JP2014098095A - β−1,3−グルカン誘導体、及びβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法 - Google Patents

β−1,3−グルカン誘導体、及びβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、β−1,3−グルカンを主鎖とする高分子であって、熱可塑性を有し、成形性に優れたβ−1,3−グルカン誘導体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、β−1,3−グルコシド結合により構成されるグルカンを主鎖とする高分子中の水酸基の少なくとも一部と、カルダノール又はその誘導体とを、エステル結合、エーテル結合、又はウレタン結合により結合させることを特徴とする、β−1,3−グルカン誘導体の製造方法、当該製造方法により製造されたβ−1,3−グルカン誘導体、前記β−1,3−グルカン誘導体を成形してなる成形体を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、β−1,3−グルコシド結合により構成されるグルカンを主鎖とし、熱可塑性に優れたβ−1,3−グルカン誘導体、及びその製造方法に関する。
近年、環境負荷低減の点から、植物由来の成分を原料とするプラスチック(バイオプラスチック)が注目されており、生分解性、成形性(熱可塑性)、強度等の要求される特性を備えたプラスチックの開発が盛んである。例えば、ポリ乳酸からなるプラスチックは、生分解性に優れているものの、機械的強度などの実用特性については開発の余地が大きい。一方で、セルロースは、地上で生産される様々なバイオマスの中で最も生産量が多い上に、樹木を構成する中心的な素材であり、構造材料としての高いポテンシャルを持っているが、熱可塑性を有しておらず、成形性が大いに劣る。天然のセルロースが強固にその構造を保つ大きな要因はセルロース鎖間の分子間水素結合であり、この分子間水素結合を弱めることが熱可塑性の獲得につながると考えられている。そこで、長鎖アルキル基やカシューナッツから抽出したカルダノールを酢酸セルロースに導入するなどによって、分子間水素結合が弱く、熱可塑性を有するセルロース誘導体が開発されている(例えば、非特許文献1参照。)。
多糖類の一種であるβ−1,3−グルカンは、グルコースがβ−1,3結合で連結された天然高分子である。セルロースとの分子構造の違いは、グルコース間の結合様式(セルロースはβ−1,4結合)だけである。β−1,3−グルカンは、セルロースと非常によく似た構造であるが、セルロースはシート構造をとるのに対して、三重らせん構造をとる。また、β−1,3−グルカンは、一般的にセルロースに比べて溶媒に溶解しやすいという特徴がある。
β−1,3−グルカンは、主に藻類や菌類などにより生産される。藻類等により生産されるβ−1,3−グルカンのうち、例えばラミナラン (laminaran)はβ−1,3結合とβ−1,6結合を含む直鎖状の多糖であり、シゾフィラン(schizophyllan)はβ−1,3結合とβ−1,6結合を含む枝分かれ状の多糖である。主鎖がβ−1,3結合からなる多糖のうち、パキマン(pachyman)は1分子に3〜6個の側鎖を持つことが(例えば、非特許文献2参照。)、レンチナン(lentinan)は主鎖のグルコース5個につき2つの側鎖グルコースを持つことが(例えば、非特許文献3参照。)、それぞれ知られている。また、カードラン(curdlan)はほぼ直鎖状ではあるが、約200のグルコース単位に1つの側鎖を持つことが知られている(例えば、非特許文献4及び5参照。)。これらに対して、微細藻類の一種であるユーグレナ(ミドリムシ)が合成・蓄積するパラミロン(paramylon)と呼ばれるβ−1,3−グルカンは、側鎖グルコースを持たない直鎖状である(例えば、非特許文献6及び7参照。)。パラミロンは、エネルギー貯蔵物質であり、ユーグレナの細胞内に卵形のマイクロサイズの粒子(パラミロン粒子)として存在している。
セルロースと同様に、パラミロンもプラスチック原料としての使用が検討されている。例えば、パラミロン粒子をギ酸に溶解することで得られる溶液や、当該溶液にポリビニルアルコールを一定量混合して得られる溶液をキャストする方法によりフィルムを製造する方法が報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献8及び9参照。)。
特開2004−331837号公報
