JP2018024765A - 繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形性、力学特性、耐水劣化性に優れた成形品を得るための滞留安定性に優れた繊維強化プロピレン系樹脂組成物を提供すること。【解決手段】ウレア変性ポリオレフィン(a)、ポリプロピレン系樹脂(b)及び強化繊維(c)を含有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物であって、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物中の樹脂成分に含まれるウレア基の含量が、マトリックス樹脂成分100gに対し、0.0005〜140mmolであり、かつ前記強化繊維が多官能化合物(s)によりサイジング処理されていることを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。【選択図】 なし
Description
本発明は、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
強化繊維と熱可塑性樹脂からなる組成物は、軽量で優れた力学特性を有するために、スポーツ用品用途、航空宇宙用途および一般産業用途に広く用いられている。これらの繊維強化熱可塑性樹脂組成物に使用される強化繊維は、その使用用途によって様々な形態で成形品を強化している。これらの強化繊維としては、アルミニウム繊維やステンレス繊維などの金属繊維、アラミド繊維やPBO繊維などの有機繊維、およびシリコンカーバイド繊維などの無機繊維や炭素繊維などが使用されているが、比強度、比剛性および軽量性のバランスの観点から炭素繊維が好適であり、その中でもポリアクリロニトリル系炭素繊維が特に好適に用いられる。
これらの繊維強化熱可塑性樹脂組成物からなる成形品の力学特性を高めるには、強化繊維を添加すればよい。しかし、強化繊維を添加すると強化繊維を含む熱可塑性樹脂の粘度が上昇するために成形加工性を損なうばかりか、成形品外観が悪化したり、さらには、熱可塑性樹脂の未充填部分を発生させ強度低下を引き起こすことがある。そこで、繊維強化樹脂組成物の力学特性を向上させるために、強化繊維と熱可塑性樹脂との界面接着を高め、結果的に成形品の力学特性を向上させる方法がある。
しかし、近年になり、繊維強化熱可塑性複合材料の注目度が大きくなり、また用途も多岐に細分化されるようになってきた。そして、力学特性に優れた成形品が要求されるようになり、また工業的にもより高い経済性、生産性が必要になってきた。例えば、繊維強化複合材料により軽量性・経済性が求められるようになり、マトリックス樹脂には軽量なポリオレフィン系樹脂、とりわけポリプロピレン系樹脂が使用されるようになってきた。
しかしながら、ポリプロピレン系樹脂は強化繊維との界面接着性に乏しく、力学特性に優れた成形品を得ることが困難であった。中でも、炭素繊維のような表面の反応性が乏しい繊維では、力学特性に優れた成形品を得ることが特に困難であった。
そこで、炭素繊維の表面改質やサイジング処理により、炭素繊維とポリプロピレンの界面接着性を向上させようとする試みがなされている。例えば、特許文献1には、多官能化合物によりサイジング処理された炭素繊維と、テルペン系樹脂を用いたポリプロピレン系樹脂組成物を開示しており、成形性、界面接着性に優れ、曲げ特性や耐衝撃性に優れた成形品を得ることができることが知られている。
一方、変性ポリプロピレンの添加によるマトリックス樹脂の改質により、炭素繊維とポリプロピレンの界面接着性を向上させようとする試みもなされている。例えば、ポリカルボジイミド基で変性したポリオレフィン樹脂を添加することにより、炭素繊維の分散性が向上し、曲げ特性や耐衝撃性がさらに向上し、加えて耐水劣化性に優れた成形品を得ることができることが知られている。(特許文献2、特許文献3)
以上に示したように、繊維強化ポリプロピレン系樹脂の改質検討は近年盛んに行なわれており、材料の高性能化に伴い、その用途も拡大しているが、それに伴いこれまで問題としていなかった課題も顕在化してきた。例えば、優れた力学特性や耐水劣化性に加えて、様々な製品に対する成形ウィンドウの広さを考慮して、成形加工時の滞留安定性についても求められることが多くあり、前記したようなポリカルボジイミド基で変性されたポリプロピレン系樹脂を用いた繊維強化ポリプロピレン系樹脂に対しては、さらなる滞留安定性が期待されている。
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、ポリプロピレン系樹脂をマトリックスとした際に、強化繊維との界面接着性が良好であり、力学特性および耐水劣化性に優れた成形品を製造でき、なおかつ滞留安定性に優れた繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、上記課題を達成することができる、次の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を見出した。
(1)ウレア変性ポリオレフィン(a)、ポリプロピレン系樹脂(b)および強化繊維(c)を含有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物であって、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物中のマトリックス樹脂成分に含まれるウレア基の含有量が、該樹脂成分100gに対し、0.0005〜140mmolであり、かつ前記強化繊維(c)が多官能化合物(s)によりサイジング処理されていることを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
(2)ウレア変性ポリオレフィン(a)、ポリプロピレン系樹脂(b)および強化繊維(c)を含有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物であって、(a)を0.01〜50質量部、(b)を20〜99質量部、(c)を1〜80質量部(ただし、(b)と(c)の合計を100質量部とする)含有し、かつ前記強化繊維(c)が多官能化合物(s)によりサイジング処理されていることを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
(1)ウレア変性ポリオレフィン(a)、ポリプロピレン系樹脂(b)および強化繊維(c)を含有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物であって、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物中のマトリックス樹脂成分に含まれるウレア基の含有量が、該樹脂成分100gに対し、0.0005〜140mmolであり、かつ前記強化繊維(c)が多官能化合物(s)によりサイジング処理されていることを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
(2)ウレア変性ポリオレフィン(a)、ポリプロピレン系樹脂(b)および強化繊維(c)を含有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物であって、(a)を0.01〜50質量部、(b)を20〜99質量部、(c)を1〜80質量部(ただし、(b)と(c)の合計を100質量部とする)含有し、かつ前記強化繊維(c)が多官能化合物(s)によりサイジング処理されていることを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物は滞留安定性に優れ、この繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて製造した成形品は、強化繊維とポリプロピレン系樹脂との界面接着性が良好であり、曲げ特性や耐衝撃特性に優れ、かつ、吸水時にも衝撃強度の低下が少ない繊維強化樹脂熱可塑成形品を得ることが可能である。本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物は、電気・電子機器、OA機器、家電機器または自動車の部品、内部部材および筐体などに好適に用いられる。
本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物は、ウレア変性ポリオレフィン(a)、ポリプロピレン系樹脂(b)、強化繊維(c)を含有する。そして、本発明では、強化繊維(c)は多官能化合物(s)によりサイジング処理されている必要がある。本発明においては、ウレア変性ポリオレフィン(a)と、多官能化合物(s)によりサイジング処理された強化繊維(c)を併用することが、滞留安定性、力学特性および耐水劣化性に優れた成形品を得るために重要である。まず、これらの構成要素について説明する。
<ウレア変性ポリオレフィン(a)>
ウレア変性ポリオレフィン(a)は、例えばカルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、カルボジイミド基含有化合物(B)とを反応させてカルボジイミド変性ポリオレフィンを得たのち、カルボジイミド基に水を反応させることにより得られる。具体的には、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、カルボジイミド基含有化合物(B)とを溶融混練して得られた樹脂を熱水中で処理するなどの方法が挙げられる。カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、カルボジイミド基含有化合物(B)はカルボジイミド基を介して反応して架橋することが可能であり、滞留安定性、力学特性および耐水劣化性に優れるためにはウレア基にすることが重要である。
ウレア変性ポリオレフィン(a)は、例えばカルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、カルボジイミド基含有化合物(B)とを反応させてカルボジイミド変性ポリオレフィンを得たのち、カルボジイミド基に水を反応させることにより得られる。具体的には、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、カルボジイミド基含有化合物(B)とを溶融混練して得られた樹脂を熱水中で処理するなどの方法が挙げられる。カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、カルボジイミド基含有化合物(B)はカルボジイミド基を介して反応して架橋することが可能であり、滞留安定性、力学特性および耐水劣化性に優れるためにはウレア基にすることが重要である。
本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物に含まれるウレア変性ポリオレフィン(a)は、滞留安定性、力学特性および耐水劣化性に優れるためには、含まれるカルボジイミド基とウレア基の合計量に対して、50%以上がウレア基であることが好ましい。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
ウレア変性ポリオレフィン(a)におけるカルボジイミド基の量とウレア基の量は、後述するIRスペクトルにより測定する。
以下に、溶融混練する場合の一例を示す。カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)と、カルボジイミド基含有化合物(B)とを溶融混練する方法としては、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)とカルボジイミド基含有化合物(B)を同時に、または逐次的に、たとえばヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダーなどに装入して混練した後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練する方法が例示できる。これらのうちでも、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの混練性能に優れた装置を使用すると、各成分がより均一に分散・反応された重合体組成物を得ることができるため好ましい。
押出機を用いて溶融混練を行う場合、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)とカルボジイミド基含有化合物(B)は、予め混合した後にホッパーから供給しても良いし、一部の成分をホッパーから供給し、ホッパー部付近から押出機先端の間の任意の部分に設置した供給口よりその他の成分を供給しても良い。
上記各成分を溶融混練する際の温度は、混合する各成分の融点のうち、最も高い融点以上とする。具体的には、好ましくは150〜300℃、より好ましくは200〜280℃、更に好ましくは230〜270℃の範囲で溶融混練を行う。
こうして得られたカルボジイミド変性ポリオレフィンを5mm以下の大きさのペレット状にして例えば95℃の熱水中で2週間処理することでウレア変性ポリオレフィン(a)が得られる。カルボジイミド基がウレア基に変わったか否かを確認するためには、IR測定で2130から2140cm−1にあるN=C=N基の収縮振動に起因するピークが存在するか否かを確認することで可能である。熱水中で処理したカルボジイミド変性ポリオレフィンのIRスペクトルにおいて、2130から2140cm−1にあるN=C=N基の収縮振動に起因するピークが消失するまで熱水処理を続けることで、ウレア変性ポリオレフィン(a)を得ることができる。IRスペクトルは、例えば熱水中で処理したカルボジイミド変性ポリオレフィンを200℃でプレス成形したフィルムを用いて測定する。
本発明で用いるウレア変性ポリオレフィン(a)は190℃または230℃での流動性に優れるものである。ウレア変性ポリオレフィン(a)の190℃または230℃、2.16Kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01〜400g/10分、より好ましくは0.1〜300g/10分、更に好ましくは1〜200g/10分の範囲である。このような範囲にあると、強化繊維の補強性や分散性に優れ、好ましい。
ウレア変性ポリオレフィン(a)を得るためのカルボジイミド変性ポリオレフィンを製造するにあたり、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)中のカルボジイミド基と反応する基のモル数と、カルボジイミド基含有化合物(B)のモル数の比を、1:0.2〜1.6、好ましくは1:0.4〜1.3、更に好ましくは1:0.7〜1.1を満たす配合比にすることで、カルボジイミド基と反応する基を有する化合物と(B)の反応効率が高く、かつ、流動性に優れるカルボジイミド変性ポリオレフィン(a)が得られ、それをウレア基にしたウレア変性ポリオレフィン(a)も流動性に優れる点で好ましい。
また、ウレア変性ポリオレフィン(a)は、ウレア変性ポリオレフィン(a)100gに対し、ウレア基の含有量が、好ましくは1〜200mmol、より好ましくは5〜150mmol、さらに好ましくは10〜100mmolである。ウレア基含有量が1mmol以上であると、強化繊維の補強効果や、耐水劣化性の向上効果を奏する。また、ウレア基含有量が200mmol以下であると、滞留安定性や力学特性、耐水劣化性は良好となり、成形加工性の低下を抑制し、強化繊維の補強効果や分散性の向上効果も上がり、経済的である。かかる観点で、ウレア変性ポリオレフィン(a)を製造する際には、ウレア変性ポリオレフィン(a)中のウレア基の含有量が上記範囲となるように、カルボジイミド基含有化合物(B)の配合量を調整するのが良い。
さらに、ウレア変性ポリオレフィン(a)を得るためのカルボジイミド変性ポリオレフィンを製造するにあたり、ポリオレフィン系樹脂(A)中のカルボジイミド基と反応する基と、カルボジイミド基含有化合物(B)中のカルボジイミド基との反応を制御する方がよい。ポリオレフィン系樹脂(A)中のカルボジイミド基と反応する基と、カルボジイミド基含有化合物(B)中のカルボジイミド基との反応の進行度合いは、例えば、以下の方法により調査することが可能である。
