JP5327208B2 - ステアリングコラム用支持装置 - Google Patents

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Description

この発明は、衝突事故の際に運転者の身体からステアリングホイールに加わった衝撃エネルギを吸収しつつ、このステアリングホイールの前方への変位を可能とすべく、ステアリングコラムを車体に対し前方への変位を可能に支持する為のステアリングコラム用支持装置の改良に関する。
[従来技術]
自動車用ステアリング装置は、図5に示す様に構成して、ステアリングホイール1の回転をステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達し、この入力軸3の回転に伴って左右1対のタイロッド4、4を押し引きして、前車輪に舵角を付与する様にしている。前記ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト5の後端部に支持固定されており、このステアリングシャフト5は、円筒状のステアリングコラム6を軸方向に挿通した状態で、このステアリングコラム6に回転自在に支持されている。又、前記ステアリングシャフト5の前端部は、自在継手7を介して中間シャフト8の後端部に接続し、この中間シャフト8の前端部を、別の自在継手9を介して、前記入力軸3に接続している。尚、前記中間シャフト8は、トルクを伝達可能に、且つ、衝撃荷重により全長を収縮可能に構成している。そして、衝突事故の際(次述する一次衝突の際)に、前記ステアリングギヤユニット2の後方への変位に拘らず、前記ステアリングシャフト5を介して前記ステアリングホイール1が後方に向けて変位する(運転者の身体に向けて突き上げられる)事を防止できる様に構成している。
上述の様な自動車用ステアリング装置は、衝突事故の際に、衝撃エネルギを吸収しつつ、ステアリングホイール1を前方に変位させる構造にする事が、運転者の保護の為には必要である。即ち、衝突事故の際には、自動車が他の自動車等にぶつかる一次衝突に続いて、運転者の身体が前記ステアリングホイール1に衝突する二次衝突が発生する。この二次衝突の際に、運転者の身体に加わる衝撃を緩和して、運転者の保護を図る為に、前記ステアリングホイール1を支持したステアリングコラム6を車体に対して、二次衝突に伴う前方への衝撃荷重により前方に離脱可能に支持すると共に、前記ステアリングコラム6と共に前方に変位する部分と車体との間に、塑性変形する事で前記衝撃荷重を吸収するエネルギ吸収部材を設ける事が、例えば特許文献1〜3に記載される等により従来から知られており、且つ、広く実施されている。
図6〜8は、従前の(公知ではないが、本発明との関係で、従来技術と基本的に差はない)ステアリング装置の1例を示している。ステアリングコラム6aの前端部に、電動式パワーステアリング装置を構成する減速機等を収納するハウジング10を固定している。又、前記ステアリングコラム6aの内側にステアリングシャフト5aを、回転のみ自在に支持しており、このステアリングシャフト5aの後端部で前記ステアリングコラム6aの後端開口から突出した部分に、ステアリングホイール1(図5参照)を固定自在としている。そして、前記ステアリングコラム6a及び前記ハウジング10を、車体に固定された部分である車体側ブラケット11(例えば、後述する先発明に係る構造を示す図15参照)に対し、前方に向いた衝撃荷重に基づいて前方への離脱を可能に支持している。
この為に、前記ステアリングコラム6aの中間部に支持したコラム側ブラケット12と、前記ハウジング10に支持したハウジング側ブラケット13とを、何れも前方に向いた衝撃荷重により前方に離脱する様に、車体に対し支持している。前記両ブラケット12、13は何れも、1乃至2箇所の取付板部14a、14bを備え、これら各取付板部14a、14bに、それぞれ後端縁側に開口する切り欠き15a、15bを形成している。そして、これら各切り欠き15a、15bを覆う状態で前記両ブラケット12、13の左右両端寄り部分に、それぞれ滑り板16a、16bを組み付けている。
これら各滑り板16a、16bはそれぞれ、表面に、例えばポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(PTFE)等の滑り易い合成樹脂製の層を形成した、炭素鋼板、ステンレス鋼板等の金属薄板を曲げ形成する事により、上下両板部の後端縁同士を連結板部により連結した、大略コ字形としている。そして、それぞれの上下両板部の互いに整合する部分に、ボルト若しくはスタッドを挿通する為の通孔を形成している。前記各滑り板16a、16bを前記各取付板部14a、14bに装着した状態で、前記各通孔は、それぞれこれら各取付板部14a、14bに形成した、前記各切り欠き15a、15bに整合する。
前記両ブラケット12、13は、前記各取付板部14a、14bの切り欠き15a、15b及び前記各滑り板16a、16bの通孔を挿通した、ボルト若しくはスタッドとナットとを螺合し更に締め付ける事により、前記車体側ブラケット11に支持する。二次衝突時には前記ボルト若しくはスタッドが、前記各滑り板16a、16bと共に前記各切り欠き15a、15bから抜け出して、前記ステアリングコラム6a及び前記ハウジング10が、前記両ブラケット11、12及びステアリングホイール1と共に前方に変位する事を許容する。
又、図示の例の場合には、前記ボルト若しくはスタッドと前記コラム側ブラケット12との間にエネルギ吸収部材17、17を設けている。そして、このコラム側ブラケット12が前方に変位するのに伴ってこれらエネルギ吸収部材17、17を塑性変形させ、前記ステアリングホイール1から、前記ステアリングシャフト5a及び前記ステアリングコラム6aを介して前記コラム側ブラケット12に伝わった衝撃エネルギを吸収する様にしている。
二次衝突時には前記ボルト若しくはスタッドが前記両切り欠き15a、15aから抜け出して、図8に示す様に、前記コラム側ブラケット12が前方に変位する事を許容する。そして、前記ステアリングコラム6aが、このコラム側ブラケット12と共に前方に変位する。この際、前記ハウジング側ブラケット13に関しても、前記車体から離脱し、このハウジング側ブラケット13が前方に変位する事を許容する。そして、前記コラム側ブラケット12の前方への変位に伴って、前記両エネルギ吸収部材17、17が塑性変形して、運転者の身体から、ステアリングシャフト5a及び前記ステアリングコラム6aを介して前記コラム側ブラケット12に伝わった衝撃エネルギを吸収し、前記運転者の身体に加わる衝撃を緩和する。
上述の図6〜8に示した従前の構造の場合、前記コラム側ブラケット12を左右両側2箇所位置で前記車体側ブラケット11に対し、二次衝突時に前方への離脱を可能に支持している。従って、二次衝突時には、左右1対の支持部の係合を同時に外れさせる事が、前記ステアリングホイール1を前方に、安定して(二次衝突発生の瞬間の状態のまま傾斜させずに)変位させる面から重要になる。一方、前記両支持部の係合を同時に外れさせる為のチューニングは、これら両支持部を外れさせる事に対する抵抗(摩擦抵抗、剪断抵抗等)や、前記ステアリングコラム6aと共に前方に変位する部分の慣性質量に関する左右のアンバランス等の影響がある為、手間の掛かる作業となる。
