この発明は、衝突事故の際に運転者の身体からステアリングホイールに加わった衝撃エネルギを吸収しつつ、このステアリングホイールの前方への変位を可能とすべく、ステアリングコラムを車体に対し前方への変位を可能に支持する為のステアリングコラム用支持装置の改良に関する。
[従来技術]
自動車用ステアリング装置は、図14に示す様に構成して、ステアリングホイール1の回転をステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達し、この入力軸3の回転に伴って左右1対のタイロッド4、4を押し引きし、前車輪に舵角を付与する様にしている。前記ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト5の後端部に支持固定されており、このステアリングシャフト5は、円筒状のステアリングコラム6を軸方向に挿通した状態で、このステアリングコラム6に回転自在に支持されている。又、前記ステアリングシャフト5の前端部は、自在継手7を介して中間シャフト8の後端部に接続し、この中間シャフト8の前端部を、別の自在継手9を介して、前記入力軸3に接続している。尚、この中間シャフト8は、トルクを伝達可能に、且つ、衝撃荷重により全長を収縮可能に構成している。そして、衝突事故の際(次述する一次衝突の際)に、前記ステアリングギヤユニット2の後方への変位に拘らず、前記ステアリングシャフト5を介して前記ステアリングホイール1が後方に向けて変位する(運転者の身体に向けて突き上げられる)事を防止できる様に構成している。
上述の様な自動車用ステアリング装置は、衝突事故の際に、衝撃エネルギを吸収しつつ、ステアリングホイール1を前方に変位させる構造にする事が、運転者の保護の為には必要である。即ち、衝突事故の際には、自動車が他の自動車等にぶつかる一次衝突に続いて、運転者の身体が前記ステアリングホイール1に衝突する二次衝突が発生する。この二次衝突の際に、運転者の身体に加わる衝撃を緩和して、運転者の保護を図る為に、前記ステアリングホイール1を支持したステアリングコラム6を車体に対して、二次衝突に伴う前方への衝撃荷重により前方に離脱可能に支持する構造が従来から各種知られており、且つ、広く実施されている。
二次衝突時に於けるステアリングコラムの前方への離脱を安定させる為には、特許文献1に記載されている様に、幅方向中央部で、前記ステアリングコラムを車体に対し、離脱可能に支持する事が好ましい。即ち、前記特許文献1の第1〜2図に記載されている様な、左右両端2箇所位置で支持する構造の場合には、一端側と他端側とで離脱のタイミングが前後し、前方への離脱に伴ってステアリングコラムが傾斜する可能性がある等、運転者保護の為のチューニングが難しくなる可能性がある。これに対して、前記特許文献1の第3〜8図に示す様な、ステアリングコラムを車体に対し、幅方向中央部で支持する構造によれば、前方への離脱に伴ってステアリングコラムが傾斜し難くなり、運転者保護の為のチューニングが容易になる。
[先発明に係る技術]
図15〜19は、前記特許文献1に記載された発明と同様に、ステアリングコラムを車体に対し、幅方向中央部で支持する構造を採用して、二次衝突時に於ける運転者の保護をより一層充実させる事を考慮して発明したステアリングコラム用支持装置(先発明構造)を示している。本発明は、この先発明構造を改良したものであり、この先発明構造と共通点が多い為、先ず、この先発明構造に就いて説明する。
図15〜19に示した先発明構造は、ステアリングホイール1(図14参照)の上下位置を調節する為のチルト機構と、同じく前後位置を調節する為のテレスコピック機構との両方を備えた、チルト・テレスコピック式ステアリング装置に先発明を適用した場合に就いて示している。このうちのテレスコピック機構を構成する為に、ステアリングコラム6aとして、前側のインナコラム10の後部を後側のアウタコラム11の前部に内嵌して全長を伸縮可能とした、テレスコープ状のものを使用している。そして、前記ステアリングコラム6aの内径側にステアリングシャフト5aを、回転自在に支持している。
このステアリングシャフト5aは、前側に配置した円杆状のインナシャフトの後部に設けた雄スプライン部と、後側に配置した円管状のアウタシャフト12の前部に設けた雌スプライン部とをスプライン係合させる事により、トルクの伝達を可能に、且つ、伸縮を可能に構成している。前記アウタシャフト12は、後端部を前記アウタコラム11の後端開口よりも後方に突出させた状態でこのアウタコラム11の内径側に、単列深溝型の玉軸受13等、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支承可能な軸受により、回転のみ自在に支持している。前記ステアリングホイール1は、前記アウタシャフト12の後端部に支持固定する。このステアリングホイール1の前後位置を調節する際には、このアウタシャフト12と共に前記アウタコラム11が前後方向に変位し、前記ステアリングシャフト5a及び前記ステアリングコラム6aが伸縮する。
又、このステアリングコラム6a(を構成する前記インナコラム10)の前端部に、電動式パワーステアリング装置を構成する減速機等を収納する為のハウジング14を、結合固定している。このハウジング14の上面には、前記電動式パワーステアリング装置の補助動力源となる電動モータ15と、この電動モータ15への通電を制御する為の制御器16とを支持固定している。そして、前記チルト機構を構成する為に、前記ハウジング14を車体に対し、横軸を中心とする揺動変位を可能に支持している。この為に本例の場合には、前記ハウジング14の上部前端に支持筒17を、左右方向に設けている。そして、この支持筒17の中心孔18に挿通したボルト等の横軸により、前記ステアリングコラム6aの前端部を前記車体に対し、このステアリングコラム6aの後部を昇降させる方向の揺動変位を可能に支持する構成を採用している。
又、前記ステアリングコラム6aの中間部乃至後部を構成する、前記アウタコラム11の前半部の内径を、弾性的に拡縮可能としている。この為に、このアウタコラム11の下面にスリット19を、軸方向に形成している。このスリット19の前端部は、このアウタコラム11の前端縁、又は、このアウタコラム11の前端寄り部分の上端部を除いた部分に形成した周方向透孔20(本発明の実施の形態を示す図1、5、8、9、10参照)に開口させている。又、前記スリット19を幅方向両側から挟む部分に、それぞれが厚肉平板状の1対の被支持板部21、21を設けている。これら両被支持板部21、21が、前記ステアリングホイール1の位置調節時に、前記アウタコラム11と共に変位する、変位側ブラケットとして機能する。
図示の先発明に係る構造の場合、前記両被支持板部21、21をコラム側ブラケット22に対し、上下位置及び前後位置の調節を可能に支持している。このコラム側ブラケット22は、通常時には車体に対し支持されているが、衝突事故の際には、二次衝突の衝撃に基づいて、前方に離脱し、前記アウタコラム11の前方への変位を許容する様にしている。この為に、前記コラム側ブラケット22を車体側ブラケット23に対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、前方への離脱を可能に支持している。
前記ステアリングホイール1が調節後の位置に保持されている状態で、前記両被支持板部21、21は、前記コラム側ブラケット22を構成する左右1対の支持板部24、24により強く挟持されている。これら両支持板部24、24には、前記支持筒17を車体に対し支持した横軸を中心とする部分円弧形の上下方向長孔25を、前記両被支持板部21、21には、前記アウタコラム11の軸方向に長い前後方向長孔26を、それぞれ形成している。そして、これら各長孔25、26に、調節ロッド27を挿通している。この調節ロッド27の基端部(図16の右端部)に設けた頭部28は、一方(図16の右方)の支持板部24に形成した上下方向長孔に、この上下方向長孔に沿った変位のみを可能に(回転を阻止した状態で)係合させている。これに対して、前記調節ロッド27の先端部(図16の左端部)に螺着したナット29と他方(図16の左方)の支持板部24の外側面との間に、駆動側カム30と被駆動側カム31とから成るカム装置32を設けている。そして、このうちの駆動側カム30を、調節レバー33により回転駆動可能としている。
前記ステアリングホイール1の位置調節を行う際には、前記調節レバー33を所定方向(下方)に回動させる事により前記駆動側カム30を回転駆動し、前記カム装置32の軸方向寸法を縮める。そして、前記被駆動側カム31と前記頭部28との、互いに対向する内側面同士の間隔を拡げ、前記両支持板部24、24が前記両被支持板部21、21を抑え付けている力を解放する。同時に、前記アウタコラム11の前部で前記インナコラム10の後部を内嵌した部分の内径を弾性的に拡げ、これらアウタコラム11の前部内周面とインナコラム10の後部外周面との当接部に作用している面圧を低下させる。この状態で、前記調節ロッド27が前記上下方向長孔25と前記前後方向長孔26との内側で変位できる範囲で、前記ステアリングホイール1の上下位置及び前後位置を調節できる。
このステアリングホイール1を所望位置に移動させた後、前記調節レバー33を前記所定方向とは逆方向(上方)に回動させる事により、前記カム装置32の軸方向寸法を拡げる。これにより、前記被駆動側カム31と前記頭部28との、互いに対向する内側面同士の間隔を縮め、前記両支持板部24、24により前記両被支持板部21、21を強く抑え付ける。同時に、前記アウタコラム11の前部で前記インナコラム10の後部を内嵌した部分の内径を弾性的に縮め、これらアウタコラム11の前部内周面とインナコラム10の後部外周面との当接部に作用している面圧を高くする。この状態で、前記ステアリングホイール1の上下位置及び前後位置が調節後の位置に保持される。
更に、前記コラム側ブラケット22は、前記車体側ブラケット23に対し、二次衝突の衝撃荷重により前方に離脱はするが、二次衝突が進行した状態でも、脱落しない様に支持している。前記車体側ブラケット23は、車体側に支持固定されて、二次衝突時にも前方に変位する事がないもので、鋼板等の十分な強度及び剛性を有する金属板に、プレスによる打ち抜き加工及び曲げ加工を施す事により造っている。この様な車体側ブラケット23は、両側縁部及び後端縁部を下方に折り曲げる事により曲げ剛性を向上させ、幅方向中央部に前端縁側が開口した係止切り欠き34を、後部のうちでこの係止切り欠き34を左右両側から挟む位置に1対の取付孔35、35を、それぞれ形成している。この係止切り欠き34は、次述する係止カプセル36により覆われた、前記車体側ブラケット23の後端部近傍まで形成している。この様な車体側ブラケット23は、前記両取付孔35、35を挿通したボルト或いはスタッドにより、車体に対し支持固定される。
上述の様な車体側ブラケット23に対し前記コラム側ブラケット22を、係止カプセル36を介して、二次衝突時に前方への離脱を可能に結合している。この係止カプセル36は、左右方向に関する幅寸法、並びに、前後方向に関する長さ寸法を、下半部に比べ上半部で大きくして、前記係止カプセル36の左右両側面及び後側面の上半部に、両側方及び後方に突出する鍔部37を設けている。この様な係止カプセル36は、下半部を前記係止切り欠き34に係合(内嵌)した状態で、前記車体側ブラケット23に対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重に基づいて前方への離脱を可能に支持している。この為に、前記鍔部37と、前記車体側ブラケット23の一部で前記係止切り欠き34の周縁部との、互いに整合する複数箇所(図示の例では8箇所ずつ)に、それぞれ小通孔38a、38bを形成している。そして、これら各小通孔38a、38b同士の間に、それぞれ合成樹脂、アルミニウム系合金等の、二次衝突時に加わる衝撃荷重により裂断する係止ピン39、39を掛け渡している。この構成により、前記係止カプセル36を前記車体側ブラケット23に対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への離脱を可能に支持している。
上述の様な係止カプセル36は前記コラム側ブラケット22に対し、前記衝撃荷重に拘らず非分離な状態で、結合固定している。即ち、前記係止カプセル36と前記コラム側ブラケット22とを、ボルト40、40とナット41、41とにより結合固定している。従って、二次衝突時に前記アウタコラム11から前記コラム側ブラケット22に伝わった前記衝撃荷重は、そのまま前記係止カプセル36に伝わり、前記各係止ピン39、39の裂断に伴ってこの係止カプセル36が前方に変位するのと同期して、前記アウタコラム11も前方に変位する。
