<実施形態1>
本発明の実施形態1を、図1から図6を参照しつつ説明する。本実施形態では、自動車(車両の一例)におけるフロントピラーガーニッシュ(以下、ピラーガーニッシュ)に配置されるサイドデフロスタ用の吹出部材がオープニングトリムによって固定される構造(吹出部材固定構造1)を例示する。
図1は、本発明の実施形態1に係る吹出部材固定構造1を示す斜視図である。図1には、自動車(右ハンドル車)の車室内側を運転席側から右斜め前方に向かって見た状態が示されている。ここで先ず、図1を参照しつつ車室内側の概略構成を説明する。図1に示されるように、車両の天井には、天井用内装材(ルーフライニング)2が取り付けられており、またその天井用内装材2上には、サンバイザー3やアシストグリップ4等が設けられている。
運転席側のサイドドア(不図示)によって閉塞されるドア開口5の周縁部には、長手状のオープニングトリム(ウェザーストリップ)6が取り付けられている。そして、運転席前方にはフロントウィンドウ7が配設されており、このフロントウィンドウ7とドア開口5とは、フロントピラー(Aピラー)8によって区画されている。フロントピラー8は、天井(上方)に向かって延設されている。
フロントピラー8の車室側(車室内側)には、ピラーガーニッシュ9が取り付けられている。そして、このピラーガーニッシュ9の下方部分には、デフロスタ用の吹出部材10が取り付けられている。なお、後述するように、フロントピラー8とピラーガーニッシュ9との間には、デフロスタ用のダクト(図2等参照)が配されている。
本実施形態の吹出部材固定構造1は、主として、オープニングトリム6と、ピラーガーニッシュ9と、吹出部材10とから構成される。なお、オープニングトリム6は、上述したドア開口5の周縁部以外に、フロントピラー8の車両後方側の側端部にも取り付けられている。また、後述するように、フロントウィンドウ7の側端部には、他のオープニングトリム(ウェザーストリップ、図2参照)が取り付けられている。
次いで、上述した車両の各構成について、図2から図6を参照しつつ詳細に説明する。図2は、吹出部材固定構造1の断面図(図1のA−A’線断面図)である。フロントピラー8は、吹出部材固定構造1を構成するピラーガーニッシュ9が取り付けられる部材であり、図2に示されるように、インナパネル81、アウタパネル82及びリインフォースメントパネル83を主体に構成されている。インナパネル81は車室内側に配され、アウタパネル82は車室外側に配されている。そして、リインフォースメントパネル83は、インナパネル81とアウタパネル82との間に介在される形で配されている。
インナパネル81は、車室内側に向かって若干緩やかに膨出しつつ天井側(上方)に向かって延びた板状をなしている。これに対して、アウタパネル82は、車室外側に膨出しつつ天井側(上方)に向かって延びた断面が円弧型の板状をなしている。なお、リインフォースメントパネル83も、アウタパネル82と同様、車室外側に膨出しつつ天井側に向かって延びた断面が円弧型の板状をなしている。これらのパネル81,82,83の側端部は、それぞれ重ね合わせられており、接触個所において互いに接合されている。なお、互いに接合されたパネル81,82,83の側端部のうち、車両前方に配されるものを側端部8aと称し、車両後方に配されるものを側端部8bと称する。本実施形態の場合、側端部8aは、車室内側を向く形となっており、車両幅方向に対して略平行に配されている。これに対して、側端部8bは、概ね車両後方を向く形となっており、車両前後方向に対して略平行に配されている。
車両前方側の側端部8aは、図2に示されるように、フロントウィンドウ7に対して略平行に配されており、フロントウィンドウ7の側端部に取り付けられているオープニングトリム(ウェザーストリップ)71の車両後方側の部分と接触している。オープニングトリム71は、柔軟性を有する弾性材料(例えば、エチレンプロピレンゴム等)からなり、フロントピラー8とフロントウィンドウ7との間の隙間を塞ぐ機能を備えている。また、車両後方側の側端部8bには、図2に示されるように、オープニングトリム6が取り付けられている。なお、オープニングトリム6の詳細は、後述する。
図3は、フロントピラーガーニッシュ9、吹出部材10及びダクト11の分解斜視図であり、図4は、組み付け状態のフロントピラーガーニッシュ9、吹出部材10及びダクト11を、フロントピラーガーニッシュ9の裏面側から見た図である。ピラーガーニッシュ9は、図2等に示されるように、所定の厚みを有する壁部(基材)91を備えている。壁部91は、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂材料により形成されている。なお、壁部91に使用される材質としては、これに限られず、目的に応じて適宜、選択される。
