JP7426378B2 - 繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム、プリプレグ、炭素繊維強化樹脂成型体、及び炭素繊維強化樹脂成型体の製造方法 - Google Patents

繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム、プリプレグ、炭素繊維強化樹脂成型体、及び炭素繊維強化樹脂成型体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム、プリプレグ、炭素繊維強化樹脂成型体、及び炭素繊維強化樹脂成型体の製造方法に関する。
本願は、2019年3月25日に出願された日本国特願2019-057349号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、炭素繊維強化樹脂(以下、CFRPと略することがある)を形成材料とする成型体が提案されている。CFRPは、金属材料と比べ軽量でありながら機械的強度が高い。そのため、CFRP製の成型体は、例えば、金属代替部品として採用されている。
CFRPを用いた成型体は、半硬化させた硬化型樹脂と強化繊維である炭素繊維とを有するプリプレグを成形し、硬化型樹脂を硬化させることによって得られる。CFRPのプリプレグは、例えば、炭素繊維の織布に硬化型樹脂の溶液を含浸させ、次いで、溶液から溶媒を除去し、さらに硬化型樹脂を半硬化させることによって製造されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平01-272416号公報
上述の特許文献1に記載の方法においては、硬化型樹脂を炭素繊維に含浸させた際、得られたプリプレグの内部を詳細に観察すると、硬化型樹脂が十分に含浸できず空隙が形成されていることがある。このような空隙を有するプリプレグを用いて成型体を製造した場合、空隙がプリプレグ表面に露出すると、成型体表面に微小な凹部が残存することとなり、外観不良の原因となる。さらに、製造される繊維強化樹脂成形体には、せん断強度が高いこと求められる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、せん断強度が高く、空隙の発生が少ない成型体を製造可能とする繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム、プリプレグ、炭素繊維強化樹脂成型体、及び炭素繊維強化樹脂成型体の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]一方の表面に第1の層を備え、他方の表面に第2の層を備える繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルムであって、第1の層は第1の樹脂組成物から構成され、第2の層は前記第1の樹脂組成物よりも架橋剤の含有量が少ない第2の樹脂組成物から構成され、前記第1の樹脂組成物は、マレイン酸変性ポリオレフィンからなる主剤と、架橋剤とを含有し、前記第2の樹脂組成物は、マレイン酸変性ポリオレフィンからなる主剤を含有し、前記第1の樹脂組成物が含有する主剤の固形分濃度は、第1の樹脂組成物の全量に対して70質量%以上99.5質量%以下であり、前記第1の樹脂組成物が含有する架橋剤の固形分濃度は、第1の樹脂組成物の全量に対して0.5質量%以上30質量%以下であり、前記第2の樹脂組成物が含有する主剤の固形分濃度は、第2の樹脂組成物の全量に対して80質量%以上100質量%以下である、繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
[2]厚みが30μm以上200μm以下である、[1]に記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
[3]前記マレイン酸変性ポリオレフィンの溶融粘度が、180℃において1000mPa・s以上50000mPa・s以下である、[1]又は[2]に記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
[4]無水マレイン酸又はマレイン酸による前記マレイン酸変性ポリオレフィンのグラフト変性率が0.5質量%以上2.5質量%以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
[5]前記架橋剤がエポキシ樹脂である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
[6]前記エポキシ樹脂を構成するエポキシ系化合物の重量平均分子量が300以上50000以下である、[5]に記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
[7]前記架橋剤が、ノボラック型、フェノール型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型からなる群より選択される1種以上である、[5]又は[6]に記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