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)、および反応により得られたカルボジイミド変性ポリオレフィンの熱プレスシ−トをそれぞれ作製した後に、赤外吸収分析装置を用いて赤外線吸収を測定する。得られたチャートから、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)およびカルボジイミド変性ポリオレフィン中のカルボジイミド基と反応する基を有する化合物のピーク強度に起因する吸収帯(無水マレイン酸を用いた場合は、1790cm−1)の吸光度の、反応前後の吸光度を比較して、下記式を用いて反応率を計算できる。
反応率(%) = X/Y × 100
X=反応前(A)のカルボジイミド基と反応する基の吸光度−反応後のカルボジイミド基と反応する基の吸光度
Y=反応前(A)のカルボジイミド基と反応する基の吸光度
反応率(%) = X/Y × 100
X=反応前(A)のカルボジイミド基と反応する基の吸光度−反応後のカルボジイミド基と反応する基の吸光度
Y=反応前(A)のカルボジイミド基と反応する基の吸光度
カルボジイミド変性ポリオレフィンについて上記方法で求めた反応率は、好ましくは40〜100%、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは80〜100%の範囲にある。
また、ウレア変性ポリオレフィン(a)を得るためのカルボジイミド変性ポリオレフィンのカルボジイミド残基量は、IR測定で2130から2140cm−1にあるN=C=N基の収縮振動に起因するピークの大きさとして捉えることが可能である。
ウレア変性ポリオレフィン(a)を得るためのカルボジイミド変性ポリオレフィンは、2種以上のカルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)を含んでいてもよく、2種以上のカルボジイミド基含有化合物(B)を含んでいてもよい。
また、ウレア変性ポリオレフィン(a)には、本発明の目的を損なわない範囲で、公知のプロセス安定剤、耐熱安定剤、耐熱老化剤等を添加することも可能である。
<カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)>
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)は、ポリオレフィンに、カルボジイミド基と反応する化合物を導入することにより得ることができる。
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)は、ポリオレフィンに、カルボジイミド基と反応する化合物を導入することにより得ることができる。
カルボジイミド基と反応する化合物としては、カルボジイミド基との反応性を有する活性水素を持つ基を有する化合物が挙げられ、具体的には、カルボン酸、アミン、アルコール、チオール等から由来する基を持つ化合物である。これらの中では、カルボン酸から由来する基を持つ化合物が好適に用いられ、中でも特に不飽和カルボン酸および/またはその誘導体が好ましい。また、活性水素を持つ基を有する化合物以外でも、水などにより容易に活性水素を有する基に変換される基を有する化合物も好ましく使用することができる。具体的にはエポキシ基、グリシジル基を有する化合物が挙げられる。本発明において、カルボジイミド基と反応する化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
カルボジイミド基と反応する化合物として不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を用いる場合、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物およびそれらの誘導体を挙げることができる。不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、またはこれらの酸無水物あるいはこれらの誘導体(例えば酸ハライド、アミド、イミド、エステルなど)が挙げられる。具体的な化合物の例としては、塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレ−ト、メタクリル酸アミノエチルおよびメタクリル酸アミノプロピルなどを挙げることができる。
これらの中で、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸アミノプロピルが好ましい。更には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などのジカルボン酸無水物であることが特に好ましい。特に、本発明において、カルボジイミド基と反応する化合物としては、無水マレイン酸が最も好ましい。
カルボジイミド基をポリオレフィンに導入する方法としては、種々の方法を採用することが可能であるが、例えば、ポリオレフィンとカルボジイミド基と反応する化合物をグラフト共重合する方法や、ポリオレフィンとカルボジイミド基と反応する化合物をラジカル共重合する方法等を例示することができる。以下に、グラフト共重合する場合とラジカル共重合する場合に分けて、具体的に説明する。
<グラフト共重合>
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)は、ポリオレフィンと、カルボジイミド基と反応する基を有する化合物をグラフト共重合することによって得ることが可能である。これにより、ポリオレフィンを主鎖とするグラフト共重合体が得られる。
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)は、ポリオレフィンと、カルボジイミド基と反応する基を有する化合物をグラフト共重合することによって得ることが可能である。これにより、ポリオレフィンを主鎖とするグラフト共重合体が得られる。
ポリオレフィン主鎖として用いられるポリオレフィンは、炭素数2〜20の脂肪族α−オレフィン、環状オレフィン、非共役ジエン、芳香族オレフィンを主成分とする重合体であり、好ましくは炭素数2〜10のα−オレフィン、さらに好ましくは2〜8のα−オレフィンを主成分とする重合体である。ポリオレフィン主鎖の主成分となるこれらのオレフィンは、1種単独でも2種以上使用してもよい。ここで、主成分となるとは、ポリオレフィン中の当該モノマー単位の含有量が、通常50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。前記主成分となるオレフィンとして、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、テトラシクロドデセン、ノルボルネンおよびスチレンを好ましく用いることができ、この中でもプロピレンが特に好ましい。また、これらはアイソタクチック構造、シンジオタクチック構造の両者ともに使用可能であり、立体規則性についても特段の制限はない。
グラフト変性に用いるポリオレフィンの密度は、好ましくは、0.8〜1.1g/cm3、より好ましくは0.8〜1.05g/cm3、更に好ましくは0.8〜1g/cm3である。ASTM D1238による190℃または230℃、2.16kg荷重におけるポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は、通常0.01〜500g/10分、好ましくは0.05〜300g/10分、さらに好ましくは0.1〜100g/10分である。ポリオレフィンの密度およびMFRがこの範囲にあれば、変性後のグラフト共重合体の密度、MFRも同程度となることからハンドリングしやすい。
また、グラフト変性に用いられるポリオレフィンの結晶化度は、通常2%以上、好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。結晶化度がこの範囲にあれば、変性後のグラフト共重合体のハンドリングに優れる。
グラフト変性に用いられるポリオレフィンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)は、好ましくは5,000〜500,000、さらに好ましくは10,000〜100,000である。数平均分子量(Mn)がこの範囲にあれば、ハンドリングに優れる。尚、数平均分子量は、エチレン系ポリオレフィンにおいては、コモノマー量が10モル%未満であればポリエチレン換算、10モル%以上であればエチレン−プロピレン換算(エチレン含有量70モル%を基準)で求めることが可能である。また、数平均分子量は、プロピレン系ポリオレフィンにおいては、コモノマー量が10モル%未満であればポリプロピレン換算、10モル%以上であればプロピレン−エチレン換算(プロピレン含有量70モル%を基準)で求めることが可能である。
上記のようなポリオレフィンの製造は、従来から公知のいずれの方法によっても行うことができる。例えば、チタン系触媒、バナジウム系触媒、メタロセン触媒などを用いて重合することができる。また、ポリオレフィンは、樹脂およびエラストマーのいずれの形態でもよく、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造の両者ともに使用可能であり、立体規則性についても特段の制限はない。市販の樹脂をそのまま利用することも可能である。
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)をグラフト共重合により得る場合には、上記のグラフト主鎖となるポリオレフィンに、カルボジイミド基と反応する化合物、および必要に応じてその他のエチレン性不飽和単量体等をラジカル開始剤の存在下、グラフト共重合する。
カルボジイミド基と反応する化合物をポリオレフィン主鎖にグラフトさせる方法については特に限定されず、溶液法、溶融混練法等、公知のグラフト重合法を採用することができる。
<ラジカル共重合>
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)は、オレフィンとカルボジイミド基と反応する化合物をラジカル共重合することによっても得ることが可能である。オレフィンとしては、上述のグラフト主鎖となるポリオレフィンを形成する場合のオレフィンと同一のものを採用することが可能である。また、カルボジイミド基と反応する化合物も上述の通りである。
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)は、オレフィンとカルボジイミド基と反応する化合物をラジカル共重合することによっても得ることが可能である。オレフィンとしては、上述のグラフト主鎖となるポリオレフィンを形成する場合のオレフィンと同一のものを採用することが可能である。また、カルボジイミド基と反応する化合物も上述の通りである。
オレフィンとカルボジイミド基と反応する化合物をラジカル共重合させる方法については特に限定されず、公知のラジカル共重合法を採用することができる。
グラフト共重合およびラジカル共重合などのいずれの共重合方法を採用する場合であっても、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)は、次のような条件を満たすものが良い。
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)中におけるカルボジイミド基と反応する基の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.1〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。カルボジイミド基と反応する基の含有量が10質量%以下である場合、カルボジイミド基と反応する基がカルボジイミド基含有化合物(B)により架橋されて、カルボジイミド変性ポリオレフィンを製造することが困難となることを抑制する。またカルボジイミド基と反応する基の含有量が0.1質量%以上であると、カルボジイミド変性ポリオレフィンの製造が可能となり、カルボジイミド変性ポリオレフィンの骨格となるカルボジイミド基含有化合物(B)とポリオレフィン系樹脂(A)との結合部分が少なくなることによる、ウレア変性ポリオレフィン(a)とした際の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物における強化繊維の補強性や分散性が低くなることを抑制する。
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)同士の架橋を防止するためには、ポリオレフィン系樹脂(A)の数平均分子量が低いこと、また、(カルボジイミド基と反応する基のモル数)/(ポリオレフィン共重合体(A)分子鎖のモル数)のモル比が小さいことが好ましい。これは即ち、ポリオレフィン樹脂(A)の一つの分子鎖上にカルボジイミド基と反応する基が複数でなく、なるべく単数で存在している場合には、カルボジイミド基含有化合物(B)のカルボジイミド基(N=C=N)が、ポリオレフィン樹脂(A)のカルボジイミド基と反応する基と反応する際、架橋およびゲル化することなく結合できることを意味している。
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)の数平均分子量(Mn)と、カルボジイミド基と反応する基を有する基の含有量とを制御することにより、カルボジイミド変性ポリオレフィンの製造において架橋が起こって製造安定性が低下することを防止できる。即ち、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)は、以下の式(1)を満足していることが好ましい。
0.1<Mn/{(100−M)×f/M}<6 (1)
(式中、
f :カルボジイミド基と反応する基を有する化合物の分子量(g/mol)
M :カルボジイミド基と反応する基を有する化合物の含有量(wt%)
Mn:カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)の数平均分子量
である。)
0.1<Mn/{(100−M)×f/M}<6 (1)
(式中、
f :カルボジイミド基と反応する基を有する化合物の分子量(g/mol)
M :カルボジイミド基と反応する基を有する化合物の含有量(wt%)
Mn:カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)の数平均分子量
である。)
また、架橋させないという製造安定性の観点から、更に好ましくは以下の式(2)を満
足する範囲であり、最も好ましくは式(3)を満足する範囲である。
0.3<Mn/{(100−M)×f/M}<4 (2)
0.5<Mn/{(100−M)×f/M}<2.5 (3)
足する範囲であり、最も好ましくは式(3)を満足する範囲である。
0.3<Mn/{(100−M)×f/M}<4 (2)
0.5<Mn/{(100−M)×f/M}<2.5 (3)
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)の数平均分子量(Mn)とカルボジイミド基と反応する基の関係が上記範囲にあると、カルボジイミド変性ポリオレフィンを製造する際、架橋することなく安定して製造することが可能となる。
また、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)をグラフト重合により得る場合には、グラフト主鎖となるポリオレフィンが、線状低密度ポリエチレンのようなエチレン含有量の多い樹脂であると、エチレン−ブテン共重合体のようなα−オレフィン共重合量の多い樹脂に比較すると製造時に架橋しやすい傾向がある。そのため、エチレン含有量の多い樹脂をグラフト主鎖として用いて、かつ架橋を抑制して製造するためには、カルボジイミド基と反応する基が、ポリオレフィン系樹脂(A)の一つの分子鎖上になるべく単数で存在するよう調整することが好ましい。