壁部91は、全体的には、フロントピラー8の長手方向(延設方向)に沿って延びつつ、フロントピラー8の車室内側(車室側)を覆うような形状をなしている。また、壁部91は、フロントピラー8との間に空間Sが形成されるような形状を備えている。また、壁部91における車室内側(表側)の面には、図2に示されるように、薄手の表皮材93が貼り付けられている。この表皮材93の表面が、車室内側を向くピラーガーニッシュ9の意匠面を構成している。なお、説明の便宜上、図2以外の各図において表皮材93は省略されている。
壁部91の下端部には、図3及び図4に示されるように、サイドドア用のサイドパネル(不図示)に取り付けられる取付片92が形成されている。また、壁部91の上端部の形状は、ピラーガーニッシュ9がフロントピラー8に取り付けられた際、車両が備える天井用内装材2の周端部に隣接するように設定されている。
壁部91は、壁面が車両後方を向く形で概ね車両幅方向に沿って配される後方壁部91aと、この後方壁部91aに隣接すると共に、壁面が車両側方を向く形で概ね車両前後方向に沿って配される側方壁部91bとを備えている。後方壁部91aは、側方壁部91bにおける車両後方の側端部から、フロントピラー8の側端部8bに向かう形で延設されている。本実施形態の場合、後方壁部91aと側方壁部91bとは互いに略直交する形で接続されている。なお、側方壁部91bは、上述したように概ね車両前後方向に沿って配されるものの、図2に示されるように、車室内側に若干、緩やかに膨出するように湾曲した形をなしている。また、壁部91における車両前方側の側端部(つまり、側方壁部91bの車両前方側の側端部)は、フロントウィンドウ7に対して近付くと共に、それよりも車室外側に配されるフロントピラー8の側端部8aに対しても近付く形となっている。
側方壁部91bの裏面(車室外側を向く面、意匠面の反対面)には、図3及び図4に示されるように、フロントピラー8のインナパネル81(図2参照)に向けてクリップ座94が立設されている。クリップ座94は、インナパネル81に対して取り付けられる合成樹脂製のクリップ(不図示)を保持するためのものであり、その内側にクリップを挿通させた状態で保持する取付孔94aが設けられている。クリップ座94は、壁部91の長手方向に沿って複数個所(本実施形態の場合、2個所)設けられている。クリップ座94は、壁部91(側方壁部91b)に対して射出成型等により、一体的に形成されている。
クリップ座94の取付孔94aにクリップが挿通されつつ、インナパネル81が有する孔(不図示)に挿し込まれることにより、クリップ座94の先端面がインナパネル81に当接した状態で、壁部91がフロントピラー8に対して取り付けられる。クリップの先端部分は、根元側がくびれた先割れ状をなしており、前記クリップが、インナパネル81が有する孔に挿し込まれると、その先端部分は、弾性変形して縮径した状態で前記孔を通過することになる。その後、前記孔の周縁部が根元側のくびれに到達すると、クリップの先端部分は拡径して、クリップがインナパネル81の孔から引き抜かれることが防止される。
このように、ピラーガーニッシュ9は、クリップ座94及びクリップ(不図示)を利用して、フロントピラー8に対して取り付けられている。なお、ピラーガーニッシュ9(壁部91)と、フロントピラー8との間には、上述した空間Sが形成されている。この空間Sは、概ね、ピラーガーニッシュ9の長手方向に沿って延びた形をなしている。
なお、図4に示されるように、壁部91の裏面には、壁部91の剛性を高めるための複数本のリブ95が形成されている。各リブ95は、壁部91の短手方向に沿って細長く延びた凸状をなしている。各リブ95は、側方壁部91bから後方壁部91aに亘って形成されている。また、各リブ95は、壁部91の長手方向において、互いに間隔を保ちつつ並べられている。各リブ95も、壁部91に対して射出成型等により、一体的に形成されている。