[8][1]~[7]のいずれか1つに記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルムと、炭素繊維とを積層したプリプレグ。
[9]前記第2の層を備える面が、前記炭素繊維に接するように積層した、[7]に記載のプリプレグ。
[10]前記炭素繊維が連続繊維である、[8]又は[9]に記載のプリプレグ。
[11][8]~[10]のいずれか1つに記載のプリプレグを積層した炭素繊維強化樹脂成型体。
[12][11]に記載のプリプレグを積層した炭素繊維強化樹脂成型体を製造する方法であって、プリプレグを積層し、積層体を得る工程と、得られた積層体をスタンパブル成形する工程と、を備える、炭素繊維強化樹脂成型体の製造方法。
本発明によれば、せん断強度が高く、空隙の発生が少ない成型体を製造可能とする繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム、プリプレグ、炭素繊維強化樹脂成型体、及び炭素繊維強化樹脂成型体の製造方法を提供することができる。
繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルムの断面の模式図である。 プリプレグを示す概略断面図である。 プリプレグの製造工程を説明する説明図である。 プリプレグの製造工程を説明する説明図である。 プリプレグの製造工程を説明する説明図である。 プリプレグの製造工程を説明する説明図である。 プリプレグの製造工程を説明する説明図である。
以下、好適な実施の形態に基づき、本発明を説明する。
<繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム>
本実施形態の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム」と記載する場合がある)は、一方の表面に第1の層を備え、他方の表面に第2の層を備える。図1に本実施形態の樹脂フィルム11の断面の模式図を示す。樹脂フィルム11は、第1の層11Aと、第2の層11Bとを備える。
第1の層は、第1の樹脂組成物から構成される。第2の層は第1の樹脂組成物よりも架橋剤の含有量が少ない第2の樹脂組成物から構成される。第1の樹脂組成物はマレイン酸変性ポリオレフィンからなる主剤と、架橋剤とを含有する。第2の樹脂組成物はマレイン酸変性ポリオレフィンからなる主剤を含有する。
≪主剤;マレイン酸変性ポリオレフィン≫
第1の樹脂組成物及び第2の樹脂組成物を構成する主剤は、熱可塑性を有する。本実施形態の主剤として用いるマレイン酸変性ポリオレフィンは、未変性ポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸及びマレイン酸のいずれか一方又は両方によりグラフト変性することにより得られる。
以下、「未変性ポリオレフィン樹脂」とは、無水マレイン酸又はマレイン酸によるグラフト変性をしていないポリオレフィン樹脂を意味する。
マレイン酸変性ポリオレフィンの製造方法としては、下記の2つの方法が挙げられる。
(1)未変性ポリオレフィン樹脂と、無水マレイン酸又はマレイン酸とを溶融混練によりグラフト変性する方法。
(2)オレフィンモノマーと酸官能基含有モノマーとを共重合させる方法。「酸官能基含有モノマー」として無水マレイン酸及びマレイン酸のいずれか一方又は両方を用いる。
グラフト変性は、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。
マレイン酸変性ポリオレフィンの構成において、無水マレイン酸又はマレイン酸と共重合する場合のオレフィンモノマー、又は未変性ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、α-オレフィン等の1種又は2種以上が挙げられる。
未変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、プロピレンと1-ブテンとの共重合体、プロピレンとエチレン又はα-オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレン又はα-オレフィンとのブロック共重合体等の1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、プロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン、プロピレン-エチレンのブロック共重合体、プロピレン-エチレンのランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体等のポリプロピレン系樹脂が好ましい。
すなわち本実施形態においては、マレイン酸変性ポリオレフィンとして、マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
