JP2015081326A - カルダノール類縁体を用いたセルロース系樹脂およびその製造方法 - Google Patents

カルダノール類縁体を用いたセルロース系樹脂およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】力学的物性の改善されたセルロース系樹脂を低コストで提供する。【解決手段】セルロース又はその誘導体のセルロース水酸基と、カルダノール類縁体のフェノール性水酸基を利用して、そのセルロース又はその誘導体に、カルダノール及びカードルを含有し該カードルの含有量が3.0質量%以上であるカルダノール類縁体が結合されてなるセルロース系樹脂。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース系樹脂およびその製造方法に関する。
植物を原料とするバイオプラスチックは、石油枯渇対策や温暖化対策に寄与できるため、包装、容器、繊維などの一般製品に加え、電子機器、自動車等の耐久製品への利用も開始されている。
しかし、通常のバイオプラスチック、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカネート、デンプン変性物などは、いずれもデンプン系材料、すなわち可食部を原料としている。そのため、将来の食料不足への懸念から、非可食部を原料とする新しいバイオプラスチックの開発が求められている。
非可食部を原料とするバイオプラスチックとしては、すでに、非可食部である木材や草木の主要成分であるセルロースを利用した種々のバイオプラスチックが開発され、製品化されている。
セルロースは、β−グルコースが重合した高分子であるが、結晶性が高いため、硬くて脆く、熱可塑性もない。さらに、多くの水酸基を含有するため吸水性が高く、耐水性が低い。そこで、セルロースの特性を改善するための種々の検討が行われている。
例えば、特許文献1には、水酸基を有するセルロースアセテートにε−カプロラクトンを開環グラフト重合させてなる、熱可塑性を有する生分解性グラフト重合体が開示されている。
一方、セルロース以外の非可食部成分を利用した材料の開発も行われている。例えば、カシューナッツの殻由来のカルダノールは、安定した生産量に加え、特徴的な分子構造から機能性にも優れているため、様々な用途に適用されている。
カルダノールを利用した例として、特許文献2には、アラミドパルプとセルロース繊維からなる繊維基材、炭酸カルシウムとカシューダストからなる充填材、及びフェノール樹脂からなる結合材を用いて形成されたブレーキ用の摩擦材が開示されている。特許文献3には、アラミド繊維とセルロース繊維からなるベース基材、グラファイトとカシューダストからなる充填材、及び有機無機複合バインダを用いて形成された摩擦材が開示されている。この摩擦材は、自動車等の動力伝達系のクラッチフェーシングに適用されることが記載されている。
非特許文献1には、紙シートをカルダノールに浸し、この紙シートを構成するセルロースにカルダノールを結合するグラフト化反応を行うことによって、紙の耐水性を向上できることが記載されている。このグラフト化反応においては、ボロントリフルオリドジエチルエーテル(BF3−OEt2)の存在下で、カルダノールの末端二重結合とセルロースのヒドロキシ基が結合することが記載されている。
また、特許文献4には、カルダノールが導入されたセルロース誘導体が記載され、このセルロース誘導体は、熱可塑性、機械的特性および耐水性が改善されたことが記載されている。特許文献5には、カルダノール及びアビエチン酸が導入されたセルロース誘導体が記載され、このセルロース誘導体は、熱可塑性、機械的特性および耐水性が改善されたことが記載されている。
特開平11−255801号公報 特開平10−8035号公報 特開2001−32869号公報 国際公開第2011/043279号 国際公開第2011/043280号
George John et al.,Polymer Bulletin,22,p.89−94(1989)
熱可塑性を有するカルダノール付加セルロース樹脂の製造に用いられているカルダノールは、Cashew Nut Shell Liquid(CNSL)を蒸留して不純物であるカードルを2.5質量%程度まで低減し、さらに水素添加によって構造中の不飽和結合数を0.1個未満に低減した純度の高いカルダノールであり、製造エネルギーや原料の汎用性の面で課題があった。
また、カルダノール付加セルロース樹脂の用途拡大のためには、力学的物性(強度・弾性率)を改善する必要があった。
本発明の目的は、力学的物性が改善されたセルロース系樹脂を低コストで提供することにある。
本発明の一態様によれば、セルロース又はその誘導体のセルロース水酸基と、カルダノール類縁体のフェノール性水酸基を利用して、該セルロース又はその誘導体に、カルダノール及びカードルを含有し該カードルの含有量が3.0質量%以上であるカルダノール類縁体又はその誘導体が結合されてなるセルロース系樹脂が提供される。
本発明の他の態様によれば、上記のセルロース系樹脂をベース樹脂として含む樹脂組成物が提供される。
本発明の他の態様によれば、上記樹脂組成物からなる成形用材料が提供される。
本発明の他の態様によれば、セルロースの水酸基及びカルダノール類縁体のフェノール性水酸基と反応できる多官能化合物を、カルダノール及びカードルを含有し該カードルの含有量が3.0質量%以上であるカルダノール類縁体と反応させて該カルダノール類縁体の誘導体を形成する工程と、
前記カルダノール類縁体の誘導体をセルロース又はその誘導体と反応させ、該セルロース又はその誘導体に該カルダノール類縁体の誘導体を結合させる工程を有するセルロース系樹脂の製造方法が提供される。
本発明の実施形態によれば、力学的物性が改善されたセルロース系樹脂を低コストで提供することができる。
本発明の実施形態によるセルロース系樹脂は、セルロース(又はその誘導体)に、カルダノール及びカードルを含み、カードルの含有量が3.0質量%以上のカルダノール類縁体をグラフト状に結合(以下「グラフト結合」)させたものである。この結合は、セルロース又はその誘導体のセルロース水酸基と、カルダノール類縁体のフェノール性水酸基を利用して行うことができる。例えば、前記セルロース水酸基が結合しているセルロース炭素原子と、前記フェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子を有機連結基を介して連結することができる。この有機連結基は、前記セルロース炭素原子に結合するエステル結合等の結合基と、前記カルダノール炭素原子に結合するエーテル結合等の結合基を含むことができる。また、このような有機連結基は、これらの結合基間に、炭素数1〜20の2価の炭化水素基を含むことができる。
このようなグラフト結合によるセルロース(又はその誘導体)のグラフト化によって、セルロース系樹脂の機械的特性(特に曲げ強度、弾性率)を改善することができる。また、比較的低いエネルギーで製造できる汎用性の高い原料を利用できるため、低コストで製造することができる。
加えて、カルダノール類縁体の側鎖の不飽和結合の量を特定の範囲に制御することで、セルロース系樹脂の熱安定性(特に曲げ強度保持率)を改善することができる。カルダノール類縁体の側鎖の平均の不飽和結合数は0.1個以上0.9個以下であることが好ましい。
また、このグラフト化によって良好な熱可塑性が付与されるため、可塑剤の添加量を低減あるいは可塑剤を添加しなくてもよくなる。その結果、可塑剤を加えたセルロース系樹脂に比べて耐熱性や強度(特に剛性)の低下を抑えることができ、また樹脂の均質性を高めることができ、ブリードアウトの問題も解消できる。さらに、石油原料からなる可塑剤の添加量を低減または無添加にできるため、結果、植物性を高めることができる。加えて、セルロースとカルダノール類縁体は、いずれも植物の非可食部であるため、非可食部の利用率を高めることができる。
セルロースは、下記式(1)で示されるように、β−D−グルコース分子(β−D−グルコピラノース)がβ(1→4)グリコシド結合により重合した直鎖状の高分子である。セルロースを構成する各グルコース単位は三つの水酸基(−OH)を有している。これらの水酸基を利用して、カルダノール類縁体(又はその誘導体)をグラフト結合することができる。
Figure 2015081326
セルロースは、草木類の主成分であり、草木類からリグニン等の他の成分を分離処理することによって得られる。このように得られたものの他、セルロース含有量の高い綿やパルプを精製してあるいはそのまま用いることができる。
セルロース(又はその誘導体)の重合度は、グルコース重合度として、50〜5000の範囲が好ましく、100〜3000がより好ましい。重合度が低すぎると、製造した樹脂の強度、耐熱性などが十分でない場合がある。逆に、重合度が高すぎると、製造した樹脂の溶融粘度が高くなりすぎて成形に支障をきたす場合がある。
本実施形態において原料として用いられるセルロース(又はその誘導体)には、類似の構造のキチンやキトサンが混合されていてもよく、混合されている場合は、混合物全体に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
ここでセルロース誘導体としては、これらの水酸基の一部をアシル化、エーテル化、又はグラフト化したものが挙げられる。具体的には、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート等の有機酸エステル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース等の無機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロース等の混成エステル;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のエーテル化セルロース等が挙げられる。また、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、ε−カプロラクトン、ラクチド、グリコリドなどをグラフト化させたセルロースが挙げられる。これらのアシル化セルロース、エーテル化セルロース、及びグラフト化セルロースは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態におけるセルロース(又はその誘導体)は、例えば、その水酸基の一部がアシル化された、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート及びセルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種のアシル化セルロースを好適に用いることができる。
本明細書では、セルロース誘導体の用語は、セルロース化合物、及びセルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物のいずれも含む意味で用いる。
