JP2014019605A - 合成樹脂用重質炭酸カルシウム、その製造方法、及び該炭酸カルシウムを含有した樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】一液型湿気硬化性接着剤やシーラント等の硬化性樹脂に配合するにあたり、予備乾燥することなく、又は簡単な予備乾燥で十分な脱水処理が可能な表面処理重質炭酸カルシウムを提供する。
【解決手段】式8,000 ≦A≦25,000、0.8 ≦B≦15、0 ≦C1≦1000、及び0 ≦C2≦150 を満足することを特徴とする重質炭酸カルシウムである。
但し、A:空気透過法による比表面積(cm2 /g)、B:マイクロトラックMT3300レーザー式粒度分布計により測定した粒子の50%粒子径(d50)、C1:カールフィッシャー法(加熱気化法)により25〜300℃の間で測定される水分(ppm )、C2:カールフィッシャー法(加熱気化法)により200〜300℃の間で測定される水分(ppm )。
【選択図】なし

Description

本発明は、合成樹脂用、特に一液接着剤、シーラントに好適な重質炭酸カルシウム、その製造方法、及び該炭酸カルシウムを含有した樹脂組成物に関する。
炭酸カルシウムは不活性で、比較的安価であり、且つ人体への影響が少なく環境にも優しいフィラーであるが、表面が親水性で、吸湿しやすく、樹脂との親和性に劣る。そこで、場合によっては表面処理することでこれらの欠点を改善されて使用されているが、高度な用途には樹脂との接着性不良や貯蔵安定性不良が原因で十分な性能が得られないことがある。
一液型湿気硬化性接着剤には空気中の水分により硬化反応が進行するように配合設計されているが、炭酸カルシウムのようなフィラーを配合することにより接着剤にボリュームを付与でき、モジュラスをコントロールして接着の作業性が改善されたり、接着強度が制御される。しかし、炭酸カルシウム中の水分が遊離して、炭酸カルシウムが配合されている樹脂中に出てきたり、樹脂中で炭酸カルシウムが経時的に吸湿するなどすると、接着剤としての使用前に硬化反応を引き起こしたりして、接着剤の貯蔵安定性などに悪影響を及ぼし、性能劣化につながることがある。この対策のために脱水剤の配合が必要になるなど、配合設計を難しくしているという問題がある。
これらの問題は、水分の少ない又は吸湿性が少ない、あるいは、容易に乾燥できる炭酸カルシウムが提供できれば解決できる可能性がある。例えば、湿式粉砕してから表面処理すると水分が少なくなることは一般的に知られている。しかし、脱水、乾燥工程が必須であり、コスト的には不利である。また、比表面積が大きくなると水分は多くなるので使用は制限される。
このような水分による問題を改善するため、各種の検討がおこなわれてきた。例えば、生石灰を添加して炭酸カルシウムフィラーを除湿するなど試みられてきたが、生石灰は強アルカリであるため、その使用は限定される。ビニルシラン等の脱水剤の添加も検討されているが、コストアップ要因になるという問題がある。
ところで、シーラント、接着剤の貯蔵安定性が悪くなるのは、炭酸カルシウム粒子の表面にあらかじめ水が存在すると、凝集しやすく、また、その水分が存在する上から疎水性の有機物を表面処理しても、内部に水分を取り込んでしまうので十分な低水分にはならない。
これまでに、周速20m/秒以上の高速撹拌で粉体温度を200〜350℃に加熱して脱水し水分を0.02重量%以下にまで低減して、脂肪酸金属セッケンまたは非イオン性界面活性剤を添加し、その融点以上180℃までの温度で混合した軽質炭酸カルシウムフィラーをプラスチックに配合して射出成型して厚さ4mmの成形体にすると、水分に起因するシルバーマークが発生せず、耐衝撃性、表面光沢度、耐熱性が大きく改善された成形体が得られることが報告されている。(特許文献1)
特開昭61−97363号公報
上記特許文献1では、平均粒径3μmで水分0.1重量%の重質炭酸カルシウムをヘンシェルミキサーで、周速40m/秒でかきまぜながら、粉体温度280 〜300 ℃で25分間乾燥し、その後160℃でステアリン酸カルシウムを160℃で2 %添加し水分0.009重量%の表面処理重質炭酸カルシウムを得ている。
