JP2006328099A - 射出成形用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 短時間での脱脂によっても得られる焼結体に欠陥や変形が生じないことを特徴とする射出成形用組成物であって、従来公知の射出成形用組成物よりも射出成形性、寸法安定性に優れる射出成形用組成物を提供する。
【解決手段】 金属粉末またはセラミックス粉末よりなる焼結用粉末とバインダーを含有する射出成形用組成物において、前記バインダーが35〜65容量%のパラフィンワックス、0.5〜4.5容量%のポリアセタール樹脂、0.5〜4.5容量%の変性ポリオレフィン樹脂、0.5〜4.5容量%のポリプロピレン、10〜40容量%のポリエチレン、20.5〜50容量%の酢酸ビニル共重合体、0.5〜10容量%のフタル酸エステルからなり、かつ該バインダーは全体当たり35〜50容量%の量で含有されている。
【選択図】 なし
【解決手段】 金属粉末またはセラミックス粉末よりなる焼結用粉末とバインダーを含有する射出成形用組成物において、前記バインダーが35〜65容量%のパラフィンワックス、0.5〜4.5容量%のポリアセタール樹脂、0.5〜4.5容量%の変性ポリオレフィン樹脂、0.5〜4.5容量%のポリプロピレン、10〜40容量%のポリエチレン、20.5〜50容量%の酢酸ビニル共重合体、0.5〜10容量%のフタル酸エステルからなり、かつ該バインダーは全体当たり35〜50容量%の量で含有されている。
【選択図】 なし
Description
本発明は射出成形焼結製品の製造に供される射出成形用組成物、更に詳細には射出成形用組成物のバインダーに関するものである。
射出成形粉末冶金法は、金属粉末等の焼結用粉末とバインダーとを混練して得られる射出成形用組成物を所定形状の金型にて射出成形し、得られた成形体を加熱して脱脂(脱バインダー)した後に焼結を行うことにより焼結製品を製造する方法であり、特に三次元的に複雑な形状を有する製品の製造に適している。
焼結用粉末には射出成形時の流動性、および焼結性を高める為に10μm前後の球状な粉末が用いられ、金属または合金粉末単体での使用はもとより、2種類以上の粉末の混合によって焼結合金とすることも可能である。
バインダーは焼結用粉末に射出成形時の流動性を付与する為に用いられるものであり、射出成形はバインダーのみが可塑化する温度で行われる。従って射出成形用組成物はバインダーの配合率が多いほど、またバインダーの分子量が低いほど粘性が低下して流動性が良くなるが、配合率を多くした場合はバインダーが硬化した際の収縮率についても大きくなる為、成形体に面ヒケやクラックなどの欠陥が生じやすくなる。また分子量の高いバインダーであっても成形温度の上昇により流動性が向上するが、冷却時間を長くとる必要が生じると共に、成形体にヒケや反りなどが生じやすくなる。
バインダーの成分としては、射出成形時の流動性に寄与するワックス等の滑材と、成形体の形状保持性に影響する結合材樹脂、および焼結用粉末とバインダーとの親和性に寄与する分散材の3つに大別され、一般にその融点および沸点が分散材、滑材、結合材樹脂の順に高くなるように選定されたものが用いられる。これらの沸点が異なる複数の成分により構成されたバインダーを用いることにより、脱脂時には昇温過程における段階的な気化が行われる為、特定温度での急激なバインダーの気化による変形を防止することができる。
また上記の様に焼結用粉末としては微細且つ球状の粉末が用いられる為、成形体中に於いてバインダーは焼結用粉末同士の結合材として成形体の形状を保持する役割を有する。従って脱脂時にはバインダーの気化に伴い形状保持性が低下する為、バインダーの急激な気化による成形体の変形防止の為に、脱脂には長時間が必要とされる。
一般にバインダーの形状保持性については分子量の増加と共に高くなるが、同時に粘性についても高くなる為、射出成形性が低下する傾向がある。
短時間での脱脂を可能にすべく提案されたものとして、特開2000−129306号公報にポリアセタール樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、ポリプロピレン、酢酸ビニル共重合体等をバインダーとして用いる射出成形用組成物が記載されている。当該射出成形用組成物は沸点および熱変形温度の高いポリアセタール樹脂と、ポリアセタール樹脂よりも低い沸点を示すその他のバインダー成分とからなるものであり、ポリアセタール樹脂の存在によりその他のバインダー成分気化後に於いても高い形状保持性が得られることを特徴とする。
