以下に添付図面を参照して、速度検出装置、移動部材搬送ユニット、及び画像形成装置の一の実施の形態を詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は、移動部材搬送ユニット100の模式図である。
移動部材搬送ユニット100は、速度検出装置50と、移動方向に移動する移動部材Eと、モータ81と、モータ制御部82と、を備える。
移動部材Eは、本実施の形態では、無端ベルト状の部材である。移動部材Eは、速度検出装置50による移動速度検出対象の部材である。移動部材Eは、駆動ローラR1、従動ローラR2、及び従動ローラR3によって張架されており、駆動ローラR1の駆動によって、移動方向Xに移動(回転移動)する。
モータ81は、駆動ローラR1を駆動する。モータ81は、モータ制御部82に電気的に接続されている。モータ81は、例えば、周知のステッピングモータなどで構成され、駆動ローラR1に回転駆動力を伝達可能に配設されている。モータ81が回転することにより駆動ローラR1が回転されて、駆動ローラR1に張架された移動部材Eも移動方向Xに回転する。
モータ制御部82は、モータ81の回転速度等の制御を行う。モータ制御部82は、マイクロコンピュータや電子回路などで構成されている。モータ制御部82には、上位コントローラ90から移動部材Eの目標速度Vtが入力される。また、モータ制御部82には、速度検出装置50で検出された、移動部材Eの実速度Vr(詳細後述)と、速度偏差ΔV(詳細後述)が入力される。
モータ制御部82は、これら入力された各種情報に基づいて、実速度Vrが目標速度Vtに近づくように、モータ81の回転速度をフィートバック制御する。なお、モータ制御部82は、速度制御装置の一例である。
速度検出装置50は、移動部材Eの速度を検出する装置である。本実施の形態の速度検出装置50は、例えば、多色画像形成装置に適用する。具体的には、本実施の形態の速度検出装置50は、中間転写方式の画像形成装置における中間転写ベルトや、直接転写方式の画像形成装置における搬送ベルト等の移動部材の、実速度の検出に適用する。
図1に示すように、速度検出装置50は、レーザ光源51と、エリアセンサ52と、画像データ取得部61と、第1部分データ抽出部62と、第2部分データ抽出部63と、生成部64と、速度検出部70と、を含む。
レーザ光源51は、レーザ光(以下、レーザビームと称する場合がある)を出射する発光素子と、当該発光素子から出射されたレーザビームを略平行光であるレーザ光Lにするコリメートレンズと、を有する。レーザ光源51は、移動部材Eにレーザ光Lを照射する。レーザ光源51は、後述の移動部材Eの外側の表面に斜め方向からレーザ光Lを照射するように配置されている。なお、レーザ光源51は、レーザ光を出射する光源であればよく、上記構成に限られない。
移動部材Eは、本実施の形態では、その表面もしくは内部に散乱性を有するベルト状の部材である。このため、移動部材Eにレーザ光Lが照射されると、該レーザ光Lが移動部材Eによって拡散反射する。拡散反射した反射光Ldを撮影することで、スペックルと呼ばれる斑点を含む画像(スペックルパターン)の画像データが得られる。
図2は、スペックルパターンの一例を示す模式図である。図2に示すように、スペックルパターンは、スペックルと呼ばれる斑点を含む画像である。スペックルパターンは、移動部材Eの表面もしくは内部の凹凸形状に対応してレーザ光Lの干渉が生じることにより形成される。また、スペックルパターンは、移動部材Eが移動すると、スペックルパターンもパターン形状を維持したまま同様に移動する。
なお、移動部材Eの表面は、面粗さが大きい方が、散乱光が強くなるため望ましい。また、表面の微小な凹凸構造(面粗さの形状)は、経時的に変化しない方が望ましい。経時的に凹凸構造が劣化しなければ、スペックルパターンも変化しない。スペックルパターンが変化してしまうと、例えば、記憶しておいたスペックルパターンとの演算処理を行う際などに誤差が経時的に増大してしまう恐れがある。また、凹凸構造が磨耗して小さくなってしまうと、光散乱強度が弱くなるため、光量不足に陥る恐れがあり、そうすると検出精度が劣化してしまう恐れがある。よって、移動面の微小な凹凸構造を保護することで、経時的に速度検出精度が劣化することを抑制できる。移動部材Eの微小な凹凸構造を保護するためには、移動部材Eの表面を光透過性媒質でコーティングするのがよい。
また、速度検出装置50を、画像形成装置の中間転写ベルトの速度検出に用いる事を考えると、ベルト表面は平坦である方が、転写時のトナーの塵等が抑制できるため望ましい。従って、移動部材Eには、光透過性媒質の表面の面粗さより、光透過性媒質の下の媒質との境界面の面粗さの方が大きいものを用いることが好ましい。そうすると、ベルトの表面の平坦性を保つことができ、且つ、光透過性媒質で覆われているため、光透過性媒質の下の媒質との境界面で強い散乱光を発生させることができるため、望ましい。このような特性の移動部材Eを用いることで、高い精度で速度検出を行いつつ、且つ、画質劣化を引き起こすことなく、強い散乱光を得ることができる。ここで、光透過性媒質は、光学的に完全に透明である必要はなく、少し吸収があってもよい。
図1に戻り、エリアセンサ52(撮像センサ)は、移動部材Eにおけるレーザ光Lの照射箇所を撮影して1次元又は2次元の画像データを出力する撮像センサである。エリアセンサ52には、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)センサ、フォトダイオードアレイ等がある。
本実施の形態では、エリアセンサ52には、撮影周期Tを示すクロック信号Cが入力される。撮影周期Tとは、エリアセンサ52がレーザ光Lの照射箇所を撮影する周期を示すと共に、エリアセンサ52が撮影によって得た画像データを画像データ取得部61へ出力する周期を示す。この撮影周期Tは、詳細を後述する生成部64で生成され、エリアセンサ52に入力される。
エリアセンサ52は、生成部64から入力された撮影周期Tで照射箇所の撮影を行い、該照射箇所の画像データを、該撮影周期Tで画像データ取得部61へ出力する。
図3は、エリアセンサ52の一例を示す模式図である。また、図3は、一部分領域及び他部分領域の説明図である。
