しかし、特許文献3,4に提案の方法においては、加圧条件下での処理工程を必須とするものであり、大量生産プロセスに適したものとは言い難い上に、高い導電性、耐溶剤性という点では課題を有するものであった。また、特許文献5〜7に提案の方法により得られるITO微粒子は高い分散性を有しており、乾燥後に得られる粒子紛体の粒子相互間接触面積が小さいことから、透明導電膜として十分な導電性を発現することができないものである上に、高い溶媒分散性を有するため、乾燥後の粒子紛体は分散媒に再分散し易く、透明導電膜としての耐溶剤特性に課題を有するものであった。さらに、非特許文献1に提案のオレイルアミンの配位したスズ含有酸化インジウム微粒子は、導電性、耐溶剤性について全く言及されていないものであった。
本発明は、上記事実を鑑みてなされたものであり、分散溶媒への分散性に優れた結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を含む分散液であり、塗工後には粒子凝集により分散溶媒に再分散し難い安定な透明導電膜の形成を可能とする耐溶剤性透明導電膜用塗工液、及び該塗工液を用いた耐溶剤性透明導電膜を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、分散溶媒に対して、特定の結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を含んでなる結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子分散液を透明導電膜用塗工液とし、塗工を行うことにより、分散溶媒に再分散し難い安定な透明導電膜を形成することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、分散溶媒100重量部に対して、少なくとも下記(a)〜(d)に示す特性を有する結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子0.1〜100重量部を含む分散液であることを特徴とする耐溶剤性透明導電膜用塗工液及びそれよりなる耐溶剤性透明導電膜に関するものである。
(a)立方晶系ビックスバイト構造である、
(b)誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)により測定したスズ/インジウム(モル比)=5/95〜40/60の範囲内である、
(c)透過型電子顕微鏡により測定した平均粒子径が5〜20nmの範囲内である、
(d)炭素数6〜24のアミン配位子1〜10重量%を配位する。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液は、上記した(a)〜(d)の特性を満足する結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を分散溶媒に分散した分散液からなるものである。ここで、(a)〜(d)の特性を同時に満足する結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を用いることにより、本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液は、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の分散安定性に優れるものとなり、得られる透明導電膜は、導電性、耐溶剤性に優れるものとなる。
本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液を構成する結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、(a)立方晶系ビックスバイト構造を有するものであり、立方晶系ビックスバイト構造を有することにより、本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液より得られる耐溶剤性透明導電膜は、導電性、耐溶剤性に優れるものとなる。
そして、該立方晶系ビックスバイト構造は、X線回折パターンを測定することにより確認することが可能であり、例えばスズ含有酸化インジウム微粒子分散液より、スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を調製し、キャピラリに封入し、X線回折測定装置(例えばPANalytical社製、(商品名)スペクトリスX‘pert PRO MPD)により、5〜70°の範囲について測定することにより確認することが可能である。結晶性スズ含有インジウム微粒子が、立方晶系ビックスバイト構造を有する結晶である際には、X線回折パターンとして、2θ=20〜21°に(211)面の回折、2θ=30〜31°に(222)面の回折、2θ=35〜36°に(400)面の回折、2θ=50〜51°に(440)面の回折、2θ=60〜61°に(622)面の回折が、それぞれ観測される。
また、本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液を構成する結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、(b)誘導結合プラズマ発光分光分析装置(以下、ICPと記す場合もある。)により測定したスズとインジウムの比率(モル比)であるスズ/インジウムが5/95〜40/60の範囲内にある結晶性スズ含有酸化インジウムであり、より優れた導電性を発現する耐溶剤性透明導電膜が得られることから、スズ/インジウムが10/90〜30/70であることが好ましく、特に10/90〜20/80であることが好ましい。ここで、スズの比率がスズ/インジウム=5/95より低い場合、スズによって供給されるキャリア量が不十分であることから、十分なバンドギャップを形成できず、塗工膜が透明導電膜として十分な導電性を発現しない。一方、スズの比率がスズ/インジウム=40/60を越える場合、過剰のスズがキャリア生成に寄与しない酸化物を形成し、これが中性散乱中心となることから、同様に塗工膜が透明導電膜として十分な導電性を発現しなくなる。なお、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子中のスズの含有量は、例えば後述する該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を調製する際のインジウムとスズの仕込み比を調整することで、任意に選択することが可能である。
そして、ICPによる測定としては、例えば、スズ含有酸化インジウム微粒子分散液より、スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を調製し、該粉体を加熱・酸処理することで分解し、定容した希釈溶液をICP(例えばセイコーインスツルメント社製、誘導結合アルゴンプラズマ発光分光分析装置(Vista−PROアキシャル仕様))等の分析装置を使用して測定することが可能である。
さらに、本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液を構成する結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、(c)透過型電子顕微鏡(以下、TEMと記すこともある。)により測定した平均粒子径が5〜20nmの範囲内にあるものである。ここで、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径が5nm未満である場合、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粒径が小さすぎることから、透明導電膜にした際に十分な導電性を有する透明導電膜が得られない。一方、平均粒子径が20nmを超える場合、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粒径が大きすぎることから、分散溶液又は塗膜とした際に光を散乱し、可視光域での光の透過率が悪化したものとなる。また、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、より透明性、導電性に優れる耐溶剤性透明導電膜を形成することが可能となることから球形の微粒子であることが好ましく、特にTEMにより観測されるアスペクト比の平均値が0.7〜1.3の範囲内であることが好ましい。
