JP2014059550A - 近赤外線カットフィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】近赤外線吸収色素を効果的に用いた、単独であるいは他の選択波長遮蔽部材と組合せて用いた際に、近赤外線遮蔽特性に優れるとともに、十分な小型化、薄型化ができる近赤外線カットフィルタを提供する。
【解決手段】スクアリリウム骨格の両側に少なくともベンゼン環と、環の構成原子として窒素原子を含む三重縮合環構造が結合した近赤外線吸収色素(A1)から選択される1種以上を含む近赤外線吸収色素(A)と屈折率(n)が1.45以上の透明樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収層を備える近赤外線カットフィルタ。
【選択図】図4

Description

本発明は、近赤外線遮蔽効果を有する近赤外線カットフィルタに関する。
近年、様々な用途に、可視波長領域の光は十分に透過するが、近赤外線波長領域の光は遮蔽する光学フィルタが使用されている。
例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオ等の撮像装置には、固体撮像素子(CCD、CMOS等)が使用されている。固体撮像素子の感度を人間の視感度に近づけるため、撮像レンズと固体撮像素子との間に光学フィルタを配置している。
これらのうちでも撮像装置用の光学フィルタとしては、近赤外線波長領域の光を選択的に吸収するように、フツリン酸塩系ガラスや、リン酸塩系ガラスにCuO等を添加したガラスフィルタが知られている。しかし、光吸収型のガラスフィルタは、高価である上に、薄型化にするとガラスの成分に基づく機能が十分に発揮できないおそれがあり、近年の撮像装置の小型化・薄型化要求に十分に応えることができないという問題があった。
そこで、上記問題を解決すべく、基板上に、例えば酸化シリコン(SiO)層と酸化チタン(TiO)層とを交互に積層し、光の干渉によって近赤外線波長領域の光を反射して遮蔽する反射型の干渉フィルタ、透明樹脂中に近赤外線波長領域の光を吸収する色素を含有させたフィルム等が開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、これらを組み合わせた近赤外線を吸収する色素を含有する樹脂層と近赤外線を反射する層とを積層した光学フィルタも開発されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、近赤外線を吸収する色素を含有する樹脂層については、例えば、特許文献3に記載されている。
しかしながら、これら従来の撮像装置用の光学フィルタでは、近赤外線領域の波長の光を遮蔽する性能や、暗部をより明るく撮影するために求められる波長帯(630〜700nm)の透過性が十分でない。さらに、固体撮像素子の機能を阻害させないという層形成上の制約もあるため、十分な近赤外線カットフィルタ機能を有する光学フィルタが得られていないのが現状である。
一方、700〜750nm付近に最大吸収波長を示し、波長630〜700nmの光の吸収曲線の傾斜が急峻である近赤外線吸収色素は、他の遮蔽成分や遮蔽部材と組合せて用いることにより、良好な近赤外線遮蔽特性が得られる。これを透明樹脂、例えば、シクロオレフィン樹脂に分散した樹脂層として近赤外線カットフィルタに用いられている。しかし、このような近赤外線吸収色素は、近赤外線吸収波長域が狭く、他の遮蔽部材と組合せても吸収が十分でない波長域が出現する場合が多く問題であった。
特開2008−181028号公報 特開2008−51985号公報 特開2012−008532号公報
本発明は、近赤外線遮蔽特性に優れるとともに、十分な小型化、薄型化ができる近赤外線カットフィルタの提供を目的とする。
本発明は、以下の構成を有する近赤外線カットフィルタを提供する。
[1]近赤外線吸収色素(A)と透明樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収層を有する近赤外線カットフィルタであって、
前記近赤外線吸収色素(A)が、下記式(A1)で示される近赤外線吸収色素(A1)から選択される1種以上を含み、
前記透明樹脂(B)の屈折率(n)が1.45以上であることを特徴とする近赤外線カットフィルタ。
Figure 2014059550
ただし、式(A1)中の記号は以下のとおりである。
〜Xはそれぞれ独立して、1つ以上の水素原子が置換基Zで置換されていてもよい下記式(1)または式(2)で示される2価の有機基である。
−(CHn1− …(1)
式(1)中n1は、1〜4の整数である。
−(CHn2−Y−(CHn3− …(2)
式(2)中Yは、O、S、Se、−S(=O)−、−C(=O)−または−NR−(Rは、水素原子または置換基Zである。)であり、n2とn3はそれぞれ独立して0〜3の整数であり、n2+n3は0〜3の整数である。
置換基Zは、ハロゲン原子;1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に酸素原子、−O−C(=O)−または−S(=O)−を有してもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜12の飽和もしくは不飽和炭化水素基または飽和環状炭化水素基;または、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基もしくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基または炭素数7〜19のアルアリール基を示す。
およびRは、それぞれ独立して、−C(=O)H、−SOH、−C(=O)Rまたは−SO(Rは、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に酸素原子、−O−C(=O)−、−C(=O)−または−S(=O)−を有してもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜30の飽和もしくは不飽和炭化水素基もしくは飽和環状炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数7〜19のアルアリール基を示す。
[2]前記近赤外線吸収色素(A1)は、ジクロロメタンに溶解して測定される波長域400〜900nmの光の吸収スペクトルにおいて、下記(i−1)および(i−2)を満たす[1]記載の近赤外線カットフィルタ。
(i−1)吸収極大波長λmaxが、690nm≦λmax≦720nm
(i−2)λ0.9−λ0.1≦50nm
(ただし、λ0.9およびλ0.1は、それぞれλmaxにおける吸光度を1としたときに、λmaxより短波長側において吸光度が0.9となる波長のうちでλmaxに最も近い波長、およびλmaxより短波長側において吸光度が0.1となる波長のうちでλmaxに最も近い波長である。)
[3]前記近赤外線吸収色素(A1)を下記(ii−1)および(ii−2)の条件を満たす含有量で含有する前記近赤外線吸収層が、下記(ii−3)および(ii−4)の条件を満たす[1]または[2]記載の近赤外線カットフィルタ。
(ii−1)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も短い波長λが、680nm≦λ≦720nm
(ii−2)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も長い波長λと前記λとの関係が、λ−λ≧30nm
(ii−3)450〜600nmの波長域における平均透過率が70%以上
(ii−4)下記式(3)で表わされる透過率の変化量(D)が−0.8以下
D(%/nm)=[T700(%)−T630(%)]/[700(nm)−630(nm)]…(3)
式(3)中、T700は、前記近赤外線吸収層の波長700nmにおける透過率であり、T630は、前記近赤外線吸収層の波長630nmにおける透過率である。
[4]前記近赤外線吸収色素(A1)は、X〜Xがそれぞれ独立して、式(1)のn1が2または3であるか、式(2)のYが酸素原子でありn2およびn3がそれぞれ独立に0〜2でありn2+n3が1または2である、2価の有機基であり、
前記置換基Zが、ハロゲン原子;1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜12の飽和または不飽和炭化水素基もしくは飽和環状炭化水素基;または、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基またはアミノ基に置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基もしくは炭素数7〜19のアルアリール基である[1]〜[3]のいずれかに記載の近赤外線カットフィルタ。
[5]前記近赤外線吸収色素(A1)は、RおよびRがそれぞれ独立して、−C(=O)Hまたは−C(=O)R(Rは、1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数5〜20の飽和または不飽和炭化水素基もしくは飽和環状炭化水素基、炭素数6〜15のアリール基もしくは炭素数7〜15のアルアリール基)である[1]〜[4]のいずれかに記載の近赤外線カットフィルタ。
[6]前記透明樹脂(B)が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の近赤外線カットフィルタ。
[7]前記透明樹脂(B)100質量部に対する前記近赤外線吸収色素(A1)の割合が0.1〜5質量部である[1]〜[6]のいずれかに記載の近赤外線カットフィルタ。
[8]前記近赤外線吸収層の片側または両側に、下記(iii−1)および(iii−2)特性を有する選択波長遮蔽層を有する[1]〜[7]のいずれかに記載の近赤外線カットフィルタ。
(iii−1)420〜695nmの波長域において透過率が90%以上
(iii−2)前記近赤外線吸収層の650〜800nmの波長域における透過率が1%となる最も長い波長λから1100nmまでの波長域において透過率が1%以下
[9]前記選択波長遮蔽層は、屈折率(n)が1.45以上1.55未満の誘電体膜と屈折率(n)が2.2〜2.5の誘電体膜とを交互に積層した誘電体多層膜からなる[8]記載の近赤外線カットフィルタ。
[10]下記(iv−1)〜(iv−3)の条件を満たす[8]または[9]記載の近赤外線カットフィルタ。
(iv−1)420〜620nmの波長域における平均透過率が80%以上
(iv−2)710〜1100nmの波長域における透過率が1%以下
(iv−3)600〜700nmの波長域において、主面に直交する方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値と、主面に直交する線に対して26度の角度をなす方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値の差が3nm以下
本発明によれば、良好な近赤外線遮蔽機能を有し、かつ撮像装置の十分な小型化、薄型化および低コスト化を達成した近赤外線カットフィルタを提供できる。
本発明に用いる近赤外線吸収色素(A1)の1例の吸収スペクトルを示す図である。 図1の吸収スペクトルの近赤外線波長領域を拡大して示す図である。 本発明の実施形態に係る近赤外線カットフィルタを概略的に示す断面図である。 本発明の実施例と比較例における近赤外線吸収層の透過スペクトルを示す図である。 図4の透過スペクトルの近赤外線波長領域を拡大して示す図である。 本発明の実施形態に係る近赤外線吸収層と組合せて用いる誘電体多層膜の透過スペクトルを示す図である。(a)は選択波長遮蔽層の図であり、(b)は反射防止層の図である。 本発明の実施例と比較例の透過スペクトルを示す図である。 図7の透過スペクトルと入射角26度の透過スペクトルにおける近赤外線波長領域を拡大して示す図である。(a)は実施例の図であり、(b)は比較例の図である。
以下に本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、下記説明に限定して解釈されるものではない。
本発明の近赤外線カットフィルタ(以下、本フィルタという)は、近赤外線吸収色素(A)と透明樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収層を有する。色素(A)が、上記式(A1)で示される色素(A1)から選択される1種以上を含み、前記透明樹脂(B)の屈折率(n)が1.45以上である。
ここで、本明細書において屈折率(n)とは、20℃において波長589nmにおける屈折率をいい、特に断りのない限り、屈折率とは屈折率(n)をいう。
本明細書においては、式(A1)で示される近赤外線吸収色素を色素(A1)という。
本フィルタは、近赤外線吸収層単独であるいは他の選択波長遮蔽部材と組合せて用いた際に、良好な近赤外線遮蔽機能を有し、かつ撮像装置の十分な小型化、薄型化、低コスト化を達成できる。
なお、良好な近赤外線遮蔽機能を有するとは、波長630〜700nmの光の吸収曲線の傾斜が急峻であり、かつ近赤外線吸収波長域が広く、他の選択波長遮蔽部材と組合せて用いた場合に吸収が十分でない波長域が出現することが殆どないことをいう。
