JP2014024969A - 繊維強化複合材料 - Google Patents

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Toshihisa Ishihara
稔久 石原
Takahiro Hayashi
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Abstract

【課題】炭素繊維等と高い親和性を有し、力学強度が向上した繊維強化複合材料を提供する。
【解決手段】炭素繊維(A)とシラン変性ポリオレフィン樹脂(B)とを含む繊維強化複合材料であって、シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリオレフィン樹脂に不飽和シラン化合物が0.1〜5質量%グラフトされたシラン変性ポリオレフィン樹脂である繊維強化複合材料により、課題を解決できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、繊維強化複合材料に関し、特に強化繊維として炭素繊維を用い、樹脂として特定のシラン変性ポリオレフィン樹脂を用いたものに関する。
強化繊維と熱可塑性樹脂とを複合させた繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、力学特性や寸法安定性に優れることから、自動車、航空機、電気・電子機器、玩具、家電製品などの幅広い分野で使用されている。強化繊維の中でも炭素繊維は軽量、高強度、高剛性であることから近年注目を集めている。
特に自動車用途においては成型性・取扱性・コストが重要視されるようになり、更に物性面においては、耐薬品性等も求められるようになっている。そのため、近年では繊維強化複合材料として、軽量なポリオレフィン樹脂が使用されるようになってきている。特に強化繊維として炭素繊維を用いた繊維強化複合材料は、その軽さと強度から自動車用途のみならず、航空機や他の産業へも展開されている。
ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレンを樹脂に用いた複合材料においては、強度向上の為、炭素繊維(以下、CFともいう)に塗布する集束剤(以下、サイジング剤ともいう)としてポリプロピレンとエチレンやブテンなどの共重合体を用いる技術(例えば、特許文献1参照)やポリプロピレンとの親和性を高めるためにアミン・カルボン酸基を用いた樹脂をサイジング剤に用いる技術(例えば、特許文献2参照)が開示されている。またポリプロピレンをマトリックス樹脂として用いる場合ではポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸のような極性官能基により変性することで強化繊維とマトリックス樹脂との接着性を高める試みが行われている(例えば、特許文献3および4参照)。
特開2006−077334号公報 特開2006−089734号公報 特開2005−256206号公報 特開2010−150358号公報
しかしながら、ポリオレフィン樹脂は疎水性の性質が強く、上記のような改善においても炭素繊維との親和性・接着性が十分でなく、大きな物性向上には至っていない。
本発明は、炭素繊維等と高い親和性を有し、力学強度が向上した、繊維強化複合材料を提供することを課題とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。本発明の繊維強化複合材料は、炭素繊維(A)に、ポリオレフィン樹脂に不飽和シラン化合物が0.1〜5質量%グラフトされたシラン変性ポリオレフィン樹脂(B)が含浸してなるものである。
また、本発明は、前記繊維強化複合材料に含まれる炭素繊維(A)とシラン変性ポリオレフィン樹脂(B)の割合が、
(A)10〜60質量%
(B)5〜60質量%
である繊維強化複合材料に関する。
また、本発明は前記不飽和シラン化合物が一般式RSi(R’)(ここでRはエチレン性不飽和炭化水素基、R’は互いに独立に炭化水素基またはアルコキシ基であり、R’のうち少なくとも1つはアルコキシ基である)で表される化合物である繊維強化複合材料に関する。
また、本発明は、前記ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンである繊維強化複合材料に関する。
また、本発明は、炭素繊維(A)に、ポリオレフィンに不飽和シラン化合物が0.1〜5質量%グラフトされた変性ポリオレフィン樹脂(B)に加え、未変性ポリオレフィン樹脂(C)が含浸してなる繊維強化複合材料に関する。
また、本発明は、前記未変性ポリオレフィン樹脂(C)がポリプロピレンである繊維強化複合材料に関する。
また、本発明は、前記繊維強化複合材料に含まれる未変性ポリオレフィン樹脂(C)の割合が、50質量%以下である繊維強化複合材料に関する。
また、本発明は、前記シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)及び/又は前記未変性ポリオレフィン樹脂(C)のJIS K7171(1994)に基づく曲げ弾性率が1200MPa以上3000MPa以下である繊維強化複合材料に関する。
また、本発明は、繊維強化複合材料を熱成形して得られる成形体に関する。
また、本発明は、前記シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)が、シラノール縮合触媒を用いて架橋されたものである前記成形体に関する。
