JP2014002181A - 画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】トナー載り量が少ない低トナー載り量システムにおいて、例えば、2次色などの発色性の確保と、線画像などの再現性の確保とを両立できる構造を実現する。
【解決手段】ズリ方向付与手段としての加圧方向切替装置340は、定着ニップ部Nを通過するトナー像に対し、トナーの積層方向(記録材表面に対して法線方向)に対して直角なズリ方向に力を付与可能である。加圧方向切替装置340を制御する制御手段としての加圧方向制御部350は、ズリ方向にトナー像を広げる量が互いに異なる第1モードと第2モードとを実行可能である。そして、2次色などの発色性が要求される場合には、第2モードよりもズリ方向にトナー像を広げる量が大きい第1モードを実行し、線画像などの再現性が要求される場合には、第2モードを実行する。
【選択図】図21

Description

本発明は、電子写真プロセス等を利用して記録材にトナー像を形成し、トナー像を記録材に定着させる定着装置を有する複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等の画像形成装置に関する。特に、トナー消費量が少ない低トナー載り量システムを有する画像形成装置に関する。
電子写真法など静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、その技術の発展と市場要求の拡大に伴い、複写機・プリンタなど現在様々な分野で利用されている。特に近年においては、環境対応、低コスト化への要求が高まり、トナー消費量低減化技術が非常に重要となってきた。このトナー消費量を少なくする技術は、トナーを記録材に定着させる過程で発生するエネルギーを減少させるという観点からも重要である。特にオフィス系の電子写真方式を用いた画像形成装置においては、省エネルギー化という要求からも重要な役割を持つようになってきた。
一方で、デジタル化・カラー化の進展によって、電子写真方式の画像形成装置は、印刷領域の一部へ適用され始めている。そして、オンデマンドプリンテイングを初めとする写真やポスターなどのグラフィックアーツ、ショートラン印刷領域における実用化が顕著となり始めている。このPOD(Print On Demand)市場への参入を鑑みた場合、電子写真方式は無版印刷としてのオンデマンド性の特徴はある。但し、色再現領域、質感、画質安定性、メディア対応性等、出力成果物としての市場価値を訴求するには数多くの問題がある。
このような問題に対応しつつも、さらには同時に前述したような低コスト化への意識が高まり、出力物1枚あたりの価格を低く抑えるという観点からも、トナー消費量低減化技術が重要になってきている。
ここで、トナー消費量低減化技術である低トナー載り量システムに関して、例えば、以下のような提案がなされている。例えば、感光体の帯電電位の絶対値を350〜550Vなる低めの条件に設定する。そして、転写後の記録材上でのトナー量が定着後に必要な画像濃度が確保できるように0.3〜0.7mg/cmなる高着色力を有するトナーを用いる構造が提案されている(特許文献1参照)。
また、単色トナー最大のり量を0.35mg/cm以下とする構造も提案されている(特許文献2、3参照)。
特開2004−295144号公報 特開2005−195670号公報 特開2005−195674号公報
トナー消費量低減化のためには、トナー中の顔料量を増やし、その分トナーの総載り量を減らすことでトナーの消費量を減らす事が可能となる。但し、トナー載り量を減らしていくと、単色ベタにおけるトナーが少なくなることでトナー間が密着できなくなり、特に凹凸がある紙の表面をトナーで隠蔽できなくなる現象がおこる。
また、トナー載り量を減らすと、トナーを2層重ねて形成する場合(2次色)では、異なる色のトナー同士が重なり合う領域が減っていくので、2次色の彩度(発色性)が低下してしまい、色再現範囲が狭くなってしまう課題が生じる。
このような発色性の低下を抑制するために、定着装置の定着ニップ部を通過するトナー像に対し、トナーの積層方向に対して直角なズリ方向に力を付与するズリ定着を行うことが考えられる。以下では、トナーの積層方向とは、紙などの記録材表面に対して、法線方向のことをいう。ズリ定着を行うことにより、トナー量が少なくても、1つのトナーが紙面方向に大きく広がり、トナー同士の混色が進み発色性が上がる。しかしながら、細線を有する画像や文字画像を形成する場合に2次色と同様にズリ定着を行うと、トナーが紙面方向に大きく広がるので、ライン幅が大きくなり、細線や文字の再現性が低下してしまう。
本発明は、このような事情に鑑み、トナー載り量が少ない低トナー載り量システムにおいて、例えば、2次色などの発色性の確保と、線画像などの再現性の確保とを両立できる構造を実現すべく発明したものである。
本発明は、記録材にトナー像を形成する像形成手段と、加熱部材と前記加熱部材に当接して定着ニップ部を形成するニップ形成部材とを有し、トナー像が形成された記録材が前記定着ニップ部を通過することにより、トナー像を記録材に定着させる定着装置と、を備え、前記像形成手段は、トナーの体積平均粒径をL(μm)、トナーの密度をρ(g/cm)、単色のトナー像の記録材上での単位面積あたりの最大のトナー載り量をM(mg/cm)とした場合に、M≦ρπL/(30√3)の関係を満たすようにトナー像を形成し、前記定着装置は、前記定着ニップ部を通過するトナー像に対し、トナーの積層方向(記録材表面に対して法線方向)に対して直角なズリ方向に力を付与可能なズリ方向付与手段と、前記ズリ方向にトナー像を広げる量が互いに異なる第1モードと第2モードとを実行可能で、前記第1モードの方が前記第2モードよりも、前記ズリ方向にトナー像を広げる量が大きくなるように前記ズリ方向付与手段を制御する制御手段と、を有する、ことを特徴とする画像形成装置にある。
本発明によれば、低トナー載り量システムであっても、ズリ方向にトナー像を広げる量が互いに異なる第1モードと第2モードとを実行可能であるため、形成する画像に適したモードを選択することにより、所望の画像を得られる。例えば、2次色などの発色性が要求される場合に第1モードを実行すれば、ズリ方向にトナー像を広げる量が大きいため発色性を確保できる。一方、線画像などの再現性が要求される場合に第2モードを実行すれば、第1モードよりもズリ方向にトナー像を広げる量が小さいため線画像などの再現性を確保できる。この結果、発色性の確保と線画像などの再現性の確保とを両立できる。
