JP2014146547A - 透明導電膜用塗工液及びこれよりなる透明導電膜 - Google Patents

透明導電膜用塗工液及びこれよりなる透明導電膜 Download PDF

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Abstract

【課題】 高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を含む分散安定性に優れた分散液よりなる透明導電膜用塗工液を提供するものであり、特定の結晶構造及び特に高い結晶性を有するスズ含有酸化インジウム微粒子を用いることにより、電気特性、光学特性に優れる透明導電膜を提供する。
【解決手段】 分散溶媒100重量部に対して、少なくとも下記(a)〜(c)に示す特性を満足する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子0.1〜100重量部を含む分散液である透明導電膜用塗工液。
(a)X線結晶回折法により測定される結晶構造が、立方晶系ビックスバイト構造である。
(b)X線結晶回折法により測定される結晶子径Lと、透過型電子顕微鏡により測定される平均粒子径Dとが、L/D=0.7〜1の関係にある。
(c)配位原子として窒素、酸素、硫黄及びリンからなる群より選択される1種以上の元素を有する炭素鎖長C6〜C24の有機配位子1〜10重量%を配位してなる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、透明導電膜用の分散液として適した透明導電膜用塗工液及びそれよりなる透明導電膜に関するものであり、より詳しくは、特定の結晶構造、高い結晶性を有するスズ含有酸化インジウム微粒子を用いることにより、優れた電気特性及び光学特性を発現する透明導電膜の形成が可能である、透明導電膜用塗工液、およびこれよりなる透明導電膜に関するものである。
パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、ノートPC、OA機器、医療機器又はカーナビゲーションシステム等の電子機器においては、これらのディスプレイに入力手段を兼ね備える、タッチパネルが広く用いられている。
このようなタッチパネルに用いられる透明導電膜としては、液晶ディスプレイ等の透明電極に用いられているスズを含有する酸化インジウムが、優れた透明性と電気導電性とを持ち合わせることからこれまで広く使用されている。
しかし、一般的にこれらスズを含有する酸化インジウムは、スパッタリング方式で蒸着されることから、工程が複雑であること、材料の使用効率が低いこと、また高価な真空製膜装置が必要であること、などの課題が指摘されている。
これに対し、真空工程を必要とせず、大面積や複雑形状の製膜が可能である塗工型の材料が注目されており、これまでに貴金属又は金属酸化物の微粒子分散液を塗工して得られる透明導電膜が報告されている。
そして、貴金属微粒子を用いるものは、具体的には表示装置の表示面上に金、銀、銅等の貴金属微粒子を液中に均一に分散させた塗布液を塗布し乾燥することで、導電性の透明貴金属薄膜を形成し、この透明貴金属薄膜の上層及び/又は下層に、これとは屈折率が異なる透明層を積層して電磁波遮蔽、帯電防止、反射防止等を図るものである。例えば、平均粒子径2〜200nmの範囲内の少なくとも銀を含む貴金属微粒子による導電層と、これと屈折率が異なる透明層とからなる電磁波遮蔽効果と反射防止効果に優れた透明導電膜(例えば特許文献1参照。)、が提案されている。
しかし、特許文献1に提案の方法においては、電磁波遮蔽効果は期待できるものの、銀の光透過スペクトルに依存して400〜500nmの透過光に吸収が生じ、導電膜が黄色に着色し、透過画像の色相が不自然に変化する、膜の光線透過率が低いため膜厚分布に起因した透過色のムラが目立ち易く生産性を悪化させる、塩霧環境では導電膜の表面抵抗率が上昇し電磁波遮蔽効果が低下するため、海岸等塩霧の影響を受け易い場所では耐久性が低下する、等の課題を有するものであった。
また、金属酸化物微粒子を用いるものでは、スズ含有酸化インジウムの微粒子を水や有機溶媒に溶解または分散した塗布液を基材上に塗布し、乾燥・焼成することにより透明導電膜を作製する方法が提案されている。例えば、インジウム・スズ複合酸化物の粒子を含有するゾル組成物を塗布液として用い、この塗布液を基材上に塗布し、乾燥・焼成することにより、導電性酸化インジウム粒子からなる被膜を形成する方法(例えば特許文献2参照。)、が提案されている。
しかし、通常、塗布液に含まれるインジウム化合物は、無機または有機のインジウム塩など、いわゆる酸化インジウムの前駆体であり、このような分散液を基材上に塗工した後に乾燥しただけでは高い導電性を示す結晶性酸化インジウムの塗工膜は得られず、基材上に塗工した後の塗膜を400℃以上の高温で焼成し、インジウム塩を熱分解するとともに得られた酸化インジウムを結晶化することにより、はじめて高導電性の酸化インジウム被膜が形成されるものである。そして、特許文献2に提案されている方法においても、インジウム・スズ複合酸化物ゾル中の複合酸化物微粒子は、非晶質の酸化物であり、該非晶質の酸化物は、高温で焼成することにより結晶化させることを必要としており、実施例でも、500℃で焼成する工程を経て導電性被膜が形成されている。しかしながら、塗膜を高温、500℃程度の温度で加熱すると、基材がプラスチック基材である場合には基材が損傷してしまう、また基材がガラス基材である場合には基材に歪み、割れなどが生じるという、課題を発生する場合があった。
そこで、高温での焼成工程を必要とせず、塗工のみで高い導電性を発現させるために、結晶性の金属酸化物微粒子を塗工膜として用いることが期待される。
そして、400℃以上での高温による焼結を必要とせず、結晶性の金属酸化物微粒子を得る方法(例えば特許文献3、特許文献4参照。)、350℃以下の加熱により、常圧で結晶性のITO微粒子を得る方法(例えば特許文献5,6,7参照。)、さらにオレイルアミンの配位したスズ含有酸化インジウム微粒子合成(例えば非特許文献1参照。)、等が提案されている。
特開平08−077832号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開昭59−223229号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開2004−123418号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開2006−096636号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開2007−269617号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開2009−084122号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開2011−126746号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
J.Am.Chem.Soc.2009,131,17736−17737
しかし、特許文献3,4に提案の方法においては、加圧条件下での処理工程を必須とするものであり、大量生産プロセスに適したものとは言い難い上に、結晶性に関しては言及されておらず、高い導電性、透明性という点では課題を有するものであった。また、特許文献5〜7に提案の方法により得られるITO微粒子は高い分散性を有しており、乾燥後に得られる粒子紛体の粒子相互間接触面積が小さいことから、透明導電膜として十分な導電性を発現することができないものであった。さらに、非特許文献1に提案のオレイルアミンの配位したスズ含有酸化インジウム微粒子は、結晶性を有するとの記載はあるものの、その結晶性や、これよりなる塗工膜の導電性について全く言及されていないものであった。
