JP2014003104A - 複合基板の製造方法および複合基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶成長用基板に形成した半導体結晶層を転写先基板に転写する場合の各転写段階における接着層または犠牲層のエッチング耐性または接着性を制御する。
【解決手段】
半導体結晶層形成基板と転写先基板とを貼り合わせるステップと、半導体結晶層を転写先基板側に残した状態で転写先基板と半導体結晶層形成基板とを分離するステップと、転写先基板と第2の転写先基板とを貼り合わせるステップと、転写先基板と半導体結晶層との間に位置する層の物性、転写先基板と半導体結晶層との接着性を支配する界面の物性、半導体結晶層と第2の転写先基板との間に位置する層の物性、または、半導体結晶層と第2の転写先基板との接着性を支配する界面の物性、を変化させるステップと、半導体結晶層を第2の転写先基板側に残した状態で、転写先基板と第2の転写先基板とを分離するステップと、を有する半導体結晶層を備えた複合基板の製造方法を提供する。
【選択図】図5
【解決手段】
半導体結晶層形成基板と転写先基板とを貼り合わせるステップと、半導体結晶層を転写先基板側に残した状態で転写先基板と半導体結晶層形成基板とを分離するステップと、転写先基板と第2の転写先基板とを貼り合わせるステップと、転写先基板と半導体結晶層との間に位置する層の物性、転写先基板と半導体結晶層との接着性を支配する界面の物性、半導体結晶層と第2の転写先基板との間に位置する層の物性、または、半導体結晶層と第2の転写先基板との接着性を支配する界面の物性、を変化させるステップと、半導体結晶層を第2の転写先基板側に残した状態で、転写先基板と第2の転写先基板とを分離するステップと、を有する半導体結晶層を備えた複合基板の製造方法を提供する。
【選択図】図5
Description
本発明は、複合基板の製造方法および複合基板に関する。
GaAs、InGaAs等のIII−V族化合物半導体は、高い電子移動度を有し、Ge、SiGe等のIV族半導体は、高い正孔移動度を有する。よって、III−V族化合物半導体でNチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)(以下単に「nMOSFET」という場合がある。)を構成し、IV族半導体でPチャネル型のMOSFET(以下単に「pMOSFET」という場合がある。)を構成すれば、高い性能を備えたCMOSFET(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)が実現できる。非特許文献1には、III−V族化合物半導体をチャネルとするNチャネル型MOSFETとGeをチャネルとするPチャネル型MOSFETが、単一基板に形成されたCMOSFET構造が開示されている。
単一基板(たとえばシリコン基板)上に、III−V族化合物半導体層およびIV族半導体結晶層というような異種材料を形成する技術として、結晶成長用基板に形成した半導体結晶層を転写先基板に転写する技術が知られている。たとえば非特許文献2には、GaAs基板上に犠牲層としてAlAs層を形成し、当該犠牲層(AlAs層)上に形成したGe層を、Si基板に転写する技術が開示されている。
S. Takagi, et al., SSE, vol. 51, pp. 526-536, 2007.
Y. Bai and E. A. Fitzgerald, ECS Transactions, 33 (6) 927-932 (2010)
III−V族化合物半導体をチャネルとするNチャネル型MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor Field Effect Transistor)(以下単に「nMISFET」という場合がある。)と、IV族半導体をチャネルとするPチャネル型MISFET(以下単に「pMISFET」という場合がある。)とを、一つの基板上に形成するには、nMISFET用のIII−V族化合物半導体と、pMISFET用のIV族半導体を単一基板上に形成する技術が必要になる。また、LSI(Large Scale Integration)として製造することを考慮すれば、既存製造装置および既存工程の活用が可能なシリコン基板上にnMISFET用のIII−V族化合物半導体結晶層およびpMISFET用のIV族半導体結晶層を形成することが好ましい。
非特許文献2の技術で結晶成長用基板から転写先基板に転写された半導体結晶層は、さらに他の転写先基板に転写されることが想定されるが、結晶成長用基板から転写先基板への転写段階における転写先基板と半導体結晶層との接着層(または接着機構)は、転写先基板から次の転写先基板への転写段階における犠牲層(または脱着機構)となるので、各転写段階におけるエッチング液と接着層(犠牲層)の材料(または各転写段階における接着機構)はエッチング耐性または接着強度の大小関係が適切になるよう選択する必要がある。これら選択の自由度を増すためには、接着層(犠牲層)の物性(エッチング耐性または接着強度等)を動的に変化させ、制御できることが好ましい。
本発明の目的は、結晶成長用基板に形成した半導体結晶層を転写先基板に転写する場合の各転写段階における接着層または犠牲層のエッチング耐性または接着性を制御し、各転写段階におけるエッチャントと接着層(犠牲層)の材料の選択自由度を増すことにある。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、半導体結晶層形成基板の上に犠牲層および半導体結晶層を、前記犠牲層、前記半導体結晶層の順に形成するステップと、前記半導体結晶層形成基板に形成された層の表面であって転写先基板または前記転写先基板に形成された層に接することとなる第1表面と、前記転写先基板または前記転写先基板に形成された層の表面であって前記第1表面に接することとなる第2表面と、が向かい合うように、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップと、前記犠牲層をエッチングし、前記半導体結晶層を前記転写先基板側に残した状態で、前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップと、前記転写先基板の前記半導体結晶層側と第2の転写先基板の表面側とが向かい合うように、前記転写先基板と前記第2の転写先基板とを貼り合わせるステップと、前記転写先基板と前記半導体結晶層との間に位置する層の物性、前記転写先基板と前記半導体結晶層との接着性を支配する界面の物性、前記半導体結晶層と前記第2の転写先基板との間に位置する層の物性、および、前記半導体結晶層と前記第2の転写先基板との接着性を支配する界面の物性、から選択された1以上の物性を変化させるステップと、前記半導体結晶層を前記第2の転写先基板側に残した状態で、前記転写先基板と前記第2の転写先基板とを分離するステップと、を有する前記半導体結晶層を備えた複合基板の製造方法を提供する。
