JP2014083550A - 拡散接合し難いステンレス箔およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:13.0〜30.0%、Al:3.0〜10.0%、N:0.10%以下、Ti:0.02%以下、Zr:0.005〜0.20%、REM:0.03〜0.20%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、表面粗さRaが0.5〜1.5μmのステンレス箔であり、ステンレス箔表面および裏面に付与される筋がステンレス箔長手方向と10°以上55°以下の角度θをなしており、かつ、表面と裏面で筋の方向が反対であることを特徴とする拡散接合し難いステンレス箔。
【選択図】図3
Description
(1)質量%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:13.0〜30.0%、Al:3.0〜10.0%、N:0.10%以下、Ti:0.02%以下、Zr:0.005〜0.20%、REM:0.03〜0.20%を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有し、表面粗さRaが0.5μm以上1.5μm以下のステンレス箔であり、ステンレス箔表面および裏面に付与される筋がステンレス箔長手方向と10°以上55°以下の角度をなしており、かつ、表面と裏面で筋の方向が反対であることを特徴とする拡散接合し難いステンレス箔。
最初に、ステンレス箔の一般的な製造方法について記載する。まず、ステンレス鋼スラブは、Al、Crなど所望の成分を含有するように、転炉や電炉で溶製され、その後VODやAODによって精錬された後、連続鋳造により製造される。前記スラブは、1150〜1250℃程度に再加熱され、熱間での粗圧延、仕上げ圧延により、板厚2〜4mm程度の熱延鋼帯とされる。該熱延鋼帯は、表面の酸化スケールを除去後、冷間圧延を施され、所定の厚みである30〜60μmのステンレス箔帯となる。なお、冷間圧延においては、鋼帯の加工硬化などにより圧延負荷が増大すると、途中で焼鈍を施し、該鋼帯を軟化させて、再び冷間圧延するのが一般的である。
さらに、ステンレス箔の表面粗さRaを0.5μm以上1.5μm以下とした理由は、表面粗さRaが0.5μm未満では、点接触化による拡散接合を抑制する効果が十分に得られず、線接触よりもむしろ、面接触に近い状態となり、拡散接合しやすくなるためであり、一方、表面粗さRaが1.5μmを超えると、ステンレス鋼帯の板厚精度悪化や形状劣化を招き、コルゲート加工時の箔の破断などを引き起こすためである。なお、好ましくは1.0μm以上1.5μm以下とする。
冷間圧延の最終パスに用いるワークロールの研磨に際し、例えば図4に一例を示すカップ砥石を用いて、該カップ砥石の回転中心をワークロールの中心線(ワークロールの軸心からの垂線)からオフセットする(カップ砥石回転中心の方向とワークロールの中心線を一致させない)ことにより、斜めに研磨目を付与したロールが得られる。そこで、当該オフセット量を変更することにより、ロール円周方向と研磨目のなす角度、すなわち、当該ロール研磨目を転写したステンレス箔帯に付与される筋とステンレス箔帯長手方向のなす角度を変化させる。ステンレス箔帯の表裏面で、筋の方向を反対にするには、図5に示すように、上下のワークロールで研磨目の方向が一致するようにロールをセットすればよい。なお、上下のワークロールにおいて、ロール円周方向と研磨目のなす角度は同じ(誤差±3°以内)にした方が好ましい。上下で前記角度の誤差が大きいと、圧延時に箔帯の蛇行を招くためである。また、ロールの表面粗さについても同様であり、上下のワークロールで同じ(平均粗さRaで誤差±0.1μm以内)にした方が好ましい。上下でロール表面粗さの誤差が大きいと、圧延時に箔帯の反りを招くためである。
C:0.05%以下
C量が0.05%を超えると、高温強度や耐酸化性の低下を招くとともに、靭性が劣化し、冷間圧延が困難になる。このため、C量は0.05%以下、好ましくは、0.02%以下とする。
Si量が2.0%を超えると、靭性が劣化し、冷間圧延が困難になる。このため、Si量は2.0%以下、好ましくは、1.0%以下とする。
Mn:1.0%以下
Mnは予備脱酸剤として有効な元素であるが、ステンレス箔中に残存すると、耐酸化性や耐食性が低下するので、その量は少ないほうが好ましい。経済的にステンレス鋼を溶製するためには、Mn量は1.0%以下、好ましくは、0.5%以下とする。
Pはステンレス鋼の加工性を著しく劣化させるため、その量が多いとステンレス箔の製造が困難になる。また、Al2O3を含む酸化被膜の成長を阻害し、耐酸化性を劣化させる。このため、P量は0.05%以下、好ましくは、0.03%以下とする。
S:0.03%以下
Sは、Pと同様に、加工性の劣化や耐酸化性の劣化を招く。このため、S量は0.03%以下、好ましくは、0.01%以下とする。
Crは、高温強度を確保するために必要不可欠な元素であり、高温環境下に曝される触媒コンバータ用のステンレス箔にとって最も重要な元素である。Cr量が13%未満の場合、800℃以上の高温域で十分な高温強度が得られないとともに、オーステナイト組織が生成するため、触媒コンバータとしての使用に適さない。一方、Cr量が30.0%を超えると、靭性が劣化し、冷間圧延が困難になる。このため、Cr量は、13.0〜30.0%、好ましくは、15.0〜25.0%とする。
