JP2005131643A - 微細な曲線状の凹凸を有するステンレス鋼板とその製造方法 - Google Patents

微細な曲線状の凹凸を有するステンレス鋼板とその製造方法 Download PDF

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Sumio Watanabe
純夫 渡辺
Takahide Yuki
孝英 結城
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Abstract

【課題】意匠性に加えて耐疵付き性や耐汚染性を有し、かつ生産性の良いステンレス鋼板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】幅が2〜50μmで高さが0.8〜10μmの、断面が湾曲した形状を有する曲線状の突起を、任意の箇所において面積率で10〜60%設置したことを特徴とするステンレス鋼板。また、幅が2〜50μmで高さが0.8〜10μmの、断面が湾曲した形状を有する曲線状の窪みを、任意の箇所において面積率で90〜40%施した圧延ロール或いは金型を使用して、前記窪みをステンレス鋼板に転写させることを特徴とする上記ステンレス鋼板の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、家電製品、厨房機器、建築内外装、輸送機器等の分野で使用され
る各種部材に使用される意匠性・耐疵付き性・耐汚染性に優れたステンレス鋼
板に関するものである。
システムキッチンの天板、キャビネットの扉といった家庭用あるいは業務用
厨房機器類、建築物の内外装パネル、家電製品や電子機器類の筐体といった用
途にはステンレス鋼板が大量に使用されている。その仕上げは多種多用である
が、2B、BA、鏡面といった表面が平滑な仕上げの他に、意匠性や機能性の
ために直線状の研磨加工を施したHL、No.3、No.4といった仕上げや
、曲線状の研磨加工を施したバイブレーション研磨(サテン研磨ともいう)、
サークル状の研磨模様を施したウロコ研磨仕上げ、ドット状の凹凸加工を施し
たダル仕上げ等が使用されている。
特開平06-179002号公報
上記家電、厨房その他の分野で使用される製品では意匠性に加えて耐疵付き
性や耐汚染性が要求される。直線状の研磨加工を施した仕上げについては、耐
疵付き性・耐汚染性が課題となっており、上記特許文献1に開示の発明では、
防眩性は改善されるものの、直線状の研磨加工のため方向性があることに加え
て、耐疵付き性・耐汚染性は充分でなく、更に2段階の圧延が必要であると言
う問題がある。また曲線状の研磨加工を施した仕上げについてはこれらが幾ら
かは改善されるものの不十分であり、かつ製造方法が平滑な材料表面を繰り返
し研磨加工することによるため研磨能率が低く、製造コストが非常に高い問題
があった。
本発明は、上記の各仕上げ材の内、研磨材についての欠点を改善するために
種々研究の結果達成されたもので、意匠性、耐疵付き性、耐汚染性に優れると
同時に、製造性に優れたステンレス鋼板と、その製造法を提供することにある