本発明によれば、繊維強化複合材料に、ポリオレフィンに不飽和シラン化合物がグラフトされたシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有させることにより、炭素繊維または集束剤との接着性が向上して力学特性が向上するばかりでなく、未変性ポリオレフィンをマトリックス樹脂としてさらに含有させた場合にも、力学特性などの物性が向上した繊維強化複合材料を提供できる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
<炭素繊維(A)>
本発明に用いる炭素繊維は、特には限定されないが、PAN系炭素繊維、PITCH系炭素繊維が挙げられる。望ましくはPAN系炭素繊維である。炭素繊維は、1種類のものを使用してもよいし、複数種類のものを使用してもかまわない。
本発明で用いられる炭素繊維の繊維径は特に限定されないが、得られる繊維強化複合材料の樹脂の含浸性や力学特性と1〜20μmの範囲内であることが好ましく、5〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
本発明に用いる炭素繊維は集束剤を塗布しても良いし塗布しないで使用することもできる。集束剤を塗布しない場合、本発明にて用いるシラン化合物が加水分解により生成したシラノール基とCF表面の親和性が増し繊維強化複合材料の力学特性が向上することが期
待できる。また、塗布して使用する場合、用いる集束剤としては、エポキシ、水酸基、カルボキシル基、アミンなどの官能基を有するものが好ましく、更に好ましくはエポキシ、水酸基である。これらの集束剤もシランか鉱物との親和性が向上する。炭素繊維への塗布量は特に限定されないが、0.01%〜5%が好ましく、更に好ましくは0.05%〜2%である。
<繊維強化複合材料>
繊維強化複合材料の成形方法の1つとして、強化用繊維に熱可塑性樹脂からなるマトリックス樹脂を含浸してなる熱可塑性プリプレグを用いる手法がある。
熱可塑性プリプレグを製造する方法は溶融樹脂を押出機にて含浸させる方法(溶融法)、粉末樹脂を繊維層に分散し溶融させる方法、樹脂をフィルム化して繊維層とラミネートする方法、樹脂を溶剤に溶かし溶液の状態で含浸させた後に溶剤を揮発させる方法、樹脂を繊維化して混合糸にする方法、熱可塑性樹脂をモノマーの状態で含浸させた後に重合させてポリマーにする方法などがある。溶融樹脂を押出機にて含浸させる方法は樹脂を加工する必要が無いという利点があるが、安定した熱可塑性プリプレグを製造するのが難しい。粉末樹脂を繊維層に分散する方法は含浸がしやすいという利点があるが、粉末を均一に繊維層に分散させるのが困難である。樹脂をフィルム化して繊維層とラミネートする方法はフィルム加工する必要があるが、比較的品質の良いものが作られる傾向にある。
溶融法にて熱可塑性樹脂を強化繊維に含浸させる工程は、前記押出機以外にも加熱プレスと冷却プレスの組合せにより溶融含浸後にプリプレグを固化させる方法、ダブルベルトプレスを使用して加熱ゾーンや冷却ゾーンを設ける方法がある。ダブルベルトプレスを使用する方法は連続的に生産できるため生産性に優れている。
前記熱可塑性プリプレグからなる中間基材を用いた繊維強化複合材料の成形は、熱可塑性プリプレグを積層、もしくは熱可塑性プリプレグを裁断してなるプリプレグテープを分散させた後、これを加熱後、加圧冷却して、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂を一体化させることによって行われている。このようにして作製した熱可塑性樹脂を含む繊維強化複合材料は耐衝撃性に優れ、かつ成形時間が短くなるため、自動車用部品等の成形品に最適している。
この場合は炭素繊維の繊維長は連続繊維であることが好ましい。また熱可塑性プリプレグを裁断してなるプリプレグテープを分散させて成形する場合には、炭素繊維の繊維長は1cm以上であることが好ましい。
また、本発明の繊維強化複合材料は、強化繊維と樹脂を一度溶融混練して成形材料としたコンパウンドペレットを用いた成形方法(1)、強化繊維を熱可塑性樹脂ペレットと混合してなる成形材料を直接成形機に供給し、または強化繊維と熱可塑性樹脂ペレットとを個別に直接成形機に供給し、成形品型に注入、冷却固化させる直接成形法(2)、強化繊維束を樹脂で被覆して長繊維ペレットの成形材料を用いた成形方法(3)などがある。これらの溶融物は射出成形により繊維強化複合材料に作製することも可能である。また、溶融物をプレスにより成形することも可能である。
<樹脂>
本発明に用いる繊維強化複合材料には炭素繊維(A)の他に、後述するポリオレフィンに不飽和シラン化合物が0.1〜5質量%グラフトされたシラン変性ポリオレフィン樹脂(B)を前記熱可塑性樹脂として用いることに加え、後述する未変性ポリオレフィン樹脂(C)を用いることができる。
また、本発明のシラン変性ポリオレフィン樹脂は、上記で得られたシラン変性ポリオレフィンを、シラノール縮合触媒を用いて架橋することにより得られるものであることが好ましい。
<ポリオレフィン>
シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)の原料として用いられるポリオレフィンとしては、後述する不飽和シラン化合物による変性が可能なポリオレフィンであれば限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィン同士あるいはそれらのα−オレフィンと3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられる。
ポリオレフィンとして具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂;及び1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂;ノルボルネンの開環メタセシス重合体やノルボルネン誘導体−エチレン共重合体等の所謂環状ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