位地正年、他2名、ポリマー・ジャーナル(Polymer Journal)、2011年、第43巻、第738〜741ページ。 ホフマン(Hoffmann)、他2名、カルボハイドレート・リサーチ(Carbohydrate Research)、1971年、第20巻、第185〜188ページ。 吉積智司、他2名、「甘味の系譜とその科学」、株式会社光琳(発行)、1986年、第358ページ。 サイトウ、他2名、アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)、1968年、第32巻、第1261〜1269ページ。 ハラダ、他2名、アチーブ・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Archives of Biochemistry and Biophysics)、1968年、第124巻、第292〜298ページ。 コバヤシ、他4名、カルボハイドレート・ポリマーズ(Carbohydrate Polymers)、2010年、第80巻、第491〜497ページ。 クラーク(Clarke)、他1名、バイオケミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)、1960年、第44巻、第161〜163ページ。 カワハラ、他1名、ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエンス(Journal of Applied Polymer Science)、2006年、第102巻、第3495〜3497ページ。 小金丸昭洋、他1名、繊維学会誌、2003年、第59巻、第11号、第457〜460ページ。
パラミロンは、セルロースと同様に熱可塑性を有していないため、成形性に劣るという問題がある。実際に、特許文献1に記載の方法で製造されたパラミロンフィルムは、破断伸びが小さく、硬いフィルムである。
本発明は、β−1,3−グルカンを主鎖とする高分子であって、良好な熱可塑性を有し、成形性に優れたβ−1,3−グルカン誘導体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、β−1,3−グルカンを構成するグルコース中の水酸基を、カルダノール又はその誘導体と結合させることによって、高分子鎖間の相互作用が弱められる結果、優れた熱可塑性を有するβ−1,3−グルカン誘導体を製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係るβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法、β−1,3−グルカン誘導体、成形体、及び成形体の製造方法は、下記[1]〜[10]である。
[1] β−1,3−グルコシド結合により構成されるグルカンを主鎖とする高分子中の水酸基の少なくとも一部と、カルダノール又はその誘導体とを、エステル結合、エーテル結合、又はウレタン結合により結合させることを特徴とする、β−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
[2] 前記高分子中の水酸基の少なくとも一部と、カルダノール又はその誘導体とを、エステル結合、エーテル結合、又はウレタン結合により結合させた後、得られたβ−1,3−グルカン誘導体中に残存している水酸基の少なくとも一部を、炭素数1〜5の短鎖脂肪酸でアシル化する、前記[1]のβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
[3] 前記カルダノールの誘導体が、カルダノール中のフェノール性水酸基と結合可能な官能基と、水酸基と結合可能な官能基とを有する有機化合物中の1の前記官能基とを、エステル結合、エーテル結合、又はウレタン結合により結合させた有機化合物である、前記[1]又は[2]のβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
[4] 前記高分子中のグルコース単位当たり、前記カルダノール又はその誘導体が結合した数が0.1以上である、前記[1]〜[3]のいずれかのβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
[5] 前記カルダノールが、3−ペンタデシルフェノールである、前記[1]〜[4]のいずれかのβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
[6] 前記高分子が、細胞内でβ−1,3−グルカンを合成する微細藻類から分離したパラミロンである、前記[1]〜[5]のいずれかのβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
[7] 前記微細藻類が、ユーグレナ植物門に属する微細藻類である、前記[6]のβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかのβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法により製造されたβ−1,3−グルカン誘導体。
[9] 前記[8]のβ−1,3−グルカン誘導体を成形してなることを特徴とする成形体。
[10] 前記[8]のβ−1,3−グルカン誘導体を成形して成形体を製造することを特徴とする成形体の製造方法。
本発明に係るβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法によって製造されたβ−1,3−グルカン誘導体は、ユーグレナ等が産生する天然のβ−1,3−グルカンよりも熱可塑性に優れており、この結果、当該β−1,3−グルカン誘導体から、簡便かつ効率よく、さらに耐水性に優れた成形体を製造することができる。
[β−1,3−グルカン誘導体及びその製造方法]