Alは、FeやCrよりも優先的に酸化され、ステンレス箔表面にAl2O3を含む酸化被膜を形成し、高温での耐酸化性を著しく向上させる元素である。Al量が3.0%未満では、Al2O3を含む酸化被膜の形成が不十分であり、耐酸化性を確保できない。さらに、FeやCrの酸化物が多量に生成され、ロウ付け性を劣化させる。Al量が10.0%を超えると、靭性が劣化し、冷間圧延やコルゲート加工が困難になる。このため、Al量は、3.0〜10.0%、好ましくは、3.2〜7.5%とする。
Nは、Cと同様に、0.10%を超えると、靭性が劣化し、冷間圧延が困難になる。このため、N量は0.10%以下、好ましくは、0.05%以下とする。
Ti:0.02%以下
Ti量が0.02%を超えると、Al2O3を含む酸化皮膜中にTi酸化物が混入し、ロウ付け性を損なうとともに、耐酸化性を低下させる。このため、Ti量は、0.02%以下、好ましくは、0.01%以下とする。
Zrは、ステンレス鋼中のCやNと結合し、高温強度を向上させるとともに、クリープ特性を改善する。同時に靭性を向上し、冷間圧延を容易にするので、特に、Al含有量の高い本発明のような鋼では、積極的に添加される。また、Zrは、Al2O3を含む酸化皮膜中に、Fe、Cr、Tiの酸化物が混入するのを防ぐ効果もある。こうした効果を得るためには、Zr量を0.005%以上とする必要がある。一方、Zr量が0.20%を超えると、FeやCrなどと金属間化合物を形成し、靭性が劣化し、冷間圧延が困難になる。このため、Zr量は、0.005〜0.20%、好ましくは、0.02〜0.06%とする。
本発明におけるREMは、La、Ce、Nd、Sm、Hfなどの希土類元素のことである。こうしたREMは、一般的に、Al2O3を含む酸化被膜の密着性を改善し、繰り返し酸化における密着性向上に非常に大きな効果を有する。REM量が0.03%未満では、このような効果が得られず、Al2O3を含む酸化皮膜の剥離が起こり、拡散接合を引き起こしたり、耐酸化性を低下させる。一方、REM量が0.20%を超えると、靭性が劣化し、冷間圧延が困難になる。このため、REM量は0.03〜0.20%、好ましくは、0.05〜0.10%とする。
以上のようにして製作したステンレス箔帯から、幅両端10mmをトリミングし、平箔用として幅方向80mm、長手方向300mmの寸法の箔を切り出し、波箔用として幅方向80mm、長手方向700mmの寸法の箔を切り出した。波箔は、前記波箔用の箔をピッチ5mm、高さ3mmの波形状に歯車加工した1対のロール間に張力を負荷しながら通してコルゲート加工することにより、作製された。次いで、平箔と波箔の端部をスポット溶接し、2枚を重ねて長手方向に円筒状に巻き回して、外周部をスポット溶接することにより、ハニカム構造を有する触媒コンバータを作製した。本発明例の場合は、平箔と波箔を重ねる際、図3(b)に示したように、接触面でそれぞれの筋方向が交差するように巻き回すことになる。また、巻き回しの最後、外周部は、平箔のみを3周ほど多く巻き、平箔のみをスポット溶接することにより固定した。
(1)耐拡散接合性
作製した触媒コンバータを、真空中1150℃で1時間保持の熱処理を行った後、外周のスポット溶接部のみをカッターで切断して、平箔と波箔を外周方向に引張り、解体・分離する作業を行った。この時、外周部から解体していき、ステンレス平箔の長さに対する解体・分離できた長さの割合(解体・分離率)を求めた。解体・分離率が大きい、すなわち解体・分離できる長さが長いことは、耐拡散接合性に優れることであり、80%以上の解体・分離率を本特性に優れるとした。
作製した触媒コンバータを、大気中で1100℃、200時間保持した酸化実験を行い、コンバータの酸化増量を測定した。酸化増量が小さいほうが、耐酸化性に優れることであり、酸化増量が6.0g/m2以下の場合を本特性に優れるとした。
得られた結果を、表2に示す。本発明例では、耐拡散接合性、耐酸化性ともに従来例、比較例より優れた特性であることがわかる。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:13.0〜30.0%、Al:3.0〜10.0%、N:0.10%以下、Ti:0.02%以下、Zr:0.005〜0.20%、REM:0.03〜0.20%を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有し、表面粗さRaが0.5μm以上1.5μm以下のステンレス箔であり、ステンレス箔表面および裏面に付与される筋がステンレス箔長手方向と10°以上55°以下の角度をなしており、かつ、表面と裏面で筋の方向が反対であることを特徴とする拡散接合し難いステンレス箔。
- 冷間圧延の最終パスにおいて、表面粗さRaを0.5μm以上1.5μm以下で、ロール円周方向と研磨目のなす角度を10°以上55°以下になるように斜め研磨したワークロールを、上下で研磨目の方向が一致するように組み合わせて圧延することを特徴とする、請求項1に記載の拡散接合し難いステンレス箔の製造方法。
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