ここでエチレン系樹脂とは、原料モノマーとしてエチレンを主要成分とし、好ましくはエチレンを50モル%以上含有する重合体を意味する。また、プロピレン系樹脂とは、原料モノマーとしてプロピレンを主要成分とし、好ましくはプロピレンを50モル%以上含有する重合体を意味する。1−ブテン系樹脂についても同様である。
中でも、本発明においては、炭素繊維強化複合材料に好適に用いられているプロピレン系樹脂が適している。プロピレン系樹脂としては、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーの何れでもよいが、特にホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)が好ましい。
また、本発明におけるシラン変性ポリオレフィン樹脂は、通常、ポリオレフィンを不飽和シラン化合物とラジカル発生剤存在下で変性するため、原料ポリオレフィンとしてプロピレン系樹脂を用いる場合は一般に分子量低下を起こす。本発明においては、シラン変性ポリオレフィン樹脂の分子量はある程度大きいほうが好ましいため、プロピレン系樹脂を用いる場合は変性前の分子量が大きなものが好ましく、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定した重量平均分子量(Mw)が20万〜70万、好ましくは30万〜50万のプロピレン系樹脂が好ましい。プロピレン系樹脂のMwが前記下限値以上である場合、シラン変性ポリオレフィン樹脂のMwが十分に大きくなり、機械物性の向上に寄与する。
また、同様の理由により、プロピレン系樹脂の230℃、21.16N荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、更に好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、更に好ましくは15g/10分以下であることが望ましい。
なお、原料ポリオレフィンとしてエチレン系樹脂または1−ブテン系樹脂を用いる場合は、その190℃、21.16N荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、更に好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/
10分以下、更に好ましくは15g/10分以下であることが望ましい。
更に、詳細は後述するが、原料ポリオレフィンとしてプロピレン系樹脂を用いる場合、シラン変性ポリオレフィン樹脂の弾性率はある程度高いほうが好ましいので、変性前のプロピレン系樹脂のJIS K7171(1994)にて測定を行った弾性率については、1200MPa〜3000MPaが好ましく、1350MPa〜3000MPaの範囲にあるのがより好ましい。プロピレン系樹脂の弾性率が前記下限値以上であればシラン変性ポリオレフィン樹脂の弾性率を高くすることが容易になり、機械物性の向上に寄与する。
<シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)>
本発明におけるシラン変性ポリオレフィン樹脂は、上記のポリオレフィンを不飽和シラン化合物でグラフト変性させることによって得ることが出来る。ここで、「不飽和シラン化合物でグラフトされた」とは、あらかじめポリオレフィン樹脂の共重合成分として不飽和シラン化合物を用いるのではなく、既に製造されているポリオレフィン樹脂に対し、反応によって不飽和シラン化合物を結合させるものである。すなわち、本発明において「グラフト」とは、分子鎖長が長い側鎖としてシラン化合物が導入される場合のみならず、ポリオレフィン樹脂に対して不飽和シラン化合物が化学結合していれば包含される。
(1)不飽和シラン化合物
変性に用いられる不飽和シラン化合物は限定されないが、一般式RSi(R’)(ここでRはエチレン性不飽和炭化水素基、R’は互いに独立に炭化水素基またはアルコキシ基であり、R’のうち少なくとも1つはアルコキシ基である)で表される不飽和シラン化合物が好適に用いられる。
Rとしては、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜6のエチレン性不飽和炭化水素基が望ましい。具体的には、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
R’としては、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基または、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基が望ましい。これらは何れも脂肪族基、脂環族基、芳香族基の何れであってもよいが、脂肪族基であることが望ましい。また、飽和基、不飽和基のいずれでもよいが、飽和基であることが好ましい。
R’が炭化水素基の場合、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、フェニル基、シクロヘキシル基などに代表されるアルキル基又はアルケニル基;ヒドロキシエチル基、β−メトキシエチル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基などのアルコキシアルキル基;β−アミノエチル基、γ−アミノプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基等の含酸素および/または含窒素炭化水素基;クロロメチル基、β−クロロエチル基、γ−クロロプロピル基などの含ハロゲン基などが挙げられる。
