JP2014059032A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】異音及び作動不良が防止されて信頼性の高い電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】ねじ軸9のねじ溝9a及びナット15のねじ溝15a間の転動体14を掬い上げて転動体戻し通路32に案内する転動体循環部材33の転動体が転動する循環軌道は、螺旋軌道P上の掬い上げ点から螺旋軌道の接線方向に伸ばした第1の直線Sと、転動体戻し通路の中心を通過する第2の直線Tと、これら第1及び第2の直線を繋ぐ曲線Rとで構成され、曲線の半径は、転動体の直径の50%以上90%以下に設定されている。
【選択図】図8

Description

本発明は、ボールねじ機構を備えた電動パワーステアリング装置に関する。
車両のラックピニオン式ステアリング装置では、ステアリングホイールを操舵したときの操舵回転力がピニオン軸に伝達され、このピニオン軸に噛合するラックアンドピニオンギアによりラック軸の直線運動に変換され、この直線運動がラック軸の両端に連結されたタイロッドを介して転舵輪に伝達され、転舵輪が転舵される。
このラック軸を電動モータで駆動されるボールねじ機構に連結することにより、ラックアシスト式の電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)を構成することができる。なお、ラックアシスト式の電動パワーステアリング装置を、ラックアシスト式EPSと称する。
ラックアシスト式EPSのボールねじ機構において、何らかの異常が発生すると車両の操舵が不能になるおそれがあるため、いかなる場合にもロックしない信頼性が必要となる。また、ボールねじ機構で生じた振動や音は、ラック軸及び操舵軸を介してステアリングホイールへと伝達されるため、ドライバーに不快感を与えるおそれがある。そのため、ラックアシスト式EPSは、作動性、静音性に対する要求が高い。
特に、駆動モータをラック軸に対しオフセットさせ、ベルト減速機などの減速機構でボールねじ機構へ動力伝達を行う方式の電動パワーステアリング装置(以下、オフセット・ラックアシスト式EPSと称する)では、車載性を確保するために、ボールねじ機構を車両外側にレイアウトする場合が多く、ラック軸のラジアル荷重をボールねじ機構が受けるため、ボールねじ機構からの異音が発生しやすいという問題があった。
例えば、こま式ボールねじにおいて、ナット1回転に1位相で循環部分が存在する単列サーキットを、位相をずらして複数巻き配列し構成する。この場合、ナット最端に位置するサーキットの特定位相(循環部分の位相)では、ボールねじ機構のモーメント剛性が低くなり、ナット位相によってモーメント剛性が変化することになる。その結果、ボールねじ機構の駆動に伴ってラック軸が撓み、異音が発生する。
このような問題を解決するオフセット・ラックアシスト式EPSとして、外部デフレクタ式ボールねじの1サーキットを複列とし、ボールねじのモーメント剛性をナット位相に因らない設計とした装置が知られている(例えば、特許文献1)。
また、作動性、静音性を有するラックアシスト式EPSを得るために、外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、このねじ溝に対応するねじ溝を内周面に有するとともに、軸方向に貫通する転動体戻し通路を有してねじ軸に遊嵌されるナットと、両ねじ溝間と転動体戻し通路とを連通させる転動体循環路を有してナットの両端面に配置される循環部材とを備えたボールねじ機構において、転動体をねじの螺旋軌道の接線方向に転動体をすくい上げることで、転動体の循環を円滑に行う循環部材を備えた装置(例えば、特許文献2)、転動体との衝突音を低減するために、循環部材を高分子材料などの樹脂材料とする装置(例えば、特許文献3)などが知られている。
ここで、オフセット・ラックアシスト式EPSのボールねじ機構は、多くの場合、エンジンルーム内のエンジンや、排気管、トランスミッション等の熱源の近傍に搭載され、雰囲気温度が−40℃から120℃以上に達する環境で使用されるとともに、ボールねじ機構の循環部品には、操舵に伴い転動体が連続的に衝突を繰り返す。
このような条件下で特許文献3の樹脂材料からなる循環部品を使用すると、低温雰囲気では樹脂材料の衝撃強さが低下し、転動体との衝突によりクラックなどが生じ易くなり、循環部品の破損の可能性が高くなる。また、高温雰囲気で特許文献3の樹脂材料からなる循環部品を使用すると、樹脂材料の引張強さが低下し、すくい上げ部などの破損といった不具合が生じるおそれがある。
そこで、低温雰囲気、或いは高温雰囲気であっても使用可能なボールねじ機構の循環部品として、ガラス繊維や炭素繊維を充填した強化樹脂からなるものが提案されている(例えば、特許文献4)。
しかし、この強化樹脂からなる循環部品は、転動体との連続的な衝突により表面に磨耗が生じると、充填されている繊維が循環部品の表面に露出して転動体の傷の要因となるおそれがあるとともに、脱落した繊維が噛み込まれることによる異音や作動不良の要因となるおそれがある。
特開2005−326009号公報 特開2006−069518号公報 特開2006−153216号公報 特開2004−100756号公報
