JP2014077459A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼材からなるナット15に、強化繊維を含まない高分子材料からなる転動体循環部材33が嵌まり込む凹形状の循環部材装着部31A(31B)を形成した。また、転動体循環部材を、強化繊維を含まない高分子材料で形成した。さらに、循環部材装着部内に装着した転動体循環部材の所定位置に、循環部材装着部との間にクリアランスC1〜C3を設けた。
【選択図】図11
Description
このラック軸を電動モータで駆動されるボールねじ機構に連結することにより、ラックアシスト式の電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)を構成することができる。なお、ラックアシスト式の電動パワーステアリング装置を、ラックアシスト式EPSと称する。
ボールねじ機構のナットは鋼材であり、転動体循環部材は、耐久性及び耐衝撃性を高めるために高分子材料で形成される場合がある。
転動体循環部材の変位を防止する方法として、例えば特許文献1,2に示すものが知られている。しかし、これら特許文献1,2は、転動体循環部材がナットの軸方向に変位するのを抑制することができるが、転動体循環部材がナットの内径側に変位するのを抑制することができない。
また、一の実施形態に係るボールねじ機構は、BCD(Ball Circle Diameter)をφ25mm以上φ32mm以下とし、前記転動体の直径をφ3.968mm以上φ5.000mm以下とし、リードを6.0mm以上8.0mm以下とすることが好ましい。
(電動パワーステアリング装置)
図1は、本発明に係る操舵ギヤ機構1を示すものであり、図2は、ラック軸を示す正面図である。
図1の操舵ギヤ機構1は、ピニオン機構2とラック機構3とを備えている。
ラック軸7は、図2に示すように、ピニオン軸5が噛合するラック部8と、このラック部8の右方に形成された螺旋状のゴシックアーク断面形状のボールねじ溝9aを有するボールねじ軸9とを備えている。
そして、小径プーリ19と、大径プーリ20、及びボールねじ溝9aを覆うようにカバー22が軸受収容部16及びモータ支持部18に例えばボルト締め等により固定されている。
図4に示すように、ボールねじ機構11のボールねじナット15の内周面には、転動体14が転動するゴシックアーク断面形状のボールねじ溝15aが螺旋状に形成されている。また、ボールねじナット15の軸方向の左右両端部には、一対の転動体循環部材33を装着するための一対の転動体循環部31A,31Bが形成されている。さらに、ボールねじナット15の軸方向の左右両端部には、ボールねじナット15の内周面のボールねじ溝15aと外周面との間を軸方向に通って左右両端部の一対の転動体循環部材装着部31A,31Bの間を連通する転動体戻し通路32が形成されている。
右端側の転動体循環部材装着部31Aは、図6及び図7(b)に示すように、ボールねじナット15の軸方向の一方の端面に開口した切欠凹部であり、平坦面31aと、湾曲面31b,31cと、半円筒面31dと、上面31eとを備えた部材である。
一対の転動体案内側板部33a,33bの側面形状(図5(a)の上方から見た形状)は、ボールねじナット15の軸方向の両端面に切欠凹部として形成した一対の転動体循環部材装着部31A,31Bの形状と略同一に形成されている。ここで、転動体案内側板部33aには、一対の転動体循環部材装着部31A,31Bの抜け止め凹部31fと同一形状の抜け止め凸部33dが形成されている。
また、連結板部33cには、ボールねじ軸9のボールねじ溝9a内に非接触状態で挿入されて転動体14を接線方向に掬い取るタング部33eが形成されている。
そして、タング部33eと転動体案内側板部33a及び33bとで囲まれて転動体戻し通路32に転動体14を案内する平面から見て略逆L字状に湾曲し、転動体戻し通路32と対向する位置で開口する転動体循環路33fが形成されている。
(ラックアシスト式EPSのボールねじ機構の諸元)