また、グラフト主鎖となるポリオレフィンが、ポリプロピレンのような熱分解により低分子量化しやすい樹脂である場合には、架橋による高粘度化の現象は起こりにくい。そのため、熱分解しやすい樹脂をグラフト主鎖として用いる場合には、カルボジイミド基と反応する基が、ポリオレフィン系樹脂(A)の一つの分子鎖上に複数存在しても、高粘度化せずにカルボジイミド変性ポリオレフィンを製造できる場合がある。
カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)のASTM D1238による荷重2.16kg、190℃または230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜300g/10分である。上記範囲にあると、強化繊維の補強性や分散性の向上効果に優れたウレア変性ポリオレフィン(a)を得るためのカルボジイミド変性ポリオレフィンが得られる。
また、カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)の密度は、好ましくは0.8〜1.1g/cm3、より好ましくは0.8〜1.05g/cm3、更に好ましくは0.8〜1g/cm3である。
<カルボジイミド基含有化合物(B)>
カルボジイミド基含有化合物(B)は、好ましくは下記一般式(4)で示される繰り返し単位を有するポリカルボジイミドである。
−N=C=N−R1− (4)
〔式中、R1は2価の有機基を示す〕
カルボジイミド基含有化合物(B)は、好ましくは下記一般式(4)で示される繰り返し単位を有するポリカルボジイミドである。
−N=C=N−R1− (4)
〔式中、R1は2価の有機基を示す〕
ポリカルボジイミドの合成法は、特に限定されるものではないが、例えば有機ポリイソシアネ−トを、イソシアネ−ト基のカルボジイミド化反応を促進する触媒の存在下で反応させることにより、ポリカルボジイミドを合成することができる。
カルボジイミド基含有化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は、好ましくは400〜500,000、より好ましくは1,000〜10,000、更に好ましくは2,000〜4,000である。数平均分子量(Mn)がこの範囲にあると、強化繊維の補強性や分散性の向上効果に優れたウレア変性ポリオレフィン(a)を得るためのカルボジイミド変性ポリオレフィンが得られるため好ましい。
カルボジイミド基含有化合物(B)には、モノカルボジイミドを添加してもよく、単独又は複数のカルボジイミド基含有化合物を混合して使用することも可能である。
なお、市販のカルボジイミド基含有化合物をそのまま使用することも可能である。市販のカルボジイミド基含有化合物としては、日清紡績株式会社製 カルボジライト(登録商標)HMV−8CAやカルボジライト(登録商標)LA1、ラインケミー社製 スタバクゾール(登録商標)Pやスタバクゾール(登録商標)P400などが挙げられる。カルボジイミド基含有化合物のカルボジイミド基当量は10〜1000が好ましく、より好ましくは100〜500である。カルボジイミド基当量がこの範囲にあることで、得られるウレア変性ポリオレフィン(a)の強化繊維への接着性を高めて成形品の力学特性を向上させることができる。
カルボジイミド基含有化合物(B)および得られたカルボジイミド変性ポリオレフィンにおけるカルボジイミド基含有量は、13C−NMR、IR、滴定法等により測定でき、カルボジイミド当量として把握することが可能である。13C−NMRでは130から142ppm、IRでは2130〜2140cm−1のピ−クを観察する。 13C−NMR測定は、たとえば次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0 mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX−500型NMR測定装置を用い、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
IR測定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、試料を200℃、3分で熱プレスしてシ−トを作製した後に、赤外分光光度計(日本分光製、FT−IR 410型)を用いて透過法で、該シートの赤外吸収スペクトルを測定する。測定条件は、分解能を2cm−1、積算回数を32回とする。
透過法での赤外吸収スペクトルは、ランベルト・ベールの法則で示されるように、サンプル厚みに反比例し、吸光度そのものがサンプル中のカルボジイミド基の濃度をあらわすものではない。そのため、カルボジイミド基含有量を測定するためには、測定するサンプルの厚みを揃えるか、内部標準ピークを用いてカルボジイミド基のピーク強度を規格化する必要がある。
IR測定によりカルボジイミド変性ポリオレフィンのカルボジイミド基含有量を測定する場合には、あらかじめカルボジイミド基の濃度が既知のサンプルを用いて、IR測定を行ない、2130〜2140cm−1に現われるピークの吸光度と内部標準ピークの吸光度の比を用いて検量線を作成しておき、サンプルの測定値を検量線に代入し、濃度を求める。
内部標準ピークとしては、ポリプロピレン骨格に由来するピークを用いても良いし、あらかじめ内部標準物質をサンプル中の濃度が一定となるように混合し、測定に用いても良い。
<ポリプロピレン系樹脂(b)>
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂(b)は、いわゆる、未変性のポリプロピレン系樹脂であり、プロピレンの単独重合体またはプロピレンとα−オレフィン、共役ジエンおよび非共役ジエンなどから選ばれる少なくとも1種との共重合体が挙げられる。
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂(b)は、いわゆる、未変性のポリプロピレン系樹脂であり、プロピレンの単独重合体またはプロピレンとα−オレフィン、共役ジエンおよび非共役ジエンなどから選ばれる少なくとも1種との共重合体が挙げられる。
α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等のプロピレンを除く炭素数2〜12のα−オレフィンが挙げられる。共役ジエンまたは非共役ジエンとしては、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられる。これらその他の単量体は、1種類または2種類以上を選択して使用することができる。
ポリプロピレン系樹脂(b)の骨格構造としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと前記その他の単量体の1種類または2種類以上を含むランダム共重合体あるいはブロック共重合体等を挙げることができる。例えば、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体などが好適なものとして挙げられる。また、ポリプロピレン樹脂(b)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記以外の共重合成分を含んでも良い。
<強化繊維(c)>
本発明に用いられる強化繊維(c)としては、特に限定されないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維などの高強度、高弾性率繊維が使用できる。これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などの炭素繊維を用いるのが好ましい。得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。また、導電性を付与する目的では、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。
本発明に用いられる強化繊維(c)としては、特に限定されないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維などの高強度、高弾性率繊維が使用できる。これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などの炭素繊維を用いるのが好ましい。得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。また、導電性を付与する目的では、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。
さらに炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が0.05〜0.5であるものが好ましく、より好ましくは0.08〜0.4であり、さらに好ましくは0.1〜0.3である。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の官能基量を確保でき、ポリプロピレン系樹脂とより強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度比の上限には特に制限はないが、炭素繊維の取扱い性および生産性のバランスから0.5以下とすることが例示できる。
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求める。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、試料チャンバー中を1×108Torrに保つ。X線源としてA1Kα1、2を用い、測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。表面酸素濃度比とは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とする。ここで炭素繊維束とは1本の炭素繊維単糸を複数集めた繊維束のことであり、単糸数には、特に制限はなく、100〜350,000本の範囲内、とりわけ1,000〜250,000本の範囲内で使用することが好ましい。また炭素繊維の生産性の観点からは、単糸数が多いものが好ましく、10,000〜100,000本の範囲内で使用することが好ましい。
表面酸素濃度比[O/C]を0.05〜0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法をとることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。
また、強化繊維の平均繊維径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、3〜15μmの範囲内であることがより好ましい。強化繊維束とした場合の単糸数には、特に制限はなく、100〜350,000本の範囲内、とりわけ1,000〜250,000本の範囲内で使用することが好ましい。また強化繊維の生産性の観点からは、単糸数が多いものが好ましく、10,000〜100,000本の範囲内で使用することが好ましい。
本発明では、強化繊維(c)は多官能化合物(s)によりサイジング処理されている必要がある。
<多官能化合物>
多官能化合物(s)としては、特に限定されないが、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシ基等の官能基を1分子中に2個以上有する化合物が使用できる。これらは1種または2種以上を併用してもよい。官能基が1分子中に2個以上である化合物を用いた場合、強化繊維とマトリックス樹脂との接着性および耐水劣化性に優れる。
したがって、官能基の数は、1分子中に2個以上であることが好ましく、さらに好ましくは、3個以上である。すなわち、多官能化合物としては、3官能以上の官能基を有する化合物を用いるのが良い。そして、多官能化合物(s)における官能基は、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびヒドロキシル基から選択される少なくとも1種である官能基であることが好ましい。
多官能化合物(s)としては、特に限定されないが、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシ基等の官能基を1分子中に2個以上有する化合物が使用できる。これらは1種または2種以上を併用してもよい。官能基が1分子中に2個以上である化合物を用いた場合、強化繊維とマトリックス樹脂との接着性および耐水劣化性に優れる。
したがって、官能基の数は、1分子中に2個以上であることが好ましく、さらに好ましくは、3個以上である。すなわち、多官能化合物としては、3官能以上の官能基を有する化合物を用いるのが良い。そして、多官能化合物(s)における官能基は、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびヒドロキシル基から選択される少なくとも1種である官能基であることが好ましい。
具体的な多官能化合物としては、多官能エポキシ樹脂、ポリエチレンイミン、酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンの中和物、アミノエチル化アクリルポリマー、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、マトリックス樹脂との接着性を発揮しやすい脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。通常、エポキシ樹脂はエポキシ基を多数有すると、架橋反応後の架橋密度が高くなるために、靭性の低い構造になりやすい傾向にある。そのため、サイジング剤として、強化繊維とマトリックス樹脂間に存在させても、もろいために剥離しやすく、繊維強化複合材料の強度発現しないことがある。しかし、脂肪族エポキシ樹脂は、柔軟な骨格のため、架橋密度が高くとも靭性の高い構造になりやすい。強化繊維とマトリックス樹脂間に存在させた場合、柔軟で剥離しにくくさせるため、繊維強化複合材料の強度を向上しやすく好ましい。また、ウレア変性ポリオレフィン(a)と併用した場合に、力学特性や耐水劣化性にも優れるものとなる。
脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ジグリシジルエーテル化合物では、エチレングリコールジグリシジルエーテル及び、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及び、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。また、ポリグリシジルエーテル化合物では、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、アラビトールポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパングリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂の中でも、好ましくは、反応性の高いグリシジル基を多数有する脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物である。この中でも、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル類がさらに好ましい。脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物は、柔軟性、架橋密度およびマトリックス樹脂との相溶性のバランスがよく、効果的に接着性を向上することから好ましい。
ポリエチレンイミンも、マトリックス樹脂との接着性を発揮しやすいため好ましい。ポリエチレンイミンは骨格が柔軟であり、強化繊維とマトリックス樹脂間に存在させた場合、柔軟で剥離しにくいため、繊維強化複合材料の強度を向上しやすく好ましい。また、ポリエチレンイミンは水溶性であるため、水溶液として強化繊維に付与することにより、強化繊維表面に均一に付与することが容易である。