本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。 第1の実施形態で用いたトナーの温度に対する粘度特性のグラフ。 画像形成部の概略構成図。 第1の実施形態の操作部(コントロールパネル)の1例を示す図。 第1の実施形態でモードを選択する画面の1例を示す図。 フルカラーモードとモノクロモードとを判別する構成の詳細を示すブロック図。 PCからプリントジョブを受ける場合で、フルカラーモードとモノクロモードとを判別する構成の概略を示すブロック図。 トナー量と紙の隠蔽状態との関係を模式的に示す、それぞれの側面図、斜視図、トナー溶融前後の平面図。 トナー量と単色時および2次色のトナー層形成状態との関係を模式的に示す、図8と同様の図。 トナー量が少ない時(隙間がある時)と1層で隙間無く並んでいる時とのトナー層形成状態を模式的に示す、図8と同様の図。 同一体積の真球体トナーのトナー量に対する、単色のトナー層の形成状態を模式的に示す平面図、2次色のトナー層の形成状態を模式的に示す平面図及び側面図、2次色の重なり状態を示す平面図。 トナーの重なりについて説明するために示す、平面図及び側面図。 トナーの理想配列状態を示す図。 トナーの粒径とトナー載り量との関係を説明するための図。 トナーの最密積層状態を説明するための図。 トナー量がトナーの理想配列状態を下回った状態を示す図。 トナー粒径が6[μm]の時のトナー載り量と隙間の割合との関係を示す図。 記録材上に2色のトナーを重ねた時の、未定着状態の断面図と、ズリ定着後の断面図。 (A)通常定着と(B)ズリ定着とでそれぞれ示す、(a)未定着状態の平面図、(b)未定着状態の断面図、(c)定着後の断面図、(d)定着後の平面図。 通常定着と、ズリ定着でコート紙上のトナーを定着した後の状態を顕微鏡で観察した図。 第1の実施形態の定着装置の概略構成断面図。 同じく定着装置の概略構成を正面図。 (a)通常定着と(b)ズリ定着での総ライン幅増加量を説明するための模式図。 加圧方向の角度θと、(a)総ライン幅増加量との関係、(b)彩度との関係をそれぞれ示す図。 第1の実施形態の定着装置の加圧方向を変更する構成を示す概略構成斜視図。 第1の実施形態の定着装置の加圧方向を変更する別の構成を示す概略構成断面図。 第1の実施形態における画像形成動作を示すフローチャート。 本発明の第2の実施形態に係る定着装置の概略構成断面図。 第2の実施形態における画像形成動作を示すフローチャート。 本発明の第3の実施形態に係る定着装置の概略構成断面図。 同じく概略構成平面図。 同じく概略構成斜視図。 第3の実施形態で交差角を変更する構成を示す斜視図。 第3の実施形態における画像形成動作を示すフローチャート。 本発明の第4の実施形態に係る定着装置の概略構成横断面図。 同じく概略構成縦断面図。 スライド量と彩度及び総ライン量増加分との関係を示す図。 記録材を1枚定着した後の定着装置の概略構成縦断面図。 記録材を1枚目から3枚目まで定着する場合の動作の流れ(a)→(b)→(c)→(d)を説明するために示す、それぞれ定着装置の概略構成縦断面図。 記録材を連続して2枚目以降定着する場合の動作の流れ(a)→(b)→(a)を説明するために示す、それぞれ定着装置の概略構成縦断面図。 第4の実施形態における画像形成動作を示すフローチャート。 本発明の第5の実施形態の操作部(コントロールパネル)の1例を示す図。 第5の実施形態の画像制御部の内部構成を示すブロック図。 第5の実施形態における画像形成動作を示すフローチャート。 本発明の第6の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示すブロック図。 第6の実施形態における画像形成動作を示すフローチャート。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図27を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について図1を用いて説明する。
[画像形成装置]
図1に示す画像形成装置100には、第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdが併設され、各々異なった色のトナー像が潜像、現像、転写のプロセスを経て形成される。画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ専用の像担持体、本実施形態では電子写真感光ドラム(以下、感光ドラム)3a、3b、3c、3dを具備し、各感光ドラム3a、3b、3c、3d上に各色のトナー像が形成される。各感光ドラム3a、3b、3c、3dに隣接して像担持体としての中間転写体である中間転写ベルト30が設置される。感光ドラム3a、3b、3c、3d上に形成された各色のトナー像は、1次転写部材としての1次転写ローラ24a、24b、24c、24dに1次転写バイアスを印加することで、中間転写ベルト30上に1次転写される。本実施形態では、中間転写ベルト30がトナー像を担持する像担持体に相当し、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pd及び1次転写ローラ24a、24b、24c、24dが、像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段に相当する。また、これらの像担持体及びトナー像形成手段、更には、次述する2次転写ローラ14などの中間転写ベルト30からトナー像を記録材に転写する部分までを含めた構成が、記録材にトナー像を形成する像形成手段に相当する。
中間転写ベルト30上に担持されたトナー像は、2次転写部T2で記録材P上に2次転写される。即ち、転写手段としての2次転写ローラ14に2次転写バイアスを印加することで、中間転写ベルト30上のトナー像を記録材Pに転写する。更に、トナー像が転写された記録材Pは、定着装置9で加熱及び加圧されることによりトナー像が定着され、その後、記録画像として装置外に排出される。
