JP2014048356A - 静電荷像現像用トナー、及び静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナー、及び静電荷像現像用トナーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温オフセットを抑制でき、且つ用紙に対する定着性に優れる静電荷像現像用トナーを提供すること。また、前述の静電荷像現像用トナーの製造方法を提供すること。
【解決手段】結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子と、又は結着樹脂と離型剤とを含む微粒子、を、所定の方法により凝集させて得られる微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させて形成される、静電荷像現像用トナーについて、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂を用い、110℃での溶融粘度と、DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度とが所定の範囲内であるエステルワックスを含有する離型剤をトナー中に所定量含有させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、静電荷像現像用トナー、及び静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
一般に電子写真法では、感光体ドラムの表面をコロナ放電等により帯電させた後、レーザー等により露光して静電潜像を形成する。形成した静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する。さらに、形成したトナー像を記録媒体に転写して高品質な画像を得ている。通常、トナー像の形成に使用するトナーには、熱可塑性樹脂等の結着樹脂に、着色剤、電荷制御剤、離型剤、磁性材料等を混合した後、混練、粉砕、分級工程を経て得られる、平均粒径5μm以上10μm以下のトナー粒子(トナー母粒子)が用いられる。そしてトナーに流動性を付与したり、トナーに好適な帯電性能を付与したり、感光体ドラムからのトナーのクリーニング性を向上させたりする目的で、シリカや酸化チタンのような無機微粉末がトナー母粒子に外添されている。
このようなトナーに関して、省エネルギー化、装置の小型化ようなの要望に応えるために、定着ローラーを極力加熱することなく良好に定着可能な、低温定着性に優れるトナーが種々提案されている。このような低温定着性に優れるトナーは、融点やガラス転移点の低い結着樹脂や、低融点の離型剤を使用していることが多い。このため、低温定着性に優れるトナーでは、一般的に、定着時に、加熱により溶融したトナーの粘度が低くなりすぎることによって、加熱された定着ローラーにトナーが融着することによる高温オフセットが生じやすい。
上記のオフセットに関する問題を解決するために種々の検討が行われており、例えば、熱可塑性エラストマー等のエントロピー弾性樹脂を使用したトナーが提案されている(特許文献1参照)。
特開2007−079348号公報
しかし、特許文献1に記載のトナーは、高温オフセットを抑制しやすいが、必ずしも用紙への定着性が優れているわけではない。このように、用紙への定着性が良好であり、高温オフセットを抑制できるトナーが、未だ望まれている。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、高温オフセットを抑制でき、且つ用紙への定着性に優れる静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。また、本発明は、前述の静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子と、又は結着樹脂と離型剤とを含む微粒子、を、所定の方法により凝集させて得られる微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させて形成される、静電荷像現像用トナーについて、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂を用い、110℃での溶融粘度と、DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度とが所定の範囲内であるエステルワックスを含む離型剤をトナー中に所定量含有させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
本発明の第一の態様は、
結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子と、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成するか、又は結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成し、前記微粒子凝集体を水性媒体中で加熱して、前記微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させて形成された、静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含み、
前記離型剤は、エステルワックスを含み、
前記エステルワックスは、110℃での溶融粘度が15mPa・s以上であり、且つ、示差走査熱量(DSC)測定で得られるDSC曲線中の最大吸熱ピークの温度が60℃以上80℃以下であり、
前記静電荷像現像用トナー中の、前記離型剤の含有量が10質量%以上30質量%以下である、静電荷像現像用トナーに関する。
本発明の第二の態様は、以下の工程(I)及び(II):
(I)前記結着樹脂を含む微粒子と、前記離型剤を含む微粒子と、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成するか、又は前記結着樹脂と前記離型剤とを含む微粒子を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成する、微粒子凝集体形成工程;及び
(II)前記微粒子凝集体を水性媒体中で加熱して、前記微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させる、合一化工程、
を含む、第一の態様の静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
本発明によれば、高温オフセットを抑制でき、且つ用紙への定着性に優れる静電荷像現像用トナーを提供することができる。また、本発明によれば前述の静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することができる。
高化式フローテスターによる軟化点の測定方法を説明する図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態は、静電荷像現像用トナー(以下、トナーともいう)に関する。第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子と、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成するか、又は、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を得、得られる微粒子凝集体を水性媒体中で加熱して、微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させて形成される、静電荷像現像用トナーである。また、第1実施形態に係るトナーは、ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂を含む。さらに、第1実施形態に係るトナーは、110℃での溶融粘度と、DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度とが所定の範囲内であるエステルワックスを含有する離型剤を含む。
本発明の第1実施形態に係るトナーは、結着樹脂、及び離型剤の他に、着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉等を含んでいてもよい。また、トナーは、必要に応じ、その表面に外添剤が付着されたものであってもよい。また、本発明のトナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。以下、本発明の第1実施形態に係るトナーについて、必須、又は任意の成分である、結着樹脂、離型剤、着色剤、電荷制御剤、磁性粉、及び外添剤と、本発明のトナーを2成分現像剤として使用する場合に用いるキャリアと、について順に説明する。