しかしながら、装置的にヘンシェルミキサーの撹拌熱で280 〜300 ℃にするのは困難であり、また、ジャケットにオイル媒体を通しても、シール部分が損傷したりして、装置の保守が難しくまた粉体が汚染される恐れがあるので好ましくない。更に、この重質炭酸カルシウムをポリプロピレンに配合した応用物性ではシルバーマークは発生しないが、表面光沢及び耐衝撃性に劣り、満足しうる効果が得られていない。また、大気中に放置すると水分が再吸着して使用時に充分な低水分を維持できないため、一液接着剤や一液シーラントの乾燥工程を省略できるまでは至らない。
本発明者等は、かかる実情に鑑み、炭酸カルシウムの内、粉砕や分級等の物理的手段で製造される重質炭酸カルシウムが比較的初期水分が小さいので低水分化には有利と考え、鋭意研究の結果、重質炭酸カルシウムを目的とする接着剤やシーラントに必要な粒度特性を示すように調整し、適切な加熱方法や加熱条件で乾燥して水分を低減し、さらに低水分が必要な場合は疎水化の表面処理を行って製造したフィラーが上記問題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明の目的は、乾式で生産できるためにコスト的に有利で、例えば、一液型湿気硬化性接着剤に配合するにあたって、予備乾燥することなく、あるいは簡単な予備乾燥で十分であり、大幅に工程を短縮できる重質炭酸カルシウムを提供することにある。
すなわち、本発明の特徴は、下記式(1)〜(4)を満足する重質炭酸カルシウムである。
8,000 ≦A≦25,000 (1)
0.8 ≦B≦15 (2)
0 ≦C1≦1000 (3)
0 ≦C2≦150 (4)
但し、
A:空気透過法による比表面積(cm2 /g)、
B:炭酸カルシウム粉体の平均粒子径(μm)で、マイクロトラックMT3300レーザー式粒度分布計により測定した粒子の50%粒子径(d50)、
C1:カールフィッシャー法(加熱気化法)により25〜300℃の間で測定される水分(ppm )、
C2:カールフィッシャー法(加熱気化法)により200〜300℃の間で測定される水分(ppm )。
本発明の他の特徴は、脂肪酸、その誘導体から選ばれる少なくとも1種で表面処理された重質炭酸カルシウムである。
本発明の更に他の特徴は、重質炭酸カルシウムを、焼成炉、ロータリーキルン、マイクロ波炉から選ばれる加熱装置を用いて200℃以上800℃以下で加熱処理することを特徴とする上記重質炭酸カルシウムの製造方法である。
本発明の更に他の特徴は、上記加熱処理した後、脂肪酸、その誘導体から選ばれる少なくとも1種で表面処理する重質炭酸カルシウムの製造方法である。
本発明の更に他の特徴は、上記記載の重質炭酸カルシウムを配合してなる樹脂組成物である。
本発明の更に他の特徴は、樹脂が硬化性樹脂である。
本発明の更に他の特徴は、一液型接着剤用の樹脂組成物である。
本発明の表面処理重質炭酸カルシウムによれば、乾式で生産できるためにコスト的に有利で、例えば、一液型湿気硬化性接着剤に配合するにあたって、予備乾燥することなく、あるいは簡単な予備乾燥で十分な脱水処理を可能とする重質炭酸カルシウムが提供される。更には乾燥した際の冷却時間も短縮できる。すなわち、工程簡略しても水分による経時の粘度変化が少ない貯蔵安定性に優れた接着剤、シーラントを提供することができる。
本発明に係る重質炭酸カルシウムは、下記の(1)と(2)の粒度特性と、(3)と(4)で示される水分値を満足することを特徴とする。
8,000 ≦A≦25,000 (1)
0.8 ≦B≦15 (2)
0 ≦C1≦1000 (3)
0 ≦C2≦150 (4)
但し、
A:空気透過法による比表面積(cm2 /g)、
B:炭酸カルシウム粉体の平均粒子径(μm)で、マイクロトラックMT3300レーザー式粒度分布計により測定した粒子の50%粒子径(d50)、
C1:カールフィッシャー法(加熱気化法)により常温〜300℃の間で測定される水分(ppm )、
C2:カールフィッシャー法(加熱気化法)により200〜300℃の間で測定される水分(ppm )。
本発明に係る重質炭酸カルシウムは、空気透過法による比表面積Aが8,000 〜25,000cm2 /gであることが必要で、好ましくは10,000〜20,000cm2 /gであり、更に好ましくは12,000〜18,000cm2 /gである。
比表面積Aが25,000cm2 /gを越えると分散性の点で好ましくなく、また、表面積が大きいので吸着水分も多くなる。乾燥工程を省略するには、10,000cm2 /gを越えると表面を疎水化する表面処理することが好ましい。一方、8,000 cm2 /g未満では、シーラントで使用するにはチキソ性が低く作業性に劣る。