本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、異音及び作動不良が防止されて信頼性の高い電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、一の実施形態に係る電動パワーステアリング装置は、外周面にねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸の前記ねじ溝に対応するねじ溝を内周面に形成するとともに、軸方向に貫通する転動体戻し通路を形成したナットと、前記ねじ軸のねじ溝と前記ナットのねじ溝とで形成される螺旋軌道及び前記転動体戻し通路に介装された多数の転動体と、前記螺旋軌道の一端から前記転動体を前記螺旋軌道の接線方向に掬い上げて前記転動体戻し通路へ導くとともに前記転動体戻し通路から前記螺旋軌道の他端へ案内する転動体循環軌道を形成する転動体循環部材とを有するボールねじ機構を備え、当該ボールねじ機構の前記ねじ軸を、ステアリング機構を構成するピニオン軸に螺合するラック軸に連結し、前記ナットを電動モータで回転駆動する電動パワーステアリング装置において、前記転動体循環軌道は、前記螺旋軌道上の掬い上げ点から、前記螺旋軌道の接線方向に伸ばした第1の直線と、前記転動体戻し通路の中心を通過する第2の直線と、これら第1及び第2の直線を繋ぐ曲線とで構成され、前記曲線の半径は、前記転動体の直径の50%以上90%以下に設定されている。
また、一の実施形態に係る発明は、請求項1記載の電動パワーステアリング装置において、BCD(Ball Circle Diameter)をφ25mm以上φ32mm以下とし、前記転動体の直径をφ3.968mm以上φ5.000mm以下とし、リードを6.0mm以上8.0mm以下とした。
以上説明したように、本発明に係る電動パワーステアリング装置によると、転動体循環軌道を、螺旋軌道上の掬い上げ点から螺旋軌道の接線方向に伸ばした第1の直線と、転動体戻し通路の中心を通過する第2の直線と、これら第1及び第2の直線を繋ぐ曲線とで構成し、曲線の半径を、転動体の直径の50%以上90%以下に設定したことで、ナットイナーシャが増加せず、ボールねじ機構に作用する端当て荷重が低減し、操舵フィーリングが向上するので、異音及び作動不良が防止されて信頼性が高い電動パワーステアリング装置を提供することができる。
本発明に係る操舵ギヤ機構を示す正面図である。 図1の操舵ギヤ機構に適用するラック軸を示す正面図である。 図1の電動パワーステアリング装置の要部断面図である。 ボールねじ機構を示す要部断面図である。 転動体循環部材を示す斜視図である。 電動パワーステアリング装置を構成するボールねじ機構のボールねじナットの内部を示す図である。 ボールねじナットに形成した転動体循環部材装着部を示す図である。 ボールねじナットの循環経路を概略的に示した図である。 球径比(曲線Rの半径とボールの直径との比)とイナーシャとの関係を示したグラフである。 転動体循環部材のタング部の背面形状を設定する図である。 複数種類の高分子材料の雰囲気温度と引張強さとの関係を示すグラフである。 複数種類の高分子材料のボールねじ耐久試験後の形状を示すものである。 複数種類の高分子材料のシャルピー衝撃強さを示すグラフである。 複数種類の高分子材料のボールねじ耐久試験後の形状を示すものである。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
(電動パワーステアリング装置)
図1は、本発明に係る操舵ギヤ機構1を示すものであり、図2は、ラック軸を示す正面図である。
図1の操舵ギヤ機構1は、ピニオン機構2とラック機構3とを備えている。
ピニオン機構2はピニオンハウジング4に回転自在に支持されたピニオン軸5を備えている。このピニオン軸5は、図示しないステアリングシャフト等を介してステアリングホイールに連結されている。ラック機構3はラックハウジング6に摺動可能に支持されたラック軸7を備えている。ピニオン軸5とラック軸7は噛合しており、ピニオン軸5に伝達される回転力がラック軸7の直動力に変換される。
ラック軸7は、図2に示すように、ピニオン軸5が噛合するラック部8と、このラック部8の右方に形成された螺旋状のゴシックアーク断面形状のボールねじ溝9aを有するボールねじ軸9とを備えている。
そして、ラック軸7の右端側にラックアシスト式の電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering、以下、ラックアシスト式EPSと称する)10が配置されている。このラックアシスト式EPS10は、ボールねじ機構11と、操舵補助用の電動モータ12と、ボールねじ機構11と電動モータ12との間を連結する減速機構13とで構成されている。このラックアシスト式EPSは、後述するボールねじ機構11のボールねじ軸9及び電動モータ12の軸線を平行に配置したオフセット式のラックアシスト式EPS10である。
電動モータ12は、図3に示すように、ラックハウジング6の軸受収容部16の半径方向外方に一体に形成されたモータ支持部18のピニオン機構2側に固定支持され、その回転軸12aがモータ支持部18に形成された貫通孔18aを通じて反対側に突出されている。この操舵補助用の電動モータ12は、図1に示すように、モータ制御装置30によって回転駆動される。このモータ制御装置30は、ステアリングホイール(図示せず)に入力される操舵トルクを検出するトルクセンサ30aと、車速を検出する車速センサ30bとを有し、トルクセンサ30aで検出した操舵トルク及び車速センサ30bで検出した車速に基づいて操舵補助トルク指令値を算出し、算出した操舵補助トルク指令値に基づいて操舵補助用の電動モータ12で必要な操舵補助トルクを発生させるモータ駆動電流を求め、このモータ駆動電流を操舵補助用の電動モータ12に出力する。
さらに、減速機構13は、図3に示すように、操舵補助用の電動モータ12の回転軸12aの先端に取付けられた小径プーリ19と、前述したボールねじナット15の半径方向外方に一体に形成された大径プーリ20と、小径プーリ19及び大径プーリ20との間に巻装されたタイミングベルト21とで構成されている。
