JP2018159015A - 炭素繊維強化樹脂組成物及び成形物 - Google Patents

炭素繊維強化樹脂組成物及び成形物 Download PDF

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Abstract

【課題】曲げ強度や曲げ弾性率等の機械特性が向上したポリオレフィン系炭素繊維強化樹脂組成物を提供する。【解決手段】炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂、及び密着性付与剤を含む炭素繊維強化樹脂組成物であって、密着性付与剤が、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂の反応で得られ、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位、エポキシ樹脂単位及び結合単位からなるものであり、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位がエステル構造からなる結合単位で結合されており、エポキシ樹脂単位中に2級水酸基が含有されることを特徴とする炭素繊維強化樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオレフィン系樹脂をマトリックス樹脂とする炭素繊維強化樹脂組成物に関し、特に曲げ強度や曲げ弾性率等の機械特性が向上した成形物を与える炭素繊維強化樹脂組成物に関する。
近年、炭素繊維強化樹脂組成物は、強度、剛性、低比重、耐摩耗性等の機械特性が評価され工業的に重要な材料として注目されている。特に自動車部品や電子材料製品の分野においては、炭素繊維の高剛性に着目した樹脂組成物が金属材料やガラス繊維強化樹脂組成物の代替材料として検討されている。しかし、炭素繊維とバインダー樹脂としても機能するマトリックス樹脂との密着性が不十分であることにより、炭素繊維の高剛性を十分に活かしきれていないのが現状である。
一般に、ガラス繊維強化樹脂組成物の高強度化については、ガラス繊維(GF)が、その表面にシラノール基を有することから、GFにアミノシランカップリング剤による表面処理とマトリックス樹脂にカルボン酸等により変性したポリオレフィン樹脂を添加することで、マトリックス樹脂と強化繊維の界面強度を向上させることによって達成されている。しかしながら、炭素繊維はGFと異なり、表面にシラノール基を持たないため、同様の手法を炭素繊維に適用することはできない。
炭素繊維(CF)には含浸開繊時の炭素繊維の取り扱いを容易にしたり、樹脂との濡れ性を向上させるためにいろいろなサイジング剤(例えば、特許文献1)を使用している。特許文献2では、サイジング剤で処理した炭素繊維に無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含浸処理した炭素繊維樹脂組成物を開示しており、これにより含浸性は向上しているが、強度は不足していた。
低分子化合物を使用することにより炭素繊維樹脂組成物の強度向上を目指した例として、特許文献3がある。この文献には、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸を反応させて得られる変性ポリオレフィンを使用し、無機繊維、多官能エポキシ化合物を配合してなるポリオレフィン系樹脂組成物が開示され、実施例には無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン、炭素繊維、トリグリシジルイソシアヌレートの樹脂組成物も開示されている。しかし、変性ポリプロピレン混合物を樹脂成分として、無機繊維、多官能エポキシ化合物に単に配合しているため、十分な強度、剛性を得ていない。
特開2002−13069号公報 特開2003−277525号公報 特開昭58−204020号公報
本発明は、上記現状に鑑み、ポリオレフィン系炭素繊維強化樹脂組成物の機械特性、特に曲げ強度や曲げ弾性率等を向上させることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ね、炭素繊維との密着性が優れる−CH−CH(OH)−CH−基を有するエポキシ樹脂構造単位とポリオレフィン系樹脂との相溶性が優れるポリオレフィン系樹脂構造とがエステル構造で結合されている密着性付与剤が、炭素繊維とポリオレフィン系樹脂との界面密着性を高めることで、目的とする機械物性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂、及び密着性付与剤を含む炭素繊維強化樹脂組成物であって、密着性付与剤が、エステル構造で結合された酸変性ポリオレフィン系樹脂由来の成分及びエポキシ樹脂由来の成分からなり、エポキシ樹脂由来の成分が2級水酸基を含有することを特徴とする炭素繊維強化樹脂組成物である。
上記炭素繊維強化樹脂組成物は、以下のいずれか一つ以上を満たすことが望ましい。
1)密着性付与剤の170℃での溶融粘度が50〜1,500Pa・sであること。
2)炭素繊維の配合量が、炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂及び密着性付与剤の合計量に対し、1〜80質量%であること。
3)密着性付与剤の配合量が、炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂及び密着性付与剤の合計量に対し、1〜19.9質量%であること。
4)ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂であること。
5)酸変性ポリオレフィン系樹脂が、酸変性ポリプロピレン系樹脂であること。
本発明の他の態様は、上記炭素繊維強化樹脂組成物を成形してなる成形物である。
本発明によれば、曲げ強度や曲げ弾性率等の機械特性が向上したポリオレフィン系炭素繊維強化樹脂組成物を提供することができる。本発明のポリオレフィン系炭素繊維強化樹脂組成物からなる成形物は、自動車部品、二輪・自転車部品等、特に剛性や耐久性の要求される部品等に好適に用いることができる。
合成例2の密着性付与剤(C−2)のFT−IRのチャートである。 合成例7の密着性付与剤(SC−2)のFT−IRのチャートである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、(A)炭素繊維、(B)ポリオレフィン系樹脂、及び(C)密着性付与剤を含み、(C)密着性付与剤がエステル結合とポリオレフィン由来の構造と−CH−CH(OH)−CH−基(以下、2級水酸基ともいう。)を含むエポキシ樹脂単位を同時に有する。以下、炭素繊維を(A)成分、ポリオレフィン系樹脂を(B)成分、及び密着性付与剤を(C)成分ともいう。
先ず、本発明の組成物の必須構成成分である(A)炭素繊維、(B)ポリオレフィン系樹脂、及び(C)密着性付与剤について説明する。
(A)成分の炭素繊維は、従来公知の種々の炭素繊維を使用することができ、市販のものを好適に用いることできる。例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、気相成長系炭素繊維、及びこれらの黒鉛化繊維が挙げられる。なお、PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリル繊維を原料とする炭素繊維であり、ピッチ系炭素繊維は、石油タールや石油ピッチを原料とする炭素繊維であり、セルロース系炭素繊維は、ビスコースレーヨンや酢酸セルロース等を原料とする炭素繊維であり、気相成長系炭素繊維は、炭化水素等を原料とする炭素繊維である。本発明で使用する炭素繊維の種類は、特に制限はない。また、この炭素繊維は単独で使用するのみならず、複数の種類のものを混合して使用しても良い。
