JP6800445B2 - 表面修飾ナノダイヤモンド、前記表面修飾ナノダイヤモンドを含む分散液、及び複合材料 - Google Patents

表面修飾ナノダイヤモンド、前記表面修飾ナノダイヤモンドを含む分散液、及び複合材料 Download PDF

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Description

本発明は、表面修飾ナノダイヤモンド、前記表面修飾ナノダイヤモンドを含む分散液、及び前記表面修飾ナノダイヤモンドを含む複合材料に関する。
ナノダイヤモンドは、高い機械的強度や、高屈折率、高い熱伝導度等を示し得る。そこで、樹脂にナノダイヤモンドを配合することによって前記特性を樹脂に付与することが行われている。
しかし、ナノダイヤモンド粒子(=ナノサイズのダイヤモンド粒子)は、一般に、表面原子の割合が大きいので、隣接粒子の表面原子間で作用し得るファンデルワールス力の総和が大きく、凝集(aggregation)しやすい。これに加えて、ナノダイヤモンド粒子の場合、隣接結晶子の結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成する凝着(agglutination)という現象が生じ得る。そのため、ナノダイヤモンド粒子は一次粒子の状態で樹脂中に分散させることは非常に困難であった。そこで、ナノダイヤモンド粒子の表面を修飾することによりナノダイヤモンド粒子に分散性を付与し、凝集を抑制することが行われている。
特許文献1には、フッ素原子を含有する基で表面修飾されたナノダイヤモンドであってナノダイヤモンドにフッ化アルキルカルボン酸を反応させて得られるものが記載され、当該表面修飾ナノダイヤモンドを、室温で液状のフッ素樹脂に配合することが記載されている。
特開2017−8248号公報
一方、室温で固体を呈する樹脂材料にナノダイヤモンド粒子を充分に分散させるためには、樹脂材料が溶融した状態でナノダイヤモンド粒子を添加し、混練する必要があるが、フッ化アルキルカルボン酸によって表面修飾したナノダイヤモンドは、155℃程度の温度で修飾基が熱分解してナノダイヤモンド表面から離脱することにより分散性を喪失するため、溶融混練温度が200℃以上である樹脂材料(例えば、熱可塑性フッ素樹脂等のエンジニアリングプラスチック)に、当該表面修飾ナノダイヤモンドの分散性を維持しつつ、高分散させることは困難であった。
従って、本発明の目的は、耐熱性に優れ、200℃以上の高温環境下でも、分散性及び樹脂に対する親和性に優れた表面修飾ナノダイヤモンドを提供することにある。
本発明の他の目的は、前記表面修飾ナノダイヤモンドが有機溶媒中に高分散してなるナノダイヤモンド分散液を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記表面修飾ナノダイヤモンドが樹脂中に高分散してなる複合材料を提供することにある。
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下の事項を見いだした。
1.ナノダイヤモンド粒子の表面官能基にフッ化アルキルホスホン酸を反応させて得られる表面修飾ナノダイヤモンドは、分散性と樹脂(特に、フッ素樹脂)に対する親和性に優れること
2.フッ化アルキルホスホン酸は、ナノダイヤモンド粒子の表面官能基である水酸基と脱水縮合により強固な一次結合を形成することができ、200℃以上の高温環境下でも分解することなくナノダイヤモンド粒子表面への結合を維持することができること
本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本発明は、ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾するフッ化アルキルホスホン酸残基とを含む、表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
本発明は、また、フッ化アルキルホスホン酸残基が、下記式(1’)及び/又は(2’)で表されるフッ化アルキルホスホン酸残基である、前記表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
(式中、mは0〜20の整数を示し、nは1〜10の整数を示す。式中の波線が付された、リン原子と一重結合で結合する酸素原子から出る結合手が、ナノダイヤモンド粒子の表面に結合する)
本発明は、また、熱分解開始温度が250℃以上である、前記表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
本発明は、また、有機溶媒と、上記表面修飾ナノダイヤモンドとを、前記有機溶媒100質量部に対して前記表面修飾ナノダイヤモンドを0.0001〜10質量部の割合で含有する、ナノダイヤモンド分散液を提供する。
本発明は、また、樹脂と前記表面修飾ナノダイヤモンドとを含む、複合材料を提供する。
本発明は、また、樹脂と前記表面修飾ナノダイヤモンドとの溶融混合物である、前記複合材料を提供する。
本発明は、また、樹脂が、ガラス転移温度又は融点が150℃以上の熱可塑性樹脂である、前記複合材料を提供する。
本発明は、また、樹脂が、熱可塑性フッ素樹脂である、前記複合材料を提供する。
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは、その表面に耐熱性に優れたフッ化アルキルホスホン酸残基を備えるため、200℃以上の高温環境下でも、優れた分散性及び樹脂に対する良好な親和性を発揮することができる。従って、本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは成形温度(若しくは溶融温度)が高い熱可塑性樹脂にも、分散性及び樹脂に対する親和性を喪失することなく溶融混合することができ、樹脂の結晶化度を向上させ、樹脂が透明である場合はその透明性を保持しつつ、ナノダイヤモンドが有する特性(例えば、高い機械的強度、高屈折率、高い熱伝導度等)を付与することができる。
更に、本発明の複合材料は、結晶化度が高い樹脂中に前記表面修飾ナノダイヤモンドを高度に分散した状態で含有するため、ナノダイヤモンドが有する特性を高度に具備する。従って、本発明の複合材料は、結晶性溶融成型樹脂等として、溶融成型により製造される物品であってナノダイヤモンドが有する特性を具備することが望まれる種々の物品の形成材料として好適に使用することができる。
更にまた、本発明の表面修飾ナノダイヤモンドを有機溶媒中に分散させてなるナノダイヤモンド分散液は、摩擦係数を下げる作用(減摩作用)を有する。そのため、減摩剤若しくは潤滑剤(上述の通り耐熱性に優れるため、好ましくは耐熱性減摩剤若しくは耐熱性潤滑剤)として機械部品(例えば、自動車や航空機等)の摺動部等に好適に使用される。
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの一例を示す拡大模式図である。 実施例2で得られた複合材料の断面のTEM写真である。 比較例2で得られた複合材料の断面のTEM写真である。白い点線で囲った範囲に大きく凝集したND粒子が確認できる。 比較例2で得られた複合材料の断面のTEM写真であり、図3のTEM写真をさらに拡大したものである。ナノダイヤモンドの一次粒子が凝集している様子が確認できる。
[表面修飾ナノダイヤモンド]
本発明の表面修飾ナノダイヤモンド(以後、ナノダイヤモンドを「ND」と称する場合がある)は、ND粒子と、前記ND粒子の表面を修飾するフッ化アルキルホスホン酸残基とを含む。
図1は本発明の表面修飾NDの一例を示す拡大模式図であり、表面修飾ND[1]は、ND粒子[2]の表面に、フッ化アルキルホスホン酸残基[3]を備える。
表面修飾NDを構成するND粒子は、ナノダイヤモンドの一次粒子を含むことが好ましい。その他、前記一次粒子が数個〜数十個程度凝集した二次粒子を含んでいても良い。また、表面修飾NDの表面には、フッ化アルキルホスホン酸残基以外にも他の表面官能基(例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等)を1種又は2種以上有していてもよい。