感光ドラム3a、3b、3c、3dの外周には、それぞれ帯電手段としての帯電ローラ2a、2b、2c、2d、現像器1a、1b、1c、1d、1次転写ローラ24a、24b、24c、24d、クリーナ4a、4b、4c、4dが設けられている。また、装置の上方部には光源装置およびポリゴンミラーなどを備えた露光装置5a、5b、5c、5dが設置されている。
帯電ローラ2a、2b、2c、2dは、感光ドラム3a、3b、3c、3dに近接又は当接するように配置され、所定の帯電電位を印加することで、感光ドラム3a、3b、3c、3dの表面を所定の電位に帯電させる。所定の電位に帯電された感光ドラム3a、3b、3c、3dの表面は、次のように、露光装置5a、5b、5c、5dから発せられたレーザ光で露光される。
即ち、露光装置5a、5b、5c、5dは、光源装置から発せられたレーザ光をポリゴンミラーを回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズにより感光ドラム3a、3b、3c、3dの母線上に集光して露光する。これにより、感光ドラム3a、3b、3c、3d上に画像信号に応じた潜像が形成される。
現像器1a、1b、1c、1dには、現像剤としてそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナーが、供給装置Ea、Eb、Ec、Edにより所定量充填されている。現像器1a、1b、1c、1dは、それぞれ感光ドラム3a、3b、3c、3d上の潜像を現像して、イエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びブラックトナー像として可視化する。
感光ドラム3a上に形成担持された第1色のイエロートナー像は、感光ドラム3aと中間転写ベルト30とのニップ部(1次転写部T1a)を通過する過程で、中間転写ベルト30に1次転写される。即ち、トナー像が1次転写部T1aを通過する際に、1次転写ローラ24aに印加される1次転写バイアスにより形成される電界と圧力により、中間転写ベルト30の外周面に1次転写される。次いで、マゼンタトナー像、シアントナー像及びブラックトナー像が、同様に、各1次転写部T1b、T1c、T1dで中間転写ベルト30上に重畳して1次転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が形成される。
中間転写ベルト30は、複数の張架ローラ30a、30b、30cに張架され、矢示の方向に感光ドラム3a、3b、3c、3dと同じ周速度をもって回転駆動されている。2次転写部T2には、中間転写ベルト30を挟むように張架ローラ30bと2次転写ローラ14を配置している。この2次転写ローラ14は、中間転写ベルト30に対応し平行に軸受させて下面部に接触させて配設してある。2次転写ローラ14には、2次転写バイアス源によって所望の2次転写バイアスが印加されている。中間転写ベルト30上に重畳転写された合成カラートナー画像の記録材Pへの転写は、次のように行われる。即ち、給紙カセット10からレジストローラ10a、転写前ガイドを通過して2次転写部T2に所定のタイミングで記録材Pが給送され、同時に2次転写バイアスが2次転写部に印加される。この2次転写バイアスにより中間転写ベルト30から記録材Pへ合成カラートナー画像が転写される。
1次転写が終了した感光ドラム3a、3b、3c、3dは、それぞれのクリーナ4a、4b、4c、4dにより転写残トナーをクリーニング、除去され、引き続き次の潜像の形成以下に備えられる。中間転写ベルト30上に残留したトナー及びその他の異物は、中間転写ベルト30の表面にクリーニングウエブ(不織布)22を当接して、拭い取るようにしている。
本実施形態では、上述の各色のトナーとして、ポリエステル系の樹脂を使用したトナーを用いた。トナーを製造する方法としては、粉砕法や、懸濁重合法・界面重合法・分散重合法等の媒体中で直接トナーを製造する方法(重合法)が挙げられるが、本実施例においては粉砕法によって製造したトナーを用いた。なお、トナーの成分、製造方法はこれに限定されるものではない。
また、各色のトナーとしては、各色の色素を含有した透明な熱可塑性樹脂で構成されたものを用いることができる。本実施形態では、図2に示すような温度と粘度特性との関係を有するポリエステルをバインダとした着色トナーを用いた。また、本実施形態におけるトナーは、密度ρが1.1(g/cm)、体積平均粒径Lが6.0(μm)のものを使用した。
一方、図1において、31は画像読取部である。この画像読取部31は、上面に載置された不図示の原稿に対して光源32から光を照射すると共に、原稿からの反射光をミラー33によってCCD34に入力することにより原稿画像を読み取るようにしている。ここで、このCCD34に入力された読取光は、画像形成装置100を制御する制御部50内の画像処理装置51で画像処理された後、画像制御部52を介して露光装置5a、5b、5c、5dに入力されるようになっている。
画像制御部52は、CCD34から入力された赤・緑・青(R,G,B)の色分解画像信号を、A/Dコンバータによりデジタル信号に変換し、シェーディング補正回路により光量分布やCCD34の感度ムラの補正を行う。次いで、濃度変換回路によって明暗の信号RGBからシアン・マゼンタ・イエロー(C,M,Y)の濃度信号へと変換する。そして、マスキング・UCR回路により、CMY信号から黒信号(K)を生成するとともに、色補正のためのマスキング演算と下色除去(UCR)を実行する。こうして得られたCMYKの信号を、フィルタ回路やγ補正回路で処理を行った後、各色の露光装置5a、5b、5c、5dに出力する。
露光装置5a、5b、5c、5dは、画像制御部52からの入力信号に基づき露光を行うようにしている。なお、本実施形態において、露光装置5a,5b,5c,5dにパーソナルコンピュータ(PC、図7参照)から画像信号が入力される場合があり、この場合、露光装置5a,5b,5c,5dは、このPCからの入力信号に基づいて露光を行うようにしている。
[画像形成部の詳細]
次に、図3を用いて、各画像形成部Pa〜Pdの詳細について説明する。なお、各画像形成部の基本構成は同じであるため、以下、各画像形成部の構成であることを示す添え字(a、b、c、d)を省略して説明する。