炭素繊維の形態は特に限定するものではなく、種々の形態等を好適に用いることができる。単繊維が収束されてなるトウの形態、繊維束が任意の長さに切断されたチョップドの形態、チョップドよりも更に細かく分断されたミルドの形態、繊維束を編み織物状としたクロスの形態、トウを開繊し一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、短繊維状の炭素繊維をマット又は不織布状に加工した形態等が挙げられる。樹脂組成物と複合化し炭素繊維強化樹脂組成物とする際の加工性の観点からは、その加工法により好適な形態の炭素繊維原料が種々用いられる。一方で、炭素繊維強化樹脂組成物を成形し、成形物とした際の強度発現の観点からは、繊維長が長い原料であることが好ましく、特にトウの形態が好ましい。
炭素繊維の繊維直径は、特に限定するものではないが、通常市販されている直径のものであれば好適に用いることができる。通常市販されている炭素繊維の直径はPAN系炭素繊維であれはポリアクリロニトリル、ピッチ系炭素繊維であればメゾフェーズピッチといった原糸の直径に大きく依存する。繊維直径の好適な範囲は3〜30μm程度であり、好ましくは5〜20μmである。繊維径が小さすぎると、炭素繊維の製造の際に破損しやすく製造が困難となる恐れや炭素繊維が破損しやすいため、強化繊維束の生産性が低下する恐れがある。また、ペレットを連続製造するときに、炭素繊維を多数本束ねなければならなくなり、繊維束をつなぐ煩雑な手間が必要となり、生産性が低下する恐れがある。また、繊維径が大きすぎると、炭素繊維強化樹脂組成物を成形し成形物とした際の炭素繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維直径)が低下することとなり、補強効果が充分発揮されなくなる恐れがある。
ここで、繊維直径とは、繊維束を構成するモノフィラメント数で平均化した平均直径のことをいう。モノフィラメント直径とは、モノフィラメントを繊維軸方向と垂直方向にカットした際に得られる断面の長手方向と短手方向の平均値とする。また、炭素繊維の円周方向の断面形状は特に限定するものではない。真円でもよく、楕円でもよい。また円周部に凹凸が有る波状形状でも構わない。凹凸はモノフィラメント直径に対して10%以内程度であればよい。このような円周方向の表面に凹凸形状が有る炭素繊維としては、例えばTR50S(三菱レイヨン株式会社製)等が挙げられる。
炭素繊維の繊維長は、特に限定するものではないが、基本的には成形した際の成形物の強度発現の観点からなるべく長いことが好ましく、例えば0.1mm以上の繊維長であることが好ましい。しかしながら一方で、炭素繊維強化樹脂組成物の寸法を大きく上回る長さのモノフィラメント、又は炭素繊維束が炭素繊維強化樹脂組成物中に曲りくねった形で存在していた場合は、成形等の二次加工が難しくなる恐れがあり好ましくない。従って、炭素繊維強化樹脂組成物の寸法の内、最も長い距離の2倍以内の長さであることが繊維長上限値の一つの目安であるが、これは特に上限値を設定するものではない。
ここで、繊維長とは、炭素繊維強化樹脂組成物に含まれる繊維を任意に100本以上抽出して長さを測定し、その平均繊維長のこととする。
炭素繊維のアスペクト比は特に制限を設けるものではないが、5〜6000程度が好ましい。アスペクト比が小さすぎると強度が低下し、大きすぎると成形性が低下する恐れがある。
炭素繊維の表面は、酸化エッチングや被覆等で表面処理を行ったものが好ましい。酸化エッチング処理としては、空気酸化処理、酸素処理、酸化性ガスによる処理、オゾンによる処理、コロナ処理、火炎処理、(大気圧)プラズマ処理、酸化性液体(硝酸、次亜塩素酸アルカリ金属塩の水溶液、重クロム酸カリウム−硫酸、過マンガン酸カリウム−硫酸)等が挙げられる。炭素繊維を被覆する物質としては、炭素(グラフェン等)、炭化珪素、二酸化珪素、珪素、プラズマモノマー、フェロセン、三塩化鉄等が挙げられる。
一方、被覆等の表面処理としては、いわゆるサイジング処理が挙げられる。接着性や収束性、濡れ性の向上を目的として、後述する種々のエポキシ化合物等を1種類または2種類以上を組み合わせることで処理しても良い。また、必要に応じてウレタン系、オレフィン系、アクリル系、ナイロン系、ブタジエン系、又はエポキシ系等の収束剤を使用してもよい。
(B)成分のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等)、高密度ポリエチレン樹脂等が挙げられ、ポリプロピレン樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としてのポリプロピレン樹脂には、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体等があるが、いずれを用いてもよいが、好ましくは、プロピレン単独重合体である。なお、ポリオレフィン系樹脂は変性された樹脂であっても良いが、このような樹脂は一般に高価であるため、上記のような汎用の未変性樹脂(単独又は共重合体)が適する。特に、エポキシ基と反応性の官能基を実質的に有しないことがよい。
ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、通常1〜600g/10分、好ましくは10〜250g/10分、更に好ましくは20〜200g/10分である。MFRが1g/10分以下であると成形体中の強化繊維の分散性が低下し、成形体の外観不良が見られることがあり、MFRが600g/10分より大きいと衝撃強度が低下する。ポリオレフィン系樹脂のMFRは、JIS K 7210−1999に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。
上記ポリオレフィン系樹脂は、特開平5−32723号公報、特開平11−71431号公報、特開2002−249624号公報に記載の方法等により製造できる。即ち、ポリオレフィン樹脂は、重合触媒を用いてプロピレン等をスラリー重合、気相重合、又は液相塊状重合することにより製造でき、このようなプロピレン重合体を製造する重合方式としては、バッチ重合、連続重合のいずれの方式も使用することができる。ポリオレフィン樹脂の重合時の分子量は、特開2002−226510号公報に記載されているように水素量等で調整できる。
(C)成分の密着性付与剤は、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位及びエポキシ樹脂単位を有し、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位がエステル構造で結合されており、エポキシ樹脂単位中に上記2級水酸基を含有する。エステル構造は、酸変性ポリオレフィン系樹脂のカルボキシル基又は酸無水物基と、エポキシ樹脂のエポキシ基又はヒドロキシから生じる結合単位であり、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位は結合単位に係る部分を除いた単位であると理解される。なお、エポキシ樹脂は、エステル構造を形成する際、エポキシ基が開環するが、開環で生成した部位で、エステル構造に関与しない部位は、エポキシ樹脂単位に含まれる。酸変性ポリオレフィン系樹脂単位中には、エステル結合の生成に関与しない未反応カルボキシル基が存在してもよく、エポキシ樹脂単位には同様に未反応エポキシ基と2級水酸基が存在してもよい。
