以下、本発明に係る実施の形態の例につき、適宜図面に基づいて説明する。なお、当該形態は、下記の例に限定されない。
[第1形態]
図1は第1形態に係る加熱冷却装置1の模式図であって、加熱冷却装置1は、加熱負荷(加熱対象)と冷却負荷(冷却対象)が共に存在し得る工場等に設置されている。
加熱冷却装置1は、加熱負荷Hに対する加熱及び冷却負荷Cに対する冷却を一括して行う排熱回収型のヒートポンプ10を備えている。ヒートポンプ10は、冷水を生成しながらその際発生する排熱を利用して温水を同時に生成しそれぞれ外部に供給するものであり、例えば7度〜30度程度の冷水と40度〜70度程度の温水を同時に供給可能である近時開発されたもの(株式会社神戸製鋼所製高効率高温取出機HEM150HR)を用いる。ヒートポンプ10は、温冷水が同時に供給され十分に吸熱されて戻り再度温冷水とされる特性上、温冷水のバランスをとる必要があり、高温水を多量に取り出すには、高温水の熱が十分に対象へ吸収されて戻り、又低温水も多量に取り出された上で十分に熱を受けて戻る必要がある。なお、ヒートポンプ10として、最高90度の温水を供給可能であるものや、30度の冷水(排温水)で95度の温水を供給可能なもの等を用いても良い。又、このような変更例は、他の実施形態や実施例においても適用することができる。
ヒートポンプ10は、加熱負荷Hに加熱媒体としての温水を供給するパイプ12を有すると共に、冷却負荷Cに冷却媒体としての冷水を供給するパイプ16を有する。又、加熱負荷Hから温水をヒートポンプ10に戻すパイプ22を有すると共に、冷却負荷Cから冷水をヒートポンプ10に戻すパイプ26を有する。なお、各パイプには、図示しない熱交換機やタンクが介装されることがある。又、パイプの配置等を適宜変更して良い。
そして、加熱冷却装置1は、ここでは工場に属する熱あるいは冷却側加熱媒体としての工場排熱X(工場に属する排熱)を生ずる工場に設置されている。工場排熱Xとして、排温水、補給水、排気、排ガス、機器の放熱、ワークの放熱、空調の排熱(冷却水)又はコージェネレーションの排熱の内の少なくとも何れか、あるいは各種機器からの放熱(ファンコイル等で熱回収)や作動油からの熱、又は乾燥後等におけるワークの放熱や、温水洗浄により加温された製品をその後工程である水洗工程で水洗した場合の水洗水に移った熱、あるいは工場空調から生じた排熱(冷水戻り)、ないしこれらの組合せを例示することができる。
更に、加熱冷却装置1における冷却負荷Cからヒートポンプ10へのパイプ26には、熱交換機30が設置され、この熱交換機30には、工場排熱Xを導入するパイプ32と、熱交換後の工場排熱Xを導出するパイプ34とが接続されている。パイプ32には、冷却側加熱量調節手段あるいは流量調節手段としての流量調節弁36が設けられる。なお、冷却側加熱量調節手段あるいは流量調節手段として、流量調節弁36の他、吐出量を調整するポンプやインバーター、あるいはこれらの組合せ等を採用しても良い。
又、加熱負荷Hにおいては、他熱源Z(蒸気、電気ヒーターや空冷ヒートポンプあるいはこれらの組合せ等)を導入可能な他熱源熱交換機42が配置されており、他熱源Zによっても加温可能とされている。他熱源Zと他熱源熱交換機42を結ぶパイプ46には、加熱量を調節可能な他熱源加熱量調整手段としての流量調節弁48が配置されている。
加えて、加熱側の戻りのパイプ22と、冷却側の戻りのパイプ26(冷却側加温用の熱交換機30よりヒートポンプ10寄り)には、順にポンプ50,52が設置されている。又、パイプ26内の戻り冷水の温度(熱量)を検知する冷熱温度センサとしての冷水温度センサ54が設置されており、冷水温度センサ54は、加熱冷却装置1を制御する図示しない自動制御装置を介してヒートポンプ10に電気的に接続されている。自動制御装置は、ヒートポンプ10の制御手段や各種機器の制御手段と共通であっても良いし、別体のコンピュータであっても良いし、これらの組合せであっても良い。又、冷水温度センサ54は、冷水の温度を測定すれば良く、供給側のパイプ16(冷熱供給温度の測定)や図示しない冷水タンク(冷水タンク温度の測定)に配置して良いし、これらを組合せて配置しても良い。
ポンプ50,52は、自動制御装置によりインバーター制御され、温水あるいは冷水の流量を調整する(戻り温熱量調節手段・戻り温水流量調節手段,戻り冷熱量調節手段・戻り冷水流量調節手段)。
このような加熱冷却装置1は、次に説明するように動作する。
例えば加熱負荷Hが併せて800kW(キロワット)であり、冷却負荷Cが300kWであったとする。この場合、ヒートポンプ10からは温水800kWの供給が必要であるが、この供給のため電気入力に200kWを要し、又冷水600kWが同時に供給される。温水800kWはパイプ12を通じ加熱負荷Hに対して供給され、加熱対象を必要十分に加熱し、温度低下のうえでパイプ22からヒートポンプ10に循環する。一方、冷水600kWはパイプ16を通じ冷却負荷Cに対して供給され、冷却対象を十分に冷却するが、なお300kWの冷却が可能な状態でパイプ26に入る。そして、この冷水は熱交換機30内で工場排熱Xのパイプ32の周囲に達し、熱交換機30の作用によって工場排熱Xの熱を300kW分奪い、加温された状態でヒートポンプ10に循環する。このような熱交換により工場排熱Xも冷却される。
又、加熱負荷Hや冷却負荷Cの変動には、ヒートポンプ10や流量調節弁36の調整によって対処する。これらの調整は、パイプ26のヒートポンプ10接続部付近の温度(冷水戻り温度)を検知する冷水温度センサ54や、パイプ22のヒートポンプ10接続部付近の温度(温水戻り温度)を把握するセンサと接続された自動制御装置により自動的に行われる。なお、各種温度センサは、他のパイプ(パイプ16,34等)や熱交換機30、冷水タンクの少なくとも何れかに配して良いし、パイプ26の冷却負荷C側に配して良い。更に、温度センサは、ヒートポンプ10の温水負荷追従運転に具備されたものとする代わりに、冷水負荷追従運転では加熱負荷H側に配しても良い。
即ち、図2に示すように、加熱負荷Hを基準に温水に追従するように冷水を出し排温水の熱を回収する運転を許可していると自動制御装置がパイプ26の冷水温度センサ54を監視する(ステップS1でYes)。この監視において、冷水戻り温度が設定値を下回ると(ステップS2でYes)、冷却負荷Cが比較的に軽くなっているので、パイプ26の冷水温度が設定値に上がるまで流量調節弁36を徐々に開放する(ステップS3〜S5)。一方、冷水戻り温度が設定値を上回ると(ステップS2でNo、ステップS6でYes)、冷却負荷Cが比較的に重くなっているので、パイプ26の冷水温度が設定値に下がるまで流量調節弁36を徐々に絞る(ステップS7〜S9)。
例えば、夏季等で加熱負荷Hが比較的に軽い(600kW)場合、自動制御装置はパイプ22の温度センサによる温度上昇によってこれを把握し、ヒートポンプ10から出る温水の熱量を少なくする(600kW)。又、これに応じて冷水の熱量が減ると(450kW)、上述のように流量調節弁36が絞られて排温水との熱交換量(150kW)が相応に減らされる。
一方、冬季等で加熱負荷Hが比較的に重い場合、自動制御装置はパイプ22の温度センサによる所定値からの温度不足によってこれを把握し、ヒートポンプ10から出る温水の熱量を増やし、これに応じて冷水の熱量も増えるので、上述のように流量調節弁36を開放して熱交換機30の熱交換の量を増やす。
なお、加熱負荷Hとヒートポンプ10の温水との熱交換量を調整する図示しない加熱側調節弁(三方弁)と、冷却負荷Cとヒートポンプ10の冷水との熱交換量を調整する冷却側調節弁(三方弁)により、必要な温冷水をそれぞれ供給する。又は、自動制御装置は、温熱追従運転においてポンプ50に対してインバーター制御を行うことで、脱脂槽2及び化成槽4の加熱負荷H(加温負荷,温熱負荷)に応じた温水(60度)を、パイプ12を介して供給し、パイプ22を介してヒートポンプ10へ戻す。又、自動制御装置は、ポンプ52に対してインバーター制御を行うことで、冷却負荷C(冷熱負荷)に応じた冷水(7度)を、パイプ16を介して供給し、パイプ26を介してヒートポンプ10へ戻しても良い。
自動制御装置は、流量調節弁36の開度を調整することで工場排熱Xの排熱の冷水に対する熱交換量を調整する(冷却側加熱量調節手段)。冷水を工場排熱Xにより適宜加温することにより、次のような事態を防止することができる。即ち、加熱負荷Hが比較的に高い場合に、必要な温熱を生成することで同時に生成される冷熱が冷却負荷Cに対して過剰となり、そのままではいずれ冷水が過冷却となって温熱に対する冷熱のバランスが崩れてしまい、ヒートポンプ10が非常停止して運転が継続されない事態を防止する。
更に、自動制御装置は、工場排熱Xが所定値以下であり、排熱が不足すると判断した場合に、温水の流量(ヒートポンプ10へ戻る熱量)につき、冷水温度センサ54により把握した戻り冷水温度に応じ、ポンプ50を絞って調整し、温水加熱量を減少することで、冷却負荷Cに対応しつつ戻り冷水の温度を上昇する(温熱追従運転,加熱負荷量調節手段)。温熱は冷却負荷Cに見合った冷水の生成に応じてヒートポンプ10により供給される一方、ヒートポンプ10へ戻る冷水における過度の温度低下が防止され、ヒートポンプ10の運転は継続される。この場合において加熱負荷Hに対してヒートポンプ10の供給する温水の熱量が不足するときには、自動制御装置は流量調節弁48を制御することで加温対象の他熱源熱交換機42に蒸気等を導入し他熱源Zを作動させ、不足する温熱をバックアップする。なお、自動制御装置は、工場排熱Xが特定値(所定値と同じでも良い)以上となると、工場排熱Xを冷水に適用した温熱追従運転に復帰する。
以上の加熱冷却装置1は、工場排熱Xを生ずる工場に設置されており、加熱負荷Hに対応するための加熱媒体を加熱すると共に、冷却負荷Cに対応するための冷却媒体を冷却するヒートポンプ10と、冷却媒体を工場排熱Xにより加熱する冷却媒体加熱機としての熱交換機30とを備えている。
従って、加熱負荷Hに合わせてヒートポンプ10を作動させようとするが、冷却負荷Cが軽すぎて冷水が規定温度に上がらず、温水と冷水のバランスがとれずにヒートポンプ10が停止してしまう事態を回避することができ、加熱ないし冷却をひとつのヒートポンプ10で賄うことができる。
なお、工場排熱Xを加熱に用いる方式が考えられなくもないが、温度が低く有効に加熱することができない。これに対し、加熱冷却装置1では、温度の低い冷水に対して冷却側加熱媒体としての工場排熱Xを適用するので、有効に工場排熱Xを利用することができる。
更に、加熱冷却装置1は、工場排熱Xを生ずる工場に設置されており、加熱負荷Hを加熱するパイプ12,22内の加熱媒体(温水)を加熱すると共に、冷却負荷Cを冷却するパイプ16,26内の冷却媒体(冷水)を冷却するヒートポンプ10と、加熱媒体のヒートポンプ10への加熱負荷量を調節するポンプ50と、冷却媒体がヒートポンプ10へ戻る際の温度である冷熱戻り温度を検知する冷水温度センサ54と、加熱媒体の加熱を補助する他熱源Zと、冷水温度センサ54及び他熱源Zと接続され、冷水温度センサ54から得た冷熱戻り温度に応じてポンプ50における加熱負荷量を制御すると共に、他熱源Zによる加熱供給量を調整する自動制御装置を備えている。なお、ポンプ50の流量調節による熱量調整に代えて、パイプ12からパイプ22(ポンプ50の入口)へ戻すバイパス回路を設置し、当該バイパス回路に調節弁を設け、加熱負荷Hとの熱交換量を当該調節弁で調整する(バイパス量を増やすと温水と加熱負荷Hとの熱交換量が減り温水温度が下がらずにヒートポンプ10へ戻る)ことで、ヒートポンプ10の出力を下げ、冷水温度の低下を防止することも可能である。なお、温水タンクの温度が設定温度より低い場合は、他熱源Zでバックアップする制御は排熱回収型ヒートポンプを運転させるのに効果的である。即ち、排熱回収型ヒートポンプは、冷水供給温度により温水の供給上限温度と下限温度が決まっている。例として、冷水15度供給時は、温水の供給温度は32度以上としないと運転が出来ない。また機器によっては、温水温度が低い場合ウォーミング運転となり温水温度が上昇するまで標準運転ができず生産ラインの立ち上げに時間を要する。
従って、加熱負荷Hに合わせてヒートポンプ10を作動させようとするが、冷却負荷Cが軽すぎで冷水が冷え過ぎ、温水と冷水のバランスが取れずにヒートポンプ10が停止してしまう事態を回避することができ、加熱ないし冷却につき極めて効率の良い運転が可能で運転に際する二酸化炭素排出量も少ない一つのヒートポンプ10でまかなうことができる。そして、他熱源Zを備えているため、ヒートポンプ10による加熱媒体の加熱が変動したり、ヒートポンプ10の冷却媒体の加熱が不足する中バランスを取り運転を継続するために加熱媒体の加熱が不足しても、他熱源Zでバックアップすることができ、動作の安定を図ることができるし、ヒートポンプ10の加熱能力を抑えて初期導入費用やランニングコストを低減することができる。更に、ポンプ50により加熱負荷量を調整するという比較的に簡易な作動方式により、加熱負荷Hや冷却負荷Cに順応する加熱や冷却を効果的に制御することが可能となっている。
加えて、工場排熱Xの熱交換機30への流量を調節する流量調節弁36と、パイプ26内の冷却媒体がヒートポンプ10へ戻る際の温度である冷水戻り温度を検知する冷水温度センサ54とを更に備えており、自動制御装置は、冷水温度センサ54と接続され、冷水戻り温度に応じて流量調節弁36の開度を制御して流量調節弁36における流量を制御する。なお、冷水温度センサー54により把握する温度につき、冷水戻り温度に代えて、又はこれと共に、冷水タンクを設置した場合の冷水タンクの温度や、冷水供給温度として良い。
従って、ヒートポンプ10にとって適した冷却媒体の戻り温度ないし熱量となるように、工場排熱Xとの熱交換量を自動的に調整することができ、効率の良い加熱ないし冷却を自動的に行うことができる。なお、流量調整につき、ポンプによるものに代えて、ポンプの出口に流量調節弁を設けるものとしても良い。又、ヒートポンプ10の温水出口からポンプ50の入口に戻すバイパス回路を設けバイパス流量を調整することで、ヒートポンプ10への加熱負荷を調整しても良いし、ヒートポンプ10の冷水出口からポンプ52の入口に戻すバイパス回路を設けバイパス流量を調整することで、ヒートポンプ10への冷却負荷を調整しても良い。
[第2形態]
図3は第2形態に係る加熱冷却装置101の模式図であって、加熱冷却装置101は、冷却負荷Cとヒートポンプ10の間の構成以外は第1形態と同様である。
加熱冷却装置101は、パイプ16に流量調節弁102を有すると共に、パイプ16,26を結ぶ熱交換機104を備える。熱交換機104には、冷却負荷Cの冷却部からのパイプ116が導入されるとともに、熱交換後の冷却水を冷却負荷Cの冷却部へ導出するパイプ126が配置されている。パイプ126には、熱交換機130が介装され、熱交換機130には、冷却側冷却機(冷却装置)としての冷水チラー131からのパイプ132と、冷水チラー131へ戻るパイプ134とが接続されている。又、パイプ132には、流量調節弁136が介装されている。なお、冷却側冷却機として、クーリングタワーを用いても良い。
加熱冷却装置101の自動制御装置は、パイプ26の冷水温度センサ54の監視に応じて工場排熱Xの流量調節弁36あるいは流量調節弁102を開閉可能であり、パイプ126の図示しない温度センサの監視に応じて流量調節弁102を開閉可能である。なお、パイプ126の温度センサは、熱交換機104側に設けても良いし、冷却負荷C側に設けても良い。
このような加熱冷却装置101は、次に説明するように動作する。
加熱冷却装置101では、ヒートポンプ10の他に冷水チラー131が設けられると共に、それぞれに冷却負荷Cに対するパイプ回路、熱交換機30,130及び温度センサが設けられ、ヒートポンプ10の冷水が優先的に冷却負荷Cに適用され、その後冷水チラー131の冷水が冷却負荷Cに適用される。
加熱冷却装置101の自動制御装置は、第1形態と同様に流量調節弁36,102を制御してヒートポンプ10への冷水の戻り温度(熱量)を制御すると共に、図4に示すように、流量調節弁136を制御してパイプ126の冷却負荷C側の冷水温度を制御する。
即ち、自動制御装置は、冷却負荷Cに対する冷却運転中であれば(ステップS101でYes)、パイプ126における冷水戻り温度を温度センサにより把握し、当該温度が設定値未満であれば(ステップS102でYes)、流量調節弁136を徐々に絞り(ステップS103〜S105)、冷水チラー131による冷却量を減らして当該温度が設定値に近づくようにする。
一方、冷水戻り温度が設定値を上回れば(ステップS102でNo、S106でYes)、流量調節弁136を徐々に開放し(ステップS107〜S109)、冷水チラー131による冷却量を増やして当該温度が設定値に近づくようにする。
例えば、加熱負荷Hの加温のためヒートポンプ10はパイプ12に70度の温水を供給し、加熱後パイプ22から65度で戻っている一方、冷水がパイプ16において20度で供給され、熱交換機104,30を経て25度で戻っているとすると、パイプ116で冷却水は29度であるが、熱交換機104を介したヒートポンプ10の冷水の適用により当該冷水が冷却され、更に熱交換機130を介した冷水チラー131の冷水の適用により当該冷水が冷却されて、27度となり冷却負荷Cに戻り、冷却対象が28度±1度の範囲に保持される。このとき、ヒートポンプ10の冷水を優先して冷却対象の冷水に適用すると共に、ヒートポンプ10による温水の効率良い供給のため冷水を工場排熱Xで加温することで、ヒートポンプ10の効率につき優先的に配慮した状態での運転がなされる。又、最終的に冷却対象の冷水は冷水チラー131の冷水により冷却度合を調整され、冷却対象の温度を適正な範囲に保持する。
以上の加熱冷却装置101では、工場排熱Xを生ずる工場に設置されており、冷却負荷Cを冷却するパイプ116,126内の第1冷却媒体と、加熱負荷Hを加熱する加熱媒体を加熱すると共に、第1冷却媒体を冷却するパイプ16,26内の第2冷却媒体を(熱交換機104を介して)冷却するヒートポンプ10と、第1冷却媒体をパイプ132内の第3冷却媒体により(熱交換機130を介して)冷却する冷水チラー131と、第2冷却媒体を工場排熱Xにより加熱する熱交換機30とを備えている。
従って、ヒートポンプ10側と冷水チラー131側とで個別に冷水温度を設定することができ、ヒートポンプ10の冷水をまず優先して適用し、補助的に冷水チラー131の冷水を適用することで、ヒートポンプ10にとって効率の良い状態での運転を確保することができる。又、加熱・冷却を個別に行っていた従来の加熱冷却装置からの置き換えの際余る冷水チラーを、前述のきめ細かい冷却制御のために有効活用することができる。
又、工場排熱Xの熱交換機30への流量を調節する第1の流量調節弁36と、パイプ26内の第2冷却媒体がヒートポンプ10へ戻る際の温度である冷水戻り温度を検知する冷水温度センサ54と、冷水チラー131からのパイプ132内の第3冷却媒体の流量を調節する第2の流量調節弁136と、冷水温度センサ54と接続され、冷水戻り温度に応じて第1の流量調節弁36及び第2の流量調節弁136の開度を制御して第1の流量調節弁36及び第2の流量調節弁136における流量を制御する自動制御装置とを更に備えている。
従って、ヒートポンプ10にとって適した冷却媒体の戻り温度ないし熱量となるように、工場排熱Xとの熱交換量を自動的に調整することができ、更に冷水チラー131による第1冷却媒体の調整的な冷却を実現して、ヒートポンプ10の運転を極めて効率の良い安定したものとしながら冷却対象の確実な冷却を図ることができる。
[第3形態]
図5は第3形態に係る加熱冷却装置の動作を示すフローチャートであって、当該加熱冷却装置の構成は、第2形態の加熱冷却装置101と同様であり、流量調節弁136の制御のみ相違する(図4に示す制御が図5に示す制御に代わる)。
即ち、自動制御装置は、温水追従熱回収モードで運転中であれば(ステップS151でYes)、流量調節弁136の開度が上側設定値(例えば70%)を上回るかを判定し(ステップS152)、上回れば(Yes)、冷水温度センサ54により把握したヒートポンプ10の冷水戻り温度が下限値(例えば17度)を上回るか否か判定する(ステップS153)。下限値を上回れば(Yes)、流量調節弁136を開度65%以下となるまでヒートポンプ10の冷水供給温度を下げ、冷水チラー131の冷水量を減らす(ステップS154〜S157)。自動制御装置は、ヒートポンプ10の冷水戻り温度が下限設定値を上回る限り、流量調節弁136を徐々に絞るように動作させる(ステップS156)。
一方、自動制御装置は、ステップS152で流量調節弁136の開度が上側設定値を上回らない(No)と判定すると、流量調節弁136の開度が下側設定値(例えば40%)未満であるかを判定し(ステップS158)、下側設定値未満であれば(Yes)、ヒートポンプ10の冷水戻り温度が上限値(例えば35度)未満か否か判定する(ステップS159)。上限値未満であれば、流量調節弁136を開度55%以上となるまで徐々にヒートポンプ10の冷水温度を上げ、冷水チラー131の冷却量を増やす(ステップS160〜S163)。自動制御装置は、ヒートポンプ10の冷水戻り温度が上限設定値未満である限り、流量調節弁136を徐放する(ステップS162)。
以上の第3形態の加熱冷却装置は、第2形態と同様に成り、特にヒートポンプ10の冷水戻り温度を用いて流量調節弁36のみならず流量調節弁136をも制御している。
従って、第2形態の加熱冷却装置101と同様の効果を奏し、特にヒートポンプ10の運転状態(冷水戻り温度)に応じて冷水チラー131の冷却水に係る流量調節弁136の開度を制御して、冷却負荷Cを確実に冷却しながら、ヒートポンプ10の良好な状態(冷水戻り温度が適正な範囲となる状態)を冷水チラー131の流量調節弁136の調整により自動的に確保することができる。
[第4形態]
第4形態に係る加熱冷却装置は、第2形態・第3形態と同様に成るが、冷水チラー131に余力がある場合に、ヒートポンプ10をより効率の良い運転に切り替える動作が異なる。
即ち、自動制御装置は、流量調節弁136の開度が所定値(例えば40%、以下同様)以下であり、冷却媒体戻り温度が所定範囲(28度±1度)内に収まっている状態が所定時間(30分間以上)継続していることを把握すると、ヒートポンプ10の冷水温度が上昇するように(15度から20度)制御し、ヒートポンプ10の加熱能力やCOP(Coefficient of Performance、効率)が上昇するようにする(加熱能力373kWから426kW、COP2.94から3.37)。このとき、例えば冷却対象の冷却ないし工場排熱Xの調整された適用を経て20度でヒートポンプ10へ戻っていたのが、25度で戻るようになる。又、ヒートポンプ10の冷水温度が上昇し、ヒートポンプ10の効率が良くなるものの冷却対象の冷却度合が低下するので、その分流量調節弁136の開度を上げて(60%)、冷水戻り温度がなお所定範囲に収まるように制御する。
以上の第4形態の加熱冷却装置は、第2形態や第3形態と同様に成り、特に自動制御装置は、冷水チラー131に余力がある場合に、ヒートポンプ10につき冷水供給温度(第2冷却媒体の冷却後の温度)を上げる制御を行う。
従って、第2形態や第3形態と同様の効果を奏し、特にヒートポンプ10につき一層効率良く温水を送出する運転となるよう状況に応じて切り替えることができて、加熱冷却装置の冷却・加熱性能を十分なものとしながら、全体の効率を良好なものとすることができる。
[第5形態]
図6に示すように、第5形態に係る加熱冷却装置201は、第1形態に対しヒートポンプを1台追加して複数としたものとなっている。
即ち、ヒートポンプ210,211が設置されており、ヒートポンプ210から加熱負荷Hに対して温水供給用のパイプ212が配置されると共に、ヒートポンプ211から冷却負荷Cに対して温水供給用のパイプ214が配置される。又、加熱負荷Hからヒートポンプ210へ至る温水戻り用のパイプ222が配置されると共に、加熱負荷Hからヒートポンプ211へ至る温水戻り用のパイプ224が配置される。
更に、ヒートポンプ210から冷却負荷Cに対して冷水供給用のパイプ216が配され、ヒートポンプ211から冷却負荷Cに対して冷水供給用のパイプ217が配される。又、冷却負荷Cからヒートポンプ210に対して冷水戻り用のパイプ226が配され、冷却負荷Cからヒートポンプ211に対して冷水戻り用のパイプ227が配される。そして、パイプ226には、工場排熱X案内用のパイプ32に対して熱交換をする熱交換機230が設けられ、パイプ227には、パイプ32と同様に設けられた別系統に係る工場排熱X案内用のパイプ232に対して熱交換をする熱交換機231が設けられる。なお、パイプ32から熱交換機230を経た工場排熱Xはパイプ34へ至り、パイプ232から熱交換機231を経た工場排熱Xはパイプ234へ至る。又、パイプ32には流量調節弁36が設けられ、パイプ232には流量調整弁236が設けられる。
図7は、加熱冷却装置201の動作を示すフローチャートである。加熱冷却装置201の自動制御装置は、双方のヒートポンプ210,211の運転中、一方のヒートポンプ211の負荷率を取得し、設定値(50%)以下であって運転効率が悪いと判断すると、ヒートポンプ210の負荷率が上昇するように運転すると共にヒートポンプ211の運転を停止して減台をする動作を実行する。
即ち、温水に追従するように冷水を出す運転を許可していると(ステップS251でYes)、自動制御装置は、ヒートポンプ211の負荷率を算出し、設定値未満であるか判断する(ステップS252)。
ここで、負荷率の算出は、次のように行う。即ち、負荷率は現在の加熱能力を定格(100%)運転時の加熱能力で割ることで得られるところ、定格加熱能力については冷水供給温度から対応表により取得する。冷水供給温度は自動制御装置と接続され各パイプ216,217に配置されたセンサにより把握し、対応表は自動制御装置の有する記憶装置にデータベースとして記憶される。対応表の例として、12度で349kW、15度で373kW、20度で426kW、25度で485kW、30度で556kWというものが挙げられ、対応表における温度に把握した温度がない場合には、最も近い温度におけるものを定格加熱能力とする等する。そして、例えば冷水が12度で供給され15度で戻っているとすると、加熱能力は12度に対応する349kWであるとされる。
一方、現在の加熱能力については、温水の出入口温度差と温水流量を把握し、これらの値を乗ずることで算出する。温水の出入口温度は、パイプ214,224に配置した温度センサにより把握し、温水流量は、同様に配置した流量計により把握する。例えば、温水の出口温度(供給温度)はパイプ214の温度センサにより70度と把握され、温水の入口温度(戻り温度)はパイプ224の温度センサにより67度と把握されたとすると、出入口温度差は70−67=3度と把握される。又、温水流量は例えば1000立方メートル毎分であるとする。
すると、現在の加熱能力は、3(度)×1000(立方メートル毎分)×60(分)/860(キロカロリー/kW)=209(kW)となる。よって、負荷率は209/349=60%と算出される。
このように算出された負荷率が設定値未満であると判断されると(ステップS252でYes)、他のヒートポンプ210が運転中であるか否かを判断し(ステップS253)、運転中であれば(Yes)、ヒートポンプ211の運転優先順位がヒートポンプ210より下位かを判断する(ステップS254)。ここではヒートポンプ211の運転優先順位が下位であるため、ステップS255に移行し、ヒートポンプ211の負荷率が低く効率が比較的に悪いためにその運転を停止する。
ヒートポンプ211が停止すると、温水加熱が停止した分だけ不足し、このことが自動制御装置により把握されるため、自動制御装置はヒートポンプ210の運転状態につき温水を高温で供給するものとする。よって、ヒートポンプ210の運転状態は負荷率が高く効率の良いものとなる。
又、自動制御装置は、ヒートポンプ211の停止中、設定時間毎(5分毎)に、運転中のヒートポンプ210の温水出口温度が所定値(設定値−1度)未満であるか確認する(ステップS256〜S258)。所定値未満でなければ(ステップS257でNo)、温水加熱が不足しているものとして、停止中のヒートポンプ211を再起動する(ステップS259)。
以上の第5形態の加熱冷却装置では、ヒートポンプ210,211が複数台設置されており、自動制御装置は、少なくとも一部の所定のヒートポンプ211における、加熱媒体がヒートポンプ211から供給される際の温度である温水供給温度(温水出口温度)を検知する温水供給温度センサ、加熱媒体がヒートポンプ211へ戻る際の温度である温水戻り温度(温水入口温度)を検知する温水戻り温度センサ、及び冷却媒体(パイプ217内の冷水)がヒートポンプ211から供給される際の温度である冷水供給温度を検知する冷水供給温度センサ、並びに前記加熱媒体の流量(熱量)を検知する流量計(熱量計)と接続されており、温水供給温度センサから得た温水供給温度と温水戻り温度センサから得た温水戻り温度の差、及び流量計から得た流量から把握した現在の加熱能力と、冷水供給温度センサから得た冷水供給温度から把握した定格運転時の加熱能力とから、ヒートポンプ211における負荷率を把握して、当該負荷率が設定値以下である場合に、ヒートポンプ211につき運転を停止し、ヒートポンプ211の運転停止後、温水供給温度センサから得た温水供給温度が設定値以下である場合に、停止したヒートポンプ211につき運転を再開する。
従って、加熱負荷Hを十分に加熱し、且つ冷却負荷Cを十分に冷却しながら、複数のヒートポンプで負荷率が各々低くなるが故に全体としての効率に劣る場合に、一部のヒートポンプ211の運転を停止する減台制御を行うことができ、又温水供給温度が不足しそうな場合には減台制御に係るヒートポンプ211を自動で復帰させることができ、加熱冷却性能を確保しながら全体としての効率をより一層向上することができる。
[第6形態]
図8に示すように、第6形態に係る加熱冷却装置301は、第2形態に対し、加熱側冷却機としてのクーリングタワー302と、加熱側加熱機(加熱装置)としてのボイラ304とを追加して成る。ヒートポンプ10とクーリングタワー302の間には、パイプ306,308が配されて温水回路が形成され、パイプ12,22の温水回路と切換可能とされている。又、ボイラ304から、加熱負荷Hを加温するための蒸気(第2加熱媒体)を供給する蒸気供給路310が形成されている。なお、加熱側冷却機(冷却装置)としてチラーやこれらの組合せを採用して良く、加熱側加熱装置として電気ヒーターや温水タンクやこれらの組合せを採用して良い。
そして、加熱冷却装置301の自動制御装置は、加熱負荷Hに応じて運転されているヒートポンプ10について、夏場で加熱負荷Hが比較的に低いとき等、冷却負荷Cが比較的に多く冷却が追いつかない場合に、クーリングタワー302と接続して冷却専用の冷房モードでの運転に切り替え、加熱負荷Hに対してはボイラ304で賄うように制御する。
