JP2014069975A - 射出成形用組成物とそれを用いた焼結体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】タービン翼用のセラミックス中子のような複雑な形状の射出成形体や焼結体の製造を可能にする無機粉末とバインダを含んでなる射出成形用組成物、これを用いた焼結体の製造方法を提供する。
【解決手段】無機粉末とバインダを含み、バインダは、変性ポリオレフィンとポリオレフィンの合計を29.5〜79.5質量%、パラフィンを20〜70質量%、熱可塑性エラストマーを0.5〜10質量%含み、かつ、前記変性ポリオレフィンは5質量%以上(前記ポリオレフィンが0質量%の場合を含む)含んでなる射出成形用組成物。無機粉末はセラミック粉末であってよい。無機粉末50〜80体積%とバインダ20〜50体積%の配合比が好ましい。また、融点10℃以下の炭化水素系溶剤を用いて前記射出成形用組成物からなる射出成形体からパラフィンを除去する脱脂工程を含む焼結体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機粉末とバインダを含んでなる射出成形用組成物に関し、また、それを用いた焼結体の製造方法に関する。
近年、セラミック粉末や金属粉末などからなる無機粉末焼結体製品には、高性能化や小型化などのためにより複雑な形状が要求されるようになった。例えば、セラミック焼結体製品であるタービン翼の鋳造に使用するセラミック中子を図1に示す。このセラミック中子には、タービン翼の冷却効率を向上させるために、非常に複雑な形状が要求されている。このような非常に複雑な形状の無機粉末焼結体製品を得るために、無機原料粉末に熱可塑性ポリマーのようなバインダを混練して可塑性を付与し、その混練物を射出成形して射出成形体を得て、その射出成形体を脱脂し焼成して無機粉末焼結体製品を得る製造方法が実施されている。
上述した射出成形法は、プレス成形法や押出成形法あるいは泥漿鋳込み法では難しいとされる非常に複雑な形状を有する無機粉末を含んでなる射出成形体を、高い寸法精度で製造することができる。しかし、たとえ射出成形法であっても、射出成形や脱脂あるいは焼成を実施する際に、射出成形体や脱脂後の成形体(脱脂体)あるいは焼結体にクラックや変形などの欠陥を生じる不具合があった。
このような問題に対し、例えば特許文献1には、射出成形時にクラックなどの欠陥の発生を抑制するとして、バインダを、ノルマルパラフィンと、イソパラフィン(バインダあたり10〜50体積%)と、熱可塑性プラスチックであるポリプロピレン(バインダあたり20〜50体積%)とで構成した射出成形用組成物が提案され、金型からの離型が容易でない場合はフタル酸エステルの添加が提案されている。そして、射出成形体に残存すると脱脂や焼成の過程でクラックになりやすいウエルドラインを、イソパラフィンの優れた室温靱性により抑制できる旨が記載されている。なお、融点が40〜100℃程度であるパラフィン類は、流動性と脱脂性に寄与することが知られている。
また、例えば特許文献2には、短時間の脱脂であっても脱脂体を焼成して形成した焼結体の変形などの欠陥の発生を抑制するとして、バインダを、パラフィン(45〜65体積%)と、ポリアセタール(0.5〜4.5体積%)と、変性ポリオレフィン(0.5〜4.5体積%)と、ポリスチレン(5〜10体積%)と、ポリエチレン(20〜50体積%)と、フタル酸エステル(0.5〜10体積%)とで構成した射出成形用組成物が提案されている。体積%はバインダ全体積あたりである。なお、ポリアセタール、ポリスチレン、並びにポリエチレンは熱可塑性プラスチックである。また、フタル酸エステルは、ポリスチレンやポリエチレンを軟化するための可塑剤として知られている。
特開2001−234203号公報 特開2006−328435号公報