この様に、二次衝突時に前記アウタコラム11と共に前方に変位する、前記係止カプセル36を係止した、前記係止切り欠き34の前後方向に関する長さL34は、この係止カプセル36の同方向の長さL36よりも十分に大きい(L34≫L36)。例えば、前記係止切り欠き34の長さL34を、前記係止カプセル36の長さL36の2倍以上(L34≧2L36)確保している。そして、二次衝突時に前記アウタコラム11と共に前記係止カプセル36が前方に変位し切った(ステアリングホイール1から加わった衝撃荷重では、それ以上前方に変位しなくなった)状態でも、前記係止カプセル36を構成する前記鍔部37の少なくとも後端部で、前記ステアリングコラム6a及び前記コラム側ブラケット22等の重量を支承可能な部分が、前記係止切り欠き34から抜け出ない様にしている。即ち、二次衝突が進行した状態でも、前記係止カプセル36の上半部の幅方向両側部分に形成した前記鍔部37のうちの少なくとも後端部が、前記車体側ブラケット23の前端部の上側に位置して、前記係止カプセル36が脱落するのを防止できる様にしている。
上述の様に構成する、先発明に係るステアリングコラム用支持装置によれば、二次衝突時に前記ステアリングホイール1を前方に安定して変位させる為のチューニングが容易で、しかも、二次衝突が進行した状態でも前記ステアリングホイール1が過度に下方に変位する事を防止できる。
先ず、二次衝突時にステアリングホイール1を前方に安定して変位させる為のチューニングの容易化は、前記車体側ブラケット23と前記係止カプセル36とを、この車体側ブラケット23の幅方向中央部のみで係合させる事により図れる。
即ち、前記係止カプセル36を、前記アウタコラム11の直上部分に配置している為、二次衝突時に前記ステアリングホイール1から前記アウタシャフト12及び前記アウタコラム11を通じて前記係止カプセル36に伝わった衝撃荷重が、この係止カプセル36と前記車体側ブラケット23とを結合している、前記各係止ピン39、39に、ほぼ均等に加わる。要するに、前記衝撃荷重は、前記係止カプセル36のほぼ中央部に、前記アウタコラム11の軸方向に作用する。そして、この係止カプセル36が、前記係止切り欠き34から前方に抜け出る方向の力が加わる。この為、この係止カプセル36と前記車体側ブラケット23とを結合している前記各係止ピン39、39が、実質的に同時に裂断する。この結果、前記コラム側ブラケット22等を介して前記係止カプセル36と結合された前記アウタコラム11の前方への変位が、中心軸を過度に傾斜させたりする事無く、安定して行われる。
又、二次衝突が進行した状態でも前記ステアリングホイール1が過度に下方に変位するのを防止する事は、前記係止切り欠き34の前後方向長さL34を前記係止カプセル36の前後方向の長さL36よりも十分に大きくしている事により図れる。即ち、これら各長さL34、L36をこの様に規制している為、二次衝突が進行し、前記ステアリングホイール1と共に、前記係止カプセル36が前方に変位し切った状態でも、この係止カプセル36全体が前記係止切り欠き34から前方に抜け出る事はない。この為、二次衝突が進行した状態でも、前記アウタコラム11の支持力を確保して、このアウタコラム11及び前記アウタシャフト12を介してこのアウタコラム11に支持された前記ステアリングホイール1が、過度に下降する事を防止できる。そして、事故後もこのステアリングホイール1の操作を行い易くして、例えば、事故車両が自走可能である場合に、この事故車両を事故現場から路肩まで自走移動させる際の運転を行い易くできる。
上述の様な先発明の構造は、二次衝突時に於ける運転者の保護充実を図る設計を容易化できる利点があるが、この二次衝突時に於ける運転者の保護をより一層充実させる為には、二次衝突時に前記係止カプセル36の離脱をより安定して行わせる点で、改良の余地がある。この点に関し、図19を参照しつつ説明する。尚、この図19には、係止カプセル36とコラム側ブラケット22とをリベット42、42により結合固定した構造を示している。但し、これら係止カプセル36とコラム側ブラケット22との結合固定の為の構造に関しては自由であり、本発明の要旨とは関係しない。
二次衝突時にステアリングホイール1からステアリングシャフト5を介してステアリングコラム6(例えば図14参照)に伝わった衝撃荷重は、前記コラム側ブラケット22を構成する支持板部24の上下方向長孔25を挿通した調節ロッド27から、このコラム側ブラケット22に入力される。即ち、二次衝突時には、この調節ロッド27が、前記上下方向長孔25の前側内側縁を強く押す。この結果、前記コラム側ブラケット22には、前記調節ロッド27を力点(入力部)とし、前記係止カプセル36とこのコラム側ブラケット22との結合部を支点として、図19の時計方向のモーメントが、衝撃的に加わる。上述した先発明構造の場合には、前記調節ロッド27が前記ステアリングコラム6の下側に存在する為、前記衝撃荷重の入力部である、この調節ロッド27の中心から前記係止カプセル36と前記コラム側ブラケット22との結合部(支点)までの距離が大きく、前記モーメントが大きくなる。
上述の様な、衝撃的に加わる大きなモーメントにより、図19の(B)の鎖線イで囲んだ部分で、前記コラム側ブラケット22を構成する上板部43の上面前端縁部が、前記車体側ブラケット23の下面に強く押し付けられる。即ち、前記コラム側ブラケット22は、左右1対の支持板部24の上端縁同士を前記上板部43により連続させており、この上板部43の上面は前記車体側ブラケット23の下面に、実質上当接している(図18中の隙間は誇張して描いている)。従って、二次衝突に伴い前記上板部43の上面前端縁部が、前記車体側ブラケット23の下面に強く押し付けられる。この結果、当該部分に大きな摩擦力が作用する。この為、前記車体側ブラケット23に形成した係止切り欠き34(図15、17、18参照)から抜け出る為に要する離脱荷重が、大きく、しかも不安定になる。この様な状態は、運転者保護をより充実させる面からは好ましくない。
前記図19の(B)の鎖線イで囲んだ部分に存在する当接部に加わる面圧は、前記モーメントが大きくなる程高くなり、このモーメントは、前記支点となる結合部と前記衝撃荷重の入力部との距離が大きくなる程大きくなる。前述の先発明に係る構造の場合、この入力部は、前記上下方向長孔25の内側縁と前記調節ロッド27の外周面との突き当たり部であり、この突き当り部は、上述した様に、前記ステアリングコラム6a(図15〜17参照)の本体部分よりも下方に存在する。この為、前記結合部と前記入力部との距離が大きく、前記モーメントが大きくなり、前記当接部の面圧が高くなって、前記離脱荷重を、低く、且つ、安定させる事が難しい。
更に、前述した先発明の構造の場合には、ステアリングホイールの位置調節機構(チルト機構とテレスコピック機構との一方又は双方)を構成する為の前記調節ロッド27を、前記ステアリングコラム6aの下側に配置している為、衝突事故の際に於ける運転者保護の面から不利である。即ち、前記調節ロッド27を、前記ステアリングコラム6aの下側に配置した事に伴い、前記両被挟持板部21、21や前記両支持板部24、24の下端部が、前記ステアリングコラム6aの下面よりも下方に大きく突出する。そして、衝突事故の際に、この突出した部分に運転者の膝等が衝突し易くなり、衝突事故の際に運転者保護を充実させる面から、ステアリング装置の設計の自由度が低下する。
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、次の(1)〜(3)の効果を並立させる事ができ、更に必要とすれば、次の(4)の効果も得られるステアリングコラム用支持装置の構造を実現すべく発明したものである。
(1) 二次衝突時にステアリングホイールを前方に安定して変位させる為のチューニングを容易にする。
(2) 車体側ブラケットの下面とコラム側ブラケットの上面等とが強く擦れ合わない様にして、離脱荷重の絶対値及びばらつきを小さく抑える。
(3) ステアリング装置の設計の自由度を低下させずに、衝突事故の際に運転者保護を充実させる。
(4) ステアリングホイールの位置調節を行う際の操作性を向上させる。
本発明のステアリングコラム用支持装置は、ステアリングコラムと、変位側ブラケットと、車体側ブラケットと、係止除肉部と、コラム側ブラケットと、係止部材とを備える。
このうちのステアリングコラムは、内側にステアリングシャフトを回転自在に支持する為のものである。
又、前記変位側ブラケットは、前記ステアリングコラムの中間部でこのステアリングコラムの上側部分に固設されている。
又、前記車体側ブラケットは、少なくとも幅方向両側2箇所位置で車体側に支持固定されて、二次衝突時にも前方に変位する事がない。
又、前記係止除肉部は、前記車体側ブラケットの幅方向に関して、前記幅方向両側2箇所位置の間部分に形成されている。
又、前記コラム側ブラケットは、幅方向に離隔した状態で設けられた左右1対の支持板部を有し、前記ステアリングコラム側に支持されて、二次衝突時にこのステアリングコラムと共に前方に変位する。
又、前記係止部材は、前記コラム側ブラケットに固定されている。
そして、前記変位側ブラケットを前記両支持板部同士の間に挟持した状態で、この変位側ブラケットを幅方向に挿通すると共にこれら両支持板部同士の間に掛け渡した状態で設けられた調節ロッドの両端部に設けられた1対の押圧部同士の間隔を拡縮する事により、前記コラム側ブラケットに対する前記変位側ブラケットの位置固定及び位置調節を可能としている。
更に、前記コラム側ブラケット及び前記係止部材を前記車体側ブラケットに対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への離脱を可能に支持している。
上述の様な本発明のステアリングコラム用支持装置を実施する場合、例えば、請求項2に記載した発明の様に、前記係止除肉部を、前記車体側ブラケットの幅方向中央部に形成された、前後方向に長い係止切り欠き若しくは透孔とする。又、前記係止部材を、前記コラム側ブラケットに固定された係止カプセルとする。
この様な請求項2に記載した発明を実施する場合、具体的には、請求項3に記載した発明の様に、前記コラム側ブラケットを、前記両支持板部の上端縁同士を連続させる上板部を備えたものとする。そして、前記係止カプセルをこの上板部の上面に支持固定する。更に、この係止カプセルの幅方向両端部に設けた鍔部の下面とこの上板部の上面との間部分に、前記車体側ブラケットのうちで前記係止切り欠きの両側縁部分を係止する。
或いは、請求項4に記載した発明の様に、前記係止除肉部を、前後方向に長い係止切り欠き若しくは透孔とする。又、前記係止部材を、上端部にこの係止切り欠き若しくは透孔の幅寸法よりも大きな直径を有する頭部を備えたボルトとする。更に、前記コラム側ブラケットを、前記両支持板部の上端縁同士を連続させる上板部を備えたものとする。そして、前記ボルトの下端部に設けた雄ねじ部を、この上板部に固定したナット若しくはこの上板部に形成したねじ孔に螺合し更に締め付ける事により、前記ボルトの頭部の下面と前記上板部の上面との間で、前記車体側ブラケットのうちで前記係止切り欠き若しくは透孔の両側縁部分を係止する。
この様な請求項4に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記頭部の下面と前記車体側ブラケットの上面との間、及び、この車体側ブラケットの下面と前記上板部の上面との間に、それぞれ滑り板を挟持する。そして、これら両滑り板同士を前記係止除肉部の幅寸法よりも小さな幅寸法を有する連結部により連結して、上下1対の滑り板とこの連結部とを一体としたスライド部材を構成する。
この様な請求項5に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項6に記載した発明の様に、前記係止除肉部を、前半部が幅広部で、後半部がこの幅広部の後端縁の幅方向両端部2箇所位置から更に後方に延出した、それぞれが前後方向に長く互いに平行な、それぞれが切り欠き状である2本の延長部を備えた透孔とする。そして、これら両延長部の後端部分に、それぞれ前記スライド部材と前記ボルトとを設置する。
或いは、請求項7に記載した発明の様に、前記係止除肉部を、それぞれが前後方向に長く互いに平行な、1対の透孔とする。そして、これら両透孔の後端部分に、それぞれ前記スライド部材と前記ボルトとを設置する。
更に、上述の様な請求項6〜7に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項8に記載した発明の様に、1対のスライド部材の上側に補強板を、これら両スライド部材同士の間に掛け渡す状態で設ける。そして、前記ボルトの頭部の下面により、前記補強板の両端部上面を、前記車体側ブラケットの上面に押圧する。
又、上述の様な本発明のステアリングコラム用支持装置を実施する場合に、好ましくは、請求項9に記載した発明の様に、前記両支持板部のうちの少なくとも一方の支持板部の一部で、前記調節ロッドが挿通されている部分の幅方向に関する剛性を、他の部分よりも低くする。
この様な請求項9に記載した発明を実施する場合に、具体的には、請求項10に記載した発明の様に、前記少なくとも一方の支持板部の一部で、前記調節ロッドを挿通する為に当該支持板部に形成した透孔に隣接する部分に、スリットを形成する。
或いは、請求項11に記載した発明の様に、前記少なくとも一方の支持板部の一部で、前記調節ロッドを挿通する為に当該支持板部に形成した透孔を形成した部分を、前記コラム側ブラケット及び前記係止部材と前記車体側ブラケットとの結合部よりも前後方向に突出させる。そして、この突出した部分の上端縁は他の部分に繋がらせない。