即ち、図9に示すように、自動制御装置は、ヒートポンプ10が運転中であれば(ステップS351でYes)、流量調節弁136の開度が設定値を上回るかを確認し(ステップS352)、上回ればヒートポンプ10の温水回路をクーリングタワー302側(パイプ306,308側)へ切り替えて(ステップS353)、ヒートポンプ10を冷房モードで運転させる。又、自動制御装置は、ステップS353において、ボイラ304からの蒸気を導入するため、パイプ310における蒸気の通過を許容する(図示しないパイプ310の弁を開く)。
例えば、夏季にヒートポンプ10が加熱負荷Hに合わせ負荷率60%(冷却能力148kW,定格246kW)で運転されている場合に、流量調節弁136の開度が85%以上となれば、十分に冷却できない状態が生じる可能性があることとなるので、自動制御装置は、冷水温度が所定範囲内にあることを確認し(28度)、ヒートポンプ10につき冷房モードに切り替え、ボイラ304の蒸気を加熱負荷Hに適用する。このとき、温水が十分冷却されて戻ってくるため、ヒートポンプ10の冷却能力は450kWに増加し、冷却対象の冷媒(第1冷却媒体)が十分に冷却されることとなり、適宜第2流量調節弁136の開度が絞られる。
なお、本形態においてもヒートポンプを複数設置することができ、この場合各々単独で冷房モードと通常モード(熱回収モード)が切り替え可能となるように、自動制御装置を形成し、個別の温水回路や温度センサを設けることができる。又、ヒートポンプ毎に予め順位を付しておき、下位のものから順に冷房モードに切り替えて良い。このとき、下位のヒートポンプのモードを切り替える前に、他のヒートポンプが(通常モードで)運転中であるか確認しても良い。
以上の第6形態の加熱冷却装置では、加熱負荷Hを加熱する蒸気を供給可能なボイラ304を更に備え、ヒートポンプ10は、温水を冷却可能なクーリングタワー302と接続されており、自動制御装置は、流量調節弁136の開度が設定値以上である場合に、温水をクーリングタワー302に供給して冷却された温水を受けると共に、ボイラ304により蒸気を供給して温水に代わり加熱負荷Hの加熱を行う。
従って、加熱負荷Hに合わせると冷却負荷Cが不足する夏季等において、ヒートポンプ10を冷却につき効率の良い冷房モードで運転する一方、加温には工場に従来から存在するボイラ304を有効利用することができ、又加熱負荷Hと冷却負荷Cが釣り合う中間季等においてはヒートポンプ10を熱回収モードで加熱と冷却とを効率良く行うことができ、更に加熱負荷Hに合わせると冷却過剰となり得る冬季等においてはヒートポンプ10の冷水で工場の工場排熱Xを冷却して加熱と冷却のバランスの取れた効率の良い状態でヒートポンプ10を運転することができ、装置全体として状況に応じ適切なモードを自動選択して極めて効率良い運転を実施することができる。
[第7形態]
図10に示す第7形態に係る加熱冷却装置401は、第6形態と同様に成るが、自動制御装置は更に、工場に設置された受電電力量(あるいは装置全体の消費電力量)を監視する電力計付きコンピュータであるデマンドコントローラ(消費電力計)と接続されており、又ヒートポンプ10を冷水専用運転に切り替えることを指令する冷水専用運転切り替えスイッチを備えている。
加熱冷却装置401は、ヒートポンプ(HP)10と加熱負荷Hの間に介装される他熱源Zで加温可能な温水タンク402(例えば温水60度)と、加熱側に配置されたクーリングタワー(CT)404と、ヒートポンプ10と冷却負荷Cの間に介装される冷水タンク406(例えば冷水17度)と、冷水タンク406内の冷水を冷却する空冷ヒートポンプ(空冷HP)408を備えている。加熱側のパイプ12には、温水の温水タンク402あるいはクーリングタワー404への流量を調整する三方弁410が介装されている。
又、本形態においてヒートポンプ10は複数設置され、各々単独で冷水追従モードと温水追従モードが切り替え可能となるように自動制御装置が形成され、個別の温水回路や温度センサが設けられている。又、ヒートポンプ10毎に予め順位を付しておき、下位のものから順に冷房モードに切り替える。このとき、後述のように、下位のヒートポンプ10のモードを切り替える前に、他のヒートポンプ10が(通常モードで)運転中であるか確認する。なお、ヒートポンプ10を1台としても良い。
そして、動作としては、自動制御装置がヒートポンプ10を冷水専用運転とする条件につき、消費電力が所定値以上となり工場の受電能力を超えることが予測される場合とすることが第6形態と相違する。なお、冷水専用運転切り替えスイッチは、温水追従モードとの間でモードを順に繰り返し遷移させるモード遷移スイッチであっても良い。又、デマンドコントローラとの接続、あるいはスイッチの設置のうちの一方を省略しても良い。更に、第6形態と本形態との動作を併せて行って良い。
即ち、図10(a)ないし図11に示すように、自動制御装置は、ヒートポンプ10が熱回収モードで運転中であるかを確認し(ステップS381)、運転中であれば(Yes)、消費電力が設定値(契約電力あるいはこれより若干(0〜5%程度分)少ない値)以上である際に発信される信号がデマンドコントローラから出力されているか確認する(ステップS382)。消費電力が設定値以上である旨を示す信号がデマンドコントローラから出力されていれば(Yes)、他のヒートポンプ10が温水追従モードで運転中であるか確認し(ステップS383)、運転中であれば(Yes)、運転優先順位が他のヒートポンプ10より下位かを確認する(ステップS384)。
自動制御装置は、運転優先順位が下位であれば(Yes)、図10(b)に示すように、ヒートポンプ10につき温水追従モードから冷水追従モードへ変更すると共に(ステップS385)、温水回路をクーリングタワー404側へ三方弁410の制御により自動で切り替え、更にクーリングタワー404の温水温度設定値を例えば60度から32度へ変更する(ステップS386)。又、当該信号がデマンドコントローラから出力されていなければ(ステップS382でNo)、冷水専用運転切り替えスイッチに入力があったかを判断し(ステップS387)、入力があれば(Yes)、やはり温水回路の切り替え及び冷水追従モードへの移行とクーリングタワー404の設定変更を行う(ステップS386)。
例えば、ヒートポンプ10が温水追従モードで運転中、温水を70度で供給して65度で回収し、これに伴い冷水温度15度・冷水供給量246kWで供給し消費電力127kW(冷水側COP1.94)となっている際に、消費電力が所定値を超えているためこれを抑制しようとすると、自動制御装置は、ヒートポンプ10を冷水専用運転へ切り替え、冷水供給量246kWを維持しつつ消費電力を34.5kW(冷水側COP7.14)とする。一方、自動制御装置は、加熱負荷Hにつき、ボイラ304の蒸気で加熱させる。
なお、ヒートポンプ10が冷水追従モードである際に、デマンドコントローラから消費電力が同一のあるいは別の所定値以下となって、工場の受電能力に余裕ができた場合には、自動制御装置が温水回路の切替と温水追従モードへの切り替えとを自動で行って良い。又、温水追従モード切換スイッチを設け、これに対する入力があると温水回路の切替と温水追従モードへの切り替えが行われるようにしても良い。
以上の第7形態の加熱冷却装置では、加熱負荷Hを加熱する蒸気を供給可能なボイラ304と、消費電力を検知する消費電力計とを更に備え、ヒートポンプ10は、温水を冷却可能なクーリングタワー302と接続されており、自動制御装置は、消費電力計と接続されており、消費電力計から得た消費電力が設定値以上である場合に、温水をクーリングタワー302に供給して冷却された温水を受けると共に、ボイラ304により蒸気を供給して温水に代わり加熱負荷Hの加熱を行う。
従って、ヒートポンプ10で加熱と冷却を行うと消費電力が契約電力等を超えてしまう場合に、自動制御装置によりヒートポンプを消費電力に応じた運転に切り替え可能として、装置全体の消費電力が契約電力等を上回らないようにすることができる。
[第8形態]
第8形態に係る加熱冷却装置は、第5形態と同様にヒートポンプ210,211を複数備えて成り、更にヒートポンプ210,211からの温水を貯蔵可能な温水タンクと、当該温水タンク内の温水を加熱するために当該温水タンクに蒸気を投入する加熱側加熱手段としてのボイラと、加熱負荷Hを加熱する第2加熱媒体及びそのパイプと、温水タンクからの温水(加熱媒体)のパイプと第2加熱媒体のパイプとに介在された熱交換機とを備えている。第2加熱媒体は、当該熱交換機を介し、温水により加熱される。又、温水タンク内には、自動制御装置と接続された、タンク内の温水の温度を検知する温水タンク温度センサが設置されている。通常はヒートポンプ210を主に用い、ヒートポンプ211は予備機として優先順位の低い状態で運転される。なお、加熱手段として、蒸気ヒータや電気ヒータ、あるいは空冷ヒートポンプを用いて良い。
そして、本形態の加熱冷却装置では、内部を加温可能な温水タンクを介して加熱負荷Hの加温を行うことにより、加熱量が不足したとしても他熱源Zによりバックアップすることで加温を継続することが可能である。
即ち、図12に示すように、自動制御装置は、加熱負荷Hが存在すれば(ステップS401でYes)、温水タンク温度センサから得た温水タンク温度が設定値(68度)未満であるかを確認し(ステップS402)、設定値を下回れば(Yes)、ヒートポンプ210,211が温水追従モードで1台以上運転中であるか確認する(ステップS403)。そうであれば(Yes)、更に予備機としてのヒートポンプ211が停止しているか判断し(ステップS404)、停止していれば(Yes)、ヒートポンプ211を温水追従モードで追加的に自動起動させる(ステップS405)。
一方、自動制御装置は、ヒートポンプ210,211が双方とも運転中でないか(ステップS403でNo)、あるいはヒートポンプ211が停止中でない場合には(ステップS404でNo)、温水タンク温度が前記設定値を下回る別の設定値(67度)をも下回るか判断し(ステップS406)、下回れば(Yes)、温水タンク温度が前記設定値(68度)になるまでボイラから蒸気(他熱源Z)を導入して温水を加温する(ステップS407〜S409)。
以上の第8形態の加熱冷却装置では、ヒートポンプ210,211からの温水(加熱媒体)を貯蔵する温水タンクと、温水タンク内の温水を加熱するボイラとを備え、温水タンクからの温水により加熱負荷Hを加熱する第2加熱媒体を加熱する。
従って、ヒートポンプ210,211からの温水が不足してもボイラによりこれを加温可能とすることで全体としての加熱不足を防止することができ、加温に関するバックアップ回路を設けて安定した加熱状態を提供することができる。
[第9形態]
図13に示すように、第9形態に係る加熱冷却装置501は、第5形態と同様ヒートポンプ510,511を複数備えて成り、更に冷却負荷Cに対し、いずれも(第2)冷却側冷却機としての冷水チラー512ないしクーリングタワー513が、いずれかによる各冷媒を介した冷却のため、切り替え可能に設置されている。ヒートポンプ510の冷水側には、第1形態等と同様、工場の工場排熱Xとの熱交換機が設置され、温水側には、第1形態と同様、加熱負荷Hを加熱するための温水のパイプが配されている。一方、ヒートポンプ511の冷水側には、冷却負荷Cを冷却するパイプと、ヒートポンプ510と同様の工場排熱Xとの熱交換機を有するパイプとが切り替え可能に配され、温水側はヒートポンプ510と同様に成る。
そして、加熱冷却装置501は、自動制御装置を用いず、ヒートポンプの加熱負荷に追従する運転をもって、工場の工場排熱Xを利用した加熱負荷Hの加熱と冷却負荷Cの冷却を、状況に応じ実行する。
即ち、図13(a)に示すように、夏季等において加熱負荷Hが比較的に穏やかであり(900kW)、冷却負荷Cが比較的に重い場合には(300kW)、ヒートポンプ510を工場排熱X(430kW)により冷水温度を上げて運転し(30度を35度に上げる)、温水(550kW)を供給する一方、ヒートポンプ511の冷水(12度、220kW)を冷却負荷Cの冷却に用いる(17度で戻る)。なお、冷却負荷Cの冷却につき、冷水チラー512を適用して不足する冷却能力(80kW)を補い、又冷却負荷Cの変動に対応する(ヒートポンプ511の冷水の戻り温度につき冷水チラー512の適用により一定にしてヒートポンプ511の運転状態を安定させる)。
一方、図13(b)に示すように、冬季等において加熱負荷Hが比較的に重く(1100kW)、冷却負荷Cが比較的に穏やかである場合には、ヒートポンプ510,511を加熱専用とする。即ち、ヒートポンプ511の冷水側回路を工場排熱Xとの熱交換機側に切り替え、ヒートポンプ510,511双方の冷水を工場排熱Xにより昇温し(双方とも30度から35度へ)、温水(双方とも550kW)を冷却負荷Cに供給する。なお、冷却負荷Cの冷却は、クーリングタワー513に切り替えて適用することにより、専らクーリングタワー513のみにて賄う。又、夏季等と冬季等との動作の切り替えは、手動により季節毎(年2回)に行うことができる。
以上の第9形態の加熱冷却装置501では、ヒートポンプ510,511を複数備えていると共に、冷却負荷Cを冷却する(第4)冷却媒体を供給可能な冷水チラー512ないしクーリングタワー513を備えており、更に一部のヒートポンプ511の供給する冷却媒体につき、工場排熱Xとの熱交換機側と冷却負荷Cの冷却側とで切り替え可能とし、加熱負荷Hが比較的に軽い一方冷却負荷Cが比較的に重い場合に、一部のヒートポンプ511の冷却媒体で冷却負荷Cを冷却する一方、残余のヒートポンプ510の冷却媒体に工場排熱Xを適用して、全てのヒートポンプ510,511で加熱負荷Hを加熱し、加熱負荷Hが比較的に重い一方冷却負荷Cが比較的に軽い場合に、一部のヒートポンプ511の冷却媒体にも工場排熱Xを適用して、全てのヒートポンプ510,511で加熱負荷Hを加熱し、冷水チラー512ないしクーリングタワー513で冷却負荷Cを冷却する。
従って、ヒートポンプの他に自動制御装置を設けることなく、工場排熱Xを用いた極めて効率の良好な加熱ないし冷却を、低コスト・低設備投資にて導入することができる。又、従来工場に設置されている冷水チラー512やクーリングタワー513を有効に活用することができる。
[第10形態]
図14は第10形態に係る加熱冷却装置601の模式図であって、加熱冷却装置601は、冷却負荷Cとヒートポンプ10の間の構成以外は第1形態と同様である。
加熱冷却装置601は、パイプ26に流量調節弁602を有すると共に、流量調整された分岐冷水を熱交換機30へ導くパイプ604と、熱交換機30を通過した冷水をパイプ26へ戻すパイプ606を備える。熱交換機30には、工場に設置された乾燥炉608からの放熱及び/又は排温風Y(工場排熱)が導入され、分岐した冷水が加温される。
なお、加熱冷却装置601について、次のとおり変更することができる。乾燥炉608から出た(例えば150度程度となった)ワークの放熱を熱交換機30へ導くことにより冷却側を加温する。又、冷却負荷Cに乾燥炉608の放熱・排風又はワークの放熱を適用しても加熱負荷Hの加熱をヒートポンプ10だけでは賄えないような冷却負荷Cに対する加熱負荷Hのバランスとなっている場合、他熱源で補助的に加温しても良いが、ヒートポンプ10を冷水追従モードで運転し、流量調節弁602を乾燥炉608側に全開にしても良い。このようにヒートポンプ10を冷水追従運転すると、冷却負荷Cに適切に対処することが可能となると共に、加熱負荷Hに対しても冷却媒体の生成に伴い効率良く生成されるヒートポンプ10の加熱媒体と他熱源で適切に対応することができ、しかもイニシャルコストが低く複雑な制御が不要で運用し易いものとすることが可能となる。
又、加熱冷却装置601について、次のように変更することもできる。即ち、流量調節弁602が乾燥炉608側で全開の状態でヒートポンプ10の冷水供給量が不足(冷水温度が上昇)する場合、自動的に流量調節弁602の乾燥炉608側を閉止する制御を実行可能とし、より効率的で安定した運転を行うようにする。又、ヒートポンプ10の冷水追従運転において、加熱量が不足する(温水温度が低い)状態や加熱量が過剰となる(温水温度が高い)状態を適正な状態(適正な温度)とするために、自動制御装置により流量調節弁602の開度を制御して熱交換機30との熱交換量を制御し、ヒートポンプ10の出力を制御しても良い。更に、流量調節弁602に代えてポンプ(及び冷水タンク)を設け、ポンプの流量制御により熱交換機30における熱交換量を制御しても良い。加えて、冷却側にクーリングタワーを熱交換機を介して接続し、排温風Y等の熱量が十分に多い場合に当該クーリングタワーの冷却水とヒートポンプ10の冷水を熱交換することでヒートポンプ10の冷水を冷却可能とし、ヒートポンプ10を温水追従運転し、流量調節弁602を乾燥炉608側へ全開にして冷水を過剰に加温する状態とし、クーリングタワー(他冷熱源)で冷水温度を制御する(冷却負荷Cに対応する)ようにしても良い。この場合、温水追従運転によりヒートポンプ10で温水に余剰を生じることなく制御可能であり、且つ低コストで簡易に冷水温度低下によるヒートポンプ10の停止を回避することができる。
以上の加熱冷却装置601等にあっても、冷水側に工場に属する排熱を適用することで温熱に対する冷熱のバランスを維持し、ヒートポンプ10の運転を継続させることができる。
[第11形態]
第11形態に係る加熱冷却装置1151は、図15に示すように、次に説明する点を除き、第1形態と同様に成る。ヒートポンプ10は、温水供給パイプ1160及び温水戻りパイプ1162と接続されており、これらのパイプには温水と加熱媒体とで熱交換を行う熱交換機1164(加熱側加熱手段)が接続されている。熱交換機1164には、加熱媒体供給パイプ1112及び加熱媒体戻りパイプ1113も接続されており、加熱媒体供給パイプ1112には他熱源熱交換機1104が配置され、加熱媒体戻りパイプ1113には加熱媒体循環用のポンプ1115が配置されている。加熱媒体は熱交換機1164を通過することで加熱され、適宜他熱源Zによる追加的加熱を受けて加熱負荷Hに供給される。なお、温水戻りパイプ1162には、温水ポンプ1166が取り付けられている。
自動制御装置は、例えば、55度の加熱媒体を熱交換機1164に導入させ、58度に加温(374kW)する。この加熱媒体は更に他熱源Zにより60度に加熱される(加熱負荷249kW)。加熱媒体加熱のための温水は往き70度・戻り60度である一方(加熱負荷374kW,COP2.9)、この温水供給に伴い冷水も往き7度・戻り17度で発生し、冷却負荷245kWに対してバランスの取れる状態で(丁度冷熱が用いられる状態で)作用する。自動制御装置は、熱交換機1164と他熱源Zの間の加熱媒体供給パイプ1112(熱交換機1164の直後)における加熱媒体温度を監視し、当該温度が60度となるようにヒートポンプ10の温水供給を制御する(温水70度)。
そして、自動制御装置は、冷水温度を監視し、冷却負荷が129kWに低下して冷水温度が所定温度以下となった場合には、ヒートポンプ10の温水供給設定温度を70度から65度へ下げる。すると、ヒートポンプ10の加熱量は187kW(加熱側COP3.2)へ軽減され、加熱媒体が56.5度に昇温されると共に、冷水に加わる冷熱も減少して冷水戻り温度が所定温度以上に復帰して(12度)、温熱に対する冷熱のバランスが保たれる。なお、他熱源Zにより、加熱量436kWにて加熱媒体を加熱し、加熱負荷Hの所望する60度とする。
なお、ヒートポンプ10につき、温水温度に追従して運転しても良く(例えば所望加熱媒体温度+5度)、この場合でも温水温度設定値を下げることで冷熱量を下げることが可能である。又は、他熱源の加熱量を増やす(加熱温度設定値を下げる)ことにより、ヒートポンプ10の加熱負荷を下げ、もって冷熱量を下げることも可能である。又、温水供給温度を一定にしつつ、温水ポンプ1166の流量をインバーターにより絞っても、加熱量を下げひいては冷熱量を下げることになる。
このような第3形態の加熱冷却装置1151であっても、第1形態と同様に、ヒートポンプにおける温熱と冷熱の供給バランスを簡易な方式によって維持して運転の継続が可能となる。
[第12形態]
第12形態に係る加熱冷却装置は、第11形態と同様に成る。自動制御装置は、温水ポンプ1166につき、流量一定運転に代えて、所定の加熱媒体温度を生成する熱量を有する熱量一定運転を行う。温水ポンプ1166は、熱量を一定にするため、温水の流量を自動調整する。
例えば、45度の加熱媒体を熱交換機1164により300kWの加熱(COP3.6,温水往き60度)で50度とし、冷却負荷217kW(COP2.6)にバランスの取れた状態で対応する(冷水往き7度・戻り17度)。温水ポンプ1166は、温水循環量につき、加熱媒体温度が50度となるような温水熱量を有するように運転される。
そして、自動制御装置は、冷却負荷が196kWに減少して冷水戻り温度が16度以下となると、ヒートポンプ10の温水供給設定温度を70度に上げる(温水温度往き70度・戻り60度)。このとき、温水ポンプ1166は依然として熱量一定運転を続けるため、ヒートポンプ10の加熱COPが3.6から2.9となり、又循環温水量が絞られる。温水供給温度を上げることで、ヒートポンプ10の発生する冷熱も低減され(冷水戻り温度17度,COP1.9)、冷却負荷の減少に対応しながらヒートポンプ10の運転を継続することが可能となる。
[第13形態]
図16(a)は第13形態に係る加熱冷却装置2861の冷熱負荷(冷却負荷C)が重い場合における模式図、図16(b)は加熱冷却装置2861の冷熱負荷が比較的軽い場合における模式図、図16(c)は加熱冷却装置2861の温熱負荷(加熱負荷H)が冷熱負荷を上回る場合における模式図、図17(a)は加熱冷却装置2861の冷熱負荷がない場合における模式図、図17(b)は加熱冷却装置2861の冷熱負荷がなく温熱負荷が比較的大きい場合(生産ライン立ち上げ時等)における模式図であって、加熱冷却装置2861は、ヒートポンプ10と同等のヒートポンプ2004を用いる等第1形態と同様に成るが、更に複数のヒートポンプ2004p,2004q,2004r等を用いており、又空気圧縮機2840が配備されている。なお、加熱冷却装置2861は、ヒートポンプ2004の加熱側供給パイプ2034における温水を加温する熱交換機2862と、熱交換機2862に蒸気(温水)ST(他熱源Z)を供給可能な図示しないボイラーと、当該蒸気STの供給量を調整可能な温熱供給量調節弁2864を備えている(図17(b)参照)。又、加熱冷却装置2861は、空気圧縮機2840の冷却水を冷却するクーリングタワー2832aと、冷却量を調整するための冷熱供給調節弁2866を備えている。
ヒートポンプ2004p等の加熱側には、供給側のモーター弁2047p等や戻り側のモーター弁2049p等を介してクーリングタワー2832p等が接続されている。又、ヒートポンプ2004p等の加熱供給パイプ2034pにあっては、モーター弁2047pによりヒートポンプ2004の加熱側供給パイプ2034側へ切替(ないし流量調整)可能であり、ヒートポンプ2004p等の加熱戻りパイプ2036pは、モーター弁2049pによりヒートポンプ2004の加熱側戻りパイプ2036側へ切替(ないし流量調整)可能である。なお、クーリングタワー2832p等の何れかとクーリングタワー2832aとは共通であっても良い。又、クーリングタワー2832a側に切り替えることに代えて、あるいはこれと共に、クーリングタワー2832aの冷却水とヒートポンプ2004の温水とを熱交換しても良い。
更に、ヒートポンプ2004p等の冷却側のモーター弁2043p,2045p等により、当該冷却側の回路につきヒートポンプ2004の冷却側と空気圧縮機2840側とで切替(ないし流量調整)可能とされている。空気圧縮機2840側に切替えられた場合には空気圧縮機2840の冷却水と熱交換可能である。又、ヒートポンプ2004の冷却側供給パイプ2030及び冷却側戻りパイプ2032にも順にモーター弁2043,2045が設置されており、同様に冷却負荷C側と空気圧縮機2840側とで切替(ないし流量調整)可能とされている。なお、図16(a),(b)においてはヒートポンプ2004pの回路が省略されており、図16(c),図17(a)においてはヒートポンプ2004pの加熱側回路が省略されている。これらの加熱側回路は、実際には加熱負荷Hと繋がっている。
このような加熱冷却装置2861は、第1形態と同様に動作し、例えば次のように動作する。
即ち、冷熱重負荷時等の図16(a)の場合、ヒートポンプ2004は温水追従モードにて熱回収運転を行っているが、更に冷却負荷Cへ冷熱を供給する必要があり、冷熱負荷に応じた台数におけるヒートポンプ2004p等の冷房運転を行う。このとき、ヒートポンプ2004p等の冷却側はヒートポンプ2004の冷却側に切り替わっており、ヒートポンプ2004p等の加熱側はクーリングタワー2832p等側に切り替わっている。又、複数のヒートポンプ2004p等が冷房運転していれば、全てのヒートポンプ2004p等につき冷房運転又は冷房運転待機の状態とする。ただし、全体としての冷却能力に余裕があれば、1台を暖房待機状態とする。
例えば、ヒートポンプ2004,2004p等により冷水が7度で冷却負荷Cに供給され、ヒートポンプ2004には12度で戻る。このとき、ヒートポンプ2004の温水供給温度は60度であり、温水戻り温度は55度である。又、ヒートポンプ2004p等の温水供給温度は35度であり、温水戻り温度はクーリングタワー2832p等の冷却により30度である。当該冷却により、ヒートポンプ2004p等は冷房運転を継続することができる。
又、冷熱軽負荷時等の図16(b)の場合、冷却負荷Cに応じて冷房運転するヒートポンプ2004p等が1台となったら、他の1台につき冷房待機を行い、残りのヒートポンプ2004p等につき温水追従運転(暖房運転)の待機を行う。温水追従待機中のヒートポンプ2004p等の加熱側は、クーリングタワー2832p等側からヒートポンプ2004の加熱側に切替えられ、冷却側は、ヒートポンプ2004の冷却側から空気圧縮機2840側へ切替えられる。そして、自動制御装置は、ヒートポンプ2004の温水戻り温度あるいは温水出口温度が所定値以下となる等、温熱の不足を検知したら、温水追従待機中のヒートポンプ2004p等を運転する。なお、ヒートポンプ2004p等の内1台でも温水追従運転が開始されると、冷房待機中のヒートポンプ2004p等を温水追従待機状態に切替える。
例えば、ヒートポンプ2004や冷房運転するヒートポンプ2004p等により冷水が7度で冷却負荷Cに供給され、ヒートポンプ2004には12度で戻る。ここで、ヒートポンプ2004の温水供給温度は60度であるものの、温水戻り温度は55度から53度以下となったら、温水追従待機中のヒートポンプ2004p等を運転し、冷水を30度で空気圧縮機2840に供給し、冷却水との熱交換により35度で戻らせる。又、温水追従運転中のヒートポンプ2004p等は、ヒートポンプ2004へ戻る温水を60度まで加熱し、ヒートポンプ2004の加熱側供給パイプ2034へ戻す。温水追従運転中のヒートポンプ2004p等に空気圧縮機2840の排熱を適用することにより、ヒートポンプ2004p等は暖房運転を継続することができる。
更に、冷熱負荷が少なく、ヒートポンプ2004の冷却最低出力(あるいはこれを上回る所定出力)未満となった場合、図16(c)に示すように、ヒートポンプ2004の冷却側を空気圧縮機2840側に切替え、ヒートポンプ2004による冷却負荷Cに対する冷熱供給を停止する。当該冷熱供給は、冷房運転する1台のヒートポンプ2004p等により行われる。
例えば、冷房運転するヒートポンプ2004p等により冷水が7度で冷却負荷Cに供給され、ヒートポンプ2004には12度で戻る。冷房運転するヒートポンプ2004p等の加熱側は、クーリングタワー2832p等で運転継続可能に冷却される。又、ヒートポンプ2004の冷水供給温度は30度であり、冷水戻り温度は空気圧縮機2840の冷却水との熱交換により35度とされ、ヒートポンプ2004による温水供給の継続を可能としている。一方、ヒートポンプ2004の温水側は温水追従運転中のヒートポンプ2004p等により適宜加温され、供給温度が60度に維持される(戻り温度は55度近辺となる)。
又、生産ライン立ち上げ時等で冷熱が不要である場合、図17(a)に示すように、ヒートポンプ2004p等は温熱負荷に応じて温水追従運転又は待機状態とされ、ヒートポンプ2004も含めて冷却側が空気圧縮機2840側に切替えられる。ただし、自動制御装置は、冷却側の温度や各種モーター弁の開度あるいは生産状況ないしこれらの関係から、冷却負荷Cにおいて冷水が必要になりそうであると判断すると、ヒートポンプ2004p等の内の1台を冷房待機状態とする。
例えば、ヒートポンプ2004,2004p等の加熱側は、55度で戻り、60度で供給される。又、ヒートポンプ2004,2004p等の冷却側は、空気圧縮機2840の冷却水により30度から35度に加温され、空気圧縮機2840の排熱を利用してヒートポンプ2004,2004p等の運転を継続することができる。
加えて、冬季の生産ライン立ち上げ時等で冷熱が不要であり温熱負荷が大きい場合、図17(b)に示すように、ヒートポンプ2004p等は温水追従運転され、ヒートポンプ2004も含めて冷却側が空気圧縮機2840側に切替えられる。又、温熱負荷により、ボイラーから蒸気ST等を温熱供給量調節弁2864による調整のうえで供給し、熱交換機2862を介して温水を加熱する。
更に、空気圧縮機2840の排熱量が工場の空気消費量の減少等により低下して、ヒートポンプ2004,2004p等の冷却側の加温が十分に行えなくなる場合、そのままではヒートポンプ2004,2004p等の冷水戻り温度が低下し、ヒートポンプ2004,2004p等が停止する温度(例えば5度)となってしまう。そこで、冷水が所定温度(例えば20度)以下となった場合、自動制御装置はヒートポンプ2004p等を1台ずつ停止して温水追従待機状態とし、空気圧縮機2840の冷却水温度を保持する。ヒートポンプ2004p等の停止による加熱量の減少は、熱交換機2862による加熱により補われる。なお、ヒートポンプ2004,2004p等の出力をインバーター等により絞ることで空気圧縮機2840の冷却水温度の低下を防止しても良いし、温水の流量を温水ポンプのインバーター等により絞ることでヒートポンプ2004,2004p等の出力を絞って空気圧縮機2840の冷却水温度の低下を防止しても良いし、熱交換機2862における加熱量を増すことでヒートポンプ2004,2004p等の負担を減らして運転継続に必要な冷水の加熱量を減らし、空気圧縮機2840の冷却水温度の低下を防止しても良いし、ヒートポンプ2004,2004p等の温水供給温度設定値を下げて、ヒートポンプ2004,2004p等の出力を絞って空気圧縮機2840の冷却水温度の低下を防止しても良い。