酸変性ポリプロピレンおよび酸変性ポリプロピレンの中和物としては、例えば、プロピレンなどの主として炭化水素から構成される高分子主鎖と、不飽和カルボン酸により形成されるカルボキシル基、または、その金属塩、アンモニウム塩を含む側鎖とを有するものが挙げられる。高分子主鎖は、プロピレンと不飽和カルボン酸とを共重合させたランダム共重合体でもよいし、プロピレンに不飽和カルボン酸をグラフトしたグラフト共重合体でもよい。また、α−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどの共重合可能な共重合成分を共重合してもよい。酸変性ポリプロピレンおよび酸変性ポリプロピレンの中和物は、1分子中に多数の官能基を有しながら柔軟であり、さらに骨格がマトリックス樹脂と同様のポリプロピレンであることから、マトリックス樹脂との相溶性がよく、接着性を向上しやすく好ましい。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、メサコン酸、グルタコン酸、ナジック酸、メチルナジック酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等を挙げることができる。特にマレイン酸、アクリル酸またはメタクリル酸が共重合反応させやすいことから好ましい。プロピレンとの共重合又はプロピレンへのグラフト共重合に使用する不飽和カルボン酸は1種のみでもよいし、2種以上の不飽和カルボン酸を使用しても良い。また、酸変性ポリプロピレンの中和物は、少なくとも一部のカルボキシル基が、Na、K、Li、Mg、Zn、Ca、Cu、Fe、Ba、Alなどの金属陽イオン又はアンモニウムイオンで中和されていることが好ましい。
また、官能基を2つ以上有するために、酸変性ポリプロピレン、または酸変性ポリプロピレンの中和物1g当たり、オキシカルボニル基量が0.05〜5ミリモル当量であることが好ましい。より好ましくは0.1〜4ミリモル当量、さらに好ましくは0.3〜3ミリモル当量である。上記のようなオキシカルボニル基の含有量を分析する手法としては、中和物の場合は、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を定量的に行う方法が挙げられる。また、IR、NMRおよび元素分析等を用いてカルボニル炭素の定量をおこなう方法が挙げられる。オキシカルボニル基量が0.05ミリモル当量未満では、接着性を発揮しにくい傾向にあり、5ミリモル当量を越えると酸変性ポリプロピレンまたは酸変性ポリプロピレンの中和物がもろくなることがある。
ここで、強化繊維(c)が多官能化合物(s)(以下、サイジング剤ということもある)によりサイジング処理されているとは、強化繊維(c)の表面に多官能化合物(s)が付着していることを示す(「強化繊維(c)が多官能化合物(s)により処理されている」なる記載は、単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎない)。多官能化合物をサイジング剤として、強化繊維に付与することで、添加量が少量であっても効果的に強化繊維表面の接着性およびコンポジット総合特性を向上させることができる。
上記効果を得るためには、繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物中において、サイジング剤は強化繊維とマトリックス樹脂の界面に存在することが好ましい。よって、多官能化合物(s)は、強化繊維(c)の周囲全体に付着し、強化繊維を被覆している状態が好ましいと考えられる。しかしながら、仮に強化繊維の一部分に被覆されていない部分が存在しても、周囲の被覆されている部分において十分な接着性を有していれば、本発明の効果を発現することがある。
サイジング剤付着量は、強化繊維のみの質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下付与することがさらに好ましい。0.01質量%以上では、サイジング剤の未付着部の割合が少なくなるためか、接着性向上効果が現れやすく、10質量%以下であると、マトリックス樹脂の物性低下を抑制する。
また、サイジング剤には、ビスフェノール型エポキシ化合物、直鎖状低分子量エポキシ化合物、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、乳化剤あるいは界面活性剤など他の成分を粘度調整、耐擦過性向上、耐毛羽性向上、集束性向上、高次加工性向上等の目的で加えてもよい。
サイジング剤の付与手段としては、特に限定されるものではないが、例えばローラーを介してサイジング液に浸漬する方法、サイジング液の付着したローラーに接する方法、サイジング液を霧状にして吹き付ける方法などがある。また、バッチ式、連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましい。この際、強化繊維に対するサイジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング液濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に強化繊維を超音波で加振させることはより好ましい。
サイジング剤付与後の乾燥温度および乾燥時間は、サイジング剤の付着量によって調整する。サイジング剤の付与に用いる溶媒を完全なに除去し、乾燥に要する時間を短くし、サイジング剤の熱劣化を防止し、かつ、サイジング剤の熱劣化を防止する観点から、乾燥温度は、150℃以上350℃以下であることが好ましく、180℃以上250℃以下であることがより好ましい。
サイジング剤に使用する溶媒は、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメリルアセトアミド、アセトン等が挙げられるが、取扱いが容易で防災の観点から水が好ましい。従って、水に不溶、若しくは難溶の化合物をサイジング剤として用いる場合には、乳化剤または界面活性剤を添加し、水分散して用いるのが良い。乳化剤または界面活性剤としては、具体的には、スチレン−無水マレイン酸共重合体、オレフィン−無水マレイン酸共重合体、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ソーダ等のアニオン系乳化剤、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾリン等のカチオン系乳化剤、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンエーテルエステル共重合体、ソルビタンエステルエチルオキサイド付加物等のノニオン系乳化剤等を用いることができるが、相互作用の小さいノニオン系乳化剤が多官能化合物(s)の接着性効果を阻害しにくく好ましい。
本発明の繊維強化プロピレン系樹脂組成物に用いられる、サイジング処理された強化繊維(c)の形態については特に限定されないが、強化繊維の力学特性を効果的に発揮させたい場合には、単繊維が一方向に配列された強化繊維の束が長さ方向に亘り連続した状態であることが好ましい。この場合、強化繊維の束の単繊維全てが全長に亘り連続している必要はなく、一部の単繊維が途中で分断されていても良い。このような連続した強化繊維の束としては、一方向性繊維束、二方向性繊維束、多方向性繊維束などが例示できるが、生産性の観点から、一方向性繊維束がより好ましく使用できる。
また、本発明の繊維強化プロピレン系樹脂組成物をコンパウンド、射出成形等で使用する場合などには、サイジング処理された強化繊維(c)の取り扱い性の観点から、1〜30mmの範囲の長さに切断したチョップド糸であることが好ましい。より好ましくは2〜20mm、さらに好ましくは3〜10mmの範囲である。サイジング処理された強化繊維(c)を前記の長さに調製することにより、コンパウンド装置や射出成形機へのフィード性および取扱性を十分に高めることができる。
また本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物は、前記の必須成分(a)、(b)、(c)、(s)に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤や添加剤を含有しても良い。充填剤も添加剤も、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物、および繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物から得られる成形品の各種特性を改良するために用いる成分のことを指す。充填剤とは、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物中で、マトリックス樹脂に相溶せずに存在する、強化繊維以外の固形成分を意味する。また、添加剤とはマトリックス樹脂に相溶する成分を意味する。
充填剤としては、無機充填剤および有機充填剤が挙げられる。無機充填剤の例としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、ドロマイト、塩基性炭酸マグネシウム等が挙げられる。また、有機充填剤の例としては、粒子状の熱硬化樹脂、木粉、コルク粉、籾殻粉、精製パルプ、ワラ、紙、綿、レーヨン、スフ、セルロース及びヤシ殻粉等が挙げられる。
添加剤の例としては、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤が挙げられる。
本発明の第一の発明では、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物中のマトリックス樹脂成分に含まれるウレア基の含有量は、マトリックス樹脂成分100gに対し、0.0005〜140mmol、好ましくは0.001〜100mmol、さらに好ましくは0.01〜60mmol、より好ましくは0.02〜20mmolである。ウレア基の含有量がマトリックス樹脂成分100gに対し0.0005mmolに満たないと、優れた力学特性や耐水劣化性を得ることができない。また、ウレア基の含有量がマトリックス樹脂成分100gに対し140mmolよりも多い場合は、ウレア基の含有量に対する強度向上効果がそれほど上がらず経済的でなくなる。
ここで、本発明におけるマトリックス樹脂成分とは、成分(a)、成分(b)の混合物を示す。
なお、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物中のマトリックス樹脂成分に含まれるウレア基の含有量は、用いた原料の組成から計算することもできる。また、繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物から求める場合には、マトリックス樹脂成分を溶解させて分離し、前述したように、IR、13C−NMR、滴定法などにより測定することができる。
また、本発明の第二の発明では、樹脂組成物における各成分の含有量について、成分(b)と成分(c)の合計を100質量部とした場合に、ウレア変性ポリオレフィン(a)は、0.01〜50質量部、好ましくは0.05〜30質量部、更に好ましくは0.1〜20質量部、ポリプロピレン系樹脂(b)を20〜99質量部、好ましくは30〜95質量部、更に好ましくは50〜90質量部、多官能化合物(s)によりサイジング処理された強化繊維(c)を1〜80質量部、好ましくは5〜70質量部、更に好ましくは10〜50質量部、それぞれ含有する組成物である必要がある。
ウレア変性ポリオレフィン(a)が0.01質量部未満では、滞留安定性が低く、また耐水劣化性を得ることができず、得られる成形品の力学特性も低い。また、50質量部よりも多い場合は、ウレア変性ポリオレフィン(a)の含有量に対する成形品の力学特性向上効果がそれほど上がらず経済的でなくなる。
ポリプロピレン系樹脂(b)が20質量部未満では、比較的安価なポリプロピレン系樹脂が少なくなることから、得られる成形品の力学特性向上効果に対して経済的でなくなる。99質量部を超える場合は、耐水劣化性を得ることができず、得られる成形品の力学特性も低い。
多官能化合物によりサイジング処理された強化繊維(c)が1質量部未満では、得られる成形品の力学特性が不十分となる場合があり、80質量部を超えると成形加工の際の流動性の低下や、強化繊維へのマトリックス樹脂成分の含浸が不十分となり、結果的に力学特性の低下がおこる場合がある。
また、ウレア変性ポリオレフィン(a)は、該変性ポリオレフィン100g含まれる、ウレア基の含有量が、好ましくは1〜200mmol、より好ましくは5〜150mmol、さらに好ましくは10〜100mmolである。
もちろん、第一の本発明と第二の本発明の両方を満たすようにすれば、本発明の効果をより一層高く発現することができる。
本発明の繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、各種の成形法により最終的な形状の製品に加工できる。成形方法としてはプレス成形、トランスファー成形、射出成形や、これらの組合せ等が挙げられる。成形品としては、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール等の自動車部品に好適である。さらに電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、レーザーディスク(登録商標)、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品も挙げられる。またパーソナルコンピューター、携帯電話などに使用されるような筐体や、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持する部材であるキーボード支持体に代表されるような電気・電子機器用部材なども挙げられる。強化繊維に導電性を有する炭素繊維を使用した場合に、このような電気・電子機器用部材では、電磁波シールド性が付与されるためにより好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
(各種測定方法)
まず、参考例、実施例及び比較例において用いる各種特性の測定方法について説明する。
まず、参考例、実施例及び比較例において用いる各種特性の測定方法について説明する。
(1)変性ポリプロピレンの諸物性測定
<メルトフローレート(MFR)>
ASTM D1238に従い、2.16kg荷重の下、230℃にて測定を実施した。
<メルトフローレート(MFR)>
ASTM D1238に従い、2.16kg荷重の下、230℃にて測定を実施した。
<数平均分子量(Mn)>
数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定装置としてWaters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6−HTを2本およびTSKgel GMH6−HTLを2本使用し、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とした。移動相としては、酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025質量%を添加したo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)を用い、1.0ml/分で移動させた。試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。分子量は標準ポリスチレン換算にて算出した。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定装置としてWaters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6−HTを2本およびTSKgel GMH6−HTLを2本使用し、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とした。移動相としては、酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025質量%を添加したo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)を用い、1.0ml/分で移動させた。試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。分子量は標準ポリスチレン換算にて算出した。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