R’がアルコキシ基の場合、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、β―メトキシエトキシ基、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシ基などが挙げられる。
不飽和シラン化合物が前記の一般式で表現される場合、3つのR’のうち少なくとも1つはアルコキシ基であるが、好ましくは2つ、より好ましくは全てがアルコキシ基であることが望ましい。
不飽和シラン化合物としては、中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、プロペニルトリメトキシシランなどに代表されるビニルトリアルコキシシランが望ましい。これはビニル基によってポリオレフィンへの変性を可能とし、アルコキシ基によって炭素繊維表面又は表面に存在するサイジング剤との親和性、場合によっては反応性が期待できるからである。
これらの不飽和シラン化合物は、1種類を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
なお、本発明におけるシラン変性ポリオレフィンの作製には、本発明の効果を損なわない範囲で不飽和シラン化合物以外の化合物を併用して変性してもよい。不飽和シラン化合物以外の化合物としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸、及び、これらの酸無水物等が例示される。
(2)変性方法
上記ポリオレフィン樹脂を上記不飽和シラン化合物で変性することでシラン変性ポリオレフィン樹脂を得ることができる。変性の仕方には特に制限が無く、公知の手法に従って溶液変性、溶融変性、電子線や電離放射線の照射による固相変性、超臨界流体中での変性などが好適に用いられる。中でも設備やコスト競争力に優れた溶融変性が好ましく、連続生産性に優れた押出機を用いた溶融混練変性が更に好ましい。この時用いられる装置としては、例えば単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサーなどが挙げられる。中でも連続生産性に優れた単軸押出機、2軸押出機が好ましい。
一般にポリオレフィンへの不飽和シラン化合物の変性はポリオレフィンの炭素−水素結合を開裂させ炭素ラジカルを発生させ、これへ不飽和官能基が付加する、といったグラフト反応によって行われる。炭素ラジカルの発生源としては、上述した電子線や電離放射線の他、高温度とする方法や、有機、無機過酸化物などのラジカル発生剤を用いることで行うことも出来る。コストや操作性の観点で有機過酸化物を用いることが好ましい。
シラン変性ポリオレフィン樹脂を製造する際に用いるラジカル発生剤には限定は無いが、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル及びケトンパーオキサイド群に含まれるもの、並びにアゾ化合物等が挙げられる。
具体的には、例えば、ハイドロパーオキサイド群にはキュメンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド等が含まれ、ジアルキルパーオキサイド群にはジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン−3、などがあり、ジアシルパーオキサイド群にはラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が含まれる。同様にパーオキシエステル群にはターシャリーパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエイト、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が、さらにケトンパーオキサイド群にはシクロヘキサノンパーオキサイド等があり、アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、メチルアゾイソブチレートなどが含まれる。
これらで例示されているラジカル発生剤のうち1種あるいは数種を併用してもよい。
一般的に用いられる溶融押出変性の操作としては、上記ポリオレフィン樹脂、不飽和シラン化合物、有機過酸化物を配合、ブレンドして混練機、押出機に投入し、加熱溶融混練しながら押出を行い、先端ダイスから出てくる溶融樹脂を水槽などで冷却してシラン変性ポリオレフィン樹脂を得る。
シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)の作製の際の、ポリオレフィン樹脂と不飽和シラン化合物との配合の比率に特に制限は無いが、好ましい配合の範囲としては、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、不飽和シラン化合物が1〜20質量部である。ポリオレフィン樹脂に対する不飽和シラン化合物の配合比率が適切である場合には、本発明の効果を奏するために必要な所定の変性量が得られ、また、未反応の不飽和シラン化合物が残留す
ることがなくなり、繊維強化複合材料の力学特性等を良好にすることができる。
不飽和シラン化合物と有機過酸化物との配合の比率としては特に制限は無いが、好ましい配合の範囲としては、不飽和シラン化合物100質量部に対し、有機過酸化物が20〜100質量部である。不飽和シラン化合物に対して有機過酸化物の量が適切である場合には、本発明の効果を奏するために必要な所定の変性量が得られ、また、ポリオレフィンの劣化を生じさせることもなく、流動性を良好に保つことができる。
また溶融押出変性条件としては、例えば単軸、2軸押出機においては150〜300℃程度の温度にて押出すことが好ましい。
(3)その他の成分
