JP2014066652A - 鉄鋼中のアルミナ定量分析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】不活性ガス雰囲気中で、鉄鋼試料と対電極との間で多数回のスパーク放電を行い、アルミニウムと鉄の発光強度比を放電パルス毎に求める。次いで、横軸を放電パルスの発光強度比、縦軸を頻度とした度数分布図を作図し、該度数分布図から発光強度比の最頻値を計算し、該最頻値と該最頻値より小さい発光強度比の標準偏差を基準として定められる閾値αを用いて、アルミナ分率を求める。次いで、得られた放電パルス毎の発光強度比を小さい方から配列し、一定位置の発光強度比を代表Al強度比とし、得られたアルミナ分率と代表Al強度比の積からアルミナ強度比を求める。次いで、得られたアルミナ強度比を用いて、鉄鋼試料中のアルミナ量を算出する。
【選択図】なし
Description
[1]不活性ガス雰囲気中で、鉄鋼試料と対電極との間で多数回のスパーク放電を行い、得られた元素の固有スペクトル強度に基づいて鉄鋼試料中のアルミナの含有率を求める方法であって、以下のステップを有することを特徴とする鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
ア)多数回の放電パルスによるアルミニウムと鉄の発光強度比を放電パルス毎に求める強度比計算ステップ
イ)横軸を発光強度比、縦軸を頻度とした度数分布図を作図し、該度数分布図から発光強度比の最頻値を計算し、該最頻値と該最頻値より小さい発光強度比の標準偏差を基準として定められる閾値αを用いて、下記式によりアルミナ分率を求めるアルミナ分率算出ステップ
アルミナ分率=発光強度比が閾値αより大きいパルス数/全パルス数
ウ)前記強度比計算ステップにより得られた放電パルス毎の発光強度比を小さい方から配列し、一定位置の発光強度比を代表Al強度比とし、次いで、前記アルミナ分率算出ステップで得られたアルミナ分率と代表Al強度比の積からアルミナ強度比を求めるアルミナ強度比算出ステップ
ェ)前記アルミナ強度比算出ステップにおいて算出したアルミナ強度比を用いて、鉄鋼試料中のアルミナ量を算出するアルミナ定量ステップ
[2]前記アルミナ分率算出ステップにおいて、閾値αを、下記式により求めることを特徴とする[1]に記載の鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
閾値α=発光強度比の最頻値+最頻値より小さい発光強度比の標準偏差×f
なお、10≦f≦22とする。
[3]前記アルミナ強度比算出ステップにおいて、放電パルス毎の発光強度比を小さい方から配列するにあたり、発光強度比の小さい方から全パルス数の30%以内のいずれかの位置の発光強度比を代表アルミ強度比として抽出することを特徴とする[1]または[2]に記載の鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
[4]前記鉄鋼試料が精錬工程におけるアルミニウム脱酸後の溶鋼から採取した試料であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
[5]前記鉄鋼試料中のアルミナ形態のAl含有率が50質量ppm以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
[6]前記アルミナ分率算出ステップにおいて、度数分布図を作図するにあたり、横軸の区分値を放電パルスの発光強度比の中央値の2〜5%の範囲のいずれかの値とし、各度数値を結ぶ折れ線を平滑曲線化して最頻値を求めることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
製鋼精錬工程において、脱酸後の精錬処理中に採取した試料と、精錬処理終了時に採取した試料をそれぞれスパーク放電により発光させ、放電パルス毎にアルミニウムの発光強度と鉄の発光強度の比(アルミニウムの発光強度を鉄の発光強度で除した値であり、以下、発光強度比と称す。)を求めた。スパーク放電による発光はそれぞれ2000回行い、すべてにつき、発光強度比を求めた。得られた結果を放電パルス(スパーク放電)の時系列順に図1および図2に示す。それぞれ、図1は精錬処理中に採取した試料であり、アルミナ形態のAl含有量は43ppmである。図2は精錬処理終了時の試料であり、アルミナ形態のAl含有量は23ppmである。