更には、請求項12に記載した発明の様に、前記両支持板部のうちの一方の支持板部の厚さを他方の支持板部の厚さよりも小さくして、この一方の支持板部の幅方向に関する剛性を低くする事もできる。
上述の様に構成する本発明のステアリングコラム用支持装置によれば、次の(1)〜(3)の効果を並立させる事ができ、更に請求項9〜12に記載した発明によれば、次の(4)の効果も得られる。
(1) 二次衝突時にステアリングホイールを前方に安定して変位させる為のチューニングを容易にする。
(2) 車体側ブラケットの下面とコラム側ブラケットの上面等とが強く擦れ合わない様にして、離脱荷重の絶対値及びばらつきを小さく抑える。
(3) ステアリング装置の設計の自由度を低下させずに、衝突事故の際に運転者保護を充実させる。
(4) ステアリングホイールの位置調節を行う際の操作性を向上させる。
これら(1)〜(4)の効果のうち、(1)の効果に就いては、車体側ブラケットと係止部材とを、この車体側ブラケットを車体側に支持している幅方向両側2箇所の間部分で係合させる事により図れる。即ち、前述した先発明の構造と同様に、係止部材をステアリングコラムの直上部分に配置している為、二次衝突時に加わる衝撃荷重が前記間部分のほぼ中央部に、前記ステアリングコラムの軸方向に作用して、前記係止部材が前記係止除肉部から前方に抜け出る方向の力が加わる。そして、コラム側ブラケット等を介して前記係止部材と結合された前記ステアリングコラムの前方への変位が、中心軸を過度に傾斜させたりする事無く、安定して行われる。
又、前記(2)の効果に就いては、変位側ブラケットを前記ステアリングコラムの上側部分に固設する事により得られる。この構成により、二次衝突時に前記コラム側ブラケットに加わる衝撃荷重の入力部となる調節ロッドの中心と、前記係止部材とこのコラム側ブラケットとの結合部までの距離を短くできて、前記衝撃荷重に基づいてこのコラム側ブラケットに加わるモーメントを低く抑えられる。そして、このコラム側ブラケットの上面に支持した係止部材と前記車体側ブラケットに形成した係止除肉部との係合部に加わる、捩れ方向の力を低く抑えられる。そして、この係合部に作用する摩擦力を低減して、前記離脱荷重の絶対値及びばらつきを小さく抑えられる。
又、前記(3)の効果に就いても、変位側ブラケットを前記ステアリングコラムの上側部分に固設する事により得られる。この構成により、前記コラム側ブラケットや前記変位側ブラケットの下端部が、前記ステアリングコラムの下面よりも下方に大きく突出する事がなくなる。この結果、前記コラム側ブラケットや前記変位側ブラケットの下端部に運転者の膝等が衝突し難くなり、衝突事故の際に運転者保護を充実させつつ、ステアリング装置の設計の自由度を確保できる。
更に、前記(4)の効果に就いては、前記コラム側ブラケットを構成する1対の支持板部のうちの所定部分の剛性を低くする事により図れる。即ち、この所定部分の剛性を低くすると、前記ステアリングホイールの位置調節を行うべく、調節ロッドの両端部に設けた1対の押圧部同士の間隔を拡げた状態で、前記両支持板部が前記変位側ブラケットを挟持している力が十分に低下する。この為、これら両支持板部の内側面とこの変位側ブラケットの外側面との間に作用する摩擦力を低く抑えて、ステアリングホイールの位置調節を容易に(軽い力で)行える様にできる。このステアリングホイールを所望の位置に調節した後は、前記両押圧部同士の間隔を縮めれば、これら両押圧部同士の間隔を縮める力を、前記両支持板部の内側面により前記変位側ブラケットの外側面を抑え付ける力として有効に利用して、特に(前記両押圧部同士の間隔を縮める為のカム装置等の押圧装置を駆動する為の調節レバーの)操作力を大きくする事なく、前記ステアリングホイールの位置を、調節後の位置に保持できる。
本発明の実施の形態の第1例を示す側面図。
図1の左端部の平面図。
図2のa−a断面図。
比較の為に示す、先発明に係る構造に関する、図3と同様の図。
本発明の実施の形態の第2例を示す側面図。
図5の左端部の平面図。
図6のb−b断面図。
ステアリングホイールの位置調節の操作性向上の為の構造の第1例を組み込んだ、本発明の実施の形態の第3例を示す略側面図。
ステアリングホイールの位置調節の操作性向上の為の構造の第2例を組み込んだ、本発明の実施の形態の第4例を示す略側面図。
本発明の実施の形態の第5例を示す、部分縦断側面図。
同じく要部平面図。
本発明の実施の形態の第6例を示す要部平面図。
図12のc−c断面図。
従来から知られているステアリング装置の1例を示す、部分切断側面図。
先発明の構造を、後上方から見た状態で示す斜視図。
同じく、一部を省略して後方から見た状態で示す端面図。
同じく、図16の上方から見た状態で示す平面図。
車体側ブラケットとコラム側ブラケットとの結合部の構造を示す、図17の拡大d−d断面図。
二次衝突時の離脱荷重が大きくなる理由を説明する為の、図18のe−e断面に相当する図(A)及び(A)のf部拡大図(B)。
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、請求項1〜3に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の特徴は、特許請求の範囲に記載した変位側ブラケットに相当する、左右1対の被支持板部21a、21aを、ステアリングコラム6bを構成するアウタコラム11aの上方に設けた点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述の図15〜18に示した先発明構造の場合と、基本的には同様であるから、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分、先に説明しなかった部分、並びに、前記先発明構造と異なる部分を中心に説明する。
本例の構造では、前記アウタコラム11aを、アルミニウム系合金の如き軽合金等のダイキャスト成形により一体成形しており、上面に前記両被支持板部21a、21aを、幅方向に離隔した状態で設けている。そして、これら両被支持板部21a、21aの互いに整合する位置に形成した前後方向長孔26、26と、コラム側ブラケット22aを構成する左右1対の支持板部24a、24aに形成した上下方向長孔25、25とに、調節ロッド27を挿通している。そして、調節レバー33の操作に基づき、この調節ロッド27の頭部28と、カム装置32の被駆動側カム31との間隔を拡縮して、ステアリングシャフト5aを構成するアウタシャフト12の後端部に支持固定したステアリングホイール1(図14参照)の前後位置及び上下位置を調節可能としている。
又、本例の場合には、車体側ブラケット23aに形成した、係止除肉部である係止切り欠き34aの周縁部に係止した、係止部材である係止カプセル36aを、前記コラム側ブラケット22aの上板部43に、溶接により結合固定している。この為、これらコラム側ブラケット22aと係止カプセル36aとを、炭素鋼板等、互いに溶接可能な同種の金属板を曲げ形成する事により、それぞれ構成している。前記係止カプセル36aは、前記上板部43の上面に重ね合わせる基板部44と、この基板部44の左右両側縁及び後端縁から上方に曲げ起こされた曲げ起こし部45と、この曲げ起こし部45の上端縁から左右両側方及び後方に折れ曲がった鍔部37aとを備える。そして、このうちの基板部44の中央部に形成した透孔46の内周縁部分で、この基板部44と前記上板部43とを、隅肉溶接等の溶接47、47により、溶接固定している。そして、前記鍔部37aに形成した複数の小通孔38a、38aと、前記車体側ブラケット23aの一部に、前記係止切り欠き34aの内周縁に開口する状態で形成した切り欠き48、48及び小通孔38b、38bとに合成樹脂を注入固化させて、前記コラム側ブラケット22a及び前記係止カプセル36aを前記車体側ブラケット23aに対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、前方への離脱を可能に結合している。
上述の様に本例のステアリングコラム用支持装置は、前記係止カプセル36aを前記アウタコラム11aの直上部分に配置している。この為、二次衝突時に加わる衝撃荷重が前記係止カプセル36aのほぼ中央部に、前記アウタコラム11aの軸方向に作用する。即ち、二次衝突の状況に拘らず、前記係止カプセル36aの姿勢を、前記係止切り欠き34aから抜け出し難くする方向に変位させるモーメントが加わり難い。この結果、前記衝撃荷重を、前記係止カプセル36aが前記係止切り欠き34aから前方に抜け出る方向の力として有効に利用できて、二次衝突時にステアリングホイールを前方に安定して変位させる為のチューニングが容易になる。
又、前記両被支持板部21a、21aを前記アウタコラム11aの上側部分に固設している。この為、図3に示す様に、前記調節ロッド27の中心と、前記係止カプセル36aと前記コラム側ブラケット22aの上板部43との結合部までの距離LSを短くできる。これに対して、図4に示す様に、被挟持板部21b、21bをアウタコラム11bの下側部分に固設した構造の場合には、調節ロッド27の中心と、係止カプセル36aと上板部43との結合部までの距離LLが長くなる。この調節ロッド27は、二次衝突時に前記コラム側ブラケット22aに加わる衝撃荷重の入力部となる部分であるが、前記調節ロッド27からこのコラム側ブラケット22aに入力される衝撃荷重の大きさは、図3に示した構造でも、図4に示した構造でも同じである。そして、この衝撃荷重に基づいて前記コラム側ブラケット22aに加わるモーメントの大きさは、このモーメントに関するスパンの長さである、前記距離LS、LLに比例する。従って、本例の構造によれば、この距離LSを短くできる分だけ、二次衝突に伴って、前記コラム側ブラケット22aに加わる、図1の時計方向のモーメントを小さくできる。この為、前記上板部43の上面前端縁部と前記車体側ブラケット23aの下面との擦れ合い部の当接圧を低く抑えられる等により、この車体側ブラケット23aと、前記係止カプセル36a及び前記コラム側ブラケット22aとの係合部に作用する摩擦力を低減できる。そして、前記二次衝突時に於ける、このコラム側ブラケット22aの前方への離脱荷重の絶対値及びばらつきを小さく抑えられる。
更に、前記両被支持板部21a、21aを前記アウタコラム11aの上側部分に固設している為、これら両被支持板部21a、21aを挟持している、前記コラム側ブラケット22aを構成する前記両支持板部24a、24aの下端部が、前記アウタコラム11aの下面よりも下方に大きく突出する事がなくなる。即ち、図3に示す様に、前記車体側ブラケット23aの上面から前記両支持板部24a、24aの下端縁までの距離である組立高さHSを、前記図4に示した構造の組立高さHLよりも短くできる。この結果、前記両支持板部24a、24aや前記両被支持板部21a、21aの下端部に運転者の膝等が衝突し難くなり、衝突事故の際に運転者保護を充実させつつ、ステアリング装置の設計の自由度を確保できる。又、前記組立高さHSを短くできる分、ステアリングコラム用支持装置の小型・軽量化を図る面からも有利になる。更には、前記車体側ブラケット23aに対する、前記アウタコラム11a(を含むステアリングコラム6a)の支持剛性(特に幅方向の剛性)を確保する面からも有利になる。即ち、前記調節ロッド27を前記ステアリングコラム6bの上方に配置している為、この調節ロッド27による締め付け部と、前記車体側ブラケット23aとの距離を短くできる。この結果、この調節ロッド27部分から前記コラム側ブラケット22aに入力されるモーメントによる、前記ステアリングコラム6bの幅方向変位を抑えられる。
尚、本例の場合には、前記係止カプセル36aのうちで、前記曲げ起こし部45を係合させる為、前記車体側ブラケット23aに形成した係止切り欠き34aの左右両側縁を、この係止切り欠き34aの幅寸法が、後方に向かうに従って狭くなる方向に傾斜させている。又、前記合成樹脂の一部は、前記各切り欠き48、48から、前記係止切り欠き34aの左右両側縁と前記曲げ起こし部45の左右両外側面との間の微小隙間内に入り込んで、これら左右両側縁と曲げ起こし部45の左右両外側面とが金属接触する事を防止する。本例の場合には、この様な構成により、前記係止カプセル36aを前記係止切り欠き34aから前方に、更に抜け出し易くしている。
[実施の形態の第2例]
図5〜7も、請求項1〜3に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の構造は、コラム側ブラケット22a及び係止カプセル36bを車体側ブラケット23bに対し、二次衝突に伴って前方への離脱を可能に結合支持している部分の構造が、上述した第1例の場合とは異なる。本例の場合には、前記車体側ブラケット23bに形成した係止切り欠き34bの形状を長U字形とし、幅寸法を、後端奥部の半円弧部及び前端開口の面取り部を設けた部分を除き、一定としている。