本発明に係るβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法(以下、「本発明に係る製造方法」ということがある。)は、β−1,3−グルコシド結合により構成されるグルカンを主鎖とする高分子中の水酸基の少なくとも一部と、カルダノール又はその誘導体とを、エステル結合、エーテル結合、又はウレタン結合により結合させることを特徴とする。カルダノール又はその誘導体をβ−1,3−グルコシド結合により構成されるグルカンを主鎖とする高分子にグラフト化させることにより、主鎖にカルダノール又はその誘導体がブラシ状に付与された構造を有するβ−1,3−グルカン誘導体が形成される。このグラフト化したカルダノール等によって主鎖同士の相互作用が低減する結果、機械的特性(特に靭性)が改善され、熱可塑性も付与される。さらに、グラフト化されたβ−1,3−グルカン誘導体は、カルダノールの疎水性構造が導入されることによって耐水性も改善される。
原料となる高分子としては、パラミロン等の側鎖を有さないβ−1,3−グルカンを用いてもよく、側鎖を有するβ−1,3−グルカンを原料の高分子として用いてもよい。側鎖を有するβ−1,3−グルカンとしては、パキマン、レンチナン、カードラン等が挙げられる。
原料として用いる高分子は、合成品であってもよいが、環境負荷低減の点から、生物由来のものが好ましく、植物由来のものがより好ましい。中でも、β−1,3−グルカンの分離回収が容易であることから、細胞内でβ−1,3−グルカンを合成する微細藻類から分離したβ−1,3−グルカンを原料として用いることが好ましい。
前記微細藻類としては、ユーグレナ(ユーグレナ植物門に属する微細藻類)が好ましい。ユーグレナは、栽培が容易であり、成長サイクルも早いことに加えて、光合成産物としてパラミロン粒子を細胞内に大量に蓄積するためである。ユーグレナが合成・蓄積するパラミロンは、通常700〜800個のグルコースがβ−1,3結合してなるβ−1,3−グルカンである。
なお、パラミロン等のβ−1,3−グルカンの微細藻類からの分離は、常法により行うことができる。また、パラミロン等のβ−1,3−グルカンは、水等の通常の溶媒には溶解し難いが、アルカリ水溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ギ酸、DMSO−アミン系溶媒、ジメチルホルムアミド−クロラール−ピリジン系溶媒、ジメチルアセトアミド−リチウムクロライド系溶媒、イミダゾリウム系イオン液体などに溶解可能である。
カルダノールは、カシューナッツの殻に含まれる成分であり、下記式(1)で示されるフェノール部分と直鎖状炭化水素部分からなる有機化合物である。カルダノールは、その直鎖状炭化水素部分Rが4種類存在し、通常、これらの4成分の混合物である。すなわち、3−ペンタデシルフェノール、3−ペンタデシルフェノールモノエン、3−ペンタデシルフェノールジエン、及び3−ペンタデシルフェノールトリエンである。カルダノールの直鎖状炭化水素部分Rは、樹脂の柔軟性と疎水性の向上に寄与し、フェノール部分はグラフト化に利用される反応性に富むフェノール性水酸基を有する。本発明に係る製造方法において用いられるカルダノールとしては、カシューナッツ殻液から抽出及び精製して得られたカルダノール成分を用いることが好ましい。
Figure 2014098095
カルダノールを原料高分子にグラフト化させる方法としては、カルダノールのフェノール性水酸基と原料高分子のグルコース単位中の水酸基とを連結する方法が、グラフト反応の効率や、形成されるβ−1,3−グルカン誘導体の分子構造や耐水性の点から好ましい。このようなグラフト化は、カルダノールの直鎖状炭化水素部分中の不飽和結合(二重結合)を利用するグラフト化に比べて、反応性の高いフェノール性水酸基を利用するため、より効率的なグラフト化を実現できる。また、当該グラフト化によれば、カルダノールのフェノール部分が主鎖のβ−1,3−グルカンと反応して固定化されるため、グラフト化されたカルダノールの直鎖状炭化水素部分同士の相互作用が高まり、機械的特性について所望の改善効果を得ることが可能になる。さらに、本発明に係る製造方法においては、カルダノールのフェノール性水酸基を消失させてグラフト化するため、フェノール性水酸基を利用しないグラフト化に比べて、得られるβ−1,3−グルカン誘導体の耐水性を改善する(吸水性を抑える)観点からも有利である。
グラフト化は、カルダノールのフェノール性水酸基と、原料高分子の主鎖であるβ−1,3−グルカンを構成するグルコース単位中の水酸基との脱水結合反応によって行うことができる。この結果、グルコース単位中の水酸基が結合しているグルコース炭素原子と、カルダノールのフェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子とが酸素原子を介して連結される(エーテル結合)。
また、グラフト化は、主鎖のグルコース単位中の水酸基と結合可能な官能基と、カルダノールのフェノール性水酸基と結合可能な官能基とを有する有機化合物(多官能化合物)を用いて行うこともできる。この結果、グルコース単位中の水酸基が結合しているグルコース炭素原子と、カルダノールのフェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子とが、前記多官能化合物から構成される有機連結基を介して連結される。主鎖のグルコース単位中の水酸基とカルダノールのフェノール性水酸基の両方と比較的容易に結合可能な有機化合物を用いることにより、グラフト反応効率を向上することができ、また副反応を抑制することができる。