又、空気圧縮機2840の排熱量が工場の空気消費量の増加等により上昇して、ヒートポンプ2004,2004p等の冷却側の加温が過剰となる場合、そのままではヒートポンプ2004,2004p等の冷水戻り温度が上昇し、ヒートポンプ2004,2004p等が停止する温度となってしまう。そこで、自動制御装置は、冷水が所定温度以上となるかあるいは空気圧縮機2840の冷却水温度が所定温度(例えば35度)以上となった場合、蒸気STにより温水を加温していて温水追従待機中のヒートポンプ2004p等があればそのヒートポンプ2004p等を運転して冷却水の冷却を行い、あるいはクーリングタワー2832aを運転し、冷却水温度が上昇しないよう保持する。
例えば、ヒートポンプ2004,2004p等の冷却側は、30度で供給され、35度で戻る。又、ヒートポンプ2004,2004p等の加熱側は、58度から熱交換機2862の加熱により60度となって供給され、53度で戻る。
以上の加熱冷却装置2861では、加熱負荷Hや冷熱負荷Cに応じてヒートポンプ2004,2004p等の冷却側を自動で空気圧縮機2840側に切替え、空気圧縮機2840の冷却水との熱交換によりヒートポンプ2004,2004p等の冷水を加温するため、冷却水を利用してヒートポンプ2004,2004p等の運転を継続させることができ、省エネルギー性の高い状態で作動させることができる。
[第14形態]
図18(a)は第14形態に係る加熱冷却装置2871において冷熱負荷が温熱負荷に対して極めて大きい場合(例えば夏季の昼間)等における模式図、図18(b)は加熱冷却装置2871において冷熱負荷が温熱負荷に対して大きい場合(例えば夏季の夜間)等における模式図、図18(c)は加熱冷却装置2871において温熱負荷が冷熱負荷に対して大きい場合(例えば冬季)等における模式図、図19(a),(b)は加熱冷却装置2871において空冷ヒートポンプが故障した場合等における模式図であって、加熱冷却装置2871は、第13形態と同様に成る。
加えて、空冷ヒートポンプ2154a等の回路は、モーター弁2043a等やモーター弁2045a等により、ヒートポンプ2004の加熱側と冷却側とで切替可能である。なお、図18,19において、冷却負荷Cとヒートポンプ2004の間の回路は一部省略されている。又、ヒートポンプ2004p等はヒートポンプ2004の冷水を直接導入して加熱可能であり、冷水を直接加熱する加熱用ヒートポンプとして動作可能である。これに対し、排熱回収型のヒートポンプの冷水とは異なる媒体を加熱し熱交換機を介して冷水を加熱するヒートポンプは冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプとして動作するものである。
加熱冷却装置2871では、空冷ヒートポンプ2154a等による冷却を見込み、ヒートポンプ2004の最大冷熱出力を当該最低冷熱負荷より小さくしている。
このような加熱冷却装置2871は、第13形態と同様に動作し、例えば次のように動作する。
即ち、夏季の冷熱重負荷時等の図18(a)の場合、冷却負荷Cへ冷熱を供給する必要があり、冷熱負荷に応じた台数における空冷ヒートポンプ2154a等の冷房運転を行う。このとき、空冷ヒートポンプ2154a等の冷却側はヒートポンプ2004の冷却側に切り替わっている。又、複数の空冷ヒートポンプ2154a等が冷房運転していれば、全ての空冷ヒートポンプ2154a等につき冷房運転又は冷房運転待機の状態とする。ただし、全体としての冷却能力に余裕があれば、1台を暖房待機状態とする。
例えば、ヒートポンプ2004や空冷ヒートポンプ2154a等により冷水が7度で冷却負荷Cに供給され、ヒートポンプ2004や空冷ヒートポンプ2154a等には12度で戻る。このとき、ヒートポンプ2004の温水供給温度は55度であり、温水戻り温度は50度である。又、空冷ヒートポンプ2154a等による戻り冷水の冷却ないし冷却側供給パイプ2030への供給により、冷水温度ないし冷熱量を制御する。温水については、ヒートポンプ2004を温水追従モードで運転(熱回収運転)することにより、温水温度ないし加熱量を制御する。
又、冷熱軽負荷時等の図18(b)の場合、負荷に応じて冷房運転する空冷ヒートポンプ2154a等が所定台数(1台)以下となったら、他の所定台(1台)につき冷房待機を行い、残りの空冷ヒートポンプ2154a等につき暖房運転の待機を行う。暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等の加熱側は、ヒートポンプ2004の冷却側から加熱側に切替えられる。そして、自動制御装置は、ヒートポンプ2004の温水戻り温度が所定値以下となる等温熱の不足を検知したら、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転する。なお、空冷ヒートポンプ2154a等の内所定台(1台)以上において暖房運転が開始されると、冷房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を暖房待機状態に切替える。
例えば、ヒートポンプ2004や冷房運転する空冷ヒートポンプ2154a等により冷水が7度で冷却負荷Cの熱交換機に供給され、ヒートポンプ2004や空冷ヒートポンプ2154a等には12度で戻る。ここで、ヒートポンプ2004の温水供給温度は55度であるものの、温水戻り温度は50度から48度以下となったら、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転し、ヒートポンプ2004へ戻る温水を空冷ヒートポンプ2154a等により55度まで加熱し、ヒートポンプ2004の加熱側供給パイプ2034へ戻して温熱不足を解消する。
更に、冬場や生産状況等により冷熱負荷が少なくなった場合、図18(c)に示すように、ヒートポンプ2004による冷却は続行すると共に、空冷ヒートポンプ2154a等(の1台)を冷房運転して冷熱負荷を調整する。又、温熱負荷に応じて暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転し、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転すると、冷房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を暖房待機状態に切替える。なお、空冷ヒートポンプ2154a等において冷房待機機を(1台)設けても良い。
例えば、ヒートポンプ2004や冷房運転する空冷ヒートポンプ2154a等により冷水が7度で冷却負荷Cに供給され、ヒートポンプ2004には12度で戻る。ヒートポンプ2004や暖房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等による温水供給温度は55度であり、温水戻り温度は50度とされ、ヒートポンプ2004による温水ないし冷水の供給の継続を可能としている。
加えて、冷房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等がトリップ等により故障した場合、図19(a)に示すように、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を冷房モードに切替え冷房運転して冷熱不足を防止する。
以上の加熱冷却装置2871では、加熱負荷Hや冷却負荷Cに応じて空冷ヒートポンプ2154a等の状態を切替え、ヒートポンプ2004による加熱や冷却を補助するため、加熱負荷Hないし冷却負荷Cにつき年間を通じて的確に加熱ないし冷却することができ、ヒートポンプ2004の運転を継続させて、省エネルギー性の高い状態で加熱冷却装置2871を作動させることができる。
[第15形態]
図19(c)は第15形態に係る加熱冷却装置2881において温熱負荷が冷熱負荷に対して大きい場合等における模式図であって、加熱冷却装置2881は、第13形態と同様に成るが、ヒートポンプ2004の最大冷熱出力を当該最低冷熱負荷以上にしている点で相違する。
加熱冷却装置2881においては、温水追従運転中のヒートポンプ2004にあって、冷熱負荷が少ないことから冷熱が十分に利用されないで冷水が戻り、このままでは温熱と冷熱のバランスが崩れて運転が停止してしまうような場合、暖房運転中の(1台の)空冷ヒートポンプ2154a等の温水を熱交換機2040側に切替えて、ヒートポンプ2004の冷水を熱交換により加熱し、ヒートポンプ2004の冷水の冷熱を奪って温熱とのバランスを保ち、ヒートポンプ2004の運転を継続させる。なお、ヒートポンプ2004の加熱側の回路を熱交換機2040側に分岐可能とし、この分岐回路ないし熱交換機2040によってヒートポンプ2004の冷水側を加熱しても良い。
このような加熱冷却装置2881にあっても、ヒートポンプ2004の冷熱と温熱のバランスが維持されてヒートポンプ2004の運転を継続させることができ、省エネルギー性に優れた状態で加熱冷却装置2881を適切に運転することができる。
[第16形態]
図20(a)は第16形態に係る加熱冷却装置2901において冷熱負荷が温熱負荷に対して極めて大きい場合等における模式図、図20(b)は加熱冷却装置2901において冷熱負荷が温熱負荷に対して大きい場合等における模式図、図20(c)は加熱冷却装置2901において温熱負荷が冷熱負荷に対して大きい場合等における模式図、図21(a)は加熱冷却装置2901において冷熱負荷がない場合等における模式図、図21(b)は加熱冷却装置2901において冷熱負荷がなく温熱負荷が比較的に大きい場合等における模式図であって、加熱冷却装置2901は、第13形態と同様に成る。なお、図20,21においても一部の回路が省略されている。
又、加熱冷却装置2901は、第13形態と同様に、空気圧縮機2840を備えていると共に、ヒートポンプ2004の冷却側を空気圧縮機2840の冷却水(排温水)側に切替えるモーター弁2043,2045ないし回路を有している。
このような加熱冷却装置2901は、第13形態と同様に動作し、例えば次のように動作する。
即ち、冷熱重負荷時等の図20(a)の場合、冷却負荷Cへ冷熱を供給する必要があり、冷熱負荷に応じた台数における空冷ヒートポンプ2154a等の冷房運転を行う。このとき、空冷ヒートポンプ2154a等の冷却側はヒートポンプ2004の冷却側に切り替わっている。又、複数の空冷ヒートポンプ2154aが冷房運転していれば、全ての空冷ヒートポンプ2154a等につき冷房運転又は冷房運転待機の状態とする。ただし、全体としての冷却能力に余裕があれば、1台を暖房待機状態とする。
例えば、ヒートポンプ2004や空冷ヒートポンプ2154a等により冷水が7度で冷却負荷Cの熱交換機に供給され、ヒートポンプ2004や空冷ヒートポンプ2154a等には12度で戻る。このとき、ヒートポンプ2004の温水供給温度は65度であり、温水戻り温度は60度である。又、空冷ヒートポンプ2154a等による戻り冷水の冷却ないし冷却側供給パイプ2030への供給により、ヒートポンプ2004の冷熱負荷が軽減され、ヒートポンプ2004は運転を継続することができる。
又、冷熱軽負荷時等の図20(b)の場合、負荷に応じて冷房運転する空冷ヒートポンプ2154a等が1台となったら、他の1台につき冷房待機を行い、残りの空冷ヒートポンプ2154a等につき暖房運転の待機を行う。暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等の加熱側は、ヒートポンプ2004の冷却側から加熱側に切替えられる。そして、自動制御装置は、ヒートポンプ2004の温水戻り温度が所定値以下となる等温熱の不足を検知したら、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転する。なお、空冷ヒートポンプ2154a等の内1台でも暖房運転が開始されると、冷房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を暖房待機状態に切替える。
例えば、ヒートポンプ2004や冷房運転する空冷ヒートポンプ2154a等により冷水が7度で冷却負荷Cに供給され、ヒートポンプ2004や空冷ヒートポンプ2154a等には12度で戻る。ここで、ヒートポンプ2004の温水供給温度は55度であるものの、温水戻り温度は50度から48度以下となったら、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転し、ヒートポンプ2004へ戻る温水を55度まで加熱し、ヒートポンプ2004の加熱側供給パイプ2034へ戻して温水不足を解消する。
更に、冬季等で冷熱負荷が少なくなり、冷房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等の出力が所定値(最大出力の所定割合(25%)に応じた値)以下となるか、あるいは冷水戻り温度が所定値(10度)以下となった場合、図20(c)に示すように、ヒートポンプ2004の冷却側を空気圧縮機2840側に切替えると共に、空冷ヒートポンプ2154a等の1台を冷房運転して冷却負荷Cに対応する。又、温熱負荷に応じて暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転し、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転すると、冷房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を暖房待機状態に切替える。なお、空冷ヒートポンプ2154a等において冷房待機機を(1台)設けても良い。
例えば、ヒートポンプ2004は55度の温水を供給して50度の戻り温水を受ける一方、空気圧縮機2840側に30度の冷水を供給して冷却水との熱交換により35度の戻り冷水を受ける。加熱負荷Hの加熱はヒートポンプ2004によりまかなわれ、冷却負荷Cの冷却は冷房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等によりまかなわれる(供給7度,戻り12度)。ヒートポンプ2004の冷却側に空気圧縮機2840の排温水を適用することで、ヒートポンプ2004の運転が継続される。
一方、冷房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等の出力が所定値(最大出力の所定割合(85%)に応じた値)以上となるか、あるいは冷水戻り温度が所定値(15度)以上となった場合、ヒートポンプ2004を一旦停止し、冷水側を空気圧縮機2840の冷却水側に切替え、加熱負荷Hの温水を空冷ヒートポンプ2154a等でまかなった後、ヒートポンプ2004を温水追従運転して冷温水を供給する。
加えて、生産ライン立ち上げ時等で冷熱負荷がない図21(a)のような場合、空冷ヒートポンプ2154a等を加熱負荷に応じた台数で暖房運転し、残りを暖房待機状態とする。又、冷熱供給量調節弁2048の開度が所定値以上となるか、あるいは生産状況が所定のものとなったら、冷水の供給再開に対応するため、(1台の)空冷ヒートポンプ2154a等を冷房待機状態に切替える。
又、冬季の生産ライン立ち上げ時等で温熱負荷が大きい図21(b)のような場合、温水の熱量が加熱負荷に対して少なければ、その分ヒートポンプ2004の加熱側がボイラーからの蒸気STとの熱交換により加温され、加熱不足を防止する。例えば、ヒートポンプ2004の温水戻り温度が48度で温水供給温度が暖房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等によっても53度にしか昇温しない場合、自動制御装置は温度センサ等によりこの場合を把握して温熱供給量調節弁2864を作動させ、蒸気STにより供給する温水を55度に加温する。
以上の加熱冷却装置2901では、加熱負荷Hや冷却負荷Cに応じて空冷ヒートポンプ2154a等の状態を切替え、ヒートポンプ2004による加熱や冷却を補助すると共に、冷熱負荷がない場合にはヒートポンプ2004の冷却側を排温水側に切替えると共に必要に応じて空冷ヒートポンプ2154a等を冷房待機させるため、加熱負荷Hや冷却負荷Cにつき的確に加熱ないし冷却しながら、ヒートポンプ2004の運転を継続させて、省エネルギー性の高い状態で加熱冷却装置2901を作動させることができる。
[第17形態]
図21(c)は第17形態に係る加熱冷却装置2911において冷熱負荷がない場合等における模式図であって、加熱冷却装置2911は、第8形態と同様に成るが、冷却側回路の切替えにつき、モーター弁2043,2045で行うのではなく、熱交換機2040で空気圧縮機2840の冷却水との熱交換を行いつつ流量調節弁2046により行うものとしている。
このような加熱冷却装置2911にあっても、例えば空気圧縮機2840の40度の冷却水によってヒートポンプ2004の25度の冷水を30度に昇温できる(空気圧縮機2840の冷却水は35度となる)ため、温熱と冷熱のバランスを保持して省エネルギー性に優れたヒートポンプ2004の運転を継続させることができる。
[第18形態]
図22は第18形態に係る加熱冷却装置3001の模式図であって、加熱冷却装置3001は、第13形態と同様に成るが、温水ボイラー2506及び温水タンク2508が加熱側戻りパイプ2036側に配置されていると共に、冷却側戻りパイプ2032a〜2032dないし加熱側戻りパイプ2036a〜2036dのそれぞれに冷水ポンプ3002a〜3002dあるいは温水ポンプ3006a〜3006dが設置されている。又、ヒートポンプ2004aは、冷熱負荷調整機として位置づけられている。なお、冷熱負荷調整機はここでは1台とされているが、複数台配置しても良い。
加熱冷却装置3001の自動制御装置は、例えばヒートポンプ2004b等につき自身の温水供給温度に基づいて制御し、冷熱負荷調整機としてのヒートポンプ2004aにつき自身の温水供給温度及び冷水供給温度に基づいて制御し、温水ボイラー2506につき温水タンク2508の温度あるいは加熱側戻りパイプ2036の温水戻り温度に基づいて制御し、冷水戻り温度を調整する流量調節弁2046につき冷水戻り温度に基づいて制御し、加熱負荷Hへの温水供給量を調整する温熱供給量調節弁2109(第2温熱供給量調節手段)ないし冷却負荷Cへの冷水供給量を調整する冷熱供給量調節弁2048につき温水温度に基づいて制御する。これらの温度は、それぞれの温度センサにより検知され、自動制御装置により把握される。なお、加熱負荷Hへ供給しない温水は、温熱供給量調節弁2109からの分岐パイプ2110を通される。
このような加熱冷却装置3001は、第13形態と同様に動作し、例えば次のように動作する。
即ち、図23に示すように、自動制御装置は、加熱負荷Hの停止指令があれば(ステップS1001でNO)、ヒートポンプ2004a等や温水ボイラー2506を停止して(ステップS1002,1003)、処理を終了する。
一方、停止指令がなければ(ステップS1001でYES)、流量調節弁2046の開度が60%以下であるかを判定し(ステップS1004)、YESであれば、冷水を加温する工場排熱Xの熱量に余裕があるので、温水ボイラー2506が運転中でなければ最初に戻る(ステップS1005でNO)。なお、初期状態において、ヒートポンプ2004aは運転していると共に、ヒートポンプ2004b等は停止している。
他方、温水ボイラー2506が運転中であれば(ステップS1005でYES)、流量調節弁2046の開度を上げるためのループ1の処理に移る。即ち、まず冷熱負荷調整機としてのヒートポンプ2004aの温水ポンプ3006aにおける流量を増加する(ステップS1006)。すると、一時的にヒートポンプ2004aの温水供給温度が下がるので、ヒートポンプ2004aは、温水が設定温度(60度)となるように、出力を自動的に増加する(温熱追従運転,インバーター出力増)。
温水出力が増加すると、これに伴い冷水出力も増加して、そのままでは冷水温度が低下していくので、自動制御装置は、流量調節弁2046の開度が所定値(70%)に上昇し、工場排熱X(35度)との熱交換量が増加して冷水戻り温度(17度,供給温度10度)が維持される状態で落ち着くように、ヒートポンプ2004a等や温水ボイラー2506を次のように制御する。
即ち、自動制御装置は、ヒートポンプ2004aの負荷が最大負荷に対して所定割合(95%)以下であるか否か確認する(ステップS1007)。ヒートポンプ2004aの負荷が所定割合以下でなければ(NO)、ヒートポンプ2004b等のうち運転していないものを(1台)起動し(ステップS1008)、ステップS1009に移行する。又、ヒートポンプ2004aの負荷が所定割合以下であれば(ステップS1007でYES)、ステップS1008を実行せずにステップS1009に移行する。
又、ヒートポンプ2004aの戻り温水の流量を増やすと、加熱負荷Hへの温水流量も増加し、温水戻り温度が上昇するため、他熱源としての温水ボイラー2506の出力を絞ることで、温水戻り温度を適切な温度差(ヒートポンプ2004aの最大出力時のもの,差分5度)が確保されるようにする。
即ち、自動制御装置は、ステップS1009において、温水戻り温度が所定値(56度)以上となったか否か監視する。温水戻り温度が所定値以上であれば温水戻り温度を所定値(55度)まで下げるためのループ2を実行し、そうでなければループ1の先頭(ステップS1007)若しくは処理の先頭(流量調節弁46の開度が所定値に達した場合,ステップS1001)に戻る。ループ2では、温水ボイラー2506の出力を減じていく(ステップS1010)。
例えば、450kWの温熱負荷を賄う場合、温水流量毎時43トンで温度差5度となるヒートポンプ2004aでは250kW(43×1000×5を860kW/kcalで除する)を賄い、又温水ボイラー2506では200kWを賄っている状態から、温水流量を毎時60.2トンに増加すると、一時的にヒートポンプ2004aの温水供給温度が下がり、当該温度を設定値まで回復するためインバーターで350kW(60.2×1000×5/860)に増加され、加熱負荷Hからの温水戻り温度が上昇するものの、これに従い温水ボイラー2506の出力を100kWに絞るので、ヒートポンプ2004aでの温水供給・戻り温度差を保持しながら、450kWの温熱負荷に対応することができる。
なお、以上に対し、温水ボイラー2506によって温水戻り温度を調整しないとすると、戻り温水の流量を増やしても一時的にヒートポンプ2004aの温水供給温度が下がるので、温水追従運転をするヒートポンプ2004aは出力を増して温水供給温度を設定値(70度)とする。すると、一時的に設定温度における温水の流量が増えて熱量が増えるが、加熱負荷Hにおける熱消費量は変わらない程度の時間経過であるため、温水戻り温度が上昇して供給温度との差が少なくなり、温水追従運転によりヒートポンプ2004aの出力が絞られるため、結局ヒートポンプ2004aの加熱出力は変わらないとみることができ、よって冷却出力も増加しないことになる。
例えば、450kWの温熱負荷を賄う場合、ヒートポンプ2004aにおいて温水流量毎時77.4トンで温度差5度のところ流量を毎時129トンに増加しても温度差が3度となり、加熱出力は450kWで変わらない。即ち、流量を増すと一時的に温水供給温度が58度に下がるが、温水追従運転により温水温度を60度とするためインバーター出力が増加され、一時的に750kWの高出力となる。しかし、加熱負荷Hでの負荷が450kWであるため温熱が用いられず温水戻り温度が上がることとなり、温水供給温度との温度差が縮まって結局ヒートポンプ2004aの温水出力が加熱負荷Hに合っていく。
一方、流量調節弁2046の開度が所定値(60%)以下でなければ(ステップS1004でNO)、更に当該開度がこれを上回る特定値(80%)以上であるかをチェックし(ステップS1011)、そうでなければ、処理の先頭(ステップS1001)に戻り、そうであれば、工場排熱Xの熱量が不足するものとして、流量調節弁2046の開度を当該所定値と特定値の間の値(70%)に下げるためのループ3を実行する。
ループ3では、ヒートポンプ2004aの温水ポンプ3006aにおける流量を減らし(ステップS1012)、ヒートポンプ2004aの負荷が最大負荷に対して所定割合(50%)以上であるか否か確認する(ステップS1013)。自動制御装置は、ヒートポンプ2004aの負荷が所定割合以上でなければ、ヒートポンプ2004b等のうち運転中のものを(1台)停止し(ステップS1014)、ステップS1015に移行する。又、自動制御装置は、ヒートポンプ2004aの負荷が所定割合以上であれば、ステップS1014を実行せずにステップS1015に移行する。
自動制御装置は、ステップS1015において、温水戻り温度が所定値(54度)以下となったか否か監視する。温水戻り温度が所定値以下であれば温水戻り温度を所定値(55度)まで上げるためのループ4を実行し、そうでなければループ3の先頭(ステップS1012)若しくは処理の先頭(流量調節弁2046の開度が所定値に達した場合,ステップS1001)に戻る。ループ4では、温水ボイラー2506が自動運転モードでなければ当該モードとしたうえで(ステップS1016,S1017)、温水ボイラー2506の出力を増していく(ステップS1018)。
このようなループ3等の実行により、温水ポンプ3006aの流量を減らすと共に他熱源としての温水ボイラー2506による加温量を調整して、ヒートポンプ2004aにおける温水側の温度差を適切に保持し、冷熱負荷に適切に対応することができる。
例えば、350kWの温熱負荷を賄う場合、温水流量毎時60.2トンで温度差5度となるヒートポンプ2004aでは350kWを賄っている状態から、温水流量を毎時43トンに減少すると、一時的にヒートポンプ2004aの温水供給温度が上がり、当該温度を設定値へ下げるためインバーターで250kWに絞られて、加熱負荷Hからの温水戻り温度が下がるものの、これに伴い温水ボイラー2506による100kWの加熱を開始するので、ヒートポンプ2004aでの温水供給・戻り温度差を差分5度に保持しながら、350kWの温熱負荷に対応することができる。
なお、以上に対し、温水ボイラー2506によって温水戻り温度を調整しないとすると、例えば温水流量を毎時60.2トンから毎時43トンに絞っても、結局温度差が7度に広がって加熱出力が350kWから変わらない。
以上の加熱冷却装置3001では、流量調節弁2046の開度が所定値以上となって工場排熱Xの熱量が不足し温熱負荷に対する冷熱のバランスが取れなくなってヒートポンプ2004が停止しそうになると、適宜ヒートポンプ2004の一部を停止したり、温水ボイラー2506の出力を増したりし、又流量調節弁2046の開度が所定値以下(かつ温水ボイラー2506運転中)となって工場排熱Xの熱量に余裕がありヒートポンプ2004による運転が可能な状況になると、順次ヒートポンプ2004の運転を開始するので、温熱負荷に適切に対応しつつ運転の継続可能な状態で最大数のヒートポンプ2004を稼働させることができ、運転に影響のない範囲でなるべくヒートポンプ2004の他熱源に対する運転比率を向上して、温熱負荷が変動しても省エネルギー性の高い状態で加熱冷却を施すことができる。
又、加熱冷却装置3001では、工場排熱Xや温水ボイラー2506という他熱源が設置されると共に、冷水ポンプ3002a等や温水ポンプ3006a等によってヒートポンプ2004に対する媒体の流量を調整するため、流量の調整によって媒体温度ないし媒体熱量を制御することができる。
更に、加熱冷却装置3001では、複数のヒートポンプ2004のうちの一部を冷水負荷調整機とし、その負荷に応じて他のヒートポンプ2004の追加起動や停止を行うため、単数あるいは複数のヒートポンプ2004を負荷が過剰とならない範囲で負荷の高く効率の良好な状態で運転することができ、又このような適切な運転を冷熱負荷調整機の負荷というシンプルな指標に基づいて簡便に実行することができる。
[第19形態]
図24は第19形態に係る加熱冷却装置の動作を示すフローチャートであって、当該加熱冷却装置は、第18形態と同様に成るが、冷却側戻りパイプ2032(冷却側戻りパイプ32aに分岐する手前・上流側)に冷水タンクを備えている。又、図示しない冷水チラーが、後述の第21形態(図26参照)と同様、冷却側に接続されている。
このような加熱冷却装置は、第18形態と同様に動作するが、流量調節弁2046の開度の代わりに、冷水タンク等における冷水戻り温度に基づいて、ヒートポンプ2004の運転台数を変更したり、他熱源の出力を増減したりする。
即ち、冷水戻り温度が特定値(17度)以上であって(ステップS1021でYES)、温水ボイラー2506が運転中であれば(ステップS1005でYES)、冷水戻り温度を所定値(15度)まで下げるためにループ1を実行する。なお、温水ボイラー2506が運転中でなければ(ステップS1005でNO)、冷水チラーを運転する(ステップS1022)。
又、冷水戻り温度が特定値(13度)以下であれば(ステップS1023でYES)、冷水戻り温度を所定値(15度、下げる場合の所定値と異なっても良い)まで上げるためにループ3を実行する。なお、ステップS1012の手前において、冷水チラーが運転中か否かを確認し(ステップS1024)、運転中であれば(YES)、冷水チラーを1台停止して(ステップS1025)ループ3の末尾に移行し、運転中でなければ(NO)、ステップS1012を実行する。
以上の第19形態に係る加熱冷却装置においても、第18形態に係る加熱冷却装置3001と同様、温熱負荷に適切に対応しつつ運転の継続可能な状態で最大数のヒートポンプ2004を稼働させることができ、運転に影響のない範囲でなるべくヒートポンプ2004の他熱源に対する運転比率を向上して、温熱負荷が変動しても省エネルギー性の高い状態で加熱冷却を実行することができる。
[第20形態]
図25は第20形態に係る加熱冷却装置の動作を示すフローチャートであって、当該加熱冷却装置は、第19形態と同様に成るが、温水ボイラー2506と接続された温水タンクが、加熱側供給パイプ2034及び加熱側戻りパイプ2036の双方(合流分岐部と温熱供給量調節弁2109の間)において介装されており、当該温水タンクと加熱負荷Hの間における加熱側供給パイプ2034には、当該温水タンクから温水を加熱負荷H(温熱供給量調節弁2109)に供給するためのポンプが設置されている。
又、第20形態の加熱冷却装置にあっては、冷水を直接冷却しあるいは冷水を冷却するための媒体を冷却する冷水チラーが、1台又は複数台設置されている。当該冷水チラーの冷水側は、ヒートポンプ2004と同様に接続されている。又、冷水チラーには、冷却時に発生した熱を冷却するため、ヒートポンプ2004の温水回路から独立しているクーリングタワーが接続されているが、クーリングタワーを必要としない空冷式としても良い。なお、排熱回収型ヒートポンプ(の予備機)を冷水チラーとして用いても良い。
このような加熱冷却装置は、第19形態と同様に動作するが、冷水温度をヒートポンプ2004の台数の増減に加えて(増減をする前に)冷水チラーにより制御することが可能である。