エリアセンサ52は、レーザ光Lを受光する受光面52aを備える。本実施の形態では、エリアセンサ52の受光面52aは、正方形の画素を、移動部材Eの移動方向X(図3中、矢印X方向)に沿って16個、移動方向Xに直交するスラスト方向Y(図3中、矢印Y方向)に沿って8個並べた、16×8画素の長方形状である場合を説明する。
受光面52aに、上記スペックルパターンが入力されると、エリアセンサ52は、このスペックルパターンを16×8画素の大きさで画素毎に量子化した画像データDを出力する。
詳細には、エリアセンサ52は、生成部64から入力された撮影周期Tを示すクロック信号Cに基づいて、該撮影周期Tのタイミング(周期)で、受光面52aに入力されたスペックルパターンを16×8画素の大きさで画素毎に量子化する。そして、エリアセンサ52は、照射箇所の画像データとしての、スペックルパターンの画像データ(以下、画像データDと称する場合がある)と、画像有効信号FVALと、を画像データ取得部61へ出力する。
この画像データDには、各画素で検知した光の強さ(輝度)の大きさを表すデータ値が、当該画像データDの示す画像G内の位置に対応したマトリックス状に格納されている。後述する第1部分データD1、第2部分データD2、及び、相関画像データDgにおいても同様である。
なお、エリアセンサ52の画素数や形状などの構成、画像データDに含まれるデータ値の種類は、本発明の目的に反しない限り任意である。
エリアセンサ52の受光面52aで受光するスペックルパターンに含まれるスペックルの最小径は、エリアセンサ52の画素ピッチ(画素サイズ)の1/2より大きいことが必要である。この理由は、エリアセンサ52の1画素に対して、少なくともスペックルが2つ以上生じないようにするためである。
ここで、スペックルは、速度検出対象の移動部材E上の仮想の刻印されたマークの役目を持つ。本実施の形態の速度検出装置50では、この刻印マークであるスペックルのスペックルパターンの移動を検出することで、移動部材Eの速度を検出する。このため、エリアセンサ52の1画素に対して2つ以上のスペックルが生じてしまうと、エリアセンサ52では、この刻印マークの2つ分の情報をまとめて加算して検出することになってしまうため、一個一個のスペックルパターンのもたらす情報量が削減されてしまい、高精度な移動検出が困難となる。このため、エリアセンサ52の受光面52aで受光するスペックルパターンに含まれるスペックルの最小径は、エリアセンサ52の画素ピッチ(画素サイズ)の1/2より大きいことが必要である。なお、スペックルの最小径は、画素ピッチと略同一であることが望ましい。
本実施の形態において、エリアセンサ52は、2次元の画像データを出力するものを用いる。エリアセンサ52は、その受光面52aを移動部材Eの外側の面と平行に間隔をあけて対向して設けられ、かつ、受光面52aの長手方向が移動部材Eの移動方向Xと平行に配置されている。これによりエリアセンサ52には、移動部材Eで反射された反射光Ldが入射する。そして、エリアセンサ52は、入射した反射光Ldによるスペックルパターンを示す2次元の画像データDを出力する。
なお、エリアセンサ52として、1次元の画像データDを出力するエリアセンサを用いる場合、エリアセンサ52の長手方向を移動部材Eの移動方向Xと平行に配置すればよい。また、本実施の形態において、移動部材Eとエリアセンサ52とを直接対向させて配置しているが、これに限定されるものではなく、移動部材Eとエリアセンサ52との間にレンズを設けた構成としてもよい。
上述のように、エリアセンサ52は、照射箇所の画像データとしての、スペックルパターンの画像データDと、画像有効信号FVALと、を画像データ取得部61へ出力する。
図4は、エリアセンサ52から画像データ取得部61への信号出力を示す模式図である。
エリアセンサ52は、撮影周期Tを示すクロック信号Cの立ち上がりを検出したときに、受光面52aで受光したスペックルパターンについて量子化を行い、所定の遅延後に画像データDを出力する。このとき、画像データDが有効であることを示すために、エリアセンサ52は、画像有効信号FVALを“H”(High)の状態にして出力する。これを、撮影周期Tのクロック信号Cの立ち上がり毎に行うことにより、エリアセンサ52は、画像データD及び画像有効信号FVALを、撮影周期Tの周期で画像データ取得部61へ出力する。
画像データ取得部61は、エリアセンサ52が出力した画像データD及び画像有効信号FVALを、撮影周期Tの周期で周期的に取得する。具体的には、画像データ取得部61は、エリアセンサ52が出力する画像有効信号FVALが“H”の状態のときに画像データDを取得する。エリアセンサ52からは撮影周期Tの周期で画像データD及び画像有効信号FVALが出力されるので、画像データ取得部61は、該撮影周期Tで画像データDを周期的に取得することになる。
そして、画像データ取得部61は、エリアセンサ52から最も新しく取得した画像データD{N+1}(N+1番目の画像データ)と、その直前に取得した画像データD{N}(N番目の画像データ)と、を保持する。そして、画像データ取得部61は、画像データD{N}を後述の第1部分データ抽出部62に出力し、画像データD{N+1}を第2部分データ抽出部63に出力する。なお、Nは、1以上の整数である。
第1部分データ抽出部62は、画像データ取得部61が出力したN番目の画像データD{N}から、当該画像データD{N}の画像G{N}における一部分領域A1に対応する第1部分データD1を抽出する。つまり、第1部分データD1は、一部分領域A1の部分画像G1のデータを示す。この一部分領域A1は、例えば、5×3画素の長方形の領域である。
第2部分データ抽出部63は、画像データ取得部61が出力したN+1番目の画像データD{N+1}から、当該画像データD{N+1}の画像G{N+1}における他部分領域A2に対応する第2部分データD2を抽出する。つまり、第2部分データD2は、他部分領域A2の部分画像G2のデータである。この他部分領域A2は、上記一部分領域A1と同一形状の5×3画素の長方形の領域である。また、この他部分領域A2は、一部分領域A1に対して、生成部64から入力された後述する相対画素数Kだけ、移動部材Eの移動方向X下流側に配置されている。
