JP2014116209A - 電極、及び電極の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電解質の保液性を高めることができる電極、及び電極の製造方法を提供すること。
【解決手段】正極金属箔25の両方の面に正極活物質層26を有する正極シート18であって、絶縁性のアルミナ短繊維33を含み、正極活物質層26を覆うコート層30を有し、アルミナ短繊維33と正極金属箔25の表面25aとの角度の平均(配向角度)は、30°以上90°以下である。
【選択図】図3

Description

本発明は、電極、及び電極の製造方法に関する。
従来から、EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)などの車両に搭載される蓄電装置としては、リチウムイオン二次電池や、ニッケル水素二次電池などがよく知られている。これらの二次電池では、金属箔の表面に活物質層を有する電極(正極及び負極)を、間にセパレータを介在させた状態で積層又は捲回するなどして形成された電極組立体を備えている。
このような二次電池の中には、活物質層の表面に無機酸化物フィラー及びバインダを含むコート層(多孔質電子絶縁層)を有するものが提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1の二次電池では、活物質層の表面に設けられたコート層によって、正極と負極とが短絡することを抑制している。
特許第4739958号公報
しかしながら、特許文献1では、無機酸化物フィラー及びバインダを含む原料塗料を電極に塗布することでコート層を形成している。このため、例えば無機酸化物フィラーとして繊維状フィラーを用いる場合には、該繊維状フィラーが電極の面に沿った方向に配向するため、繊維状フィラーの間に形成される微細な空孔も電極の面に沿った方向に延びるように形成される。このため、電解質がコート層の厚さ方向に含侵され難くなり、電解質の保液性が低下する虞がある。
この発明は、上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、電解質の保液性を高めることができる電極、及び電極の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決する電極は、金属箔の少なくとも一方の面に活物質層を有する電極であって、絶縁性の繊維状セラミックを含み、前記活物質層の少なくとも一部を覆うコート層を有し、前記繊維状セラミックと前記金属箔の面との角度の平均は、30°以上90°以下であることを要旨とする。
これによれば、活物質層の少なくとも一部を覆うコート層に含まれる繊維状セラミックは、金属箔の面に対する角度の平均が30°以上90°以下となるように配向されている。このため、コート層における微細な空孔も電極の面に垂直な方向に沿って形成される。したがって、電解質が微細な空孔によってコート層の内部まで含侵され易くなることから、電解質の保液性を高めることができる。
上記電極は、前記コート層の厚さは、0.5μm以上5μm以下であり、前記繊維状セラミックの長さは、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。
これによれば、コート層の厚さに対して繊維状セラミックが長すぎることで、該繊維状セラミックが部分的に電極の面に沿った方向に配向されることを抑制できる。したがって、電解質の保液性をより高めることができる。
また、上記課題を解決する電極の製造方法は、前記活物質層の少なくとも一部に対して、前記繊維状セラミック、及びバインダを含むセラミック合剤を塗布する塗布工程と、前記セラミック合剤の厚さ方向に静電場を発生させ、前記セラミック合剤に含まれる繊維状セラミックを、該繊維状セラミックと前記金属箔の面との角度の平均が30°以上90°以下となるように配向させる配向工程と、を含むことを要旨とする。
これによれば、セラミック合剤の厚さ方向に静電場を発生させ、セラミック合剤に含まれる繊維状セラミックを、該繊維状セラミックと金属箔の面との角度の平均が30°以上90°以下となるように配向させる。このため、コート層における微細な空孔も電極の面に垂直な方向に沿って形成される。したがって、電解質が微細な空孔によってコート層の内部まで含侵され易くなることから、電解質の保液性を高めることができる。
上記電極の製造方法は、前記繊維状セラミックは、繊維状のアルミナであることが好ましい。これによれば、静電場を発生させることで繊維状セラミックを容易に配向させることができ、電解質の保液性を好適に高めることができる。
本発明によれば、電解質の保液性を高めることができる。
