JP2014091807A - 耐熱性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】エチレン系重合体の熱分解を抑制し、より高温での樹脂加工を可能にする方法を提供することを課題とする。
【解決手段】エチレン単独重合体及び/又はエチレン共重合体と、金属化合物を含有する耐熱性樹脂組成物であって、前記金属化合物が、下記(1)あるいは(2)のいずれかであることを特徴とする耐熱性樹脂組成物。
(1)マンガン、コバルト、または鉄の、酢酸塩またはアセチルアセトナト錯体
(2)カルボン酸銅塩、チオシアン酸銅塩、アセチルアセト銅錯体、酸化銅、または水酸化銅
【選択図】なし

Description

本発明は、新規の耐熱性樹脂組成物、好ましくはポリエチレン系耐熱性樹脂組成物に関する。
熱可塑性樹脂の樹脂加工においては、より複雑な金型成型等の成型加工が求められ、樹脂の流動性を上げるため、より高い加工温度(混練温度や成型温度)が求められている。
しかし熱可塑性樹脂は、一般的に熱分解性を有していることから、耐熱性に乏しく、混練温度や成型温度に制限がある。ポリオレフィン樹脂、特にポリエチレン樹脂は熱分解が顕著で、耐熱性が低い。
熱分解の原因は、熱によりラジカルが生成し、分子鎖の分解が起こるためと考えられている(例えば非特許文献1)。
熱分解の抑制方法としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンのような酸化防止剤や、フォスファイト類やチオ化合物類等の過酸化物分解剤の添加により、ラジカルの生成を抑制する手法が一般的には用いられている(例えば非特許文献1)。
しかしこれらの添加剤は、複雑な構造を有するものが多く、高価で、より高温での樹脂加工を可能にするには十分な効果を有していない。そのためより高温での樹脂加工を可能にする添加剤が求められている。
一方、各種合成樹脂に金属化合物を添加し、各種物性を改良する方法が検討されている。
非特許文献1には、酸化鉄、ニッケル酸化物、酸化銅などの金属酸化物や、チオシアン化銅、シュウ酸銅などの金属塩が無機系難燃剤の一例として示されており、具体的には低発煙剤としての効果があることが記載されている。
特許文献1には、ポリアミド樹脂の難燃化のために、難燃化剤であるメラミンシアヌレートと、メラミンシアヌレートの発泡を抑制する目的で酢酸銅を添加することが記載されている。
特許文献2には、PVC樹脂やポリエステル樹脂の難燃化剤として、水酸化マグネシウム等をヒドロキシスズ酸の2価金属塩又はスズ酸の2価金属塩で被覆して使用する事により、煙が抑制される事が記載されている。このときの2価金属として銅、鉄、コバルトなどが例示されている。
しかし当業者においては、銅、コバルト、マンガン、鉄などの金属またはそれらの金属化合物は、いわゆる「銅害」と言われるように合成樹脂を劣化させることが良く知られており、前述の低発煙化など特別な目的がなければ添加することは避けるべきものと考えられていた。(非特許文献2)
特開平6−145506号公報 特表平11−507976号公報
ポリプロピレンハンドブック、p.207、E・P・ムーア,1998,工業調査会 空気調和・衛生工学、80(1)、p.69、大武 義人、2006
本発明は、ポリエチレン樹脂の熱分解を抑制し、より高温での樹脂加工を可能にする方法の提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意研究の結果、 ポリエチレン樹脂に、銅、コバルト、マンガン、鉄の特定の塩、または酸化銅、水酸化銅を添加する事により、ポリエチレン樹脂の熱分解が抑制されることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、
[1]エチレン単独重合体及び/又はエチレン共重合体と、金属化合物を含有する耐熱性樹脂組成物であって、前記金属化合物が、下記(1)及び(2)からなる群より選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする耐熱性樹脂組成物、
(1)マンガン、コバルト、または鉄の、酢酸塩またはアセチルアセトナト錯体
(2)カルボン酸銅塩、チオシアン酸銅塩、アセチルアセト銅錯体、酸化銅、または水酸化銅
[2]前記(2)のカルボン酸が、脂肪族カルボン酸、または芳香族カルボン酸であることを特徴とする上記[1]に記載の耐熱性樹脂組成物、
[3]前記エチレン単独重合体及び/又はエチレン共重合体100重量部に対して、前記金属化合物0.1重量部以上5重量部以下を含むことを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の耐熱性樹脂組成物、
に存する。
本発明によれば、上記特定の金属化合物を少量添加する事により、ポリエチレン樹脂の発熱を伴う熱分解速度が低下し、耐熱性が向上する。この結果、ポリエチレン樹脂の加工温度を、ポリエチレンの分解を促進させることなしに高温化することができ、生産性を向上させることが可能である。