この様な原因での前方への離脱を不安定化させる要因を除く為には、特許文献1に記載された構造を採用する事が効果がある。図9〜11は、この特許文献1に記載された従来構造を示している。この従来構造の場合には、車体側に支持固定されて、二次衝突時にも前方に変位する事のない車体側ブラケット11aの幅方向中央部に係止切り欠き18を、この車体側ブラケット11aの前端縁側が開口する状態で形成している。又、ステアリングコラム6b側にコラム側ブラケット12aを支持固定して、二次衝突時にこのコラム側ブラケット12aを、前記ステアリングコラム6bと共に前方に変位可能としている。
更に、このコラム側ブラケット12aに固定した係止カプセル19の左右両端部を、前記係止切り欠き18に係止している。即ち、この係止カプセル19の左右両側面にそれぞれ形成した係止溝20、20を、前記係止切り欠き18の左右両側縁部に係合させている。従って、前記係止カプセル19の左右両端部で前記両係止溝20、20の上側に存在する部分は、前記係止切り欠き18の両側部分で、前記車体側ブラケット11aの上側に位置している。これら車体側ブラケット11aと係止カプセル19とは、前記両係止溝20、20と前記係止切り欠き18の両側縁部とを係合させた状態で、これら両部材11a、19の互いに整合する部分に形成した係止孔21a、21bに係止ピン22、22(図11にのみ図示)を圧入する事で結合する。これら各係止ピン22、22は、アルミニウム系合金、合成樹脂等の、二次衝突時に加わる衝撃荷重で裂断する、比較的軟質の材料により造っている。
二次衝突時に、前記ステアリングコラム6bから前記コラム側ブラケット12aを介して、前記係止カプセル19に、前方に向いた衝撃荷重が加わると、前記各係止ピン22、22が裂断する。そして、前記係止カプセル19が前記係止切り欠き18から前方に抜け出して、前記ステアリングコラム6b(及びステアリングシャフトを介してこのステアリングコラム6bに支持されたステアリングホイール)が前方に変位する事を許容する。
上述の図9〜11に示した従来構造の場合、前記コラム側ブラケット12aに固定した係止カプセル19と前記車体側ブラケット11aとの係合部が、幅方向中央部の1箇所のみである。この為、二次衝突時にこの係合部を外し、前記ステアリングホイールを前方に安定して変位させる為のチューニングが容易になる。
[先発明に係る技術]
更に、二次衝突時に於ける運転者の保護充実を図るべく、上述の従来構造を改良した構造として本発明者等は、図12〜16に示す様なステアリングコラム用支持装置に関する発明を行った。本発明は、この先発明に係るステアリングコラム用支持装置を改良したものであり、この先発明に係る構造と共通点が多い為、先ず、この先発明に係る構造に就いて、図12〜16により説明する。
この図12〜16は、ステアリングホイール1(図5参照)の上下位置を調節する為のチルト機構と、同じく前後位置を調節する為のテレスコピック機構との両方を備えた、チルト・テレスコピック式ステアリング装置に先発明を適用した場合に就いて示している。このうちのテレスコピック機構を構成する為に、ステアリングコラム6cを、前側のインナコラム23の後部を後側のアウタコラム24の前部に内嵌して全長を伸縮可能とした、テレスコープ状のものを使用している。そして、前記ステアリングコラム6cの内径側にステアリングシャフト5bを、回転自在に支持している。
このステアリングシャフト5bは、前側に配置した円杆状のインナシャフトの後部に設けた雄スプライン部と、後側に配置した円管状のアウタシャフト25の前部に設けた雌スプライン部とをスプライン係合させる事により、トルクの伝達を可能に、且つ、伸縮を可能に構成している。前記アウタシャフト25は、後端部を前記アウタコラム24の後端開口よりも後方に突出させた状態でこのアウタコラム24の内径側に、単列深溝型の玉軸受26等、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支承可能な軸受により、回転のみ自在に支持している。前記ステアリングホイール1は、前記アウタシャフト25の後端部に支持固定する。このステアリングホイール1の前後位置を調節する際には、このアウタシャフト25と共に前記アウタコラム24が前後方向に変位し、前記ステアリングシャフト5b及び前記ステアリングコラム6cが伸縮する。
又、このステアリングコラム6c(を構成する前記インナコラム23)の前端部に、電動式パワーステアリング装置を構成する減速機等を収納する為のハウジング10aを、結合固定している。このハウジング10aの上面には、前記電動式パワーステアリング装置の補助動力源となる電動モータ27と、この電動モータ27への通電を制御する為の制御器28とを支持固定している。そして、前記チルト機構を構成する為に、前記ハウジング10aを車体に対し、横軸を中心とする揺動変位を可能に支持している。この為に本例の場合には、前記ハウジング10aの上部前端に支持筒29を、左右方向に設けている。そして、この支持筒29の中心孔30に挿通したボルト等の横軸により、前記ステアリングコラム6cの前端部を前記車体に対し、このステアリングコラム6cの後部を昇降させる方向の揺動変位を可能に支持する構成を採用している。
又、前記ステアリングコラム6cの中間部乃至後部を構成する、前記アウタコラム24の前半部の内径を、弾性的に拡縮可能としている。この為に、このアウタコラム24の下面にスリット31を、軸方向に形成している。このスリット31の前端部は、このアウタコラム24の前端縁、又は、このアウタコラム24の前端寄り部分の上端部を除いた部分に形成した周方向透孔に開口させている。又、前記スリット31を幅方向両側から挟む部分に、それぞれが厚肉平板状の1対の被支持板部32、32を設けている。これら両被支持板部32、32が、前記ステアリングホイール1の位置調節時に、前記アウタコラム24と共に変位する、変位側ブラケットとして機能する。
図示の先発明に係る構造の場合、前記両被支持板部32、32をコラム側ブラケット33に対し、上下位置及び前後位置の調節を可能に支持している。このコラム側ブラケット33は、通常時には車体に対し支持されているが、衝突事故の際には、二次衝突の衝撃に基づいて、前方に離脱し、前記アウタコラム24の前方への変位を許容する様にしている。この為に、前記コラム側ブラケット33を車体側ブラケット11に対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、前方への離脱を可能に支持している。