即ち、冷水戻り温度が特定値(17度)以上であって(ステップS1021でYES)、温水ボイラー2506が運転中でなければ(ステップS1005でNO)、冷水チラーを運転する(ステップS1031)。なお、温水ボイラー2506が運転中であれば(ステップS1005でYES)、冷水戻り温度を所定値(15度)まで下げるためにループ1を実行するが、ループ1においては、温水タンク内の温水の温度が所定値(60度)以上である場合にループ2を実行する(ステップS1032)。又、ループ3においても、温水タンク温度が所定値(57度)以下である場合にループ4を実行する(ステップS1033)。
なお、第20形態の加熱冷却装置に係る処理を次のように変更することができる。即ち、ステップS1006において、冷水負荷調整機としてのヒートポンプ2004a等の温水温度設定値を上げる(上限の設定可,60度)。これにより、ヒートポンプ2004a等の出力が自動的に増加し(インバーター出力増)、付随して冷水出力も増加するため、冷水温度が一時的に減少しつつ維持される。又、温水タンク2508への温水往き温度が上がって温水タンク2508内の温水温度が上がるため、他熱源(温水ボイラー2506)の出力を絞り、温熱負荷と温熱供給量がバランスする。他熱源による温熱供給調整により温水温度が所定温度(60度)に保持され、ヒートポンプ2004a等の温水戻り温度は変わらず、温水往き温度と温水戻り温度の差が変化する。例えば、温水流量毎時43トンで温度差5度を賄うヒートポンプ2004a等の出力250kWと他熱源の出力200kWで温熱負荷450kWを賄っている場合に、温水流量は同じで温度差7度となったとすると、ヒートポンプ2004a等の出力は350kWに増加し、他熱源の出力は100kWに自動的に減ぜられる。なお、他熱源を用いず温水タンク2508内の温水温度を制御しない場合、温水温度を増やしてもヒートポンプ2004a等の出力は変わらない。
一方、ステップS1012において、冷水負荷調整機としてのヒートポンプ2004a等の温水温度設定値を下げる(下限の設定可,55度)。これにより、ヒートポンプ2004a等の温水出力が自動的に減少し(インバータ出力減)、付随して冷水出力も減少するため、冷水温度が一時的に上昇する。又、温水タンク2508への温水戻り温度が下がって温水タンク2508内の温水温度が下がるため、他熱源(温水ボイラー2506)の出力を上げ、温熱負荷に対する温熱供給量の一時的不足分を賄う。他熱源による温熱供給調整により温水タンク2508内の温水温度が所定温度(60度)に保持され、ヒートポンプ2004a等の温水戻り温度は変わらず、温水往き温度と温水戻り温度の差が変化する。例えば、温水流量毎時43トンで温度差7度を賄うヒートポンプ2004a等の出力350kWで温熱負荷350kWを賄っている場合に、温水流量は同じで温度差5度となったとすると、ヒートポンプ2004a等の出力は250kWに減少し、他熱源の出力は100kWと自動的に増加される。なお、他熱源を用いず温水タンク2508内の温水温度を制御しない場合、温水流量を減らしてもヒートポンプ2004a等の出力は変わらない。
他方、ステップS1006において、他熱源としての温水ボイラー2506の温水温度設定値を所定値(1度,62度から61度)だけ下げることもできる(下限の設定可,55度)。これにより、一時的に温水供給温度が下がり、温水戻り温度も下がる(57度から56度)。又、ヒートポンプ2004a等は温水供給温度を設定値(60度)に制御するから、温水戻り温度の低下により出力を自動的に増やす(温度差が3度から4度と大きくなることによる)。更に、増加した加熱負荷に応じるためヒートポンプ2004a等の出力を増やした場合には、付随して冷水出力が増加するため、冷水温度が低下して冷水温度が維持される。例えば、温水流量毎時43トンで温度差3度を賄うヒートポンプ2004a等の出力150kWと他熱源の出力200kWで温熱負荷350kWを賄っている場合に、温水流量は同じで温度差4度となったとすると、ヒートポンプ2004a等の出力は200kWに増加し、他熱源の出力は150kWに自動的に減ぜられる。
一方、ステップS1012において、他熱源としての温水ボイラー2506の温水温度設定値を所定値(1度)だけ上げることもできる(下限の設定可,55度)。これにより、一時的にヒートポンプ2004a等の温水出力が下がり、冷水出力も下がる。又、加熱負荷Hへの温水供給温度が上がって温水戻り温度も上がるところ(55度から56度)、ヒートポンプ2004a等は温水供給温度を設定値(60度)に制御するから、温水戻り温度の上昇により出力を自動的に絞る(温度差が5度から4度と少なくなることによる)。例えば、温水流量毎時43トンで温度差7度を賄うヒートポンプ2004a等の出力350kWを賄っている場合に、他熱源の設定温度を上げることで温水流量は同じながら温度差5度となったとすると、ヒートポンプ2004a等の出力は250kWに絞られ、他熱源の出力は100kWとされ、更に他熱源の設定温度を上げることで温水流量は同じながら温度差4度となったとすると、ヒートポンプ2004a等の出力は200kWに絞られ、他熱源の出力は150kWとされる。
以上の第20形態に係る加熱冷却装置においても、第19形態に係る加熱冷却装置と同様、温熱負荷に適切に対応しつつ運転の継続可能な状態で最大数のヒートポンプ2004を稼働させることができ、又冷水チラーを配備することによりヒートポンプ10の台数を減じる前に冷水温度を調整することができ、運転に影響のない範囲でなるべくヒートポンプ2004の他熱源に対する運転比率をよりきめ細かく向上して、温熱負荷が変動しても省エネルギー性の高い状態で加熱冷却を実行することができる。
[第21形態]
図26は第21形態に係る加熱冷却装置3051の模式図であって、加熱冷却装置3051は、第18形態と同様に成るが、第20形態の冷水チラーと同様の冷水チラー3052a,3052bが複数設置されている。冷水チラー3052a等には、温熱渡しパイプ3054a等と温熱戻りパイプ3056a等を介してクーリングタワー2504c等と接続されている。温熱戻りパイプ3056a等には、ポンプ3057a等が配置されている。なお、冷水チラーは、単数でも良い。又、加熱冷却装置3051は、第18形態と同様の温水タンク3058を有する。
更に、ヒートポンプ2004a,2004bは、冷水の温度あるいは冷熱が一定となるような冷水追従運転が可能であり、ヒートポンプ2004a,2004bは温熱負荷調整機として位置づけられているが、全台を温熱負荷調整機としなくても良いし、ヒートポンプ2004につき単数あるいは3台以上としても良い。
加熱冷却装置3051の自動制御装置は、例えば温熱負荷調整機としてのヒートポンプ2004a,2004bにつき自身の冷水供給温度及び温水供給温度に基づいて制御し、温水ボイラー2506につき温水タンク3058の温度あるいは加熱側供給パイプ2034の温水供給温度に基づいて制御し、加熱負荷Hへの温水供給量を調整する温熱供給量調節弁2109ないし冷却負荷Cへの冷水供給量を調整する冷熱供給量調節弁2048につき温水温度に基づいて制御する。これらの温度は、それぞれの温度センサにより検知され、自動制御装置により把握される。
このような加熱冷却装置3051は、第18,20形態と同様に動作し、例えば次のように動作する。
即ち、図27に示すように、自動制御装置は、ヒートポンプ2004の温水供給温度が58度以下であれば(ステップS1051でYES)、温水供給温度を所定温度(60度)に上げるためのループ1を実行し、ヒートポンプ2004の温水供給温度が特定温度(62度)以上であって温水ボイラー2506が停止中であれば(ステップS1051でNO、ステップS1060,S1061で共にYES)、温水供給温度を所定温度(60度)に下げるためのループ3を実行する。なお、ステップS1061でNOであれば、温水ボイラー506の出力を減じ(ステップS1062)、処理の最初に戻る。
自動制御装置は、ループ1において、温熱負荷調整機としてのヒートポンプ2004a,2004bの冷水ポンプ3002aの流量を増し(ステップS1052)、冷水供給温度が特定温度(7度)以下であれば(ステップS1053でYES)、冷水供給温度を所定温度(10度)とするために冷水チラー3052a,3052bの出力を減ずる(台数を減らすことを含む、ステップS1054)ループ2を実行して、ヒートポンプ2004の温水供給温度が所定温度(60度)から所定温度幅内に収まるか否か判断する(ステップS1055)。一方、ステップS1053でNOであれば、ループ2を実行せずにステップS1055に移行する。
ステップS1055でYESであれば、温水ボイラー2506の出力を減じ(ステップS1056)、ループ1の最初に戻る。一方、ステップS1055でNOであれば、ヒートポンプ2004aの負荷が所定値(最大負荷の95%)以下であるか確認し(ステップS1057)、YESであればループ1の最初に戻り、NOであれば温水ボイラー2506の出力を増して(ステップS1058)、処理の最初に戻る。
即ち、ループ1では、温熱負荷調整機としてのヒートポンプ2004a,2004bの冷水ポンプ3002aの流量を増やすと、一時的にヒートポンプ2004a,2004bの冷水供給温度が上昇し、ヒートポンプ2004a,2004bの冷水供給温度を所定温度(10度)にするようにヒートポンプ2004a,2004bが出力を自動的に増やす(インバーター出力増)。ヒートポンプ2004a,2004bの冷水出力が増加すれば、温水出力も増加するため、温水温度を所定値に維持させる。
一方、自動制御装置は、ループ3において、ヒートポンプ2004a,2004bの冷水ポンプ3002aの流量を減じ(ステップS1063)、冷水供給温度が特定温度(13度)以上であるか否か判断する(ステップS1064)。YESであれば冷水供給温度を所定温度(10度)に下げるためのループ4を実行し、NOであればループ4を実行せずループ3の最初に戻る。ループ4においては、冷水チラー3052a,3052bの出力を増し、あるいは台数を増やす(ステップS1065)。
即ち、ループ3では、温熱負荷調整機としてのヒートポンプ2004a,2004bの冷水ポンプ3002aの流量を減らすと、一時的にヒートポンプ2004aの冷水供給温度が下がり、ヒートポンプ2004a,2004bの冷水供給温度を所定温度(10度)にするようにヒートポンプ2004a,2004bが出力を自動的に絞る(インバーター出力減)。ヒートポンプ2004a,2004bの冷水出力が減少すれば、温水出力も減少するため、冷水チラー3052a,3052bにより冷熱の不足分を補う。
なお、加熱冷却装置3051における処理を次のように変更することができる。即ち、ステップS1052において、温水負荷調整機であるヒートポンプ2004a等の冷水温度設定値を下げる。これにより、ヒートポンプ2004a等の出力が自動的に増加し(インバーター出力増)、付随して温水出力も増加するため、温水温度が上昇して温水温度が維持される。又、冷水往き温度が下がり、冷水戻り温度が一時的に下がるため、冷水チラーの出力を減じ(ステップS1054)、冷却負荷とバランスさせる。一方、ステップS1063において、温水負荷調整機であるヒートポンプ2004a等の冷水温度設定値を上げる。これにより、ヒートポンプ2004a等の出力が自動的に絞られ(インバータ出力減)、付随して温水出力も減少するため、供給温熱量が減少して温水温度が低下する。又、冷水往き温度が上がり、冷水戻り温度が一時的に上がるため、冷水チラーの出力を増して(ステップS1065)、冷却負荷Cとバランスさせる。
又、ステップS1052において、温水負荷調整機であるヒートポンプ2004a等の冷水戻りパイプ2032aを工場排熱Xで加温する。これにより、ヒートポンプ2004a等の出力が自動的に増加し(インバーター出力増)、付随して温水出力も増加するため、温水温度が上昇して温水温度が維持される(冷却負荷量調整手段)。なお、ヒートポンプ2004a等冷水負荷が変わるものの、冷却負荷Cへの冷水供給量(冷水温度)は変わらないため、冷水チラーの出力も変わらない(ステップS1053でNo)。一方、ステップS1063において、温水負荷調整機であるヒートポンプ2004a等の冷水戻りパイプ2032aを工場排熱Xにより加熱している状況で、排熱との熱交換量を少なくする。これにより、ヒートポンプ2004a等の出力が自動的に絞られ(インバーター出力減)、付随して温水出力も減少するため、供給温熱量が減少して温水温度が低下する(冷却負荷量調整手段)。なお、ヒートポンプ2004a等の冷水負荷が変わるものの、冷却負荷Cへの冷水供給量(冷水温度)は変わらないため、冷水チラーの出力も変わらない(ステップS1064でNo)。
以上の加熱冷却装置3051では、冷水追従運転するヒートポンプ2004と、冷水チラー3052a,3052bを備えているため、年間を通じて冷熱負荷がある加熱冷却において温熱負荷に適切に対応しながら冷水追従運転を行うことができ、極めて省エネルギー性の高い状態で加熱冷却を実施することができる。
又、加熱冷却装置3051では、冷水ポンプ3002a等によってヒートポンプ2004に対する媒体の流量を調整するため、流量の調整によって媒体温度ないし媒体熱量を制御することができる。
更に、加熱冷却装置3051では、複数のヒートポンプ2004を温熱負荷調整機とし、その負荷に応じて温水ボイラー2506等の起動や停止を行うため、温水ボイラー2506等を効率の良好な状態で運転することができ、又このような適切な運転を冷熱負荷調整機の負荷というシンプルな指標に基づいて簡便に実行することができる。
[第22形態]
図28は第22形態に係る加熱冷却装置3101の模式図であって、加熱冷却装置3101は、第1形態と同様に成るが、第21形態の冷水チラーと同様に冷却側に単数又は複数配置される空冷ヒートポンプ3102を備える。空冷ヒートポンプ3102にあっては、暖房運転ないし冷房運転が可能である。又、冷却側において、パイプ16,26と接続される冷水タンク3104が設置されている。
冷水タンク3104には、更に冷却負荷Cに対するパイプ3116,3126が接続されており、パイプ3116にはポンプ3152が介装され、パイプ3126には熱交換機3130が介装される。空冷ヒートポンプ3102には、熱交換機3130に媒体を供給する媒体供給パイプ3160と、熱交換機3130からの媒体を受ける媒体戻りパイプ3162が接続されている。媒体供給パイプ3160には、第2熱交換機3164が介装され、媒体戻りパイプ3162には、ポンプ3166が介装される。第2熱交換機3164には、他熱源Zとしての他補助熱源(ここでは蒸気)HHが補助流量調節弁3180を経て導入される。
なお、熱交換機3130はパイプ26あるいは冷水タンク3104に設置しても良い。又、空冷ヒートポンプ3102とタンク3104につき専用のポンプを介して互いに接続し、空冷ヒートポンプ3102によって直接熱交換しても良い。更に、空冷ヒートポンプ3102をパイプ3126へ直接接続し、モード切換時の媒体の戻り温度を制御しても良い。加えて、他補助熱源HHにつき冷却機としたり冷暖可能機としたりすることができる。
第22形態に係る加熱冷却装置3101は、主に暖房ないし冷房の運転切替を円滑に実行するため、例えば次のように動作する。
即ち、図28(a)に示すように、加熱負荷H(350kW)が冷却負荷C(170kW)に対して重い場合、ヒートポンプ10は加熱負荷Hに見合った温水を供給し、更に付随して生成される冷水を供給する(220kW)。そして、温水に対する冷水のバランスを取るために、空冷ヒートポンプ3102を暖房運転して加温された媒体(30度から35度へ)を冷水加温用の熱交換機3130へ供給する(50kW)。冷水往き温度の冷水温度(パイプ16,3116内の冷水温度)は20度であるところ、冷却負荷Cから戻る直後のパイプ3126内の冷水温度は24度となり、熱交換機3130通過後の冷水温度やヒートポンプ10への冷水戻り温度は25度となって、ヒートポンプ10の運転が継続される。
これに対し、温熱負荷が減少する(254kWとなる)等して温熱に対する冷熱のバランスが取れなくなる場合、自動制御装置は冷水往き温度が所定値(22度)以上となったことの検知等によりこの場合を把握し、空冷ヒートポンプ3102を運転切替のため一時的に停止する一方、媒体戻りパイプ3162のポンプ3166を継続運転する。空冷ヒートポンプ3102における暖房モードないし冷房モードの切替は即時に実行可能なものではなく、所定時間(3分間)停止(機器インターロック)後に異なるモードで再起動する必要がある。ポンプ3166の継続運転により、媒体と冷水との熱交換機3130における熱交換は継続し、加温されていた媒体を冷水により冷却する(媒体35度から28度,冷水戻り温度26度)。運転切替時に媒体が冷却されることで、冷却されない場合と比較してより一層円滑に暖房モードから冷房モードに切り替わり、冷房運転をスムーズに開始することが可能である。
即ち、空冷ヒートポンプ3102が冷房モードで運転を開始するためには、ヒートポンプサイクルを成立させるために冷水出口温度が例えば20度以下でなければならず、媒体が35度であるとまず例えば30度まで外部冷却機等により下げ、更に空冷ヒートポンプ3102の運転切替用のモード(ウォーミング運転)で30度から20度まで温度を下げなければならない(およそ30分間前後を要する)ところ、加熱冷却装置3101では、外部冷却機に頼らずに、媒体と冷水との熱交換によってまず30度に素早く下げることができ、更にウォーミング運転への移行も不要とすることができ、結果切替に要する時間を大幅に短縮することができる。なお、冷却可能な他補助熱源を用いて媒体を冷却すれば、更に素早く切替を行うことができる。
そして、図28(c)に示すように、温熱負荷(250kW)に対して冷熱負荷(170kW)が重い場合、空冷ヒートポンプ3102は冷房運転し、18度に冷却された媒体13kWを供給する。一方、ヒートポンプ10は20度の冷水157kWを冷水タンク3104へ供給し、冷水タンク3104は冷却負荷Cに応じて20度の冷水を冷却負荷Cへポンプ3152を介し供給する。冷却負荷Cから戻る24度の冷水は空冷ヒートポンプ3102からの媒体(冷熱13kW)により23.6度となり、冷水タンク3104を経てヒートポンプ10へ戻る。こうして冷熱負荷170kWは冷水(157kW)及び媒体による冷却(13kW)で賄われる。他方、ヒートポンプ10は冷水供給に係る冷却負荷C(157kW)に見合った温熱250kWを供給し、温熱負荷に対応する。
なお、図28(b)の場合から温熱負荷が相対的に増した際ないし冷房から暖房への切替時には、上述の暖房から冷房への切替と丁度逆の動作を行う。即ち、ヒートポンプ10の冷水温度低下による運転停止を防ぐため、空冷ヒートポンプ3102を冷房運転から暖房運転へ切り替える場合、機器インターロックにより再起動に時間がかかるし、媒体温度が所定温度(25度)以下であるとヒートポンプサイクル成立のため更に暖房モード切替前にウォーミングモードで運転して25度にする必要がある(およそ30分間前後を要する)ところ、加熱冷却装置3101では、媒体と冷水との熱交換によってまず20度程度に素早く上げることができ、20度から25度への昇温は他補助熱源HHを用いて媒体を加熱することで、ウォーミングモードにおける運転を省略可能であり、結果切替に要する時間を大幅に短縮することができる。なお、他補助熱源HHの加熱のみによっても媒体を25度へ加温することもでき、更に空冷ヒートポンプ3102のモード切換(約3分)の間は他補助熱源HHでヒートポンプ10の冷水を加温することで、ヒートポンプ10の停止を防止することができる。
以上の加熱冷却装置3101では、ヒートポンプ10の冷却側の空冷ヒートポンプ3102の運転切替中においても空冷ヒートポンプ3102の媒体を循環させるため、当該媒体が冷房切替時にはヒートポンプ10の冷水により冷却され、暖房切替時には当該冷水により加温されて、当該媒体に何もなされず温度が変わらない場合に比べ当該媒体温度を切替後のモードに合った状態に積極的に調整することができ、空冷ヒートポンプ3102の運転切替や切替後の運転を極めて円滑なものとすることができる。
又、加熱冷却装置3101では、他補助熱源HHにより媒体を暖房(冷房)切替時に加熱(冷却)するため、更に運転切替を素早く行うことが可能となる。
[第23形態]
図29に示す第23形態に係る加熱冷却装置3251は、第1形態と同様に成るが、温水タンク3058や冷水タンク3104を備えていると共に、温水タンク3058に他熱源Z(蒸気や電気ヒータ等)が導入されるようになっており、更に冷水タンク3104に空冷ヒートポンプ2154(クーリングタワー・井戸水による冷却装置・排熱・加温中の空冷ヒートポンプ等でも良い)が接続されている。又、ヒートポンプ10と温水タンク3058の間には、第7形態と同様、クーリングタワー404や三方弁410が配置されている。この加熱冷却装置3251は、第1形態と同様に動作する他、例えば図30に示すように動作する。
即ち、ヒートポンプ10は、冷水追従モードにおいて、冷水供給温度設定値(12度)で冷水を供給するように運転され、空冷ヒートポンプ2154より優先して運転される。又、ヒートポンプ10は、温水追従モードにおいて、温水供給温度設定値(60度)で温水を供給するように運転され、他熱源Zの導入より優先して運転される。一方、空冷ヒートポンプ2154は第1規定温度(15度,ヒートポンプ10冷水供給温度設定値より高い値)の冷水を冷水タンク3104へ供給し、他熱源Zは温水タンク3058が第2規定温度(50度,ヒートポンプ10温水供給温度設定値より低い値)以下となった場合に供給される。温水はヒートポンプ10に例えば55度で戻り、冷水はヒートポンプ10や空冷ヒートポンプ2154に例えば17度で戻る。
そして、自動制御装置は、まずヒートポンプ10を温水追従モード(冷水追従モードでも良い)で起動し(ステップS1301)、監視している冷水供給温度が第1所定温度(10度)未満である場合のみ(ステップS1302でYES)、ヒートポンプ10の運転モードを冷水追従モードへ変更する(ステップS1303)。又、自動制御装置は、監視している温水供給温度が特定温度(62度)を超える場合のみ(ステップS1304でYES)、ヒートポンプ10につき冷水追従モードから温水追従モードへ変更する(ステップS1305)。なお、自動制御装置は、停止プッシュボタン(停止PB)の押下等によりヒートポンプ10の停止指令がない限りステップS1302からの処理を繰り返し(ステップS1306でNO)、停止指令があると(ステップS1306でYES)、ヒートポンプ10を停止する(ステップS1307)。
なお、ステップS1302において、冷水供給温度が所定温度未満となる状態が所定時間継続した場合(自動制御装置と接続されたタイマにより把握する)にモード切換をするようにしても良い。又、ステップS1304についても同様に変更可能である。加えて、冷水供給温度の監視に代えて、冷水戻り温度や冷水タンク3104の温度あるいはこれらの組合せの監視としても良く、温水温度に関しても同様に変更可能である。
更に、自動制御装置は、ステップS1302でNOとなると、冷水供給温度が第2所定温度(15度)未満であるか確認し(ステップS1308)、第2所定温度未満であれば(YES)ステップS1304に移行し、第2所定温度以上であれば(NO)温水追従モードから冷水追従モードへ切替える(ステップS1309)。
続いて、自動制御装置は、冷水供給温度が第2所定温度(15度)を上回るか確認し(ステップS1310)、第2所定温度を上回る場合のみ(YES)、ヒートポンプ10による温水供給を停止すると共に(ステップS1311)、クーリングタワー404の温水温度設定値を第1温水冷却設定温度(65度)から第2温水冷却設定温度(32度)へ変更する(ステップS1312)。そして、停止PBがONにならない限り処理を繰り返す(ステップS1313)。
このような第23形態の加熱冷却装置3251では、ヒートポンプ10の運転モードの切替あるいは他熱源Z・他冷熱源(空冷ヒートポンプ2154)により、冷却負荷Cに対して供給冷熱が過剰となる場合に冷水追従モードとして冷却負荷Cに適切に対応すると共に加熱負荷Hに温水と他熱源Zで対応し、加熱負荷Hに対して供給熱が過剰となる場合に温水追従モードとして加熱負荷Hに適切に対応すると共に冷却負荷Cに冷水と他冷熱源で対応する。従って、省エネルギー性能が極めて良好な状態でヒートポンプ10の運転を継続することが可能となる。
[第24形態]
図31に示す第24形態に係る加熱冷却装置3301は、熱交換機30に係る回路を除き、第1形態と同様に成る。加熱冷却装置3301にあって、熱交換機30へのパイプ32は排熱の冷却機としてのクーリングタワー3302の供給パイプとなっており、熱交換機30からのパイプ34は工場に属するコンプレッサー等の冷却を要する要冷却設備としての要冷却機器3304へのパイプとなっている。要冷却機器3304とクーリングタワー3302の間には、前者から後者へ媒体を導くパイプ3306が渡されており、パイプ3306には媒体熱量調節手段(機器冷却水温度調節手段)としての媒体流量調節弁3308が介装されていて、媒体流量調節弁3308の分岐側はパイプ32に接続されている。なお、クーリングタワー3302を複数台設置しても良いし、クーリングタワー3302に代えて、又はこれと共に冷凍機や空冷ヒートポンプ、井戸水による冷却装置を設置しても良い。又、要冷却機器3304を、冷却設備である空調設備や、温度調整が必要な設備(成型機やウレタン等の原液等)に代えても良い。
この加熱冷却装置3301は、第1形態と同様に動作する他、例えば次に示すように動作する。
即ち、比較的に冷水温度が低い(冷水の冷熱量が多い)場合、ヒートポンプ10は温水追従運転し、7度の冷水を冷却負荷Cへ供給し、冷却負荷Cから10度の冷水が出される。クーリングタワー3302から熱交換機30へ所定温度(15度)の冷媒が供給され、熱交換により冷水温度が12度に昇温される。熱交換後の媒体温度は13度に低下し、冷却水として要冷却機器3304に導入され、冷却時の熱交換により31度へ昇温されてクーリングタワー3302に適宜導入される。冷却水(媒体)はパイプ32において所定温度となるよう媒体流量調節弁3308によって調整される。
一方、比較的に冷水温度が高い(冷水の冷熱量が少ない)場合、ヒートポンプ10は温水追従運転し、18度の冷水を冷却負荷Cへ供給し、冷却負荷Cから21度の冷水が出される。クーリングタワー3302から熱交換機30へ所定温度の冷媒が供給され、熱交換により冷水温度が19度に低下される。熱交換後の媒体温度は17度に上昇し、冷却水として要冷却機器3304に導入され、冷却時の熱交換により25度へ昇温されてクーリングタワー3302に適宜導入される。冷却水(媒体)はパイプ32において所定温度となるよう媒体流量調節弁3308によって調整される。
加熱冷却装置3301では、ヒートポンプ10の冷却側と、工場に属する要冷却機器3304の冷却前の冷却水(媒体)を媒体流量調節弁3308(ないしクーリングタワー3302)により所定温度となるように調整するため、冷水が所定温度の媒体より冷たい場合には熱交換により冷水を加熱し、冷水が所定温度の媒体より暖かい場合には熱交換により冷水を冷却することができ、何れにしても冷水を所定温度に近づけることができて、ヒートポンプ10の冷水戻り温度等を監視する必要がなく、又ヒートポンプ10の冷水側に調節弁を設けなくても良く、シンプルな構成ないし動作で冷熱不足並びに過冷却を効果的に防止し、ヒートポンプ10の冷水温度を自然に安定させることが可能となる。
なお、第24形態を次のように変更しても良い。即ち、熱交換機30に空冷ヒートポンプのみを接続し、冷却側加熱媒体が空冷ヒートポンプから供給されるようにする。当該空冷ヒートポンプは、冷却側加熱媒体を所定温度(20度)に維持するように運転される(所定温度未満であれば暖房運転し、所定温度以上であれば冷房運転する)。従って、ヒートポンプ10の冷水は冷却側加熱媒体との熱交換により所定温度に近づけられ、即ち冷水は所定温度を下回れば冷却側加熱媒体(冷却側媒体)により加熱され、所定温度を上回れば冷却側加熱媒体(冷却側媒体)により冷却されることとなり、空冷ヒートポンプの媒体を所定温度に保持する自動運転のみにより複雑な制御をすることなく省エネルギーであるヒートポンプの運転を継続することが可能である。なお、第22形態と組み合わせることで、より安定した温度制御を行うことができる。
[第25形態]
図32に示す第25形態に係る加熱冷却装置3351は、熱交換機30に係る回路を除き、第1形態と同様に成る。加熱冷却装置3351にあって、熱交換機30へのパイプ32は水洗槽3356から延びていると共にポンプ3352を備えており、熱交換機30へのパイプ34はワークWを温水洗浄する水洗槽3356へ至る。ヒートポンプ10の冷却側は、水洗槽3356の排熱を回収してパイプ32,34を流通する媒体により、熱交換機30を介して加温される。この加熱冷却装置3351にあっても、第1形態と同様、極めて省エネルギー性の高いヒートポンプ10の運転を継続することが可能である。なお、熱交換機30は、水洗槽3356のシャワー用ポンプの後に取り付けても良い。又、温水追従モードに限らず冷水追従モードにおいても、洗浄槽3356の排熱を有効的に加熱負荷Hの加温へ用いることができる。
更に、第25形態を次のように変更することも可能である。即ち、パイプ12,22の何れかに熱交換機を設けると共に、当該熱交換機にクーリングタワーを接続して、加熱側の温水を放熱する回路を設置する。そして、ヒートポンプ10を冷水追従モードで運転し、同時に生成される温水では熱量が不足して他熱源Zを導入している場合(冬季等)に、熱交換機30による冷水との熱交換量を増やすことで冷却負荷Cを増やし、これに伴い加熱供給量も増加させて、加熱負荷Hへの対応のため用いられる他熱源Zの使用量を低減し、使用エネルギーを節約する。なお、冷水タンクを介装することができる。更に、熱交換機30における冷水との熱交換は、加熱負荷Hの排熱によるものに代えて、又は当該排熱と共に、工場に属する熱によるものとしても良い。又、ヒートポンプ10による加熱が過剰となっていてクーリングタワーによる温水の放熱がなされている場合、あるいは温水温度が設定値(例えば65度)を超えた場合を条件に、パイプ32に接続されているポンプ3352を停止したりインバーター制御による流量調整をしたりする(流量調節手段を用いた冷却側加熱媒体熱量調節手段)ことで、冷却側加熱媒体の熱量ないし冷水との熱交換量を調整し、もって冷却負荷Cを調整する。加えて、冷水の戻り温度(パイプ26)や往き温度(パイプ16)が上昇して設定値(例えば22度)を超えた場合に、ポンプ3352につき停止したりインバーター制御による流量調整をしたりして良い。更に、加熱負荷Hや工場排熱との熱交換量の調整は、インバーター制御されたポンプによるものに代えて、あるいはこれと共に、流量調節弁によるものとして良い。
[第26形態]
図33に示す第26形態に係る加熱冷却装置3401は、第23形態と同様に成るが、冷水タンク3104に更に工場排熱源と熱交換機を介し接続されて工場排熱Xをやり取り可能なパイプ3402,3404が接続され、工場排熱源へのパイプ3402にポンプ3406が介装されていると共に、空冷ヒートポンプに代えてクーリングタワー3302(他冷熱源)が設置されており、更にクーリングタワー3302と冷水タンク3104の間のパイプ34にポンプ3408と冷熱量調節手段としての流量調節弁3410が介装されている。