比較例1のDTA測定における発熱ピークである。 比較例22のDTA測定における発熱ピークである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(樹脂組成物)
本発明の耐熱性樹脂組成物は、エチレン単独重合体及び/又はエチレン共重合体と、金属化合物を含有し、前記金属化合物が、(1)マンガン、コバルト、または鉄の酢酸塩またはアセチルアセトナト錯体、あるいは(2)カルボン酸銅塩、チオシアン酸銅塩、アセチルアセト銅錯体、酸化銅、または水酸化銅、の(1)、(2)に含まれる化合物からなる群より選ばれた少なくとも一つであることを特徴とするものである。
なお、以下において、本発明の耐熱性樹脂組成物を、「本発明の組成物」、また「エチレン単独重合体及び/又はエチレン共重合体」を総称して、「エチレン系重合体」ということがある。同様に金属化合物のうち、「マンガン、コバルト、または鉄の酢酸塩または
アセチルアセトナト錯体」を、「金属化合物(1)」、「カルボン酸銅塩、チオシアン酸銅塩、アセチルアセト銅錯体、酸化銅、または水酸化銅」を「金属化合物(2)」ということがある。
(エチレン単独重合体)
本発明におけるエチレン単独重合体は、エチレンを原料単量体として重合反応により得られる重合体である。具体的には低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン 、超高密度ポリエチレン
などが挙げられる。
本発明におけるエチレン単独重合体の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性と機械的物性のバランスの面で、重量平均分子量で、通常10,000以上であり、2
0,000以上が好ましく、40,000以上がより好ましい。また、同様の理由で、重量平均分子量は、通常1,000,000以下であり、700,000以下が好ましく、50
0,000以下がより好ましい。前記下限未満では、得られる重合体が柔軟になりすぎて
成形加工が困難になる場合がある。また前記上限超過では、得られる重合体が剛直になりすぎて、成形加工が困難になる場合がある。
前記エチレン単独重合体は単独で使用しても良く、分子量や分岐構造、密度などが異なる複数種のエチレン単独重合体を混合して使用しても良い。
(エチレン共重合体)
本発明におけるエチレン共重合体とは、エチレンと、少なくとも1種類のエチレン以外の単量体とを原料とする共重合体をいい、好ましくは共重合体を形成する単量体のうち、エチレンが最も多い共重合体(すなわちエチレンを主成分とする共重合体)である。
エチレン共重合体としては、具体的には例えば、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体(以下、エチレン−α−オレフィン共重合体);エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる(ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸を意味する)。
エチレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数3から20のα−オレフィンが好ましく、炭素数3から10のα−オレフィンがより好ましい。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、等を挙げることができる。
上記エチレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンの含量は、特に限定されるものではないが、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。
α−オレフィン含量の上限については、特に限定はされないが、α−オレフィンが、プロピレン以外のα−オレフィンの場合は、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。前記上限超過では、本発明を適用しても十分な耐熱性が発揮されない場合がある。
α−オレフィンがプロピレンの場合の含量の上限は、特に限定されないが、通常30重量%以下であり、好ましくは25重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下である。前記上限値よりプロピレン含量が高過ぎる場合には、金属化合物を添加した本発明の樹脂組成物の熱安定性が低下する場合があるためである。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、更に好ましくは1.5重量%以上で、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。前記
上限値より酢酸ビニル含量が高過ぎる場合には、金属化合物を添加した本発明の樹脂組成物の熱安定性が低下する場合があるためである。