一方、前記係止カプセル36bは、炭素鋼板、ステンレス鋼板等の、弾性及び必要とする強度及び剛性を有する金属板を曲げ形成して成るもので、基板部44aと、曲げ起こし部45aと、4箇所の弾性押圧板部49、49とを備える。このうちの基板部44aは、平面形状が小判形(長円形)で、この基板部44aの周縁部に形成した前記曲げ起こし部45aの外周面は、短径(幅)が前記係止切り欠き34bの幅よりも僅かに短く、長径(長さ)がこの係止切り欠き34bの幅よりも十分に大きい。又、前記各弾性押圧板部49、49は、前記曲げ起こし部45aの上端縁から左右両側の前後両端部に張り出す状態で設けられている。前記係止カプセル36bに外力が加わらない自由状態で、前記基板部44aの厚さ方向に関する、この基板部44aの下面から前記各弾性押圧板部49、49の先端部に設けた突出部50、50の下面までの距離は、前記車体側ブラケット23bの厚さ寸法よりも短い。
上述の様な係止カプセル36bは、前記曲げ起こし部45aを前記係止切り欠き34bの奥部に位置させた状態で、前記基板部44aの下面と前記コラム側ブラケット22aの上板部43の上面とを対向させる。そして、これら基板部44aと上板部43との互いに整合する部分に形成した通孔を挿通したボルト40aとナット41aとを螺合し更に締め付ける事により、前記基板部44aの下面と前記コラム側ブラケット22aの上板部43の上面とを当接させる。この状態で、前記各弾性押圧板部49、49の先端部下面が前記車体側ブラケット23bの上面で前記係止切り欠き34bの両側部分を強く押圧する。二次衝突時には、この車体側ブラケット23bの上面と前記各突出部50、50の下面とが擦れ合いつつ、前記コラム側ブラケット22aが前方に変位(離脱)する。
その他の部分に構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
[実施の形態の第3例]
図8は、請求項1〜3、9、10に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、コラム側ブラケット22aを構成する左右1対の支持板部24aのうちの少なくとも一方(好ましくは両方)の支持板部24aの一部で、調節ロッド27が挿通されている、特許請求の範囲に記載した透孔に相当する上下方向長孔25を形成した部分の、幅方向に関する剛性を、他の部分よりも低くしている。この為に本例の場合には、前記少なくとも一方の支持板部24aの一部で、前記上下方向長孔25に隣接する部分に、スリット51を形成している。前記調節ロッド27の端部に設けられた押圧部により押圧される部分の幅方向に関する剛性を低くできる限り、前記スリット51の形状は特に問わない。図示の例の様に、前記上下方向長孔25の上半部を三方から囲むコ字形若しくはU字形としても、或いは、この上下方向長孔25を前後両側から挟む部分に、それぞれ上下方向に長いスリットを形成する事もできる。
本例の構造の場合には、上述の様に、前記支持板部24aのうちで前記調節ロッド27挿通する部分の、幅方向に関する剛性を低くしているので、ステアリングホイール1の位置調節を行うべく、前記調節ロッド27の両端部に設けた1対の押圧部同士の間隔を拡げた状態で、前記両支持板部24aが、アウタコラム11cの上方に固設した変位側ブラケット52を挟持している力が十分に低下する。即ち、本発明の場合には、この変位側ブラケット52を前記アウタコラム11cの上方に配置している為、前記調節ロッド27の設置部分が、上下方向に関して、このアウタコラム11cと車体側ブラケット23aとの間に存在する状態となる。この為、前記支持板部24aのうちで前記調節ロッド27を挿通する部分の、幅方向に関する剛性が高いと、この調節ロッド27の両端部に設けられた1対の押圧部同士の間隔を拡げても、前記両支持板部24aの内側面と前記変位側ブラケット52の両外側面との当接圧が十分に低下せず、前記ステアリングホイール1の位置調節に要する力を十分に低くできない可能性がある。
これに対して本例の構造の場合には、前記スリット51の存在により、前記両押圧部同士の間隔を拡げた状態で、前記両支持板部24aが前記変位側ブラケット52を挟持している力を十分に低下させて(これら両支持板部24aの内側面と変位側ブラケット52の外側面との間に作用する摩擦力を低く抑えて)、前記ステアリングホイール1の位置調節を容易に(軽い力で)行える様にできる。更に、このステアリングホイール1を所望の位置に調節した後は、前記両押圧部同士の間隔を縮めれば、これら両押圧部同士の間隔を縮める力を、前記両支持板部24aの内側面により前記変位側ブラケット52の外側面を抑え付ける力として有効に利用して、特に{前記両押圧部同士の間隔を縮める為にカム装置32の調節レバー33(図15〜17参照)の}操作力を大きくする事なく、前記ステアリングホイール1の位置を、調節後の位置に保持できる。
その他の部分の構成及び作用は、前述の第1例又は第2例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
[実施の形態の第4例]
図9は、請求項1〜3、9、11に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合も、上述した実施の形態の第3例の場合と同様に、左右1対の支持板部24aのうちの少なくとも一方(好ましくは両方)の支持板部24aの一部で、調節ロッド27が挿通されている上下方向長孔25を形成した部分の、幅方向に関する剛性を、他の部分よりも低くしている。この為に本例の場合には、前記支持板部24aの一部で、前記上下方向長孔25を形成した部分を、コラム側ブラケット22a及び係止カプセル36aと車体側ブラケット23aとの結合部よりも後方に突出させている。そして、この突出した部分の上端縁は、上板部43等の他の部分に繋がらせていない。即ち、前記支持板部24aのうちで、前記上下方向長孔25を形成した後端部分を、前端側のみ、この支持板部24aの他の部分と連続させた構造として、この後端部分の、幅方向に関する剛性を低くしている。
この様な本例の構造の場合も、ステアリングホイール1の位置調節を容易に行える様にでき、特に操作力を大きくする事なく、このステアリングホイール1を、調節後の位置に保持できる。
[実施の形態の第5例]
図10〜11は、請求項1、4〜6に対応する、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の場合には、車体側ブラケット23cに、係止除肉部である、前後方向に長い透孔53を形成している。この透孔53は、1箇所の幅広部54と1対の延長部55、55とから成る。このうちの幅広部54は、前記透孔53の前半部を構成するもので、車体側ブラケット23cの幅方向中央部に、この車体側ブラケット23cの前端部まで形成している。又、前記両延長部55、55は、前記透孔53の後半部を構成するもので、前記幅広部54の後端縁の幅方向両端部2箇所位置から、更に後方に延出する状態で設けられており、それぞれが前後方向に長く互いに平行な、それぞれが切り欠き状である。
そして、コラム側ブラケット22aの上板部43を前記車体側ブラケット23cの下側に、それぞれが係止部材である1対のボルト56、56と、1対のナット57とにより、二次衝突時に前方への離脱を可能に支持している。これら両ボルト56、56は、上端部に頭部58、58を、中間部乃至下端部にねじ杆部59を、それぞれ設けている。このうちの頭部58、58の外径は、前記両延長部55、55の幅寸法よりも大きく、ねじ杆部59の外径はこの幅寸法よりも小さい。前記コラム側ブラケット22aと前記車体側ブラケット23cとは、前記両ボルト56、56と前記両ナット57とにより、スライド部材60を介して結合支持している。
このスライド部材60は、表面にポリアミド樹脂、PTFE等の合成樹脂をコーティングした金属板の如き、滑り易い板材を曲げ形成して成るもので、1枚の上側滑り板部61と2枚の下側滑り板部62とを、幅方向両端部2箇所の連結部63、63により連結して成る。このうちの上側滑り板部61は、前記車体側ブラケット23cの幅方向に関する寸法が、前記幅広部54の幅寸法よりも大きい。又、前記両下側滑り板部62の幅寸法は、前記両延長部55、55の幅寸法よりも大きい。更に、前記両連結部63、63の幅寸法は、これら両延長部55、55の幅寸法よりも小さい。
上述の様なスライド部材60は、前記上側滑り板部61を前記車体側ブラケット23cの上面で前記両延長部55、55の後端部分に、前記両下側滑り板部62をこの前記車体側ブラケット23cの下面で前記両延長部55、55の後端部分に、前記両連結部63、63をこれら両延長部55、55の内側の前後方向中間部に、それぞれ配置する。そして、前記両ボルト56、56のねじ杆部59を、前記上側滑り板部61の両端部に形成した通孔に上方から挿通し、更にこれら両ねじ杆部59を、前記両延長部55、55の後端部及び前記両下側滑り板部62に形成した通孔を上方から挿通し、前記上板部43の通孔に係止した、前記両ナット57に螺合し更に締め付ける。この状態で、前記両ボルト56、56の頭部58、58の下面と前記上板部43の上面との間で、前記車体側ブラケット23cのうちで前記透孔53のうちで前記両延長部55、55の両側縁部分が上下両面から、前記スライド部材60を介して挟持される。そして、前記コラム側ブラケット22aが前記車体側ブラケット23cに対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、前方への離脱を可能に結合支持される。
本例の場合には、前記コラム側ブラケット22aと前記車体側ブラケット23cとを、この車体側ブラケット23cを車体に支持固定する為に設けられた取付孔35、35の間部分のうち、幅方向2箇所位置で支持している。この為、ステアリングホイール1の操作により発生し、電動モータ15(図14参照)により増幅される、ステアリングコラム6b(図1、3、5、7〜9参照)の回転方向のトルクに対する支持剛性を、幅方向1箇所位置で支持した場合と比較して高くできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例又は第2例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
[実施の形態の第6例]
図12〜13は、請求項1、7、8に対応する、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例の場合には、車体側ブラケット23dのうちで幅方向中央部を挟む2箇所位置に、それぞれが係止除肉部であり、それぞれが前後方向に長く互いに平行な、1対の透孔64、64を形成している。そして、これら両透孔64、64の後端部分を挿通した1対のボルト56、56と、これら両ボルト56、56の雄ねじ部に螺合したナット57と、スライド部材60a、60aとにより、前記車体側ブラケット23dに対してコラム側ブラケット22aを、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、前方への離脱を可能に結合支持している。前記両スライド部材60a、60aは、それぞれが前記両透孔64、64の幅寸法よりも大きな幅寸法を有する上側滑り板部61aと下側滑り板部62aとを、これら両透孔64、64の幅寸法よりも小さな幅寸法を有する連結部63aにより連結して成る。更に本例の場合には、前記両スライド部材60a、60aの上側に長矩形の補強板65を、これら両スライド部材60a、60a同士の間に掛け渡す状態で設けている。そして、前記両ボルト56、56の頭部58、58の下面により前記補強板65の両端部上面を、前記両スライド部材60a、60aの上側滑り板部61aを介して、前記車体側ブラケット23dの上面に押圧している。
上述の様に構成する本例の構造の場合には、前記両ボルト56、56の頭部58、58の下面と前記車体側ブラケット23dの上面との間の摩擦状態を左右で均等にする為のチューニングが容易になる。その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第5例とほぼ同様であるから、重複する説明は省略する。
本発明を実施する場合に、係止部材と係止除肉部との組み合わせに就いては、上述した実施の形態の各例の構造に限られない。即ち、前述した実施の形態の第1例又は第2例に示した様な係止カプセルを、車体側ブラケットの前端部に開口していない透孔に係止する構造としても良い。又、上述した実施の形態の第5例又は第6例に示した様なボルトを、車体側ブラケットの前端部に開口した係止切り欠きに係止する構造とする事もできる。
又、ステアリングホイールの位置調節を容易に行える様にすると共に、このステアリングホイールの位置を調節後の位置に保持する為の力を低く抑えるべく、コラム側ブラケットの支持板部の剛性を低くする為には、前述の図8〜9に記載した構造に代えて、或いはこの図8〜9に示した構造と共に、1対の支持板部のうちの一方の支持板部の厚さを薄くする事もできる。コラム側ブラケットに対するステアリングコラムの支持剛性は、他方の支持板部の厚さを確保する事により確保する。
又、本発明は、テレスコピック機構を備えていない、チルト機構のみを備えたステアリングコラム用支持装置にも適用できる。
1 ステアリングホイール
2 ステアリングギヤユニット
3 入力軸
4 タイロッド
5、5a ステアリングシャフト
6、6a、6b ステアリングコラム
7 自在継手
8 中間シャフト
9 自在継手
10 インナコラム
11、11a、11b、11c アウタコラム
12 アウタシャフト
13 玉軸受
14 ハウジング