空気透過法による比表面積Aは、下記の方法で測定した。
恒圧粉体比表面積測定装置(島津製作所製:SS−100)を使用して、下記の測定条件で測定した。
重質炭酸カルシウムの比重:2.7g/ml
試料:2.7g
通気させる水の量:5ml
試料層の厚み:比表面積10000cm2 /g未満の場合は、8mm〜9mmに調整
比表面積10000cm2 /g以上20000cm2 /g以下の場合は、9mm〜12mmに調整
比表面積20000cm2 /g超過の場合は、12mm〜13mmの間に調整
本発明に係る重質炭酸カルシウムは、Leeds & Northrup社製マイクロトラックMT3300で測定した平均粒径Bが0.8 〜15μmであることが必要で、1.5 〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは2 〜7 μmである。
平均粒径Bを0.8 μm未満にすることは技術上可能であるが、超微粉が多くなり、水分除去の点で不利であり、また樹脂中でも凝集した二次粒子のままで存在するため好ましくなく、一方、平均粒子径Bが15μmを越えると、例えば、接着剤中で沈降が発生するので好ましくない。
なお、マイクロトラックMT3300での測定に用いる媒体には、メタノールを用いた。
また、測定に際しては、測定に用いるメタノールスラリーに前分散として日本精機製作所製超音波分散機 Ultra Sonic Generator US-300Tを使用し、300 μAで60秒間照射した後に測定した。
本発明に係る重質炭酸カルシウムは、カールフィッシャー法(加熱気化法)による25〜300℃の間で測定される水分C1が1000ppm 以下であることが必要で、好ましくは700ppm以下であり、更に好ましくは500ppm以下である。C1が1000ppm を越えると通常乾燥工程が必要であり、加熱減圧して乾燥してもその工程に時間が掛かり、その後の冷却にも通常3〜4時間掛かる。従って、炭酸カルシウムを予備乾燥をしないで一液接着剤を得ることができる炭酸カルシウムフィラーを得る本発明の目的を果たせない。
また本発明における重質炭酸カルシウム、200〜300℃の間で測定される水分C2が、0 ≦C2≦150 (ppm )であることが必要で、好ましくは0 ≦C2≦100 (ppm )であり、より好ましくは0 ≦C2≦50(ppm )である。C2が150ppmを越えると、接着剤カートリッジ中で経時による増粘する可能性が高く貯蔵安定性に欠け、本発明の目的を果たせない。
水分C1 及びC2は、重質炭酸カルシウムを例えば品温200℃以上800℃以下で、より好ましくは品温250℃〜700℃で、更に好ましくは品温300℃〜600℃で一定時間加熱処理することにより小さくすることができる。特にC2は、重質炭酸カルシウム粉体中の超微粒子が比較的大きな粒子表面に焼結して、または粉砕により発生した数十Åのメゾポアが焼結により収縮したために、比表面積を低下させた結果水分が少なくなると考えられる。200℃より低い温度では粉体表面の吸着水分を離脱するだけで、化学吸着している水分は離脱しない。また、再吸湿性が高く本発明の目的を果たせない。また、800℃より高い温度で加熱処理すると、滞留時間にもよるが粒子内部まで生石灰化してPHを上昇させ、焼結により凝集した粗大粒子に成長するので好ましくない。
本発明において加熱処理に使用する加熱装置としては、例えば、トンネルキルン、ローラハウスキルン、プッシャーキルン、シャトルキルン、台車昇降式キルン、電気炉等が挙げられる。ロータリーキルンとしては、例えば、外熱式ロータリーキルン、内熱式ロータリーキルン、バッチ式ロータリーキルンが挙げられる。更に、これらの加熱装置にマイクロ波を組み合わせたマイクロ波炉等が挙げられる。好ましくは、コスト、作業性、熱履歴のムラを考慮するとロータリーキルンが好適であり、中でも好ましいのは外熱式ロータリーキルンである。内熱式ロータリーキルンは粉体の白色度を低下させる可能性があり、バッチ式は後工程の表面処理を考慮すると効率が悪いためである。
カールフィッシャー法(加熱気化法)による水分C1、C2は下記の方法で測定した。
水分気化装置(三菱化学社製:VA−100)を使用し、カールフィッシャー法水分計(三菱化学社製:CA−100)により重質炭酸カルシウムの水分量を3回測定し、それらの平均値とした。
尚、重質炭酸カルシウムサンプルは25℃に調整された部屋で2日間以上静置した後に測定される。測定条件は下記のとおりである。
