JP2014038786A - 荷電粒子線装置及び試料移動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】荷電粒子装置へ試料を導入した直後のドリフト量を改善する試料移動装置を提供する。
【解決手段】電子顕微鏡の鏡体1と試料ホルダ2を気密にシールするOリング4と、試料ホルダ2の長手方向にスライドし位置決めするスライダ筒30と、スライダ筒30と鏡体1を気密に保持するベローズ32と、スライダ筒30を試料ホルダ2の長手方向に駆動する手段10と、試料ホルダ2を長手方向に位置決めする突き当て部材40および、突き当て部材40とスライダ筒30を接続する弾性体31を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、荷電粒子線装置及び試料移動装置に関し、特に試料ドリフトを低減させ、高スループットかつ画像ひずみの少ない画像を撮影するための試料微動ステージに関する。
荷電粒子線装置とくに透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、原子が直接観察可能な倍率での観察が行われている。観察試料は、集束イオンビーム装置などによって数10nmオーダまで薄片化され、試料台に搭載される。その試料台は試料ホルダに取り付けられ、試料移動装置に組み込まれた予備排気室(エアーロック室)を介して、10−5Pa程度まで排気された鏡体へ導入される。観察試料位置を決定するために、試料移動装置は、鉛直方向をZ軸としてその軸に直行する平面内のX軸、Y軸と定義すると、それぞれ3軸方向に駆動される。また、試料の結晶方位を決定するために、X軸、Y軸それぞれを軸とした回転方向(それぞれα方向、β方向)に駆動される。X軸は、試料ホルダの長手方向、Y方向はX軸およびZ軸に垂直な方向として通常定義されている。
原子レベルで観察領域を決定するためには、各軸に対して数nmのステップ移動が可能である駆動機構が選択されている。
ホルダ駆動方式につき、試料移動装置としては、特許文献1に記載されているような試料ホルダの先端を接触させて、X方向に駆動する方式が考案されている。また、特許文献2に記載されているように、試料ホルダの一部に段差を設けて、その段差をX軸駆動機構と接触させる方式も考案されている。
ドリフト要因について、試料観察位置を決定するためには、各軸の駆動機構を動作させるが、駆動機構のギアのバックラッシや駆動機構自身の変形によって駆動機構の動作を止めたのちにも、試料が移動してしまう試料ドリフト現象が発生してしまう。
試料ドリフト現象の他の要因としては、ホルダ導入時のホルダ温度と鏡体や温度差により、温度緩和過程でホルダが熱変形することがあげられる。この要因に対する対策として、特許文献3に記載されているように低熱膨張材を用いる手法が考案されている。
特開2004-214087号公報 特許3736772号 特開2010-165649号公報
荷電粒子装置を用いた高倍率観察を行う場合、装置操作者の意図しない試料の微小な移動(ドリフト)に伴い、画像ひずみが発生するという問題が生じる。通常、荷電粒子装置へ試料ホルダに搭載した試料を導入した直後がドリフト量は最大となる。この要因は、試料ホルダと荷電粒子装置の鏡体との温度差により熱変形と、真空に保持された試料室と大気とをシールする試料ホルダに備えられたOリングの歪がホルダに弾性力を作用し、その弾性力の解放によって試料ホルダが変形させることである。
また、試料観察中でも、試料微動機構の試料ホルダ長手方向への移動にともない、試料ホルダに備えられたOリングがつねに真空シール面とこすれ合い、その摩擦力によってOリングが弾性変形しており、この弾性力の解放が試料ドリフトの要因となる。
試料ホルダが鏡体に挿入される電子顕微鏡であって、前記電子顕微鏡の鏡体と前記試料ホルダを気密するOリングと、前記試料ホルダの長手方向にスライドし試料ホルダを長手方向に位置決めするスライダ筒と、前記スライダ筒と鏡体を気密するベローズと、スライダ筒を試料ホルダ長手方向に駆動する手段と、試料ホルダを長手方向に位置決めする突き当て部材を備え、前記突き当て部材と前記スライダ筒を接続する弾性体を備えた試料移動装置を備えることを特徴とする電子顕微鏡。
電子顕微鏡を用いた高倍率観察において、試料ドリフトを小さくすることができるため良好な画像取得が可能となる。また、試料ドリフトが低減するまでの待ち時間を短縮することができるためスループットを向上させることが可能となる。
本発明の試料移動装置 本発明の試料移動装置 本発明の試料移動装置 試料ホルダに備えられたOリング形状 Oリングの歪除去時の試料ホルダの動き ホルダ突き当て部の実施例 ホルダ突き当て部の実施例
本発明の構成について、図1のサイドエントリー式の試料ホルダを挿入する電子顕微鏡を用いて説明する。図1は、本発明の試料移動装置の断面図である。電子顕微鏡の鏡体1にベローズ32を介してスライダ筒30を締結する。スライダ筒30とホルダ突き当て部40は弾性体31にて固定される。試料ホルダ2をその長手方向に駆動する場合には、鏡体1に固定されたX駆動用リニア機構10を動作させる。
試料ホルダ2を鏡体1内に導入する際には、試料ホルダ2に備えられたOリング4はスライダ筒30内壁と摺動し、ホルダ突き当て部40にて長手方向に位置決めされる。摺動したOリング4は、変形し試料ドリフトの要因となる。
試料ホルダを鏡体1に導入し、最終位置に位置決めされた後に、試料ホルダを図1中のX方向マイナス側に押し込んだ後、弾性体31のバネ力で押し戻された位置を最終ホルダ位置とすることで、Oリング変形を緩和する。
第2図を用いて本発明の他の一実施例について説明する。鏡体1に固定された球面受け36は球形支点37と接触している。球形支点37を含むエアーロックシリンダは、球形支点37の中心を軸として首振り運動をし、その結果として、試料3をZ方向(鉛直方向)およびY方向(紙面垂直方向)に移動させることが可能となる。試料Z方向に駆動させるためには、回転筒20に固定されたZ駆動用リニア機構21を動作させる。Z駆動用リニア機構21は、その対極に位置したZバネ22によって常に反発力を受ける。図示しない紙面に垂直方向に駆動可能な別のリニア機構によってY方向へ試料ホルダ2を駆動する。