前記ステアリングホイール1が調節後の位置に保持されている状態で、前記両被支持板部32、32は、前記コラム側ブラケット33を構成する左右1対の支持板部34、34により強く挟持されている。これら両支持板部34、34には、前記支持筒29を車体に対し支持した横軸を中心とする部分円弧形の上下方向長孔35を、前記両被支持板部32、32には、前記アウタコラム24の軸方向に長い前後方向長孔36を、それぞれ形成している。そして、これら各長孔35、36に、特許請求の範囲に記載した杆状部材である、調節ロッド37を挿通している。この調節ロッド37の基端部(図13の右端部)に設けた頭部38は、一方(図13の右方)の支持板部34に形成した上下方向長孔に、この上下方向長孔に沿った変位のみを可能に(回転を阻止した状態で)係合させている。これに対して、前記調節ロッド37の先端部(図13の左端部)に螺着したナット39と他方(図13の左方)の支持板部34の外側面との間に、駆動側カム40と被駆動側カム41とから成るカム装置42を設けている。そして、このうちの駆動側カム40を、調節レバー43により回転駆動可能としている。
前記ステアリングホイール1の位置調節を行う際には、前記調節レバー43を所定方向(下方)に回動させる事により前記駆動側カム40を回転駆動し、前記カム装置42の軸方向寸法を縮める。そして、前記被駆動側カム41と前記頭部38との、互いに対向する内側面同士の間隔を拡げ、前記両支持板部34、34が前記両被支持板部32、32を抑え付けている力を開放する。同時に、前記アウタコラム24の前部で前記インナコラム23の後部を内嵌した部分の内径を弾性的に拡げ、これらアウタコラム24の前部内周面とインナコラム23の後部外周面との当接部に作用している面圧を低下させる。この状態で、前記調節ロッド37が前記上下方向長孔35と前記前後方向長孔36との内側で変位できる範囲で、前記ステアリングホイール1の上下位置及び前後位置を調節できる。
このステアリングホイール1を所望位置に移動させた後、前記調節レバー43を前記所定方向とは逆方向(上方)に回動させる事により、前記カム装置42の軸方向寸法を拡げる。これにより、前記被駆動側カム41と前記頭部38との、互いに対向する内側面同士の間隔を縮め、前記両支持板部34、34により前記両被支持板部32、32を強く抑え付ける。同時に、前記アウタコラム24の前部で前記インナコラム23の後部を内嵌した部分の内径を弾性的に縮め、これらアウタコラム24の前部内周面とインナコラム23の後部外周面との当接部に作用している面圧を高くする。この状態で、前記ステアリングホイール1の上下位置及び前後位置が調節後の位置に保持される。
尚、本例の場合には、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する為の保持力を高くする為に、前記両支持板部34、34の内側面と前記両被支持板部32、32の外側面との間に、それぞれ摩擦板ユニット44、44を挟持している。これら両摩擦板ユニット44、44は、前記上下方向長孔35と整合する長孔を形成した1乃至複数枚の第一摩擦板と、前記前後方向長孔36と整合する長孔を形成した1乃至複数枚の第二摩擦板とを交互に重ね合わせたもので、摩擦面積を増大させ、前記保持力を高くする役目を有する。この様な摩擦板ユニット44、44の具体的な構造及び作用に就いては、例えば特許文献4〜5に記載される等により従来から知られており、先発明並びに本発明の要旨とも関係しないので、詳しい図示並びに説明は省略する。
更に、前記コラム側ブラケット33は、前記車体側ブラケット11に対し、二次衝突の衝撃荷重により前方に離脱はするが、二次衝突が進行した状態でも、脱落しない様に支持している。前記車体側ブラケット11は、車体側に支持固定されて、二次衝突時にも前方に変位する事がないもので、鋼板等の十分な強度及び剛性を有する金属板に、プレスによる打ち抜き加工及び曲げ加工を施す事により造っている。この様な車体側ブラケット11は、両側縁部及び後端縁部を下方に折り曲げる事により曲げ剛性を向上させ、幅方向中央部に前端縁側が開口した係止切り欠き45を、後部のこの係止切り欠き45を左右両側から挟む位置に1対の取付孔46、46を、それぞれ形成している。前記係止切り欠き45は、次述する係止カプセル47により覆われた、前記車体側ブラケット11の後端部近傍まで形成している。この様な車体側ブラケット11は、前記両取付孔46、46を挿通したボルト或いはスタッドにより、車体に対し支持固定される。
上述の様な車体側ブラケット11に対して前記コラム側ブラケット33を、係止カプセル47を介して、二次衝突時に前方への離脱を可能に結合している。この係止カプセル47としては、図15に示す様な構造のものが好ましく使用できるが、図16に示す様な係止カプセル47aを使用する事もできる。このうちの図16に示した係止カプセル47aに関しては、後で説明し、先ず、図15に示した係止カプセル47を使用した場合に就いて説明する。
この係止カプセル47は、アルミニウム系合金、軟鋼等の金属製素材に鍛造加工等の塑性加工を施したり、アルミニウム系合金、マグネシウム系合金等の軽合金をダイキャスト成形する事により、或いは、ポリアセタール等の高強度の高機能樹脂を射出成形する事により造っている。そして、左右方向に関する幅寸法、並びに、前後方向に関する長さ寸法を、下半部に比べ上半部で大きくして、前記係止カプセル47の左右両側面及び後側面の上半部に、両側方及び後方に突出する鍔部48を設けている。この様な係止カプセル47は、下半部を前記係止切り欠き45に係合(内嵌)した状態で、前記車体側ブラケット11に対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重に基づいて前方への離脱を可能に支持している。この為に、前記鍔部48と、前記車体側ブラケット11の一部で前記係止切り欠き45の周縁部との、互いに整合する複数箇所(図示の例では8箇所ずつ)に、それぞれ小通孔49a、49bを形成している。そして、これら各小通孔49a、49b同士の間に、それぞれ係止ピン50、50を掛け渡している。
これら各係止ピン50、50は、前記各小通孔49a、49bを整合させた状態でこれら各小通孔49a、49b内に合成樹脂を注入する(インジェクション成形する)事により、或いは、予め円柱状に成形した、合成樹脂製或いは軽合金製の素ピンを前記各小通孔49a、49b内に圧入する(軸方向に大きな力で押し込む)事により、前記各小通孔49a、49b同士の間に掛け渡す。何れの場合でも、前記各係止ピン50、50を構成する合成樹脂材料或いは軽合金材料の一部が、前記車体側ブラケット11の上下両面と、相手面である、前記鍔部48の下面及び前記コラム側ブラケット33の上面との間に入り込む。そして、これら各面同士の間に存在する隙間に拘らず、前記車体側ブラケット11に対する前記コラム側ブラケット33の取付部のがたつきを解消する。従って、前記各隙間を確実に塞ぎ、このがたつきを確実に解消する為には、前記各係止ピン50、50を、合成樹脂の射出成形(インジェクション成形)により形成する事が好ましい。尚、図15及び後述する図16には、明りょう化の為に、前記がたつきの原因となる隙間の高さを、実際よりも大きく描いている。