なお、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの分子量測定においては、上記のように標準ポリスチレンで求めた分子量を、汎用較正法によりPPに換算した。換算に用いた、ポリスチレン(PS)およびポリプロピレン(PP)のMark-Houwink係数は、文献(J. Polym. Sci., Part A-2, 8, 1803 (1970), Makromol. Chem., 177, 213 (1976))に記載の値を用いた。
<カルボジイミド基含有量>
カルボジイミド基含有量は、試料を200℃、3分で熱プレスしてシ−トを作製した後に、赤外分光光度計(日本分光製、FT‐IR 410型)を用いて、透過法で該シ−トの赤外吸収スペクトルを測定し、下記の検量線に代入して求めた。測定条件は、分解能を2cm−1、積算回数を32回とした。
カルボジイミド基含有量は、試料を200℃、3分で熱プレスしてシ−トを作製した後に、赤外分光光度計(日本分光製、FT‐IR 410型)を用いて、透過法で該シ−トの赤外吸収スペクトルを測定し、下記の検量線に代入して求めた。測定条件は、分解能を2cm−1、積算回数を32回とした。
あらかじめ、後述のPP1(ポリプロピレン)に、所定の濃度でカルボジライト(登録商標)HMV−8CAを溶融混合し、上記と同様にIR測定用のサンプルを作成し、検量線作成に用いた。濃度の異なるそれぞれのサンプルの赤外吸収スペクトルを測定し、カルボジイミド基に由来する2120cm−1の吸光度を、内部標準ピークとしてポリプロピレン骨格に由来する1357cm−1(C−H変角振動)の吸光度で除することにより規格化し、検量線を作成した。
<ウレア基含有量>
ウレア基含有量は、試料を200℃、3分で熱プレスしてシ−トを作製した後に、赤外分光光度計(日本分光製、FT‐IR 410型)を用いて、透過法で該シ−トの赤外吸収スペクトルを測定し、下記の検量線に代入して求めた。測定条件は、分解能を2cm−1、積算回数を32回とした。
ウレア基含有量は、試料を200℃、3分で熱プレスしてシ−トを作製した後に、赤外分光光度計(日本分光製、FT‐IR 410型)を用いて、透過法で該シ−トの赤外吸収スペクトルを測定し、下記の検量線に代入して求めた。測定条件は、分解能を2cm−1、積算回数を32回とした。
あらかじめ、後述のPP1(ポリプロピレン)に、所定の濃度でカルボジライト(登録商標)HMV−8CAを溶融混合し、冷却して5mm角の大きさのペレット状にしたのち95℃熱水中に2週間浸漬し、上記と同様にIR測定用のサンプルを作成し、検量線作成に用いた。濃度の異なるそれぞれのサンプルの赤外吸収スペクトルを測定し、ウレア基に由来する1610cm−1の吸光度を、内部標準ピークとしてポリプロピレン骨格に由来する1357cm−1(C−H変角振動)の吸光度で除することにより規格化し、検量線を作成した。
(2)炭素繊維の諸物性測定
<炭素繊維のストランド引張強度および引張弾性率の測定>
炭素繊維束(以下ストランドとも記載する)に下記組成の樹脂を含浸させ、130℃の温度で35分間硬化させた後、JIS R7601(1986年)に基づいて引張試験を行った。6本のストランドについて測定し、平均値でストランド引張強度と引張弾性率を求めた。
<炭素繊維のストランド引張強度および引張弾性率の測定>
炭素繊維束(以下ストランドとも記載する)に下記組成の樹脂を含浸させ、130℃の温度で35分間硬化させた後、JIS R7601(1986年)に基づいて引張試験を行った。6本のストランドについて測定し、平均値でストランド引張強度と引張弾性率を求めた。
<炭素繊維の単繊維径の測定>
炭素繊維単糸を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、直径を測定した。測定は20本の炭素繊維束に対して実施し、その平均値を炭素繊維の単繊維径とした。
炭素繊維単糸を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、直径を測定した。測定は20本の炭素繊維束に対して実施し、その平均値を炭素繊維の単繊維径とした。
<単位長さあたりの質量の測定>
得られた炭素繊維束を1mの長さに切り出し、質量を測定した。測定は5本の炭素繊維束に対して実施し、その平均値を単位長さあたりの質量とした。
得られた炭素繊維束を1mの長さに切り出し、質量を測定した。測定は5本の炭素繊維束に対して実施し、その平均値を単位長さあたりの質量とした。
<比重の測定>
炭素繊維の比重は液中置換法にて測定した。
[樹脂組成](かっこ内は、メーカー等)
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ERL−4221、ユニオンカーバイド社製)・・・・・・・・・100質量部
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン(ステラケミファ(株)製)・・・・・3質量部
・アセトン(和光純薬工業(株)製)・・・・・・・・・・・・・・・・・4質量部
炭素繊維の比重は液中置換法にて測定した。
[樹脂組成](かっこ内は、メーカー等)
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ERL−4221、ユニオンカーバイド社製)・・・・・・・・・100質量部
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン(ステラケミファ(株)製)・・・・・3質量部
・アセトン(和光純薬工業(株)製)・・・・・・・・・・・・・・・・・4質量部
<O/Cの測定>
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めた。まず、炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、試料チャンバー中を1×108Torrに保った。X線源としてA1Kα1、2を用い、測定した。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせた。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比としてO/Cを算出した。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とした。
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めた。まず、炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、試料チャンバー中を1×108Torrに保った。X線源としてA1Kα1、2を用い、測定した。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせた。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比としてO/Cを算出した。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とした。
(3)繊維強化プロピレン系樹脂組成物を用いて得られた成形品の諸物性測定
<成形品の曲げ試験>
ASTM D790(1997)に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子10mm、支点10mm)を用いて支持スパンを100mmに設定し、クロスヘッド速度5.3mm/分の試験条件にて曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。試験機として、“インストロン”(登録商標)万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。
n=6個の成形品について測定し、平均値で曲げ強度を求めた。
<成形品の曲げ試験>
ASTM D790(1997)に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子10mm、支点10mm)を用いて支持スパンを100mmに設定し、クロスヘッド速度5.3mm/分の試験条件にて曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。試験機として、“インストロン”(登録商標)万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。
n=6個の成形品について測定し、平均値で曲げ強度を求めた。
曲げ強度の判定は以下の基準でおこない、A〜Cを合格とした。
A:150MPa以上
B:130MPa以上150MPa未満
C:100MPa以上130MPa未満
D:100MPa未満。
A:150MPa以上
B:130MPa以上150MPa未満
C:100MPa以上130MPa未満
D:100MPa未満。
<成形品の熱水浸漬および吸水率の測定>
モールドノッチ付きアイゾット衝撃試験用の試験片(厚み3.2mm)を用意し、減圧乾燥器にて、乾燥し、乾燥質量W1(g)を測定した。
モールドノッチ付きアイゾット衝撃試験用の試験片(厚み3.2mm)を用意し、減圧乾燥器にて、乾燥し、乾燥質量W1(g)を測定した。
精製水を満たした恒温水槽を85℃に調整し、上記の乾燥した試験片を1週間浸漬し、吸水質量W2(g)を測定した。得られたW1とW2を用い、下記式に従い吸水率(%)を算出した。
(吸水率)=(W2−W1)/W1×100
吸水率は10個の試験片について測定し、その平均値を求めた。
(吸水率)=(W2−W1)/W1×100
吸水率は10個の試験片について測定し、その平均値を求めた。
<成形品のアイゾット衝撃試験>
ASTM D256(1993)に準拠し、モールドノッチ付きアイゾット衝撃試験を行った。厚み3.2mmの試験片を用い、アイゾット衝撃強度(J/m)を測定した。
試験片としては、上記<成形品の熱水浸漬および吸水率の測定>に記載の方法に従って調整した乾燥サンプルおよび吸水サンプルを用い、それぞれ個の試験片について測定し、その平均値を算出した。
ASTM D256(1993)に準拠し、モールドノッチ付きアイゾット衝撃試験を行った。厚み3.2mmの試験片を用い、アイゾット衝撃強度(J/m)を測定した。
試験片としては、上記<成形品の熱水浸漬および吸水率の測定>に記載の方法に従って調整した乾燥サンプルおよび吸水サンプルを用い、それぞれ個の試験片について測定し、その平均値を算出した。
アイゾット衝撃試験の判定は以下の基準でおこない、A〜Cを合格とした。
A:210J/m以上
B:180J/m以上210J/m未満
C:150J/m以上180J/m未満
D:150J/m未満。
A:210J/m以上
B:180J/m以上210J/m未満
C:150J/m以上180J/m未満
D:150J/m未満。
また、吸水サンプルの衝撃強度と乾燥サンプルの衝撃強度の比より、吸水時の強度保持率(%)を算出した。
(強度保持率)=(吸水サンプルの衝撃強度)/(乾燥サンプルの衝撃強度)×100
(強度保持率)=(吸水サンプルの衝撃強度)/(乾燥サンプルの衝撃強度)×100
強度保持率の判定は以下の基準で行ない、A〜Bを合格とした。
A:90%以上
B:70%以上90%未満
C:50%以上70%未満
D:50%未満。
A:90%以上
B:70%以上90%未満
C:50%以上70%未満
D:50%未満。
<成形品の界面接着性評価>
上記吸水サンプルについて、アイゾッド衝撃試験後の破断サンプルの破断面をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察し、強化繊維表面に樹脂成分の付着があるか否かを、任意の強化繊維を5本選択し、目視判定にておこなった。また判定は以下の基準でおこなった。
A:強化繊維表面のほぼ全ての領域(90%以上)に樹脂の付着が認められる
B:強化繊維表面の50%以上90%未満の領域に樹脂の付着が認められる
C:強化繊維表面に樹脂の付着が認められるのが50%未満である。
上記吸水サンプルについて、アイゾッド衝撃試験後の破断サンプルの破断面をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察し、強化繊維表面に樹脂成分の付着があるか否かを、任意の強化繊維を5本選択し、目視判定にておこなった。また判定は以下の基準でおこなった。
A:強化繊維表面のほぼ全ての領域(90%以上)に樹脂の付着が認められる
B:強化繊維表面の50%以上90%未満の領域に樹脂の付着が認められる
C:強化繊維表面に樹脂の付着が認められるのが50%未満である。
<繊維強化プロピレン系樹脂組成物の滞留安定性評価>
得られた繊維強化プロピレン系樹脂組成物の滞留安定性は、繊維強化プロピレン系樹脂組成物ペレットを230℃で15分間混練後に測定した溶融粘度η2と、230℃で15分間混練前に測定した溶融粘度η1との比η2/η1を算出して評価した。
A:η2/η1が0.8以上1.3未満であり、滞留安定性に極めて優れる
B:η2/η1が1.3以上1.8未満であり、滞留安定性に優れる
C:η2/η1が1.8以上であり、滞留安定性に劣る
得られた繊維強化プロピレン系樹脂組成物の滞留安定性は、繊維強化プロピレン系樹脂組成物ペレットを230℃で15分間混練後に測定した溶融粘度η2と、230℃で15分間混練前に測定した溶融粘度η1との比η2/η1を算出して評価した。
A:η2/η1が0.8以上1.3未満であり、滞留安定性に極めて優れる
B:η2/η1が1.3以上1.8未満であり、滞留安定性に優れる
C:η2/η1が1.8以上であり、滞留安定性に劣る
なお溶融粘度は以下の手順で評価した。繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を溶融プレス成形して直径20mmで厚み1mmの円柱状の粘度評価用サンプルを作製した。該サンプルを動的粘弾性測定装置としてティー・エイ・インスツルメント社製動的粘弾性測定装置ARESを用いて、直径20mmのパラレルプレートを用い、平行平板間の距離1.0mm、測定周波数0.5Hz、発生トルク0.005Jの条件下で、温度を変化させながら複素粘性率η*を測定し、得られた複素粘性率η*を溶融粘度として採用した。
(原料およびその調製)
参考例、実施例及び比較例において使用した原料を以下に示す。尚、特に断らない限りはいずれも市販品を使用した。
参考例、実施例及び比較例において使用した原料を以下に示す。尚、特に断らない限りはいずれも市販品を使用した。
<ポリオレフィン>
PP1 :ポリプロピレン(ランダムPP)
(商品名F327、プライムポリマー社製、MFR(230℃)7g/10分)
PP2 :ポリプロピレン(ブロックPP)
(商品名J707G、プライムポリマー社製、MFR(230℃)30g/10分)
PP3 :ポリプロピレン(ホモPP)
(商品名J106G、プライムポリマー社製、MFR(230℃)15g/10分)
PP1 :ポリプロピレン(ランダムPP)
(商品名F327、プライムポリマー社製、MFR(230℃)7g/10分)
PP2 :ポリプロピレン(ブロックPP)
(商品名J707G、プライムポリマー社製、MFR(230℃)30g/10分)
PP3 :ポリプロピレン(ホモPP)
(商品名J106G、プライムポリマー社製、MFR(230℃)15g/10分)
<サイジング剤>