15 電動モータ
16 制御器
17 支持筒
18 中心孔
19 スリット
20 周方向透孔
21、21a、21b 被支持板部
22、22a コラム側ブラケット
23、23a、23b、23c、23d 車体側ブラケット
24、24a 支持板部
25 上下方向長孔
26 前後方向長孔
27 調節ロッド
28 頭部
29 ナット
30 駆動側カム
31 被駆動側カム
32 カム装置
33 調節レバー
34、34a、34b 係止切り欠き
35 取付孔
36、36a、36b 係止カプセル
37、37a 鍔部
38a、38b 小通孔
39、39a 係止ピン
40、40a ボルト
41、41a ナット
42 リベット
43 上板部
44、44a 基板部
45、45a 曲げ起こし部
46 透孔
47 溶接
48 切り欠き
49 弾性押圧板部
50 突出部
51 スリット
52 変位側ブラケット
53 透孔
54 幅広部
55 延長部
56 ボルト
57 ナット
58 頭部
59 ねじ杵部
60、60a スライド部材
61、61a 上側滑り板部
62、62a 下側滑り板部
63、63a 連結部
64 透孔
65 補強板
この発明は、衝突事故の際に運転者の身体からステアリングホイールに加わった衝撃エネルギを吸収しつつ、このステアリングホイールの前方への変位を可能とすべく、ステアリングコラムを車体に対し前方への変位を可能に支持する為のステアリングコラム用支持装置の改良に関する。
[従来技術]
自動車用ステアリング装置は、図14に示す様に構成して、ステアリングホイール1の回転をステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達し、この入力軸3の回転に伴って左右1対のタイロッド4、4を押し引きし、前車輪に舵角を付与する様にしている。前記ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト5の後端部に支持固定されており、このステアリングシャフト5は、円筒状のステアリングコラム6を軸方向に挿通した状態で、このステアリングコラム6に回転自在に支持されている。又、前記ステアリングシャフト5の前端部は、自在継手7を介して中間シャフト8の後端部に接続し、この中間シャフト8の前端部を、別の自在継手9を介して、前記入力軸3に接続している。尚、この中間シャフト8は、トルクを伝達可能に、且つ、衝撃荷重により全長を収縮可能に構成している。そして、衝突事故の際(次述する一次衝突の際)に、前記ステアリングギヤユニット2の後方への変位に拘らず、前記ステアリングシャフト5を介して前記ステアリングホイール1が後方に向けて変位する(運転者の身体に向けて突き上げられる)事を防止できる様に構成している。
上述の様な自動車用ステアリング装置は、衝突事故の際に、衝撃エネルギを吸収しつつ、ステアリングホイール1を前方に変位させる構造にする事が、運転者の保護の為には必要である。即ち、衝突事故の際には、自動車が他の自動車等にぶつかる一次衝突に続いて、運転者の身体が前記ステアリングホイール1に衝突する二次衝突が発生する。この二次衝突の際に、運転者の身体に加わる衝撃を緩和して、運転者の保護を図る為に、前記ステアリングホイール1を支持したステアリングコラム6を車体に対して、二次衝突に伴う前方への衝撃荷重により前方に離脱可能に支持する構造が従来から各種知られており、且つ、広く実施されている。
二次衝突時に於けるステアリングコラムの前方への離脱を安定させる為には、特許文献1に記載されている様に、幅方向中央部で、前記ステアリングコラムを車体に対し、離脱可能に支持する事が好ましい。即ち、前記特許文献1の第1〜2図に記載されている様な、左右両端2箇所位置で支持する構造の場合には、一端側と他端側とで離脱のタイミングが前後し、前方への離脱に伴ってステアリングコラムが傾斜する可能性がある等、運転者保護の為のチューニングが難しくなる可能性がある。これに対して、前記特許文献1の第3〜8図に示す様な、ステアリングコラムを車体に対し、幅方向中央部で支持する構造によれば、前方への離脱に伴ってステアリングコラムが傾斜し難くなり、運転者保護の為のチューニングが容易になる。
[先発明に係る技術]
図15〜19は、前記特許文献1に記載された発明と同様に、ステアリングコラムを車体に対し、幅方向中央部で支持する構造を採用して、二次衝突時に於ける運転者の保護をより一層充実させる事を考慮して発明したステアリングコラム用支持装置(先発明構造)を示している。本発明は、この先発明構造を改良したものであり、この先発明構造と共通点が多い為、先ず、この先発明構造に就いて説明する。
図15〜19に示した先発明構造は、ステアリングホイール1(図14参照)の上下位置を調節する為のチルト機構と、同じく前後位置を調節する為のテレスコピック機構との両方を備えた、チルト・テレスコピック式ステアリング装置に先発明を適用した場合に就いて示している。このうちのテレスコピック機構を構成する為に、ステアリングコラム6aとして、前側のインナコラム10の後部を後側のアウタコラム11の前部に内嵌して全長を伸縮可能とした、テレスコープ状のものを使用している。そして、前記ステアリングコラム6aの内径側にステアリングシャフト5aを、回転自在に支持している。
このステアリングシャフト5aは、前側に配置した円杆状のインナシャフトの後部に設けた雄スプライン部と、後側に配置した円管状のアウタシャフト12の前部に設けた雌スプライン部とをスプライン係合させる事により、トルクの伝達を可能に、且つ、伸縮を可能に構成している。前記アウタシャフト12は、後端部を前記アウタコラム11の後端開口よりも後方に突出させた状態でこのアウタコラム11の内径側に、単列深溝型の玉軸受13等、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支承可能な軸受により、回転のみ自在に支持している。前記ステアリングホイール1は、前記アウタシャフト12の後端部に支持固定する。このステアリングホイール1の前後位置を調節する際には、このアウタシャフト12と共に前記アウタコラム11が前後方向に変位し、前記ステアリングシャフト5a及び前記ステアリングコラム6aが伸縮する。
又、このステアリングコラム6a(を構成する前記インナコラム10)の前端部に、電動式パワーステアリング装置を構成する減速機等を収納する為のハウジング14を、結合固定している。このハウジング14の上面には、前記電動式パワーステアリング装置の補助動力源となる電動モータ15と、この電動モータ15への通電を制御する為の制御器16とを支持固定している。そして、前記チルト機構を構成する為に、前記ハウジング14を車体に対し、横軸を中心とする揺動変位を可能に支持している。この為に本例の場合には、前記ハウジング14の上部前端に支持筒17を、左右方向に設けている。そして、この支持筒17の中心孔18に挿通したボルト等の横軸により、前記ステアリングコラム6aの前端部を前記車体に対し、このステアリングコラム6aの後部を昇降させる方向の揺動変位を可能に支持する構成を採用している。
又、前記ステアリングコラム6aの中間部乃至後部を構成する、前記アウタコラム11の前半部の内径を、弾性的に拡縮可能としている。この為に、このアウタコラム11の下面にスリット19を、軸方向に形成している。このスリット19の前端部は、このアウタコラム11の前端縁、又は、このアウタコラム11の前端寄り部分の上端部を除いた部分に形成した周方向透孔20(本発明に関する参考例を示す図1、5、8、9、10参照)に開口させている。又、前記スリット19を幅方向両側から挟む部分に、それぞれが厚肉平板状の1対の被支持板部21、21を設けている。これら両被支持板部21、21が、前記ステアリングホイール1の位置調節時に、前記アウタコラム11と共に変位する、変位側ブラケットとして機能する。
図示の先発明に係る構造の場合、前記両被支持板部21、21をコラム側ブラケット22に対し、上下位置及び前後位置の調節を可能に支持している。このコラム側ブラケット22は、通常時には車体に対し支持されているが、衝突事故の際には、二次衝突の衝撃に基づいて、前方に離脱し、前記アウタコラム11の前方への変位を許容する様にしている。この為に、前記コラム側ブラケット22を車体側ブラケット23に対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、前方への離脱を可能に支持している。
前記ステアリングホイール1が調節後の位置に保持されている状態で、前記両被支持板部21、21は、前記コラム側ブラケット22を構成する左右1対の支持板部24、24により強く挟持されている。これら両支持板部24、24には、前記支持筒17を車体に対し支持した横軸を中心とする部分円弧形の上下方向長孔25を、前記両被支持板部21、21には、前記アウタコラム11の軸方向に長い前後方向長孔26を、それぞれ形成している。そして、これら各長孔25、26に、調節ロッド27を挿通している。この調節ロッド27の基端部(図16の右端部)に設けた頭部28は、一方(図16の右方)の支持板部24に形成した上下方向長孔に、この上下方向長孔に沿った変位のみを可能に(回転を阻止した状態で)係合させている。これに対して、前記調節ロッド27の先端部(図16の左端部)に螺着したナット29と他方(図16の左方)の支持板部24の外側面との間に、駆動側カム30と被駆動側カム31とから成るカム装置32を設けている。そして、このうちの駆動側カム30を、調節レバー33により回転駆動可能としている。
前記ステアリングホイール1の位置調節を行う際には、前記調節レバー33を所定方向(下方)に回動させる事により前記駆動側カム30を回転駆動し、前記カム装置32の軸方向寸法を縮める。そして、前記被駆動側カム31と前記頭部28との、互いに対向する内側面同士の間隔を拡げ、前記両支持板部24、24が前記両被支持板部21、21を抑え付けている力を解放する。同時に、前記アウタコラム11の前部で前記インナコラム10の後部を内嵌した部分の内径を弾性的に拡げ、これらアウタコラム11の前部内周面とインナコラム10の後部外周面との当接部に作用している面圧を低下させる。この状態で、前記調節ロッド27が前記上下方向長孔25と前記前後方向長孔26との内側で変位できる範囲で、前記ステアリングホイール1の上下位置及び前後位置を調節できる。
このステアリングホイール1を所望位置に移動させた後、前記調節レバー33を前記所定方向とは逆方向(上方)に回動させる事により、前記カム装置32の軸方向寸法を拡げる。これにより、前記被駆動側カム31と前記頭部28との、互いに対向する内側面同士の間隔を縮め、前記両支持板部24、24により前記両被支持板部21、21を強く抑え付ける。同時に、前記アウタコラム11の前部で前記インナコラム10の後部を内嵌した部分の内径を弾性的に縮め、これらアウタコラム11の前部内周面とインナコラム10の後部外周面との当接部に作用している面圧を高くする。この状態で、前記ステアリングホイール1の上下位置及び前後位置が調節後の位置に保持される。
更に、前記コラム側ブラケット22は、前記車体側ブラケット23に対し、二次衝突の衝撃荷重により前方に離脱はするが、二次衝突が進行した状態でも、脱落しない様に支持している。前記車体側ブラケット23は、車体側に支持固定されて、二次衝突時にも前方に変位する事がないもので、鋼板等の十分な強度及び剛性を有する金属板に、プレスによる打ち抜き加工及び曲げ加工を施す事により造っている。この様な車体側ブラケット23は、両側縁部及び後端縁部を下方に折り曲げる事により曲げ剛性を向上させ、幅方向中央部に前端縁側が開口した係止切り欠き34を、後部のうちでこの係止切り欠き34を左右両側から挟む位置に1対の取付孔35、35を、それぞれ形成している。この係止切り欠き34は、次述する係止カプセル36により覆われた、前記車体側ブラケット23の後端部近傍まで形成している。この様な車体側ブラケット23は、前記両取付孔35、35を挿通したボルト或いはスタッドにより、車体に対し支持固定される。
上述の様な車体側ブラケット23に対し前記コラム側ブラケット22を、係止カプセル36を介して、二次衝突時に前方への離脱を可能に結合している。この係止カプセル36は、左右方向に関する幅寸法、並びに、前後方向に関する長さ寸法を、下半部に比べ上半部で大きくして、前記係止カプセル36の左右両側面及び後側面の上半部に、両側方及び後方に突出する鍔部37を設けている。この様な係止カプセル36は、下半部を前記係止切り欠き34に係合(内嵌)した状態で、前記車体側ブラケット23に対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重に基づいて前方への離脱を可能に支持している。この為に、前記鍔部37と、前記車体側ブラケット23の一部で前記係止切り欠き34の周縁部との、互いに整合する複数箇所(図示の例では8箇所ずつ)に、それぞれ小通孔38a、38bを形成している。そして、これら各小通孔38a、38b同士の間に、それぞれ合成樹脂、アルミニウム系合金等の、二次衝突時に加わる衝撃荷重により裂断する係止ピン39、39を掛け渡している。この構成により、前記係止カプセル36を前記車体側ブラケット23に対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への離脱を可能に支持している。
