JPH0551606A - 粉末成形体の脱脂方法および脱脂装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】無機粉末焼結体を製造するに際し、無機粉末成
形体を変形させることなく迅速に脱脂することを目的と
する。 【構成】無機粉末成形体に溶剤の蒸気とミストとを共に
接触させて該成形体中の脱脂を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は無機粉末成形体を焼結す
る前工程として行なわれる脱脂の方法および装置に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】金属、合金あるいはセラミックス等の無
機粉末焼結体を製造するには、該無機粉末に合成樹脂、
ワックス等のバインダーを添加混練し、このようにして
得られた混練物を射出成形等で成形し、該成形体を焼結
する方法が用いられているが、該成形体を焼結する前工
程として上記バインダーの一部を除去する脱脂工程が行
なわれる。

【０００３】上記脱脂工程としては、従来成形体を所定
のバインダーの軟化点以上の温度に加熱して成形体中の
バインダーを軟化させ濾紙等の多孔質体によって吸い取
る方法（例えば特開昭５７−１６１０３号公報、特開昭
５７−１６１０４号公報、特開昭５８−１２６９０１号
公報）や、成形体を所定のバインダーの分解点以上の温
度に加熱して成形体中のバインダーを熱分解し揮散させ
る方法（例えば特開昭６２−２９７４０３号公報）等の
ような加熱脱脂法、上記バインダーの少なくとも一部を
溶解する溶剤に該成形体を浸漬して該成形体中のバイン
ダーを抽出する方法（例えば特開平１−１２９９０２号
公報）や、該溶剤蒸気中に該成形体を置いてバインダー
の軟化点以上の温度に加熱して該成形体中のバインダー
を抽出する方法（例えば特開昭５２−１４５４１４号公
報）等の溶剤脱脂法が用いられている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の加熱脱脂法あるいは溶剤蒸気を用いる溶剤脱脂法に
おいては、成形体を軟化点あるいは熱分解点以上に加熱
しなければならないので、バインダーの軟化流動によっ
て成形体に変形が生ずるおそれがあり、また溶剤浸漬に
よる溶剤脱脂法では成形体に溶剤が長時間接触しそのた
めに成形体が溶剤を吸収して膨潤することにより変形が
生ずるおそれがあり、更に成形体を溶剤に浸漬して攪拌
する際に厚みの薄いものでは破壊されるおそれがあると
云う問題点を有する。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は上記従来の課題
を解決するための手段として、無機粉末と有機バインダ
ーとの混合物からなる粉末成形体を、上記有機バインダ
ーの少なくとも一種を溶解する溶剤の蒸気とミストとの
混合雰囲気中において脱脂する粉末成形体の脱脂方法、
および脱脂室の底部には溶剤蒸発部を配し、その上側に
粉末成形体設置部と溶剤ミスト噴霧装置とを配した粉末
成形体の脱脂装置を提供するものである。

【０００６】以下に本発明を詳細に説明する。 〔無機粉末〕本発明に用いられる無機粉末としては、
鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、
チタン等の金属またはこれら金属の二種以上の合金、ア
ルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化ケイ素、窒化ホウ
素、炭化ケイ素、炭化ホウ素等のセラミックス等があ
る。これらの粉末は通常５０μｍ以下の平均粒径のもの
が用いられる。

【０００７】〔有機バインダー〕本発明に用いられる有
機バインダーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポ
リメタクリレート等の熱可塑性樹脂、蜜ロウ、パラフィ
ンワックス、オレフィンワックス、木ロウ等のワックス
類、鉱油、植物油等の油類等がある。通常熱可塑性樹脂
とワックス類とは併用され、脱脂工程ではワックス類の
みが除去され、熱可塑性樹脂は焼結時に熱分解によって
除去される。

【０００８】〔溶剤〕本発明においては、上記有機バイ
ンダーを溶解する溶剤が用いられ、上記したように熱可
塑性樹脂とワックス類とを併用する場合には、熱可塑性
樹脂を溶解せずワックス類のみを溶解するような溶剤を
用いる。本発明において用いられる溶剤としては、ｎ−
ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、アセトン等がある。

【０００９】本発明においては、上記無機粉末と有機バ
インダーとを通常容量比で２：８〜８：２程度に混合
し、該混合物を例えば射出成形、鋳込成形等により所望
形状の成形体に成形する。