この密着性付与剤は、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂との付加反応で得ることができるが、この方法に限定されない。しかし、密着性付与剤の構造の説明のために、製造方法が参照される。
上記2級水酸基は、炭素繊維又はそのサイジング材の表面に存在する官能基と水素結合により密着性を向上させる。また、ポリオレフィン由来の構造単位は、ポリオレフィン系樹脂と相溶性を向上させる。密着性付与剤を使用することにより炭素繊維とポリオレフィン系樹脂間での界面強度を強固なものとし、これから得られる成形物の強度を向上させる。
密着性付与剤を酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂との反応で得る場合は、反応生成物から未反応の原料(エステル結合で結合されていない酸変性ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂)を除去したものが好ましいが、少量の原料が残存した混合物であってもよい。反応生成物におけるエステル結合の存在は、IR吸収スペクトル測定によって、その有無を確認することができる。反応生成物を溶解する溶媒は通常無いため、IR吸収スペクトルの測定は、フィルム状にした後、反射法によって行われる。そのため、吸収スペクトルのピークの定量性はないが、エステル結合のピークの有無は確認可能であるので、エステル構造の存在はこれにより判定される。
酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂との反応はいくつかあるが、以下の反応式(1)、(2a)又は(2b)で表わされる反応が代表的である。
反応式(1)は、酸変性ポリオレフィン系樹脂がカルボキシル基を有する場合であり、酸変性ポリオレフィン系樹脂のカルボキシル基とエポキシ樹脂のエポキシ基との付加反応によりエステル結合を生じてエステル構造を与える。同時にエポキシ基が開環して2級水酸基構造が生じる。ここで、エステル構造は結合部にある構造であり、2級水酸基構造はエポキシ樹脂単位に属する構造である。なお、原料のエポキシ樹脂は、フェノール類とエピクロルヒドリン等から生じる場合は、生成したエポキシ基とOH基が反応して、開環重合した構造単位を有することがあるが、これも本発明でいう2級水酸基構造となる。密着性付与剤が有する2級水酸基構造は、エステル構造に隣接する部位にあってもよく、原料のエポキシ樹脂の内部にあってもよいが、2級水酸基構造が増えるという観点からは両方に存在することが好ましい。
反応式(2a)又は反応式(2b)は、酸変性ポリオレフィン系樹脂が酸無水物基(無水カルボン酸基)を有する場合を例示している。この場合、酸無水物基が式(2a)に示すように、原料又は空気中の水分により開環して2個のカルボキシル基になった後、式(1)の反応が起こりエステル結合を形成する場合と、式(2b)に示すように、酸無水物基とエポキシ樹脂の水酸基が付加反応によりエステル結合を形成する場合がある。ここで、エポキシ樹脂の水酸基とは、2級水酸基やエポキシ基の不純物であるαグリコール成分(−CH−CH(OH)−CH−OH)の水酸基である。
式(2b)の場合は、そこに示されるようにエステル結合を形成するが、2級水酸基は生成せず、むしろ原料エポキシ樹脂が有する2級水酸基が減ることになるが、この反応では、必ずカルボキシル基が生成されるため、反応式(1)と同様なエポキシ基との付加反応が並行して起こり、別の2級水酸基が生じる。
したがって、酸変性ポリオレフィン系樹脂はカルボキシル基変性であっても、酸無水物基変性であってもいずれでもよいが、2級水酸基の観点からは前者が好ましい。
その他、カルボキシル基と2級水酸基との反応等も起こり得る。
Figure 2018159015
Figure 2018159015
式中、(Ep)はエポキシ樹脂を表し、(Po)は酸変性ポリオレフィン樹脂を表す。
密着性付与剤の170℃での溶融粘度は、好ましくは50〜1,500Pa・s、より好ましくは75〜1,000Pa・s、更に好ましくは100〜800Pa・sである。170℃での溶融粘度が50Pa・s未満の場合、炭素繊維とポリオレフィン系樹脂との密着性が不十分となり満足な強度の成形物が得られない恐れがある。また、1,500Pa・sを越えた場合、含浸性が低下し後述する繊維強化樹脂ペレットの製造が困難になる恐れがある。なお、170℃での溶融粘度の測定方法は、実施例に記載の測定方法に従う。
密着性付与剤のエステル結合は、IR吸収スペクトルを測定することで、C=O伸縮による吸収が1735〜1750cm−1に観測できることで確認できる。図面を参照して説明すると、図1の矢印で示すピークが、エステル結合を示すC=O伸縮による吸収ピークである。他方、図2では、同じ波数域において同様な吸収ピークは観測できない。なお、原料の酸変性ポリオレフィン系樹脂のカルボン酸のC=O伸縮による吸収は、1700〜1720cm−1に観測でき、無水カルボン酸のC=O伸縮による吸収は、1750〜1800cm−1に観測できる。
上記−CH−CH(OH)−CH−構造は、IR吸収スペクトルを測定することで、O−H伸縮による吸収が3200〜3600cm−1にブロードなピークとして観測できることで確認できる。但し、この吸収はエポキシ樹脂にも認められ、酸変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ樹脂とを反応せずに混合しただけの混合物でも認められる。
ポリオレフィン由来の構造は、IR吸収スペクトルを測定することで、C−C変角振動による吸収が800〜1200cm−1に、C−H変角振動による吸収が1300〜1600cm−1に、C−H伸縮による吸収が2800〜3000cm−1に観測できることで確認できる。但し、この吸収は酸変性ポリオレフィン樹脂にも認められ、酸変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ樹脂とを反応せずに混合しただけの混合物でも認められる。
密着性付与剤において、エポキシ樹脂由来の成分が2級水酸基を含有しており、こうしたエポキシ樹脂由来の2級水酸基としては、エポキシ樹脂が当初から骨格中に含む2級水酸基及びカルボン酸基とエポキシ基との反応の際にエポキシ基が開環したことによって生成した2級水酸基がある。この水酸基当量(g/eq.)は、後述するとおり、原料エポキシ樹脂において、100〜1000、好ましくは150〜800、より好ましくは200〜500である。水酸基当量が大き過ぎると、炭素繊維又はそのサイジング材の表面に存在する官能基との水素結合による密着性向上が不十分となる一方、小さ過ぎると、溶融粘度が高くなり含浸性が低下してしまう。なお、水酸基当量の測定方法は、実施例に記載の測定方法に従う。
本発明で使用する密着性付与剤は、定かではないが、以下のような機構によって本発明の効果を発現すると解することができる。すなわち、酸変性ポリオレフィン系樹脂のカルボン酸基とエポキシ樹脂のエポキシ基との付加反応によって、両者がエステル構造で結合すると共に、エポキシ基由来の2級水酸基を生成する。その結果、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂とがエステル構造によって結合すると共に、エポキシ樹脂が当初から骨格中に含む2級水酸基及びカルボン酸基とエポキシ基との反応によって生成した2級水酸基が、炭素繊維との密着性を高める一方、ポリオレフィン系樹脂由来の構造が、ポリオレフィン系樹脂との相溶性を高めることにより、炭素繊維強化樹脂組成物の強度、剛性の向上に大きく寄与できるものと考えられる。
密着性付与剤は、上記構造単位を有し、これらがエステル構造で結合し、エポキシ樹脂構造単位中に−CH−CH(OH)−CH−構造を有していれば、どのような製法で得られたものでも良いが、後述する製法で得られたものが好ましい。
