JP2014105669A - 高圧燃料供給ポンプ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】加圧室に吸入した燃料を加圧し、吐出弁を開弁することにより加圧された燃料を吐出する高圧燃料ポンプであって、吐出弁の下流側と上流側とを連通するリリーフ通路を備え、リリーフ通路は、吐出弁の下流側から上流側への燃料の流れを止める逆止弁を有するリリーフ弁機構B200を有し、リリーフ弁機構は、リリーフ弁B202と弁シートB201とリリーフ弁を弁シートに付勢するばねB204とリリーフ弁の開弁動作を制限するダンパ機構を備えることを特徴とする高圧燃料ポンプ。
【選択図】図6
Description
特に、燃料圧力の異常高圧を回避するための安全弁として、リリーフ弁を内部に組み込んだ高圧燃料供給ポンプに関する。
具体的には、高圧燃料供給ポンプの吸入通路と吐出通路とを近接に配し、これらに連通通路を設け、この連通通路内にリリーフ弁を設ける。また、リリーフ弁の開弁圧は、通常運転時のシステム燃料圧力より高く設定している。
エンジン運転中の燃料系の誤作動・故障時や、エンジン停止時の燃料温度上昇時のように、所定の圧力を超えて燃料圧力が上昇した時に、蓄圧室や配管系の破損を防止するために、リリーフ弁を開口させ、蓄圧室の燃料を吸入通路へ排出するようにしている。
上記の課題に対応する為にリリーフ弁の開弁圧力を高く設定することやリリーフ弁と吐出通路の間の一部にオリフィスを設けることなどが考えられる。しかし、エンジンに燃料を供給する燃料噴射弁の故障や、燃料噴射弁および高圧燃料供給ポンプなどを制御するエンジンコントロールユニット(ENGINE CONTROL UNIT:以下ECUと称す)等が故障し、コモンレール等の高圧配管内に異常高圧が発生した場合、リリーフ弁から低圧側へ開放する燃料の容量不足により、低圧側に十分に高圧配管内の圧力を開放できず、燃料圧力が高圧配管の耐圧許容値を超えてしまうという課題がある。
この機構は、弁シートに接触(着座)しているリリーフ弁が、弁シートから離脱(開弁状態)した後、開弁動作速度を制限する機構を備える構成を有する。具体的には、リリーフ弁対して、弁シートとは反対側に設けたもう一つの弁の運動に伴って体積変化する燃料で満たされた燃料室を有し、燃料室は体積変化に伴う燃料の出入りを制限することにより、リリーフ弁の運動を制限する機構である。また、燃料室は微小な隙間によってのみ低圧側と接続され、燃料室と低圧側を移動する燃料の量を制限して、燃料室の体積変化の速度を調整する構成である。
また、燃料室は微小な隙間とリリーフ弁とは別部位に、低圧側から燃料室にのみ燃料の移動を制限する逆止弁を設け、燃料室の体積が増加するときのみ、逆止弁を介して低圧側と燃料室の燃料の移動を可能にする機構を備える構成である。
これにより、燃料ポンプの吐出時の瞬間的な燃圧上昇及び配管内の圧力脈動がリリーフ弁に作用し、リリーフ弁が弁シートから離脱した後、弁の開弁動作が制限されるので、そのような機構を持たないリリーフ弁機構に比べ、高圧側から低圧側へ漏れる高圧燃料の量を低減することができる。すなわち、燃圧脈動による開弁が抑制されるので、高圧側から低圧側へ漏れる燃料の量が少なく、エネルギー効率のよい高圧燃料供給ポンプを得ることができる。
また、閉弁動作時はリリーフ弁が弁シート側へ着座する方向に移動するので、これに伴って燃料室の体積が増加し、逆止弁を介して低圧側から燃料室に燃料が流れこむことで、弁の閉弁動作速度が早まる。これにより、リリーフ弁が弁シートにより早く着座(閉弁状態)することができるので、高圧側から低圧側へ漏れる高圧燃料の量を低減することができ、エネルギー効率のよい高圧燃料供給ポンプを得ることができる。
まず図1に示すシステムの全体構成図を用いてシステムの構成と動作を説明する。
