JP2014077979A - 静電画像形成用トナー、現像剤、画像形成装置 - Google Patents

静電画像形成用トナー、現像剤、画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】低温定着性に優れ耐ブロッキング性も良好な静電画像形成用トナーの提供。
【解決手段】少なくとも着色剤、結着樹脂及び離型剤を含有する画像形成用トナーにおいて、以下の<1>〜<4>の要件を満たす静電画像形成用トナー。
<1> 結着樹脂が結晶性セグメント(X)と非晶性ポリ乳酸セグメント(Y)からなるブロック共重合体(A)を含有する。
<2> トナーの相対湿度90%の条件下における50℃のTMA圧縮変形量(TMA%)が、10%以下である。
<3> トナーの、パルスNMRで測定した130℃におけるスピン−スピン緩和時間(t130)が10ms以上である。
<4> トナーの、パルスNMRで測定した、130℃から70℃まで降温したときの70℃におけるスピン−スピン緩和時間(t′70)が1ms以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、複写機、プリンター、FAXなどの電子写真方式の画像形成装置に適用する静電荷像現像用トナー、該トナーを用いた現像剤及び画像形成装置に関するものである。
昨今の環境配慮型商品の隆盛等により、植物由来の原材料を使用し、かつ低エネルギーでトナーを定着する技術が望まれている。
植物由来の原材料を使用した樹脂をトナー用材料として活用する手段として、結着樹脂に生分解性を有する微生物産生脂肪族ポリエステルを使用する例(例えば特許文献1)があるが、該ポリエステルを使用すると、トナーの軟化温度が高くなるため定着温度を高く設定しなくてはならず、省エネの観点から好ましくないという問題があった。
定着温度を低下させる手法としては、天然由来の樹脂に植物系のワックスを多量に添加して軟化温度を下げる方法(例えば特許文献2)が提案されているが、トナーの軟化温度を下げることはできても、ワックス成分によりトナーが凝集し易くなることが多く、生産性やトナーの流動性が悪化し、現像機内でのトナー搬送性が劣るなどの問題があった。
また、低温定着性及び定着安定性を得るため、軟化点の異なる2種類の樹脂と天然由来樹脂を含有する結着樹脂を用いる方法(例えば特許文献3〜4)も提案されている。これら手法では、低軟化点を有する樹脂が高軟化点を持つ樹脂と天然由来樹脂のつなぎの役割を果たし、結着樹脂中に生分解性樹脂が均一に分散される。しかし、天然由来樹脂の配合割合を高く設定すると天然由来樹脂の分散不良が起こり、帯電性能のバラツキによる現像性の低下などにつながり、耐久性が悪化するため、天然由来樹脂の結着樹脂中の配合率は最大で20重量%程度と非常に低い。
更に、いずれの先行技術においても、特に明示されていないが、これら天然由来樹脂を使用した系は、吸湿によりガラス転移点や熱変形温度の低下が起こり、高温多湿化での輸送、保管等を行った際、粒子同士あるいは形成画像が膠着し、使用に耐えないという欠点も有している。
以上のように、天然由来樹脂をトナーの結着樹脂の主要な樹脂成分とするには課題が多く、結着樹脂の一部を天然由来樹脂で置き換えた場合でも、その配合量が限られており、結着樹脂としての特性を維持しつつ、より多くの天然由来樹脂の配合が期待されている。
他方、トナーの定着温度を低くする手段としては、トナーバインダーのガラス転移点を低くすることが一般的に行われている。しかし、単純にガラス転移点を低くすると、粉体の凝集(ブロッキング)が起こり易く、画像形成装置内で凝集すると現像装置の動作に影響し、動作できなくなることがある。そこまでいかなくても、トナー収納容器内で凝集してトナーを補給できなくなり、トナー濃度が低下し、異常画像が形成されることがある。したがって、これらのブロッキングの発生を抑えてトナーの耐ブロッキング性をよくする必要がある。また、定着画像表面のトナーの保存性も同時に悪くなることがある。つまり定着画像が溶融し転位し易いために、重ねてある他の記録媒体に付着したりして、長期に保存できないことがある。
このガラス転移点はトナーの結着樹脂の設計ポイントであり、単純にガラス転移点を下げる方法では、今以上に定着装置を低温に設定しても定着可能なトナーを得ることはできなかった。
耐ブロッキング性と低温定着性とを両立させる手段として、トナーの結着樹脂に結晶性樹脂を用いる方法が古くから知られているが、溶融時の弾性不足によりホットオフセットが起こるという問題があった。また、溶融懸濁法や乳化凝集法を用い、シェルを持つコア−シェルタイプのトナーが提案されている(例えば、特許文献5〜6参照)。しかしながら、低温定着性を維持しつつ良好な耐ブロッキング性を得るためには、以上の技術ではまだ不十分である。
更に、この課題解決のために結晶性樹脂に着目した手法(特許文献7参照)も提案されているが、外部条件(製造、保管及び定着時の熱履歴や部分相混合等)の影響を受け易く、結晶構造が安定しないため、トナー諸特性、耐ブロッキング性、画像安定性等に悪影響を及ぼすという問題があった。
本発明は、前記従来技術の諸問題を解決した、低温定着性に優れ、耐ブロッキング性も良好な静電画像形成用トナーの提供を目的とする。
本発明者等は、定着特性(低温定着性、耐オフセット性)を向上しうる植物由来原料を用いた樹脂について鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。即ち、上記課題は次の1)の発明によって解決される。
1) 少なくとも着色剤、結着樹脂及び離型剤を含有する画像形成用トナーにおいて、以下の<1>〜<4>の要件を満たすことを特徴とする静電画像形成用トナー。
<1> 結着樹脂が結晶性セグメント(X)と非晶性ポリ乳酸セグメント(Y)からなるブロック共重合体(A)を含有する。
<2> トナーの相対湿度90%の条件下における50℃のTMA圧縮変形量(TMA%)が、10%以下である。
<3> トナーの、パルスNMRで測定した130℃におけるスピン−スピン緩和時間(t130)が10ms以上である。
<4> トナーの、パルスNMRで測定した、130℃から70℃まで降温したときの70℃におけるスピン−スピン緩和時間(t′70)が1ms以下である。
本発明によれば、低温定着性に優れ、耐ブロッキング性も良好な静電画像形成用トナーを提供できる。即ち、定着時に熱をかける直前までは耐ブロッキング性を有し、熱をかけたときに急峻な軟化特性を示すことにより低温定着が可能となり、低温定着性と耐ブロッキング性という二律背反の性質を両立させることできる。
また、本発明の静電画像形成用トナーを用いると、結晶性樹脂を使用するトナーにおける特有の課題である、機械的耐久性不足による現像機内でのトナー同士の凝集発生、キャリア汚染や機内汚染、外添剤の埋没による帯電性や流動性の悪化を抑え、且つ、定着後にトナーの分子運動性を速やかに拘束することにより画像の硬度が向上し、耐擦性に優れた高品位な画像が得られる。
画像形成装置の一例を示す図。 プロセスカートリッジの一例を示す図。
以下、上記本発明1)について詳しく説明するが、本発明の実施の態様には次の2)〜9)も含まれるので、これらについても併せて説明する。
2) 前記結晶性セグメント(X)が、二価の脂肪族アルコールと二価の脂肪族カルボン酸を縮合させた融点50℃〜70℃のポリエステルであり、前記セグメント(X)とセグメント(Y)の重量比率(X/Y)が、10/90〜40/60であることを特徴とする1)に記載の静電画像形成用トナー。
3) 前記結着樹脂として、前記ブロック共重合体(A)に加え、結晶性ポリエステル(B)を含有し、(A)と(B)の重量割合が、3≦〔B/(A+B)〕×100≦15であることを特徴とする1)又は2)に記載の静電画像形成用トナー。
4) 前記ブロック共重合体(A)中に融点が50〜70℃の結晶性ポリエステル(A2)からなるユニットを20〜45重量%含有することを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の静電画像形成用トナー。
5) 前記ブロック共重合体(A)のポリ乳酸部のL体とD体の重量比が、L体/D体=70/30〜90/10であることを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載の静電画像形成用トナー。
6) 前記ブロック共重合体(A)がカルボジイミド化合物からなる部分を0.3〜3重量%の範囲で含有することを特徴とする1)〜5)のいずれかに記載の静電画像形成用トナー。
7) 少なくとも着色剤、ブロック共重合体(A)、結晶性ポリエステル(B)及び離型剤を含む油相を、水系媒体中で分散させることにより造粒されたものであることを特徴とする3)〜6)のいずれかに記載の静電画像形成用トナー。
8) 1)〜7)のいずれかに記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。
9) 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記トナーとして1)〜7)のいずれかに記載のトナーを用いることを特徴とする画像形成装置。
<結着樹脂>
本発明の静電画像形成用トナー(以下、トナーということもある)は、結着樹脂として結晶性セグメント(X)と非晶性ポリ乳酸セグメント(Y)からなるブロック共重合体(A)を必須成分として含有する。このブロック共重合体(A)は、ミクロ相分離構造に代表される特有の高次構造を有するので、本発明の課題解決に好適である。
ブロック共重合体とは、異種高分子鎖を共有結合で結合させたものである。一般に異種高分子鎖は互いに非相溶である系が多く、水と油と同様に混ざり合うことはない。単純混合系では、異なる高分子鎖は独立に動けるので、マクロ相分離するが、共重合体の場合、異なる高分子鎖同士が連結されているため、マクロ相分離することができない。しかし、両者は、連結しているとはいえ、同種の高分子鎖同士で凝集して可能な限り離れようとするため、高分子鎖の大きさの程度で交互に、Xが多い部分とYが多い部分に分かれるしかない。このため、成分Xと成分Yの相混合度、組成、及び長さ(分子量及び分布)、更に両者の配合比率などを変えると、相分離する形(構造)が変化し、例えば、A.K.Khandpur,S.Forster,and F.S.Bates,Macromolecules,28(1995)8796−8806.などで例示されているように、Sphere構造、Cylinder構造、Gyroid構造、Lamellar構造などの周期的秩序メソ構造を制御できる。
本発明では、前記ブロック共重合体(A)を用いるので、ミクロ相分離構造から結晶化させた場合、上記の周期的秩序メソ構造を制御できれば、融体のミクロ相分離構造を雛型として、結晶相を数十〜数百nmスケールで規則的配置にすることが出来る。よって、これら高次構造を活用し、定着等、流動性が必要な場面では結晶部の固−液相転移現象に基づく十分な流動、変形性を持たせ、保存や定着後の機内搬送工程など、流動、変形性が不要な場面では、結晶部を構造内に封じ込めることにより運動性を拘束できる。その結果、本発明の目的を達成することが出来る。
なお、前記ブロック共重合体(A)の分子構造、結晶性やミクロ相分離構造などの高次構造については、従来公知の手法により容易に解析できる。具体的には、高分解能NMR測定(1H,13C等)、示差走査熱量計(DSC)測定、広角X線回折測定、(熱分解)GC/MS測定、LC/MS測定、赤外線吸収(IR)スペクトル測定、原子間力顕微鏡観察、TEM観察などにより確認することができる。
前記ブロック共重合体(A)の共重合方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば次の(1)〜(3)の方法などが挙げられるが、分子設計の自由度の観点から(3)が好ましい。また生産性の点からラクチド開環法が好ましい。更に、特願2012−059755に記載の超臨界法を使用しても良く、残留モノマーが少ないため耐加水分解性や生産性の観点から好ましい。