〔結着樹脂〕
本発明のトナーは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含む。結着樹脂としてポリエスエテル樹脂を用いることにより、幅広い温度範囲で良好に定着でき、発色性に優れるトナーを調製しやすい。結着樹脂として使用するポリエステル樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来トナー用の結着樹脂として使用されているポリエステル樹脂から適宜選択できる。ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合ないし共縮重合によって得られるものを使用することができる。ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下の2価又は3価以上のアルコール成分や2価又は3価以上のカルボン酸成分が挙げられる。
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのようなジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAのようなビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコール類が挙げられる。
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸のようなアルキル又はアルケニルコハク酸のような2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸のような3価以上のカルボン酸が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステルのようなエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂の酸価は、10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下が好ましい。ポリエステル樹脂の酸価が低すぎる場合、後述する第2実施形態に係るトナーの製造方法に含まれる工程(II)の処方によっては、微粒子の凝集が良好に進行しにくくなりやすい。ポリエステル樹脂の酸価が高すぎる場合、高湿条件下で、トナーの種々の性能が湿度による悪影響を受けやすい。また、ポリエステル樹脂の酸価は、ポリエステル樹脂の合成に使用されるアルコール成分が有する水酸基と、カルボン酸成分が有するカルボキシル基とのバランスを調整することによって調整できる。
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合の、ポリエステル樹脂の軟化点は、70℃以上140℃以下が好ましい。結着樹脂の軟化点が高すぎる場合、トナーを低温で良好に定着しにくい。結着樹脂の軟化点が低すぎる場合、高温での保存時にトナーが凝集してしまう場合が有り、トナーの耐熱保存性が損なわれやすい。ポリエステル樹脂の軟化点は、以下の方法に従って測定することができる。
<軟化点測定方法>
高化式フローテスター(CFT−500D(株式会社島津製作所製))によりポリエステル樹脂の軟化点の測定を行う。具体的には、以下のようにしてポリエステル樹脂の軟化点を測定する。トナー1.5gを試料として用い、高さが1.0mmで直径1.0mmのダイを使用する。そして、昇温速度4℃/min、予熱時間300秒、荷重30kg、測定温度範囲60℃以上200℃以下の条件で測定を行う。ポリエステル樹脂のフローテスターの測定により得られる、温度(℃)とストローク(mm)とに関するS字カーブより、ポリエステル樹脂の軟化点を読み取る。
軟化点の読み取り方を、図1により説明する。ストロークの最大値をSとし、低温側のベースラインのストローク値をSとする。S字カーブにおいて、ストロークの値が(S+S)/2となる温度を、ポリエステル樹脂の軟化点とする。
ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、50℃以上70℃以下が好ましい。ポリエステル樹脂のガラス転移点が低すぎる場合、画像形成装置の現像部の内部でトナー同士が融着したり、トナーの保存安定性の低下により、トナー容器の輸送時や倉庫等での保管時にトナー同士が一部融着したりする場合がある。また、ポリエステル樹脂のガラス転移点が低すぎる場合、ポリエステル樹脂の強度が低下し、潜像担持部にトナーが付着しやすい。結着樹脂のガラス転移点が高すぎる場合、トナーを低温で良好に定着しにくい傾向がある。
なお、ポリエステル樹脂のガラス転移点は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、ポリエステル樹脂の比熱の変化点から求めることができる。より具体的な測定方法は以下の通りである。測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、ポリエステル樹脂の吸熱曲線を測定することでポリエステル樹脂のガラス転移点を求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用する。測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分で常温常湿下にて測定して得られるポリエステル樹脂の吸熱曲線よりポリエステル樹脂のガラス転移点を求めることができる。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、1,000以上100,000以下がより好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)がこのような範囲であると、幅広い温度範囲で用紙に良好に定着されるトナーを得ることができる。また、数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、2以上10以下が好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布がこのような範囲であると、低温定着性に優れるトナーを得やすい。ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
結着樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で、ポリエステル樹脂の他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。結着樹脂が、ポリエスエテル樹脂と、ポリエステル樹脂の他の熱可塑性樹脂を組み合わせて含む場合、ポリエステル樹脂の他の熱可塑性樹脂は、従来からトナー用の結着樹脂として使用される熱可塑性樹脂から適宜選択して使用することができる。
結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100%が最も好ましい。
〔離型剤〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、離型剤を含む。そして、離型剤は、110℃での溶融粘度が15mPa・s以上であり、且つ、示差走査熱量(DSC)測定で得られるDSC曲線中の最大吸熱ピークの温度が60℃以上80℃以下であるエステルワックスを含む。エステルワックスは、このような物性を有するエステルワックスであれば特に限定されず、天然エステルワックス及び合成エステルワックスの何れを用いてもよい。エステルワックスは、2種類以上を組み合わせて使用することができる。
このようなエステルワックスの中では、合成原料を適宜選択することによって、最大吸熱ピークの温度と、110℃で測定される溶融粘度とを調整しやすいことや、不純物による影響を受けにくいことから、合成エステルワックスが好ましい。
合成エステルワックスを製造する方法は、化学合成法であれば特に限定されない。例えば、合成エステルワックスは、酸触媒の存在下でのアルコールとカルボン酸との反応や、カルボン酸ハライドとアルコールとの反応のような周知の方法により合成することができる。なお、合成エステルワックスの原料は、例えば、天然油脂から製造される長鎖脂肪酸のように天然物に由来するものでもよい。