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂であることがよく、ポリオレフィン系樹脂中にカルボキシル基や無水カルボン酸基を有するものである。これらの樹脂は特開昭58−17156号公報、特開平4−198243号公報、特開2006−249340号公報に記載の方法等により製造できる。即ち、不飽和カルボン酸で変性させる場合は、その不飽和結合がポリオレフィン系樹脂と反応することにより、ポリオレフィン系樹脂にカルボキシル基や無水カルボン酸基が結合した酸変性ポリオレフィン系樹脂となる。また、モディックP502、モディックP553A、モディックP565(以上、三菱化学株式会社製)、ユーメックス1001、ユーメックス1010、ユーメックス100TS、ユーメックス2000(以上、三洋化成工業株式会社製)、PMA H1000P(東洋紡株式会社製)等の市販品を使用することもできる。
酸変性に使用される原料ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしては、例えば1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等)、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられ、ポリプロピレン樹脂が特に好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂には、ポリオレフィン単独重合体、ポリオレフィンランダム共重合体、ポリオレフィンブロック共重合体等があるが、いずれを用いてもよい。好ましくは、プロピレン単独重合体である。なお、原料ポリオレフィン系樹脂は変性された樹脂であっても良いが、このような樹脂は一般に高価であるため、上記のような汎用の未変性樹脂(単独又は共重合体)が適する。ポリオレフィン系樹脂の変性には、グラフト変性や共重合化等の方法を使用することができる。
ポリオレフィン系樹脂を酸変性するために用いる不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。また、その不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物等があり、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸等が挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸及びその誘導体が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、(メタ)アクリル酸変性ポリオレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、又は無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましく、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂又は無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂がより好ましく、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が更に好ましい。ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン樹脂であることが特に好ましい。
酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸当量(g/eq.)は、好ましくは500〜200,000、より好ましくは1,000〜100,000、更に好ましくは2,000〜80,000である。なお、酸当量の測定方法は、実施例に記載の測定方法に従う。なお、酸変性ポリオレフィン系樹脂が酸無水物で変性されている場合は、酸無水物当量としてではなく、酸無水物が開環した2個のカルボン酸として評価するため、酸当量は酸無水物当量の半分の値となる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂の170℃での溶融粘度は、好ましくは0.1〜1,000Pa・s、より好ましくは0.5〜950Pa・s、更に好ましくは1〜900Pa・s、である。なお、溶融粘度の測定方法は、上記と同様である。
もう一方の原料であるエポキシ樹脂は、エポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、エポキシ基を2個以上含有する多官能エポキシ樹脂が好ましく、2級水酸基を有する2官能エポキシ樹脂が特に好ましい。例えば、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルアミン化合物、ポリグリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物、その他変性エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、同一系のエポキシ樹脂を2種類以上併用して使用しても良く、また、異なる系のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明で使用するエポキシ樹脂には、いわゆるフェノキシ樹脂と称する高分子量エポキシ樹脂も含まれる。また、フェノキシ樹脂の骨格は特に制限はなく、様々な構造が使用できるが、ビスフェノールA骨格の構造が好ましい。
ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、α−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリグリシジルアミン化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリグリシジルエステル化合物としては、例えば、ダイマー酸型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、トリメリット酸型エポキシ樹脂等が挙げられる。
脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021(ダイセル化学工業株式会社製)等の脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。
その他変性エポキシ樹脂としては、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性メラミン樹脂、ポリビニルアレーンポリオキシド(例えば、ジビニルベンゼンジオキシド、トリビニルナフタレントリオキシド等)、リン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、好ましくは500〜40,000、より好ましくは1,000〜35,000、更に好ましくは2,000〜30,000である。エポキシ当量が小さすぎると成形物の耐熱性が悪化する恐れがある。また、大きすぎると、分子量が増大したものを原料に使用することになり、含浸性が低下し後述する繊維強化樹脂ペレットの製造が困難になる恐れがある。