リチウムイオン二次電池を模式的に示す断面図。 電極組立体を模式的に示す斜視図。 コート層の組織を拡大して模式的に示す断面図。 アルミナ短繊維の配向角度を説明するための説明図。 正極シート、及び負極シートの製造装置を模式的に示す正面図。 セラミック合剤の組織を拡大して模式的に示す断面図。
以下、電極、及び電極の製造方法の一実施形態について説明する。
図1に示すように、例えば乗用車両や産業車両などの車両に搭載される蓄電装置としてのリチウムイオン二次電池(以下「二次電池」と示す)10は、ケース11に電極組立体12が収容されている。
ケース11は、電極組立体12を収容する有底矩形箱状の本体部材11aと、該本体部材11aの開口部を閉塞する矩形板状の蓋部材11bとから構成されている。本体部材11a、及び蓋部材11bは、例えばステンレスやアルミニウムなどの金属製である。
ケース11内には、電解質として非水電解液13が充填されている。蓋部材11bには、正極端子15、及び負極端子16が外部に向かって突設されている。また、電極組立体12は、絶縁性を有する樹脂シート14に覆われた状態でケース11に収容されている。
図2に示すように、電極組立体12は、電極(第1電極、正極)としての正極シート18と、正極シート18とは極性が異なる電極(第2電極、負極)としての負極シート19と、正極シート18と負極シート19との間を絶縁する矩形シート状のセパレータ20とを有する。そして、電極組立体12は、複数の正極シート18、及び複数の負極シート19が、間にセパレータ20を介在させた状態で交互に積層され、これらが層状に重なる積層型の電極組立体である。以下の説明で「積層方向」という場合には、電極組立体12における正極シート18及び負極シート19の積層方向を意味するものとする。
負極シート19は、負極金属箔(本実施形態では銅箔)21と、該負極金属箔21における両方の面に負極活物質、導電助剤、及びバインダを含む活物質合剤を塗布し、乾燥させた負極活物質層22とを有する。
負極金属箔21の縁部19aには、負極活物質層22が形成されていない部分である負極非形成部23が負極集電タブ24として突出している。負極集電タブ24は、電極組立体12を構成する各負極シート19において同位置に同一形状で形成されている。このため、図1に示すように、電極組立体12の縁部のうち1つの縁部12aには、複数の負極集電タブ24が層状に重なった負極集電タブ群24aが突設されている。この負極集電タブ群24aには、複数の負極集電タブ24を積層方向に寄せ集めた状態で、負極端子16が溶接などにより電気的に接続される。
また、図2に示すように、正極シート18は、正極金属箔(本実施形態ではアルミニウム箔)25と、該正極金属箔25の両方の面に正極活物質、導電助剤、及びバインダを含む活物質合剤を塗布し、乾燥させた正極活物質層26とを有する。正極金属箔25の両方の面には、縁部18aから一定幅で、該縁部18aが延びる方向の全幅にわたって、正極活物質層26が形成されていない部分である正極非形成部27が設けられている。正極シート18の縁部18aには、正極集電タブ28が突出している。正極集電タブ28は、正極非形成部27を構成する正極金属箔25の一部である。
正極集電タブ28は、電極組立体12を構成する各正極シート18において同位置に同一形状で形成されている。なお、正極集電タブ28は、正極シート18と負極シート19を積層する場合に負極集電タブ24と重ならない位置に設けられている。このため、図1に示すように、電極組立体12の縁部12aには、負極集電タブ群24aとは異なる部分に、複数の正極集電タブ28が層状に重なった正極集電タブ群28aが突設される。この正極集電タブ群28aには、複数の正極集電タブ28を積層方向に寄せ集めた状態で、正極端子15が溶接などにより電気的に接続される。
積層方向から見た場合において、正極集電タブ28を除く正極金属箔25は、負極集電タブ24を除く負極金属箔21よりも小さく、且つ正極シート18において正極活物質層26が形成された部分は、負極シート19において負極活物質層22が形成された部分よりも小さい。なお、積層方向から見た場合において、負極集電タブ24を除く負極金属箔21、及び正極集電タブ28を除く正極金属箔25は、セパレータ20よりも小さい。
そして、電極組立体12において、正極集電タブ28を除く正極金属箔25(正極活物質層26)は、積層方向から見た場合に、その全体が負極シート19において負極活物質層22が形成された部分に含まれる。即ち、正極集電タブ28を除く正極非形成部27は、セパレータ20を間に介在させた状態で負極シート19の負極活物質層22と対向する。