そして、小径プーリ19と、大径プーリ20、及びボールねじ溝9aを覆うようにカバー22が軸受収容部16及びモータ支持部18に例えばボルト締め等により固定されている。
ボールねじ機構11は、図3に示すように、ラック軸7のボールねじ軸9のボールねじ溝9aに転動体14を介して螺合するボールねじナット15を備えている。このボールねじナット15は、ラックハウジング6の右端部に形成された軸受収容部16に収容された転がり軸受17によって回転自在に支持されている。この転がり軸受17は、内輪17aがボールねじナット15と一体に形成された内輪17aと、この内輪17aにボール17bを介して連結され軸受収容部16に固定支持された外輪17cとで構成されている。
そして、ラックアシスト式EPS10は、操舵補助用の電動モータ12の回転軸12aを回転駆動することにより、小径プーリ19及び大径プーリ20がタイミングベルト21によってそれぞれ回転駆動され、これに応じてボールねじナット15が回転駆動されるため、ボールねじ軸9すなわちラック軸7が直線駆動される。そして、ラック軸7のラック部8の左端部及びボールねじ軸9の右端部がそれぞれタイロッド23を介して図示しない転舵輪に連結されている。
(ボールねじナット及び転動体循環部材)
図4に示すように、ボールねじ機構11のボールねじナット15の内周面には、転動体14が転動するゴシックアーク断面形状のボールねじ溝15aが螺旋状に形成されている。また、ボールねじナット15の軸方向の左右両端部には、一対の転動体循環部材33を装着するための一対の転動体循環部31A,31Bが形成されている。さらに、ボールねじナット15の軸方向の左右両端部には、ボールねじナット15の内周面のボールねじ溝15aと外周面との間を軸方向に通って左右両端部の一対の転動体循環部材装着部31A,31Bの間を連通する転動体戻し通路32が形成されている。
右端側の転動体循環部材装着部31Aは、図6及び図7(b)に示すように、ボールねじナット15の軸方向の一方の端面に開口した切欠凹部であり、平坦面31aと、湾曲面31b,31cと、半円筒面31dと、上面31eとを備えた部材である。
平坦面31aは、ボールねじナット15の軸方向の一方の端面のボールねじ溝15aの溝底部にほぼ連続して接線方向に転動体戻し通路32の下面まで延長し、ボールねじナット15の中心軸に対して平行に延在している。また、湾曲面31b,31cは、平坦面31aの前端側(図6の手前側、図7(b)の左側)に連続してボールねじ溝15aの両側に湾曲延長している。また、半円筒面31dは、平坦面31aの後端側(図6の奥側、図7(b)の右側)で連続し、転動体戻し通路32の直径より大きい直径で形成されている。さらに、上面31eは、半円筒面31dの上端(図6の上側)からボールねじ溝15aの両側の内周面まで平坦面31aと平行に延長して形成されている。そして、半円筒面31dの上面31eに近い位置に半円筒面31dより深さの浅い抜け止め凹部31fがボールねじ溝15aに沿う方向に形成されている。
また、左端側の転動体循環部材装着部31Bは、図6に示すように、ボールねじナット15の軸方向の他方の端面に開口した切欠凹部であり、転動体循環部材装着部31Aと同様に平坦面31a、湾曲面31b,31c、半円筒面31d及び上面31eを備えている。そして、左端側から見た転動体循環部材装着部31Bの各部位(平坦面31a、湾曲面31b,31c、半円筒面31d及び上面31e)の配置位置は、右端側から見た転動体循環部材装着部31Aの各部位の配置位置と同一に形成されている。
そして、これらボールねじナット15の軸方向の左右両端部に設けた一対の転動体循環部材装着部31A,31Bに転動体循環部材33が装着され、図5で示した転動体循環部材33のこのタング部33eの先端位置が、転動体循環部材装着部31A,31Bの平坦面31aと湾曲面31b及び31cとの境界位置より半円筒面31d側となるように設定されている。このため、タング部33eで掬い取った転動体14はボールねじ溝15aから離脱してボールねじ溝15aの底面より外周側となる転動体案内側板部33a及び33b間の平坦面31aに接触することになり、タング部33eが転動体14を掬い上げることができる。
転動体循環部材33は、図5(a)、(b)に示すように、一対の転動体案内側板部33a,33bと、これら転動体案内側板部33a及び33bを連結する連結板部33cとを備えている。
一対の転動体案内側板部33a,33bの側面形状(図5(a)の上方から見た形状)は、ボールねじナット15の軸方向の両端面に切欠凹部として形成した一対の転動体循環部材装着部31A,31Bの形状と略同一に形成されている。ここで、転動体案内側板部33aには、一対の転動体循環部材装着部31A,31Bの抜け止め凹部31fと同一形状の抜け止め凸部33dが形成されている。
連結板部33cは、図5(a)の右側から見て、一対の転動体案内側板部33a,33bの中間部から左側を連結し、転動体循環部材33を門形に形成している。
また、連結板部33cには、ボールねじ軸9のボールねじ溝9a内に非接触状態で挿入されて転動体14を接線方向に掬い取るタング部33eが形成されている。
そして、タング部33eと転動体案内側板部33a及び33bとで囲まれて転動体戻し通路32に転動体14を案内する平面から見て略逆L字状に湾曲し、転動体戻し通路32と対向する位置で開口する転動体循環路33fが形成されている。
次に、転動体循環部材33のより具体的な形状の決定、及び材料の決定のために必要な条件について説明する。
(ラックアシスト式EPSのボールねじ機構の諸元)
ラックアシスト式EPS10のボールねじ機構11の諸元(ボールねじの耐久寿命、ラック軸外径、アシストモータからラック軸までの減速比といった設計要件)について説明する。