そして、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径の測定としては、例えば、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を有機溶媒に分散させた濃度0.01%以下の低濃度微粒子分散液を用意し、これをコロジオン膜展張したカーボンコーティング銅メッシュに滴下して溶媒を揮発させ、透過型顕微鏡で観察する方法により測定を行うことが可能である。そして、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒径の測定には、倍率20万倍で観察された像の写真を撮影し、300個以上の粒子の粒子径を測定し、平均化することで、平均粒子径を求めることができる。
また、本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液を構成する結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、(d)炭素数6〜24のアミン配位子1〜10重量%を配位してなるものである。該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、結晶性を有することから、透明導電膜とする際に400℃以上の高温による焼結工程を必要とせず、塗工もしくは塗工と200℃以下の加熱により、耐溶剤性透明導電膜を製造することができる。また、炭素数6〜24のアミン配位子を配位してなることにより、該アミン配位子が分散溶媒と溶媒和するため、特殊な分散剤または特殊な操作を必要とすることなく、分散溶媒中に該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を添加するたけで、分散安定性に優れる分散液、耐溶剤性透明導電膜用塗工液となるものである。その一方で、分散溶媒への分散性に寄与する炭素数6〜24のアミン配位子を1〜10重量%という特定の範囲で配位を行うことにより、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、分散液又は塗工液の段階では適度な微粒子分散安定性を有し、一旦、塗工により乾固した微粒子は、分散溶媒によっても再度分散することなく、塗工後には、分散溶剤に対しても安定な結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の凝集膜が形成し、耐溶剤性透明導電膜を提供できるものである。
ここで、炭素数6未満のアミン配位子である場合、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、分散溶媒への分散安定性が低下したものとなり得られる塗工液は分散安定性が劣るものとなり、保存時に該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の凝集が発生しやすいものとなる。一方、炭素数24を越えるアミン配位子である場合、塗工膜とした際に結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粒子間の距離が長くなり、導電性能が低下するため、透明導電膜として適応できなくなる。また、炭素数6〜24のアミン配位子の配位量が1重量%未満である場合、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、分散溶媒への分散安定性が低下したものとなり得られる塗工液は分散安定性が劣るものとなり、保存時に該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の凝集が発生しやすいものとなる。一方、炭素数6〜24のアミン配位子の配位量が10重量%を越える場合、塗工膜にした際の結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の凝集安定性が劣るものとなり、分散溶媒に対する安定性に劣るものとなる。
該炭素数6〜24のアミン配位子としては、インジウム及びスズへの配位が可能な炭素数6〜24のアミン配位子であれば、単座配位子、多座配位子のいずれも用いることができ、例えば下記一般式(1)で表わされる構造を有するものを挙げることができる。
R(NH2)n (1)
(ここで、Rは炭素数6〜24のアルキル基、アリール基を示し、nは自然数を示す。)
炭素数6〜24のアミン配位子を構成する化合物の具体例としては、例えばヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、ステアリルアミン、ヘベニルアミン、ノナデシルアミン、オレイルアミン、ヘキサメチレンジアミン、4−メチルアニリン等をあげることが可能である。そして、その中でも、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の分散安定性を向上させ、かつ高い導電性を発現させるため鎖状構造を有するアミン配位子であることが好ましく、特に炭素数10〜22の鎖状構造を有するアミン配位子であることが好ましく、それを構成する化合物の具体例としては、ステアリルアミン、ヘベニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、オレイルアミンを挙げることができる。
結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子におけるアミン配位子の配位量の測定方法としては、微粒子中のアミン配位子の含量が測定可能な方法であれば、如何なる方法を用いることも可能であり、例えば、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子分散液を0.5μmフィルタで濾過した後、分散液を乾固させて得られる結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体のCHN元素分析を行い、各成分の含量からアミン配位子の配位量を算出する方法、示差熱熱重量同時測定装置(以下、TG/DTAと記すこともある。)により、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を窒素雰囲気下、500℃まで加熱を行い、重量変化分をアミン配位子含量として測定する方法、等を挙げることができる。
以下に、アミン配位子含量の具体的な測定方法として、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)によるアミン配位子含量の測定方法を示す。
結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子分散液を0.5μmフィルタで濾過した後、乾固することで結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を調製し、TG/DTA(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、(商品名)EXSTAR TG/DTA6200)により、窒素雰囲気中、100℃で60分保持した後、10℃毎分で500℃まで昇温、その後500℃で180分間保持し、100℃から500℃の範囲における重量の減少値をアミン配位子量とする。
本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液を構成する分散溶媒に特に制限はなく、上記(a)〜(d)に示す特性を満足する結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を分散することが可能であれば如何なる分散溶媒を用いることも可能であり、一般的な有機溶媒を使用することも可能である。
該分散溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂肪族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドンなどのケトン類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどの塩化脂肪族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどの酢酸エステル類、等が挙げられ、その中でも特に結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の分散安定性に優れる耐溶剤性透明導電膜用塗工液となることから、n−ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、デカヒドロナフタレンが好ましく、さらに、n−ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム、トルエン、デカンであることが好ましい。また、分散溶媒としては、これらを数種類組み合わせたものであってもよい。