ラックアシスト式EPS10のボールねじ機構11の諸元(ボールねじの耐久寿命、ラック軸外径、アシストモータからラック軸までの減速比といった設計要件)について説明する。
転動体14は、φ3.968mm以上φ5.000mm以下のものを使用する。転動体14の直径をφ3.968mmよりも小さくし過ぎると、定格荷重が低下する。またこれと同時に、循環経路内の球数が増え、転動体14同士の競り合いが生じる。この結果、耐久性が低下するとともに、作動不良などが生じ易くなる。反対に転動体14の直径がφ5.000mmよりも大きくなると、ボールねじ機構11の外寸が大きくことに加え、リードも大きくする必要があるため、後述する減速比の確保が困難になる。
(転動体と転動体循環部材との衝突が起こる条件)
先ず、ドライバーが操舵をした際に、上述した諸元のボールねじ機構11において、転動体14と転動体循環部材33との衝突が起こる条件について説明する。
説明に当り、具体的なボールねじ機構11の諸元を以下の通り例示する。
転動体14のBCD : 30.0mm
転動体14の直径 : φ4.7625mm
リード : 7.0
接触角 : 45deg
すきま : 無し
ラック&ピニオン比ストローク 50.0mm/rev(ハンドル1回転当りのラック移動量)
ラックストローク 75.0mm(中立からストロークエンドまで)
耐久サイクル数 100,000cycle
今、ハンドル回転速度360deg/secで操舵した場合について考える。ラック&ピニオン比ストロークが50.0mm/revであり、ハンドルを360deg/secで操舵すると、ラック軸7は50.0mm/secで直動し、ボールねじ機構11のボールねじナット15は7.14rev/sec(約430rpm)で回転する(ラック直動速度50mm/sec÷ボールねじのリード7.0mm/rev)。
なお、乗用車の最も早い操舵条件は、危険回避などの際の急ハンドル操作で、800deg/sec程度が一般的であり、この条件で転動体循環部材33が破損しないことも求められる。
そのため、本実施形態のラックアシスト式EPS10のボールねじ機構11で使用される転動体循環部材33の材料の決定に際しては、衝突エネルギーが最も大きくなる条件を前記範囲の中から選定した。
次に、本実施形態のボールねじ機構11で使用される転動体循環部材33の具体的な形状について説明する。
転動体循環部材33の循環軌道形状は、図8(a)、(b)に示すように、ボールねじ機構11の螺旋軌道P上の掬い上げ点をQとすると、循環軌道は、掬い上げ点Qから螺旋軌道Pの接線方向に伸ばした直線Sと、ボールねじナット15に設けた転動体戻し通路32の中心を通過する直線Tと、これら直線S,Tを繋ぐ曲線Rとで構成される。この循環軌道に沿って転動体14を滑らかに循環させるため、転動体循環部材33には、転動体14の直径よりも溝幅が広い溝Uが設けられている。
また、直線Tの位置は、ボールねじナット15のボールねじ溝15aとの位置関係および曲線Rの寸法によって設定される。
また、図7(a)に示している、転動体循環部材33の転動体案内側板部33bが当接する転動体循環部材装着部31Aの当接面Yは、隣接するボールねじ溝15aと所定のクリアランスCLを必要とする。転動体循環部材33の前述した、掬い上げ点Qから螺旋接線方向に伸ばした直線Sと、ボールねじナット15に設けた転動体戻し通路32の中心を通過する直線Tとを繋ぐ曲線Rの終端Reは、当接面Yよりも下側に位置させる。
また、図7(b)に示している、転動体循環部材装着部31Aの径方向の装着幅Vは、転動体循環部材33の強度によって変化する。そして、前述したクリアランスCLを確保するためには、装着幅Vは小さいほうが有利であるが、装着幅Vを小さくすると転動体循環部材33のタング背面が薄肉になって強度が低下するため、装着幅Vは、転動体14の直径の150%以上200%以下とする。
転動体循環部材33の外形状は、基本的にはボールねじ軸9のボールねじ溝9aの溝直角断面形状に略倣った形状となる。