尚、前記各係止ピン50、50をインジェクション成形する場合には、溶融樹脂が前記各面同士の間の隙間に入り込んで冷却固化し、前記がたつきを解消する。これに対して、素ピンを圧入する場合には、この素ピンに加わる軸方向の力に基づいて、この素ピンの軸方向中間部で前記各隙間に対応する部分が径方向外方に拡がり、これら各隙間の存在に基づくがたつきを解消する。何れにしても、前記各小通孔49a、49b同士の間に前記各係止ピン50、50を掛け渡す事により、前記係止カプセル47を前記車体側ブラケット11に対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への離脱を可能に支持する。
上述の様な係止カプセル47は前記コラム側ブラケット33に対し、複数本(図示の例では3本)のボルト51、51とナット52、52とにより、前記衝撃荷重に拘らず非分離な状態で、結合固定している。即ち、前記係止カプセル47及び前記コラム側ブラケット33の互いに整合する位置に形成した通孔を下方から挿通した、前記各ボルト51、51の先端部(上端部)で前記係止カプセル47の上面から突出した部分に、前記各ナット52、52を螺合し更に締め付ける事で、前記係止カプセル47と前記コラム側ブラケット33とを結合固定している。従って、二次衝突時に前記アウタコラム24からこのコラム側ブラケット33に伝わった前記衝撃荷重は、そのまま前記係止カプセル47に伝わり、前記各係止ピン50、50の裂断に伴ってこの係止カプセル47が前方に変位するのと同期して、前記アウタコラム24も前方に変位する。
この様に、二次衝突時にこのアウタコラム6cと共に前方に変位する、前記係止カプセル47を係止した、前記係止切り欠き45の前後方向に関する長さL45は、この係止カプセル47の同方向の長さL47よりも十分に大きい(L45≫L47)。図示の例の場合には、前記係止切り欠き45の長さL45を、前記係止カプセル47の長さL47の2倍以上(L45≧2L47)確保している。そして、二次衝突時に前記アウタコラム24と共に前記係止カプセル47が前方に変位し切った(ステアリングホイール1から加わった衝撃荷重では、それ以上前方に変位しなくなった)状態でも、この係止カプセル47を構成する前記鍔部48の少なくとも後端部で、前記ステアリングコラム6c及び前記コラム側ブラケット33等の重量を支承可能な部分が、前記係止切り欠き45から抜け出ない様にしている。即ち、二次衝突が進行した状態でも、前記係止カプセル47の上半部の幅方向両側部分に形成した前記鍔部48のうちの後端部が、前記車体側ブラケット11の前端部の上側に位置して、前記係止カプセル47が脱落するのを防止できる様にしている。
上述の様に構成する、先発明に係るステアリングコラム用支持装置によれば、二次衝突時に前記ステアリングホイール1を前方に安定して変位させる為のチューニングが容易で、しかも、二次衝突が進行した状態でも前記ステアリングホイール1が過度に下方に変位する事を防止できる。
先ず、二次衝突時にステアリングホイール1を前方に安定して変位させる為のチューニングの容易化は、前記車体側ブラケット11と前記係止カプセル47とを、この車体側ブラケット11の幅方向中央部のみで係合させる事により図れる。
即ち、前記単一の係止カプセル47を、前記アウタコラム24の直上部分に配置している為、二次衝突時に前記ステアリングホイール1から前記アウタシャフト25及び前記アウタコラム24を通じて前記係止カプセル47に伝わった衝撃荷重が、この係止カプセル47と前記車体側ブラケット11とを結合している、前記各係止ピン50、50に、ほぼ均等に加わる。要するに、前記衝撃荷重は、前記係止カプセル47のほぼ中央部に、前記アウタコラム24の軸方向に作用する。そして、この単一の係止カプセル47が、前記係止切り欠き45から前方に抜け出る方向の力が加わる。この為、この係止カプセル47と前記車体側ブラケット11とを結合している前記各係止ピン50、50が、実質的に同時に裂断する。この結果、前記コラム側ブラケット33等を介して前記係止カプセル47と結合された前記アウタコラム24の前方への変位が、中心軸を過度に傾斜させたりする事無く、安定して行われる。
特に、図示の例では、前記ステアリングホイール1の上下位置及び前後位置を調節する為のチルト・テレスコピック機構を設けると共に、このステアリングホイール1を調節後の位置に保持する保持力を高める為の摩擦板ユニット44、44を設置している。これらチルト・テレスコピック機構や摩擦板ユニット44、44を設ける事は、製作誤差の蓄積等により、二次衝突時の離脱荷重のばらつきを大きくする原因となり易いが、図示の例の場合には、前記単一の係止カプセル47と前記車体側ブラケット11との係合により、前記離脱荷重のばらつきを抑えられる。この結果、二次衝突時に前記ステアリングホイール1に衝突した運転者の身体に加わる衝撃を緩和する為のチューニングを適正に行って、この運転者の保護充実を図り易くなる。
又、二次衝突が進行した状態でも前記ステアリングホイール1が過度に下方に変位するのを防止する事は、前記係止切り欠き45の前後方向長さL45を前記係止カプセル47の前後方向の長さL47よりも十分に大きくしている事により図れる。即ち、これら各長さL45、L47をこの様に規制している為、二次衝突が進行し、前記ステアリングホイール1と共に、前記係止カプセル47が前方に変位し切った状態でも、この係止カプセル47全体が前記係止切り欠き45から前方に抜け出る事はない。この為、二次衝突が進行した状態でも、前記アウタコラム24の支持力を確保して、このアウタコラム24及び前記アウタシャフト25を介してこのアウタコラム24に支持された前記ステアリングホイール1が、過度に下降する事を防止できる。そして、事故後もこのステアリングホイール1の操作を行い易くして、例えば、事故車両が自走可能である場合に、この事故車両を事故現場から路肩まで自走移動させる際の運転を行い易くできる。
次に、図16に示した構造に就いて説明する。図15に示した構造は、前記係止カプセル47の形状が単純で、この係止カプセル47の製造コストを抑えられる他、この係止カプセル47を設置した部分の組み立て高さを低く抑えられる。この様な構造は、ステアリングコラム用支持装置の小型・軽量化を図ったり、衝撃荷重が作用する位置である、前記アウタコラム24の中心軸と、二次衝突時に離脱する部分である、前記車体側ブラケット11と前記係止カプセル47の係合部との距離を短くして、この係合部の離脱荷重を安定させる(この距離が長くなる事に伴う捩れを抑える)面から有利である。