本発明におけるシラン変性ポリオレフィン樹脂には、前記のポリオレフィン樹脂、不飽和シラン化合物及びラジカル発生剤以外に、その他の成分として、樹脂組成物に常用されている配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
このような配合剤としては、例えば熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、防錆剤、及び顔料等を挙げることができる。このうち、酸化防止剤、特にフェノール系、硫黄系、又はリン系の酸化防止剤を含有させることが好ましい。酸化防止剤は、原料ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜2質量部含有させることが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂成分やエラストマー成分を含有させてもよい。このような樹脂成分としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、アクリル系樹脂、及び石油樹脂等が挙げられる。
これらのその他の成分の配合は、不飽和シラン化合物による変性時でも構わないし、変性後でも構わない。
(4)シラン変性ポリオレフィン樹脂の物性等
本発明におけるシラン変性ポリオレフィン樹脂(B)は、不飽和シラン化合物が0.1〜5質量%グラフトされたものである。不飽和シラン化合物のグラフト量が0.1質量%以上であることで、炭素繊維表面又は表面に存在するサイジング剤との親和性や反応性が良好になり、繊維強化複合材料の物性の低下を防止できる。また、不飽和シラン化合物のグラフト量が5質量%以下であることで、経済的に好ましい。不飽和シラン化合物グラフト量の更に好ましい範囲は0.5〜3質量%である。
また、シラン変性ポリオレフィン樹脂の曲げ弾性率は1200MPa以上、より好ましくは1500MPa以上、更に好ましくは1600MPa以上であり、一方、3000MPa以下であることが好ましい。シラン変性ポリオレフィン樹脂の曲げ弾性率が上記範囲を達成するためには、原料樹脂としてポリプロピレンを用いるのが好ましい。曲げ弾性率が上記範囲内であることで、繊維強化複合材料の機械強度を十分に高くすることができ、また、繊維強化複合材料の作製を容易に行うことができる。
なお、本発明に用いるシラン変性ポリオレフィン樹脂は市販品を用いることもでき、例えば、三菱化学株式会社製、商品名「リンクロン」を好適に用いることができる。
<未変性ポリオレフィン樹脂(C)>
本発明の繊維強化複合材料を構成するその他の要素として、未変性ポリオレフィン樹脂(C)を含有させることができる。
ポリオレフィンとして具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−
(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂;及び1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂;ノルボルネンの開環メタセシス重合体やノルボルネン誘導体−エチレン共重合体等の所謂環状ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
ここでエチレン系樹脂とは、原料モノマーとしてエチレンを主要成分とし、好ましくはエチレンを50モル%以上含有する重合体を意味する。また、プロピレン系樹脂とは、原料モノマーとしてプロピレンを主要成分とし、好ましくはプロピレンを50モル%以上含有する重合体を意味する。1−ブテン系樹脂についても同様である。
中でも、本発明においては、炭素繊維強化複合材料に好適に用いられているプロピレン系樹脂が適している。プロピレン系樹脂としては、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーの何れでもよいが、特にホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)が好ましい。また、未変性ポリオレフィンの曲げ弾性率も、シラン変性ポリオレフィン樹脂と同様に1200MPa以上、より好ましくは1500MPa以上、更に好ましくは1600MPa以上であり、3000MPa以下である。未変性ポリオレフィン樹脂の曲げ弾性率が上記範囲を達成するためには、原料樹脂としてポリプロピレンを用いるのが好ましい。曲げ弾性率が上記範囲内であることで、繊維強化複合材料の機械強度を十分に高くすることができ、また、繊維強化複合材料の作製を容易に行うことができる。
本発明の繊維強化複合材料は炭素繊維(A)に、シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)が含浸してなるものであり、さらに未変性ポリオレフィン樹脂(C)を含浸してなるものも好ましい態様である。シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)に加え、未変性ポリオレフィン樹脂(C)を用いる場合は、前述の成形手順の中でこれらをドライブレンドして用いてもよいし、一度溶融混練して再度ペレット化してから用いてもよい。
好ましい配合比率は、繊維強化複合材料に、未変性ポリオレフィン樹脂(C)を含有させない場合には、繊維強化複合材料中で炭素繊維(A)が30〜60質量%、シラン変性ポリオレフィン(B)が40〜60質量%であることが好ましく、繊維強化複合材に、未変性ポリオレフィン(C)を含有させる場合には、繊維強化複合材料中で炭素繊維(A)が10〜60質量%、シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)が5〜40質量%、未変性ポリオレフィン樹脂(C)が50質量%以下であることが好ましい。