(s)−1 :グリセロールトリグリシジルエーテル(官能基:エポキシ基、官能基数3)
(s)−2 :ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ基、官能基数2)
(ジャパンエポキシレジン(株)製 jER828)
(s)−3 :酸変性ポリプロピレン(カルボキシル基、官能基数5)
(丸芳化学(株)製 酸変性ポリプロピレンエマルション)
(s)−4 :ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(エポキシ基、官能基数5)
(ナガセケムテックス(株)製 “デナコール”(登録商標)EX−521)
(s)−5 :アミノエチル化アクリルポリマー(アミノ基、官能基数75)
((株)日本触媒製 “ポリメント”(登録商標)SK−1000)
(s)−6 :ポリビニルアルコール(ヒドロキシル基、官能基数500)
(和光純薬工業(株)製 ポリビニルアルコールMw22,000)
(s)−7 :ポリエチレンイミン(アミノ基、官能基数28)
(シグマ・アルドリッチ社製 ポリエチレンイミンMn1,200)
(s)´−1 :ポリブテン(官能基なし、官能基数0)
(日油(株)製 “エマウェット”(登録商標)200E)
(s)−1 :グリセロールトリグリシジルエーテル(官能基:エポキシ基、官能基数3)
(s)−2 :ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ基、官能基数2)
(ジャパンエポキシレジン(株)製 jER828)
(s)−3 :酸変性ポリプロピレン(カルボキシル基、官能基数5)
(丸芳化学(株)製 酸変性ポリプロピレンエマルション)
(s)−4 :ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(エポキシ基、官能基数5)
(ナガセケムテックス(株)製 “デナコール”(登録商標)EX−521)
(s)−5 :アミノエチル化アクリルポリマー(アミノ基、官能基数75)
((株)日本触媒製 “ポリメント”(登録商標)SK−1000)
(s)−6 :ポリビニルアルコール(ヒドロキシル基、官能基数500)
(和光純薬工業(株)製 ポリビニルアルコールMw22,000)
(s)−7 :ポリエチレンイミン(アミノ基、官能基数28)
(シグマ・アルドリッチ社製 ポリエチレンイミンMn1,200)
(s)´−1 :ポリブテン(官能基なし、官能基数0)
(日油(株)製 “エマウェット”(登録商標)200E)
<強化繊維>
使用した炭素繊維は、後に示す参考例10−12に従い調整した。ガラス繊維は、
GF−1 :ガラス繊維(日東紡績製240TEX、総単糸数 1600本)
を使用した。
使用した炭素繊維は、後に示す参考例10−12に従い調整した。ガラス繊維は、
GF−1 :ガラス繊維(日東紡績製240TEX、総単糸数 1600本)
を使用した。
(カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂の製造)
・参考例1
PP1(プライムポリマー社製、F327)100質量部に、無水マレイン酸(和光純薬社製、以下、MAHと略記)1質量部、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂社製、商品名パーヘキシン(登録商標)25B)0.25質量部を混合し、二軸混練機(日本製鋼所製、TEX−30、L/D=40、真空ベント使用)を用いて、シリンダー温度220℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量80g/分にて押し出し、マレイン酸変性ポリプロピレン(以下、MAH−PP1と略記)を得た。得られたMAH−PP1をキシレンに溶解し、次いで得られたキシレン溶液をアセトンに注ぐことで、MAH−PP1を再沈させて精製した。無水マレイン酸のグラフト量をIRにて測定したところ0.7質量%であった。グラフト量は、MAH−PP1を200℃、3分で熱プレスしてシ−トを作製した後に、赤外分光光度計(日本分光製、FT‐IR 410型)を用いて、透過法で該シ−トの赤外吸収スペクトルを測定し、下記の検量線に代入して求めた。測定条件は、分解能を2cm−1、積算回数を32回とした。
・参考例1
PP1(プライムポリマー社製、F327)100質量部に、無水マレイン酸(和光純薬社製、以下、MAHと略記)1質量部、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日本油脂社製、商品名パーヘキシン(登録商標)25B)0.25質量部を混合し、二軸混練機(日本製鋼所製、TEX−30、L/D=40、真空ベント使用)を用いて、シリンダー温度220℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量80g/分にて押し出し、マレイン酸変性ポリプロピレン(以下、MAH−PP1と略記)を得た。得られたMAH−PP1をキシレンに溶解し、次いで得られたキシレン溶液をアセトンに注ぐことで、MAH−PP1を再沈させて精製した。無水マレイン酸のグラフト量をIRにて測定したところ0.7質量%であった。グラフト量は、MAH−PP1を200℃、3分で熱プレスしてシ−トを作製した後に、赤外分光光度計(日本分光製、FT‐IR 410型)を用いて、透過法で該シ−トの赤外吸収スペクトルを測定し、下記の検量線に代入して求めた。測定条件は、分解能を2cm−1、積算回数を32回とした。
あらかじめ、後述のPP1(ポリプロピレン)に、所定の濃度で無水マレイン酸と2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3を溶融混合し、上記と同様にIR測定用のサンプルを作成し、検量線作成に用いた。濃度の異なるそれぞれのサンプルの赤外吸収スペクトルを測定し、酸無水物基に由来する1780cm−1の吸光度を、内部標準ピークとしてポリプロピレン骨格に由来する1357cm−1(C−H変角振動)の吸光度で除することにより規格化し、検量線を作成した。数平均分子量(Mn)はGPCにて測定したところ、Mn28,000であった。
また、MAH−PP1について、Mn/{(100−M)×f/M}の値は、2.0である。
式中、
f :無水マレイン酸の分子量98(g/mol)
M :無水マレイン酸の含有量0.7(wt%)
Mn:MAH−PP1の数平均分子量28,000
である。
式中、
f :無水マレイン酸の分子量98(g/mol)
M :無水マレイン酸の含有量0.7(wt%)
Mn:MAH−PP1の数平均分子量28,000
である。
・参考例2
参考例1におけるマレイン酸変性ポリプロピレンの製造において、MAHを0.05質量部、パーヘキシン25Bを0.02質量部とし、二軸混練機のシリンダー温度を260℃としたほかは参考例1と同様にしてマレイン酸変性ポリプロピレン(以下、MAH−PP2と略記)を得た。得られたMAH−PP2の無水マレイン酸のグラフト量をIRにて測定したところ0.03質量%であった。数平均分子量(Mn)はGPCにて測定したところ、Mn29,000であった。
参考例1におけるマレイン酸変性ポリプロピレンの製造において、MAHを0.05質量部、パーヘキシン25Bを0.02質量部とし、二軸混練機のシリンダー温度を260℃としたほかは参考例1と同様にしてマレイン酸変性ポリプロピレン(以下、MAH−PP2と略記)を得た。得られたMAH−PP2の無水マレイン酸のグラフト量をIRにて測定したところ0.03質量%であった。数平均分子量(Mn)はGPCにて測定したところ、Mn29,000であった。
また、MAH−PP2について、Mn/{(100−M)×f/M}の値は、0.09である。
式中、
f :無水マレイン酸の分子量98(g/mol)
M :無水マレイン酸の含有量0.03(wt%)
Mn:MAH−PP2の数平均分子量29,000
である。
式中、
f :無水マレイン酸の分子量98(g/mol)
M :無水マレイン酸の含有量0.03(wt%)
Mn:MAH−PP2の数平均分子量29,000
である。
・参考例3
PP3(プライムポリマー社製、J106G)を100質量部、MAH 30質量部、ジクミルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名パークミル(登録商標)D)5質量部を混合し、トルエン溶液中にて5時間の反応をおこない、マレイン酸変性ポリプロピレン(以下、MAH−PP3と略記)を得た。得られたMAH−PP3の無水マレイン酸のグラフト量をIRにて測定したところ5.0質量%であった。数平均分子量(Mn)はGPCにて測定したところ、Mn18,000であった。MAH−PP3について、Mn/{(100−M)×f/M}の値は、10である。
式中、
f :無水マレイン酸の分子量98(g/mol)
M :無水マレイン酸の含有量5.0(wt%)
Mn:MAH−PP2の数平均分子量18,000
である。
PP3(プライムポリマー社製、J106G)を100質量部、MAH 30質量部、ジクミルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名パークミル(登録商標)D)5質量部を混合し、トルエン溶液中にて5時間の反応をおこない、マレイン酸変性ポリプロピレン(以下、MAH−PP3と略記)を得た。得られたMAH−PP3の無水マレイン酸のグラフト量をIRにて測定したところ5.0質量%であった。数平均分子量(Mn)はGPCにて測定したところ、Mn18,000であった。MAH−PP3について、Mn/{(100−M)×f/M}の値は、10である。
式中、
f :無水マレイン酸の分子量98(g/mol)
M :無水マレイン酸の含有量5.0(wt%)
Mn:MAH−PP2の数平均分子量18,000
である。
(カルボジイミド変性ポリプロピレンの製造)
・参考例4
参考例1で製造したMAH−PP1を100質量部およびカルボジイミド基含有化合物(日清紡社製、商品名カルボジライト(登録商標)HMV−8CA、カルボジイミド基当量278、数平均分子量2500)を8.8質量部混合し、二軸混練機(日本製鋼所製、TEX−30、L/D=40、真空ベント使用)を用いてシリンダー温度250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量80g/分にて押し出し、カルボジイミド変性ポリプロピレン(以下、CDI−PP1と略記)を得た。得られたCDI−PP1のMFR(230℃、2.16kg荷重)は130g/10分であった。IR分析によれば、マレイン酸ピークが消失していたことから反応率は100%であり、カルボジイミド基含有量は27mmol/100gであった。
・参考例4
参考例1で製造したMAH−PP1を100質量部およびカルボジイミド基含有化合物(日清紡社製、商品名カルボジライト(登録商標)HMV−8CA、カルボジイミド基当量278、数平均分子量2500)を8.8質量部混合し、二軸混練機(日本製鋼所製、TEX−30、L/D=40、真空ベント使用)を用いてシリンダー温度250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量80g/分にて押し出し、カルボジイミド変性ポリプロピレン(以下、CDI−PP1と略記)を得た。得られたCDI−PP1のMFR(230℃、2.16kg荷重)は130g/10分であった。IR分析によれば、マレイン酸ピークが消失していたことから反応率は100%であり、カルボジイミド基含有量は27mmol/100gであった。
・参考例5
参考例4と同様に、参考例2で製造したMAH−PP2を100質量部およびカルボジイミド基含有化合物を0.25質量部混合し、二軸混練機を用いて押し出し、カルボジイミド変性ポリプロピレン(以下、CDI−PP2と略記)を得た。得られたCDI−PP2は、カルボジイミド基含有量が0.09mmol/100gであった。
参考例4と同様に、参考例2で製造したMAH−PP2を100質量部およびカルボジイミド基含有化合物を0.25質量部混合し、二軸混練機を用いて押し出し、カルボジイミド変性ポリプロピレン(以下、CDI−PP2と略記)を得た。得られたCDI−PP2は、カルボジイミド基含有量が0.09mmol/100gであった。
・参考例6
参考例4と同様に、参考例3で製造したMAH−PP3を100質量部およびカルボジイミド基含有化合物を150質量部混合し、二軸混練機を用いて押し出し、カルボジイミド変性ポリプロピレン(以下、CDI−PP3と略記)を得た。押し出した樹脂の様子は、ややゲル化を伴っていた。得られたCDI−PP3は、カルボジイミド基含有量が220mmol/100gであった。
(ウレア変性ポリプロピレンの製造)
参考例4と同様に、参考例3で製造したMAH−PP3を100質量部およびカルボジイミド基含有化合物を150質量部混合し、二軸混練機を用いて押し出し、カルボジイミド変性ポリプロピレン(以下、CDI−PP3と略記)を得た。押し出した樹脂の様子は、ややゲル化を伴っていた。得られたCDI−PP3は、カルボジイミド基含有量が220mmol/100gであった。
(ウレア変性ポリプロピレンの製造)
・参考例7
参考例4で製造したCDI−PP1を5mm角の大きさのペレット状にして、95℃の熱水中に2週間浸漬させ、カルボジイミド基をウレア基に変性させてウレア変性ポリプロピレン(以下、U−PP1と略記)を得た。得られたU−PP1は、U−PP1 100gに対してウレア基含有量が27mmol/100gであった。カルボジイミド基とウレア基の合計量に対する、ウレア基含有量は100%であった。
参考例4で製造したCDI−PP1を5mm角の大きさのペレット状にして、95℃の熱水中に2週間浸漬させ、カルボジイミド基をウレア基に変性させてウレア変性ポリプロピレン(以下、U−PP1と略記)を得た。得られたU−PP1は、U−PP1 100gに対してウレア基含有量が27mmol/100gであった。カルボジイミド基とウレア基の合計量に対する、ウレア基含有量は100%であった。
・参考例8
参考例7と同様に、参考例5で製造したCDI−PP2を用いてウレア変性ポリプロピレン(以下、U−PP2と略記)を得た。得られたU−PP2は、U−PP2 100gに対してウレア基含有量が0.09mmol/100gであった。カルボジイミド基とウレア基の合計量に対する、ウレア基含有量は100%であった。
参考例7と同様に、参考例5で製造したCDI−PP2を用いてウレア変性ポリプロピレン(以下、U−PP2と略記)を得た。得られたU−PP2は、U−PP2 100gに対してウレア基含有量が0.09mmol/100gであった。カルボジイミド基とウレア基の合計量に対する、ウレア基含有量は100%であった。
・参考例9
参考例8と同様に、参考例6で製造したCDI−PP3を用いてウレア変性ポリプロピレン(以下、U−PP3と略記)を得た。得られたU−PP3は、U−PP3 100gに対してウレア基含有量が220mmol/100gであった。カルボジイミド基とウレア基の合計量に対する、ウレア基含有量は100%であった。
参考例8と同様に、参考例6で製造したCDI−PP3を用いてウレア変性ポリプロピレン(以下、U−PP3と略記)を得た。得られたU−PP3は、U−PP3 100gに対してウレア基含有量が220mmol/100gであった。カルボジイミド基とウレア基の合計量に対する、ウレア基含有量は100%であった。
(炭素繊維の製造)
・参考例10
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を用いて、紡糸、焼成処理および表面酸化処理を行なうことによって、総単糸数12,000本の連続炭素繊維(以下、CF−1と略記)を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8
表面酸素濃度比 [O/C]:0.06
ストランド引張強度:4900MPa
引張弾性率:230GPa。
・参考例10