標準的な乗用車では、ラック軸7の曲げ強度及びラック&ピニオンギヤの噛合い強度の確保の観点から、ラック軸7の外径はφ25mm以上φ32mm以下であり、ボールねじ機構の転動体14のBCD(Ball Circle Diameter)もラック軸7の外径と略同様のφ25mm以上φ32mm以下となる。
転動体14は、φ3.968mm以上φ5.000mm以下のものを使用する。転動体14の直径をφ3.968mmよりも小さくし過ぎると、定格荷重が低下する。またこれと同時に、循環経路内の球数が増え、転動体14同士の競り合いが生じる。この結果、耐久性が低下するとともに、作動不良などが生じ易くなる。反対に転動体14の直径がφ5.000mmよりも大きくなると、ボールねじ機構11の外寸が大きくことに加え、リードも大きくする必要があるため、後述する減速比の確保が困難になる。
リードは6.0mm以上8.0mm以下が一般的である。現在市場に流通する一般的な電動パワーステアリングのアシストモータからラック軸までの減速比は、概ね2.3mm/rev(モータ1回転当りのラックの移動量)以上3.0mm/rev以下である。これに対し、本実施形態のベルト減速機を用いたラックアシスト式EPSで同等の減速比を確保するためには、リードを6.0mm以上8.0mm以下とする。
なお、リードを6.0mm以上8.0mm以下とする理由は、ベルト減速機の減速比が概ね3.0以下の設計となるためであるが、その背景にはベルト減速機の従動プーリ外径、駆動プーリ外径の制約がある。従動プーリを大きくすると、ラックアシスト式EPSの外寸も大きくなり、車両搭載性が低下する。反対に、駆動プーリを小さくすると、噛合い歯数が減少して耐久性が低下するといった弊害が存在するため、ラックアシスト式EPS10のベルト減速比としては、3.0以上の設計とするのが困難となる。
次に、転動体循環部材33の形状、材料を決定するための条件について説明する。
(転動体と転動体循環部材との衝突が起こる条件)
先ず、ドライバーが操舵をした際に、上述した諸元のボールねじ機構11において、転動体14と転動体循環部材33との衝突が起こる条件について説明する。
説明に当り、具体的なボールねじ機構11の諸元を以下の通り例示する。
<ボールねじ機構の諸元>
転動体14のBCD : 30.0mm
転動体14の直径 : φ4.7625mm
リード : 7.0
接触角 : 45deg
すきま : 無し
<その他の条件>
ラック&ピニオン比ストローク 50.0mm/rev(ハンドル1回転当りのラック移動量)
ラックストローク 75.0mm(中立からストロークエンドまで)
耐久サイクル数 100,000cycle
今、ハンドル回転速度360deg/secで操舵した場合について考える。ラック&ピニオン比ストロークが50.0mm/revであり、ハンドルを360deg/secで操舵すると、ラック軸7は50.0mm/secで直動し、ボールねじ機構11のボールねじナット15は7.14rev/sec(約430rpm)で回転する(ラック直動速度50mm/sec÷ボールねじのリード7.0mm/rev)。
上記諸元で、ボールねじナット15が430rpmで回転すると、転動体14の公転速度は、おおよそ240rpmとなる。この時、ボールねじナット15の回転方向と転動体14の公転方向は同一方向であり、ボールねじナット15と転動体14の相対速度は約190rpmである。これを転動体14のBCDにおける周速に換算すると約300mm/secであり、転動体14はこの速度で転動体循環部材33に導かれることとなる。なお、電動パワーステアリングの耐久試験条件としては、転舵速度360deg/sec程度が一般的であり、転動体循環部材33の疲労強度を考える際には、この条件で計算するのが適当である。
また、疲労強度を考える際の繰返し数については、ラックストロークと耐久サイクル数から求まる。耐久サイクル当りのラック移動量300mm(75mm×4)、10万サイクルでの総移動量30kmから、ボールねじナット15の総回転数は4.3×10revとなる。なお、ボールねじナット15の1回転当りの衝突回数は、転動体14公転とボールねじナット15の相対回転から、約8.4回と求まる。
転動体循環部材33が転動体14を掬い上げるのは一方の回転方向のみであり、逆転時は転動体循環部材33からボールねじ溝15aに転動体14を導くことになる。そのため、転動体14と転動体循環部材33の衝突が発生するのは、前述のボールねじナット15の総回転数は4.3×10revの内の半分であり、衝突回数は約1.8×10回であることが求まる。
なお、乗用車の最も早い操舵条件は、危険回避などの際の急ハンドル操作で、800deg/sec程度が一般的であり、この条件で転動体循環部材33が破損しないことも求められる。
以上、代表的なボールねじ機構11の諸元での計算概要を例示したが、転動体14のBCDが大きくなると、転動体14の公転周速が速くなり、衝突荷重が増加する。また、転動体14の直径が大きくなると重量が増え、衝突荷重が増加する。リードが小さくなると、ボールねじナット15の回転速度が速くなり総回転数も増えるため、衝突荷重、衝突回数が増加する。加えて、接触角、ラジアルすきまの変化によっても転動体14の公転速度が変化する。
そのため、本実施形態のラックアシスト式EPS10のボールねじ機構11で使用される転動体循環部材33の材料の決定に際しては、衝突エネルギーが最も大きくなる条件を前記範囲の中から選定した。
(転動体循環部材の具体的な形状)
次に、本実施形態のボールねじ機構11で使用される転動体循環部材33の具体的な形状について説明する。
転動体循環部材33の循環軌道形状は、図8(a)、(b)に示すように、ボールねじ機構11の螺旋軌道P上の掬い上げ点をQとすると、循環軌道は、掬い上げ点Qから螺旋軌道Pの接線方向に伸ばした直線Sと、ボールねじナット15に設けた転動体戻し通路32の中心を通過する直線Tと、これら直線S,Tを繋ぐ曲線Rとで構成される。この循環軌道に沿って転動体14を滑らかに循環させるため、転動体循環部材33には、転動体14の直径よりも溝幅が広い溝Uが設けられている。