前述の通り、第1実施形態に係るトナーは、DSCにより測定される最大吸熱ピークの温度と、110℃で測定される溶融粘度とが所定の範囲内であるエステルワックスを含む。エステルワックスが合成エステルワックスである場合、合成エステルワックスの合成に用いる原料を適宜変更して、合成エステルワックスの分子量を調整することにより、DSCにより測定される最大吸熱ピークの温度と、110℃で測定される溶融粘度とを調整することができる。一般的に、ワックスの分子量が大きいほど、DSCにより測定される最大吸熱ピークの温度と、110℃で測定される溶融粘度とが高くなる。
110℃での溶融粘度が15mPa・s以上であり、且つ、示差走査熱量(DSC)測定で得られるDSC曲線中の最大吸熱ピークの温度が60℃以上80℃以下である合成エステルワックスの具体例としては、WEP−7(日油株式会社製)が挙げられる。
第1実施形態に係るトナーに含まれる離型剤は、110℃での溶融粘度が15mPa・s以上であり、且つ、示差走査熱量(DSC)測定で得られるDSC曲線にて、60℃以上80℃以下に最大吸熱ピークを有するエステルワックスを含む。なお、吸熱ピークの低温側のベースラインを延長する仮想直線と、ピークを構成する曲線とにより囲まれるエリアの面積を、吸熱ピーク面積とし、吸熱ピーク面積の値が最も大きいピークを最大吸熱ピークとする。また、最大吸熱ピークのピークボトムの温度を、最大吸熱ピークの温度とする。
エステルワックスを2種類以上組み合わせて用いる場合、110℃での溶融粘度は、2種以上のエステルワックスの混合物の溶融粘度である。つまり、110℃での溶融粘度が15mPa・s以上であるエステルワックスと、110℃での溶融粘度が15mPa・s未満のエステルワックスとの混合物であっても、混合物の110℃での溶融粘度が15mPa・s以上であればよい。110℃での溶融粘度が15mPa・s以上である2種類以上のエステルワックスを混合して得られる、エステルワックスの混合物は、通常、110℃での溶融粘度が15mPa・s以上となる。
エステルワックスの110℃での溶融粘度が15mPa・s未満である場合、トナーを加熱して用紙に定着させる際に、溶融状態のトナーの粘性が低くなりすぎるため、オフセットが生じやすくなる。
示差走査熱量(DSC)測定で得られるDSC曲線中の最大吸熱ピークの温度が80℃超であるエステルワックスが離型剤に含まると、定着性に優れるトナーを得にくい。一方、DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度が60℃未満であるエステルワックスが離型剤に含まれる場合、オフセットが生じやすいため、定着性に優れるトナーを得にくい。また、DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度が60℃未満であるエステルワックスをトナーに用いる場合、後述するトナーの製造方法の工程(I)で、微粒子を凝集させる際に微粒子凝集体からエステルワックスが遊離しやすい。エステルワックスの溶融粘度は、B形粘度計(TVB−10(東機産業株式会社製))を用いて測定することができる。
<DSC測定の方法>
示差走査熱量計(DSC−6200(セイコーインスツルメンツ株式会社製))を用いて測定を行う。測定試料の量を10mgとし、測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分で常温常湿下にて測定して得られる測定試料のDSC曲線から、最大の吸熱ピークの温度を求める。
トナー中の離型剤の含有量は、10質量%以上30質量%以下である。離型剤の含有量が過少である場合、定着性に優れるトナーを得にくい。離型剤の含有量が過多である場合、トナーを定着させる際に、溶融しているトナーの粘度が低く過ぎるためにオフセットが生じやすくなる。このため、離型剤の含有量が過多である場合も、定着性に優れるトナーを得にくい。
〔着色剤〕
静電荷像現像用トナーは着色剤を含んでいてもよい。トナーに配合される着色剤は、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。トナーに添加することができる好適な着色剤の具体例としては以下のような着色剤が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラックが挙げられる。具体的には、コロンビアン・カーボン社製のRaven1060、1080、1170、1200、1250、1255、1500、2000、3500、5250、5750、7000、5000 ULTRAII、1190 ULTRAII;キャボット社製のBlack PearlsL、Mogul−L、Regal400R、660R、330R、Monarch800、880、900、1000、1300、1400;デグッサ社製のColor Black FW1、FW2、FW200、18、S160、S170、Special Black 4、4A、6、Printex35、U、140U、V、140V;三菱化学株式会社製のNo.25、33、40、47、52、900、2300、MCF−88、MA600、7、8、100が挙げられる。また、黒色着色剤としては後述するイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も利用することができる。
カラートナー用着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリルアミド化合物のような着色剤が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、194が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物のような着色剤が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物のような着色剤が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
これらの着色剤は、単独で、又は混合して用いることができる。着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、着色剤の使用量は、トナー全量を100質量部とする場合に、3質量部以上15質量部以下が好ましい。
〔電荷制御剤〕
静電荷像現像用トナーは、必要に応じ、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、トナーの帯電レベルの安定性や、所定の帯電レベルに短時間でトナーを帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れるトナーを得る目的で使用される。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリンのようなアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディープブラック3RLのようなアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体のようなニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZのようなニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
官能基として4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのようなヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、有機金属錯体、キレート化合物が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナートのようなアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロムのようなサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナー全量を100質量部とする場合に、1.5質量部以上15質量部以下が好ましく、2.0質量部以上8.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以上7.0質量部以下が特に好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させ難いため、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ったり、画像濃度の長期にわたる維持が困難になったりすることがある。また、このような場合、電荷制御剤が均一に分散し難く、形成画像にかぶりが生じやすくなったり、トナー成分による潜像担持部の汚染が起こりやすくなったりする。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良に起因する形成画像における画像不良や、潜像担持部のトナー成分による汚染等が起こりやすくなる。