破線で囲まれた部分が高圧ポンプのポンプハウジング1を示し、この破線の中に示されている機構、部品は高圧ポンプのポンプハウジング1に一体に組み込まれていることを示す。
燃料タンク20の燃料は、エンジンコントロールユニット27(以下ECUと称す)からの信号に基づきフィードポンプ21によって汲み上げられ、適切なフィード圧力に加圧されて吸入配管28を通して高圧燃料供給ポンプの吸入入口10aに送られる。
吸入入口10aを通過した燃料は圧力脈動低減機構9、吸入通路10b、10cを介して容量可変機構を構成する電磁吸入弁機構30の吸入ポート30aに至る。
電磁吸入弁機構30は電磁コイル30bを備え、この電磁コイル30bが通電されている状態では電磁プランジャ30cが図1の右方に移動した状態で、ばね33が圧縮された状態が維持される。
このとき電磁プランジャ30cの先端に取付けられた吸入弁31が高圧ポンプの加圧室11につながる吸入口32を開く。
電磁コイル30bが通電されていない状態で、かつ吸入通路10c(吸入ポート30a)と加圧室11との間の流体差圧が無い時は、このばね33の付勢力により、吸入弁31は閉弁方向に付勢され吸入口32は閉じられた状態となっている。
後述するカムの回転により、プランジャ2が図1の下方に変位する吸入行程状態にある時は、加圧室11の容積は増加し加圧室11内の燃料圧力が低下する。この行程で加圧室11内の燃料圧力が吸入通路10c(吸入ポート30a)の圧力よりも低くなると、吸入弁31には燃料の流体差圧による開弁力(吸入弁31を図1の右方に変位させる力)が発生する。
この流体差圧による開弁力により、吸入弁31は、ばね33の付勢力に打ち勝って開弁し、吸入口32を開くように設定されている。
この状態にて、ECU27からの制御信号が電磁吸入弁30に印加されると電磁吸入弁30の電磁コイル30bには電流が流れ、それにより発生する磁気付勢力により電磁プランジャ30cが図1の右方に移動し、ばね33が圧縮された状態が維持される。その結果、吸入弁31が吸入口32を開いた状態が維持される。
電磁吸入弁30に入力電圧の印加状態を維持したままプランジャ2が吸入行程を終了し、プランジャ2が図1の上方に変位する圧縮行程に移ると、磁気付勢力は維持されたままであるので、依然として吸入弁31は開弁したままである。
加圧室11の容積は、プランジャ2の圧縮運動に伴い減少するが、この状態では、一度加圧室11に吸入された燃料が、再び開弁状態の吸入弁31を通して吸入通路10c(吸入ポート30a)へと戻されるので、加圧室の圧力が上昇することは無い。この行程を戻し行程と称す。
この状態で、ECU27からの制御信号を解除して、電磁コイル30bへの通電を断つと、電磁プランジャ30cに働いている磁気付勢力は一定の時間後(磁気的、機械的遅れ時間後)に消去される。吸入弁31にはばね33による付勢力が働いているので、電磁プランジャ30cに作用する電磁力が消滅すると吸入弁31はばね33による付勢力で吸入口32を閉じる。吸入口32が閉じるとこのときから加圧室11の燃料圧力はプランジャ2の上昇運動と共に上昇する。そして、燃料吐出口12の圧力以上になると、吐出弁ユニット8を介して加圧室11に残っている燃料の高圧吐出が行われ、コモンレール23へと供給される。この行程を吐出行程と称す。すなわち、プランジャ2の圧縮行程(下始点から上始点までの間の上昇行程)は、戻し行程と吐出行程からなる。
そして、電磁吸入弁30の電磁コイル30cへの通電を解除するタイミングを制御することで、吐出される高圧燃料の量を制御することができる。電磁コイルへ30cへの通電を解除するタイミングを早くすれば、圧縮行程中、戻し行程の割合が小さく吐出行程の割合が大きい。