前記多官能化合物及びそれに由来する有機連結基は、炭化水素基を含むことが好ましい。当該炭化水素基の炭素数は1以上が好ましく、2以上がより好ましく、また炭素数は20以下が好ましく、14以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。炭素数が20以下である場合には、分子の大きさが大きくなりすぎず、良好な反応性を有するため、高いグラフト化効率でβ−1,3−グルカン誘導体を製造することができる。当該炭化水素基としては、2価基であることが好ましく、水酸基と結合可能な官能基とフェノール性水酸基と結合可能な官能基とを連結する基であることがより好ましい。
当該炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基などの2価の直鎖状脂肪族炭化水素基(特に直鎖状アルキレン基);シクロヘプタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ビシクロペンタン環、トリシクロヘキサン環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、トリシクロデカン環などの2価の脂環式炭化水素基;ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニレン基などの2価の芳香族炭化水素基、これらの組み合わせからなる2価基が挙げられる。
当該炭化水素基が、芳香族炭化水素基や脂環式炭化水素基である場合、それらの剛直性から、剛性が向上されたβ−1,3−グルカン誘導体を製造することができる。一方、当該炭化水素基が直鎖状脂肪族炭化水素基である場合、その柔軟性から、樹脂の靭性が向上されたβ−1,3−グルカン誘導体を製造することができる。
前記多官能化合物を用いたグラフト化の結果、グルコース単位中の水酸基が結合している炭素原子と当該多官能化合物とは、例えば、エステル結合、エーテル結合又はウレタン結合、好ましくはエステル結合を介して結合され、カルダノールのフェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子と当該多官能化合物とは、例えば、エステル結合、エーテル結合又はウレタン結合、好ましくはエステル結合又はエーテル結合を介して結合される。
前記多官能化合物が有する、グルコース単位中の水酸基やフェノール性水酸基と結合可能な官能基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)、エポキシ基、イソシアネート基、ハロゲン基から選ばれる基が好ましい。中でもカルボキシル基、カルボン酸無水物基、ハロゲン基(特にクロライド基)が好ましい。カルダノールのフェノール性水酸基と反応させる官能基としては、特に、カルボン酸無水物基、ハロゲン基(特にクロライド基)が好ましい。グルコース単位中の水酸基と反応させる官能基としては、特にカルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)が好ましく、グラフト化前のカルボキシル基を酸ハライド化して形成することができる。
前記多官能化合物の具体例としては、ジカルボン酸、カルボン酸無水物、ジカルボン酸ハライド、モノクロロカルボン酸を挙げることができる。ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸が挙げられ、カルボン酸無水物としてはこれらのジカルボン酸の無水物が挙げられ、ジカルボン酸ハライドとしてはこれらのジカルボン酸の酸ハライドが挙げられる。モノクロロカルボン酸としては、モノクロロ酢酸、3−クロロプロピオン酸、3−フルオロプロピオン酸、4−クロロ酪酸、4−フルオロ酪酸、5−クロロ吉草酸、5−フルオロ吉草酸、6−クロロヘキサン酸、6−フルオロヘキサン酸、8−クロロオクタン酸、8−フルオロオクタン酸、12−クロロドデカン酸、12−フルオロドデカン酸、18−クロロステアリン酸、18−フルオロステアリン酸が挙げられる。
前記多官能化合物の官能基とカルダノールのフェノール性水酸基とを反応させてカルダノール誘導体を形成し、このカルダノール誘導体の官能基(多官能化合物由来の官能基)と原料高分子中の水酸基とを利用して、両者を結合させることができる。例えば、カルボン酸系の多官能化合物(ジカルボン酸、カルボン酸無水物又はモノクロロカルボン酸)をカルダノールと反応させ、当該カルダノールのフェノール性水酸基と当該多官能化合物の官能基(カルボキシル基、カルボン酸無水物基又はハロゲン基(特にクロライド基))とを反応させてカルダノール誘導体を形成し、残りの官能基(カルボキシル基)をカルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)に変換する。このカルダノール誘導体を、パラミロン等の原料高分子と反応させ、当該原料高分子の水酸基と当該カルダノール誘導体のカルボン酸ハライド基とを反応させてグラフト化を行うことができる。当該方法により、極めて効率的にグラフト化を行うことができる。
