JP2014005483A - 挿抜性に優れた錫めっき銅合金端子及び端子材 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた電気接続特性を発揮しながら動摩擦係数を0.3以下にまで低減して、挿抜性に優れた錫めっき銅合金端子を提供する。
【解決手段】Cu又はCu合金からなる基材上の表面にSn系表面層が形成され、該Sn系表面層と前記基材との間にCuSn合金層が形成された錫めっき銅合金からなる端子であって、少なくとも接続端部における前記Sn系表面層の上に、カーボンナノ材料を含有する厚さ50nmから300nmのコート層が形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】Cu又はCu合金からなる基材上の表面にSn系表面層が形成され、該Sn系表面層と前記基材との間にCuSn合金層が形成された錫めっき銅合金からなる端子であって、少なくとも接続端部における前記Sn系表面層の上に、カーボンナノ材料を含有する厚さ50nmから300nmのコート層が形成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車や民生機器等の電気配線の接続に使用されるコネクタ用端子、特に多ピンコネクタ用の端子として有用な錫めっき銅合金端子及び端子材に関する。
錫めっき銅合金端子材は、銅合金からなる基材の上にCuめっき及びSnめっきを施した後にリフロー処理することにより、表層のSn系表面層の下層にCuSn合金層が形成されたものであり、端子材として広く用いられている。近年、例えば自動車においては急速に電装化が進行し、これに伴い電気機器の回路数が増加するため、使用するコネクタの小型・多ピン化が顕著になっている。コネクタが多ピン化すると、単ピンあたりの挿入力は小さくても、コネクタを挿着する際にコネクタ全体では大きな力が必要となり、生産性の低下が懸念されている。そこで、錫めっき銅合金材の摩擦係数を小さくして単ピンあたりの挿入力を低減することが試みられている。
例えば、基材を粗らして、CuSn合金層の表面露出度を規定したもの(特許文献1)があるが、接触抵抗が増大する、ハンダ濡れ性が低下するといった問題があった。また、CuSn合金層の平均粗さを規定したもの(特許文献2)もあるが、さらなる挿抜性向上のため例えば動摩擦係数を0.3以下にすることができないといった問題があった。
例えば、基材を粗らして、CuSn合金層の表面露出度を規定したもの(特許文献1)があるが、接触抵抗が増大する、ハンダ濡れ性が低下するといった問題があった。また、CuSn合金層の平均粗さを規定したもの(特許文献2)もあるが、さらなる挿抜性向上のため例えば動摩擦係数を0.3以下にすることができないといった問題があった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、優れた電気接続特性を発揮しながら動摩擦係数を0.3以下にまで低減して、挿抜性に優れた錫めっき銅合金端子及び端子材を提供することを目的とする。
本発明者らは挿抜性について鋭意研究した結果、粒子径の大きな黒鉛粒子ではなく、導電性、潤滑性に優れるカーボンナノ材料をSn系表面層の上に厚さ50nmから300nmコーティングすることで、挿抜力低減と電気的信頼性を兼ね備えた端子を開発するに至った。
すなわち、本発明の錫めっき銅合金端子は、Cu又はCu合金からなる基材上の表面にSn系表面層が形成され、該Sn系表面層と前記基材との間にCuSn合金層が形成された錫めっき銅合金からなる端子であって、少なくとも接続端部における前記Sn系表面層の上に、カーボンナノ材料を含有する厚さ50nmから300nmのコート層が形成されていることを特徴とする。