前記転写先基板が、無機物からなり、自由状態において一方面が凸面、他方面が凹面となる反りを有する可撓性基板であり、前記第2表面が前記凸面側にあるものであってもよく、この場合、前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップにおいて、前記転写先基板の前記半導体結晶層形成基板から分離した部分が前記転写先基板の反りにより前記半導体結晶層形成基板から離れる方向に曲げられつつ前記犠牲層をエッチングすることができる。前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記半導体結晶層の上に接着層を形成するステップをさらに有してもよい。前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記第1表面および前記第2表面から選択された1以上の表面に、前記第1表面と前記第2表面との接合界面における接着性を強化する接着性強化処理を施すステップ、をさらに有してもよい。前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの後、前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップの前に、前記転写先基板および前記半導体結晶層形成基板を、1MPa〜1GPaの圧力範囲で圧着するステップをさらに有してもよい。前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記犠牲層の一部が露出するように少なくとも前記半導体結晶層をエッチングし、前記半導体結晶層を複数の分割体に分割するステップを有してもよい。
前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記半導体結晶層の一部を活性領域とする電子デバイスを前記半導体結晶層に形成するステップをさらに有してもよい。前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップにおける前記犠牲層のエッチングは、前記半導体結晶層形成基板および前記転写先基板の全部または一部をエッチング液に浸漬して行なっても良い。
本発明の第2の態様においては、無機物からなり、自由状態において一方面が凸面、他方面が凹面となる反りを有する可撓性基板と、単結晶の半導体結晶層と、前記可撓性基板と前記半導体結晶層との間に位置する多結晶性の絶縁層と、を有する複合基板を提供する。前記可撓性基板が、導電性を生ずる原子を1×1010〜1×1016cm−3の範囲で含有してもよく、この場合、前記絶縁層が、前記導電性を生ずる原子のパッシベーション層として機能してもよい。
(実施形態1)
図1〜図6は、実施形態1の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図または平面図である。本実施形態の製造方法は、まず、図1に示すように、半導体結晶層形成基板102の上に犠牲層104および半導体結晶層106を、犠牲層104、半導体結晶層106の順に形成する。
図1〜図6は、実施形態1の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図または平面図である。本実施形態の製造方法は、まず、図1に示すように、半導体結晶層形成基板102の上に犠牲層104および半導体結晶層106を、犠牲層104、半導体結晶層106の順に形成する。
半導体結晶層形成基板102は、高品位な半導体結晶層106を形成するための基板である。好ましい半導体結晶層形成基板102の材料は、半導体結晶層106の材料、形成方法等に依存する。一般に、半導体結晶層形成基板102は、形成しようとする半導体結晶層106と格子整合または擬格子整合する材料からなることが望ましい。たとえば、半導体結晶層106としてGaAs層をエピタキシャル成長法により形成する場合、半導体結晶層形成基板102は、GaAs単結晶基板が好ましく、InP、サファイア、Ge、SiCの単結晶基板が選択可能である。半導体結晶層形成基板102がGaAs単結晶基板である場合、半導体結晶層106が形成される面方位として(100)面または(111)面が挙げられる。
犠牲層104は、半導体結晶層形成基板102と半導体結晶層106とを分離するための層である。犠牲層104がエッチングにより除去されることで、半導体結晶層形成基板102と半導体結晶層106とが分離する。犠牲層104のエッチングに際し、半導体結晶層形成基板102および半導体結晶層106が残る必要があるため、犠牲層104のエッチング速度は、半導体結晶層形成基板102および半導体結晶層106のエッチング速度より大きい、好ましくは数倍以上大きい必要がある。半導体結晶層形成基板102としてGaAs単結晶基板が、半導体結晶層106としてGaAs層が選択される場合、犠牲層104はAlAs層が好ましく、InAlAs層、InGaP層、InAlP層、InGaAlP層、AlSb層が選択できる。犠牲層104の厚さが大きくなると、半導体結晶層106の結晶性が低下する傾向にあるから、犠牲層104の厚さは、犠牲層としての機能が確保できる限り薄いことが好ましい。犠牲層104の厚さは、0.1nm〜10μmの範囲で選択できる。
犠牲層104は、エピタキシャル成長法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法またはALD(Atomic Layer Deposition)法により形成することができる。エピタキシャル成長法には、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法またはMBE(Molecular Beam Epitaxy)法を利用することができる。犠牲層104をMOCVD法で形成する場合、ソースガスとして、TMGa(トリメチルガリウム)、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMIn(トリメチルインジウム)、AsH3(アルシン)、PH3(ホスフィン)等を用いることができる。キャリアガスには水素を用いることができる。ソースガスの複数の水素原子基の一部を塩素原子または炭化水素基で置換した化合物を用いることもできる。反応温度は、300℃から900℃の範囲で、好ましくは400〜800℃の範囲内で適宜選択することができる。ソースガス供給量や反応時間を適宜選択することで犠牲層104の厚さを制御することができる。
半導体結晶層106は、後に説明する転写先基板に転写される転写対象層である。半導体結晶層106は、半導体デバイスの活性層等に利用される。半導体結晶層106が半導体結晶層形成基板102上にエピタキシャル成長法等により形成されることで、半導体結晶層106の結晶性が高品位に実現される一方、半導体結晶層106が転写先基板に転写されることで、基板との格子整合等を考慮すること無く、半導体結晶層106を任意の基板上に形成することが可能になる。