上述した特許文献1におけるバインダは、パラフィン類(ノルマルパラフィンおよびイソパラフィン)と熱可塑性プラスチック(ポリプロピレン)のみで構成されるため、金属粉末またはセラミック粉末と、熱可塑性プラスチックとの接着性が不十分である。このため、前記粉末に対する熱可塑性プラスチックの架橋状態が不安定になりやすい。したがって、図1に示すセラミックス中子と同程度に複雑な形状を有する場合は、特にパラフィン類が溶融して除去される脱脂過程において成形体の保形が難しくなる。また、たとえフタル酸エステルを加えて熱可塑性プラスチックを軟化したとしても健全な成形体が得られなかったことが、明細書の比較例4に記載されている。
また、上述した特許文献2におけるバインダは、4種類以上の熱分解挙動が異なる成分を含む。例えば融点を示すと、パラフィンが40〜100℃程度、ポリスチレンが100℃程度、ポリエチレンが130℃程度、ポリアセタールが180℃程度である。このため、脱脂工程において成形体を加熱する場合は、加熱中の成形体に欠陥が発生しないよう4種類以上の異なる熱分解挙動を対象とし、さらに成形体の形状によっては成形体内部の加熱状態が異なることを考慮し、適正な温度制御を行う必要がある。しかし、このような温度制御は、ヒートパターンの複雑化により欠陥が発生しやすくなるばかりでなく、ヒートサイクルが長時間化して生産性が低下するなどの問題があった。
本発明の目的は、図1に示すセラミック中子のように複雑な形状の成形体や焼結体の製造を可能にする、無機粉末とバインダを含んでなる射出成形用組成物を提供し、この射出成形用組成物を用いた焼結体の製造方法を提供することである。
本発明者は、従来技術における射出成形用組成物を詳細に研究し、生産性向上を可能とし、上述した幾多の欠陥の発生を抑制して健全な成形体や脱脂体や焼結体を得るためには、無機粉末とともに射出成形用組成物を構成するバインダに用いる物質の種類や配合比の適正化こそが重要になることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、無機粉末とバインダを含んでなる射出成形用組成物であって、前記バインダは、変性ポリオレフィンとポリオレフィンの合計を29.5〜79.5質量%、パラフィンを20〜70質量%、熱可塑性エラストマーを0.5〜10質量%含み、かつ、前記変性ポリオレフィンは5質量%以上(前記ポリオレフィンが0質量%の場合を含む)含んでなることを特徴とする。
本発明に係る射出成形用組成物は、前記無機粉末を50〜80体積%、前記バインダを20〜50体積%含んでなることが好ましい。また、前記無機粉末にはセラミック粉末が適用できる。
また、本発明者は、従来技術における射出成形用組成物を用いた焼結体の製造方法を詳細に研究し、射出成形体から脱脂する工程が特に重要であることを見出し、本発明の製造方法に到達した。
すなわち本発明に係る焼結体の製造方法は、融点10℃以下の炭化水素系溶剤および/または臭素系溶剤を用いて、本発明に係る射出成形用組成物からなる射出成形体からパラフィンを除去する脱脂工程を含む製造方法である。
本発明に係る射出成形用組成物の適用により、射出成形時の不廻りやウエルドラインの発生、その後の変形やクラックなどの欠陥の発生が抑制できるため、健全な成形体や脱脂体や焼結体を形成できる。また、本発明に係る焼結体の製造方法の適用により、脱脂時の変形やクラックや膨れなどの欠陥の発生が抑制できるため、健全な焼結体を形成できる。
本発明に係る射出成形用組成物により形成した成形体を用いた焼結体製品の具体例であって、タービン翼の鋳造に使用するセラミック中子の一例を示す図である。
本発明に係る射出成形用組成物は、無機粉末焼結体製品の製造に用いる組成物であって、無機粉末とバインダを含んでなる。無機粉末は、単独では射出成形に使用できず、単独では成形体を形成して保形することが困難である。そこで、無機粉末を含む成形体を形成するために適度な流動性や可塑性や保形性をもつバインダを混合し、無機粉末とバインダを含んでなる射出成形用組成物とする。
本発明における重要な技術的特徴は、適正化したバインダの構成にある。具体的には、バインダを構成する成分および配合比を以下に示す(1)〜(3)のように構成する。なお、特に記載しない限り、バインダ成分の質量%はバインダ全質量あたりとする。