前記ND粒子としては、例えば、爆轟法ND(すなわち、爆轟法によって生成したND)や、高温高圧法ND(すなわち、高温高圧法によって生成したND)を使用することができる。本発明においては、なかでも、より分散性に優れる点で、すなわち一次粒子の粒子径が一桁ナノメートルである点で、爆轟法NDが好ましい。
前記爆轟法NDには、空冷式爆轟法ND(すなわち、空冷式爆轟法によって生成したND)と水冷式爆轟法ND(すなわち、水冷式爆轟法によって生成したND)が含まれる。本発明においては、なかでも、空冷式爆轟法NDが水冷式爆轟法NDよりも一次粒子が小さい点で好ましい。
前記ND粒子のpH4〜5におけるゼータ電位は、ポジティブであってもネガティブであってもよいが、なかでもポジティブであることが、後述のフッ化アルキルホスホン酸との反応性に特に優れ、フッ化アルキルホスホン酸由来のフッ化アルキルホスホン酸残基を表面修飾基として形成し易い点で好ましい。pH4〜5におけるND粒子のゼータ電位とは、ND濃度が0.2質量%で25℃のND水分散液(pH4〜5)におけるND粒子について測定される値とする。ND濃度0.2質量%のND水分散液の調製のためにND水分散液の原液を希釈する必要がある場合には、希釈液として超純水を用いるものとする。
前記ND粒子を表面修飾するフッ化アルキルホスホン酸残基はフッ化アルキル基を有するホスホン酸のホスホリル基から1つ又は2つの水素原子を除いた基である。
前記フッ化アルキル基としては、例えば、炭素数2〜25(好ましくは5〜20、特に好ましくは5〜15、特に好ましくは8〜12)の、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(好ましくは直鎖状アルキル基)の水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された基が、ND粒子に分散性と樹脂(特に、フッ素樹脂)に対する良好な親和性を付与することができる点で好ましく、なかでも、式[CF3−(CF2m−(CH2n−](式中、mは0〜20の整数を示し、nは1〜10の整数を示す。式中の右端から出る結合手が、フッ化アルキルホスホン酸残基を構成するリン原子に結合する)で表される基が好ましい。
前記ND粒子を表面修飾するフッ化アルキルホスホン酸残基は、例えば、下記式(1)及び/又は(2)で表される。
(式中、Rfはフッ化アルキル基を示す。式中の波線が付された、リン原子と一重結合で結合する酸素原子から出る結合手が、ナノダイヤモンド粒子の表面に結合する)
前記ND粒子を表面修飾するフッ化アルキルホスホン酸残基としては、なかでも、下記式(1’)及び/又は(2’)で表される基が好ましい。
(式中、mは0〜20の整数を示し、nは1〜10の整数を示す。式中の波線が付された、リン原子と一重結合で結合する酸素原子から出る結合手が、ナノダイヤモンド粒子の表面に結合する)
従って、ND粒子と反応させることにより表面修飾としてのフッ化アルキルホスホン酸残基を形成するフッ化アルキルホスホン酸としては、炭素数2〜25(好ましくは5〜20、特に好ましくは5〜15、特に好ましくは8〜12)の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(好ましくは直鎖状アルキル基)の水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されたフッ化アルキル基を有するホスホン酸が好ましく、特に、式[CF3−(CF2m−(CH2n−P(=O)(OH)2](式中、mは0〜20の整数を示し、nは1〜10の整数を示す)で表される化合物が好ましい。
フッ化アルキルホスホン酸としては、例えば、1−(トリフルオロメチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロエチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロプロピル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロブチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロペンチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロヘキシル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロヘプチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロオクチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロノニル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロデシル)メチルホスホン酸、2−(トリフルオロメチル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロエチル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロプロピル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロブチル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロペンチル)メチルホスホン酸、2−(パーフルオロヘキシル)エチルホスホン酸(=1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチル)ホスホン酸)、2−(パーフルオロヘプチル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロオクチル)エチルホスホン酸(=(1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル)ホスホン酸)、2−(パーフルオロノニル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロデシル)エチルホスホン酸、3−(トリフルオロメチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロエチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロプロピル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロブチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロペンチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロヘキシル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロヘプチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロオクチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロノニル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロデシル)プロピルホスホン酸、4−(トリフルオロメチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロエチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロプロピル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロブチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロペンチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロヘキシル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロヘプチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロオクチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロノニル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロデシル)ブチルホスホン酸、5−(トリフルオロメチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロエチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロプロピル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロブチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロペンチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロヘキシル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロヘプチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロオクチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロノニル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロデシル)ペンチルホスホン酸、6−(トリフルオロメチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロエチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロプロピル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロブチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロペンチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロへキシル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロヘプチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロオクチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロノニル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロデシル)ヘキシルホスホン酸等が挙げられる。
本発明の表面修飾NDは、上述のフッ化アルキルホスホン酸由来のフッ化アルキルホスホン酸残基が親水的なND粒子の表面を修飾し、これによって分散性と樹脂に対する親和性が実現される。
本発明の表面修飾NDの粒子径(D50)は、例えば200nm以下であり、好ましくは170nm以下、より好ましくは160nm以下、より好ましくは150nm以下である。表面修飾NDの粒子径(D50)の下限は、例えば50nmである。また、粒子径(D90)は、例えば200nm以下であり、好ましくは180nm以下、より好ましくは170nm以下である。表面修飾NDの粒子径(D90)の下限は、例えば50nmである。表面修飾NDの粒子径が小さいほど、後述の複合材料において高い透明性が得られる点で好ましい。尚、表面修飾NDの(平均)粒子径は、動的光散乱法によって測定することができる。
以上のような構成を具備する表面修飾NDは、分散性や樹脂に対する親和性と共に、高い熱分解開始温度(すなわち、高い耐熱性)を実現するのに適する。その理由は次の通りである。
ND粒子は表面官能基として水酸基を有する。前記ND粒子とフッ化アルキルホスホン酸とを反応させると、ND粒子の表面官能基である水酸基と、フッ化アルキルホスホン酸のホスホリル基[−P(=O)(OH)2]が脱水縮合反応を行って、疎水性を示すフッ化アルキル基が外側を向いた状態で表面修飾基を形成する。このような表面修飾基を備えたND粒子は、表面修飾基を有しないND粒子よりも、表面修飾基の立体障害によりND粒子同士の凝集が抑制され、優れた分散性を発揮することができる。また、前記フッ化アルキル基が樹脂(特に、フッ素樹脂)に対して良好な親和性を示すため、樹脂に対して良好な濡れ性を発揮することができ、樹脂に対してなじみ易さを発揮することができる。
(式中、Rfはフッ化アルキル基を示す)
また、フッ化アルキルホスホン酸は、ND粒子の表面官能基と前記の通り反応して、一次結合によりND粒子の表面に強固に結合する修飾基を形成することができる。そのように形成された表面修飾基は熱的安定性に優れるため、本発明の表面修飾ND(フッ化アルキルホスホン酸由来の表面修飾基を備えたND粒子)は、高い温度環境下でも、表面修飾基の分解や離脱を抑制して、表面修飾基のND粒子表面への結合を維持することができ、ND粒子の分散性と樹脂に対する親和性とを維持することができる。
本発明の表面修飾NDの熱分解開始温度は、例えば250℃以上であり、好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上である。熱分解開始温度の上限は、例えば500℃程度、好ましくは450℃、特に好ましくは400℃である。尚、本発明において、熱分解開始温度とは、ND粒子と表面修飾基との間の熱分解に帰属される温度であり、表面修飾NDの粉体を、空気雰囲気下かつ昇温速度10℃/分の条件で示差熱熱重量同時測定(TG-DTA)に付すことによって求められる。
以上のように、本発明の表面修飾NDは耐熱性に優れ、200℃以上の高温環境下でも、優れた分散性及び樹脂に対する良好な親和性を発揮することができる。そして、本発明の表面修飾NDを樹脂に配合することにより、樹脂の結晶化度を向上させることができ、高い機械的強度、高屈折率、高い熱伝導度等のNDの特性を樹脂に付与することができる。本発明の表面修飾NDを使用すれば、樹脂との複合材料を製造する際の、樹脂の選択肢の幅が飛躍的に広がり、熱若しくは光硬化性樹脂や汎用プラスチックだけでなく、エンジニアリングプラスチック(汎用エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックが含まれる)等の高い成形温度(若しくは溶融温度)を有する熱可塑性樹脂も選択可能となる。
[表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法]
本発明の表面修飾NDは、例えば、爆轟法によってND粒子を生成し、生成したND粒子にフッ化アルキルホスホン酸を反応させることにより製造することができる。
前記爆轟法には、空冷式爆轟法と水冷式爆轟法が含まれる。本発明においては、なかでも、空冷式爆轟法が水冷式爆轟法よりも一次粒子が小さいNDを得ることができる点で好ましい。
また、爆轟は大気雰囲気下で行っても良く、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、二酸化炭素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行っても良い。
以下に、本発明の表面修飾NDの製造方法の一例を以下に説明するが、本発明の表面修飾NDは以下の製造方法によって得られるものに限定されない。
(生成工程)