上述の様な係止カプセル36は前記コラム側ブラケット22に対し、前記衝撃荷重に拘らず非分離な状態で、結合固定している。即ち、前記係止カプセル36と前記コラム側ブラケット22とを、ボルト40、40とナット41、41とにより結合固定している。従って、二次衝突時に前記アウタコラム11から前記コラム側ブラケット22に伝わった前記衝撃荷重は、そのまま前記係止カプセル36に伝わり、前記各係止ピン39、39の裂断に伴ってこの係止カプセル36が前方に変位するのと同期して、前記アウタコラム11も前方に変位する。
この様に、二次衝突時に前記アウタコラム11と共に前方に変位する、前記係止カプセル36を係止した、前記係止切り欠き34の前後方向に関する長さL34は、この係止カプセル36の同方向の長さL36よりも十分に大きい(L34≫L36)。例えば、前記係止切り欠き34の長さL34を、前記係止カプセル36の長さL36の2倍以上(L34≧2L36)確保している。そして、二次衝突時に前記アウタコラム11と共に前記係止カプセル36が前方に変位し切った(ステアリングホイール1から加わった衝撃荷重では、それ以上前方に変位しなくなった)状態でも、前記係止カプセル36を構成する前記鍔部37の少なくとも後端部で、前記ステアリングコラム6a及び前記コラム側ブラケット22等の重量を支承可能な部分が、前記係止切り欠き34から抜け出ない様にしている。即ち、二次衝突が進行した状態でも、前記係止カプセル36の上半部の幅方向両側部分に形成した前記鍔部37のうちの少なくとも後端部が、前記車体側ブラケット23の前端部の上側に位置して、前記係止カプセル36が脱落するのを防止できる様にしている。
上述の様に構成する、先発明に係るステアリングコラム用支持装置によれば、二次衝突時に前記ステアリングホイール1を前方に安定して変位させる為のチューニングが容易で、しかも、二次衝突が進行した状態でも前記ステアリングホイール1が過度に下方に変位する事を防止できる。
先ず、二次衝突時にステアリングホイール1を前方に安定して変位させる為のチューニングの容易化は、前記車体側ブラケット23と前記係止カプセル36とを、この車体側ブラケット23の幅方向中央部のみで係合させる事により図れる。
即ち、前記係止カプセル36を、前記アウタコラム11の直上部分に配置している為、二次衝突時に前記ステアリングホイール1から前記アウタシャフト12及び前記アウタコラム11を通じて前記係止カプセル36に伝わった衝撃荷重が、この係止カプセル36と前記車体側ブラケット23とを結合している、前記各係止ピン39、39に、ほぼ均等に加わる。要するに、前記衝撃荷重は、前記係止カプセル36のほぼ中央部に、前記アウタコラム11の軸方向に作用する。そして、この係止カプセル36が、前記係止切り欠き34から前方に抜け出る方向の力が加わる。この為、この係止カプセル36と前記車体側ブラケット23とを結合している前記各係止ピン39、39が、実質的に同時に裂断する。この結果、前記コラム側ブラケット22等を介して前記係止カプセル36と結合された前記アウタコラム11の前方への変位が、中心軸を過度に傾斜させたりする事無く、安定して行われる。
又、二次衝突が進行した状態でも前記ステアリングホイール1が過度に下方に変位するのを防止する事は、前記係止切り欠き34の前後方向長さL34を前記係止カプセル36の前後方向の長さL36よりも十分に大きくしている事により図れる。即ち、これら各長さL34、L36をこの様に規制している為、二次衝突が進行し、前記ステアリングホイール1と共に、前記係止カプセル36が前方に変位し切った状態でも、この係止カプセル36全体が前記係止切り欠き34から前方に抜け出る事はない。この為、二次衝突が進行した状態でも、前記アウタコラム11の支持力を確保して、このアウタコラム11及び前記アウタシャフト12を介してこのアウタコラム11に支持された前記ステアリングホイール1が、過度に下降する事を防止できる。そして、事故後もこのステアリングホイール1の操作を行い易くして、例えば、事故車両が自走可能である場合に、この事故車両を事故現場から路肩まで自走移動させる際の運転を行い易くできる。
上述の様な先発明の構造は、二次衝突時に於ける運転者の保護充実を図る設計を容易化できる利点があるが、この二次衝突時に於ける運転者の保護をより一層充実させる為には、二次衝突時に前記係止カプセル36の離脱をより安定して行わせる点で、改良の余地がある。この点に関し、図19を参照しつつ説明する。尚、この図19には、係止カプセル36とコラム側ブラケット22とをリベット42、42により結合固定した構造を示している。但し、これら係止カプセル36とコラム側ブラケット22との結合固定の為の構造に関しては自由であり、本発明の要旨とは関係しない。
二次衝突時にステアリングホイール1からステアリングシャフト5を介してステアリングコラム6(例えば図14参照)に伝わった衝撃荷重は、前記コラム側ブラケット22を構成する支持板部24の上下方向長孔25を挿通した調節ロッド27から、このコラム側ブラケット22に入力される。即ち、二次衝突時には、この調節ロッド27が、前記上下方向長孔25の前側内側縁を強く押す。この結果、前記コラム側ブラケット22には、前記調節ロッド27を力点(入力部)とし、前記係止カプセル36とこのコラム側ブラケット22との結合部を支点として、図19の時計方向のモーメントが、衝撃的に加わる。上述した先発明構造の場合には、前記調節ロッド27が前記ステアリングコラム6の下側に存在する為、前記衝撃荷重の入力部である、この調節ロッド27の中心から前記係止カプセル36と前記コラム側ブラケット22との結合部(支点)までの距離が大きく、前記モーメントが大きくなる。
上述の様な、衝撃的に加わる大きなモーメントにより、図19の(B)の鎖線イで囲んだ部分で、前記コラム側ブラケット22を構成する上板部43の上面前端縁部が、前記車体側ブラケット23の下面に強く押し付けられる。即ち、前記コラム側ブラケット22は、左右1対の支持板部24の上端縁同士を前記上板部43により連続させており、この上板部43の上面は前記車体側ブラケット23の下面に、実質上当接している(図18中の隙間は誇張して描いている)。従って、二次衝突に伴い前記上板部43の上面前端縁部が、前記車体側ブラケット23の下面に強く押し付けられる。この結果、当該部分に大きな摩擦力が作用する。この為、前記車体側ブラケット23に形成した係止切り欠き34(図15、17、18参照)から抜け出る為に要する離脱荷重が、大きく、しかも不安定になる。この様な状態は、運転者保護をより充実させる面からは好ましくない。
前記図19の(B)の鎖線イで囲んだ部分に存在する当接部に加わる面圧は、前記モーメントが大きくなる程高くなり、このモーメントは、前記支点となる結合部と前記衝撃荷重の入力部との距離が大きくなる程大きくなる。前述の先発明に係る構造の場合、この入力部は、前記上下方向長孔25の内側縁と前記調節ロッド27の外周面との突き当たり部であり、この突き当り部は、上述した様に、前記ステアリングコラム6a(図15〜17参照)の本体部分よりも下方に存在する。この為、前記結合部と前記入力部との距離が大きく、前記モーメントが大きくなり、前記当接部の面圧が高くなって、前記離脱荷重を、低く、且つ、安定させる事が難しい。
更に、前述した先発明の構造の場合には、ステアリングホイールの位置調節機構(チルト機構とテレスコピック機構との一方又は双方)を構成する為の前記調節ロッド27を、前記ステアリングコラム6aの下側に配置している為、衝突事故の際に於ける運転者保護の面から不利である。即ち、前記調節ロッド27を、前記ステアリングコラム6aの下側に配置した事に伴い、前記両被挟持板部21、21や前記両支持板部24、24の下端部が、前記ステアリングコラム6aの下面よりも下方に大きく突出する。そして、衝突事故の際に、この突出した部分に運転者の膝等が衝突し易くなり、衝突事故の際に運転者保護を充実させる面から、ステアリング装置の設計の自由度が低下する。
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、次の(1)〜(3)の効果を並立させる事ができ、更に必要とすれば、次の(4)の効果も得られるステアリングコラム用支持装置の構造を実現すべく発明したものである。
(1) 二次衝突時にステアリングホイールを前方に安定して変位させる為のチューニングを容易にする。
(2) 車体側ブラケットの下面とコラム側ブラケットの上面等とが強く擦れ合わない様にして、離脱荷重の絶対値及びばらつきを小さく抑える。
(3) ステアリング装置の設計の自由度を低下させずに、衝突事故の際に運転者保護を充実させる。
(4) ステアリングホイールの位置調節を行う際の操作性を向上させる。
本発明のステアリングコラム用支持装置は、ステアリングコラムと、変位側ブラケットと、車体側ブラケットと、係止除肉部と、コラム側ブラケットと、係止部材とを備える。
このうちのステアリングコラムは、内側にステアリングシャフトを回転自在に支持する為のものである。
又、前記変位側ブラケットは、前記ステアリングコラムの中間部に固設されている。
又、前記車体側ブラケットは、少なくとも幅方向両側2箇所位置で車体側に支持固定されて、二次衝突時にも前方に変位する事がない。
又、前記係止除肉部は、前記車体側ブラケットの幅方向に関して、前記幅方向両側2箇所位置の間部分に形成されている。
又、前記コラム側ブラケットは、幅方向に離隔した状態で設けられた左右1対の支持板部を有し、前記ステアリングコラム側に支持されて、二次衝突時にこのステアリングコラムと共に前方に変位する。
又、前記係止部材は、前記コラム側ブラケットに固定されている。
そして、前記変位側ブラケットを前記両支持板部同士の間に挟持した状態で、この変位側ブラケットを幅方向に挿通すると共にこれら両支持板部同士の間に掛け渡した状態で設けられた調節ロッドの両端部に設けられた1対の押圧部同士の間隔を拡縮する事により、前記コラム側ブラケットに対する前記変位側ブラケットの位置固定及び位置調節を可能としている。
更に、前記コラム側ブラケット及び前記係止部材を前記車体側ブラケットに対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への離脱を可能に支持している。
特に、本発明のステアリングコラム用支持装置に於いては、前記変位側ブラケットを、前記ステアリングコラムの上側部分に固設する。又、前記係止除肉部を、それぞれが前後方向に長く互いに平行な、1対の透孔とする。又、前記係止部材を、上端部にこれら両透孔の幅寸法よりも大きな直径を有する頭部を備えた1対のボルトとする。又、前記コラム側ブラケットを、前記両支持板部の上端縁同士を連続させる上板部を有するものとする。そして、前記両ボルトの下端部に設けた雄ねじ部を、前記上板部に固定したナット若しくはこの上板部に形成したねじ孔に螺合し更に締め付ける事により、前記両頭部の下面とこの上板部の上面との間で、前記車体側ブラケットのうちで前記両透孔の両側縁部分を係止する。又、1対の滑り板と、これら両透孔の幅寸法よりも小さな幅寸法を有し、これら両滑り板同士を連結する連結部とをそれぞれ備え、合成樹脂をコーティングした金属板を曲げ形成する事で、前記両滑り板とこの連結部とを一体とした1対のスライド部材のうち、これら両滑り板を、前記両頭部の下面と前記車体側ブラケットの上面との間、及び、この車体側ブラケットの下面と前記上板部の上面との間に、それぞれ挟持している。そして、前記両透孔の後端部に、前記両スライド部材と前記両ボルトとを設置する。
上述の様な本発明のステアリングコラム用支持装置を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、1対のスライド部材の上側に補強板を、これら両スライド部材同士の間に掛け渡す状態で設ける。そして、前記両ボルトの頭部の下面により、前記補強板の両端部上面を、前記車体側ブラケットの上面に押圧する。
又、上述の様な本発明のステアリングコラム用支持装置を実施する場合に、好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、前記両支持板部のうちの少なくとも一方の支持板部の一部で、前記調節ロッドが挿通されている部分の幅方向に関する剛性を、他の部分よりも低くする。
この様な請求項3に記載した発明を実施する場合に、具体的には、請求項4に記載した発明の様に、前記少なくとも一方の支持板部の一部で、前記調節ロッドを挿通する為に当該支持板部に形成した透孔に隣接する部分に、スリットを形成する。
或いは、請求項5に記載した発明の様に、前記少なくとも一方の支持板部の一部で、前記調節ロッドを挿通する為の透孔を形成した部分を、前記コラム側ブラケット及び前記両ボルトと前記車体側ブラケットとの結合部よりも前後方向に突出させる。そして、この突出した部分の上端縁は他の部分に繋がらせない。
更には、請求項6に記載した発明の様に、前記両支持板部のうちの一方の支持板部の厚さを他方の支持板部の厚さよりも小さくして、この一方の支持板部の幅方向に関する剛性を低くする事もできる。