近赤外線カットフィルタ(以下、NIRフィルタという)は、一般に、700nm以上の赤外領域の光を精度よく遮蔽でき、遮蔽する波長域も広く選択できる性能を有する選択波長遮蔽部材が使用されている。選択波長遮蔽部材としては、屈折率が異なる誘電体膜を交互に積層した誘電体多層膜が広く使用されている。誘電体多層膜は、光の入射角により吸収波長がシフトし角度依存性を有する。しかし、本フィルタにおいては、角度依存性による影響を受けることなく、必要な波長域において十分吸収できる。
以下、本フィルタに使用する色素(A)と、屈折率が1.45以上の透明樹脂(B)を含有する近赤外線吸収層について説明する。
(近赤外線吸収色素(A))
色素(A)は、下記式(A1)で示される色素から選択される1種以上の色素を含有する。以下、式(1)で示される基を基(1)と略し、他の基についても同様とする。
Figure 2014059550
式(A1)中の記号は以下のとおりである。
〜Xはそれぞれ独立して、1つ以上の水素原子が以下の置換基Zで置換されていてもよい下記式(1)または式(2)で示される2価の有機基である。
−(CHn1− …(1)
式(1)中でn1は、1〜4の整数である。
−(CHn2−Y−(CHn3− …(2)
式(2)中Yは、O、S、Se、−S(=O)−、−C(=O)−または−NR−(Rは、水素原子または置換基Zである。)であり、n2とn3はそれぞれ独立して0〜3の整数であり、n2+n3は0〜3の整数である。
置換基Zは、ハロゲン原子;1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に酸素原子、−O−C(=O)−結合または−S(=O)−結合を有してもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜12の飽和もしくは不飽和炭化水素基または飽和環状炭化水素基;または、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基もしくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基または炭素数7〜19のアルアリール基を示す。
式(A1)において、RおよびRは、それぞれ独立して、−C(=O)H、−SOH、−C(=O)Rまたは−SO(Rは、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に酸素原子、−O−C(=O)−結合、−C(=O)−結合または−S(=O)−結合を有してもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜30の飽和もしくは不飽和炭化水素基もしくは飽和環状炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数7〜19のアルアリール基を示す。ただし、−O−C(=O)−結合および−C(=O)−結合の炭素原子は、飽和もしくは不飽和炭化水素基、アリール基またはアルアリール基の炭素数に含まれない。
本明細書において、アリール基は芳香族化合物が有する芳香環、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル、フラン環、チオフェン環、ピロール環等を構成する炭素原子を介して結合する基である。アルアリール基は、1以上のアリール基で置換された、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和炭化水素基または飽和環状炭化水素基をいう。
色素(A1)は、分子構造の中央にスクアリリウム骨格を有する、いわゆるスクアリリウム系近赤外線吸収色素である。色素(A1)は、スクアリリウム骨格の左右に各1個のベンゼン環が結合し、その各ベンゼン環は2位で−NHRまたは−NHRと、4位で窒素原子とそれぞれ結合する。さらに、色素(A1)は、4位に結合する窒素原子と、ベンゼン環の4位と3位の炭素原子を含む複素環および該窒素原子とベンゼン環の4位と5位の炭素原子を含む複素環が形成された三重縮合環構造を、左右に1個ずつ有する。
この三重縮合環構造を有することで、吸収ピークが急峻になることを見出した。色素(A1)は近赤外線領域、具体的には、波長630〜700nmの領域において光の吸収曲線の傾斜を急峻にできる。そのため、色素(A1)を含有する近赤外線吸収層は、高い可視光透過率を維持しながら近赤外線吸収波長域の幅を広く確保できる。
式(A1)において、左右に1個ずつ存在する三重縮合環構造を構成するベンゼン環以外の2つの環の構成は、上記X〜Xにより決定される。すなわち、左右の三重縮合環構造においてベンゼン環以外の2つの環は、それぞれ独立して員数が4〜7の複素環である。前記複素環の一部を構成する2価の基、X〜Xは、骨格が炭素原子のみで構成されてもよく(X〜Xが基(1))、炭素原子以外に、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を含む組合せであってもよい(X〜Xが基(2))。
式(1)におけるn1は、複素環の熱的安定性の観点から2または3が好ましい。式(2)におけるYは酸素原子が好ましく、n2とn3は、複素環の熱的安定性の観点からそれぞれ独立に0〜2で、n2+n3は1または2が好ましい。すなわち、式(A1)中の左右2個の三重縮合環構造においてベンゼン環以外の2つの環は、好ましくは、それぞれ独立して環の構成原子に酸素原子を含んでもよい5員環または6員環である。ただし、式(2)において、酸素原子の位置は、特に制限されない。すなわち、窒素原子と酸素原子が結合してもよく、ベンゼン環に酸素原子が直接結合してもよい。また、炭素原子に挟まれるように酸素原子が位置してもよい。
置換基Zは、ハロゲン原子;1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜12の飽和もしくは不飽和炭化水素基もしくは飽和環状炭化水素基;または、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基もしくはアミノ基に置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基または炭素数7〜19のアルアリール基が好ましい。ハロゲン原子としては、化学安定性に優れる、フッ素原子が好ましい。上記した、各炭化水素基を置換するハロゲン原子もフッ素原子が好ましい。
置換基Zにおいて、溶解性の観点から、飽和または不飽和炭化水素基の炭素数は1〜10がより好ましい。また合成上の利便性の観点から、炭素数は1〜8がさらに好ましい。また、合成上の利便性から、飽和または不飽和炭化水素基は、飽和環構造を含んでもよい直鎖状、分枝状または環状の飽和炭化水素基が好ましく、直鎖状または分枝状の飽和炭化水素基がより好ましい。アリール基は、溶解性の観点からベンゼン環を1つのみ有し、炭素数が6〜11であるとより好ましい。また、アリアリール基は、溶解性の観点からベンゼン環を1つのみ有し、その炭素数は7〜12がより好ましい。
前記基(1)および基(2)の水素原子は全て置換基Zで置換されていてもよいが、好ましくは、各基で置換基Zの数は1〜4個であり、より好ましくは1〜2個である。また、置換基Zの位置は特に制限されない。合成上の観点から、置換基Zの位置は、ベンゼン環と結合する炭素原子が好ましい。
前記RおよびRは、色素(A1)の透明樹脂(B)に対する溶解性を向上する観点から、−C(=O)H、−C(=O)Rまたは−SOが好ましい。生産性向上の観点から、−C(=O)Hまたは−C(=O)Rがより好ましい。
は、1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、炭素原子間に酸素原子、−O−C(=O)−結合、−C(=O)−結合または−S(=O)−結合を有してもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜30の飽和もしくは不飽和炭化水素基もしくは飽和環状炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数7〜19のアルアリール基が好ましい。
前記Rが、飽和炭化水素基である場合、色素(A1)の透明樹脂(B)に対する溶解性を高める観点から、飽和炭化水素基の炭素数は、5〜25がより好ましく、5〜20がさらに好ましく、7〜20が特に好ましい。
の具体例を示すと、直鎖状の飽和炭化水素基として、具体的には、以下の式(1a)、(1b)で示される基が挙げられる。分枝状の飽和炭化水素基としては、具体的には、以下の式(1c)〜(1f)で示される基が挙げられる。なかでも、樹脂に対する溶解性向上の観点から末端に分枝を有することが好ましい。飽和環構造を含む直鎖状または分枝状の飽和炭化水素基として、具体的には、以下の式(1h)、(1i)で示される基が、飽和環状炭化水素基として、具体的には、以下の式(1g)で示される基が挙げられる。飽和環構造を含む、または飽和環状炭化水素基は、耐熱性を高める観点からアダマンチル環やシクロヘキシル環を含む基が好ましい。
Figure 2014059550
また、炭素原子間に酸素原子または、−O−C(=O)−結合を有する、直鎖状、分枝状または環状の炭化水素基について、好ましい炭素数は上記と同様である。ただし、この炭素数には−O−C(=O)−結合の炭素原子は含まれない。酸素原子を有する場合に酸素原子の数は炭素数より少なければ特に制限されない。炭素原子間に酸素原子を有する環状の炭化水素基としては、テトラヒドロフラニル基、オキセタニル基、テトラヒドロピラニル基等の環状エーテル基が挙げられる。
炭素原子間に酸素原子を含む炭化水素基として具体的には、以下の式(1j)〜(1l)で示される基が挙げられる。また、−O−C(=O)−結合を有する炭化水素基として具体的には、以下の式(1m)で示される基が挙げられる。
Figure 2014059550
前記Rが、不飽和炭化水素基である場合、色素(A1)の透明樹脂(B)に対する溶解性を高める観点から、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の不飽和炭化水素基の炭素数は、4〜20が好ましい。このような、不飽和炭化水素基として具体的には、以下の式(1n)で示される基が挙げられる。
Figure 2014059550
前記アリール基の炭素数の上限は、色素(A1)の透明樹脂(B)に対する溶解性を高める観点から15がより好ましく、10がさらに好ましい。このようなアリール基として、低級飽和炭化水素基置換のフェニル基が好ましい。前記アリール基として、具体的には、以下の式(1o)、(1p)で示される基が挙げられる。なお、本明細書において低級飽和炭化水素基とは、炭素数1〜5の直鎖状または分枝状の飽和炭化水素基をいう。
Figure 2014059550
前記アルアリール基の炭素数は、色素(A1)の透明樹脂(B)に対する溶解性を高める観点から上限は15がより好ましい。アルアリール基のアリール基部分は非置換または低級飽和炭化水素基置換のフェニル基が好ましく、アリール基は2以上存在してもよい。アルアリール基の飽和炭化水素基部分は炭素数1〜9の直鎖状または分枝状の飽和炭化水素基が好ましい。アルアリール基は、炭素原子間に酸素原子を有してもよい。このようなアルアリール基として、具体的には、以下の式(1q)〜(1t)で示される基が挙げられる。
Figure 2014059550
前記Rは、合成の利便性から、1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素数7〜20の飽和炭化水素基がより好ましい。この場合のRとして、1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい、基(1b)、基(1d)、基(1e)、基(1f)等が溶解性の観点からより好ましく、フッ素原子による置換がさらに好ましい。これらの中でも特に好ましいRは、置換されていない基(1b)、基(1d)、基(1e)、基(1f)等である。
ここで、式(A1)において、スクアリリウム骨格を中心にして左右に結合する三重縮合環は、生産性の観点から−NHRおよび−NHRを含めて対称であることが好ましい。具体的には、XとX、XとX、および、−NHRと−NHRがそれぞれ同じ基であることが好ましい。対称であれば、後述する近赤外線吸収能が向上するため好ましい。本明細書において、前記対称とは、スクアリリウム骨格を中心として、点対称をいう。
式(A1)について、XとX、XとXがそれぞれ同じ基である具体的な構造を、変形例毎に異なる色素分類番号を付し、表1に示す。表1において、X〜Xは、それぞれが独立にn1が2または3である基(1)、もしくは、Yが酸素原子でありn2およびn3がそれぞれ独立に0〜2でありn2+n3が1または2である基(2)である。
表1において、色素分類番号11〜17は、XとX、および、XとXがともに、基(1)においてn1が2の下記式(1−1)で示される基、または、n1が3の下記式(1−2)で示される基である場合の変形例である。式(1−1)、(1−2)に示すとおりこの骨格において窒素原子側から数えて1番目の炭素原子に結合する原子または1価の基をR11、R12とし、2番目の炭素原子に結合する原子または1価の基をR21、R22とし、3番目の炭素原子に結合する原子または1価の基をR31、R32とする。
Figure 2014059550
表1において、色素分類番号18〜87は、XとX、または、XとXが、それぞれ基(1−1)、基(1−2)または基(2)に分類される下記式(2−11)〜(2−23)に示されるいずれかの基である場合の変形例である。n2+n3が1の基(2)において、酸素原子がベンゼン環に近い順に式(2−11)、式(2−12)とした。また、n2+n3が2の基(2)において、酸素原子がベンゼン環に近い順に式(2−21)、式(2−22)、式(2−23)とした。各式におけるR11〜R32は、上記式(1−1)、式(1−2)の場合と同様である。