一部分領域A1と他部分領域A2との相対距離Hは、エリアセンサ52の画素ピッチをL[mm]とすると、以下の式(1)で示される。
相対距離H[mm]=相対画素数K×画素ピッチL ・・・式(1)
相対距離Hとは、一部分領域Aにおける移動方向X下流側端部と、他部分領域A2における移動方向X下流側端部と、の相対距離を示す。相対画素数Kは、一部分領域Aにおける移動方向X下流側端部と、他部分領域A2における移動方向X下流側端部との、距離を、画像Gにおける画素数で示したものである。画素ピッチLは、エリアセンサ52の画素ピッチ(画素サイズ)を示す。
図3に示すように、N+1番目の画像データD{N+1}の画像G{N+1}における他部分領域A2は、N番目の画像データD{N}の画像G{N}における一部分領域A1に対して、移動部材Eの移動方向X下流側に配置されている。また、図3の例では、他部分領域A2は、一部分領域A1から移動方向X下流側に向かって10画素分(相対画素数K=10である場合)移動した位置に配置されている。つまり、図3の例では、一部分領域A1と他部分領域A2の相対距離Hは、画素ピッチ10個分(相対画素数K=10)となっている。
第2部分データ抽出部63は、画像データ取得部61が出力したN+1番目の画像データD{N+1}の画像G{N+1}から、生成部64から入力された相対画素数K分、一部分領域A1より移動方向X下流側の位置の、他部分領域A2に対応する第2部分データD2を抽出する。
生成部64は、上位コントローラ90から入力される移動部材Eの目標速度Vtに基づいて、エリアセンサ52及び速度検出部70に出力する撮影周期T(すなわち、撮影周期Tを示すクロック信号C)と、速度検出部70に出力する相対距離Hと、第2部分データ抽出部63へ出力する相対画素数Kと、を生成する。
具体的には、生成部64は、相対距離Hを撮影周期Tで除した除算値と、移動部材Eの目標速度と、の差の絶対値が最小となるように、撮影周期T及び相対距離Hを生成する。
ここで、撮影周期Tを示すクロック信号Cは、デジタル回路で生成する。このため、クロック信号Cによって示される撮影周期Tは、離散的な周期となる。クロック信号Cの最小ステップ幅をTstep[us]とすると、撮影周期T[us]は、下記式(2)で示される。
T=Tstep×M(Mは自然数) ・・・式(2)
まず、生成部64は、移動部材Eの目標速度Vt[mm/s]に基づいて、上記式(2)におけるMの値、及び相対画素数Kを算出する。なお、目標速度Vtは、予め上位コントローラ90で設定され、生成部64に入力される。生成部64は、下記式(3)によって示されるVdiffの絶対値が最小となるように、M及び相対画素数Kを算出する。
上記式(3)中、Vdiffは、相対距離Hを撮影周期Tで除した除算値と、移動部材Eの目標速度と、の差を示す。また、上記式(3)中、iは撮像倍率を表す。
そして、生成部64は、算出した相対画素数Kと、上記式(1)と、を用いて、相対距離Hを算出する。なお、式(1)中の、画素ピッチLであるエリアセンサ52の画素ピッチは、生成部64の図示を省略するメモリに予め記憶しておけばよい。そして、相対距離Hの算出時に、該メモリに記憶されている画素ピッチを画素ピッチLとして読み取ればよい。
また、生成部64は、算出したMと、クロック信号Cの最小ステップ幅Tstep[us]と、から、上記式(2)を用いて、撮影周期Tを算出する。
ここで、移動部材Eとエリアセンサ52との間にレンズが設けられた構成の場合、エリアセンサ52の受光面52a上での距離は、移動部材E上での実距離に撮像倍率を乗じたものとなる。例えば、撮像倍率が2[倍]の場合、移動部材E上での距離0.01[mm]は、エリアセンサ52の受光面52a上では、その2倍の距離0.02[mm]として認識される。そのため、相対距離Hを撮像倍率iで補正する必要がある。
さらに、生成部64は、算出した撮影周期Tの周波数のクロック信号Cを生成し、画像データ取得部61に出力する。画像データ取得部61は、このクロック信号Cによって示される撮影周期Tで画像データDを周期的に取得することとなる。また、生成部64は、撮影周期Tと、相対距離Hと、を後述する速度検出部70にも出力する。また、生成部64は、相対画素数Kを、後述する第2部分データ抽出部63へ出力する。
例えば、移動部材Eの目標速度Vtが300[mm/s]、エリアセンサ52の撮像倍率が1.0[倍]、エリアセンサ52の画素ピッチが0.01[mm]、クロック信号Cのステップ幅Tstepが1[us]であったとする。
この場合に、生成部64が、相対画素数E及びMの値を算出する様子を表1に示す。
まず、生成部64は、相対画素数Kを1〜11に振ったときに、各相対画素数KにおいてVdiffが0となる理想的な撮影周期Tを求める。クロック信号Cのステップ幅Tstepは1[us]なので、この理想的な周期を生成することはできず、実際に出力できる最も近い周期は表1に示す値となる。これにより各相対画素数Kに対するMの値が求まる。
そして、生成部64は、式(3)からVdiffを求める。そして、生成部64は、最も絶対値の小さいVdiffに対応する相対画素数Kの値を、第2部分データ抽出部63へ出力する。また、生成部64は、最も絶対値の小さいVdiffに対応する、撮影周期T[us]のクロック信号Cを、エリアセンサ52へ出力する。また、生成部64は、最も絶対値の小さいVdiffに対応する、撮影周期T[us]のクロック信号C、及び算出した相対距離Hを、速度検出部70へ出力する。
表1に示す例では、Vdiff=“0”が、最も絶対値の小さいVdiffの値である。このため、生成部64は、“相対画素数K=3、撮影周期T=100[us]”、“相対画素数K=6、撮影周期T=200[us]”、または“相対画素数K=9、撮影周期T=300[us]”の3パターンのいずれかを、エリアセンサ52及び速度検出部70へ出力する対象のデータとして選択する。
なお、撮影周期Tを短くするほど、速度検出部70での速度検出回数が増える。このため、速度制御の精度を上げることが可能となる。しかしながら、画像取得、速度検出の動作が増えるので消費電力が増える。一方、撮影周期Tを長くするほど、速度検出部70での速度検出回数は減る。このため、速度制御の精度は下がるが、画像取得、速度検出の動作が減り、消費電力は小さくなる。