上述の様に構成する本発明のステアリングコラム用支持装置によれば、次の(1)〜(3)の効果を並立させる事ができ、更に請求項3〜6に記載した発明によれば、次の(4)の効果も得られる。
(1) 二次衝突時にステアリングホイールを前方に安定して変位させる為のチューニングを容易にする。
(2) 車体側ブラケットの下面とコラム側ブラケットの上面等とが強く擦れ合わない様にして、離脱荷重の絶対値及びばらつきを小さく抑える。
(3) ステアリング装置の設計の自由度を低下させずに、衝突事故の際に運転者保護を充実させる。
(4) ステアリングホイールの位置調節を行う際の操作性を向上させる。
これら(1)〜(4)の効果のうち、(1)の効果に就いては、車体側ブラケットと係止部材である1対のボルトとを、この車体側ブラケットを車体側に支持している幅方向両側2箇所の間部分で係合させる事により図れる。即ち、前述した先発明の構造と同様に、ボルトをステアリングコラムの直上部分に配置している為、二次衝突時に加わる衝撃荷重が前記間部分のほぼ中央部に、前記ステアリングコラムの軸方向に作用して、前記両ボルトが係止除肉部である1対の透孔から前方に変位(離脱)する方向の力が加わる。そして、コラム側ブラケット等を介して前記両ボルトと結合された前記ステアリングコラムの前方への変位が、中心軸を過度に傾斜させたりする事無く、安定して行われる。
又、前記(2)の効果に就いては、変位側ブラケットを前記ステアリングコラムの上側部分に固設する事により得られる。この構成により、二次衝突時に前記コラム側ブラケットに加わる衝撃荷重の入力部となる調節ロッドの中心から、前記両ボルトとこのコラム側ブラケットとの結合部までの距離を短くできて、前記衝撃荷重に基づいてこのコラム側ブラケットに加わるモーメントを低く抑えられる。そして、このコラム側ブラケットの上面に支持した前記両ボルトと前記車体側ブラケットに形成した前記両透孔との係合部に加わる、捩れ方向の力を低く抑えられる。そして、この係合部に作用する摩擦力を低減して、前記離脱荷重の絶対値及びばらつきを小さく抑えられる。
又、前記(3)の効果に就いても、変位側ブラケットを前記ステアリングコラムの上側部分に固設する事により得られる。この構成により、前記コラム側ブラケットや前記変位側ブラケットの下端部が、前記ステアリングコラムの下面よりも下方に大きく突出する事がなくなる。この結果、前記コラム側ブラケットや前記変位側ブラケットの下端部に運転者の膝等が衝突し難くなり、衝突事故の際に運転者保護を充実させつつ、ステアリング装置の設計の自由度を確保できる。
更に、前記(4)の効果に就いては、前記コラム側ブラケットを構成する1対の支持板部のうちの所定部分の剛性を低くする事により図れる。即ち、この所定部分の剛性を低くすると、前記ステアリングホイールの位置調節を行うべく、調節ロッドの両端部に設けた1対の押圧部同士の間隔を拡げた状態で、前記両支持板部が前記変位側ブラケットを挟持している力が十分に低下する。この為、これら両支持板部の内側面とこの変位側ブラケットの外側面との間に作用する摩擦力を低く抑えて、ステアリングホイールの位置調節を容易に(軽い力で)行える様にできる。このステアリングホイールを所望の位置に調節した後は、前記両押圧部同士の間隔を縮めれば、これら両押圧部同士の間隔を縮める力を、前記両支持板部の内側面により前記変位側ブラケットの外側面を抑え付ける力として有効に利用して、特に(前記両押圧部同士の間隔を縮める為のカム装置等の押圧装置を駆動する為の調節レバーの)操作力を大きくする事なく、前記ステアリングホイールの位置を、調節後の位置に保持できる。
本発明に関する参考例の第1例を示す側面図。
図1の左端部の平面図。
図2のa−a断面図。
比較の為に示す、先発明に係る構造に関する、図3と同様の図。
本発明に関する参考例の第2例を示す側面図。
図5の左端部の平面図。
図6のb−b断面図。
ステアリングホイールの位置調節の操作性向上の為の構造の第1例を組み込んだ、本発明に関する参考例の第3例を示す略側面図。
ステアリングホイールの位置調節の操作性向上の為の構造の第2例を組み込んだ、本発明に関する参考例の第4例を示す略側面図。
本発明に関する参考例の第5例を示す、部分縦断側面図。
同じく要部平面図。
本発明の実施の形態の1例を示す要部平面図。
図12のc−c断面図。
従来から知られているステアリング装置の1例を示す、部分切断側面図。
先発明の構造を、後上方から見た状態で示す斜視図。
同じく、一部を省略して後方から見た状態で示す端面図。
同じく、図16の上方から見た状態で示す平面図。
車体側ブラケットとコラム側ブラケットとの結合部の構造を示す、図17の拡大d−d断面図。
二次衝突時の離脱荷重が大きくなる理由を説明する為の、図18のe−e断面に相当する図(A)及び(A)のf部拡大図(B)。
[参考例の第1例]
図1〜3は、本発明に関する参考例の第1例を示している。本参考例の特徴は、左右1対の被支持板部21a、21aを、ステアリングコラム6bを構成するアウタコラム11aの上方に設けた点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述の図15〜18に示した先発明構造の場合と、基本的には同様であるから、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本参考例の特徴部分、先に説明しなかった部分、並びに、前記先発明構造と異なる部分を中心に説明する。
本参考例の構造では、前記アウタコラム11aを、アルミニウム系合金の如き軽合金等のダイキャスト成形により一体成形しており、上面に前記両被支持板部21a、21aを、幅方向に離隔した状態で設けている。そして、これら両被支持板部21a、21aの互いに整合する位置に形成した前後方向長孔26、26と、コラム側ブラケット22aを構成する左右1対の支持板部24a、24aに形成した上下方向長孔25、25とに、調節ロッド27を挿通している。そして、調節レバー33の操作に基づき、この調節ロッド27の頭部28と、カム装置32の被駆動側カム31との間隔を拡縮して、ステアリングシャフト5aを構成するアウタシャフト12の後端部に支持固定したステアリングホイール1(図14参照)の前後位置及び上下位置を調節可能としている。
又、本参考例の場合には、車体側ブラケット23aに形成した、係止切り欠き34aの周縁部に係止した、係止カプセル36aを、前記コラム側ブラケット22aの上板部43に、溶接により結合固定している。この為、これらコラム側ブラケット22aと係止カプセル36aとを、炭素鋼板等、互いに溶接可能な同種の金属板を曲げ形成する事により、それぞれ構成している。前記係止カプセル36aは、前記上板部43の上面に重ね合わせる基板部44と、この基板部44の左右両側縁及び後端縁から上方に曲げ起こされた曲げ起こし部45と、この曲げ起こし部45の上端縁から左右両側方及び後方に折れ曲がった鍔部37aとを備える。そして、このうちの基板部44の中央部に形成した透孔46の内周縁部分で、この基板部44と前記上板部43とを、隅肉溶接等の溶接47、47により、溶接固定している。そして、前記鍔部37aに形成した複数の小通孔38a、38aと、前記車体側ブラケット23aの一部に、前記係止切り欠き34aの内周縁に開口する状態で形成した切り欠き48、48及び小通孔38b、38bとに合成樹脂を注入固化させて、前記コラム側ブラケット22a及び前記係止カプセル36aを前記車体側ブラケット23aに対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、前方への離脱を可能に結合している。
上述の様に本参考例のステアリングコラム用支持装置は、前記係止カプセル36aを前記アウタコラム11aの直上部分に配置している。この為、二次衝突時に加わる衝撃荷重が前記係止カプセル36aのほぼ中央部に、前記アウタコラム11aの軸方向に作用する。即ち、二次衝突の状況に拘らず、前記係止カプセル36aの姿勢を、前記係止切り欠き34aから抜け出し難くする方向に変位させるモーメントが加わり難い。この結果、前記衝撃荷重を、前記係止カプセル36aが前記係止切り欠き34aから前方に抜け出る方向の力として有効に利用できて、二次衝突時にステアリングホイールを前方に安定して変位させる為のチューニングが容易になる。
又、前記両被支持板部21a、21aを前記アウタコラム11aの上側部分に固設している。この為、図3に示す様に、前記調節ロッド27の中心と、前記係止カプセル36aと前記コラム側ブラケット22aの上板部43との結合部までの距離LSを短くできる。これに対して、図4に示す様に、被挟持板部21b、21bをアウタコラム11bの下側部分に固設した構造の場合には、調節ロッド27の中心と、係止カプセル36aと上板部43との結合部までの距離LLが長くなる。この調節ロッド27は、二次衝突時に前記コラム側ブラケット22aに加わる衝撃荷重の入力部となる部分であるが、前記調節ロッド27からこのコラム側ブラケット22aに入力される衝撃荷重の大きさは、図3に示した構造でも、図4に示した構造でも同じである。そして、この衝撃荷重に基づいて前記コラム側ブラケット22aに加わるモーメントの大きさは、このモーメントに関するスパンの長さである、前記距離LS、LLに比例する。従って、本参考例の構造によれば、この距離LSを短くできる分だけ、二次衝突に伴って、前記コラム側ブラケット22aに加わる、図1の時計方向のモーメントを小さくできる。この為、前記上板部43の上面前端縁部と前記車体側ブラケット23aの下面との擦れ合い部の当接圧を低く抑えられる等により、この車体側ブラケット23aと、前記係止カプセル36a及び前記コラム側ブラケット22aとの係合部に作用する摩擦力を低減できる。そして、前記二次衝突時に於ける、このコラム側ブラケット22aの前方への離脱荷重の絶対値及びばらつきを小さく抑えられる。
更に、前記両被支持板部21a、21aを前記アウタコラム11aの上側部分に固設している為、これら両被支持板部21a、21aを挟持している、前記コラム側ブラケット22aを構成する前記両支持板部24a、24aの下端部が、前記アウタコラム11aの下面よりも下方に大きく突出する事がなくなる。即ち、図3に示す様に、前記車体側ブラケット23aの上面から前記両支持板部24a、24aの下端縁までの距離である組立高さHSを、前記図4に示した構造の組立高さHLよりも短くできる。この結果、前記両支持板部24a、24aや前記両被支持板部21a、21aの下端部に運転者の膝等が衝突し難くなり、衝突事故の際に運転者保護を充実させつつ、ステアリング装置の設計の自由度を確保できる。又、前記組立高さHSを短くできる分、ステアリングコラム用支持装置の小型・軽量化を図る面からも有利になる。更には、前記車体側ブラケット23aに対する、前記アウタコラム11a(を含むステアリングコラム6a)の支持剛性(特に幅方向の剛性)を確保する面からも有利になる。即ち、前記調節ロッド27を前記ステアリングコラム6bの上方に配置している為、この調節ロッド27による締め付け部と、前記車体側ブラケット23aとの距離を短くできる。この結果、この調節ロッド27部分から前記コラム側ブラケット22aに入力されるモーメントによる、前記ステアリングコラム6bの幅方向変位を抑えられる。
尚、本参考例の場合には、前記係止カプセル36aのうちで、前記曲げ起こし部45を係合させる為、前記車体側ブラケット23aに形成した係止切り欠き34aの左右両側縁を、この係止切り欠き34aの幅寸法が、後方に向かうに従って狭くなる方向に傾斜させている。又、前記合成樹脂の一部は、前記各切り欠き48、48から、前記係止切り欠き34aの左右両側縁と前記曲げ起こし部45の左右両外側面との間の微小隙間内に入り込んで、これら左右両側縁と曲げ起こし部45の左右両外側面とが金属接触する事を防止する。本参考例の場合には、この様な構成により、前記係止カプセル36aを前記係止切り欠き34aから前方に、更に抜け出し易くしている。
[参考例の第2例]
図5〜7は、本発明に関する参考例の第2例を示している。本参考例の構造は、コラム側ブラケット22a及び係止カプセル36bを車体側ブラケット23bに対し、二次衝突に伴って前方への離脱を可能に結合支持している部分の構造が、上述した参考例の第1例の場合とは異なる。本参考例の場合には、前記車体側ブラケット23bに形成した係止切り欠き34bの形状を長U字形とし、幅寸法を、後端奥部の半円弧部及び前端開口の面取り部を設けた部分を除き、一定としている。
一方、前記係止カプセル36bは、炭素鋼板、ステンレス鋼板等の、弾性及び必要とする強度及び剛性を有する金属板を曲げ形成して成るもので、基板部44aと、曲げ起こし部45aと、4箇所の弾性押圧板部49、49とを備える。このうちの基板部44aは、平面形状が小判形(長円形)で、この基板部44aの周縁部に形成した前記曲げ起こし部45aの外周面は、短径(幅)が前記係止切り欠き34bの幅よりも僅かに短く、長径(長さ)がこの係止切り欠き34bの幅よりも十分に大きい。又、前記各弾性押圧板部49、49は、前記曲げ起こし部45aの上端縁から左右両側の前後両端部に張り出す状態で設けられている。前記係止カプセル36bに外力が加わらない自由状態で、前記基板部44aの厚さ方向に関する、この基板部44aの下面から前記各弾性押圧板部49、49の先端部に設けた突出部50、50の下面までの距離は、前記車体側ブラケット23bの厚さ寸法よりも短い。