(1)予め重合反応により調製した非晶性樹脂と、予め重合反応により調製した結晶性樹脂とを適当な溶媒に溶解乃至分散させ、イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基等のポリマー鎖末端の水酸基、又はカルボン酸と反応する官能基を2つ以上有する伸長剤とを反応させることにより共重合する方法。
(2)予め重合反応により調製した非晶性樹脂と、予め重合反応により調製した結晶性樹脂とを溶融混練し、減圧下でエステル交換反応により調製する方法。
(3)予め重合反応により調製した結晶性樹脂の水酸基を重合開始成分として使用し、前記結晶性樹脂のポリマー鎖末端から非晶性樹脂を開環重合し共重合する方法。
前記ブロック共重合体(A)の共重合において、非晶性樹脂と結晶性樹脂の重量比は、非晶部/結晶部=1.5〜4.0の範囲がより好ましい。1.5を下回る場合、結晶部の影響が強くなりすぎ、ブロック共重合体に特有のミクロ相分離構造を破壊し、全面ラメラ構造となる場合が多く、定着等、流動性が必要なケースでは有効に寄与するが、保存や定着後の機内搬送工程など、流動、変形性が不要な場面では、その運動性を拘束できず、本発明の課題を解決することが出来ない。他方、4.0を超えると、非晶部の影響が強くなりすぎ、保存や定着後の機内搬送工程など、流動、変形性が不要な場面では有効に寄与するが、定着等、流動性が必要なケースでは十分な流動、変形性を担保できず、やはり本発明の課題を解決することが出来ない。
伸長材としては公知のものを使用できる。目的に応じて一種でも多種を併用しても良いが、コスト及び反応性の観点からイソシアネート化合物が好ましく、特に好ましいのは、TDI、MDI、HDI、水添MDI、及びIPDIである。
共重合における伸長材の使用量は、ポリエステルポリオール総モル数/イソシアネート総モル数(OH/NCO)として、0.35〜0.7の範囲が好ましい。OH/NCOが0.35を下回ると、非晶性樹脂と結晶性樹脂の接合が不十分で独立に存在する成分が多くなり、品質の安定性を保持することが出来ないため好ましくない。また、OH/NCOが0.7を超えると、共重合体の分子量及びウレタン基間の相互作用の影響が強くなりすぎ、定着等、流動性が必要な場面で十分な流動、変形性を保持できず好ましくない。
本発明のトナーは、その熱特性として、相対湿度90%条件下における50℃のTMA圧縮変形量(TMA%)を10%以下とする必要があり、好ましくは7%以下である。
TMA%が10%を超えると、夏場の輸送や海上輸送を想定した場合に容易に変形するため、侵入度試験等によって得られた静的保存性やドライ条件下での保存性に優れていたとしても、誤差因子込みの動的条件下では保存性が悪いことになる。つまり、耐ブロッキング性が悪くなり、夏場の輸送や倉庫保管、複写機内温度等を考慮すると、容易にトナー同士が膠着し、搬送性や転写性が悪化し画質不良等を生じてしまう。
本発明の骨子は、結晶性セグメント(X)と非晶性セグメント(Y)を化学的に結合させ、各セグメントの構造を制御することにより、結晶性セグメント(X)の分子運動を拘束する技術手段を見出したことにある。
分子運動性の尺度化にはパルスNMRが有効である。パルスNMRは高分解能NMRとは異なり、化学シフト情報(局所化学構造など)を与えない代わりに、分子運動性と密接な関係のある1H核の緩和時間〔スピン−格子緩和時間(T1)、及びスピン―スピン緩和時間(T2)〕を迅速に測定できる手法である。パルスNMRによる測定法としては、ハーンエコー法、ソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)、90゜パルス法などが挙げられるが、本発明のトナー及びトナー用樹脂は中程度のスピン−スピン緩和時間(T2)を有するので、ハーンエコー法が最も適している。
本発明では、定着時の分子運動性の尺度として、130℃におけるスピン−スピン緩和時間(t130)を、画像搬送時の耐擦性に関する分子運動性の尺度として、130℃から70℃まで降温したときの70℃におけるスピン−スピン緩和時間(t′70)を、夫々規定している。即ち、定着等、流動性が必要な際には十分な運動性を有し、保存や機内搬送など、流動性が不要な際には十分に運動性が拘束されていることが必要であることを示している。
前記t130は10ms以上とする。10ms未満では、加熱時の分子運動性が不十分なため、トナー及び樹脂の流動性や変形性が低下する。これにより、画像延展性の低下、印字対象物との接合悪化などが起こり、結果的に、光沢低下や画像剥離などの画質低下につながる。また、t130が高いということは、定着温度帯において十分な分子運動性を有することになり、延展性、光沢度等に有効であるため、特に上限はない。
更に、前記t′70は1ms以下とする。1msを超えると、分子運動性が十分拘束される前に、定着後の排紙工程におけるローラや搬送部材等と接触、摺擦することになり、画像表面に傷跡や光沢度の変化などが発生する。また、冷却時の運動性は、耐擦性の観点から、定着後速やかに拘束されることが好ましいため、下限はない。
前記結晶性セグメント(X)を形成するポリエステルについては後述するが、二価の脂肪族アルコールと二価の脂肪族カルボン酸を縮合させた融点50℃〜70℃のポリエステルが好ましく、前記セグメント(X)とセグメント(Y)の重量比率(X/Y)が、10/90〜40/60であるものが好ましい。融点が50℃以上ならば、セグメント(X)の低温溶融性によりトナーの耐熱保存性が低下することはなく、70℃以下ならば、セグメント(X)の定着時の加熱による溶融性不足によりトナーの低温定着性が低下することはない。また、(X/Y)が前記範囲ならば、結晶性セグメント(X)の影響が強くなりすぎたり、非晶性セグメント(Y)の影響が強くなりすぎたりすることはなく、前述した非晶性樹脂と結晶性樹脂の重量比において説明したような問題を生じることはない。
前記ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は20,000〜70,000の範囲が好ましい。20,000未満では、定着時の流動性には優れるが系としての分子量が低く、十分な粘弾性を獲得できないため粘度が低すぎてオフセットに繋がるケースが多くなるし、保存性や耐擦性にも劣るため好ましくない。また、70,000を超えると、流動特性が非常に悪くなり定温定着性を担保できないため好ましくない。
本発明では、結着樹脂として前記ブロック共重合体(A)と、結晶性ポリエステル(B)を含有することが好ましい。ポリエステルが結晶性であるか否かは、示差走査熱量測定(DSC測定)による融点の評価、広角X線回折による相対結晶化度などで確認できる。
結晶性ポリエステル(B)の含有率〔(B/(A+B)〕×100は、20%未満が好ましく、3〜15重量%がより好ましい。これによってトナーは、その保管環境及び現像装置内での攪拌では溶融せず、所定の温度範囲で相転移に伴って粘性項が急激に低下することにより、低温定着性と耐ブロッキング性の両立が可能となる。特に含有率が3〜15重量%の範囲では確実に低温定着性が発現し、十分な耐ブロッキング性も得られる。
結晶性ポリエステル(B)は結晶性を持つため、定着開始温度付近において急激な熱溶融特性を示す。このような特性を有する結晶性ポリエステル(B)を、ブロック共重合体(A)と共に用いることにより、溶融開始温度直前までは結晶性による耐ブロッキング性が維持され、溶融開始温度では結晶性ポリエステル(B)の融解による急激な粘度低下を起こし、トナーの溶融変形のトリガーとなると共に、加熱−圧縮変形した結着樹脂同士の隙間を充填し、良好な耐ブロッキング性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。
なお、結晶性ポリエステル(B)は、ブロック共重合体(A)と単純にブレンドするのではなく、微粒子化した(B)の分散体を(A)中に散りばめることが好ましい。単純にブレンドした場合、トナー中で(B)が偏在し易く、品質が安定しない。また、耐ブロッキング性の低下につながるケースや低温定着のトリガーとしての機能を十分に果たせないケースがある。微分散化は、例えば、特開2012−108462号公報に提示されている(B)を溶媒中で晶析した後、ビーズミル等を使用して分散液とする方法などが挙げられる。なお、分散粒子径は1μm以下が好ましく、特に1μmを超える粒子の割合が15%以下、更には10%以下であることが好ましい。粗大粒子が多いと、トナー中で(B)が偏在したのと同じになり、品質の確保や安定生産に支障をきたすため好ましくない。
ブロック共重合体(A)に用いる結晶性ポリエステル、及び結晶性ポリエステル(B)は、多価アルコール成分と、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸成分とを反応させて得られる。なお、本発明では、ポリエステル樹脂を変性したものは、結晶性ポリエステル(B)には含まない。
−多価アルコール成分−
前記多価アルコール成分としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコールが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば飽和脂肪族ジオールが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖型飽和脂肪族ジオール、分岐型飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖型飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が4〜12の直鎖型飽和脂肪族ジオールがより好ましい。分岐型飽和脂肪族ジオールの場合、結晶性ポリエステル(B)の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、主鎖部分の炭素数が4未満では、芳香族ジカルボン酸と縮重合させる場合に融解温度が高くなり、低温定着が困難となることがある。一方、主鎖部分の炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。炭素数としては12以下がより好ましい。
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、結晶性ポリエステル(B)の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが好ましい。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−多価カルボン酸成分−
前記多価カルボン酸成分としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられるが、炭素数が4〜12のものが好ましい。
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、更に、これらの無水物や低級アルキルエステルも挙げられる。
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物や低級アルキルエステルなどが挙げられる。
また、多価カルボン酸成分としては、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸成分が含まれていてもよい。更に、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸成分を含有してもよい。
これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ブロック共重合体(A)には、融点が50℃以上、好ましくは50〜70℃の結晶性ポリエステル(A2)からなるユニットを15重量%より多く、50重量%より少ない割合で含有させる。好ましくは20〜45重量%である。
結晶性ポリエステルは、融点を境にして相転移し、急激な粘度低下を起こすため、融点以上で保管されると凝集してブロッキングを起こす。そこで保管時や使用時にさらされる温度よりも十分に高い融点である50℃以上のものを用いる。しかし、融点が70℃を超えると低温定着性が徐々に低下する。前記融点は、JISK−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。なお、結晶性樹脂には複数の融解ピークを示す場合があるが、最大のピークを融点とみなす。