本発明は、上記事実を鑑みてなされた、透明導電膜用の分散液として適した塗工液及びそれよりなる透明導電膜に関するものであり、より詳しくは、特定の結晶構造及び高い結晶性を有するスズ含有酸化インジウム微粒子を用いることで、高い電気特性及び光学特性を発現する透明導電膜の形成が可能である、透明導電膜用塗工液、およびこれよりなる透明導電膜を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、分散溶媒に対して、特定の特性を満足するスズ含有酸化インジウム微粒子を含んでなる、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子分散液を透明導電膜用塗工液とし、塗工を行うことにより、高い電気特性及び光学特性を発現する透明導電膜の形成が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、分散溶媒100重量部に対して、少なくとも下記(a)〜(c)に示す特性を満足する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子0.1〜100重量部を含む分散液であることを特徴とする透明導電膜用塗工液。
(a)X線結晶回折法により測定される結晶構造が、立方晶系ビックスバイト構造である。
(b)X線結晶回折法により測定される結晶子径Lと、透過型電子顕微鏡により測定される平均粒子径Dとが、L/D=0.7〜1の関係にある。
(c)配位原子として窒素、酸素、硫黄及びリンからなる群より選択される1種以上の元素を有する炭素鎖長C6〜C24の有機配位子1〜10重量%を配位してなる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の透明導電膜用塗工液は、分散溶媒100重量部に対して、少なくとも(a);X線結晶回折法により測定される結晶構造が、立方晶系ビックスバイト構造である、(b);X線結晶回折法により測定される結晶子径Lと、透過型電子顕微鏡により測定される平均粒子径Dとが、L/D=0.7〜1の関係にある、(c):配位原子として窒素、酸素、硫黄及びリンからなる群より選択される1種以上の元素を有する炭素鎖長C6〜C24の有機配位子1〜10重量%を配位してなる、との特性を満足する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子0.1〜100重量部を含む分散液からなるものである。ここで、少なくとも上記(a)〜(c)の特性を満足する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を用いることにより、本発明の透明導電膜用塗工液はより高い性能を発現可能な透明導電膜用塗工液となり、これより得られる透明導電膜は、電気特性、光学特性に優れるものとなる。
本発明の透明導電膜用塗工液を構成する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、(a);X線結晶回折法により測定される結晶構造が、立方晶系ビックスバイト構造であるものであり、立方晶系ビックスバイト構造を有するものであることは、X線結晶回折法により得られた回折パターンから、その結晶構造が立方晶系ビックスバイト構造を有するものであることを確認できる。そして、該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子が、立方晶系ビックスバイト構造を有することにより、本発明の透明導電膜用塗工液より得られる透明導電膜は、導電性、透明性に優れるものとなる。
該立方晶系ビックスバイト構造は、X線回折測定(以下XRDと記すこともある。)を測定することにより確認することが可能であり、例えばスズ含有酸化インジウム微粒子分散液より、スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を調製し、該紛体を乳鉢にて微粉砕し、ガラスホルダの窪みの中央部に押し上げ下固定した状態で、X線源にCuKα線を使用し、10≦2θ≦80の範囲について測定することにより確認することが可能である。スズ含有酸化インジウム微粒子が、立方晶系ビックスバイト構造を有する結晶である際には、X線回折パターンとして、2θ=20〜21°に(211)面の回折、2θ=30〜31°に(222)面の回折、2θ=35〜36°に(400)面の回折、2θ=50〜51°に(440)面の回折、2θ=60〜61°に(622)面の回折が、それぞれ観測される。
本発明の透明導電膜用塗工液を構成する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、(b);X線結晶回折法により測定された結晶子径Lと、透過型電子顕微鏡により測定した平均粒子径Dとが、L/D=0.7〜1の関係、好ましくはL/D=0.8〜1の関係にあるものである。L/Dが0.7以上であることによって、該微粒子の結晶子径Lと平均粒子径Dの値が近く、該微粒子が高い結晶性を有するものとなるとともに、単結晶に近い構造を有することから、本発明の透明導電膜用塗工液より得られる透明導電膜は、導電性に優れるものとなる。ここで、L/Dが0.7未満のスズ含有酸化インジウム微粒子である場合、平均粒子径Dに対して結晶子径Lが小さいため、結晶性が低いものとなる、または単結晶構造を取り難いものとなる。このような場合、該微粒子分散液より得られる導電膜には、結晶粒界が多く存在したり、非晶質のスズ含有酸化インジウムが多く含有されていたりするものとなるため、高い導電性を発現することができない。また、結晶子径Lは1つの結晶の平均サイズを表すものであるため、最大でも平均粒子径Dと同程度の値となるものである。
そして、該結晶子径Lについては、例えば上述する測定手法と同様の手法で、スズ含有酸化インジウム微粒子紛体のXRD測定を行うことで算出することができる。例えば10≦2θ≦80の範囲において0.5°毎に連続スキャンを実施することでXRD測定を測定し、Kα2を計算で除去した後、(211)(222)(400)(411)(332)(413)(440)(611)(622)(444)等の7点以上のピークを用い、これらのピークの半値幅より、Scherrerの式を用いてそれぞれの結晶子サイズを算出することができる。得られた各ピークにおける結晶子サイズを平均化したものを、該微粒子の結晶子径Lとすることができる。一方該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dについては、例えば、該微粒子を有機溶媒に分散させた濃度0.01%以下の低濃度微粒子分散液を用意し、これをコロジオン膜展張したカーボンコーティング銅メッシュに滴下して溶媒を揮発させ、透過型顕微鏡で観察する方法により測定を行うことが可能である。そして、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径の測定には、倍率20万倍で観察された像の写真を撮影し、300個以上の粒子の粒子径を測定し、平均化することで、平均粒子径Dを求めることができる。
なお、本発明の透明導電膜用塗工液を構成する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子中のインジウムとスズの比率については特に制限はなく、その中でも特に優れた導電性を発現する透明導電膜が得られることから、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(以下、ICPと記す場合もある。)により測定したスズとインジウムの比率(モル比)スズ/インジウムが5/95〜40/60の範囲内であることが好ましく、さらにはスズ/インジウムが10/90〜30/70であることが好ましく、特に10/90〜20/80であることが好ましい。なお、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子中のスズの含有量は、例えば後述する該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を調製する際のインジウムとスズの仕込み比を調整することで、任意に選択することが可能である。
そして、ICPによる測定としては、例えば、スズ含有酸化インジウム微粒子分散液より、スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を調製し、該粉体を加熱・酸処理することで分解し、定容した希釈溶液をICP(例えばセイコーインスツルメント社製、誘導結合アルゴンプラズマ発光分光分析装置(Vista−PROアキシャル仕様))等の分析装置を使用して測定することが可能である。