本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液は、該分散溶媒100重量部に対して、少なくとも該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子0.1〜100重量部を含む分散液であり、特に該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の分散安定性に優れ、耐溶剤性透明導電膜の製膜性にも優れるものとなることから、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子0.1〜50重量部、特に0.1〜30重量部、さらには0.1〜10重量部を含むものであることが好ましい。ここで、塗工液中の結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子が0.1重量部未満である場合、塗膜とする際に結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子同士の凝集性が低下し、塗工膜中の同微粒子間の距離が開くことから、十分な導電性を有する導電膜を得ることが困難となる。一方、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子が100重量部を越える場合、塗工液中での同微粒子が不安定となり、分散安定性に劣るものとなる。
本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液は、特に透明性に優れた耐溶剤性透明導電膜を提供することが可能となることから、光線透過率は90%以上、特に92%以上であるものが好ましい。また、ヘーズは2%以下、特に1%以下であるものが好ましい。この際の光線透過率は、例えば日本電色工業社製ヘーズメーター(商品名NDH−5000)により、厚み10mmの液体用セルを用いて、JIS K 7361−1を準拠し測定することが可能である。また、ヘーズについても日本電色工業社製ヘーズメーター(商品名NDH−5000)により、厚み10mmの液体用セルを用いて、JIS K 7136を準拠し測定することが可能である。
以下に、本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液の好ましい製造方法の具体例を示すが、これら例示は本発明を限定するのではない。
該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子としては、上記(a)〜(d)を満足する結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子であれば如何なる方法により得られたものであってもよく、例えばインジウムカルボキシレート、スズカルボキシレート及び炭素数6〜24のアミン配位子の混合物を220℃以上に加熱することにより得ることが可能である。また、インジウムカルボキシレートの代りに、硫酸インジウム、硝酸インジウム等に代表される無機酸インジウムを用いることも可能である。
該インジウムカルボキシレートとしては、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を形成するための酸素を含有しているものである。インジウムカルボキシレートにおけるインジウムに付加したカルボキシレートは、炭素数1〜20のカルボキシレートであることが好ましく、特に、飽和脂肪族カルボキシレート、不飽和カルボキシレート、芳香族カルボキシレートであることが好ましい。
該インジウムカルボキシレートの具体的な例としては、ギ酸インジウム、酢酸インジウム、プロピオン酸インジウム、酪酸インジウム、吉草酸インジウム、カプロン酸インジウム、エナント酸インジウム、カプリル酸インジウム、ペラルゴン酸インジウム、カプリン酸インジウム、ラウリン酸インジウム、ミリスチン酸インジウム、パルミチン酸インジウム、マルガリン酸インジウム、ステアリン酸インジウム、オレイン酸インジウム、2−エチルヘキサン酸インジウムなどの飽和脂肪族インジウムカルボキシレート;オレイン酸インジウム、リノール酸インジウムなどの不飽和インジウムカルボキシレート;トリ安息香酸インジウム、フタル酸インジウムなどの芳香族カルボン酸インジウム;などを挙げることができる。
該スズカルボキシレートも、前述のインジウムカルボキシレートと同様に、スズ含有酸化インジウム微粒子を形成するための酸素を含有しているものである。スズカルボキシレートにおけるスズに付加したカルボキシレートは、炭素数1〜20のカルボキシレートであることが好ましく、特に、飽和脂肪族カルボキシレート、不飽和カルボキシレート、芳香族カルボキシレートであることが好ましい。
該スズカルボキシレートの具体的な例として、ギ酸スズ、酢酸スズ、プロピオン酸スズ、酪酸スズ、吉草酸スズ、カプロン酸スズ、エナント酸スズ、カプリル酸スズ、ペラルゴン酸スズ、カプリン酸スズ、ラウリン酸スズ、ミリスチン酸スズ、パルミチン酸スズ、マルガリン酸スズ、ステアリン酸スズ、オレイン酸スズ、2−エチルヘキサン酸スズなどの飽和脂肪族スズカルボキシレート;オレイン酸スズ、リノール酸スズなどの不飽和インジウムカルボキシレート;安息香酸スズ、フタル酸スズなどの芳香族カルボン酸スズ;などを挙げることができる。
該炭素数6〜24のアミン配位子としては、上記したものと同様のものを用いることができる。
該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を製造する際のインジウムカルボキシレートとスズカルボキシレートの割合は任意であり、その中でも特に導電性に優れる結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子となることから、インジウムカルボキシレート/スズカルボキシレート(モル比)=95/5〜60/40として反応を行うことが好ましい。また、炭素数6〜24のアミン配位子の使用量は、インジウムカルボキシレートとスズカルボキシレート中のカルボキシレートを置換できる量を用いれば十分であるが、反応を効率よく進めるためには、インジウムカルボキシレートとスズカルボキシレートのモル数の和よりも過剰量のアミン配位子を用いることが望ましく、例えば、反応時に用いるインジウムカルボキシレートとスズカルボキシレートのモル数の和と炭素数6〜24のアミン配位子のモル数の比は、(インジウムカルボキシレートとスズカルボキシレートのモル数の和)/(炭素数6〜24のアミン配位子)=1/1〜1/1000の範囲であることが好ましく、1/1〜1/100の範囲であることがさらに好ましい。
そして、インジウムカルボキシレート、スズカルボキシレート、炭素数6〜24のアミン配位子を220℃以上の温度に加熱し反応することで、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を製造することが可能であり、さらに220℃〜280℃であることが好ましい。その際には、溶媒を用いることも可能であり、該溶媒としては、220℃以上の沸点を有するものであることが好ましく、例えば1−オクタデセン、安息香酸ブチル、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジ−n−オクチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等を挙げることができる。
また、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を製造する際に、反応速度を制御する目的で有機酸を添加してもよく、該有機酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、イソ吉草酸、ピバル酸、3−メチルブタン酸、ヘプタン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、ヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、テトラデカン酸、ペンタデシル酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イコサン酸等を使用することができ、またその使用量についても、その目的に応じて任意に設定することができる。
反応際の雰囲気は無酸素条件下であることが好ましく、窒素気流中、減圧中であることが好ましい。