カルダノールは、グラフト化前に、カルダノールの直鎖状炭化水素部分の不飽和結合(二重結合)が水素添加され飽和結合に変換されていることが好ましい。水素添加による不飽和結合の変換率(水添率)は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましい。水素添加後のカルダノール中の不飽和結合の残存率(カルダノールの1分子当たりの不飽和結合の数)は、0.2個/分子以下が好ましく、0.1個/分子以下がより好ましい。
カルダノールは、グラフト化前に予め、水素添加を行って直鎖状炭化水素部分の不飽和結合が飽和結合に十分に変換されたものを用いることが好ましい。直鎖状炭化水素部分に不飽和結合を含まないカルダノール又はその誘導体をグラフト化することにより、副反応が抑制され、効率的にグラフト化を行うことができ、またグラフト化生成物(β−1,3−グルカン誘導体)の溶媒への溶解性低下を抑えることができる。
水素添加する方法としては、特に限定されるものではなく、通常の方法を用いることができる。触媒としては、パラジウム、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属又はニッケル、或いはこれらから選ばれる金属を活性炭素、活性アルミナ、珪藻土などの担体上に担持したものが挙げられる。反応方式としては、粉末状の触媒を懸濁攪拌しながら反応を行う
バッチ方式や、成形した触媒を充填した反応塔を用いた連続方式を採用することができる。水素添加の際の溶媒は、水素添加の方式によっては用いなくてもよいが、溶媒を使用する場合は、通常、アルコール類、エーテル類、エステル類、飽和炭化水素類が挙げられる。水素添加の際の反応温度は、特に限定されないが、通常20〜250℃、好ましくは50〜200℃に設定できる。反応温度が低すぎると水素化速度が遅くなり、逆に高すぎると分解生成物が多くなる虞がある。水素添加の際の水素圧は、通常10〜80kgf/cm(9.8×10〜78.4×10Pa)、好ましくは20〜50kgf/cm(19.6×10〜49.0×10Pa)に設定できる。
前記多官能化合物を介してカルダノールと原料高分子を結合させる場合、カルダノールの水素添加は、カルダノール誘導体を形成する前、カルダノール誘導体を形成した後グラフト化前、カルダノール誘導体のグラフト化後のいずれにおいても行うことができる。本発明においては、水素添加やグラフト化の反応効率等の観点から、カルダノール誘導体のグラフト化前が好ましく、カルダノール誘導体の形成前がさらに好ましい。
パラミロン等の原料高分子に対する、当該高分子に結合したカルダノール又はその誘導体の割合(グラフト化率)は、原料高分子中のグルコース単位当たりのカルダノール又はその誘導体の付加数(結合した数)(置換度、以下「DSCD」)によって表される。DSCDは、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましい。DSCDが低すぎる場合には、グラフト化による効果が十分に得られない場合がある。
DSCDの最大値は、理論上「3」であるが、製造(グラフト化)のし易さの観点から、2.5以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。本発明においては、DSCDが1以下の場合であっても、十分な改善効果を得ることができる。DSCDが大きくなると、引張破断歪み(靱性)が高くなる一方で最大強度(引張強度、曲げ強度)が低下する傾向がある。このため、DSCDは、β−1,3−グルカン誘導体の所望の特性に応じて適宜設定することが好ましい。
β−1,3−グルカン誘導体の置換度は、核磁気共鳴分光法(NMR法)等により測定することができる。例えば、H−NMRにより、グルコース単位中の水酸基を構成する水素原子のシグナルと、カルダノール又はその誘導体を構成する水素原子のシグナルとを区別して検出し、それぞれの積分値に基づいて置換度を求めることができる。
グラフト化処理は、パラミロン等の原料高分子、カルダノール又はその誘導体、必要に応じて前記多官能化合物を、これらを溶解できる溶媒(例えば、アルカリ水溶液、DMSO、ギ酸、N−ジメチルアセトアミド−塩化リチウム併用系など。)中で、適切な温度で加熱することによって実施できる。その際、硫酸、トルエンスルホン酸、塩化水素などの脱水触媒や、トリエチルアミン、ピリジンなどの塩基触媒を反応溶液中に添加することができる。
パラミロンを原料高分子とする場合であって、パラミロンが溶解し難い溶媒中でグラフト化反応を行う場合、あらかじめパラミロンの水酸基の一部にカルボン酸やアルコールを結合させ、分子間力を低下させることによって溶解性を変化させたパラミロン誘導体を用いることができる。当該パラミロン誘導体としては、水酸基の水素原子がアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基で置換されたアシル化パラミロンが好ましく、特に酢酸や酢酸クロライドを用いて酢酸化(アセチル化)された酢酸パラミロンが好ましい。