マレイン酸変性ポリオレフィンを構成するモノマーが1-ブテンを含有することにより、樹脂フィルムが加熱された際、樹脂フィルムを構成する主剤及び架橋剤の分子運動が促進される。主剤と架橋剤とが相互に反応し得る官能基を有する場合、主剤と架橋剤との官能基同士が接触する機会が増える結果、樹脂フィルムの耐久性、被着体への密着性がより向上する。
マレイン酸変性ポリオレフィンが、未反応のマレイン酸又は無水マレイン酸を含有する場合は、接着力が低下するおそれがある。このため、樹脂フィルムを構成する主剤としては、未反応のマレイン酸又は無水マレイン酸を含まないマレイン酸変性ポリオレフィンが好ましい。
本実施形態においては、上記(1)(2)の製造方法で得られた生成物から、未反応のマレイン酸又は無水マレイン酸を除去して得られるマレイン酸変性ポリオレフィンを主剤とすることが好ましい。
・グラフト変性率
無水マレイン酸又はマレイン酸によるマレイン酸変性ポリオレフィンのグラフト変性率は、0.5質量%以上3.0質量%以下であり、0.5質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。「グラフト変性率」とは、下記方法で測定して求められた値を指す。
(測定方法1)
無水マレイン酸のペレット状のサンプルを熱プレスすることにより厚さ約100μmのフィルムを作成し、赤外線吸収スペクトルにおいて1780cm-1に現れる吸収ピークと、別途求めた検量線とからマレイン酸の含有率(質量%)を検量し、得られた値を全無水マレイン酸の含有率(質量%)とする。得られた値をAとする。
沸騰させたキシレンにペレット状の測定試料を溶解させた後、得られた溶液から測定試料をメタノールに再沈殿させる。その後、沈殿物を80℃で6時間真空乾燥させ、粉末状のサンプルを得る。
得られたサンプルに含まれる無水マレイン酸の含有率を、上記と同様の方法で検量し、得られた値をサンプル中のポリオレフィンにグラフトした無水マレイン酸の含有率(質量%)とする。得られた値をBとする。
グラフト変性した無水マレイン酸の含有率(B)を、全無水マレイン酸の含有率(A)で除し、得られた値を百分率で表した値((B/A)×100)を、測定試料における無水マレイン酸のグラフト変性率(質量%)とする。
また、グラフト変性率は、次の方法で測定してもよい。
(測定方法2)
マレイン酸変性ポリオレフィンの測定試料を、沸騰させたキシレンに溶解させた後、得られた溶液から測定試料をアセトンに再沈殿させる。その後、沈殿物を80℃で6時間真空乾燥させ、粉末状のサンプルを得る。
得られたサンプルを熱プレスすることにより、厚さ100μmのフィルムを作成する。得られたフィルムの赤外線吸収スペクトルにおいて、1780cm-1に現れる吸収ピークと、840cm-1に現れるポリプロピレンの吸収ピークとの比と、井出らの検量線(参考文献:高分子化学 25,167, 1968年)とから、下記式により、グラフト変性率(mol%)を算出する。
[グラフト変性率]=[1780cm-1の吸光度]/[840cm-1の吸光度]×1.30
なお、得られたグラフト変性率(mol%)は、別途求めた検量線に基づいて、グラフト変性率(質量%)に換算することができる。
例えば、配合を変えながらポリプロピレンと無水マレイン酸との混合物を複数用意し、それぞれの混合物を熱プレスすることにより、厚さ100μmのフィルムを作成する。得られた各フィルムについて上記グラフト変性率(mol%)を測定することで、フィルムに含まれる無水マレイン酸の含有率(質量%)とグラフト変性率(mol%)との対応関係を示す検量線を作成することができる。」
(測定方法3)
マレイン酸変性ポリオレフィンの測定試料の酸価を、JIS K 0070に準拠した酸化測定方法にて求め、得られた酸価から下記式にて換算することでグラフト変性率(質量%)を求めてもよい。
[グラフト変性率]=[マレイン酸変性ポリオレフィンの酸価]÷11.4
酸価の測定には、以下の試料及び試薬を用いる。
試料量:1~2g(精秤)
溶媒:キシレン(特級試薬)
指示薬:フェノールフタレイン
滴定液:0.05mol/L KOHベンジルアルコール溶液。予め0.1ml/L塩酸を用いて滴定し、正確な濃度を求めておく。
まず、100mlの三角フラスコに試料と溶媒70mlとを追加し、空冷管を取り付けて、135℃のオイルバス中で15分間加熱することで、試料のキシレン溶液を得る。
次いで、得られた試料に指示薬を3滴加え、約100℃のホットスターラー上で滴定する。薄い紅色が30秒続いた時を滴定の終点とする。
同様の方法で空試験も行い、下式より酸価を算出する。
酸価(mgKOH/g)=[(V-V)×N×56.11]/S
:試料の滴定液量(ml)
:空試験での滴定液量(ml)
N:滴定液の濃度(mol/L)
S:試料質量(g)
・溶融粘度
マレイン酸変性ポリオレフィンの測定温度180℃における溶融粘度は、1000mPa・s以上50000mPa・s以下であることが好ましく、5000mPa・s以上20000mPa・s以下であることがより好ましい。溶融粘度の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
本明細書において溶融粘度は、JIS K7199に準拠する方法で測定した値を指す。具体的には、レオメーター(AntonPaar社製、装置名:physicaMCR301)を用い、測定温度180℃、ひずみ振幅3%、1Hzの周波数で測定を行った際の値を指す。