溝Uの溝幅は、転動体14の直径の115%以下が好ましい。より好ましくは110%以下である。これは、溝Uの溝幅が115%を超えると、転動体14同士が競り合い、滑らかに循環しないためである。
また、直線Tの位置は、ボールねじナット15のボールねじ溝15aとの位置関係および曲線Rの寸法によって設定される。
また、転動体循環部材33が装着される転動体循環部材装着部31A(31B)の形状は、掬い上げ点Qと、ボールねじナット15に設けた転動体戻し通路32の開口部の中心との間の距離L(図7(b)参照)は、ボールねじ溝15aの溝底と干渉しない範囲とする必要がある。
また、図7(a)に示している、転動体循環部材33の転動体案内側板部33bが当接する転動体循環部材装着部31Aの当接面Yは、隣接するボールねじ溝15aと所定のクリアランスCLを必要とする。転動体循環部材33の前述した、掬い上げ点Qから螺旋接線方向に伸ばした直線Sと、ボールねじナット15に設けた転動体戻し通路32の中心を通過する直線Tとを繋ぐ曲線Rの終端Reは、当接面Yよりも下側に位置させる。
このような制約の範囲内で曲線Rの寸法を大きくすると、ボールねじナット15に設けた転動体戻し通路32の開口部の位置は、必然的にボールねじナット15の外周側に位置するため(図7(b)で破線の円で記載した位置)、ボールねじナット15の外径が大きくなってボールねじナット15のイナーシャが増大する。
また、図7(b)に示している、転動体循環部材装着部31Aの径方向の装着幅Vは、転動体循環部材33の強度によって変化する。そして、前述したクリアランスCLを確保するためには、装着幅Vは小さいほうが有利であるが、装着幅Vを小さくすると転動体循環部材33のタング背面が薄肉になって強度が低下するため、装着幅Vは、転動体14の直径の150%以上200%以下とする。
図9は、ボールねじ機構11の所定の諸元(転動体14のBCD:30.0mm、転動体14の直径:φ4.7625mm、リード:7.0mm)で、図8で示した曲線Rの寸法(球径比:曲線Rの半径と転動体14の直径との比)を変化させた際の、ボールねじナット15のイナーシャと、イナーシャをラック軸7の質量に換算した結果を示した一例である。
ボールねじの巻き数によってボールねじナット15の軸方向寸法が異なるため、絶対値は多少前後するものの、曲線Rの寸法とボールねじナット15の外径の相関は一定であり、この例示から、曲線Rの寸法が、球径比90%以上からナットイナーシャが急激に増加することがわかる。
ここで、ボールねじナット15の外径を具体的に説明する。BCD:30.0mmに対して転動体14の直径:φ4.7625mmであるから、螺旋軌道を転走する転動体14の最外径はφ34.7625mmである。ボールねじナット15のボールねじ溝15aの溝直角形状が、接触角45°、溝曲率半径2.7mmのゴシック溝とすると、ボールねじナット15の溝底径は略φ35mmとなる。ボールねじナット15に設ける転動体戻し通路32の穴径を、前述の溝Uの溝幅と同様の考え方でφ5.2mmとし、転動体戻し通路32の穴径と、ボールねじ溝15aとの最小肉厚を1mm程度確保すると、転動体戻し通路32のボールねじナット15外径は、最低でもφ50mm必要となる。
また、本実施形態のように、ボールねじナット15を支持する転がり軸受17の内輪17aをボールねじナット15の外径に一体成形する場合や、プーリーなどの動力伝達構造をボールねじナット15の外径側に成形する場合、ボールねじナット15の外径は更に大きくなることとなる。なお、例えば特開2004−92855号公報、或いは特開2006−125544号公報のように、曲線Rの曲率半径を転動体14の直径以上として転動体14を円滑に移動させて作動性を有利とする先行技術もあるが、図9のようにイナーシャが大きくなる。EPS用のボールねじの場合、ボールねじ機構11の諸元及び使用環境を前述のように限定し、それに適した循環経路の設計とすることで、作動性を損なうことなく、ボールねじを小型化してイナーシャを小とすることが可能となる。
したがって、本実施形態は、曲線Rの半径は、転動体14の直径の50〜90%に設定されることが好ましい。
次に、ボールねじ軸9との干渉を回避する転動体循環部材33の外形状について、図10を参照して説明する。
転動体循環部材33の外形状は、基本的にはボールねじ軸9のボールねじ溝9aの溝直角断面形状に略倣った形状となる。
転動体循環部材33の外周部Rn(転動体案内側板部33a,33bのボールねじ軸9と対向する部分)は、ボールねじナット15の内径寸法に一致させて、ボールねじ軸9のランド部に対して所定のクリアランスを確保して対向するように形成されている。
また、転動体循環部材33のタング部33eの輪郭のうち、ボールねじ溝9aに沿った方向の断面視形状をRs、ボールねじ溝9aに直角な断面視形状をRtとすると、Rs,Rtは、転動体14のBCDに沿って形成されており、タング部33eの背面とボールねじ軸9のボールねじ溝9aの底部とのクリアランスが転動体14の直径の2%以上10%以下にすることが好ましい。
これは、タング部33eの背面とボールねじ溝9aの底部とのクリアランスが2%を下回ると、タング部33eの先端の肉厚が薄くなり、転動体循環部材33が破損しやすくなるためである。また、タング部33eの背面とボールねじ溝9aの底部とのクリアランスが10%を上回ると、掬い上げ点がずれて転動体14の循環が滑らかに行われないためである。
なお、Rn及びRtは連結部Rfで滑らかに接続されており、連結部Rfはボールねじ軸9と干渉しない範囲で大きく設定するのが好ましい。また、図10では、背面部Rtの形状を単一円弧としているが、ボールねじ溝9aに倣ったゴシックなどとしてもよい。