すなわち、吸入通路10c(吸入ポート30a)に戻される燃料が少なく、高圧吐出される燃料は多くなる。一方、入力電圧を解除するタイミングを遅くすれば、圧縮行程中の、戻し行程の割合が大きく、吐出行程の割合が小さい。
すなわち、吸入通路10cに戻される燃料が多く、高圧吐出される燃料は少なくなる。電磁コイル30cへの通電を解除するタイミングは、ECUからの指令によって制御される。
以上のように構成することで、電磁コイル30cへの通電を解除するタイミングを制御することで、高圧吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御することが出来る。
かくして、燃料吸入口10aに導かれた燃料はポンプ本体1の加圧室11にてプランジャ2の往復動によって必要な量が高圧に加圧され、燃料吐出口12からコモンレール23に圧送される。
コモンレール23には、インジェクタ24、圧力センサ26が装着されている。インジェクタ24は、内燃機関の気筒数に合わせて装着されており、エンジンコントロールユニット(ECU)27の制御信号にしたがって開閉弁して、燃料をシリンダ内に噴射する。
吐出口(吐出側配管接続部)12はポンプハウジング1に形成されており、吸入口10aから出口12に至る燃料通路の途中に、燃料を加圧する加圧室11が形成されている。加圧室11の入り口には電磁吸入弁機構30が設けられている。吸入弁31は電磁吸入弁機構30内に設けられた吸入弁ばね33によって吸入口を閉じる方向に付勢力がかけられている。これにより電磁吸入弁機構30は燃料の流通方向を制限する逆止弁となる。これは前述したとおりである。
次に、図3、図4を用いて、上述のような機能を持った吐出弁機構8の構造に就いて説明する。
加圧室11の出口には吐出弁機構8が設けられている。吐出弁機構8はシート部材(シート部材)8a,吐出弁8b,吐出弁ばね8c,吐出弁ストッパとしての吐出弁ばねホルダ8dからなる。まずポンプハウジング1の外で、溶接部8eをレーザー溶接することにより吐出弁ユニット(吐出弁機構)8を組み立てた後、図中左側から吐出弁ユニット(吐出弁機構)8をポンプハウジング1に圧入し、圧入部8a1にて固定する。
圧入部8a1の外周部はポンプボディ内周面との間でメタル圧接シールとして機能し、加圧室11と吐出口12を液圧的に遮断する機能も備える。
圧入部8a1を通路8d1や溶接部8eよりも外側にすることで、吐出弁ばねホルダ8dの外周に通路8d1から半径方向外側に吐出された燃料の通り道を十分に確保することが可能となる。
加圧室11と吐出口12との間に燃料の差圧が無い状態では、吐出弁8bは吐出弁ばね8cによる付勢力でシート部材8aに圧着され閉弁状態となっている。加圧室11内の燃料圧力が、吐出口12の燃料圧力よりも所定の値だけ大きくなった時に初めて、吐出弁8bは吐出弁ばね8cに抗して開弁し、加圧室11内の燃料は吐出口12を経てコモンレール23へと吐出される。
吐出行程時は、図4のように、加圧室11で加圧された燃料は、吐出弁ばねホルダ8dの側面に加工された通路8d1とポンプハウジング1の隙間を通って吐出通路12へと吐出されていく。
ポンプハウジング1にはさらに、吐出弁8bの下流側と吸入通路10bを連通するリリーフ通路210、リリーフ流路211が設けられている。
リリーフ通路210、リリーフ流路211には燃料の流れを吐出通路から吸入通路10bへの一方向のみに制限するリリーフ弁B202が設けられている。
次に、図5に加圧室11内で発生する圧力オーバーシュートについて説明する。
プランジャ2が上昇運動中すなわち圧縮行程中の、戻し行程から加圧行程に移行する瞬間から、直後にかけて加圧室11内では、図5に示す圧力オーバーシュートが発生する。この現象は、閉弁に伴って加圧室の圧力が急激に上昇することによって発生し、特に加圧室11内の圧力上昇が急激であるエンジン高回転域において顕著である。