さらに、本発明の透明導電膜用塗工液を構成する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、特に優れた導電性、透明性を発現する透明導電膜が得られることから、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと記すこともある。)により測定した平均粒子径Dが5〜30nmの範囲内にあるものであることが好ましい。また、該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、より透明性、導電性に優れる透明導電膜を形成することが可能となることから球形の微粒子であることが好ましく、特にTEMにより観測されるアスペクト比の平均値が0.7〜1の範囲内であることが好ましい。
本発明の透明導電膜用塗工液を構成する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子は、(c);配位原子として窒素、酸素、硫黄及びリンからなる群より選択される1種以上の元素を有する炭素鎖長C6〜C24の有機配位子1〜10重量%を配位してなるものである。該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子が炭素鎖長C6〜C24の該有機配位子を1〜10重量%配位してなることにより、該有機配位子が分散溶媒と溶媒和するため、特殊な分散剤または特殊な操作を必要とすることなく、単に分散溶媒中に該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を添加するのみで、分散安定性に優れる分散液、すなわち透明導電膜用塗工液を得ることができ、分散安定性に優れる分散液を用いることにより、容易に高い光学特性を有する透明導電膜を製造することが可能となるものである。
該有機配位子としては、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子中のインジウム、スズへの配位が可能な窒素、酸素、硫黄及びリンからなる群より選択される1種以上の元素を有する炭素鎖長C6〜C24の有機配位子であれば、単座配位子、多座配位子のいずれも用いることができ、配位原子を含有する官能基(配位基)としては、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボニル基、アシル基、アセチル基、エーテル基、エポキシ基、ホスフィノ基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、アミノ基、ピリジル基、ビピリジル基、アミド基等が挙げられ、その中でも、特に高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の分散安定性に優れるものとなることから、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基、アルコキシ基、アミノ基のいずれか1つ以上を有することが好ましい。より具体的には、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ヘキサデカノール、オレイルアルコール、テトラコサノール、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、ステアリルアミン、ノナデシルアミン、オレイルアミン、ヘキサメチレンジアミン等があげられる。そして、特に該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の分散安定性を向上させ、かつ優れた導電特性を発現させることが可能となることから、C6〜C24の炭素鎖長を有する鎖状構造有機配位子が適しており、中でも、C10〜C22の範囲が好ましく、さらにC16〜C22の範囲であることが特に好ましい。炭素鎖長がC6未満である場合、スズ含有酸化インジウム微粒子は、分散溶媒への分散安定性が低下したものとなり、得られる透明導電膜用塗工液は分散安定性が劣るものとなり、保存時に該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の凝集が発生しやすいものとなる。一方、炭素鎖長がC24を越える配位子である場合、スズ含有酸化インジウム微粒子に占める有機物の割合が高くなることから、透明導電膜の光学特性悪化や、導電性低下が発生する恐れがある。該有機配位子の配位量は、1〜10重量%である。有機配位子の配位量が1重量%未満である場合、分散溶媒へのスズ含有酸化インジウム微粒子の分散安定性が低下したものとなり、得られる透明導電膜用塗工液は分散安定性が劣るものとなり、保存時に該スズ含有酸化インジウム微粒子の凝集が発生しやすいものとなる。一方、有機配位子の配位量が10重量%を越える場合、スズ含有酸化インジウム微粒子に占める有機物の割合が高くなることから、透明導電膜の光学特性悪化や、導電性低下が発生する。
該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子中の有機配位子の配位量の測定方法に制限はなく、微粒子中の有機配位子の配位量が測定可能な方法であれば、如何なる方法を用いてもよい。例えば、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子分散液を0.5μmフィルタで濾過した後、分散液を乾固させて作製して高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体のCHN元素分析を行い、各成分の含量から有機配位子の配位量を算出することが可能である。また、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)を用い、上記高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を窒素雰囲気下、500℃まで加熱を行い、重量変化分を有機配位子の配位量としてもよい。
以下に、有機配位子の配位量の具体的な測定方法として、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)による有機配位子の配位量の測定方法を示す。
高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子分散液を0.5μmフィルタで濾過した後、40℃、減圧下で乾固することで高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を調製し、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、(商品名)TG/DTA6200等)により、窒素雰囲気中、100℃で60分保持した後、10℃毎分で500℃まで昇温、その後500℃で180分間保持し、100℃から500℃の範囲における重量の減少値を有機配位子の配位量とする。
本発明の透明導電膜用塗工液を構成する分散溶媒に特に制限はなく、上記(a)〜(c)に示す特性を満足する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を分散することが可能であれば如何なる分散溶媒を用いることも可能であり、一般的な有機溶媒を使用することも可能である。
該分散溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂肪族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドンなどのケトン類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどの塩化脂肪族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどの酢酸エステル類、等が挙げられ、その中でも特に高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の分散安定性に優れる透明導電膜用塗工液となることから、n−ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、デカヒドロナフタレンが好ましく、さらに、n−ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム、トルエン、デカンであることが好ましい。また、分散溶媒としては、これらを数種類を組み合わせたものであってもよい。