しかしながら従来公知の射出成形用組成物は、脱脂時の形状保持性を重視するあまりバインダーの粘性が高く、射出成形性が悪いという問題がある。これにより成形難易度の高い薄肉形状品や肉厚形状品などに適用する際には、流動性の不足によるウエルド部におけるクラックや、これを改善する為の成形温度の上昇によるヒケや反り、更には成形体重量のばらつきに起因する焼結体寸法のばらつきなどが生じやすいという問題が生じていた。
特開2000−129306号公報
本発明は上記の問題に鑑みて行われたものであり、従来公知の射出成形用組成物よりも射出成形性に優れ、焼結体寸法のばらつきを低減可能な射出成形用組成物を提供することを目的とする。
本発明の射出成形用組成物は、金属粉末またはセラミックス粉末よりなる焼結用粉末とバインダーを含有する射出成形用組成物であって、前記バインダーが35〜65容量%のパラフィンワックス、0.5〜4.5容量%のポリアセタール樹脂、0.5〜4.5容量%の変性ポリオレフィン樹脂、0.5〜4.5容量%のポリプロピレン、10〜40容量%のポリエチレン、20.5〜50容量%の酢酸ビニル共重合体、0.5〜10容量%のフタル酸エステルからなり、かつ該バインダーは全体当たり35〜50容量%の量で含有されている。
さらに前記フタル酸エステルは、ジブチルフタレートまたはジオクチルフタレートであることが望ましい。
本発明の射出成形用組成物を使用することにより、薄肉部または肉厚部を有する成形難易度の高い製品の射出成形が可能となり、従来公知の射出成形用組成物により得られる焼結体よりも高い寸法精度の焼結体が得られる。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、形状保持性に優れるものの射出成形性を著しく低下させるポリアセタール樹脂を、その他の低沸点成分が気化する間の形状保持に必要な最小量に抑え、対して形状保持性に優れる結晶化樹脂の中でも粘性が低く射出成形性に優れるポリエチレン、及び酢酸ビニル共重合体を結合材樹脂の主成分とすることにより、結合材樹脂成分の形状保持性および射出成形性を最大限に引き出すことが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明におけるバインダーの構成成分について、それぞれの成分に係る限定理由を以下に説明する。
射出成形用組成物におけるバインダーは、焼結用粉末の射出成形を可能にする為の潤滑材として、また、成形体の形状を保持する為の結合材として必要であるが、その含有量が35容量%未満では焼結用粉末に対する添加量が少なく、十分な流動性が得られない。対して50容量%を越えると射出成形時に面ヒケやクラック等の欠陥が生じやすくなると共に、脱脂に要する時間が長くなる。従ってバインダーの含有量としては全体当たり35〜50容量%が望ましい。
射出成形用組成物におけるバインダーは、焼結用粉末の射出成形を可能にする為の潤滑材として、また、成形体の形状を保持する為の結合材として必要であるが、その含有量が35容量%未満では焼結用粉末に対する添加量が少なく、十分な流動性が得られない。対して50容量%を越えると射出成形時に面ヒケやクラック等の欠陥が生じやすくなると共に、脱脂に要する時間が長くなる。従ってバインダーの含有量としては全体当たり35〜50容量%が望ましい。
パラフィンワックスは射出成形時の流動性並びに脱脂性に優れる成分であり、一般的には融点が35〜80℃のものが用いられる。パラフィンワックスの含有量が35容量%未満になると射出成形性および脱脂性が低下する。対して65容量%を越えると成形体の離型性が低下すると共に、成形体が脆くなる。また脱脂初期のパラフィンワックス気化温度域における体積収縮量が大きくなると共に、パラフィンワックス量の増加によって相対的に結合材樹脂の量が少なくなる為、当該温度域における変形が生じやすくなる。従ってパラフィンワックスの含有量としては35〜65容量%が望ましい。
ポリアセタール樹脂は、強度および熱変形温度の高さから形状保持性に優れると共に、分子の末端より順次切れる解重合型の樹脂であることから短時間での脱脂が可能である。また本発明におけるバインダー成分の中では最も沸点が高い為、脱脂時の段階的な気化に於いて最終的に気化する成分であり、形状保持性の高いポリアセタール樹脂の存在が他のバインダー成分の脱脂の短時間化を可能にするものである。ポリアセタール樹脂の含有量が0.5容量%未満になると焼結用粉末との容量比から結合材的役割を果たす為の量として不足する。対して4.5容量%を越えるとバインダー全体の可塑化温度が上昇し、成形温度を高くする必要が生じる為、面ヒケや反り等が生じやすくなると共に、粘性の増加によりウエルド部におけるクラックや成形体重量のばらつきも生じやすくなる。従ってポリアセタール樹脂の含有量としては0.5〜4.5容量%が望ましい。