これに対して、図16に示した構造は、係止ピン50、50の射出成形の容易化を図る面から有利である。即ち、図15に示した構造の場合には、前記係止ピン50、50を射出成形する際に、前記車体側ブラケット11と前記係止カプセル47と前記コラム側ブラケット33とを、前記各ボルト51、51と前記各ナット52、52とにより結合した状態で行う。これに対して図16に示した構造の場合には、前記係止ピン50、50を射出成形する為の金型に、車体側ブラケット11及び係止カプセル47aのみをセットすれば済む為、金型の小型化を図り易い。即ち、この係止カプセル47aは、左右両側面にそれぞれ係止溝53、53を形成し、これら両係止溝53、53に、前記車体側ブラケット11の係止切り欠き45の両側縁部を係合させている。この為、この車体側ブラケット11と前記係止カプセル47aとを前記各係止ピン50、50により結合してから、この係止カプセル47aをコラム側ブラケット33に対し、各ボルト51、51と各ナット52、52とにより結合固定する事ができる。
上述の様な先発明の構造は、二次衝突時に於ける運転者の保護充実を図る設計を容易化できる利点があるが、この二次衝突時に於ける運転者の保護をより一層充実させる為には、二次衝突時に前記車体側ブラケット11からの前記係止カプセル47、47aの離脱をより安定して行わせる点で、改良の余地がある。この点に関し、図15に示した形状を有する係止カプセル47を使用した場合に就いて、図17〜18を参照しつつ説明する。尚、この図17〜18には、係止カプセル47とコラム側ブラケット33とをリベット54、54により結合固定した構造を示している。但し、これら係止カプセル47とコラム側ブラケット33とをリベット54、54により結合固定するか、ボルトとナットとにより結合固定するかは、自由であり、本発明の要旨とは関係しない。
何れにしても、二次衝突時にステアリングホイール1からステアリングシャフト5を介してステアリングコラム6(例えば図5参照)に伝わった衝撃荷重は、このステアリングコラム6の一部に設けた変位側ブラケット(図12〜13中の被支持板部32、32)を構成する支持板部34の上下方向長孔35を挿通した調節ロッド37から、コラム側ブラケット33に入力される。即ち、二次衝突時には、この調節ロッド37が、前記上下方向35の前側内側縁を強く押す。この結果前記コラム側ブラケット33には、前記調節ロッド37を力点(入力部)とし、前記係止カプセル47とコラム側ブラケット33との結合部を支点として、図17の時計方向のモーメントが、衝撃的に加わる。
この様な、衝撃的に加わるモーメントにより、図18の鎖線イで囲んだ部分で、前記コラム側ブラケット33を構成する上板部55の上面前端縁部が、前記車体側ブラケット11の下面に強く押し付けられる。即ち、前記コラム側ブラケット33は、左右1対の支持板部34の上端縁同士を前記上板部55により連続させており、この上板部55の上面は前記車体側ブラケット11の下面に、実質上当接している(前述した通り、図15中の隙間は誇張して描いている)。従って、二次衝突に伴って前記上板部55の上面前端縁部が、前記車体側ブラケット11の下面に強く押し付けられる。この結果、当該部分に大きな摩擦力が作用する。この為、前記車体側ブラケット11に形成した係止切り欠き45(図12、14〜16参照)から抜け出る為に要する離脱荷重が、大きく、しかも不安定になる。この様な状態は、運転者保護をより充実させる面からは好ましくない。
前記図18の鎖線イで囲んだ部分に存在する当接部に加わる面圧は、前記モーメントが大きくなるほど高くなり、このモーメントは、前記支点となる結合部と前記衝撃荷重の入力部との距離が大きくなるほど大きくなる。前述の先発明に係る構造の場合、この入力部は、前記上下方向長孔35の内側縁と前記調節ロッド37の外周面との突き当たり部であり、この突き当り部は、前記ステアリングコラム6c(図12〜14参照)の本体部分よりも下方に存在する。この為、前記結合部と前記入力部との距離が大きく、前記モーメントが大きくなり、この当接部の面圧が高くなって、前記離脱荷重を、低く、且つ、安定させる事が難しい。
特許文献6には、ステアリングコラムの上面にブラケットを溶接固定し、二次衝突時にこのブラケットの前端縁とコラム側ブラケットの一部後端縁とを衝合させる構造が記載されている。この様な特許文献6に記載された発明の構造によれば、二次衝突時に前記コラム側ブラケットに加わるモーメントを小さく抑えて、このコラム側ブラケットが車体側ブラケットから前方に抜け出す為に要する離脱荷重を小さく抑えられる。但し、前記特許文献6に記載された発明の構造は、前述の図6〜8に示した従前の構造の如く、コラム側ブラケットを左右両側2箇所位置で車体側ブラケットに支持している為、ステアリングホイール1を前方に安定して変位させる為のチューニングに手間を要する。又、二次衝突後にステアリングホイールが過度に下降するのを防止できる構造を実現する事もできない。
実開昭51−121929号公報 特開2005−219641号公報 特開2000−6821号公報 特開2007−69821号公報 特開2008−100597号公報 実開平1−69075号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、二次衝突時にステアリングホイールを前方に安定して変位させる為のチューニングが容易で、しかも、車体側ブラケットの下面とコラム側ブラケットの上面等とが強く擦れ合わない様にして、離脱荷重の絶対値及びばらつきを少なく抑え、且つ、必要に応じて二次衝突後にステアリングホイールが過度に下降するのを防止できる構造を実現すべく発明したものである。
本発明のステアリングコラム用支持装置は、前述の図9〜11に示した従来構造と同様に、ステアリングコラムと、車体側ブラケットと、係止切り欠きと、コラム側ブラケットと、係止カプセルとを備える。
このうちのステアリングコラムは、内側にステアリングシャフトを回転自在に支持する為のものである。
又、前記車体側ブラケットは、車体側に支持固定されて、二次衝突時にも前方に変位する事がない。
又、前記係止切り欠きは、前記車体側ブラケットの幅方向中央部に形成されている。尚、この係止切り欠きは、必ずしもこの車体側ブラケットの前端縁側が開口している必要はない。この車体側ブラケットの前後方向の寸法を十分に確保できるのであれば、この車体側ブラケットの前端縁側が塞がれていても良い。但し、本明細書及び特許請求の範囲では、前端縁側が塞がれた構造に就いても、係止切り欠きと称する。
又、前記コラム側ブラケットは、前記ステアリングコラム側に支持されて、二次衝突時にこのステアリングコラムと共に前方に変位する。
又、前記係止カプセルは、前記コラム側ブラケットの上端部に設けられた上板部の上面に固定されている。
更に、前記係止カプセルの左右両側面の上部から左右両側方に突出する状態で設けられた鍔部の下面と、この鍔部の下方に存在する下側抑え板部の上面との間で、前記車体側ブラケットのうちで前記係止切り欠きの両側部分を挟持した状態に、前記係止カプセルと前記車体側ブラケットとを組み合わせている。
そして、前記コラム側ブラケットを前記車体側ブラケットに対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への離脱を可能に支持している。