〔X微動機構の設置〕
X微動機構の設置について説明する。図2に示すように、X駆動用リニア機構10は、ベアリング23を介してベース24と締結される回転筒20に取り付けられている。X駆動用リニア機構10の駆動力は回転筒に設けられた支点にしたてこ機構25によってスライダ筒30に伝えられ、試料ホルダ2をX方向へ駆動する。スライダ筒は内筒33とベローズにて接続されている。てこ機構25とスライダ筒30の接触部は、試料ホルダのZ軸およびY軸駆動に対して、すべり機構が必要である。
図2では、X微動機構を回転筒20上に設置したが、同様の機構を、外筒38上に設置してもかまわない。その場合、Z軸およびY軸駆動に対して、X駆動機構は一体となって動くため、前記すべり機構は不要である。

〔試料ホルダの鏡体への導入〕
試料ホルダ2を鏡体1内へ導入する動作について説明する。試料3を取り付けた試料ホルダ2を図3に示す位置まで導入する。この位置は、試料ホルダ3に取り付けられた位置決めピン5によって決定される。この位置で、図示しない真空ポンプにて内筒33内を真空排気する。内筒33内の真空度が鏡体1内の真空度と同程度になった後、試料ホルダ2の長手方向を軸として回転させる。このとき、内筒33、スライダ筒30ともに回転し、内筒2の左端に備えられた傘歯車がバルブ34を開ける。その後、図2に示したようにホルダ段差部とホルダ突き当て部が接触するまで試料ホルダ2をX方向マイナス側へ移動させる。通常この位置が、概略試料移動機構の原点である。

〔Oリング変形について〕
試料ホルダ2を導入する際の試料ホルダに備えられたOリングについて説明する。Oリングは大気圧と真空を隔てるため、一定のつぶれ量を確保する必要がある。このつぶれ量に慨比例する弾性力によりOリングとスライダ筒30内壁には摩擦力が働くため、Oリングは図4に示すようにX方向プラス側へ引っ張られたような形状に変形する。X方向のOリングの変形は試料ホルダをX方向に押す力が働き結果として、ホルダ2を変形させる。この変形はナノメートルオーダであるが、電子顕微鏡を用いて原子を直接観察するよう倍率では、操作者が意図しない方向に試料が動く試料ドリフト現象をもたらす。
Oリングの歪を取るための手法として次のようなことが考えられる。歪んだOリングを図3のx矢印の方向に移動させ、歪量が0になった状態で固定する。このような状態では、Oリングの歪による弾性力はホルダの長手方向の軸に対して垂直方向に等方的に生じるため、試料ドリフトを引き起こすような弾性力は働かない。

〔Oリング歪取り手法〕
図5に示すように、試料移動装置のX方向の原点を中心に、正弦波的かつ減衰するように試料ホルダを移動させる方法が有効である。試料ホルダの移動は、ホルダを導入する装置の操作者が行ってもよい。より精度よく図5のように試料ホルダを移動させるには、次のような2つの手法が考えられる。(1)図2中のX方向に移動させるリニア機構とは別にリニア機構を設けて、このリニア機構を用いてホルダに直接力を作用させる方法、(2)図2中に示すようにX方向に移動させるリニア機構を駆動し、大気圧で鏡体内に引き込まれる力に抗するような加速度で試料ホルダをX方向に駆動する方法。この場合、ホルダ突き当て部とホルダが接触したまま、ホルダ突き当て部とスライダ筒が相対的に離れる方向に移動する。その結果、ホルダとスライダ筒が相対的に変位し、Oリングの歪が解放される。
こうして、ホルダ突き当て部40を弾性体31で支持することにより、最終的に位置決めされる位置よりX軸マイナス方向に押しこむことが可能となり、前記手法によってOリングの歪を低減させることが可能となる。弾性体31は、試料ホルダが大気圧によって鏡体内に引き込まれる力に抗するよう十分なバネ乗数を持つ必要がある。