カーボンナノ材料は、一般的には直径が数十nm、長さが数十nm〜数千nmのチューブ状をなしており、電極放電法、気相成長法、レーザ法などによって製造される。このカーボンナノ材料を含有するコート層を端子の接続端部におけるSn系表面層の上に形成したことにより、接続端部表面の潤滑性が良くなり、挿抜力を低減することができる。例えば接続端部の動摩擦係数を0.3以下、接触抵抗を2mΩ以下とすることができる。
また、カーボンナノ材料のコーティングは、カーボンナノ材料を分散させたアルコールと水の混合液等を、スプレー法、ダイコート法、スピンコーター法で行えば良く、スパッタ法等の乾式成膜法に比べても安価に効率よくコーティングでき、分散めっき法に比べ取り扱いも容易である。
この場合、特許文献4記載のように黒鉛粒子を付着させたものでは、黒鉛粒子が粗く大きいため、端子を接続する際に両端子の金属表面ではなく、黒鉛粒子どうしが接触して電気的接続性を損なうおそれがあるが、本発明では、カーボンナノ材料を含有する50nm〜300nmの薄いコート層を形成したので、端子を接続する際に、Sn系表面層どうしのスクライブを妨げることはなく、Sn系表面層本来が有する電気的接続性は良好に発揮される。
また、カーボンナノ材料のコーティングは、カーボンナノ材料を分散させたアルコールと水の混合液等を、スプレー法、ダイコート法、スピンコーター法で行えば良く、スパッタ法等の乾式成膜法に比べても安価に効率よくコーティングでき、分散めっき法に比べ取り扱いも容易である。
この場合、特許文献4記載のように黒鉛粒子を付着させたものでは、黒鉛粒子が粗く大きいため、端子を接続する際に両端子の金属表面ではなく、黒鉛粒子どうしが接触して電気的接続性を損なうおそれがあるが、本発明では、カーボンナノ材料を含有する50nm〜300nmの薄いコート層を形成したので、端子を接続する際に、Sn系表面層どうしのスクライブを妨げることはなく、Sn系表面層本来が有する電気的接続性は良好に発揮される。
本発明の錫めっき銅合金端子において、前記カーボンナノ材料は、直径が5nm以上50nm以下、アスペクト比が5以上の繊維状であるとよい。
繊維状のカーボンナノ材料どうしが絡み合って脱落しにくくなり、挿抜力の低減効果を長期的に維持することができる。
繊維状のカーボンナノ材料どうしが絡み合って脱落しにくくなり、挿抜力の低減効果を長期的に維持することができる。
本発明の錫めっき銅合金端子において、前記CuSn合金層の平均厚さは0.1μm以上1.0μm以下であり、前記Sn系表面層の平均厚さは0.1μm以上2.0μm以下であるとよい。
CuSn合金層及びSn系表面層をこのような平均厚さに形成することにより、これらの界面が適度な凹凸状に形成され、硬いCuSn合金層の間に軟らかいSnが介在して潤滑剤としての作用を果たし、動摩擦係数を低減することができる。また、Sn系表面層により、接触抵抗が低く、優れた電気的信頼性を有する。
CuSn合金層の平均厚みが0.1μm未満では、CuSn層が部分的に形成され層状にならないため、リフロー処理していないものと同様、室温でも下地のCuとSnの反応が進行してしまうため、0.1μm以上とした。1.0μmを超えるCuSn合金層を形成するためには、必要以上にめっき層を厚くし、リフロー時間、温度を上げる必要があり、また動摩擦係数をより低減する効果が期待できないことから、生産性を鑑み上限を1.0μmとした。
Sn系表面層の平均厚みが0.1μm未満でははんだ濡れ性の低下、電気的接続信頼性の低下を招き、2.0μmを超えても動摩擦係数が低減する効果は認められないことから、生産性を鑑み上限を2.0μmとした。
CuSn合金層及びSn系表面層をこのような平均厚さに形成することにより、これらの界面が適度な凹凸状に形成され、硬いCuSn合金層の間に軟らかいSnが介在して潤滑剤としての作用を果たし、動摩擦係数を低減することができる。また、Sn系表面層により、接触抵抗が低く、優れた電気的信頼性を有する。