Figure 2014059550
表1に、色素分類番号毎に、XとX、または、XとXの基(1−1)〜基(2−23)の別と、R11〜R32の具体例を示す。なお、表1中の斜線は、n1=2またはn2+n3が1のため、R31、R32は存在しない場合である。表中「−」は、骨格上、酸素原子に結合するR11〜R32は存在しない場合である。
Figure 2014059550
なお、表1中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Arは炭素数1〜10の直鎖状または分枝状の飽和炭化水素基を示す。
色素(A1)の中で、表1で色素分類番号11〜17の色素(11)〜(17)の構造式を式(11)〜(17)として以下に示す。また、RおよびRは、式(A1)におけるRおよびRと同様に規定される。
Figure 2014059550
色素(A1)は、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン(以下、スクアリン酸という)と、スクアリン酸と結合して、式(A1)に示す構造を形成可能な三重縮合環を有する化合物とを反応させることで製造できる。例えば、色素(A1)が左右対称の構造である場合には、スクアリン酸1当量に対して上記範囲で所望の構造の三重縮合環を有する化合物2当量を反応させればよい。
色素(A1)は、例えば、以下の反応式(F1)に示す合成経路にしたがって製造できる。反応式(F1)は、ジュロリジンの8位に−NH−C(=O)Rを導入するために、出発物質として8−ヒドロキシジュロリジン(反応式(F1)中の化合物(a))を用いた例である。
反応式(F1)では、まず、8−ヒドロキシジュロリジンにトリフルオロメタンスルホン酸無水物を反応させ、8−トリフルオロメタンスルホン酸ジュロリジン(化合物(b))とする。次いで、これにベンジルアミンを反応させ8−ベンジルアミノジュロリジン(化合物(c))を得、さらにこれを脱ベンジル化して8−アミノジュロリジン(化合物(d))を製造する。次いで、8−アミノジュロリジンのアミノ基に所望の置換基Rを有するカルボン酸塩化物(化合物(e))を反応させてジュロリジンの8位に−NH−C(=O)Rを有する化合物(f)を得る。次いで、化合物(f)2当量をスクアリン酸(化合物(g))1当量と反応させることで、色素(14−a)が得られる。ここで、反応式(F1)における各反応は、従来公知の反応であり、反応温度、反応時間、反応溶媒等の反応条件は常法により適宜選択できる。
Figure 2014059550
本フィルタに用いる色素(A1)は、波長域400〜900nmの光の吸収スペクトルにおいて、以下の2つの条件を満足することが好ましい。
(i−1)吸収極大波長λmaxが、690nm≦λmax≦720nm
(i−2)λ0.9−λ0.1≦50nm
ここで、本明細書において、前記吸収スペクトルは、色素をジクロロメタンに溶解して測定した吸収スペクトルをいう。
式(14)において−NHRおよび−NHRにおけるRおよびRがともに、−NH−C(=O)Rであり、Rが基(1e)である色素(14−2)の吸収スペクトルについて、図1および図2を用いて具体的に説明する。図1は、ジクロロメタンに色素(14−2)を溶かした溶液の波長域400〜900nmの吸収スペクトルであり、図2は、図1の中で、630〜750nmの波長域の拡大図である。
図2に示すとおり、色素(14−2)は、λmaxが704nmである。また、図2に示すとおり、(14−2)のλ0.9は697nmでありλ0.1は652nmである。また、これらの波長の差(λ0.9−λ0.1)は、697−652=45nmと算出できる。
色素(14−2)のように、吸収スペクトルが前記条件(i−1)および(i−2)を満足すれば、630〜700nmの波長域で吸収が急峻になるため好ましい。また、このような色素を、近赤外線吸収層に有するNIRフィルタは、良好な近赤外線遮蔽機能を有するため、好ましい。
なお、本フィルタにおいて上記効果を十分に発揮する観点から色素(A1)の吸収スペクトルにおいて、条件(i−1)は、695nm≦λmax≦720nmがより好ましく、700nm≦λmax≦720nmがさらに好ましい。また、条件(i−2)は、λ0.9−λ0.1≦46nmがより好ましい。
さらに、色素(A1)としては、上記波長域における吸収スペクトルが上記特性を有する以外に、例えば、図1に示すように、その吸収スペクトルにおいて、上記λmaxを有する吸収ピーク以外に半値全幅が100nm以下の形状がシャープな吸収ピークを有しないことが好ましい。
本発明においては、色素(A1)として、上記式(A1)で表される色素から選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、近赤外線域において光の吸収曲線の急峻性の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて色素(A1)とともに、それ以外の色素(A)を用いることも可能である。また、色素(A)は、実質的に、色素(A1)のみで構成されることが好ましく、色素(A1)の1種を単独で使用することがより好ましい。
(透明樹脂(B))
本フィルタに使用する近赤外吸収層は、前記色素(A)と屈折率1.45以上透明樹脂(B)とを有する。透明樹脂(B)の屈折率は、1.5以上が好ましく、1.6以上がより好ましい。透明樹脂(B)の屈折率の上限は特にないが、入手のしやすさ等から1.72程度が挙げられる。
透明樹脂(B)としては、屈折率が1.45以上の透明樹脂であれば、特に制限されない。具体的には、屈折率が1.45以上のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。透明樹脂全体として屈折率が1.45以上であれば、これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
上記のなかでも、色素(A1)の透明樹脂(B)に対する溶解性の観点から、透明樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エン・チオール樹脂、エポキシ樹脂、または環状オレフィン樹脂が好ましい。さらに、透明樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、または環状オレフィン樹脂がより好ましい。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等が好ましい。
透明樹脂(B)は、原料成分の分子構造を調整する等により、屈折率を上記範囲に調整して使用できる。具体的には、原料成分のポリマーの主鎖や側鎖に特定の構造を有することが挙げられる。ポリマー内に有する構造は特に限定されないが、例えば、下記式(B1)で示されるフルオレン骨格が挙げられる。なお、フルオレン骨格のうちでも、より高い屈折率および耐熱性が得られる点で、下記式(B2)で示される9,9−ビスフェニルフルオレン骨格が好ましい。
透明樹脂(B)としては、市販品を用いてもよい。アクリル樹脂の市販品としては、オグソールEA−F5003(商品名、大阪ガスケミカル社製、屈折率:1.60)を硬化させた樹脂が挙げられる。また、既にポリマーとして購入可能であるポリメチルメタクリレート(屈折率:1.49)、ポリイソブチルメタクリレート(屈折率:1.48)、いずれも東京化成工業社製のアクリル樹脂が挙げられる。
また、ポリエステル樹脂の市販品としては、OKPH4HT(屈折率:1.64)、OKPH4(屈折率:1.61)、B−OKP2(屈折率:1.64)、いずれも大坂ガスケミカル社製やバイロン103(東洋紡社製、屈折率:1.55)、ポリカーボネート樹脂としてLeXanML9103(sabic社製、屈折率1.59)、ポリマーアロイとしてはポリカーボネートとポリエステルのアロイとしてパンライトAM−8シリーズ(帝人化成社製)やxylex 7507(sabic社製)が挙げられる。
Figure 2014059550
前記フルオレン骨格や9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂が好ましい。
フルオレン骨格を有するアクリル樹脂としては、例えば、少なくとも、9,9−ビスフェニルフルオレンの2個のフェニル基に、末端に(メタ)アクリロイル基を有する置換基を各1個導入した9,9−ビスフェニルフルオレン誘導体を含む原料成分を重合させて得られるアクリル樹脂が挙げられる。なお、本明細書における「(メタ)アクリロイル…」とは、「メタクリロイル…」と「アクリロイル…」の総称である。
また、前記(メタ)アクリロイル基を有する9,9−ビスフェニルフルオレン誘導体に水酸基を導入した化合物と、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を重合させて得られるアクリル樹脂を用いてもよい。ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物の反応生成物として得られる化合物や、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とポリオール化合物の反応生成物として得られる化合物が挙げられる。
フルオレン骨格が導入されたポリエステル樹脂としては、例えば、下記式(B2−1)に示される9,9−ビスフェニルフルオレン誘導体が芳香族ジオールとして導入されたポリエステル樹脂が挙げられる。この場合、上記芳香族ジオールと反応させるジカルボン酸の種類は特に制限されない。このようなポリエステル樹脂は、屈折率値や可視光領域における透明性の点から透明樹脂(B)として好適に用いられる。
Figure 2014059550
(ただし、式(B2−1)中、R41は炭素数が2〜4のアルキレン基、R42、R43、R44およびR45は、各々独立に水素原子、炭素数が1〜7の飽和炭化水素基、または炭素数が6〜7のアリール基を表す。)
(近赤外線吸収層)
本フィルタが有する近赤外線吸収層は、色素(A)と屈折率が1.45以上の透明樹脂(B)を含有する層であり、色素(A)は、1以上の色素(A1)を含有する。
近赤外線吸収層は、色素(A1)を下記条件(ii−1)および(ii−2)を満たす量で含有した場合に、前記近赤外線吸収層の透過率が、下記条件(ii−3)および(ii−4)を満たすことが好ましい。
(ii−1)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も短い波長λが、680nm≦λ≦720nmである、
(ii−2)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も長い波長λと前記λとの関係が、λ−λ≧30nmである、
(ii−3)450〜600nmの波長域における平均透過率が70%以上、
(ii−4)下記式(3)で表わされる透過率の変化量(D)が−0.8以下。
D(%/nm)=[T700(%)−T630(%)]/[700(nm)−630(nm)]…(3)
なお、近赤外線吸収層の透過率は、紫外可視分光光度計を用いて測定できる。例えば、ガラス基板上に近赤外線吸収層を有する場合、前記透過率は、ガラス基板のみの透過率を減じて算出する。また、本明細書において、特定の波長領域の透過率について、透過率が例えば90%以上とは、その波長領域の全波長において透過率が90%を下回らないことをいい、同様に透過率が例えば1%以下とは、その波長領域の全波長において透過率が1%を超えないことをいう。なお、特に断りのない限り光の透過率とは、検体の主面に直交する方向から入射した光に対してその光が検体内部を直進して反対側に透過した割合をいう。また、光の透過率の測定において検体の主面に直交する方向以外の方向から光を入射させて透過率を測定する場合、主面に直交する線に対して光が入射する方向を示す直線のなす角度を入射角という。
本発明の近赤外線吸収層の色素(A1)の含有量は、条件(ii−1)および(ii−2)を満たすことが、本フィルタを他の選択波長遮蔽部材と組み合わせて使用する場合において有利である。特に、選択波長遮蔽部材として角度依存性を有する誘電体多層膜を使用する場合に、誘電体多層膜の有する角度依存性を十分に排除できる。
上記(ii−1)および(ii−2)の色素の含有量の条件を、図4および図5により具体的に説明する。図4の実線は、後述の実施例における例1で得られた、色素(14−2)とポリエステル樹脂(屈折率1.64)からなる近赤外線吸収層の波長域300〜800nmの透過スペクトルであり、図5の実線は、図4に示す透過スペクトルの670〜770nmの拡大図である。図4および図5に示されるように、例1で得られた近赤外線吸収層の透過スペクトルにおいて、650〜800nmの波長域で透過率が1%となる最も短い波長λa−1は699nmであり、該透過スペクトルにおいて650〜800nmの波長域で透過率が1%となる最も長い波長λb−1は732nmであり、その差λb−1−λa−1は33nmである。
本フィルタにおいては、条件(ii−1)のλは、上記条件(ii−4)のDをより小さくする観点から、690nm≦λ≦710nmがより好ましい。
また、条件(ii−2)のλとλの関係は、誘電体多層膜の有する角度依存性を十分に排除できるため、λ−λ≧33nmがより好ましい。