また、上記エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の(メタ)アクリル酸エステル含量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上で、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。前記上限値より(メタ)アクリル酸エステル含量が高過ぎる場合には、金属化合物を添加した本発明の樹脂組成物の熱安定性が低下する場合があるためである。
本発明におけるエチレン共重合体の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性と機械的物性のバランスの面で、重量平均分子量で、通常10,000以上であり、好ま
しくは20,000以上、より好ましくは40,000以上であり、通常1,000,000以下であり、好ましくは700,000以下、より好ましくは500,000以下である。前記下限未満では、得られる重合体が柔軟になりすぎて成形加工が困難になる場合がある。また前記上限超過では、得られる重合体が剛直になりすぎて、成形加工が困難になる場合がある。
これらのエチレン共重合体は1種を単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。また前述のエチレン単独重合体と、任意の割合で組み合わせて用いても良い。
(金属化合物)
本発明で用いられる金属化合物は、(1)あるいは(2)のいずれかである。
(1)マンガン、コバルト、鉄の酢酸塩、アセチルアセトナト錯体
(2)カルボン酸銅塩、チオシアン酸銅塩、アセチルアセト銅錯体、酸化銅、または水酸化銅
これらは単独で用いても、2種類以上を混合して使用してもよく、(1)、(2)の中から適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明の樹脂組成物は、前記エチレン系重合体に、上記金属化合物を混合したものである。
本発明の樹脂組成物中における上記金属化合物の配合割合は、特に限定されるものではないが、エチレン系重合体の総重量、すなわちエチレン単独重合体又はエチレン共重合体、もしくはエチレン単独重合体とエチレン共重合体の総重量100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上であり、通常5重量部以下、好ましくは4重量部以下、より好ましくは3重量部以下、最も好ましくは2重量部以下である。前記下限値よりも配合量が少なすぎる場合は、熱分解を抑制する効果が得られない場合があり、前記上限値よりも配合量が多すぎる場合には、熱分解は抑制されるものの、得られた組成物の耐久性が低下することがある。
(マンガン、コバルト、鉄化合物)
本発明の組成物において用いられる金属化合物(1)は、マンガン、コバルト、鉄の酢酸塩、アセチルアセトナト錯体である。すなわち、酢酸マンガン(II)、酢酸コバルト(II)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、マンガン(II)アセチルアセトナート、コバルト
(II)アセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、及び鉄(III)アセチル
アセトナートである。
(銅化合物)
本発明の組成物において用いられる金属化合物(2)は、カルボン酸銅塩、チオシアン酸銅塩、アセチルアセトナト銅錯体、銅の酸化物および銅水酸化物である。すなわち、下
記例示に代表されるカルボン酸と銅の塩、チオシアン酸銅(I)、チオシアン酸銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、水酸化銅(I)、及び水酸化銅であり、これらは含水物であっても無水結晶であってもよい。含水物の場合、その水和数は特に制限されない。
上記金属化合物(2)で用いられる銅の価数は、特に制限はされず、銅(I)、銅(II)のいずれでもよい。
カルボン酸銅塩に用いられるカルボン酸としては、特に制限はされず、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸いずれでもよい。
カルボン酸の種類は特に制限されず、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、又はそれ以上のカルボン酸基を有する化合物(ポリカルボン酸)等を使用することができる。また同一分子内に水酸基を有するヒドロキシカルボン酸であってもよい。
カルボン酸として具体的には、脂肪族カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、アジピン酸等の水酸基を有さない脂肪族カルボン酸;グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸(o−,m−,p−)等の水酸基を有さない芳香族アルキルカルボン酸;サリチル酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸類等が挙げられる。