そして、正極シート18の各正極活物質層26、及び負極シート19の各負極活物質層22は、積層方向から見てその全面が繊維状セラミックを含む絶縁性のコート層30によって覆われている。本実施形態において、正極シート18、及び負極シート19のコート層30は、同一構成であることから、正極シート18のコート層30についてのみ詳しく説明し、負極シート19のコート層30についての説明を省略する。
図3に示すように、コート層30には、絶縁性である繊維状のセラミックとしてアルミナ(酸化アルミニウム)の短繊維であるアルミナ短繊維33と、該アルミナ短繊維33同士を結着するとともに、アルミナ短繊維33と正極活物質層26とを結着するバインダ34とを含む。バインダ34は、例えばポリフッ化ビニリデンやテトラフルオロエチレンなどである。
コート層30の厚さtは、例えば0.5μm以上5μm以下であり、この場合におけるアルミナ短繊維33の平均繊維長は、例えば0.1μm以上10μm以下である。また、コート層30の厚さtは、好ましくは2μm以上4μm以下であり、この場合におけるアルミナ短繊維33の平均繊維長は、例えば0.4μm以上4μm以下である。
本明細書において、短繊維は、繊維長や生成方法によって、短繊維、長繊維、ウイスカ等の区別がなされるが、本発明の場合はいずれでも良い。また、アルミナ短繊維33の平均繊維径は、例えば1nm以上3μm以下である。
また、コート層30において各アルミナ短繊維33は、正極シート18(正極金属箔25及び正極活物質層26)の面に対して垂直な方向に沿って配向されている。詳しく説明すると、アルミナ短繊維33と正極シート18(正極金属箔25)の面との角度の平均は、30°以上90°以下であり、好ましくは40°以上80°以下である。なお、配向角度が30°以上90°以下とは、正極シート表面の法線に対して−60°以上60°以下に配向される場合を指し、配向角度が40°以上90°以下とは、正極シート表面の法線に対して−50°以上50°以下に配向される場合を指す。
なお、正極シート18の面は、正極金属箔25の表面25a、及び正極活物質層26の表面26aの少なくとも何れか一方として把握できる。以下の説明では、アルミナ短繊維33と正極シート18の面との角度の平均を「配向角度」と示す。ここで、本明細書における配向角度について詳しく説明する。
図4に示すように、正極シート18を該正極シート18の面に対して垂直な平面で切断する場合、各アルミナ短繊維33の断面は一般に楕円形となる。そして、コート層30の断面を走査型電子顕微鏡などによって観察することにより、正極シート18の面に沿った方向(以下「x方向」と示す)からの、アルミナ短繊維33の断面における楕円長軸の角度θを測定するとともに、該測定した角度θの平均(算術平均)を配向角度としている。なお、本実施形態では、コート層30を形成する際における正極金属箔25の供給方向(押出方向)Y1を上記x方向として規定している。また、図中に示すY方向は、コート層30の厚さ方向となる。
図3に示すように、このようなコート層30では、バインダ34によって結着されるアルミナ短繊維33とアルミナ短繊維33との間に、凹状である微細な空孔35が正極シート18の面に垂直な方向に沿って形成される。このような空孔35は、コート層30の厚さ方向に沿って延びることから、正極活物質層26において、縁部18aの両端に位置する端面や、縁部18aとは反対側に位置する端面に開口する空孔35が少なくなる。
また、コート層30において各空孔35の離間距離は、例えば1nm以上3μm以下の範囲に分布しており、好ましくは0.5μm以上3μm以下の範囲に分布している。
次に、正極シート18、及び負極シート19の作用について説明する。なお、正極シート18、及び負極シート19におけるコート層30の作用は同様であることから、正極シート18についてのみ詳しく説明し、負極シート19の説明を省略する。
図3に示すように、コート層30において、アルミナ短繊維33の配向角度は、例えば30°以上90°以下であり、好ましくは40°以上90°以下である。このため、コート層30における空孔35も正極シート18の面に垂直な方向に沿って形成される。したがって、正極シート18では、アルミナ短繊維33の配向角度が30°未満である従来の正極シートと比較して、非水電解液13が空孔35によってコート層30の内部まで含侵され易くなり、非水電解液13の保持性(保液性)を高めることができる。