半導体結晶層106として、III−V族化合物半導体からなる結晶層、IV族半導体からなる結晶層もしくはII−VI族化合物半導体からなる結晶層、または、これら結晶層を複数積層した積層体が挙げられる。III−V族化合物半導体として、AluGavIn1−u―vNmPnAsqSb1−m−n−q(0≦u≦1、0≦v≦1、0≦m≦1、0≦n≦1、0≦q≦1)、例えば、GaAs、InyGa1−yAs(0<y<1)、InPまたはGaSbが挙げられる。IV族半導体として、GeまたはGexSi1−x(0<x<1)が挙げられる。II−VI族化合物半導体として、ZnO、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSeまたはCdTe等が挙げられる。IV族半導体がGexSi1−xである場合、GexSi1−xのGe組成比xは、0.9以上であることが好ましい。Ge組成比xを0.9以上とすることにより、Geに近い半導体特性を得ることができる。半導体結晶層106として、上記の結晶層または積層体を用いることにより、半導体結晶層106を高移動度な電界効果トランジスタ、特に高移動度な相補型電界効果トランジスタの活性層に用いることが可能になる。
半導体結晶層106の厚さは、0.1nm〜500μmの範囲で適宜選択することができる。半導体結晶層106の厚さは、0.1nm以上1μm未満であることが好ましい。半導体結晶層106を1μm未満とすることにより、たとえば極薄ボディMISFET等の高性能トランジスタの製造に適した複合基板に用いることができる。
半導体結晶層106は、エピタキシャル成長法、ALD法により形成することができる。エピタキシャル成長法には、MOCVD法、MBE法を利用することができる。半導体結晶層106がIII−V族化合物半導体からなり、MOCVD法で形成する場合、ソースガスとして、TMGa(トリメチルガリウム)、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMIn(トリメチルインジウム)、AsH3(アルシン)、PH3(ホスフィン)等を用いることができる。半導体結晶層106がIV族化合物半導体からなり、CVD法で形成する場合、ソースガスとして、GeH4(ゲルマン)、SiH4(シラン)またはSi2H6(ジシラン)等を用いることができる。キャリアガスには水素を用いることができる。ソースガスの複数の水素原子基の一部を塩素原子または炭化水素基で置換した化合物を用いることもできる。反応温度は、300℃から900℃の範囲で、好ましくは400〜800℃の範囲内で適宜選択することができる。ソースガス供給量や反応時間を適宜選択することで半導体結晶層106の厚さを制御することができる。
次に、図2に示すように、転写先基板120と半導体結晶層106との接着性を強化する接着性強化処理を転写先基板120の表面および半導体結晶層106の表面に施す。ここで、半導体結晶層106の表面は、半導体結晶層形成基板102に形成された層の表面であって転写先基板120または転写先基板120に形成された層に接することとなる「第1表面112」の一例である。また、転写先基板120の表面は、転写先基板120または転写先基板120に形成された層の表面であって第1表面112に接することとなる「第2表面122」の一例である。
接着性強化処理は、転写先基板120の表面(第2表面122)または半導体結晶層106の表面(第1表面112)の何れか一方にだけ施してもよい。接着性強化処理として、イオンビーム生成器130によるイオンビーム活性化を例示することができる。照射するイオンは、たとえばアルゴンイオンである。接着性強化処理として、プラズマ活性化を施してもよい。プラズマ活性化として、酸素プラズマ処理を例示することができる。接着性強化処理により、転写先基板120と半導体結晶層106との接着性を強化することができる。なお、接着性強化処理は、必須ではない。接着性強化処理に代えて、転写先基板120上に、接着層を予め形成しておいても良い。
転写先基板120は、半導体結晶層106が転写される先の基板である。転写先基板120は、半導体結晶層106を活性層として利用する電子デバイスが最終的に配置されるターゲット基板であってもよく、半導体結晶層106がターゲット基板に転写されるまでの中間状態における、仮置き基板であってもよい。転写先基板120は、無機物からなり、自由状態において一方面が凸面、他方面が凹面となる反りを有する可撓性基板である。転写先基板120の反りは、凹面側への引張応力膜の形成または凸面側への圧縮応力膜の形成により実現できる。ここでは、凹面側に引張応力膜124を形成することで、反りを発生させている。転写先基板120の凸面側表面は、第2表面122である。
転写先基板120として、シリコン基板、SOI(Silicon on Insulator)基板、ガラス基板、サファイア基板、SiC基板、AlN基板を例示することができる。転写先基板120は、セラミックス基板等の絶縁体基板、金属等の導電体基板であっても良い。転写先基板120にシリコン基板またはSOI基板を用いる場合、既存のシリコンプロセスで用いられる製造装置が利用でき、既知のシリコンプロセスにおける知見を利用して、研究開発および製造の効率を高めることができる。
転写先基板120が、シリコン基板等、可撓性ではあっても容易には曲がらない基板であるから、転写する半導体結晶層106が機械的振動等から保護され、半導体結晶層106の結晶品質を高く保つことができる。同時に、転写先基板120は、引張応力膜124による反りを有するので、後に説明する犠牲層104のエッチング工程において、転写先基板120が半導体結晶層形成基板102から離れる方向に曲げられ、当該曲げ部にエッチング液が速やかに供給され、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102との分離が迅速に行われるようになる。
次に、図3に示すように、転写先基板120の凸側の表面(第2表面122)と半導体結晶層形成基板102の半導体結晶層106の表面(第1表面112)とを向かい合わせ、図4に示すように、第1表面112である半導体結晶層106の表面と、第2表面122である転写先基板120の表面とが接合されるように、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。接着性強化処理を行う場合、貼り合わせは室温で行うことができる。
貼り合せにおいて、転写先基板120には反りがあるので、反りを押さえる程度の荷重Fを転写先基板120および半導体結晶層形成基板102に印加する必要がある。さらに大きな荷重を印加して、転写先基板120を半導体結晶層形成基板102に圧着してもよい。圧着により接着強度を向上させることができる。圧着時または圧着後に熱処理を行ってもよい。熱処理温度として50〜600℃が好ましく、さらに好ましくは100℃〜400℃がよい。荷重Fは、1MPa〜1GPaの範囲で適宜選択できる。接着層を用いて転写先基板120と半導体結晶層形成基板102を接着する場合、圧着は必要ではない。