そして、得られた結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を精製、例えば遠沈精製することにより、特に導電性と耐溶剤性のバランスに優れた透明導電膜を与えうる耐溶剤性透明導電膜用塗工液となりうる。その際の遠沈精製とは、遠心分離装置を用いて、得られた反応液又は分散液を微粒子と上澄み液に分離し、上澄み液を除去後、分散溶媒を添加、遠心分離を繰り返して、微粒子の洗浄を行う方法を示す。そして、遠沈精製の際、微粒子と上澄みの分離が可能な条件であれば、遠心分離装置の条件に特に制約はない。また、使用する分散溶媒についても、微粒子が十分に分散、沈降する分散媒であれば、特に制限はない。
そして、精製、遠沈精製により、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子と、未反応原料、反応副生成物等、とを分離することが可能となり、特に導電性と耐溶剤性のバランスに優れた透明導電膜を与えうる耐溶剤性透明導電膜用塗工液となるものである。その中でも、特に耐溶剤性に優れる透明導電膜を与えうる耐溶剤性透明導電膜用塗工液となることから、未反応の炭素数6〜24のアミン配位子、つまり炭素数6〜24の遊離アミン配位子を分離精製することが好ましく、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対し10000ppm以下とすることが好ましい。その際の遠沈精製条件としては、例えば遠心分離を3回以上、好ましくは4回以上繰り返して実施することが好ましく、特に高い遊離アミン配位子の分離を実現できることから、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を沈殿させるための溶媒(以下、沈殿溶媒という。)と上記した分散溶媒とを組み合わせて使用することが好ましい。
該沈殿溶媒としては、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を凝集沈降させる溶媒であればどんなものでも使用でき、中でもアルコール系溶媒であることが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−エチル−1−ブタノール、3,3’−ジメチル−1−ブタノール、3,3’−ジメチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ベンジルアルコール、クロチルアルコール等が挙げられ、微粒子の沈殿特性と実用性から、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールを使用することが好ましく、中でもメタノール、エタノール、2−プロパノールが特に好ましい。
該分散溶媒としては、上記したものと同様のものを用いることができ、精製、遠沈精製を繰り返すことにより、反応溶媒、沈殿溶媒を分散溶媒へと置換することが可能となり、本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液とすることが可能となる。
また、本発明の耐溶剤性導電膜用塗工液に含まれる場合もある、遊離アミン配位子量は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーなどに代表される、クロマトグラフィー法により測定することが可能である。
本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液は、例えば基材上に塗工し、乾燥、好ましくは200℃以下で乾燥、することにより、透明性、導電性、耐溶剤性に優れる透明導電膜を製膜することができる。その際の塗工方法としては、例えばスピンコート法、ドロップコート法、ロールコート法、スプレー法、バーコート法、ディップ法、メニスカスコート法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、Tダイ法、リップコーター法、ロールコート法等の公知の方法がいずれも使用可能である。塗工後の乾燥条件は任意であり、耐溶剤性透明導電膜用塗工液を構成する分散溶媒により選択すればよく、その中でも結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子が塗膜中でより密にパッキングされること、乾燥後の塗膜の安定性が向上すること、温湿度によるシート抵抗の変動が小さくなること等から、10〜200℃の範囲で、さらに好ましくは20〜180℃の範囲で乾燥することが好ましい。また乾燥雰囲気は空気中、窒素雰囲気中、減圧下など、特に制限されない。
また、基材についても特に制限はなく、例えば、ガラス系などの無機基材;ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレートなどのポリマーフィルム基材等を使用することができる。これらの基材は、耐溶剤性透明導電膜との密着性を優れたものとするために表面処理を行ってもよく、表面処理剤としては、例えばシランカップリング剤、有機金属等があげられる。該シランカップリング剤としては、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等があげられ、有機金属としては、例えば有機チタン、有機アルミニウム、有機ジルコニウム等があげられる。
本発明の耐溶剤性透明導電膜の厚みとしては、本発明の目的を損なわないかぎりにおいて任意であり、その中でも特に透明性と導電性のバランスに優れる導電膜となることから0.001〜5μmであることが好ましく、特に0.01〜2μmであることが好ましく、さらに0.02〜1μmであることが好ましい。また、透明導電材料として十分な透明性を有することからJIS K 7361−1に準拠し測定した光線透過率が80%以上であることが好ましく、特に85%以上であることが好ましい。また、JIS K 7136に準拠し測定したヘーズが5%以下であることが好ましく、特に3%以下であることが好ましい。
本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液は、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を含むものであり、該結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、結晶性を有していることから、塗工するだけで高い導電性が発現する導電膜を形成することが可能となるものである。一方、従来報告されている金属酸化物微粒子の多くは、非晶質の酸化物であり、300℃以上の高温条件で焼成することにより、結晶化させる必要があった。本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液からなる耐溶剤性透明導電膜は、結晶性を有する微粒子からなるため、塗工後に乾燥(例えば200℃以下の低温)するのみにより、高い導電性を発現する特徴を持つ。得られた耐溶剤性透明導電膜のシート抵抗としては、105Ω/□以下であることが好ましく、特に5×104Ω/□以下であることが好ましく、さらに104Ω/□以下であることが好ましい。
また、本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液は、一旦分散液中の分散溶媒を揮発させると結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子同士が凝集する性質を有しており、塗工・乾燥することで、分散媒体に再分散しない塗膜、すなわち高い耐溶剤性を有する透明導電膜を形成することができる。なおこの際に生じる微粒子からなる凝集体は、粒子が1〜30個程度凝集したものであることから、塗膜の外観を損なうものではない。
そして、本発明の耐溶剤性透明導電膜は、再度同分散溶媒に浸漬しても、塗膜の白化や微粒子の再分散はほとんど起こらず、塗工膜の分散溶媒に対する分散度は10%重量以下であり、特に5重量%以下であることが好ましく、さらに1重量%以下であることが好ましい。そして、この際の塗工膜の分散溶媒に対する分散度は、例えば該塗工膜を、製膜前に分散溶媒として用いた有機溶媒中に3時間浸漬した後、同溶媒が除去可能な温度で塗膜を乾燥させ、浸漬前後の重量変化を測定することで、分散溶媒に再分散した重量を算出し、塗膜の分散度として算出することができる。
本発明の耐溶剤性透明導電膜用塗工液は、従来の真空プロセスによる透明導電膜形成方法であるスパッタ法よりも、簡便かつ低コストで高導電性、高透明性、耐溶剤性を有する透明導電膜を提供することができる。また、金属酸化物を使用することから、従来の貴金属を用いた塗膜よりも膜の光線透過率が高く、透過色のムラの少ない透明導電膜を提供することが可能である。
本発明により、塗工という簡便な方法により、より容易に透明性、導電性、耐溶剤性に優れる透明導電膜を形成することが可能となり、その産業的価値極めて高いものである。
以下に本発明を実施例により、詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
