JP2017218566A - パラミロンエステル誘導体及び繊維 - Google Patents

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修 岩田
鈴木 健吾
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朱喜 村松
忠久 岩田
Tadahisa Iwata
忠久 岩田
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【課題】熱可塑性に優れ、透明性の高いフィルム及び繊維を作製可能な新規な素材となるパラミロンエステル誘導体を提供する。パラミロンエステル誘導体からなる新規な繊維を提供する。【解決手段】パラミロンにおける複数の水酸基の少なくとも一つが、エステル化され、アルキルカルボニル基で置換されているパラミロンエステル誘導体である。パラミロンの3つの水酸基のすべてが、同じアルキルカルボニル基で置換されたトリエステルである。アルキルカルボニル基が、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、又はラウロイル基である。パラミロンにおける複数の水酸基の少なくとも一つが、エステル化され、アルキルカルボニル基で置換されたパラミロンエステル誘導体を主成分とし、配向性を備えた透明な繊維である。【選択図】図1

Description

本発明は、パラミロンエステル誘導体及び繊維に関する。
近年、再生可能資源から合成されるバイオベースポリマーが注目を浴びている。パラミロンはミドリムシ(Euglena)などの微細藻類の光合成によって作られる多糖類であり、β-1,3-グルカンによって構成される直鎖状の高分子である。既報の研究では、プラスチックとしての応用目的でパラミロンの混合エステル化を行い、熱可塑性を付与したことが報告されている(例えば非特許文献1)。
しかし、パラミロンのモノエステルの合成及びその性質に関してはまだ報告されていない。
Shibakami et al, Carbohydr.Polym. 2015, 119, 1-7.
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、エステル基を導入し、化学修飾によりパラミロンエステルを合成し、材料化することにある。
本発明の他の目的は、パラミロンエステル誘導体からなる新規な繊維を提供することにある。
前記課題は、本発明によれば、パラミロンにおける複数の水酸基の少なくとも一つが、エステル化され、アルキルカルボニル基で置換されていることを特徴とするパラミロンエステル誘導体により解決される。
このとき、パラミロンの3つの前記水酸基のすべてが、同じ前記アルキルカルボニル基で置換されたトリエステルであるとよい。
このように構成されているので、単純な工程により、本発明のパラミロンエステル誘導体を得ることが可能となる。
また、前記アルキルカルボニル基が、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、又はラウロイル基であるとよい。
このように構成されているので、短鎖で分子量が比較的小さいパラミロンエステル誘導体とすることができる。
また、前記課題は、本発明によれば、パラミロンにおける複数の水酸基の少なくとも一つが、エステル化され、アルキルカルボニル基で置換されたパラミロンエステル誘導体を主成分とし、配向性を備えた透明な繊維により解決される。
このように構成しているので、従来にはない新規な繊維を得ることが可能となる。
本発明によれば、熱可塑性に優れ、透明性の高いフィルムを作製可能な新規な素材を提供でき、従来にはない新規な繊維を得ることが可能となる。
本発明の実施例に係るパラミロンエステル誘導体の合成スキームを示す説明図である。 本発明の実施例に係るパラミロンエステル誘導体の外観写真である。 本発明の実施例に係るパラミロンエステル誘導体の1H-NMRスペクトルである。 本発明の実施例に係るパラミロンエステル誘導体の分子量、置換度及び収率を示す表である。 本発明の実施例に係るパラミロンエステル誘導体の熱分解温度の測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係るパラミロンエステル誘導体の熱挙動測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係るパラミロンエステル誘導体を用いて作製したキャストフィルムの写真である。 