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を用いて、紡糸、焼成処理および表面酸化処理を行なうことによって、総単糸数12,000本の連続炭素繊維(以下、CF−1と略記)を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8
表面酸素濃度比 [O/C]:0.06
ストランド引張強度:4900MPa
引張弾性率:230GPa。
・参考例11
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を用いて、紡糸、焼成処理および表面酸化処理を行なうことによって、総単糸数12,000本の連続炭素繊維(以下、CF−2と略記)を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8
表面酸素濃度比 [O/C]:0.12
ストランド引張強度:4900MPa
引張弾性率:230GPa。
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を用いて、紡糸、焼成処理および表面酸化処理を行なうことによって、総単糸数12,000本の連続炭素繊維(以下、CF−2と略記)を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8
表面酸素濃度比 [O/C]:0.12
ストランド引張強度:4900MPa
引張弾性率:230GPa。
・参考例12
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を用いて、紡糸、焼成処理および表面酸化処理を行ない、総単糸数12,000本の連続炭素繊維(以下、CF−3と略記)を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8
表面酸素濃度比 [O/C]:0.03
ストランド引張強度:4900MPa
引張弾性率:230GPa。
(強化繊維へのサイジング付与)
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を用いて、紡糸、焼成処理および表面酸化処理を行ない、総単糸数12,000本の連続炭素繊維(以下、CF−3と略記)を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8
表面酸素濃度比 [O/C]:0.03
ストランド引張強度:4900MPa
引張弾性率:230GPa。
(強化繊維へのサイジング付与)
・参考例13
サイジング剤を2質量%になるように水に溶解、または分散させたサイジング剤母液を調製し、参考例10〜12で調製した強化繊維に、浸漬法によりサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行った。付着量は1.0質量%であった。
サイジング剤を2質量%になるように水に溶解、または分散させたサイジング剤母液を調製し、参考例10〜12で調製した強化繊維に、浸漬法によりサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行った。付着量は1.0質量%であった。
(成形品の作製と評価)
・実施例1
多官能化合物として、(s)−1(グリセロールトリグリシジルエーテル)を用い、参考例10に従い得られたCF−1に、参考例13に従い、サイジング処理をした。得られた連続炭素繊維束を、カートリッジカッターにて長さ6.4mmにカットした。次に日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、(a)成分として参考例1、参考例4および参考例7に従い調製したU−PP1を3質量部および(b)成分としてPP2を80質量部混合し、メインホッパーから供給した。次いで、その下流のサイドホッパーから、(c)成分として、前記のカットした炭素繊維束を質量フィーダーにより20質量部となるように調整しながら供給し、バレル温度220℃、回転数150rpmで十分混練し、さらに下流の真空ベントより脱気を行った。溶融樹脂をダイス口(直径5mm)から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してペレット状とした。
・実施例1
多官能化合物として、(s)−1(グリセロールトリグリシジルエーテル)を用い、参考例10に従い得られたCF−1に、参考例13に従い、サイジング処理をした。得られた連続炭素繊維束を、カートリッジカッターにて長さ6.4mmにカットした。次に日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、(a)成分として参考例1、参考例4および参考例7に従い調製したU−PP1を3質量部および(b)成分としてPP2を80質量部混合し、メインホッパーから供給した。次いで、その下流のサイドホッパーから、(c)成分として、前記のカットした炭素繊維束を質量フィーダーにより20質量部となるように調整しながら供給し、バレル温度220℃、回転数150rpmで十分混練し、さらに下流の真空ベントより脱気を行った。溶融樹脂をダイス口(直径5mm)から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してペレット状とした。
用いた原料の組成から計算したペレット中のマトリックス樹脂成分に含まれるウレア基の含有量は、マトリックス樹脂成分100gに対し、0.97mmolであった。
得られたペレット状の成形材料の滞留安定性を上記の滞留安定性評価に従い評価した。
次に押出工程で得られたペレット状の成形材料から、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:220℃、金型温度:60℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。
得られた特性評価用試験片(成形品)を用いて、上記の成形品評価方法に従い、曲げ強度、乾燥サンプルのIzod衝撃強度、吸水率、吸水サンプルのIzod衝撃強度、吸水サンプルの界面接着性を評価した。評価結果を表1に示した。
・実施例2
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−2(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−2(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
・実施例3
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−3(酸変性ポリプロピレン)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−3(酸変性ポリプロピレン)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
・実施例4
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−4(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−4(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
・実施例5
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−5(アミノエチル化アクリルポリマー)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−5(アミノエチル化アクリルポリマー)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
・実施例6
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−6(ポリビニルアルコール)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−6(ポリビニルアルコール)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
・実施例7
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−7(ポリエチレンイミン)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−7(ポリエチレンイミン)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
・実施例8
多官能化合物として、(s)−1(グリセロールトリグリシジルエーテル)を用い、参考例11に従い得られたCF−2に、参考例13に従い、サイジング処理をした。得られた連続炭素繊維束を、カートリッジカッターにて長さ6.4mmにカットした。次に日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、(a)成分として参考例1、参考例4および参考例7に従い調製したU−PP1を3質量部および(b)成分としてPP2を80質量部混合し、メインホッパーから供給した。次いで、その下流のサイドホッパーから、(c)成分として、前記のカットした炭素繊維束を質量フィーダーにより20質量部となるように調整しながら供給し、バレル温度220℃、回転数150rpmで十分混練し、さらに下流の真空ベントより脱気を行った。溶融樹脂をダイス口(直径5mm)から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してペレット状とした。
多官能化合物として、(s)−1(グリセロールトリグリシジルエーテル)を用い、参考例11に従い得られたCF−2に、参考例13に従い、サイジング処理をした。得られた連続炭素繊維束を、カートリッジカッターにて長さ6.4mmにカットした。次に日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、(a)成分として参考例1、参考例4および参考例7に従い調製したU−PP1を3質量部および(b)成分としてPP2を80質量部混合し、メインホッパーから供給した。次いで、その下流のサイドホッパーから、(c)成分として、前記のカットした炭素繊維束を質量フィーダーにより20質量部となるように調整しながら供給し、バレル温度220℃、回転数150rpmで十分混練し、さらに下流の真空ベントより脱気を行った。溶融樹脂をダイス口(直径5mm)から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してペレット状とした。
得られたペレット状の成形材料の滞留安定性を上記の滞留安定性評価に従い評価した。
次に押出工程で得られたペレット状の成形材料から、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:220℃、金型温度:60℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。
得られた特性評価用試験片(成形品)を用いて、上記の成形品評価方法に従い、曲げ強度、乾燥サンプルのIzod衝撃強度、吸水率、吸水サンプルのIzod衝撃強度および吸水サンプルの界面接着性を評価した。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および評価結果を表1に示した。
・実施例9
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−2(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるカルボジイミド基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−2(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるカルボジイミド基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
・実施例10
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−3(酸変性ポリプロピレン)を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−3(酸変性ポリプロピレン)を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
・実施例11
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−4(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル)を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
多官能化合物として(s)−1の代わりに(s)−4(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル)を用いたこと以外は、実施例8と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表1に記載した。
・実施例12、実施例13、実施例14、実施例15
(a)成分としてU−PP1を順番にそれぞれ5質量部、10質量部、20質量部、40質量部に変更して用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表2に記載した。
(a)成分としてU−PP1を順番にそれぞれ5質量部、10質量部、20質量部、40質量部に変更して用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表2に記載した。
・実施例16
多官能化合物として、(s)−1(グリセロールトリグリシジルエーテル)を用い、参考例12に従い得られたCF−3に、参考例13に従い、サイジング処理をした。得られた連続炭素繊維束を、カートリッジカッターにて長さ6.4mmにカットした。次に日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、(a)成分として参考例1および参考例4に従い調製したCDI−PP1を3質量部、(b)成分としてPP2を80質量部混合し、メインホッパーから供給した。次いで、その下流のサイドホッパーから、(c)成分として、前記のカットした炭素繊維束を質量フィーダーにより20質量部となるように調整しながら供給し、バレル温度220℃、回転数150rpmで十分混練し、さらに下流の真空ベントより脱気を行った。溶融樹脂をダイス口(直径5mm)から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してペレット状とした。
多官能化合物として、(s)−1(グリセロールトリグリシジルエーテル)を用い、参考例12に従い得られたCF−3に、参考例13に従い、サイジング処理をした。得られた連続炭素繊維束を、カートリッジカッターにて長さ6.4mmにカットした。次に日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、(a)成分として参考例1および参考例4に従い調製したCDI−PP1を3質量部、(b)成分としてPP2を80質量部混合し、メインホッパーから供給した。次いで、その下流のサイドホッパーから、(c)成分として、前記のカットした炭素繊維束を質量フィーダーにより20質量部となるように調整しながら供給し、バレル温度220℃、回転数150rpmで十分混練し、さらに下流の真空ベントより脱気を行った。溶融樹脂をダイス口(直径5mm)から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してペレット状とした。
得られたペレット状の成形材料の滞留安定性を上記の滞留安定性評価に従い評価した。