前記条件(ii−3)において、光の利用効率を高めるため、近赤外線吸収層の450〜600nmの波長域における平均透過率は、高いほど好ましい。したがって、前記平均透過率は、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
前記条件(ii−4)において、Dは可視光領域と近赤外線領域の境界付近、具体的には630〜700nmにおける光の吸収曲線の傾斜の急峻性を示す指標である。Dは小さいほど好ましく、より好ましくは、−0.86以下である。−0.86以下であれば、可視光領域と近赤外線領域の境界付近における光の吸収曲線の傾斜の急峻性が十分といえる。
通常、NIRフィルタを設計する際、近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層と他の選択波長遮蔽部材を組み合わせて用いる場合には、互いの吸収、または反射ピークが部分的に重なり合うように組み合わせる。そして、遮光したい全波長領域において遮光漏れが生じないように設計される。特に、選択波長遮蔽部材として角度依存性を有する誘電体多層膜と近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層とを組み合わせて用いる場合、該近赤外線吸収層には、誘電体多層膜の有する角度依存性による吸収のシフトを補うような広い波長領域に亘る吸光特性が求められる。さらに、該吸収のシフトの影響を排除するために、近赤外線吸収色素を含有する近赤外線吸収層には、可視波長帯域と近赤外波長帯域の境界領域での光の吸収曲線の急峻性が求められる。
本発明において上記条件(ii−1)〜(ii−4)を満足すれば、より好ましい近赤外線吸収層が得られる。具体的には、本フィルタが近赤外線吸収層に含有する色素(A1)の作用により、該近赤外線吸収層は450〜600nmの可視波長帯域の光を高い透過率で透過し、680〜720nmの間の特定波長から長波長側に30nm以上の広範囲に亘る波長域の光を遮蔽し、さらにその境界領域における光の吸収曲線の急峻とすることを実現化している。これにより、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオ等のNIRフィルタとして用いた場合に、近赤外線波長領域の光を遮蔽しつつ可視光波長域の光の利用効率を向上できる。そのため、暗部撮像でのノイズ抑制の点で有利となる。なお、近赤外線吸収層が前記(ii−1)〜(ii−4)のより好ましい条件を満足すれば、近赤外線波長領域の光を遮蔽能と可視光波長域の光を利用効率も向上できる。
本フィルタは、色素(A1)による近赤外線の吸収を利用することで、近赤外線吸収層が上記条件(ii−1)〜(ii−4)を満足する。そのため、光の入射角による吸収波長のシフト等の角度依存性を有しないという利点を有する。
近赤外線吸収層において、色素(A1)の含有量は条件(ii−1)および(ii−2)で決定されることが好ましい。色素(A1)の含有量が大きくなると、近赤外線吸収層を薄くできる。そのため、色素(A1)の含有量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、0.1〜5質量部がより好ましく、3〜5質量部がさらに好ましい。
近赤外線吸収層は、色素(A1)を含む色素(A)および透明樹脂(B)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて任意成分を含有してもよい。任意成分として、具体的には、近赤外線ないし赤外線吸収剤、色調補正色素、紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等が挙げられる。また、後述する近赤外線吸収層を形成する際に用いる塗工液に添加する成分、例えば、シランカップリング剤、熱もしくは光重合開始剤、重合触媒に由来する成分等が挙げられる。近赤外線吸収層における、これら任意成分の含有量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、それぞれ15質量部以下が好ましい。
近赤外線吸収層の膜厚は、特に限定されるものではなく、用途、すなわち使用する装置内の配置スペースや要求される吸収特性等に応じて適宜定められる。前記膜厚は、0.1〜100μmが好ましい。膜厚が0.1μm未満では、近赤外線吸収能を十分に発現できないおそれがある。また、膜厚が100μm超では膜の平坦性が低下し、吸収率のバラツキが生じるおそれがある。膜厚は、1〜50μmがより好ましい。この範囲にあれば、十分な近赤外線吸収能と膜厚の平坦性を両立できる。
上記近赤外線ないし赤外線吸収剤としては、上記色素(A1)による近赤外線域における光の吸収曲線の急峻性の効果を損なわないものが使用される。このような近赤外線ないし赤外線吸収剤として、無機微粒子が好ましく使用でき、具体的には、ITO(Indium Tin Oxides)、ATO(Antimony-doped Tin Oxides)、タングステン酸セシウム、ホウ化ランタンなどが挙げられる。なかでも、ITO微粒子、タングステン酸セシウム微粒子は、可視波長領域の光の透過率が高く、かつ1200nmを超える赤外波長領域も含めた広範囲の光吸収性を有するため、赤外波長領域の光の遮蔽性を必要とする場合に特に好ましい。
ITO微粒子、タングステン酸セシウム微粒子の数平均凝集粒子径は、散乱を抑制し、透明性を維持する点から、5〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましく、5〜70nmがさらに好ましい。ここで、本明細書において、数平均凝集粒子径とは、検体微粒子を水、アルコール等の分散媒に分散させた粒子径測定用分散液について、動的光散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した値をいう。
近赤外線ないし赤外線吸収剤の含有量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは0.3〜10質量部である。これにより、近赤外線吸収層に求められる他の物性を確保しながら、近赤外線ないし赤外線吸収剤がその機能を発揮できる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、オキザニリド系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤等が好ましく挙げられる。市販品として、Ciba社製、商品名「TINUVIN 479」等が挙げられる。
無機系紫外線吸収剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、マイカ、カオリン、セリサイト等の粒子が挙げられる。無機系紫外線吸収剤の数平均凝集粒子径は、透明性の点から、5〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましく、5〜70nmがさらに好ましい。
紫外線吸収剤の含有量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。これにより、近赤外線吸収層に求められる他の物性を確保しながら、紫外線吸収剤がその機能を発揮できる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン類、;ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカーバメート等のニッケル錯体が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。光安定剤の含有量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N’−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランのようなアミノシラン類や、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシシラン類、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランのようなビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
用いるシランカップリング剤の種類は、組合せて使用する透明樹脂(B)に応じて適宜選択できる。シランカップリング剤の含有量は、以下に説明する塗工液において、透明樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは5〜15質量部である。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンジル類、ミヒラーケトン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、およびチオキサントン類等が挙げられる。また熱重合開始剤としてアゾビス系、および過酸化物系の重合開始剤が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。光または熱重合開始剤の含有量は、以下に説明する塗工液において、透明樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
近赤外線吸収層は、例えば、色素(A)および透明樹脂(B)または透明樹脂(B)の原料成分を溶媒に分散し、溶解させて調製した塗工液を基材上に塗工し、乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させることにより製造できる。近赤外線吸収層をこのような方法で成膜することで、所望の膜厚で均一に製造できる。前記任意成分を含む場合、塗工液に任意成分を含有する。前記基材は、本フィルタの構成部材として適用することが可能な透明基材であってもよいし、近赤外線吸収層を成形する際のみに用いる基材、例えば剥離性の基材であってもよい。
前記溶媒としては、色素(A)、および透明樹脂(B)または透明樹脂(B)の原料成分を安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であれば、特に限定されない。なお、本明細書において「溶媒」の用語は、分散媒および溶媒の両方を含む概念で用いられる。溶媒として、具体的には、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メトキシエタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ガソリン、軽油、灯油等の炭化水素類;アセトニトリル、ニトロメタン、水等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
溶媒の量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、10〜5000質量部が好ましく、30〜2000質量部が特に好ましい。なお、塗工液中の不揮発成分(固形分)の含有量は、塗工液全量に対して2〜50質量%が好ましく、5〜40質量%が特に好ましい。
塗工液の調製には、マグネチックスターラー、自転・公転式ミキサー、ビーズミル、遊星ミル、超音波ホモジナイザ等の撹拌装置を使用できる。高い透明性を確保するためには、撹拌を十分に行うことが好ましい。撹拌は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
塗工液の塗工には、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、インクジェット法、またはコンマコーター法等のコーティング法を使用できる。その他、バーコーター法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等も使用できる。
塗工液を塗工する基材が近赤外線吸収層を成形する際のみに用いる剥離性の基材の場合、該基材はフィルム状であっても板状であってもよく、剥離性を有するものであれば、材料も特に限定されない。具体的には、ガラス板や、離型処理されたプラスチックフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等からなるフィルム、ステンレス鋼板等が使用される。
また、その表面に上記塗工液が塗工され、その後適宜処理されて得られる近赤外線吸収層とともに、そのまま本フィルタの構成部材となる透明基材としては、後述の透明基材が挙げられる。
これら基材上に上記塗工液を塗工した後、乾燥させることで該基材上に近赤外線吸収層が形成される。塗工液が透明樹脂(B)の原料成分を含有する場合には、さらに硬化処理を行う。反応が熱硬化の場合は乾燥と硬化を同時に行うことができるが、光硬化の場合は、乾燥と別に硬化処理を設ける。また、剥離性の基材上に形成された近赤外線吸収層は剥離して本フィルタの製造に用いる。
本フィルタに係る近赤外線吸収層は、透明樹脂(B)の種類によっては、押出成形によりフィルム状に製造することも可能であり、さらに、このように製造した複数のフィルムを積層し熱圧着等により一体化させてもよい。
(近赤外線カットフィルタ)
本フィルタの構成は、近赤外線吸収層を有する以外は特に制限されない。近赤外線吸収層それ単独でNIRフィルタを構成してもよく、他の構成要素とともにNIRフィルタを構成してもよい。他の構成要素としては、近赤外線吸収層を保持する透明基材や、特定の波長域の光の透過と遮蔽を制御する選択波長遮蔽層等が挙げられる。