<結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の精製>
得られた粗結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子分散液は、遠心機((商品名)H−201F、コクサン(株)製)を使用し、遠心分離を繰り返すことによって精製を行った。
<結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の外観観察>
結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の外観は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測した。該微粒子を有機溶媒に分散させた、濃度0.01%以下の微粒子分散液を用意し、これをコロジオン膜展張したカーボンコーティング銅メッシュに落として溶媒を揮発させ、このサンプルを透過型顕微鏡で観察した。また得られた像から、粒子の粒子径を読み取った。
<結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の紛体作製>
結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子分散液を0.5μmフィルタで濾過した後、分散溶媒の除去が可能な温度において、減圧中で乾固させ、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を得た。
<結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子のX線回折測定>
結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を用いてX線回折を測定した。測定にはPANalytical社製、(商品名)スペクトリスX‘pert PRO MPDを使用し、5〜70°の範囲について測定を行った。
<結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子中のスズ含量測定>
結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を用い、誘導結合プラズマによって同微粒子中の金属組成を分析した。測定にはセイコーインスツルメント社製、誘導結合アルゴンプラズマ発光分光分析装置(Vista−PROアキシャル仕様)を使用した。
<結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子中のアミン配位子含量分析>
結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を用い、熱重量減少測定により分析した。測定にはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製、(商品名)EXSTAR TG/DTA6200を使用した。同微粒子紛体を窒素雰囲気中、100℃で60分保持した後、10℃毎分で500℃まで昇温、その後500℃で180分間保持し、100℃から500℃の範囲における重量の減少値を、加熱分解したアミン配位子量として算出した。
<分散液中の遊離アミン配位子の測定>
結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子分散液に、大過剰の沈殿溶媒を添加した後、遠心分離によって同微粒子のみを沈降させ、得られた上澄みを分析することで、分散液中の、微粒子に配位していない遊離アミン配位子の定量を行った。測定にはガスクロマトグラフィー((商品名)GC−14A、(株)島津製作所製)を使用した。
<透明導電膜の導電性の測定>
抵抗率計((商品名)Loresta−AP、三菱油化(株)製)を用い、4探針法にてシート抵抗の測定を行った。
<結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の分散液の光線透過率及びヘーズの測定>
日本電色工業社製ヘーズメーター((商品名)NDH−5000、日本電色工業(株)製)を用い、厚み10mmの液体用セル中に該分散液を入れ、JIS K 7361−1に準拠して結晶性スズ含有インジウム微粒子分散液の光線透過率を、JIS K 7136に準拠してヘーズの測定を行った。
<透明導電膜の光線透過率及びヘーズの測定>
ヘーズメーター((商品名)NDH−5000、日本電色工業(株)製)を用い、JIS K 7361−1に準拠して透明導電膜の光線透過率を、JIS K 7136に準拠してヘーズの測定を行った。
<透明導電膜の耐溶剤性の評価>
製膜前に分散溶媒として用いた有機溶媒中に透明導電膜を3時間浸漬した後、同溶媒が除去可能な温度で該透明導電膜を乾燥させ、浸漬前後の重量変化を測定することで、分散溶媒に再分散した重量を算出し、透明導電膜の耐溶剤性の評価とした。
実施例1
100mlフラスコ中に酢酸インジウム(III)315mg、2−エチルヘキサン酸スズ(II)48.6mg、n−オクタン酸600μl、ステアリルアミン3.0g、n−ジオクチルエーテル9mlを仕込み、真空中70℃で1時間加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中150℃で1時間加熱し、次いで窒素雰囲気中270℃で2時間加熱還流し、ステアリルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
該粗分散液を沈殿溶媒にメタノール、分散溶媒にクロロホルムを用いて5回遠心分離精製を繰り返した後、クロロホルム10mlを添加して、クロロホルム100重量部に対して、ステアリルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム1.5重量部を含む分散液である耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径は12.2nmであった。次いで、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。同微粒子紛体のスズ/インジウム(モル比)は10/90であり、ステアリルアミンが4.5重量%配位したものであることを確認した。
また、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の遊離ステアリルアミンは、ステアリルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対して2100ppmであり、光線透過率95%、ヘーズ0.5%であった。得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の評価結果を表1に示す。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、25℃で10時間乾燥して、塗工厚0.1μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率91%、ヘーズ0.8%、シート抵抗4×103Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をクロロホルムに3時間浸漬し、その後塗膜を減圧中、60℃で1時間乾燥させたところ、クロロホルム中への再分散による結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は0.1重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例2
100mlフラスコ中に硝酸インジウム(III)325mg、酢酸スズ(II)28.4mg、2−エチルヘキサン酸500μl、テトラデシルアミン3.5g、n−ジオクチルエーテル15mlを仕込み、真空中80℃で1時間加熱し、その後常圧に戻して250℃で4時間加熱還流し、テトラデシルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウムの微粒子の粗分散液を得た。
同粗分散液を沈殿溶媒にエタノール、分散溶媒にクロロホルムを用いて4回遠心分離精製を繰り返した後、クロロホルム10mlを添加して、クロロホルム100重量部に対して、テトラデシルアミンの配位したスズ含有酸化インジウム微粒子1.4重量部を含む分散液である耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径は7.8nmであった。次いで、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。同微粒子紛体のスズ/インジウム(モル比)は10/90であり、テトラデシルアミンが4.9重量%配位したものであることを確認した。