本発明の透明導電膜用塗工液は、該分散溶媒100重量部に対して、少なくとも該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子0.1〜100重量部を含む分散液であり、特に該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の分散安定性に優れ、透明導電膜の製膜性にも優れるものとなることから、該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子0.1〜50重量部、特に0.1〜30重量部、さらには0.1〜10重量部を含むものであることが好ましい。ここで、塗工液中の高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子が0.1重量部未満である場合、塗膜とする際に高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子同士の凝集性が低下し、塗工膜中の該微粒子間の距離が開くことから、十分な導電性を有する導電膜を得ることが困難となる。一方、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子が100重量部を越える場合、塗工液中での該微粒子が不安定となり、分散安定性に劣るものとなる。
以下に、本発明の透明導電膜用塗工液の好ましい製造方法の具体例を示すが、これら例示は本発明を限定するのではない。
本発明の透明導電膜用塗工液を構成する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子としては、上記(a)〜(c)の特性を満足する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子であれば如何なる方法により得られたものであってもよく、例えばインジウムカルボキシレート、スズカルボキシレート及び炭素鎖長C6〜C24の有機配位子の混合物を220℃以上に加熱することにより得ることが可能である。また、インジウムカルボキシレートの代りに、硫酸インジウム、硝酸インジウム等に代表される無機酸インジウムを用いることも可能である。
該インジウムカルボキシレートとしては、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を形成するための酸素を含有しているものである。インジウムカルボキシレートにおけるインジウムに付加したカルボキシレートは、炭素数1〜20のカルボキシレートであることが好ましく、特に、飽和脂肪族カルボキシレート、不飽和脂肪族カルボキシレート、芳香族カルボキシレートであることが好ましい。
該インジウムカルボキシレートの具体的な例としては、例えばギ酸インジウム、酢酸インジウム、プロピオン酸インジウム、酪酸インジウム、吉草酸インジウム、カプロン酸インジウム、エナント酸インジウム、カプリル酸インジウム、ペラルゴン酸インジウム、カプリン酸インジウム、ラウリン酸インジウム、ミリスチン酸インジウム、パルミチン酸インジウム、マルガリン酸インジウム、ステアリン酸インジウム、オレイン酸インジウム、2−エチルヘキサン酸インジウムなどの飽和脂肪族インジウムカルボキシレート;オレイン酸インジウム、リノール酸インジウムなどの不飽和脂肪族インジウムカルボキシレート;トリ安息香酸インジウム、フタル酸インジウムなどの芳香族カルボン酸インジウム;などを挙げることができる。
該スズカルボキシレートも、前述のインジウムカルボキシレートと同様に、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を形成するための酸素を含有しているものである。スズカルボキシレートにおけるスズに付加したカルボキシレートは、炭素数1〜20のカルボキシレートであることが好ましく、特に、飽和脂肪族カルボキシレート、不飽和脂肪族カルボキシレート、芳香族カルボキシレートであることが好ましい。
該スズカルボキシレートの具体的な例としては、例えばギ酸スズ、酢酸スズ、プロピオン酸スズ、酪酸スズ、吉草酸スズ、カプロン酸スズ、エナント酸スズ、カプリル酸スズ、ペラルゴン酸スズ、カプリン酸スズ、ラウリン酸スズ、ミリスチン酸スズ、パルミチン酸スズ、マルガリン酸スズ、ステアリン酸スズ、オレイン酸スズ、2−エチルヘキサン酸スズなどの飽和脂肪族スズカルボキシレート;オレイン酸スズ、リノール酸スズなどの不飽和脂肪族スズカルボキシレート;安息香酸スズ、フタル酸スズなどの芳香族脂肪族カルボン酸スズ;などを挙げることができる。
該炭素鎖長C6〜C24の有機配位子としては、上記したものと同様のものを用いることができる。
該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を製造する際のインジウムカルボキシレートとスズカルボキシレートの割合は任意であり、その中でも特に導電性に優れる高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子となることから、インジウムカルボキシレート/スズカルボキシレート(モル比)=95/5〜60/40として反応を行うことが好ましい。また、炭素鎖長C6〜C24の有機配位子の使用量は、インジウムカルボキシレートとスズカルボキシレート中のカルボキシレートを置換できる量を用いれば十分であるが、反応を効率よく進めるためには、インジウムカルボキシレートとスズカルボキシレートのモル数の和よりも過剰量の有機配位子を用いることが望ましく、例えば、反応時に用いるインジウムカルボキシレートとスズカルボキシレートのモル数の和と炭素鎖長C6〜C24の有機配位子のモル数の比は、(インジウムカルボキシレートとスズカルボキシレートのモル数の和)/(炭素鎖長C6〜C24の有機配位子)=1/1〜1/1000の範囲であることが好ましく、1/1〜1/100の範囲であることがさらに好ましい。
そして、インジウムカルボキシレート、スズカルボキシレート、炭素鎖長C6〜C24の有機配位子を220℃以上の温度に加熱し反応することで、該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を製造することが可能であり、さらに220℃〜280℃であることが好ましい。その際には、溶媒を用いることも可能であり、該溶媒としては、220℃以上の沸点を有するものであることが好ましく、例えば1−オクタデセン、安息香酸ブチル、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジ−n−オクチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等を挙げることができる。
また、該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を製造する際に、反応速度を制御する目的で有機酸を添加してもよく、該有機酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、イソ吉草酸、ピバル酸、3−メチルブタン酸、ヘプタン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、ヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、テトラデカン酸、ペンタデシル酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イコサン酸等を使用することができ、またその使用量についても、その目的に応じて任意に設定することができる。
反応の際の雰囲気は無酸素条件下であることが好ましく、窒素気流中、減圧中であることがより好ましい。
そして、得られた高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を精製、例えば遠沈精製することにより、特に導電特性と光学特性のバランスに優れた透明導電膜を与えうる透明導電膜用塗工液となりうる。その際の遠沈精製とは、遠心分離装置を用いて、得られた反応液又は分散液を微粒子と上澄み液に分離し、上澄み液を除去後、分散溶媒を添加、遠心分離を繰り返して、微粒子の洗浄を行う方法を示す。そして、遠沈精製の際、微粒子と上澄みの分離が可能な条件であれば、遠心分離装置の条件に特に制約はない。また、使用する分散溶媒についても、微粒子が十分に分散、沈降する分散媒であれば、特に制限はない。