この圧力オーバーシュートにより加圧室11内の圧力は短い時間であるがリリーフ弁B202の開弁圧力よりも高くなる。加圧室11内で発生した圧力オーバーシュートは吐出口12からリリーフ通路210を経由してリリーフ弁B202へと達する。
これに対して、圧力オーバーシュートにより、リリーフ弁B202に印加される圧力は、最大で22MPa程度である。従って、リリーフ弁B202のセット開弁圧よりも高くなり、リリーフ弁B202は意図せず開弁し高圧燃料の一部が低圧通路10bへと漏れる(リリーフ弁の誤動作)。これは高圧燃料供給ポンプからコモンレール23へと吐出される高圧燃料の低下を意味し、高圧燃料供給ポンプとしての効率低下に繋がる。
一方、この現象を避ける為に、リリーフ弁B202のセット開弁圧を圧力オーバーシュート圧以上にすれば、ポンプ吐出効率が低下することはないが、異常高圧が発生した場合、燃料圧力を配管耐圧以下に抑えることができない。
燃圧脈動に起因する圧力オーバシュートは、高圧燃料系統の燃圧異常に比較して、時間的に短い時間で発生する。燃圧脈動に起因する圧力オーバシュート発生時に開弁を抑制し、高圧燃料系統の燃圧異常発生時には開弁する機構を以下で説明する。
次に、本実施例におけるリリーフ弁機構B200について、図6および図7に基づき構造を説明する。
リリーフ弁機構B200は、リリーフ弁シートB201と一体であるリリーフ弁ハウジングB206、リリーフ弁B202、リリーフ弁押さえB203、リリーフばねB204、リリーフ弁押さえガイドB208、背圧弁B209、背圧弁シートB212と一体であるばねホルダB205からなる。リリーフ弁機構B200は、サブアセンブリとしてポンプハウジング1の外部で組み立て、その後にポンプハウジング1に圧入により固定される。
まず、リリーフ弁ハウジングB206に、リリーフ弁B202、リリーフ弁押さえB203、リリーフばねB204の順に順次挿入する。また、ばねホルダB205に、背圧弁B209、リリーフ弁押さえガイドB208の順に順次挿入し、リリーフ弁押さえガイドB208をばねホルダB205に圧入固定する。リリーフ弁押さえガイドB208の形状は、有底筒状であり、その底部には、燃料が流通可能な孔B214が形成されている。
ばねホルダB205をリリーフ弁ハウジングB206に挿入し、圧入固定する。リリーフばねB204は一端でリリーフ弁押さえガイドB208に支持され、かつ他端でリリーフ弁押さえB203によって支持される。また、ばねホルダB205の固定位置によって、リリーフばねB204のセット荷重を決定する。すなわち、リリーフリリーフ弁B202の開弁圧力は、このリリーフばねB204のセット荷重によって決定される。こうしてできたサブアセンブリのリリーフ弁B200をポンプハウジング1に圧入固定する。
次に、高圧燃料供給ポンプによって燃料が正常にコモンレール23へと圧送されている場合(通常運転時)の、実施例1におけるリリーフ動作について説明する。
加圧室11内で発生した圧力オーバーシュートは、吐出通路12からリリーフ通路210およびリリーフ流路211へと伝播し、リリーフ通路口B207を通り、リリーフ弁B202へと達する。そして、弁に作用する流体力がリリーフばねB204の付勢力を上回ると、リリーフ弁B202がリリーフ弁シートB201を離れ、高圧側のリリーフ流路211と低圧側の吸入通路10bが連通状態となる。リリーフ弁B202とリリーフ弁シートB201との間を通過した燃料は、リリーフ弁ハウジングB206にあけられた逃がし通路206aを通って低圧部である吸入通路10bへ流れる。
ここで、リリーフ弁ハウジングB206の内部には、リリーフ弁B202を押さえるリリーフ弁押さえB203、リリーフ弁押さえB203を案内するリリーフ弁押さえガイドB208およびリリーフばねB204の力を受けるばねホルダB205で区画された空間を設けている。この空間内は燃料で満たされた燃料室B211を形成している。燃料室B211は、微小な隙間である微小クリアランスB210によってのみ低圧側と接続される。