本発明の実施例に係るパラミロンエステル誘導体を用いて作製したキャストフィルムの引張試験の結果を示すグラフである。 本発明の実施例に係るパラミロンエステル誘導体の広角X線回折試験の結果を示すグラフである。 本発明の実施例で用いた手回し延伸機を示す写真及び説明図である。 本発明の実施例における延伸と写真撮影とのタイミングを示す説明図である。 本発明の実施例に係るPaPr延伸フィルムのX線図である。 (a)は、本発明の実施例に係るPaPr延伸フィルムの応力−ひずみ曲線を示すグラフ、(b)は、本発明の実施例に係るPaPr,PaBu,PaVaの結晶弾性率である。 本発明の実施例で用いた溶融紡糸装置の概略説明図である。 本発明の実施例に係るPaPr繊維の外観写真である。 本発明の実施例に係るPaPr繊維の偏光顕微鏡図である。 本発明の実施例に係るPaPr繊維の応力−ひずみ曲線のグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係るパラミロンエステル誘導体について、説明する。
本実施形態のパラミロンエステル誘導体は、側鎖にアルキルカルボニル基からなるエステル基を有するパラミロンエステル誘導体である。
本実施形態のパラミロンエステル誘導体は、すべての水酸基が、同じアルキルカルボニル基により置換されたモノエステルである。つまり、パラミロンを構成する繰返し単位であるグルコースに含まれる3つの水酸基が、すべて同じアルキルカルボニル基により置換されている。
アルキルカルボニル基は、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)、バレリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、及びラウロイル基のうち少なくともいずれかである。
本実施形態のパラミロンエステル誘導体の製造方法は、パラミロンとカルボン酸とを反応させて、前記パラミロンにおける複数の水酸基の少なくとも1つをエステル化するエステル化工程を少なくとも含む。カルボン酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、及びラウリン酸の少なくともいずれかである。エステル化工程が、無水トリフルオロ酢酸の存在下、40℃〜60℃で、1時間〜6時間行われる。
<パラミロン>
本明細書において、パラミロン(paramylon)とは、ユーグレナが含有する貯蔵多糖β-グルカンであり、ユーグレナ由来のものをいう。約700個のグルコースが、β-1,3-結合により重合した高分子体である。
β-グルカンとは、β-グルコースが(1→3),(1→4)および(1→6)の結合で連なった多糖類の一群をいい、セルロース、ラミナラン、リケナン、穀類のβ-グルカン、カロース、ザイモザン等の酵母細胞壁由来のβ-グルカン、クレスチン、レンチナン、ジゾフィラン、グリフォラン、パキマン、マンネンタケ・アガリクス・ヤマブシタケ・カバノアナタケ・カワリハラタケ・メシマコブ由来のβ-グルカン等のキノコ由来のβ-グルカン、カードラン、ユーグレナ由来のパラミロン等を含む。
パラミロンは、β-グルカンの中でも、水不溶性又は水難溶性の性質を備えている。
パラミロンは、ユーグレナを、グルコースを主体とした培地上で培養することにより、その細胞内に蓄積させることができる。ユーグレナ細胞中のパラミロンは、細胞内では直径数μm程度の大きさの粒子状の形態をとり、細胞を破砕することにより簡単に取り出すことができると共に、アルコールやトルエン処理により精製することができる。
パラミロン粒子は、扁平な回転楕円体粒子であり、β-1,3-グルカン鎖がらせん状に絡まりあって形成されている。
パラミロンは、すべての種,変種のユーグレナ細胞内に顆粒として存在し、その個数,形状,粒子の均一性は、種により特徴がある。
パラミロンは、グルコースのみからなり、E. gracilis Zの野生株と葉緑体欠損株SM-ZKから得られたパラミロンの平均重合度は、グルコース単位で約700である。
パラミロンは、水,熱水には不溶性であるが、希アルカリ,濃い酸,ジメチルスルホキシド,ホルムアルデヒド,ギ酸に溶ける。
パラミロンの平均密度は、E. gracilis Zでは、1.53、E. gracilis var. bacillaris
SM-L1では、1.63である。