未変性ポリオレフィン樹脂(C)を含有させる場合、その含有量の下限値は通常5質量%以上である。
炭素繊維の含有量が上記範囲以上であると十分な繊維強化効果が得られ、複合材料の物性が良好になる。また炭素繊維の比率が上記範囲以下であると経済的にも好ましい他、複合材料の流動性や成形性が所望のものになる。シラン変性ポリオレフィン樹脂の比率が上記範囲以上であることで十分な改質効果が得られ、繊維強化複合材料の物性が高くなる。シラン変性ポリオレフィン樹脂の比率が上記範囲以下であることで良好な改質効果が確保された上で、経済的にも好ましい。
未変性ポリオレフィン樹脂を未変性ポリオレフィン樹脂の比率が上記範囲以下であることで炭素繊維やシラン変性ポリオレフィンの相対的な比率が好ましいものとなり、繊維強化複合材料の物性を良好に保つことができる。
このような観点から更に好ましい配合比率は、繊維強化複合材に、未変性ポリオレフィン樹脂(C)を含有させない場合には、繊維強化複合材料中で炭素繊維(A)が45〜55質量%、シラン変性ポリオレフィン(B)が45〜55質量%であり、繊維強化複合材に、未変性ポリオレフィン(C)を含有させる場合には、繊維強化複合材料中で炭素繊維(A)が15〜50質量%、シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)が5〜35質量%、未
変性ポリオレフィン樹脂(C)が20〜35質量%である。
一方、この範囲とは別に、繊維強化複合材に、未変性ポリオレフィン(C)を含有させる場合には、シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)の含有量と、未変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量の質量比が1:8.5〜9.5になるようにこれらを含有させることが、経済性の観点、及び加工時の取り扱いやすさの観点から好ましい。
<架橋処理>
本発明のシラン変性ポリオレフィン樹脂(B)は、シラノール縮合触媒を用いて架橋することが出来る。架橋により炭素繊維表面又は表面に存在する集束剤との親和性、又は反応性が更に向上するため、繊維強化複合材料の物性を更に向上させることが期待できるほか、樹脂成分の流動性はほぼなくなるため、例えば高温雰囲気での繊維強化複合材料の物性が低下しない、という効果も得られる。
本発明においてシラノール縮合触媒とは、水の存在下にシラノール基同士が縮合反応することを促進するものであれば限定されないが、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、酢酸第1錫、カプリル酸第1錫、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト等の金属脂肪酸塩が挙げられる。これらの中では、特にジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレートが好ましい。これらのシラノール縮合触媒は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
シラノール縮合触媒の使用量は限定されないが、シラン変性ポリオレフィン樹脂に対し、通常50質量ppm以上であり、100質量ppm以上であるのが好ましく、一方、通常2000質量ppm以下であり、1000質量ppm以下であることが好ましい。シラノール縮合触媒の使用量が前記下限値以上の場合は、シラン架橋ポリオレフィン樹脂の架橋を十分に行わせることができるため、良好な耐熱性が得られるようになる。一方、シラノール縮合触媒の使用量が前記上限値以下であることは、経済的に好ましい。
本発明において、シラン変性ポリオレフィン樹脂をシラノール縮合触媒を用いて架橋する具体的な方法は限定されず、シラン変性ポリオレフィン樹脂中にシラノール縮合触媒を含有させるか、或いはシラン変性ポリオレフィン樹脂の表面、又は繊維強化複合材料の表面にシラノール縮合触媒を接触させることによって行われる。
シラン変性ポリオレフィン樹脂中にシラノール縮合触媒を含有させる方法としては、具体的には、有機溶剤等にシラノール縮合触媒を溶解又は分散させておき、これをシラン変性ポリオレフィン樹脂に含浸又は接触させる方法が挙げられる。この場合の有機溶剤は限定されないが、例えば、トルエン、キシレン、アセトン等が挙げられる。
シラン変性ポリオレフィン樹脂中にシラノール縮合触媒を含有させる他の方法としては、シラン変性ポリオレフィン樹脂とシラノール縮合触媒とを溶融混練する方法や、予めシラン変性ポリオレフィン樹脂とは異なる樹脂中にシラノール縮合触媒を含有させておき、当該樹脂とシラン変性ポリオレフィンとを溶融混練する方法などが挙げられる。ここで溶融混練する際の装置及び条件は限定されないが、前記のシラン変性ポリオレフィン樹脂の作製を溶融混練によって行う際に用いることができる装置及び条件を同様に適用することができる。
シラン変性ポリオレフィン樹脂の表面、又は繊維強化複合材料の表面にシラノール縮合触媒を接触させる方法としては、ハケやコーター、スプレーによる表面塗布のほか、シラノール縮合触媒の溶液中にシラン変性ポリオレフィン樹脂又は繊維強化複合材料をドブ漬けする方法がある。
シラノール縮合触媒を含有又は塗布したシラン変性ポリオレフィン樹脂は水架橋性であ