〔磁性粉〕
静電荷像現像用トナーには、所望により、磁性粉を含んでいてもよい。磁性粉の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な磁性粉の例としては、フェライト、マグネタイトのような鉄;コバルト、ニッケルのような強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
磁性粉の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されない。具体的な磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。このような範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
磁性粉は、結着樹脂中での磁性粉の分散性を改良する目的等で、チタン系カップリング剤やシラン系カップリング剤のような表面処理剤により表面処理されたものを使用できる。
磁性粉の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な磁性粉の使用量は、トナーを1成分現像剤として使用する場合、トナー全量を100質量部とする場合に、35質量部以上60質量部以下が好ましく、40質量部以上60質量部以下がより好ましい。磁性粉の使用量が過多である場合、長期間にわたって画像濃度を所望する値に維持することが困難になったり、トナーの用紙に対する定着性が極度に低下したりする場合がある。磁性粉の使用量が過少である場合、形成画像にかぶりが発生しやすくなったり、長期間にわたって画像濃度を所望する値に維持することが困難になったりする場合がある。また、トナーを2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量を100質量部とする場合に、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
〔外添剤〕
静電荷像現像用トナーは、所望によりその表面を外添剤により処理されていてもよい。外添剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカや、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムのような金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。また、これらの外添剤は、アミノシランカップリング剤やシリコーンオイルのような疎水化剤により疎水化して使用することもできる。疎水化された外添剤を用いる場合、高温高湿下でのトナーの帯電量の低下を抑制しやすく、また、流動性に優れるトナーを得やすい。
外添剤の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01μm以上1.0μm以下が好ましい。
外添剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。外添剤の使用量は、典型的には、外添処理前のトナー粒子(トナー母粒子)100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上5質量部以下がより好ましい。
〔キャリア〕
本発明の方法により得られる静電荷像現像用トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いるのが好ましい。
好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、及びコバルトのような金属の粒子や、これらの材料と、マンガン、亜鉛、及びアルミニウムのような金属との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金のような鉄合金の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、及びニオブ酸リチウムのようなセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、及びロッシェル塩のような高誘電率物質の粒子、並びに樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリアが挙げられる。
キャリア芯材を被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20μm以上120μm以下が好ましく、25μm以上80μm以下がより好ましい。
本発明の方法により製造されるトナーを2成分現像剤として用いる場合、2成分現像剤中のトナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、3質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をこのような範囲とすることにより、形成画像の画像濃度を適度な水準に維持しやすく、現像装置からのトナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙等へのトナーの付着を抑制できる。
以上説明した、本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、高温オフセットを抑制でき、且つ用紙への定着性に優れる。このため、第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、種々の画像形成装置において、好適に使用される。
第1実施形態に係るトナーの製造方法は特に限定されないが、好適な製造方法として、以下説明する第2実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法が挙げられる。以下、第2実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法について詳細に説明する。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
本発明の第2実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、
以下の工程(I)及び(II)を含む。
(I)結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子と、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成するか、又は結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成する、微粒子凝集体形成工程;及び
(II)微粒子凝集体を水性媒体中で加熱して、微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させる、合一化工程。
本発明のトナーの製造方法は、上記工程(I)及び(II)を含むため、離型剤を多量に含有する、定着性に優れる静電荷像現像用トナーを製造できる。
また、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、上記工程(I)及び(II)に加え、必要に応じ、以下の工程(III)〜(V)を含んでいてもよい。
工程(III):トナーを洗浄する、洗浄工程。
工程(IV):トナーを乾燥する、乾燥工程。
工程(V):トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる、外添工程。
以下、工程(I)〜(V)について順に説明する。
(工程(I):微粒子凝集体形成工程)
工程(I)では、結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子と、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成するか、又は、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成する。
微粒子凝集体を形成させる方法は、特に限定されず、従来知られる方法から適宜選択できる。結着樹脂を含む微粒子、離型剤を含む微粒子、及び結着樹脂と離型剤とを含む微粒子は、これらの成分又はこれらの成分を含む組成物が、所望のサイズに微粒子化された微粒子の水性媒体分散液として調製されるのが好ましい。また、微粒子を凝集させる際には、必要に応じて、前述の、結着樹脂を含む微粒子、離型剤を含む微粒子と共に、又は結着樹脂と離型剤とを含む微粒子と共に、着色剤の微粒子を用いることも好ましい。