変性ポリオレフィン樹脂は、ポリアセタール樹脂と他のバインダー成分の相溶材としての役割を有するものであり、変性ポリオレフィン樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などにアクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレンを共重合させた樹脂が好適である。変性ポリオレフィン樹脂の含有量が0.5容量%未満になると前記相溶性が不十分であり、対して4.5容量%を越えると射出成形性の低下をもたらす。従って変性ポリオレフィン樹脂の含有量としては0.5〜4.5容量%が望ましい。
ポリプロピレンは、本発明におけるバインダー成分の中ではポリエチレンに次ぐ射出成形性を有し、またポリアセタール樹脂に近い熱変形温度を有することから形状保持性が高く、靭性にも優れている。ポリプロピレンの含有量が0.5容量%未満になると、所望の靭性が得られず成形体が脆くなると共に、焼結用粉末との容量比から結合材的役割を果たす為の量として不足する。対して4.5容量%を越えると成形体にヒケが生じやすくなる。従ってポリプロピレンの含有量としては0.5〜4.5容量%が望ましい。
ポリエチレンは、多くの有機成分に対する相溶性が良い為、得られる射出成形用組成物は均一な組成となり、成形体重量のばらつきに起因する焼結体寸法のばらつきも生じにくい。特にポリエチレンの中でも密度が低い部類に属する低密度ポリエチレンは、結晶性樹脂の中でも最も粘性が低い部類に属する為、射出成形性に優れている。ポリエチレンの含有量が10容量%未満になると射出成形性の低下が生じる。対して40容量%を越えると成形体が脆くなると共に、相対的に他のバインダー成分の配合率が少なくなる為、段階的な気化による脱脂の短時間化が図れない。従ってポリエチレンの含有量としては10〜40容量%が望ましい。
酢酸ビニル共重合体は熱可塑性エラストマーの一種であり、成形体の靭性に寄与する。また射出成形性に優れ、特に成形体の面ヒケ防止に効果的である。酢酸ビニル共重合体としては、本発明における他のバインダー成分との相溶性の面から、エチレン酢酸ビニル共重合体が好適である。酢酸ビニル共重合体の含有量が20.5容量%未満になると所望の射出成形性が得られない。対して50容量%を越えると相対的に他の形状保持性の高い結合材樹脂の量が少なくなり、変形が生じやすくなる。従って酢酸ビニル共重合体の含有量としては20.5〜50容量%が望ましい。
フタル酸エステルは他のバインダー成分との相溶性、焼結粉末との親和性に優れる為、分散性の改善効果がある。また射出成形用組成物全体の粘性の低下、および離型性の向上にも寄与する為、射出成形性が向上する。フタル酸エステルとしてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレートが比較的安価で安定していることから好適に使用される。フタル酸エステルの含有量が0.5容量%未満になると金属粉末との容量比から十分な分散性が得られず、対して10容量%を越えると、成形体が脆くなり、クラックが生じやすくなる。従ってフタル酸エステルの含有量としては0.5〜10容量%が望ましい。
また焼結用粉末としては、鉄、ステンレス鋼、銅−ニッケル合金等の金属粉末や、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス粉末が焼結性品の用途等に応じて選択使用される。
本発明に係わる射出成形用組成物は、焼結用粉末とバインダーを上記の割合で均一に混練することによって容易に調整され、次いで射出成形、脱脂および焼結の各工程を経ることによって最終製品である焼結体となる。射出成形はプラスチックの射出成形に使用されている通常の射出成形機を用いて行うことができる。脱脂は成形体を加熱処理することによって行われるが、焼結用粉末として酸化されやすい金属が使用される場合には、加熱処理を不活性ガス雰囲気下で行うことが好適である。焼結は使用する焼結用粉末の種類によっても異なるが、一般に真空、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気で行われる。
[実施例1]
ポリアセタール樹脂:1容量%、ポリエチレンを用いた変性ポリオレフィン樹脂:1容量%、ポリプロピレン:3容量%、低密度ポリエチレン:15容量%、エチレン酢酸ビニル共重合体:25容量%、融点が65℃のパラフィンワックス:50容量%、ジブチルフタレート:5容量%からなるバインダーを、平均粒径5μmのカルボニル鉄粉に対して40容量%の割合で混合、混練して実施例1の射出成形用組成物を調整した。得られた射出成形用組成物のフローテスターによるメルトフローレート(MFR)測定結果を表1に示す。なお、MFRについては、ダイス穴:φ1mm×1mm、加熱温度:160℃、荷重:20kgf/cm2の条件で測定した。