パラミロンは、粉末図形法を用いたX線解析によれば、3本の直鎖状β−グルカンが右巻きの縄のように捻じれあったゆるやかならせん構造をとっている。このグルカン分子がいくつか集まってパラミロン顆粒を形成する。パラミロン顆粒は、結晶構造部分が非常に多く約90%を占め、多糖類の中で最も結晶構造率の高い化合物である。また、パラミロンは、水を含みにくい(ユーグレナ 生理と生化学(北岡正三郎編、株式会社学会出版センター))。
なお、パラミロン(株式会社ユーグレナ製)の粒度分布は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定したときのメジアン径が、1.5〜2.5μmである。
パラミロン粒子は、培養されたユーグレナ属から任意の適切な方法で単離および微粒子状に精製され、通常粉末体として提供されている。
例えば、パラミロン粒子は、(1)任意の適切な培地中でのユーグレナ細胞の培養;(2)当該培地からのユーグレナ細胞の分離;(3)分離されたユーグレナ細胞からのパラミロンの単離;(4)単離されたパラミロンの精製;および必要に応じて(5)冷却およびその後の凍結乾燥により得ることができる。
パラミロンの単離は、例えば、大部分が生物分解される種類の非イオン性または陰イオン性の界面活性剤を用いて行われ得る。パラミロンの精製は、実質的には単離と同時に行われ得る。
本明細書において、「ユーグレナ」とは、動物学や植物学の分類でユーグレナ属(Euglena)に分類される微生物、その変種、その変異種のすべてを含む。
ここで、ユーグレナ属(Euglena)の微生物とは、動物学では原生動物門(Protozoa)の鞭毛虫綱(Mastigophorea)、植物鞭毛虫亜綱(Phytomastigophorea)に属するミドリムシ目(Euglenida)のユーグレノイディナ亜目(Euglenoidina)に属する微生物である。一方、ユーグレナ属の微生物は、植物学ではミドリムシ植物門(Euglenophyta)のミドリムシ藻類綱(Euglenophyceae)に属するミドリムシ目(Euglenales)に属している。
ユーグレナ属の微生物としては、具体的には、Euglena acus、Euglena caudata、Euglena chadefaudii、Euglena deses、Euglena gracilis、Euglena granulata、Euglena intermedia、Euglena mutabilis、Euglena oxyuris、Euglena proxima、Euglena spirogyra、Euglena viridis、Euglena vermiformis、Euglena intermedia, Euglena pirideなどが挙げられる。
ユーグレナ細胞としては、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis),特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株を用いることができるが、そのほか、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM−ZK株(葉緑体欠損株)や変種のvar. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株由来のβ−1,3−グルカナーゼ、Euglena intermedia, Euglena piride、及びその他のユーグレナ類、例えばAstaia longaであってもよい。
ユーグレナ属は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え,形質導入,形質転換等により得られたものも含有される。
ユーグレナ細胞の培養において、培養液としては、例えば、窒素源,リン源,ミネラルなどの栄養塩類を添加したpH2〜6の培養液、例えば、改変Cramer-Myers培地を用いることができる。そのほか、公知のHutner培地,Koren-Hutner培地を用いてもよい。ユーグレナは、明培養されても暗培養されてもよい。
なお、ユーグレナからのパラミロンの単離および精製は周知であり、例えば、E. Ziegler, "Die naturlichen und kunstlichen Aromen" Heidelberg, Germany, 1982, Chapter 4.3 "Gefriertrocken"、DE 43 28 329、または特表2003-529538号公報に記載されている。
以下、本発明を、具体的実施例により説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<パラミロンエステルの合成>