このことは、アルミナ短繊維33の配向角度が0°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、及び80°である正極シートについて、非水電解液の保液性を評価することによって確認される。非水電解液の保液性の評価試験では、配向角度を異ならせて製作した各正極シートを幅20mm、長さ100mmの短冊状に裁断したものをサンプルとする。次に、各サンプルを減圧しながら非水電解液に3分間浸漬した後に余剰の非水電解液を軽く引き取ったときの重量W1と、室温で24時間乾燥させたときの重量W2とを測定する。なお、非水電解液には、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとを1:1:1(体積比)で混合した混合溶媒に、LiPFを1Mの濃度で溶解させたものを用いる。
そして、測定した重量W1,W2をもとに重量減少率Wを「W=(W1−W2)÷W1」の計算式を用いて算出し、該算出された重量減少率Wにて非水電解液13の保液性を評価した。表1には、重量減少率Wを算出した結果を示す。
表1に示すように、配向角度が30°以上90°(理論値)以下である場合に、重量減少率Wが有意に小さくなった。また、配向角度が40°以上90°以下である場合に、重量減少率Wがさらに小さくなった。これは、コート層において、空孔が正極金属箔の表面に垂直な方向に沿って延び易くなることから、該空孔によって、コート層の内部にまで非水電解液が毛細管現象によって含侵され易くなるためと推測される。
また、本実施形態のコート層30によれば、正極シート18の縁部における端面に開口する空孔35が少なく、充放電に伴う電極組立体12の膨張等に伴って正極シート18が積層方向から圧迫されるときに、非水電解液13が正極活物質層26やコート層30から滲みだすことを抑制できる。
また、コート層30の厚さtは、例えば0.5μm以上5μm以下であり、この場合におけるアルミナ短繊維33の平均繊維長は、例えば0.1μm以上10μm以下である。このため、コート層30の厚さtに対してアルミナ短繊維33が長すぎることによって、該アルミナ短繊維33が部分的に正極シート18の面に沿った方向に配向されることを抑制できる。即ち、正極シート18の面に沿った方向に延びる空孔35が形成され難い。このため、非水電解液13が正極シート18の面に沿った方向に排出されることを抑制できる。
また、コート層30の厚さtは、好ましくは2μm以上4μm以下であり、この場合におけるアルミナ短繊維33の平均繊維長は、例えば0.4μm以上4μm以下である。このような設定によれば、コート層30の膜厚を確保して非水電解液13の保液性を高めつつ、コート層30によって正極シート18の厚さが増加することに伴うエネルギー密度の低下を抑制できる。
コート層30において各空孔35の離間距離は、例えば1nm以上3μm以下の範囲に分布しており、好ましくは0.5μm以上3μm以下の範囲に分布している。このため、コート層30に対して均等に非水電解液13を保液させ、正極シート18(正極活物質層26)の全体で均一に電池反応をさせ易くできる。
次に、正極シート18、及び負極シート19の製造装置40について説明する。
図5に示すように、製造装置40は、負極金属箔21に形成された負極活物質層22、及び正極金属箔25に形成された正極活物質層26の全体を覆うようにコート層30を形成するための装置である。
製造装置40は、両方の面に負極活物質層22を間欠的に形成した帯状の負極金属箔21を捲回した負極ロール、又は両方の面に正極活物質層26を間欠的に形成した帯状の正極金属箔25を捲回した正極ロールをセットする図示しない供給機構部を備えている。この供給機構部には、正極活物質層26にコート層30を形成する場合には正極ロールがセットされる一方、負極活物質層22にコート層30を形成する場合には負極ロールがセットされる。
金属箔21,25の供給方向(搬送方向)Y1において、供給機構部の下流側には、活物質層22,26の表面にアルミナ短繊維33を含むセラミック合剤41を転写(塗布)する転写装置42が設けられている。ここで、セラミック合剤41は、アルミナ短繊維33、バインダ34、及びN−メチルピロリドン(NMP)などの溶媒を混練したペースト(スラリー)状の合剤が用いられる。
転写装置42は、相互に平行に配置される円柱状の第1転写ロール44、及び第2転写ロール45を有している。第1転写ロール44には、該第1転写ロール44の外周面にセラミック合剤41を塗布する合剤供給部44aが設けられている。第2転写ロール45には、該第2転写ロール45の外周面にセラミック合剤41を供給(塗布)する合剤供給部45aが設けられている。
各合剤供給部44a,45aは、各転写ロール44,45の外周面にそれぞれ塗布するセラミック合剤41の厚さを調節することで、最終的に活物質層22,26の表面に塗布されるセラミック合剤41の厚さ(膜厚)を調節可能である。なお、製造装置40では、図示しない制御装置によって合剤供給部44a,45aが制御される。