本発明の実施形態において原料として使用するカルダノール類縁体は、カシューナッツの殻に含まれるCashew Nut Shell Liquid(CNSL)から得られるものを用いることができる。CNSLは、アナカルド酸、カルダノール、カードル、2−メチルカードルの混合物であり、各成分は、下記式(2)〜(5)で示されるフェノール部分と直鎖状炭化水素部分からなる有機化合物である。また、各成分は、直鎖状炭化水素部分Rにおいて不飽和結合数が0個、1個、2個又は3個である4種類が存在する。天然のCNSLは下記式(2)で示されるアナカルド酸が主成分である。
このような天然のCNSLは、工業用とするために脱炭酸処理が施され、下記式(3)で示したカルダノールが主成分となる。工業用のCNSLに含まれる各成分の割合は、産地などによる変動はあるが、概ねカルダノール(3):70〜80質量%、カードル(4):15〜25質量%、2−メチルカードル(5):5質量%以下である。工業用のCNSLを蒸留することでカルダノールの割合を高くできる。
本実施形態において原料として好適に用いることができるカルダノール類縁体は、下記式(3)で示されるカルダノール及び下記式(4)で示されるカードルを含む混合物であり、このカードルの含有量が3.0質量%以上含有するものである。
このカルダノール類縁体は、セルロース系樹脂の所望の力学的物性を得る点から、カルダノールが主成分であることが好ましく、カルダノールの含有量は50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。コスト低減及び力学的物性の観点から、カルダノールの含有量は、97質量%以下が好ましく、94質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。カードルの含有量は、コスト低減及び力学的物性(特に弾性率)の観点から、3.0質量%以上が好ましく、6.0質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、また、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。カルダノール類縁体は、所望の効果が得られる範囲内で、式(2)で示されるアナカルド酸や式(5)で示される2−メチルカードル等の他の成分が含まれていてもよい。アナカルド酸の含有量は、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。2−メチルカードルの含有量は、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。さらに、アナカルド酸及び2−メチルカードルの合計の含有量は、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。
本実施形態におけるカルダノール類縁体のカードル含有量は、3.0質量%以上、より好ましくは6.0質量%以上の範囲で好適に使用できる。従って、既に工業用に処理されたCNSLが、所望の組成を有していれば蒸留することなく使用することができ、蒸留をするにしても分離能の低い方法(たとえば単蒸留)を選択できるため、製造エネルギーを低減でき、原料の準備にかかるコストを低減することができる。
Figure 2015081326
式(2)〜(5)のそれぞれにおいて、Rは以下に示される構造のいずれかを有する。
R:−(CH214CH3
−(CH27CH=CH(CH25CH3
−(CH27CH=CHCH2CH=CH(CH22CH3
−(CH27CH=CHCH2CH=CHCH2CH=CH2
式(2)〜(5)のいずれかで示される各化合物は、一種又はRの異なる二種以上の化合物からなる。
カルダノール類縁体の直鎖状炭化水素部分は樹脂の柔軟性と疎水性の向上に寄与し、フェノール部分はグラフト化に利用される反応性に富むフェノール性水酸基を有する。このようなカルダノール類縁体(又はその誘導体)をセルロース(又はその誘導体)にグラフト化させると、カルダノール類縁体(又はその誘導体)がブラシ状に付与されたセルロース系構造体が形成され、この結果、このグラフト結合したカルダノール類縁体同士の相互作用によって機械的特性(特に靭性)を改善できるとともに、熱可塑性も付与でき、さらにカルダノール類縁体の疎水性によって耐水性を改善できる。更に、カードル含有量が3.0質量%以上のカルダノール類縁体を用いることで、セルロース系構造体の弾性率をより高めることができる。
グラフト化は、カルダノール類縁体(又はその誘導体)のフェノール性水酸基とセルロース(又はその誘導体)中の水酸基との脱水結合反応によって行うことができる。その際、硫酸、トルエンスルホン酸、塩化水素などの脱水触媒を添加することができる。結果、セルロース(又はその誘導体)中の水酸基が結合しているセルロース炭素原子と、カルダノール類縁体(又はその誘導体)のフェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子とが酸素原子を介して連結される。
また、グラフト化は、セルロースの水酸基及びカルダノール類縁体のフェノール性水酸基と反応できる多官能化合物を用いて行うことができる。結果、セルロース(又はその誘導体)中の水酸基が結合しているセルロース炭素原子と、カルダノール類縁体(又はその誘導体)のフェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子とが、有機連結基を介して連結される。このようなグラフト化によれば、グラフト反応効率を向上することができ、また副反応を抑制することができる。
上記の有機連結基は、前記セルロース炭素原子に結合する、エステル結合、エーテル結合およびウレタン結合から選ばれる第1の結合と、前記カルダノール炭素原子に結合する、エステル結合、エーテル結合およびウレタン結合から選ばれる第2の結合を含むことができる。例えば、第1の結合をエステル結合またはウレタン結合、第2の結合をエステル結合、エーテル結合またはウレタン結合とすることができ、あるいは、第1の結合をエーテル結合、第2の結合をエステル結合またはウレタン結合とすることができる。第1の結合と第2の結合がエーテル結合であってもよい。
例えば、この多官能化合物とカルダノール類縁体とを、このカルダノール類縁体のフェノール性水酸基とこの多官能化合物の官能基を利用して結合し、得られたカルダノール類縁体の誘導体とセルロース(又はその誘導体)とを、このセルロース(又はその誘導体)の水酸基とこのカルダノール類縁体の誘導体の官能基(多官能化合物由来の官能基)を利用して結合することができる。
上述のグラフト化によれば、セルロース(又はその誘導体)の水酸基とカルダノール類縁体(又はその誘導体)の水酸基を消失させてグラフト結合を形成するとともに、セルロース(又はその誘導体)にカルダノール類縁体の疎水性構造を導入することができ、耐水性を改善できる。
カルダノール類縁体(又はその誘導体)をセルロース(又はその誘導体)にグラフト結合させるには、上述のように、カルダノール類縁体のフェノール性水酸基とセルロースの水酸基を利用することが、グラフト反応の効率や、形成した分子構造、耐水性の点から好ましい。このようなグラフト化は、カルダノール類縁体の直鎖状炭化水素部分中の不飽和結合(二重結合)を利用するグラフト化に比べて、反応性の高いフェノール性水酸基を利用するため、より効率的なグラフト化を実現できる。また、本実施形態のグラフト化によれば、カルダノール類縁体のフェノール部分がセルロースと反応して固定化されるため、グラフト化されたカルダノール類縁体の直鎖状炭化水素部分同士の相互作用が高まり、機械的特性の所望の改善効果を得ることが可能になる。さらに、本実施形態は、カルダノール類縁体のフェノール性水酸基を消失させてグラフト化するため、フェノール性水酸基を利用しないグラフト化に比べて、耐水性を改善する(吸水性を抑える)観点からも有利である。
上記の多官能化合物および有機連結基は、炭化水素基を含むことが好ましく、この炭化水素基の炭素数は1以上が好ましく、2以上がより好ましく、また炭素数が20以下が好ましく、14以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。炭素数が多すぎると、分子が大きくなりすぎて反応性が低下し、その結果、グラフト化率を上げることが困難となる場合がある。このような炭化水素基としては、2価基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基などの2価の直鎖状脂肪族炭化水素基(特に直鎖状アルキレン基);シクロヘプタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ビシクロペンタン環、トリシクロヘキサン環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、トリシクロデカン環などの2価の脂環式炭化水素基;ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニレン基などの2価の芳香族炭化水素基、これらの組み合わせからなる2価基が挙げられる。
上記の炭化水素基が、芳香族炭化水素基や脂環式炭化水素基である場合、それらの剛直性から、樹脂の剛性を向上できる。一方、その炭化水素基が直鎖状脂肪族炭化水素基である場合、その柔軟性から、樹脂の靭性を向上できる。
上記の多官能化合物の官能基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)、アクリル基、エポキシ基、イソシアネート基、ハロゲン基から選ばれる基が好ましい。中でもカルボキシル基、カルボン酸無水物基、ハロゲン基(特にクロライド基)、及びイソシアネート基が好ましい。カルダノール類縁体のフェノール性水酸基と反応させる官能基としては、特に、カルボン酸無水物基、ハロゲン基(特にクロライド基)及びイソシアネート基が好ましい。セルロースの水酸基と反応させる官能基としては、特にカルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)、酸無水物基、アクリル基、及びイソシアネート基が好ましい。カルボン酸ハライド基は、グラフト化前のカルボキシル基を酸ハライド化して形成することができる。酸無水物基はオリゴマー化したものでもよい。
このような多官能化合物の具体例としては、ジカルボン酸、カルボン酸無水物、ジカルボン酸ハライド、モノクロロカルボン酸、アクリル酸及びその誘導体、ジイソシアネート類を挙げることができる。ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸が挙げられ、カルボン酸無水物としてはこれらのジカルボン酸の無水物及びマレイン酸無水物が挙げられる。マレイン酸無水物はオリゴマー化していてもよい。ジカルボン酸ハライドとしてはこれらのジカルボン酸の酸ハライドが挙げられる。モノクロロカルボン酸としては、モノクロロ酢酸、3−クロロプロピオン酸、3−フルオロプロピオン酸、4−クロロ酪酸、4−フルオロ酪酸、5−クロロ吉草酸、5−フルオロ吉草酸、6−クロロヘキサン酸、6−フルオロヘキサン酸、8−クロロオクタン酸、8−フルオロオクタン酸、12−クロロドデカン酸、12−フルオロドデカン酸、18−クロロステアリン酸、18−フルオロステアリン酸が挙げられる。アクリル酸及びその誘導体としては、アクリル酸、アクリル酸クロライド、メタクリル酸、メタクリル酸クロライドが挙げられる。ジイソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI:水素添加MDI)が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を好適に用いることができる。