次に、図5に示すように、半導体結晶層形成基板102および転写先基板120の全部または一部(好ましくは全部)をエッチング液に浸漬して犠牲層104をエッチングする。犠牲層104のエッチングにより、図6に示すように、半導体結晶層106を転写先基板120側に残した状態で、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを分離する。
転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを分離する際に、転写先基板120の半導体結晶層形成基板102から分離した部分が転写先基板120の反りにより半導体結晶層形成基板102から離れる方向に曲げられつつ犠牲層104をエッチングする。これにより、エッチング液を滞りなく犠牲層104に供給でき、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102との分離を迅速に行うことができるようになる。
なお、犠牲層104は、選択的にエッチングすることができる。ここで「選択的にエッチングする」とは、犠牲層104と同様にエッチング液に晒される他の部材、たとえば半導体結晶層106も犠牲層104と同様にエッチングされるものの、犠牲層104のエッチング速度が他の部材のエッチング速度より高くなるようエッチング液の材料その他の条件を選択し、実質的に犠牲層104だけを「選択的に」エッチングすることをいう。犠牲層104がAlAs層である場合、エッチング液として、HCl、HF、リン酸、クエン酸、過酸化水素水、アンモニア、水酸化ナトリウムの水溶液または水を例示することができる。エッチング中の温度は、10〜90℃の範囲で制御することが好ましい。エッチング時間は、1分〜200時間の範囲で適宜制御することができる。
エッチング液に超音波を印加しつつ犠牲層104をエッチングすることができる。超音波の印加により、エッチング速度を増すことができる。また、エッチング処理中に紫外線を照射したり、エッチング液を撹拌したりしてもよい。なお、ここではエッチング液による犠牲層104のエッチングの例を説明したが、犠牲層104は、ドライ方式によりエッチングすることも可能である。
以上のようにして、犠牲層104がエッチングにより除去されると、図6に示すように、半導体結晶層106を転写先基板120側に残した状態で、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とが分離する。これにより、半導体結晶層106が転写先基板120に転写され、転写先基板120上に半導体結晶層106を有する複合基板が製造される。
上記した実施形態1の複合基板の製造方法では、転写先基板120の反りを利用し、転写先基板120の半導体結晶層形成基板102から分離した部分が半導体結晶層形成基板102から離れる方向に曲げられつつ犠牲層104がエッチングされるので、エッチング液が滞りなく犠牲層104に供給され、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102の分離を迅速に行うことができる。これにより、製造のスループットを向上することができる。
(実施形態2)
図7〜図11は、実施形態2の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。実施形態2では、実施形態1の方法で製造した複合基板(転写先基板120上に半導体結晶層106を有する複合基板)を用い、転写先基板120上の半導体結晶層106を、さらに第2の転写先基板150に転写し、第2の転写先基板150上に半導体結晶層106を有する複合基板の製造方法について説明する。
図7〜図11は、実施形態2の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。実施形態2では、実施形態1の方法で製造した複合基板(転写先基板120上に半導体結晶層106を有する複合基板)を用い、転写先基板120上の半導体結晶層106を、さらに第2の転写先基板150に転写し、第2の転写先基板150上に半導体結晶層106を有する複合基板の製造方法について説明する。
図7に示すように、第2の転写先基板150と半導体結晶層106の接着性を強化する接着性強化処理を、第2の転写先基板150の表面および半導体結晶層106の表面に施す。接着性強化処理は、第2の転写先基板150の表面または半導体結晶層106の表面の何れか一方にだけ施してもよい。接着性強化処理として、イオンビーム生成器130によるイオンビーム活性化を例示することができる。照射するイオンは、たとえばアルゴンイオンである。接着性強化処理として、プラズマ活性化を施してもよい。接着性強化処理により、第2の転写先基板150と半導体結晶層106との接着性を強化することができる。なお、接着性強化処理は、必須ではない。接着性強化処理に代えて、第2の転写先基板150上に、接着層を予め形成しておいても良い。
第2の転写先基板150は、転写先基板120と同様、半導体結晶層106が転写される先の基板である。第2の転写先基板150は、転写先基板120と同様に、最終的なターゲット基板であってもよく、仮置き基板であってもよい。第2の転写先基板150の材料等については、転写先基板120と同様であるため、説明を省略する。
次に、図8に示すように、転写先基板120の半導体結晶層106側と第2の転写先基板150の表面側とが向かい合うように、転写先基板120と第2の転写先基板150とを貼り合わせる。つまり半導体結晶層106の表面と第2の転写先基板150の表面とが接合されるように貼り合わせる。接着性強化処理を行う場合、貼り合わせは室温で行うことができる。
次に、図9に示すように、第2の転写先基板150および転写先基板120に荷重Fを印加し、第2の転写先基板150を転写先基板120に圧着する。荷重Fは、1MPa〜1GPaの範囲で適宜選択できる。なお、接着層を用いて第2の転写先基板150と転写先基板120を接着する場合、圧着は必要ない。
さらに、図10に示すように、転写先基板120と半導体結晶層106との接着性を支配する界面の物性を変化させる。界面物性の変化は、たとえば、水素イオンをイオン注入することにより行う。転写先基板120と半導体結晶層106との接着界面に水素イオンをイオン注入することより、当該界面の接着力を低下させることができる。なお、イオン注入は、水素イオンが、当該界面で停止するよう加速電圧を調整して行う。
以上のようにして、転写先基板120と半導体結晶層106との接着界面の接着力が低下すると、図11に示すように、半導体結晶層106を第2の転写先基板150側に残した状態で、転写先基板120と第2の転写先基板150とを分離できる。これにより、半導体結晶層106が第2の転写先基板150に転写され、第2の転写先基板150上に半導体結晶層106を有する複合基板が製造される。