加熱冷却装置3401は例えば次のように動作する。即ち、ヒートポンプ10は冷水追従モードで運転され、冷却負荷200kWに対しこれを上回る(過剰な)冷水350kWを供給する条件をつくることで、ヒートポンプ10から温水500kWが供給され、加熱負荷600kWに対応する。温水では賄えない加熱負荷100kWについては、他熱源である他熱源Z(100kW)の供給により調整する。
自動制御装置により冷水350kWを供給するため、ポンプ3406を流量最大の状態で動作させ、工場排熱Xと最大限の熱交換を行う(冷水加温300kW,冷水17度から20度へ昇温)。このままであると冷却負荷Cへの対応と工場排熱Xとの熱交換により150kWの加熱が余剰して冷水温度の上昇が継続してしまうので、クーリングタワー3302により冷水を冷却する(冷却150kW,冷水17度から15度へ温度下降)。自動制御装置は、クーリングタワー3302あるいはポンプ3408や流量調節弁3410の制御により、冷水タンク3104内の冷水温度が所定温度(17度)となるように(冷水の冷熱量が所定量となるように)する。なお、ポンプ3406のインバーター制御やこれに代えて設置する流量調節弁等により、工場排熱Xに係る媒体の熱量(工場排熱Xとの熱交換量)を調整しても良い。
そして、自動制御装置は、熱量が変動する工場排熱Xに次のように対応する。即ち、工場排熱Xが多くなれば、その分だけクーリングタワー3302における冷却量を増す。一方、工場排熱Xが少なくなれば、その分クーリングタワー3302における冷却量を減らす。なお、同様にして冷却負荷Cにも対応することができる。
加熱冷却装置3401は、ヒートポンプ10の冷水と工場排熱Xを導入し熱交換することで冷水を加熱する熱交換機を備えており、ヒートポンプ10は冷却負荷Cの量を上回る冷熱量である冷却媒体を供給する状態で冷却媒体追従運転される。余剰する冷熱量は工場排熱Xにあてがわれ、工場排熱Xが多くて冷水による冷却が不足する場合には、冷却媒体による冷却を補助する他冷熱源であるクーリングタワー3302により調整される。なお、加熱負荷の変動等には他熱源Zで対応する。
従って、シンプルな構成において初期費用(既設の加熱装置・冷却装置をヒートポンプ10で結び工場排熱Xへの回路を設ける費用)やランニングコストの低い状態でヒートポンプ10による加熱ないし冷却を継続して提供することができ、しかも工場排熱Xの熱回収をもシンプルに実行して省エネルギー性に優れた加熱冷却装置3401を提供することができる。なお、クーリングタワー3302に代えて、又はこれと共に井戸水による冷却装置を用いても良い。
[第27形態]
図34に示す第27形態に係る加熱冷却装置3501は、第1形態と同様になるが、加熱側において、温水温度(温水戻り温度・温水供給温度・温水タンク設置時の温水タンク温度等)を測定する図示しない温水温度センサを備えると共に、クーリングタワー404と、その冷却水及びヒートポンプ10の温水を熱交換する熱交換機3502を備える点で異なる。
又、ヒートポンプ10は、冷水追従モードで運転される。例えば、加熱負荷Hに見合う温水800kWを供給するため、冷却負荷C300kWに加えて、熱交換機30において工場排熱X(35度)で冷水に対する300kWの加温を行う(電気入力200kW)。自動制御装置は、温水供給温度が70度となるように、冷却側の流量調節弁36の開度(熱交換機30へ導入する工場排熱Xの熱量)を調整する。ヒートポンプ10の冷水供給温度はここでは10度であり、冷却負荷Cから15度で出るが、熱交換機30を通過して20度に加温される。
そして、自動制御装置は、温水温度(温水温度センサにより監視される)が72度に上昇すると、流量調節弁36の開度を絞って(工場排熱Xによる冷水の加温量を下げて)冷水戻り温度を下げ、ヒートポンプ10の出力が絞られるようにして温水温度を設定値(70度)まで下げるようにする。一方、温水温度が68度に下がると、流量調節弁36の開度を増やして(工場排熱Xによる冷水の加温量を増して)冷水戻り温度を上げ、ヒートポンプ10の出力が増すようにして温水温度を設定値(70度)まで上げるようにする。
加熱冷却装置3501では、ヒートポンプ10を冷水追従モードで運転するため、冷水供給温度はヒートポンプ10において制御される。よって、冷水温度低下によるヒートポンプ10の緊急停止の発生は稀である。又、温水温度が上昇し過ぎると、ヒートポンプ10は緊急停止するが、このような運転停止の事態を防止するため、自動制御装置はクーリングタワー404を制御して温水温度の過剰な上昇を抑える。
なお、流量調節弁36による熱量調整に代えて、又はこれと共に、ポンプ(インバーター制御)による流量調整として良い。又、冷水側に冷水タンクを介装し、冷水タンク内の冷水と工場排熱Xを熱交換しても良い。更に、温水温度を制御せず、加熱負荷Hを所定温度にするように(例えば乾燥炉における温風を60度とするように)工場排熱Xとの熱交換量を調整して良い。この場合、温水の加熱負荷Hに対する供給量の調整手段を省略することができる。
[第28形態]
図35に示す第28形態に係る加熱冷却装置3601は、第7形態と同様に成るが、ヒートポンプ10に代えて、ダブルバンド仕様の排熱回収型ヒートポンプ3610を用いる点で異なる。即ち、ヒートポンプ3610は、温水回路を2個備える。
温水回路の一方は、温水タンク402に接続される。当該回路には、三方弁3612や温水ポンプ3613が設けられる。温水回路の他方(冷却水回路でもある)は、冷却水冷却機としてのクーリングタワー404に接続される。当該回路には、三方弁3614や冷却水ポンプ3616が設けられる。
動作としては、温水追従モードの場合、図35(a)に示すように、ヒートポンプ3610は65度の温水を温水タンク402に供給し、温水タンク402内の温水温度を60度に維持する。温水タンク402からの温水は、温水ポンプ3613の駆動によりヒートポンプ3610へ戻る。一方、ヒートポンプ3610による冷水供給と、空冷ヒートポンプ408の運転により、冷水タンク406内の冷水温度が17度に制御される。なお、他熱源Zは基本的には用いられず、流量調節弁48は閉じられている。又、クーリングタワー404側の冷却水回路に対して温水は供給されない。
一方、冷水追従モードで温水の供給がある場合、図35(b)に示すように、クーリングタワー404側の冷却水回路に対しても、冷却水ポンプ3616の駆動により冷却水として温水が供給され、三方弁3614(温水温度調節手段,温水熱量調節手段)により温水温度が所定値(65度)に制御される。冷水タンク406には10度の冷水が供給され、空冷ヒートポンプ408により冷水タンク406内の冷水温度が17度に制御される。なお、温水タンク402には65度の温水が送られる。
他方、冷水追従モードで温水の供給が無い場合、図35(c)に示すように、温水タンク402が切り離されるよう、三方弁3612により温水タンク402側の温水回路において温水(32度)が温水タンク402に至らずにヒートポンプ3610へ戻るようなバイパス側に切り替えられ、ヒートポンプ3610に係る温水ポンプ3613は停止され、温水タンク402内の温水温度は他熱源Zにより60度に維持されるようにする。クーリングタワー404側の温水回路(冷却水回路)における温水温度(冷却水温度)も、三方弁3614によりヒートポンプ3610側で32度となるようにされる。なお、温水温度を65度から32度とする場合、温度変化率がヒートポンプ3610の許容する制限値(例えば毎分1度降下)以内となるようにする。
これらの場合の切り替え制御等は、図36に示すように行われる。即ち、自動制御装置は、ヒートポンプ3610が温水追従モードで運転中であるか否かを判断し(ステップS1401)、運転中でなければ(No)、更に温水温度を65度とする制御中であるか否かを判断して(ステップS1402)、制御中であれば(Yes)、冷水追従モードで温水温度をクーリングタワー404で制御していると判断して、後述のステップS1409に移行し、そうでなければ(No)冷房モードとして処理を終了する。
一方、ステップS1401で温水追従運転中と判断すると(Yes)、冷熱不足であるか(ここでは冷水温度が20度以上であるか)を判定する(ステップS1403)。冷熱不足でなければ(No)、更に冷水追従モード切替の許可入力(ここでは切替ボタンの押下)が有ったかを確認し(ステップS1404)、入力があれば(Yes)冷熱不足であると判定した場合(ステップS1403でYes)と同様に次のステップS1405の処理に移行し、入力がなければ(ステップS1404でNo)処理の最初(ステップS1401)に戻る。
ステップS1405では、クーリングタワー404側の冷却水回路の冷却水ポンプ3616やクーリングタワー404の運転を行う。更に、自動制御装置(三方弁3614)は、温水温度を65度とする制御を開始する(ステップS1406)。温水温度は冷却水温度と同じとなることから、三方弁3614は冷却水温度を65度に制御すれば温水温度は65度となる。加えて、ヒートポンプ3610につき、温水追従モードから冷水追従モードへ切り替える(ステップS1407,図35(a)から図35(b)へ)。又、モード切替時、所定時間(1分)をかけて出力を安定させる(ループ1,ステップS1408)。
ステップS1409では、ヒートポンプ3610の出力が設定値(90%)以上であるか否かを判断し、Yesでない限り次のステップS1410(ループ2)に進まないようにする。つまり、冷水不足となるか判断している。
更に冷水が不足すると予想された場合、ステップS1410(ループ2)では、温水回路において温水タンク402を切り離すように切り替えられ(図35(b)から図35(c)へ)、温水タンクの温度が低下し、蒸気により温水タンクが加温される。更にこの後、ループ3(ステップS1411)が実行され、三方弁3614の制御を温水温度が65度から32度となるようなものとする。即ち、三方弁3614により冷却水を32度に制御すれば、温水温度は32度となる。これにより冷水供給熱量は更に増え冷水不足を防止することができる。
このようにして、三方弁3614に係る温水の温度は32度に変えられる。この後、温水ポンプ3613を停止する(ステップS1413)。
第28形態に係る加熱冷却装置3601では、ダブルバンド仕様の排熱回収型ヒートポンプ3610を用いるため、ヒートポンプ3610の運転モード切換をスムーズに行うことができ、冷水供給不足を防止できる。又、加熱冷却装置3601では、冷水追従モードで更に冷水供給の不足がある場合に、温水タンク402を切り離し、あるいは温水温度を(徐々に)特定値まで下げるため、冷却負荷Cの変動にも対応可能でありながら、効率良い運転をさせることができる。
[第29形態]
図37に示す第29形態に係る加熱冷却装置3701は、第28形態と同様に成るが、三方弁3612,3614が省略されている。動作も第28形態と同様であり、以下異なる点を中心に主に図38に基づいて説明する。
自動制御装置は、ヒートポンプ3610が冷水追従モードに切替えられた場合、冷熱量(冷水温度)を監視し、所定値を超える(冷水温度が20度以上となる)ことを判断すると(ステップS1451でYes)、以下のループ4を実行する。なお、自動制御装置は、冷水追従モード運転後、特定時間(3分間)を経過していない場合には、ループ4を実行しない(ステップS1451でNo)。
自動制御装置は、ループ4において、冷却水ポンプ3616を定格出力にするため、まず冷却水ポンプ3616をインバーター制御してその流量を徐々に増す(ステップS1452)。次に、温水タンク402内の温水温度がヒートポンプ3610の温水供給温度以上となっているかを確認し(ステップS1453)、なっている場合(Yes)、温水ポンプ3613の動作を停止する。即ち、ヒートポンプ3610の温熱は、全て、冷却水ポンプ及びクーリングタワー404により放熱される。なお、温水タンク402を省き、ヒートポンプ3610の温水を直接加熱負荷Hと熱交換しても良い。
第29形態に係る加熱冷却装置3701では、温水タンク402内の温水温度がヒートポンプ3610の温水供給温度以上であると、温水ポンプ3613を停止するため、冷水追従モードにおける温水タンク402の切り離しを簡易に行うことができ、加熱と冷却につき、それぞれの負荷に適切に対応しながら、極めて省エネルギーである状態で実行することができる。
なお、第28形態や第29形態に係るダブルバンド仕様の排熱回収型ヒートポンプは、上記の他の実施形態における(シングルバンド仕様の)ヒートポンプの代わりに、あるいはこれと併せて用いることができる。特に、第7形態・第23形態・第27形態では、クーリングタワー404を第2温水回路(冷却水回路)側に接続することで、(三方弁410を省略しつつ)、当該形態と同様の効果を奏することができる。
[第30形態]
第30形態に係る加熱冷却装置は、第28形態と同様に成り、動作が若干異なる。以下主に図35(a),(b)に基づきその動作例を説明する。ヒートポンプ3610を温水追従モードで運転し、空冷ヒートポンプ408で冷水が不足する分を補わせる。800kWの加熱負荷Hに対してヒートポンプ3610は800kWの温水を供給し、同時に600kWの冷水を供給する。そして、冷却負荷Cに対応するため、空冷ヒートポンプ408は400kWの冷水を供給する。
この状態から、加熱負荷Hが600kWに減少したとすると、ヒートポンプ3610はこれに追従して600kWの温水を供給するようになり、これに伴い冷水の出力が450kWに減少する。すると、1000kWの冷却負荷Cに対応するため、冷水不足分の150kWを更に追加して供給する必要が出てくる。しかし、空冷ヒートポンプ408の冷却能力が(最大)500kWとすると、100kWしか追加できず、結局50kWの冷水が不足して、このままでは冷水タンクの温度が上昇してしまう。
そこで、冷水温度が設定値(20度)を超え(て所定時間が経過し)たことを条件として、クーリングタワー404と冷却水ポンプ3616を作動し、三方弁3614によってヒートポンプ3610の温熱を大気へ67kW程放熱させる。すると、ヒートポンプ3610の温熱は600kWの温水と67kWの冷却分とで667kWとなり、冷水は500kW出力することで、空冷ヒートポンプ408の冷水500kWと合わせて1000kWの冷却負荷Cに対応することが可能となる。即ち、三方弁3614を制御する自動制御装置は、冷水タンクの温度を監視し、冷水が不足する場合、ヒートポンプ3610の温熱をクーリングタワー404で冷却する(大気に放出する)ことで、冷水出力を増やして冷却負荷Cに対応させる。なお、ヒートポンプ3610の温熱を冷却する専用の装置(冷却装置)を、クーリングタワー404(ないし三方弁3614)に代えて、又はこれと共に設けても良い。
第30形態に係る加熱冷却装置では、ヒートポンプ3610を温水追従運転中、冷却負荷Cが冷却不足となることを冷水温度が所定値未満となること等により把握すると、クーリングタワー404(冷却水冷却機)により、ヒートポンプ3610の温水(加熱媒体)を冷却する。従って、加熱負荷Hに対して冷却負荷Cが比較的に大きくなった場合でも、当該冷却負荷Cに対応することができ、極めて省エネルギーであるヒートポンプ3610の運転を継続することができる。
[その他の形態]
以上の形態にあっては、加熱と冷却とを行うヒートポンプの冷却側に適用する冷却側加熱媒体として工場に属する各種の熱(工場排熱等)を用いているが、当該各種の熱に代えて、あるいはこれと共に、次に示すような他の種類の工場に属する熱を用いることができる。即ち、工場で生ずる他の排気や排熱あるいは各種機器からの放熱や作動油からの熱、又は乾燥後のワークの放熱や、温水洗浄により加温された製品をその後工程である水洗工程で水洗した場合の水洗水に移った熱、あるいは工場空調から生じた排熱(冷水戻り)やコージェネレーションの冷却水を含む排熱を用いたり、これらの組合せを用いたりする。又、該各種の熱に代えて、あるいはこれと共に、別個のヒートポンプ(冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプ)により生成した温水の熱を用いて良い。この場合、冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプの稼働分だけ使用するエネルギーが増加するが、その増加分は加熱冷却用ヒートポンプの温水の熱を捨てる場合のエネルギーに比べ少なくて済み、総合しても効率の良好な加熱冷却装置とすることが可能である。更に、冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプの温水及び工場の排熱と加熱冷却用ヒートポンプの冷水とを熱交換機に導入し、当該温水及び排熱を併せて加熱冷却用ヒートポンプの冷水に適用しても良い。又更に、冷却側加熱媒体として、ボイラの蒸気や電気ヒータ等又はこれと工場に属する各種の熱(排温水)ないし冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプの温水との組合せを用いることができる。加えて、自動制御装置による各種の制御や切替等を、手動により行うことも可能である。又、冷水の加熱量の調整(加熱量調節手段)につき、熱交換器への分岐量の調節によるものに代えて、冷却媒体加熱用熱交換器に当たる排気の量の調節によるものや、これらの組合せによるもの等として良い。更に、冷水の分岐量の調整(熱交換量調節手段)において、インバーターポンプを用いても良い。又、ヒートポンプや冷却機を複数台組み合わせて構成する等、各要素の数を適宜変更して良い。
又更に、加熱と冷却とを行うヒートポンプの冷媒を直接取り込み加熱してヒートポンプへ戻す別個のヒートポンプ(加熱用ヒートポンプ)を設けても良い。これに加え、ヒートポンプの冷媒を加熱する上述の各種熱交換機を併せて設置することもできる。又、加熱と冷却とを行うヒートポンプの冷水側につき、ヒートポンプからの冷水を排温水と同様に工場で処理すると共に、冷水より高温の排温水を(適宜処理した後)ヒートポンプへ直接戻すようにし、あるいはこのように排温水がヒートポンプへ入るように排温水のパイプを流路切替え可能に配置することができる。
加えて、排熱回収型ヒートポンプに代えて(あるいはこれと共に)空冷式熱回収型ヒートポンプ(空冷ヒートポンプ式・冷温水同時取出型)を用いても、前記と同様の効果を奏することが可能である。即ち、空冷式熱回収型ヒートポンプは、冷水と温水の熱量バランスが崩れた場合、大気(空気)を熱源に自動的にバランスをとる(温熱不足時に大気から熱を奪い、冷熱不足時に大気へ熱を放出する)ものの、大気に対する熱のやり取りであるために効率上の限界がある。そこで、空冷式熱回収型ヒートポンプの冷却側を工場排熱等により加温すれば、空冷式熱回収型ヒートポンプにおける効率の良好な運転を継続させること等前記の効果を奏することが可能となる。特に、外気温度が低い(5度)冬季等において、冷却側を加温しない場合に空気を熱源に70度の温水を取出す効率はCOP2.1程度であるが、工場排熱等で冷水を20度まで加温すると効率がCOP3.8程度と良好化することができる。又、上記形態(特に第22形態ないし第27形態)は、特開平5−31417等に開示されるような塗装設備にも適用することができる。
次いで、本発明の上記形態等に係る実施例につき、適宜図面に基づいて説明する。なお、当該実施例は、下記に限定されない。又、逐一の説明は省略するが、各実施例について、上記各形態を適用したものが含まれ得る。更に、適用対象も下記に限定されず、例えば施設栽培、養殖、酪農、食品製造、化学製品製造、メッキ加工等の各種工場や事業所等を挙げることができる。
本発明の実施例1は、加熱冷却装置を殺菌工程に適用し殺菌装置として使用するものである。加工食品や飲料等の被処理流体(液体・乳状体・流動体等)を殺菌する殺菌工程では、製造ラインにおける容器への充填前に行う加熱殺菌と、この加熱後の冷却が行われ、当該加熱及び冷却を行うため加熱冷却装置を殺菌装置として構成する。なお、従来例に係る文献として、特開2007−202446が例示される。
[実施例1−1]
図39(a)は実施例1−1に係る殺菌装置4001の模式図であって、殺菌装置4001は、被処理流体(ウーロン茶等)を加熱・冷却する加熱用熱交換器4001H・冷却用熱交換器4001Cを備えている。そして、加熱用熱交換器4001Hには、複数(ここでは2台)の直列接続されたヒートポンプ10の温水側が接続され、冷却用熱交換器4001Cには直列接続されたヒートポンプ10の冷水側が第2冷水回路を介して接続される。ヒートポンプ10の冷水の回路(第1冷水回路)と第2冷水回路は熱交換器4002を介して隣接されている。又、第1冷水回路には、クーリングタワー3302の冷却水との熱交換を行う熱交換機4004が配置されている。なお、衛生管理を重視する場合等において、水道水等により冷却用熱交換機4001Cを介して被処理流体を冷却し、温度上昇した水道水等につき熱交換機4002を介した第1冷水の加温後に排水しても良い。又、温水出入口温度差が10度以内となるように温水追従モードで運転するため、特にヒートポンプ10の温水側につき直列に接続している。
自動制御装置は、ヒートポンプ10につき、温水温度を88度に制御する。温水は他熱源Z(267kWの加熱)により97度に昇温され、加熱用熱交換器4001Hに導入されて、熱交換による被処理流体の加熱殺菌に用いられ、68度となって加熱用熱交換器4001Hから導出されて、温水タンク3058を介しヒートポンプ10へ戻る(被処理流体毎時10トン,ヒートポンプ10の加熱負荷各297kW・10度ずつの昇温,平均加熱側COP3)。被処理流体は20度から94度に昇温される(860kWの加熱負荷H)。
一方、自動制御装置は、ヒートポンプ10につき、冷水温度を18度に制御する。毎時27トンの第1冷水が熱交換機4002を通過し、50度となって熱交換機4004に至り、クーリングタワーの35度の冷却水(負荷232kW,48度に昇温)により38度となってヒートポンプ10に戻る(冷却負荷各198kW・10度ずつの冷却,平均冷却側COP2)。第2冷水は毎時12.9トンの流量で熱交換機4002において62度から20度に冷却され、冷却用熱交換器4001Cでの628kWの冷却負荷Cに対応し、62度に昇温される。被処理流体は94度から40度に冷却される。
[実施例1−2]
図39(b)は実施例1−2に係る殺菌装置4101の模式図であって、殺菌装置4101は、実施例1−1と同様に成るが、温水側も冷水側と同様に第2温水ないし熱交換機4102を設けた構成と、クーリングタワー3302の冷却水回路に工場排熱源としての空気圧縮機2840を挿入した構成が異なる。前者の構成によれば、ヒートポンプ10の冷媒内の潤滑油等の不純物が万一にも第1温水に浸入し更に被処理流体へ浸入する事態を防止することができる。なお、他熱源Zはここでは第2温水回路に組み込まれる。
又、後者の構成等に関し、加熱負荷H(872kW,被処理流体温度10度→85度)が冷却負荷C(407kW,被処理流体温度85度→50度)に対して大きい場合の動作を説明する。
自動制御装置は、ヒートポンプ10につき、第1温水温度を90度に制御する。第1温水は熱交換機4102を通過し、70度となってヒートポンプ10へ戻る(加熱各436kW)。第2温水は熱交換機4102において56度から88度に加熱され、加熱用熱交換器4001Hでの加熱を経て56度で熱交換機4102に戻る。
一方、自動制御装置は、ヒートポンプ10につき、第1冷水温度を18度に制御する。毎時17.5トンの第1冷水が熱交換機4002を通過し、32度となって熱交換機4004に至るが、このまま32度で戻ると過冷却となりヒートポンプ10の運転の継続が困難となる。そこで空気圧縮機2840の冷却水温度を40度に制御し、第1冷水を熱交換により38度に加温して(174kWの加熱)、過冷却による運転停止を防止する。なお、第1冷水温度が(40度に)昇温した場合に、空気圧縮機2840の冷却水温度を(35度へ)下げて、第1冷水の温度を安定させることができる。
又、自動制御装置は、空気圧縮負荷の減少等により空気圧縮機2840の冷却水温度が低下して第1冷水の十分な加温が不能となった場合に、ヒートポンプ10の第1温水供給設定温度を90度から下げることでヒートポンプ10の出力を絞り、冷水供給量を下げて冷水温度低下による運転停止を防止する。なお、加熱負荷Hに対する供給温熱の不足は他熱源Zで賄う。又、クーリングタワー3302と空気圧縮機2840に代わり、空冷ヒートポンプで温水(40度)を作って第1冷水温度を制御しても良い。更に、食品工場は一般にクリーンルームを備えているため、空調熱源として冷水や温水を同時に送っても良い。加えて、高温水を発生させる排熱回収型ヒートポンプに代えて、又はこれと共に、蒸気と高温水を発生させるヒートポンプ式蒸気・温水発生装置を活用しても良い。この場合、発生した高温水を熱交換機4102で加熱し、発生した蒸気を他熱源Zとミキシングして使うか、ヒートポンプの蒸気単独で加温する。又、蒸気だけ発生させるヒートポンプを用いても良い。
本発明の実施例2は、加熱冷却装置をデシカント空調に適用しデシカント空調装置として使用するものである。デシカント空調では、処理側及び再生側に亘って設置される除湿ローターの再生側流体(外気等)等の加熱と、処理側流体(外気及び屋内リターン空気等)等の冷却が行われ、当該加熱及び冷却を行うため加熱冷却装置をデシカント空調装置として構成する。デシカント空調は、ドライエア雰囲気における空調に適しており、リチウムイオン電池製造工場のドライルーム等に対して行われる。なお、従来例に係る文献として、特開2009−133594が例示される。
[実施例2−1]
図40(a)は実施例2−1に係るデシカント空調装置5001の夏季等における模式図であり、図40(b)はデシカント空調装置5001の冬季等における模式図であって、デシカント空調装置5001は、処理用外気及び屋内リターン空気のミックスエアが流れる処理側流路5002と、再生用外気が流れる再生側流路5004と、処理側流路5002及び再生側流路5004に亘り回転可能に設置されており除湿剤が塗布された除湿ローター5006を備えている。処理側流路5002と再生側流路5004の方向は互いに逆となっており、順に処理側ファン5008,再生側ファン5009が設置されている。
処理側流路5002のミックスエアは、まず流路内に設置された処理側コイル5010を通過する。処理側コイル5010は、図40(a)の場合においてヒートポンプ10の冷却側と接続されて冷却負荷C(の一部)となっており、図40(b)の場合においてヒートポンプ10の加熱側に切り替えて接続され加熱負荷H(の一部)となっている。なお、処理側コイル5010の回路には熱量調節手段としての三方弁5011が配置されている。又、冷却側回路には、空冷ヒートポンプ408が配置されている。
次に、ミックスエアは、除湿ローター5006を通過し、除湿剤によるエア中の水分の吸着を受けて除湿される。除湿ローター5006は、水分の吸着により水分を保持することとなると共に発熱する。そして、ミックスエアは、処理側調節コイル5012を通過されたうえで空調のため屋内に導入される。処理側調節コイル5012は、図40(a)の場合においてヒートポンプ10の冷却側と接続されて冷却負荷C(の一部)となっており、図40(b)の場合においてヒートポンプ10の加熱側に切り替えて接続され加熱負荷H(の一部)となっている。なお、処理側調節コイル5012の回路には熱量調節手段としての三方弁5013が配置されている。又、図40(b)の場合において他熱源Zを導入可能な熱交換機5014が設置されており、温水を他熱源Zにより加熱可能となっている。更に、除湿ローター5006と処理側調節コイル5012の間には加湿器5016が配置されており、図40(b)の場合においてミックスエアを加湿可能とされている。
一方、再生側流路5004の外気は、まず流路内に設置された再生側コイル5020を通過する。再生側コイル5020は、図40(a)の場合においてヒートポンプ10の加熱側と接続されて加熱負荷Hとなっている。なお、図40(b)の場合において、ヒートポンプ10の冷却側は熱交換機5022を介して工場排熱Xと接続されるよう切り替えられており、冷却負荷Cが工場排熱Xの冷却についてのものとなっている一方、加熱側は処理側に切り替えられているため、再生側コイル5020に冷水や温水は供給されない。
図40(a)の場合において、外気は、再生側コイル5020により加熱され、除湿ローター5006に至る。外気の加熱量は、他熱源Zを導入可能な再生側調節コイル5024により適宜補助される。
そして、図40(a)の場合も含め、除湿ローター5006に達した外気は、除湿ローター5006が保持した水分を飛ばす等して除湿ローター5006につき再度水分を十分に吸着可能に再生する。外気は、除湿ローター5006を通過した後、排気として排出される。再生された除湿ローター5006(の部分)は、回転により処理側へ送られ、ミックスエアの処理に使用された除湿ローター5006(の部分)は、回転により再生側に送られてくる。
なお、処理側調節コイル5012や再生側調節コイル5024、空冷ヒートポンプ408、加湿器5016、工場排熱X、他熱源Zは、それぞれ省略したり、各種ヒートポンプや冷水チラー、クーリングタワー等に代えたり、各種ヒートポンプや冷水チラー、クーリングタワー等に単独あるいは共通に接続したりして良い。
デシカント空調装置5001は、例えば次のように動作する。図40(a)の夏季等の場合で屋内温度25度・湿度50%に制御する。再生側の外気は流量毎時9000立方メートル(m3/h)・温度35度・水蒸気量外気1キログラム当たり0.0190キログラム(kg/kg(DA))で導入され、再生側コイル5020における47.0kWの加熱負荷Hにより50度に昇温されて除湿ローター5006の再生に用いられ、導入量と同量で排出される。ヒートポンプ10は加熱負荷Hのため60度の温水(COP3.6)を供給する。
処理側のミックスエアは外気4200m3/h・35度・0.0190kg/kg(DA)及びリターン空気1800m3/h・26度・0.0105kg/kg(DA)の合計6000m3/h・32.3度・0.0165kg/kg(DA)で導入され、処理側コイル5010における38.3kWの冷却負荷Cにより20度に冷却されて(0.0140kg/kg(DA))、除湿ローター5006で除湿され(0.0100kg/kg(DA)・35度)、更に処理側調節コイル5012における21.2kWの冷却負荷Cにより25度に冷却されて(相対湿度50%)、空調として導入量と同量で屋内へ供給される。ヒートポンプ10は冷却負荷Cのため34.0kWの冷水(COP2.6)を供給する。なお、空冷ヒートポンプ408により冷水の25.5kWの冷却を行う。
又、この状態から外気が温度27度・湿度70%となった場合、加熱負荷Hに対する冷却負荷Cが低すぎ、温水追従運転が継続不能となる可能性があるため、冷水温度が設定値以下となったことの検知等により当該可能性を把握し、次に示すような動作を行う。