(1)バインダは、変性ポリオレフィン(さらにポリオレフィンを混合する場合を含む)、パラフィン、および熱可塑性エラストマーを含んでなる。
(2)前記バインダにおける各成分の配合比は、変性ポリオレフィンとポリオレフィンの合計が29.5〜79.5質量%、パラフィンが20〜70質量%、並びに熱可塑性エラストマーが0.5〜10質量%である。
(3)前記変性ポリオレフィンは5質量%以上含む。なお、前記ポリオレフィンは0質量%の場合があってもよい。
本発明においてバインダは、前記(1)に示すように、変性ポリオレフィン(ポリオレフィンを含んでよい)、パラフィン、および熱可塑性エラストマーを含んでなる。変性ポリオレフィンは、金属、ガラス、セラミックなどの基材への接着性を付与するために、ポリオレフィンに官能基を導入したものである。また、ポリオレフィンは、単純なオレフィン類をモノマー(単位分子)として合成されるポリマー(高分子)の総称である。例えば、エチレンを重合させたものがポリエチレンであり、プロピレンを重合させたものがポリプロピレンである。
(変性ポリオレフィンとポリオレフィンの合計が29.5〜79.5質量%)
本発明において変性ポリオレフィンとポリオレフィンの合計は、前記(2)に示すように、配合比を29.5〜79.5質量%とする。変性ポリオレフィンとポリオレフィンをこの配合比で含むバインダは、これを用いた射出成形用組成物や成形体の可塑性を好ましいものにできる。この合計が29.5質量%未満であると、上述した可塑性が低下し、脱脂時の変形やクラックの発生のみならず、射出成形終了後に金型から成形体を離型するときにもクラックが発生しやすくなる。一方、この合計が79.5質量%を超えると、射出成形用組成物の流動性が低下し、射出成形時に不廻りが発生しやすくなる。また、可塑性と流動性とを同時に満足するバランス関係を考慮する場合、変性ポリオレフィンおよびポリオレフィン以外の他の成分との配合関係を満たした上で、この合計の配合比を40〜60質量%から選ぶことが好ましい。
特に重要となるのは、バインダに含む変性ポリオレフィンの配合比であり、前記(3)に示すように、本発明においては5質量%以上含ませる。変性ポリオレフィンを5質量%以上含むバインダは、加熱して軟化することにより、従来技術で使用されるフタル酸エステルなどの熱可塑性プラスチックの可塑剤を添加しなくても、上述した基材に対する接着性が十分に発揮される。よって、複雑な形状を有する成形体であっても金型からの離型が容易にできるようになる。一方、変性ポリオレフィンが5質量%未満であると、離型性が低下するだけでなく、脱脂工程において変形やクラックや膨れが発生しやすくなる。なお、補助的にフタル酸エステルなどの可塑剤を添加することもできる。
また、変性ポリオレフィンとポリオレフィンに関し、変性ポリオレフィンのみとし、バインダにポリオレフィンを含まなくても(すなわち0質量%でも)、本発明に係る効果は十分に得られる。また、製造コストの観点では、変性ポリオレフィンよりも安価なポリオレフィンを多く含むことは好ましい。このような変性ポリオレフィンとしては、例えば変性ポリエチレンおよび/または変性ポリプロピレンが使用できる。また、ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレンおよび/またはポリプロピレンが使用できる。
(パラフィンが20〜70質量%)
本発明においてパラフィンは、前記(2)に示すように、配合比を20〜70質量%とする。パラフィンをこの配合比で含むバインダは、これを用いた射出成形用組成物の流動性や成形体の脱脂性を好ましいものにできる。射出成形体の所望形状にも拠るが、パラフィンが20質量%未満であると射出成形用組成物の流動性が低下し、金型キャビティ内に射出成形用組成物が十分に行き渡らなくなる不廻りという現象が発生しやすくなる。一方、パラフィンが70質量%を超えると射出成形用組成物の可塑性が低下し、射出成形終了後の金型からの離型時に射出成形体にクラックが発生しやすくなる。また、流動性と可塑性とを同時に満足するバランス関係を考慮する場合、パラフィン以外の他の成分との配合関係を満たした上で、パラフィンの配合比を40〜60質量%から選ぶことが好ましい。