前記選択波長遮蔽層としては、可視領域の光を透過し、前記近赤外線吸収層の遮光域以外の波長の光を遮蔽する波長選択特性を有することが好ましい。なお、この場合、選択波長遮蔽層の遮光域は、近赤外線吸収層の近赤外線波長領域における遮光域を含んでもよい。
選択波長遮蔽層は、近赤外吸収層と組み合わせて使用する。そのため、選択波長遮蔽層の光学特性は下記(iii−1)および(iii−2)の条件を満たすことが好ましい。
(iii−1)420〜695nmの波長域において透過率が90%以上
(iii−2)上記近赤外線吸収層の波長域650〜800nmの透過スペクトルにおける透過率が1%となる最も長い波長λから1100nmまでの波長域において透過率が1%以下
条件(iii−1)を満たすことで、可視光領域の光の利用効率を高められる。そのため、透過率は高いほど好ましく、95%以上がより好ましい。条件(iii−2)を満たすことで、本フィルタが、近赤外および赤外領域の光を遮蔽できる。それにより、撮像素子への近赤外光の入射を抑制し、ノイズをなくすことができる。
前記選択波長遮蔽層は、さらに、400nm以下の紫外線波長領域の光の透過率を1%以下とすることがより好ましい。410nm以下の光の透過率を1%以下とすることが特に好ましい。
また、選択波長遮蔽層は、一層で所定の波長領域の光を遮蔽してもよく、複数層を組み合わせて所定の波長領域の光を遮蔽してもよい。選択波長遮蔽層は、本フィルタの用途に応じて前記近赤外線吸収層の片側のみに配置してもよく、または両側に配置してもよい。配置される選択波長遮蔽層の数は制限されない。片側のみに1以上の選択波長遮蔽層を配置してもよく、両側にそれぞれ独立した数の1以上の選択波長遮蔽層を配置してもよい。本フィルタの各構成要素の積層順は特に制限されない。本フィルタの用途に応じて適宜設定される。
可視光領域の光の利用効率を高めるために、モスアイ構造や後述する誘電体多層膜による反射防止層のように表面反射を低減する構成を本フィルタに設けてもよい。モスアイ構造は、例えば400nmよりも小さい周期で規則的な突起配列を形成した構造で、厚さ方向に実効的な屈折率が連続的に変化するため、周期より長い波長の光の表面反射率を抑える構造であり、モールド成型等により本フィルタの表面に形成できる。
以下、図面を参照しながら本フィルタの実施形態について説明する。
図3は、本フィルタの実施形態の例を概略的に示す断面図である。図3(a)は、透明基材12上に近赤外線吸収層11を有する本フィルタの一実施形態のNIRフィルタ10Aの断面図である。また、図3(b)は、近赤外線吸収層11の両方の主面に選択波長遮蔽層13が配置された本フィルタの別の実施形態のNIRフィルタ10Bの断面図である。図3(c)は、透明基材12上に近赤外線吸収層11が形成された構成の両面に選択波長遮蔽層13が配置された本フィルタのさらに別の実施形態のNIRフィルタ10Cの断面図である。
図3(a)に示す構成は、透明基材12上に近赤外線吸収層11を直接形成させる方法、または、前記剥離性の基材を用いて得られたフィルム状の近赤外線吸収層11の単体を、フィルム状または板状の透明基材12のいずれかの主面に、図示されていない粘着剤層を介して貼着することにより作製する方法等が挙げられる。また、別の構成として、近赤外線吸収層11を2枚の透明基材12が挟み込む構成や、透明基材12の両方の主面に近赤外線吸収層11が形成または貼着された本フィルタの使用が挙げられる。また、近赤外線吸収層11の表面や、近赤外線吸収層11上に形成された選択波長遮蔽層13の表面に反射防止層が形成された構成であってもよい。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル酸エステル共重合体系など、一般的な粘着剤を使用できる。粘着剤は予め近赤外線吸収層11上に設けておいてもよい。この場合、その粘着面にシリコーンやPET等の離型フィルムを貼付けておくことが、作業性、取り扱い性の点から好ましい。粘着剤には、紫外線吸収剤等の種々の機能を有する添加剤を添加してもよい。
透明基材12の形状は特に限定されるものではなく、ブロック状であっても、板状であっても、フィルム状であってもよい。また、透明基材12は、可視波長領域の光を透過するものであれば、構成する材料は特に制限されない。例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等の結晶、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
これらの材料は、紫外線領域および/または近赤外線領域の波長に対して吸収特性を有するものであってもよい。透明基材12は、例えば、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等にCuO等を添加した吸収型のガラスフィルタであってもよい。
前記ガラスは、可視域で透明な材料から、使用する装置、配置する場所等を考慮して、アルカリ成分の含有の有無や線膨張係数の大きさ等の特性を、適宜選択して使用できる。特に、ホウケイ酸ガラスは、加工が容易で、光学面における傷や異物等の発生が抑えられるため好ましく、アルカリ成分を含まないガラスは、接着性、耐候性等が向上するため好ましい。
また、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等の結晶は、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置において、モアレや偽色を低減するためのローパスフィルタや波長板の材料として使用されており、透明基材12の材料として、これらの結晶を用いた場合には、本実施形態に係るNIRフィルタ10Aに、ローパスフィルタや波長板の機能も付与でき、撮像装置のさらなる小型化、薄型化ができる点から好ましい。
さらに、上記撮像装置の固体撮像素子または固体撮像素子パッケージには、該固体撮像素子を保護するカバーが気密封着されている。このカバーを透明基材12として近赤外線吸収層11と組合せて使用すれば、カバーとして使用可能なNIRフィルタが得られ、撮像装置のさらなる小型化、薄型化ができる。カバーの材料は、前記したガラスでも結晶でも、樹脂でもよいが、耐熱性の観点からは、結晶やガラスが好ましい。樹脂を選択する場合は、耐熱性を考慮した材料、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、シルセスキオキサン等を含有した有機無機ハイブリッド材料等が好ましい。カバー中に不純物としてα線放出性元素(放射性同位元素)が含まれていると、α線を放出して固体撮像素子に一過性の誤動作(ソフトエラー)を引き起こす。したがって、カバーには、α線放出性元素含有量ができるだけ少ない高純度に精製された原料を使用し、製造工程でもこれら元素の混入をできるだけ防止することが好ましい。α線放出性元素のなかでも、U、Thの含有量を、20ppb以下とすることが好ましく、5ppb以下とすることがより好ましい。また、カバーの一面(固体撮像素子に近接する面)にα線を遮蔽する膜を設けてもよい。
前記透明基材12がガラス板の場合、該ガラス板は、表面にシランカップリング剤による表面処理が施されていてもよい。シランカップリング剤による表面処理が施されたガラス板を用いることにより、近赤外線吸収層11との密着性を高めることができる。シランカップリング剤としては、近赤外線吸収層で用いるのと同じものを使用できる。ガラス板の厚みは、装置の小型化、薄型化、および取り扱い時の破損を抑制する点から、0.03〜5mmの範囲が好ましく、軽量化および強度の点から、0.05〜1mmの範囲がより好ましい。
透明基材12として、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明プラスチックからなるフィルムを使用する場合、その厚みは、10〜300μmの範囲が好ましい。また、近赤外線吸収層11を形成する前に、フィルムの表面にコロナ処理や易接着処理を施すことが好ましい。
透明基材12として、透明プラスチックからなるフィルムを使用した場合は、透明基材12の他方の主面を粘着剤または接着剤を介してガラス板に貼着できる。ガラス板には、透明基材12の材料として例示したものと同様のものを使用でき、特に、ホウケイ酸ガラスは、加工が容易で、光学面における傷や異物等の発生が抑えられるため好ましい。
NIRフィルタ10Aは、透明基材12側を、例えば撮像装置の固体撮像素子に直接貼着して使用されることがある。この場合、透明基材12の線膨張係数と被貼着部の線膨張係数との差が30×10−7/K以下であることが、貼着後の剥がれ等を抑制する観点から好ましい。例えば、被貼着部の材質がシリコンであれば、線膨張係数が30×10−7〜40×10−7/K近傍の材料、例えば、ショット社製のAF33、テンパックス、旭硝子社製のSW−3、SW−Y、SW−YY、AN100、EN―A1等(以上、商品名)のガラスが透明基材12の材料として好適である。被貼着部の材質がアルミナ等のセラミックであれば、線膨張係数が50×10−7〜80×10−7/K近傍の材料、例えば、ショット社製のD263、B270、旭硝子社製のFP1、FP01eco等のガラスが透明基材12の材料として好適である。
図3(b)に示す構成のNIRフィルタ10Bにおいて近赤外線吸収層11の両方の主面に形成される選択波長遮蔽層13としては、誘電体多層膜や近赤外線ないし赤外線吸収剤、色調補正色素および紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種を含有する特定の波長の光を吸収、または反射する層等が挙げられる。
NIRフィルタ10BおよびNIRフィルタ10Cにおいて、組み合せる2枚の選択波長遮蔽層13は、同一でも異なってもよい。2枚の選択波長遮蔽層13が、光学特性の異なる第1の選択波長遮蔽層13a、第2の選択波長遮蔽層13bとして構成される場合、用いられる光学装置により選択波長遮蔽特性とその並び順が適宜調整される。この観点から、近赤外線吸収層11、第1の選択波長遮蔽層13aおよび第2の選択波長遮蔽層13bの位置関係として、具体的には以下の(1A)、(1B)、(1C)の位置関係が挙げられる。
(1A)第1の選択波長遮蔽層13a、近赤外線吸収層11、第2の選択波長遮蔽層13b
(1B)近赤外線吸収層11、第1の選択波長遮蔽層13a、第2の選択波長遮蔽層13b
(1C)近赤外線吸収層11、第2の選択波長遮蔽層13b、第1の選択波長遮蔽層13a
上記(1B)(1C)の形態をとる場合には近赤外吸収層上で反射による可視光透過率損失が発生するため近赤外吸収層上に反射防止層を設けるのが好ましい。
このようにして得られるNIRフィルタ10BおよびNIRフィルタ10Cを装置に設置する際の方向については、設計に応じて適宜選択される。
前記誘電体多層膜は、低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜を交互に積層して得られる。これにより、光の干渉を利用して特定の波長域の光の透過と遮蔽を制御する機能を発現できる。ただし、低屈折率と高屈折率とは、隣接する層の屈折率に対して高い屈折率と低い屈折率を有することを意味する。
前記高屈折率の誘電体膜は、低屈折率の誘電体膜よりも屈折率が高ければ、特に限定されない。前記高屈折率の屈折率nは、1.6以上が好ましい。2.2〜2.5がより好ましい。このような屈折率を有する誘電体の材料としては、Ta(n:2.22)、TiO(n:2.41)、Nb(n:2.3)などが挙げられる。これらのうち、成膜性と屈折率等をその再現性、安定性を含め総合的に判断して、TiO等がより好ましい。
一方、前記低屈折率の屈折率nは、1.45以上1.55未満が好ましく、1.45〜1.47がより好ましい。このような屈折率を有する誘電体の材料としては、SiO(n:1.46)、SiO(n:1.46以上1.55未満)などが挙げられる。これらのうち、屈折率、成膜性における再現性、安定性、経済性などの点から、SiOがより好ましい。
前記反射防止層としては、誘電体多層膜や中間屈折率媒体、屈折率が漸次的に変化するモスアイ構造などが挙げられる。なかでも光学的効率、生産性の観点から誘電体多層膜を使用するのが好ましい。反射防止層に用いられる誘電体多層膜は上記選択波長遮蔽層13に使用される誘電体多層膜と同様に低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜を交互に積層して得ることができる。
本フィルタにおいては、前記選択波長遮蔽層と近赤外線吸収層とを有し、下記(iv−1)〜(iv−3)の条件を満たすことが好ましい。本フィルタは、この(iv−1)〜(iv−3)の条件を満たすために、さらに、反射防止層を有することが好ましい。
(iv−1)420〜620nmの波長域における平均透過率が80%以上
(iv−2)710〜1100nmの波長域における透過率が1%以下
(iv−3)600〜700nmの波長域において、主面に直交する方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値と、主面に直交する線に対して26度の角度をなす方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値の差が3nm以下
本フィルタにおいては、上記条件(iv−1)を満たすことで可視光線透過率が十分に確保され、さらに、条件(iv−2)および(iv−3)を満たすことで誘電体多層膜の有する角度依存性が解消され、近赤外線領域における遮光性が入射角の影響を受けることなく広い波長領域で十分に確保されている。