このような多官能化合物の官能基とカルダノール類縁体のフェノール性水酸基とを反応させてカルダノール類縁体の誘導体を形成し、このカルダノール類縁体の誘導体とセルロース(又はその誘導体)を、このセルロース(又はその誘導体)の水酸基とこのカルダノール類縁体の誘導体の官能基(多官能化合物由来の官能基)を利用して結合することができる。
例えば、カルボン酸系のモノクロロカルボン酸をカルダノール類縁体と反応させ、このカルダノール類縁体のフェノール性水酸基とこのモノクロロカルボン酸のクロライド基とを反応させてカルダノール類縁体の誘導体を形成し、残りの官能基(カルボキシル基)をカルボン酸無水物に変換する。このカルダノール類縁体の誘導体をセルロース(又はその誘導体)と反応させ、このセルロース(又はその誘導体)の水酸基とこのカルダノール類縁体の誘導体のカルボン酸無水物とを反応させてグラフト化を行うことができる。この場合、極めて効率的にグラフト化を行うことができる。
多官能化合物を用いたグラフト化の結果、セルロース(又はその誘導体)の水酸基が結合しているセルロース炭素原子と多官能化合物の炭化水素基とは、例えば、エステル結合、エーテル結合又はウレタン結合、好ましくはエステル結合を介して結合され、カルダノール類縁体(又はその誘導体)のフェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子と多官能化合物の炭化水素基とは、例えば、エステル結合、エーテル結合又はウレタン結合、好ましくはエステル結合又はエーテル結合を介して結合される。多官能化合物としてジイソシアネートを用いた場合は、多官能化合物の炭化水素基はウレタン結合を介してカルダノール炭素原子およびセルロース炭素原子と結合される。
本実施形態におけるカルダノール類縁体は、直鎖状炭化水素部分の不飽和結合(二重結合)を部分的に水素添加して使用することが好ましい。カルダノール類縁体の、側鎖の不飽和結合数が異なる4種類の成分のうち、不飽和結合数が2個または3個の成分(ジエンまたはトリエン)を除去することで、熱安定性を大幅に向上させることができる。本実施形態におけるカルダノール類縁体(又はその誘導体)の側鎖の不飽和結合数は、平均で0.1個以上0.9個以下であることが好ましく、0.1個以上0.8個以下であることがより好ましく、0.1個以上0.7個以下であることがさらに好ましい。側鎖の不飽和結合数が平均0.9個より多い場合、上記ジエンまたはトリエンが残存して熱安定性が著しく低下する。また、側鎖の不飽和結合数が平均0.1個未満の場合、水素添加の反応時間が長くなり、製造エネルギーが増加し、原料の準備にかかるコストが増大する。
水素添加する方法としては、特に限定されるものではなく、通常の方法を用いることができる。触媒としては、パラジウム、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属またはニッケル、或いはこれらから選ばれる金属を活性炭素、活性アルミナ、珪藻土などの担体上に担持したものが挙げられる。反応方式としては、粉末状の触媒を懸濁攪拌しながら反応を行うバッチ方式や、成形した触媒を充填した反応塔を用いた連続方式を採用することができる。水素添加の際の溶媒は、水素添加の方式によっては用いなくてもよいが、溶媒を使用する場合は、通常、アルコール類、エーテル類、エステル類、飽和炭化水素類が挙げられる。水素添加の際の反応温度は、特に限定されないが、通常20〜250℃、好ましくは50〜200℃に設定できる。反応温度が低すぎると水素化速度が遅くなり、逆に高すぎると分解生成物が多くなる虞がある。水素添加の際の水素圧は、通常10〜80kgf/cm2(9.8×105〜78.4×105Pa)、好ましくは20〜50kgf/cm2(19.6×105〜49.0×105Pa)に設定できる。
水素添加反応の進行度は、消費された水素量の計測により追跡することができる。製造時のエネルギーを少なくする観点から、側鎖の不飽和結合数が平均で0.9個以下に変換されるために必要な水素の量が消費されたところで水素添加反応を停止することが好ましい。
水素添加は、カルダノール類縁体の誘導体を形成する前、カルダノール類縁体の誘導体を形成した後グラフト化前、カルダノール類縁体の誘導体のグラフト化後のいずれにおいても行うことができるが、水素添加やグラフト化の反応効率等の観点から、カルダノール類縁体の誘導体のグラフト化前が好ましく、カルダノール類縁体の誘導体の形成前がさらに好ましい。
セルロース(又はその誘導体)に対する、当該セルロース(又はその誘導体)に結合したカルダノール類縁体(又はその誘導体)の割合(グラフト化率)は、セルロース(又はその誘導体)のグルコース単位当たりのカルダノール類縁体(又はその誘導体)の付加数(平均値)、すなわち、グルコース単位当たりのカルダノール類縁体(又はその誘導体)と結合した水酸基の個数(水酸基置換度、DSCD)(平均値)によって表される。DSCDは、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.4以上に設定してもよい。DSCDが低すぎると、グラフト化による効果が十分に得られない場合がある。DSCDの最大値は、理論上「3」であるが、製造(グラフト化)のし易さの観点から、2.5以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。さらに、DSCDが1以下の場合であってもよく、十分な改善効果を得ることができる。DSCDが大きくなると、引張破断歪み(靱性)が高くなる一方で最大強度(引張強度、曲げ強度)が低下する傾向があるため、所望の特性に応じて適宜設定することが好ましい。
カルダノール類縁体(又はその誘導体)をグラフト化するとともに、特定の反応性炭化水素化合物を、セルロース(又はその誘導体)にグラフト化させてもよい。これにより、セルロース系樹脂を所望の特性に改善することができる。
この反応性炭化水素化合物は、セルロース(又はその誘導体)中の水酸基と反応できる官能基を少なくとも一つ持つ化合物であり、例えばカルボキシル基、カルボン酸ハライド基またはカルボン酸無水物基、イソシアネート基、またはアクリル基を有する炭化水素化合物が挙げられる。具体的には、脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸等のモノカルボン酸から選ばれる少なくとも一種の化合物、その酸ハロゲン化物又はその酸無水物、脂肪族モノイソシアネート、芳香族モノイソシアネート、脂環族モノイソシアネートから選ばれる少なくとも一種の化合物、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが挙げられる。脂肪族モノカルボン酸としては、直鎖状の又は分岐した側鎖をもつ脂肪酸が挙げられる。芳香族モノカルボン酸としては、芳香環にカルボキシル基が直接結合したもの、芳香環にアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基)を介してカルボキシル基が結合したもの(芳香環に脂肪族カルボン酸基が結合したもの)が挙げられる。脂環族モノカルボン酸としては、脂環にカルボキシル基が直接結合したもの、脂環にアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基)を介してカルボキシル基が結合したもの(脂環に脂肪族カルボン酸基が結合したもの)が挙げられる。脂肪族モノイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネートと直鎖状の又は分岐した側鎖を持つ脂肪族モノアルコールを1:1で反応させたものが挙げられる。芳香族モノイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネートと直鎖状の又は分岐した側鎖を持つ脂肪族モノアルコールを1:1で反応させたものが挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、アクリル酸またはメタクリル酸と直鎖状の又は分岐した側鎖を持つ脂肪族モノアルコールとのエステルが挙げられる。
この反応性炭化水素化合物は、炭素数が1〜32の範囲にあることが好ましく、1〜20の範囲にあることがより好ましい。炭素数が多すぎると、分子が大きくなりすぎて立体障害によって反応効率が低下し、その結果、グラフト化率を上げることが困難となる。
この反応性炭化水素化合物は、特に、グラフト化されたカルダノール類縁体(又はその誘導体)からなる立体構造の隙間部分を埋めるように配置された場合に特性改善に効果的である。
この反応性炭化水素化合物の炭化水素基が、芳香族炭化水素基や脂環式炭化水素基の場合、特に剛性や耐熱性の改善に有効であり、また、脂肪族炭化水素基の場合は特に靭性の改善に有効である。
反応性炭化水素化合物として用いられる脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸;ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、オクテン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸;それらの誘導体を挙げることができる。これらはさらに置換基を有してもよい。
反応性炭化水素化合物として用いられる芳香族モノカルボン酸としては、安息香酸等のベンゼン環にカルボキシル基が導入されたもの;トルイル酸等のベンゼン環にアルキル基が導入された芳香族カルボン酸;フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸等のベンゼン環に脂肪族カルボン酸基が導入されたもの;ビフェニルカルボン酸、ビフェニル酢酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族カルボン酸;ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等の縮合環構造を有する芳香族カルボン酸;それらの誘導体を挙げることができる。
反応性炭化水素化合物として用いられる脂環族モノカルボン酸としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸等の脂環にカルボキシル基が導入されたもの;シクロヘキシル酢酸等の脂環に脂肪族カルボン酸基が導入されたもの;それらの誘導体が挙げられる。