転動体循環部材33の外周部Rn(転動体案内側板部33a,33bのボールねじ軸9と対向する部分)は、ボールねじナット15の内径寸法に一致させて、ボールねじ軸9のランド部に対して所定のクリアランスを確保して対向するように形成されている。
なお、Rn及びRtは連結部Rfで滑らかに接続されており、連結部Rfはボールねじ軸9と干渉しない範囲で大きく設定するのが好ましい。また、図9では、背面部Rtの形状を単一円弧としているが、ボールねじ溝9aに倣ったゴシックなどとしてもよい。
次に、本実施形態のボールねじ機構11で使用される転動体循環部材33の具体的な材料について説明する。
本実施形態の転動体循環部材33は、高温(125℃)の雰囲気温度において30MPa以上の引張強度を有する高分子材料で形成されている。この30MPa以上の引張強度という値は、前述した条件の下、転動体14と転動体循環部材33の衝突エネルギーが最も大きくなる場合について、FEM構造解析を行った結果、得られた値である。
また、強化繊維を含まず、高温(125℃)の雰囲気において30MPa以上の引張強さであり、シャルピー衝撃強さが3.3kJ/m2以上の特性を有する高分子材料は、熱安定剤を加えると耐熱性を向上させることができる。
そして、本実施形態の転動体循環部材33を形成する際に用いられる樹脂組成物を得るための方法は特に限定されないが、母材である樹脂と添加剤を予めタンブラー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー等の予備混合機を用いて混ぜ合わせてから、短軸または二軸押出し機、ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ等の従来からの公知の樹脂用混練り装置を用いて均一に混練りする、または、母材である原料樹脂と添加剤をそれぞれ別々に樹脂用混練り装置により混練りすることが可能である。
次に、転動体循環部材33と、ボールねじナット15に形成した転動体循環部材装着部31Aのクリアランスについて説明する。なお、転動体循環部材装着部31Bも、転動体循環部材装着部31Aと同一構造である。
図10は、転動体循環部材装着部31Aに装着した転動体循環部材33と、螺旋軌道Pとの関係を表す図であり、図11は、転動体循環部材装着部31Aに転動体循環部材33を装着した状態を示す図である。
また、転動体循環部材装着部31Aの上面31eに対向する転動体循環部材33の第2対向面33hと第1対向面33gとの間の寸法X2は、転動体循環部材33のタング部33eの強度を確保できる範囲とし、転動体14の直径の150〜200%に設定されている。また、寸法X2を、転動体循環部材装着部31Aの加工に用いる刃物の外寸法と略同等の値とすることで、加工工数を減らすことができる。
転動体循環部材装着部31Aの抜け止め凹部31fは、転動体循環部材33がボールねじナット15の内径側に倒れ込むことを防止する形状である。詳細な形状寸法は規定しないが、ボールねじナット15の内径や外径、隣接するボールねじ溝15aに干渉しない形状であるとともに、ボールねじナット15の加工時の刃物剛性を考慮し、極力幅を広くすることが望ましい。
強化繊維を含まない高分子材料であるPA46やPA66の線膨張係数は8〜10×10−5であり、室温20℃から120℃まで温度が変化すると、転動体循環部材33に寸法変化が生じる。例えば上記寸法を有する転動体循環部材33の場合、寸法Zは0.17mmほど大きくなる。
転動体循環部材33の熱膨張の対策としては、高分子材料からなる転動体循環部材33の線膨張係数と、鋼材からなるボールねじナット15の線膨張係数の差から,室温から高温まで環境が変化した際の寸法変化量の相互差を求め、この相互差以上のクリアランスを設けることが好ましい。
また、熱膨張及び吸水膨張の両方が想定される場合には、これらを複合した条件下での寸法変化量を見越したクリアランスを設けるのが好ましい。
本実施形態では、転動体循環部材装着部31Aの湾曲面31b(31c)と、転動体循環部材33の転動体案内側板部33a、33bとの間に、転動体循環部材33の寸法変化量を見越したクリアランスC1を設けている。