本発明の透明導電膜用塗工液は、例えば基材上に塗工し、乾燥、好ましくは200℃以下で乾燥することにより、透明性、導電性に優れる透明導電膜を製膜することができる。その際の塗工方法としては、例えばスピンコート法、ドロップコート法、ロールコート法、スプレー法、バーコート法、ディップ法、メニスカスコート法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、Tダイ法、リップコーター法、ロールコート法等の公知の方法がいずれも使用可能である。塗工後の乾燥条件は任意であり、透明導電膜用塗工液を構成する分散溶媒により選択すればよく、その中でも高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子が塗膜中でより密にパッキングされること、乾燥後の塗膜の安定性が向上すること、温湿度によるシート抵抗の変動が小さくなること等から、10〜200℃の範囲で、さらに好ましくは20〜180℃の範囲で乾燥することが好ましい。また乾燥雰囲気は空気中、窒素雰囲気中、減圧下など、特に制限されない。
また、基材についても特に制限はなく、例えば、ガラス系などの無機基材;ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレートなどのポリマーフィルム基材等を使用することができる。これらの基材は、透明導電膜との密着性を優れたものとするために表面処理を行ってもよく、表面処理剤としては、例えばシランカップリング剤、有機金属等があげられる。該シランカップリング剤としては、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等があげられ、有機金属としては、例えば有機チタン、有機アルミニウム、有機ジルコニウム等があげられる。
本発明の透明導電膜の厚みとしては、本発明の目的を損なわないかぎりにおいて任意であり、その中でも特に透明性と導電性のバランスに優れる導電膜となることから0.001〜5μmであることが好ましく、特に0.01〜2μmであることが好ましく、さらに0.02〜1μmであることが好ましい。また、透明導電材料として十分な透明性を有することからJIS K 7361−1に準拠し測定した光線透過率が80%以上であり、好ましくは85%以上である。また、JIS K 7136に準拠し測定したヘーズが5%以下であり、好ましくは3%以下である。
本発明の透明導電膜用塗工液は、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子を含むものであり、該高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子が、高い結晶性を有していることから、塗工するだけで高い導電性が発現する導電膜を形成することが可能となるものである。一方、従来報告されている金属酸化物微粒子の多くは、非晶質の酸化物であり、300℃以上の高温条件で焼成することにより、結晶化させる必要があった。本発明の透明導電膜用塗工液からなる透明導電膜は、高い結晶性を有する微粒子からなるため、塗工後に乾燥(例えば200℃以下の低温)することにより、高い導電性を発現する特徴を持つ。得られた透明導電膜のシート抵抗は10Ω/□以下であることが好ましく、特に7×10Ω/□以下が好ましく、さらに5×10Ω/□以下であることが好ましい。
本発明の透明導電膜用塗工液は、従来の真空プロセスによる透明導電膜形成方法であるスパッタ法よりも、簡便かつ低コストで高導電性、高透明性を有する透明導電膜を提供することができる。また、金属酸化物を使用することから、従来の貴金属を用いた塗膜よりも膜の光線透過率が高く、透過色のムラの少ない透明導電膜を提供することが可能である。
本発明により、塗工という簡便な方法により、より容易に透明性、導電性に優れる透明導電膜を形成することが可能となり、その産業的価値は極めて高いものである。
以下に本発明を実施例により、詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
<高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の精製>
得られた粗高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子分散液は、遠心機(コクサン(株)製、(商品名)H−201F)を使用し、遠心分離を繰り返すことにより精製を行った。
<高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の紛体作製>
高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子分散液を0.5μmフィルタで濾過した後、分散溶媒の除去が可能な温度において、減圧中で乾固させ、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を得た。
<高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子のX線回折測定>
高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を用いてX線回折を測定した。測定にはX回折測定装置(理学電機社製、(商品名)RAD−C)を使用し、10≦2θ≦80°の範囲について測定を行った。
<高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の結晶子径Lの算出>
上記手法にてX線回折を測定し、Kα2を計算で除去した後、(211)、(222)、(400)、(332)、(413)、(440)、(622)の7点のピークを用い、これらのピークの半値幅より、Scherrerの式を用いて、それぞれの結晶子サイズを算出した。得られた各ピークにおける結晶子サイズを平均化したものを、該微粒子の結晶子径Lとした。
<高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の外観観察及び平均粒子径Dの算出>
高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の外観は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測した。該微粒子を有機溶媒に分散させた、濃度0.01%以下の微粒子分散液を用意し、これをコロジオン膜展張したカーボンコーティング銅メッシュに落として溶媒を揮発させ、このサンプルを透過型顕微鏡で観察した。また得られた像から、粒子の粒子径を読み取り、300個以上の粒子について平均した値を平均粒子径Dとした。
<高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子中のスズ含量測定>
高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を用い、誘導結合プラズマによって該微粒子中の金属組成を分析した。測定には誘導結合アルゴンプラズマ発光分光分析装置(セイコーインスツルメント社製、Vista−PROアキシャル仕様)を使用した。
<高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子中の有機配位子の配位量分析>
高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子紛体を用い、熱重量減少測定により分析した。測定には示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、(商品名)EXSTAR TG/DTA6200)を使用した。該微粒子紛体を窒素雰囲気中、100℃で60分保持した後、10℃毎分で500℃まで昇温、その後500℃で180分間保持し、100℃から500℃の範囲における重量の減少値を、加熱分解した有機配位子の配位量として算出した。
<透明導電膜の導電性の測定>
抵抗率計(三菱油化(株)製、(商品名)Loresta−AP)を用い、4探針法にてシート抵抗の測定を行った。
<透明導電膜の光線透過率及びヘーズの測定>
ヘーズメーター(日本電色工業(株)製、(商品名)NDH−5000)を用い、JIS K 7361−1に準拠して透明導電膜の光線透過率を測定した。また、JIS K 7136に準拠してヘーズの測定を行った。
実施例1
100mlフラスコ中に酢酸インジウム(III)315mg、2−エチルヘキサン酸スズ(II)38.6μl、2−エチルヘキサン酸580μl、オクタデシルアミン3.0g、n−ジオクチルエーテル10mlを仕込み、真空中70℃で1時間加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中150℃で1時間加熱し、次いで窒素雰囲気中260℃で3時間加熱還流し、オクタデシルアミンの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