空冷式であって不活性ガス雰囲気下での爆轟法によりNDを生成する場合、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において大気組成の常圧の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉する。容器は例えば鉄製で、容器の容積は例えば0.5〜40m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。TNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、例えば40/60〜60/40の範囲である。
生成工程では、次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させる。爆轟とは、化学反応に伴う爆発のうち反応の生じる火炎面が音速を超えた高速で移動するものをいう。爆轟の際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によってNDが生成する。生成したNDは、隣接する一次粒子ないし結晶子の間がファンデルワールス力の作用に加えて結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成し、凝着体を成す。
生成工程では、次に、例えば、室温において24時間程度放置することにより放冷し、容器およびその内部を降温させる。この放冷の後、容器の内壁に付着しているND粗生成物(上述のようにして生成したNDの凝着体および煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ND粗生成物を回収する。以上のような方法によって、ND粒子の粗生成物を得ることができる。
(精製工程;酸処理工程)
酸処理工程は、原料であるND粗生成物に例えば水溶媒中で強酸を作用させて金属酸化物を除去する工程である。爆轟法で得られるND粗生成物には金属酸化物が含まれやすく、この金属酸化物は、爆轟法に使用される容器等に由来するFe、Co、Ni等の酸化物である。例えば水溶媒中で所定の強酸を作用させることにより、ND粗生成物から金属酸化物を溶解・除去することができる。この酸処理に用いる強酸としては鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、及びこれらの混合物(=混酸)等が挙げられる。酸処理で使用する強酸の濃度は例えば1〜50質量%である。酸処理温度は例えば70〜150℃である。酸処理時間は例えば0.1〜24時間である。また、酸処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような酸処理の後は、例えばデカンテーションにより、沈殿液のpHが例えば2〜3に至るまで、固形分(ND凝着体を含む)の水洗を行うことが好ましい。爆轟法で得られるND粗生成物における金属酸化物の含有量が少ない場合には、以上のような酸処理は省略してもよい。
(精製工程;酸化処理工程)
酸化処理工程は、酸化剤を用いてND粗生成物からグラファイトを除去する工程である。爆轟法で得られるND粗生成物にはグラファイト(黒鉛)が含まれるが、このグラファイトは、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちND結晶を形成しなかった炭素に由来する。例えば上記の酸処理を経た後に、水溶媒中で所定の酸化剤を作用させることにより、ND粗生成物からグラファイトを除去することができる。この酸化処理に用いられる酸化剤としては、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、硝酸、及びこれらの混合物やこれらの塩が挙げられる。酸化処理で使用される酸化剤の濃度は例えば3〜50質量%である。酸化処理における酸化剤の使用量は、酸化処理に付されるND粗生成物100質量部に対して例えば300〜500質量部である。酸化処理温度は例えば100〜200℃である。酸化処理時間は例えば1〜24時間である。酸化処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような酸化処理の後、例えばデカンテーションまたは遠心沈降法により、固形分(ND凝着体を含む)の水洗を行う。水洗当初の上清液は着色しているが、この上清液が目視で透明になるまで、当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。水洗を繰り返すことにより、不純物である電解質(NaCl等)が低減ないし除去される。電解質濃度が低いことは、本方法によって得られるND粒子について高い分散性および高い分散安定性を実現するうえで好適である。
このような酸化処理の後、NDをアルカリ溶液で処理してもよい。当該アルカリ処理により、ND表面の酸性官能基(例えばカルボキシル基)を塩(例えばカルボン酸塩)に変換することが可能である。使用されるアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液が挙げられる。当該アルカリ処理において、アルカリ溶液濃度は、例えば1〜50質量%であり、処理温度は例えば70〜150℃であり、処理時間は例えば0.1〜24時間である。また、このようなアルカリ処理の後、NDを酸溶液で処理に付してもよい。当該酸処理に付すことにより、ND表面の酸性官能基の塩を再び遊離の酸性官能基に戻すことが可能である。使用される酸溶液としては、塩酸等が挙げられる。当該酸処理は、室温で行ってもよく、加熱下で行ってもよい。酸化処理後のアルカリ処理や、その後の酸処理を経たNDについては、例えばデカンテーションまたは遠心沈降法により、固形分(ND凝着体を含む)の水洗を行うことが好ましい。
(酸素酸化工程)
本方法では、次に、酸素酸化工程を設けることが好ましい。酸素酸化工程は、精製工程を経て得られたNDの表面を酸化して酸素含有基を形成する工程である。酸素酸化は、酸素雰囲気下、又は窒素で希釈された酸素雰囲気下で加熱処理(例えば、300〜400℃の温度で1〜5時間程度加熱する処理)を行うことが好ましい。
(水素化工程)
本方法では、次に、水素化工程を設けることが好ましい。水素化工程は、酸素酸化工程を経て得られた酸素含有基を有するNDを水素雰囲気下、又は窒素で希釈された水素雰囲気下で加熱処理(例えば、500〜700℃の温度で1〜10時間程度加熱する処理)を施すことにより、表面官能基として水酸基を有するNDを生成する工程である。
(解砕工程)
本方法では、次に、解砕工程を設けることが好ましい。解砕工程は、ND凝着体を含有する溶液を解砕若しくは分散化処理に付すことによってND凝着体(二次粒子)をND一次粒子に解砕若しくは分散化するための工程である。以上のような一連の過程を経て得られる爆轟法NDは、一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとりやすい。そのため、解砕工程を設けて凝着体から多くの一次粒子を分離させることが好ましい。
当該解砕若しくは分散化処理は、例えば、高剪断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル等を使用して行うことができる。
(遠心分離工程)
本方法では、次に、遠心分離工程を設けることが好ましい。遠心分離工程では、上述の解砕工程を経たNDを含有する溶液から、遠心力の作用を利用して粗大粒子を除去する。本工程の遠心分離処理において、遠心力は例えば15000〜25000×gであり、遠心時間は例えば10〜120分である。これにより、ND粒子の分散する黒色透明の上清液(ND水分散液)を得ることができる。得られたND水分散液については、水分量を低減することによってND濃度を高めることができる。この水分量低減は、例えばエバポレーターを使用して行うことができる。以上のようにして、ND水分散液を得ることができる。