上記した実施形態2の複合基板の製造方法によれば、転写先基板120と第2の転写先基板150とを張り合わせた後に、転写先基板120と半導体結晶層106との接着性を低下する物性変化を発生させるため、転写段階に応じた接着力の制御が可能となり、複数段階に渡る転写工程を安定的に実施できるようになる。
なお、転写先基板120と半導体結晶層106との間に接着層を有する場合は、当該接着層の物性を変化させることができる。また、上記の実施形態では転写先基板120と半導体結晶層106との接着性を低下させるよう物性を変化させたが、半導体結晶層106と第2の転写先基板150との接着性を支配する界面、つまり半導体結晶層106と第2の転写先基板150と接合界面の物性を、接着性が高くなるように変化させても良い。半導体結晶層106と第2の転写先基板150との間に接着層を有する場合には、当該接着層の物性を変化させてもよい。
物性の変化は、界面における接着性の変化の他、エッチング耐性を変化させるものであっても良い。たとえば、転写先基板120と半導体結晶層106との間に犠牲層を有し、半導体結晶層106と第2の転写先基板150との間に接着層を有する場合に、半導体結晶層106と第2の転写先基板150との接着時には、接着層を接着性に優れるアモルファス相で用い、犠牲層のエッチングによる転写先基板120と第2の転写先基板150の分離の際には、接着層をエッチング耐性に優れる多結晶相に相変化(物性変化)させて用いても良い。
エッチング耐性を変化させる物性変化の例として、前記した結晶相の変化のほか、有機物に熱または紫外線等を照射して硬化させ、エッチング耐性を高める変化、結晶にイオン注入または歪を導入して結晶欠陥の増加し、エッチング耐性を低下させる変化、等を例示することができる。また、接着性を増加させる物性変化の例として、界面の活性化、接着性を低下させる物性変化の例として、有機物の有機溶剤による膨潤、有機物の熱または紫外線による硬化等を例示することができる。
(実施形態3)
図12〜図14は、実施形態3の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。本実施形態3では、半導体結晶層106と転写先基板120との間に接着層160を形成する場合の例を説明する。実施形態3の製造方法は、多くの場合に実施形態1の製造方法と共通するので、主に異なる部分について説明し、共通する部分の説明は省略する。
図12〜図14は、実施形態3の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。本実施形態3では、半導体結晶層106と転写先基板120との間に接着層160を形成する場合の例を説明する。実施形態3の製造方法は、多くの場合に実施形態1の製造方法と共通するので、主に異なる部分について説明し、共通する部分の説明は省略する。
図12に示すように、犠牲層104および半導体結晶層106を形成した後、半導体結晶層106の上に接着層160を形成する。接着層160は、半導体結晶層106と転写先基板120との接着性を高める層であり、有機物または無機物の何れからなるものであっても良いが、転写先基板120が無機物であるため、材料の整合性から無機物であることが好ましい。接着層160が有機物である場合、半導体結晶層106の表面に凹凸があっても、ある程度の凹凸は接着層160に吸収され、転写先基板120と良好に接合されるので、半導体結晶層106に要求される表面平坦性のレベルは低くて良い。一方接着層160が無機物である場合、後の工程に数百℃程度の高温工程があっても、安定的に取り扱うことが可能になる利点がある。また、接着層160が無機物である場合、後に作成されるデバイスの絶縁層等に流用して、プロセスを簡略化することが可能になる。接着層160が無機物である場合、無機物からなる転写先基板120との接着性を高めるため、接着層160の平坦性は、平均粗さ2nm以下であることが好ましい。
接着層160が有機物である場合、接着層160として、ポリイミド膜またはレジスト膜を例示することができる。この場合、接着層160はスピンコート法等の塗布法により形成することができる。接着層160が無機物である場合、接着層160として、Al2O3、AlN、Ta2O5、ZrO2、HfO2、SiOx(例えばSiO2)、SiNx(例えばSi3N4)およびSiOxNyのうちの少なくとも1からなる層、またはこれらの中から選ばれた少なくとも2層の積層を例示することができる。この場合、接着層160は、ALD法、熱酸化法、蒸着法、CVD法、スパッタ法により形成することができる。接着層160の厚さは、0.1nm〜100μmの範囲とすることができる。
次に、図13に示すように、転写先基板120の表面と、接着層160の表面とが接合されるように、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。ここで、接着層160の表面は、半導体結晶層形成基板102に形成された層の表面であって転写先基板120または転写先基板120に形成された層に接することとなる「第1表面112」の一例である。転写先基板120の表面は、転写先基板120または転写先基板120に形成された層の表面であって第1表面112に接することとなる「第2表面122」の一例である。貼り合わせにおいて、第1表面112である接着層160の表面と、第2表面122である転写先基板120の表面とが接合されるように、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。貼り合わせについては、実施形態1と同様である。
なお、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる前に、転写先基板120と接着層160との接着性を強化する接着性強化処理を転写先基板120の表面および接着層160の表面から選択された1以上の表面に施してよいことは、実施形態1と同様である。貼り合わせにおいて、転写先基板120および半導体結晶層形成基板102を、1MPa〜1GPaの圧力範囲で圧着して良い点も、実施形態1と同様である。
その後、犠牲層104をエッチングし、図14に示すように、接着層160および半導体結晶層106を転写先基板120側に残した状態で、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを分離する。分離は、実施形態1と同様である。これにより、接着層160および半導体結晶層106が転写先基板120に転写され、転写先基板120上に接着層160および半導体結晶層106を有する複合基板が製造される。なお、犠牲層104をドライ方式によりエッチングしても良いことは実施形態1と同様である
上記した実施形態3の複合基板の製造方法によれば、接着層160を有するので、転写先基板120と半導体結晶層106との接着がより確実になる。また、接着層160が有機物である場合、接着層160により半導体結晶層106表面の凹凸が吸収されるので、半導体結晶層106に要求される平坦性の水準が低くなる。一方接着層160が無機物である場合、後の工程に熱的制限を受けない利点がある。