該粗分散液を沈殿溶媒にメタノール、分散溶媒にヘキサンを用いて5回遠心分離精製を繰り返した後、ヘキサン10mlを添加して、ヘキサン100重量部に対して、オクタデシルアミンの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子1.5重量部を含む分散液である透明導電膜用塗工液を得た。
得られた透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dは13.1nmであった。次いで、該透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。またScherrerの式を用いて算出した結晶子径Lは12.0nmであり、L/D=0.92であったことから、高い結晶性を有していることが確認された。次いで該微粒子紛体のICP発光分光分析より、スズ/インジウム(モル比)は8/92であり、熱重量減少測定よりオクタデシルアミンが4.5重量%配位したものであることを確認した。
得られた透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、25℃で10時間乾燥して、塗工厚0.5μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率91.0%、ヘーズ0.4%、シート抵抗2000Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。評価結果を表1に示す。
実施例2
100mlフラスコ中に酢酸インジウム(III)315mg、2−エチルヘキサン酸スズ(II)77.2μl、2−エチルヘキサン酸580μl、オクタデシルアミン3.0g、n−ジオクチルエーテル10mlを仕込み、真空中70℃で1時間加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中150℃で1時間加熱し、次いで窒素雰囲気中260℃で3時間加熱還流し、オクタデシルアミンの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
該粗分散液を沈殿溶媒にメタノール、分散溶媒にヘキサンを用いて5回遠心分離精製を繰り返した後、ヘキサン10mlを添加して、ヘキサン100重量部に対して、オクタデシルアミンの配位し高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子1.5重量部を含む分散液である透明導電膜用塗工液を得た。
得られた透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dは8.5nmであった。次いで、該透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。またScherrerの式を用いて算出した結晶子径Lは7.7nmであり、L/D=0.91であったことから、高い結晶性を有していることが確認された。次いで該微粒子紛体のICP発光分光分析より、スズ/インジウム(モル比)は16/84であり、熱重量減少測定よりオクタデシルアミンが7.4重量%配位したものであることを確認した。
得られた透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、25℃で10時間乾燥して、塗工厚1.5μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率90.2%、ヘーズ2.5%、シート抵抗900Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。評価結果を表1に示す。
実施例3
100mlフラスコ中に酢酸インジウム(III)245mg、酢酸スズ(II)85.2mg、n−オクタン酸600μl、ノナデシルアミン3.5g、1−オクタデセン15mlを仕込み、真空中80℃で3時間加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中200℃で1時間加熱し、次いで窒素雰囲気中270℃で2時間加熱還流し、ノナデシルアミンの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
該粗分散液を沈殿溶媒にイソプロピルアルコール、分散溶媒にシクロヘキサンを用いて5回遠心分離精製を繰り返した後、シクロヘキサン10mlを添加して、シクロヘキサン100重量部に対して、ノナデシルアミンの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子1.4重量部を含む分散液である透明導電膜用塗工液を得た。
得られた透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dは6.9nmであった。次いで、該透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。またScherrerの式を用いて算出した結晶子径Lは5.8nmであり、L/D=0.84であったことから、高い結晶性を有していることが確認された。次いで該微粒子紛体のICP発光分光分析より、スズ/インジウム(モル比)は25/75であり、熱重量減少測定よりノナデシルアミンが6.5重量%配位したものであることを確認した。
得られた透明導電膜用塗工液を、基材であるPETフイルムに塗工し、80℃で3時間乾燥して、塗工厚0.2μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率89.9%、ヘーズ2.5%、シート抵抗4800Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。評価結果を表1に示す。
実施例4
100mlフラスコ中に酢酸インジウム(III)315mg、酢酸スズ(II)56.8mg、n−オクタン酸600μl、ノナデシルアミン3.5g、1−オクタデセン15mlを仕込み、真空中80℃で3時間加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中200℃で1時間加熱し、次いで窒素雰囲気中270℃で2時間加熱還流し、ノナデシルアミンの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
該粗分散液を沈殿溶媒にイソプロピルアルコール、分散溶媒にシクロヘキサンを用いて5回遠心分離精製を繰り返した後、シクロヘキサン10mlを添加して、シクロヘキサン100重量部に対して、ノナデシルアミンの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子1.4重量部を含む分散液である透明導電膜用塗工液を得た。
得られた透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dは9.9nmであった。次いで、該透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。またScherrerの式を用いて算出した結晶子径Lは9.2nmであり、L/D=0.93であったことから、高い結晶性を有していることが確認された。次いで該微粒子紛体のICP発光分光分析より、スズ/インジウム(モル比)は14/86であり、熱重量減少測定よりノナデシルアミンが4.0重量%配位したものであることを確認した。
得られた透明導電膜用塗工液を、基材であるPETフイルムに塗工し、80℃で3時間乾燥して、塗工厚1.0μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率88.0%、ヘーズ2.6%、シート抵抗1200Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。評価結果を表1に示す。
実施例5
100mlフラスコ中に2−エチルヘキサン酸インジウム(III)544mg、酢酸スズ(II)40.3mg、ピバル酸500mg、オレイルアミン2.7g、ビス(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)エーテル8mlを仕込み、真空中80℃で3時間加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中280℃で2時間加熱還流し、オレイルアミンの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