以上のことを考慮して、生成部64は、速度検出装置50における予め定められた要求信号に応じて、上記3パターンのいずれかを選択して出力してもよい。すなわち、生成部64は、上位コントローラ90から、消費電力優先、または消費電力非優先、及び、速度制御の精度優先、または速度制御の精度非優先、を示す要求信号を受け付ける。そして、生成部64は、最も絶対値の小さいVdiffに対応する、撮影周期T、相対画素数K、及びMの組の内、受け付けた要求信号に対応する組を選択すればよい。
さらに、生成部64は、上位コントローラ90からの目標速度Vtが変更されると、それに応じて撮影周期T、相対画素数K、及び相対距離Hを再計算する。そして、生成部64は、再計算した相対画素数Kの値を、第2部分データ抽出部63へ出力する。また、生成部64は、再計算した、撮影周期T[us]のクロック信号Cを、エリアセンサ52へ出力する。また、生成部64は、再計算した、撮影周期T[us]のクロック信号C、及び相対距離Hを、速度検出部70へ出力する。
このため、速度検出部70では、目標速度Vtが変更された場合でも、目標速度Vtの変化に速やかに追従して、移動部材Eの実速度を検出することができる。
次に、速度検出部70について説明する。
速度検出部70は、移動部材Eの実速度Vrを検出する。速度検出部70は、第1部分データD1及び第2部分データD2に対して相互相関演算を行うことにより得た相関画像データDgに基づいて、移動部材Eの実速度Vrを検出する。
速度検出部70により行われる相互相関演算は以下の式(4)で表される。ここで、第1部分データをD1、第2部分データをD2、フーリエ変換をF[]、逆フーリエ変換をF−1[]、複素共役を記号*、相互相関演算を記号★とすると、下記式(4)の関係が成り立つ。
D1★D2*=F−1[F[D1]・F[D2]*]・・・式(4)
第1部分データD1及び第2部分データD2に対して相互相関演算D1★D2*を行うと、相関画像データDgが得られる。ここで、第1部分データD1及び第2部分データD2が2次元画像データであれば、相関画像データDgについても2次元画像データとなる。また、第1部分データD1及び第2部分データD2が1次元画像データであれば、相関画像データDgについても1次元画像データとなる。
または、相関画像データDgにおいてブロードな輝度分布が問題になる際は、位相限定相関を用いてもよい。この位相限定相関は以下の式(5)で表される。ここで、P[]とは、複素振幅において、位相のみを取り出す(振幅は全て1にする)ことを示す。
D1★D2* = F−1[P[F[D1]]・P[F[D2]*] ・・・式(5)
このように位相限定相関を用いることで、ブロードな輝度分布の場合でも、より高精度に第1部分データD1及び第2部分データD2の位置ずれ量(相関距離J)を計算できる。
この相関画像データDgは、第1部分データD1と第2部分データD2との相関関係を示すものであり、第1部分データD1の示す部分画像G1と第2部分データD2の示す部分画像G2との一致度合が高いほど、相関画像データDgの示す画像Ggの中心位置Oに近い位置に急峻なピーク(相関ピーク)輝度が表れて、これら部分画像G1、G2が一致すると相関画像データDgの中心位置Oとピーク位置Pとが重なる。
なお、もし、ある一部分領域A1と他部分領域A2の相対距離Hに対する理想的な撮影周期Tが設定できれば、移動部材Eの目標速度Vtと実速度Vrとが一致しているときには、一部分領域A1にある部分画像G1は、撮影周期Tを経過した後に他部分領域A2に移動することになる。即ち、第1部分データD1の示す部分画像G1と第2部分データD2の示す部分画像G2とが一致する。つまり、相関画像データDgの中心位置Oとピーク位置Pとが重なり、このときのピークが最も大きくなる。
しかしながら、実際には、撮影周期Tは離散的な値となる。このため、理想的な撮影周期Tとはずれた周期となり、移動部材Eの目標速度Vtと実速度Vrとが一致しているときに、相関画像データDgの中心位置Oとピーク位置Pは重ならなくなり、ピークの大きさも小さくなってしまう。ピークが小さくなると、中心位置Oからピーク位置Pの距離を求める演算において精度が悪くなってしまう。
一方、本実施の形態においては、一部分領域A1と他部分領域A2の相対距離Hを実際に設定可能な撮影周期Tで除算した除算値と、移動部材Eの目標速度Vtと、の差(Vdiff)の絶対値が最も小さくなるように、相対距離Hと撮影周期Tを設定している。
このため、移動部材Eの実速度Vrと目標速度Vtとが一致しているときには、第1部分データD1の示す部分画像G1と第2部分データD2の示す部分画像G2との差は最も小さくなっているので、相関ピークはより中心位置Oに近い位置に現れ、ピークの大きさも小さくなることはない。そのため、中心位置Oからピーク位置Pの距離を求める演算において精度が落ちることはない。
そして、移動部材Eの目標速度Vtと実速度Vrとが異なれば、相関ピークPのピーク位置は移動部材Eの目標速度Vtと実速度Vrとが一致しているときの中心位置O(距離X1の位置)からずれて、距離X2の位置にピークが現れる。このX1とX2との差が移動部材Eの目標速度Vtと実速度Vrとの速度偏差ΔVを表している。
したがって、相関画像データDgに対して最も急峻なピークを探す演算を行うことで、移動部材Eの目標速度Vtと実速度Vrとの速度偏差ΔVを算出できる。このような相互相関演算を用いた方法では、高速フーリエ変換が利用できるため、比較的少ない演算量で、かつ高精度に速度偏差ΔV、即ち、移動部材の実速度Vrを検出できる。
この速度検出部70は、図5に示すように、第1の2次元フーリエ変換部71と、第2の2次元フーリエ変換部72と、相関画像データ生成部73と、ピーク位置探索部74と、実速度演算部75と、変換結果記憶部76と、を有している。
第1の2次元フーリエ変換部71は、第1部分データD1についてスラスト方向Yに1次元フーリエ変換を行うフーリエ変換部71aと、フーリエ変換部71aの変換結果について移動方向Xに1次元フーリエ変換を行うフーリエ変換部71bと、を有している。つまり、この第1の2次元フーリエ変換部71は、第1部分データD1が入力されると、第1部分データD1についてスラスト方向Y及び移動方向Xに順次フーリエ変換を行い、この変換結果を後段の相関画像データ生成部73に出力する。