そして、転写装置42では、各転写ロール44,45がそれぞれ軸線まわりで矢印Y2に示す方向に回転することにより、セラミック合剤41が、各転写ロール44,45の隙間を通過される負極金属箔21の負極活物質層22、又は正極金属箔25の正極活物質層26の表面の全体に転写(塗布)される。
本実施形態の各転写ロール44,45は、不図示の駆動装置(例えばモータなど)により、金属箔21,25の面に垂直な方向に沿って、外周面に塗布されたセラミック合剤41を活物質層22,26と接触させ塗布する塗布位置と、セラミック合剤41を活物質層22,26と離間させ塗布しない非塗布位置とに移動可能である。
そして、本実施形態では、各転写ロール44,45が所定の時間間隔で塗布位置と非塗布位置とに移動されることにより、セラミック合剤41が、金属箔21,25に対して間欠的に形成された活物質層22,26の表面の全体にのみ塗布される。なお、製造装置40では、図示しない制御装置によって各転写ロール44,45の移動が制御される。
また、供給方向Y1における転写装置42の下流側には、セラミック合剤41の厚さ方向Y3に静電場を発生させる静電場発生装置46が設けられている。なお、厚さ方向Y3は、金属箔21,25の面に垂直な方向である。静電場発生装置46は、例えば金属箔21,25を間に挟んで対向する一対の電極である。静電場発生装置46は、電圧が印加されることにより、厚さ方向Y3に静電場を発生させる。
また、供給方向Y1における静電場発生装置46の下流側には、活物質層22,26の表面に塗布されたセラミック合剤41を乾燥させる図示しない乾燥炉が設けられている。また、供給方向Y1における乾燥炉の下流側には、負極活物質層22にコート層30を形成した負極金属箔21、又は正極活物質層26にコート層30を形成した正極金属箔25をロール状に巻き取る図示しない巻取機構部が設けられている。
次に、正極シート18、及び負極シート19(二次電池10)の製造方法について、主にコート層30の形成方法をその作用とともに説明する。なお、コート層30の形成方法やその作用は、正極シート18と負極シート19とで同一であることから、正極シート18についてのみ詳しく説明し、負極シート19についての説明を省略する。
まず、図5に示すように、別の工程にて正極金属箔25の両方の面に正極活物質層26を間欠的に形成するとともに、正極活物質層26を形成した正極金属箔25を捲回した正極ロールを準備する。
次に、正極ロールを供給機構部にセットするとともに、正極金属箔25を各転写ロール44,45の隙間に通過させ、正極金属箔25の両方の面に形成された正極活物質層26の表面の全体にセラミック合剤41を塗布する(塗布工程)。
図6に示すように、この状態において、セラミック合剤41の内部では、アルミナ短繊維33の配向角度が30°未満であり、各アルミナ短繊維33が正極金属箔25の表面25aや、正極活物質層26の表面26aに沿った方向に配向されている。
次に、図5に示すように、正極金属箔25を静電場発生装置46の間に通過させることにより、セラミック合剤41(コート層30)の厚さ方向Y3に静電場を発生させ、セラミック合剤41に含まれるアルミナ短繊維33を正極金属箔25の表面25aに垂直な方向に沿うように配向させる(配向工程)。
図3に示すように、この配向工程では、セラミック合剤41に含まれるアルミナ短繊維33を、配向角度が30°以上90°以下となるように配向(傾斜)させる。このとき、正極金属箔25(セラミック合剤41)に付与する静電場の強さは、例えば1kV/cm以上15kV/cm以下であり、好ましくは1kV/cm以上2kV/cm以下である。静電場の強さが1kV/cm未満であると、アルミナ短繊維33を十分に厚さ方向Y3に対して平行に近づけることができない。また、静電場の強さが15kV/cmを超えると、セラミック合剤41が攪乱される場合があり、アルミナ短繊維33を所定の方向に配向させることが困難となる。
次に、図5に示すように、正極金属箔25を乾燥炉に通過させ、セラミック合剤41を乾燥させることでコート層30が完成される。このとき、コート層30では、アルミナ短繊維33が正極金属箔25の表面25aに垂直な方向に沿って配向した状態が維持されたまま、アルミナ短繊維33同士がバインダ34によって結着される。このため、コート層30では、正極金属箔25の表面25aに垂直な方向に沿って空孔35が延びるように形成される。
その後、コート層30を形成した正極金属箔25を巻取機構部にてロール状に巻き取る。そして、正極活物質層26の表面26aにコート層30を形成した正極金属箔25を打ち抜き加工することにより、正極シート18が切り出されて完成される。なお、本実施形態では、正極シート18における正極集電タブ28の突出方向と、打ち抜き加工前の正極金属箔25の長手方向(供給方向Y1)とを一致させて正極シート18が切り出される。