また、結晶性ポリエステル(A2)からなるユニットの含有率を15重量%より多く、50重量%より少ない割合、好ましくは20〜45重量%とすると、トナーが保管される環境や現像装置内での攪拌ではトナーは溶融せず、所定の温度範囲で急激に粘弾性が低下することにより、低温定着性と耐ブロッキング性を両立させることが可能となる。含有率が15重量%未満ではポリ乳酸部の支配が強く、高粘性であるため低温定着性が発現せず、品質を達成できない。逆に含有率が50重量%を超えると、低温での流動性には優れるが、定着時(冷却固化時)の粘性項が足りず、オフセットし易くなり、結果として定着温度域が非常に狭いものとなってしまう。また、耐ブロッキング性が低く、画像形成装置内でトナーの凝集体が生成され易くなる。
主要な樹脂がブロック共重合体(A)であり、かつ前記所定の共重合比率であることは、DSC測定による融点の評価、広角X線回折による相対結晶化度、及び原子間力顕微鏡やTEMなどで観察されるミクロ相分離構造のドメイン形状やサイズなどによって評価できる。例えば、結晶性ポリエステル(A2)からなるユニットが15重量%未満の領域では、ポリ乳酸部の支配が強く明確な相分離構造は観察できず、逆に、50重量%を超える領域では、結晶性ポリエステル部の支配が強く、ドメイン破壊を伴う全領域ラメラ化が起こる。
ブロック共重合体(A)におけるポリ乳酸部のL体、D体比率は、L体/D体=70/30〜90/10を満たすことが好ましい。即ちポリ乳酸部が非晶性であることが好ましい。L体比率が90/10以下であれば、ポリ乳酸部の結晶性が増大して低温定着性が損なわれるようなことはなく、必要な定着温度幅も得られる。また、加工性が悪化したり、生産性の悪化やコストアップを招くこともない。他方、L体比率が70/30以上であれば、熱膨張により取り扱い難くなるようなことはなく、存在比率の少ないD体を多く使うことによりコストアップとなることもない。なお、ポリ乳酸部のラセミ度については、基本的には仕込み保証となるが、必要に応じてキラルカラムを接続した熱分解GC/MSなど、公知の手法で比率を確認できる。
結晶性ポリエステル(B)としては、炭素数が4〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と、炭素数が2〜12の飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位とを有することが、優れた低温定着性を発揮できる点で好ましい。
結晶性ポリエステル(B)の融点は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが50〜80℃が好ましい。融点が50℃未満では、結晶性ポリエステル(B)が低温で溶融し易く、トナーの耐ブロッキング性が低下することがある。また融点が80℃を超えると、定着時の加熱による結晶性ポリエステル(B)の溶融が不十分となり、低温定着性が低下することがある。
前記融点は、示差走査熱量計(DSC)測定におけるDSCチャートの吸熱ピーク値により測定することができる。
更にブロック共重合体(A)は、カルボジイミド化合物からなる部分を0.3〜3重量%の範囲で含有していることが好ましい。これは、ポリ乳酸部の加水分解性を抑制する上で非常に重要である。0.3重量%未満では、初期酸価低減及び分解により生成したカルボキシル基及び水酸基の封鎖効果が発現せず、3重量%を超えると過剰量となりコストアップ要因となる。
また、ブロック共重合体(A)は、本発明の目的を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等による末端封鎖、伸長(分子量の増大)を行っても良い。材料としては、コスト、反応性の観点からイソシアネート化合物が好ましい。
イソシアネート化合物の例としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、3価以上のポリイソシアネートを併用してもよい。
<着色剤>
本発明のトナーに用いる着色剤としては、トナー用として公知の染料、顔料等を適宜使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ソルベントイエロー(21,77,114など)、ピグメントイエロー(12,14,17,83など)、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトアニリンレッド、トルイジンレッド、ソルベントレッド(17,49,128,5,13,22,48・2など)、ディスパースレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ソルベントブルー(25,94,60,15・3など)、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末又はマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、重量基準で、本発明のトナーバインダー100部に対して、好ましくは0.1〜40部、更に好ましくは0.5〜10部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150部、更に好ましくは40〜120部である。
<離型剤>
本発明のトナーに用いる離型剤としては、軟化点が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス(例えば、カルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス及びライスワックスなど)、炭素数30〜50の脂肪族アルコール(例えば、トリアコンタノールなど)、炭素数30〜50の脂肪酸(例えば、トリアコンタンカルボン酸など)及びこれらの混合物等が挙げられる。
前記ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン及びこれらの混合物など)の(共)重合体[(共)重合により得られるもの及び熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えば、マレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチルなど)による変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸など]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル、マレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステルなど]等との共重合体、ポリメチレン(例えば、サゾールワックス等のフィシャートロプシュワックスなど)、脂肪酸金属塩(ステアリン酸カルシウムなど)、脂肪酸エステル(ベヘニン酸ベヘニルなど)が挙げられる。
本発明のトナーは、上記した構成成分の他に、必要に応じて荷電制御剤、流動化剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料等の種々の添加剤を含有させてもよい。
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム等が挙げられる。
流動性向上剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
クリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩;ポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子等のソープフリー乳化重合を用いて得られる樹脂粒子などが挙げられる。前記樹脂粒子は粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒子径が0.01〜1μmであることが好ましい。
磁性材料としては、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色の磁性材料が好ましい。
トナー中の各構成成分の組成比(重量%)は、トナー全体を100重量%として、結着樹脂が、好ましくは30〜97%、更に好ましくは40〜95%、特に好ましくは45〜92%;着色剤が、好ましくは0.05〜60%、更に好ましくは0.1〜55%、特に好ましくは0.5〜50%;離型剤が、好ましくは0.1〜30%、更に好ましくは0.5〜20%、特に好ましくは1〜10%;荷電制御剤が、好ましくは0〜20%、更に好ましくは0.1〜10%、特に好ましくは0.5〜7.5%;流動化剤が、好ましくは0〜10%、更に好ましくは0〜5%、特に好ましくは0.1〜4%である。
また、添加剤の合計含有量は、好ましくは3〜70%、更に好ましくは4〜58%、特に好ましくは5〜50%である。
組成比を上記範囲にすれば帯電性が良好なトナーを容易に得ることができる。
また、トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
<トナーの製造方法>
本発明のトナーは、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の従来公知の方法で得ることができる。例えば混練粉砕法を採用する場合には、流動化剤を除くトナーの構成成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、粗粉砕し、ジェットミル粉砕機等を用いて微粒化し、更に分級して体積平均粒径(D50)が5〜20μm程度の微粒子とした後、流動化剤を混合すればよい。なお、体積平均粒径(D50)は、コールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定できる。
乳化転相法を採用する場合には、流動化剤を除くトナーの構成成分を、有機溶剤に溶解又は分散した後、水を添加するなどしてエマルジョン化し、次いで分離、分級すればよい。また、特開2002−284881号公報に記載の有機微粒子を用いる方法を採用してもよい。
トナーの製造方法のうち、トナー母粒子を形成する方法について詳しく説明する。
−水系媒体(水相)の調製−
水系媒体の調製は、例えば、樹脂粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。樹脂粒子の水系媒体中の添加量には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5〜10重量%が好ましい。
水系媒体としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物、などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも水が好ましい。
水と混和可能な溶媒としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類、などが挙げられる。前記アルコールとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、などが挙げられる。前記低級ケトン類としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、などが挙げられる。
−油相の調製−
油相の調製は、有機溶媒中に、ブロック共重合体(A)、結晶性ポリエステル(B)、離型剤、着色剤などを含むトナー材料を、溶解乃至分散させればよい。
有機溶媒としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
前記沸点が150℃未満の有機溶媒としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
−乳化乃至分散−