このエポキシ樹脂のアルコール性水酸基当量は、好ましくは100〜1,000、より好ましくは150〜800である。アルコール性水酸基のほとんどは2級水酸基によるものであるが、エポキシ基の不純物であるαグリコール成分も含まれる。2官能エポキシ樹脂の場合、分子量が長いほど、2級水酸基の値となり末端基の不純物であるαグリコール成分は無視できる。この範囲であれば、密着性付与剤としてエポキシ樹脂構造単位が炭素繊維との密着性の向上効果を十分に発現できる。
エポキシ樹脂の170℃での溶融粘度は、好ましくは1〜5,000Pa・s、より好ましくは10〜4,000Pa・s、更に好ましくは50〜3,000Pa・sである。溶融粘度が高すぎると、分子量が増大したものを原料に使用することになり、含浸性が低下し後述する繊維強化樹脂ペレットの製造が困難になる恐れがある。なお、溶融粘度の測定方法は、上記と同様である。
酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂を反応させる場合の配合割合は、酸変性ポリオレフィン系樹脂のカルボキシル基(AE)とエポキシ樹脂のエポキシ基(EE)とのモル比(AE/EE)を調整することが望ましく、好ましくは1/1〜100/1、より好ましくは1.5/1〜90/1、更に好ましくは2/1〜50/1である。この範囲であれば、両者の反応が確実に進行し、目的とする密着性付与剤を得ることができる。酸無水物基の場合は、酸無水物基1モルをカルボキシル基2モルと計算する。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分を含む。炭素繊維(A)は強化材として機能し、ポリオレフィン系樹脂(B)はマトリックス樹脂組成物の主成分となり、密着性付与剤(C)はマトリックス樹脂組成物中にあって、炭素繊維とマトリックス樹脂組成物の密着性を改善する。なお、マトリックス樹脂組成物は、バインダー樹脂組成物として機能してもよい。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物における上記(A)〜(C)成分の配合割合は、質量%比で、以下の範囲とすることが好適である。
好ましくは、
(A):[(B)+(C)]=1〜80:99〜20
[(A)+(B)]:(C)=80.1〜99:19.9〜1
より好ましくは、
(A):[(B)+(C)]=1〜60:99〜40
[(A)+(B)]:(C)=80.1〜99:19.9〜1
更に好ましくは、
(A):[(B)+(C)]=2〜50:98〜50
[(A)+(B)]:(C)=85〜98:15〜2
特に好ましくは、
(A):[(B)+(C)]=10〜40:90〜60
[(A)+(B)]:(C)=85〜98:15〜2
である。
炭素繊維の割合が1質量%未満では、炭素繊維による樹脂の強化効果が現れず、80質量%を超えると、靱性が失われる恐れがある。
炭素繊維と、マトリックス樹脂組成物(樹脂成分ともいう。)となるポリオレフィン系樹脂と密着性付与剤との合計量に対する密着性付与剤の割合が、1質量%未満であると、密着性付与剤による炭素繊維とポリオレフィン系樹脂と密着性向上効果が不十分であり、19.9質量%を超えると、成形物の耐熱性が悪化する恐れがある。
なお、本発明の炭素繊維強化樹脂組成物には、その他、用途に応じて様々なポリオレフィン樹脂以外の熱可塑性樹脂や添加剤、例えば、分散剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、リン酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤)、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化促進剤(増核剤)、発泡剤、架橋剤、抗菌剤等の改質用添加剤、顔料、染料等の着色剤、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、アゾ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、クレー等の粒子状充填剤、ワラストナイト等の短繊維状充填剤、チタン酸カリウム等のウィスカー等を添加することができる。これらの添加剤は、ペレット製造時に添加してペレット中に含有させるか、ペレットから成形体を製造するときに添加してもよい。
次に、本発明の炭素繊維強化樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物の製造方法については、特に限定するものではないが、従来公知の方法を好適に用いることができる。単繊維が収束されてなるトウの形態、繊維束が任意の長さに切断されたチョップドの形態、チョップドよりも更に細かく分断されたミルドの形態等の炭素繊維に樹脂を含浸させ複合化させることにより、押出・射出成形が可能ないわゆる炭素繊維強化ペレットとする製造方法や、繊維束を編み織物状としたクロスの形態、トウを開繊し一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、短繊維状の炭素繊維をマット又は不織布状に加工した形態等の炭素繊維に樹脂を含浸させ複合化させることにより、プレス成型が可能ないわゆるプリプレグシート・スタンパブルシートとする製造方法等が挙げられる。成形加工性と強度発現の両立の観点から炭素繊維強化ペレットが好ましく、特にトウを用い炭素繊維強化ペレットとしたいわゆる長繊維強化ペレットが特に好ましい。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物を、短繊維強化樹脂ペレットとして得る場合は、押出し機等に上記(A)〜(C)成分の一部又は全部を溶融混練して製造することができ、長繊維強化樹脂ペレットである場合は、引き抜き法等公知の方法で製造することができる。上記(A)〜(C)成分の一部を別途溶融混練した後、混合(ブレンド)してもよい。
繊維強化樹脂ペレットの変形としては、パウダー状、フレーク状でも構わない。
長繊維強化樹脂ペレットは、組成物中の繊維のアスペクト比が大きくなり、強度が高い組成物を得やすいため、より顕著な効果が得られる。長繊維強化樹脂ペレットのペレット長は通常2〜200mmであり、10〜30mm程度のものが市販されており、これらを好適に用いることができる。ペレット長が長いほど、ペレットに含まれる繊維長が長いため強度発現の観点からは好ましい。長すぎると成形が困難となる場合があるが、成形性が担保される成形方法であればよく特に上限は設ける必要はない。ペレット長が短すぎると、剛性、耐熱性及び機械特性の改良効果が低く、反り変形も大きくなる恐れがある。ペレット長は特に限定しないが、好ましくは10mm以上、より好ましくは12mm以上、更に好ましくは15mm以上である。ペレット中の炭素繊維はペレットの長手方向に対し水平な方向に互いにほぼ平行な状態で配列していることがより繊維長が長いため好ましい。
長繊維強化樹脂ペレットは、数千本からなる強化繊維のロービングを含浸ダイスに導き、フィラメント間に溶融樹脂を均一に含浸させた後、必要な長さ(例えば、2〜200mm)に切断することにより容易に得ることができる。例えば、押出機先端に設けられた含浸ダイス中に、押出機から上記(B)及び(C)成分を含む溶融樹脂を供給する一方、連続状繊維束を通過させ、この繊維束に溶融樹脂を含浸させたのちノズルを通して引抜き、必要な長さにペレタイズする。(B)成分及び(C)成分をドライブレンドして押出機のホッパーに投入し、溶融混合又は変性も同時に行いながら供給する方法も取り得る。