次に、正極シート18と、該正極シート18と同様に製造された負極シート19とを、間にセパレータ20を介在させた状態で交互に積層し、電極組立体12を形成する。次に、電極組立体12をケース11に収容するとともに、負極集電タブ群24aと負極端子16とを電気的に接続し、正極集電タブ群28aと正極端子15とを電気的に接続する。
そして、ケース11に非水電解液13を充填して二次電池10が完成される。このとき、コート層30では、空孔35が正極金属箔25の表面25aに垂直な方向に沿って延びることから、空孔35が正極金属箔25の表面25aに沿った方向に延びる場合と比較して、非水電解液13が正極活物質層26に向かって、コート層30の厚さ方向から速やかに含侵される。したがって、二次電池10において非水電解液13を充填する時間を短縮できる。また、正極活物質層26における非水電解液13の充填不足が生じることを抑制できる。
したがって、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)コート層30においてアルミナ短繊維33は、配向角度が30°以上90°以下であることから、コート層30の空孔35は、各金属箔21,25の面に垂直な方向に沿って形成される。したがって、非水電解液13が空孔35によってコート層30の内部にまで含侵され易く、非水電解液13の保液性を高めることができる。
(2)コート層30の厚さtは、0.5μm以上5μm以下であり、アルミナ短繊維33の長さは、0.1μm以上10μm以下である。このため、コート層30の厚さtに対してアルミナ短繊維33が長すぎることによって、アルミナ短繊維33が部分的に金属箔21,25の面に沿った方向に配向し、空孔35が金属箔21,25の面に沿った方向へ延びることを抑制している。したがって、非水電解液13の保液性をより高めることができる。
(3)配向工程では、セラミック合剤41の厚さ方向Y3に静電場を発生させ、アルミナ短繊維33の配向角度を30°以上90°以下とする。このため、コート層30における空孔35も金属箔21,25の面と垂直な方向に沿って形成される。したがって、非水電解液13の保液性を高めることができる。
(4)繊維状セラミックとして、アルミナ短繊維33を採用している。このため、静電場を発生させることでアルミナ短繊維33を容易に配向させることができ、非水電解液13の保液性を好適に高めることができる。
(5)コート層30では、正極シート18や負極シート19の縁部における端面に開口する空孔35が少なく、充放電に伴う電極組立体12の膨張等に伴って正極シート18や負極シート19が積層方向から圧迫されるときに、非水電解液13が活物質層22,26やコート層30から滲みだすことを抑制できる。
(6)各空孔35の離間距離は、1nm以上3μm以下の範囲に分布している。このため、コート層30に対して均等に非水電解液13を保液させ、正極シート18(正極活物質層26)や負極シート19(負極活物質層22)の全体で均一に電池反応をさせ易くできる。
(7)アルミナ短繊維33が金属箔21,25の面に対して垂直な方向に沿って配向していることから、温度の上昇と低下が繰り返される場合であっても、金属箔21,25の膨張及び収縮に伴う応力をバインダ34によって吸収できる。したがって、金属箔21,25の膨張及び収縮に伴うアルミナ短繊維33の損傷によってコート層30が劣化することを抑制できる。
(8)温度上昇に伴ってセパレータ20が収縮する場合であっても、コート層30によって、正極シート18の正極活物質層26や正極非形成部27と、負極シート19の負極非形成部23とが短絡することを抑制できる。
(9)また、例えば釘のような鋭利な金属片が電極組立体12を積層方向に貫通する場合であっても、コート層30によって正極シート18と負極シート19とが短絡することを抑制できる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ コート層30は、さらに正極シート18の正極非形成部27や、負極シート19の負極非形成部23に形成されていてもよい。
○ コート層30は、正極シート18、及び負極シート19の一方に形成されていてもよい。また、コート層30は、負極活物質層22の一部や、正極活物質層26の一部を覆っていてもよい。ただし、正極シート18と負極シート19との短絡を防止する観点からは、上記実施形態のように構成されていることが好ましい。