これらの反応性炭化水素化合物の構造中に有機シリコーン化合物や有機フッ素化合物が付加されていると、耐水性などの一層の改善効果が得られる。
これらの反応性炭化水素化合物中の反応性官能基は、セルロースの水酸基と反応できる官能基であればよく、カルボキシル基やカルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)、カルボン酸無水物基の他、エポキシ基、イソシアネート基、ハロゲン基(特にクロライド基)が挙げられる。これらの中でもカルボキシル基とカルボン酸ハライド基が好ましく、特にカルボン酸クロライド基が好ましい。カルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)としては、上記の各種カルボン酸のカルボキシル基が酸ハロゲン化された酸ハライド基(特に酸クロライド基)が挙げられる。
本実施形態に用いる反応性炭化水素化合物は、特に樹脂の剛性(曲げ強度等)の観点から、芳香族カルボン酸および脂環族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のモノカルボン酸、その酸ハロゲン化物又はその酸無水物が好ましい。このような反応性炭化水素化合物がセルロース水酸基に付加することにより、芳香族カルボン酸および脂環族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のモノカルボン酸由来のアシル基がセルロース水酸基に付加した構造(すなわち、セルロース水酸基の水素原子がアシル基に置換された構造)が得られる。
セルロース(又はその誘導体)のグルコース単位あたりの反応性炭化水素化合物の付加数(アシル基の付加数)(平均値)、すなわち、グルコース単位あたりの反応性炭化水素化合物と結合した水酸基の個数(水酸基置換度、DSXX)(平均値)は、所望の効果を得る点から、0.1以上0.6以下が好ましく、0.1以上0.5以下がより好ましい。また、カルダノール類縁体(又はその誘導体)と反応性炭化水素化合物のグラフト化後のグルコース単位あたりの残存する水酸基の個数(水酸基残存度、DSOH)(平均値)は、耐水性を十分に確保する点から、0.9以下が好ましく、0.7以下がより好ましい。
この反応性炭化水素化合物は、カルダノール類縁体(又はその誘導体)のグラフト化工程においてグラフト化することができる。これにより均質にグラフト化することが可能になる。その際、これらを同時又は別途に添加してもよいが、カルダノール類縁体(又はその誘導体)をグラフト結合させた後に、反応性炭化水素化合物を添加してグラフト結合させることにより、グラフト化反応効率を向上できる。
グラフト化処理は、セルロース(又はその誘導体)、カルダノール類縁体(又はその誘導体)、必要に応じて反応性炭化水素化合物を、これらを溶解できる溶媒中で、適切な温度で加熱することによって実施できる。セルロースは通常の溶媒には溶解しにくいが、ジメチルスルホキシド−アミン系溶媒、ジメチルホルムアミド−クロラール−ピリジン系溶媒、ジメチルアセトアミド−リチウムクロライド系溶媒、イミダゾリウム系イオン液体などに溶解できる。通常の溶媒中でグラフト化反応を行う場合、あらかじめセルロースの水酸基の一部にカルボン酸やアルコールを結合させ、分子間力を低下させることによって溶解性を変化させたセルロース誘導体を用いることができる。水酸基の水素原子がアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基で置換されたアシル化セルロースが好ましく、特に酢酸や酢酸クロライドを用いて酢酸化(アセチル化)された酢酸セルロースが好ましい。これらのアシル化に用いられる、酢酸、プロピオン酸、酪酸、及びこれらの酸のハロゲン化物や無水物は、前述の反応性炭化水素化合物に含まれるが、この例のように、所定の反応性炭化水素化合物の一部もしくは全部を、カルダノール類縁体(又はその誘導体)のグラフト化前にセルロースの水酸基に付加(グラフト結合)させることができる。
カルダノール類縁体(又はその誘導体)のグラフト結合に利用されない残りのセルロース水酸基は、水酸基のままであるものと、上記のようにアセチル化等により変性されたもの或いは反応性炭化水素化合物が付加(グラフト結合)したものがある。水酸基の量が多いほど、最大強度や耐熱性が大きくなる傾向がある一方で、吸水性が高くなる傾向がある。水酸基の変換率(置換度)が高いほど、吸水性が低下し、可塑性や破断歪みが増加する傾向がある一方で、最大強度や耐熱性が低下する傾向がある。これらの傾向とグラフト化条件を考慮して、水酸基の変換率を適宜設定することができる。
耐水性を十分に確保する観点からは、グラフト化後のセルロース系樹脂のグルコース単位あたりの残存する水酸基の個数(水酸基残存度、DSOH)(平均値)は、0.9以下が好ましく、0.7以下がより好ましい。
吸水性や機械的強度、耐熱性の観点から、セルロース水酸基は、その一部が前記の反応性炭化水素によりアシル化されていることが好ましく、さらにカルダノール類縁体(又はその誘導体)の前述のグラフト化処理上の観点から、セルロース水酸基は、カルダノール類縁体(又はその誘導体)のグラフト化前に、適度にアシル化(特にアセチル化)されていることが好ましい。セルロース(又はその誘導体)のグルコース単位あたりのアシル基の付加数(平均値)、すなわちグルコース単位あたりのアシル化された水酸基の個数(水酸基置換度、DSAC)(平均値)は、十分なアシル化効果を得る点から、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.5以上がさらにより好ましい。また、カルダノール類縁体(又はその誘導体)のグラフト化率(DSCD)を十分に確保する点から、このアシル化による水酸基置換度DSACは2.7以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.2以下がさらに好ましい。このアシル化による付加するアシル基は、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なお、アセチル化の場合の置換度をDSAce、プロピオニル化の場合の置換度をDSPr、ブチリル化の場合の置換度をDSBuと示す。
本実施形態によるセルロース系樹脂は、十分な植物利用率を確保する観点から、グラフト化後のセルロース系樹脂の全体に対するセルロース成分とカルダノール類縁体成分との合計の質量比率(植物成分率)が、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。ここでセルロース成分は、水酸基がアシル化やグラフト化されていない前記の式(1)で示される構造に対応し、カルダノール成分は前記の式(3)で示される構造に対応するものとして算出する。
以上に説明した本発明の実施形態によるセルロース系樹脂は、所望の特性に応じて添加剤を加え、成形用材料に好適なセルロース系樹脂組成物を得ることができる。
本発明の実施形態によるセルロース系樹脂組成物には、通常の熱可塑性樹脂に使用する各種の添加剤を適用できる。例えば、可塑剤を添加することで、熱可塑性や成形体の破断時の伸びを一層向上できる。
このような可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ−2−メトキシエチル、エチルフタリル・エチルグリコレート、メチルフタリル・エチルグリコレート等のフタル酸エステル;酒石酸ジブチル等の酒石酸エステル;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル;トリアセチン、ジアセチルグリセリン、トリプロピオニトリルグリセリン、グリセリンモノステアレートなどの多価アルコールエステル;リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシルなどのリン酸エステル;ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート等の脂肪族ジカルボン酸ジアルキルエステル;クエン酸トリエチル、クエン酸アセチル・トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;ヒマシ油およびその誘導体;O−ベンゾイル安息香酸エチル等の安息香酸エステル;セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル等の脂肪族ジカルボン酸エステル;マレイン酸エステル等の不飽和ジカルボン酸エステル;その他、N−エチルトルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホン酸O−クレジル、トリプロピオニンなどが挙げられる。
その他の可塑剤として、シクロヘキサンジカルボン酸ジヘキシル、シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−メチルオクチル等のシクロヘキサンジカルボン酸エステル;トリメリット酸ジヘキシル、トリメリット酸ジエチルヘキシル、トリメリット酸ジオクチル等のトリメリット酸エステル;ピロメリット酸ジヘキシル、ピロメリット酸ジエチルヘキシル、ピロメリット酸ジオクチル等のピロメリット酸エステルが挙げられる。
このような可塑剤中の反応性官能基(カルボン酸基、カルボン酸基から誘導された基、その他の官能基)とカルダノール類縁体の水酸基や不飽和結合とを反応させて、カルダノール類縁体を付加させた可塑剤を用いることもできる。このような可塑剤を用いると、本実施形態のセルロース系樹脂と可塑剤の相溶性を向上できるため、可塑剤の添加効果を一層向上できる。
本発明の実施形態によるセルロース系樹脂組成物には、必要に応じて、無機系もしくは有機系の粒状または繊維状の充填剤を添加できる。充填剤を添加することによって、強度や剛性を一層向上できる。
このような充填剤としては、例えば、鉱物質粒子(タルク、マイカ、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレイ、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト(またはウォラストナイト)など)、ホウ素含有化合物(窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化チタンなど)、金属炭酸塩(炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど)、金属珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウムなど)、金属酸化物(酸化マグネシウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、金属炭化物(炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタンなど)、金属窒化物(窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタンなど)、ホワイトカーボン、各種金属箔が挙げられる。繊維状の充填剤としては、有機繊維(天然繊維、紙類など)、無機繊維(ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ウォラストナイト、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維など)、金属繊維などが挙げられる。これらの充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の実施形態によるセルロース系樹脂組成物には、必要に応じて、難燃剤を添加できる。難燃剤を添加することによって、難燃性を付与できる。