昇温開始温度:25℃
昇温終了温度:300℃
ステップ温度:100℃
終点検出レベル:0.1μg/s
滴定開始延滞時間:2min
導通ガス:N2 ガス
導通ガス量:250ml/min
サンプル量:1g
本発明に係る重質炭酸カルシウムは、疎水系の表面処理を施した方が好適である。特に比表面積Aが10,000cm2 /gを超えると加熱処理した後に、その表面積に比例して経時で吸着水分が多くなるためである。その再吸着する水分量は加熱処理しない場合に比べて充分少ない値であるが、乾燥工程無しで使用するには問題がある。通常、配合量にもよるが800ppmを超えると乾燥が必要となる。加熱処理すると乾燥時間を大幅に短縮することができるが、広範囲に使用するならば表面処理して表面を疎水化して表面張力を下げる必要がある。特に、粘性やチキソ性が必要な場合は重質炭酸カルシウムの粒子径は小さい必要があり、その場合加熱処理だけでは十分な低水分を得られない。
本発明に用いられる表面処理剤は、有機物であれば特に限定されることなく用いることができる。具体的に例示すると、一価アルコールの高級脂肪酸エステル、多価アルコールの高級脂肪酸エステル、モンタワックスタイプの非常に長鎖のエステルの部分加水分解物等の脂肪酸エステル系滑剤;ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油および硬化ひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの非イオン界面活性剤が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。尚、上記一価アルコールとしては炭素数が1〜18であるメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられ、多価アルコールとしてはエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられ、高級脂肪酸としては炭素数が8〜18のラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
さらには、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸;前記脂肪酸のアマイド、エステルおよびビスアマイド;ステアリルアルコール等の高級アルコールまたは分岐高級アルコール;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムまたはその複合体等の金属石鹸系滑剤;C16以上の流動パラフィン、マイクロクリスタンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックスおよびこれらの部分酸化物、あるいはフッ化物、塩化物などの脂肪族炭化水素系滑剤;シリコンオイル、大豆油、ヤシ油、パーム核油、アマニ油、ナタネ油、綿実油、キリ油、ヒマシ油、牛脂、スクワラン、ラノリン、硬化油等の油剤;N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩;アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンおよびアルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホンコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩等のスルホン酸塩;硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル塩;アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩;脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等の陽イオン界面活性剤;カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド等の非イオン界面活性剤;フッ素系界面活性剤;ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル等の反応系界面活性剤等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。更には、上記した非イオン界面活性剤と組み合わせて用いられる。