○ コート層30には、酸化アルミニウム(アルミナ)の短繊維に代えて、酸化ケイ素、酸化アルミニウム−酸化ケイ素、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、酸化ベリリウム、炭素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ガラスなどの短繊維を用いてもよく、これらの中から2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
○ 負極金属箔21、及び正極金属箔25を構成する金属を変更してもよい。
○ 活物質層22,26へのセラミック合剤41の塗布方法としては、ロールコート法に限られず、例えばディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法など、異なるコート方法を採用できる。
○ コート層30は、セパレータ20の表面にさらに形成してもよい。
○ コート層30は、正極シート18の形状に打ち抜き加工してから正極活物質層26の表面26aに形成してもよい。負極シート19についても同様に変更できる。
○ 製造装置40において、各合剤供給部44a,45aに静電場発生装置46を設けて、各転写ロール44,45に塗布されたセラミック合剤41と活物質層22,26とを接触させる部分に静電場を発生させてもよい。即ち、セラミック合剤41の塗布とともにアルミナ短繊維33を配向させ、塗布工程と配向工程とを同時に行ってもよい。
○ 電極組立体12は、正極シート18、及び負極シート19を帯状に形成するとともに、間に帯状のセパレータ20を介在させた状態で捲回した捲回型の電極組立体としてもよい。この場合、製造装置40では、金属箔21,25に対してそれぞれ連続的に形成した活物質層22,26に対して、連続的にセラミック合剤41を塗布すればよい。
○ 正極シート18は、正極金属箔25の一方の面(片面)に活物質を塗布して形成されていてもよい。負極シート19についても同様に変更できる。
○ 上記短繊維のみに限らず、さらに、絶縁粒子を含有すると好ましい。絶縁粒子は、密集した強化繊維間に介在してコロのような役割を果し、絶縁繊維の一次元的または二次元的な配向を促進すると思われる。また、短繊維および絶縁粒子を混在させた塗布材を分散させたコート層は、絶縁粒子が短繊維の周囲に凝集して、短繊維による電解液の保持(保液)効果を一層高めることができる。
○ ニッケル水素二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電装置に具体化してもよい。
○ 車両以外に用いられる蓄電装置に具体化してもよい。
以下、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)第1電極、前記第1電極と極性が異なる第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間を絶縁するセパレータとを、有し、前記第1電極と前記第2電極とが間に前記セパレータを介在させた状態で層状に重なる電極組立体を備えた蓄電装置であって、前記第1電極、及び前記第2電極は、請求項1または2に記載の電極であることを特徴とする蓄電装置。
θ…角度、t…厚さ、Y3…厚さ方向、10…リチウムイオン二次電池(蓄電装置)、12…電極組立体、18…正極シート(電極、第1電極)、19…負極シート(電極、第2電極)、20…セパレータ、21…負極金属箔(金属箔)、22…負極活物質層(活物質層)、25…正極金属箔(金属箔)、26…正極活物質層(活物質層)、30…コート層、33…アルミナ短繊維(繊維状セラミック)、34…バインダ、41…セラミック合剤。

Claims (4)

  1. 金属箔の少なくとも一方の面に活物質層を有する電極であって、
    絶縁性の繊維状セラミックを含み、前記活物質層の少なくとも一部を覆うコート層を有し、
    前記繊維状セラミックと前記金属箔の面との角度の平均は、30°以上90°以下であることを特徴とする電極。
  2. 前記コート層の厚さは、0.5μm以上5μm以下であり、
    前記繊維状セラミックの長さは、0.1μm以上10μm以下である請求項1に記載の電極。
  3. 請求項1または2に記載の電極の製造方法であって、
    前記活物質層の少なくとも一部に対して、前記繊維状セラミック、及びバインダを含むセラミック合剤を塗布する塗布工程と、
    前記セラミック合剤の厚さ方向に静電場を発生させ、前記セラミック合剤に含まれる繊維状セラミックを、該繊維状セラミックと前記金属箔の面との角度の平均が30°以上90°以下となるように配向させる配向工程と、を含むことを特徴とする電極の製造方法。
  4. 前記繊維状セラミックは、繊維状のアルミナである請求項3に記載の電極の製造方法。
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