また、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の遊離テトラデシルアミンは、テトラデシルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対して8300ppmであり、光線透過率93%、ヘーズ1.0%であった。得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の評価結果を表1に示す。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、100℃で1時間乾燥して塗工厚0.08μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率88%、ヘーズ1.0%、シート抵抗4×104Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をクロロホルムに3時間浸漬し、その後塗膜を窒素気流中、50℃で3時間乾燥させたところ、クロロホルム中への再分散による結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は0.5重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例3
100mlフラスコ中に酢酸インジウム(III)280mg、酢酸スズ(II)56.8mg、2−エチルヘキサン酸600μl、ベヘニルアミン2.7g、1−オクタデセン10mlを仕込み、真空中70℃で30分加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中150℃で1時間加熱し、次いで窒素雰囲気中270℃で2時間加熱還流し、ベヘニルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウムの微粒子の粗分散液を得た。
同粗分散液を沈殿溶媒にイソプロパノール、分散溶媒にヘキサンを用いて5回遠心分離精製を繰り返した後、ヘキサン5mlを添加して、ヘキサン100重量部に対して、ベヘニルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子3.0重量部を含む分散液である耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径は13.5nmであった。次いで、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。同微粒子紛体のスズ/インジウム(モル比)は20/80であり、ベヘニルアミンが2.8重量%配位したものであることを確認した。
また、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の遊離ベヘニルアミンは、ベヘニルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対して8900ppmであり、光線透過率93%、ヘーズ1.5%であった。得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の評価結果を表1に示す。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、70℃で30分乾燥、次いで180℃で1時間乾燥して塗工厚0.3μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率89%、ヘーズ1.6%、シート抵抗8×102Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をヘキサンに3時間浸漬し、その後塗膜を窒素気流中、60℃で3時間乾燥させたところ、ヘキサン中への再分散による結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は1.0重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例4
100mlフラスコ中に2−エチルヘキサン酸インジウム(III)457mg、2−エチルヘキサン酸スズ(II)145.8mg、ピバル酸300μl、オレイルアミン3.0g、1−オクタデセン10mlを仕込み、真空中70℃で30分加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中250℃で4時間加熱還流し、オレイルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
同粗分散液を沈殿溶媒にエタノール、分散溶媒にヘキサンを用いて5回遠心分離精製を繰り返した後、ヘキサン10mlを添加して、ヘキサン100重量部に対して、オレイルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子1.2重量部を含む分散液である耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径は9.5nmであった。次いで、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。同微粒子紛体のスズ/インジウム(モル比)は30/70であり、オレイルアミンが3.7重量%配位したものであることを確認した。
また、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の遊離オレイルアミンは、オレイルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対して6800ppmであり、光線透過率93%、ヘーズ1.0%であった。得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の評価結果を表1に示す。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、150℃で1時間乾燥して塗工厚0.2μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率92%、ヘーズ0.8%、シート抵抗2×103Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をヘキサンに3時間浸漬し、その後塗膜を窒素気流中、50℃で5時間乾燥させたところ、ヘキサン中への再分散によるスズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は0.2重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例5
実施例1と同様に方法により、耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるPETフィルムに塗工し、50℃で1時間乾燥して塗工厚0.05μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率91%、ヘーズ1.8%、シート抵抗5×103Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をクロロホルムに3時間浸漬し、その後塗膜を減圧中、60℃で1時間乾燥させたところ、クロロホルム中への再分散による結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は0.2重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例6
実施例2と同様に方法により、耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるPETフィルムに塗工し、40℃で5時間乾燥して塗工厚0.1μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率86%、ヘーズ1.3%、シート抵抗2×104Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をクロロホルムに3時間浸漬し、その後塗膜を窒素気流中、50℃で3時間乾燥させたところ、クロロホルム中への再分散による結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は1.0重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例7