これらの表面処理剤の中では、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の飽和脂肪酸およびそのメチルエステル、ブチルエステルが性能的にもコスト的にも好ましい。
上記の如くして得られた重質炭酸カルシウムは、低水分であるので、水分で硬化する硬化性樹脂、例えば、接着剤やシーラント等に好適に配合することができる。本発明に係わる一液タイプ湿気硬化型接着剤及びシーラントには、一液湿気硬化型ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、ポリサルファイド、エポキシ樹脂などが例示される。
一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤及びシーラントは、分子の末端部分に合計2個以上の活性水素を有する通常分子量が100〜20000のポリオールと芳香族ポリイソシアネート類や脂肪族あるいは脂環族ポリイソシアネート類などのポリイソシアネート化合物との反応によって得られるウレタンプレポリマーと、ウレタンプレポリマーと、充填剤、ポリエチレン繊維やシリカなどの添加剤、希釈剤とからなる。
シリコーン樹脂系接着剤及びシーラントは、分子末端にアルコキシシリル基を持ち主鎖構造がアルキレン構造であるシリコーン系ポリマー、例えばトリアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基等の1種以上を分子末端に持ち、主鎖構造がエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンのような繰り返し単位のポリアルキレン構造を持つ数平均分子量が1000〜30000のポリマーが使用される。
変成シリコーン樹脂系接着剤及びシーラントは、加水分解性ケイ素官能基を末端に持つポリエーテル共重合体であり、硬化触媒の作用によって、末端が加水分解するともに末端同士が結合し、硬化するものであり、主鎖構造にはエーテル結合を有するものなどが採用される。具体例としてポリ(メチルジメトキシシリルエーテル)などが挙げられる。
変成シリコーン樹脂の硬化触媒としては、公知のものが使用でき、例えばオクチル酸錫、ステアリン酸錫、ナフテン酸鉄、オクチル酸鉛などの有機カルボン酸塩、ジ−n−ブチル錫−ジラウレート、ジ−n−ブチル錫−ジフタレート 等の有機錫などを単独若しくは混合して採用できる。
なお、変成シリコーン樹脂単独でもよいし、エポキシ樹脂を併用することもできる。エポキシ樹脂を併用することにより接着剤の凝集力と硬度を付与できるため、接着層に要求される性能に対応した配合が決められればよい。
エポキシ樹脂が併用される場合には、エポキシ樹脂の硬化剤である脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、ノルボルナンジアミン−エポキシアダクト体、親水性ケチミン或いは疎水性ケチミン等が採用される。
ポリサルファイド樹脂系接着剤及びシーラントは、末端に反応性メルカプト基を持つ重合体であり、分子量は200〜20000が適合し、当樹脂に充填材、可塑剤、反応調製剤、粘着性付与剤などの添加物が配合されて調製されたものが使用される。
本発明の重質炭酸カルシウムを、これら一液型湿気硬化性接着剤に配合する際に、重質炭酸カルシウムを予備乾燥せずに使用できるので作業性、コスト面で非常に有利である。
本発明の重質炭酸カルシウムの配合量は、必要に応じて調整されるが、これら一液型湿気硬化性接着剤及びシーラント全量に対して1〜200重量部が一般的である。例えば、一液湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤においては、ウレタンプレポリマー100重量部に対して重質炭酸カルシウは10〜300重量部程度、好ましくは25〜200重量部程度添加配合すればよい。
一液湿気硬化型ウレタン系接着剤及びシーラント組成物に対して、適切な粘度とチキソ性を付与する目的のために、ポリエチレン繊維やシリカを配合して塗布作業性、くし目のヤマ立ち、キレ及び、接着剤被膜の凝集力を更に付与することもできる。配合量は任意であるが、たとえば、ウレタンプレポリマー100重量部に対して0.1〜10重量部程度、好ましくは0.5〜8重量部程度添加配合すればよい。