このうち、原料入手の容易さの観点から、分子量の小さいカルボン酸が好ましく、カルボン酸の有する炭素数を除いた分子内の炭素数が0〜5の水酸基を有さない脂肪族カルボン酸、カルボン酸の有する炭素数を除いた分子内の炭素数が0〜5の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、カルボン酸の有する炭素数を除いた分子内の炭素数が6〜12の水酸基を有さない芳香族カルボン酸、またはカルボン酸の有する炭素数を除いた分子内の炭素数が6〜12の芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、経済性の観点からカルボン酸の有する炭素数を除いた分子内の炭素数が0〜3の脂肪族アルキルカルボン酸、カルボン酸の有する炭素数を除いた分子内の炭素数が0〜3の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、カルボン酸の有する炭素数を除いた分子内の炭素数が6〜10の芳香族アルキルカルボン酸またはカルボン酸の有する炭素数を除いた分子内の炭素数が6〜10の芳香族ヒドロキシカルボン酸がより好ましく、ギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸が更に好ましい。
上記のような特定の金属化合物を添加することにより、エチレン系重合体の熱分解抑制効果が何故発現するのかについては、いまだ詳細は明らかとなっていないが、以下のように推定される。
ポリプロピレンを始めとする合成樹脂は一般的に、分子鎖中にアルキル基等の置換基側鎖を有するため、ラジカルによる分解が発生しやすいが、ポリエチレンは置換基を有さないため、ラジカルによる分解が起こりにくい。このことから、ポリプロピレン等のプロピレン系重合体は銅害の影響を受け易いのに対し、ポリエチレン等のエチレン系重合体はその影響が小さいと考えられる。
金属、特にCuのような遷移金属は、樹脂中で、金属イオンが触媒種となりレドックス反応が起こり、樹脂と接触することでいわゆる自動酸化反応が起こり、樹脂はラジカル的な分解を起こすと考えられる(非特許文献3)。一方で遷移金属には「ラジカルトラップ剤」としての性質も有するとも考えられており、前者は樹脂の熱分解を促進する作用を持ち、後者は逆にラジカルによる樹脂の分解を抑制する作用を持つので、相反する効果が共存すると推定される。
即ち、前者の作用が大きければ分解促進剤として作用し、銅害のような現象を引き起こし、逆に後者の作用が大きければ分解抑制剤となるので、両者の効果の大きさの比が極めて重要と思われる。
これらの比率は、金属種とその金属種の存在状態(カウンターイオンや酸化状態等)、更には樹脂の種類との組合せで決まると考えられる。
即ち、元々銅害の影響が小さいエチレン系重合体と、エチレン系重合体との接触によりラジカルトラップ能が優勢になる特定の金属化合物との組合せにより、特異的に耐熱性が発現するものと考えられる。
本発明の上記性質は、エチレン系重合体において発現するものであり、エチレン単独重合体、エチレン共重合体いずれでも発現するが、好ましくは重合体を形成する単量体のエチレンの割合が多いほど上記性質が顕著になるため、好ましいエチレン系重合体としては、エチレン単独重合体およびエチレンを主成分とするエチレン共重合が好ましく、エチレン単独重合体およびエチレンの重合比率が50%以上のエチレン共重合体がより好ましく。エチレン単独重合体が更に好ましい。
本発明で用いられる金属化合物は、無水結晶であっても、水和物であってもよく、水和物である場合の水和数は特に限定されるものではない。本発明の樹脂組成物の成型時の発泡を特に忌避したい場合には、前記水和数は少ない方が好ましく、通常水和数は8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。水和数が前記上限より多い場合、樹脂加工温度付近で熱による脱水反応が起き、その際に発生する水蒸気により樹脂加工中に樹脂が発泡する場合があるためである。
本発明で使用される金属化合物の純度は特に限定されるものではないが、純度が低過ぎると添加した量に対する効果が相対的に小さくなってしまうため、通常80%以上が好ましく、より好ましくは90%以上であり、95%以上が更に好ましい。
但し、鉄の金属化合物は形態の異なる鉄化合物との混合品である場合が多いため、一般的に純度が低いことから、本発明における鉄化合物の混合物として上記純度であれば良く、最も多く含まれる本発明における鉄化合物の純度としては50%以上あれば良いが、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、80%以上が特に好ましい。