実施例3と同様に方法により、耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるPETフィルムに塗工し、70℃で30分、次いで140℃で30分乾燥して塗工厚0.3μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率85%、ヘーズ2.0%、シート抵抗9×102Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をヘキサンに3時間浸漬し、その後塗膜を窒素気流中、60℃で3時間乾燥させたところ、ヘキサン中への再分散による結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は1.0重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例8
実施例4と同様に方法により、耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるPETフィルムに塗工し、80℃で1時間乾燥して塗工厚0.1μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率92%、ヘーズ1.0%、シート抵抗8×103Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をヘキサンに3時間浸漬し、その後塗膜を窒素気流中、60℃で3時間乾燥させたところ、ヘキサン中への再分散による結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は0.2重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例9
2−エチルヘキサン酸スズ(II)の仕込み量を77.0mg、ステアリルアミンの仕込み量を4gに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、クロロホルム100重量部に対して、ステアリルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム1.8重量部を含む分散液である耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径は15.1nmであった。次いで、該塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。同微粒子紛体のスズ/インジウム(モル比)は15/85であり、ステアリルアミンが5.1重量%配位したものであることを確認した。
また、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の遊離ステアリルアミンは、ステアリルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対して2300ppmであり、光線透過率94%、ヘーズ0.6%であった。得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の評価結果を表1に示す。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、25℃で1時間、窒素雰囲気中200℃で1時間乾燥し、塗工厚0.1μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率90%、ヘーズ1.6%、シート抵抗9×102Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をクロロホルムに3時間浸漬し、その後塗膜を減圧中、60℃で1時間乾燥させたところ、クロロホルム中への再分散による結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は0.1重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例10
酢酸スズ(II)の仕込み量を23.7mgに変更した以外は、実施例2と同様の方法により、クロロホルム100重量部に対して、テトラデシルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム1.9重量部を含む分散液である耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径は8.3nmであった。次いで、該塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。同微粒子紛体のスズ/インジウム(モル比)は8/92であり、テトラデシルアミンが6.9重量%配位したものであることを確認した。
また、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の遊離テトラデシルアミンは、テトラデシルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対して7900ppmであり、光線透過率95%、ヘーズ0.9%であった。得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の評価結果を表1に示す。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、100℃で1時間、次いで200℃で1時間乾燥し、塗工厚0.08μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率88%、ヘーズ1.3%、シート抵抗6×103Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をクロロホルムに3時間浸漬し、その後塗膜を窒素気流中、50℃で3時間乾燥させたところ、クロロホルム中への再分散による結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は0.4重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例11
酢酸スズ(II)の仕込み量を49.7mg、ヘベニルアミンの仕込み量を3gに変更した以外は、実施例3と同様の方法により、ヘキサン100重量部に対して、ヘベニルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム4重量部を含む分散液である耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径は15.3nmであった。次いで、該塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。同微粒子紛体のスズ/インジウム(モル比)は18/82であり、ヘベニルアミンが3.1重量%配位したものであることを確認した。
また、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の遊離ヘベニルアミンは、ヘベニルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対して8800ppmであり、光線透過率93%、ヘーズ1.2%であった。得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の評価結果を表1に示す。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、60℃で30分、次いで窒素雰囲気中180℃で200分乾燥して塗工厚0.25μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率85%、ヘーズ2.0%、シート抵抗5×102Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をヘキサンに3時間浸漬し、その後塗膜を窒素気流中、60℃で3時間乾燥させたところ、ヘキサン中への再分散による結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は0.8重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
実施例12