マレイン酸変性ポリオレフィンの融点は60℃以上130℃以下が好ましい。この融点は、70℃以上120℃以下が好ましく、75℃以上110℃以下がより好ましく、80℃以上100℃以下がさらに好ましい。
マレイン酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば10000~800000であり、50000~650000が好ましく、80000~550000がより好ましく、100000~450000がさらに好ましい。
≪架橋剤;エポキシ基含有樹脂≫
次に、第1の樹脂組成物及び第2の樹脂組成物を構成する架橋剤について説明する。架橋剤となるエポキシ基含有樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。フェノキシ樹脂は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとから合成されるポリヒドロキシポリエーテル樹脂である。フェノキシ樹脂は、原料であるエピクロルヒドリンに由来するエポキシ基を構造中に有する場合には、架橋剤として用いることができる。
エポキシ基含有樹脂としては、フェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
また、エポキシ基含有樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂も好ましい。ここで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA骨格を有するエポキシ樹脂を意味する。同様に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールF骨格を有するエポキシ樹脂を意味する。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール化合物を基本構造とし、その構造の一部にエポキシ基が導入された化合物である。ビスフェノール化合物はフェノール性水酸基を2個有するため、ビスフェノール型エポキシ樹脂は、通常、ビスフェノール骨格を有する二官能エポキシ樹脂となる。
本明細書において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂とは、フェノールノボラック樹脂を基本構造とし、その構造の一部にエポキシ基が導入された化合物である。フェノールノボラック樹脂は、一般には、単に「ノボラック」ともいい、フェノール類化合物とホルムアルデヒドとを縮合して得られる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂における1分子あたりのエポキシ基導入量は特に限定されるものではないが、エピクロルヒドリン等のエポキシ基原料とフェノールノボラック樹脂とを反応させることにより、フェノールノボラック樹脂中に多数存在するフェノール性水酸基に多数のエポキシ基が導入されるため、通常は多官能エポキシ樹脂となる。
フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール類化合物としては、フェノール性水酸基を有する化合物であればよく、水酸基以外に活性水素を有しない化合物が好ましい。フェノール類化合物の具体例として、フェノール(ヒドロキシベンゼン)、クレゾール、ナフトール等のモノフェノール化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物などが挙げられる。ビスフェノール化合物を用いて構成されたフェノールノボラック樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格を有する。
架橋剤として、ビスフェノール骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA骨格又はビスフェノールFを有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂が特に好ましい。
エポキシ基含有樹脂のエポキシ当量は、100~300が好ましく、200~300がより好ましい。エポキシ当量(g/eq)は、エポキシ基1個あたりのエポキシ基含有樹脂の重量平均分子量に相当し、この値が小さいほどエポキシ基含有樹脂中のエポキシ基が多いことを意味する。エポキシ当量の比較的小さいエポキシ基含有樹脂を架橋剤とすることにより、エポキシ基含有樹脂の添加量が比較的少量でも、主剤のマレイン酸変性ポリオレフィンが十分に架橋される。
架橋剤を構成するエポキシ基含有樹脂の重量平均分子量は、300以上50000以下であることが好ましく、10000以下が好ましい。エポキシ化合物の重量平均分子量は50000以下であると、主剤中でエポキシ化合物が拡散しやすく移動しやすい。そのため、エポキシ基含有樹脂の重量平均分子量が上記上限値以下であると、架橋剤(エポキシ基含有樹脂)が有するエポキシ基と、主剤(マレイン酸変性ポリオレフィン)が有する置換基との反応確率が上がる。