(熱可塑性エラストマーが0.5〜10質量%)
本発明において熱可塑性エラストマーは、前記(2)に示すように、配合比を0.5〜10質量%とする。熱可塑性エラストマーは、通常は均一に混合し難いパラフィンと変性ポリオレフィン(さらにポリオレフィンを混合する場合を含む)とを混合し、バインダを均一な混合状態に保つために必要である。よって、熱可塑性エラストマーをこの配合比で含むバインダは、これを用いた射出成形用組成物の流動性を好ましいものにできる。熱可塑性エラストマーが0.5質量%未満であると、射出成形用組成物において各成分の分布が不均一になりやすく、それを用いた成形体は無機粉末の分布が不均一になることで変形などが発生しやすい。一方、熱可塑性エラストマーが10質量%を超えると、射出成形用組成物の粘度が上昇して流動性が低下しやすい。より好ましい熱可塑性エラストマーの配合比は1〜5質量%であり、無機粉末とバインダとの混合状態がより安定化され、成形体の保形性や脱脂性も向上できる。このような熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体、エチレン・スチレン二元共重合体、ブチレン・スチレン二元共重合体などが使用できる。
以上のように、本発明においてバインダは、変性ポリオレフィン、パラフィン、および熱可塑性エラストマーという3種類の成分で構成され、射出成形用組成物やこれを用いて形成した成形体や脱脂体に、好適な流動性、可塑性、保形性、および脱脂性を付与することができる。したがって、射出成形時の不廻りやウエルドラインの発生、その後の変形やクラックなどの欠陥の発生が抑制され、健全な成形体や脱脂体や焼結体を形成できる。また、図1に示すセラミック中子のような複雑な形状の成形体や焼結体の製造を可能にし、脱脂工程におけるヒートパターンの簡易化や、ヒートサイクルの時間短縮が期待できる。
上述したバインダと無機粉末との好ましい配合比は、無機粉末50〜80体積%に対してバインダ20〜50体積%である。無機粉末が50体積%未満すなわちバインダが50体積%を超過すると、保形性が低下し、脱脂工程において成形体あるいは脱脂体が変形しやすくなる。一方、無機粉末が80体積%を超過すなわちバインダが20体積%未満になると、射出成形用組成物の流動性が低下し、射出成形時に不廻りが起こりやすくなる。より好ましくは、無機粉末に対するバインダの配合比を25〜45体積%とし、保形性と流動性のバランスを好適にすることである。
また、焼結体製品の骨格をなす材料である無機粉末としては、シリカ、アルミナ、ジルコニアなど各種のセラミック材料からなるセラミック粉末や、Fe系合金、Ni系合金、Co系合金、Ti系合金、Al系合金など各種の金属材料からなる金属粉末や、これらの複合粉末が使用できる。例えば、セラミック粉末、特に溶融シリカを主成分とするセラミックス粉末は、図1に示すようなタービン翼用セラミック中子に好適である。また、上述した金属粉末は、例えば自動車部品や航空機部品やその他の産業用部品など、鍛造や鋳造では形成が容易でない複雑な形状を有する部品に好適である。
次に、本発明に係る射出成形用組成物を用いた焼結体の製造方法について説明する。
射出成形法は、混練工程、射出成形工程、脱脂工程、焼成工程など、一連の製造工程を経て焼結体を製造する方法として知られる。例えば、混練工程において射出成形用組成物を得て、その射出成形用組成物を用いて射出成形工程において成形体を形成する。その後に脱脂工程において、その成形体からバインダの一部成分を除去(脱脂)し、あるいはハンドリングを阻害しない程度に多くのバインダを除去(脱脂)し、脱脂体を得る。そして、焼成工程において、この工程前半で脱脂体からバインダの残存成分を除去(脱脂)し、この工程後半で無機粉末を焼結することにより、焼結体を製造することができる。