微小クリアランスB210は、リリーフ弁押さえB203の外周面とリリーフ弁押さえガイドB208の内周面との間に形成される。リリーフ弁押さえB203の外周面とリリーフ弁押さえガイドB208の内周面とは、摺動可能に支持される。微小クリアランスB210は、断面積が小さく、オリフィスとしての効果を持つ程度に設定される。
高圧側の燃料が、リリーフ弁B202を押す力が、リリーフばねB204の付勢力に打ち勝つと、リリーフ弁B202がリリーフ弁シートB201から離れ、リリーフ弁機構B200は開弁状態になる。
リリーフ弁B202が開弁すると、リリーフ弁押さえB203が図の上方側に移動する。
燃料室B211内では燃料が図の上方側へ向かう圧力を受け、その圧力は、孔B214を通って、背圧弁B209に作用する。背圧弁B209には図の上方側へと移動せられる流体力(圧力)が作用し、ばねホルダB205の燃料室B211側に形成された背圧弁シートB212に着座(閉弁状態)させられる。この動作により、燃料室B211は、微小クリアランスB210とは別に、燃料室B211から低圧側への燃料の移動を遮断する逆止弁としての機能を持つ。
この構成により、リリーフ弁202の開弁動作時において、微小クリアランスB210によって、燃料室B211と低圧側を移動する燃料の量を制限し、燃料室B211の体積変化の速度を制限することが可能となる。つまり、微小クリアランスB210が大きい場合には、燃料室B211の体積変化の速度が遅く、微小クリアランスB210が小さい場合には、燃料室の体積変化の速度が早くなることを意味する。すなわち、リリーフ弁B202の運動速度は、微小クリアランスB210の断面積を調整することにより決定される。
好適には、断面積が小さいほどリリーフ弁B202の運動速度がより制限される。
これにより、リリーフ弁B202がリリーフ弁シートB201を離れ開弁動作を始めると、リリーフ弁B202の運動に伴って、燃料室B211内の体積が減少し、燃料室B211内の圧力は上昇する。これにより、リリーフ弁B202及びリリーフ弁押さえB203には開弁する動作方向とは逆向きに作用する力が発生するので、リリーフ弁B202の運動速度が制限される。
以上により、燃料ポンプの吐出時の瞬間的な燃圧上昇及び配管内の圧力脈動により、リリーフ弁B202がリリーフ弁シートB201から離脱する場合、弁の開弁動作速度が制限されるので、従来品と比較して高圧側から低圧側へ漏れる高圧燃料の量を低減することができ、誤動作による流量低下が少なく、エネルギー効率のよい高圧燃料供給ポンプを得ることができる。
また、閉弁動作時はリリーフ弁B202がリリーフ弁シートB202側へ着座する方向に移動するので、これに伴って燃料室B211の体積が増加し、ばねホルダ通路B205a及び逆止弁である背圧弁B209を介して低圧側から燃料室B211に燃料が流れこむことで、リリーフ弁B202の閉弁動作速度が早まる。これにより、リリーフ弁B202がリリーフ弁シートB201により早く着座(閉弁状態)することができるので、高圧側から低圧側へ漏れる高圧燃料の量を低減することができ、エネルギー効率のよい高圧燃料供給ポンプを得ることができる。
以上のように、通常運転時において、作用時間の短い圧力伝播(圧力オーバーシュート)が生じる場合でも、リリーフ弁B202から吸入通路10bへ漏れる高圧燃料が制限されるので、高圧燃料供給ポンプからコモンレール23へと吐出される高圧燃料の低下を抑制し、高圧燃料供給ポンプとしてのエネルギー効率が向上する。