第2の2次元フーリエ変換部72は、第2部分データD2についてスラスト方向Yに1次元フーリエ変換を行うフーリエ変換部72aと、フーリエ変換部72aの変換結果について移動方向Xに1次元フーリエ変換を行うフーリエ変換部72bと、フーリエ変換部72bの変換結果について複素共役を求める複素共役部72cと、を有している。つまり、この第2の2次元フーリエ変換部72は、第2部分データD2が入力されると、第2部分データD2についてスラスト方向Y及び移動方向Xに順次フーリエ変換を行い、この変換結果の複素共役を後段の相関画像データ生成部73に出力する。
相関画像データ生成部73は、第1の2次元フーリエ変換部71から出力された第1部分データD1の2次元フーリエ変換結果と、第2の2次元フーリエ変換部72から出力された第2部分データD2の2次元フーリエ変換結果の複素共役と、を積算する積算部73aと、積算部73aでの算出結果に対して2次元逆フーリエ変換を行って相関画像データDgを生成する2次元逆フーリエ変換部73bと、を有している。つまり、この相関画像データ生成部73は、第1の2次元フーリエ変換部71による変換結果及び第2の2次元フーリエ変換部72による変換結果を積算したのち2次元逆フーリエ変換を行うことにより相関画像データDgを生成する。
ピーク位置探索部74は、相関画像データ生成部73によって生成された相関画像データDgの示す画像Ggにおいて、最も急峻(立ち上がりが急)なピーク輝度(ピーク値)があるピーク位置Pを探索(検出)する。ここで、この相関画像データDgには、光の強さ(輝度)の大きさを表すデータ値が、当該相関画像データDgの示す画像Gg内の位置に対応したマトリックス状に格納されているところ、この位置がエリアセンサ52の画素ピッチ間隔で並べられているので、ピーク位置Pが画素ピッチ単位で検出されてしまい、そのため、ピーク位置Pの探索精度が低くなってしまう。そこで、本実施の形態では、相関画像データDgについてサブピクセル処理を行って、画素ピッチ未満の位置の検出を行うことで、精度の高いピーク位置Pの検出が可能となり、精度良く実速度Vrを検出することができる。
具体的には、図6に示すように、X軸を、相関画像データDgの示す画像Ggにおける移動方向Xに沿う移動方向位置とし、Y軸を、画像Ggにおける輝度として、相関画像データDgのデータ値をコンピュータ上などで仮想的にプロットして、プロットした各点を滑らかに繋ぐ曲線K(図6において実線で示す)を求め、この曲線kのピークに対応する上記移動方向位置を、ピーク位置Pとして検出する。
または、相関画像データDgに含まれる複数のデータ値から、移動方向Xに互いに隣接するデータ値間の差分値が最も大きい(即ち、最も急峻な変化のある)1組の第1のデータ値q1及び第2のデータ値q2、及び、1組の第1のデータ値q1及び第2のデータ値q2のうち値の大きい方のデータ値(図6においてはq1)に対して移動方向Xに隣接する第3のデータ値q3の3つのみを抽出して、これら3点を滑らかに繋ぐ曲線を求めて、この曲線から同様にしてピーク位置Pを検出してもよい。このようにすることで、サブピクセル処理の演算量を少なくして、より高速にピーク位置Pを検出できる。
勿論、サブピクセル処理は、これらに限定されるものではなく、拡大や縮小などの画像処理アルゴリズムを用いた種々の方法など、本発明の目的に反しない限り、サブピクセル処理の方法は任意である。なお、ピーク位置探索部でのサブピクセル処理は任意であって、サブピクセル処理を行わない構成であってもよい。
図5に戻り、実速度演算部75は、相関画像データDgの示す画像Ggの中心位置Oと、ピーク位置探索部74で検出したピーク位置Pと、の間の距離である相関距離Jを求める。そして、実速度演算部75は、この相関距離Jに基づいて、移動部材Eの実速度Vrを算出する。
具体的には、実速度演算部75は、下記式(6)を用いて、移動部材Eの実速度Vrを算出する。
式(6)中、Vrは、実速度Vr[mm/s]を示す。Tは、撮影周期T[s]を示す。Kは、相対画素数Kを示す。Lは、画素ピッチL[mm]を示す。Jは、相関距離Jを示す。iは、エリアセンサ52の撮像倍率i[倍]を示す。
変換結果記憶部76は、第2の2次元フーリエ変換部72において、第2部分データD2についてスラスト方向Yに1次元フーリエ変換を行うフーリエ変換部72aでの変換結果を記憶する。
上記処理において、実速度Vrの検出に用いられた最も新しい画像データD(即ち、D{N+1})は、その次に実行される実速度Vrの検出において、最も新しい画像データDの直前に取得された画像データD(即ち、D{N})として用いられる。そして、例えば、図7に示すように、一部分領域A1と他部分領域A2との相対距離Hが、一部分領域A1の移動方向Xの長さより短く設定されている場合、一部分領域A1と他部分領域A2とが部分的に互いに重なり、この互いに重なる重複部分A3については、第1部分データD1についてのスラスト方向Yのフーリエ変換結果と、第2部分データD2についてのスラスト方向Yのフーリエ変換結果と、が等しくなる。
そこで、第2の2次元フーリエ変換部72において行われた第2部分データD2についてのスラスト方向Yのフーリエ変換結果のうち、少なくとも重複部分A3に係る変換結果を変換結果記憶部76に一時的に記憶して、その次に実行される実速度Vrの検出において、第1の2次元フーリエ変換部71において、変換結果記憶部76に記憶された上記変換結果を読み出して再利用する。このようにすることで、演算量が減少して、移動部材の実速度をより短時間で演算することができる。
上述した画像データ取得部61、第1部分データ抽出部62、第2部分データ抽出部63、生成部64、及び速度検出部70は、各々、画像データ取得手段、第1部分データ抽出手段、第2部分データ抽出手段、生成手段、及び速度検出手段に相当する。また、上述した第1の2次元フーリエ変換部71、第2の2次元フーリエ変換部72、相関画像データ生成部73、ピーク位置探索部74、及び実速度演算部75は、各々、第1の2次元フーリエ変換手段、第2の2次元フーリエ変換手段、相関画像データ生成手段、ピーク位置探索手段、及び実速度演算手段に相当する。