このようにして得られるND水分散液中のND粒子は、ナノダイヤモンドの一次粒子を含むことが好ましい。その他、前記一次粒子が数個〜数十個程度凝集した二次粒子を含んでいても良い。また、ND粒子は、平均粒子径が小さく、且つ一次粒子表面の官能基量(例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基)が多いことが好ましい。
このようにして得られるND水分散液中のND粒子の粒子径(D50)は、例えば50nm以下であり、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、より好ましくは15nm以下である。ND粒子の粒子径(D50)の下限は、例えば3nmである。また、粒子径(D90)は、例えば50nm以下であり、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、より好ましくは15nm以下である。粒子径(D90)の下限は、例えば5nmである。
また、このようにして得られるND水分散液中のND粒子の、pH4〜5におけるゼータ電位(25℃)は、ポジティブであってもネガティブであってもよいが、なかでもポジティブ(例えば70〜20mV、好ましくは60〜25mV、特に好ましくは50〜30mV)であることが好ましい。
(修飾化工程)
本方法では、次に、修飾化工程を設けることが好ましい。修飾化工程は、以上の工程を経て得られたND粒子に上述のフッ化アルキルホスホン酸を作用させることによってND粒子の表面を修飾する工程である。
本方法の修飾化工程では、まず、下記ND溶液と修飾化剤溶液を撹拌して混合する処理が行われる(第1撹拌処理)。
ND溶液:遠心分離工程を経て得られたND水分散液と第1溶媒とを含有
修飾化剤溶液:フッ化アルキルホスホン酸と第2溶媒とを含有
ND溶液におけるND濃度は、例えば0.01〜5質量%である。ND溶液に含まれる第1溶媒は、ND粒子が溶解性を示し得る溶媒であり、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
修飾化剤溶液におけるフッ化アルキルホスホン酸の濃度は、例えば0.01〜10質量%である。修飾化剤溶液に含まれる第2溶媒は、当該フッ化アルキルホスホン酸が溶解性を示し得る溶媒であり、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ヘキサン、ヘプタン、パラフィン、ポリアルファオレフィン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、鉱物油等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
第1撹拌処理に供される溶液(ND溶液と修飾化剤溶液との混合溶液)において、ND濃度は例えば0.005〜2.5質量%であり、フッ化アルキルホスホン酸濃度は例えば0.005〜2.5質量%であり、NDとフッ化アルキルホスホン酸との比率(質量比)は例えば10:1〜1:10である。また、第1撹拌処理において、処理に付される混合溶液の温度は例えば5〜80℃であり、撹拌時間は例えば0.1〜24時間である。
本方法の修飾化工程では、次に、蒸留処理を行うことが好ましい。この蒸留処理では、第1撹拌処理を経た溶液が蒸留処理(好ましくは、減圧蒸留処理)に付され、第1溶媒および水が留去される。この蒸留処理において、蒸留温度は例えば40〜120℃であり、蒸留圧力は例えば1〜760mmHgであり、蒸留時間は例えば0.1〜2時間である。
この後、蒸留処理を経た溶液に対して第1溶媒および第2溶媒が追加されたうえで行われる再度の撹拌処理(第2撹拌処理)からその後に行われる蒸留処理(前記と同様の蒸留処理)までの一連の過程が、必要に応じて繰り返される。繰返し回数は例えば1〜20回である。この繰返し過程において追加される第1溶媒の量は、上述の第1撹拌処理に供される混合溶液の調製における第1溶媒使用量の例えば10〜200%である。繰返し過程において追加される第2溶媒の量は、上述の第1撹拌処理に供される混合溶液の調製における第2溶媒使用量の例えば10〜200%である。また、繰返し過程に付される溶液の温度は例えば5〜80℃であり、撹拌時間は例えば0.1〜24時間である。
以上のような修飾化工程により、フッ化アルキルホスホン酸由来のフッ化アルキルホスホン酸残基がND粒子の表面に結合(イオン結合及び/又は共有結合)して表面修飾基を形成する。修飾化工程を経ることにより、表面修飾NDが前記第2溶媒に分散する溶液(ND分散液)が得られる。
(乾燥工程)
本方法では、次に、乾燥工程を設けることが好ましい。本工程では、例えば、修飾化工程を経て得られるND分散液からエバポレーターを使用して液分を蒸発させた後、これによって生じる残留固形分を乾燥用オーブン内で加熱することによって乾燥させることができる。加熱乾燥温度は、例えば40〜150℃である。このような乾燥工程を経ることにより、表面修飾NDの粉体が得られる。
以上のようにして、フッ化アルキルホスホン酸由来のフッ化アルキルホスホン酸残基を表面に伴うND粒子である表面修飾NDを製造することができる。
[ナノダイヤモンド分散液]
本発明のナノダイヤモンド分散液(ND分散液)は、有機溶媒と上述の表面修飾NDとを含む。前記表面修飾NDは有機溶媒中にて互いに離隔してコロイド粒子として分散していることが好ましい。
前記有機溶媒は、表面修飾NDを分散させるための分散媒であり、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ヘキサン、ヘプタン、パラフィン、ポリ−α−オレフィン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、および鉱物油(シリコーン油、フッ素油等)が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ND分散液は、有機溶媒100質量部に対して、表面修飾NDを例えば0.0001〜10質量部の割合で含有する。
ND分散液中の表面修飾NDの濃度(固形分濃度)は、例えば0.0001〜10質量%である。
従って、ND分散液中の分散媒の含有量は、例えば90〜99.9999質量%であり、前記分散媒における前記有機溶媒の含有量は、例えば50質量%以上、好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。尚、上限は100質量%である。
また、本発明のND分散液は、上述の表面修飾NDと有機溶媒以外にも他の成分を1種又は2種以上含有していても良いが、他の成分の含有量(2種以上含有する場合はその総量)はND分散液全量の例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下、とりわけ好ましくは1質量%以下である。尚、下限は0質量%である。従って、上述の表面修飾NDと有機溶媒の合計含有量はND分散液全量の例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上、とりわけ好ましくは99質量%以上である。
本発明のND分散液は、樹脂に対する親和性と高い耐熱性とを有する表面修飾NDを含有するため、そのような表面修飾NDの供給材料として好適に使用することができる。また、本発明のND分散液は摩擦係数を下げる作用(減摩作用)を有する。そのため、減摩剤若しくは潤滑剤(上述の通り耐熱性に優れるため、好ましくは耐熱性減摩剤若しくは耐熱性潤滑剤)として機械部品(例えば、自動車や航空機等)の摺動部等に好適に使用できる。
[複合材料]
本発明の複合材料は、樹脂と上述の表面修飾NDとを含む。前記表面修飾NDは樹脂中に分散した状態(特に、前記樹脂に高分散した状態)で含有されることが好ましい。
前記樹脂としては、熱可塑性樹脂や、熱若しくは光硬化性樹脂の硬化物(又は、重合体)が含まれる。また、熱可塑性樹脂には、結晶性樹脂と非晶性樹脂が含まれる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