次に押出工程で得られたペレット状の成形材料から、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:220℃、金型温度:60℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。
得られた特性評価用試験片(成形品)を用いて、上記の成形品評価方法に従い、曲げ強度、乾燥サンプルのIzod衝撃強度、吸水率、吸水サンプルのIzod衝撃強度および吸水サンプルの界面接着性を評価した。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および評価結果を表2に示した。
・実施例17
(a)成分としてU−PP1の代わりに、参考例2、参考例5および参考例8に従い調製したU−PP2を3質量部に変更して用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含量(計算値)および特性評価結果はまとめて表2に記載した。
(a)成分としてU−PP1の代わりに、参考例2、参考例5および参考例8に従い調製したU−PP2を3質量部に変更して用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含量(計算値)および特性評価結果はまとめて表2に記載した。
・実施例18
(a)成分としてU−PP1の代わりに、参考例3、参考例6および参考例9に従い調製したU−PP3を3質量部に変更して用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表2に記載した。
(a)成分としてU−PP1の代わりに、参考例3、参考例6および参考例9に従い調製したU−PP3を3質量部に変更して用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表2に記載した。
・実施例19
多官能化合物として、(s)−1(グリセロールトリグリシジルエーテル)を用い、GF−1 (ガラス繊維:日東紡績製240TEX、総単糸数 1600本)に参考例13に従い、サイジング処理をした。得られた連続ガラス繊維束を、カートリッジカッターにて長さ6.4mmにカットした。次に日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、(a)成分として参考例1、参考例4および参考例7に従い調整したU−PP1を10質量部、(b)成分としてPP2を80質量部混合し、メインホッパーから供給した。次いで、その下流のサイドホッパーから、(c)成分として、前記のカットしたガラス繊維束を質量フィーダーにより20質量部となるように調整しながら供給し、バレル温度220℃、回転数150rpmで十分混練し、さらに下流の真空ベントより脱気を行った。溶融樹脂をダイス口(直径5mm)から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してペレット状とした。
得られたペレット状の成形材料の滞留安定性を上記の滞留安定性評価に従い評価した。
多官能化合物として、(s)−1(グリセロールトリグリシジルエーテル)を用い、GF−1 (ガラス繊維:日東紡績製240TEX、総単糸数 1600本)に参考例13に従い、サイジング処理をした。得られた連続ガラス繊維束を、カートリッジカッターにて長さ6.4mmにカットした。次に日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、(a)成分として参考例1、参考例4および参考例7に従い調整したU−PP1を10質量部、(b)成分としてPP2を80質量部混合し、メインホッパーから供給した。次いで、その下流のサイドホッパーから、(c)成分として、前記のカットしたガラス繊維束を質量フィーダーにより20質量部となるように調整しながら供給し、バレル温度220℃、回転数150rpmで十分混練し、さらに下流の真空ベントより脱気を行った。溶融樹脂をダイス口(直径5mm)から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してペレット状とした。
得られたペレット状の成形材料の滞留安定性を上記の滞留安定性評価に従い評価した。
次に押出工程で得られたペレット状の成形材料から、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:220℃、金型温度:60℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。
得られた特性評価用試験片(成形品)を用いて上記の成形品評価方法に従い、曲げ強度、乾燥サンプルのIzod衝撃強度、吸水率、吸水サンプルのIzod衝撃強度および吸水サンプルの界面接着性を評価した。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および評価結果を表2に示した。
・比較例1
参考例10で得られたCF−1に、サイジング剤を付着させずにそのまま使用した以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表3に記載した。
参考例10で得られたCF−1に、サイジング剤を付着させずにそのまま使用した以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表3に記載した。
・比較例2
多官能化合物(s)−1の代わりに、サイジング剤として官能基を有さない(s)´−1(ポリブテン)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含量(計算値)および特性評価結果はまとめて表3に記載した。
多官能化合物(s)−1の代わりに、サイジング剤として官能基を有さない(s)´−1(ポリブテン)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含量(計算値)および特性評価結果はまとめて表3に記載した。
・比較例3
(a)成分としてU−PP1を10質量部に変更したこと以外は、比較例2と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表3に記載した。
(a)成分としてU−PP1を10質量部に変更したこと以外は、比較例2と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表3に記載した。
・比較例4,比較例5
(a)成分U−PP1の代わりに、参考例1および参考例4に従い調製したCDI−PP1を3質量部あるいは10質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表3に記載した。
(a)成分U−PP1の代わりに、参考例1および参考例4に従い調製したCDI−PP1を3質量部あるいは10質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、成形評価を行なった。ペレット中の樹脂成分に含まれるウレア基の含有量(計算値)および特性評価結果を表3に記載した。
<実施例1〜実施例7、比較例1および比較例2の比較>
ウレア変性ポリプロピレンを用い、サイジング剤として多官能化合物を用いた実施例1〜実施例7においては、滞留安定性に優れ、力学特性にも優れ、かつ吸水時でも衝撃強度の低下が少なく、耐水劣化性を有する成形品を得ることができた。
ウレア変性ポリプロピレンを用い、サイジング剤として多官能化合物を用いた実施例1〜実施例7においては、滞留安定性に優れ、力学特性にも優れ、かつ吸水時でも衝撃強度の低下が少なく、耐水劣化性を有する成形品を得ることができた。
一方、ウレア変性ポリプロピレンを用いても、サイジング剤を用いなかった比較例1や、官能基を有さないサイジング剤を用いた比較例2においては、力学特性に優れた成形品を得ることができるものの、吸水時に大幅に衝撃強度が低下し、耐水劣化性を有する成形品は得られなかった。
サイジング剤の種類としては、実施例1、実施例3および実施例4に示した3官能以上のエポキシ基を有する化合物が、特に力学特性および耐水劣化性に優れる傾向があった。
<実施例1、実施例12〜実施例16、比較例2、比較例3の比較>
成分(a)であるウレア変性ポリプロピレンの含有量は、成分(b)と成分(c)の合計100質量部に対して、3〜10質量部の範囲において、多いほど力学特性に優れる傾向があった。10〜40質量部の範囲においては、力学特性は10質量部で極大値を取り、その後減少する傾向にあった。これは、成形品の繊維含有率の低下の影響であると考えられる。一方、耐水劣化性は、多官能化合物を用いた実施例においてはウレア基含有ポリプロピレンの質量部が多いほど吸水時の力学特性に優れる傾向があったが、官能基を有さないサイジング剤を用いた比較例2および比較例3においては、いずれも、吸水時に大幅に衝撃強度が低下し、耐水劣化性を有する成形品は得られなかった。
成分(a)であるウレア変性ポリプロピレンの含有量は、成分(b)と成分(c)の合計100質量部に対して、3〜10質量部の範囲において、多いほど力学特性に優れる傾向があった。10〜40質量部の範囲においては、力学特性は10質量部で極大値を取り、その後減少する傾向にあった。これは、成形品の繊維含有率の低下の影響であると考えられる。一方、耐水劣化性は、多官能化合物を用いた実施例においてはウレア基含有ポリプロピレンの質量部が多いほど吸水時の力学特性に優れる傾向があったが、官能基を有さないサイジング剤を用いた比較例2および比較例3においては、いずれも、吸水時に大幅に衝撃強度が低下し、耐水劣化性を有する成形品は得られなかった。
<実施例1、実施例8、実施例16の比較>
用いる炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cは、0.03〜0.12の範囲において、高いほど、得られた成形品が力学特性および耐水劣化性に優れる傾向があった。
用いる炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cは、0.03〜0.12の範囲において、高いほど、得られた成形品が力学特性および耐水劣化性に優れる傾向があった。
<実施例1、実施例17、実施例18の比較>
実施例17について、U−PP2は、マトリックス樹脂成分に含まれるウレア基の含有量が0.0032であり、ポリオレフィン100gに含まれるウレア基含有量が0.09mmol/100gと低かった。実施例1と実施例17を比較すると、実施例1は実施例17よりもウレア基含有量が好ましい範囲にあるため、得られた成形品の力学特性、耐水劣化性はより優れていた。
実施例17について、U−PP2は、マトリックス樹脂成分に含まれるウレア基の含有量が0.0032であり、ポリオレフィン100gに含まれるウレア基含有量が0.09mmol/100gと低かった。実施例1と実施例17を比較すると、実施例1は実施例17よりもウレア基含有量が好ましい範囲にあるため、得られた成形品の力学特性、耐水劣化性はより優れていた。
実施例18について、U−PP3は、その原料であるMAH−PP3のMn/{(100−M)×f/M}の値が、10と高く、ゲル化をできるだけ抑制するためにカルボジイミド基含有化合物量を調整して製造したが、ややゲル化を伴うなど製造困難であった。また、実施例1と実施例18を比較すると、実施例1は実施例18よりもウレア基含有量が好ましい範囲にあるため、得られた成形品の力学特性および耐水劣化性はより優れていた。
<実施例1、実施例13、比較例4、比較例5の比較>
サイジング剤として多官能化合物を用いたが、ウレア変性ポリプロピレンを用いず、代わりにポリカルボジイミド変性ポリプロピレンを用いた比較例4および比較例5においては、曲げ強度、乾燥時の衝撃強度に優れた成形品を得ることができるものの、滞留安定性、耐水劣化性に劣るものであった。
サイジング剤として多官能化合物を用いたが、ウレア変性ポリプロピレンを用いず、代わりにポリカルボジイミド変性ポリプロピレンを用いた比較例4および比較例5においては、曲げ強度、乾燥時の衝撃強度に優れた成形品を得ることができるものの、滞留安定性、耐水劣化性に劣るものであった。
以上のように、実施例1〜実施例19においては滞留安定性に優れ、かつ成形品は力学特性に優れ、さらに吸水時でも強度低下が少なく、耐水劣化性を有することができた。
一方、比較例1〜5においては、力学特性に優れた成形品を得ることができるものの、吸水時に大幅に衝撃強度が低下して耐水劣化性を有さないか、滞留安定性に劣るものとなった。
Claims (9)
- ウレア変性ポリオレフィン(a)、ポリプロピレン系樹脂(b)および強化繊維(c)を含有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物であって、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物中のマトリックス樹脂成分に含まれるウレア基の含有量が、マトリックス樹脂成分100gに対し、0.0005〜140mmolであり、かつ前記強化繊維(c)が多官能化合物(s)によりサイジング処理されていることを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
- ウレア変性ポリオレフィン(a)、ポリプロピレン系樹脂(b)および強化繊維(c)を含有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物であって、(a)を0.01〜50質量部、(b)を20〜99質量部、(c)を1〜80質量部(ただし、(b)と(c)の合計を100質量部とする)含有し、かつ前記強化繊維(c)が多官能化合物(s)によりサイジング処理されていることを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
- 前記ウレア変性ポリオレフィン(a)において、該ウレア変性ポリオレフィン100グラムに含まれるウレア基の含有量が1〜200mmolである、請求項1または2に記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
- 強化繊維(c)が炭素繊維である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
- 前記多官能化合物(s)が、3官能以上の官能基を有する化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
- 前記多官能化合物(s)における官能基が、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびヒドロキシル基から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
- 前記多官能化合物(s)が、脂肪族エポキシ樹脂である、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
- 前記多官能化合物(s)が、ポリエチレンイミンである、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物。
- 前記炭素繊維のX線光電子分光法で測定される表面酸素濃度比O/Cが0.05〜0.5である、請求項4〜8のいずれかに記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物。
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JP2018159015A (ja) * | 2017-03-23 | 2018-10-11 | 新日鉄住金化学株式会社 | 炭素繊維強化樹脂組成物及び成形物 |
CN109206738A (zh) * | 2018-07-24 | 2019-01-15 | 江苏澳盛复合材料科技有限公司 | 一种高强度、高韧性的碳纤维增强聚丙烯注塑料 |
-
2016
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