また、エポキシ基含有樹脂の重量平均分子量が上記上限値以下であると、繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルムを用いて繊維強化樹脂を得た際、架橋剤が有するエポキシ基と、繊維の表面の置換基との反応確率が上がる。
これらにより、炭素繊維強化樹脂成型体とした際の強度が向上する。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の具体例として、三菱化学株式会社製のjER(登録商標)154、jER(登録商標)157S70、jER(登録商標)157S65;DIC株式会社製のEPICLON(登録商標)N-730A、EPICLON(登録商標)N-740、EPICLON(登録商標)N-770、EPICLON(登録商標)N-775(以上、いずれも商品名)等の市販品を用いることもできる。
繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルムは、主剤及び架橋剤に加えて、所望により主剤及び架橋剤と混和性のある添加剤、付加的な樹脂、可塑剤、安定剤、着色剤等を適宜含有することができる。
(配合比)
本実施形態において、第1の樹脂組成物が含有する主剤の固形分濃度は、第1の樹脂組成物の全量に対して70質量%以上99.5質量%以下である。
本実施形態において、第1樹脂組成物が含有する架橋剤の固形分濃度は、第1の樹脂組成物の全量に対して0.5質量%以上30質量%以下である。
本実施形態において、第2の樹脂組成物が含有する主剤の固形分濃度は、第2の樹脂組成物の全量に対して80質量%以上100質量%以下である。第2の樹脂組成物が含有する架橋剤の固形分濃度は、第1の樹脂組成物が含有する架橋剤の濃度よりも小さく、第1の樹脂組成物が含有する架橋剤の濃度よりも、15質量%少ないことが好ましく、10質量%少ないことがより好ましく、5質量%少ないことが特に好ましい。また、第2の樹脂組成物の架橋剤の含有量は、0質量%であってもよい。
・樹脂フィルム
本実施形態の樹脂フィルムを形成する方法としては、溶融押出により第2のシートを形成し、第2のシート上に、主剤と架橋剤を含む第1の樹脂組成物の塗工液を塗布、乾燥させる方法が挙げられる。
樹脂フィルムの乾燥後の膜厚は、30μm以上200μm以下であることが好ましい。樹脂シートの膜厚は、20μm以上150μm以下が好ましく、30μm以上100μm以下が更に好ましく、40μm以上80μm以下が最も好ましい。
第1の層と第2の層の厚みの和に対する第1の層の厚みの比は、0.4以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.05以上、0.07以上が好ましい。
塗工液としては、主剤と架橋剤を溶媒に溶解した塗工液が好ましい。溶媒としては、主剤及び架橋剤の溶解性に加えて、塗布後の乾燥性に優れる有機溶媒が好ましい。溶媒の沸点は、例えば150℃以下が好ましい。
溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、シメン、メシチレン等の芳香族溶媒;
n-ヘキサン等の脂肪族溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶媒;
乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル系溶媒;
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのアルコール系溶媒が挙げられる。
塗工液に用いられる溶媒は、上述した溶媒のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2種以上の溶媒を併用する混合溶媒の場合は、主剤を良好に溶解する有機溶媒と、架橋剤を良好に溶解する有機溶媒とを組み合わせて用いることも好ましい。このような組み合わせとしては、主剤を良好に溶解するトルエンと、架橋剤を良好に溶解するメチルエチルケトンとの組み合わせが好ましい。
混合溶媒を用いた塗工液の製造方法は、混合溶媒に主剤及び架橋剤を溶解させる方法でもよく、主剤の溶液と架橋剤の溶液とを混合させる方法でもよい。
混合溶媒における混合割合は、主剤と架橋剤とを良好に溶解可能であれば特に限定されない。例えばトルエンとメチルエチルケトンとを組み合わせる場合、質量比で60~95:5~40が好ましく、70~90:10~30がより好ましい。
また、樹脂フィルムは、公知のシートダイやTダイを用いた溶融押出によって製造することとしてもよい。このような方法では、上述した塗工液を塗布乾燥させて製造する方法と比べて、製造する樹脂フィルムを厚くしやすい。
本実施形態の樹脂フィルムは、本実施形態の効果を損なわない範囲で、第1の層、第2の層以外の他の層を備えていてもよい。他の層を備えるとき、他の層はポリオレフィン系の層であることが好ましい。
<プリプレグ>
本実施形態は、前記本実施形態の樹脂フィルムと、炭素繊維とを積層したプリプレグである。
図2は、本実施形態のプリプレグを示す概略断面図である。図2に示すように、本実施形態のプリプレグ1は、樹脂層10と、炭素繊維層20と、を含む。