乳化乃至分散は、前記トナー材料を含有する油相を、前記水系媒体中に分散させることにより行うことができる。分散液を安定に形成する方法には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水系媒体相中に、トナー材料を溶媒に溶解乃至分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法、などが挙げられる。
前記分散のための分散機としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、などが挙げられる。これらの中でも、分散体(油滴)の粒子径を2〜20μmに制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。
前記高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。
前記回転数には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1,000〜30,000rpmが好ましく、5,000〜20,000rpmがより好ましい。
前記分散時間には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バッチ方式の場合、0.1〜5分間が好ましい。
前記分散温度には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加圧下において、0℃〜150℃が好ましい。
トナー材料を乳化乃至分散させる際の水系媒体の使用量には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100重量部に対して、50〜2,000重量部が好ましく、100〜1,000重量部がより好ましい。
前記水系媒体の使用量が50重量部未満では、トナー材料の分散状態が悪くなって所定の粒子径のトナー母粒子が得られないことがあり、2,000重量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
前記トナー材料を含有する油相を乳化乃至分散する際には、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にすると共に粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド、などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
前記界面活性剤としては特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。
前記陰イオン界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル、などが挙げられる。
−有機溶媒の除去−
前記乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法、などが挙げられる。
有機溶媒が除去されるとトナー母粒子が形成される。トナー母粒子に対しては、洗浄、乾燥等を行うことができ、更に分級等を行うことができる。前記分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離、などにより、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
前記得られたトナー母粒子は、外添剤、帯電制御剤等の粒子と混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母粒子の表面から外添剤等の粒子が脱離するのを抑制することができる。
前記機械的衝撃力を印加する方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法、などが挙げられる。
前記方法に用いる装置としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
<現像剤>
本発明の現像剤は、少なくとも前記トナーを含み、必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含む。
これにより、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。なお、現像剤は、一成分現像剤であっても二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
前記現像剤を一成分現像剤として用いる場合、トナーの収支が行われてもトナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
前記現像剤を二成分現像剤として用いる場合、長期に亘るトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
二成分系現像剤として用いる場合には、本発明のトナーとキャリアを混合して用いる。キャリアの含有量には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90〜98重量%が好ましく、93〜97重量%がより好ましい。
−キャリア−
キャリアとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。
−芯材−
芯材の材料としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム系材料、マンガン−マグネシウム系材料などが挙げられる。また画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75〜120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30〜80emu/gの銅−亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
芯材の体積平均粒子径には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、10〜150μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。体積平均粒子径が10μm未満では、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがある。また、150μmを超えると、比表面積が低下しトナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
−被覆層−
被覆層は、少なくとも結着樹脂を含有するが、必要に応じて無機微粒子等の他の成分を含有していても良い。
結着樹脂としては特に制限はなく、公知の樹脂の中から適宜選択できる。
その例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)やその変性品、スチレン、アクリル樹脂、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルアルコール、塩化ビニル、ビニルカルバゾール、ビニルエーテル等を含む架橋性共重合物;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変性品(例えば、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等による変性品);ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;ユリア樹脂;メラミン樹脂;ベンゾグアナミン樹脂;エポキシ樹脂;アイオノマー樹脂;ポリイミド樹脂、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリコーン樹脂が特に好ましい。
前記シリコーン樹脂としては特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、ストレートシリコーン樹脂、及びアルキド、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ウレタンなどで変性したシリコーン樹脂が挙げられる。
前記シリコーン樹脂は、単体で用いることも可能であるが、架橋反応性成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。該架橋反応性成分としては、シランカップリング剤等が挙げられる。該シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、アミノシランカップリング剤等が挙げられる。
被覆層には必要に応じて微粒子を含有させてもよい。該微粒子としては特に制限はなく、公知の材料の中から適宜選択することができる。その例としては、金属粉、酸化錫、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン、アルミナ、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、ホウ酸アルミニウム等の無機微粒子や、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリ(パラ−フェニレンスルフィド)、ポリピロール、パリレン等の導電性高分子、カーボンブラック等の有機微粒子等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
前記微粒子は、更に表面が導電性処理をされていてもよい。導電性処理の方法としては、微粒子の表面に、アルミニウム、亜鉛、銅、ニッケル、銀、又はこれらの合金、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウム等を固溶体や融着の形態として被覆させる方法等が挙げられる。中でも、酸化スズ、酸化インジウム、スズをドープした酸化インジウムを用いて導電性処理をする方法が好ましい。
被覆層のキャリア中での含有率は5重量%以上が好ましく、5〜10重量%がより好ましい。
被覆層の厚さは、0.1〜5μmが好ましく、0.3〜2μmがより好ましい。
被覆層の厚さは、例えば、FIB(集束イオンビーム)でキャリア断面を作製した後、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて50点以上のキャリア断面を観察し、求めた膜厚の平均値として算出することができる。
キャリアへの被覆層の形成法としては特に制限はなく、従来公知の方法を使用できる。例えば、結着樹脂や結着樹脂前駆体などの被覆層用の原料を溶解した被覆層溶液を、芯材の表面に噴霧法又は浸漬法等を用いて塗布する方法が挙げられる。芯材表面に被覆層溶液を塗布し、塗布層が形成されたキャリアを加熱することにより、結着樹脂又は結着樹脂前駆体の重合反応を促進させることが好ましい。該加熱処理は、被覆層形成後、引き続きコート装置内で行っても良いし、被覆層形成後、通常の電気炉や焼成キルン等、別の加熱手段によって行っても良い。
加熱処理温度は使用する被覆層の構成材料によって異なるため一概に決められないが、120℃〜350℃程度が好ましく、被覆層構成材料の分解温度以下であることが特に好ましい。なお、該被覆層構成材料の分解温度の上限は220℃程度が好ましく、加熱処理時間は、5〜120分間程度が好ましい。
キャリアの体積平均粒径は、10〜150μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。体積平均粒径が10μm未満では、芯材粒子の均一性が低下することに起因するキャリア付着が発生することがある。また、100μmを超えると、画像細部の再現性が悪く精細な画像が得られないことがある。
キャリアの体積抵抗率は、9〜16[log(Ω・cm)]が好ましく、10〜14[log(Ω・cm)]がより好ましい。体積抵抗率が9[log(Ω・cm)]未満では非画像部でのキャリア付着が生じて好ましくない。また、16[log(Ω・cm)]より大きいと、現像時に、エッジ部における画像濃度が強調される、いわゆるエッジ効果が顕著になり好ましくない。該体積抵抗率は、必要に応じてキャリアの被覆層の膜厚、前記導電性微粒子の含有量を調整することにより、任意に調整可能である。