樹脂として熱若しくは光硬化性樹脂を使用する場合は、熱若しくは光硬化性樹脂と上述の表面修飾NDとを混合し、その後加熱処理若しくは光照射処理を施して熱若しくは光硬化性樹脂を硬化(若しくは、重合)させることにより、複合材料を形成することができる。
樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合は、熱可塑性樹脂を加熱溶融した状態で表面修飾NDを配合し、その後、冷却して固化することにより複合材料を形成することができる。本発明においては上述の通り耐熱性に優れた表面修飾NDを使用するため、加熱溶融下であっても、NDの分散性及び樹脂に対する親和性を喪失することがなく、これらの特性を高く維持することができる。
本発明の複合材料としては、熱可塑性樹脂を、当該樹脂のガラス転移温度又は融点以上の温度で加熱して溶融させ、そこに上述の表面修飾NDを加え、混練することにより調製される、熱可塑性樹脂と上述の表面修飾ナノダイヤモンドとの溶融混合物が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が例えば150℃以上(例えば150〜350℃)、好ましくは200℃以上(例えば200〜350℃)である樹脂(例えば、非晶性樹脂)や、融点が例えば150℃以上(例えば150〜350℃)、好ましくは200℃以上(例えば200〜350℃)である樹脂(例えば、結晶性樹脂)等が挙げられる。このような熱可塑性樹脂の溶融温度は、例えば200℃以上、好ましくは250℃以上である。尚、溶融温度の上限は、例えば350℃、好ましくは300℃である。
熱可塑性樹脂には、例えば、プラスチック、汎用エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック等が含まれる。
前記プラスチックとしては、例えば、メチルペンテンポリマー、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン等が挙げられる。
前記汎用エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(mPPE)等の非晶性樹脂;ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の結晶性樹脂が挙げられる。
前記スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)等の非晶性樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)、熱可塑性フッ素樹脂等の結晶性樹脂が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂としては、なかでも熱可塑性フッ素樹脂が、表面修飾NDとの親和性に特に優れる点、及び撥水性、防汚性に優れる点で好ましい。熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、下記式(3)で表されるモノマー単位を含む重合体が挙げられる。
(式中、R1〜R3は同一又は異なって、ハロゲン原子、水素原子、ハロゲン原子で置換されていても良いC1-10アルキル基、ハロゲン原子で置換されていても良いC1-10アルコキシ基を示す。R1とR3は互いに結合して隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい)
前記C1-10アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
前記C1-10アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が挙げられる。
前記R1とR3が互いに結合して隣接する炭素原子と共に形成していてもよい環としては、例えば、3〜6員の脂環又は複素環(特に、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環)が挙げられる。
前記フッ素樹脂としては、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール(TEE/PDD)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記熱可塑性樹脂(特に、熱可塑性フッ素樹脂)のメルトフローレート(MFR、単位;g/10分)は、例えば1〜100、好ましくは5〜50、特に好ましくは10〜40である。尚、本明細書におけるメルトフローレートは、ASTM D 3159−10に準じて、温度が297℃、荷重が49Nの条件下で測定した、直径2mm、長さ8mmのオリフィスから10分間に流れ出す樹脂の質量(g)である。
本発明の複合材料における表面修飾NDの含有量は、特に限定されないが、樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂、特に好ましくは熱可塑性フッ素樹脂)に対して、例えば10〜0.0001質量%程度、好ましくは1〜0.001質量%である。
本発明の複合材料は、樹脂と表面修飾ND以外にも、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて種々の添加剤を含有することができる。前記添加剤としては、例えば、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、導電性付与剤、滑剤、充填剤、分散剤、離型剤、発泡剤、着色剤、各種無機物(シリカ、金属微粒子等)、フィラー(ナノ炭素材料等)等が挙げられる。これらの含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、複合材料全量の例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。従って、複合材料全量に占める樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂、特に好ましくは熱可塑性フッ素樹脂)と表面修飾NDの合計質量の割合は、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。尚、上限は100質量%である。
本発明の複合材料は、分散性及び樹脂に対する親和性に優れる表面修飾NDを使用するため、ND(表面修飾NDを含む)を高分散状態で均一に含有することができ、透明な樹脂を使用する場合は、得られる複合材料においても前記樹脂の透明性は損なわれることなく維持される。
本発明の複合材料中の表面修飾NDの平均粒子径(D50、メディアン径)は、例えば2000nm以下であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下、より好ましくは50nm以下である。ND粒子の平均粒子径の下限は、例えば1nmである。表面修飾NDの平均粒子径は、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いて十分な数(例えば、100個以上、好ましくは300個以上;特に、100個、300個等)の表面修飾NDについて電子顕微鏡像を撮影し、これらの表面修飾NDの粒子径を計測し、算術平均することにより求められる。
本発明の複合材料は、表面修飾ナノダイヤモンドを含まない場合に比べて結晶化度が高く、機械的強度の点でより優れた特性を発揮することができる。