CuSn合金層の平均厚みが0.1μm未満では、CuSn層が部分的に形成され層状にならないため、リフロー処理していないものと同様、室温でも下地のCuとSnの反応が進行してしまうため、0.1μm以上とした。1.0μmを超えるCuSn合金層を形成するためには、必要以上にめっき層を厚くし、リフロー時間、温度を上げる必要があり、また動摩擦係数をより低減する効果が期待できないことから、生産性を鑑み上限を1.0μmとした。
Sn系表面層の平均厚みが0.1μm未満でははんだ濡れ性の低下、電気的接続信頼性の低下を招き、2.0μmを超えても動摩擦係数が低減する効果は認められないことから、生産性を鑑み上限を2.0μmとした。
また、本発明の端子材は、Cu又はCu合金からなる基材上の表面にSn系表面層が形成され、該Sn系表面層と前記基材との間にCuSn合金層が形成された錫めっき銅合金からなる端子材であって、少なくとも成形により接続端部となる部位における前記Sn系表面層の上に、カーボンナノ材料を含有する厚さ50nmから300nmのコート層が形成されていることを特徴とする。
本発明の端子材において、前記カーボンナノ材料は、直径が5nm以上50nm以下、アスペクト比が5以上の繊維状であるとよい。
前記CuSn合金層の平均厚さは0.1μm以上1.0μm以下であり、前記Sn系表面層の平均厚さは0.1μm以上2.0μm以下であるとよい。
本発明によれば、カーボンナノ材料を含有するコート層により動摩擦係数を低減することができ、しかも薄いコート層によりSn系表面層本来の電気的接続性を阻害することがなく、低接触抵抗、低挿抜性を両立させることができる。特に、自動車および電子部品等に使用される端子において、接合時の低い挿入力、安定した接触抵抗を必要とする部位において優位性を持つ。
本発明の一実施形態の錫めっき銅合金端子及び端子材を説明する。
本実施形態の錫めっき銅合金端子を構成している端子材は、銅合金からなる基材の上に、Sn系表面層が形成され、Sn系表面層と基材との間にCuSn合金層が形成されている。また、基材の上にはバリア層としてNi又はNi合金層を形成するとよい。
基材は、Cu又はCu合金からなるものであれば、特に、その組成が限定されるものではない。
Ni又はNi合金層は、純Ni、Ni−CoやNi−W等のNi合金からなる層である。
CuSn合金層は、Cu6Sn5を主成分とし、Cu6Sn5のCuの一部がNiに置換した化合物合金層である。
また、CuSn合金層とSn系表面層との界面は、急峻な凹凸状に形成され、表層付近がSnとCuSnとの複合構造とされる。CuSn合金層は平均厚みが0.1μm以上1.0μm以下であり、Sn系表面層の平均厚みは0.1μm以上2.0μm以下である。このSn系表面層の表面にはCuSn合金層の一部がわずかに露出している。これらCuSn合金層及びSn系表面層は、後述するように、基材の上にNiめっき層、Cuめっき層、Snめっき層を順に形成してリフロー処理することにより形成される。
CuSn合金層の平均厚みが0.1μm未満では、CuSn層が部分的に形成され層状にならないため、リフロー処理していないものと同様、室温でも下地のCuとSnの反応が進行してしまうため、0.1μm以上とした。。1.0μmを超えるCuSn合金層を形成するためには、必要以上にめっき層を厚くし、リフロー時間、温度を上げる必要があり、また動摩擦係数をより低減する効果が期待できないことから、生産性を鑑み上限を1.0μmとした。
Sn系表面層の平均厚みが0.1μm未満でははんだ濡れ性の低下、電気的接続信頼性の低下を招き、2.0μmを超えても動摩擦係数が低減する効果は認められないことから、生産性を鑑み上限を2.0μmとした。
本実施形態の錫めっき銅合金端子を構成している端子材は、銅合金からなる基材の上に、Sn系表面層が形成され、Sn系表面層と基材との間にCuSn合金層が形成されている。また、基材の上にはバリア層としてNi又はNi合金層を形成するとよい。
基材は、Cu又はCu合金からなるものであれば、特に、その組成が限定されるものではない。
Ni又はNi合金層は、純Ni、Ni−CoやNi−W等のNi合金からなる層である。
CuSn合金層は、Cu6Sn5を主成分とし、Cu6Sn5のCuの一部がNiに置換した化合物合金層である。