また、上述した画像データ取得部61、第1部分データ抽出部62、第2部分データ抽出部63、生成部64、及び速度検出部70、は、それぞれ独立したマイクロコンピュータや電気回路などで構成してもよく、または、1つのマイクロコンピュータなどで構成してもよく、本発明の目的に反しない限り、これらの構成は任意である。
次に、上述した速度検出装置50における本発明に係る動作の一例について、図8のフローチャート、及び、図9の各画像の模式図、を参照して説明する。
なお、図8は、速度検出処理の手順を示すフローチャートである。図9は、エリアセンサの受光面とスペックルパターンとの重なり状態、及び相関画像データを示す模式図である。詳細には、図9(a)は、時刻T0におけるエリアセンサ52の受光面52aとスペックルパターンとの重なり状態を模式的に示す図である。図9(b)は、時刻T0から撮影周期T経過後の時刻T1におけるエリアセンサ52の受光面52aとスペックルパターンとの重なり状態を模式的に示す図である。図9(c)は、時刻T0で取得した画像データD{N}の示す画像G{N}を模式的に示す図である。図9(d)は、時刻T1で取得した画像データD{N+1}の示す画像G{N+1}を模式的に示す図である。図9(e)は、第1部分データD1の示す部分画像G1を模式的に示す図である。図9(f)は、第2部分データD2の示す部分画像G2を模式的に示す図である。図9(g)は、相関画像データDgの示す画像Gg、その中心位置O、及び、そのピーク位置Pを模式的に示す図である。図9(h)は、相関画像データDgの画像Ggについて、X軸を移動方向X、Y軸をスラスト方向Y、Z軸を輝度としたときのグラフである。
速度検出装置50は、レーザ光源51による移動部材Eの外側の面に対するレーザ光Lの照射を開始する(S110)。撮影周期T及び相対距離Hの生成及びクロック信号Cの出力、及び相対画素数Kの出力を行う(S120)。エリアセンサ52は、撮影周期Tで移動部材Eにおけるレーザ光Lの照射箇所の撮影及び2次元の画像データDの出力を開始する(S130)。
図9(a)に、時刻T0におけるエリアセンサ52の受光面52aとスペックルパターンとの重なり状態を示し、図9(b)に、時刻T0から撮影周期T経過後の時刻T1におけるエリアセンサ52の受光面52aとスペックルパターンとの重なり状態を示す。
図8に戻り、そして、画像データ取得部61によって、エリアセンサ52の出力した画像データDを撮影周期Tで取得して、画像データDを取得する毎に、最も新しく取得した画像データD{N+1}を第2部分データ抽出部63に出力し、その直前に取得した画像データD{N}を第1部分データ抽出部62に出力する(S140)。
図9(c)に、時刻T0で取得した画像データD{N}の示す画像G{N}を示し、図9(d)に、時刻T1で取得した画像データD{N+1}の示す画像G{N+1}を示す。
図8に戻り、そして、第1部分データ抽出部62によって、画像データD{N}から、当該画像データD{N}の示す画像G{N}における一部分領域A1に対応する第1部分データD1を抽出して、速度検出部70に出力する(S150)。図9(e)に、第1部分データD1の示す部分画像G1を示す。
また、第2部分データ抽出部63によって、画像データD{N+1}から、当該画像データD{N+1}の示す画像G{N+1}における、一部分領域A1から相対画素数K分下流側にある他部分領域A2に対応する第2部分データD2を抽出して、速度検出部70に出力する(S160)。図9(f)に、第2部分データD2の示す部分画像G2を示す。
図8に戻り、そして、速度検出部70によって、第1部分データD1について2次元フーリエ変換を行い、第2部分データD2について2次元フーリエ変換を行い、さらに、第1部分データD1についての変換結果と第2部分データD2についての変換結果の複素共役とを積算して2次元逆フーリエ変換を行って、相関画像データDgを求める。そして、この相関画像データDgにおいてピーク位置Pを検出して、このピーク位置Pと、当該相関画像データDgの示す画像Ggの中心位置Oと、の相関距離Jを求める。そして、この相関距離Jと相対距離Hを足し、その値を撮影周期Tで除して実速度Vrを算出する(S170)。
図9(g)に、相関画像データDgの示す画像Ggの中心位置Oとピーク位置Pとを示す。また、図9(h)に、相関画像データDgの示す画像Ggについて、X軸を移動方向X、Y軸をスラスト方向Y、Z軸を輝度(データ値の大きさ)としたときのグラフを示す。
以上説明したように、本実施の形態では、速度検出装置50が、レーザ光Lを移動部材Eに照射するとともに当該移動部材Eにおけるレーザ光Lの照射箇所を撮影した画像データDを撮影周期T毎に取得する。そして、一の画像データD{N}から、当該画像データD{N}の示す画像G{N}における一部分領域A1に対応する第1部分データD1を抽出する。また、一の画像データD{N}の直後に取得された他の画像データD{N+1}から、当該画像データD{N+1}の示す画像G{N+1}における上記一部分領域A1に対して移動部材Eの移動方向X下流側にありかつ上記一部分領域A1と同一形状の他部分領域A2に対応する第2部分データD2を抽出する。そして、これら第1部分データD1及び第2部分データD2に基づいて移動部材Eの実速度Vrを検出する。
このため、本実施の形態によれば、画像データDの全体に対して演算を行うことなく、画像データDの部分データ(第1部分データD1、第2部分データD2)のみ演算を行えばよい。従って、本実施の形態の速度検出装置50では、演算量が減少し、移動部材Eの実速度Vrを短時間で演算することができる。
また、本実施の形態の速度検出装置50では、一部分領域A1と他部分領域A2の相対距離Hを実際に設定可能な撮影周期Tで除した値と、移動部材Eの目標速度Vtと、の差(Vdiff)の絶対値が最も小さくなるように、相対距離Hと撮影周期Tを生成する。
このため、撮影周期T及び相対距離Hが離散的な値であっても、移動部材Eの目標速度Vtと実速度Vrとが一致している場合、上記一の画像データD{N}の示す画像G{N}における上記一部分領域A1に対応する部分画像G1と、上記他部分領域A2に対応する部分画像G2と、の差が小さくなる。このため、第1部分データD1と第2部分データD2との相関性が非常に高くなる。従って、本実施の形態の速度検出装置50では、精度良く実速度Vrを検出することができる。