上述した脱脂は、ある種の溶剤に可溶性のバインダの一部成分を溶解して除去する方法(溶剤脱脂)や、加熱により溶融し分解し気化してハンドリングを阻害しない程度に多くのバインダを除去する方法(加熱脱脂)などがある。また、前記焼成工程の前半における脱脂では、バインダの残存成分が、加熱により溶融され分解され気化されて除去される。なお、溶剤脱脂や加熱脱脂などによる前記脱脂工程を実施せず、前記焼成工程においてバインダの全成分を除去(脱脂)する製造方法も実施されている。
図1に示すセラミック中子のように、複雑な形状を有する焼結体を製造する場合は、溶剤脱脂や加熱脱脂(前記脱脂工程)を実施することが好ましい。バインダの一部成分を除去しておいた成形体は、焼成工程において変形などを生じ難くなる。本発明者は、前記脱脂工程において溶剤脱脂を採用した場合、これを特定条件で実施することにより、健全な脱脂体や焼結体を形成しやすくなることを知見し、本発明に係る製造方法に到達した。すなわち、本発明に係る焼結体の製造方法では、融点10℃以下の炭化水素系溶剤および/または臭素系溶剤を用いて、本発明に係る射出成形用組成物からなる射出成形体からパラフィンを除去する脱脂方法を採用している。
上述したように本発明に係る射出成形用組成物に含まれるバインダは、変性ポリオレフィン(ポリオレフィンを混合する場合を含む)、パラフィン、および熱可塑性エラストマーを含んでなる。本発明において炭化水素系溶剤および/または臭素系溶剤を適用する理由は、バインダを構成するパラフィンが炭化水素系溶剤や臭素系溶剤に優れた可溶性を有し、パラフィン以外の他の成分が非可溶性を有するという差異を利用するためである。また、炭化水素系溶剤や臭素系溶剤の融点が10℃以下であると、15〜30℃程度の室温であっても液状を呈し、浸透性がよいため成形体の細部に浸透しやすく、成形体の細部に含まれるパラフィンまで選択的に溶解することができる。
融点10℃以下の炭化水素系溶剤としては、例えば、炭化水素を主成分とする炭化水素油や、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソオクタン、ノルマルデカンなどが使用できる。また、臭素系溶剤は、一般に炭化水素系溶剤よりもランニングコストが高いものの、ノルマルプロピルブロマイドなどが使用できる。なお、フッ素系溶剤も乾燥性や浸透性に富んでいるが、一般に、ランニングコストが高いことや再生ロスが大きい点が不利である。
炭化水素系溶剤を使用する場合は、これを用いた後に、より速乾性に富むノルマルプロピルブロマイドなどの臭素系溶剤を使用すると、脱脂体の乾燥時間が短縮できるため好ましい。また、炭化水素系溶剤と臭素系溶剤が混合できる場合は混合液を使用してもよい。これら炭化水素系溶剤や臭素系溶剤は、温度が40℃以上、80℃以下であると、比較的に短時間でパラフィンを除去できるようになるため好ましい。
上述した炭化水素系溶剤および/または臭素系溶剤によりパラフィンを除去した後の成形体は、溶剤に可溶しなかった変性ポリオレフィン(ポリオレフィンを混合する場合を含む)や熱可塑性エラストマーが、無機粉末を架橋した状態で残存するものになる。この状態の成形体がグリーン体と称されることもある脱脂体である。本発明に係る製造方法を用いることにより、成形体は、変形やクラックや膨れを生じることなく、当該成形体の外観形状が健全な状態で保形された脱脂体に形成できる。
本発明に係る、無機粉末とバインダを含んでなり、バインダが、変性ポリオレフィン(さらにポリオレフィンを含む場合もある)と、パラフィンと、熱可塑性エラストマーを含んで構成された射出成形用組成物を、以下のようにして製造した。なお、無機粉末としては溶融シリカを主成分とする平均粒径15μmのセラミック粉末を選定した。また、変性ポリオレフィンとしては変性ポリプロピレンを選定した。また、ポリオレフィンとしてはポリプロピレンを選定した。また、熱可塑性エラストマーとしてはエチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体を選定した。
(実施例1)