〔スライダ筒とホルダ突き当て部〕
スライダ筒30に対するホルダ突き当て部40の別の実施例について図6を用いて説明する。スライダ筒30の一旦に突起50を設ける。弾性体31はホルダ突き当て部40を前記突起50に押しつけるように作用させる。こうすることにより、ホルダが最終的に位置決めされる位置をスライダ筒に対して常に一致させることが可能となる。試料ホルダをX軸に駆動する際には、弾性体31が大気圧力に抗するより十分に強いバネ乗数を有するため、スライダ筒30と弾性体31と試料ホルダ2は一体となって移動する。突起50は、ホルダ突き当て部に対して、点接触となるようにし、剛性を保つためにサファイヤ等の材料を用いるのがよい。
別の実施例を図7に示す。ホルダ突き当て部を大気側に設置して、そのホルダ突き当て部を弾性体31を介して締結する。この図7では、弾性体31はスライダ筒30と一体のストッパに押しつけるように作用する。また、突き当て部自体が弾性体でもよい。
以上では、突き当て部40を弾性体31にて支持する機構について述べたが、突き当て部40とスライダ筒30の位置関係が可変であれば、Oリングの歪を緩和することが可能となる。よって、図1に示した弾性体が、突き当て部40とスライダ筒30の位置関係を可変となるようなアクチュエータでもよい。アクチュエータとしては、リニアアクチュエータや超音波モータなどがあげられる。

〔ホルダ固定方向〕
試料ホルダ2は外筒38のX方向マイナス側先端に固定された球形支点37に備えられた部材でホルダ長手方向と垂直方向に固定される。部材は高耐摩耗性を有するサファイヤが用いられる。部材は3点以上を用いて試料ホルダ2を固定することが望ましい。ホルダX方向プラス方向後端も外筒38に備えられた部材にて同様の方法で固定する。
ホルダ突き当て部40とホルダの接触点もホルダ2の熱絶縁の観点から、半球状のサファイヤなどで点接触させることが望ましい。この接触点は1点以上であることが望ましい。
1…鏡体、2…ホルダ、3…試料、4…ホルダ用Oリング、5…ホルダ位置決めピン、10…X駆動用リニア機構、20…回転筒、21…Z駆動用リニア機構、22…Zバネ、23…ベアリング、24…ベース、25…てこ機構、30…スライダ筒、31…弾性体、32…ベローズ、33…内筒、34…バルブ、35…バルブ固定部、36…球面受け、37…球形支点、38…外筒、39…ホルダガイド、40…ホルダ突き当て部、41…ピン、50…突起

Claims (7)

  1. 試料ホルダが鏡体に挿入される電子顕微鏡であって、
    前記電子顕微鏡の鏡体と前記試料ホルダを気密するOリングと、前記試料ホルダの長手方向にスライドし試料ホルダを長手方向に位置決めするスライダ筒と、前記スライダ筒と鏡体を気密するベローズと、スライダ筒を試料ホルダ長手方向に駆動する手段と、試料ホルダを長手方向に位置決めする突き当て部材を備え、前記突き当て部材と前記スライダ筒を接続する弾性体を備えた試料移動装置を備えることを特徴とする電子顕微鏡。
  2. 請求項1の電子顕微鏡において、
    前記試料ホルダを当該試料ホルダが挿入される方向に減衰振動するように駆動する駆動機構を備えたことを特徴とする電子顕微鏡。
  3. 請求項1の電子顕微鏡において、
    前記Oリングの歪みを除去する位置まで試料ホルダを戻し、前記Oリングの歪みがなくなる位置で前記試料ホルダを固定する固定部材を備えたことを特徴とする電子顕微鏡。
  4. 請求項1の電子顕微鏡において、
    前記スライダ筒の先端に突起を備え、前記突起が前記突き当て部材に押し当てられることを特徴とする電子顕微鏡。
  5. 請求項1の電子顕微鏡において、
    前記突き当て部材は大気圧側に配置されていることを特徴とする電子顕微鏡。
  6. 電子顕微鏡の試料移動装置であって、試料が搭載される試料ホルダを気密するOリングと、前記試料ホルダの長手方向にスライドし試料ホルダを長手方向に位置決めするスライダ筒と、前記スライダ筒と鏡体を気密するベローズと、スライダ筒を試料ホルダ長手方向に駆動する手段と、試料ホルダを長手方向に位置決めする突き当て部材を備え、前記突き当て部材と前記スライダ筒を接続する弾性体を備えたことを特徴とする試料移動装置
  7. 請求項6の試料移動装置において、
    前記試料ホルダを当該試料ホルダが挿入される方向に減衰振動するように駆動する駆動機構を備えたことを特徴とする試料移動装置。
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