ここで、従来では、図10に示すように、時刻T0で撮影した第1スペックル画像と、時刻T0から移動部材Eが撮影範囲の約半分程度移動した後の時点である時刻T1で撮影した第2スペックル画像と、に対してフーリエ変換等の演算を行って実速度(速度ベクトル)を得ていた。このように、従来では、撮影した各スペックル画像の全体に対して演算を行っているので、移動部材Eの実速度を短時間で演算することができなかった。また、第1スペックル画像と第2スペックル画像とは約半分程度しか画像が一致していないので、これら画像の相関性が低く、実速度の測定精度が低かった。
一方、本実施の形態では、上述のように、精度よく且つ短時間で、移動部材Eの実速度Vrを検出することができる。
また、本実施の形態の速度検出装置50では、第1部分データD1及び第2部分データD2に対して相互相関演算を行うことにより得た相関画像データDgに基づいて、移動部材Eの実速度Vrを検出する。第1部分データD1及び第2部分データD2は、目標速度Vtと実速度Vrとが一致しているときに相関性が非常に高くなり、相関画像データDgにおけるピーク値が非常に高くなる。このため、更に、精度良く実速度Vrを検出することができる。
また、エリアセンサ52は、2次元の画像データDを出力する。また、速度検出部70には、第1の2次元フーリエ変換部71と、第2の2次元フーリエ変換部72と、相関画像データ生成部73と、ピーク位置探索部74と、実速度演算部75と、が設けられている。このため、精度良く実速度Vrを検出することができる。
また、相対距離Hが、一部分領域A1と他部分領域A2とが部分的に重なるように設定されているときは、第1の2次元フーリエ変換部71が、直前の実速度Vrの検出において第2の2次元フーリエ変換部72により行われた第2部分データD2についてのスラスト方向Yのフーリエ変換の変換結果のうち、一部分領域A1と他部分領域A2との重複部分A3についての変換結果を再利用するように構成されている。このため、演算量がさらに減少して、移動部材Eの実速度Vrをより短時間で演算することができる。
上述した本実施の形態では、第1部分データD1及び第2部分データD2に対してフーリエ変換を用いた相互相関演算を行うことにより得た相関画像データDgに基づいて、移動部材Eの実速度Vrを検出するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、第1部分データD1及び第2部分データD2に含まれる輝度について、この輝度が所定のしきい値以下の場合は「0」、当該しきい値より大きいときは「1」として2値化して、第1部分データD1及び第2部分データD2を直接比較して相関距離Jを求めるなど、本発明の目的に反しない限り、第1部分データD1及び第2部分データD2に基づいて移動部材Eの実速度Vrを検出する方法は任意である。
また、本実施の形態の移動部材搬送ユニット100は、速度検出装置50を有しているので、移動部材Eの実速度Vrを短時間で演算することができ、また、精度良く実速度Vrを検出することができ、そのため、移動部材Eを高精度で搬送することができる。
<実施の形態2>
以下、本発明の一実施の形態である画像形成装置について、図11、図12を参照して説明する。
図11に本発明の一実施の形態の多色対応の画像形成装置(図中、符号200で示す)の基本的な構成例を示す。図中の符号1Y、1M、1C、1Kは、中間転写ベルト105に沿って並設された像担持体であり、この像担持体はドラム状の感光体である。各感光体1Y、1M、1C、1Kは図中の矢印方向に回転され、その周囲には、帯電手段である帯電器2Y、2M、2C、2K(各図では帯電ローラによる接触式のものを示しているが、この他、帯電ブラシや、非接触式のコロナチャージャ等を用いることもできる)、現像手段である各色の現像器4Y、4M、4C、4K、一次転写手段(転写チャージャ、転写ローラ、転写ブラシ等)6Y、6M、6C、6K、感光体クリーニング手段5Y、5M、5C、5K等が配備されている。また、図中の符号30は定着手段、40は二次転写手段、41は搬送手段を示している。
また、画像形成装置200は、中間転写ベルト方式の多色画像形成装置であり、中間転写ベルト105を搬送する上述の移動部材搬送ユニット100を有している。この移動部材搬送ユニット100において、移動部材Eとしての中間転写ベルト105は、駆動ローラR1、従動ローラR2、R3、R4に張架されており、モータ81が、この中間転写ベルト105(駆動ローラR1)を図中反時計回り(移動方向X)に回転駆動する。また、上述した速度検出装置50が、中間転写ベルト105についての上記速度偏差ΔV及び実速度Vrなどの実速度情報を検出して、モータ制御部82が、この実速度情報に基づいて中間転写ベルト105が目標速度Vtで回転するようにモータ81を制御する。図11において、モータ制御部82及び画像形成装置の上位コントローラ90は記載を省略している。
各感光体1Y、1M、1C、1Kは帯電器2Y、2M、2C、2Kにより均一に帯電され、その後、潜像形成手段である光走査装置20により画像情報に応じて強度変調された光ビーム(例えばレーザ光)が露光され、静電潜像が形成される。
各感光体1Y、1M、1C、1Kに形成された静電潜像は、イエロー(Y)現像器4Y、マゼンタ(M)現像器4M、シアン(C)現像器4C、ブラック(K)現像器4Kによって現像され、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像として顕像化される。
上記の現像工程で顕像化された各感光体1Y、1M、1C、1K上のトナー像は、中間転写ベルト105に順次重ね合わせて一次転写される。そして、中間転写ベルト105上で重ね合わされた各色のトナー画像は、図示しない給紙部から給紙され、図示しない搬送手段を経て二次転写手段40の位置に搬送されて来た紙等の媒体に一括して二次転写される。そして、トナー画像が転写された媒体は搬送ベルト等の搬送手段41で定着手段30に搬送され、定着手段30によりトナー画像が媒体に定着されることで多色画像またはフルカラー画像が得られる。そして、定着後の媒体は図示しない排紙部や後処理装置等に排紙される。