【００１０】〔脱脂〕上記成形体は上記溶剤の蒸気とミ
ストとの混合雰囲気中で、望ましくは上記成形体に含ま
れるバインダーの軟化点以下の温度で脱脂される。この
場合、溶剤は加熱して蒸発させて溶剤蒸気とし、かつ溶
剤をノズルから噴霧してミストとする。

【００１１】

【作用】本発明においては、無機粉末成形体中のバイン
ダーは溶剤蒸気および溶剤ミストと接触することによっ
て速やかに溶解される。即ち溶剤蒸気は成形体中に速や
かに浸透し、バインダーの軟化点以下の温度でもバイン
ダーを速やかに軟化せしめ、次いでミスト中にこのよう
にして軟化したバインダーが溶解し、バインダーを溶解
した溶剤は成形体から滴下し除去される。このような脱
脂工程においては、バインダーの軟化点以下の加熱で
も、脱脂が順調に行なわれる。また溶剤の蒸気およびミ
ストと成形体とが接触している時間は短時間になる。

【００１２】

【実施例】

〔実施例１〕図１に本発明に使用される脱脂装置(1) の
一実施例を示す。図において(2) は脱脂室であり、底部
には溶剤プール(3) を有し、該溶剤プール(3) には加熱
手段(4) が囲繞されおり、溶剤蒸発部(13)が形成されて
いる。該溶剤蒸発部(13)の上方には成形体Ｗを載置する
棚(5) が配置されている。該脱脂室(2) の上部には溶剤
噴霧ノズル(6) が差出されており、該ノズル(6) は溶剤
供給経路(7) を介して溶剤プール(3) に連絡している。
更に該脱脂室(2) の上部にはコンデンサー(8)が介在す
る排出管(9) が連絡している。

【００１３】平均粒径１０μｍのＳＵＳ３１６の粉末６
０容量％とポリプロピレン：パラフィンワックス＝４
０：６０重量比混合バインダー４０容量％とを混練し、
径１０mm，長さ２０mmの円柱状成形体Ｗを射出成形によ
って製造する。

【００１４】上記脱脂装置(1) の脱脂室(2) の溶剤蒸発
部(13)の溶剤プール(3) にｎ−ヘキサンＳを満たし８０
℃に加熱して蒸気Ｖを該脱脂室(2) 内に充満させ、更に
該溶剤プール(3) のｎ−ヘキサンＳを溶剤供給経路(7)
を介して５００cc／分の割合でノズル(6) から脱脂室
(2) 内にミストＭとして噴霧する。上記脱脂工程は４時
間継続され、この間に上記バインダーのうちパラフィン
ワックスが略完全に除去された。なお上記脱脂工程にお
いて脱脂室(2) 内の溶剤蒸気Ｖは排出管(9) から排出さ
れるが、コンデンサー(8) によって凝縮されて脱脂室
(2) 内に還流する。

【００１５】〔実施例２〕図２に本発明の脱脂装置(1)
の他の実施例を示す。本実施例においては、コンデンサ
ー(8) で凝縮して還流する溶剤を受ける受器(10)を脱脂
室(2) の側方に配置し、還流管(11)によって該受器(10)
を排出管(9) のコンデンサー(8) 下側部分に連絡し、該
受器(10)とノズル(6) とを溶剤供給経路(12)によって連
絡する。本実施例ではノズル(6) から噴霧される溶剤は
コンデンサー(8) で凝縮され受器(10)内に還流備蓄され
る溶剤Ｓであり、パラフィンワックスを含まない精製さ
れたものであるから、実施例１よりも脱脂速度が早くな
る。

【００１６】

【発明の効果】したがって本発明では、無機粉末成形体
を変形させることなく、迅速に脱脂を行なうことが出来
る。

【００１７】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の脱脂装置の一実施例の模式図

【図２】他の実施例の模式図

【符号の説明】

1 脱脂装置 2 脱脂室 5 棚 6 溶剤噴霧ノズル 13 溶剤蒸発部 Ｗ 成形体 Ｓ 溶剤 Ｖ 溶剤蒸気 Ｍ ミスト

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【手続補正書】

【提出日】平成４年７月１０日

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１７

【補正方法】削除

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】無機粉末と有機バインダーとの混合物から
   なる粉末成形体を、上記有機バインダーの少なくとも一
   種を溶解する溶剤の蒸気とミストとの混合雰囲気中にお
   いて脱脂することを特徴とする粉末成形体の脱脂方法
2. 【請求項２】脱脂室の底部には溶剤蒸発部を配し、その
   上側に粉末成形体設置部と溶剤ミスト噴霧装置とを配し
   たことを特徴とする粉末成形体の脱脂装置