溶融樹脂を炭素繊維に含浸させるための方法としては、特に制限はなく、強化繊維ロービングを樹脂粉体流動床に通した後、樹脂の融点以上に加熱する方法(特公昭52−3985号公報)、クロスヘッドダイを用いて強化繊維のロービングに溶融樹脂を含浸させる方法(特開昭62−60625号公報、特開昭63−132036号公報、特開昭63−264326号公報、特開平1−208118号公報)、樹脂繊維と強化繊維のロービングとを混繊した後、樹脂の融点以上に加熱して樹脂を含浸させる方法(特開昭61−118235号公報)、ダイ内部に複数のロッドを配置し、これにロービングをジグザグ状に巻き掛けて開繊させ、溶融樹脂を含浸させる方法(特開平10−264152号公報)、開繊ピンの間をピンに接触せずに通過させる方法(WO97/19805号公報)等、何れの方法も用いることができる。
樹脂を溶融する過程において、2以上のフィード部を持つ押出機を使用し、トップフィードから、樹脂と有機過酸化物等の樹脂の分解剤等の添加剤を、サイドフィードから別の樹脂を投入してもよい。樹脂分解剤の添加によって、ポリオレフィン系樹脂を若干分解し分子量を小さくして、含浸性を高めることができる。
また、2台以上の押出機(押出し部)を使用し、そのうち1台以上の押出機には樹脂と樹脂の分解剤を投入してもよい。更に、押出機の少なくとも1箇所に樹脂と樹脂の分解剤を投入してもよい。
短繊維強化樹脂ペレットは、各成分を所定の割合にてロールミル、バンバリーミキサー、ニーダー等でよく混練分散して製造することができる。タンブラー式ブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等でドライブレンドしてもよい。一軸押出機、二軸押出機等で混練してペレット状の成形材料とする。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物を成形することによって成形物を得ることができる。本発明の成形物を成形する方法としては、射出成形法、押出成形法、中空成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、ガス注入射出成形法、発泡射出成形法等の公知の成形法をなんら制限なく適用できる。特に射出成形法、圧縮成形法及び射出圧縮成形法が好ましい。成形温度は、通常、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160℃〜220℃の範囲で行うことができる。そのため、樹脂成分は、こうした成形温度域において適切な溶融粘度を示す材料が選定される。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物である繊維強化樹脂ペレットには、組成割合を調整するために、繊維強化樹脂ペレットと同じポリプロピレン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる希釈剤を配合することができる。希釈剤との配合は、ドライブレンド方式を用いることができる。組成物中の繊維長を保持し、より高い剛性、耐衝撃性、耐久性の改良効果を得るために、ドライブレンド後は、押出機を通さず、直接射出成形機等の成形機に供する方が好ましい。希釈剤の配合比率については、繊維強化樹脂組ペレットの強化繊維含有量と、最終成形品に求められる強化繊維含有量とによって決まるが、剛性、耐衝撃性、耐久性の改良効果の点から、通常は20〜80質量%の範囲が好ましい。
成形後に存在する炭素繊維の平均繊維長は、短すぎると剛性、強度、耐衝撃性等の改良効果が得られにくくなるため好ましくなく、0.1mm以上が好ましい。強度発現の観点からは長ければ長いほど好ましい。しかしながら、成形物の寸法を大きく上回る長さの炭素繊維が成形物中に曲りくねった形や無数に交錯した形で存在する場合、炭素繊維同士の間に空隙ができ易く、成形物中に樹脂が未含浸となる空隙領域、いわゆるボイドが発生する確率が高まり、強度低下を招く恐れがある。従って、成形物の寸法の内、最も長い距離の2倍以内の長さであることが繊維長上限値の一つの目安であるが、これは特に上限値を設定するものではない。
本発明で使用する密着性付与剤の製造方法は、特に限定するものではないが、従来公知の2種類以上の重合体を化学結合させブレンドポリマーを作成するいわゆるポリマーアロイの製造方法を好適に用いることができる。特に、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂を含む各成分を均一に混合反応させる方法が望ましい。例えば、単軸又は二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー又はミキシングロール等、公知の溶融混練機を用いることができる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂との配合割合は、酸変性ポリオレフィン系樹脂のカルボキシル基(AE)とエポキシ樹脂のエポキシ基(EE)とのモル比(AE/EE)を調整することが望ましく、好ましくは1/1〜100/1、より好ましくは1.5/1〜90/1、更に好ましくは2/1〜50/1である。
モル比(AE/EE)が少なすぎると、密着性付与剤のポリオレフィン系樹脂に対する相溶性が低下することにより、密着性付与剤とポリオレフィン系樹脂との間の界面強度が低下し、成形物の機械強度が低下する恐れがある。また、多すぎると、密着性付与剤が、極性樹脂であるエポキシ樹脂を核(コア)とし、両親媒性を有する酸変性ポリオレフィン樹脂を殻(シェル)とするコアシェル構造の形態となる場合がある。この様な形態をとった場合、密着性付与剤がポリオレフィン系樹脂中に存在することになるため、密着性付与剤中のエポキシ樹脂構造単位が炭素繊維と接触することができず、その機能が発現されない恐れがある。
なお、上記反応式(2b)のように、酸変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ樹脂の反応では、エポキシ樹脂が有する水酸基と反応してエステル結合になる場合もあるが、本発明の製造方法では、酸変性ポリオレフィン樹脂のカルボキシル基はエポキシ樹脂のエポキシ基と優先的にエステル化反応を起こすことから、エポキシ樹脂に含まれる水酸基との反応はほとんど起こらない。そのため、酸変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ樹脂との配合割合は、上記(AE)と(EE)の比で管理することが好ましい。
反応温度は特に限定しないが、通常150〜250℃であり、好ましくは160〜200℃、より好ましくは165〜180℃である。原料酸変性ポリオレフィン系樹脂の融点より15〜20℃高い温度が特に好ましい。反応温度が150℃未満の場合、酸変性ポリオレフィン系樹脂が融解しないため均一に溶融混合できない恐れがある。また反応温度が250℃を越える場合、分子鎖の切断による分子量低下が生じ、成形物の強度低下を招く恐れがある。
反応時間は特に限定しないが、通常の溶融混錬の場合は1〜30分間程度であればよい。反応温度にもよるが短すぎる場合は各成分が溶解又は溶融してからの時間が短すぎるため系内が均一な状態に達していない可能性があることから、未反応であったり、反応が不均一となる恐れがある。一方、反応温度にもよるが長すぎる場合は各成分が分解等の劣化を生じる恐れがある。分子量が低下することにより、成形物とした際の機械強度が低下する恐れや、副生成物が生成することで分子鎖構造に架橋点が増えることにより、成形物とした際に耐疲労特性の悪化を招いたりする恐れがある。