<画像形成装置>
本発明のトナーを用いた画像形成装置は、静電潜像担持体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて適宜その他の手段を有する。
前記現像手段は、トナーを用いて静電潜像を現像して可視像を形成する手段である。
図1は、トナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤を用いた二成分現像装置の一例を示す概略図である。この画像形成装置は、複写装置本体と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
複写装置本体100には、無端ベルト状の中間転写体10が中央部に設けられている。そして、中間転写体10は、支持ローラ14、15及び16に張架され、図1中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体10上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング手段17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体10には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器20が配置されている。タンデム型現像器20の近傍には、露光手段21が配置されている。中間転写体10における、タンデム型現像器20が配置された側とは反対側には、二次転写手段22が配置されている。二次転写手段22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される記録媒体と中間転写体10とは互いに接触可能である。二次転写手段22の近傍には定着手段25が配置されている。
なお、画像形成装置においては、二次転写手段22及び定着手段25の近傍に、記録媒体の両面に画像形成を行うために該記録媒体を反転させるための反転装置28が配置されている。
次に、タンデム型現像器20を用いたフルカラー画像の形成について説明する。
即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台30上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は、直ちにスキャナ300が駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき第1走行体33により光源からの光が照射されると共に、原稿面からの反射光が第2走行体34におけるミラーで反射され、結像レンズ35を通して読み取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。そして、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器20における各画像形成手段18にそれぞれ伝達され、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各トナー画像が形成される。
即ち、タンデム型現像器20における各画像形成手段18は、図1に示すように、それぞれ、静電潜像担持体40(感光体)と、該静電潜像担持体を一様に帯電させる帯電器60と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記静電潜像担持体を露光し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光器と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する現像器61と、該トナー画像を中間転写体10上に転写させるための一次転写装置62と、クリーニング手段63と、除電装置64とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体10上にそれぞれの色の感光体40上に形成された画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体10上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ42の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク43に多段に備える給紙カセット44の1つから記録媒体を繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に送出し、搬送ローラ47で搬送して複写機本体内の給紙路48に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、記録媒体の紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。そして、中間転写体10上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体10と2次転写装置22との間に記録媒体を送出させ、2次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該記録媒体上に転写(二次転写)することにより、該記録媒体上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体10上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
カラー画像が転写され形成された前記記録媒体は、2次転写手段22により搬送されて、定着手段25へと送出され、定着手段25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該記録媒体上に定着される。その後、該記録媒体は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされ、あるいは、切換爪55で切り換えて反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。なお、図1中の符号26及び27は、それぞれ定着ベルト及び加圧ローラを示す。
図2は本発明のトナーを用いたプロセスカートリッジの一例を示す図である。
このプロセスカートリッジ1は、キャリアを使用し、感光体2、近接型のブラシ状接触帯電手段3、本発明の現像剤を収納する現像手段4、クリーニング手段としてのクリーニングブレード5を少なくとも有するクリーニング手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在のものである。本発明においては、上述の各構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成することができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、説明中の「部」は「重量部」であり、材料の量に関する「%」は「重量%」である。
合成例1:ブロック共重合体(A)−1の合成
500mLの四つ口セパラブルフラスコ中に、L−ラクチド212g、D−ラクチド38g(重量比でL体/D体=85/15)、及び後述する合成例2の結晶性ポリエステル(A2)−1を107g投入し、40℃で5時間乾燥した後、内温を徐々に150℃まで昇温し、目視で系が均一化したことを確認した後、2−エチルヘキサン酸スズ50mgを投入して重合反応させた。この際、系の内温が190℃を超えないように制御した。2時間の反応時間経過後、系を175℃に冷却し、再び流出ラインに切り替え、10mmHgの条件下で60分間、脱ラクチドし、重合反応を完結させてブロック共重合体(A)−1を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は31000、融点は51℃であった。
合成例2:結晶性ポリエステル(A2)−1の合成
加熱乾燥した窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸を、OH/COOH=1.15の割合で仕込み、300ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に、常圧下、200〜230℃で10時間反応させ、更に10mmHg以下の減圧で5時間反応させて結晶性ポリエステル(A2)−1を得た。この樹脂の融点は55℃であった。
合成例3:結晶性ポリエステル(B)−1の合成
加熱乾燥した窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸を、OH/COOH=1.15の割合で仕込み、300ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に、常圧下、200〜230℃で10時間反応させ、更に10mmHg以下の減圧で5時間反応させて結晶性ポリエステル(B)−1を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は22000、融点は65℃であった。
実施例及び比較例のトナーの作製手順は以下のとおりである。
<トナーの作製>
−マスターバッチの調製−
水1,200部、カーボンブラック(Printex35:デクサ社製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕500部、及びブロック共重合体(A)1500部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、2本ロールを用いて120℃で30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕して[マスターバッチ]を得た。
−WAX分散液の調製−
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、離型剤としてパラフィンワックス50部(日本精鑞社製、HNP−9、炭化水素系ワックス、融点75℃、SP値8.8)、及び酢酸エチル450部を仕込み、撹拌しつつ80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行ない[WAX分散液]を得た。
−結晶性ポリエステル(B)分散液の調製−
撹拌棒及び温度計をセットした容器に結晶性ポリエステル(B)50部、及び酢酸エチル450部を仕込み、撹拌下で80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行ない[結晶性ポリエステル(B)分散液]を得た。
−油相の調製−
前記[マスターバッチ]100部、[WAX分散液]500部、[結晶性ポリエステル(B)分散液]500部、[ブロック共重合体(A)]700部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて5,000rpmで60分間混合し[油相]を得た。
−有機微粒子エマルション(微粒子分散液)の調製−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30:三洋化成工業社製)11部、スチレン138部、メタクリル酸138部、及び過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。これを加熱して系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。更に、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液]を得た。LA−920(HORIBA社製)で測定した[微粒子分散液]の体積平均粒径は、0.14μmであった。
−水相の調製−
水990部、前記[微粒子分散液]83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7:三洋化成工業社製)37部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相]とした。