以下、結着樹脂を含む微粒子の調製方法、離型剤を含む微粒子の調製方法、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の調製方法、着色剤の微粒子の調製方法、及び微粒子の凝集方法について順に説明する。
<結着樹脂を含む微粒子の調製方法>
以下、結着樹脂を含む微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。結着樹脂を含む微粒子を調製する方法は、以下に説明する方法に限定されない。
まず、結着樹脂と、必要に応じ、着色剤、電荷制御剤、磁性粉等の成分とを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)のような混合装置により混合する。次いで、得られる混合物を、二軸押出機、三本ロール混練機、又は二本ロール混練機のような混練装置を用いて溶融混練して、結着樹脂組成物を得る。得られる結着樹脂組成物を冷却し、次いで、ターボミル、カッターミル、フェザーミル、ジェットミルのような粉砕装置を用いて、結着樹脂組成物を粗粉砕する。粗粉砕時点での結着樹脂組成物の粒子径は400μm程度が好ましい。なお、結着樹脂と上記任意の成分とを混練しない場合、結着樹脂を粉砕装置により粗粉砕して、粒子径400μm程度の結着樹脂の粗粉砕物を得ればよい。
結着樹脂組成物、又は結着樹脂の粗粉砕品を、水性媒体に分散している状態で、フローテスターで測定される結着樹脂の軟化点より10℃以上高い温度に水性媒体を加熱し、加熱された結着樹脂組成物の分散液に、ナノマイザー(吉田機械興業株式会製)や圧力吐出型分散機によって強い剪断力を与えることにより、結着樹脂を含む微粒子の水性媒体中の分散液が得られる。
分散液に強い剪断力を与える装置としては、NANO3000(株式会社美粒製)、ホモジナイザー(IKA社製)、マイクロフルダイザー(MFI社製)、ゴーリンホモジナイザー(マントンゴーリン社製)、及びクレアミックスWモーション(エム・テクニック株式会社製)のような装置が挙げられる。
水性媒体は、水を主成分とする液状の媒体であれば、本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。水性媒体に含まれる水は、上水、工業用水、蒸留水、イオン交換水等から適宜選択できる。
本発明の結着樹脂はポリエステル樹脂を含む。このため、ポリエステル樹脂に含まれる酸基を中和するために、結着樹脂を含む微粒子の水性媒体中に塩基性物質を含有させてもよい。塩基性物質は、ポリエステル樹脂に含まれる酸基を中和することができれば、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属炭酸水素塩、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、モノメタノールアミン、モルホリン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、ビニルピリジンのような含窒素有機塩基が挙げられる。これらの塩基性化合物は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
塩基性化合物の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましい。
また、水性媒体は、本発明の目的を阻害しない範囲で、有機溶媒を含んでいてもよい。水性媒体が有機溶媒を含む場合の溶媒の量は、水性媒体の質量に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましい。水性媒体が含んでいてもよい有機溶媒としては、メタノール、エタノールのようなアルコール類、テトラヒドフランのようなエーテル類、アセトンのようなケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン含窒素極性有機溶媒が挙げられる。
結着樹脂に対する、水性媒体の使用量は、結着樹脂を含む組成物の微粒子化が良好に進行する限り特に限定されない。結着樹脂に対する水性媒体の使用量は、結着樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液の調製に用いる装置によっても異なるが、典型的には、結着樹脂の質量の、1質量倍以上12質量倍以下が好ましく、2質量倍以上10質量倍以下がより好ましい。
また、結着樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液には、分散剤を含有させることができる。結着樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液に、分散剤を含有させる場合、結着樹脂を含む微粒子を、水性媒体中で、安定して分散させることができる。
結着樹脂を含む微粒子の水性媒体分散液に含有させることができる分散剤は特に限定されず、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤からなる群より適宜選択できる。アニオン系界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩型活性剤、スルホン酸塩型活性剤、リン酸エステル塩型界面活性剤、及び石鹸が挙げられる。カチオン系界面活性剤の例としては、アミン塩型活性剤、及び4級アンモニウム塩型活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコール型活性剤、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物型活性剤、及びグリセリン、ソルビトール、ソルビタンのような多価アルコールの誘導体である多価アルコール型活性剤が挙げられる。これらの分散剤の中では、アニオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤の少なくとも一方を用いるのが好ましい。これらの分散剤は、1種を用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
アニオン系界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の中では、下記式(1)で表わされるものが好ましい。
−O−(CHCHO)−SOM・・・(1)
(式(1)中、Rはアルキル基であり、Mは1価のカチオンであり、pは1以上50以下の整数である。)
は、直鎖アルキル基でもよく、分岐鎖アルキル基でもよく、直鎖アルキル基が好ましい。また、Rは、不飽和結合を有していてもよい。Rの炭素原子数は、10以上20以下が好ましく、12以上18以下がより好ましい。pは1以上50以下の整数である。微粒子の粒子径を好適な範囲に制御しやすいことから、pは1以上30以下の整数が好ましく、2以上20以下の整数がより好ましい。Mは1価のカチオンである。微粒子の粒子径を好適な範囲に制御しやすいことから、Mはナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、又はアンモニウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが特に好ましい。
なお、上記のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、ノニオン系界面活性剤と共に用いるのが好ましい。この場合に使用されるノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。後述する結着樹脂を含む微粒子の調製の際に、結着樹脂を含む微粒子の微粒子化が良好に進行し、分散安定性に優れる結着樹脂を含む微粒子を得やすいためである。
分散剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、分散剤の使用量は、結着樹脂の質量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましい。
結着樹脂を含む微粒子の分散液における、微粒子の体積平均粒子径(D50)は1μm以下が好ましく、0.1μm以上0.3μm以下がより好ましい。微粒子の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定できる。
<離型剤を含む微粒子の調製方法>
以下、離型剤を含む微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。離型剤を含む微粒子を調製する方法は、以下に説明する方法に限定されない。