一液湿気硬化型ウレタン系接着剤及びシーラント組成物に、希釈作用によりその粘度を低下させる目的のために希釈剤として、例えば、トルエン、キシレン、ミネラルスピリッツ等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ガソリンから灯油留分にいたる石油系溶剤類、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素系溶剤等が挙げられ、さらには、VOC対策の面からは、N−アルキル−2−ピロリドン(ここでアルキル基はオクチル基以上であればよい)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート−2−エチルヘキサノエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ−2−エチルヘキサノエート、リシノール酸のアルキルエステル(ここでアルキル基は炭素数1以上である)やアジピン酸のジアルキルエステル(ここでアルキル基は炭素数8以上である)等を配合することもできる。ハンドリングの容易さやコスト面からは芳香族系溶剤が好ましい。希釈剤および又は可塑剤として、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルアジペート、ジイソデシルフタレート、トリオクチルホスヘート、トリス(クロロエチル)フォスフェート、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、エポキシステアリン酸アルキル、エポキシ化大豆油等が挙げられ、これらは単独又は混合して使用することができる。
配合量は任意であるが、たとえば、ウレタンプレポリマー100重量部に対して1〜100重量部程度、好ましくは5〜50重量部程度添加配合すればよい。
さらに、一液湿気硬化型ウレタン系接着剤及びシーラント組成物に、従来公知の任意成分が含有されていてもよい。例えば、アエロジル、合成炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、珪砂等の充填剤が使用できるが、予備乾燥が必要でないアエロジルが好適である。酸化チタン、カーボンブラック、その他の染料或いは顔料等の着色剤、粘接着付与剤、増粘剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、顔料分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤等の任意成分が含有されていてもよい。
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はかかる実施例、比較例により何ら制限されるものではない。尚、以下の記載において、部は重量部を表わす。
実施例1
市販の重質炭酸カルシウムであるスーパーS(丸尾カルシウム社製)を使用し、外熱式ロータリーキルン(高砂工業社製;外形寸法Φ150×2000mm)で、外熱温度620℃、レトルト回転数4rpm、角度60mm、投入量6kg/ hの条件にて加熱処理した。この時、品温は490℃、滞留時間は約10分であった。この産物を放冷して、ハイボルター300型(東洋ハイテック製;ノンライナー)に目開き75μmのメッシュを装着して、粗粒子や凝集粒子を篩分け除去して表1に示す粉体物性を有する重質炭酸カルシウムを得た。
実施例2
市販の重質炭酸カルシウムであるスーパーSS(丸尾カルシウム社製)を使用した以外は実施例1と同様に加熱処理した。この産物を放冷してスーパーミキサーSMV−20(カワタ製)を使用して表面処理した。ミキサーにこの産物を6kg投入し、加温しながら品温が70℃になってから、牛脂脂肪酸エステル48gを撹拌しながら添加して品温が130℃に達するまで撹拌加熱処理した。その後、実施例1と同様に篩工程を経て表1に示す粉体物性を有する表面処理重質炭酸カルシウムを得た。
実施例3
市販の重質炭酸カルシウムであるスーパーSSS(丸尾カルシウム社製)を使用して電気炉中に400℃で1時間強熱処理した。その産物を実施例1と同様に篩工程を経て表1に示す粉体物性を有する重質炭酸カルシウムを得た。
実施例4
市販の重質炭酸カルシウムであるスーパーSSS(丸尾カルシウム社製)を実施例3と同様に加熱処理し、実施例2と同様に表面処理した。その産物を実施例1と同様に篩工程を経て表1に示す粉体物性を有する表面処理重質炭酸カルシウムを得た。ただし、表面処理剤はステアリン酸であり70℃で溶融させて投入した。その量は36gとした。