特に、本発明のステアリングコラム用支持装置に於いては、前記コラム側ブラケットとして、左右1対の支持板部及びこれら両支持板部の上端縁同士を連続させる上板部を備えたものを使用する。そして、これら両支持板部同士の間に前記ステアリングコラムの中間部を挟持し、更に、このステアリングコラムよりも下側に存在する杆状部材により前記両支持板部同士の間隔を縮める方向の力を付与する事で、前記ステアリングコラムを支持する。又、前記係止カプセルを前記上板部の上面に支持固定する。
一方、前記ステアリングコラムの中間部で前記コラム側ブラケットを構成する左右1対の支持板部よりも後側部分に、このステアリングコラムの左右両側面から左右両側方に突出する1対の突片を固設する。又、これら両突片の前側縁を前記両支持板部の後側縁のうちで前記杆状部材よりも上側位置部分に対向させる。そして、前記二次衝突時に前記ステアリングコラムから前記コラム側ブラケットに前記衝撃荷重を、前記杆状部材を介さずに、前記両突片の前側縁と前記両支持板部の後側縁との当接部を通じて伝達する構成とする。
上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記両突片を設置した高さ位置を互いに同じとする。且つ、これら両突片の設置位置を、前記ステアリングコラムの直径方向反対側2箇所位置、若しくはこれよりも上側位置とする。
或いは、請求項3に記載した発明の様に、前記ステアリングコラムを、軽合金のダイキャスト成形により造り、このステアリングコラムを前記両支持板部同士の間に、これら両支持板部に対する位置調節を可能に挟持する。又、前記両突片を、前記ステアリングコラムと一体に設ける。
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、前記係止切り欠きのうち前記車体側ブラケットの前端縁側を開口させ、且つ、この係止切り欠きの前後方向に関する長さを、前記係止カプセルの同方向の長さよりも大きくする。具体的には、この係止切り欠きの前後方向に関する長さを、前記二次衝突時に前記ステアリングコラムと共にこの係止カプセルが前方に変位した状態でも、この係止カプセルの少なくとも一部が前記車体側ブラケットの前端部の上側に位置して、この係止カプセルが脱落するのを防止できるだけの長さとする。
上述の様に構成する本発明のステアリングコラム用支持装置によれば、二次衝突時にステアリングホイールを前方に安定して変位させる為のチューニングが容易で、しかも、二次衝突時に、車体側ブラケットの下面とコラム側ブラケットの上面等とが強く擦れ合わない様にして、離脱荷重の絶対値及びばらつきを少なく抑えられる。且つ、必要に応じて二次衝突後にステアリングホイールが過度に下降するのを防止できる。
先ず、前記二次衝突時にステアリングホイールを前方に安定して変位させる為のチューニングの容易化は、車体側ブラケットと係止カプセルとを、この車体側ブラケットの幅方向中央部のみで係合させる事により図れる。
又、前記二次衝突時の離脱荷重の絶対値及びばらつきを抑える事は、二次衝突時にステアリングコラムからコラム側ブラケットに衝撃荷重を、このステアリングコラムの下側に配置した杆状部材を介さずに、左右1対ずつの突片と支持板部の後側縁との当接部を通じて伝達する事により図れる。この構成により、二次衝突時に前記コラム側ブラケットに作用するモーメントを低く抑えて、このコラム側ブラケットの上面に支持した係止カプセルと前記車体側ブラケットに形成した係止切り欠きとの係合部に加わる、捩れ方向の力を低く抑えられる。そして、この係合部に作用する摩擦力を低減して、前記離脱荷重の絶対値及びばらつきを低く抑えられる。
特に、請求項2に記載した発明の様に、前記両突片の設置位置を、前記係止カプセルと前記係止切り欠きとの係合部に近い、前記ステアリングコラムの上半部位置にすれば、前記モーメントの大きさに影響する{このモーメントに関する入力部(力点)と支点との距離である}、前記両突片と前記係合部との距離を十分に短くして、この係合部に作用する摩擦力を十分に低減し、前記離脱荷重の絶対値及びばらつきを十分に低く抑えられる。
又、請求項3に記載した発明の様に、前記両突片を前記ステアリングコラムと一体に設ければ、これら両突片をこのステアリングコラムに対し、容易に、しかも精度良く固設できる。
又、必要に応じて二次衝突後にステアリングホイールが過度に下降するのを防止する事は、係止切り欠きの前後方向に関する長さを前記係止カプセルの同方向の長さよりも十分に大きくし、この係止カプセルが前記係止切り欠きから前方に抜け出さない様にする事により図れる。前記ステアリングホイールの過度の下降を防止できれば、事故後もこのステアリングホイールの操作を行い易くして、例えば、事故車両が自走可能である場合に、この事故車両を事故現場から路肩まで自走移動させる際の運転を行い易くできる。特に、請求項4に記載した発明の様に、前記係止切り欠きを前記車体側ブラケットの前端縁側で開口させれば、この車体側ブラケットの前後方向寸法が限られている場合でも、二次衝突時に前記係止カプセルを前方に変位させられる長さ(コラプスストローク)を確保して、運転者の保護充実を図る面から有利である。
これに対して、特許請求の範囲には記載していないが、車体側ブラケットの前後方向の寸法を十分に確保できるのであれば、この車体側ブラケットの前端縁側が塞がれた構造を採用する事により、この車体側ブラケットの前部の剛性を高くする事もできる。但し、この場合には、係止カプセルとして、前述の図15に示した様に、前端縁側が閉じた係止切り欠きの左右両側部を、この係止カプセルとコラム側ブラケットとで挟持し結合固定する事が可能なものを使用する必要がある。
本発明の実施の形態の1例を示す、図12の中央部に相当する、要部斜視図。 同じく要部側面図。 ステアリングコラムを、アウタコラムとインナコラムとの嵌合部で切断すると共に一部を省略して図2の右方から見た状態で示す図。 車体側ブラケットを透視した状態で図3の上方から見た状態で示す、要部平面図。 従来から知られているステアリング装置の1例を示す、部分切断側面図。 従前のステアリングコラム用支持装置の1例を、通常時の状態で示す平面図。 同じく側面図。 従前のステアリングコラム用支持装置の1例に関して、二次衝突に伴ってステアリングコラムが前方に変位した状態を示す側面図。 従来構造の1例を示す、ステアリングコラムの中心軸に対し直交する方向に存在する仮想平面に関する断面図。 同じく、車体側ブラケットとコラム側ブラケットとを結合する以前の状態で示す斜視図。 同じく、ステアリングコラムを省略する代わりに結合ピンを記載した状態で示す斜視図。 先発明の構造を、後上方から見た状態で示す斜視図。 同じく、一部を省略して後方から見た状態で示す端面図。 同じく、図13の上方から見た状態で示す平面図。 車体側ブラケットとコラム側ブラケットとの結合部の構造の第1例を示す、図14の拡大a−a断面図。 同第2例を示す、図15と同様の図。 二次衝突時の離脱荷重が大きくなる理由を説明する為の、図15のb−b断面に相当する図。 図17のc部拡大図。