−乳化・脱溶剤−
前記[油相]が入った容器に、[水相]1,200部を加え、TKホモミキサーを用いて、回転数13,000rpmで20分間混合し[乳化スラリー]を得た。
撹拌機及び温度計をセットした容器に前記[乳化スラリー]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー]を得た。
−洗浄・乾燥−
前記[分散スラリー]100部を減圧濾過した後、下記(1)〜(4)の操作を2回行い[濾過ケーキ]を得た。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。

得られた[濾過ケーキ]を循風乾燥機を用いて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い[トナー]を得た。
実施例1
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−1を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例2
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−1を95%、結晶性ポリエステル(B)−1を5%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
比較例1
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−1のみを使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
比較例2
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−1を80%、結晶性ポリエステル(B)−1を20%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例3
合成例1における結晶性ポリエステル(A2)−1の割合を20%に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−2を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は29000、融点は53℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−2を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例4
合成例1における結晶性ポリエステル(A2)−1の割合を40%に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−3を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は34000、融点は51℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−3を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
比較例3
合成例1における結晶性ポリエステル(A2)−1の割合を15%に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−4を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は29000、融点は53℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−4を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
比較例4
合成例1における結晶性ポリエステル(A2)−1の割合を50%に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−5を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は29000、融点は53℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−5を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例5
合成例2における酸成分をドデカン二酸に変えた点以外は、合成例2と同様にして結晶性ポリエステル(A2)−2を得た。この樹脂の融点は70℃であった。
合成例1における結晶性ポリエステル(A2)−1を結晶性ポリエステル(A2)−2に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−6を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は29000、融点は68℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−6を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
比較例5
合成例2におけるOH/COOHを1.25に変えた点以外は、合成例2と同様にして結晶性ポリエステル(A2)−3を得た。この樹脂の融点は48℃であった。
合成例1における結晶性ポリエステル(A2)−1を結晶性ポリエステル(A2)−3に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−7を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は33000、融点は47℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−7を90%、結晶性ポリエステル(B)−1を10%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例6
合成例2におけるアルコール成分を1,3−プロパンジオールに変え、酸成分をセバシン酸に変えた点以外は、合成例2と同様にして結晶性ポリエステル(A2)−4を得た。この樹脂の融点は74℃であった。
合成例1における結晶性ポリエステル(A2)−1を結晶性ポリエステル(A2)−4に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−8を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は28000、融点は72℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−8を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例7
合成例1におけるL−ラクチドとD−ラクチドの重量比を70/30に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−9を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は20000、融点は53℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−9を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
比較例6
合成例1におけるL−ラクチドとD−ラクチドの重量比を100/0に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−10を得た。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−10を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例8
合成例2におけるアルコール成分を1,4−ブタンジオールに変え、酸成分をセバシン酸に変えた点以外は、合成例2と同様にして、結晶性ポリエステル(A2)−5を得た。この樹脂の融点は62℃であった。
合成例1における結晶性ポリエステル(A2)−1を結晶性ポリエステル(A2)−5に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−11を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は25000、融点は58℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−11を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例9
合成例3における酸成分をドデカン二酸に変えた点以外は、合成例3と同様にして結晶性ポリエステル(B)−2を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は23000、融点は68℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−1を85%、結晶性ポリエステル(B)−2を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
比較例7
トナーを製造する際に合成例3によって得た結晶性ポリエステル(B)−1を分散せず、60℃で酢酸エチルに溶解させた溶液を油相に投入し、前述の方法に従ってトナーを得た。なお、結着樹脂としては、ブロック共重合体(A)−1を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用した。
比較例8
合成例1のブロック共重合体を得る際、結晶性ポリエステル(A2)−1を一切使用せずに、合成例1に従って樹脂(A)−12を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は28000であった。
結着樹脂として樹脂(A)−12を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例10
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−1を97%、結晶性ポリエステル(B)−1を3%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例11
合成例2におけるOH/COOHを1.17に変えた点以外は、合成例2と同様にして結晶性ポリエステル(A2)−6を得た。この樹脂の融点は50℃であった。
合成例1における結晶性ポリエステル(A2)−1を結晶性ポリエステル(A2)−6に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−13を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は29000、融点は50℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−13を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例12
合成例1において、結晶性樹脂成分(A2)−1の使用量を全体の45%に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−14を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は29000、融点は53℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−14を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
実施例13