即ち、ヒートポンプ10を冷水追従運転に切り替える。あるいは、ヒートポンプ10の供給に関する冷温水のバランスを保持するため、温水追従運転のまま温水供給設定温度を下げ、出力を絞って冷水温度の低下を防止し、不足する温熱は他熱源で対応する。又は、図40(a)の空冷ヒートポンプ408を暖房運転し、冷水を加温する。例えば、再生側外気9000m3/h・27度・0.0159kg/kg(DA)(70%)で加熱負荷H71.4kW(50度へ加熱・温水60度)に対し、処理側のミックスエアは外気4200m3/h・27度・0.0159kg/kg(DA)及びリターン空気1800m3/h・26度・0.0105kg/kg(DA)の合計6000m3/h・26.7度・0.0143kg/kg(DA)で導入され、処理側コイル5010における2.9kWの冷却負荷C及び処理側調節コイル5012における21.2kWの冷却負荷Cにより上記と同様に処理される。冷却負荷C全体は24.1kWであるが、ヒートポンプ10における71.4kWの加熱は51.6kWの冷却を伴うので、空冷ヒートポンプ408により冷水を27.5kWだけ加熱し、温水に対する冷水のバランスを取る。
一方、図40(b)の冬季等の場合で屋内温度25度・湿度50%に制御する。冬季においては、冷却と除湿は不要で、処理側における加熱と加湿が必要となる。加湿は加湿器5016で行い、加熱はヒートポンプ10の加熱側を処理側コイル5010に接続することで行い、加熱に伴う冷熱は工場排熱Xの冷却に用いる。例えば、処理側のミックスエアは外気4200m3/h・0度・0.0023kg/kg(DA)及びリターン空気1800m3/h・26度・0.0105kg/kg(DA)の合計6000m3/h・7.8度・0.0048kg/kg(DA)で導入され、処理側コイル5010における52.7kWの加熱負荷Hにより33.7度に加熱されて(0.0048kg/kg(DA))、加湿器5016で加湿され(0.0099kg/kg(DA)・21度)、更に処理側調節コイル5012における8.2kWの加熱負荷Hにより25度に加熱される(相対湿度50%)。ヒートポンプ10は加熱負荷Hのため60.9kWの温水(COP5.9)を供給する。一方、50.6kW・25度の冷水は、40度の工場排熱X(コンプレッサーの冷却水等)を35度に冷却し、35度となって戻る(冷水COP4.9)。
この場合、ヒートポンプ10の消費電力は毎時10.3キロワット(kWh)で、二酸化炭素(CO2)排出量は毎時4.7トン(ton/h)である。一方、従来通り、同じ加熱負荷Hをボイラーで賄うと、ボイラー効率を80%とし、その他のロスを20%とすると、都市ガス使用量は7.0m3/hとなり、CO2排出量は毎時16.3トン(ton/h)である。従って、本発明のデシカント空調装置5001では、従来に対して7割以上もCO2使用量を削減することができる。なお、CO2排出係数は、都市ガスについて、地球温暖化対策の推進に関する法律施行令及び特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令を基に環境省が作成した「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」からの計算値(11000キロカロリー毎ノルマル立方メートル(kcal/Nm3),2.3300キログラム(CO2)毎ノルマル立方メートル(kg−CO2/Nm3))を用い、電気について、中部電力株式会社の08年度実績値(860キロカロリー毎キロワット時(kcal/kWh),0.4550kg−CO2/kWh)を用いた。
なお、工場立ち上げ時等の工場排熱Xが十分でない場合(冷水温度が設定値以下の場合)に、ヒートポンプ10の温水供給温度設定値を下げて出力を絞り、ヒートポンプ10の温冷水バランスを確保して、不足温熱は他熱源Zで対応するようにして良い。又、同様の場合に、ヒートポンプ10を冷水追従運転して、不足温熱は他熱源Zで対応し、工場排熱Xが十分となったら(工場排熱Xの温度や熱量あるいは温水温度が所定値以上となったら)温水追従運転を行うようにして良い。あるいは、冷水追従運転を継続し、温水供給温度が特定値以上となると温水温度が上がらないように工場排熱Xの供給量を減じたり、冷水供給設定温度を制御して温水温度を調整したりして良い。
又、ヒートポンプ10の冷却側につき、冷水を加温する空冷ヒートポンプ408に接続しても良い(加温50.6kW・COP5.0)。この場合の空冷ヒートポンプ408の消費電力は10.1kWhであり、ヒートポンプ10の消費電力と合わせても20.4kWhとなり、CO2排出量は9.3ton/hとなって、従来比で4割以上も削減することができる。
なお、工場排熱Xとして、ボイラーの放熱(ボイラー室温50度)、コージェネレーションの冷却水(45度)や排ガス(170度)、機器冷却水(35度)、溶接機冷却水(35度)、油圧装置冷却水(35度)、乾燥後のワークの放熱(80度)、乾燥工程からの放熱(炉周り60度)を例示することができる。各放熱の熱回収(冷水の加温)は、既存の空調設備(冷水配管やエアハンドリングユニット等)を用いて冷水加温しても良い。又、冷水につき、補給水や井戸水(15度)から補充したり、金型の冷却(25度)に用いたり、工場空調や事務所空調の屋内空調に用いたりすることが可能である。更に、温水につき、洗浄工程(80度)や、乾燥工程(熱風80度)、金型の加温(40度)に用いたりすることが可能である。
本発明の実施例3は、加熱冷却装置を原液の温度維持に適用し原液の温度調節装置として使用するものである。原液温度調整では、原液を所定温度範囲に保持するために特定温度範囲の媒体を原液タンクに供給するところ、当該媒体を温水と冷水で調整し、それら温水と冷水の加熱と冷却のため加熱冷却装置を原液温度調節装置として構成する。なお、従来例に係る文献として、特開平10−110056・特開平8−131091・特開平6−79221が例示される。
[実施例3−1]
図41は実施例3−1に係る原液温度調節装置6001の模式図であって、原液温度調節装置6001は、主に第23形態を利用し、更に第26形態のように冷水タンク3104に工場排熱Xを接続して成る。温水タンク3058と冷水タンク3104の冷水が共に調整手段6002に導入されて適宜の量ずつ混合されることで、特定温度範囲の媒体として原液タンク6004(の熱交換機)へ供給され、原料の温度保持に用いられた後、適宜冷水タンク3104や温水タンク3058に戻される。なお、原料として、化学薬品(発泡剤・塗料)、食品(小麦粉・そば粉)を例示することができる。又、空冷ヒートポンプ2154に代えて又はこれと共にクーリングタワーを設置して良い。更に、ヒートポンプ10の冷却側を工場排熱Xや空冷ヒートポンプ2154で加温して良い。
動作例としては、温水設定値32度・冷水設定値17度で、調整手段6002により媒体温度が24度(±1度)に調整されて原料タンク6004に供給され、原料が24度(±1度)に保持される。温水タンク3058の温水温度が30度(ヒートポンプ10の温水供給温度設定値より低い値)以下になると他熱源Zで加温し、45度以上にならないようにクーリングタワー404で冷却する。冷水は空冷ヒートポンプ2154でも冷却され(17度・ヒートポンプ10の冷水供給設定温度より高い値)、温熱が不足する冬季等には、冷水を工場排熱X(20度・加温利用後17度)等で加温することでヒートポンプ10の加熱量を増やし、他熱源Zによる加温がなるべく少なく済むようにする。
ヒートポンプ10は温水追従モード(冷水追従モードでも良い)で起動され、冷水温度が所定値(12度)以下となると冷水追従モード(冷水供給設定温度17度・空冷ヒートポンプ2154より優先した運転)に切り替えられ、他熱源Zにより加熱がバックアップされる。又、冷水追従運転中に温水温度が所定値(40度)以上となると、温水追従運転(温水供給設定温度35度・他熱源Zより優先運転)に切り替えられ、空冷ヒートポンプ2154で冷却がバックアップされる。
本発明の実施例4は、加熱冷却装置を濃縮凝縮装置として使用するものである。濃縮や凝縮のための原料の加熱と、蒸発した原料をコンデンサーにより凝縮液とするための冷却を加熱冷却装置で行うことで、濃縮凝縮装置として構成する。なお、従来例に係る文献として、特開2005−111320が例示される。
[実施例4−1]
図42は実施例4−1に係る濃縮凝縮装置7001の模式図であって、濃縮凝縮装置7001は、原料タンク7002と、原料タンク7002から送られた原料を蒸気により加熱する加熱缶7004と、原料タンク7002や加熱缶7004と接続され原料を蒸発させる蒸発缶7006と、蒸発缶7006と接続され蒸発した原料を受けるコンデンサー7008と、コンデンサー7008と接続され気体と液体を分離する分離手段7010と、分離手段7010と接続され分離された気体を送出する真空ポンプ7012と、真空ポンプ7012と接続され送られた気体を排出する排気手段7014を備えている。
ヒートポンプ10は、加熱側において原料タンク7002から蒸発缶7006への原料をプレヒートする熱交換機1164(加熱負荷7001H)と接続されており、冷却側においてコンデンサー7008を冷却する冷却水を予冷却する熱交換機104(冷却負荷7001C)と接続されている。なお、コンデンサー7008を冷却する冷却水回路には、クーリングタワー3302が配備されている。又、加熱缶7004は、他熱源Zと接続されている。
動作例としては、原料タンク7002内の液温20度・含水率89%の原料を毎時1000キログラム(kg/h)で送るところ、温水追従運転されるヒートポンプ10の47kWの加熱により原料が60度に加温されて蒸発缶7006に至る(温水往き70度・戻り60度,加熱側COP3.5)。加熱缶7004は他熱源Zによる583kWの加熱により蒸気を生成し、蒸発缶7006に対し循環させる。蒸発缶7006では、真空雰囲気により65度で原料が蒸発し、蒸発した原料はコンデンサー7008に送られる。蒸発缶7006に対し予め加熱された原料を投入することで、他熱源Zの熱量が削減される。なお、蒸発缶7006に蓄積された液体は、濃縮液(60度)として、濃縮液パイプ7016を通じ取り出される。
真空であるコンデンサー7008では、冷却水での冷却により蒸発原液が凝縮され液体(64度)となり、又コンデンサー7008内の真空が保持される。冷却水は、ヒートポンプ10の33kWの冷却(冷水往き30度・戻り35度)、及びクーリングタワー3302の547kWの冷却により、往き35度・戻り40度とされ、コンデンサー7008の冷却に用いられる。ヒートポンプ10の冷却によりクーリングタワー3302の冷却量が節減される。コンデンサー7008からの液体は、凝縮液(60度)として、凝縮液パイプ7018を通じ取り出される。
濃縮凝縮装置7001では、加熱缶7004(蒸発缶7006)側とクーリングタワー3302側とをヒートポンプ10の加熱側ないし冷却側で結ぶため、クーリングタワー3302で捨てられている熱を回収することができ、他熱源Zの投入量を削減することができる。なお、濃縮凝縮装置7001の起動時においてクーリングタワー3302及び他熱源Zで立ち上げ、クーリングタワー3302の冷却水温度が所定温度以上となったらヒートポンプ10を温水追従運転させても良い。又、温水供給温度を80度とし、原液を80度に加温しても良い。
[実施例4−2]
図43は実施例4−2に係る濃縮凝縮装置7101の模式図であって、濃縮凝縮装置7101は、濃縮凝縮装置7001と同様に成るが、冷水タンク3104を具備すると共に、ヒートポンプ10の接続先を変えている。
ヒートポンプ10の加熱側は、加熱缶7004に接続されている。温水を供給するパイプ12は、他熱源Zとの熱交換を行う熱交換機7102を備えている。一方、ヒートポンプ10の冷却側は、冷水タンク3104と接続されており、冷水タンク3104は、濃縮液パイプ7016に設けた熱交換機7116、凝縮液パイプ7018に設けた熱交換機7118、クーリングタワー3302、及びコンデンサー7008と接続されている。なお、熱交換機7116,7118の一方あるいは双方を省略して良い。
動作例としては、原料タンク7002内の液温20度・含水率89%の原料が1000kg/hで蒸発缶7006に投入され、温水追従運転されるヒートポンプ10の630kWの加熱により加熱缶7004が加熱される(温水往き90度・戻り80度,加熱側COP3.2)。加熱缶7004への温水は他熱源Zによるバックアップを受け90度に保持される。濃縮凝縮装置7001と同様に原料が蒸発され、コンデンサー7008に達する。コンデンサー7008は冷水タンク3104から35度の冷水を受け(戻り40度)、同様に原料の凝縮がなされる。ヒートポンプ10からは433kWの冷熱が供給され、クーリングタワー3302では147kWの冷却がなされる。又、冷水タンク3104から熱交換機7116,7118へ35度の冷水が供給され(戻り50度)、60度の濃縮液や凝縮液の冷却がなされる。
そして、原料の投入量が増加した場合、ヒートポンプ10の出力も増加するが、冷熱が余る(コンデンサー7008における熱交換が遅れる)ため、熱交換機7116,7118での熱交換量を増やす。なお、冷却側に工場排熱Xを熱交換可能に接続し、冷水や冷却水を加温しても良い。一方、原料の投入量が減少した場合、ヒートポンプ10の出力も減少するところ、その減少分はクーリングタワー3302の冷却量増加で賄う。
なお、立ち上げ時、工場排熱Xや濃縮液・凝縮液の熱量が十分でないため、ヒートポンプ10を冷水追従運転し、加熱側はヒートポンプ10の温水と他熱源Zで対応する。そして、ヒートポンプ10の温水のみで加熱が賄えるようになると(温水が所定温度以上となると)、温水追従運転に切替える。又、排熱回収型ヒートポンプにつき、高温水発生型に代えて、又はこれと共に、蒸気と高温水を発生させるヒートポンプ式蒸気・温水発生装置を用いても良い。この場合、発生した温水を原料の加温(熱交換機7001H)に使い、発生した蒸気を加熱缶7004の熱源として使う。不足する蒸気はボイラー等の他熱源Zにて賄う。このようにすると、既設の濃縮装置を更新することなく導入できるため、コストダウンが可能となる。
本発明の実施例5は、加熱冷却装置を洗浄装置として使用するものである。洗浄液の加熱と、洗浄後回収した洗浄液を(新洗浄液と共に)洗浄に用いるため再生する際の冷却を行うため、加熱冷却装置を洗浄装置として構成する。なお、従来例に係る文献として、特開2004−186208が例示される。
[実施例5−1]
図44は実施例5−1に係る洗浄装置8001の冬季等(加熱負荷Hが冷却負荷Cより大きい場合等)の模式図であり、図45は洗浄装置8001における加熱負荷Hが冷却負荷Cより大きい場合から冷却負荷Cが加熱負荷Hより大きくなる場合への切替え時等(中間季等)の模式図であって、洗浄装置8001は、洗浄液をワークW(半導体製品(基板・ガラス基板・ウェハー)等)へ吹き付ける洗浄ノズル8002あるいはプレ洗浄ノズル8004を有する洗浄槽8006あるいはプレ洗浄槽8008と、ワークWを搬送するコンベア8010と、洗浄後のワークWに付着した洗浄液を各槽に落下させる(ワークWにおける洗浄液の残留を抑制する)ため空気圧縮機2840からのエアーを吹き付ける送風部としてのエアーナイフ8012及びプレ送風部としてのプレエアーナイフ8014と、プレ洗浄槽8008からの回収洗浄液を貯蔵する回収タンク8016と、新しい洗浄液の入った新液タンク8018と、洗浄槽8006からの回収洗浄液を再生する再生装置8020を備えている。
回収タンク8016や新液タンク8018には、加熱用の熱交換機8016h,8018hが備え付けられており、熱交換機8016h,8018hには、他熱源としてのヒーター3058zを有する温水タンク3058が接続されている。回収タンク8016は、洗浄ノズル8002と接続されている。熱交換機8016hは、回収液を液化するために加熱する。熱交換機8018hは、新液を固化しないように加熱する。
再生装置8020は、回収洗浄液(原液)を貯蔵する原液タンク8022と、原液タンク8022からの原液を処理する第1処理管8024及び第2処理管8026と、処理された原液の脱気を行う脱気処理管8028と、脱気処理された処理液を貯蔵するプレ洗浄ノズル8004と接続された処理液タンク8030を備える。
原液タンク8022や第1処理管8024には、冷却用の熱交換機8022c,8024cが設置されており、熱交換機8022c,8024cには、冷水タンク3104が接続されていて(図45)、冷水タンク3104には、複数の空冷ヒートポンプ2154が接続されている(図45)。熱交換機8022cは、原液が固化せず又再生に適した温度となるように原液を冷却する。熱交換機8024cは、例えばガスの溶解度を高め又ガスの分解を防ぐため一定温度に保持するように冷却する。
一方、脱気処理管8028や処理液タンク8030には、加熱用の熱交換機8028h,8030hが配置されており、熱交換機8028h,8030hには温水タンク3058が接続されている。熱交換機8028hは、洗浄液の予備加熱ないしガスの分解や脱気の促進のため加熱をし、熱交換機8030hは、処理した洗浄液を供給に適した状態とするため加熱をする。
そして、ヒートポンプ10が、温水タンク3058と冷水タンク3104(図45)の間に設置されている。なお、冷却側において、熱交換機30を介し、工場排熱Xとしての空気圧縮機2840の冷却水の熱を適用可能となっている(図44)。空気圧縮機2840には、冷却水を供給するクーリングタワー3302が接続されている。更に、温水タンク3058と冷水タンク3104の間において、空調用の冷温水供給手段8040が介装されている。
動作例として、冬季等で加熱負荷Hが冷却負荷Cより多い場合等には、図44に示すように、ヒートポンプ10を温水追従運転し、温水温度を90度に制御する。温水は温水タンク3058を介して空調を含む各装置に供給され、回収タンク8016内温度は80度に、新液タンク8018内温度は45度に、再生装置8020の脱気処理管8028内温度は60度に、処理液タンク8030内温度は80度に制御される。洗浄液やプレ洗浄液は80度とされる。なお、各装置の少なくとも何れかを省略して良い。
一方、冷水は空調を含む各装置に10度で供給され、原液タンク8022や第1処理管8024の内部温度は45度とされる。更に、(戻り)冷水に空気圧縮機2840の冷却水(18度)の熱が適用され(16度で戻る)、15度から17度に昇温される。例えば半導体工場では年間を通じて一定の温度や湿度に保たれるクリーンルームが備えられており、その保持のために冷水が必要であるものの、加熱負荷Hが大きいと必要な冷水を賄ってもなお冷熱が余り、そのままでは冷水が過冷却となって温水追従運転するヒートポンプ10が緊急停止してしまうところ、空気圧縮機2840の冷却水で冷水を加温することにより、加熱負荷Hに対する冷却負荷Cのバランスを取り、ヒートポンプ10が緊急停止する事態を防止して、加熱及び冷却に適切に対応しながらヒートポンプ10の運転を継続することができる。
なお、一時的に冷却負荷Cが加熱負荷Hを上回っても、空気圧縮機2840の所定温度(18度)の冷却水でヒートポンプ10の冷水側を冷却することから、冷熱供給不足は発生しない。又、冷水(戻り)温度が所定温度以上に上昇した場合、当該冷却水の温度を特定温度(15度)に下げることで、冷水温度が安定するように制御することが可能である。
他方、加熱負荷Hが冷却負荷Cより小さくなる場合に対応するための切替え(あるいはその逆の切替え)を行う場合、図45に示すように、加熱負荷Hが冷却負荷Cより大きい場合(冬季等)において冷却側を暖房運転される空冷ヒートポンプ2154a等により加熱して、ヒートポンプ10の運転停止を防止することができる。又、冷却負荷Cが加熱負荷Hより大きくなる場合(夏季等)、冷房運転される空冷ヒートポンプ2154a等により冷水を冷却することが可能である。
更に、空冷ヒートポンプ2154a等に関し、それぞれにおいては冷房運転から暖房運転への切替えに(少なくとも3分間程)時間を要するため、空冷ヒートポンプ2154a等を複数設置して、冷房運転中のものが1台となったら他の空冷ヒートポンプ2154a等(予備機)を暖房待機状態として、冷房から暖房への切替を極めて円滑に行えるようにする。又、暖房運転のものが1台である場合には、予備機を冷房待機とする。
加えて、冷房から暖房への切替に遅れが生じそうである場合、そのままであると冷水温度が低下しヒートポンプ10が停止してしまうため、温水追従運転するヒートポンプ10の冷水温度が所定値以下となったことの監視により当該場合を把握し、温水供給設定温度を下げ(90度から88度)、ヒートポンプ10の出力を絞って冷水温度低下を防止する。温水温度が低下した場合は、他熱源としての電気ヒーター3058zによりバックアップする。
本発明の実施例6は、加熱冷却装置を乾燥装置として使用するものである。乾燥炉内に(循環)導入するエアーにつき、除湿のための冷却コイルによる冷却と、乾燥温度とするための加熱コイルによる加熱を行うため、加熱冷却装置を乾燥装置として構成する。なお、乾燥対象は乾燥の必要があればどのようなものでも良いが、例えば木材、魚、海草、野菜、衣類、繊維、ゼラチン、植物、果実、発酵醸造品、印刷物、泥炭、汚泥、ゴム製品、樹脂、接着剤、陶器、タイル、液晶材料、半導体、フィルム、医薬品、化学薬品、紙、パルプ、ワーク(自動車のパーツや、建設土木機械、特殊車両、鋼製家具、鋼製建具、自動販売機、電気機器、通信機器、配電盤、空調機等あるいはこれらの部品)に対する塗装の乾燥を挙げることができる。なお、従来例に係る文献として、特開2006−78015が例示される。
[実施例6−1]
図46は実施例6−1に係る乾燥装置9001の模式図であり、乾燥装置9001は、ワークを乾燥する乾燥炉9002と、ブロワー9003を有しており乾燥炉9002のエアー導出口等から乾燥炉9002のエアー導入口へ至るエアー流路9004と、エアー流路9004に配置されたエアーを冷却する冷却コイル9010と、冷却コイル9010後のエアー流路9004に配置されたエアーを加熱する第1加熱コイル9012ないし第2加熱コイル9014を備えている。
そして、ヒートポンプ10の冷却側が冷却コイル9010に接続され、加熱側が第1加熱コイル9012に接続されており、第2加熱コイル9014には蒸気等の他熱源Zが接続されている。又、ヒートポンプ10の冷却側には、工場排熱Xを適用するための熱交換機30が設置されている。なお、熱交換機30には空冷ヒートポンプ又はこれらの組合せを接続して良い。
更に、ヒートポンプ10の冷却側には、冷却コイル9010への供給冷熱量(冷水の流量)を調整してエアーの冷却度合ないし除湿度合を調整する冷熱供給量調整弁2048が配置されている。又、ヒートポンプ10の加熱側には、第1加熱コイル9012への供給温熱量(温水の流量)を調整してエアーの加熱度合を調整する温熱供給量調節弁2109が配置されている。加えて、第2加熱コイル9014に対する他熱源Zの導入熱量を調整する流量調節弁48が配置されている。
動作例として、ヒートポンプ10を温水追従運転し、第1加熱コイル9012に70度の温水を供給すると共に、冷却コイル9010に冷水を供給する。冷熱が余る場合、工場排熱Xや空冷ヒートポンプに関する熱交換機30により冷水を加温し、冷温水のバランスを保ってヒートポンプ10の運転の継続を可能とする。冷却コイル9010によりエアーは20度に冷却され、相対湿度95%とされて水蒸気含有量を減らされる。そして、エアーは第1加熱コイル9012及び他熱源Z(例えば5kg/m3の蒸気)を導入した第2加熱コイル9014により60度に加熱され、相対湿度が下げられた状態(15%)で乾燥炉9002へ導入される。
又、工場排熱Xがなくあるいは空冷ヒートポンプが設置できない場合、冷水供給設定温度を下げ、あるいは冷熱供給量調節弁2048により供給量(冷水(戻り)温度)を調整し、又は第1加熱コイル9012の出口温度設定を下げ加熱負荷Hを下げてヒートポンプ10の出力を絞ることで対応し、ヒートポンプ10の運転を継続可能とする。
更に、立ち上げ時、ヒートポンプ10を温水追従モードで起動しても乾燥炉9002が冷えているため、冷却負荷Cが少なく、又工場排熱Xも少ない。従って、そのまま温水追従モードで起動すると冷温水のバランスを取り難いため、ヒートポンプ10を冷水追従モード(あるいは冷房モード)で起動し、加熱は他熱源Zで賄い、冷却負荷Cが設定値(乾燥炉9002からの送風温度やヒートポンプ10の負荷率、冷水の出入口温度や温度差等)以上となった場合、あるいはヒートポンプ10の加熱負荷Hが設定値(温水温度や温度差、温熱供給量調節弁2109の調整量(開度)や温風温度等)に達した場合に、温水追従モードへ切替える。なお、電力デマンドカット信号等の信号に基づき、使用電力を下げるため、ヒートポンプ10を冷水追従モードへ切替え、温水をクーリングタワーで冷却するようにして良い。
[実施例6−2]
図47は実施例6−2に係る乾燥装置9101の模式図であり、乾燥装置9101は、乾燥装置9001と同様に成るが、第1加熱コイル9012に他熱源Zが接続され、第2加熱コイル9014にヒートポンプ10の加熱側が接続される点で異なる。
動作例として、ヒートポンプ10を温水追従運転し、第2加熱コイル9014に70度の温水を供給すると共に、冷却コイル9010に冷水を供給する。冷熱が余る場合、乾燥装置9001と同様の動作に代えて、あるいはその動作の少なくとも何れかと共に、温水の入る第2加熱コイル9014の入口におけるエアーの温度を他熱源Zにより上昇させ(他熱源Z供給量を増し)、第2加熱コイル9014の負荷を下げることでヒートポンプ10の加熱負荷Hを下げて、冷温熱のバランスを取る。
[実施例6−3]
図48は実施例6−3に係る乾燥装置9201の模式図であり、乾燥装置9201は、乾燥装置9101と同様に成るが、第2加熱コイル9014に代えて加熱コイル9202が設置され、第1加熱コイル9012が省略されると共に、他熱源Zにつき熱交換機42を介して温水を加熱するものとした点で異なる。
動作例として、ヒートポンプ10を温水追従運転し、加熱コイル9202に70度の温水を供給すると共に、冷却コイル9010に冷水を供給する。冷熱が余る場合、乾燥装置9101と同様の動作に代えて、あるいはその動作の少なくとも何れかと共に、ヒートポンプ10の温水戻り温度を他熱源Zで上昇させ(他熱源Z供給量を増し)、ヒートポンプ10の出力を絞って、冷温熱のバランスを取る。なお、ヒートポンプ10の温水供給温度を上昇し冷水能力を下げることでバランスを保っても良い。又、冷熱や温熱の供給量は、流量調節弁による調整に代えて、又はこれと共に、ポンプをインバーターで流量調整するものとして良い。更に、冷水側に冷水タンクを配置し、冷水タンク内の冷水を工場排熱X等により加熱して良いし、温水側に温水タンクを配置し、温水タンクに対して他熱源Zを適用するようにして良い。
[実施例6−4]
図49(a)は実施例6−4に係る乾燥装置9401の模式図であって、乾燥装置9401は、既存の設備として、工場において共用される他熱源Z(主蒸気)を乾燥炉9002におけるエアー(90度)加熱用の乾燥用熱交換機9416に導入する蒸気管9407が設置され、ないしは蒸気管9407に温風温度調節弁9408が介装され、あるいはエアー(20度)を導入するエアーダクト9409も設置されており、乾燥装置9401はこれら既存の設備に追加することで形成されるものである。温風温度調節弁9408は、乾燥用熱交換機9416に導入する蒸気の量を調整することで、乾燥炉9002におけるエアーの温度を調節する。
そして、乾燥装置9401は、工場排熱Xにより熱せられた熱源媒体を導入してその熱を熱源とし、別途給水した水(媒体)により蒸気及び温水を発生するヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410を備えている。工場排熱Xの通路には、熱交換機9411が設置されていると共に、熱交換機9411とヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410との間に、熱源媒体(50〜95度)を後者に供給するパイプ9412ないし熱源媒体(45〜90度)を前者に戻すパイプ9414が設けられており、熱交換機9411は工場排熱Xと熱源媒体の熱とを交換する。又、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410は、給水を導入する軟水管9417及び給水管9418と接続されている。
更に、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410は、熱源媒体(50〜95度)の熱を用いて軟水管9417及び給水管9418からの給水(25度)を加熱する運転により、蒸気(100〜120度)及び/又は高温水(85〜95度)を発生するところ、その発生した蒸気を提供する蒸気管9420と、高温水を提供する温水管9421が接続されている。蒸気管9420は、蒸気管9407に介装されたエゼクター9424に接続され、エゼクター9424は、主蒸気(例えば5キログラム(kg)毎平方センチ)とヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410により供給される蒸気とを混合して乾燥用熱交換機9416に蒸気を供給する。
一方、温水管9421は、給水管9418へ戻るように配置されており(戻り温度40度)、温水管9421ないしエアーダクト9409には、高温水とエアーとの熱交換を行うことでエアーを予熱する熱交換機9426が介装されている。なお、乾燥炉9002内のエアーはブロワ付きのパイプ9428により一部エアダクト9409(熱交換機9426より乾燥炉9002側)に戻される(80度)。なお、図49(b)に示すように、蒸気管9407,9420のそれぞれに乾燥用熱交換機9416,9416aを設け、乾燥用熱交換機9416で最終的にエアーを加熱する前に乾燥用熱交換機9416aでエアーを加熱するようにし、エゼクター9424を省略するようにしても良い。又、図49(b)に示す乾燥装置において、蒸気管9407(の温風温度調節弁9408より乾燥用熱交換機9416側)と蒸気管9420を別途パイプにより接続し、当該パイプにバックアップ弁を設けても良い。この場合、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410が停止した際に当該バックアップ弁を開放することによって、乾燥用熱交換機9416aにも蒸気管9407の熱を導入することができ、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410の停止に備えて乾燥用熱交換機9416の容量を大きくする必要が無く、乾燥用熱交換機9416の容量を少なくすることができる。