後方壁部91aには、サイドデフロスタ用の吹出部材10を取り付けるための開口部96が設けられている。この開口部96は、図3等に示されるように、後方壁部91aの下端側に設けられている。図5は、フロントピラーガーニッシュ9の車両後方側(後方壁部91a)に設けられた開口部96の平面図である。開口部96は、図2及び図5等に示されるように、後方壁部91aの短手方向において、フロントサイドガラス12(図2参照)側に近付く形で後方壁部91aに設けられている。なお、フロントサイドガラス12は、運転席側のサイドドアに設けられているウィンドウレギュレータ(不図示)によって上下方向に昇降可能に支持されている。
開口部96は、後方壁部91aを厚み方向に貫通する孔からなり、図5に示されるように、壁部91(後方壁部91a)の長手方向に沿って長く延びた縦長の略矩形状をなしている。そして、開口部96の周りには、開口部96を囲む形で開口縁部97が配されている。なお、開口縁部97は、後方壁部91aと同じ材料(基材)から構成されている。
開口縁部97は、図5に示されるように、全体的には、開口部96を囲む縦長の枠状をなしている。なお、開口縁部97のうち、フロントサイドガラス12側(車室外側)に配される部分を、第1開口縁部(本発明の開口縁部の一例)97aと表す。そして、開口部96を挟んで第1開口縁部97aの反対側に配される部分を第2開口縁部97bと表す。なお、第1開口縁部97a及び第2開口縁部97bは、縦長の枠状をなした開口縁部97のうち、それぞれ長辺側の部分に相当し、それぞれ壁部91(後方壁部91a)の長手方向に沿った部分となっている。
また、開口縁部97のうち、上方側(天井側)に配される部分を、第3開口縁部97cと表し、その下方側に配される部分を、第4開口縁部97dと表す。第3開口縁部97c及び第4開口縁部97dは、縦長の枠状をなした開口縁部97のうち、それぞれ短辺側の部分に相当し、それぞれ壁部91(後方壁部91a)の短手方向に沿った部分となっている。
開口縁部97のうち、第1開口縁部97aは、剛性を高める等の目的で、図2に示されるように、凹部状(コの字状)に折り曲げられた断面形状を有する凹凸部98を備えている。凹凸部98は、開口部96の周縁に沿って延びつつ、後方壁部91aの表裏方向(第1開口縁部97aの表裏方向)に沿って設けられている。そのため、第1開口縁部97aの車両後方側(表側)には、凹凸部98によって形成される溝部99が配されている。溝部99は、後方壁部91aの表面(意匠面)側から裏面側に向かって(表裏方向に沿って)凹みつつ、壁部91(後方壁部91a)の長手方向に沿って細長く延びた形をなしている。そして、第1開口縁部97aのうち溝部99よりも車室内側に配される部分が、主として、後述する吹出部材10のフランジ部に直接、宛がわれることになる。なお、開口縁部97は、後方壁部91aの外壁面よりも、若干、奥まった個所に形成されており、開口縁部97に取り付けられた後の吹出部材10の表面が、ピラーガーニッシュ9の意匠面に対して、略同一面となるように設定されている。
サイドデフロスタ用の吹出部材10は、後方壁部91aに設けられている開口部96を利用して、ピラーガーニッシュ9に対して位置決めされる。上述したように、ピラーガーニッシュ9とフロントピラー8との間には、空間Sが形成されており、その空間S内に、サイドデフロスタ用のダクト11が収容されている。ここで、先ずダクト11について説明する。ダクト11は、合成樹脂製の板材を所定形状に加工したものからなり、ピラーガーニッシュ9の壁部91との間で、インストルメントパネル(不図示)側から供給される空調用の空気を通すための流路S1を形成する。流路S1は、ピラーガーニッシュ9の下端側(図4参照)であると共に、ピラーガーニッシュ9の車両後方側(図2参照)に設けられている。また、図2に示されるように、ピラーガーニッシュ9の壁部91とダクト11とで形成される流路S1の断面形状は、略四角形となっている。なお、他の実施形態においては、ゴム等の弾性材料からダクト11が形成されてもよい。
ダクト11の周端部のうち、ピラーガーニッシュ9の側方壁部91b側に配される部分(周端部11a)と、側方壁部91bの裏面との間には、軟質ウレタン等からなるシール材13が介在されている。周端部11aと側方壁部91bは、シール材13を利用して互いに密着されている。また、ダクト11の周端部のうち、ピラーガーニッシュ9の後方壁部91a側に配される部分(周端部11b)は、後述するように、吹出部材10と第1開口縁部97aとの間で挟持されている。