図1〜4は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本発明の特徴は、二次衝突時に、調節ロッド37を力点(入力部)とし、係止カプセル47とコラム側ブラケット33との結合部を支点として、図2の時計方向に加わるモーメントを小さく抑える事により、車体側ブラケット11からの、前記係止カプセル47及び前記コラム側ブラケット33の離脱荷重を、低く、且つ、安定させる為の構造にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図12〜15に示した先発明に係る構造と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
前記コラム側ブラケット33は、炭素鋼板の如き、十分な強度及び剛性を有する金属板に、プレスによる打ち抜き加工及び曲げ加工を施して成るもので、左右1対の支持板部34、34の上端縁同士を上板部55により連続させて、全体を門型形状としている。前記車体側ブラケット11のうちで、係止切り欠き45の左右両側部分は、前記上板部55の上面に支持固定した係止カプセル47の上半部に設けた鍔部48の下面と、この上板部55の上面との間で挟持している。又、前記両支持板部34、34同士の間に、ステアリングコラム6cを構成するアウタコラム24の下側に設けた、左右1対の被挟持板部32、32を挟持している。そして、これら両被挟持板部32、32及び前記両支持板部34、34に、杆状部材である調節ロッド37を挿通している。又、この調節ロッド37の頭部38と、カム装置42を構成する被駆動カム41との間隔を、調節レバー43により拡縮可能としている。この構成により、前記コラム側ブラケット33に対して前記ステアリングコラム6cを、所定の位置関係で支持可能としている。以上の構成に就いては、前記先発明の構造の場合と同様である。
特に、本例のステアリングコラム用支持装置の場合には、前記アウタコラム24の外周面の中間部で、前記コラム側ブラケット33を構成する前記両支持板部34、34よりも後側部分に、1対の突片56、56を固設している。前記アウタコラム24は、アルミニウム系合金、マグネシウム系合金等の軽合金をダイキャスト成形する事により一体成形したもので、前記両突片56、56は、前記アウタコラム24の左右両側面の直径方向反対側2個所位置で、高さ位置及び軸方向位置が互いに同じ部分から、左右両側方に突出する状態で設けられている。そして、前記両突片56、56の前側縁を、前記両支持板部34、34の後側縁のうちで、前記調節ロッド37よりも上側位置部分に、近接対向させている。
通常時、前記両突片56、56の前側縁と前記両支持板部34、34の後側縁との間には、前記ステアリングコラム6cの上下位置を調節可能にできるだけの隙間を介在させている。即ち、ステアリングホイール1(図5参照)の上下位置調節の為に、前記ステアリングコラム6cを、支持筒29の中心孔30(図12参照)を挿通した横軸を中心に揺動変位させた場合にも、前記両突片56、56の前側縁と前記両支持板部34、34の後側縁とが擦れ合わない(干渉しない)様にしている。但し、この擦れ合い(干渉)を防止できる限り、前記両突片56、56の前側縁と前記両支持板部34、34の後側縁とをできる限り近接させている。そして、二次衝突の発生時には、前記調節ロッド37が、前記両支持板部34、34に形成した上下方向長孔35の前側内側縁を強く押す(この調節ロッド37が、図12に示した前後方向長孔36の後端部にまで相対変位し、更に、この前後方向長孔36の後端部に押されて前記上下方向長孔35の前側内側縁に押し付けられる)以前に、前記両突片56、56の前側縁と前記両支持板部34、34の後側縁とが当接する様にしている。即ち、前記二次衝突時には、前記ステアリングコラム6cを構成する前記アウタコラム24から前記コラム側ブラケット33に衝撃荷重を、前記調節ロッド37を介さずに、前記両突片56、56と前記両支持板部34、34の後側縁との当接部を通じて伝達する。
上述の様に構成する本例の構造によれば、二次衝突時に、上板部55の上面の前端縁部と、前記車体側ブラケット11のうちで前記係止切り欠き45の左右両側部分の下面とが、局部的に強く擦れ合わない様にして、離脱荷重の絶対値及びばらつきを少なく抑えられる。即ち、本例の構造の場合には、二次衝突時に前記アウタコラム24から前記コラム側ブラケット33に衝撃荷重を、このアウタコラム24の下側に配置した調節ロッド37を介さずに、この調節ロッド37よりも上側位置に設けた、前記両突片56、56の前側縁と前記両支持板部34、34の後側縁との当接部を通じて伝達する。これら両突片56、56の前側縁と前記両支持板部34、34の後側縁との当接部から、前記車体側ブラケット11に形成された係止切り欠き45と前記コラム側ブラケット33の上板部55の上面に固定された係止カプセル47との係合部までの距離は、前記調節ロッド37からこの係合部までの距離よりも十分に短い。モーメントの入力部(力点)から、支点であるこの係合部までの距離が短い事は、この係合部に加わる、捩れ方向の力を低く抑えられる事に繋がる。この為、この係合部に作用する摩擦力を低減して、前記離脱荷重の絶対値及びばらつきを低く抑えられる。この結果、本例の構造によれば、前記二次衝突時の離脱荷重の絶対値及びばらつきを低く抑えられて、運転者保護を有効に図る為の設計が容易になる。
上述した実施の形態は、本発明を、ステアリングホイールの上下位置を調節する為のチルト機構と、同じく前後位置を調節する為のテレスコピック機構との両方を備えたステアリングコラム用支持装置に適用した場合に就いて説明した。但し、本発明は、チルト機構のみを備えた(テレスコピック機構を持たない)構造で実施する事が、上述の様な作用・効果を安定して得る為には好ましい。特に、前述の図12〜14に示した様に、ステアリングホイールを調節後の位置に保持する為の保持力を高める為の摩擦板ユニット44、44を組み込んだり、或いは、歯車(ラック)式の位置固定構造を採用した、所謂ポジティブ型のテレスコピック機構の場合には、前記保持力が二次衝突時に加わる衝撃荷重を上回る結果、この二次衝突時にステアリングホイールの位置が、位置調節可能な最前位置にまで変位しない可能性がある。この様なポジティブ型のテレスコピック機構を備えたステアリングコラム用支持装置の場合には、本発明の特徴である突片56、56の前端縁と、コラム側ブラケット33の支持板部34、34の後端縁とが当接する以前に、調節ロッド37の前側外周面が入力部となって、前記コラム側ブラケット33の支持板部34、34の下寄り部分に形成した上下方向長孔35の前側内側縁を前方に強く押す(例えば図1参照)可能性が高くなる。以上の理由から、本発明をポジティブ型のテレスコピック機構を備えたステアリングコラム用支持装置で実施する事は好ましくない。