該粗分散液を沈殿溶媒にエタノール、分散溶媒にクロロホルムを用いて4回遠心分離精製を繰り返した後、クロロホルム5mlを添加して、クロロホルム100重量部に対して、オレイルアミンの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子3.0重量部を含む分散液である透明導電膜用塗工液を得た。
得られた透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dは8.5nmであった。次いで、該透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。またScherrerの式を用いて算出した結晶子径Lは7.0nmであり、L/D=0.82であったことから、高い結晶性を有していることが確認された。次いで該微粒子紛体のICP発光分光分析より、スズ/インジウム(モル比)は12/88であり、熱重量減少測定よりオレイルアミンが3.1重量部配位したものであることを確認した。
得られた透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、60℃で1時間乾燥して、塗工厚1.0μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率90.0%、ヘーズ2.0%、シート抵抗720Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。評価結果を表1に示す。
実施例6
100mlフラスコ中に2−エチルヘキサン酸インジウム(III)599mg、酢酸スズ(II)23.7mg、ピバル酸500mg、オレイルアミン2.7g、ビス(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)エーテル8mlを仕込み、真空中80℃で3時間加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中280℃で2時間加熱還流し、オレイルアミンの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
該粗分散液を沈殿溶媒にエタノール、分散溶媒にクロロホルムを用いて4回遠心分離精製を繰り返した後、クロロホルム5mlを添加して、クロロホルム100重量部に対して、オレイルアミンの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子3.0重量部を含む分散液である透明導電膜用塗工液を得た。
得られた透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dは10.0nmであった。次いで、該透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。またScherrerの式を用いて算出した結晶子径Lは9.8nmであり、L/D=0.98であったことから、高い結晶性を有していることが確認された。次いで該微粒子紛体のICP発光分光分析より、スズ/インジウム(モル比)は5/95であり、熱重量減少測定よりオレイルアミンが2.8重量%配位したものであることを確認した。
得られた透明導電膜用塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、60℃で1時間乾燥して、塗工厚1.0μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率87.5%、ヘーズ2.7%、シート抵抗2600Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。評価結果を表1に示す。
実施例7
100mlフラスコ中にアセチルアセトンインジウム(III)445mg、2−エチルヘキサン酸スズ(II)38.6μl、2−エチルヘキサン酸400mg、オレイルアルコール3.0g、n−オクチルエーテル10mlを仕込み、真空中80℃で3時間加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中160℃で3時間加熱し、次いで窒素雰囲気中280℃で2時間加熱還流し、オレイルアルコールの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
該粗分散液を沈殿溶媒にメタノール、分散溶媒にクロロホルムを用いて5回遠心分離精製を繰り返した後、トルエン5mlを添加して、トルエン100重量部に対して、オレイルアルコールの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子1.5重量部を含む分散液である透明導電膜用塗工液を得た。
得られた透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dは7.5nmであった。次いで、該透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。またScherrerの式を用いて算出した結晶子径Lは6.5nmであり、L/D=0.86であったことから、高い結晶性を有していることが確認された。次いで該微粒子紛体のICP発光分光分析より、スズ/インジウム(モル比)は7/93であり、熱重量減少測定よりオレイルアルコールが5.6重量%配位したものであることを確認した。
得られた透明導電膜用塗工液を、基材であるPENフイルムに塗工し、110℃で1時間乾燥して、塗工厚1.5μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率90.5%、ヘーズ1.2%、シート抵抗7600Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。評価結果を表1に示す。
実施例8
100mlフラスコ中にアセチルアセトンインジウム(III)396mg、2−エチルヘキサン酸スズ(II)77.2μl、2−エチルヘキサン酸400mg、オレイルアルコール3.0g、n−オクチルエーテル10mlを仕込み、真空中80℃で3時間加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中160℃で3時間加熱し、次いで窒素雰囲気中280℃で2時間加熱還流し、オレイルアルコールの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
該粗分散液を沈殿溶媒にメタノール、分散溶媒にクロロホルムを用いて5回遠心分離精製を繰り返した後、トルエン5mlを添加して、トルエン100重量部に対して、オレイルアルコールの配位した高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子1.5重量部を含む分散液である透明導電膜用塗工液を得た。
得られた透明導電膜用塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dは6.6nmであった。次いで、該透明導電膜用塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。またScherrerの式を用いて算出した結晶子径Lは5.0nmであり、L/D=0.76であったことから、高い結晶性を有していることが確認された。次いで該微粒子紛体のICP発光分光分析より、スズ/インジウム(モル比)は17/83であり、熱重量減少測定よりオレイルアルコールが8.0重量%配位したものであることを確認した。
得られた透明導電膜用塗工液を、基材であるPENフイルムに塗工し、110℃で1時間乾燥して、塗工厚1.5μmの透明導電膜を得た。この透明導電膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率91.1%、ヘーズ1.0%、シート抵抗5900Ω/□で、高い光学特性と導電特性を有していた。評価結果を表1に示す。
Figure 2014146547
比較例1