なお、アルミナ形態のAl含有量は、予め試料中の酸化物がアルミナ単体(複合酸化物ではなくAl2O3からなるアルミナ)であることを抽出残渣で確認し、鋼中酸素分析値から換算して求めた。アルミナ形態のAl含有量が多い図1の精錬処理中に採取した試料では、スパイク状の発光データが不規則に多く観測されており、これが鋼中に不均一に存在するアルミナを含んだ放電に由来すると考えられている。一方で、アルミナ形態のAl含有量の少ない図2の精錬処理終了時に採取した試料では、スパイク状の発光の頻度が図1に比べ少ないことから、スパイク状の発光は、鋼中に不均一に存在するアルミナを含んだ放電によって生成されたと考えられる。
閾値α=発光強度比の最頻値+最頻値より小さい発光強度比の標準偏差×f
ここで、fの値は、10≦f≦22、より好ましくは15≦f≦20とすることが好ましい。fの値が10より小さい場合、固溶Alに由来するデータが多くなるため、アルミナ量との相関が悪くなる。一方、fの値が22より大きい場合、抽出されるアルミナ由来の信号を含むパルス数が少なくなりすぎるため、分析値のバラツキが大きくなる。図5に後述するように、このような場合には、分析正確さが4ppmを超えてしまい、あまり精度のよいものではなくなる。
まず、分析試料2と対電極3との間にて通常慣用の方法でスパーク放電を行い、アルミニウムと鉄の放電パルス毎の発光強度値をそれぞれ測定し、放電パルス毎にAlとFeの発光強度比(以下、発光強度比と称する事もある。)を計算する。ここで、放電が過度に繰り返されると鋼中のアルミナが微細分散し固溶Alとの判別が困難となるので、放電数は2000パルス以内とすることが望ましい。
横軸を前記発光強度比、縦軸を頻度とした度数分布図を作図し、該度数分布図から発光強度比の最頻値を計算する。次いで、この最頻値を基準として定められる閾値αを用いて、下記式によりアルミナ分率を求める。
アルミナ分率=発光強度比が閾値αより大きいパルス数/全パルス数
まず、以下の手順で発光強度比の最頻値を算出する。
1)全放電パルスの発光強度比の中央値を求める。
2)1)で求めた中央値の2〜5%の値を求める。
3)2)の値を一区分として、横軸が発光強度比、縦軸が度数となる、放電パルスの発光強度比の度数分布図を作成する。
4)各度数値を結ぶ折れ線をデータ処理によって平滑曲線化して、得られた曲線の最大値
を与える発光強度比を最頻値とする。
前記強度比計算ステップで得られた放電パルス毎の発光強度比を小さい順に並び替えて、一定位置の発光強度比を代表Al強度比として抽出する。特に、アルミナの影響が少ない発光強度比の小さい方から全パルス数の30%以内、より好ましくは5〜25%のいずれかの位置の発光強度比を代表Al強度比とすることが好ましい。分析波長としてはアルミニウムの場合には、396.1nm、394.4nm、308.2nmが適当であり、鉄の場合には、187.7nm、271.4nm、281.3nm、287.5nmが適当である。
次いで、アルミナ分率算出ステップで求めたアルミナ分率と代表Al強度比との積をアルミナ強度比とする。
算出したアルミナ強度比を、予め作成してあるアルミナ強度比と鋼中アルミナ濃度との関係式(検量線)に代入することにより、試料中のアルミナ濃度を直接導出することができる。
アルミナ強度比と鋼中アルミナ濃度との関係式(検量線)は、例えば、同様の精錬工程から採取した複数の試料について、JIS G1257などの方法によって、アルミナ濃度(酸不溶性アルミ)を定量し、一方で、本発明によるアルミナ強度比を求め、それらの相関を求めることにより得られる。
表1に示す鉄鋼試料を研磨したのち、図4に示すスパーク放電式発光分光分析装置を用いて、各試料につき2000パルスの放電測定を4回行った。1回のパルスによる放電エネルギーは0.2Jであった。スパーク放電式発光分光分析装置としてはARL4460型(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用した。得られた2000パルスの測定データを用いて、発光強度比の度数分布図を作成し最頻値を求めた。次に、発光強度比の度数分布図の最頻値と、最頻値より小さい発光強度比の標準偏差のf倍との和を閾値として、アルミナ分率を求めた。