原料高分子中のグラフト化に利用されなかった残りのグルコース単位中の水酸基は、水酸基のままであるものと、上記のようにアセチル化等により変性されたものとがある。β−1,3−グルカン誘導体では、水酸基の量が多いほど、最大強度や耐熱性が大きくなる傾向がある一方で、吸水性が高くなる傾向がある。また、アセチル化等による変性率が高いほど、吸水性が低下し、可塑性や破断歪みが増加する傾向がある一方で、最大強度や耐熱性が低下する傾向がある。これらの傾向とグラフト化条件を考慮して、水酸基の置換率を適宜設定することができる。
吸水性や機械的強度、耐熱性、さらにグラフト化処理上の観点から、原料高分子のグルコース単位中の水酸基は、適度にアシル化されていることが好ましい。当該アシル化は、炭素数1〜5の短鎖脂肪酸を用いて行うことが好ましく、アセチル化が特に好ましい。アシル化による効果が充分に得られるため、原料高分子中のグルコース単位当たりのアシル基の付加数(置換度、DSACE)は0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.5以上がさらにより好ましい。また、グラフト化率(DSCD)を充分に確保する点から、アシル基の置換度DSACEは2.5以下が好ましく、2.2以下がより好ましい。
特に、ユーグレナから分離回収されたパラミロン中の水酸基の少なくとも一部を、ユーグレナが産生するワックスエステルの加水分解により得られた脂肪酸でアシル化することにより、植物原料の含有量の多い植物性プラスチック(β−1,3−グルカン誘導体)を製造することができる。
アシル化反応は、例えば、パラミロンを溶解させた溶液中で、塩化リチウム等のルイス酸やピリジン等の塩基の存在下、アシル化剤として前記脂肪酸の塩化物、無水物、又はビニル化合物を反応させることにより行う。反応温度、反応時間等の条件は、使用するアシル化剤の種類、所望の置換度等を考慮して適宜設定される。
脂肪酸の塩化物としては、例えば、酢酸クロリド、ブチル酸クロリド、ドデカン酸クロリド(ラウリン酸クロリド)、テトラデカン酸クロリド(ミリスチン酸クロリド)、ヘキサデカン酸クロリド(パルミチン酸クロリド)、オクタデカン酸クロリド(ステアリン酸クロリド)、ヘキサデセン酸クロリド、オクタデセン酸クロリド(オレイン酸クロリド)、オクタデカジエン酸クロリド(リノール酸クロリド)、オクタデカトリエン酸クロリド(リノレン酸クロリド)等が挙げられる。脂肪酸の無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブチル酸等が挙げられる。脂肪酸のビニル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ドデカン酸ビニル(ラウリン酸ビニル)、テトラデカン酸ビニル(ミリスチン酸ビニル)、ヘキサデカン酸ビニル(パルミチン酸ビニル)、オクタデカン酸ビニル(ステアリン酸ビニル)、ヘキサデセン酸ビニル、オクタデセン酸ビニル(オレイン酸ビニル)、オクタデカジエン酸ビニル(リノール酸ビニル)、オクタデカトリエン酸ビニル(リノレン酸ビニル)等が挙げられる。
[成形体及びその製造方法]
本発明に係る製造方法により製造されたβ−1,3−グルカン誘導体は、熱可塑性を有する高分子であり、他の熱可塑性樹脂と同様に、各種成形方法によって成形して成形体を製造することができる。成形方法は、キャスト法、射出成形法、圧縮法、インフレーション法等のような、熱可塑性樹脂の成形に通常使用されている方法の中から適宜選択して使用することができる。
天然のパラミロンの溶液からキャスト法によって成形体を製造する方法(特許文献1等に記載の方法)では、当該溶液中においてパラミロンは少なからず脱重合されるため、得られた成形体は機械的強度が低く、実用性に欠けるという問題がある。これに対して本発明に係る製造方法により製造されたβ−1,3−グルカン誘導体では、カルダノール又はその誘導体の置換度や、アシル化に用いる脂肪酸の種類や置換度等を適宜調整することによって、機械的強度を過度に犠牲にすることなく、熱可塑性を向上させることができる。
β−1,3−グルカン誘導体のみから成形してもよいが、β−1,3−グルカン誘導体とその他の成分を含む組成物から成形してもよい。当該他の成分としては、フィラー、酸化防止剤、離形剤、着色剤、分散剤、難燃助剤、難燃剤等の樹脂組成物に一般的に添加される各種添加剤が挙げられる。その他、ポリビニルアルコール等の他の樹脂との混合組成物から成形体を製造することもできる。
以下、実施例で本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
生産性に優れた藻類Euglena gracilis由来の多糖類であるパラミロンに、カシューナッツ殻の抽出物であるカルダノールの誘導体(水添カルダノキシ酢酸)を付加させ、かつアシル化した長鎖酸付加アセチルパラミロン樹脂を合成し、諸物性を、可塑剤添加アセチルセルロース、バイオプラスチックとして量産されているポリ乳酸とポリアミド11、及び耐久製品用の石油由来のABS樹脂と比較した。
(材料)
水添カルダノキシ酢酸クロライドは、m−n−ペンタデシルフェノール(ACROS Organics Co.、USA)を酸クロライド化して作製した(非特許文献1参照。)。