平均粒径20nmのスズ含有酸化インジウム(ITO)微粒子(シーアイ化成社製、(商品名)NanoTeck ITO)0.3g、分散剤として脂肪族リン酸エステル型界面活性剤(旭電化工業(株)製、(商品名)PS−440E)20mg、分散溶剤としてトルエン5gを混合した後、ジルコニアビーズを用いたペイントシェーカーにより湿式粉砕して、トルエン100重量部に対し、ITO微粒子5.6重量部を含む分散液からなる塗工液を得た。
該塗工液を基材であるガラス板に塗工し、200℃で5時間加熱して、塗工厚3.0μmの塗工膜を得た。得られた塗工膜のシート抵抗は1.0×10以上であり正確な測定できず、透明導電膜として十分な導電性を有していなかった。該微粒子のXRD測定を実施したところ、本微粒子は非晶質であり、立方晶ビックスバイト構造特有の回折パターンは見られなかった。すなわち、結晶性の低いスズ含有酸化インジウムからなる塗工膜であることから、導電膜としての導電性が不十分であったといえる。評価結果を表2に示す。
比較例2
100mlフラスコ中に酢酸インジウム(III)315mg、2−エチルヘキサン酸スズ(II)38.6μl、2−エチルヘキサン酸580μl、オクタデシルアミン3.0g、n−ジオクチルエーテル10mlを仕込み、真空中70℃で1時間加熱し、その後常圧に戻して窒素雰囲気中150℃で1時間加熱し、次いで窒素雰囲気中260℃で0.5時間加熱還流し、オクタデシルアミンの配位したスズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
該粗分散液を沈殿溶媒にメタノール、分散溶媒にヘキサンを用いて5回遠心分離精製を繰り返した後、ヘキサン10mlを添加して、ヘキサン100重量部に対して、オクタデシルアミンの配位したスズ含有酸化インジウム微粒子1.5重量部を含む分散液である塗工液を得た。
該塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dは6.6nmであった。次いで、該透分散液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面によるブロードな回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。しかしながら、Scherrerの式を用いて算出した結晶子径Lは3.8であり、L/Dは0.58と低く、高い結晶性を有しているとは言い難いものであった。次いで該微粒子紛体のICP発光分光分析より、スズ/インジウム(モル比)は6/94であり、熱重量減少測定よりオクタデシルアミンが8.6重量%配位したものであることを確認した。
得られた分散液を、基材であるガラス板に塗工し、25℃で10時間乾燥して、塗工厚0.5μmの塗工膜を得た。この塗工膜は光線透過率83.4%、ヘーズ4.4%と比較的高い透明性を有していたものの、シート抵抗は680000Ω/□であり、透明導電膜として十分な導電性を有していなかった。すなわち、平均粒子径Dに対して結晶子径Lの値が小さく、結晶性の低いスズ含有酸化インジウム微粒子であったことから、透明導電膜として十分な程度の導電性を発現できないものであった。評価結果を表2に示す。
比較例3
有機配位子をn−ブチルアミン2.6gに変更した以外は、実施例1と同様の手法で、ヘキサン100重量部に対し、n−ブチルアミンの配位したスズ含有酸化インジウム微粒子1.5重量部を含む分散液である塗工液を得た。
該塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dは7.8nmであった。次いで、該塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。またScherrerの式を用いて算出した結晶子径Lは5.5nmであり、L/D=0.71であったことから、高い結晶性を有していることが確認された。次いで同微粒子紛体のICP発光分光分析より、スズ/インジウム(モル比)は8/92であり、熱重量減少測定よりオクタデシルアミンが3.5重量%配位したものであることを確認した。
得られた分散液を、基材であるPETフイルムに塗工し、25℃で10時間乾燥して、塗工厚0.8μmの塗工膜を得た。この塗工膜の光線透過率は68.6%、ヘーズ32.0%と、透明性の低いものであった。すなわち、有機配位子の炭素鎖長が短いために粒子を十分に分散させることができず、安定性の低い微粒子分散液となったため、これより得られた塗工膜は、透明導電膜として十分な光学特性を発現できないものであった。評価結果を表2に示す。
比較例4
オレイルアルコールの仕込み量を6.0gに変更した以外は、実施例7と同様の手法で、オレイルアルコールの配位したスズ含有酸化インジウム微粒子の粗分散液を得た。
該粗分散液を沈殿溶媒にメタノール、分散溶媒にクロロホルムを用いて2回遠心分離精製を繰り返した後、トルエン5mlを添加して、トルエン100重量部に対して、オレイルアルコールの配位したスズ含有酸化インジウム微粒子3.8重量部を含む分散液である塗工液を得た。
得られた塗工液の一部を希釈し、TEM観察したところ、スズ含有酸化インジウム微粒子の平均粒子径Dは6.5nmであった。次いで、該塗工液の一部を乾固させて微粒子紛体とし、X線回折を測定したところ、(211)面、(222)面、(400)面、(440)面、(622)面による回折ピークが確認され、立方晶系ビックスバイト構造を有することを確認した。またScherrerの式を用いて算出した結晶子径Lは5.9nmであり、L/D=0.91であったことから、高い結晶性を有していることが確認された。次いで該微粒子紛体のICP発光分光分析より、スズ/インジウム(モル比)は8/92であり、熱重量減少測定よりオレイルアルコールが11.2重量%配位したものであることを確認した。
得られた塗工液を、基材であるガラス板に塗工し、70℃で3時間乾燥して、塗工厚0.4μmの塗工膜を得た。この塗工膜は、塗膜の基材への密着性も高く、光線透過率81.5%、ヘーズ4.3%と比較的高い光学特性を有していたが、シート抵抗は1.0×10以上であり正確な測定できず、透明導電膜として十分な導電性を有していないものであった。すなわち、スズ含有酸化インジウム微粒子に配位した有機配位子の量が過剰であったために、この有機配位子が導電性を阻害し、導電膜として十分な導電性を発現しないものであった。評価結果を表2に示す。
Figure 2014146547
本発明は、高い結晶性を有する、特定のスズ含有酸化インジウム微粒子を含む透明導電膜用塗工液を提供するものであり、該透明導電膜用塗工液を塗工することにより、容易に電気特性及び光学特性に優れる透明導電膜を提供することが可能となる。

Claims (6)

  1. 分散溶媒100重量部に対して、少なくとも下記(a)〜(c)に示す特性を満足する高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子0.1〜100重量部を含む分散液であることを特徴とする透明導電膜用塗工液。
    (a)X線結晶回折法により測定される結晶構造が、立方晶系ビックスバイト構造である。
    (b)X線結晶回折法により測定される結晶子径Lと、透過型電子顕微鏡により測定される平均粒子径Dとが、L/D=0.7〜1の関係にある。
    (c)配位原子として窒素、酸素、硫黄及びリンからなる群より選択される1種以上の元素を有する炭素鎖長C6〜C24の有機配位子1〜10重量%を配位してなる。
  2. 高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子が、透過型電子顕微鏡により測定される平均粒子径Dが5〜30nmの範囲内の高結晶性スズ含有酸化インジウム微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜用塗工液。
  3. 請求項1又は2に記載の透明導電膜用塗工液を基材上に塗工し、乾燥することにより得られることを特徴とする透明導電膜。
  4. シート抵抗値が10Ω/□以下であることを特徴とする請求項3に記載の透明導電膜。
  5. JIS K 7361−1に準拠し測定した光線透過率が80%以上、JIS K 7136に準拠し測定したヘーズが5%以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の透明導電膜。
  6. 塗工・乾燥する際の温度が200℃以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の透明導電膜。
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