また、CuSn合金層とSn系表面層との界面は、急峻な凹凸状に形成され、表層付近がSnとCuSnとの複合構造とされる。CuSn合金層は平均厚みが0.1μm以上1.0μm以下であり、Sn系表面層の平均厚みは0.1μm以上2.0μm以下である。このSn系表面層の表面にはCuSn合金層の一部がわずかに露出している。これらCuSn合金層及びSn系表面層は、後述するように、基材の上にNiめっき層、Cuめっき層、Snめっき層を順に形成してリフロー処理することにより形成される。
CuSn合金層の平均厚みが0.1μm未満では、CuSn層が部分的に形成され層状にならないため、リフロー処理していないものと同様、室温でも下地のCuとSnの反応が進行してしまうため、0.1μm以上とした。。1.0μmを超えるCuSn合金層を形成するためには、必要以上にめっき層を厚くし、リフロー時間、温度を上げる必要があり、また動摩擦係数をより低減する効果が期待できないことから、生産性を鑑み上限を1.0μmとした。
Sn系表面層の平均厚みが0.1μm未満でははんだ濡れ性の低下、電気的接続信頼性の低下を招き、2.0μmを超えても動摩擦係数が低減する効果は認められないことから、生産性を鑑み上限を2.0μmとした。
このような構成の端子材は、Sn系表面層とCuSn層との界面が適度な凹凸状に形成され、硬いCuSn合金層の間に軟らかいSnが介在して潤滑剤としての作用を果たし、動摩擦係数を低減することができる。また、Sn系表面層により、接触抵抗が低く、優れた電気的信頼性を有する。
また、Ni又はNi合金層のバリア層を形成した場合、長期間高温下で使用されてもバリア層が基材からのCuの拡散を防ぎ、カーケンダルボイドの発生を抑制するため、バリア層が基材とCuSn合金層との密着性を確保することから、基材とCuSn合金層との間が剥離することを防止することが可能である。
また、Ni又はNi合金層のバリア層を形成した場合、長期間高温下で使用されてもバリア層が基材からのCuの拡散を防ぎ、カーケンダルボイドの発生を抑制するため、バリア層が基材とCuSn合金層との密着性を確保することから、基材とCuSn合金層との間が剥離することを防止することが可能である。
そして、このような端子材からなる端子は、ケーブルの導体がかしめ等によって固着される導体固着部と、他の端子に嵌合等によって接続される接続端部とを備えており、その接続端部の表面に、カーボンナノ材料を含有する厚さ50nmから300nmのコート層が形成されている。
カーボンナノ材料は、直径が数十nm、長さが数十nm〜数千nmのチューブ状をなしているカーボンナノファイバーを用いることができる。特に、直径が5nm以上50nm以下、アスペクト比が5以上の繊維状のものが好適である。このカーボンナノ材料は、一般的な電極放電法、気相成長法、レーザ法などによって製造される。特に、Co、Mgなどの金属を含む触媒を用い、CO(一酸化炭素)、H2を含むガスを原料とする気相成長法が安価で量産に適している。また、チューブ状のものだけでなく、加熱等により、カーボンナノファイバーの形状が変化したものも用いることができる。
また、カーボンナノ材料の端子へのコーティングは、カーボンナノ材料を分散させたアルコールと水の混合液等を、スプレー法、ダイコート法、スピンコーター法で行えばよい。
カーボンナノ材料は、直径が数十nm、長さが数十nm〜数千nmのチューブ状をなしているカーボンナノファイバーを用いることができる。特に、直径が5nm以上50nm以下、アスペクト比が5以上の繊維状のものが好適である。このカーボンナノ材料は、一般的な電極放電法、気相成長法、レーザ法などによって製造される。特に、Co、Mgなどの金属を含む触媒を用い、CO(一酸化炭素)、H2を含むガスを原料とする気相成長法が安価で量産に適している。また、チューブ状のものだけでなく、加熱等により、カーボンナノファイバーの形状が変化したものも用いることができる。