また、クリアランスC1は、転動体循環部材33の前記接線方向の伸びを吸収できる隙間であり、位置決めのために接線方向の一端側のみに設けられることが好ましい。そして、転動体循環部材33は、接線方向において、転動体案内側板部33a,33bに対して逆側の転動体循環部材装着部31Aの円弧面31gと接触する部分で位置決めされることが好ましい。
前述したクリアランスC1を設けた範囲では、転動体14がボールねじ軸9のボールねじ溝9aから離間する過程にある。そのため、湾曲面31b(31c)及び転動体案内側板部33a、33bでは、転動体14はボールねじ軸9のボールねじ溝9aに位置が規制されており、前述したクリアランスC1によって転動体14の循環が妨げられることはない。
このクリアランスC2は、OQ方向に設けられ、転動体循環部材33の内径側への変位を防止し、転動体循環部材33のOQ方向の伸びを吸収する隙間である。
また、クリアランスC2は、位置決めのためにOQ方向の一端側のみに設けられ、タング部33eから遠いOQ方向の端面である第1対向面33g側に設けることが好ましく、特に、タング部33eから近い方向の端面である第2対向面33hで転動体循環部材33の位置決めを行うことが好ましい。
このクリアランスC3は、転動体循環部材33が抜け止め凸部33dを備え、転動体循環部材装着部31Aが抜け止め凹部31fを備える場合に設けることが好ましく、抜け止め凸部33dの膨張による転動体循環部材33の変位を防止することができる。
次に、本実施形態のボールねじ機構11を備えたラックアシスト式EPS10の作用効果について、以下に述べる。
本実施形態の転動体循環部材33は、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維を含まない高分子材料としているので、ボールねじ機構11の異音及び作動不良の防止を図ることができる。
したがって、本実施形態のボールねじ機構11は、耐久性及び耐衝撃性を確保し、温度上昇や吸水により膨張した転動体循環部材33がボールねじナット15の軸方向や内径側に変位するのを抑制することができるので、このボールねじ機構11を備えたラックアシスト式EPS10は、信頼性が高い装置を提供することができる。
Claims (3)
- 外周面にねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸の前記ねじ溝に対応するねじ溝を内周面に形成するとともに、軸方向に貫通する転動体戻し通路を形成したナットと、前記ねじ軸のねじ溝と前記ナットのねじ溝とで形成される螺旋軌道及び前記転動体戻し通路に介装された多数の転動体と、前記螺旋軌道の一端から前記転動体を前記螺旋軌道の接線方向に掬い上げて前記転動体戻し通路へ導くとともに前記転動体戻し通路から前記螺旋軌道の他端へ案内する転動体循環軌道を形成する転動体循環部材とを有するボールねじ機構を備え、当該ボールねじ機構の前記ねじ軸を、ステアリング機構を構成するピニオン軸に螺合するラック軸に連結し、前記ナットを電動モータで回転駆動する電動パワーステアリング装置において、
鋼材からなる前記ナットに、前記転動体循環部材が嵌まり込む凹形状の循環部材装着部を形成し、
前記転動体循環部材を、強化繊維を含まない高分子材料で形成するとともに、
前記循環部材装着部内に装着した前記転動体循環部材の所定位置に、前記循環部材装着部との間にクリアランスを設けたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記クリアランスは、前記転動体の直径の3%以上10%以下であることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- BCD(Ball Circle Diameter)をφ25mm以上φ32mm以下とし、前記転動体の直径をφ3.968mm以上φ5.000mm以下とし、リードを6.0mm以上8.0mm以下としたことを特徴とする請求項1又は2記載の電動パワーステアリング装置。
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