なお、図3及び図4に示されるように、ダクト11の周縁には、側方壁部91bの裏面側に設けられた突起部100に嵌合される孔部を含む取付部11cが複数設けられており、この取付部11cを利用して、ダクト11が側方壁部91bに対して固定されている。なお、ダクト11内に配される流路S1の上流側には、上述したインストルメントパネル側(ピラーガーニッシュ9の下端側)から、湿度及び温度が調節された空気が供給される。これに対して、流路S1の下流側は、後方壁部91aに設けられている開口部96と繋がっており、流路S1内を通った空気が、開口部96に取り付けられる吹出部材10を通って車室内側に吹き出される。ダクト11の下流側の周端部は、開口部96を壁部91の裏面側から包囲する形で、側方壁部91b及び後方壁部91aに亘って配されている。ダクト11の周端部のうち、吹出部材10と第1開口縁部97aとの間で挟持されない個所は、主として、シール材13を介して壁部91の裏側に密着されている(図3等参照)。
次いで、吹出部材10について、詳細に説明する。図6は、フロントピラーガーニッシュ9の開口部96に取り付けられた吹出部材10の平面図である。吹出部材10は、フロントサイドガラス12の曇りを除去するために利用されるサイドデフロスタ用の空調装置の一構成部品である。吹出部材10は、合成樹脂製であり、図10等に示されるように、主として、内側に複数の吹出口10aを含む筒状のベゼル部10bと、このベゼル部10bの周縁に延設されたフランジ部10cとを備えている。
ベゼル部10bは、ピラーガーニッシュ9の後方壁部91aに設けられた開口部96に挿入される筒状の部分であり、その内側にある複数の吹出口10aを利用して流路S1と車室内側との間を連通する。ベゼル部10bは、図6に示されるように、全体的には、開口部96の内側に配されて後方壁部91aの厚み方向に沿って延びると共に、ピラーガーニッシュ9の長手方向に沿って縦長に延びた筒状(枠状)の部材からなる。筒状のベゼル部10bの一端は、ピラーガーニッシュ9の後方壁部91aから表側(車室内側)に露出されており、その他端は、ピラーガーニッシュ9の内側(空間S側、流路S1側)に配されている。
開口部96に挿入されたベゼル部10bの外周面と、第1開口縁部97aに備えられた凹凸部98との間には隙間があり、この隙間にピラーガーニッシュ9の後方壁部91a側に配されるダクト11の周端部11bが挿入される構成となっている。前記周端部11bは、その隙間を利用して位置規制されている。第1開口縁部97aが備える凹凸部98の内周部分には、空間S側に向かって切り立った立壁面98aが設けられている。本実施形態の場合、この立壁面98aとベゼル部10bの外周面との間にダクト11の周端部11bが挿入される隙間が形成され、そして立壁面98aと、ベゼル部10bの外周面との間で前記周端部11bが挟持される。なお、立壁面98aの高さ方向(空間S側に延びる高さ方向)における幅は、壁部91(後方壁部91a)の厚みよりも、大きく設定されている。つまり、凹凸部98に立壁面98aを設けることによって、第1開口縁部97aがダクト11の周端部11bと接触する面積が、第1開口縁部97aが折り曲げられていない状態の端面の面積と比べて、広くされている。そのため、ベゼル部10bの外周面との間で、ダクト11の周端部11bを挟持し易くなっており、前記周端部11bが前記隙間から抜け難くなっている。また、このような立壁面98aを含んだ凹凸部98は、立壁面98aを含まない場合と比べて全体的に大きくなり、結果的に、凹凸部98の剛性を高めるものとなる。
ベゼル部10bは、筒状の部分の他に、内側の空間を複数の吹出口10a毎に仕切るフィン部(案内部の一例)10dを備えている。フィン部10dは、図6に示されるように、ベゼル部10bの長手方向に沿って配される板状の縦フィン部10d1と、ベゼル部10bの短手方向に沿って配されつつ、縦フィン部10d1と交差する板状の横フィン部10d2とを備えている。本実施形態の場合、フィン部10dは、1つの縦フィン部10d1と、5つの横フィン部10d2とを備えている。その結果、ベゼル部10bの内側には、筒状のベゼル部10bの内壁面と共に前記フィン部10dによって、合計12個の吹出口10aが形成されている。
なお、ベゼル部10bに設けられた縦フィン部10d1は、図2等に示されるように、ピラーガーニッシュ9の内側(裏面側)から見て、後方壁部91aの壁面(フランジ部10c)に対して、車室内側から車室外側に向かうように傾斜している。また、横フィン部10d2は、ピラーガーニッシュ9の内側(裏面側)から見て、後方壁部91aの壁面(フランジ部10c)に対して、下方から上方に向かうように傾斜している。その結果、このように傾斜した縦フィン部10d1及び横フィン部10d2によって仕切られてなる吹出口10aは、後方壁部91aの壁面(フランジ部10c)に対して、車室内側から車室外側に向かうように傾斜した流路をなし、その吹出口10aから吹き出される空気は、フロントサイドガラス12側(車室外側)に向かうことになる。なお、本実施形態の場合、ベゼル部10bも、後方壁部91aの壁面(フランジ部10c)に対して、車室内側から車室外側に向かうように、全体的に傾斜した筒状をなしている。