可塑剤添加アセチルセルロース(可塑剤添加CDA)は、アセチルセルロース用の可塑剤(TEC:Triethyl citrate、Pfizer Inc.(アメリカ合衆国))と市販のアセチルセルロース(CDA、酢酸置換度:DS=2.1、製品名:LM−80、ダイセルケミカル社(日本))をエクストルーダーで加熱混合(200℃)して得た。
ポリ乳酸(PLA)(製品名:TE−4000) はUnitika Ltd.(日本)から、ポリアミド11(Poly 11−aminoundecanoic acid:PA11)(製品名:Rilson BMFO) はArkema Japan Ltd.(日本) から、ABS樹脂(製品名:GA−701)はNippon A&L Co.(日本)から得た。
(製造例1)カルダノール導入変性パラミロン(パラミロンをカルダノールでグラフト化し、残る水酸基の一部をアセチル化したパラミロン誘導体)の製造
2Lの4ツ口フラスコに、105℃で2時間乾燥したパラミロン(7.0g)、塩化リチウム(5.5g)、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(350mL)を入れ、窒素雰囲気下、120℃で撹拌を行った。撹拌開始から約1時間後には、当該4ツ口フラスコ内の溶液は透明になった。この透明になった溶液の温度を室温に戻した後、トリエチルアミン(9.1mL)を加え、続いてカルダノキシ酢酸クロライド(16.5g)を溶かしたDMAc(350mL)を滴下して加えた後に、当該溶液を120℃に加熱しながら窒素雰囲気下で撹拌し反応させた。4時間後、当該4ツ口フラスコ内の反応溶液にメタノール・クロロホルム混合液(メタノール930mL、クロロホルム470mL)を加えて白沈を生じさせた。これを吸引濾過によって濾別し、さらに同じ組成のメタノール・クロロホルム混合液1400mLで濾紙上の当該白沈を洗浄した。その後、吸引して風乾後、減圧下で加熱乾燥(80℃、2時間)させることにより、カルダノール導入パラミロン(誘導体1p(Para−CD))を得た。
2Lナスフラスコに、前記で得た誘導体1p(Para−CD)(8.4g)と塩化リチウム(4.6g)、及びDMAc(1060mL)を入れ、窒素雰囲気下、120℃で1時間撹拌した。撹拌後、均一状態になった溶液の液温を70℃まで冷却させた後、当該溶液にピリジン(120mL)と無水酢酸(168mL)を加えて窒素雰囲気下で5時間、続いて室温で17時間撹拌し反応させた。反応終了後、反応溶液に蒸留水(2800mL)を加えて白沈を生じさせ、吸引濾過により白沈を濾別した。当該白沈を蒸留水(1800mL)に加え攪拌して洗浄し、吸引濾過後、濾紙上の当該白沈をメタノール(1400mL)で洗浄した。次いで、当該白沈を70℃で1時間、さらに、減圧下105℃で4時間、加熱乾燥させることにより、目的物(カルダノール導入パラミロンをアセチル化したパラミロン誘導体、以下、「誘導体1(Para−CD−Ac)」)を得た。
(置換度の算出)
各誘導体のH−NMRを測定し、積分値からカルダノールの置換度(DSCD)とアセチル基の置換度(DSACE)を算出した。
(数平均分子量の測定)
合成した各誘導体について、数平均分子量(M)(標準ポリスチレン換算)をゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法により、以下の条件で測定した。
GPC装置:LC−10AVP system(Shimadzu Co.、日本)、
使用カラム:Shim Pack GPC 80MC(Shimadzu Co.、日本)、
溶離液:クロロホルム、
流速:1.0mL/分、
標準試料:ポリスチレン(製品名:Shodex(登録商標)SM−105、昭和電工社製)。
(成形体)
合成した各誘導体及び市販の樹脂について、機械的特性や吸水率を測定するためのサンプル(成形体)を、射出成形機 (製品名:HAAKE Mini Jet II、Thermo Fisher Scientific Co.、ドイツ) を用い、210℃で成形した。ポリ乳酸は、成形後、結晶化処理のため、100℃で4時間加熱した。
(メルトフローレート(Melt Flow Rate)の測定)
熱可塑性の評価のため、各誘導体及び樹脂のメルトフローレート(MFR)を測定した。具体的には、キャピラリーカラム(製品名:CFT−500D、Shimadzu Co.、日本)を用い、200℃、荷重500kgf/cmで加熱した時の10分間で流下した樹脂量を測定した。サンプルは、測定前に、105℃で5時間加熱し乾燥させた。
(示差走査熱量測定)
示差熱分析計(製品名:DSC 6200/EXSTAR6000、Seiko Instrument Inc.、日本)を使用し、最初に−100〜230℃まで10℃/分で昇温し、230℃で3分間保持した後、冷却した。その後、同じ条件で昇温した時の熱量を測定し、この変曲点からガラス転移温度(Tg)を求めた。
(熱重量分析)
熱重量分析計(製品名:S2 EXSTAR 6000、Seiko Instrument Inc.、日本)を使用し、25℃から500℃まで窒素気流中で10℃/分で昇温した時の重量減量率を測定した。
(耐水性)
曲げ試験片を使い、105℃で2時間乾燥後、室温で24時間純水に浸漬した時の重量増加率を測定して吸水率を求めた。