るので、水分と接触させることにより架橋構造が形成され、シラン架橋ポリオレフィン樹脂とすることができる。水架橋処理は、常温〜120℃程度、通常は常温〜95℃程度の液状又は蒸気状の水に、5時間〜2週間程度、通常は8時間〜1週間程度接触させることによりなされる。水架橋処理時の圧力は限定されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れであってもよいが、常圧下または加圧下であることが好ましい。加圧状態とするためには、オートクレーブ等を用いればよい。なお、このような特定の処理を行わなくとも、シラン変性ポリオレフィン樹脂又は繊維強化複合材料を空気接触下に放置することにより、空気中の水分によって架橋することも可能である。
<自動車用機能構造材>
本発明の成形品は、前記繊維強化複合材料を熱成形してなるものであり、具体的な用途としては自動車用機能構造材が挙げられ、その一部または全部が前記繊維強化複合材料から構成されるものである態様が挙げられる。なお、熱成形は公知の方法を用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例および比較例においては、原材料として下記のものを用いた。
<PAN系炭素繊維:CF>
PAN系炭素繊維1:(三菱レイヨン社製、商品名:TR50S、単繊維繊度:0.67dtex、ストランド強度:4900MPa、ストランド弾性率:240GPa、真円度:0.99、繊維径:7μm)。
<原料樹脂>
樹脂−1: プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製 ノバテックPP FY6HF:MFR(230℃、21.16N荷重):2g/10分)、FM(曲げ弾性率):1800MPa)
樹脂−2: プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製 ノバテックPP MA04A:MFR(230℃、21.16N荷重):40g/10分)、FM:2000MPa)
樹脂−3: プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製 ノバテックPP MA06A:MFR(230℃、21.16N荷重):60g/10分)、FM:1900MPa
<不飽和シラン化合物>
ビニルトリメトキシシラン、信越化学社製
<ラジカル発生剤>
ジ−t−ブチルパーオキサイド:日本油脂社製、パーブチルD
<添加剤>
酸化防止剤: BASFジャパン社製、RA1010
<架橋触媒>
ジオクチルスズジラウレート、日東化成社製
[製造例1]
原料樹脂−1、前記不飽和シラン化合物、前記ラジカル発生剤及び前記添加剤を表−1の比率で混合したものを30mmφの2軸押出機(日本製鋼所社製 TEX30 L/D=40)にて押出樹脂温度200℃で押出した。押出したストランドをペレタイザーでペ
レット化し、シラン変性ポリオレフィン樹脂を作製した。得られたシラン変性ポリオレフィン樹脂について、後述する方法にてMFR及びグラフト量の測定を行った。これらの結果を表−1に示す。
次に、得られたシラン変性ポリオレフィン樹脂を、15mmφの2軸押出機(テクノベル社製 KZW15 L/D=45)に装着した幅14cmのTダイより200℃で混練しながら押出し、40℃のロールにて冷却しながら厚み100μのフィルムを製膜した。
なお、作製した樹脂フィルムの厚みは、後述する炭素繊維シートに作製した樹脂フィルムを両面から貼り合わせて、この樹脂フィルムを完全に炭素繊維に含浸させたプリプレグで炭素繊維強化複合材料の成形品を作製した場合に、この炭素繊維強化複合材料の成形品中の炭素繊維の含有率が50体積%となるように設定した。
[製造例2、3]
製造例1と同じ原料及び条件でシラン変性ポリオレフィン樹脂を作製した。
次に、得られたシラン変性ポリオレフィン樹脂と、原料樹脂−2を表2に記載の比率でドライブレンドし、15mmφの2軸押出機(テクノベル社製 KZW15 L/D=45)に装着した幅14cmのTダイより200℃で混練しながら押出し、40℃のロールにて冷却しながら厚み100μのフィルムを製膜した。
なお、作製した樹脂フィルムの厚みは、後述する炭素繊維シートに作製した樹脂フィルムを両面から貼り合わせて、この樹脂フィルムを完全に炭素繊維に含浸させたプリプレグで炭素繊維強化複合材料の成形品を作製した場合に、この炭素繊維強化複合材料の成形品中の炭素繊維の含有率が50体積%となるように設定した。
<グラフト量>
シラン変性ポリオレフィン樹脂のサンプルを厚さ0.1mmのシートにプレス成形して試験サンプルとし、赤外線吸収スペクトル法を用い、樹脂中のシラノール特有の吸収(1090cm-1)を測定することにより求めた。
[実施例1]
(炭素繊維シート及び炭素繊維プリプレグ(熱可塑性プリプレグ)の作製)
PAN系炭素繊維1をドラムワインドにて巻き付け、炭素繊維の目付(FAW:単位面積当たりの質量)が150g/mの一方向の炭素繊維シートを作製した。なお、PAN系炭素繊維は、繊維束(トウ)の状態で取り扱い、各繊維束を構成するPAN系炭素繊維の本数は、15000本であった。
作製した炭素繊維シートに適度に張力を掛け、炭素繊維シートに両面から、製造例1で作製した樹脂フィルム、離形用のフッ素樹脂製フィルム(日東電工社製、商品名:ニトフロンフィルム970−4UL)、及びアルミ製の平板の順に挟み、前記加熱冷却二段プレスの加熱盤で230〜240℃、5分、20kPa、さらに、冷却盤で5分、20kPaの条件で、炭素繊維が単一方向(UD)に配向している半含浸プリプレグを作製した。ここで、このプリプレグの目付(TAW)は、225g/mであった。
一方向炭素繊維複合材料成形板(12ply)の成形
得られた一方向プリプレグを、長さ(0°方向(炭素繊維の繊維軸方向に対して平行な方向)の長さ)150mm×幅(90°方向(炭素繊維の繊維軸方向に直交する方向)の長さ)150mmにパターンカットした。次いで、パターンカットした一方向プリプレグを、0°方向に揃えて12枚積層(12ply)し、バギングした後、0.7MPaの窒素圧下、230℃でオートクレーブ成形を行い、厚み約2mmの一方向炭素繊維複合材料成形板を得た。