次に、エンジンに燃料を供給する燃料噴射弁の故障や、燃料噴射弁および高圧燃料供給ポンプなどを制御するエンジンコントロールユニット(ENGINE CONTROL UNIT:以下ECUと称す)等の故障により発生した場合の、実施例1におけるリリーフ動作について説明する。
高圧配管内で発生した異常高圧はリリーフ通路210、リリーフ通路口B207を通り、リリーフ弁B202へと達する。そして、弁に作用する流体力がリリーフばねB204の付勢力を上回ると、リリーフ弁B202は弁シートB201を離れ、高圧側のリリーフ流路211と低圧側の吸入通路10bが連通状態となる。リリーフ弁B202を通過した燃料は、リリーフ弁ハウジングB206にあけられた逃がし通路206aを通って低圧部である吸入通路10bへ漏れる。
先述したように、リリーフ弁B202がリリーフ弁シートB201を離れ開弁動作を始めると、リリーフ弁B202の運動に伴って、燃料室B211内の体積が減少し、燃料室B211内の圧力は上昇する。これにより、リリーフ弁B202及びリリーフ弁押さえB203には開弁する動作方向とは逆向きに作用する力が発生するので、リリーフ弁B202の運動速度が制限される。
しかし、燃料室B211は微小クリアランスB210を有しており、微小クリアランスB211は低圧側と接続されているので、時間の経過と共に、燃料室B211の圧縮された燃料は微小クリアランスB211を介して低圧側へ開放される。これにより、リリーフ弁B202及びリリーフ弁押さえB203に対して作用していた開弁する動作方向とは逆向きの力が減衰される。したがって、リリーフ弁B202の開弁動作の制限は解除され、リリーフ弁B202は異常高圧を十分に開放するだけのリフト量を確保することが可能となるので、高圧配管内の異常高圧が減衰され、コモンレール23等の高圧燃料系統が保護される。
そこで、第一実施例とは構造の異なるリリーフ弁機構の構造について図8に基づき説明する。
第二実施例のリリーフ弁機構において、ばねホルダB205に設けられたばねホルダ通路B205aの断面積を小さく、例えば穴径を直径で50μm程度とする。つまり、ばねホルダ通路B205aがオリフィスとしての効果を持つ程度に穴径を小さくする。
リリーフ弁B202がリリーフ弁シートB201から離れた後、リリーフ弁B202の開弁運動に伴い、リリーフ弁押さえB203が図の上方側に移動する。したがって、燃料室B211内では燃料が図の上方側へ移動するに伴いばねホルダ通路B205aに燃料が流れる。したがって、ばねホルダ通路B205aの入口と出口では、オリフィス効果により圧力差が大きくなるので、燃料室B211から低圧側への燃料の移動が制限される。すなわち、逆止弁と同様の効果を得ることが可能となる。圧力損失はばねホルダ通路B205aの断面積によって調節することができる。
以上のように構成した実施例2によれば、リリーフ弁B202がリリーフ弁シートB201を離れ開弁動作を始めると、リリーフ弁B202の運動に伴って、燃料室B211内の体積が減少し、燃料室B211内の圧力は上昇する。これにより、リリーフ弁B202及びリリーフ弁押さえB203には開弁する動作方向とは逆向きに作用する力が発生するので、リリーフ弁B202の運動速度が制限される。
上記の構成において、ばねホルダB205と吸入通路10bを繋ぐ通路にオリフィスを設けることで、第一実施例における弁B209が不要となり、部品点数を削減することができ、コストダウンが可能となる。また、弁シートB212も不要となるので、仕上げ精度が必要なシート加工をする必要が無い。さらに、オリフィス通路の場合は、穴径だけの調整ですむので、加工が非常に容易となり、リリーフ弁の全長も短くすることが可能となり、レイアウトの自由度が増す。