なお、実施形態3の複合基板を用いて、転写先基板120上の半導体結晶層106を、さらに第2の転写先基板に転写できることは、実施形態2と同様である。この場合、接着層160は、半導体結晶層106を第2の転写先基板に転写する際の犠牲層に用いることができる。また、第2の転写先基板と半導体結晶層106との間には、接着層を形成してもよい。
また、半導体結晶層形成基板102上に犠牲層104および半導体結晶層106を形成した後、半導体結晶層形成基板102と転写先基板120とを貼り合わせる前に、半導体結晶層106の一部を活性領域とする電子デバイスを、半導体結晶層106に形成してもよい。この場合、半導体結晶層106は、そこに電子デバイスを有した状態で転写されることとなる。半導体結晶層106は、転写の度に表裏が逆転するので、当該方法を用いれば、半導体結晶層106の表裏両面に電子デバイスを作成することができる。
(実施形態4)
図15〜図17は、実施形態4の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。本実施形態4の製造方法は、まず、実施形態1の図1に示すように、半導体結晶層形成基板102の上に犠牲層104および半導体結晶層106を、犠牲層104、半導体結晶層106の順に形成する。半導体結晶層形成基板102、犠牲層104および半導体結晶層106については、実施形態1において説明したものと同様である。
図15〜図17は、実施形態4の複合基板の製造方法を工程順に示した断面図である。本実施形態4の製造方法は、まず、実施形態1の図1に示すように、半導体結晶層形成基板102の上に犠牲層104および半導体結晶層106を、犠牲層104、半導体結晶層106の順に形成する。半導体結晶層形成基板102、犠牲層104および半導体結晶層106については、実施形態1において説明したものと同様である。
次に、図15に示すように、犠牲層104の一部を露出するように半導体結晶層106をエッチングし、半導体結晶層106を複数の分割体108に分割する。このエッチングにより分割体108と隣接する分割体108との間に溝110が形成される。ここで、「犠牲層104の一部を露出するように」とは、溝110が形成されるエッチング領域において、犠牲層104が実質的に露出していると言える以下のような場合を含む。すなわち、溝110の底部において犠牲層104が完全にエッチングされ、溝110の底部に半導体結晶層形成基板102が露出され、犠牲層104の断面が溝110の側面の一部として露出されるような場合、溝110が形成される領域において犠牲層104の途中までエッチングされ、溝110の底面に犠牲層104が露出されるような場合、溝110の底部の一部に半導体結晶層106が残存し、溝110の底部において犠牲層104が一部露出しているような場合、あるいは、溝110の底部全体に極薄い半導体結晶層106が残存するものの、残存する半導体結晶層106の厚さはエッチング液が浸透する程度に薄く、実質的に犠牲層104が露出していると言える場合、を含む。
溝110を形成するエッチングには、ドライ方式またはウェット方式の何れのエッチング方式も採用できる。ドライエッチングの場合、エッチングガスには、SF6、CH4−xFx(x=1〜4の整数)等のハロゲンガスが利用できる。ウェットエッチングの場合、エッチング液として、HCl、HF、リン酸、クエン酸、過酸化水素水、アンモニア、水酸化ナトリウムの水溶液が利用できる。エッチングのマスクには、エッチング選択比を有する適当な有機物または無機物が利用でき、マスクをパターニングすることにより、溝110のパターンを任意に形成できる。なお、溝110を形成するエッチングにおいて、半導体結晶層形成基板102をエッチングストッパに利用することが可能であるが、半導体結晶層形成基板102を再利用することを考慮すれば、犠牲層104の表面または途中でエッチングを停止することが望ましい。
溝110を形成することにより、犠牲層104のエッチングにおいて、エッチング液が溝110から供給され、溝110を多く形成することで、犠牲層104のエッチングが必要な距離を短くし、犠牲層104の除去に必要な時間を短縮できる。なお、溝110の平面パターンは、任意の形状であってもよい。つまり溝110のパターンによって分離される半導体結晶層106の平面形状は、短冊状、4角形、方形等の他、任意の形状であってもよい。
次に、転写先基板120と半導体結晶層106との接着性を強化する接着性強化処理を転写先基板120の表面および半導体結晶層106の表面に施した後、転写先基板120の凸側の表面(第2表面122)と半導体結晶層形成基板102の半導体結晶層106の表面(第1表面112)とを向かい合わせ、図16に示すように、第1表面112である半導体結晶層106の表面と、第2表面122である転写先基板120の表面とが接合されるように、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを貼り合わせる。この貼りあわせにより、溝110の内壁と転写先基板120の表面とによって空洞140が形成される。接着性強化処理、貼り合わせ、張り合わせの際の荷重の印加等については、実施形態1と同様である。
次に、空洞140にエッチング液を供給し、空洞140に供給されたエッチング液により、犠牲層104がエッチングされる。空洞140にエッチング液を供給する方法として、毛細管現象によりエッチング液を空洞140内に供給する方法、空洞140の一端をエッチング液に浸漬し、他端からエッチング液を吸引することで強制的にエッチング液を空洞140内に供給する方法、空洞140の一端が開放され他端が閉塞されている場合に、転写先基板120および半導体結晶層形成基板102を減圧状態に置き、空洞140の開放されている一端をエッチング液に浸漬した後、転写先基板120および半導体結晶層形成基板102を大気圧状態にすることで、強制的にエッチング液を空洞140内に供給する方法、を挙げることができる。
犠牲層104のエッチングは、選択的であることが好ましい。ここで「選択的にエッチングする」とは、犠牲層104と同様にエッチング液に晒される他の部材、たとえば半導体結晶層106も犠牲層104と同様にエッチングされるものの、犠牲層104のエッチング速度が他の部材のエッチング速度より高くなるようエッチング液の材料その他の条件を選択し、実質的に犠牲層104だけを「選択的に」エッチングすることをいう。犠牲層104がAlAs層である場合、エッチング液として、HCl、HF、リン酸、クエン酸、過酸化水素水、アンモニア、水酸化ナトリウムの水溶液または水を例示することができる。エッチング中の温度は、10〜90℃の範囲で制御することが好ましい。エッチング時間は、1分〜200時間の範囲で適宜制御することができる。