ここで、上記条件(iv−3)では、入射角が0度の場合と26度の場合の透過率20%における波長のシフトを指標として角度依存性を評価している。この条件を満たせば、他の入射角における波長シフトも本フィルタとして問題になることはないと言える。
上記(iv−3)の波長シフトの条件を、図8(a)により具体的に説明する。図8(a)にそれぞれ実線と一点鎖線で示されているのは、後述の実施例において本発明の実施例としての例7で得られたNIRフィルタ(反射防止層(誘電体多層膜)/近赤外線吸収層/ガラス板/選択波長遮蔽層(誘電体多層膜)の順に積層されたNIRフィルタ)における660〜700nmの波長領域の入射角0度の光の透過スペクトルと入射角26度の光の透過スペクトルである。ここで、図8(a)に示されるように、例7で得られたNIRフィルタにおいては、入射角が0度の場合の透過率20%の波長(λ20−0)は680nmであり、入射角が26度の場合の透過率20%の波長(λ20−26)は679nmであり、その差は1nmである。
誘電体多層膜は、求められる光学特性に応じて、その具体的な層数や膜厚、および使用する高屈折率材料および低屈折率材料の屈折率を、従来の手法を用いて設計できる。さらに、誘電体多層膜は、設計とおりに製造できる。
NIRフィルタの分光特性においては、透過光波長と遮光波長の境界波長領域で透過率を急峻に変化させる性能が求められる。透過光波長と遮光波長の境界波長領域で透過率を急峻に変化させる性能を得るためには、誘電体多層膜は、低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜との合計積層数として15層以上が好ましく、25層以上がより好ましく、30層以上がさらに好ましい。合計積層数が増えると製作時のタクトが長くなり、誘電体多層膜の反りなどが発生するため、また、誘電体多層膜の膜厚が増加するため、100層以下が好ましく、75層以下がより好ましく、60層以下がさらに好ましい。低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜の積層順は交互であれば、最初の層が低屈折率誘電体膜であっても高屈折率誘電体膜であってもよい。
誘電体多層膜の膜厚としては、上記好ましい積層数を満たした上で、NIRフィルタの薄型化の観点からは、薄い方が好ましい。このような誘電体多層膜の膜厚としては、選択波長遮蔽特性によるが、2〜10μmが好ましい。なお、誘電体多層膜を反射防止層として用いる場合には、その膜厚は0.1〜1μmが好ましい。また、近赤外吸収層の両面、もしくは透明基材と該透明基材上に形成された近赤外吸収層の各々の面に誘電体多層膜を配設する場合、誘電体多層膜の応力により反りが生じる場合がある。この反りの発生を抑制するために各々の面に成膜される誘電体多層膜の膜厚の差は、所望の選択波長遮蔽特性を有するように成膜した上で、可能な限り少ない方が好ましい。
誘電体多層膜は、その形成にあたっては、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用できる。
上記選択波長遮蔽層13として用いられる、近赤外線ないし赤外線吸収剤、色調補正色素および紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種を含有する特定の波長の光を吸収する層としては、例えば、従来公知の方法で各吸収剤を透明樹脂に分散させた光吸収層が挙げられる。透明樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂等の熱可塑性樹脂、エン・チオール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、光硬化型アクリル樹脂、シルセスキオキサン樹脂等の熱や光により硬化される樹脂等が挙げられる。これら光吸収層における各吸収剤の含有量は各吸収剤の光吸収能に応じて、本発明の効果を損ねない範囲で適宜調整される。
このような選択波長遮蔽層として、例えば、ITO微粒子を透明樹脂に分散した赤外線吸収層を使用できる。ITO微粒子の含有量は、近赤外線吸収層の場合と同様にできる。これにより、可視波長領域の光に吸収を示さず、透明性を保持できる。
本フィルタは、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置や自動露出計等のNIRフィルタ、PDP用のNIRフィルタ等として使用できる。本フィルタは、上記撮像装置において好適に用いられ、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置される。
また、本フィルタは、上記撮像装置の固体撮像素子、自動露出計の受光素子、撮像レンズ、PDP等に粘着剤層を介して直接貼着して使用することもできる。さらに、車両(自動車等)のガラス窓やランプにも同様に粘着剤層を介して直接貼着して使用できる。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は、以下で説明する実施形態および実施例に何ら限定されるものではない。例1〜5および例7が本発明の実施例であり、例6、例8が比較例である。
(色素(A1)の合成)
以下の方法により、各例に用いる色素(A1)を合成し、また、比較例に用いる近赤外線吸収色素を準備し、各近赤外線吸収色素の吸収スペクトル(波長域400〜900nm)を測定した。得られた吸収スペクトルにおける、λmaxおよびλ0.9−λ0.1を求めた。
(1)近赤外線吸収色素(14−1)の合成
以下の反応式(F2)にしたがって、色素(14−1)を合成した。色素(14−1)は、色素(14)に分類される化合物、すなわち上記式(14)で示される化合物であって、−NHRおよび−NHRにおけるRおよびRがともに、−NH−C(=O)Rであり、Rが基(1a)である化合物である。
Figure 2014059550
(1−1)8−トリフルオロメタンスルホン酸ジュロリジン(化合物(b))の製造
500mlのナス型フラスコに16.0g(0.092mol)の8−ヒドロキシジュロリジン(化合物(a))、300mlのジクロロメタン、14.0g(0.1385mol)のトリエチルアミンを加え反応器を0℃に冷却し、混合物に33.9g(0.12mol)のトリフルオロメタンスルホン酸無水物を加え、同温度で30分攪拌した。反応終了後、混合物に150mlの水を加え、200mlのジクロロメタンで抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った(展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=5:1)結果25.67gの8−トリフルオロメタンスルホン酸ジュロリジン(化合物(b))を86%収率で得た。
(1−2)8−ベンジルアミノジュロリジン(化合物(c))の製造
窒素雰囲気下、500mlのナスフラスコに還流管を取り付け、25.7g(0.079mol)の8−トリフルオロメタンスルホン酸ジュロリジン(化合物(b))、0.9g(0.004mol)の酢酸パラジウム、2.7g(0.0044mol)のBINAP(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル)、10.8g(0.1118mol)のナトリウムt−ブトキシド、10.3g(0.0959mol)のベンジルアミン、300mlのトルエンを加え、その後、窒素雰囲気加熱還流下で24時間攪拌した。その後、混合物に200mlの飽和食塩水を加え、300mlの酢酸エチルで抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った(展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=6:1)結果14.8gの8−ベンジルアミノジュロリジン(化合物(c))を67%収率で得た。
(1−3)8−アミノジュロリジン(化合物(d))の製造
窒素雰囲気下、500mlのナスフラスコに、14.3g(0.0514mol)の8−ベンジルアミノジュロリジン(化合物(c))、150mlのメタノール、150mlのテトラヒドロフラン、16.2g(0.2568mol)のギ酸アンモニウム、8.2g(0.0077mol)のパラジウム炭素(10wt%)を加え、その後、反応系を開放して大気雰囲気下室温で12時間攪拌した。反応終了後、混合物のセライトろ過を行い、得られたろ液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った(展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=1.5:1)結果7.0gの8−アミノジュロリジン(化合物(d))を72%収率で得た。
(1−4)8−アセトキシアミノジュロリジン(化合物(f−1))の製造
窒素雰囲気下、300mlのナスフラスコに、3.0g(0.0159mol)の8−アミノジュロリジン(化合物(d))、50mlのジクロロメタン、21.0g(0.0207mol)のトリエチルアミン、触媒量のジメチルアミノピリジンを加え、反応器を0℃に冷却してから、15.0g(0.0191mol)の塩化アセチル(化合物(e−1))を加え、その後、窒素雰囲気下同温度で30分攪拌した。反応終了後、混合物に50mlの飽和食塩水を加え、100mlのジクロロメタンで抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、残渣をジクロロメタン、ヘキサンで洗浄し、3.27gの8−アセトキシアミノジュロリジン(化合物(f−1))を89%収率で得た。
(1−5)近赤外線吸収色素(14−1)の製造
500mlのナスフラスコにDean−Stark管を取り付け、2.65g(0.0115mol)の8−アセトキシアミノジュロリジン(化合物(f−1))、140mlのベンゼン、60mlの1−ブタノール、0.66g(0.0058mol)のスクアリン酸(化合物(g))を加え、アゼオトロープ加熱還流条件下で3時間攪拌した。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて反応溶媒を留去した後、残渣をジクロロメタン、ヘキサンで洗浄し、1.3gの色素(14−1)を41%収率で得た。
(2)近赤外線吸収色素(14−2)の合成
以下の方法で色素(14−2)を合成した。色素(14−2)は、色素(14)に分類される化合物、すなわち上記式(14)で示される化合物であって、−NHRおよび−NHRにおけるRおよびRがともに、−NH−C(=O)Rであり、Rが基(1e)である化合物である。
(2−1)8−(3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−2))の製造
色素(14−1)の合成における(1−1)〜(1−3)と同様にして、8−アミノジュロリジン(化合物(d))を得た。上記(1−4)において8−アミノジュロリジン(化合物(d))に塩化アセチル(化合物(e−1))を加える代わりに3,5,5−トリメチルヘキサノイルクロリド(化合物(e−2))を加えた以外は同様の操作を実施し、8−(3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−2))を収率67%で得た。
(2−2)近赤外線吸収色素(14−2)の製造
上記(1−5)において8−アセトキシアミノジュロリジン(化合物(f−1))の代わりに、上記(2−1)で得られた8−(3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−2))を使用した以外は同様の操作を実施し、色素(14−2)を44%収率で得た。
(3)近赤外線吸収色素(14−3)の合成
以下の方法で色素(14−3)を合成した。色素(14−3)は、色素(14)に分類される化合物、すなわち上記式(14)で示される化合物であって、−NHRおよび−NHRにおけるRおよびRがともに、−NH−C(=O)Rであり、Rが基(1b)である化合物である。
(3−1)8−(n−オクチルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−3))の製造
色素(14−1)の合成における(1−1)〜(1−3)と同様にして、8−アミノジュロリジン(化合物(d))を得た。上記(1−4)において8−アミノジュロリジン(化合物(d))に塩化アセチル(化合物(e−1))を加える代わりにn−オクタノイルクロリド(化合物(e−3))を加えた以外は同様の操作を実施し、8−(n−オクチルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−3))を収率70%で得た。
(3−2)近赤外線吸収色素(14−3)の製造
上記(1−5)において8−アセトキシアミノジュロリジン(化合物(f−1))の代わりに、上記(3−1)で得られた8−(n−オクチルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−3))を使用した以外は同様の操作を実施し、色素(14−3)を39%収率で得た。
(4)近赤外線吸収色素(14−4)の合成
以下の方法で色素(14−4)を合成した。色素(14−4)は、色素(14)に分類される化合物、すなわち上記式(14)で示される化合物であって、−NHRおよび−NHRにおけるRおよびRがともに、−NH−C(=O)Rであり、Rが基(1d)である化合物である。
(4−1)8−(2−エチルヘキシルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−4))の製造