フランジ部10cは、開口部96から車室内側に露出するベゼル部10bの端部周縁に設けられている。フランジ部10cは、開口部96の周縁を構成する開口縁部97に宛がわれる部分となっており、図2等に示されるように概ね扁平な板状をなしている。また、フランジ部10cは、表側から見た際、図6等に示されるように、全体的にはベゼル部10bの周りを囲む枠状をなしている。
フランジ部10cのうち、第1開口縁部97aに宛がわれる部分を、第1フランジ部(本発明のフランジ部の一例)10c1と称する。また、第2開口縁部97bに宛がわれる部分を、第2フランジ部10c2と称し、第3開口縁部97cに宛がわれる部分を、第3フランジ部10c3と称し、第4開口縁部97dに宛がわれる部分を、第4フランジ部10c4と称する。本実施形態の場合、図6に示されるように、フランジ部10cのうち、最も車室外側に配されている第1フランジ部10c1は、他のフランジ部と比べて、線幅が大きく設定されている。例えば、第1フランジ部10c1の線幅は、第2フランジ部10c2と比べて、約3倍の線幅に設定されている。
なお、第2フランジ部10c2が配される側のベゼル部10bの外壁部分には、外側(第2開口縁部97b)に向かって突出する複数の突起部10eが設けられている。この突起部10eと第2フランジ部10c2との間には隙間が設けられており、吹出部材10の取付時に、前記隙間に第2開口縁部97bが挿入される。そして、第2開口縁部97bは、第2フランジ部10c2と突起部10eとの間で挟み込まれる構成となっている。その際、第2開口縁部97bの表側は、第2フランジ部10c2の裏側に宛がわれた状態となる。
また、第3フランジ部10c3の裏側には、概ね上方に向かって突出する突起部10fが設けられている。この突起部10fと第3フランジ部10c3との間には隙間があり、吹出部材10の取付時に、前記隙間に第3開口縁部97cが挿入される。そして、第3開口縁部97cは、第3フランジ部10c3と突起部10fとの間で挟み込まれる構成となっている。その際、第3開口縁部97cの表側は、第3フランジ部10c3の裏側に宛がわれた状態となる。
また、第4フランジ部10c4の裏側には、概ね下方に向かって突出する突起部10gが設けられている。この突起部10gと第4フランジ部10c4との間には隙間があり、吹出部材10の取付時に、前記隙間に第4開口縁部97dが挿入される。そして、第4開口縁部97dは、第4フランジ部10c4と突起部10gとの間で挟み込まれる構成となっている。その際、第4開口縁部97dの裏側は、第4フランジ部10c4の裏側に宛がわれた状態となる。
オープニングトリム6は、上述したように、フロントピラー8における車両後方側の側端部8bに取り付けられている。オープニングトリム6は、全体的には、フロントピラー8の長手方向(延設方向)に沿って細長く延びた形状をなしており、フロントピラー8の側端部8bから、ピラーガーニッシュ9の側方(フロントサイドガラス12側)の端部(以下、側端部)91a1に跨る形で設けられている。このようなオープニングトリム6は、主として、側端部8bに車両後方側から取り付けられる本体部61と、この本体部61から車両内側に向かって延びつつ、ピラーガーニッシュ9の側端部91a1を車室内側から覆うリップ部62とを備えている。
本体部61は、全体的には、フロントピラー8の長手方向に沿って延びた形をなしており、フロントピラー8の側端部8bを挟み付ける形で前記側端部8bに取り付けられる挟持部61aと、この挟持部61aからフロントサイドガラス12側に膨出する弾性変形可能な中空状のシール部61bとを備えている。
挟持部61aは、図2に示されるように、略U字型の断面形状をなしており、側端部8bをその両面側から挟み付ける構成となっている。この挟持部61aの内部には、略U字型の断面形状をなした金属製の芯材61cが配されており、この芯材61cによって挟持部61aの剛性等が確保されている。なお、オープニングトリム6における芯材61c以外の部分は、柔軟性を有する弾性材料(例えば、エチレンプロピレンゴム等)から構成されている。