難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイトのような金属水和物、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、ゼオライト、臭素系難燃剤、三酸化アンチモン、リン酸系難燃剤(芳香族リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類など)、リンと窒素を含む化合物(フォスファゼン化合物)などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
また、難燃剤として、酸化リン、リン酸またはこれらの誘導体とカルダノール類縁体との反応物や、これらの反応物の重合体を用いることができる。このような難燃剤を用いると、本実施形態のセルロース系樹脂と難燃剤との相互作用が強化され、優れた難燃効果が得られる。このような難燃剤としては、例えば、酸化リン(P25)やリン酸(H3PO4)とカルダノール類縁体の水酸基とを反応させた反応物や、この反応物にヘキサメチレンテトラミンを加えて重合させた重合体が挙げられる。
本発明の実施形態によるセルロース系樹脂組成物には、必要に応じて、耐衝撃性改良剤を添加できる。耐衝撃性改良剤を添加することによって、成形体の耐衝撃性を向上できる。
耐衝撃性改良剤としては、ゴム成分やシリコーン化合物を挙げられる。ゴム成分としては、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、合成ゴムなどが挙げられる。また、シリコーン化合物としては、アルキルシロキサン、アルキルフェニルシロキサンなどの重合によって形成された有機ポリシロキサン、もしくは、前記有機ポリシロキサンの側鎖または末端をポリエーテル基、メチルスチリル基、アルキル基、高級脂肪酸エステル基、アルコキシ基、フッ素、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基などで変性した変性シリコーン化合物などが挙げられる。これらの耐衝撃性改良剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
このシリコーン化合物としては、変性シリコーン化合物(変性ポリシロキサン化合物)が好ましい。この変性シリコーン化合物としては、ジメチルシロキサンの繰り返し単位から構成される主鎖を持ち、その側鎖または末端のメチル基の一部が、アミノ基、エポキシ基、カルビノール基、フェノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基、長鎖アルキル基、アラルキル基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基、長鎖脂肪酸エステル基、長鎖脂肪酸アミド基、ポリエーテル基から選ばれる少なくとも1種類の基を含む有機置換基で置換された構造を有する変性ポリジメチルシロキサンが好ましい。
変性シリコーン化合物は、このような有機置換基を有することによって、前述のカルダノール類縁体を結合したセルロース系樹脂に対する親和性が改善され、セルロース系樹脂組成物中の分散性が向上し、このような変性シリコーン化合物を含有するセルロース系樹脂組成物を用いて耐衝撃性に優れる成形体を得ることができる。
このような変性シリコーン化合物は、通常の方法に従って製造されるものや市販品を用いることができる。
この変性シリコーン化合物に含まれる上記の有機置換基としては、下記式(6)〜(24)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2015081326
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Figure 2015081326
Figure 2015081326
Figure 2015081326
上記の式中、a、bはそれぞれ1から50の整数を表す。
上記の式中、R1〜R10、R12〜R15、R19、R21は、それぞれ2価の有機基を表す。2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基、フェニレン基、トリレン基等のアルキルアリーレン基、−(CH2−CH2−O)c−(cは1から50の整数を表す)、−〔CH2−CH(CH3)−O〕d−(dは1から50の整数を表す)等のオキシアルキレン基やポリオキシアルキレン基、−(CH2e−NHCO−(eは1から8の整数を表す)を挙げることができる。これらのうち、アルキレン基が好ましく、特に、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
上記の式中、R11、R16〜R18、R20、R22は、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基などが挙げられる。また、上記アルキル基の構造中に、1つ以上の不飽和結合を有していてもよい。
変性シリコーン化合物中の有機置換基の合計平均含有量は、セルロース系樹脂組成物の製造時において、当該変性シリコーンがマトリックスのカルダノール類縁体を結合したセルロース系樹脂中に適度な粒径(例えば0.1μm以上100μm以下)で分散可能な範囲とすることが望ましい。カルダノール類縁体を結合したセルロース系樹脂中において、変性シリコーン化合物が適度な粒径で分散すると、弾性率の低いシリコーン領域の周囲への応力集中が効果的に発生し、優れた耐衝撃性を有する樹脂成形体を得ることができる。かかる有機置換基の合計平均含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、また、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。変性シリコーン化合物は、有機置換基が適度に含有されていれば、セルロース系樹脂との親和性が向上し、カルダノール類縁体を結合したセルロース系樹脂中において適度な粒径で分散でき、さらに、成形品において当該変性シリコーン化合物の分離によるブリードアウトを抑制することができる。有機置換基の合計平均含有量が少なすぎると、カルダノール類縁体を結合したセルロース系樹脂中において適度な粒径での分散が困難になる。
変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がアミノ基、エポキシ基、カルビノール基、フェノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基の平均含有量は下記式(I)から求めることができる。
有機置換基平均含有量(%)=
(有機置換基の式量/有機置換基当量)×100 (I)
式(I)中、有機置換基当量は、有機置換基1モルあたりの変性シリコーン化合物の質量の平均値である。
変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がフェノキシ基、アルキルフェノキシ基、長鎖アルキル基、アラルキル基、長鎖脂肪酸エステル基、長鎖脂肪酸アミド基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基の平均含有量は下記式(II)から求めることができる。
有機置換基平均含有量(%)=
x×w/[(1−x)×74+x×(59+w)]×100 (II)
式(II)中、xは変性ポリジメチルシロキサン化合物中の全シロキサン繰り返し単位に対する有機置換基含有シロキサン繰り返し単位のモル分率の平均値であり、wは有機置換基の式量である。
変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がフェニル基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中のフェニル基の平均含有量は下記式(III)から求めることができる。
フェニル基平均含有量(%)=
154×x/[74×(1−x)+198×x]×100 (III)
式(III)中、xは変性ポリジメチルシロキサン化合物(A)中の全シロキサン繰り返し単位に対するフェニル基含有シロキサン繰り返し単位のモル分率の平均値である。
変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がポリエーテル基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中のポリエーテル基の平均含有量は下記式(IV)から求めることができる。
ポリエーテル基平均含有量(%)=HLB値/20×100 (IV)
式(IV)中、HLB値は界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値であり、グリフィン法に基づいて下記の式(V)により定義される。
HLB値=20×(親水部の式量の総和/分子量) (V)。
本実施形態のセルロース系樹脂へは、当該樹脂に対する親和性が異なる2種類以上の変性シリコーン化合物を添加してもよい。この場合、比較的親和性の低い変性シリコーン化合物(A1)の分散性が、比較的親和性の高い変性シリコーン化合物(A2)によって改善され、より一層優れた耐衝撃性を有するセルロース系樹脂組成物を得ることができる。比較的親和性の低い変性シリコーン化合物(A1)の有機置換基の合計平均含有量としては、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、また15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。比較的親和性の高い変性シリコーン化合物(A2)の有機置換基の合計平均含有量は、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、また90質量%以下が好ましい。
変性シリコーン化合物(A1)と変性シリコーン化合物(A2)との配合比(質量比)は、10/90〜90/10の範囲で設定できる。
変性シリコーン化合物においては、ジメチルシロキサン繰返し単位および有機置換基含有シロキサン繰り返し単位が、同種のものが連続して接続されても、交互に接続されても、また、ランダムに接続されていてもよい。変性シリコーン化合物は、分岐構造を有していてもよい。
変性シリコーン化合物の数平均分子量は、900以上が好ましく、1000以上がより好ましく、また1000000以下が好ましく、300000以下がより好ましく、100000以下がさらに好ましい。変性シリコーン化合物の分子量が十分に大きいと、カルダノール類縁体を結合したセルロース系樹脂を含む組成物の製造時において、溶融したセルロース系樹脂と変性シリコーン化合物の混練時に揮発による変性シリコーン化合物の喪失を抑制することができる。また、変性シリコーン化合物の分子量が大きすぎることなく適度な大きさであると、分散性がよく、組成が均一な成形品を得ることができる。
変性シリコーン化合物の数平均分子量は、試料のクロロホルム0.1%溶液のGPCによる測定値(ポリスチレン標準試料で較正)を採用することができる。
このような変性シリコーン化合物の含有量は、十分な添加効果を得る点から、セルロース系樹脂組成物全体(特にセルロース系樹脂と変性シリコーン化合物との合計量)に対して1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。成形体の強度等の特性を十分に確保し、またブリードアウトを抑制する点から、変性シリコーン化合物の含有量は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
このような変性シリコーン化合物をセルロース系樹脂に添加することにより、樹脂中に変性シリコーンを適度な粒径(例えば0.1〜100μm)で分散させることができ、成形体の耐衝撃性を向上できる。
耐衝撃性改良剤として、カルダノール類縁体を主成分とする重合体を用いてもよい。このような耐衝撃性改良剤は、本実施形態によるセルロース系樹脂との相溶性に優れるため、より高度な耐衝撃性改良効果が得られる。具体的には、カルダノール類縁体にホルムアルデヒドを加え、これとカルダノール類縁体のベンゼン環との反応により得られるカルダノール類縁体の重合体や、カルダノール類縁体に硫酸、リン酸、ジエトキシトリフルオロボロン等の触媒を加え、カルダノール類縁体の直鎖状炭化水素中の不飽和結合同士の反応により得られるカルダノール類縁体の重合体が挙げられる。
本発明の実施形態によるセルロース系樹脂組成物には、必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤など、通常の樹脂組成物に適用される添加剤を添加してもよい。
本発明の実施形態によるセルロース系樹脂組成物には、必要に応じて、一般的な熱可塑性樹脂を添加してもよい。
特に、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)などの柔軟性に優れる熱可塑性樹脂を添加することにより、成形体の耐衝撃性を向上できる。このような熱可塑性樹脂(特にTPU)の含有量は、十分な添加効果を得る点から、セルロース系樹脂組成物全体(特にセルロース系樹脂と熱可塑性樹脂(特にTPU)との合計量)に対して1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。セルロース系樹脂の強度等の特性を確保し、またブリードアウトを抑える点から、この熱可塑性樹脂(特にTPU)の含有量は20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
耐衝撃性向上に好適な熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、ポリオール、ジイソシアネート、および鎖延長剤を用いて調製されるものを用いることができる。
このポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。
上記のポリエステルポリオールとしては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、脂環族ジカルボン酸(ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等)等の多価カルボン酸又はこれらの酸エステルもしくは酸無水物と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール(HO−CH2CH2CH2−OH)、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の多価アルコール又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。
上記のポリエステルエーテルポリオールとしては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、脂環族ジカルボン酸(ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等)等の多価カルボン酸又はこれらの酸エステルもしくは酸無水物と、ジエチレングリコールもしくはアルキレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド付加物等)等のグリコール等又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られる化合物が挙げられる。
上記のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール(HO−CH2CH2CH2−OH)、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの1種または2種以上と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等とを反応させて得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。また、ポリカプロラクトンポリオール(PCL)とポリヘキサメチレンカーボネート(PHL)との共重合体であってもよい。
上記のポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテルが挙げられる。
TPUの形成に用いられるジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI;HMDI)等が挙げられる。これらの中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を好適なものとして用いることができる。
TPUの形成に用いられる鎖延長剤としては、低分子量ポリオールが使用できる。この低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール(HO−CH2CH2CH2−OH)、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン等の脂肪族ポリオール;1,4−ジメチロールベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物等の芳香族グリコールが挙げられる。
以上に例示する熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)に、シリコーン化合物が共重合されていると、この共重合体を添加したセルロース系樹脂組成物から調製される成形体は、さらに優れた耐衝撃性を得ることができる。
これらの熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
本発明の実施形態によるセルロース系樹脂に、各種添加剤や熱可塑性樹脂を添加し、セルロース系樹脂組成物を製造する方法については、特に限定はなく、例えば各種添加剤とセルロース系樹脂をハンドミキシングや、公知の混合機、例えばタンブラーミキサー、リボンブレンダー、単軸や多軸混合押出機、混練ニーダー、混練ロール等のコンパウンディング装置で溶融混合し、必要に応じ適当な形状に造粒等を行うことにより製造できる。また別の好適な製造方法として、有機溶媒等の溶剤に分散させた、各種添加剤と樹脂を混合し、さらに必要に応じて、凝固用溶剤を添加して各種添加剤と樹脂の混合組成物を得て、その後、溶剤を蒸発させ、セルロース系樹脂組成物を得る方法がある。
以上に説明した実施形態によるセルロース系樹脂は、成形用材料のベース樹脂として用いることができる。当該セルロース系樹脂をベース樹脂として含む樹脂組成物よりなる成形用材料は、電子機器用外装などの筺体などの成形体に好適である。
ここで「ベース樹脂」とは、組成物中の主成分を意味し、この主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容することを意味する。特にこの主成分(ベース樹脂)の含有割合を限定するものではないが、この主成分が組成物中の好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上を占めることを包含するものである。
以下、具体例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
[合成例1]カルダノール類縁体の誘導体1(カードル含有量が4.1質量%で側鎖の不飽和結合数の平均が0.28個のカルダノール類縁体を用いたカルダノキシ酢酸・酢酸無水物)の作製
内容積0.5Lのバッチ式オートクレーブに、市販のカシューモノマー(商品名:LB−7000、東北化工(株)製)を蒸留して得たカルダノール類縁体100g(0.33mol)を入れ、触媒としてNi触媒(商品名:SN−250、堺化学工業(株)製)を0.25g加え、室温下で40kgf/cm2(4MPa)で水素を圧入し、170℃で水素が12L(0.54mol)消費されるまで水素添加反応を行った。
得られた水素添加カルダノール類縁体を、パックドカラム(液相:OV−225、GLサイエンス(株)製)を使用したガスクロマトグラフ(製品名:GC−2014、島津製作所(株)製)で測定したところ、カルダノール含有量は95.9質量%であり、カードル含有量は4.1質量%であり、その他成分の含有量は0.1%未満であった。また、側鎖の不飽和結合の平均数は0.28個であった。
この水素添加カルダノール類縁体100g(0.33mol)をイソプロピルアルコール30mLに溶解させ、これに、水酸化ナトリウム30g(0.75mol)を蒸留水30mLに溶解させた水溶液を加えた。その後、室温で、モノクロロ酢酸33g(0.35mol)をイソプロピルアルコール30mLに溶解した溶液を滴下した。滴下完了後、80℃で4時間撹拌を継続した。反応液を室温に冷却し、反応物をイソプロピルアルコールで洗浄することで、カルダノキシ酢酸ナトリウム塩と塩化ナトリウムの混合物126g(0.28mol)を得た。