上述の様な係止カプセル36bは、前記曲げ起こし部45aを前記係止切り欠き34bの奥部に位置させた状態で、前記基板部44aの下面と前記コラム側ブラケット22aの上板部43の上面とを対向させる。そして、これら基板部44aと上板部43との互いに整合する部分に形成した通孔を挿通したボルト40aとナット41aとを螺合し更に締め付ける事により、前記基板部44aの下面と前記コラム側ブラケット22aの上板部43の上面とを当接させる。この状態で、前記各弾性押圧板部49、49の先端部下面が前記車体側ブラケット23bの上面で前記係止切り欠き34bの両側部分を強く押圧する。二次衝突時には、この車体側ブラケット23bの上面と前記各突出部50、50の下面とが擦れ合いつつ、前記コラム側ブラケット22aが前方に変位(離脱)する。
その他の部分に構成及び作用は、前述した参考例の第1例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
[参考例の第3例]
図8は、本発明に関する参考例の第3例を示している。本参考例の場合には、コラム側ブラケット22aを構成する左右1対の支持板部24aのうちの少なくとも一方(好ましくは両方)の支持板部24aの一部で、調節ロッド27が挿通されている上下方向長孔25を形成した部分の、幅方向に関する剛性を、他の部分よりも低くしている。この為に本参考例の場合には、前記少なくとも一方の支持板部24aの一部で、前記上下方向長孔25に隣接する部分に、スリット51を形成している。前記調節ロッド27の端部に設けられた押圧部により押圧される部分の幅方向に関する剛性を低くできる限り、前記スリット51の形状は特に問わない。図示の例の様に、前記上下方向長孔25の上半部を三方から囲むコ字形若しくはU字形としても、或いは、この上下方向長孔25を前後両側から挟む部分に、それぞれ上下方向に長いスリットを形成する事もできる。
本参考例の構造の場合には、上述の様に、前記支持板部24aのうちで前記調節ロッド27を挿通する部分の、幅方向に関する剛性を低くしているので、ステアリングホイール1の位置調節を行うべく、前記調節ロッド27の両端部に設けた1対の押圧部同士の間隔を拡げた状態で、前記両支持板部24aが、アウタコラム11cの上方に固設した変位側ブラケット52を挟持している力が十分に低下する。即ち、本発明の場合には、この変位側ブラケット52を前記アウタコラム11cの上方に配置している為、前記調節ロッド27の設置部分が、上下方向に関して、このアウタコラム11cと車体側ブラケット23aとの間に存在する状態となる。この為、前記支持板部24aのうちで前記調節ロッド27を挿通する部分の、幅方向に関する剛性が高いと、この調節ロッド27の両端部に設けられた1対の押圧部同士の間隔を拡げても、前記両支持板部24aの内側面と前記変位側ブラケット52の両外側面との当接圧が十分に低下せず、前記ステアリングホイール1の位置調節に要する力を十分に低くできない可能性がある。
これに対して本参考例の構造の場合には、前記スリット51の存在により、前記両押圧部同士の間隔を拡げた状態で、前記両支持板部24aが前記変位側ブラケット52を挟持している力を十分に低下させて(これら両支持板部24aの内側面と変位側ブラケット52の外側面との間に作用する摩擦力を低く抑えて)、前記ステアリングホイール1の位置調節を容易に(軽い力で)行える様にできる。更に、このステアリングホイール1を所望の位置に調節した後は、前記両押圧部同士の間隔を縮めれば、これら両押圧部同士の間隔を縮める力を、前記両支持板部24aの内側面により前記変位側ブラケット52の外側面を抑え付ける力として有効に利用して、特に{前記両押圧部同士の間隔を縮める為にカム装置32の調節レバー33(図15〜17参照)の}操作力を大きくする事なく、前記ステアリングホイール1の位置を、調節後の位置に保持できる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例の第1例又は第2例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
[参考例の第4例]
図9は、本発明に関する参考例の第4例を示している。本参考例の場合も、上述した参考例の第3例の場合と同様に、左右1対の支持板部24aのうちの少なくとも一方(好ましくは両方)の支持板部24aの一部で、調節ロッド27が挿通されている上下方向長孔25を形成した部分の、幅方向に関する剛性を、他の部分よりも低くしている。この為に本参考例の場合には、前記支持板部24aの一部で、前記上下方向長孔25を形成した部分を、コラム側ブラケット22a及び係止カプセル36aと車体側ブラケット23aとの結合部よりも後方に突出させている。そして、この突出した部分の上端縁は、上板部43等の他の部分に繋がらせていない。即ち、前記支持板部24aのうちで、前記上下方向長孔25を形成した後端部分を、前端側のみ、この支持板部24aの他の部分と連続させた構造として、この後端部分の、幅方向に関する剛性を低くしている。
この様な本参考例の構造の場合も、ステアリングホイール1の位置調節を容易に行える様にでき、特に操作力を大きくする事なく、このステアリングホイール1を、調節後の位置に保持できる。
[参考例の第5例]
図10〜11は、本発明に関する参考例の第5例を示している。本参考例の場合には、車体側ブラケット23cに、前後方向に長い透孔53を形成している。この透孔53は、1箇所の幅広部54と1対の延長部55、55とから成る。このうちの幅広部54は、前記透孔53の前半部を構成するもので、車体側ブラケット23cの幅方向中央部に、この車体側ブラケット23cの前端部まで形成している。又、前記両延長部55、55は、前記透孔53の後半部を構成するもので、前記幅広部54の後端縁の幅方向両端部2箇所位置から、更に後方に延出する状態で設けられており、それぞれが前後方向に長く互いに平行な、それぞれが切り欠き状である。
そして、コラム側ブラケット22aの上板部43を前記車体側ブラケット23cの下側に、1対のボルト56、56と、1対のナット57とにより、二次衝突時に前方への離脱を可能に支持している。これら両ボルト56、56は、上端部に頭部58、58を、中間部乃至下端部にねじ杆部59を、それぞれ設けている。このうちの頭部58、58の外径は、前記両延長部55、55の幅寸法よりも大きく、ねじ杆部59の外径はこの幅寸法よりも小さい。前記コラム側ブラケット22aと前記車体側ブラケット23cとは、前記両ボルト56、56と前記両ナット57とにより、スライド部材60を介して結合支持している。
このスライド部材60は、表面にポリアミド樹脂、PTFE等の合成樹脂をコーティングした金属板である、滑り易い板材を曲げ形成して成るもので、1枚の上側滑り板部61と2枚の下側滑り板部62とを、幅方向両端部2箇所の連結部63、63により連結して成る。このうちの上側滑り板部61は、前記車体側ブラケット23cの幅方向に関する寸法が、前記幅広部54の幅寸法よりも大きい。又、前記両下側滑り板部62の幅寸法は、前記両延長部55、55の幅寸法よりも大きい。更に、前記両連結部63、63の幅寸法は、これら両延長部55、55の幅寸法よりも小さい。
上述の様なスライド部材60は、前記上側滑り板部61を前記車体側ブラケット23cの上面で前記両延長部55、55の後端部分に、前記両下側滑り板部62をこの前記車体側ブラケット23cの下面で前記両延長部55、55の後端部分に、前記両連結部63、63をこれら両延長部55、55の内側の前後方向中間部に、それぞれ配置する。そして、前記両ボルト56、56のねじ杆部59を、前記上側滑り板部61の両端部に形成した通孔に上方から挿通し、更にこれら両ねじ杆部59を、前記両延長部55、55の後端部及び前記両下側滑り板部62に形成した通孔を上方から挿通し、前記上板部43の通孔に係止した、前記両ナット57に螺合し更に締め付ける。この状態で、前記両ボルト56、56の頭部58、58の下面と前記上板部43の上面との間で、前記車体側ブラケット23cの前記透孔53のうちで前記両延長部55、55の両側縁部分が上下両面から、前記スライド部材60を介して挟持される。そして、前記コラム側ブラケット22aが前記車体側ブラケット23cに対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、前方への離脱を可能に結合支持される。
本参考例の場合には、前記コラム側ブラケット22aと前記車体側ブラケット23cとを、この車体側ブラケット23cを車体に支持固定する為に設けられた取付孔35、35の間部分のうち、幅方向2箇所位置で支持している。この為、ステアリングホイール1の操作により発生し、電動モータ15(図14参照)により増幅される、ステアリングコラム6b(図1、3、5、7〜9参照)の回転方向のトルクに対する支持剛性を、幅方向1箇所位置で支持した場合と比較して高くできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例の第1例又は第2例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
[実施の形態の1例]
図12〜13は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の場合には、車体側ブラケット23dのうちで幅方向中央部を挟む2箇所位置に、それぞれが係止除肉部であり、それぞれが前後方向に長く互いに平行な、1対の透孔64、64を形成している。そして、これら両透孔64、64の後端部分を挿通した1対のボルト56、56と、これら両ボルト56、56の雄ねじ部に螺合したナット57と、スライド部材60a、60aとにより、前記車体側ブラケット23dに対してコラム側ブラケット22aを、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、前方への離脱を可能に結合支持している。前記両スライド部材60a、60aは、それぞれが前記両透孔64、64の幅寸法よりも大きな幅寸法を有する上側滑り板部61aと下側滑り板部62aとを、これら両透孔64、64の幅寸法よりも小さな幅寸法を有する連結部63aにより連結して成る。更に本例の場合には、前記両スライド部材60a、60aの上側に長矩形の補強板65を、これら両スライド部材60a、60a同士の間に掛け渡す状態で設けている。そして、前記両ボルト56、56の頭部58、58の下面により前記補強板65の両端部上面を、前記両スライド部材60a、60aの上側滑り板部61aを介して、前記車体側ブラケット23dの上面に押圧している。
上述の様に構成する本例の構造の場合には、前記両ボルト56、56の頭部58、58の下面と前記車体側ブラケット23dの上面との間の摩擦状態を左右で均等にする為のチューニングが容易になる。その他の部分の構成及び作用は、上述した参考例の第5例とほぼ同様であるから、重複する説明は省略する。
本発明を実施する場合に、ステアリングホイールの位置調節を容易に行える様にすると共に、このステアリングホイールの位置を調節後の位置に保持する為の力を低く抑えるべく、コラム側ブラケットの支持板部の剛性を低くする為には、前述の図8〜9に記載した本発明に関する参考例の第3〜4例に係る構造に代えて、或いはこの図8〜9に示した参考例の第3〜4例に係る構造と共に、1対の支持板部のうちの一方の支持板部の厚さを薄くする事もできる。コラム側ブラケットに対するステアリングコラムの支持剛性は、他方の支持板部の厚さを確保する事により確保する。
又、本発明は、テレスコピック機構を備えていない、チルト機構のみを備えたステアリングコラム用支持装置にも適用できる。
1 ステアリングホイール
2 ステアリングギヤユニット
3 入力軸
4 タイロッド
5、5a ステアリングシャフト
6、6a、6b ステアリングコラム
7 自在継手
8 中間シャフト
9 自在継手
10 インナコラム
11、11a、11b、11c アウタコラム
12 アウタシャフト
13 玉軸受
14 ハウジング
15 電動モータ
16 制御器
17 支持筒
18 中心孔
19 スリット
20 周方向透孔
21、21a、21b 被支持板部
22、22a コラム側ブラケット
23、23a、23b、23c、23d 車体側ブラケット
24、24a 支持板部
25 上下方向長孔
26 前後方向長孔
27 調節ロッド
28 頭部
29 ナット
30 駆動側カム
31 被駆動側カム
32 カム装置
33 調節レバー
34、34a、34b 係止切り欠き
35 取付孔
36、36a、36b 係止カプセル
37、37a 鍔部
38a、38b 小通孔
39、39a 係止ピン
40、40a ボルト
41、41a ナット
42 リベット
43 上板部
44、44a 基板部
45、45a 曲げ起こし部
46 透孔
47 溶接
48 切り欠き
49 弾性押圧板部
50 突出部
51 スリット
52 変位側ブラケット
53 透孔
54 幅広部
55 延長部
56 ボルト
57 ナット
58 頭部
59 ねじ杵部
60、60a スライド部材
61、61a 上側滑り板部
62、62a 下側滑り板部
63、63a 連結部
64 透孔
65 補強板