画像形成部Pは、回転可能に軸支された感光ドラム3を有し、この感光ドラム3はアルミニウムなど導電性基体とこの外周に形成された光導電層とを基本構成とする円筒状のOPC感光体である。そのドラム回転軸線上の中心にドラム支軸3Aを有し、支軸を中心に矢印R1方向に駆動手段(図示略)から回転動力を減速手段などを経て受け、設定されたプロセススピード(周速度)で回転駆動する。本画像形成装置のプロセススピードは245[mm/s]であり、1分間に50枚プリントを生産させることができる。
感光ドラム3の上方には、帯電手段としての帯電ローラ2が配置されている。帯電ローラ2は、感光ドラム3表面に接触するように配置されてドラム表面を所定の極性の電位に均一に帯電するもので全体的にローラ形状である。帯電ローラ2の構造は、中心に導電性の芯金を有し、この芯金の外周に低抵抗導電層と中抵抗導電層が形成されている。そうした帯電ローラ2はその両端部を軸受(図示略)によって回転自在に軸支され、感光ドラム3の回転軸線に平行に配置されている。ローラ両端部の軸受はばねなどの弾性部材(図示略)によって感光ドラム3に適度な押圧力で圧接する方向に付勢されている。その圧接力によって帯電ローラ2は感光ドラム3の矢印R1方向への回転に従動して矢印R2方向に回転する。帯電ローラ2には電源21によって帯電バイアス電圧が印加され、感光ドラム3の表面を均一に帯電する。
また、感光ドラム3の回転方向でいう帯電ローラ2の下流側には露光手段としての露光装置5が配設されている。露光装置5は、例えば画像情報に基づいてレーザ光をOFF/ONしながら、帯電済みの感光ドラム3表面を走査露光するものであり、露光部分の電荷を除去して画像情報に応じた静電潜像を形成する。
また、露光装置5の下流側には現像器1が配置され、二成分現像剤を収容した現像容器11を有している。その現像容器11の感光ドラム3に面した開口部内には、現像スリーブ12が回転自在に設置されている。この現像スリーブ12内には現像スリーブ12上に現像剤を担持させるマグネットローラ13が、現像スリーブ12の回転に対して非回転に固定配置されている。現像容器11の現像スリーブ12の上方位置には、現像スリーブ12上に担持された現像剤を規制して薄層の現像剤層に形成する規制ブレードが設置されている。さらに現像容器11内には、区画された現像室15及び撹拌室16が設けられている。薄層の現像剤層に形成された現像剤は、感光ドラム3と対向した現像領域へ搬送されると、マグネットローラ13の現像領域に位置された現像主極の磁気力によって穂立ちし、現像剤の磁気ブラシが形成される。マグネットローラ13の現像主極の大きさは、1000[G]である。この磁気ブラシで感光ドラム3の面上を擦るとともに、現像スリーブ12に、電源18によって現像バイアス電圧を印加する。これにより、磁気ブラシの穂を構成するキャリヤに付着しているトナーが静電潜像の露光部に付着して現像し、感光ドラム3上にトナー像が形成される。
また、現像器1の下流側で感光ドラム3の下方に1次転写ローラ24が配設されている。1次転写ローラ24は、電源25によってバイアス印加される芯金と、その外周面に円筒状に形成された導電層によって構成されている。1次転写ローラ24は、両端部がスプリングなどの弾性部材(図示略)によって感光ドラム3に向けて付勢されている。それによって、1次転写ローラ24の導電層が所定の押圧力で中間転写ベルト30を介して感光ドラム3の表面に圧接し、感光ドラム3と中間転写ベルト30との間に1次転写部(1次転写ニップ部)T1が形成される。1次転写部T1には、中間転写ベルト30が挟まれており、電源25によってトナーの極性と逆極性の転写バイアス電圧が印加され、これによって感光ドラム3上のトナー像が中間転写ベルト30表面に転写(1次転写)される。
トナー像が転写された後の感光ドラム3はこの表面に付着した未転写の残トナーなどをクリーナ(クリーニング装置)4によって除去される。クリーナ4は、クリーナブレード41及び搬送スクリュー42を有しており、クリーナブレード41は感光ドラム3に対して所定の角度と圧力でもって加圧手段(図示略)によって当接し、感光ドラム3の表面に残留したトナーなどを回収する。回収された残トナーなどは搬送スクリュー42によって排出され、廃トナーボックスに収容される。廃トナーボックスは、プロセスユニット毎に排出された廃トナーと、クリーニングウエブ22によって生じる廃トナーを、不図示の搬送経路によって収容する。廃トナーボックスが満杯になった場合は、メンテナンス作業者もしくはユーザによって交換されたり、清掃されたりする。なお、このとき、感光ドラム3上に残された静電潜像を消去するため、帯電ローラ2により帯電を行いながら感光ドラム3表面を所定時間全面露光することで、感光ドラム3の除電を行うようにしても良い。
[フルカラーモードとモノクロモード]
本実施形態の画像形成装置100は、複数色のトナーで画像形成を行うフルカラーモードと、単色のトナーで画像形成を行うモノクロモードとを選択して実行可能である。即ち、フルカラーモードは、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdの全てを動作させて画像形成を行う。モノクロモードは、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdのうち、1つの画像形成部だけを用いて、画像形成を行う。
フルカラーモードでは、記録紙上にイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像の内少なくとも2種以上のトナーを使った画像を作成し、発色性の高い画像が求められる。一方、モノクロモードは、記録紙上にイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像のうち1種のトナーを使った画像を作成し線画像や文字画像(特に細線)の再現性が求められる。一般的には、文字文書等のブラックトナー単色の画像を形成することが多く、線画像などの再現性が求められる。したがって、本実施形態では、フルカラーモードは発色優先モードであり、モノクロモードは線画像優先モードである。発色優先モード及び線画像優先モードについては後述する。
フルカラーモードでは、上述したように、4色のトナー像を重ね合わせて記録材Pに転写する。一方、モノクロモード(ここでは、ブラック一色の画像形成処理を例示する)では、ブラックの画像形成部Pdのみが駆動され、他の画像形成部Pa、Pb、Pcは休止する。このときPa、Pb、Pcの画像形成部の感光ドラムは回転しているが、帯電、露光はしておらず、現像器も回転しないので、感光ドラム上にトナー像が作成されることはない。そして、画像形成部Pdで形成されたブラックのトナー画像が記録材Pに転写される。