また、カーボンナノ材料の端子へのコーティングは、カーボンナノ材料を分散させたアルコールと水の混合液等を、スプレー法、ダイコート法、スピンコーター法で行えばよい。
次に、この端子の製造方法について説明する。
基材として、銅又は銅合金板材を脱脂、酸洗等の処理をすることによって表面を清浄にした後、Cuめっき、Snめっきをこの順序で施す。Niバリア層を設ける場合は、Cuめっきの前にNiめっきを施す。
Niめっきは一般的なNiめっき浴を用いればよく、硫酸ニッケル、ホウ酸を主成分としたワット浴等が用いられる。塩類として塩化ニッケルなどが加えられる場合もある。また、めっき浴の温度は45〜55℃、pHは2〜6、電流密度は1〜20A/dm2とされる。このNiめっきにより形成されるNiめっき層の膜厚は0.1〜0.5μmとされる。
Cuめっきは一般的なCuめっき浴を用いればよく、例えば硫酸銅(CuSO4)及び硫酸(H2SO4)を主成分とした硫酸銅浴等を用いることができる。めっき浴の温度は20〜50℃、電流密度は1〜20A/dm2とされる。このCuめっきにより形成されるCuめっき層の膜厚は0.1〜0.5μmとされる。
Snめっき層形成のためのめっき浴としては、一般的なSnめっき浴を用いればよく、例えば硫酸(H2SO4)と硫酸第一錫(SnSO4)を主成分とした硫酸浴を用いることができる。めっき浴の温度は15〜35℃、電流密度は1〜20A/dm2とされる。このSnめっきにより形成されるSnめっき層の膜厚は0.5〜3μmとされる。
Cu又はCu合金の基材にNi層、Cuめっき層、Snめっき層を順に施したのち、リフロー処理する。リフロー処理条件としては、例えば窒素囲気中で、基材の表面温度が240〜360℃になるまで昇温後、当該温度に1〜12秒間保持した後急冷することが好ましい。
基材として、銅又は銅合金板材を脱脂、酸洗等の処理をすることによって表面を清浄にした後、Cuめっき、Snめっきをこの順序で施す。Niバリア層を設ける場合は、Cuめっきの前にNiめっきを施す。
Niめっきは一般的なNiめっき浴を用いればよく、硫酸ニッケル、ホウ酸を主成分としたワット浴等が用いられる。塩類として塩化ニッケルなどが加えられる場合もある。また、めっき浴の温度は45〜55℃、pHは2〜6、電流密度は1〜20A/dm2とされる。このNiめっきにより形成されるNiめっき層の膜厚は0.1〜0.5μmとされる。
Cuめっきは一般的なCuめっき浴を用いればよく、例えば硫酸銅(CuSO4)及び硫酸(H2SO4)を主成分とした硫酸銅浴等を用いることができる。めっき浴の温度は20〜50℃、電流密度は1〜20A/dm2とされる。このCuめっきにより形成されるCuめっき層の膜厚は0.1〜0.5μmとされる。
Snめっき層形成のためのめっき浴としては、一般的なSnめっき浴を用いればよく、例えば硫酸(H2SO4)と硫酸第一錫(SnSO4)を主成分とした硫酸浴を用いることができる。めっき浴の温度は15〜35℃、電流密度は1〜20A/dm2とされる。このSnめっきにより形成されるSnめっき層の膜厚は0.5〜3μmとされる。
Cu又はCu合金の基材にNi層、Cuめっき層、Snめっき層を順に施したのち、リフロー処理する。リフロー処理条件としては、例えば窒素囲気中で、基材の表面温度が240〜360℃になるまで昇温後、当該温度に1〜12秒間保持した後急冷することが好ましい。
その後、Sn系表面層の上に、カーボンナノ材料を分散させたアルコールと水の混合液等を、スプレー法、ダイコート法、スピンコーター法でコーティングしてコート層を形成する。この場合、板材の全面にコート層を形成してもよいが、端子に成形されたときに接続端子部となる位置にのみコート層を形成してもよい。端子は、通常、板材に一列又は複数列に多数個が成形され、これら端子の接続端子部が列状に揃えられるので、その列に沿ってコート層を形成することにより、端子の接続端子部のみにコート層を形成することが可能である。