プリプレグ1において、樹脂層10は、上述した主剤と架橋剤とを含む。
(炭素繊維)
炭素繊維層20は、樹脂層10の中に埋没した複数の炭素繊維29からなる。複数の炭素繊維29の隙間20aには、樹脂層10を構成する主剤と架橋剤とが含浸している。
(プリプレグの製造方法)
図2~7は、プリプレグの製造工程を説明する説明図である。
まず、図3に示すように、炭素繊維シート21を一対の樹脂フィルム11で挟持し、加圧して貼り合わせる。
(樹脂フィルム)
樹脂フィルム11には、前記樹脂フィルムを用いる。
(連続繊維シート)
(連続繊維)
本実施形態において、炭素繊維は連続繊維であることが好ましい。
連続炭素繊維は、実質的に炭素元素だけからなる繊維状の炭素材料の総称である。炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維など通常知られた炭素繊維を用いることができる。
本実施形態において連続炭素繊維としての炭素繊維は、単繊維であってもよく、撚り糸であってもよい。ここで連続繊維とはプリプレグの全長にわたって連続する繊維の束であることを意味する。
また連続繊維は、連続繊維である炭素繊維を用いて形成した織物、編物であってもよい。織物は、平織、綾織(斜文織)、繻子織など通常知られた織り方を採用することができる。
連続繊維は、炭素繊維としてPAN系炭素繊維を用いた織物が好ましい。
炭素繊維シート21は、炭素繊維がシート状に成型された成型体である。炭素繊維シート21としては、例えば、上述の炭素繊維と同じ形状の織物を挙げることができる。
図3に示すように、樹脂フィルム11は、炭素繊維シート21に圧着され、樹脂フィルム11、炭素繊維シート21、樹脂フィルム11からなる積層体1Bが得られる。
次いで、図4示すように、樹脂フィルム11の軟化点(軟化温度)以上、樹脂フィルム11が含有する架橋剤の反応開始温度未満の温度範囲に樹脂フィルム11を加熱して溶融させる。さらに、溶融した樹脂フィルム11を炭素繊維シート21に向けて加圧する。「樹脂フィルム11の軟化点」は、樹脂フィルム11を構成する繊維強化樹脂用マトリクス樹脂の軟化点である。
これにより、積層体1Bでは、樹脂フィルム11を構成する樹脂が溶融し、炭素繊維シート21を構成する複数の炭素繊維29の隙間20aに浸入する。これにより、プリプレグ1が生成する。
得られたプリプレグ1は、加圧後に冷却してもよい。溶融するまで加熱された樹脂シート11では、加熱により樹脂シート11に含まれる架橋剤が意図せず架橋反応し、硬化が進行することがある。プリプレグ1を冷却することにより、上述のような意図しない架橋反応を抑制又は停止させることができる。
プリプレグの製造方法の一実施形態ついて、図5を用いて説明する。本実施形態では、図5に示すように、炭素繊維シート21を一対の樹脂フィルム11で挟持する際、第2の層11Bが炭素繊維シート21に接するように積層し、加圧して貼り合わせる。
このような実施形態では、一対の樹脂フィルムのそれぞれの第2の層11Bを構成する樹脂が溶融した際、溶融する樹脂には架橋剤の含有量が少ないため、流動性が高く、炭素繊維シート21に含浸しやすい。このため、空隙の発生を抑制できる。
プリプレグの製造方法の一実施形態ついて、図6を用いて説明する。本実施形態では、図6に示すように、炭素繊維シート21を一対の樹脂フィルム11で挟持する際、第1の層11Aが炭素繊維シート21に接するように積層し、加圧して貼り合わせる。
このような実施形態では、一対の樹脂フィルムのそれぞれの第1の層11Aが含む架橋剤同士が炭素繊維シート21の内部で架橋しやすく、製造される成型体の強度を高めることができる。
プリプレグの製造方法の一実施形態ついて、図7を用いて説明する。本実施形態では、図7に示すように、炭素繊維シート21を一対の樹脂フィルム11で挟持する際、第1の層11Aと、第2の層11Bとが炭素繊維シート21に接するように積層し、加圧して貼り合わせる。
第1の層及び第2の層を備える樹脂フィルムを用いると、炭素繊維と積層して加圧した際に、樹脂シート含まれる架橋剤が分散しやすく、短時間で硬化させることができる。
本実施形態の樹脂シートを用いて製造したプリプレグは、深さ方向の架橋剤の濃度に勾配が生じやすい。
<炭素繊維強化樹脂成型体>
本実施形態は、前記本実施形態のプリプレグを積層した炭素繊維強化樹脂成型体である。以下の説明では、炭素繊維強化樹脂成型体を単に「成型体」と称することがある。
<炭素繊維強化樹脂成型体の製造方法>
本実施形態の炭素繊維強化樹脂成型体の製造方法は、プリプレグを積層し、積層体を得る工程と、得られた積層体をスタンパブル成形する工程と、を備える。
得られた本実施形態のプリプレグ1は、スタンパブルシートとして用いられる。プリプレグ1は、加熱して成型することで、成型体を製造することができる。詳しくは、プリプレグ1を1枚のみ、又は複数枚を積層させた積層体を、加熱して軟化させ、軟化したプリプレグ1を金型で押さえて成形する、いわゆるスタンパブル成形を行うことで成型体を製造することができる。