[モードの選択]
次に、フルカラーモードとモノクロモードの選択方法について説明する。図4は、画像形成装置100の操作部であるコントロールパネル1000を表している。コントロールパネル1000は、タッチパネル1001とキー入力部1002とを有する。画像読取部31で原稿を読み取ってコピーを行う時は、画像形成装置100のコントロールパネル1000で操作を行う。この場合のモード選択は、タッチパネル1001の自動カラー選択ボタン1003を押すことにより行う。自動カラー選択ボタン1003は、ボタンを押すごとに、自動カラー選択モード、フルカラーモード、モノクロモードと切り替わる構成になっている。このときボタンを選択しなければ自動カラーモードが選択されている。
一方、PCから画像情報を送ってプリントする場合、PC上でモード選択の操作を行う。図5は、モード選択を行うためにPCの画面上に表示される例である。モード選択を行う場合には、図5の選択ボタン1004をクリックする。この選択ボタン1004は、クリックするごとに、自動カラー選択モード、フルカラーモード、モノクロモードと切り替わる構成になっている。このときボタンを選択しなければ自動カラー選択モードが選択されている。
コピー時におけるモノクロとカラーとの自動判別について、図6を用いて説明する。図6はオートカラーセレクトを説明するためのブロック図である。この図6を参照して、画像読取部31内に設けられるオートカラーセレクト部の構成を説明する。ここで、オートカラーセレクト(以下、ACS)とは、原稿がカラーであるのか白黒であるのかを判断することを示す。つまり、画素ごとの彩度を求めてある閾値以上の画素がどれだけ存在するかでカラー判定を行うものである。
しかし、白黒原稿であっても、MTF等の諸処の影響により、ミクロ的に見るとエッジ周辺に色画素が多数存在し、単純に画素単位でACS判定を行うのは難しい。このACS手法については、さまざまな方法が提供されているが、本実施形態では、ACSの方法にはこだわらない(ACSはいずれの方法で行ってもよい)ため、ごく一般的な手法で説明を行う。
上述したように、白黒画像でもミクロ的に見ると色画素が多数存在するわけであるから、その画素が本当に色画素であるかどうかは、注目画素に対して周辺の色画素の情報で判定する必要がある。図6において、1401はフィルタであり、注目画素に対して周辺画素を参照するためのものであり、そのためFIFO(First In First Out)の構造をとっている。スキャナCPU300は、読み込み範囲に対してACSをかける領域を決定する。
自動判別領域信号発生回路1300は,スキャナCPU300からACSをかける領域を示す自動判別領域信号1301を作成する。1403は色判定部で、注目画素に対してフィルタ1401内のメモリ内の周辺画素を参照し、注目画素が色画素か白黒画素かを決定し、色判定信号1406を出力する。
詳細には、色判定部1403は、自動判別領域信号発生回路1300で生成された自動判別領域信号1301が有効レベルである領域で動作する。また、色判定部1403は、原稿から読み取られたレッド成分データ(DATA−R),グリーン成分データ(DATA−G),ブルー成分データ(DATA−B)の中の最小値を他の2成分から引いてできた2つの値の差の絶対値を彩度とする。そして、ある闘値よりも大きい彩度の画素が注目画素に対し特定の連続性を確認できたときのみカウントアップ信号(色判定信号)1406を出力する。また、1404はカウンタで、色判定部1403が出力した色判定信号1406の個数を数える。
スキャン終了後、スキャナCPU300は、経路1411を介してカウンタ1404のカウンタ値を読み込み、このカウンタ1404のカウンタ値により、原稿がカラーであるのかモノクロであるのかを判断する。
次に、プリント時におけるモノクロとカラーとの自動判別について、図7を用いて説明する。プリントの場合は、図7に示したようにPCからプリントジョブを受け取った画像形成装置は、画像を展開処理(RIP)し、RIP後の画像をページ単位、色成分(CMYK)毎に制御部50内の半導体メモリ54に格納する。格納された画像は、そこで、制御部50内のCPU53によりカラー/白黒判定が行われる。判定には半導体メモリ54内の各サンプルポイントに黒(K)以外の成分(CMY成分)があるか否かで行われる。このとき、ページ内のサンプリングポイントの中に1ポイントでもカラー(CMY)成分があれば、そのページはカラー画像である。したがって、スピードを速めるためにその時点でそのページにおけるカラー/白黒判定を中止し、そのページはカラーページとして画像制御部52で処理される。逆にページ内のサンプリングポイントに1ポイントもカラー(CMY)成分が存在しない場合には、そのページは白黒ページとして画像制御部52で処理される。
[低トナー載り量システム]
本実施形態の画像形成装置100は、記録材に形成するトナー像のトナー載り量を少なくした低トナー載り量システムを採用している。即ち、各画像形成部は、次の条件を満たすように画像形成を行っている。即ち、トナーの体積平均粒径をL(μm)、トナーの密度をρ(g/cm)、各画像形成部により形成する単色のトナー像の記録材上での単位面積あたりの最大(ベタ画像)のトナー載り量をM(mg/cm)とする。この場合に、M≦ρπL/(30√3)の関係を満たすようにトナー像を形成する。
以下、この低トナー載り量システムについて、図8ないし図17を用いて説明する。まず、トナー載り量が少ない場合に、記録材(紙)をトナーで隠蔽できなくなる現象について、説明する。最初に、単色時のトナー量と紙の隠蔽状態について説明する。
図8は、トナー量と紙の隠蔽状態についての関係図である。記録材(紙)P上に単色時のトナーt1の量が多い時から少ない時までの、各々のトナー層形成状態の違いを示したものである。トナーの重なりを見るために、トナー層を横から見た側面図と斜視図、トナーによる紙の隠蔽状態を見るための平面図を示した。(a)→(b)→(c)→(d)の順に、トナー量がだんだんと減っていく状態の変化を表している。トナー量が多い状態を示した(a)および(b)においては、溶融後の平面図を見てわかるとおり、トナーによって紙が十分に隠蔽されていることがわかる。これは、未定着(溶融前)の状態においても、隣り合うトナー同士に隙間が無いことによって、そもそも紙がしっかりと隠蔽されているということがわかる。