リリーフばねB204は、燃料室B211の外側に配置され、リリーフばねB204は一端で前記リリーフ弁押さえガイドB208に支持され、かつ他端でばねホルダB205によって支持される。また、ばねホルダB205の固定位置によって、リリーフばねB204のセット荷重を決定する。すなわち、リリーフリリーフ弁B202の開弁圧力は、このリリーフばねB204のセット荷重によって決定される。こうして出来たサブアセンブリのリリーフ弁B200をポンプハウジング1に圧入固定する。
実施例1において、さらなる高圧化対応でセット開弁圧を高く設定する際には、リリーフばねB204の設定荷重をあげる必要があり、必然的に線径および全長を大きくし、リリーフばねB204を大型化しなくてはならない。すなわち、燃料室B211内の空間容積を大きくすることになり、リリーフ弁B202の運動に伴う燃料室B211内の体積減少の速度が低下する。つまり、リリーフ弁B202の開弁動作速度を制限する効果が低下することを意味する。
そこで、図9の実施例に示すように、燃料室B211の外側にリリーフばねB204を配置する構成とすることで、リリーフばねB204を大きくする大型化する場合でも、燃料室B211の容積を大きくする必要がない。また、燃料室B211の容積をさらに小さくすることが可能となるので、燃料室B211内の体積変化の速度を早めることができるので、リリーフ弁B202の開弁動作速度をより制限することが可能となる。
Claims (7)
- 加圧室に吸入した燃料を加圧し、吐出弁を開弁することにより加圧された燃料を吐出する高圧燃料ポンプであって、
前記吐出弁の下流側と上流側とを連通するリリーフ通路を備え、
前記リリーフ通路は、前記吐出弁の下流側から上流側への燃料の流れを止める逆止弁を有するリリーフ弁機構を有し、
前記リリーフ弁機構は、リリーフ弁と弁シートと前記リリーフ弁を前記弁シートに付勢するばねと前記リリーフ弁の開弁動作を制限するダンパ機構を備えることを特徴とする高圧燃料ポンプ。 - 請求項1に記載したものにおいて、
前記ばねの付勢力によって前記リリーフ弁が前記弁シートから離れて開弁する開弁圧力を設定していることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。 - 請求項2に記載したものにおいて、
前記リリーフ弁機構は、前記リリーフ弁の下流側に、燃料で満たされた燃料室を有し、前記リリーフ弁の開弁動作により、前記リリーフ弁が前記燃料室内の燃料を加圧することによって、前記リリーフ弁の開弁動作が制限されることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。 - 請求項3に記載したものにおいて、
前記燃料室の体積は、前記弁が閉弁状態から開弁状態へ運動するときは減少し、開弁状態から閉弁状態へ運動するときは増加することを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。 - 請求項4に記載したものにおいて、
前記リリーフ弁機構は、前記燃料室の内部の圧力を逃がすための微小な隙間を有することを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。 - 請求項5に記載したものにおいて、
前記リリーフ弁機構は、前記隙間と前記リリーフ弁とは別部位に、前記燃料室から外部への燃料の移動を制限する逆止弁を備えることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。 - 請求項5に記載したものにおいて、
前記リリーフ弁機構は、前記隙間と前記リリーフ弁とは別部位に、前記燃料室の内部の圧力を開放するためのオリフィス通路を設けることを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
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