(0°曲げ試験)
上記で得られた一方向炭素繊維複合材料成形板を湿式ダイヤモンドカッターにより長さ(0°方向の長さ)120mm×幅(90°方向の長さ)12.7mmの寸法に切断して試験片を作製した。万能試験機(Instron社製商品名:Instron5565)と、解析ソフト(商品名:Bluehill)とを用いて、ASTM D790に準拠(圧子R=5.0、L/D=40)した方法で得られた試験片に対して3点曲げ試験を行い、0°曲げ強度を算出した。結果を表1に示す。
(90°曲げ試験)
上記で得られた一方向炭素繊維複合材料成形板を湿式ダイヤモンドカッターにより長さ(0°方向の長さ)12.7mm×幅(90°方向の長さ)60mmの寸法に切断して試験片を作製した。万能試験機(Instron社製商品名:Instron5565)と、解析ソフト(商品名:Bluehill)とを用いて、ASTM D790に準拠(圧子R=5.0、L/D=40)した方法で得られた試験片に対して室温での3点曲げ試験を行い、90°曲げ強度を算出した。結果を表2に示す。
[実施例2]
用いた樹脂フィルムを、シラン変性ポリオレフィン樹脂と未変性ポリオレフィン樹脂(原料樹脂−2)の比率が1:1(質量比)のものに変更した以外は実施例1と同様の方法にて一方向炭素繊維複合材料成形板を得た後、実施例1と同様に0°および90°曲げ試験を実施した。結果を表2に示す。
[実施例3]
用いた樹脂フィルムをシラン変性ポリオレフィン樹脂と未変性ポリオレフィン樹脂(原料樹脂−2)の比率が3:7(質量比)のものに変更した以外は実施例1と同様の方法にて一方向炭素繊維複合材料成形板を得た後、実施例1と同様に0°および90°曲げ試験を実施した。結果を表2に示す。
[比較例1]
変性ポリオレフィンを用いずに、未変性ポリプロピレン(原料樹脂−3)のみにてフィルムを製膜し、あとは実施例1と同様にして厚さ2mmの一方向炭素繊維複合材料成形板を得た後、実施例1と同様に0°および90°曲げ試験を実施した。結果を表2に示す。
[比較例2]
変性ポリオレフィンとして、シラン変性ポリプロピレン樹脂の代わりに酸変性ポリプロピレン樹脂(三菱化学社製 モディックP908)を用い、酸変性ポリプロピレン樹脂と未変性ポリプロピレン樹脂の配合比を1:1(質量比)とした以外は実施例1と同様にして厚さ2mmの一方向炭素繊維複合材料成形板を得た後、実施例1と同様に0°および90°曲げ試験を実施した。結果を表2に示す。
[比較例3]
変性ポリオレフィンとして、シラン変性ポリプロピレン樹脂の代わりに酸変性ポリプロピレン樹脂(三菱化学社製 モディックP908)を用い、酸変性ポリプロピレンと未変性ポリプロピレンの配合比を3:7(質量比)とした以外は実施例1と同様にして厚さ2mmの一方向炭素繊維複合材料成形板を得た後、実施例1と同様に0°および90°曲げ試験を実施した。結果を表2に示す。
Figure 2014024969

Figure 2014024969

本発明の繊維強化複合材料はマトリックス樹脂にポリオレフィン系樹脂を用いた場合においても炭素繊維または集束材と優れた接着性を発揮し、高い力学特性を有する繊維強化複合材料を得ることが可能であり、種々の用途に展開できる。特に自動車部品、電気・電子部品、家庭・事務電気製品部品に好適である。

Claims (10)

  1. 炭素繊維(A)とシラン変性ポリオレフィン樹脂(B)とを含む繊維強化複合材料であって、
    シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリオレフィン樹脂に不飽和シラン化合物が0.1〜5質量%グラフトされたシラン変性ポリオレフィン樹脂である繊維強化複合材料。
  2. 前記繊維強化複合材料に含まれる炭素繊維(A)、シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)、の割合が、
    (A)10〜60質量%
    (B)5〜60質量%
    である請求項1に記載の繊維強化複合材料。
  3. 前記不飽和シラン化合物が一般式RSi(R’)(ここでRはエチレン性不飽和炭化水素基、R’は互いに独立に炭化水素基またはアルコキシ基であり、R’のうち少なくとも1つはアルコキシ基である)で表される化合物である請求項1または2に記載の繊維強化複合材料。
  4. 前記ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料。
  5. さらに、未変性ポリオレフィン樹脂(C)を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料。
  6. 前記未変性ポリオレフィン樹脂(C)がポリプロピレンである請求項5に記載の繊維強化複合材料。
  7. 前記繊維強化複合材料に含まれる未変性ポリオレフィン樹脂(C)の割合が、50質量%以下である請求項5または6に記載の繊維強化複合材料。
  8. 前記シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)及び/又は前記未変性ポリオレフィン樹脂(C)のJIS K7171(1994)に基づく曲げ弾性率が1200MPa以上3000MPa以下である請求項5〜7のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料を熱成形して得られる成形品。
  10. シラン変性ポリオレフィン樹脂(B)が、シラノール縮合触媒を用いて架橋されたものである請求項9に記載の成形品。
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