一方、トナー量が少ない(c)においては、トナーが重なり合ったり、平面的に隣り合ったりしてトナーが接している部分は、溶融後に紙が隠蔽されているものの、隙間がある部分については、溶融後も紙が見えてしまっていることがわかる。さらに、トナーが少ない状態の(d)においては、トナーの重なりが無いため、溶融後にトナーによる紙の隠蔽がさらに低下していることがわかる。その中でも、トナー間の隙間が小さい部分においてはトナーが単層であるため、未定着時には隙間があっても溶融後の溶け拡がりによって、若干紙の隠蔽が進んでいる部分もあることがわかる。しかし、トナー間の隙間が大きければ大きいほど、トナーによる紙の隠蔽状態が低下している。
次に、2次色(2色のトナー層の重ね合わせ)におけるトナー量と2次色の形成状態について説明する。図9は、トナー量と「単色時および2次色のトナー層形成状態」についての関係図である。単色時のトナーt1(説明においてはイエロー)に加え、2色目のトナーt2(説明においてはマゼンタ)が示されている。図中、トナーの量が少ない時の単色のトナー層形成状態を(a)、2次色のトナー層形成状態を(b)に、さらに、トナー量が多い時(すなわち、隙間無く並んでいる時)の単色のトナー層形成状態を(c)、2次色のトナー層形成状態を(d)に示した。
トナー量が少ない時は、(a)に示すように下層のイエロートナーt1に隙間が多く存在していることがわかり、(b)に示すように2色目となる上層のマゼンタトナーt2が、イエロートナーt1が形成する隙間に載っていることがわかる。トナーのような粒子状のものが層を形成する際に、上に載る粒子が下になる粒子間に落ち込むことは言うまでも無い。このように、隙間が存在する下層のイエロートナーt1上には、形成する隙間の上に上層のマゼンタトナーt2が載る。そのため、(b)の(透過状態)に示すようにトナーを透過してみると、次のことがわかる。即ち、上層のマゼンタトナーt2のみが存在する部分α、下層のイエロートナーt1のみが存在する部分βと、上層のマゼンタトナーt2および下層のイエロートナーt1が重なる部分γが形成されることがわかる。
一方、トナー量が多い時(隙間無く並んでいる時)は、(c)に示すように下層のイエロートナーt1は隣同士のトナーが接しているため、紙がほとんど隠蔽されていることがわかる。また、(d)に示すように、2色目となる上層のマゼンタトナーt2が、(b)同様、イエロートナーt1が形成する隙間に載っている。さらに、マゼンタトナーt2の上に載っているマゼンタトナーt2もマゼンタトナー自身が形成する隙間に載っていることがわかる。(c)の単色状態で既に紙がしっかりと隠蔽されている上に、上層に位置するマゼンタトナーt2自身もマゼンタトナー同士で下層を隠蔽する状態となっている。このため、(d)の透過状態を見てわかるように、トナー量が少ない時の(b)の透過状態とは異なり、マゼンタトナーt2が存在する多くの部分が、上層のマゼンタトナーt2および下層のイエロートナーt1が重なる重なり部分γとなることがわかる。
このように、トナー量が多い時は、多くの部分が良好に2次色を形成する重なり部分γとなるのに対して、トナー量が少ない時は、トナー量が少なくなるほど、上層及び下層の互いの隙間に単色のみとなる部分(α、β)が増加する。そして、良好に2次色を形成する重なり部分γが減少するため、従来のトナー量に対してトナー量を減らそうとすると、2次色の発色が低下し、同時に単色形成部分においても、紙の隠蔽が少なくなり、色域の再現範囲が極端に低下する。
ここで、より少ないトナー量で隙間の少ないトナー層を形成するための理想状態について説明する。図10は、トナー量が少ない時(隙間がある時)と1層で隙間無く並んでいる時のトナー層形成状態を示した図である。(a)は平面に対して絶対的なトナー量が少ない場合であり、隙間が多く存在してしまうことは避けられない。(b)のように、(a)に対しトナー量が若干増えた場合においても、トナー同士が立体的に重なる部分と隙間が生じる部分があると、紙の隠蔽も少なくなり、2次色形成時にも良好な重なりを得ることが難しくなる。
そこで、(e)に示すようにトナー粒子を平面的に理想的に配列した場合について見てみる。すると、(b)の配列状態に比べ、隙間は減少しているものの、トナー粒子が異形であるために、トナー同士がすべて接していても、隙間が大きくなってしまう部分があることがわかる。同様に、(d)に示すように真球体のトナー粒子で粒度分布を持つ場合においても、大きい粒径の粒子の下に入り込んで配列してしまう分などを考慮すると隙間が増えてしまう方向にある。
つまり、(c)に示すように、同一粒径の真球体トナー粒子を最密に並べた場合が、平面に対して最も効率よくトナーを配列することができる。また、この状態においては、隣り合うすべてのトナー同士が接することにより、同一体積の粒子においてはもっとも紙を隠蔽することが出来ることは言うまでも無い。例えば、楕円状の球形トナーなどは長径方向がうまく配列した場合には、(c)よりも高い隠蔽を達成できることも考えられるが、短径方向で配列してしまうと、(c)よりも低い隠蔽になってしまう。このため、楕円状の球形トナーの平均的な配列を考えた場合、真球体のトナーに比較すると結局は低い隠蔽率になってしまうこともいうまでもない。
次に、この理想配列状態を形成できる同一粒径の真球体トナーのトナー量(トナー密度)に対するトナー層の形成状態について説明する。図11は、同一体積の真球体トナーのトナー量(トナー密度)に対するトナー層の形成状態について示したものである。単色の層形成状態を比較すると、(a)に示すように、最密状態時にはすべての隣同士のトナーが接する状態であるため、隙間が最小になっているのに対し、(b)→(c)→(d)と、トナー量が減るにつれ隙間が増大していることがわかる。