シール部61bは、ドア開口5がサイドドア(不図示)により閉塞されると、弾性圧縮された状態で、サイドドアとドア開口5(フロントピラー8の側端部8bを含む)との間に介在される。そして、このような状態のシール部61bによって、フロントピラー8とサイドドアとの隙間が遮蔽され、前記隙間から車室内に水等が侵入することが防止される。また、オープニングトリム6は、車室内の遮音性等を確保する機能も備えている。
リップ部62は、ピラーガーニッシュ9のフロントサイドガラス12側にある側端部91a1に密着する部分となっており、全体的には、ピラーガーニッシュ9の長手方向に沿って延びる帯状(長尺状、長手状)をなしている。リップ部62の断面形状は、図2に示されるように、車両後方側に若干、膨らんだ円弧状をなしている。リップ部62は、リップ部62自身が備える弾性力により、ピラーガーニッシュ9の後方壁部91aの側端部91a1に密着している。
なお、リップ部62の一部62aは、図2等に示されるように、ピラーガーニッシュ9の側端部91a1にある第1開口縁部97aとの間で、吹出部材10の第1フランジ部10c1を挟み付ける構成となっている。要するに、本実施形態の吹出部材固定構造1は、吹出部材10を、オープニングトリム6のリップ部62を利用して、ピラーガーニッシュ9の開口部96に固定する構成となっている。なお、上述のリップ部62の一部62aを、特に、フランジ接触部62aと称する場合がある。
続いて、吹出部材固定構造1における吹出部材10が、オープニングトリム6を利用してピラーガーニッシュ9に固定される手順を説明する。
先ず、フロントピラー8に取り付けられる前の状態におけるピラーガーニッシュ9の裏側には、予めダクト11が上述の方法で取り付けられる。
続いて、ダクト11が取り付けられたピラーガーニッシュ9の開口部96に、吹出部材10が取り付けられる。より詳細には、ピラーガーニッシュ9の後方壁部91aに設けられている開口部96に、吹出部材10が備える筒状のベゼル部10bが挿入される。その際、ベゼル部10bの周縁に設けられているフランジ部10cのうち、第2フランジ部10c2は、上述した突起部10eとの間にある隙間に第2開口縁部97bを挿入させる形で、前記第2開口縁部97bに取り付けられる。また、前記フランジ部10cのうち、第3フランジ部10c3は、上述した突起部10fとの間にある隙間に第3開口縁部97cを挿入させる形で、前記第3開口縁部97cに取り付けられる。また、前記フランジ部10cのうち、第4フランジ部10c4は、上述した突起部10gとの間にある隙間に第4開口縁部97dを挿入させる形で、第4開口縁部97dに取り付けられる。
そして、前記フランジ部10cのうち、残りの第1フランジ部10c1は、フロントサイドガラス12側に配されている第1開口縁部97a上に重ねられる。このようにして、フランジ部10cが開口縁部97に宛がわれつつ、ベゼル部10bが開口縁部97内に嵌め込まれる形で、吹出部材10が開口部96に対して取り付けられる。なお、この吹出部材10は、第1フランジ部10c1が第1開口縁部97aに対して固定されていないため、仮固定の状態となっている。
次いで、上述のようにダクト11及び吹出部材10がそれぞれ所定個所に取り付けられた状態のピラーガーニッシュ9が、フロントピラー8の車室側を覆う形でフロントピラー8に上述のクリップ(不図示)等を利用して取り付けられる。
その後、フロントピラー8における車両後方側の側端部8bにオープニングトリム6が取り付けられる。その際、シール部61bがフロントサイドガラス12側に配されると共にリップ部62がピラーガーニッシュ9の側端部91a1に密着する形で、オープニングトリム6の本体部61(挟持部61a)が、車両後方側から側端部8bに取り付けられる。すると、リップ部62のフランジ接触部62aが、ピラーガーニッシュ9の側端部91a1にある第1開口縁部97aとの間で、吹出部材10の第1フランジ部10c1を挟み付ける形となる。
このようにして、第1フランジ部10c1がオープニングトリム6のリップ部62(フランジ接触部62a)を利用して第1開口縁部97aに固定されることにより、吹出部材10がピラーガーニッシュ9の開口部96に対して確実に固定される。
なお、図5及び図6において、ピラーガーニッシュ9の長手方向に沿って配されている一点鎖線Xよりも外側(フロントサイドガラス12側)にある部分が側端部91a1となっており、この側端部91a1を表側から覆うようにリップ部62が配される。そのため、本実施形態の場合、リップ部62によって覆われるピラーガーニッシュ9の部分が、壁部91(後方壁部91a)の側端部91a1に対応している。