ポリアセタール樹脂:1容量%、ポリエチレンを用いた変性ポリオレフィン樹脂:1容量%、ポリプロピレン:3容量%、低密度ポリエチレン:15容量%、エチレン酢酸ビニル共重合体:25容量%、融点が65℃のパラフィンワックス:50容量%、ジブチルフタレート:5容量%からなるバインダーを、平均粒径5μmのカルボニル鉄粉に対して40容量%の割合で混合、混練して実施例1の射出成形用組成物を調整した。得られた射出成形用組成物のフローテスターによるメルトフローレート(MFR)測定結果を表1に示す。なお、MFRについては、ダイス穴:φ1mm×1mm、加熱温度:160℃、荷重:20kgf/cm2の条件で測定した。
当該射出成形用組成物を、図1に示す箱形形状品および図2に示すサイコロ型形状品の金型を用いて、連続で各々50個ずつ射出成形して成形体を作製した。この時の射出成形性の評価結果を表2に示す。なお、当該金型の寸法はA=B=30mm、C=25mm、D=E=F=G=2mm、H=3mm、I=J=K=30mmであり、射出成形性については得られた成形体を目視で確認し、面ヒケやクラック、充填不良部分などの有無について評価した。
得られた成形体を窒素気流中で50℃/時間の速度で昇温し10時間の脱脂を行った。この時の脱脂性の評価結果を表2に示す。なお、脱脂性については脱脂後の成形体を目視で確認し、クラックや変形などの有無について評価した。
次いで脱脂後の成形体を真空雰囲気、1200℃で2時間の焼結処理を行うことにより焼結体を得た。焼結体の欠陥の有無、およびサイコロ型形状品焼結体のI、J、K部分の寸法の標準偏差を表2に示す(K:脱脂・焼結時の高さ方向)。なお、焼結体の欠陥の有無については目視および軟X線撮影により評価し、サイコロ型形状品焼結体の寸法は、最小目盛り:0.01mmのデジタルノギスで測定した。
[実施例2〜6、比較例1〜13]
表1に示すように、バインダー成分の配合割合を変えた以外は実施例1と同様にして実施例2〜6および比較例1〜13の射出成形用組成物を作製した。次いで実施例1と同様にして当該射出成形用組成物の諸特性についての評価を行った。結果を表1および表2に示す。
[実施例2〜6、比較例1〜13]
表1に示すように、バインダー成分の配合割合を変えた以外は実施例1と同様にして実施例2〜6および比較例1〜13の射出成形用組成物を作製した。次いで実施例1と同様にして当該射出成形用組成物の諸特性についての評価を行った。結果を表1および表2に示す。
Claims (2)
- 金属粉末またはセラミックス粉末よりなる焼結用粉末とバインダーを含有する射出成形用組成物であって、前記バインダーが35〜65容量%のパラフィンワックス、0.5〜4.5容量%のポリアセタール樹脂、0.5〜4.5容量%の変性ポリオレフィン樹脂、0.5〜4.5容量%のポリプロピレン、10〜40容量%のポリエチレン、20.5〜50容量%の酢酸ビニル共重合体、0.5〜10容量%のフタル酸エステルからなり、かつ該バインダーは全体当たり35〜50容量%の量で含有されていることを特徴とする射出成形用組成物。
- 前記フタル酸エステルがジブチルフタレート、ジオクチルフタレートであることを特徴とする請求項1記載の射出成形用組成物。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005149250A JP2006328099A (ja) | 2005-05-23 | 2005-05-23 | 射出成形用組成物 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010285561A (ja) * | 2009-06-12 | 2010-12-24 | Sumitomo Metal Mining Co Ltd | 射出成形用組成物 |
JP2014069975A (ja) * | 2012-09-27 | 2014-04-21 | Hitachi Metals Ltd | 射出成形用組成物とそれを用いた焼結体の製造方法 |
-
2005
- 2005-05-23 JP JP2005149250A patent/JP2006328099A/ja active Pending
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