反応に使用できる触媒は特に限定されないが、例えば、塩化リチウム、ブトキシリチウム等のリチウム化合物類、3フッ化ホウ素の錯塩類、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムヨージド等の4級アンモニウム塩類、ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、N−メチルモルホリン等の3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、アミルトリフェニルホスホニウムブロミド、ジアリルジフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムアセテート・酢酸錯体、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド等のホスホニウム塩類、トリフェニルアンチモン及びヨウ素の組み合わせ、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等又はその変性剤等が挙げられる。これら触媒は1種類又は2種類以上併用しても良い。また、分割して数回に分けて使用しても良い。
触媒量は、特に限定されないが、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂との合計量に対して、好ましくは0.0001〜10質量%、より好ましくは0.005〜5質量%、更に好ましくは0.01〜2質量%、特に好ましくは0.05〜1質量%である。触媒量が少なすぎると、反応が進行せず、エステル結合が生じなくなる恐れがある。なお、炭素繊維強化樹脂組成物又はその成形物に悪影響がでる恐れがある場合は触媒の使用量を極力減らすか、反応後に触媒を除くことが必要である。
反応原料を加える順番については選択する原料とその反応メカニズムにも依るため特に限定を設けるものではないが、基本的に触媒を最初に投入しない順番で各成分を加える製造方法が好ましい。すなわち、酸変性ポリオレフィン系樹脂を先ず投入し溶融させた後、触媒を加え、最後にエポキシ樹脂を加えて反応させる方法、エポキシ樹脂を先ず投入し、例えばアミン系触媒を加えアミンアダクトとした後に、最後に酸変性ポリオレフィン系樹脂を加え反応させる方法、又は酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂を入れた後、一定温度で両者を良く混合した後、最後に触媒を加えて反応させる方法などが適する。
なお、最初に触媒を投入した場合は、系内で反応の進行程度にムラができるため、局所的に反応が進行し過ぎた箇所でゲル化する恐れがある。
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。
各種物性は、それぞれ以下の方法により測定した。
(1)エポキシ当量:JIS K 7236規格に準拠して測定した。具体的には、電位差滴定装置を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸−酢酸溶液を用いた。
(2)酸当量:JIS K 0070規格に準拠して酸価を測定し、酸当量に換算した。具体的には、試料を140℃程度の熱キシレンに溶解させた後、指示薬としてフェノールフタレインを用いた中和滴定法により、0.1N−KOHエタノール溶液を用いて測定した。
(3)水酸基当量:フェニルイソシアネートと試料中のアルコール性水酸基の反応により生成するアミンを濃度既知の塩酸で逆滴定することで中和に必要な塩酸量を求め、水酸基当量を計算により求めた。具体的には、試料を、乾燥ジメチルホルムアミドに溶解させた後、1Mフェニルイソシアネートの乾燥トルエン溶液と混合した。さらに触媒量のジブチルスズマレートを加え室温で2時間撹拌、反応させた。反応終了後、2Mジブチルアミンの乾燥トルエン溶液を加えよく混合し、過剰のフェニルイソシアネートと反応させた。次にブロムクレゾールグリーンを指示薬として加え、1N過塩素酸−メチルセロソルブ溶液で滴定した。中和に要した滴定溶液量から水酸基当量を求めた。
(4)ガラス転移温度(Tg):JIS K 7121、示差走査熱量測定に準拠して測定した。SII社製EXTER DSC6200を使用して、20℃から10℃/分の昇温速度により測定し、2サイクル目に得られたDSCチャートの補外ガラス転移開始温度(Tig)より求めた。
(5)IRチャート:PerkinElmer社製のFT−IR赤外分光装置1760Xを用い、密着性付与剤をプレスしフィルム化したものの赤外吸収スペクトルを反射法で測定した。
(6)溶融粘度:HAAKE社製RheoStress600を分析装置に使用し、ずりによる応力制御を、直径20mmのパラレルコーンを用いて、Ghamma:0.2%、ギャップ:0.5mmの設定で試料0.3gを使用して測定した。170℃一定温度にて、ずり応力からの粘度換算値から求めた。
(7)界面剪断強度:複合材料界面特性評価装置(東栄産業株式会社製、HM410)を使用し、マイクロドロップレット法により炭素繊維/樹脂間の界面密着性を評価した。具体的には、炭素繊維ストランドより、炭素繊維フィラメントを取り出し、試料ホルダーにセットする。加熱溶融した樹脂組成物のドロップを炭素繊維フィラメント上に形成させ、測定用の試料を得た。得られた試料を装置にセットし、ドロップを装置ブレードで挟み、炭素繊維フィラメントを装置上で2μm/sの速度で走行させ、炭素繊維フィラメントからドロップを引き抜く際の最大引き抜き荷重Fを測定した。次式により界面剪断強度τを算出した。なお、1試料につき10〜20個程度のドロップの界面剪断強度τを測定し、その平均値を求めた。
界面剪断強度τ(単位:MPa)=F/πdl
(F:最大引き抜き荷重、d:炭素繊維フィラメント直径、l:引抜方向のドロップ径)
(8)引張破壊強さ、引張弾性率、引張破壊歪:万能材料試験機(インストロン社製、5582型)を使用した。室温にて、掴み部を含めた全長215mm、幅10mm、厚み4mmの寸法のダンベル試験片を、チャック間114mm、速度50mm/min.で引張試験し、得られた応力−歪線図から引張破壊強さ、引張弾性率、引張破壊歪を求めた。
(9)曲げ強さ、曲げ弾性率:全自動曲げ試験機(株式会社東洋精機製作所製、ベンドグラフ試験機)を使用した。室温にて、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの寸法の棒状試験片を速度2mm/min.で3点曲げ試験し、得られた応力−歪線図から曲げ強さ、曲げ弾性率を求めた。
(10)シャルピー衝撃強さ:シャルピー衝撃試験機(株式会社安田精機製作所製、No.258PC−S)を使用した。室温にて、試験片長手方向をMD方向とし、板厚を貫通する深さ2mmのVノッチを有した、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの衝撃試験片でシャルピー衝撃試験を行った。試験片の破壊前後でのハンマー位置エネルギーの差から吸収エネルギーを求め、シャルピー衝撃値とした。
(11)荷重たわみ温度:荷重たわみ温度試験機(株式会社安田精機製作所製、No.148−HDPC−3)を使用した。長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの多目的試験片に対し、スパン64mmで曲げ応力を与えた状態で油槽の温度を120℃/min.の速度で昇温し、規定のたわみ量(0.34mm)に達した時の温度を荷重たわみ温度とした。
(12)炭素繊維含有率:予め質量を測定した試験片をマッフル炉で600℃、30分間焼成し樹脂を完全に燃焼させた後、残渣の質量を量り取った。焼成前後での質量比率(残渣質量/試験片質量)を計算し100分率で表した。
使用した材料の略号を以下に示し、その物性値を表1に示す。
(A)炭素繊維:
A−1:PAN系炭素繊維、三菱レイヨン株式会社製、TR50S(繊維直径:7μm、引張強さ:4.9GPa、引張弾性率:240GPa)
(B)ポリオレフィン系樹脂:
B−1:ポリプロピレン樹脂、日本ポリプロ株式会社製、MA1B(MFR=21g/10min.)