このカーボンナノ材料のコーティングは、1回のみ行うものでもよいが、複数回繰り返して行うことにより、コート層の膜厚を比較的厚く形成することができる。
このように製造した端子材を用いて、プレス成形により端子を製造する。この場合、カーボンナノ材料のコート層が形成されている部位により端子の接続端子部が形成されるように成形する。
なお、板材にめっきした後にリフロー処理し、その後にカーボンナノ材料をコーティングしたが、板材にめっきした後にカーボンナノ材料をコーティングし、その後にリフロー処理しても良い。カーボンナノ材料が微細であるので、リフロー処理してもSn系表面層内に取り込まれることは少なく、リフロー後にも、Sn系表面層の上に薄くコート層を形成した状態に維持される。
このカーボンナノ材料のコーティングは、1回のみ行うものでもよいが、複数回繰り返して行うことにより、コート層の膜厚を比較的厚く形成することができる。
このように製造した端子材を用いて、プレス成形により端子を製造する。この場合、カーボンナノ材料のコート層が形成されている部位により端子の接続端子部が形成されるように成形する。
なお、板材にめっきした後にリフロー処理し、その後にカーボンナノ材料をコーティングしたが、板材にめっきした後にカーボンナノ材料をコーティングし、その後にリフロー処理しても良い。カーボンナノ材料が微細であるので、リフロー処理してもSn系表面層内に取り込まれることは少なく、リフロー後にも、Sn系表面層の上に薄くコート層を形成した状態に維持される。
板厚0.25mmの銅合金を基材とし、Cuめっき層、Snめっき層を形成した後、すぐに還元雰囲気の炉中で加熱してリフローした後、水冷、乾燥させた。このとき、Cuめっき層及びSnめっき層の厚さを変量してリフロー処理することにより、表1に示すCuSn合金層、Sn系表面層の厚さの板材を得た。
そして、得られた板材試料を50×50mmに切断した後、カーボンナノ材料を分散させたアルコールと水の混合液を塗布後、スピンコーターでコーティングすることにより薄膜化した。スピンコーターは、500rpmで5分間回転させた後、1500rpmで30分間回転させた。
カーボンナノ材料としては、三菱マテリアル電子化成株式会社製のカーボンナノファイバーを用いた。このカーボンナノファイバー(以下CNFという)の直径、長さは表1の範囲のものを使用した。混合液中のカーボンナノ材料濃度及び塗布回数を変更して、カーボンナノ材料コート層の厚みを変量した。
比較例として、CNFを塗布しなかったもの(比較例1)、CNFは塗布したがコート層が薄いもの(比較例2)、CNFに代えて、球形をした三菱化学株式会社製の導電性カーボンブラック(銘柄名#3030B、平均粒径55nm)を塗布したもの(比較例3)も作製して評価した。
これらの試料について、リフロー後のSn系表面層の厚み、CuSn合金層の厚み、コーティング層の厚みを測定するとともに、動摩擦係数、電気的信頼性として接触抵抗を測定した。
そして、得られた板材試料を50×50mmに切断した後、カーボンナノ材料を分散させたアルコールと水の混合液を塗布後、スピンコーターでコーティングすることにより薄膜化した。スピンコーターは、500rpmで5分間回転させた後、1500rpmで30分間回転させた。
カーボンナノ材料としては、三菱マテリアル電子化成株式会社製のカーボンナノファイバーを用いた。このカーボンナノファイバー(以下CNFという)の直径、長さは表1の範囲のものを使用した。混合液中のカーボンナノ材料濃度及び塗布回数を変更して、カーボンナノ材料コート層の厚みを変量した。
比較例として、CNFを塗布しなかったもの(比較例1)、CNFは塗布したがコート層が薄いもの(比較例2)、CNFに代えて、球形をした三菱化学株式会社製の導電性カーボンブラック(銘柄名#3030B、平均粒径55nm)を塗布したもの(比較例3)も作製して評価した。
これらの試料について、リフロー後のSn系表面層の厚み、CuSn合金層の厚み、コーティング層の厚みを測定するとともに、動摩擦係数、電気的信頼性として接触抵抗を測定した。