以上の手順により、吹出部材10がオープニングトリム6を利用してピラーガーニッシュ9に固定される。
以上のように、本実施形態の吹出部材固定構造1は、上記構成を備えることにより、例えば、第1開口縁部97aの剛性が低い場合であっても、第1フランジ部10c1を第1開口縁部97aとオープニングトリム6のリップ部62(フランジ接触部62a)との間で挟持することによって、ベゼル部10bを開口部96に挿入した状態で、吹出部材10をピラーガーニッシュ9に対して固定することができる。
近年、デザイン性の向上や、運転者の視野確保等の目的で、フロントピラー8等のピラーの幅が、従来品と比べて、細く設定される傾向がある。そのため、ピラーに取り付けられるピラーガーニッシュの幅も、従来品と比べて、細型化されており、吹出部材10を取り付けるスペースを確保することが従来と比べて、難しくなっている。しかしながら、本実施形態の吹出部材固定構造1は、フロントピラー8の側端部8bに沿って取り付けられ、かつピラーガーニッシュ9の車両後方側の側端部91a1に沿って配されているオープニングトリム6を利用して、吹出部材10を固定する構造を採用しているため、細型化されたピラーガーニッシュ9に設けられた開口部96及び開口縁部97に対しても、吹出部材10を確実に固定することができる。その結果、吹出口10aを、ピラーガーニッシュ9の側端部91a1に近接させた状態(つまり、その側端部91a1を覆うオープニングトリム6に近接させた状態)で、吹出部材10を、ピラーガーニッシュ9に取り付けることが可能となる。
また、本実施形態の吹出部材固定構造1では、ベゼル部10bのフロントサイドガラス12側の周縁に、従来の爪嵌合に用いられる爪形状等の突起部を設ける必要がないため、ベゼル部10bの周縁に延設された第1フランジ部10c1を取り付けるために利用される第1開口縁部97aのスペースを確保し易い。
また、本実施形態の吹出部材固定構造1において、第1開口縁部97aは、開口部96の周縁に沿って延びる凹凸部98を含む構成となっている。このように第1開口縁部97aが、開口部96の周縁に沿って延びる凹凸部98を含むことにより、第1開口縁部97aの剛性を向上させることができる。
また、本実施形態の吹出部材固定構造1は、空間Sに配され、壁部91との間で吹出部材10に空気を供給する流路S1を形成するダクト11を備え、凹凸部98は、開口部96に挿入されたベゼル部10bとの間で、ダクト11の周端部11bを収容できるように、空間S側に切り立った立壁面98aを含む構成となっている。このような構成を備えることにより、本実施形態の吹出部材固定構造1では、第1開口縁部97aが更に補強されつつ、ダクト11の周端部11bの位置規制を行うことができる。
また、本実施形態の吹出部材固定構造1において、吹出口10aは、側端部91a1よりも側方に配されるフロントサイドガラス(サイドガラス)12に向けて空気を吹き出させるように空気を案内するフィン部(案内部)10dを有し、オープニングトリム6に隣接して配される構成となっている。このような吹出口10aを有する吹出部材10は、上述したように、サイドデフロスタ用の空調装置の一構成部品として利用される。
なお、前記「オープニングトリム6に隣接」とは、例えば、吹出口10aとリップ部62との間隔が、実質的に無い状態(つまり、互いの縁が重なるぐらい近接した状態)から、第2フランジ部10c2を取り付けるために最低限必要な第2開口縁部97bの幅に相当する間隔まで、適宜、設定することができる。なお、他の実施形態においては、吹出口10aとリップ部62との間隔は、前記第2開口縁部97bの幅に相当する間隔よりも、適宜、大きく設定してもよい。
<実施形態2>
次いで、本発明の実施形態2を、図7を参照しつつ説明する。図7は、実施形態2に係る吹出部材固定構造1Aの断面図である。図7に示される本実施形態の吹出部材固定構造1Aは、図2に示される実施形態1の吹出部材固定構造1に対応している。なお、実施形態1と同じ部分については、実施形態1と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態の吹出部材固定構造1Aは、ピラーガーニッシュ9Aに設けられた第1開口縁部97Aaが備える凹凸部98Aの形状が、実施形態1のものと異なっている。凹凸部98Aは、実施形態1と同様、第1開口縁部97Aaの剛性を高める等の目的で、第1開口縁部97Aaに設けられている。ただし、図7に示されるように、凹凸部98Aは、実施形態1の凹凸部98と比べて、溝部99Aが空間S側に配されるように逆向きに形成されている。そのため、オープニングトリム6のリップ部62(フランジ接触部62a)との間で第1フランジ部10c1を挟む第1開口縁部97Aaの部分が、平坦な面状となっており、溝部99Aの反対側に配置される構成となっている。