酢酸スズ(II)の仕込み量を113.4mg、オレイルアミンの仕込み量を2.5gに変更し、分散溶媒をトルエンとした以外は、実施例4と同様の方法により、トルエン100重量部に対して、オレイルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム1.1重量部を含む分散液である耐溶剤性透明導電膜用塗工液を得た。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径は9.1nmであった。次いで、該塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。同微粒子紛体のスズ/インジウム(モル比)は25/75であり、オレイルアミンが3.8重量%配位したものであることを確認した。
また、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の遊離オレイルアミンは、オレイルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対して7000ppmであり、光線透過率93%、ヘーズ1.0%であった。得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液の評価結果を表1に示す。
得られた耐溶剤性透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、60℃で1時間、次いで220℃で1時間乾燥して塗工厚0.08μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率90%、ヘーズ1.0%、シート抵抗1×103Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。
次いで、この透明導電膜をトルエンに3時間浸漬し、その後塗膜を窒素気流中、60℃で3時間乾燥させたところ、トルエン中への再分散による結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は0.2重量%であり、また塗膜の白化や光学特性、導電特性の悪化は見られず、透明導電膜として十分な耐溶剤性を有することを確認した。得られた透明導電膜の評価結果を表2に示す。
比較例1
平均粒径20nmの非晶質スズ含有酸化インジウム(ITO)微粒子(シーアイ化成社製、(商品名)NanoTeck ITO)0.3g、分散剤として脂肪族リン酸エステル型界面活性剤(旭電化工業(株)製、(商品名)PS−440E)50mg、分散溶剤としてトルエン5gを混合した後、ジルコニアビーズを用いたペイントシェーカーにより湿式粉砕して、ITO微粒子分散液を調製した。
該ITO微粒子分散液を基材であるガラス板に塗工し、300℃で3時間加熱して有機溶剤と分散剤を除去し、塗工厚0.3μmの塗工膜を得た。得られた塗工膜は光線透過率60%、ヘーズ20%と透明性に劣り、シート抵抗は9.9×107以上であり正確な測定できず、非晶質のスズ含有酸化インジウムからなる塗工膜であることから、導電膜としての導電性が不十分なものであった。得られた塗工膜の評価結果を表4に示す。
比較例2
酢酸インジウム(III)の仕込み量を339mg、2−エチルヘキサン酸スズ(II)の仕込み量を14.6mgに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、クロロホルム100重量部に対して、ステアリルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム1.5重量部を含む分散液である塗工液を得た。
得られた塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径は7.5nmであった。次いで、該塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。同微粒子紛体のスズ/インジウム(モル比)は3/97であり、ステアリルアミンが4.5重量%配位したものであることを確認した。
また、該塗工液の遊離ステアリルアミンは、ステアリルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対して5000ppmであり、光線透過率89%、ヘーズ0.9%であった。得られた塗工液の評価結果を表3に示す。
得られた塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、25℃で10時間乾燥して、塗工厚0.1μmの塗工膜を得た。この塗工膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率91%、ヘーズ0.8%であったが、Sn含量の少ない結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子からなることによりシート抵抗4×106Ω/□と高く、導電膜としての導電性が不十分であった。得られた塗工膜の評価結果を表4に示す。
比較例3
テトラデシルアミンの仕込み量を1.7gに変更した以外は、実施例2と同様の手法で、クロロホルム100重量部に対して、テトラデシルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム1.1重量部を含む分散液である塗工液を得た。
得られた塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径は4.0nmであった。次いで、該塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。同微粒子紛体のスズ/インジウム(モル比)は10/90であり、テトラデシルアミンが8.0重量%配位したものであることを確認した。
また、該塗工液の遊離テトラデシルアミンは、テトラデシルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対して9000ppmであり、光線透過率92%、ヘーズ1.1%であった。得られた塗工液の評価結果を表3に示す。
得られた塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、100℃で1時間乾燥して塗工厚0.1μmの塗工膜を得た。この塗工膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率90%、ヘーズ1.0%を有するものであったが、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粒子径が小さいことからシート抵抗5×107Ω/□と高く、導電膜としての導電性が不十分であった。得られた塗工膜の評価結果を表4に示す。
比較例4
アミン配位子をn−ブチルアミン2.6gに変更した以外は、実施例1と同様の手法で、クロロホルム100重量部に対して、n−ブチルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム1.5重量部を含む分散液である塗工液を得た。
該塗工液中の結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、アミン配位子の鎖長が短いため、分散安定性が低く、該分散液の光線透過率は69%、ヘーズは10.9%であり、透明導電膜用塗工液として透明性が不十分な塗工液であった。得られた塗工液の評価結果を表3に示す。
比較例5
ステアリルアミンの仕込み量を10gに変更した以外は、実施例1と同様の手法で、クロロホルム100重量部に対して、ステアリルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム1.5重量部を含む分散液である塗工液を得た。
得られた塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径は12.5nmであった。次いで、該耐溶剤性透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。同微粒子紛体のスズ/インジウム(モル比)は10/90であり、ステアリルアミンが11.0重量%配位したものであることを確認した。
また、該塗工液の遊離ステアリルアミンは、ステアリルアミンの配位した結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の重量に対して28000ppmであり、光線透過率85%、ヘーズ1.9%であった。得られた塗工液の評価結果を表3に示す。
得られた塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、25℃で10時間乾燥して、塗工厚0.1μmの塗工膜を得た。
次いで、この塗工膜をクロロホルムに3時間浸漬し、その後塗膜を減圧中、60℃で1時間乾燥させたところ、クロロホルム中への再分散によるスズ含有酸化インジウム微粒子の重量減少は12.4重量%であり、導電膜として耐溶剤性が不十分なものであった。得られた塗工膜の評価結果を表4に示す。