転動体14が転動体循環部材33に衝突すると、図5及び図8で示すように、転動体循環部材33のタング部33eの先端(図5(a)の符号Aで示す丸印の領域)と、転動体循環部材33のタング部33eの付け根(図5(a),(b)の符号Bで示す丸印の領域)で衝突による応力が高くなり、転動体14の循環方向が変わる転動体循環路33fを臨む部位(図5(b)の符号Cで示す丸印の領域)にも負荷がかかる。
(転動体循環部材の材料)
次に、本実施形態のボールねじ機構11で使用される転動体循環部材33の具体的な材料について説明する。
本実施形態の転動体循環部材33は、高温(125℃)の雰囲気温度において30MPa以上の引張強度を有する高分子材料で形成されている。この30MPa以上の引張強度という値は、前述した条件の下、転動体14と転動体循環部材33の衝突エネルギーが最も大きくなる場合について、FEM構造解析を行った結果、得られた値である。
また、本実施形態の転動体循環部材33は、3.3kJ/m以上のシャルピー衝撃強さを有する高分子材料で形成されている。この3.3kJ/m以上のシャルピー衝撃強さという値も、前述した条件の下、転動体14と転動体循環部材33の衝突エネルギーが最も大きくなる場合について、FEM構造解析を行った結果、得られた値である。
また、本実施形態の転動体循環部材33は、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維を含まない高分子材料で形成されている。転動体循環部材を繊維強化の高分子材料とすると、転動体14との連続的な衝突により内部に充填されている繊維が露出して転動体14の損傷、或いは脱落した繊維がボールねじ機構11を循環して異音を発生するおそれがあるが、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維を含まない本実施形態の転動体循環部材33は、ボールねじ機構11の異音及び作動不良の防止を図ることができる。
また、強化繊維を含まず、高温(125℃)の雰囲気において30MPa以上の引張強さであり、シャルピー衝撃強さが3.3kJ/m以上の特性を有する高分子材料は、熱安定剤を加えると耐熱性を向上させることができる。
熱安定剤としては、例えば、銅系熱安定剤、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤、又はアミン系熱安定剤のいずれかの単独物、またはこれらの混合物が挙げられる。銅系熱安定剤としては、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、硫酸銅、燐酸銅等の無機物、又は酢酸銅、ステアリン酸銅、ミリスチン酸銅、ナフテン酸銅、パルミチン酸銅等の有機酸塩、並びにこれらの2種以上の混合物があり、フェノール系熱安定剤としては、N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−ジメチルベンジル)イソシアネレート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、又は2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールがあり、リン系熱安定剤としては、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリヂシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル系化合物があり、硫黄系熱安定剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル−3、3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3、3−チオジプロピオネート、又はジラウリルチオジプロピオネートがあり、アミン系熱安定剤としては、4,4−ジオクチルジフェニルアミン等のアルキル置換されたジフェニルアミン、又はN,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等の置換基を有するp−フェニレンジアミンを例示することができる。
さらに、本発明の目的を損なわない範囲内で、各種添加剤を配合しても良い。例えば、黒鉛、六方晶窒化ホウ素、フッ素雲母、四フッ化エチレン樹脂粉末、二硫化タングステン、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤、無機粉末、有機粉末、潤滑油、可塑剤、ゴム、樹脂、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料を例示することができる。
そして、本実施形態の転動体循環部材33を形成する際に用いられる樹脂組成物を得るための方法は特に限定されないが、母材である樹脂と添加剤を予めタンブラー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー等の予備混合機を用いて混ぜ合わせてから、短軸または二軸押出し機、ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ等の従来からの公知の樹脂用混練り装置を用いて均一に混練りする、または、母材である原料樹脂と添加剤をそれぞれ別々に樹脂用混練り装置により混練りすることが可能である。
その混練り条件は、通常は母材である原料樹脂の軟化点または融点以上の温度で且つ、原料樹脂や各種添加剤が劣化を起こさない温度以下である。また、上記樹脂組成物を循環部品とするための製造方法は、樹脂組成物を金型の中で加圧しながら加熱すれば良く、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等の公知の樹脂成形方法により製造することができる。