リフロー後のSn系表面層及びCuSn合金層の厚みは、エスエスアイ・ナノテクノロジー株式会社製蛍光X線膜厚計(SFT9400)にて測定した。最初にリフロー後の試料の全Sn系表面層の厚みを測定した後、例えばレイボルド株式会社製のL80等の、純SnをエッチングしCuSn合金を腐食しない成分からなるめっき被膜剥離用のエッチング液に数分間浸漬することによりSn系表面層を除去し、その下層のCuSn合金層を露出させCuSn合金層の厚みを測定した後、(全Sn系表面層の厚み−CuSn合金層の厚み)をSn系表面層の厚みと定義した。
カーボンナノ材料のコート層の厚みは、キーエンス株式会社製レーザ顕微鏡(VK−X200)により、コート層表面と裏面間の距離から測定した。
動摩擦係数については、嵌合型のコネクタのオス端子とメス端子の接点部を模擬するように、各試料について板状のオス試験片と内径1.5mmの半球状としたメス試験片とを作成し、株式会社トリニティーラボ製の摩擦測定機(μV1000)を用い、両試験片間の摩擦力を測定して動摩擦係数を求めた。図2により説明すると、水平な台11上にオス試験片12を固定し、その上にメス試験片13の半球凸面を置いてめっき面同士を接触させ、メス試験片13に錘14によって500gfの荷重Pをかけてオス試験片12を押さえた状態とする。この荷重Pをかけた状態で、オス試験片12を摺動速度80mm/分で矢印により示した水平方向に10mm引っ張ったときの摩擦力Fをロードセル15によって測定した。その摩擦力Fの平均値Favと荷重Pより動摩擦係数(=Fav/P)を求めた。
電気的信頼性を評価するため、接触抵抗を測定した。測定方法はJIS−C−5402に準拠し、4端子接触抵抗試験機(山崎精機研究所製:CRS−113−AU)により、摺動式(1mm)で0から50gまでの荷重変化−接触抵抗を測定し、荷重を50gとしたときの接触抵抗値で評価した。
結果を表1に示す。
カーボンナノ材料のコート層の厚みは、キーエンス株式会社製レーザ顕微鏡(VK−X200)により、コート層表面と裏面間の距離から測定した。
動摩擦係数については、嵌合型のコネクタのオス端子とメス端子の接点部を模擬するように、各試料について板状のオス試験片と内径1.5mmの半球状としたメス試験片とを作成し、株式会社トリニティーラボ製の摩擦測定機(μV1000)を用い、両試験片間の摩擦力を測定して動摩擦係数を求めた。図2により説明すると、水平な台11上にオス試験片12を固定し、その上にメス試験片13の半球凸面を置いてめっき面同士を接触させ、メス試験片13に錘14によって500gfの荷重Pをかけてオス試験片12を押さえた状態とする。この荷重Pをかけた状態で、オス試験片12を摺動速度80mm/分で矢印により示した水平方向に10mm引っ張ったときの摩擦力Fをロードセル15によって測定した。その摩擦力Fの平均値Favと荷重Pより動摩擦係数(=Fav/P)を求めた。
電気的信頼性を評価するため、接触抵抗を測定した。測定方法はJIS−C−5402に準拠し、4端子接触抵抗試験機(山崎精機研究所製:CRS−113−AU)により、摺動式(1mm)で0から50gまでの荷重変化−接触抵抗を測定し、荷重を50gとしたときの接触抵抗値で評価した。
結果を表1に示す。
カーボンナノ材料を50nmから300nmの厚さでコーティングすると、接触抵抗値を上昇させることなく、動摩擦係数を0.3以下にまで低減することができた。特に、実施例2〜4は、コート層を形成しない板材に対して潤滑油を介在させて動摩擦係数を測定した場合とほぼ同じ値であり、挿抜性が大幅に改善された。Sn層の膜厚が小さい(実施例5)と、動摩擦係数は小さいが、接触抵抗が2mΩを超えた。コート層の膜厚が小さい(比較例2)と、動摩擦低減効果は少なかった。平均粒径が55nm、アスペクト比が1である球形をしたカーボンブラックでは(比較例3)、動摩擦係数低減の効果が少なかった。