なお、犠牲層104をエッチングする間、エッチング液で満たされた空洞140内に超音波を印加しつつ犠牲層104をエッチングすることができる。超音波の印加により、エッチング速度を増すことができる。また、エッチング処理中に紫外線を照射したり、エッチング液を撹拌したりしてもよい。
以上のようにして、犠牲層104がエッチングにより除去されると、図17に示すように、半導体結晶層106を転写先基板120側に残した状態で、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とが分離する。これにより、半導体結晶層106が転写先基板120に転写され、転写先基板120上に半導体結晶層106を有する複合基板が製造される。
上記した実施形態4の複合基板の製造方法によれば、溝110の形成により空洞140が形成されるので、犠牲層104のエッチングの際に、転写先基板120の反りを利用したエッチング液の供給に加え、空洞140を経由したエッチング液の供給も付加される。よって、犠牲層104が迅速にエッチングされ除去される。このため、転写先基板120と半導体結晶層形成基板102とを速やかに分離することができ、製造のスループットを向上することができる。
なお、実施形態4の複合基板を用いて、転写先基板120上の半導体結晶層106を、さらに第2の転写先基板に転写できることは、実施形態2と同様である。第2の転写先基板と半導体結晶層106との間には、接着層を形成してもよい。また、半導体結晶層形成基板102上に犠牲層104および半導体結晶層106を形成した後、半導体結晶層形成基板102と転写先基板120とを貼り合わせる前に、半導体結晶層106の一部を活性領域とする電子デバイスを、半導体結晶層106に形成してもよい。
(実施例1)
本実施例1では、前記した実施形態2の製造方法により、ダイサイズのGaAs結晶層をSi基板上に形成する例を説明する。半導体結晶層形成基板102として4インチのGaAs基板を、犠牲層104としてAlAs結晶層を、半導体結晶層106としてGaAs結晶層を、接着層160としてAl2O3層を用いる。転写先基板120として、あらかじめ両面にSiN層を形成した後、第2表面122側のSiN層を50%フッ酸溶液にてエッチングして除去し、第2表面122側が凸状に反った4インチのSi基板を用いる。
本実施例1では、前記した実施形態2の製造方法により、ダイサイズのGaAs結晶層をSi基板上に形成する例を説明する。半導体結晶層形成基板102として4インチのGaAs基板を、犠牲層104としてAlAs結晶層を、半導体結晶層106としてGaAs結晶層を、接着層160としてAl2O3層を用いる。転写先基板120として、あらかじめ両面にSiN層を形成した後、第2表面122側のSiN層を50%フッ酸溶液にてエッチングして除去し、第2表面122側が凸状に反った4インチのSi基板を用いる。
GaAs基板の全面に、AlAs結晶層およびGaAs結晶層を、低圧CVD法によるエピタキシャル結晶成長法を用いて、順次形成する。AlAs結晶層およびGaAs結晶層の厚さは、各々150nmおよび1.0μmとする。さらにALD法によりAl2O3層を形成する。
犠牲層104であるAlAs結晶層の一部が露出するようにAl2O3層およびGaAs結晶層をエッチングし、Al2O3層およびGaAs結晶層を複数の分割体108に分割する。分割体108の大きさと溝の幅は、表1に示す通りとする。分割体108の形成は以下の通りである。表1に示す分割体108の大きさおよび溝の幅を有するマスクパターンを用い、ポジ型レジストを用いてAl2O3層上にレジストマスクを形成する。当該レジストマスクをマスクとして、Al2O3層を10%フッ酸溶液によりエッチングした後、水洗し、引き続きGaAs結晶層をクエン酸系エッチャントによりエッチングし、Al2O3層およびGaAs結晶層の分割体108を形成する。当該エッチングでは、AlAs層に至るまでGaAs結晶層をエッチングする。
次に、半導体結晶層形成基板102である4インチGaAs基板の表面(Al2O3層の表面)である第1表面112と転写先基板120である4インチSi基板の表面である第2表面122を、イオンビーム活性化することで接着性強化処理を施す。なお、転写先基板120である4インチSi基板には、あらかじめ両面にSiN層を形成し、第2表面122側のSiN層を50%フッ酸溶液にてエッチングして除去し、第2表面122側が凸状に反った基板として準備する。イオンビーム活性化は、真空中でのArイオンビームの照射とする。
その後、4インチGaAs基板の第1表面112と4インチSi基板の第2表面122とを貼り合わせ、さらに100000Nの荷重を加えて圧着を行い、貼り合わせ基板を得る。圧着は常温で行う。この貼り合わせにより、Al2O3層およびGaAs結晶層へのエッチングにより形成された溝110の内壁と、転写先基板120であるSi基板の表面とによって空洞140が形成される。
次に、犠牲層104であるAlAs結晶層をエッチングし、半導体結晶層106であるGaAs結晶層を転写先基板120である4インチSi基板に残した状態で、4インチSi基板と4インチGaAs基板とを分離する。AlAs結晶層のエッチングは、貼り合わせ基板の側面を、エッチング液(25%塩化水素水溶液)に浸漬させ、空洞140内に毛細管現象によりエッチング液を供給し、そのまま放置する。これにより犠牲層104であるAlAs結晶層のエッチングが進行し、4インチSi基板と4インチGaAs基板とが分離され、転写先基板120である4インチSi基板上に半導体結晶層106であるGaAs結晶層を有する複合基板が得られる。
さらに、転写先基板120である4インチSi基板の半導体結晶層106の側と第2の転写先基板150の表面側とが向かい合うように、転写先基板120と第2の転写先基板150とを貼り合わせる。第2の転写先基板150の表面にはZrO2膜をあらかじめ製膜し、ZrO2膜が製膜されている面と、転写先基板120の半導体結晶層106側とを貼り合わせる。貼り合わせにより、半導体結晶層106にエッチングにより形成された溝の内壁と、第2の転写先基板150の表面とによって空洞が形成される。
次に、ZrO2膜の物性を変化させる。つまり、貼り合わされた基板を200℃中で保持することでZrO2層を結晶化させる。ZrO2膜の物性が変化された貼り合わされた基板を、エッチング液(50%フッ化水素水溶液)に浸漬させ、空洞内に毛細管現象によりエッチング液を供給し、そのまま放置する。これによりこの段階では犠牲層として機能するAl2O3層のエッチングが進行し、転写先基板120と第2の転写先基板150とが分離され、第2の転写先基板150上に半導体結晶層106を有する複合基板が得られる。