バインダには、49質量%のパラフィンと、49質量%の変性ポリプロピレンと、2質量%のエチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体とを含んでなるものを準備した。そして、セラミック粉末が70体積%、バインダが30体積%となるように配合して混練し、射出成形用組成物を得た。
(実施例2)
バインダには、49質量%のパラフィンと、20質量%の変性ポリプロピレンと、29質量%のポリプロピレンと、2質量%のエチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体とを含んでなるものを準備した。そして、セラミック粉末が68体積%、バインダが32体積%となるように配合して混練し、射出成形用組成物を得た。
(実施例3)
バインダには、49質量%のパラフィンと、5質量%の変性ポリプロピレンと、44質量%のポリプロピレンと、2質量%のエチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体とを含んでなるものを準備した。そして、セラミック粉末が60体積%、バインダが40体積%となるように配合して混練し、射出成形用組成物を得た。
(実施例4)
バインダには、65質量%のパラフィンと、29.5質量%の変性ポリプロピレンと、5.5質量%のエチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体とを含んでなるものを準備した。そして、セラミック粉末が70体積%、バインダが30体積%となるように配合して混練し、射出成形用組成物を得た。
(実施例5)
バインダには、20質量%のパラフィンと、79.5質量%の変性ポリプロピレンと、0.5質量%のエチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体とを含んでなるものを準備した。そして、セラミック粉末が55体積%、バインダが45体積%となるように配合して混練し、射出成形用組成物を得た。
(実施例6)
バインダには、49質量%のパラフィンと、31質量%の変性ポリプロピレンと、10質量%のポリプロピレンと、10質量%のエチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体とを含んでなるものを準備した。そして、セラミック粉末が70体積%、バインダが30体積%となるように配合して混練し、射出成形用組成物を得た。
(実施例7)
バインダには、70質量%のパラフィンと、28質量%の変性ポリプロピレンと、2質量%のエチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体とを含んでなるものを準備した。そして、セラミック粉末が70体積%、バインダが30体積%となるように配合して混練し、射出成形用組成物を得た。
(比較例1)
バインダには、12質量%のパラフィンと、83質量%の変性ポリプロピレンと、5質量%のエチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体とを含んでなるものを準備した。そして、セラミック粉末が70体積%、バインダが30体積%となるように配合して混練し、射出成形用組成物を得た。
(比較例2)
バインダには、72質量%のパラフィンと、23質量%の変性ポリプロピレンと、5質量%のエチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体とを含んでなるものを準備した。そして、セラミック粉末が70体積%、バインダが30体積%となるように配合して混練し、射出成形用組成物を得た。
(比較例3)
バインダには、50質量%のパラフィンと、3質量%の変性ポリプロピレンと、37質量%のポリプロピレンと、10質量%のエチレン・ブチレン・スチレン三元共重合体とを含んでなるものを準備した。そして、セラミック粉末が60体積%、バインダが40体積%となるように配合して混練し、射出成形用組成物を得た。
(比較例4)
バインダには、50質量%のパラフィンと、50質量%の変性ポリプロピレンとを含んでなるものを準備した。そして、セラミック粉末が70体積%、バインダが30体積%となるように配合して混練し、射出成形用組成物を得た。