合成例1におけるL−ラクチドとD−ラクチドの重量比を90/10に変えた点以外は、合成例1と同様にしてブロック共重合体(A)−15を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は34000、融点は51℃であった。
結着樹脂としてブロック共重合体(A)−15を85%、結晶性ポリエステル(B)−1を15%使用し、前述の方法に従ってトナーを得た。
合成例4:結晶性ポリエステル(HD/AA)
加熱乾燥した窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオール(HD)とアジピン酸(AA)を、OH/COOH=1.15の割合で仕込み、300ppmのチタンテトライソプロポキシドとともに、常圧下、200℃〜230℃で10時間反応させ、更に10mmHg以下の減圧で5時間以上反応させて結晶性ポリエステル(HD/AA)を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は20000、融点は55℃であった。
合成例5:結晶性ポリエステル(HD/DDDA)
加熱乾燥した窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオール(HD)とドデカン二酸(DDDA)を、OH/COOH=1.15の割合で仕込み、300ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に、常圧下、200℃〜230℃で10時間反応させ、更に10mmHg以下の減圧で5時間以上反応させて結晶性ポリエステル(HD/DDDA)を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は23000、融点は68℃であった。
合成例6:結晶性ポリエステル(BD/SeA)
加熱乾燥した窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,4−ブタンジオール(BD)とセバシン酸(SeA)を、OH/COOH=1.15の割合で仕込み、300ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に、常圧下、200℃〜230℃で10時間反応させ、更に10mmHg以下の減圧で5時間以上反応させて結晶性ポリエステル(BD/SeA)を得た。この樹脂の融点は62℃であった。
合成例7:結晶性ポリエステル(HD/SeA)
加熱乾燥した窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオール(HD)とセバシン酸(SeA)を、OH/COOH=1.15の割合で仕込み、300ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に、常圧下、200℃〜230℃で10時間反応させ、更に10mmHg以下の減圧で5時間以上反応させて結晶性ポリエステル(HD/SeA)を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は22000、融点は65℃であった。
実施例14
合成例8:ブロック共重合体(A)−16の合成
2Lの四つ口セパラブルフラスコ中に、L−ラクチド848g、D−ラクチド152g、及び上述の結晶性ポリエステル(HD/AA)を428g投入し、40℃で5時間乾燥した後、窒素気流下で内温を徐々に150℃まで昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、2−エチルヘキサン酸スズ200mgを投入して重合反応を行った。この際、系の内温が190℃を超えないように制御した。2時間の反応時間経過後、系を175℃に冷却し、流出ラインに切り替え、10mmHgの条件下で60分間、脱ラクチドし、重合反応を完結させて、ブロック共重合体を得た。
次いで、得られたブロック共重合体1300gを500mLの四つ口セパラブルフラスコ中に仕込み、窒素気流下で内温を150℃に昇温し、系を溶融均一化させた。系中に、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを5g投入し、1時間反応させた。その後、更にカルボジイミド化合物(松本油脂社製NCN)5gを系中に投入し、1時間反応させて、目的のブロック共重合体(A)−16を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は31000、融点は51℃であった。
ブロック共重合体(A)−1をブロック共重合体(A)−16に変え、結晶性ポリエステル(B)として結晶性ポリエステル(HD/SeA)を使用し、油相の調製に用いる結晶性ポリエステル(B)分散液の配合量を750部に変えた点以外は、実施例1のトナーの作製と同様にしてトナーを得た。
実施例15
合成例9:ブロック共重合体(A)−17の合成
2Lの四つ口セパラブルフラスコ中に、L−ラクチド848g、D−ラクチド152g、及び上述の結晶性ポリエステル(HD/AA)を428g投入し、40℃で5時間乾燥した後、窒素気流下で内温を徐々に150℃まで昇温した。目視下で系の均一化を確認後、2−エチルヘキサン酸スズ200mgを投入して重合反応を行った。この際、系の内温が190℃を超えないように制御した。2時間の反応時間経過後、系を175℃に冷却し、流出ラインに切り替え、10mmHgの条件下で60分間、脱ラクチドし、重合反応を完結させ、ブロック共重合体(A)−17を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は29000、融点は53℃であった。
ブロック共重合体(A)−16をブロック共重合体(A)−17に変え、油相の調製に用いる結晶性ポリエステル(B)分散液の量を250gとした点以外は、実施例14と同様にしてトナーを得た。
実施例16
結晶性ポリエステル(HD/AA)の含有量を20重量%とした点以外は、実施例15と同様にしてブロック共重合体(A)−18を合成した。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は29000、融点は53℃であった。
ブロック共重合体(A)−16をブロック共重合体(A)−18に変え、油相の調製に用いる結晶性ポリエステル(B)分散液の量を500gとした点以外は、実施例14と同様にしてトナーを得た。
実施例17
結晶性ポリエステル(HD/AA)の含有量を40重量%とした点以外は、実施例14と同様にしてブロック共重合体(A)−19を合成した。ただし、カルボジイミド化合物の投入量を2.5phrとした。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は34000、融点は51℃であった。
ブロック共重合体(A)−18をブロック共重合体(A)−19に変えた点以外は、実施例16と同様にしてトナーを得た。
実施例18
結晶性ポリエステル樹脂をHD/DDDAに変えた点以外は、実施例17と同様にしてブロック共重合体(A)−20を合成した。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は29000、融点は68℃であった。
ブロック共重合体(A)−18をブロック共重合体(A)−20に変えた点以外は、実施例16と同様にしてトナーを得た。
実施例19
L−ラクチドとD−ラクチドの重量比率をL/D=70/30とした点以外は、実施例15と同様にしてブロック共重合体(A)−21を合成した。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は20000、融点は53℃であった。
ブロック共重合体(A)−18をブロック共重合体(A)−21に変えた点以外は、実施例16と同様にしてトナーを得た。
実施例20
合成例10:ブロック共重合体(A)−22の合成
2Lの四つ口セパラブルフラスコ中に、L−ラクチド765g、D−ラクチド135g、及び上述の結晶性ポリエステル(BD/SeA)を600g投入し、40℃で5時間乾燥した後、窒素気流下で内温を徐々に150℃まで昇温した。目視下で系の均一化を確認した後、2−エチルヘキサン酸スズ200mgを投入して重合反応を行った。この際、系の内温が190℃を超えないように制御した。2時間の反応時間経過後、系を175℃に冷却し、流出ラインに切り替え、10mmHgの条件下で60分間、脱ラクチドし、重合反応を完結させ、ブロック共重合体を得た。
次いで、得られたブロック共重合体1300gを500mLの四つ口セパラブルフラスコ中に仕込み、窒素気流下で内温を150℃に昇温し、系を溶融均一化させた。系中に、カルボジイミド化合物(松本油脂社製NCN)13gを系中に投入し、1時間反応させることで、目的のブロック共重合体(A)−22を得た。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は25000、融点は58℃であった。
ブロック共重合体(A)−18をブロック共重合体(A)−22に変えた点以外は、実施例16と同様にしてトナーを得た。
実施例21
結晶性ポリエステルをHD/AAに変えた点以外は、実施例20と同様にしてブロック共重合体(A)−23を合成した。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は24000、融点は52℃であった。
ブロック共重合体(A)−16をブロック共重合体(A)−23に変え、結晶性ポリエステル(B)として結晶性ポリエステル(HD/DDDA)を用いた点以外は実施例14と同様にしてトナーを得た。
実施例22
ブロック共重合体(A)−16をブロック共重合体(A)−17に変え、油相の調製に用いる結晶性ポリエステル(B)分散液の量を150gとした点以外は、実施例14と同様にしてトナーを得た。
実施例23
ブロック共重合体(A)−16をブロック共重合体(A)−17に変えた点以外は、実施例14と同様にしてトナーを得た。
実施例24
MDI投入量を0.5phr、カルボジイミド化合物の投入量を2.5phrとした点以外は、ブロック共重合体(A)−16の合成と同様にして、ブロック共重合体(A)−24を合成した。この樹脂の重量平均分子量(Mw)は34000、融点は51℃であった。
ブロック共重合体(A)−16をブロック共重合体(A)−24に変えた点以外は、実施例14と同様にしてトナーを得た。
<現像剤の作製>
−キャリアの作製−
トルエン100部に、シリコーン樹脂オルガノストレートシリコーン100部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5部、及びカーボンブラック10部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。流動床型コーティング装置を用いて、平均粒径50μmの球状マグネタイト1,000部の表面に樹脂層塗布液を塗布して、キャリアを得た。

−現像剤の作製−
ボールミルを用いて、前記各実施例のトナーを5部と前記キャリア95部とを混合し、現像剤を作製した。
上記実施例及び比較例のトナー及び用いた材料の物性は以下のようにして測定又は評価した。結果を纏めて表1〜3に示す。
(t130、t′70の測定)
次のようにして、パルスNMRによりt130、及びt′70を測定した。
ブルカー・オプティクス社製「Minispec−MQ20」を用いて、観測核1H、共鳴周波数19.65MHz、測定間隔5sの条件で、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜x)により減衰曲線を測定した。なお、Piは0.01〜100ms、データポイント数は100点、積算回数は32回として測定温度を50℃→130℃→70℃の順に変えて行った。
サンプルのトナー粉体0.2gを専用のサンプル管中に入れ、磁場の適正範囲までサンプル管を挿入して測定した。各サンプルについて、130℃におけるスピン−スピン緩和時間(t130)、及び130℃から70℃まで降温したときの70℃におけるスピン−スピン緩和時間(t′70)を測定した。
(分子量の測定)
・装置:GPC(東ソー社製)、検出器:RI、測定温度:40℃、
・移動相:テトラヒドロフラン、流量:0.45mL/min.