このような乾燥装置9401にあっては、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410について工場排熱Xを利用して乾燥炉9002のエアー加熱用の蒸気と高温水とを生成する運転を継続することができ、更に高温水を熱交換機9426によりエアーのプレヒートに用いて熱の奪われた状態でヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410の給水に戻すことができ、全体として極めてエネルギー効率の良好な乾燥装置9401を提供することができる。
例えば、上述の例で、従来例(乾燥用熱交換機9416に対し都市ガスボイラーで生成した蒸気のみを導入する例)と共にエネルギー使用に係るシミュレーションを行い、それぞれの年間エネルギー使用量を把握してこれらの対比を行うと、図50や以下に説明するように、乾燥装置9401のエネルギー使用量の少なさ(効率の良好さ)が表れる。
即ち、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410(図49ではHP式蒸気・温水発生装置,HP,熱源媒体約80度)の消費電力を20kWh(kW時)とし、従来例の都市ガスボイラーの効率を90パーセント(%)とする。又、電気の効率を860キロカロリー毎キロワット時(kcal/kWh)とし、二酸化炭素(CO2)の排出係数や各自の効率を上述の通りとする。
そして、まず1時間当たりで考えると、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410の負荷は146880kcal/hとなり、併用するボイラーの負荷は39204kcal/hとなる。よって、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410の電気使用量は20kWhとなり、ボイラーの都市ガス使用量は4.0N立方mとなって、CO2排出量は電気の使用に基づく9.1kg/h及び都市ガスの使用に基づく9.2kg/hの合計18.3kg/hとなる。一方、従来例のボイラーの負荷は185868kcal/hとなり、都市ガス使用量は18.8N立方mとなって、CO2排出量は都市ガスの使用に基づく43.7kg/hとなる。
次に、1年間の総計を考える。ここで、1日当たりの運転時間を16時間とし、年間操業日数を250日とする。すると、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410の電気使用量は80000kWhとなり、併用するボイラーの都市ガス使用量は15840N立方mとなって、CO2排出量は電気の使用に基づく36.4トン(t)及び都市ガスの使用に基づく36.9tの合計73.3tとなる。一方、従来例のボイラーの都市ガス使用量は75098N立方mとなって、CO2排出量は都市ガスの使用に基づく175.0tとなる。
このようなシミュレーションに基づくエネルギー使用状況の把握結果によれば、乾燥装置9401では、従来例と比べて、年間のCO2の排出量を58%削減することができている。又、年間のエネルギー使用量につき原油に換算すると、乾燥装置9401で39キロリットル(kl)となる一方、従来例で89klとなり、56%の削減効果が現れている。
そして、乾燥装置9401にあっては、蒸気管9407等の既存の設備を利用することが可能であり、既存の設備が無駄にならず、又導入コストを低減することができる。なお、乾燥炉からの戻り温風(のためのパイプ9428)の無いオールフレッシュエアー(温風)による乾燥炉にも適用することができる。
又、工場排熱Xの熱量が低下した場合、パイプ9412の温水温度が低下し、ある設定温度に下がると、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410が停止してしまう。この場合、蒸気管9420に蒸気流量調節弁を設け、パイプ9412の温度が低下(例えば55度以下に低下)すると、蒸気流量調節弁を絞り蒸気発生量を少なくすることで、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410の出力が絞られ、パイプ9412の温度を上昇させることができる(第19形態と同様の制御)。又、工場排熱Xの熱量が増え、パイプ9412の温水温度が上昇(例えば65度以上に上昇)した場合、蒸気流量調節弁を元の開度に戻すことで、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410の出力が増える。加えて、蒸気流量調節弁によるヒートポンプの出力調整に代えて、蒸気供給圧力設定値の下げ(出力減)上げ(出力増)や、蒸気供給温度設定値の下げ(出力減)上げ(出力増)や、蒸気供給流量設定値の下げ(出力減)上げ(出力増)により、ヒートポンプの出力を調整しても良い。
更に、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410として蒸気のみを発生させる機器を用いて良い。又、工場排熱Xから熱交換機9411にて温水を作りヒートポンプを動かしているが、工場に属する排熱でヒートポンプ式蒸気・温水発生装置9410を動かしても良い。又、工場排熱Xから熱交換機9411にて温水を作る方法に代えて、又はこれと共に、排熱回収型ヒートポンプや空冷ヒートポンプで温水を作っても良い。
このように、冷水と温水を同時に活用できる工程について、排熱回収型ヒートポンプを活用し、冷温水の供給バランスを保つことで、省エネルギーな運転を継続することができる。なお、特開2010−8000の空気圧縮機とヒートポンプに関するものについても、有効に活用でき、更に省エネルギーで年間を通じて安定した運転が可能となる。
本発明の実施例7は、加熱冷却装置を塗装装置として使用するものである。塗装装置は、塗装工場において用いられるもので、前処理槽における前処理液及び乾燥炉へのエアの加熱と、空調・冷却炉・電着槽に係る冷却を行うため、加熱冷却装置を塗装装置として構成する。なお、複数の加熱対象に供給する温水に温度差が有れば、塗装工場以外の工場に属する加熱に用いることができ、例えば高温・低温の乾燥や空調、食品等の加熱、ないしこれらの組合せに用いることが可能である。
[実施例7−1]
図51(a),(b)は実施例7−1に係る塗装装置A001の模式図であり、塗装装置A001は、複数(ここでは2台)の排熱回収型のヒートポンプA002a,A002bを備えている。図51(b)は通常考えられる排熱回収型ヒートポンプの使い方であり、図51(a)は供給温度が異なる排熱回収型ヒートポンプの効率的な使い方である。
図51(a),(b)について、塗装装置A001は、その温水回路側において、前処理液の入った前処理槽A003(加熱負荷H)、ワークの塗装を乾燥するための乾燥炉A004(加熱負荷H)、及び温水タンクA005と、前処理液を加熱する温水導入可能な前処理側熱交換機A006と、乾燥炉A004へのフレッシュエアーを加熱する温水導入可能な乾燥側熱交換機A007を備えている。図51(a)の塗装装置は、図51(b)のものと異なり、更に、ヒートポンプA002a(の戻りパイプ)と温水タンクA005(の熱交換用に設けた回路)の間に介装される連絡回路側熱交換機A008を備えている。
又、図51(a),(b)について、ヒートポンプA002aと乾燥側熱交換機A007が温水回路で接続されており、ヒートポンプA002bと温水タンクA005が別の温水回路で接続されている。又、温水タンクA005と前処理側熱交換機A006が別の温水回路で接続されており、ヒートポンプA002aへの温水戻りパイプと温水タンクA005の間に別の温水回路(熱交換用温水連絡回路A055)が設置されている。
なお、前処理槽A003には、他熱源(ここでは蒸気)による加熱を可能とするため、前処理側他熱源熱交換器としての蒸気熱交換器A009が蒸気を導入可能に接続されており、乾燥炉A004には、そのエアー導出口等からエアー導入口へ至るエアーに対する他熱源(ここでは蒸気)による加熱を可能とするため、乾燥側他熱源熱交換器としての蒸気熱交換器A010が蒸気を導入可能に接続されている。又、次の箇所には、ポンプが設置されている。即ち、温水タンクA005から前処理側熱交換機A006への温水往きパイプ、及びヒートポンプA002bの温水戻りパイプ(温水タンクA005から見ると往きのパイプ)である。なお、図51(a)のものでは、更に、ヒートポンプA002aの温水往きパイプ、及び温水タンクA005の熱交換用温水連絡回路A055における連絡回路側熱交換機A008への温水往きパイプ(ここでのポンプは熱交換用温水連絡ポンプA056である)が設置される。
一方、図51(a),(b)の各塗装装置A001は、その冷水回路側において、塗装工場に係る空調や冷却炉・電着槽の冷却に関する冷却負荷Cと、空冷ヒートポンプA011を備えている。
ヒートポンプA002aの冷却負荷Cへの往きパイプにヒートポンプA002bの往きパイプが接続され、ヒートポンプA002bの往きパイプに空冷ヒートポンプA011の往きパイプが接続され、ヒートポンプA002aの冷却負荷Cからの戻りパイプにヒートポンプA002bの戻りパイプが接続され、ヒートポンプA002bの戻りパイプに空冷ヒートポンプA011の戻りパイプが接続され、これらの戻りパイプには冷水ポンプが介装されている。
以下、塗装装置A001の動作例を説明する。前処理槽A003(脱脂工程・化成工程)に対する加熱対象(前処理液)の設定温度は通常35〜60度であり、その加熱のための温水の温度は当該設定温度より2〜20度高く設定される。ここでは前処理槽A003(前処理液設定温度45度)に対する温水の設定温度を57度とする。一方、乾燥炉A004の炉内設定温度は工程により60〜180度であり、その加熱のための温水の温度は当該設定温度より10度程度高く設定される。ここでは乾燥炉A004へのフレッシュエアーに対する温水の設定温度を90度とする。
塗装装置A001の自動制御装置は、ヒートポンプA002a,A002bを運転し、前者(機器能力:加熱270kW/台・冷却170kW/台)により90度の温水を乾燥側熱交換機A007に供給し、後者(機器能力:加熱350kW/台・冷却250kW/台)により55度の温水を温水タンクA005に供給する。温水タンクA005からは、57度の温水が前処理側熱交換機A006に供給される。
図51(b)では、温水タンクA005の加熱熱源はヒートポンプA002bのみであり、連絡回路側熱交換機A008・熱交換用温水連絡ポンプA056・熱交換用温水連絡回路A055は無い。図51(b)のものにあっては、前処理側熱交換機A006での熱交換(加熱350kW)により、前処理液が45度に保持され、温水は温水タンクA005へ戻る。なお、ヒートポンプA002bの加熱能力は350kWのため、加熱不足分70kWは、蒸気熱交換機A009への蒸気の投入により賄う。又、温水は温水タンクA005からヒートポンプA002bへ戻る。このとき、ヒートポンプA002bは、冷却250kWで運転している。
一方、乾燥側熱交換機A007での熱交換(加熱200kW)により、エアー(外気)が80度に加熱され、乾燥炉A004からの循環温風と混合され、更に適宜蒸気の熱を受け、乾燥炉A004への温風が90度に保持される。そして、82.5度になった温水がヒートポンプA002bへ戻る。そして、ヒートポンプA002aは、加熱能力が270kWであり、70kWの余力を残して運転されている(74%運転)。一方、前処理槽A003へは蒸気が投入されている。従って、全体として、ヒートポンプA002aが余力を残しながら、他熱源が投入される状態となっており、エネルギー消費量の減少を行える余地があるものとなっている。又、ヒートポンプA002aは冷水126kWの出力となり、44kWの余力を残しており、その分空冷ヒートポンプA011(冷水124kW)の出力が多くなっていて、同様にエネルギー消費量の減少を行える余地がある。
これに対し、図51(a)の塗装装置A001では、熱交換用温水連絡ポンプA056は、温水タンクA005内の温水温度が所定値(56度)以下となった場合、当該温水温度が特定値(57度)以上となるようにするために駆動される。例えば、連絡回路側熱交換機A008に入る温水タンクA005側の温水は、56度であると、連絡回路側熱交換機A008に入る乾燥側熱交換機A007側の82.5度の温水により加熱され、乾燥側熱交換機A007側の温水は80度となってヒートポンプA002aへ戻る。連絡回路側熱交換機A008における熱交換により、高温を必要とする乾燥炉A004側の戻り温水を、比較的に低温である温水タンクA005側(前処理側)の温水により温度低下させ加熱負荷Hを増やすことで、その分だけヒートポンプA002aの冷水出力を向上させて(126kWから170kWへ)、空冷ヒートポンプA011による冷却が124kWから80kWに減少し、冷却負荷Cにより効率的に対応させることが可能となる。又、温水タンクA005の温水温度が上昇するので、乾燥炉A004に対する余力ある温熱源を前処理槽A003側に回すことができ、ヒートポンプA002a,A002bの運転の連係がとれ、又省エネルギーとなる。
一方、乾燥炉A004の加熱負荷Hが増大して乾燥炉A004側に余力がなく、前処理槽A003側に加熱の余力がある場合は、(ヒートポンプA002bの温水温度設定を上げることにより)温水タンクの温度を90度に上げて、熱交換用温水連絡回路A055により丁度逆の熱交換が行われて、余力のある前処理槽A003側(温水タンクA005側)から余力のない乾燥炉A004側への熱移動が発生し、ヒートポンプA002a,A002bの運転の連係がとれ、省エネルギーとなる。
なお、熱交換用温水連絡ポンプA056をインバーター制御することにより、温水タンクA005側の温水流量を調節して、連絡回路側熱交換機A008における熱交換量を調節するようにして良いし、ポンプに代えて、あるいはポンプと共に三方弁を設置し、連絡回路側熱交換機A008に入る温水の量を調節して、連絡回路側熱交換機A008における熱交換量を調節するようにして良い。
他方、冷却側に関しては、補助的・調整的な運転をする空冷ヒートポンプA011により7度・80kWの冷水が供給され、ヒートポンプA002bにより7度・250kWの冷水が供給されて当該冷水と合わせられ、ヒートポンプA002aにより7度・170kWの冷水が供給されてこれらの冷水と合わせられて、冷却負荷Cに供給される。
なお、熱交換用温水連絡ポンプA056の運転条件につき、次のように変更して良い。即ち、ヒートポンプA002aに余力がある場合に運転することとし、例えば、温水往き温度と戻り温度の差ΔThが設定値(10度)以内となっているとき、あるいは温水戻り温度が設定温度(80度)以上となっているときとする。又は、ヒートポンプA002aの冷水温度や、冷水往き温度と戻り温度の差ΔTcを温水同様監視しても良い。あるいは、ヒートポンプA002aの負荷率が所定値以下となっていることを判断するようにしても良い。
以上の塗装装置A001では、加熱負荷Hへの供給温水温度(ないし熱量)の高い側(乾燥炉A004)と低い側(前処理槽A003)を連絡する熱交換用温水連絡回路A055(熱交換用温水連絡ポンプA056,連絡回路側熱交換機A008)が設けられている。従って、図51(b)に示すような、熱交換用温水連絡回路A055が設けられず、各ヒートポンプA002a,A002bが個別に加熱負荷Hを賄う場合と比べて、次に詳述するように省エネルギーとなる。
即ち、個別に加熱負荷Hを賄う場合、それぞれの加熱対象に合った温度の温水を供給するところ、一方では余力があり、他方では余力がなく温熱不足で蒸気によるバックアップが多くなる状態が発生して、少なくともバックアップの分エネルギーを消費する。これに対し、塗装装置A001では、余力のある側の温水により余力のない側の温水が加熱され、その分だけバックアップを不要とし、あるいは冷水負荷調整用ヒートポンプ(ここでは空冷ヒートポンプA011)の出力を抑えることができ、省エネルギーとなる。又、排熱回収型ヒートポンプの部分負荷特性は、100%運転より悪いのが一般的であり、ヒートポンプA002aの負荷率が74%から100%運転となることで効率が2〜10%程度向上し、更に省エネルギーとなる。
なお、ヒートポンプA002aの温水温度が何らかの原因(例えば故障や加熱負荷Hの増加)で低下し、温水タンクA005の温水温度を冷やしてしまう場合、保護回路として熱交換用温水連絡ポンプA056を停止することができる。又、温水タンクA005の温水温度が設定温度(例えば53度)まで下がった場合に、保護回路として熱交換用温水連絡ポンプA056を停止するようにして良い。更に、加熱対象として、前処理槽A003と乾燥炉A004に代えて、又はこれら(の何れか)と共に、ブース空調(レヒート・プレヒート)や、ブース空調の第1レヒート(例えば加温温水50度)・第2レヒート(例えば加温温水60度)とすることができる。加えて、温水タンクA005を設けず、直接、ヒートポンプA002bの温水とヒートポンプA002aの温水を熱交換しても良い。又、連絡回路側熱交換機A008の代わりに、ヒートポンプA002aをダブルバンド仕様にして、第29形態における冷却水回路(クーリング側)へ熱交換用温水連絡回路A055を設けても良い。ダブルバンド仕様では、冷水追従モードでの熱回収運転において、クーリングタワーで排熱回収型ヒートポンプの温水温度を制御するのではなく、温水タンクA005の温水で排熱回収型ヒートポンプの温水を90度に設定しても良く、クーリングタワーで大気へ放熱するより無駄なく有効に温水を使用することができる。
[実施例7−2]
図52(a),(b)は実施例7−2に係る塗装装置A101の模式図であり、塗装装置A101は、実施例7−1に係る塗装装置A001に対し、加熱対象として空調装置A102のレヒータ(加熱コイル)A103を加えて成る。塗装装置A101では、更に排熱回収型のヒートポンプA002c及び温水タンクA105が追加される。なお、実施例7−1に係る塗装装置A001の変更例は実施例7−2に係る塗装装置A101にも適用できる。図52(b)は通常考えられる排熱回収型ヒートポンプの使い方であり、図52(a)は加熱対象に対する温水温度が異なる排熱回収型ヒートポンプのより効率的な使い方である。
ヒートポンプA002cの温水往きパイプ及び温水戻りパイプ(ポンプ付き)は温水タンクA105に接続され、温水タンクA105からはレヒータA103への温水往きパイプ(ポンプ付き)が延び、又レヒータA103から温水タンクA105への温水戻りパイプが延びる。なお、温水タンクA105には、バックアップとして他熱源(蒸気)による加熱を行うための他熱源熱交換機A106が設置されている。
更に、図52(a)のものでは、温水タンクA105,A005の間に第2の熱交換用温水連絡回路A155を構成する2本の温水連絡パイプ(それぞれ熱交換用温水連絡ポンプA156,A157付き)が設けられる。
一方、冷水側においては、ヒートポンプA002cの冷水往きパイプ・戻りパイプ(ポンプ付き)が、ヒートポンプA002bの冷水往きパイプ・戻りパイプに接続されている。
図52(b)のものの動作例であるが、ヒートポンプA002a(機器能力:加熱270kW/台・冷却170kW/台)は、温水90度(200kW・74%運転)で乾燥炉A004のフレッシュエアーを加熱し、冷水出力は126kWに調整されている。ヒートポンプA002b(機器能力:加熱350kW/台・冷却250kW/台)は、温水55度(300kW・86%運転)で、温水タンクA005を介して前処理槽A003を加熱し、冷水出力214kWで運転されている。ヒートポンプA002c(機器能力:加熱500kW/台・冷却400kW/台)は、温水45度(500kW・100%運転)を温水タンクA105へ供給し、冷水出力400kWで運転されている。冷却負荷C(900kW)に対応するため、空冷ヒートポンプA011を冷水160kWで運転している。ヒートポンプA002a,A002bは100%運転ではなく余力があるが、ヒートポンプA002cは100%運転となっており、加熱負荷Hに対応するため蒸気(100kW)にて温水タンクA105を加熱する状態となっていて、エネルギー消費を抑える余地のあるものとなっている。
これに対し、図52(a)の塗装装置A101の動作例であるが、塗装装置A001と同様に、ヒートポンプA002a(機器能力:加熱270kW/台・冷却170kW/台,消費電力100kW)から90度の温水が乾燥側熱交換機A007に供給され、25度のエアーが80度の温風となる。乾燥側熱交換機A007で200kW消費され、温水は82.5度となって連絡回路側熱交換機A008へ入り50kW消費され、80.7度となってヒートポンプA002aへ戻る(合計250kW)。このとき、ヒートポンプA002aから7度・157kWの冷水が冷却負荷Cへ供給される(93%運転)。
又、ヒートポンプA002b(機器能力:加熱350kW/台・冷却250kW/台,消費電力100kW)から温水タンクA005へ55度・350kWの温水が供給され、温水タンクA005から55度・300kWの温水が前処理側熱交換機A006へ供給される。このとき、ヒートポンプA002bから7度・250kWの冷水が冷却負荷Cへ供給される。
更に、ヒートポンプA002c(温水追従モード,機器能力:加熱500kW/台・冷却400kW/台・消費電力100kW)から温水タンクA105へ45度・500kWの温水が供給され、温水タンクA105から47度の温水が空調装置A102のレヒータA103へ供給し600kW消費され、40度となって戻る。このとき、ヒートポンプA002cから7度・400kWの冷水が冷却負荷Cへ供給される。なお、空調装置A102のクーラー(冷却コイル)A107に、冷水回路から冷水が供給される。
塗装装置A101では、第2の熱交換用温水連絡回路A155によって、ヒートポンプA002bの発生した前処理槽A003側の温熱と空調装置A102側の温熱とを熱交換(50kW)することができるため、ヒートポンプA002bの出力を86%から100%に上げた状態で運転させることができ、ヒートポンプA002bによる冷水供給量を(214kWから250kWへ)増加させることができる。
更に、第1の熱交換用温水連絡回路A055が加わることによって、温風発生用の温熱を空調装置A102側へ回して空調用の温水を加熱(50kW)することができ、当該加熱によりヒートポンプA002aへの戻り温水温度が低下して加熱負荷を増やし、ヒートポンプA002aの出力が増え(74%から93%へ)、ヒートポンプA002aによる冷水供給量も増える(126kWから157kWへ)。
そして、冷水供給量が増えることにより、冷熱のバックアップ装置としての空冷ヒートポンプA011の出力が、図52(b)に示すような熱交換用温水連絡回路A055,A155の無い場合と比べて下がり(160kWから93kWへ)、省エネルギーとなるし、用意すべき空冷ヒートポンプA011の機器容量を少なくすることができ、コストを低減することができる。
又、一般に排熱回収型ヒートポンプは温水温度が低いほど加熱能力や効率が良好となるところ、ヒートポンプA002aは温水温度が高く温水側COP2.7となり、ヒートポンプA002bは温水温度が中温で温水側COP3.5となり、ヒートポンプA002cは温水温度が低く温水側COP5.0となる。これに応じ、塗装装置A101では、なるべくヒートポンプA002cやヒートポンプA002bの出力を高くするようにしてこれらを優先的に運転させることができ、このように運転しても、熱交換用温水連絡回路A055,A155を用いた温熱の移動により、それぞれの加熱対象に対して適切な温熱を供給することができる。即ち、塗装装置A101では、効率に優れるヒートポンプA002bが優先して運転されるように、熱交換用温水連絡回路が配置されている。
なお、ヒートポンプA002a〜A002cの冷水回路を共通にせず、前処理槽に対する冷水回路(冷水往き15度等)を独立させる等、冷水回路を個別に設定することができる。又この場合、冷水温度が高いほど機器効率や冷却・加熱能力が高くなることに鑑み、冷水温度(及び温水温度)に基づいて運転の優先度を決定するようにして良い。
[実施例7−3]
図53(a)は実施例7−3に係る塗装装置A201の模式図であり、塗装装置A201は、図52(b)の塗装装置から前処理槽ないしその温水回路やヒートポンプを取り除いた構成、あるいは図52(a)の塗装装置A101から前処理槽A003ないしその温水回路やヒートポンプA002b並びに熱交換用温水連絡回路A055,A155を取り除いた構成となっており、冷却側の制御に特徴を有する。
即ち、まず図52(b)のような塗装装置では、各排熱回収型ヒートポンプを効率良く運転するために温水追従運転させている。しかし、温水追従運転のため冷却状況が加熱状況に左右されて冷水温度が安定しないものとなっている。特に、ブース空調用やリサイクル空調用の空調装置における冷却や、冷却炉の冷却については、冷水供給温度の精度が求められるため、冷水温度の不安定さは好ましくないものとなる。例えば、ブース空調の設定温度は夏季28度・中間季25度・冬季20度と変化し、これに応じ温熱供給量が変動し、冷熱供給量が変化するし、リサイクル空調の負荷も季節に応じ変化する。
そこで、排熱回収型のヒートポンプの冷水供給温度を安定させるため、自動制御装置は、ヒートポンプA002a,A002bの冷水戻り温度(及び/又は冷水往き温度)を監視し、それぞれの冷水戻りパイプにおける冷水ポンプA202,A203における流量(各ヒートポンプA002a,A002bに戻る冷水量)をインバーター制御等により制御して、各ヒートポンプA002a,A002bにおける冷水供給温度を安定させる。なお、一般にヒートポンプでは冷水流量の上限値・下限値が存在するため、冷水ポンプA202,A203の特性(流量に対する電流の関係)から、ポンプインバーターの入力に対して当該上限値・下限値に応じた上限・下限を設け、流量調整により当該上限・下限を超えることによるヒートポンプの停止を防止する。又、ポンプの特性につき、流量に対する電流の関係に代えて、流量計を設置し、この流量計により流量調整しても良い。
例えば、ヒートポンプA002cは、温水追従運転により夏季に500kWの加熱をして400kWの冷水を発生し、冬季に350kWの加熱をして280kWの冷水を発生する。
ここで、夏季において、冷却負荷Cが大きく、冷水戻り温度が17度となれば、冷水供給温度を7度とするため、冷水ポンプA203の流量を毎分573リットルとする。一方、冷却負荷Cが小さく、冷熱が比較的に少ししか奪われないため冷水戻り温度が15度となれば、冷水供給温度を7度に維持するため、冷水ポンプA203の流量を毎分717リットルとする。
又、ヒートポンプA002aは、冬季において20度のエアーから80度の温風を発生すべく90度の温水を供給し、温水追従運転により270kWの加熱をして170kWの冷水を発生する。
このとき、ヒートポンプA002aへの冷水戻り温度は冷却負荷Cにより変化するが、冷水ポンプA202の流量をインバーター制御により調整して対応する。例えば、冷却負荷Cが大きく冷水戻り温度が17度となった場合、流量を毎分244リットルとする。一方、冷却負荷Cが小さく冷水戻り温度が15度となった場合、流量を毎分305リットルとする。なお、何れの場合においても冷水往き温度を7度とする。
塗装装置A201では、ヒートポンプA002a,A002cへ戻る冷水量を調整するため、ヒートポンプA002a,A002cの冷水供給温度が安定し、省エネルギーを図りつつ冷却負荷Cを的確に冷却することができる。
なお、リサイクル空調の場合、冷却負荷Cと加熱負荷Hが比較的に安定していることから、ブース空調の設定温度・湿度や季節により、手動で各排熱回収型ヒートポンプの冷水流量を調整しても良く、例えばポンプインバーターの手動での切替や、手動による弁の開度変更等により調整することができる。
[実施例7−3−1]
実施例7−3に係る塗装装置A201の変更例として、冷水温度制御を別のものとした実施例7−3−1の塗装装置を説明する。実施例7−3−1の塗装装置の構成は、図53(a)に示される実施例7−3に係る塗装装置A201の構成と同等である。
ヒートポンプA002a,A002cに係る各冷水ポンプの流量を一定とし、空冷ヒートポンプA011の冷水温度を自動で上げ下げして、冷却負荷Cへ送る冷水温度を7度に制御する。例として、ヒートポンプA002cに関し冷水戻り温度が12度で冷水往き温度が9度(478リットル/分・100kW)で運転され、ヒートポンプA002aに関し冷水戻り温度が12度で冷水往き温度が8度(717リットル/分・200kW)で運転されている場合、空冷ヒートポンプA011の12度で戻る冷水を5度で供給すれば(837リットル/分・409kW)、709kWの冷却負荷Cに対して7度・2032リットル/分の冷水を供給し対応することができる。又、ヒートポンプA0002a,A002cの冷水供給温度が7度より低い場合、空冷ヒートポンプA011の冷水供給温度を上げることで、冷却負荷Cへ7度の冷水を供給することができる。
なお、実施例7−3のように、ヒートポンプA002a,A002cの冷水流量に上下限の制限がある場合であって、その制限のため冷水流量を変化させて冷水温度を目標値にできないときに、実施例7−3−1のように、空冷ヒートポンプA011の冷水温度を変化させることで冷却負荷Cへの目標温度の冷水を供給することができ、制御の範囲を広げることが可能となる。
[実施例7−4]
図53(b)は実施例7−4に係る塗装装置A301の模式図であり、塗装装置A301は、実施例7−3の塗装装置A201と同様に成るが、空冷ヒートポンプA011に代えて、調整用冷凍機としての2台の空冷ヒートポンプA302,A303を、順にヒートポンプA002aの往きパイプ,ヒートポンプA002cの往きパイプに設けている。
塗装装置A301では、基本的には実施例7−3と同様に動作するが、空冷ヒートポンプA302,A303を設けることで、ヒートポンプA002a,A002cから出る冷水の温度が設定温度(7度)より高くなっていたとしても、冷水をその温度まで冷却することが可能となり、冷却負荷Cに対する冷水供給温度が安定する。
又、ヒートポンプA002a,A002cから出る冷水の温度が設定温度より高くても冷却負荷に対応可能となるため、その分冷水戻り温度を高くすることができ、ヒートポンプA002a,A002cの加熱能力や効率をその分向上することが可能となる。例えば、ヒートポンプA002cにおいて、45度・566kWの温水を作っているときに、7度・456kWの冷水を出すとすると、消費電力は110kWとなるところ、9度・486kWの冷水を出すようにすれば消費電力は109kWに下がる。9度の冷水は、空冷ヒートポンプA303により、7度に降下される。
[実施例7−5]
図54は実施例7−5に係る塗装装置A401の模式図であり、塗装装置A401は、実施例7−3の塗装装置A201と同様に成るが、更に冷却回路側に冷水タンクA402が設置されている。冷水タンクA402は、ヒートポンプA002a,A002cや空冷ヒートポンプA011、冷却負荷Cの間に配置されている。
ヒートポンプA002a,A002cから出た冷水は、冷水タンクA402の供給部A403に一旦貯められ、ポンプにより流量調整され、更に空冷ヒートポンプA011により冷水往き温度を調整されたうえで冷却負荷Cへ供給される。なお、空冷ヒートポンプA011は、バックアップとしてではなく、冷水タンクA402から冷却負荷Cへの冷水供給温度の調整に用いられている(調整用冷凍機)。