色素(14−1)の合成における(1−1)〜(1−3)と同様にして、8−アミノジュロリジン(化合物(d))を得た。上記(1−4)において8−アミノジュロリジン(化合物(d))に塩化アセチル(化合物(e−1))を加える代わりに2−エチルヘキサノイルクロリド(化合物(e−4))を加えた以外は同様の操作を実施し、8−(2−エチルヘキシルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−4))を収率72%で得た。
(4−2)近赤外線吸収色素(14−4)の製造
上記(1−5)において8−アセトキシアミノジュロリジン(化合物(f−1))の代わりに、上記(4−1)で得られた8−(2−エチルヘキシルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−4))を使用した以外は同様の操作を実施し、色素(14−4)を38%収率で得た。
(5)近赤外線吸収色素(14−5)の合成
以下の方法で色素(14−5)を合成した。色素(14−5)は、色素(14)に分類される化合物、すなわち上記式(14)で示される化合物であって、−NHRおよび−NHRにおけるRおよびRがともに、−NH−C(=O)Rであり、Rが基(1f)である化合物である。
(5−1)5,7,7−トリメチル−2−(4,4−ジメチルペンタン−2−イル)オクタノイルクロリド(化合物(e−5))の製造
窒素雰囲気下、100mlのナスフラスコに、1.1g(0.0039mol)の5,7,7−トリメチル−2−(4,4−ジメチルペンタン−2−イル)オクタン酸、20mlのジクロロメタン、触媒量のジメチルホルムアミドを加え、反応器を0℃に冷却してから、0.75g(0.0059mol)の塩化オキサリルを加え、その後、窒素雰囲気下同温度で1時間攪拌した。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒と残存している塩化オキサリルを留去して、5,7,7−トリメチル−2−(4,4−ジメチルペンタン−2−イル)オクタノイルクロリド(化合物(e−5))を収率100%で得た。
(5−2)8−(5,7,7−トリメチル−2−(4,4−ジメチルペンタン−2−イル)オクチルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−5))の製造
色素(14−1)の合成における(1−1)〜(1−3)と同様にして、8−アミノジュロリジン(化合物(d))を得た。上記(1−4)において8−アミノジュロリジン(化合物(d))に塩化アセチル(化合物(e−1))を加える代わりに、上記(5−1)で得られた5,7,7−トリメチル−2−(4,4−ジメチルペンタン−2−イル)オクタノイルクロリド(化合物(e−5))を加えた以外は同様の操作を実施し、8−(5,7,7−トリメチル−2−(4,4−ジメチルペンタン−2−イル)オクチルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−5))を得て、特に精製などは実施せず、以下の色素(14−5)の製造に用いた。
(5−3)近赤外線吸収色素(14−5)の製造
上記(1−5)において8−アセトキシアミノジュロリジン(化合物(f−1))の代わりに、上記(5−3)で得られた8−(2−エチルヘキシルオキシ)−アミノジュロリジン(化合物(f−5))を使用した以外は同様の操作を実施し、色素(14−5)を39%収率で得た。
(6)近赤外線吸収色素(15−1)の合成
以下の方法で色素(15−1)を合成した。色素(15−1)は、色素(15)に分類される化合物、すなわち上記式(15)で示される化合物であって、−NHRおよび−NHRにおけるRおよびRがともに、−NH−C(=O)Rであり、Rが基(1a)である化合物である。
(6−1)8−トリフルオロメタンスルホン酸−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(b’))の製造
上記(1−1)において8−ヒドロキシジュロリジン(化合物(a))の代わりに8−ヒドロキシ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(a’))を使用した以外は同様の操作を実施し、8−トリフルオロメタンスルホン酸−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(b’))を40%収率で得た。
(6−2)8−ベンジルアミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(c’))の製造
上記(1−2)において8−トリフルオロメタンスルホン酸ジュロリジン(化合物(b))の代わりに8−トリフルオロメタンスルホン酸−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物((b’)))を使用した以外は同様の操作を実施し、8−ベンジルアミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(c’))を61%収率で得た。
(6−3)8−アミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(d’))の製造
上記(1−3)において8−ベンジルアミノジュロリジン(化合物(c))の代わりに8−ベンジルアミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(c’))を使用した以外は同様の操作を実施し、8−アミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(d’))を75%収率で得た。
(6−4)8−アセトキシアミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(f’−1))の製造
上記(1−4)において8−アミノジュロリジン(化合物(d))の代わりに8−アミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(d’))を使用した以外は同様の操作を実施し、8−アセトキシアミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(f’−1))を90%収率で得た。
(6−5)近赤外線吸収色素(15−1)の製造
上記(1−5)において8−アセトキシアミノジュロリジン(化合物(f−1))の代わりに8−アセトキシアミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(f’−1))を使用した以外は同様の操作を実施し、色素(15−1)を32%収率で得た。
(7)近赤外線吸収色素(15−2)の合成
以下の方法で色素(15−2)を合成した。色素(15−2)は、色素(15)に分類される化合物、すなわち上記式(15)で示される化合物であって、−NHRおよび−NHRにおけるRおよびRがともに、−NH−C(=O)Rであり、Rが基(1b)である化合物である。
(7−1)8−(n−オクチルオキシ)−アミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(f’−2))の製造
色素(15−1)の合成における(6−1)〜(6−3)と同様にして、8−アミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(d’))を得た。上記(6−4)において8−アミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(d’))に塩化アセチル(化合物(e−1))を加える代わりにn−オクタノイルクロリド(化合物(e−3))を加えた以外は同様の操作を実施し、8−(n−オクチルオキシ)−アミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(f’−2))を収率92%で得た。
(7−2)近赤外線吸収色素(15−2)の製造
上記(6−5)において8−アセトキシアミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(f’−1))の代わりに8−(n−オクチルオキシ)−アミノ−2,2’,7,7’−テトラメチルジュロリジン(化合物(f’−2))を使用した以外は同様の操作を実施し、色素(15−2)を13%収率で得た。
(8)色素(A1)以外の近赤外線吸収色素
また、比較のために、色素(A1)と同様にスクアリリウム骨格を有する近赤外線吸収色素であるが、左右に1個ずつ二重縮合環構造を有する下記式(A2−1)で示される色素(A2−1)、下記式(A2−2)で示される色素(A2−2)を準備した。色素(A2−1)、(A2−2)は、例えば、上記特許文献3(特開2012−008532号公報)に記載された近赤外線吸収色素である。
Figure 2014059550
式(A2−1)、(A2−2)中、Meはメチル基をEtはエチル基をそれぞれ示す。
(吸収スペクトルの測定および分析)
上記で得られたまたは準備した色素(A1)に分類される色素(14−1)〜(14−5)、(15−1)、(15−2)および色素(A1)ではない比較のための色素(A2−1)、(A2−2)のそれぞれをジクロロメタンに溶解させて紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100型分光光度計)を使用して波長400〜900nmにおける吸収スペクトルを測定した。
得られた各吸収スペクトルについて、図2に示す近赤外線吸収色素の吸収スペクトルと同様に、λmaxおよびλ0.9、λ0.1の値を得、λ0.9とλ0.1の差を算出した。結果を各近赤外線吸収色素の構造の特徴とともに表2に示す。
Figure 2014059550
[カットフィルタの製造]
以下の例1〜例5において、前記で得られた色素(A1)と屈折率が1.45以上のポリエステル樹脂またはアクリル樹脂を含む近赤外線吸収層11を透明基板12上に形成して、図3(a)に示す構成のNIRフィルタを製造した。なお、透明基板12として、厚さ0.3mmのガラス板(ソーダガラス)を用いた。さらに、例6として比較のために色素(A1)とは異なる分子構造の上記色素(A2−1)を用いて同様にNIRフィルタを製造した。
[透過率および透過率の変化量D]
例1〜6のNIRフィルタの透過率および透過率の変化量D(%/nm)は、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100型分光光度計)を用いて透過スペクトル(透過率)を測定し、算出した。表3の値は、NIRフィルタの透過率から、ガラス板の透過率を減算した値である。具体的にはガラス板の吸収、ガラス板−近赤外線吸収層界面、ガラス板−空気界面の反射の影響を差し引いて、近赤外線吸収層−空気界面での反射を計算した値となっている。
(例1)
色素(A1)として表2に示す色素(14−2)と、ポリエステル樹脂(大阪ガスケミカル社製、商品名:B−OKP2、屈折率1.64)の18質量%シクロヘキサノン溶液とを、ポリエステル樹脂100質量部に対して色素(14−2)が0.8質量部となるような割合で混合した。これを、室温にて攪拌・溶解することで塗工液を得た。
得られた塗工液を、ガラス板上にダイコート法により塗布し、室温減圧条件下で5分乾燥した後、90℃で5分加熱した。この工程を再度行い、得られたサンプルをさらに150℃で15分乾燥し、NIRフィルタ1を得た。得られたNIRフィルタ1の近赤外線吸収層の膜厚は11.3μmであった。NIRフィルタ1の透過率の測定結果を表3に示す。また、300〜800nmの波長領域の透過スペクトルを図4に、670〜770nmの波長領域の透過スペクトルを図5にそれぞれ実線で示す。
なお、ダイコート法は、ダイコーターを使用し、乾燥膜厚が1回の塗布で5.6μmになるよう10mm/分で塗工して平坦な膜が得られるよう実施した。
(例2)
色素(A1)として色素(14−3)を使用し、その含有量を樹脂100質量部に対して3.0質量部として混合したこと以外は、例1と同様にして塗工液を得た。
得られた塗工液を、ガラス板上にスピンコート法により塗布し、90℃で5分間加熱した後、150℃で1時間加熱乾燥させた。これにより、膜厚2.9μmの近赤外線吸収層が形成されたNIRフィルタ2を得た。スピンコート法は、スピンコーター(ミカサ社製:商品名1H−DX2)を用いて、600回転/分で5秒、800回転/分で15秒スピンコートして、平坦な膜を得られるよう実施した。得られたNIRフィルタ2の透過率の測定結果を表3に示す。
(例3)
色素(A1)として、色素(14−4)を用いたこと以外は、例2と同様にして、ガラス板上に近赤外線吸収層(膜厚2.9μm)が形成されたNIRフィルタ3を得た。得られたNIRフィルタ3の透過率の測定結果を表3に示す。
(例4)
色素(A1)として、色素(14−5)を用いて、その含有量を樹脂100質量部に対して3.5質量部として混合したこと以外は、例2と同様にして、ガラス板上に近赤外線吸収層(膜厚2.9μm)が形成されたNIRフィルタ4を得た。得られたNIRフィルタ4の透過率を表3に示す。
(例5)
色素(A1)として表2に示す色素(14−5)と、ポリイソブチルメタクリレート(東京化成工業社製、屈折率1.48、「PIBMA」と省略する。)の40質量%シクロヘキサノン溶液とを、PIBMA100質量部に対して色素(14−5)が3.5質量部となるような割合で混合した。これを、室温にて攪拌・溶解することで塗工液を得た。