また、トナー画像転写後の各感光体1Y、1M、1C、1Kは、クリーニング手段5Y、5M、5C、5Kのクリーニング部材(ブレード、ブラシ等)によりクリーニングされて残留トナーが除去される。また、トナー画像転写後の中間転写ベルト105も、図示しないベルトクリーニング手段によりクリーニングされて残留トナーが除去される。
なお、図11に示す画像形成装置200では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれか1色の画像を形成する単色モード、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれか2色の画像を重ねて形成する2色モード、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれか3色の画像を重ねて形成する3色モード、上記のように4色の重ね画像を形成するフルカラーモードを有し、これらのモードを図示しない操作部にて指定して実行することで単色、多色、フルカラーの画像形成が可能である。
また、図11に示す構成の画像形成装置200は、中間転写ベルト105を用い、各感光体1Y、1M、1C、1Kから中間転写ベルト105に一次転写して各色の重ね画像を形成した後、中間転写ベルト105から紙等の媒体に一括して二次転写する構成の、中間転写方式の多色画像形成装置であるが、図12に示す構成の多色対応の画像形成装置(図中、符号200Aで示す)のように、中間転写ベルトの代わりに紙等の媒体を担持搬送する移動部材Eとしての搬送ベルト106を用い、各感光体1Y、1M、1C、1Kから紙等の媒体に直接転写する方式の多色画像形成装置としてもよい。この直接転写方式の画像形成装置200Aでは、図12に示すように、紙等の媒体の進入経路が図11とは異なっており、搬送ベルト106により媒体を各感光体1Y、1M、1C、1Kに向けて搬送するようになっている。
また、画像形成装置200Aは、搬送ベルト106を搬送する上述の移動部材搬送ユニット100を有している。この移動部材搬送ユニット100において、移動部材Eとしての搬送ベルト106は、駆動ローラR1、従動ローラR2に張架されており、モータ81が、この搬送ベルト106(駆動ローラR1)を図中反時計回り(移動方向X)に回転駆動する。また、上述した速度検出装置50が、搬送ベルト106についての上記速度偏差ΔV及び実速度Vrなどの実速度情報を検出して、モータ制御部82が、この実速度情報に基づいて中間転写ベルト105が目標速度Vtで回転するようにモータ81を制御する。図12において、モータ制御部82及び画像形成装置の上位コントローラ90は記載を省略している。
図12に示す画像形成装置200Aでも上記と同様に、各感光体1Y、1M、1C、1Kは帯電器2Y、2M、2C、2Kにより均一に帯電され、その後、潜像形成手段である光走査装置20により画像情報に応じて強度変調された光ビーム(例えばレーザ光)が露光され、静電潜像が形成される。
各感光体1Y、1M、1C、1Kに形成された静電潜像は、イエロー(Y)現像器4Y、マゼンタ(M)現像器4M、シアン(C)現像器4C、ブラック(K)現像器4Kによって現像され、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像として顕像化される。
そして、この現像工程にタイミングを合わせて図示しない給紙部から紙等の媒体が給紙され、図示しない搬送手段を経て搬送ベルト106に搬送されて搬送ベルト106に担持される。搬送ベルト106に担持された媒体は各感光体1Y、1M、1C、1Kに向けて搬送され、上記の現像工程で顕像化された各感光体1Y、1M、1C、1K上のトナー像は、転写手段6Y、6M、6C、6Kにより媒体に順次重ね合わせて転写される。そして、媒体上に転写された4色重ね合わせのトナー画像は定着手段30に搬送され、定着手段30によりトナー画像が媒体に定着されることで多色またはフルカラー画像が得られる。そして、定着後の媒体は図示しない排紙部や後処理装置等に排紙される。
また、トナー画像転写後の各感光体1Y、1M、1C、1Kはクリーニング手段5Y、5M、5C、5Kのクリーニング部材(ブレード、ブラシ等)によりクリーニングされて残留トナーが除去される。
以上説明したように、画像形成装置200、200Aは、上述した移動部材搬送ユニット100を有しているので、この移動部材搬送ユニット100の速度検出装置50によって、中間転写ベルト105又は搬送ベルト106の実速度Vrを短時間で演算することができ、また、精度良く実速度Vrを検出することができ、そのため、その実速度Vr等の情報をモータ81にフィードバックすることでベルトの速度変動が略0になるように制御でき、その結果、画像の伸び縮みや色ずれが小さく抑制された高画質なカラー画像を提供することができる。また、定着装置として用いられるベルト状部材やローラ状部材についても、上記で説明した速度検出装置50を用いて速度変動を検出し、補正することも可能である。
さらに、上記の中間転写ベルト105や搬送ベルト106の速度変動の検出結果を、光走査装置20による書込開始位置を補正する書込開始位置補正手段(例えば光走査装置20内に設けた液晶偏向素子)にフィードバックすることも可能である。液晶偏向素子は、液晶に印加する電圧によって、感光体に到達する光の位置を、感光体の回転方向と平行方向にずらすことができる。ベルトの速度変動が発生すると、各色画像の重ね合わせがずれたり、各色画像自体が伸びたり縮んだりするが、液晶偏向素子を用いることで、ベルトの速度変動の補正と同様に、各色トナー画像の形成位置や画像の伸び縮みを補正できるため、結果として色ずれや画像の伸び縮みのない高画質な出力画像を得ることができる。
上述した実施の形態は、画像形成装置について説明するものであったが、本発明は、これに限定されるものではなく、一方向に移動する移動部材の速度検出が必要な装置、システムなどであれば、本発明を適用することができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。