2次色の形成状態(平面図)を見ると、トナーの量に関係なく、2色目となる上層のトナーが、下層のトナーが形成する隙間に載っていることがわかる。ここで、2次色の形成状態(側面図)を見ると、トナー量が減るにつれ、上層のトナーが下層のトナーの隙間にどんどん入り込んでいる。そして、(a)においては、上層トナーが下層トナーに乗っている状態に対して、(b)→(c)→(d)と隙間が大きくなるにつれ、乗っているというより引っかかっているといった状態となっている。また、隙間が大きいほど、上層トナーが低い位置に位置するようになっている。即ち、下層トナー間に上層トナーが入り込んでいっているのがわかる。このように、未定着の状態において、隙間が大きいほど、下層トナー間に上層トナーが位置関係的に入り込んでしまうことがよくわかる。
更に、透過状態について説明する。説明するに当たり、重なり状態を詳細に見るため、図12を用いて説明する。下層の隣り合う3個のイエロートナーt1の間に形成される隙間G1に上層となるマゼンタトナーt2が載っていることがわかる。逆に、上層を形成するマゼンタトナーt2の隣り合う3個のトナー間に形成される隙間G2に下層のイエロートナーt1が位置することもわかる。このような状態において、トナー層が溶融されると、下層のイエロートナーt1の形成する隙間G1に上層のマゼンタトナーt2が矢印の方向(↓)に入り込む。また、上層のマゼンタトナーt2の形成する隙間G2に下層のイエロートナーt1が矢印の方向(↑)に入り込むこと。これにより、各々の単色部分(α、β)が生じ、良好な重なり部分γが拡がることを阻害するため、2次色の発色が低下している。図11に示すように、(b)→(c)→(d)とトナー量が少なければ少ないほど、隙間は増大するため、重なり部分γの拡がりがより阻害される。
次に、理想配列状態時の各種パラメータについて説明する。図13は、理想配列状態の各種パラメータを示したものである。トナーの体積平均粒径(トナー直径)をL[μm]とすると、トナーの体積はV[μm]、平面的なトナーの投影面積はS1[μm]、トナー1つ分が含まれる単位面積はS2[μm]であり、それぞれ以下のようになる。
これらから、トナーが最密に並んだ時の単層(1色)のトナー載り量H[μm](単位面積あたりの体積=平均高さ)が以下のように算出される。
図14は、上記関係式から理想配列状態のトナー粒径およびトナー載り量(平均高さ)の関係を示したグラフである。図中、実線610が理想配列状態を表し、Aゾーンは単位面積あたりのトナー量が理想状態より多くある範囲であり、Bゾーンは単位面積あたりのトナー量が理想状態より少ない範囲を示す。つまり、Bゾーンにおいては、紙に対してのトナー量が不足し、隙間が生じてしまう範囲を示しているものである。
ここで、理想配列状態時に生じる隙間、すなわち、トナーが細密に並んだ時の隙間の割合T1[%](単位面積あたりの隙間の量)を算出したものが、以下のようになる
これは、図14に示した理想配列状態となるトナー粒径およびトナー載り量(平均高さ)(グラフの実線610)において、常に9.31[%]となることを意味する。言い換えると、トナー量によらず、理想配列状態時に生じる隙間は9.31[%]であるということである。
ここで、理想配列状態のトナー量より、トナー量が多い場合について説明する。図15は、理想配列状態のトナー量より、トナー量が増えていった時のトナーの最密積層状態について示した図である。(a)は、1層目のトナー611が最密に配列した状態を示している。六角形612は1単位面積であり、この六角形内の隙間A613および隙間B614が見えなくなる状態について考えることにより、紙が100%隠蔽される時のトナー載り量を考えることが出来る。(a)においては、隙間A613および隙間B614が存在し、この割合が単位面積あたり9.31%となっている。(b)および(c)は、2層目のトナー615が乗った状態であり、隙間A613を隠蔽していることがわかる。さらに、(d)および(e)は、3層目のトナー616が乗った状態である。隙間B614が隠蔽され、紙が100%隠蔽されたことがわかる。
次に、理想配列状態のトナー量よりトナー量が下回った場合の各種パラメータについて説明する。図16は、理想配列状態のトナー量よりトナー量が下回った状態の各種パラメータを示したものである。ここでは、トナー間に隙間t[μm]が生じるため、トナー1つ分が含まれる単位面積はS3[μm]であり、以下のようになる。
これから、トナーが隙間t[μm]をもって均一に並んだ時の単層(1色)の載り量H2[μm](単位面積あたりの体積=平均高さ)が以下のように算出される。
更に、トナーが隙間t[μm]をもって均一に並んだ時に生じる隙間の割合T2[%](単位面積あたりの隙間の量)を算出したものを上記式によってトナー間の隙間t[μm]を消して整理したものが、以下のようになる。
図17は、上記関係式から、一例として、トナー粒径が6[μm]の時のトナー載り量(平均高さ)と隙間の割合の関係を示したグラフである。図中、点線で示す境界線は理想配列状態時の載り量を示す点であり、境界線よりトナー量が少ない場合は隙間が生じる範囲であり、上記式を基に求められたカーブである。境界線よりトナー量が多い部分では、図15によって説明したとおり、理想積載状態で3層積層された時に隙間が0%(隠蔽率100%)になることから求められたカーブである。このカーブから、トナーの載り量が理想配列状態(境界線)を下回ると、急激に隙間が大きく、即ち、隠蔽率が低下することがわかる。一方、境界線を上回った範囲、すなわちトナー量が多くなっても、理想配列状態を超えると、隙間の減る量の変化が小さくなる(隠蔽率の向上が鈍る)ことがわかる。
ここでは、一例として、トナー粒径が6[μm]の時の状態について説明したが、この境界線を境にした変化はこれに限るものではなく、通常の使用範囲内のトナー粒径においては、すべての粒径に当てはまるものであることはいうまでもない。
本実施形態では、図14のBゾーンや図17の境界線よりトナーの量が少ない範囲、すなわち、トナー量が理想配列状態(最密)より少ない範囲を対象とするものである。そして、このような範囲において、原理的に生じるトナー間の隙間があっても、より適正な色再現、詳しくは、単色における紙の隠蔽率、異なるトナーの良好な重なりによる2次色の発色を向上させるものである。
逆に、従来のような、トナー粒径に対して十分なトナー量があるような、図14のAゾーンや図17の境界線よりトナーの量が少ない範囲においては、トナー量が十分であるため、トナーの配列による発色のロスが生じない。