又、本発明をチルト機構のみを備えたステアリングコラム用支持装置で実施する場合でも、本発明の作用・効果を得る為には、前記調節ロッド37の外周面と、前記コラム側ブラケット33の支持板部34、34に形成した上下方向長孔35の前側内側縁とが当接する以前に、前記両突片56、56の前端縁と、前記コラム側ブラケット33の支持板部34、34の後端縁とが当接する必要がある。そこで、ステアリングホイールの高さ位置の調節状態に拘らず、前記調節ロッド37の外周面と前記上下方向長孔35の前側内側縁との距離を、前記両突片56、56の前端縁と前記両支持板部34、34の後端縁との距離よりも大きくしておく必要がある。この為に、前記上下方向長孔35の、前後方向に関する幅寸法を十分に確保して、前記調節ロッド37の前側外周面と前記上下方向長孔35の前側内側縁との距離を大きくしたり、或いは、前記両支持板部34、34の後端縁を、ステアリングコラム6c(図1〜4参照)の揺動中心となる横軸(支持筒29の中心孔30に挿通したボルト等の中心軸)を中心とする凸円弧状として、前記両突片56、56の前端縁と前記両支持板部34、34の後端縁との距離を、前記ステアリングホイールの高さ位置の調節状態に拘らず、常に小さくしておく事が好ましい。
又、テレスコピック機構のみを備えたステアリングコラム用支持装置でも、前述した様なポジティブ型でなければ、ステアリングコラムの下側に調節ロッド等の杆状部材を配置した構造であれば、本発明を実施できる。
又、本発明の場合、左右1対の突片56、56を、同じ高さ位置に設ける事が、コラム側ブラケット33に余計な捩れ方向の力を加えない為には好ましい。図示の例では、1対の突片56、56を、アウタコラム24の幅方向に関する寸法が最も大きくなった、直径方向反対側2個所位置に配置して、このアウタコラム24の外周面からの、前記両突片56、56の突出量を少なく抑えられる様にしている。但し、この突出量を多くすれば、左右1対の突片の設置位置を、より車体側ブラケット11に近い、上側に設置する事もできる。これら両突片の設置位置が車体側ブラケット11に近いほど(設置位置が上であるほど、最も好ましくはアウタコラム24の上端部に設ければ)、この車体側ブラケット11に形成された係止切り欠き45と前記コラム側ブラケット33の上板部55の上面に固定された係止カプセル47との係合部に加わる、捩れ方向の力を小さく抑えられる。
更に、本発明は、前述の図15〜16に示した、何れの構造でも実施できる。
1 ステアリングホイール
2 ステアリングギヤユニット
3 入力軸
4 タイロッド
5、5a、5b ステアリングシャフト
6、6a、6b、6c ステアリングコラム
7 自在継手
8 中間シャフト
9 自在継手
10、10a ハウジング
11、11a、11b 車体側ブラケット
12、12a コラム側ブラケット
13 ハウジング側ブラケット
14a、14b 取付板部
15a、15b 切り欠き
16a、16b 滑り板
17 エネルギ吸収部材
18 係止切り欠き
19 係止カプセル
20、20a 係止溝
21a、21b 係止孔
22 係止ピン
23 インナコラム
24 アウタコラム
25 アウタシャフト
26 玉軸受
27 電動モータ
28 制御器
29 支持筒
30 中心孔
31 スリット
32 被支持板部
33 コラム側ブラケット
34 支持板部
35 上下方向長孔
36 前後方向長孔
37 調節ロッド
38 頭部
39 ナット
40 駆動側カム
41 被駆動側カム
42 カム装置
43 調節レバー
44 摩擦板ユニット
45、45a 係止切り欠き
46 取付孔
47、47a 係止カプセル
48 鍔部
49a、49b 小通孔
50 係止ピン
51 ボルト
52 ナット
53 係止溝
54 リベット
55 上板部
56 突片

Claims (4)

  1. 内側にステアリングシャフトを回転自在に支持する為のステアリングコラムと、車体側に支持固定されて、二次衝突時にも前方に変位する事のない車体側ブラケットと、この車体側ブラケットの幅方向中央部に形成された係止切り欠きと、前記ステアリングコラム側に支持されて、二次衝突時にこのステアリングコラムと共に前方に変位するコラム側ブラケットと、このコラム側ブラケットに固定された係止カプセルとを備え、この係止カプセルの左右両側面の上部から左右両側方に突出する状態で設けられた鍔部の下面と、この鍔部の下方に存在する下側抑え板部の上面との間で、前記車体側ブラケットのうちで前記係止切り欠きの両側部分を挟持した状態に、前記係止カプセルと前記車体側ブラケットとを組み合わせる事により、前記コラム側ブラケットを前記車体側ブラケットに対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への離脱を可能に支持したステアリングコラム用支持装置に於いて、前記コラム側ブラケットは、左右1対の支持板部及びこれら両支持板部の上端縁同士を連続させる上板部を備え、これら両支持板部同士の間に前記ステアリングコラムの中間部を挟持し、更に、このステアリングコラムよりも下側に存在する杆状部材により前記両支持板部同士の間隔を縮める方向の力を付与する事で、前記ステアリングコラムを支持すると共に、前記係止カプセルを前記上板部の上面に支持固定しており、前記ステアリングコラムの中間部で前記コラム側ブラケットを構成する左右1対の支持板部よりも後側部分に、このステアリングコラムの左右両側面から左右両側方に突出する1対の突片を固設し、これら両突片の前側縁を前記両支持板部の後側縁のうちで前記杆状部材よりも上側位置部分に対向させて、前記二次衝突時に前記ステアリングコラムから前記コラム側ブラケットに対して前記衝撃荷重を、前記杆状部材を介さずに、前記両突片の前側縁と前記両支持板部の後側縁との当接部を通じて伝達する構成とした事を特徴するステアリングコラム用支持装置。
  2. 前記両突片を設置した高さ位置が互いに同じであり、且つ、これら両突片の設置位置が、前記ステアリングコラムの直径方向反対側2箇所位置、若しくはこれよりも上側位置である、請求項1に記載したステアリングコラム用支持装置。
  3. 前記ステアリングコラムが軽合金のダイキャスト成形により造られたものであって、このステアリングコラムが前記両支持板部同士の間に、これら両支持板部に対する位置調節を可能に挟持されており、前記両突片が前記ステアリングコラムと一体に設けられている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したステアリングコラム用支持装置。
  4. 前記係止切り欠きのうち前記車体側ブラケットの前端縁側が開口しており、且つ、この係止切り欠きの前後方向に関する長さが前記係止カプセルの同方向の長さよりも大きく、前記二次衝突時に前記ステアリングコラムと共にこの係止カプセルが前方に変位した状態でも、この係止カプセルの少なくとも一部が前記車体側ブラケットの前端部の上側に位置して、この係止カプセルが脱落するのを防止できるだけの長さを有する、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載したステアリングコラム用支持装置。
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