすることにより、より安価にリチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢を市場に提供することができる。なお、量産時にはロボット吹付機を使用してスプレーコーティング工程を自動ライン化することも可能である。
また、上記スラリー中には、各目的で有機物を添加してもよく、この場合、コーティング後に脱脂すればよい。スラリーに有機物を添加しない場合には、コーティング後、脱水乾燥のみでよい。
このようにして製造されたリチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢は、リチウムイオン正極活物質材料から発生するアルカリイオン蒸気に対して腐食性の高いジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから1種以上選択される材料により、リチウム含有複合酸化物と接触する面がセラミックコーティングされている。したがって、匣鉢からリチウムイオン正極活物質材料への物質移動を防止することができる。
[実施例]
リチウムイオン正極活物質材料たるリチウム含有複合酸化物としてリチウムニッケルコバルトマンガン系(通称3元系)を出発原料とし、各リチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢に当該出発原料を5kg入れ、ローラーハースキンにて最高温度950℃で9時間加熱後、エアー導入により炉内を降温して匣鉢及びリチウムイオン正極活物質材料の焼成物を強制冷却した。この製造工程を匣鉢使用不可能と判断されるまで繰り返して実施し、匣鉢の寿命を評価した。その結果を表1に示す。また、比較例としてスプレーコーティング工程を施していない、ムライト又はムライト・コージェライトを匣鉢本体とする匣鉢を用いて同様の試験を行った結果を表2に示す。なお、匣鉢本体は、2.8〜3.0cmのかさ比重を示すものを使用した。
表1及び表2に示すように、従来のムライト又はムライト・コージェライトのみからなる匣鉢と比較して、本願発明に係るリチウムイオン正極活物質製造用のセラミックコーティング匣鉢では、耐久性が向上し、飛躍的に使用寿命を延ばすことが可能であることが判明した。
10 匣鉢本体
20 セラミックコーティング層
100 リチウムイオン正極活物質製造用セラミックコーティング匣鉢

Claims (10)

  1. 無機材料からなる匣鉢本体のリチウムイオン正極活物質材料と接触する面がジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから1種以上選択される材料によりセラミックコーティングされたことを特徴とするリチウムイオン正極活物質製造用匣鉢。
  2. 前記無機材料がムライト又はムライト・コージェライトであることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン正極活物質製造用匣鉢。
  3. 前記セラミックコーティングに選択される前記材料の純度が90.00%以上であり、かつ水と水和しないことを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン正極活物質製造用匣鉢。
  4. 前記セラミックコーティングに選択される前記材料の純度が95.00%以上であることを特徴とする請求項3記載のリチウムイオン正極活物質製造用匣鉢。
  5. 前記匣鉢本体のかさ比重が0.3g/cm以上2.0g/cm以下であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン正極活物質製造用匣鉢。
  6. 無機材料からなる匣鉢本体を形成する工程と、
    前記匣鉢本体のリチウムイオン正極活物質材料と接触する面をジルコニア、アルミナ、窒化珪素、スピネル、又はマグネシアから1種以上選択される材料によりセラミックコーティングする工程とを備えることを特徴とするリチウムイオン正極活物質製造用匣鉢の製造方法。
  7. 前記無機材料がムライト又はムライト・コージェライトであることを特徴とする請求項6記載のリチウムイオン正極活物質製造用匣鉢の製造方法。
  8. 前記セラミックコーティングに選択される前記材料の純度が90.00%以上であり、かつ水と水和しないことを特徴とする請求項6記載のリチウムイオン正極活物質製造用匣鉢の製造方法。
  9. 前記セラミックコーティングに選択される前記材料の純度が95.00%以上であることを特徴とする請求項8記載のリチウムイオン正極活物質製造用匣鉢の製造方法。
  10. 前記匣鉢本体のかさ比重が0.3g/cm〜2.0g/cmであることを特徴とする請求項6記載のリチウムイオン正極活物質製造用匣鉢の製造方法。
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