なお、凹凸部98Aの内周部分にも、実施形態1と同様、空間S側に向かって切り立った立壁面98Aaが設けられており、この立壁面98Aaと、ベゼル部10bの外周面との間でダクト11の周端部11bが挟持される構成となっている。
本実施形態のように、溝部99Aが空間S側に配されるように、コの字状に折り曲げられた断面形状を有する凹凸部98Aを、剛性を向上させる等の目的で、第1開口縁部97Aaに適宜、設けてもよい。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、フロントピラー8における吹出部材固定構造1,1Aを例示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、車両のセンターピラー(Bピラー)等の他のピラーに、本発明の吹出部材固定構造を適用してもよい。また、吹出部材10のピラーガーニッシュ9における固定個所は、上記実施形態のようにピラーガーニッシュ9の車両後方側に配される形であってもよいし、ピラーガーニッシュ9の車両前方側に配される形であってもよく、目的に応じて、適宜設定される。
(2)上記実施形態では、サイドデフロスタ用の吹出部材10を固定する構造(吹出部材固定構造1,1A)を例示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、車両内の乗員に向けて、空気を送る送風装置(空調装置)の吹出部材(送風部材)をピラーガーニッシュに固定する際に、本発明の吹出部材固定構造を適用してもよい。
(3)上記実施形態では、吹出口10aから吹き出される空気がフロントサイドガラス12に当たるように、フィン部10dの形状、傾き等が調節されていたが、本発明はこれに限られるものではなく、目的(用途)に応じて、吹出口10aから吹き出される空気の向きを設定することができる。
(4)上記実施形態では、ピラーガーニッシュ9の下方部分に、吹出部材10が取り付けられる構成であったが、本発明はこれに限られるものでなく、吹出部材10のピラーガーニッシュ9の長手方向に対する取付個所(固定個所)は、目的(用途)に応じて、適宜、設定することができる。
(5)上記実施形態では、フランジ部10cのうち、最も車室外側に配されている第1フランジ部10c1は、他のフランジ部と比べて、線幅が大きく設定されていたが、本発明はこれに限られず、本発明の目的を達成できる範囲において、第1フランジ部10c1の線幅は適宜、設定することができる。例えば、第1フランジ部10c1の線幅を、第2フランジ部10c2の線幅と同程度に設定してもよい。第1フランジ部10c1の線幅は、オープニングトリム6のリップ部62と、第1開口縁部97aとの間で第1フランジ部10c1を確実に挟持できるのであれば、特に制限はない。
(6)上記実施形態では、第1開口縁部97a,97Aaにおいて、それぞれ補強等を目的として、凹凸部98,98Aが設けられていたが、本発明はこれに限られない。例えば、開口部96の配置個所や、ピラーガーニッシュ9の壁部91に利用される材料等によっては、吹出部材10を取り付けるために必要な剛性が第1開口縁部に確保されている場合もある。このような場合等では、第1開口縁部に、凹凸部98,98Aを設けなくてもよい。
(7)上記実施形態では、第1開口縁部97a,97Aaが備える凹凸部98,98Aの内周部分に設けられた立壁面98a,98Aaと、ベゼル部10bの外周面との間でダクト11の周端部11bが挟持された状態で、位置規制されていたが本発明はこれに限られない。例えば、立壁面98a,98Aaと、ベゼル部10bの外周面との間にある隙間に、ダクト11の周端部11bを挿入しただけの状態で、前記周端部11bの位置規制を行ってもよい。ただし、ダクト11の周端部11bを抜け止めして、確実に位置規制する等の観点からは、上記実施形態のように、ダクト11の周端部11bは、立壁面98a,98Aaと、ベゼル部10bの外周面との間で挟持されることが好ましい。