・数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、分子量分布Mw/Mnは、それぞれ、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した。
(融点の測定)
対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次いで、窒素雰囲気下、40℃から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した。その後、150℃から降温速度10℃/minで−60℃まで冷却し、更に、昇温速度10℃/minで150℃まで加熱して、示差走査熱量計([Q−2000]、TAインスツルメンツ社製)を用いてDSC曲線を計測した。
得られたDSC曲線から、システム中の解析プログラムを用いて、二回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、そのピークトップから対象試料の最高ピーク温度(融点)を求めた。
(90%RH熱変形温度の測定)
・装置:TMA(SIIナノテクノロジー社製、EXSTAR7000)
試料5〜10mgを、3mmφ、厚さ1mmのダイに充填し、ハンドプレスで圧縮して錠剤成形したものを測定に供した。装置付属の温度/湿度制御装置を使用し、90%RH条件下で30℃から90℃まで2℃/min.で昇温し、標準プローブを用いて、圧縮力100mNで加圧し、その変位を追った。得られたサーモグラムを変形量%に変換した後、50℃の値を90%RH熱変形温度(TMA%)とした。
(耐ブロッキング性)
トナーを50℃で8時間保管した後、42メッシュの篩で2分間篩い、金網上の残存率を測定し、下記の基準で評価した。
〔評価基準〕
○:残存率が10%未満
△:残存率が10%以上、20%未満
×:残存率が20%以上
(低温定着性)
定着ローラとして、テフロン(登録商標)ローラを使用した複写機MF2200(リコー社製)の定着部を改造した装置を用いて、タイプ6200紙(リコー社製)に複写テストを行った。具体的には、定着温度を変化させて、目視でオフセット画像の確認を行い、コールドオフセット温度(定着下限温度)及び高温オフセット温度(定着上限温度)を求めた。
定着下限温度の評価条件は、紙送りの線速度を120〜150mm/秒、面圧を1.2kgf/cm、ニップ幅を3mmとした。
また、定着上限温度の評価条件は、紙送りの線速度を50mm/秒、面圧を2.0kgf/cm、ニップ幅を4.5mmとした。
また、コールドオフセット温度(定着下限温度)及び高温オフセット温度(定着上限温度)の範囲を定着温度幅とした。
ここで、定着性としては定着下限温度が110℃以下で、定着温度幅は、40℃以上あれば実用上好ましい。
Figure 2014077979
Figure 2014077979
Figure 2014077979
表1〜3に示すように、実施例1〜24のトナーは、低温定着性と耐ブロッキング性が両立した高品位のトナーであった。
比較例1のトナーは、耐ブロッキング性は良好であるものの、低温定着性を満足することが出来なかった。
比較例2のトナーは、優れた低温定着性は獲得できたものの、耐ブロッキング性は満足できなかった。
比較例3のトナーは、低温定着性と耐ブロッキング性の何れも満足できなかった。
比較例4のトナーは、耐ブロッキング性には優れているものの、溶融粘性不足で全領域オフセットが発生し、定着性を得ることが出来なかった。
比較例5のトナーは、低温定着性には優れるものの、耐ブロッキング性を満足出来なかった。
比較例6のトナーは、耐ブロッキング性には優れているものの、170℃以上の領域で全領域オフセットが発生し、定着特性を満足できなかった。
比較例7のトナーは、低温定着性と耐ブロッキング性の何れも満足できなかった。
比較例8のトナーは、低温定着性と耐ブロッキング性の何れも満足できなかった。
1 プロセスカートリッジ
2 感光体
3 帯電手段
4 現像手段
5 クリーニング手段
10 中間転写体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
20 タンデム型現像器
21 露光手段
22 2次転写手段
23 ローラ
24 2次転写ベルト
25 定着手段
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 反転装置
30 原稿台
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40 静電潜像担持体(感光体)
42 給紙ローラ
43 ペーパーバンク
44 給紙カセット
45 分離ローラ
46 給紙路
47 搬送ローラ
48 給紙路
49 レジストローラ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排紙トレイ
60 帯電器
61 現像器
62 1次転写装置
63 クリーニング手段
64 除電装置
100 複写装置本体
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
特開平4−179967号公報 特許第2597452号公報 特開2006−91278号公報 特開2006−285150号公報 特開2009−053695号公報 特開2011−150229号公報 特開2011−123483号公報

Claims (9)

  1. 少なくとも着色剤、結着樹脂及び離型剤を含有する画像形成用トナーにおいて、以下の<1>〜<4>の要件を満たすことを特徴とする静電画像形成用トナー。
    <1> 結着樹脂が結晶性セグメント(X)と非晶性ポリ乳酸セグメント(Y)からなるブロック共重合体(A)を含有する。
    <2> トナーの相対湿度90%の条件下における50℃のTMA圧縮変形量(TMA%)が、10%以下である。
    <3> トナーの、パルスNMRで測定した130℃におけるスピン−スピン緩和時間(t130)が10ms以上である。
    <4> トナーの、パルスNMRで測定した、130℃から70℃まで降温したときの70℃におけるスピン−スピン緩和時間(t′70)が1ms以下である。
  2. 前記結晶性セグメント(X)が、二価の脂肪族アルコールと二価の脂肪族カルボン酸を縮合させた融点50℃〜70℃のポリエステルであり、前記セグメント(X)とセグメント(Y)の重量比率(X/Y)が、10/90〜40/60であることを特徴とする請求項1に記載の静電画像形成用トナー。
  3. 前記結着樹脂として、前記ブロック共重合体(A)に加え、結晶性ポリエステル(B)を含有し、(A)と(B)の重量割合が、3≦〔B/(A+B)〕×100≦15であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電画像形成用トナー。
  4. 前記ブロック共重合体(A)中に、融点が50〜70℃の結晶性ポリエステル(A2)からなるユニットを20〜45重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の静電画像形成用トナー。
  5. 前記ブロック共重合体(A)のポリ乳酸部のL体とD体の重量比が、L体/D体=70/30〜90/10であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の静電画像形成用トナー。
  6. 前記ブロック共重合体(A)がカルボジイミド化合物からなる部分を0.3〜3重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の静電画像形成用トナー。
  7. 少なくとも着色剤、ブロック共重合体(A)、結晶性ポリエステル(B)及び離型剤を含む油相を、水系媒体中で分散させることにより造粒されたものであることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の静電画像形成用トナー。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。
  9. 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記トナーとして請求項1〜7のいずれかに記載のトナーを用いることを特徴とする画像形成装置。
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