なお、本明細書において、「平滑」又は「平滑部」とは、表面粗さが0.8
μm未満の部分を言い、「面積率」、とは、材料の全表面積から前記平滑部を
除外した部分の面積率を云う。
耐疵付き性、耐汚染性を研究する中で、発明者らは、これらの特性を改善す
るには平滑な表面を減少すること、凹凸については凹部を設置するよりは凸部
を設置することが有効であることを見出した。これは凸部により平滑部への接
触物(例えば、厨房機器の場合、皿等)との接触が防がれて疵や汚れの付着が
防止されることと同時に、耐疵付き性についてはロール圧延或いは金型でのプ
レス加工により材料が加工硬化して疵の付着を軽減させたことの複合効果によ
るものと考えられる。
請求項1に記載の発明によれば、幅が2〜50μmで高さが0.8〜10μ
mの、断面が湾曲した形状を有する曲線状の突起を、任意の箇所において面積
率で10〜60%設置したことを特長とするステンレス鋼板が提供される。即
ち、本発明では、不特定に連続する或いは断続的な突起又は隆起をステンレス
鋼板表面に加工したものであって、該突起は、幅が2〜50μm、高さが0.
8〜10μmで、横断面形状が曲線により構成されており、このような突起が
、任意の箇所において面積率で10〜60%となるように加工されたステンレ
ス鋼板が提供される。
また、従来の研磨方法では、研磨を繰り返し行うことにより表面を平滑にす
ることは可能であるが、研磨部は凹状又は窪みになってしまい、凸部を設置す
ることは不可能である。
請求項2に記載の発明によれば、幅が2〜50μmで高さが0.8〜10μ
mの、断面が湾曲した形状を有する曲線状の窪みを、任意の箇所において面積
率で90〜40%施した圧延ロール或いは金型を使用して、前記窪みをステン
レス鋼板に転写させることを特徴とした、請求項1に記載のステンレス鋼板の
製造方法が提供される。
請求項2に記載の発明は、研磨加工を圧延ロールや金型に施して窪みを形成
し、、この窪みを材料(ステンレス鋼板)に転写させることにより、従来の研
磨仕上げとは凹凸が逆の形状をステンレス鋼板に付加して耐疵付き性、耐汚染
性を改善すると同時に、転写により加工の能率を大幅に上げて製造コストを下
げるものである。
以上述べたように、本発明は従来の研磨法とは発想を転換して、模様の凹凸
のプロフイルを研磨法とは逆にすることにより、材料と接触する物質との接触
面積を減少させて、優れた耐疵付き性と、耐汚染性とを有するステンレス鋼板
を、これまた従来法とは桁違いの高能率で生産することができるものである。
即ち、請求項1の発明によれば、請求項1に特定した微細な突起をステンレ
ス鋼板表面に形成したので、ステンレス鋼板の平滑部に接触物が接触する面積
が減少することとなるので、疵や汚染(指紋跡等)が付きにくくなる。また、
突起の幅を2〜50μm、高さを0.8〜10μmとしたので、平滑部と突起
との間の立ち上がり部分がシャープに視認できるとともに、ギラツキ感もなく
、意匠的にも優れたステンレス鋼板が提供される。更に、このような突起を面
積率で10〜60%形成することとしたので、たとえ疵が付いたとしても目立
たない。
請求項2の発明によれば、ステンレス鋼板に直接バイブレーション研磨を施
すのではなく、圧延ロール又は金型にバイブレーション研磨を施して圧延ロー
ル又は金型に窪みを形成しておけば、該窪みをステンレス鋼板に転写するのみ
で、微細な突起をステンレス鋼板に形成することができるので、ステンレス鋼
板表面に容易に微細突起を形成することが可能となり、微細突起を有するステ
ンレス鋼板の生産性が著しく高くなる。
因みに本発明の生産性について述べる。窪みが形成された圧延ロールを用い
た本発明の方法を実施する場合、例えばSUS304の板厚1.0mm、幅1
,000mmのコイルを毎分100mで圧延すると、生産性は時間当り約48
トンとなる。これに対し、同じ寸法のシート材(長さ2,000mm)を従来
技術の方法(ステンレス鋼板を研磨してステンレス鋼板に直接突起を形成する
方法)の場合には、研磨のヘッドの持ち方にもよるが多ヘッドの場合でも少な
くとも30分程度を要することから生産性は時間当り約0.03トンとなる。
即ち、本発明では従来技術の方法に対しておよそ1,600倍の生産性を有し
ていることがわかる。
本発明のステンレス鋼板には、幅が2〜50μmで高さが0.8〜10μm
の、断面が湾曲した形状を有する曲線状の突起又は隆起が、不特定に連続し或
いは断続的に形成或いは加工されている。
各突起の幅は、2〜50μmである。2μm未満だと、ステンレス鋼板の平
滑部と突起との間の立ち上がり部分がシャープに視認できず、美的な外観のも
のを得られず、50μmを越えると、ギラツキ感が出てしまうからである。
各突起の高さは、0.8〜10μmである。0.8μm未満だと、突起がシ
ャープに視認できず、美的な外観のものを得られず、10μmを越えると、ギ
ラツキ感が出てしまうからである。
各突起の断面は、湾曲した形状であって、例えば半円形であるが、本発明は
半円形に限定されない。ステンレス鋼板の表面の突起は、圧延ロール又は金型
に形成された窪みを転写させることにより形成されるものであり、該窪みは、
圧延ロール又は金型にバイブレーション研磨を施すことにより形成されるもの
であって、バイブレーション研磨における研磨剤による研磨に基づき、ステン
レス鋼板の表面の突起は、湾曲した形状となる。
このような突起は、ステンレス鋼板の表面積に対して面積率で10〜60%
形成される。10%未満だと、平滑な部分が多く、疵が目立ってしまう。また
、60%を越えると、突起間の間隔が狭くなってしまい、このため、或る突起
に付いた疵又は付着した指紋跡等の汚れと、隣接する突起に付いた疵又は付着
した汚れとが、連続的に見えてしまうこととなり、疵や指紋跡等の汚れが目立
ってしまうからである。更に、面積率で60%を越えて突起を形成すると、圧
延ロール又は金型のバイブレーション研磨処理時間が長くなってしまうという
問題もある。
上述のようなステンレス鋼板は、バイブレーション研磨により圧延ロール(
ワークロール)或いは金型に微細な窪みを形成し、圧延ロール(ワークローク
)又は金型に形成された窪みをステンレス鋼板に転写することによって製造す
ることができる。圧延ロール(ワークローク)又は金型には、公知のバイブレ
ーション研磨方法により、幅が2〜50μmで、横断面形状が半円形状を有す
る窪みが、90〜40%形成されている。圧延ロール(ワークローク)又は金
型の窪みのステンレス鋼板への転写技術は、公知のものを用いることができる
。圧延ロール(ワークローク)又は金型に窪みを形成し、該窪みをステンレス
鋼板に転写することを除いては、公知の技術を用いて、ステンレス鋼板が製造
される。
上述のように、本発明の製造方法は、非常に優れた生産性を有しているので
、この特性を活かして各種家電製品、厨房機器や、建材部材等に幅広く適用が
可能できる。また、この方法はステンレス鋼以外にも、アルミ・銅・ニッケル
のような非鉄金属や、各種樹脂にも適用できる。
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3
圧延ロールにバイブレーション研磨を施して幅が2〜50μm、最大深さが
10μmの窪みを形成し、この窪みを、SUS304のBA仕上げ材(ステン
レス鋼板)に転写させることにより、表面に微細な突起を有するステンレス鋼
板を製作し、意匠性、耐疵付き性、耐汚染性を評価した。また、参照のため、
上記圧延ロールに施したバイブレーション研磨と同じ方法をSUS304のB
A仕上げ材ステンレス鋼板に施し、意匠性、耐疵付き性、耐汚染性を評価した