パラミロンエステルの合成スキームを、図1に示す。パラミロンエステルの合成はパラミロン、トリフルオロ酢酸無水物(TFAA)、カルボン酸を用いた不均一反応で行った。
カルボン酸として、酢酸(Ac),プロピオン酸(Pr),酪酸(ブタン酸,Bu),吉草酸(ペンタン酸,Va),カプロン酸(ヘキサン酸,He),カプリル酸(オクタン酸,Oc),カプリン酸(デカン酸,De),ラウリン酸(ドデカン酸,La)の8種類を用いて、合成を、以下の方法で行った。
1.パラミロン((株)ユーグレナより供試)2.0g,無水トリフルオロ酢酸80ml,カルボン酸40ml(但し、ラウリン酸は40g)を、50℃で1時間反応させた。
2.メタノール/水の混合溶液で析出させた。
3.クロロホルム溶液に溶解した。
4.メタノール/水の混合溶液で再沈殿させた。
5.24時間真空乾燥を行い、生成物を得た。
生成物は、1H-NMRにより、次の式にて置換度(DS)を算出した。
DS=(Iacyl/3)/(IringH/7) … 式
Iacyl: アルキル側鎖のメチル基(3つの水素)のピーク面積
IringH: リングプロトン(7つの水素)のピーク面積
この1H-NMRの結果により、いずれの生成物も、置換度は3となり、3つの水酸基がすべて置換され、反応が完全に進行したと考えられた。8つの生成物のうち、酪酸のパラミロンエステルであるPaBuの1H-NMRスペクトルを、図3に示す。
また、得られたポリマーの分子量(Mw)は、GPCを用いて算出した。各ポリマーの分子量,置換度及び収率を、図4に示す。
熱特性は、TGAとDSCを用いて測定した。
熱分解温度の測定(TGA)の結果を、図5に示す。
図5の結果より、パラミロンのエステル化により、5%質量減少温度と50%質量減少温度は、いずれも約50℃上がり、熱安定性が向上することが分かった。
また、熱分解温度は、ポリ塩化ビニル(50%質量減少温度が約350℃)やポリアセタール(5%質量減少温度が約313℃)に近い値を示していた。
熱挙動測定(DSC)の結果を、図6に示す。
1st runにおいて、PaAc-PaHeでは結晶融解由来と思われる吸熱ピークが現れたが、PaOc-PaLaではみられなかった。したがって、PaAc-PaHeは結晶質、PaOc-PaLaは非晶質であり、側鎖長を変えることにより、結晶性の制御ができ、また、114℃から281℃までと幅広く融点(Tm)の制御も可能であった。
PaAcからPaVaまでは、それぞれ石油由来汎用プラスチックのPET(Tm=264℃)とPP(Tm=175℃)より高い融点を示し、より熱的に安定であることが示唆された。
また、ソルベントキャスト法でキャストフィルムを作製し、引張試験を行った。
キャストフィルムは、上記方法による合成で得られた8種類のパラミロンエステル0.25g,クロロホルム10ml(但し、PaAcに対しては、クロロホルムの代わりにジクロロメタンを使用)として、ソルベントキャスト法により作製した。
作製したキャストフィルムのうち、PaAc,PaPr,PaBu,PaOcの外観写真を、図7に示す。図7に示すように、ソルベントキャスト法により透明性の高いキャストフィルムを得た。
また、作製したキャストフィルムの引張試験を行った。結果を、図8に示す。
図8より、側鎖長を変えることにより、さまざまな引張強度と破断伸びを有するもの、すなわち硬質から軟質のポリマーを得ることができた。
更に、上記方法による合成で得られた8種類のパラミロンエステルについて、広角X線回折試験を行った。結果を、図9に示す。側鎖長の短いPaAc及びPaPrに回折ピークが多数現れ、比較的結晶性が高いことが分かった。
図9の結果より、PaBuやPaVaはPaAcとPaPrに比べて結晶性が低いと考えられた。
側鎖が長くなるにしたがって5°付近(主鎖間の回折)の回折ピークが低角側にシフトしており、面間隔が大きくなる傾向にあった。
以上の各試験より、上記方法による合成で得られた8種類のパラミロンエステル生成物
の5%質量減少温度(Td_5%)が元のパラミロンの280℃より約50℃高い値(330℃)を示したことから、エステル化によりパラミロンの熱安定性を向上させるパラミロンの熱安定性を向上させることができることが分かった。
DSC測定では、側鎖の短いパラミロンエステル(PaAcからPaHeまで)においては結晶融解由来とみられる吸熱ピークが現れたが、側鎖長の長いもの(PaOcからPaLaまで)では現れなかった(図6)。したがって、PaAcからPaHeまでの試料は結晶性であり、PaOcからPaLaまでは非晶質であると考えられた。結晶性を示したものは側鎖長が長くなるにしたがって融点が低下した。