また、プリプレグ1は、樹脂層10に含まれる架橋剤の反応開始温度以上の温度に加熱されることにより、樹脂層10を構成する主剤と架橋剤との架橋反応が進行して硬化する。これにより、目的とする成型体が得られる。
以上のような構成のプリプレグによれば、炭素繊維強化樹脂を形成材料とし、機械的強度及び外観が良好な炭素繊維強化樹脂成型体を製造可能となる。
また、以上のような炭素繊維強化樹脂成型体の製造方法によれば、高品質な炭素繊維強化樹脂成型体を容易に製造可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(グラフト変性率の測定方法)
無水マレイン酸のペレット状のサンプルを熱プレスにより厚さ約100μmのフィルムを作成し、赤外線吸収スペクトルにおいて1780cm-1に現れる吸収ピークからマレイン酸量を検量し、得られた値を全無水マレイン酸量とした。得られた値をAとした。
沸騰させたキシレンにペレット状の測定試料を溶解させた後、得られた溶液から測定試料をメタノールに再沈殿させた。その後、沈殿物を80℃で6時間真空乾燥させ、粉末状のサンプルを得た。
得られたサンプルに含まれる無水マレイン酸量を、上記と同様の方法で検量し、得られた値をサンプル中のポリオレフィンにグラフトした無水マレイン酸量とした。得られた値をBとした。
グラフト変性した無水マレイン酸量(B)を、全無水マレイン酸量(A)で除し、得られた値を百分率で表した値((B/A)×100)を、測定試料における無水マレイン酸によるマレイン酸変性ポリオレフィンのグラフト変性率(質量%)とした。
(実施例1~4、比較例1,2)
表1に示す構成により、樹脂フィルムを製造した。具体的には、主剤であるマレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂と架橋剤とのトルエン溶液を、離型処理の施してあるPET基材フィルム上にバーコートにより塗布し、乾燥させて樹脂フィルムを得た。樹脂フィルムの膜厚はいずれも表1にそれぞれ示す膜厚とした。
得られた樹脂フィルム2枚で、表1に示す炭素繊維シートを挟持して積層体とし、得られた積層体を下記条件で加熱加圧することで、プリプレグを製造した。プリプレグの厚みは表1にそれぞれ記載する。
加熱:180℃
加圧:30cm角あたり0.5tの荷重
時間:1分間
表1に示す各材料は、それぞれ以下の通りである。
マレイン酸PP:マレイン酸によるグラフト変性率1.2%、重量平均分子量=120,000、融点=80℃
CF1:炭素繊維の平織物(商品名:トレカクロスCO-6363、東レ株式会社製)
エポキシ:特殊ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点70℃)。分子内にビスフェノールA骨格を含み、ノボラック構造のエポキシ基を含む。
(プリプレグにおける炭素繊維への樹脂浸透性の評価)
得られたプリプレグについて、次のように樹脂浸透性を評価した。
まず、プリプレグ1を炭素繊維の繊維方向と交差する方向で切断し、プリプレグ1の断面のうち炭素繊維と樹脂のいずれもが存在し、かつ炭素繊維が円状に見える状態の面を形成した。
次いで、100μm×100μmの範囲について、電子顕微鏡(キーエンス社デジタルマイクロスコープVHX)を用いて、倍率20倍に拡大像を撮像した。得られた画像について、用いた電子顕微鏡に付属の画像処理ソフトを用いて画像処理し、空隙率を算出した。空隙率の算出方法は以下のように行った。
撮影により得られた画像について、円状に見える炭素繊維を除く領域を、樹脂部分又は樹脂が浸透していない隙間部分と見なした。
樹脂部分と隙間部分との境界は、画像の明度変化から判断した。すなわち、コントラストが隣接している付近よりも急に暗くなっている部分の集合を隙間部分、それ以外を樹脂部分と見なした。ここで、急に暗くなるとは任意の点から0.5μm相当の移動をした際に、明度が3倍以下になるような点を指す。これがある一定範囲に及び一定範囲が暗くなっている部分の集合を、隙間部分とした。
より詳細には次のように行った。
まず、得られた画像において直交する座標軸(x軸、y軸)を設定した。次いで、画像を構成する画素の明度を、断面における0.5μm間隔で、x軸に沿って離散的に求めた。明度を求めた複数点のうち、明度に3倍以上の差がある隣接する2点の間を、隙間部分と樹脂部分との境界点とした。
同じ操作を、y軸方向に0.5μm間隔で画像全領域において行い、得られる複数の境界点から、隙間部分と樹脂部分との境界線を描いた。描いた境界線を挟んで明度が高い側を樹脂部分、明度が低い側を隙間部分とした。
画像処理ソフトを用いた画像処理により、撮像画像において円状に見える炭素繊維を除く領域のうち、樹脂部分の面積Spと、隙間部分の面積Svとを求めた。
得られた面積Sv、Spを用い、下記の式(1)から、隙間部分の割合を百分率で算出した。
空隙の割合=面積Sv/(面積Sv+面積Sp)×100…式(1)
上記の撮像、画像処理、隙間部分の割合の算出を合計5回行い、求めた隙間部分の割合の平均値(n=5)を「空隙率」とした。
求めた空隙率を用いて、下記の項目に従って、プリプレグにおける炭素繊維への樹脂浸透性を評価した。「◎」、「〇」、「△」を良品、「×」を不良品として評価した。その結果を表1に記載する。