実施例5
市販の重質炭酸カルシウムであるスーパー#1700(丸尾カルシウム社製)を使用した以外は実施例4と同様に、加熱処理、表面処理、篩工程を経て表1に示す粉体物性を有する表面処理重質炭酸カルシウムを得た。ただし、表面処理剤はステアリン酸ブチルであり、その量は60gとした。
実施例6
市販の重質炭酸カルシウムであるスーパー#2000(丸尾カルシウム社製)を使用した以外は実施例4と同様に、加熱処理、表面処理、篩工程を経て表1に示す粉体物性を有する表面処理重質炭酸カルシウムを得た。ただし、表面処理剤であるステアリン酸の量は60gとした。
実施例7
電気炉の温度条件を250℃で1時間にした以外は実施例6と同様に表面処理、篩工程を経て表1に示す粉体物性を有する表面処理重質炭酸カルシウムを得た。
実施例8
市販の重質炭酸カルシウムであるカルテックス5(丸尾カルシウム社製)を、流体分級機ターボクラシファイアTC−15を用いて、フィード量1.0kg/ h、ローター回転数12000rpm、風量1.5m3 / minの条件で分級し、粗粉側を回収した。これを電気炉中に400℃で1時間加熱処理した。その産物を実施例6と同様に表面処理、篩工程を経て表1に示す粉体物性を有する表面処理重質炭酸カルシウムを得た。但し、表面処理剤であるステアリン酸の量は82.5gとした。
比較例1
市販の重質炭酸カルシウムであるN−35(丸尾カルシウム社製)。
比較例2
市販の重質炭酸カルシウムであるスーパーS(丸尾カルシウム社製)。
比較例3
市販の表面処理重質炭酸カルシウムであるMCコートS−13(丸尾カルシウム社製)。
比較例4
市販の表面処理重質炭酸カルシウムであるMCコートS−20(丸尾カルシウム社製)。
比較例5
分級しなかったこと以外は実施例8と同様に、表面処理して、篩工程を経て表1に示す粉体物性を有する表面処理重質炭酸カルシウムを得た。
Figure 2014019605
実施例9〜16、比較例6〜10
実施例1〜8、比較例1〜5によって得られた重質炭酸カルシウムを用いて、下記要領にて各合成樹脂組成物を作成し、貯蔵安定性試験を行った。試験結果を表2に記す。
尚、シリカは110℃、3時間オーブンで事前乾燥したが、重質炭酸カルシウムについては事前乾燥はおこなっていない。
(ポリウレタン一液接着剤)
L−1036 :540部 三井武田ケミカル社製(ポリウレタン樹脂)
ミネラルスピリット:60部 (溶剤)
アエロジル200 :2.4部 デグッサジャパン社製(シリカ)
重質炭酸カルシウム:400部
<貯蔵安定性試験>
上記配合で、ダルトン万能混合機(ダルトン社製:2L)を用いて攪拌混合して、合成樹脂組成物を得た。これをカートリッジに詰めて、23℃×1日経過した粘度(2rpm:V1、20rpm:V2)、TI値(TI23値:V1/V2)を測定し、その後、70℃×1日経過後の粘度(2rpm:V3、20rpm:V4)、TI値(TI70値:V3/V4)を測定し、更に、粘度変化率(2rpm:V3/V1×100、20rpm:V4/V2×100)を測定して貯蔵安定性を評価した。
<塗布外観>
また、上記配合で混合撹拌した合成樹脂組成物を取り、スレート板に約1mmに薄く延ばして、その外観を目視で以下の判定基準で判断した。
○;塗布面が均一で凝集物が見当たらない。
△;塗布面は均一であるが凝集物が数個確認できる。
×;塗布面が不均一で凝集物が多く確認できる。
<沈降試験>
また、上記配合で混合撹拌した合成樹脂組成物を透明なマヨネーズ瓶に入れて、恒温恒湿槽中に静置して70℃×7日経過した合成樹脂組成物を目視で以下の判定基準で判断した。
○:沈降物は全く無いか瓶底に僅かに沈降物が見られる。
△:瓶底に薄く沈降物が見られるが支障なく使用できる。
×:瓶底でハードケーキになっている。
Figure 2014019605
以上のように、本発明の重質炭酸カルシウムは、前処理の乾燥工程を省略しても貯蔵安定性が良く、チキソ性を維持した接着剤を提供することができる。
実施例17〜24、比較例11〜15
実施例1〜8、比較例1〜5によって得られた重質炭酸カルシウムを用いて、下記要領にて各合成樹脂組成物を作成し、貯蔵安定性試験を行った。試験結果を表3に記す。
尚、シリカは110℃、3時間オーブンで事前乾燥したが、重質炭酸カルシウムについては事前乾燥はおこなっていない。