まず、離型剤を予め400μm程度に粉砕し、離型剤の粉体を得る。離型剤の粉体を、分散剤を含む水性媒体中に添加してスラリーを調製する。次いで、得られるスラリーを離型剤の融点以上の温度に加熱する。加熱されたスラリーに、ナノマイザー(吉田機械興業株式会製)や圧力吐出型分散機を用いて強い剪断力を付与し、離型剤微粒子の水性分散液を調製する。
分散液に強い剪断力を与える装置としては、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる装置と同様の装置が挙げられる。また、離型剤を含む微粒子の調製に用いることができる、水性媒体、有機溶媒、分散剤は、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる水性媒体、有機溶媒、分散剤と同様のものを用いることができる。
離型剤を含む微粒子の分散液における、微粒子の体積平均粒子径(D50)は1μm以下が好ましく、0.1μm以上0.3μm以下がより好ましい。微粒子の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定できる。
<結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の調製方法>
以下、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を調製する方法は、以下に説明する方法に限定されない。
まず、結着樹脂と、離型剤と、必要に応じ、着色剤、電荷制御剤、磁性粉等の成分とを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)のような混合装置により混合する。次いで、得られる混合物を、二軸押出機、三本ロール混練機、又は二本ロール混練機のような混練装置により溶融混練して、結着樹脂組成物を得る。得られる結着樹脂組成物を冷却した後、ターボミル、カッターミル、フェザーミル、ジェットミルのような粉砕装置により、結着樹脂組成物を粗粉砕する。粗粉砕時点での結着樹脂組成物の粒子径は400μm程度が好ましい。
結着樹脂組成物の粗粉砕品を、水性媒体に分散している状態で、フローテスターで測定される結着樹脂の軟化点より10℃以上高い温度に結着樹脂組成物の分散液を加熱し、加熱された結着樹脂組成物の分散液に、ナノマイザー(吉田機械興業株式会製)や圧力吐出型分散機によって強い剪断力を与えることにより、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の水性媒体中の分散液が得られる。
分散液に強い剪断力を与える装置としては、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる装置と同様の装置が挙げられる。また、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の調製に用いることができる、水性媒体、塩基性物質、有機溶媒、分散剤は、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる水性媒体、塩基性物質、有機溶媒、分散剤と同様のものを用いることができる。
結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の分散液における、微粒子の体積平均粒子径(D50)は1μm以下が好ましく、0.1μm以上0.3μm以下がより好ましい。微粒子の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定できる。
<着色剤の微粒子の調製方法>
以下、着色剤の微粒子を調製する方法の好適な例について説明する。着色剤の微粒子を調製する方法は、以下に説明する方法に限定されない。
分散剤を含む水性媒体中で、着色剤と、必要に応じて着色剤の分散剤等の成分とを、公知の分散機によって分散処理することによって、着色剤を含む微粒子の分散液が得られる。分散剤の種類は特に限定されず、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤の何れも使用できる。分散剤の使用量は特に限定されないが、臨界ミセル濃度(CMC)以上であるのが好ましい。
分散液に強い剪断力を与える装置としては、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる装置と同様の装置が挙げられる。また、着色剤の微粒子の調製に用いることができる、水性媒体、有機溶媒、分散剤は、結着樹脂を含む微粒子の調製に用いる水性媒体、有機溶媒、分散剤と同様のものを用いることができる。
着色剤の微粒子の体積平均粒子径(D50)は0.05μm以上0.2μm以下であることが好ましい。
<微粒子の凝集方法>
上記の方法等により調製される種々の微粒子を用いて、結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子とを含む微粒子の水性媒体分散液か、又は、結着樹脂と離型剤とを含む微粒子の水性媒体分散液を調製した後、微粒子の水性媒体分散液に含まれる微粒子を凝集させて、微粒子凝集体を形成させる。なお、上記の水性媒体分散液は、必要に応じ、さらに着色剤の微粒子を含んでいてもよい。
微粒子を凝集させる方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。微粒子を凝集させる好適な方法としては、水性媒体中の微粒子の分散液に、凝集剤を添加する方法が挙げられる。
凝集剤の例としては、無機金属塩、無機アンモニウム塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。無機金属塩としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムのような金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウムのような無機金属塩重合体が挙げられる。無機アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムが挙げられる。また、4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミンも凝集剤として使用できる。
凝集剤としては、2価の金属の塩、及び1価の金属の塩が好ましく用いられる。2価の金属の塩と1価の金属の塩とは併用されるのが好ましい。2価の金属の塩を用いる場合の微粒子の凝集速度に対して、1価の金属の塩を用いる場合の微粒子の凝集速度は遅い。このため、凝集剤として2価の金属の塩を添加した後に、1価の金属の塩を添加することにより微粒子の凝集速度を調整することができる。このように、2価の金属の塩と1価の金属の塩とでは、微粒子の凝集速度が異なるため、これらを併用することにより、得られる微粒子凝集体の粒子径を制御しつつ、粒度分布をシャープなものとしやすい。
凝集剤の添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、微粒子分散液の固形分に対して、0.1mmol/g以上10mmol/g以下が好ましい。また、凝集剤の添加量は、微粒子分散液中に含まれる分散剤の種類、及び量に応じて、適宜調整するのが好ましい。
本発明の製造方法により得られるトナーは結着樹脂としてポリエステル樹脂を含むため、凝集剤の添加は、微粒子分散液のpHをアルカリ側、好ましくはpH10以上に調整した後に、凝集剤を添加するのがよい。これにより均一な微粒子の凝集を行うことができ、微粒子凝集体の粒子径分布をシャープにすることができる。凝集剤は一時に添加してもよく、逐次的に添加することもできる。
微粒子凝集体が所望の粒子径となるまで凝集が進行した後には、凝集停止剤を添加するのが好ましい。凝集停止剤の例としては、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムが挙げられる。このようにして微粒子凝集体を得ることができる。
(工程(II):合一化工程)
合一化工程では、工程(I)で得られる微粒子凝集体を水性媒体中で加熱して、微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させて、トナー粒子を形成する。また、合一化工程では、微粒子凝集体を加熱することにより、微粒子凝集体の形状が次第に球形に近づいていく。温度上昇により結着樹脂の溶融粘度が低下し、表面張力によって球形化の方向に微粒子凝集体の形状変化が起こるためである。加熱時の温度と時間を制御することで、得られるトナー粒子の球形化度を所望の値に制御可能である。