カルダノキシ酢酸ナトリウム塩と塩化ナトリウムの混合物30g(0.068mol)にテトラヒドロフラン270mLを加え、これに、塩化アセチル12.4g(0.16mol)をテトラヒドロフラン30mLに溶解した溶液を滴下した。滴下完了後、室温で4時間撹拌を継続した。反応後、塩化ナトリウムを遠心分離機で沈降除去し、反応溶液であるテトラヒドロフランを減圧留去し、カルダノキシ酢酸・酢酸無水物26.4g(0.065mol)を得た。
[合成例2]カルダノール類縁体の誘導体2(カードル含有量が4.5質量%で側鎖の不飽和結合数の平均が0.57個のカルダノール類縁体を用いたカルダノキシ酢酸・酢酸無水物)の作製
内容積0.5Lのバッチ式オートクレーブに、市販のカシューモノマー(商品名:LB−7000、東北化工(株)製)を蒸留して得たカルダノール類縁体100g(0.33mol)を入れ、触媒としてNi触媒(商品名:SN−250、堺化学工業(株)製)を0.25g加え、室温下で40kgf/cm2(4MPa)で水素を圧入し、170℃で水素が9L(0.40mol)消費されるまで水素添加反応を行った。
得られた水素添加カルダノール類縁体を、パックドカラム(液相:OV−225、GLサイエンス(株)製)を使用したガスクロマトグラフ(製品名:GC−2014、島津製作所(株)製)で測定したところ、カルダノール含有量は95.5質量%であり、カードル含有量は4.5質量%であり、その他成分の含有量は0.1%未満であった。また、側鎖の不飽和結合の平均数は0.57個であった。
この水素添加カルダノール類縁体を使用し、以下、合成例1と同様の操作を行い、カルダノキシ酢酸・酢酸無水物25.0g(0.063mol)を得た。
[合成例3]カルダノール類縁体の誘導体3(カードル含有量が10.1質量%で側鎖の不飽和結合数の平均が0.68個のカルダノール類縁体を用いたカルダノキシ酢酸・酢酸無水物)の作製
内容積0.5Lのバッチ式オートクレーブに、市販のカシューモノマー(商品名:LB−7000、東北化工(株)製)100g(0.33mol)を入れ、触媒としてNi触媒(商品名:SN−250、堺化学工業(株)製)を0.25g加え、室温下で40kgf/cm2(4MPa)で水素を圧入し、170℃で水素が10L(0.44mol)消費されるまで水素添加反応を行った。
得られた水素添加カルダノール類縁体を、パックドカラム(液相:OV−225、GLサイエンス(株)製)を使用したガスクロマトグラフ(製品名:GC−2014、島津製作所(株)製)で測定したところ、カルダノール含有量は89.9質量%であり、カードル含有量は10.1質量%であり、その他成分の含有量は0.1%未満であった。また、側鎖の不飽和結合の平均数は0.68個であった。
この水素添加カルダノール類縁体を使用し、以下、合成例1と同様の操作を行い、カルダノキシ酢酸・酢酸無水物24.2g(0.060mol)を得た。
[合成例4]カルダノール類縁体の誘導体4(カードル含有量が3.8質量%で側鎖の不飽和結合数の平均が1.88個のカルダノール類縁体を用いたカルダノキシ酢酸・酢酸無水物)の作製
市販のカシューモノマー(商品名:LB−7000、東北化工(株)製)を蒸留して得たカルダノール類縁体を、パックドカラム(液相:OV−225、GLサイエンス(株)製)を使用したガスクロマトグラフ(製品名:GC−2014、島津製作所(株)製)で測定したところ、カルダノール含有量は96.2質量%であり、カードル含有量は3.8質量%であり、その他成分の含有量は0.1%未満であった。また、側鎖の不飽和結合の平均数は1.88個であった。
このカルダノール類縁体を使用し、以下、合成例1と同様の操作を行い、カルダノキシ酢酸・酢酸無水物22.6g(0.057mol)を得た。
[合成例5]カルダノール類縁体の誘導体5(カードル含有量が9.4質量%で側鎖の不飽和結合数の平均が1.00個のカルダノールを用いたカルダノキシ酢酸・酢酸無水物)の作製
内容積0.5Lのバッチ式オートクレーブに、市販のカシューモノマー(商品名:LB−7000、東北化工(株)製)100g(0.33mol)を入れ、触媒としてNi触媒(商品名:SN−250、堺化学工業(株)製)を0.25g加え、室温下で40kgf/cm2(4MPa)で水素を圧入し、170℃で水素が7.5L(0.33mol)消費されるまで水素添加反応を行った。
得られた水素添加カルダノール類縁体を、パックドカラム(液相:OV−225、GLサイエンス(株)製)を使用したガスクロマトグラフ(製品名:GC−2014、島津製作所(株)製)で測定したところ、カルダノール含有量は90.6質量%であり、カードル含有量は9.4質量%であり、その他成分の含有量は0.1%未満であった。また、側鎖の不飽和結合の平均数は1.00個であった。
この水素添加カルダノール類縁体を使用し、以下、合成例1と同様の操作を行い、カルダノキシ酢酸・酢酸無水物26.3g(0.065mol)を得た。
[比較合成例1]カルダノール類縁体の誘導体6(カードル含有量が2.4質量%で側鎖の不飽和結合の平均が0.1個未満のカルダノール類縁体を用いたカルダノキシ酢酸・酢酸無水物)の作製
市販の水素添加カルダノール類縁体(ALDRICH製、3−ペンタデシルフェノール)を、パックドカラム(液相:OV−225、GLサイエンス(株)製)を使用したガスクロマトグラフ(製品名:GC−2014、島津製作所(株)製)で測定したところ、カルダノール含有量は97.6質量%であり、カードル含有量は2.4質量%であり、その他成分の含有量は0.1%未満であった。また、側鎖の不飽和結合の平均数は0.1個未満であった。
この水素添加カルダノール類縁体を使用し、以下、合成例1と同様の操作を行い、カルダノキシ酢酸・酢酸無水物28.1g(0.070mol)を得た。
[実施例1]
合成例1で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物(カルダノール類縁体の誘導体1)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:L−70、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.4)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記の手順に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。
セルロースアセテート19.1g(水酸基量0.044mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン280mLに溶解させ、合成例1で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物26.4g(0.065mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン90mLに溶解させた溶液を加えた。この溶液に、反応触媒である4−ジメチルアミノピリジン1.9gを脱水N−メチル−2−ピロリジノン10mLに溶解させた溶液を滴下した後、110℃で6時間加熱撹拌した。反応溶液をメタノール4Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥した。これにより、グラフト化セルロースアセテート25.5gを得た。
得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を赤外分光光度計(製品名:FT/IR−4100、日本分光(株)製)によって測定したところ、DSCDは0.22であり、DSAceは2.43であった。
また、この試料について、下記の手順に従って評価を行った。結果を表1に示す。
得られたカルダノール付加セルロース樹脂を、混合押出機(Thermo Electron Corporation製、製品名:HAAKE MiniLab Rheomex CTW5)(温度210℃、スクリュー回転速度50rpm)で5分間熱溶融したものと、同条件で30分間熱溶融したものについて、それぞれ射出成型機(Thermo Electron Corporation製、製品名:HAAKE MiniJet II)(シリンダ温度220℃、金型温度60℃、射出圧1200bar(120MPa)5秒間、保圧600bar(60MPa)20秒間)を用いて射出成形体(長さ80×幅10×厚み4mm)を作製した。
[曲げ試験]
上記の成形により得られた成形体について、JIS K7171に準拠して曲げ試験を行った(曲げ強度、曲げ弾性率)。
[熱安定性の評価]
5分間熱溶融した後の射出成形体の曲げ強度と30分間熱溶融した後の射出成形体の曲げ強度から、下記式(VI)に従って、曲げ強度保持率を算出し熱安定性の指標とした。
曲げ強度保持率(%)=100×(30分間熱溶融した後の射出成形体の曲げ強度)/(5分間熱溶融した後の射出成形体の曲げ強度) (VI)。
[実施例2]
合成例2で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物(カルダノール類縁体の誘導体2)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:L−70、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.4)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記の手順に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。
セルロースアセテート18.1g(水酸基量0.069mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン270mLに溶解させ、合成例2で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物25.0g(0.063mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン90mLに溶解させた溶液を加えた。この溶液に、反応触媒である4−ジメチルアミノピリジン1.8gを脱水N−メチル−2−ピロリジノン10mLに溶解させた溶液を滴下した後、110℃で6時間加熱撹拌した。反応溶液をメタノール4Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥した。これにより、グラフト化セルロースアセテート24.2gを得た。
得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を赤外分光光度計(製品名:FT/IR−4100、日本分光(株)製)によって測定したところ、DSCDは0.21であり、DSAceは2.42あった。
また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