又、冷却負荷Cにより冷熱を用いられ奪われて戻ってきた冷水は、一旦冷水タンクA402の戻り部A404に貯められ、冷水ポンプA202,A203により流量調整されてヒートポンプA002a,A002cへ戻る。
実施例7−5に係る塗装装置A401では、冷水タンクA402が設けられるため、冷却負荷Cに対する冷水供給温度が安定する。又、冷水流量を空冷ヒートポンプA011に合致したものに調整することができ、流量がヒートポンプA002a,A002cと空冷ヒートポンプA011で合わなくても動作可能となる。
[実施例7−6]
図55は実施例7−6に係る塗装装置A501の模式図であり、塗装装置A501は、上記実施例と同様の乾燥炉A004や空調装置A102を有する他、乾燥炉A004からの排気の脱臭を行う脱臭炉A502と、脱臭された排気(の内熱量調整された一部)との熱交換により温水を加熱する排気熱交換機A503と、温水を熱源として蒸気を発生する蒸気発生ヒートポンプA504と、蒸気を熱源として冷水を生成する蒸気吸収式冷凍機A505と、蒸気のバックアップとしての蒸気ボイラーA506と、温水タンクA507を備える。なお、ここでは空調装置A102はリサイクル空調に係るものとなっている。
温水タンクA507の低温部A508(例えば85度の温水の貯蔵部)から、ポンプを通じ排気熱交換機A503へ温水(85度)が送られ、95度に熱せられて、温水タンクA507の高温部A509(例えば95度の温水の貯蔵部)に貯められる。なお、例えば、乾燥炉A004から出た排気は180度であるし、脱臭炉A502から出た排気は400度であり、温水の加熱により降温される。
高温部A509からは、ポンプや三方弁(流量調節弁・供給熱量調節手段)を介して95度の温水が空調装置A102のレヒータA103へ送られ、レヒータA103から出た85度となった温水が低温部A508へ戻される。
又、高温部A509の温水は、ポンプを介して流量調整のうえ蒸気発生ヒートポンプA504へ送られ、蒸気発生ヒートポンプA504は、この温水を用いて蒸気を生成し、蒸気路に供給する。蒸気路は、蒸気吸収式冷凍機A505や乾燥炉A004の蒸気熱交換器A010に通じており、蒸気ボイラーA506を有している。なお、蒸気発生ヒートポンプA504が蒸気生成時に出す温排水は、温水タンクA507の低温部A508へ戻される。又、蒸気路には、蒸気の一部を温水として温水タンクA507(の高温部A509)へ戻すパイプが接続されている。
乾燥炉A004に対して、ブース空調から25度のエアーが案内され、蒸気熱交換器A010を通されて90度の温風とされ、導入される。一方、蒸気吸収式冷凍機A505は、蒸気を用いて冷水を冷却する(7度)。冷水は、空調装置A102のクーラーA107に供給され、空調に冷熱として用いられて蒸気吸収式冷凍機A505へ戻る。
塗装装置A501では、温水タンクA507(の高温部A509)における温水温度が所定値(例えば80度)以下に低下した場合、ブース空調の加熱能力(レヒート)が低下して空調不能となるおそれがあるとして、蒸気発生ヒートポンプA504の出力を絞りあるいは停止をすることで、温熱使用量を減らして温水温度を維持ないし上昇させる。
換言すれば、塗装装置A501では、排気熱により加熱した温水につき、空調に支障のない範囲で蒸気発生ヒートポンプA504による蒸気の発生に用いることができ、排気から回収した熱を無駄なく使い切ることが可能となる。
なお、レヒータA103に係る三方弁のレヒータA103側開度が所定値(90%)以上となると(レヒータA103への供給熱量が所定値以上となると)、蒸気発生ヒートポンプA504の出力低下・停止をし、特定値(70%)以下となると、蒸気発生ヒートポンプA504の出力復帰(増加)・運転再開をするようにしても良い。
又、塗装装置A501では、蒸気吸収式冷凍機A505が用いられるため、蒸気路(蒸気発生ヒートポンプA504)が存在する中で冷水を簡便に生成することができる。ここで、比較例として、温水吸収式冷凍機により冷水を供給するものを考える。この比較例では、温水吸収式冷凍機の機器効率がCOP0.65と低く、省エネルギーであるとは言い辛い。又、この比較例では、温水吸収式冷凍機への温水配管を新たに敷設する必要がある。これに対し、塗装装置A501では、COP1.35と効率の良好な蒸気吸収式冷凍機A505を利用して冷水を生成できる。又、塗装工場に既設の蒸気配管を利用することができ、コストの面でも有利である。
[実施例7−7]
図56は実施例7−7に係る塗装装置A601の模式図であり、塗装装置A601は、実施例7−6に係る塗装装置A501から蒸気吸収式冷凍機A505を除いたものに、実施例7−2に係る塗装装置A101の構成を付加したものとなっている。
即ち、空調装置A102には、温水タンクA105を介して排熱回収型のヒートポンプA002cが接続されている。又、前処理槽A003には、温水タンクA005を介して排熱回収型のヒートポンプA002bが接続されている。温水タンクA005は、温水タンクA507と接続されており(高温部A509から温水タンクA005へ、及び温水タンクA005から低温部A508へ)、又蒸気により温水タンクA005内の温水が加熱可能となっている。更に、温水タンクA507は、温水タンクA106とも接続されている(高温部A509から温水タンクA106へ、及び温水タンクA106から低温部A508へ)。なお、主に乾燥炉A004のエアー加熱用の排熱回収型のヒートポンプA002aは無く、代わりに蒸気発生ヒートポンプA504等が配置されている。
蒸気は、蒸気発生ヒートポンプA504とバックアップ用の蒸気ボイラーA506により発生され、前処理槽A003の蒸気熱交換器A009,乾燥炉A004の蒸気熱交換器A010,温水タンクA005,温水タンクA105の他熱源熱交換機A106に供給される。
ヒートポンプA002b,A002cの冷却側は、往きと戻りでそれぞれまとめられており、更に実施例7−2に係る塗装装置A101と同様に、冷水冷却バックアップ用の空冷ヒートポンプA011が組み込まれている。冷水は、ブース空調に係る空調装置A102のクーラーA107や、図示しない冷却炉等に供給される(冷却負荷C)。
塗装装置A601の動作例であるが、蒸気加湿や乾燥炉A004の蒸気熱交換器A010によるエアーの加熱を重視して、自動制御装置は、蒸気発生ヒートポンプA504を優先的に運転させる。なお、一般に蒸気発生ヒートポンプA504は、熱源温水温度が50度以上で運転可能となるため、熱源となる温水タンクA005内の温水の温度を高くする。
排気熱により加熱された温水は、蒸気発生ヒートポンプA504の運転の他、前処理槽A003の前処理液加熱等のための温水タンクA005の温水温度上昇や、空調装置A102のレヒータA103のための温水タンクA105の温水温度上昇に用いられ、これにより、ヒートポンプA002b,A002cの運転が抑えられる。例えば、空調用の温水タンクA105の温水温度が50度以下となると、ポンプを駆動し、排熱を回収した温水タンクA507から温水タンクA105へ温水を送る。又、温水タンクA105の温水温度が80度以上となると、当該ポンプを停止し、温水の移動を止める。一方、前処理用の温水タンクA005の温水温度が60度以下となると、ポンプを駆動し、排熱を回収した温水タンクA507から温水タンクA005へ温水を送る。又、温水タンクA005の温水温度が80度以上となると、当該ポンプを停止し、温水の移動を止める。
又、自動制御装置は、温水タンクA507(の高温部A509)の温水温度が所定値以下となり、熱量不足と判断すると、全体的な効率に鑑み、温水タンクA507から温水タンクA105へ温水を送るためのポンプにより温水の流量を絞り、あるいは当該ポンプの運転を停止して温水の送水を止める。
更に、自動制御装置は、温水タンクA507(の高温部A509)の温水温度が上記所定値より低い特定値以下となり、より一層の熱量不足と判断すると、次に効率の良い前処理用のヒートポンプA002bの出力を上げ、ヒートポンプA002bの稼働率を上げるように制御する。即ち、自動制御装置は、温水タンクA507から温水タンクA005へ温水を送るためのポンプにより温水の流量を絞り、あるいは当該ポンプの運転を停止して温水の送水を止める。このように脱臭炉A502の排気熱量が少ないとき、温水タンクA105,A005と温水タンクA507との熱交換を少なくし、高温部A509の温水温度を高く維持することで、蒸気発生ヒートポンプA504の運転を継続し、余剰の高温部A509の温水をブース空調あるいは前処理で使い切ることが可能となる。
実施例7−7に係る塗装装置A601では、排気から回収した熱を持つ温水につき、熱量が十分である場合には、蒸気発生ヒートポンプA504の熱源として優先的に利用し、余剰分を前処理や空調における加熱に利用するため、排気から回収した熱を使い切ることができ、極めて省エネルギーとなる。又、排気の熱量が不足する場合には、温水の熱をやりとりすることで、前処理用ないし空調用の温水の熱量や、ヒートポンプA002b,A002cの出力を適切に調整することができ、熱量の変動に的確に対応することが可能である。
本発明の実施例8は、加熱冷却装置を乾燥冷却装置として使用するものである。乾燥冷却装置は、塗装工場等において用いられるもので、乾燥炉へのエア(温風)の加熱と、冷却炉へのエア(冷風)の冷却を行うため、加熱冷却装置を乾燥冷却装置として構成する。なお、加熱対象(加熱負荷)として温風以外のものを採用しあるいは追加しても良いし、冷却対象(冷却負荷)として冷風以外のものを採用しあるいは追加しても良い。又、他の実施例と同様に、本実施例についても電着塗装装置等の他の装置に適用可能であり、以下の一部の実施例では当該他の装置についてのものが含まれる。
[実施例8−1]
図57(a)は実施例8−1に係る乾燥冷却装置B001の模式図であり、乾燥冷却装置B001は、排熱回収型のヒートポンプ10を備えると共に、乾燥炉B002と冷却炉B004を備えている。乾燥冷却装置B001において、例えば塗装後のワークが乾燥炉B002の温風により乾燥され、その後昇温したワークが冷却炉B004に搬送されて冷風により冷却される。なお、乾燥炉B002あるいは冷却炉B004において別々のワークを加熱あるいは冷却しても良い。
ヒートポンプ10の温水側は、乾燥炉B002における温風循環路B006に配置される熱交換機B008が設置されており、温風が温水との熱交換により加熱されるようになっている。又、温風循環路B006には、他熱源熱交換機42が配置されており、他熱源熱交換機42には、パイプ46や流量調節弁48を介して、他熱源Zとしての蒸気STが接続されている。温風は、例えば戻り(温風循環路B006導入直後)70度から供給(温風循環路B006導出直前)80度に加熱され、温水は、例えば供給温度90度に設定される。なお、温風循環路B006に、フレッシュエアを所定のあるいは制御された量(割合)で混合しても良いし、フレッシュエアのみを導入しても良い。
一方、ヒートポンプ10の冷水側には、空調用ヒートポンプB010が配置されており、その供給パイプB012には、冷却負荷Cへの分岐パイプと、ヒートポンプ10からのパイプ16と、冷熱調節手段としての三方弁B016が配置されていて、戻りパイプB020には、ヒートポンプ10へのパイプ26と、三方弁B016からの分岐パイプと、冷却負荷Cからのパイプと、冷水ポンプB022が配置されている。そして、供給パイプB012と戻りパイプB020の間には、冷却炉B004における冷風循環路B026に配置される熱交換機B028が設置されている。そして、冷水供給温度が例えば7度に設定される。なお、冷風循環路B026に、フレッシュエアを所定のあるいは制御された量(割合)で混合しても良いし、フレッシュエアのみを導入しても良い。又、空調用ヒートポンプB010に代えて、あるいはこれと共に、水冷式ヒートポンプや排熱回収型ヒートポンプ、空冷ヒートポンプ若しくはこれらの組合せを配置しても良い。
このような乾燥冷却装置B001において、乾燥の後工程に冷却がなされる場合、乾燥開始後ワークが冷却炉B004に達するまでの間、冷却負荷Cが極めて軽いか全くない状態となり、この間にヒートポンプ10を単に運転しようとしても、温水加熱に対する冷水冷却のバランスがとれずに運転継続不能となる。又、例えば冬季のように、環境温度(室温)が冷却にとって十分であるため、冷却負荷Cが発生しない場合も考えられ、このような場合にヒートポンプ10を単に運転しようとしても、やはり運転継続不能となる。
更に、冷却負荷Cの有無にかかわらず、空調用ヒートポンプB010との関係で運転継続不能となる事態が発生することが考えられる。即ち、放熱による温水や冷水のエネルギーロスを少なくするため、ヒートポンプ10は乾燥炉B002ないし冷却炉B004に隣接して配置することが考えられ、空調用ヒートポンプB010とヒートポンプ10が離れることが考えられる。すると、ヒートポンプ10からの冷水は、配管が冷却炉B004(熱交換機B028)側より長い故に配管抵抗が比較的に大きい空調側(図57(a)の冷却負荷C側)に流れ難く、熱交換機B028側に優先的に流れることとなる。冷水が冷却炉B004へ優先的に流れるために冷熱が十分に使われることなくヒートポンプ10へ戻る事態の発生が考えられ、温熱と冷熱のバランスが崩れて運転継続不能となる事態が発生する可能性がある。
そこで、乾燥冷却装置B001では、次のように運転する。即ち、立ち上げ後ワークが冷却炉B004に達するまでの間、温風は蒸気STにより加熱し、ワークが冷却炉B004に達して、熱交換機B028に係る冷熱負荷が(所定量以上)発生したら、ヒートポンプ10の運転を開始する。冷水と共に生成される温水は、乾燥炉B002(熱交換機B008)に供給され、温風が所定温度(範囲内)になるように蒸気STによる加熱量が減少するよう制御される。このようにヒートポンプ10の運転を開始することで、ヒートポンプ10の冷水側の負荷が十分となった状態でヒートポンプ10を運転することができ、温水の温熱供給量に対して冷水の冷熱供給量が過剰となりヒートポンプ10の運転の継続が不能となる事態を防止することができる。ここで、運転開始には、ヒートポンプ10の起動が含まれるし、あるいはヒートポンプ10が起動準備を終えて温水ないし冷水が供給され始めることが含まれる。
なお、冷熱負荷の(所定量以上の)発生に代えて、あるいはこれと共に、冷却炉B004の戻り冷風温度(冷風循環路B026内のエア温度)が所定値(例えば25度)以上となることや、冷風供給温度と冷風戻り温度の差が所定値(例えば温度差5度)以上となること、冷却炉B004に係る冷水戻り温度が所定値(例えば12度)以上となること、冷却炉B004に係る冷水供給温度と冷水戻り温度の差が所定値(例えば温度差5度)以上となること、若しくはこれらの組合せをヒートポンプ10の運転開始条件としても良い。
又、冷却炉B004において冷熱負荷の発生が見込まれる時間あるいは時刻を把握可能なタイマーが、当該時間あるいは時刻を把握すると、ヒートポンプ10の運転が開始するようにしても良い。
更に、ヒートポンプ10の運転につき、次のようにすることもできる。即ち、工場立ち上げ時(乾燥工程開始時)ではヒートポンプ10を冷水追従モードで運転し、温水が所定温度(例えば70度)以上となったら、温水追従モードに切換える。乾燥開始後ワークが冷却炉B004に達するまでの間は、冷却炉B004に係る冷却負荷が少ないので、ヒートポンプ10は比較的に低出力で運転され、ワークが冷却炉B004に達すると、冷却炉B004に係る冷却負荷が増え、その分冷水追従モードのヒートポンプ10の出力が増し、これに応じて温水出力も増え、温水温度が上がり、温水追従モードとしても運転継続可能な状態となるので、温水追従モードに切換える。なお、温水が所定温度以上となることの把握に代え、あるいはこれと共に、乾燥炉B002の温風循環路B006内の温風が所定温度以上となることや、供給温風と戻り温風の温度差が所定値以上となること、供給温水と戻り温水と戻り温風の温度差が所定値以上となること、若しくはこれらの組合せとして良い。
以上の乾燥冷却装置B001では、冷却炉B004に係る冷却負荷が生じてから乾燥用のヒートポンプ10を運転し、乾燥炉B002における加熱負荷には適宜他熱源で対応するため、乾燥工程が冷却工程の前にあっても、あるいは空調用ヒートポンプB010の冷却負荷Cにかかわらず、ヒートポンプ10の運転を継続することができる。
[実施例8−2]
図57(b)は実施例8−2に係る電着塗装装置B101の模式図であり、電着塗装装置B101は、実施例8−1の乾燥冷却装置B001を電着塗装装置に適用したものである。
即ち、生産前に前処理槽B102(湯洗槽・脱脂槽・化成槽等、例えば前処理液45度)を蒸気STで加温し、昇温完了後にワークを流す。前処理工程後に電着槽B104における電着工程があり、電着槽B104にワークが入って電着液に電流が流れる際にジュール熱が発生し電着液が加温されるが、電着槽B104や冷水タンクは通常保水量が多いため、通電開始から電着液が昇温するまでに比較的時間を要する。従って、電着槽B104に係る冷却負荷の発生は前処理開始から遅れるが、ヒートポンプ10を実施例8−1と同様に運転すれば(例えば温水供給温度65度・温水タンク温度60度・冷水タンク温度15度・電着液温度30度)、ヒートポンプ10が温熱と冷熱のアンバランスにより停止する事態を防止することができ、省エネルギーであるヒートポンプ10の運転を継続することが可能である。
[実施例8−3]
図58は実施例8−3に係る乾燥冷却装置B201の模式図であり、乾燥冷却装置B201は、実施例8−1の乾燥冷却装置B001と同様に成るが、温水側の熱交換機B008がフレッシュエア路B202に配置されていると共に、パイプ12に熱量調節手段としての流量調整弁B204が配置されており、更に流量調整弁B204の手前でパイプ12がパイプ22に向けて分岐しており、その分岐パイプB206に流量調整弁B208が配置されている点が異なる。
乾燥冷却装置B201において、実施例8−1で説明したように、冷却炉B004に係る冷却負荷が生じてからヒートポンプ10の運転を開始しようとすると、乾燥炉B002が既に作動中であるため、フレッシュエア(例えば25度)が流れている状態で運転を開始することとなる。しかし、この状態においては、運転開始中に温水がフレッシュエアにより冷やされることとなり、ヒートポンプ10の通常運転条件である温水温度の下限値(温水供給温度が例えば最大70度以上と高い場合において例えば40度)を下回って、昇温できないまま運転できない事態が生じる可能性がある。なお、温水温度の下限値未満でも短時間であれば運転可能である場合があるが、温水温度が低いとヒートポンプ10の加熱能力が通常運転時より(例えば10分の1程度まで)少なくなることから、フレッシュエアによる冷却量がヒートポンプ10の加熱量を上回るため温水温度が上がることはなく、ヒートポンプ10を通常運転にすることができない。
このような事態に対する対策として、流量調整弁B204,B208・分岐パイプB206を省いた図58の乾燥冷却装置において、温水を供給するパイプ12に他熱源Zとしての電気ヒータを設置し、ヒートポンプ10の起動前に電気ヒータで温水を加温しておくことが考えられる。しかし、他熱源Zを追加する必要があり、しかもその能力はフレッシュエアによる冷却量に対応可能である程度に大きい必要があり、装置が大型化し、導入コストを始めとするコストが嵩むこととなる。
そこで、乾燥冷却装置B201において、次のように制御することで、ヒートポンプ10の運転継続を可能とする。即ち、流量調整弁B204,B208の制御により、乾燥工程開始時(ヒートポンプ10運転前)において、分岐パイプB206に対する通水量を増やし、熱交換機B008への温水量を減らして、温水がフレッシュエアとの熱交換により全量冷却されてヒートポンプ10に戻らないようにする。そして、温水温度が(下限値以上の)所定値(例えば50度)以上となったら、分岐パイプB206に対する通水量を減らし、熱交換機B008への温水量を増やして、フレッシュエアに対する加熱量を(徐々に)増やし、ヒートポンプ10の運転を継続可能とする。
なお、温水の熱交換機B008に対する供給量を減らすことに代えて、あるいはこれと共に、乾燥工程開始時(ヒートポンプ10運転前)において、フレッシュエアの導入を行わず風量0としても良い(僅かに導入を行い若干の風量を生じている場合を含む)。この状態で、ヒートポンプ10の運転を開始し、温水がフレッシュエアにより(過剰に)冷却されないようにして温水を昇温可能とし、(温水が下限値以上となると通常運転をして)ヒートポンプ10の運転を継続させる。そして、温水温度が(下限値以上の)所定値(例えば50度)に達したら、フレッシュエアを(徐々に)導入して、ヒートポンプ10の運転を継続可能とする。
又、フレッシュエア導入用のファンをインバーター制御すること等により、フレッシュエアの導入量を減らし、熱交換機B008における熱交換量を減らしても良い。この場合も、温水温度が所定値となったら、フレッシュエアの導入量を(徐々に)増やす。更に、導入したフレッシュエアがダンパー等により熱交換機B008を通らないようにする迂回路を設け、温水温度が所定値となるまではフレッシュエアを迂回させるようにし、所定値以上となるとダンパーの切替等により熱交換機B008を通って加熱されるようにしても良い。
以下、乾燥冷却装置B201のより詳細な動作例を説明する。まず、フレッシュエアのファンと温風循環路B006のファンの運転を開始し、蒸気STを投入して、乾燥炉B002の運転を開始する。次に、冷風循環路B026のファンの運転を開始し、冷却炉B004の運転を(その冷却負荷は0であるが)開始する。
続いて、ワークを流し始め、乾燥炉B002内で乾燥させた後、冷却炉B004に流す。すると、冷却炉B004の冷却負荷が発生し、温水戻り温度の上昇の検知等により冷却負荷の発生を把握して、ヒートポンプ10の運転を開始する。このとき、20度の温水は分岐パイプB206側を通るようにし、ヒートポンプ10による加熱により徐々に45度(特定値)に昇温する。
温水が45度以上となったら、流量調整弁B204を徐々に開け、温水を熱交換機B008側へ徐々に通水する。流量調整弁B204,B208は、温水温度が70度(所定値)となるように流量を調節される。そして、温水が70度以上となったら、分岐パイプB206の流量調整弁B208を徐々に閉止し、流量調整弁B204,B208の制御について、温水温度を所定(範囲)値とするものから、フレッシュエアの温度を設定(範囲)値に収めるものに切換える。なお、ヒートポンプ10を温水追従モードで運転すれば、制御切替を行わなくても、フレッシュエアの温度を所定値(例えば温水+10度程度)に収めることができる。
このようにして、80度のフレッシュエアを温風循環路B006に供給し、又温水温度も通常値(例えば90度)に達して通常運転が継続される。
以上の乾燥冷却装置B201では、温水温度及び/又は加熱対象が所定温度(所定熱量)以上となるまで、加熱対象(加熱負荷・フレッシュエア)との熱交換量を、加熱対象及び/又は温水をバイパスすることにより減少するので、運転開始時に加熱負荷Hが比較的に多く、ヒートポンプ10の温水温度が上がらず、ヒートポンプ10が停止してしまう事態を防止することができ、ヒートポンプ10の運転を円滑に開始することができ、運転開始後は熱交換量を通常(最大)の状態として省エネルギーである加熱を冷却と共に継続することができる。
なお、運転開始時以外(通常運転中)において、フレッシュエアの供給温度低下や風量増加等によりヒートポンプ10の加熱負荷が増えて温水温度が低下したときは、流量調節弁B208を開き、熱交換機B008への通水量を減らす(熱交換量を減らす)ことで、温水温度低下を防止し、ヒートポンプ10の運転を継続させることができる。
[実施例8−4]
図59(a)は実施例8−4に係る乾燥冷却装置B301におけるヒートポンプ10停止中の模式図であり、図59(b)は乾燥冷却装置B301におけるヒートポンプ10運転中の模式図であって、乾燥冷却装置B301は、実施例8−3の乾燥冷却装置B201に、更にクーリングタワーB302等を追加して成る。
即ち、空調用ヒートポンプB010の温水供給パイプB304は、分岐してヒートポンプ10の冷水戻りのパイプ26と接続されており、温水戻りパイプB306には、クーリングタワーB302への導入パイプB310と導出パイプB312、及び熱量調整手段としての流量調整弁B314とポンプB315が接続されており、導入パイプB310には熱量調整手段としての流量調整弁B316が配置されている。流量調整弁B314,B316及び/又はクーリングタワーB302の運転の有無により、空調用の温水(排熱)の冷却量が調整される。
又、冷水戻りのパイプ26からは、温水戻りのパイプ22(ポンプ50より熱交換機B008側)への分岐パイプB320が出ており、分岐パイプB320には熱量調整手段としての流量調整弁B322が配置されている。更に、パイプ26における分岐パイプB320の接続点より熱交換機B008側に、熱量調整手段としての流量調整弁B324が配置されている。又更に、パイプ22における流量調整弁B324より熱交換機B008側から、冷水往きのパイプ16への分岐パイプB330が出ており、分岐パイプB330には熱量調整手段としての流量調整弁B332が配置されている。なお、パイプ16は、温水戻りパイプB306に対し、クーリングタワーB302の導入パイプB310より上流側において接続されている。
このような乾燥冷却装置B301は、以下に例示する自動制御装置等による動作により、ヒートポンプ10の運転開始に当たり、排熱(排温水)を熱源として、予めヒートポンプ10の温水を昇温することで、ヒートポンプ10の運転継続のための運転開始を行うことができる。
即ち、図59(a)に示すように、まず空調用ヒートポンプB010を運転し、空調機に対し温水50度(加熱負荷Hの内の空調レヒート加熱)と冷水7度(冷却負荷Cの内の空調の冷却コイル冷却)を供給する。そして、流量調整弁B322と流量調整弁B332を全開し、流量調整弁B324を全閉して、空調用温水(50度)をヒートポンプ10の温水戻りのパイプ22に通水する。空調用温水は、停止中のヒートポンプ10を通ってパイプ12から熱交換機B008に至り、分岐パイプB330を通じてパイプ16を介し空調用の温水戻りパイプB306へ戻る。この空調用温水の通水により、ヒートポンプ10の温水温度が通常運転条件の下限値(40度)以上となる。ヒートポンプ10の温水が当該下限値以上とな(って所定時間経過す)ると、乾燥炉B002の運転を開始し、即ちフレッシュエア及び温風のファンと、蒸気STの投入を行う。なお、乾燥炉B002を運転してから空調用ヒートポンプB010を運転し、ヒートポンプ10へ空調用ヒートポンプB010の温水を通水しても良い。
次いで、図59(b)に示すように、ヒートポンプ10(ないしポンプ50,52)の運転を開始し、流量調整弁B324を徐々に全開まで開放する。ヒートポンプ10は、温水を空調用温水(クーリングタワーB302で適宜放出している排熱)により下限値以上とした状態で運転を開始されるため、円滑に起動され、運転の継続が図られる。なお、流量調整弁B324の開放を、ヒートポンプ10の運転前に行っても良い。
続いて、流量調整弁B322と流量調整弁B332を全閉まで徐々に閉止し、フレッシュエア(80度)を供給する。すると、熱交換機42へ投入している蒸気量が減り、省エネルギーの運転が可能となる。なお、空調用ヒートポンプB010の温水に代えて、工場に属する排熱(排温水・機器冷却水・コージェネレーション冷却水あるいはこれらの組合せ等)を用いても良い。
以上の乾燥冷却装置B301では、運転開始前のヒートポンプ10の温水側に対し、既に発生している排熱(空調用温水)を導入するため、ヒートポンプ10が温水の温度不足により運転を円滑に開始できない事態を防止することができる。
[実施例8−5]
図60(a)は実施例8−5に係る乾燥冷却装置B401の模式図であって、乾燥冷却装置B401は、実施例8−1の乾燥冷却装置B001の冷却側が冷却炉B004のみとなり、フレッシュエア路B202が加わって成る。なお、冷却側は乾燥冷却装置B001と同様のもの等であって良いし、フレッシュエア路B202はなくても良い。
乾燥冷却装置B401の動作例であるが、ヒートポンプ10が停止した状態で、乾燥炉B002(温風循環路B006・フレッシュエア路B202のファン)を運転し、蒸気STを投入して温風を加温する。次いで、ポンプ50を運転し、ヒートポンプ10の温水が温風循環路B006のエアにより熱交換機B008を介して加温されるようにする。続いて、温水温度が通常運転条件下限値以上の所定値以上とな(り所定時間か経過す)ると、ヒートポンプ10の運転を開始し、温水を設定温度(90度)となるまで加温して熱交換機B008に供給し、温風を熱交換により加熱する。そして、温風温度等により把握した温水による温風の加熱量に応じ、蒸気STの投入を控える。
このような乾燥冷却装置B401では、例えば次に説明する装置と比べ、下記のメリットがある。即ち、温水戻りのパイプ22に蒸気STとの熱交換機を別途設け、蒸気STで温水を加温してからヒートポンプ10を立ち上げて乾燥路B002の運転を開始する装置との対比を考える。ヒートポンプ10の温水側の配管が125Aで総延長40mとすると、約450リットルの温水が入っていることになり、初期温水温度10度から通常運転条件の下限値40度まで蒸気STで昇温するために必要な熱量は15.7kWとなる。当該装置では、昇温(蒸気ST投入)開始から20分で加熱を完了するようにするためには、47.1kWの加熱能力をもつ他熱源(蒸気ST・その配管・熱交換機・蒸気流量調節弁・制御装置)が必要となり、装置の導入コストやメンテナンスコストが嵩み、その設置のためのスペースも必要となる。乾燥冷却装置B401では、当該装置におけるコストやスペースが必要でなくなることがメリットとなる。
乾燥冷却装置B401では、他熱源(蒸気ST)で予熱した加熱対象(加熱負荷・温風)で温水を加熱し、温水を所定温度以上とした後、ヒートポンプ10の運転を開始する。従って、加熱対象及びヒートポンプ10の温水に係る初期加熱を他熱源で行うことができ、加熱対象を素早く加熱しながら、ヒートポンプ10をスムーズに起動してその省エネルギーである運転を継続させることができる。
[実施例8−6]
図60(b)は実施例8−6に係る電着塗装装置B501の模式図であり、電着塗装装置B501は、実施例8−5の乾燥冷却装置B401を電着塗装装置に適用したものである。
即ち、ヒートポンプ10の起動前において、蒸気STで前処理槽B102ないしその加熱用の温水を加熱し(ポンプ作動)、熱交換機B008を介して当該温水との熱交換によりヒートポンプ10の温水(ポンプ50作動)を加熱する。そして、ヒートポンプ10の温水が下限値以上の所定値となったら、ヒートポンプ10の運転を開始する。
以上の電着塗装装置B501においても、乾燥冷却装置B401と同様、ヒートポンプ10を円滑に起動して、省エネルギーである運転を継続させることができる。