(変性シリコーン一液シーラント)
MSポリマー203 :540部 カネカ社製(変性シリコーン樹脂)
DINP :30部 ジェイプラス社製(溶剤)
アエロジル200 :8部 デグッサジャパン社製(シリカ)
KBM1003 :3部 信越化学工業社製(脱水剤)
ネオスタンU220H:1部 日東化成社製(スズ触媒)
KBM−603 :1部 信越化学工業社製(接着付与剤)
重質炭酸カルシウム :100部
<貯蔵安定性試験>
上記配合で、ダルトン万能混合機(ダルトン社製:2L)を用いて攪拌混合して、合成樹脂組成物を得た。これをカートリッジに詰めて、23℃×1日経過した粘度(1rpm:V1、10rpm:V2)、TI値(TI23値:V1/V2)を測定し、その後、50℃×7日経過後の粘度(1rpm:V3、10rpm:V4)、TI値(TI50値:V3/V4)を測定し、更に、粘度変化率(1rpm:V3/V1×100、10rpm:V4/V2×100)を測定して貯蔵安定性を評価した。
<分散性試験>
また、上記配合で混合攪拌した合成樹脂組成物を取り、ガラス板に縦5cm以上、横5cm以上、厚み1mm以下になるようにヘラで薄く塗り広げた。その外観を目視により以下の基準で判定した。
○:5cm四方の塗布面に0.5mm以上の凝集物が見当たらない。
△:5cm四方の塗布面に0.5mm以上の凝集物が1個または2個ある。
×:5cm四方の塗布面に0.5mm以上の凝集物が3個以上ある。
Figure 2014019605
以上のように、本発明の重質炭酸カルシウムは、前処理の乾燥工程を省略しても貯蔵安定性に優れたシーラントを提供することができる。
以上のとおり、本発明の表面処理重質炭酸カルシウムは、乾式で生産できるためにコスト的に有利で、例えば、一液型湿気硬化性接着剤やシーラント等の硬化性樹脂に配合するにあたって、予備乾燥することなく、あるいは簡単な予備乾燥で十分な脱水処理を可能とする表面処理重質炭酸カルシウムが提供される。
また、本発明の表面処理重質炭酸カルシウムは、低水分性であるため、バイオプラスチック、PETやPENのような加水分解しやすいポリエステル系の樹脂や、ガラス転移点が高く高温で混練する必要があるナイロン、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックと呼ばれる樹脂にも好適で、その有用性は極めて大である。

Claims (7)

  1. 下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とする重質炭酸カルシウム。
    8,000 ≦A≦25,000 (1)
    0.8 ≦B≦15 (2)
    0 ≦C1≦1000 (3)
    0 ≦C2≦150 (4)
    但し、
    A:空気透過法による比表面積(cm2 /g)、
    B:炭酸カルシウム粉体の平均粒子径(μm)で、マイクロトラックMT3300レーザー式粒度分布計により測定した粒子の50%粒子径(d50)、
    C1:カールフィッシャー法(加熱気化法)により25〜300℃の間で測定される水分(ppm )、
    C2:カールフィッシャー法(加熱気化法)により200〜300℃の間で測定される水分(ppm )。
  2. 脂肪酸、その誘導体から選ばれる少なくとも1種で表面処理されたことを特徴とする請求項1記載の重質炭酸カルシウム。
  3. 重質炭酸カルシウムを、焼成炉、ロータリーキルン、マイクロ波炉から選ばれる加熱装置を用いて200℃以上800℃以下で加熱処理することを特徴とする請求項1記載の重質炭酸カルシウムの製造方法。
  4. 請求項3に記載の加熱処理した後、脂肪酸、その誘導体から選ばれる少なくとも1種で表面処理することを特徴とする請求項2記載の重質炭酸カルシウムの製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載の重質炭酸カルシウムを配合してなることを特徴とする樹脂組成物。
  6. 樹脂が硬化性樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
  7. 熱可塑性樹脂が一液型接着剤又は一液型シーラント用であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
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