本発明において用いられる上記金属化合物の形状は特に限定されるものではないが、好ましくは粒子状のものが用いられる。その粒径は特に限定されるものではないが、より小さい方が樹脂中での分散性がより向上するため好ましい。例えば、上記金属化合物の粒径は、レーザー回折法・散乱式粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径で10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。ただし、この体積平均粒子径は通常10nm以上である。
本発明で使用される上記金属化合物は、そのまま使用しても良く、表面処理をしても良い。表面処理としては、具体的には、特開2005-048034号公報に記載のような
ステアリン酸やパルミチン酸のような有機酸、特開2006−160979号公報に記載のような各種シランカップリング剤、チタン酸などによって表面処理し、処理剤由来の皮膜を金属化合物表面に形成してもよい。またシリカやアルミナ、チタニアなどの無機酸化物の微粒子を、表面に被覆しても良い。
本発明の耐熱性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、必要に応じて紫外線吸収剤、帯電防止剤、導電性フィラー、磁気シールド剤、硬化剤、軟化剤、着色剤、充填剤、核剤などの各種添加剤を添加しても良い。
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の耐熱性樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、エチレン系重合体に対して、金属化合物(1)及び/又は(2)を混練して製造することが好ましい。
また上記耐熱性樹脂組成物に、各種添加剤を添加する場合は、その添加順序は制限され
るものではなく、混練工程の何れの段階で混練しても良く、上記金属化合物と同時に混練しても、分割して混練してもよく、また上記金属化合物と予め混合してから混練しても、それらの一部のみを予め混合してから混練してもよい。
混練の方法は特に限定されるものではないが、既知のいずれも方法も実施することができる。
例えば、エチレン系重合体を加熱して溶融させた状態で、金属化合物を添加して混練する方法が挙げられ、この場合、必要であればエチレン系重合体と金属化合物を予め加熱してから添加してもよい。
混練に用いる装置としては、特に制限はされないが、例えば単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの汎用の混練装置を用いることができる。
本発明の組成物は、各種公知の方法を用いて、成形することができ、成形方法は特に制限はなく、例えばパイプ押出、フィルム押出、シート押出、電線被覆等の押出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形等を利用することができる。
得られた成形体は、各種樹脂の用途に合わせて適宜使用することができる。
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって制限されるものではない。
以下の実施例および比較例において用いた材料および得られた樹脂組成物の耐熱性試験方法は次の通りである。
(耐熱性評価試験方法)
本発明の組成物の耐熱性は、下記する示差熱分析(DTA)によりおこなった。
(示差熱分析装置(DTA))
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製示差熱熱重量測定装置TG/DTA−320を用いた。融解熱が59.5J/gであるすず金属を使用し、窒素200mL/minの気流下、10℃/minの割合で昇温し、その融解熱を測定したところ0.68μV・min/mgであった。
(樹脂)
エチレン系重合体として、エチレン単独重合体であるポリエチレン樹脂を用いた。ポリエチレン樹脂は、日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックLL UJ960」(JIS
K6922−2 メルトフローレート:5g/10分)を用いた。
プロピレン系重合体として、プロピレン単独重合体であるポリプロピレン樹脂を用いた。ポリプロピレン樹脂は、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP MA3」(JIS
K7210:1999 メルトフローレート:11g/10分)
(比較例1)
ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックLL UJ960」を、アルミナ製容器に約2mg入れ、空気200mL/minの気流下で、室温から600℃まで10℃/minの割合で昇温し、樹脂を入れていない空のアルミナ容器を基準物質とした示差熱分析(DTA)を行なった。
(ポリエチレン樹脂の分解熱)
金属化合物の添加をしていないポリエチレン樹脂のDTA測定結果から(比較例1)、約260℃から分解が始まり、複数の発熱ピークが観測される。このうち最も低温から始まる発熱ピークを第一発熱ピーク、それに続く発熱ピークを第二発熱ピークとした。さらに両発熱ピークの間における発熱の極小点を第一発熱ピーク終点としたところ、332℃