代表Al強度比は、得られた放電パルス毎の発光強度比を小さい順から配列し、発光強度比の小さい方より全パルス数の20%に相当する400番目の発光強度比を用いた。これらのアルミナ分率と代表Al強度比との積をアルミナ強度比とし、予めアルミナ濃度が既知の鉄鋼試料で作製した検量線に代入して、アルミナ濃度に換算した。これを2000パルスの放電測定ごとに求め、4回分の平均値をその試料のアルミナ濃度とした。
σd:分析正確さ
N:表1の試料数(N=12)
xi:表1の試料番号iについての、化学分析値に対する得られた分析値の差(アルミナ分析値−化学分析値)
とする。
比較例として、特許文献1、2および3に記載の従来の方法により、アルミナ分析値を求めた。表1に示す鉄鋼試料を研磨したのち、発明例と同じ装置を用いて同様の方法にて2000パルスの放電測定を4回行った。得られた2000パルスの測定データを特許文献1、2および3の方法に従いデータ処理し、予めアルミナ濃度が既知の鉄鋼試料で作製した検量線に代入してアルミナ濃度に換算した。これを2000パルスの放電測定ごとに求め、4回分の平均値をその試料のアルミナ濃度とした。図7に特許文献1、2および3の従来の方法により求めたアルミナ分析値と化学分析値との相関および分析正確さを示す。
Δave:誤差平均値
N:表1の試料数(N=12)
xi:表1の試料番号iについての、化学分析値に対する得られた分析値の差(アルミナ分析値−化学分析値)
とする。
2 分析試料
3 対電極
4 測光装置
5 演算処理装置
6 検出器
7 回折格子
8 スリット
9 表示部
10 発光部
11 分光器
Claims (6)
- 不活性ガス雰囲気中で、鉄鋼試料と対電極との間で多数回のスパーク放電を行い、得られた元素の固有スペクトル強度に基づいて鉄鋼試料中のアルミナの含有率を求める方法であって、以下のステップを有することを特徴とする鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
ア)多数回の放電パルスによるアルミニウムと鉄の発光強度比を放電パルス毎に求める強度比計算ステップ
イ)横軸を発光強度比、縦軸を頻度とした度数分布図を作図し、該度数分布図から発光強度比の最頻値を計算し、該最頻値と該最頻値より小さい発光強度比の標準偏差を基準として定められる閾値αを用いて、下記式によりアルミナ分率を求めるアルミナ分率算出ステップ
アルミナ分率=発光強度比が閾値αより大きいパルス数/全パルス数
ウ)前記強度比計算ステップにより得られた放電パルス毎の発光強度比を小さい方から配列し、一定位置の発光強度比を代表Al強度比とし、次いで、前記アルミナ分率算出ステップで得られたアルミナ分率と代表Al強度比の積からアルミナ強度比を求めるアルミナ強度比算出ステップ
ェ)前記アルミナ強度比算出ステップにおいて算出したアルミナ強度比を用いて、鉄鋼試料中のアルミナ量を算出するアルミナ定量ステップ - 前記アルミナ分率算出ステップにおいて、閾値αを、下記式により求めることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
閾値α=発光強度比の最頻値+最頻値より小さい発光強度比の標準偏差×f
なお、10≦f≦22とする。 - 前記アルミナ強度比算出ステップにおいて、放電パルス毎の発光強度比を小さい方から配列するにあたり、発光強度比の小さい方から全パルス数の30%以内のいずれかの位置の発光強度比を代表アルミ強度比として抽出することを特徴とする請求項1または2に記載の鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
- 前記鉄鋼試料が精錬工程におけるアルミニウム脱酸後の溶鋼から採取した試料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
- 前記鉄鋼試料中のアルミナ形態のAl含有率が50質量ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
- 前記アルミナ分率算出ステップにおいて、度数分布図を作図するにあたり、横軸の区分値を放電パルス毎の発光強度比の中央値の2〜5%の範囲のいずれかの値とし、各度数値を結ぶ折れ線を平滑曲線化して最頻値を求めることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鉄鋼中のアルミナ定量分析方法。
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