合成例3で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物(カルダノール類縁体の誘導体3)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:L−70、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.4)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記の手順に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。
セルロースアセテート17.5g(水酸基量0.040mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン260mLに溶解させ、合成例3で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物24.2g(0.060mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン80mLに溶解させた溶液を加えた。この溶液に、反応触媒である4−ジメチルアミノピリジン1.75gを脱水N−メチル−2−ピロリジノン10mLに溶解させた溶液を滴下した後、110℃で6時間加熱撹拌した。反応溶液をメタノール4Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥した。これにより、グラフト化セルロースアセテート23.0gを得た。
得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を赤外分光光度計(製品名:FT/IR−4100、日本分光(株)製)によって測定したところ、DSCDは0.22であり、DSAceは2.39であった。
また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
合成例4で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物(カルダノール類縁体の誘導体4)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:L−70、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.4)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記の手順に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。
セルロースアセテート16.3g(水酸基量0.037mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン240mLに溶解させ、合成例4で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物22.6g(0.057mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン80mLに溶解させた溶液を加えた。この溶液に、反応触媒である4−ジメチルアミノピリジン1.6gを脱水N−メチル−2−ピロリジノン10mLに溶解させた溶液を滴下した後、110℃で6時間加熱撹拌した。反応溶液をメタノール4Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥した。これにより、グラフト化セルロースアセテート20.2gを得た。
得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を赤外分光光度計(製品名:FT/IR−4100、日本分光(株)製)によって測定したところ、DSCDは0.23であり、DSAceは2.52であった。
また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
合成例5で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物(カルダノール類縁体の誘導体5)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:L−70、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.4)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記の手順に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。
セルロースアセテート19.0g(水酸基量0.044mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン280mLに溶解させ、合成例5で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物26.3g(0.065mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン90mLに溶解させた溶液を加えた。この溶液に、反応触媒である4−ジメチルアミノピリジン1.9gを脱水N−メチル−2−ピロリジノン10mLに溶解させた溶液を滴下した後、110℃で6時間加熱撹拌した。反応溶液をメタノール4Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥した。これにより、グラフト化セルロースアセテート23.3gを得た。
得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を赤外分光光度計(製品名:FT/IR−4100、日本分光(株)製)によって測定したところ、DSCDは0.26であり、DSAceは2.38であった。
また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
比較合成例1で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物(カルダノール類縁体の誘導体6)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:L−70、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.4)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記の手順に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。
セルロースアセテート20.3g(水酸基量0.049mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン300mLに溶解させ、比較合成例1で作製したカルダノキシ酢酸・酢酸無水物28.1g(0.070mol)を脱水N−メチル−2−ピロリジノン90mLに溶解させた溶液を加えた。この溶液に、反応触媒である4−ジメチルアミノピリジン2.0gを脱水N−メチル−2−ピロリジノン10mLに溶解させた溶液を滴下した後、110℃で6時間加熱撹拌した。反応溶液をメタノール4Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥した。これにより、グラフト化セルロースアセテート28.0gを得た。
得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を赤外分光光度計(製品名:FT/IR−4100、日本分光(株)製)によって測定したところ、DSCDは0.21であり、DSAceは2.47であった。
また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2015081326
表1から明らかなように、実施例1〜5と比較例1を対比すると、カードルを3.0質量%以上含有するカルダノール類縁体を用いたセルロース系樹脂は、3.0質量%未満含むものを用いた場合と比較して、曲げ強度と弾性率が向上していることがわかる。
また、表1から明らかなように、実施例1〜3と実施例4〜5を対比すると、水素添加によって側鎖の不飽和結合数を平均0.9個以下に調整したカルダノール類縁体を用いたセルロース系樹脂は、良好な熱安定性を示すことが分かる。
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。

Claims (10)

  1. セルロース又はその誘導体のセルロース水酸基と、カルダノール類縁体のフェノール性水酸基を利用して、該セルロース又はその誘導体に、カルダノール及びカードルを含有し該カードルの含有量が3.0質量%以上であるカルダノール類縁体又はその誘導体が結合されてなるセルロース系樹脂。
  2. 前記カルダノール類縁体は、側鎖の平均の不飽和結合数が0.1個以上0.9個以下である、請求項1に記載のセルロース系樹脂。
  3. 前記カルダノール類縁体中の前記カードルの含有量が3.0質量%以上40質量%以下である、請求項1又は2に記載のセルロース系樹脂。
  4. 前記カルダノール類縁体中の前記カルダノールの含有量が50質量%以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂。
  5. 前記カルダノール類縁体中のアナカルド酸及び2−メチルカードルの合計の含有量が5質量%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂。
  6. 前記セルロース水酸基が結合しているセルロース炭素原子と、前記フェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子が有機連結基を介して連結され、
    前記有機連結基は、前記セルロース炭素原子に結合するエステル結合と、前記カルダノール炭素原子に結合するエーテル結合を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂。
  7. 前記有機連結基は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基を含む、請求項6に記載のセルロース系樹脂。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂をベース樹脂として含む樹脂組成物。
  9. 請求項8に記載の樹脂組成物からなる成形用材料。
  10. セルロースの水酸基及びカルダノールのフェノール性水酸基と反応できる多官能化合物を、カルダノール及びカードルを含有し該カードルの含有量が3.0質量%以上であるカルダノール類縁体と反応させて該カルダノール類縁体の誘導体を形成する工程と、
    前記カルダノール類縁体の誘導体をセルロース又はその誘導体と反応させ、該セルロース又はその誘導体に該カルダノール類縁体の誘導体を結合させる工程を有するセルロース系樹脂の製造方法。
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