(曲げ特性)
ASTM D790に準拠して、曲げ測定装置 (製品名:INSTRON 5567、Instron Co.、アメリカ合衆国)を用いて、最大強度、弾性率、及び破断伸びを測定した。試験片は、厚みが2.4mm、長さが40mm、幅が12.4mmとした。
各誘導体等の置換度、数平均分子量(M)、耐熱性(Tg)、耐熱分解性(5%減量温度)、熱可塑性(MFR)、耐水性(吸水率)、及び曲げ特性の結果を表1及び2に示す。表1中の「置換度」の欄の上段は、各誘導体のカルダノール基の置換度を示し、下段は、アセチル基の置換度を示す。なお、すべての試料測定は、独立した2回の試行を行い、その平均値を表に示した。また、「可塑剤添加CDA」の可塑剤TECの添加量は29質量%としたが、これは誘導体1の水添カルダノキシ酢酸の付加量(DS:0.30)に相当する量である。
Figure 2014098095
Figure 2014098095
誘導体1(Para−CD−Ac)は、優れた熱可塑性を示した。当該誘導体の熱可塑性(MFR)は、従来の植物性プラスチック等と比較した結果、可塑剤(TEC)を添加したアセチルセルロース(可塑剤添加CDA)や、従来のバイオプラスチック(PLA、PA11)、及び耐久製品用の石油原料系のABS樹脂並みであった。
誘導体1(Para−CD−Ac)の耐熱性(ガラス転移温度:Tg)は、可塑剤添加CDA、従来のバイオプラスチック(PLA、PA11)やABS樹脂より優れていた。
耐熱分解性(5%重量減少温度)に関しては、誘導体1(Para−CD−Ac)は、PLAとPA11よりやや低かったものの、良好であった。
耐水性(吸水率)については、PLA、PA11、及びABSより少し劣っていたものの、可塑剤添加CDAより大幅に良好であった。
曲げ強度については、誘導体1(Para−CD−Ac)は、PLA及びABSよりやや劣っていたが、可塑剤添加CDAやPA11と同程度であった。また、誘導体1(Para−CD−Ac)の曲げ伸びは、PLAより優れており、可塑剤添加CDA、PA11、及びABSと同程度であった。
本発明に係るβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法により製造されたβ−1,3−グルカン誘導体は、熱可塑性に優れているため、プラスチックとして好適である。特に、パラミロン等の植物由来のβ−1,3−グルカンから合成されたβ−1,3−グルカンにカルダノール又はその誘導体と結合させた誘導体は、環境負荷の低い植物性プラスチックであり、これを成形することによって生分解性に優れた成形体を製造することができる。

Claims (10)

  1. β−1,3−グルコシド結合により構成されるグルカンを主鎖とする高分子中の水酸基の少なくとも一部と、カルダノール又はその誘導体とを、エステル結合、エーテル結合、又はウレタン結合により結合させることを特徴とする、β−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
  2. 前記高分子中の水酸基の少なくとも一部と、カルダノール又はその誘導体とを、エステル結合、エーテル結合、又はウレタン結合により結合させた後、得られたβ−1,3−グルカン誘導体中に残存している水酸基の少なくとも一部を、炭素数1〜5の短鎖脂肪酸でアシル化する、請求項1に記載のβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
  3. 前記カルダノールの誘導体が、カルダノール中のフェノール性水酸基と、水酸基と結合可能な官能基を少なくとも2以上有する有機化合物中の1の前記官能基とを、エステル結合、エーテル結合、又はウレタン結合により結合させた有機化合物である、請求項1又は2に記載のβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
  4. 前記高分子中のグルコース単位当たり、前記カルダノール又はその誘導体が結合した数が0.1以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
  5. 前記カルダノールが、3−ペンタデシルフェノールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
  6. 前記高分子が、細胞内でβ−1,3−グルカンを合成する微細藻類から分離したパラミロンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
  7. 前記微細藻類が、ユーグレナ植物門に属する微細藻類である、請求項6に記載のβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のβ−1,3−グルカン誘導体の製造方法により製造されたβ−1,3−グルカン誘導体。
  9. 請求項8に記載のβ−1,3−グルカン誘導体を成形してなることを特徴とする成形体。
  10. 請求項8に記載のβ−1,3−グルカン誘導体を成形して成形体を製造することを特徴とする成形体の製造方法。
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