(作用効果)
次に、本実施形態のボールねじ機構11を備えたラックアシスト式EPS10の作用効果について、以下に述べる。
図8(a),(b)で示したように、転動体循環部材33の循環軌道は、螺旋軌道P上の掬い上げ点Qから螺旋軌道Pの接線方向に伸ばした直線Sと、ボールねじナット15に設けた転動体戻し通路32の中心を通過する直線Tと、これら直線S,Tを繋ぐ曲線Rとで構成されているとともに、曲線Rの半径は、転動体14の直径の50%以上90%以下に設定されている。このように、曲線Rの半径を、転動体14の直径の50%以上90%以下に設定したことで、図9で示したようにナットイナーシャが増加せず、ボールねじ機構11に作用する端当て荷重が低減し、操舵フィーリングが向上するので、このボールねじ機構11を備えたラックアシスト式EPS10は、異音及び作動不良が防止されて信頼性が高い装置を提供することができる。すなわち、ストロークエンドに突き当てる、或いは、縁石に当たるなどしてボールねじナット15の回転が瞬間的に停止すると、ボールねじナット15の慣性に応じてボールねじ機構11には衝撃荷重(端当て荷重)が発生する。また、一般的に操舵系の慣性が大きければ大きいほど応答性が劣るため、操舵フィーリングも悪化する。ところが、本実施形態のようにナットイナーシャが増加しないと、ボールねじナット15の外径が大きくなりがちなエンドデフレクタ式のボールねじ機構11であっても、端当て荷重が低減し、操舵フィーリングが向上するのである。
また、本実施形態では、ボールねじ機構11の転動体14のBCDをφ25mm以上φ32mm以下としたことで、ラック軸7の曲げ強度及びラック&ピニオンギヤの噛合い強度を確保することができる。また、ボールねじ機構11の転動体14をφ3.968mm以上φ5.000mm以下としたことで、転動体14の耐久性を向上させ、減速比を確保することができる。さらに、ボールねじ機構11のリードを6.0mm以上8.0mm以下としたことで、現在市場に流通する一般的な電動パワーステアリングのアシストモータからラック軸までの減速比を確保することができる。
(試験結果)
次に、図11から図14を用いて、本発明を更に具体的に説明する。
図11は一般的な高分子材料(非繊維強化)の引張試験結果であり、図12はその中から(A)PA46,(B)PPS,(C)POM,(D)POMで転動体循環部材33を形成し、(A)125℃,(B)125℃,(C)80℃,(D)125℃の雰囲気中で耐久試験を行った結果である。なお、転動体循環部材33の耐久試験は、転動体循環部材33を用いたボールねじ機構11のストローキング耐久を観るための試験を指し、その試験条件は前述のような一般的に電動パワーステアリング装置に要求されるものとした。
また、図13は、同材料のシャルピー衝撃試験結果であり、図14は図12と同様の耐久試験結果を示したものである。図14において、(A)POM,(B)PA46,(C)PPSで転動体循環部材33を成形し、125℃の雰囲気中で試験を行った。なお、図14に示す転動体循環部材33は、ボールねじ軸9、ボールねじナット15、転動体循環部材33といった各部材間のミスアライメント、寸法ばらつきにより、タング部33eの背面がボールねじ軸9のボールねじ溝9aと干渉した状態で運転されたものである。
なお、引張試験、シャルピー衝撃試験の試験条件及び、試験材料の詳細は以下の通りである。
[試験材料]
POM(ポリアセタール)(商品名「ジュラコン M90-44」 ポリプラスチックス(株))
PBT(ポリブチレンテレフタレート)(商品名「ジュラネックス 2002」 ポリプラスチックス(株))
PA6(ポリアミド6)(商品名「アミラン CM1017」 東レ(株))
PA46(ポリアミド46)(商品名「Stanyl TW341」 DSMジャパンエンジニアリングプラスチックス(株))
PA66(ポリアミド66)(商品名「アミラン CM3001-N」 東レ(株))
PPS(ポリフェニレンサルファイド)(商品名「フォートロン 0220A9 」 ポリプラスチックス(株))
[試験材料の成形条件]
POM(樹脂溶融温度:190〜210℃、金型温度:60〜80℃)
PBT(樹脂溶融温度:250〜270℃、金型温度:40〜80℃)
PA6(樹脂溶融温度:245〜280℃、金型温度:80℃)
PA46(樹脂溶融温度:280〜310℃、金型温度:80℃)
PA66(樹脂溶融温度:270〜295℃、金型温度:80℃)
PPS(樹脂溶融温度:290〜310℃、金型温度:150℃)
また、引張試験及びシャルピー衝撃試験は以下に示す条件で行った。
[引張試験の条件]
試験方法はISO0527−1,2に準ずる。
試験片の形状(mm):全長×全幅 150×20
試験部:厚さ×幅×長さ(mm) 4×10×80
試験速度:50mm/min
試験温度(℃):−40、23、80、125
[シャルピー衝撃試験(ノッチ付き)の条件]
試験方法はISO179/1eAに準ずる。
試験片の形状(mm):厚さ×幅×長さ 4×10×80、ノッチ45℃:2mm深さ
ハンマー速度:2.9m/sec
図11の引張試験の結果によると、−40℃から80℃の雰囲気温度においては、例示したすべての試験材料で本発明に係る引張強さ30MPa以上という条件を満足する。一方、雰囲気125℃では、POM,PBT,PA6で引張強さが30MPaを下回り、本発明に係る上記条件を満足しない。
図12の転動体循環部材33の耐久試験では、材料の引張強さが30MPaを上回る条件(A)PA46(125℃)、(B)PPS(125℃)、(C)POM(80℃)では、転動体循環部材33に損傷は認められない。一方、材料の引張強さが30MPaを下回る条件(D)POM(125℃)では、転動体循環部材33に損傷が見られ、また、その損傷箇所も、タング部33eの先端部及び付け根部が顕著である。これは、前述のFEM構造解析結果と一致する。