「◎」:空隙率が1%未満であった。
「〇」:空隙率が1%以上2%未満であった。
「△」:空隙率が2%以上、5%未満であった。
「×」:空隙率が5%以上であった。
(炭素繊維と樹脂との界面のせん断強度の評価)
複合材界面特性評価装置(東栄産業株式会社製、型番「HM410」)を用いて界面せん断強度を評価した。具体的には、マイクロドロップレット法を用い、測定対象とするプリプレグの試験片を構成する炭素繊維と樹脂とについて、端部から露出する炭素繊維を装置のブレードで挟み、装置に設置した。
次いで、装置上で0.12mm/分の速度で走行させ、炭素繊維をプリプレグから引き抜く際の最大引き抜き荷重Fを測定し、下記式により界面せん断強度τを算出した。
τ=F/πDL
上記式において、
F:炭素繊維から樹脂フィルムが剥離する際に生じる最大応力(N)
D:1本の炭素繊維の直径(m)
L:炭素繊維の軸方向における熱可塑性樹脂の直径(m)
をそれぞれ表す。
界面せん断強度を下記の基準で評価した。その結果を表1に記載する。
「◎」:界面せん断強度が30MPa以上。
「〇」:界面せん断強度が20MPa以上30MPa未満。
「△」:界面せん断強度が10MPa以上20MPa未満。
「×」:界面せん断強度が10MPa未満。
Figure 0007426378000001
評価の結果、実施例のプリプレグは、比較例のプリプレグに比べて空隙が少なく、界面せん断強度が高いと分かった。
1…プリプレグ、10…樹脂層、11…樹脂フィルム、20…炭素繊維層、20a…隙間、21…炭素繊維シート、29…炭素繊維

Claims (12)

  1. 一方の表面に第1の層を備え、他方の表面に第2の層を備える繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルムであって、
    第1の層は第1の樹脂組成物から構成され、
    第2の層は前記第1の樹脂組成物よりも架橋剤の含有量が少ない第2の樹脂組成物から構成され、
    前記第1の樹脂組成物は、マレイン酸変性ポリオレフィンからなる主剤と、架橋剤とを含有し、
    前記第2の樹脂組成物は、マレイン酸変性ポリオレフィンからなる主剤を含有し、
    前記第1の樹脂組成物が含有する主剤の固形分濃度は、第1の樹脂組成物の全量に対して70質量%以上99.5質量%以下であり、
    前記第1の樹脂組成物が含有する架橋剤の固形分濃度は、第1の樹脂組成物の全量に対して0.5質量%以上30質量%以下であり、
    前記第2の樹脂組成物が含有する主剤の固形分濃度は、第2の樹脂組成物の全量に対して80質量%以上100質量%以下である、繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
  2. 厚みが30μm以上200μm以下である、請求項1に記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
  3. 前記マレイン酸変性ポリオレフィンの溶融粘度が、180℃において1000mPa・s以上50000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
  4. 無水マレイン酸又はマレイン酸による前記マレイン酸変性ポリオレフィンのグラフト変性率が0.5質量%以上2.5質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
  5. 前記架橋剤がエポキシ樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
  6. 前記エポキシ樹脂を構成するエポキシ系化合物の重量平均分子量が300以上50000以下である、請求項5に記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
  7. 前記架橋剤が、ノボラック型、フェノール型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型からなる群より選択される1種以上である、請求項5又は6に記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルム。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂用マトリクス樹脂フィルムと、炭素繊維とを積層したプリプレグ。
  9. 前記第2の層を備える面が、前記炭素繊維に接するように積層した、請求項8に記載のプリプレグ。
  10. 前記炭素繊維が連続繊維である、請求項8又は9に記載のプリプレグ。
  11. 請求項8~10のいずれか1項に記載のプリプレグを積層した炭素繊維強化樹脂成型体。
  12. 請求項11に記載のプリプレグを積層した炭素繊維強化樹脂成型体を製造する方法であって、
    プリプレグを積層し、積層体を得る工程と、
    得られた積層体をスタンパブル成形する工程と、を備える、炭素繊維強化樹脂成型体の製造方法。
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