キャストフィルムを用いた引張試験では、側鎖長が長くなるにつれて、よい伸びを示したが、引張強度は低い傾向にあった(図8)。側鎖長の短いものでは伸びは小さいが高い強度を示し、一方で側鎖長が長いものでは破断伸びは増大し、柔軟性が向上する傾向が見られた。
以上のように、不均一反応を用いて、パラミロンに長さの異なるエステル基を導入し、トリエステル誘導体の合成及び熱可塑性の付与に成功した。
パラミロンエステルの側鎖長を変えることにより、結晶性、融点と引張強度を制御することができた。また、PaAc-PaHeは結晶性を示し、PaOc-PaLaは非晶性であると考えられた。
PaAcとPaPrは石油由来の高分子であるPETやポリプロピレンより熱的に優れている。
ソルベントキャスト法により透明性の高いキャストフィルムを得ることができ、それを用いた引張試験では弾性率の異なるものが得られた。
<結晶弾性率の測定>
以上で得られたパラミロンのトリエステル誘導体のうち、結晶性を示したPaPr,PaBu,PaVaについて、延伸フィルムの繊維軸に平行する結晶弾性率の測定を行った。結晶弾性率の測定では、繊維軸に垂直な格子面のひずみが1%変化する過程での応力を記録し、応力−ひずみ曲線にプロットし、算出した弾性率を結晶弾性率とした。
具体的には、結晶弾性率の測定は、次の手順で行った。
まず、次の1〜3の手順により、熱延伸フィルムを作製した。
1.溶融クエンチ法により、ホットプレス機で、PaPrのキャストフィルムを非晶性フィルムにした。
2.非晶性フィルムを手回し延伸機に取付け、オーブンの中で熱延伸を行った。
手回し延伸機を、図10に示す。延伸機は、パソコンと繋げ、随時の応力を確認できるようにした。
3.事前に温度設定を行ったオーブンの中でアニーリングを行った。
延伸倍率は4倍、アニーリング時間は1時間とした。
作製した熱延伸フィルムを用いて、結晶弾性率を測定した。結晶弾性率の測定は、大型放射光施設Spring-8のBL45XUビームライン(波長0.1nm)にて行った。検出器はPILATUS,延伸速度は0.2mm/分であった。
X線は、1秒おきに写真を撮るため、その時間の応力を求めるため、延伸機と時間を合せた。延伸と写真撮影とのタイミングを、図11に示す。
PaPr延伸フィルムのX線図を、図12に示す。繊維軸方向に応力を加えるため、子午線上の回折点で求めた面間隔の変化を用い、ひずみを計算した。PaPrの応力−ひずみ曲線を、図13(a)に、PaPr,PaBu,PaVaの結晶弾性率を、図13(b)に、示す。得られた結晶弾性率は、セルロースエステルより比較的低い値を示した。
<溶融紡糸>
パラミロンのトリエステル誘導体のうち、結晶性を示したPaPrについて、溶融紡糸法を用い、図14の溶融紡糸装置を用いて、繊維化を行った。
繊維化の条件は、溶融温度250℃、溶融時間5分、押出速度0.5mm/秒、最大巻き取り速度180m/分とした。
得られた繊維,糸の外観を、図15に示す。図15に示すように、PaPrは、少し色が着いていたが、比較的透明な繊維を得ることができた。PaPrは、巻き取り機の比較的高い巻き取り速度でも、連続的な紡糸ができた。
得られたPaPr繊維の偏光顕微鏡図を、図16に示す。得られたPaPr繊維は、配向していた。
また、得られたPaPr繊維の応力−ひずみ曲線を、図17に示す。
以上の結果より、PaPrは、適切な条件で連続的な紡糸に成功した。得られた繊維は、高い配向性を示していた。

Claims (4)

  1. パラミロンにおける複数の水酸基の少なくとも一つが、エステル化され、アルキルカルボニル基で置換されていることを特徴とするパラミロンエステル誘導体。
  2. 前記パラミロンの3つの前記水酸基のすべてが、同じ前記アルキルカルボニル基で置換されたトリエステルであることを特徴とする請求項1記載のパラミロンエステル誘導体。
  3. 前記アルキルカルボニル基が、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、又はラウロイル基であることを特徴とする請求項1又は2記載のパラミロンエステル誘導体。
  4. パラミロンにおける複数の水酸基の少なくとも一つが、エステル化され、アルキルカルボニル基で置換されたパラミロンエステル誘導体を主成分とし、配向性を備えた透明な繊維。
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