上記した実施形態および実施例では、主に製造方法について説明したが、本発明は、上記製造方法により製造された複合基板としても把握できる。すなわち、接着層160が絶縁体である場合、本発明は、無機物からなり、自由状態において一方面が凸面、他方面が凹面となる反りを有する可撓性基板(転写先基板120および引張応力膜124)と、単結晶の半導体結晶層106と、前記可撓性基板と半導体結晶層106との間に位置する絶縁層(接着層160)を有する複合基板として把握できる。ここで、半導体結晶層106は、エピタキシャル成長法により形成される高品質な結晶層であるにも関わらず、前記したとおり貼り合わせにより形成されるので、絶縁層(接着層160)は、単結晶である必要がなく、多結晶性の層であってもよい。また、可撓性基板が導電性を生ずる原子を1×1010〜1×1016cm−3の範囲で含有するものである場合、絶縁層である接着層160は、導電性を生ずる原子のパッシベーション層として機能させてもよい。
上記した実施の形態では、半導体結晶層106が最終的に転写される基板について特に言及していないが、当該基板をシリコンウェハ等の半導体基板、SOI基板または絶縁体基板上に半導体層が形成されたものとし、当該半導体基板、SOI層または半導体層に予めトランジスタ等電子デバイスが形成されていてもよい。つまり、すでに電子デバイスが形成された基板上に、上記した方法を用いて半導体結晶層106を転写により形成できる。これにより、材料組成等が大きく異なる半導体デバイスをモノリシックに形成することができるようになる。特に、半導体結晶層106に電子デバイスを予め形成した後に、前記したような予め電子デバイスが形成された基板上に転写により半導体結晶層106を形成すると、製造プロセスが大きく異なる異種材料からなる電子デバイスを容易にモノリシックに形成することができるようになる。
102…半導体結晶層形成基板、104…犠牲層、106…半導体結晶層、108…分割体、110…溝、112…第1表面、120…転写先基板、122…第2表面、124…引張応力膜、130…イオンビーム生成器、140…空洞、150…第2の転写先基板、160…接着層。
Claims (10)
- 半導体結晶層形成基板の上に犠牲層および半導体結晶層を、前記犠牲層、前記半導体結晶層の順に形成するステップと、
前記半導体結晶層形成基板に形成された層の表面であって転写先基板または前記転写先基板に形成された層に接することとなる第1表面と、前記転写先基板または前記転写先基板に形成された層の表面であって前記第1表面に接することとなる第2表面と、が向かい合うように、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップと、
前記犠牲層をエッチングし、前記半導体結晶層を前記転写先基板側に残した状態で、前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップと、
前記転写先基板の前記半導体結晶層側と第2の転写先基板の表面側とが向かい合うように、前記転写先基板と前記第2の転写先基板とを貼り合わせるステップと、
前記転写先基板と前記半導体結晶層との間に位置する層の物性、
前記転写先基板と前記半導体結晶層との接着性を支配する界面の物性、
前記半導体結晶層と前記第2の転写先基板との間に位置する層の物性、および、
前記半導体結晶層と前記第2の転写先基板との接着性を支配する界面の物性、から選択された1以上の物性を変化させるステップと、
前記半導体結晶層を前記第2の転写先基板側に残した状態で、前記転写先基板と前記第2の転写先基板とを分離するステップと、
を有する
前記半導体結晶層を備えた複合基板の製造方法。 - 前記転写先基板が、無機物からなり、自由状態において一方面が凸面、他方面が凹面となる反りを有する可撓性基板であり、前記第2表面が前記凸面側にあり、
前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップにおいて、前記転写先基板の前記半導体結晶層形成基板から分離した部分が前記転写先基板の反りにより前記半導体結晶層形成基板から離れる方向に曲げられつつ前記犠牲層をエッチングする
請求項1に記載の製造方法。 - 前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記半導体結晶層の上に接着層を形成するステップをさらに有する
請求項1または請求項2に記載の製造方法。 - 前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記第1表面および前記第2表面から選択された1以上の表面に、前記第1表面と前記第2表面との接合界面における接着性を強化する接着性強化処理を施すステップ、をさらに有する
請求項1または請求項3に記載の製造方法。 - 前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの後、前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップの前に、前記転写先基板および前記半導体結晶層形成基板を、1MPa〜1GPaの圧力範囲で圧着するステップ、をさらに有する
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の製造方法。 - 前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記犠牲層の一部が露出するように少なくとも前記半導体結晶層をエッチングし、前記半導体結晶層を複数の分割体に分割するステップを有する
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の製造方法。 - 前記犠牲層および前記半導体結晶層を形成するステップの後、前記半導体結晶層形成基板と前記転写先基板とを貼り合わせるステップの前に、前記半導体結晶層の一部を活性領域とする電子デバイスを前記半導体結晶層に形成するステップをさらに有する
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の製造方法。 - 前記転写先基板と前記半導体結晶層形成基板とを分離するステップにおける前記犠牲層のエッチングは、前記半導体結晶層形成基板および前記転写先基板の全部または一部をエッチング液に浸漬して行う、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の製造方法。 - 無機物からなり、自由状態において一方面が凸面、他方面が凹面となる反りを有する可撓性基板と、
単結晶の半導体結晶層と、
前記可撓性基板と前記半導体結晶層との間に位置する多結晶性の絶縁層と、
を有する複合基板。 - 前記可撓性基板が、導電性を生ずる原子を1×1010〜1×1016cm−3の範囲で含有し、前記絶縁層が、前記導電性を生ずる原子のパッシベーション層として機能する
請求項9に記載の複合基板。
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JP2015211044A (ja) * | 2014-04-23 | 2015-11-24 | 日本電信電話株式会社 | 貼り合わせ用InGaSb積層構造基板 |
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