以上のことから、ラックアシスト式EPS10に用いるボールねじ機構11における、転動体循環部材33は、引張強さ30MPa以上の材料で成形される必要があることが分かる。
また、図11から明らかなように、高分子材料の引張強さは雰囲気温度の上昇に伴い低下するため、ラックアシスト式EPS10の使用環境温度である125℃で、引張強さを満足する必要がある。
なお、低温(−40℃)から高温(125℃)までの雰囲気温度において引張強さが30MPa以上となる高分子材料は、前述したPA46,PA66,PPSの他に、PA12、PA610、PA612、半芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、パーフロロアルキルビニールエーテル(PFA)などがある。
図13はシャルピー衝撃試験の結果であり、各衝撃強さは図13の付表の通りである。
図14の転動体循環部材33の耐久試験は、前述のように転動体循環部材33のタング部33eの背面とボールねじ軸9のゴシック溝を接触した状態で実施される。その結果、衝撃強さが本発明の好ましい範囲に係る3.3kJ/m以上の(A)POM(125℃),(B)PA46(125℃)では、タング部33eの背面の摩耗が認められた。一方、衝撃強さが3.3kJ/mを下回る(C)PPS(125℃)では、タング部33eの背面に欠けが認められた。非繊維強化の高分子材料であれば、この程度の欠けであれば機能を大きく損なうことはないが、このような欠けは避けることが好ましい。
以上のことから、ラックアシスト式EPS10に用いるボールねじ機構11における、転動体循環部材33は、衝撃強さが3.3kJ/m以上の材料で成形される必要があることがわかる。
なお、シャルピー衝撃強さが3.3kJ/m以上となる高分子材料は、POM,PA6,PA46,PA66の他に、半芳香族ポリアミドなどがある。
なお、本発明のねじ軸がボールねじ軸9に対応し、本発明のねじ軸の外周面に形成したねじ溝がボールねじ溝9aに対応し、本発明のナットがボールねじナット15に対応し、ナットの内周面に形成したねじ溝がボールねじ溝15aに対応し、本発明の転動体が転動体14に対応、本発明の第1の直線が直線Sに対応し、本発明の第2の直線が直線Tに対応している。
本発明の材料は、本実施形態のようなエンドデフレクタ式ボールねじ機構11だけでなく、エンドキャップ式、チューブ式のようなタング部を備える転動体循環部材にも適用できる。ただし、ボールねじナットの位相によらず、十分なモーメント剛性を確保できる構成として、電動パワーステアリング装置に使用する場合には、転動体循環部材をエンドデフレクタとすることが好ましい。
1…操舵ギヤ機構、2…ピニオン機構、3…ラック機構、4…ピニオンハウジング、5…ピニオン軸、6…ラックハウジング、7…ラック軸、8…ラック部、9…ボールねじ軸、9a…ボールねじ溝、10…電動パワーステアリング装置、11…ボールねじ機構、12…操舵補助用の電動モータ、12a…回転軸、13…減速機構、14…転動体、15…ボールねじナット、15a…ボールねじ溝、16…軸受収容部、17…転がり軸受、17a…内輪、17b…ボール、17c…外輪、18…モータ支持部、18a…貫通孔、19…小径プーリ、20…大径プーリ、21…タイミングベルト、22…カバー、23…タイロッド、30…モータ制御装置、30a…トルクセンサ、30b…車速センサ、31A…転動体循環部材装着部、31B…転動体循環部材装着部、31a…平坦面、31b,31c…湾曲面、31d…半円筒面、31e…上面、31f…抜け止め凹部、32…転動体戻し通路、33…転動体循環部材、33a,33b…転動体案内側板部、33c…連結板部、33d…抜け止め凸部、33e…タング部、33f…転動体循環路

Claims (2)

  1. 外周面にねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸の前記ねじ溝に対応するねじ溝を内周面に形成するとともに、軸方向に貫通する転動体戻し通路を形成したナットと、前記ねじ軸のねじ溝と前記ナットのねじ溝とで形成される螺旋軌道及び前記転動体戻し通路に介装された多数の転動体と、前記螺旋軌道の一端から前記転動体を前記螺旋軌道の接線方向に掬い上げて前記転動体戻し通路へ導くとともに前記転動体戻し通路から前記螺旋軌道の他端へ案内する転動体循環軌道を形成する転動体循環部材とを有するボールねじ機構を備え、当該ボールねじ機構の前記ねじ軸を、ステアリング機構を構成するピニオン軸に螺合するラック軸に連結し、前記ナットを電動モータで回転駆動する電動パワーステアリング装置において、
    前記転動体循環軌道は、
    前記螺旋軌道上の掬い上げ点から、前記螺旋軌道の接線方向に伸ばした第1の直線と、
    前記転動体戻し通路の中心を通過する第2の直線と、
    これら第1及び第2の直線を繋ぐ曲線とで構成され、
    前記曲線の半径は、前記転動体の直径の50%以上90%以下に設定されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. BCD(Ball Circle Diameter)をφ25mm以上φ32mm以下とし、前記転動体の直径をφ3.968mm以上φ5.000mm以下とし、リードを6.0mm以上8.0mm以下としたことを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
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