合一化工程で、微粒子凝集体を加熱する温度は、微粒子凝集体に含まれる成分の合一化が良好に進行する限り特に限定されない。微粒子凝集体を加熱する温度は、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも10℃以上高く、結着樹脂の融点(Tm)よりも低い温度が好ましい。微粒子凝集体をこのような範囲の温度に加熱することによって、微粒子凝集体に含まれる成分の合一化を良好に進行させることができ、好適な球形化度のトナーを調製しやすい。
(工程(III):洗浄工程)
トナー粒子は、必要に応じて、水により洗浄される。洗浄方法は特に限定されず、例えば、トナー粒子を含む水性媒体分散液から、固液分離によりトナー粒子をウエットケーキとして回収し、得られるウエットケーキを水により洗浄する方法や、トナー粒子を含む水性媒体分散液中のトナー粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー粒子を水に再分散させる方法が挙げられる。
(工程(IV):乾燥工程)
トナー粒子は、必要に応じて乾燥されてもよい。トナー粒子を乾燥する方法は特に限定されない。好適な乾燥方法としては、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、及び減圧乾燥機のような乾燥機を用いる方法が挙げられる。これらの方法の中では、乾燥中のトナー粒子の凝集を抑制しやすいことからスプレードライヤーを用いる方法がより好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー粒子の分散液と共に、シリカ等の外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
(工程(V):外添工程)
本発明の方法により製造される静電荷像現像用トナーは、必要に応じてその表面に外添剤が付着したものであってもよい。工程(I)及び(II)と、工程(III)及び/又は工程(IV)とを、組み合わせて得られるトナー母粒子の表面に、外添剤を付着させる。外添剤をトナー母粒子の表面に付着させる方法は特に限定されない。好適な方法としては、外添剤がトナー母粒子表面に埋没しないように条件を調整して、ヘンシェルミキサーやナウターミキサーのような混合機により、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
以上説明した、第2実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法によれば、高温オフセットを抑制でき、且つ用紙に対する定着性に優れる第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーを容易に製造することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
[調製例1]
〔ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製〕
以下の方法に従って、酸価が18.5mgKOH/gであり、フローテスター軟化点(Tm)が91℃であるポリエステル樹脂を結着樹脂として用いたポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中の分散液を調製した。
ポリエステル樹脂をターボミル(ターボ工業株式会社製)により粗粉砕して得た平均粒子径400μm程度のポリエステル樹脂の粗粉砕物10質量部と、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)2質量部と、トリエチルアミン4質量部と、イオン交換水84質量部とを羽根つきの撹拌装置(RW20 digital(IKA社製))を用いて混合してスラリーを調製した。得られたスラリーを、ナノマイザー(NV−200(吉田機械興業株式会社製)、加熱システムを追加)を用いて、加熱システム温度160℃、処理圧力100MPaの条件下で、処理を3回繰り返してスラリーの剪断分散を行い、固形分濃度10質量%のポリエステル樹脂微粒子分散液を得た。
[調製例2]
〔着色剤微粒子分散液の調製〕
シアン着色剤(銅フタロシアニン、C.I.Pigment Blue 15:3)10質量部と、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)2質量部と、イオン交換水88質量部とを羽根つきの撹拌装置(RW20 digital(IKA社製))に投入し、500rpm、30分間分散処理を行い、固形分濃度10質量%の着色剤微粒子分散液を調製した。
[調製例3]
〔離型剤微粒子分散液a〜jの調製〕
表1に記載の種別及び溶融粘度であり、DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度が表1に記載の温度である離型剤を、ターボミル(ターボ工業株式会社製)を用いて粗粉砕して平均粒子径400μm程度の離型剤の粗粉砕物を得た。得られた離型剤の粗粉砕物10質量部と、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)2質量部と、イオン交換水88質量部とを混合してスラリーを調製した。得られたスラリーを、ナノマイザー(NV−200(吉田機械興業株式会社製)、加熱システムを追加)を用いて、加熱システム温度160℃、処理圧力100MPaの条件下で、処理を3回繰り返してスラリーの剪断分散を行い、固形分濃度10質量%の離型剤微粒子分散液を得た。離型剤の溶融粘度は、B形粘度計(TVB−10(東機産業株式会社製))を用いて測定した。
なお、離型剤微粒子分散液h〜jの調製に使用した離型剤は下記の市販品を用いた。
離型剤微粒子分散液h:石油系ワックス(マイクロクリスタリンワックス)、Hi−Mic−1045(日本精蝋株式会社製)
離型剤微粒子分散液i:石油系ワックス(マイクロクリスタリンワックス)、Hi−Mic−3090(日本精蝋株式会社製)
離型剤微粒子分散液j:パラフィンワックス、HNP−10(日本精蝋株式会社製)
離型剤のDSC測定は下記の方法に従って行った。
<DSC測定の方法>
示差走査熱量計(DSC−6200(セイコーインスツルメンツ株式会社製))を用いて測定を行った。測定試料の量を10mgとし、測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分で常温常湿下にて測定して得られた測定試料のDSC曲線から、最大の吸熱ピークのボトムの温度を、最大吸熱ピークの温度として求めた。
Figure 2014048356
[実施例1〜5、及び比較例1〜12]
〔工程(I):微粒子凝集体形成工程〕
温度計及び撹拌羽根を備えたフラスコに、表2に記載の量のポリエステル樹脂微粒子を含むポリエステル樹脂微粒子分散液と、着色剤微粒子含む着色剤微粒子分散液5質量部と、表2に記載の種類、及び量の離型剤微粒子を含む離型剤微粒子分散液とを投入した。フラスコの内容物を、撹拌羽根により、回転数200rpmで撹拌しながら、濃度50質量%の塩化マグネシウム六水和物水溶液(凝集剤)3.8質量部をフラスコ内に滴下した。引き続き、フラスコの内容物を撹拌しながら、ウォーターバスを用いて、フラスコ内温を、昇温速度0.1℃/分の速度で昇温することにより、微粒子の凝集を開始させた。フラスコ内温を60℃まで昇温させた後、昇温を停止し、撹拌羽根の回転数を350rpmに変えた。次いで、濃度20質量%の塩化ナトリウム水溶液23質量部をフラスコ内に加えて、微粒子の凝集の進行を停止させ、微粒子凝集体の水性媒体分散液を得た。
〔工程(II):合一化工程〕
微粒子凝集体の水性媒体分散液を得た後、分散液を撹拌羽根により回転数350rpmで撹拌しながら、フラスコ内温を70℃まで昇温させた。後述する離型剤の遊離性の評価のために、フラスコ内温を70℃まで昇温させた後の微粒子凝集体の水性媒体分散液の一部を試料として採取した。フラスコ内温を70℃まで昇温させた後、同温度で微粒子凝集体の水性分散液を2時間撹拌することにより、微粒子凝集体に含まれるトナー成分を合一化させると共に、微粒子凝集体の形状を球状に制御した。その後、フラスコの内容物を、常温まで冷却して、トナー母粒子の水性媒体分散液を得た。
〔工程(III):洗浄工程〕
トナー母粒子の水性媒体分散液から、吸引ろ過により、トナー母粒子のウエットケーキをろ取した後、ウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナー母粒子を洗浄した。トナー母粒子10質量部をイオン交換水100質量部に分散させた時の、分散液の電気伝導率が5.0μS/cm以下になるまで、トナー母粒子のイオン交換水による同様の洗浄を繰り返した。分散液の電気伝導率が5.0μS/cm以下になった後、吸引ろ過により回収したトナー母粒子のウエットケーキを、次工程で乾燥させた。なお、分散液の電気伝導率の測定は、電気伝導率計(ES−51(株式会社堀場製作所製))を用いた。