(C)密着性付与剤
C−1、2、3、4、5:表2に記載
SC−1、2:表2に記載
(d)酸変性ポリオレフィン系樹脂:
d−1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、三菱化学株式会社製、モディックP565
d−2:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、三洋化成工業株式会社製、ユーメックス1010
d−3:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、東洋紡株式会社製、PMA H1000P
(e)エポキシ樹脂:
e−1:BPA型フェノキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製、YP−50S
(f)その他の成分:
f−1:触媒、四国化成株式会社製、2E4MZ−A
Figure 2018159015
合成例1
予めミキサー内を170℃に予備加熱しておいた混錬押出成形機(東洋精機株式会社製、ラボプラストミル4C150)に、酸変性ポリオレフィン系樹脂としてd−1を90部、エポキシ樹脂としてe−1を10部投入した後、1分間の予熱、溶融を行った。その後、触媒としてf−1を1部追加投入し、170℃で6分間の加熱、溶融混合を行った。溶融混合終了後、系外に取り出し、放冷して、密着性付与剤(C−1)を得た。得られた密着性付与剤のエステル結合由来のIR吸収の有無及び溶融粘度を測定し、その結果を表2に示した。
合成例2〜7
酸変性ポリオレフィン系樹脂d−1〜3、エポキシ樹脂e−1、及び触媒f−1を、表2に記載の配合比率(部)により、合成例1と同様の装置を使用して、同様の操作で、密着性付与剤を得た(C−2、3、4、5、SC−1、2)。得られた密着性付与剤のエステル結合由来のIR吸収の有無及び溶融粘度を測定し、その結果を表2に示した。なお、表中のモル比は酸変性ポリオレフィン系樹脂のカルボキシ基(AE)とエポキシ樹脂のエポキシ基(EE)のモル比(AE/EE)を表す。
Figure 2018159015
実施例1
予めミキサー内を200℃に予備加熱しておいた混錬押出成形機に、合成例4で得られた密着性付与剤(C−4)を5部、ポリオレフィン系樹脂としてB−1を95部投入した後、1分間の予熱、溶融を行い、更に200℃で3分間の加熱、溶融混合を行った。溶融混合終了後、系外に取り出し、放冷して、密着性付与剤とポリオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の界面剪断強度を測定し、その結果を表3に示した。
2軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM26SS)を用い、得られた樹脂組成物70部をメインホッパーから供給し、次いで、その下流のサイドホッパーから炭素繊維A−1を30部供給し、バレル温度230℃、回転数200rpmで混練した。原料の供給は、フィーダーで調整した。炭素繊維含有樹脂組成物をダイス口から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してペレット状の炭素繊維強化樹脂組成物を得た。得られたペレットを、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J180AD)を用い、シリンダー温度230℃、金型温度40℃で射出成型することで成形物を得た。得られた成形物の炭素繊維含有率と機械物性を表3に示した。
実施例2
密着性付与剤として合成例1で得られた密着性付与剤(C−1)を10部、ポリオレフィン系樹脂としてB−1を90部に変更した以外は、実施例1と同様の装置及び手順で樹脂組成物、炭素繊維強化樹脂組成物のペレット、及び成形物を得た。得られた樹脂組成物の界面剪断強度と成形物の炭素繊維含有率と機械物性を表3に示した。
比較例1
合成例で得られた密着性付与剤の代わりに酸変性ポリオレフィン系樹脂d−1を10部、ポリオレフィン系樹脂としてB−1を90部に変更した以外は、実施例1と同様の装置及び手順で樹脂組成物、炭素繊維強化樹脂組成物のペレット、及び成形物を得た。得られた樹脂組成物の界面剪断強度と成形物の炭素繊維含有率と機械物性を表3に示した。
比較例2
密着性付与剤として合成例6で得られた密着性付与剤(SC−1)を10部、ポリオレフィン系樹脂としてB−1を90部に変更した以外は実施例1と同様の装置及び手順で樹脂組成物、炭素繊維強化樹脂組成物のペレット、及び成形物を得た。得られた樹脂組成物の界面剪断強度と成形物の炭素繊維含有率と機械物性を表3に示した。
Figure 2018159015
参考例1〜8
ポリオレフィン系樹脂B−1、密着性付与剤C−2〜5、SC−2、及びエポキシ樹脂e−1を、表4に記載の配合比率(部)により、実施例1と同様の装置を使用して、同様の操作で、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の界面剪断強度を測定し、その結果を表4に示した。界面剪断強度は、炭素繊維と樹脂の密着性に関係し、これが高いほど密着性が良いものとなる。
Figure 2018159015
以上の結果から、本発明の炭素繊維強化樹脂組成物の成形物は、比較例の成形物よりも機械的物性値が向上し、強度、剛性に優れていることがわかる。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物から得られる成形物は、自動車部品(フロントエンド、ファンシェラウド、クーリングファン、エンジンアンダーカバー、エンジンカバー、ラジエターボックス、サイドドア、バックドアインナー、バックドアアウター、外板、ルーフレール、ドアハンドル、ラゲージボックス、ホイールカバー、ハンドル、クーリングモジュール、エアークリーナー)、二輪・自転車部品(ラゲージボックス、ハンドル、ホイール)、住宅関連部品(温水洗浄弁座部品、浴室部品、椅子の脚、バルブ類、メーターボックス)、その他(電動工具部品、草刈り機ハンドル、ホースジョイント、樹脂ボルト、コンクリート型枠)や、特に剛性や耐久性の要求される自動車部品(フロントエンドモジュール(ファンシェラウド・ファン・クーリングモジュールを含む)、エアークリーナー、ドア部品)やバルブ類として好適に利用できる。

Claims (7)

  1. 炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂、及び密着性付与剤を含む炭素繊維強化樹脂組成物であって、密着性付与剤が、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位及びエポキシ樹脂単位を有し、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位がエステル構造で結合されていること、エポキシ樹脂単位中に2級水酸基が含有されることを特徴とする炭素繊維強化樹脂組成物。
  2. 密着性付与剤の170℃での溶融粘度が50〜1,500Pa・sである請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
  3. 炭素繊維の配合量が、炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂及び密着性付与剤の合計量に対し、1〜80質量%である請求項1又は2に記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
  4. 密着性付与剤の配合量が、炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂及び密着性付与剤の合計量に対し、1〜19.9質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
  5. ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
  6. 酸変性ポリオレフィン系樹脂が、酸変性ポリプロピレン系樹脂である請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂組成物の成形物。
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