次いで、上述のようにして得たそれぞれの射出成形用組成物を用いて射出成形(射出速度150cm/s、射出圧力25MPaに設定)し、タービン翼の鋳造に使用する図1に示すセラミックス中子を製造するための射出成形体を製造した。そして、それぞれの射出成形体について、欠陥の有無を調査した。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2014069975
実施例1〜7の射出成形体については、表中「〇」で示すように、いずれも健全な状態に形成されており、明確な欠陥は認められなかった。一方、比較例1〜4で示す射出成形体については、表中「×」で示すように、いずれにも程度の差はあるものの何らかの欠陥が認められた。
次に、表1に示す実施例2の射出成形用組成物を用いて射出成形した健全な状態の射出成形体(以下「試験体」という。)を準備した。そして、以下の溶剤脱脂により、試験体からバインダの一部成分(パラフィン)を除去した。具体的には、炭化水素系溶剤である温度10℃で液状のパラフィン系炭化水素のモノマーを主成分とするNSクリーン220(「NSクリーン」は株式会社ジャパンエナジー(現JX日鉱日石エネルギー株式会社)の登録商標)と、臭素系溶剤である温度10℃で液状のノルマルプロピルブロマイド(1−ブロモプロパン)を原料とするeクリーン21(「eクリーン21」は株式会社カネコ化学の登録商標)を、それぞれ個別の容器内に準備し、それぞれの試験体を所定の温度に保持した溶剤中に所定の時間だけ浸漬する方法とした。
(実施例8)
試験体を、60℃に保持したNSクリーン220の中に10分浸漬した後、60℃に保持したeクリーン21の中に20分浸漬し、試験体からパラフィンを除去し、脱脂体を得た。
(実施例9)
試験体を、60℃に保持したeクリーン21の中に30分浸漬し、試験体からパラフィンを除去し、脱脂体を得た。
その後、上述した焼成工程を適用し、セラミック粉末焼結体を得た。具体的には、その工程前半で脱脂体からバインダの残存成分を除去し、その工程後半でセラミック粉末を焼結してセラミック粉末焼結体を得た。
上述のようにして得たそれぞれの脱脂体並びにセラミック粉末焼結体について、欠陥の有無を調査した結果を表2に示す。
Figure 2014069975
脱脂体については、表中、実施例7、8において「〇」で示すように、いずれも良好な脱脂がなされ健全な状態を有しており、明確な欠陥は認められなかった。
セラミック粉末焼結体については、表中、実施例7、8において「〇」で示すように、いずれも良好に焼結した健全な状態を有しており、明確な欠陥は認められなかった。

Claims (4)

  1. 無機粉末とバインダを含んでなる射出成形用組成物であって、前記バインダは、変性ポリオレフィンとポリオレフィンの合計を29.5〜79.5質量%、パラフィンを20〜70質量%、熱可塑性エラストマーを0.5〜10質量%含み、かつ、前記変性ポリオレフィンは5質量%以上(前記ポリオレフィンが0質量%の場合を含む)含んでなることを特徴とする射出成形用組成物。
  2. 前記無機粉末を50〜80体積%、前記バインダを20〜50体積%含んでなることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用組成物。
  3. 前記無機粉末はセラミック粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形用組成物。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の射出成形用組成物を用いた焼結体の製造方法であって、融点10℃以下の炭化水素系溶剤および/または臭素系溶剤を用いて、前記射出成形用組成物からなる射出成形体からパラフィンを除去する脱脂工程を含むことを特徴とする焼結体の製造方法。
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