〔工程(IV):乾燥工程〕
トナー母粒子のウエットケーキを、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを連続式表面改質装置(コートマイザー(フロイント産業株式会社製))に供給することにより、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させて、トナー母粒子を得た。コートマイザーによる乾燥条件は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m/分であった。
〔工程(V):外添工程〕
工程(I)〜(IV)の方法に従って得られたトナー母粒子100質量部と、シリカ(RA200HS(アエロジル社製))0.5質量部とを、ヘンシェルミキサー(三井三池工業株式会社製)を用いて、回転速度3000m/sで、10分間混合してトナー母粒子に外添剤を付着させた。
[比較例13]
調製例1で用いたポリエステル樹脂85質量部と、調製例2で用いたシアン着色剤5質量部と、離型剤微粒子分散液aの調製に用いたエステルワックス10質量部とを、混合機を用いて混合した後に、混合物を、2軸押出機を用いて溶融混練して混練物を得た。混練物を、粉砕機(ロートプレックス(株式会社東亜機械製作所製))を用いて粗粉砕して粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、粉砕機(ターボミル(ターボ工業株式会社製))を用いて微粉砕した後、気流式分級機(エルボージェット(日鉄鉱業株式会社製))を用いて分級を行い、トナー母粒子を得た。得られたトナー母粒子に対して、実施例1と同様にして外添剤を外添して比較例13のトナーを得た。
ここで、後述する離型剤の遊離性の評価試料は、得られたトナーを用いて下記方法を用いて調製した。
(遊離性の評価試料の調製)
トナー10質量部と、トリエチルアミン4質量部と、イオン交換水84質量部とを撹拌羽根を備えたフラスコに投入し、回転数350rpmで撹拌しながら、ウォーターバスを用いて、フラスコ内温を70℃まで昇温させて、離型剤の遊離性の評価試料として用いるトナー粒子分散液を得た。
≪評価≫
実施例1〜5、及び比較例1〜13に関して、以下の方法に従って、定着性の評価を行った。また、実施例1〜5、及び比較例1〜13のトナーの調製時に採取した離型剤の遊離性の評価試料を用いて、離型剤遊離性を評価した。評価結果を表2に記す。なお、定着性の評価については、以下の方法により調製された2成分現像剤を用いて評価を行った。
[調製例4]
〔2成分現像剤の調製〕
2成分現像剤中のトナーの含有量が10質量%となるように、トナーと、京セラドキュメントソリューションズ株式会社製のMFP(TASKalfa250ci)用の現像剤に用いられているキャリアとを、ボールミルを用いて30分間混合し、2成分現像剤を得た。
<定着性の評価方法>
MFP(TASKalfa250ci(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製)の改造機(定着装置を取り外したもの))を用いて未定着のベタ画像を得た。その後、評価用定着装置(着温度を調節できさらに独立駆動が可能なように改造されたプリンター(LS−3140MFP(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製))用の定着装置)を用いて、定着温度170℃で、未定着のベタ画像を被記録媒体に定着させた。また、定着温度を20℃下げて、未定着のベタ画像を被記録媒体に定着させた。被記録媒体として、C2(ゼロックス社製)を用いた。定着性を下記基準により評価した。
○:何れのベタ画像にもオフセットがなく、トナーが良好に被記録媒体に定着された。
×:何れのベタ画像にもオフセットが発生した。
<離型剤遊離性の評価>
トナーの調製時に採取した分散液の試料を、2時間静置した後の分散液の上澄み液が、離型剤成分により白濁しているか否かを目視により確認した。離型剤遊離性を下記基準により評価した。
○:上澄み液が透明であった。
×:上澄み液が白濁した。
なお、比較例について、上澄み液が白濁した場合、上澄み液を乾固させて得られる残渣を、示差走査熱量(DSC)測定により分析し、得られるDSC曲線から、残渣がトナーの調製に用いた離型剤と同じ化合物であるか否かを確認した。上澄み液を乾固させて得られる残渣のDSC測定により、上澄み液の白濁の原因は、何れも、トナーの調製時の離型剤の遊離であることが確認された。
Figure 2014048356
実施例1〜5によれば、結着樹の微粒子と、離型の微粒子と、着色剤の微粒子とを、所定の方法により凝集させて得られた微粒子凝集体を得、得られた微粒子凝集体に含まれる成分を加熱により合一化させて形成される静電荷像現像用トナーについて、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂を用い、110℃での溶融粘度と、DSC曲線中の最大吸熱ピークの温度とが所定の範囲内であるエステルワックスをトナー中に所定量含有させることにより、高温オフセットが抑制され、且つ定着性に優れるトナーが得られることが分かる。
比較例1及び8によれば、離型剤がエステルワックスであっても、エステルワックスのDSC曲線中の最大吸熱ピークの温度が80℃超である場合、定着性に優れるトナーを得にくいことが分かる。
比較例2〜4、7、及び8によれば、離型剤がエステルワックスであっても、エステルワックスの110℃での溶融粘度が15mPa・s未満である場合、定着性に優れるトナーを得にくいことが分かる。
比較例2〜6によれば、トナー中の離型剤の含有量が10質量%未満である場合、定着性に優れるトナーを得にくいことが分かる。
比較例9〜11によれば、離型剤としてエステルワックスを用いない場合、トナーの調製時の離型剤の遊離によって、トナー中に10質量%以上の離型剤を含むトナーを調製しにくいことが分かる。このため、比較例9〜11のトナーは、定着性に劣る。
比較例12では、エステルワックスのDSC測定で得られるDSC曲線中の最大吸熱ピークの温度が80℃超である離型剤微粒子分散液dが、離型剤微粒子分散液aよりも多く用いられている。つまり、比較例12のトナーに含まれるエステルワックスは、DSC測定で得られるDSC曲線中の最大吸熱ピークの温度が80℃超である。このため、比較例12のトナーは、エステルワックスを離型剤として含んでいても、定着性に劣る。
比較例13によれば、溶融混練、粉砕、及び分級による方法によりトナーを製造する場合、トナーの調製時の離型剤の遊離によって、トナー中に10質量%以上の離型剤を含むトナーを調製しにくいことが分かる。このため、比較例13のトナーは定着性に劣る。

Claims (2)

  1. 結着樹脂を含む微粒子と、離型剤を含む微粒子と、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成するか、又は結着樹脂と離型剤とを含む微粒子を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成し、前記微粒子凝集体を水性媒体中で加熱して、前記微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させて形成された、静電荷像現像用トナーであって、
    前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含み、
    前記離型剤は、エステルワックスを含み、
    前記エステルワックスは、110℃での溶融粘度が15mPa・s以上であり、且つ、示差走査熱量(DSC)測定で得られるDSC曲線中の最大吸熱ピークの温度が60℃以上80℃以下であり、
    前記静電荷像現像用トナー中の、前記離型剤の含有量が10質量%以上30質量%以下である、静電荷像現像用トナー。
  2. 以下の工程(I)及び(II):
    (I)前記結着樹脂を含む微粒子と、前記離型剤を含む微粒子と、を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成するか、又は前記結着樹脂と前記離型剤とを含む微粒子を水性媒体中で凝集させて微粒子凝集体を形成する、微粒子凝集体形成工程;及び
    (II)前記微粒子凝集体を水性媒体中で加熱して、前記微粒子凝集体に含まれる成分を合一化させる、合一化工程、
    を含む、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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