本発明の複合材料は、結晶性溶融成型樹脂等として、ナノダイヤモンドが有する特性(例えば、高い機械的強度や、高屈折率、高い熱伝導度、耐熱性付与効果等)を具備することが望まれる種々の物品[例えば、機能性ハイブリッド材料、熱的機能材料(耐熱・蓄熱・熱電導・断熱材等)、フォトニクス材料(有機EL素子、LED、液晶ディスプレイ、光ディスク等)、バイオ・生体適合性材料、触媒、コーティング材料、研磨材、フィルム(例えば、タッチパネル、各種ディスプレイ等のハードコートフィルム、遮熱フィルム)、シート、スクリーン(例えば、透過型透明スクリーン)、フィラー(例えば、放熱用・機械特性向上用フィラー)、熱安定剤、耐熱性プラスチック基板材料(フレキシブルディスプレイ向け)等]の形成材料として好適に使用することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、実施例及び比較例における各値は以下の方法で測定した。
〈固形分濃度〉
ND分散液における固形分濃度は、秤量した分散液3〜5gの当該秤量値と、当該秤量分散液から加熱によって分散媒を蒸発させた後に残留する乾燥物(粉体)について精密天秤によって秤量した秤量値とに基づき、算出した。
〈熱分解開始温度〉
表面修飾NDの熱分解開始温度は、示差熱熱重量同時測定装置(商品名「TG/DTA6300」、(株)日立ハイテクサイエンス製)を使用して、空気雰囲気下かつ昇温速度10℃/分の条件で行った。
〔実施例1〕(表面修飾ND分散液、及び表面修飾ND粉末の調製)
以下のような生成工程、精製工程、酸素酸化工程、水素化工程、解砕工程、修飾化工程、乾燥工程を経て、表面修飾ND分散液、及び表面修飾ND粉末を製造した。
(生成工程)
まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置して容器を密閉した。容器は鉄製で、容器の容積は15m3であった。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とヘキソーゲン(RDX)との混合物0.50kgを使用した。当該爆薬におけるTNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、50/50であった。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上記爆轟法で生成したナノダイヤモンド粒子の凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ナノダイヤモンド粗生成物を回収した。
(精製工程;酸処理工程)
次に、上述のような生成工程を複数回行うことによって取得されたナノダイヤモンド粗生成物に対して精製工程の酸処理を行った。具体的には、当該ナノダイヤモンド粗生成物200gに6Lの10質量%塩酸を加えて得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この酸処理における加熱温度は85〜100℃であった。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ND凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
(精製工程;酸化処理工程)
次に、精製工程の溶液酸化処理ないし混酸処理を行った。具体的には、酸処理後のデカンテーションを経て得た沈殿液(ND凝着体を含む)に、6Lの98質量%硫酸水溶液と1Lの69質量%硝酸水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で48時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は140〜160℃であった。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ND凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
次に、溶液酸化処理後のデカンテーションを経て得た沈殿液(ND凝着体を含む)に対して1Lの10質量%水酸化ナトリウム水溶液と1Lの30質量%過酸化水素水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この処理における加熱温度は50〜105℃であった。次に、冷却後、デカンテーションによって上澄みを除いた。そして、残留画分について乾燥処理に付して乾燥粉体を得た。乾燥処理の手法としては、エバポレーターを使用して行う蒸発乾固を採用した。
(酸素酸化工程)
次に、ガス雰囲気炉(商品名「ガス雰囲気チューブ炉 KTF045N1」,光洋サーモシステム(株)製)を使用して酸素酸化処理を行った。具体的には、上述のようにして得られたND粉体4.5gをガス雰囲気炉の炉心管内に静置し、炉心管に窒素ガスを流速1L/分で30分間通流させ続けた後、通流ガスを窒素から酸素と窒素との混合ガスへと切り替えて当該混合ガスを流速1L/分で炉心管に通流させ続けた。混合ガス中の酸素濃度は4体積%であった。混合ガスへの切り替えの後、炉内を加熱設定温度350℃まで昇温させた。昇温速度については、加熱設定温度より20℃低い330℃までは10℃/分とし、その後、330℃から加熱設定温度350℃までは1℃/分とした。そして、炉内の温度条件を350℃に維持しつつ、炉内のND粉体について酸素酸化処理を行った。処理時間は3時間とした。以上のようにして、酸素酸化工程ないし酸素酸化処理を経たND粉体を得た。
(水素化工程)
次に、上述のガス雰囲気炉を引き続き使用して水素化工程を行った。具体的には、酸素酸化工程を経たND粉体が内部に配されているガス雰囲気炉に対して窒素ガスを流速1L/分で30分間通流させ続けた後、通流ガスを窒素から水素と窒素との混合ガスへと切り替えて当該混合ガスを流速1L/分で炉心管に通流させ続けた。混合ガス中の水素濃度は2体積%であった。混合ガスへの切り替えの後、炉内を加熱設定温度600℃まで昇温させた。昇温速度は10℃/分とした。そして、炉内の温度条件を600℃に維持しつつ、炉内のND粉体について水素化処理を行った。処理時間は5時間とした。以上のようにして、ND粉体を得た。
(解砕工程)
次に、解砕工程を行った。具体的には、まず、上述の水素化工程を経たND粉体0.9gと純水29.1mLとを50mLのサンプル瓶に加えて混合し、スラリー約30mLを得た。次に、当該スラリーについて、遠心分離処理(遠心力20000×gで10分間)とその後の超音波処理を施した。超音波処理においては、超音波照射器(商品名「超音波洗浄機 AS−3」,アズワン社製)を使用して、当該スラリーに対して2時間の超音波照射を行った。この後、ビーズミリング装置(商品名「並列四筒式サンドグラインダー LSG−4U−2L型」,アイメックス(株)製)を使用してビーズミリングを行った。具体的には、100mLのミル容器に超音波照射後のスラリー30mLと直径30μmのジルコニアビーズとを投入して封入し、装置を駆動させてビーズミリングを実施した。このビーズミリングにおいて、ジルコニアビーズの投入量はミル容器の容積に対して33%であり、ミル容器の回転速度は2570rpmであり、ミリング時間は2時間であった。
次に、上述のような解砕工程を経たスラリーないし懸濁液について、遠心分離処理(遠心力20000×gで10分間)を行った(分級操作)。次に、当該遠心分離処理を経たND含有溶液の上清10mLを回収した。このようにして、NDが純水に分散するND分散液を得た。このND分散液について、固形分濃度ないしND濃度は2.1質量%であり、pHは8.07であった。
〈粒径〉
上述のようにして得られたND分散液について、動的光散乱法によってNDの粒度分布を測定した。具体的には、Malvern社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、NDの粒度分布を動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した。測定に付されたND分散液は、固形分濃度ないしND濃度が2.1質量%であり、超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。測定の結果、NDの粒径D50(メディアン径)は5.05nmであり、NDの粒径D90は7.54nmであった。
〈ゼータ電位〉