このようにして加工が施されたステンレス鋼板の表面には、幅が2〜50μ
m、高さが最大高さ10μmの線状の突起が形成された。突起の面積率を表1
に示す。
耐疵付き性は、これらステンレス鋼板を、水平面に対して25度傾斜させて
、その上に素焼きの陶器製食器を200回滑らせた後、色彩色差計を用いてL
−a−b値を測定し、それから色差△Eを算出して評価した。通常肉眼で差が
識別できる限界を考慮し、△E値が1.5以下であれば効果がある(疵が見え
ない)ものとして評価した。
耐汚染性は、指紋を付着させて、上記と同様に色彩色差計を用いて△Eを算
出し、ΔE値が1.5以下であれば効果がある(指紋跡が見えない)ものとし
て評価した。
耐疵付き性、耐汚染性について、その結果を表1に示す。
Figure 2005131643
ステンレス鋼に直接バイブレーション研磨を施した比較例3に比べて圧延ロ
ール又は金型の窪みを反転させた実施例1〜2、比較例1〜2は相対的に優れ
た特性を示したが、面積率により良否が分かれた。突起が面積率で8%形成さ
れた比較例1の場合、耐汚染性はまずまずであったが耐疵付き性はよくなかっ
た。これは、凸部の面積が少なく平滑な部分が多いことにより疵がつきやすく
かつ目立ち易いことによるものと思われる。
また、突起が面積率で62%形成された比較例2の場合では耐疵付き性はま
ずまずであったが耐汚染性が比較的良くなかった。これは、疵については平滑
部が少なくなることにより良好な特性が確保されるが、汚れについては、突起
間の間隔が狭くなってしまい、或る突起の汚れと隣接する突起の汚れとが連続
して見えてしまい、逆に汚れを見え易くしているものと考えられる。
意匠性については、肉眼での官能比較評価を行ったが、いずれもランダムな
研磨目がシャープに確認出来、優劣はつけられない出来栄えであった。
実施例3
20段冷間圧延機の直径43mmのワークロールにバイブレーション研磨加
工を施して、SUS304のBA仕上げ、板厚0.7mmのコイル材に冷間圧
延を行った。コイルの全長にわたってロールの研磨模様が明確に転写されてお
り、面積率43%の、良好な意匠性を有するバイブレーション研磨相当品が得
られた。この製品について上記同様の疵および指紋を付与し、色彩色差計を用
いて色差を測定したところ、△Eはそれぞれ0.9、1.2で良好な結果が得
られた。
実施例4
2段の調質圧延機の直径535mmのワークロールにバイブレーション研磨
加工を施して、SUS304の2B仕上げ、板厚0.8mmのコイル材に冷間
圧延を行った。やはりロールの研磨模様は明瞭に転写されており、通常のバイ
ブレーション研磨仕上げ製品と類似の面積率38%の良好な製品が得られた。
当製品について上記同様の疵および指紋を付与し、色彩色差計を用いて色差を
測定したところ、△Eはそれぞれ1.1、1.3で良好な結果が得られた。

Claims (2)

  1. 幅が2〜50μmで高さが0.8〜10μmの、断面が湾曲した形状を有す
    る曲線状の突起を、任意の箇所において面積率で10〜60%設置したことを
    特長とするステンレス鋼板。
  2. 幅が2〜50μmで高さが0.8〜10μmの、断面が湾曲した形状を有す
    る曲線状の窪みを、任意の箇所において面積率で90〜40%施した圧延ロー
    ル或いは金型を使用して、前記窪みをステンレス鋼板に転写させることを特徴
    とした、請求項1に記載のステンレス鋼板の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012130966A (ja) * 2010-11-29 2012-07-12 Nisshin Steel Co Ltd 指紋や汚れが目立ち難い高耐食性鋼板及びその製造方法
JP2014083550A (ja) * 2012-10-22 2014-05-12 Jfe Steel Corp 拡散接合し難いステンレス箔およびその製造方法
JP2018516759A (ja) * 2015-06-10 2018-06-28 アペラム 圧延ステンレス鋼物体及びその製造方法

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