であった。発熱ピークの測定結果を図1に示した。
そして180℃〜332℃のDTA発熱量の総和(DTA発熱総量)を求めたところ、59.2μV・min/mgであった。
各種金属化合物の効果を確認するため、金属化合物を加えて混練したポリエチレン樹脂のDTA発熱総量を比較した。DTA発熱総量が小さいほど、発熱を伴う熱分解速度が小さく、樹脂の分解が抑制されることとなり、耐熱性が高い樹脂であることになる。
(実施例1)
比較例1で用いたポリエチレン樹脂に、1重量%の割合で、金属化合物として酢酸マンガン(II)・四水和物(和光純薬工業社製)を加え、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、180℃、80回転/分で4分間混練し、樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を比較例1と同様にDTA測定を行なった。結果を表1に記した。
(比較例2〜4)
実施例1と同様に、しゅう酸(比較例2)、熱分解抑制用の添加剤として知られるヒンダードフェノール系酸化防止剤(比較例3)、ヒンダードアミン系酸化防止剤(比較例4)を1重量%添加した樹脂組成物を作成し、それぞれDTA測定を行なった。結果を表1に示した。
(実施例2〜15、比較例5〜21)
実施例1と同様に、表1〜2に記載の金属化合物1重量%添加した樹脂組成物を作成し、それぞれDTA測定を行なった。結果を表1および2に示した。
Figure 2014091807
Figure 2014091807
[ポリプロピレン樹脂における金属化合物の添加効果]
(比較例22)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP MA3」を、比較例1と同様にDTA測定を行なった。結果を表3に示した。
金属化合物を添加していないポリプロピレン樹脂の180℃〜332℃のDTA発熱量の総和(DTA発熱総量)を求めたところ、54.4μV・min/mgであった(比較例22)。発熱ピークの測定結果を図2に示した。
この樹脂に各種金属化合物を加えて混練した樹脂組成物のDTA発熱総量を測定した。
(比較例23〜28)
比較例22でポリプロピレン樹脂に、1重量%の割合で、金属化合物として表4に記載の金属化合物を加え、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、180℃、80回転/分で4分間混練し、樹脂組成物を作成し、それぞれDTA測定を行なった。結果を表3に示した。
Figure 2014091807
測定の結果、実施例1〜5と比較例5〜10の比較より、Mn、Fe、Coの酢酸塩とアセチルアセトナイト錯体を添加したものは、耐熱性が良好であった。しかし、Niは酢酸塩等の塩(比較例11〜14)にしても効果がなく、耐熱性改良にならず、金属種が限られることがわかる。またその他の金属等々での検討をおこなったが、同様の効果は得られなかった(比較例15〜18)
金属種としてCuを用いると、酢酸塩だけでなく、有機酸塩、チオシアン酸塩のみならず酸化物、水酸化物でも耐熱性が改良することがわかる(実施例6〜15)。その一方で、硫酸塩、リン酸塩等では耐熱性が改良しないことがわかる(比較例19〜21)。
同様の効果が得られるのは、本願発明の金属化合物に限られることがわかった。
一方ポリプロピレン樹脂では、ポリエチレン樹脂では添加効果のあった金属化合物を添加しても、耐熱性は殆ど改善されていないことがわかった。(比較例22、比較例23〜28)
以上の結果から明らかなように、エチレン系重合体に特定の金属化合物を添加することにより良好な耐熱性を示す。
本発明の耐熱性樹脂組成物は、特定の金属化合物を極少量添加しただけで良好な耐熱性を示すものであり、広範な温度領域での成型・加工において樹脂の劣化を抑制することが可能であり、様々な用途に好適である。

Claims (3)

  1. エチレン単独重合体及び/又はエチレン共重合体と、金属化合物を含有する耐熱性樹脂組成物であって、前記金属化合物が、下記(1)及び(2)からなる群より選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする耐熱性樹脂組成物。
    (1)マンガン、コバルト、または鉄の、酢酸塩またはアセチルアセトナト錯体
    (2)カルボン酸銅塩、チオシアン酸銅塩、アセチルアセト銅錯体、酸化銅、または水酸化銅
  2. 前記(2)のカルボン酸が、脂肪族カルボン酸、または芳香族カルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性樹脂組成物。
  3. 前記エチレン単独重合体及び/又はエチレン共重合体100重量部に対して、前記金属化合物0.1重量部以上5重量部以下を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性樹脂組成物。
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