なお、コート層が100nm以上の厚いもの(実施例2〜5)は、動摩擦係数を10回繰り返し測定してもコート層が剥がれることがなく、初期の動摩擦係数をほぼ維持することができた。図1は実施例2について往復移動で繰り返し測定した動摩擦係数の変化を示している。+側が往復の往移動時の値の変化を示し、−側が往復の復移動時の値の変化を示す。いずれも低い値で安定していることがわかる。
なお、コート層が100nm以上の厚いもの(実施例2〜5)は、動摩擦係数を10回繰り返し測定してもコート層が剥がれることがなく、初期の動摩擦係数をほぼ維持することができた。図1は実施例2について往復移動で繰り返し測定した動摩擦係数の変化を示している。+側が往復の往移動時の値の変化を示し、−側が往復の復移動時の値の変化を示す。いずれも低い値で安定していることがわかる。
11 台
12 オス試験片
13 メス試験片
14 錘
15 ロードセル
12 オス試験片
13 メス試験片
14 錘
15 ロードセル
Claims (6)
- Cu又はCu合金からなる基材上の表面にSn系表面層が形成され、該Sn系表面層と前記基材との間にCuSn合金層が形成された錫めっき銅合金からなる端子であって、少なくとも接続端部における前記Sn系表面層の上に、カーボンナノ材料を含有する厚さ50nmから300nmのコート層が形成されていることを特徴とする錫めっき銅合金端子。
- 前記カーボンナノ材料は、直径が5nm以上50nm以下、アスペクト比が5以上の繊維状であることを特徴とする請求項1記載の錫めっき銅合金端子。
- 前記CuSn合金層の平均厚さは0.1μm以上1.0μm以下であり、前記Sn系表面層の平均厚さは0.1μm以上2.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の錫めっき銅合金端子。
- Cu又はCu合金からなる基材上の表面にSn系表面層が形成され、該Sn系表面層と前記基材との間にCuSn合金層が形成された錫めっき銅合金からなる端子材であって、少なくとも成形により接続端部となる部位における前記Sn系表面層の上に、カーボンナノ材料を含有する厚さ50nmから300nmのコート層が形成されていることを特徴とする錫めっき銅合金端子材。
- 前記カーボンナノ材料は、直径が5nm以上50nm以下、アスペクト比が5以上の繊維状であることを特徴とする請求項4記載の錫めっき銅合金端子材。
- 前記CuSn合金層の平均厚さは0.1μm以上1.0μm以下であり、前記Sn系表面層の平均厚さは0.1μm以上2.0μm以下であることを特徴とする請求項4又は5記載の錫めっき銅合金端子材。
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JP2012139995A JP2014005483A (ja) | 2012-06-21 | 2012-06-21 | 挿抜性に優れた錫めっき銅合金端子及び端子材 |
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JP2012139995A JP2014005483A (ja) | 2012-06-21 | 2012-06-21 | 挿抜性に優れた錫めっき銅合金端子及び端子材 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015014019A (ja) * | 2013-07-03 | 2015-01-22 | パナソニック株式会社 | 電気接点の表面処理方法、電気接点部材、コネクタ並びに接点処理剤 |
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2012
- 2012-06-21 JP JP2012139995A patent/JP2014005483A/ja active Pending
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