得られた塗工液を、ガラス板上にスピンコート法により塗布し、90℃で5分間加熱した後、130℃で1時間加熱乾燥させた。これにより、膜厚5.7μmの近赤外線吸収層が形成されたカットフィルタ5を得た。スピンコート法は、スピンコーター(ミカサ社製:商品名1H−DX2)を用いて、5秒間で1200回転/分まで回転速度を上げ、同回転速度で30秒スピンコートして、平坦な膜を得られるよう実施した。得られたNIRフィルタ5の透過率の測定結果を表3に示す。
(例6)
色素(A1)に含まれない、色素(A2−1)を用いて、その含有量を樹脂100質量部に対して2.0質量部として混合したこと以外は、例2と同様にして、ガラス板上に近赤外線吸収層(膜厚2.9μm)が形成されたNIRフィルタ6を得た。得られたNIRフィルタ6の透過率を表3に示す。また、300〜800nmの波長領域の透過スペクトルを図4に、670〜770nmの波長領域の透過スペクトルを図5にそれぞれ破線で示す。
Figure 2014059550
[選択波長遮蔽層を有するNIRフィルタの製造]
以下の例7および例8において、図3(c)に示す構成のNIRフィルタにおいて、選択波長遮蔽層13aの代わりに反射防止層を有する以外は同様の選択波長遮蔽層(選択波長遮蔽層13b)を有するNIRフィルタを製造した。
[透過率および20%シフト]
例7、例8のNIRフィルタの透過率を、主面に直交する方向から入射した光、すなわち入射角0度の光の透過率、および主面に直交する線に対して26度の角度をなす方向から入射した光、すなわち入射角26度の光の透過率として、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100型分光光度計)を用いて測定し、透過スペクトルを得た。20%シフトは、入射角0度の光の透過率が20%となる波長の値(「λ20−0」と示す。)と、入射角26度の光の透過率が20%となる波長の値(「λ20−26」と示す。)の差である。
[遮蔽層の設計]
選択波長遮蔽層は、高屈折率誘電体膜であるTiO膜と低屈折率誘電体膜であるSiO膜を交互に積層する構成において、蒸着法により成膜した。
選択波長遮蔽層は、誘電体多層膜の積層数、TiO膜の膜厚およびSiO膜の膜厚をパラメータとして、所望の光学特性を有するようにシミュレーションして構成を決定した。
誘電体多層膜の光学特性は、420〜715nmの波長域における透過率が90%以上、730〜1100nmの波長域における透過率が1%以下、400nm以下の全領域に亘り透過率が1%以下とした。得られた誘電体多層膜の波長域300〜1100nmの透過スペクトルを図6(a)に示す。
反射防止層も、選択波長遮蔽層と同様に高屈折率誘電体膜であるTiO膜と低屈折率誘電体膜であるSiO膜を交互に積層する構成において、蒸着法により成膜した。反射防止層の設計も誘電体多層膜の積層数、TiO膜の膜厚およびSiO膜の膜厚をパラメータとして、所望の光学特性を有するようにシミュレーションして構成を決定した。得られた誘電体多層膜の波長域300〜1100nmの透過スペクトルを図6(b)に示す。
(例7)
近赤外線吸収層形成のための塗工液の塗工面の反対側の面に、選択波長遮蔽層を成膜したガラス板を用いたこと以外は、例1と同様にして、ガラス板上に近赤外線吸収層を形成した。さらに、近赤外線吸収層の上に反射防止層を成膜することによりNIRフィルタ7を得た。膜厚は、選択波長遮蔽層は全体で約8.9μm、反射防止層は全体で約0.34μmであった。得られたNIRフィルタ7の透過率を測定し、20%シフトを求めた。その結果を近赤外線吸収層の構成とともに表4に示す。また、350〜1100nmの波長領域の入射角0度の光の透過スペクトルを図7に実線で示す。さらに、660〜700nmの波長領域の入射角0度の光の透過スペクトルと入射角26度の光の透過スペクトルを図8(a)にそれぞれ実線と一点鎖線で示す。
(例8)
色素(A2−1)と、アクリル樹脂(大阪ガスケミカル社製、商品名:オグソールEA−F5003、屈折率1.60)の77質量%シクロヘキサノン溶液とを、アクリル樹脂100質量部に対して色素(A2−1)が0.3質量部となるような割合で混合した。これを、室温にて攪拌・溶解することで塗工液を得た。
得られた塗工液を、塗工面の反対面に選択波長遮蔽層を成膜したガラス板上にスピンコート法により塗布し、80℃で5分間加熱した後、110℃で15分間加熱し乾燥した。スピンコート法は、スピンコーターを用いて、500回転/分で5秒、600回転/分で30秒スピンコートして、平坦な膜を得られるよう実施した。その後、塗膜に波長365nmの紫外線を3000mJ/cm照射して硬化させ、ガラス板上に膜厚2.9μmの近赤外線吸収層を形成した。さらに、近赤外線吸収層の上に反射防止層を成膜して、NIRフィルタ8を得た。膜厚は、選択波長遮蔽層は全体で約6.9μm、反射防止層は全体で約0.34μmであった。
得られたNIRフィルタ8の透過率の測定結果し、20%シフトを求めた。その結果を近赤外線吸収層の構成とともに表4に示す。また、350〜1100nmの波長領域の入射角0度の光の透過スペクトルを図7に破線で示す。さらに、660〜700nmの波長領域の入射角0度の光の透過スペクトルと入射角26度の光の透過スペクトルを図8(b)にそれぞれ実線と一点鎖線で示す。
Figure 2014059550
本フィルタは、単独であるいは他の選択波長遮蔽部材と組合せて用いた際に、良好な近赤外線遮蔽特性を有するとともに、十分な小型化、薄型化ができることから、デジタルスチルカメラ等の撮像装置、プラズマディスプレイ等の表示装置、車両(自動車等)用ガラス窓、ランプ等に有用である。
10A,10B,10C…NIRフィルタ、12…透明基材、11…近赤外線吸収層、13…選択波長遮蔽層、13a…第1の選択波長遮蔽層、第1の誘導体多層膜、13b…第2の選択波長遮蔽層、第2の誘導体多層膜。

Claims (10)

  1. 近赤外線吸収色素(A)と透明樹脂(B)とを含有する近赤外線吸収層を有する近赤外線カットフィルタであって、
    前記近赤外線吸収色素(A)が、下記式(A1)で示される近赤外線吸収色素(A1)から選択される1種以上を含み、
    前記透明樹脂(B)の屈折率(n)が1.45以上であることを特徴とする近赤外線カットフィルタ。
    Figure 2014059550
    ただし、式(A1)中の記号は以下のとおりである。
    〜Xはそれぞれ独立して、1つ以上の水素原子が置換基Zで置換されていてもよい下記式(1)または式(2)で示される2価の有機基である。
    −(CHn1− …(1)
    式(1)中n1は、1〜4の整数である。
    −(CHn2−Y−(CHn3− …(2)
    式(2)中Yは、O、S、Se、−S(=O)−、−C(=O)−または−NR−(Rは、水素原子または置換基Zである。)であり、n2とn3はそれぞれ独立して0〜3の整数であり、n2+n3は0〜3の整数である。
    置換基Zは、ハロゲン原子;1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に酸素原子、−O−C(=O)−または−S(=O)−を有してもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜12の飽和もしくは不飽和炭化水素基または飽和環状炭化水素基;または、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基もしくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基または炭素数7〜19のアルアリール基を示す。
    およびRは、それぞれ独立して、−C(=O)H、−SOH、−C(=O)Rまたは−SO(Rは、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に酸素原子、−O−C(=O)−、−C(=O)−または−S(=O)−を有してもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜30の飽和もしくは不飽和炭化水素基もしくは飽和環状炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数7〜19のアルアリール基を示す。
  2. 前記近赤外線吸収色素(A1)は、ジクロロメタンに溶解して測定される波長域400〜900nmの光の吸収スペクトルにおいて、下記(i−1)および(i−2)を満たす請求項1記載の近赤外線カットフィルタ。
    (i−1)吸収極大波長λmaxが、690nm≦λmax≦720nm
    (i−2)λ0.9−λ0.1≦50nm
    (ただし、λ0.9およびλ0.1は、それぞれλmaxにおける吸光度を1としたときに、λmaxより短波長側において吸光度が0.9となる波長のうちでλmaxに最も近い波長、およびλmaxより短波長側において吸光度が0.1となる波長のうちでλmaxに最も近い波長である。)
  3. 前記近赤外線吸収色素(A1)を下記(ii−1)および(ii−2)の条件を満たす含有量で含有する前記近赤外線吸収層が、下記(ii−3)および(ii−4)の条件を満たす請求項1または2記載の近赤外線カットフィルタ。
    (ii−1)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も短い波長λが、680nm≦λ≦720nm
    (ii−2)650〜800nmの波長域において透過率が1%となる最も長い波長λと前記λとの関係が、λ−λ≧30nm
    (ii−3)450〜600nmの波長域における平均透過率が70%以上
    (ii−4)下記式(3)で表わされる透過率の変化量(D)が−0.8以下
    D(%/nm)=[T700(%)−T630(%)]/[700(nm)−630(nm)]…(3)
    式(3)中、T700は、前記近赤外線吸収層の波長700nmにおける透過率であり、T630は、前記近赤外線吸収層の波長630nmにおける透過率である。
  4. 前記近赤外線吸収色素(A1)は、X〜Xがそれぞれ独立して、式(1)のn1が2または3であるか、式(2)のYが酸素原子でありn2およびn3がそれぞれ独立に0〜2でありn2+n3が1または2である、2価の有機基であり、
    前記置換基Zが、ハロゲン原子;1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数1〜12の飽和または不飽和炭化水素基もしくは飽和環状炭化水素基;または、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基またはアミノ基に置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基もしくは炭素数7〜19のアルアリール基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  5. 前記近赤外線吸収色素(A1)は、RおよびRがそれぞれ独立して、−C(=O)Hまたは−C(=O)R(Rは、1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、飽和環構造を含んでもよい直鎖状もしくは分枝状の炭素数5〜20の飽和または不飽和炭化水素基もしくは飽和環状炭化水素基、炭素数6〜15のアリール基もしくは炭素数7〜15のアルアリール基)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  6. 前記透明樹脂(B)が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  7. 前記透明樹脂(B)100質量部に対する前記近赤外線吸収色素(A1)の割合が0.1〜5質量部である請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  8. 前記近赤外線吸収層の片側または両側に、下記(iii−1)および(iii−2)特性を有する選択波長遮蔽層を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
    (iii−1)420〜695nmの波長域において透過率が90%以上
    (iii−2)前記近赤外線吸収層の650〜800nmの波長域における透過率が1%となる最も長い波長λから1100nmまでの波長域において透過率が1%以下
  9. 前記選択波長遮蔽層は、屈折率(n)が1.45以上1.55未満の誘電体膜と屈折率(n)が2.2〜2.5の誘電体膜とを交互に積層した誘電体多層膜からなる請求項8記載の近赤外線カットフィルタ。
  10. 下記(iv−1)〜(iv−3)の条件を満たす請求項8または9記載の近赤外線カットフィルタ。
    (iv−1)420〜620nmの波長域における平均透過率が80%以上
    (iv−2)710〜1100nmの波長域における透過率が1%以下
    (iv−3)600〜700nmの波長域において、主面に直交する方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値と、主面に直交する線に対して26度の角度をなす方向から入射した光の透過率が20%となる波長の値の差が3nm以下
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