上述のようにして得られたND分散液に含まれるND粒子に関するゼータ電位について、Malvern社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、レーザードップラー式電気泳動法によって測定した。測定に付されたND分散液は、固形分濃度ないしND濃度が0.2質量%となるように超純水で希釈した後に超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。ゼータ電位測定温度は25℃である。本測定の結果、ND分散液(pH8.07)のゼータ電位は41.8mVであった。
(修飾化工程)
次に、修飾化工程を行った。具体的には、まず、ND溶液および修飾化剤溶液をそれぞれ調製した。
ND溶液は、上記遠心分離処理を経て得られたND分散液1mL(ND含有量20mg)とメタノール20mLとを混合したものである。
修飾化剤溶液は、(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)ホスホン酸(東京化成工業(株)製)50mgをトルエン20mLに溶解したものである。
次に、100mLナスフラスコ中にND溶液と修飾化剤溶液を仕込み、マグネティックスターラーを使用して、23℃において4時間撹拌した(第1撹拌処理)。
次に、第1撹拌処理後の溶液について、ロータリーエバポレーターを使用して、液量が20mLになるまで溶媒を留去した。この蒸留処理において、処理に付される溶液の温度は50℃とし、蒸留圧力は230mmHgとし、蒸留時間は約10分間とした。
次に、蒸留処理後の溶液にメタノール20mLおよびトルエン10mLを加え、マグネティックスターラーを使用して、23℃において4時間撹拌した(第2撹拌処理)。
次に、第2撹拌処理後の溶液について、第1撹拌処理後の溶液に行ったのと同様に蒸留処理を行い、液量が20mLになるまで溶媒を留去した。そして、第2撹拌処理からその後の蒸留処理までの一連の過程を、合計20回繰り返した。以上のような修飾化工程により、(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)ホスホン酸残基で表面修飾されたND粒子(=表面修飾ND)の分散するトルエン溶液20mLが得られた。
(乾燥工程)
次に、乾燥工程を行った。具体的には、修飾化工程で得られたND分散トルエン溶液からエバポレーターを使用して液分を蒸発させた後、これによって生じた残留固形分を乾燥用オーブン内での加熱乾燥によって乾燥させた。加熱乾燥温度は120℃とした。
以上のようにして、(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)ホスホン酸残基でND粒子表面が修飾されてなる表面修飾ND(1)を得た。この表面修飾ND(1)の5%重量減少率を示す熱分解開始温度は300℃であった。
(再分散工程)
さらに乾燥した表面修飾ND(1)をヘキサン中に0.02質量%となるように超音波処理を行い、再分散させた。NDの粒径D50(メディアン径)は136nmであり、NDの粒径D90は163nmであった。
〔実施例2〕
実施例1で得られた表面修飾ND(1)0.03g(後述のETFEに対して0.1質量%となる量)とエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)(旭硝子(株)製、製品名「Fluon」、グレード名LM−730AP、融点:225℃、MFR:20〜30g/10分)30gを250℃に昇温した溶融混練機((株)東洋精機製作所製、ラボプラストミル)中で5分間混練し、その後、室温まで冷却して、ETFEと表面修飾ND(1)の複合材料(1)を得た。
得られた複合材料(1)について、その断面をTEM写真で観察したところ、ND粒子の一次粒子や、一次粒子が十数個ほど凝集した二次粒子が混在した状態で分散しており、平均粒子径は、数十nm程度であった(図2参照)。すなわち、表面修飾ND(1)が高度に分散していた。
また、得られた複合材料(1)について、DSCを用いて結晶化度を測定した。
(引っ張り試験)
得られた複合材料(1)を5cm四方、厚み500μmの型枠を使用して280℃に昇温したミニテストプレス機((株)東洋精機製作所製、MP−2FH)に供し、圧力5MPaで、5分間プレスを行った後、水で急冷した。得られたプレス片を7号ダンベル型に切り出したものを試験片として使用し、下記条件で引っ張り試験を行った。
<測定条件>
測定装置:万能引張試験機(型名「テンシロン RTG1310」、(株)エー・アンド・デイ製)
温度/湿度:23℃/50%
引張速度:10mm/min
標線間距離:12mm
チャック間距離:20mm
ロードセル:250N
〔比較例1〕
表面修飾ND(1)を使用しなかった以外は実施例2と同様に行った。すなわち、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)(旭硝子(株)製、製品名「Fluon」、グレード名LM−730P、融点:225℃)30gを250℃に昇温した溶融混練機((株)東洋精機製作所製、ラボプラストミル)中で5分間混練した。
混練後のETFEの固化物について、実施例2と同様の方法で引っ張り試験を行った。
〔比較例2〕
表面修飾ND(1)に代えて、実施例1の水素化工程において得られたND粉体(以後、「表面未修飾ND」と称する)を使用した以外は実施例2と同様にして、ETFEと表面未修飾NDの複合材料(2)を得た。
得られた複合材料(2)について、その断面をTEM写真で観察したところ、ETFEと表面未修飾NDの親和性が低かったためか、ND粒子は大きく凝集した二次粒子の状態で分散しており、平均粒子径は数μm程度であった(図3、4参照)。
また、複合材料(2)について、実施例2と同様の方法で引っ張り試験を行った。
結果を下記表にまとめて示す。
表1の結果より、表面修飾ND(1)は、樹脂の結晶性を高める効果を有することが分かった。また、樹脂の結晶性が高められることによって、機械特性を向上する効果が得られた。より詳細には、弾性率が向上し、高硬度が付与された。一方、未修飾NDを添加した比較例2では、樹脂とナノダイヤモンド界面の親和性が低いため、機械特性を向上する効果は得られなかった。
1 表面修飾ナノダイヤモンド
2 ナノダイヤモンド粒子
3 フッ化アルキルホスホン酸残基

Claims (8)

  1. ナノダイヤモンド粒子と、前記ナノダイヤモンド粒子を表面修飾するフッ化アルキルホスホン酸残基とを含む、表面修飾ナノダイヤモンド。
  2. フッ化アルキルホスホン酸残基が、下記式(1’)及び/又は(2’)で表されるフッ化アルキルホスホン酸残基である、請求項1に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
    (式中、mは0〜20の整数を示し、nは1〜10の整数を示す。式中の波線が付された、リン原子と一重結合で結合する酸素原子から出る結合手が、ナノダイヤモンド粒子の表面に結合する)
  3. 熱分解開始温度が250℃以上である、請求項1又は2に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
  4. 有機溶媒と、請求項1〜3の何れか1項に記載の表面修飾ナノダイヤモンドとを、前記有機溶媒100質量部に対して前記表面修飾ナノダイヤモンドを0.0001〜10質量部の割合で含有する、ナノダイヤモンド分散液。
  5. 樹脂と請求項1〜3の何れか1項に記載の表面修飾ナノダイヤモンドとを含む、複合材料。
  6. 樹脂と請求項1〜3の何れか1項に記載の表面修飾ナノダイヤモンドとの溶融混合物である、請求項5に記載の複合材料。
  7. 樹脂が、ガラス転移温度又は融点が150℃以上の熱可塑性樹脂である、請求項5又は6に記載の複合材料。
  8. 樹脂が、熱可塑性フッ素樹脂である、請求項5〜7の何れか1項に記載の複合材料。
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