ここまで、トナーの配列状態を考えるために、トナーの載り量については、「単位面積あたりのトナー体積[μm]」(=平均高さ)で説明したが、通常、トナーの載り量を計測管理する際には、「単位面積あたりの重さ[mg/cm]」を用いている。これに準じて、先に説明した理想配列状態(真球形トナーの最密状態)を表す式が、密度ρ[g/cm]を考慮すると、以下のように、トナー載り量M[mg/cm]として変換される(式中、1/10は単位合わせるためのものである)。
即ち、上記のMがρπL/(30√3)以下の関係にあるトナー載り量よりも少ない状態では、トナーの載り量低下に対して、2次色の重なり状態の低下が顕著になり、2次色の彩度が低下してしまう。そこで、本実施形態では、未定着画像を定着する工程において、トナーの重なり方向(記録材表面に対して法線方向)に対して斜め方向に力を加えることによって、トナーを鉛直方向以外の水平面方向にも広げることで、2次色の彩度をアップするようにしている。即ち、彩度(発色性)を確保することが要求される場合には、定着装置の定着ニップ部を通過するトナー像に対し、トナーの積層方向に対して直角なズリ方向に力を付与することで、トナーをズリ方向に広げるようにしている。
未定着画像を定着する工程において、トナーの重なり方向に対して斜め方向に力を加える定着について説明する。図18は、電子写真技術を用いた画像形成装置により、紙等の記録材上に2色のトナー(例えばイエロートナーとマゼンタトナー)を重ねた時の、未定着状態の断面図と、定着後断面図をそれぞれ示している。図18に示すように、トナーの重なり方向(積層方向)とは、2色のトナーが記録材に対して鉛直に方向に重なっている方向を示している。
図18に示すようにトナーの重なり方向に対して斜め方向に力を加える定着は、トナーを記録材に対して鉛直方向以外の水平面方向にも広げることで、彩度をアップさせることができる定着方式である。この定着方式のことをズリ定着と呼ぶ。
このようにトナーの重なり方向に対して斜め方向に力を加える定着は、発色性が上がるが、前述したように、ライン太りが発生してしまうことがある。以下に、未定着画像を定着する工程において、トナーの重なり方向に対して斜め方向に力を加える定着をすることによって、発色性が上がり、ライン太りが発生する理由を説明する。
図19に、電子写真技術を用いた画像形成装置により、上記のMがρπL/(30√3)以下の関係にある状態で、紙等の記録材上に2色のベタ画像(例えばイエロートナーベタ画像とマゼンタトナーベタ画像)を形成した場合を示す。(a)は未定着状態の平面図、(b)は未定着状態の断面図、(c)は定着後断面図、(d)は定着後の平面図を示している。
図19より、通常定着はトナーの重なり方向に対して同方向に力を加えて定着動作を行うため、紙面横方向のズリ応力が無く、トナーは記録材に対して水平面方向にあまり溶け広がらずに定着している。そのため、図19(A)で示したように、イエロートナーの上にマゼンタトナーが重なって混色している領域は狭い。そのため、彩度があまり上がらず発色性が低い。しかし、トナーは記録材に対して水平面方向にあまり溶け広がっていないので、定着工程において、ラインが太りすぎることがなく、細線再現性は良い。
一方、ズリ定着は、トナーの重なり方向に対して斜めに力を加えて定着動作を行うため、紙面横方向のズリ応力が発生し、トナーは、記録材に対して水平面方向に変形し定着している。そのため、図19(B)で示したように、イエロートナーの上にマゼンタトナーが重なって混色している領域は多い。そのため、彩度が上がり発色性が良い。しかし、トナーは記録材に対して水平面方向に大きく溶け広がっているので、定着工程において、ライン太りが発生し、細線再現性が低い。
図20は、(a)通常定着と、(b)ズリ定着でコート紙上のトナーを定着した後の状態を顕微鏡で観察した図である。図中の黒い点はトナー1つの定着後の状態である。図20(a)に示すように、ズリ定着は定着ニップ部内で紙面横方向のズリ応力と、進行方向の合力によって、斜め方向(矢印方向)に伸びた形状となっていることがわかる。一方、図20(b)に示すように、通常定着では、紙面横方向のズリ応力が無く、紙面垂直方向の加圧力しかないので、水平面に大きくトナーは広がっていない。
上述のように、ズリ定着はトナーが記録材に対して水平面方向に大きく広がり、下層トナーと上層トナーとのトナー同士の重なりが増え混色が進み発色性が上がる。但し、トナーが水平面方向に対して大きく不均一に広がっているため細線再現性が低下してしまう。
一方、通常定着はトナーが記録材の水平面方向に対して大きく広がらず、トナー同士の重なりが増えず、発色性が上がらないが、トナーが水平面方向に対して小さく均一に広がっているため細線再現性は良い。
ここで、トナー消費量が少ない時のズリ定着と通常定着のメリット・デメリットを表1に纏める。
トナー消費量が少ない状態において、ズリ定着を行う場合、メリットとしては、トナー量が少なくても、1つのトナーが水平面方向に大きく広がり、トナー同士の混色が進み発色性が上がる。デメリットとしては、ズリ定着をすることにより、トナーが水平面方向に大きく広がるので、ライン幅が大きくなり、細線が再現しにくくなり文字品位が低下してしまう。一方、トナー消費量が少ない状態において、通常定着を行うと、メリットとしては、トナーが水平面方向に大きく広がらないので、ラインが太りにくく、細線再現性は良い。デメリットとしては、トナーが水平面方向に広がらないので、トナー同士の混色が進まず、発色性が損なわれてしまう。
[定着装置]
本実施形態では、このような事情を踏まえて、定着装置9を以下のように構成している。このような定着装置9について、図21ないし図26を用いて説明する。
図21は、本実施形態の定着装置9の一例の概略断面図であり、電磁誘導加熱を用いたベルト加熱方式の加熱定着装置である。図中330は加熱手段を含む加熱部材(加熱回転体)としての加熱ユニットである。331は電磁誘導発熱層(導電体層、磁性体層、抵抗体層)を有する電磁誘導発熱性の回転体としての円筒状の定着フィルムである。332はフィルムガイド部材であり、円筒状の定着フィルム331はこのフィルムガイド部材332の外側にルーズに外嵌させてある。磁場発生手段はフィルムガイド部材332の内側に配設した励磁コイル333とE型の磁性コア(芯材)334とからなる。320は、加熱ユニット330に当接して定着ニップ部Nを形成するニップ形成部材としての弾性を有する加圧ローラである。加圧ローラ320は、定着フィルム331を挟ませてフィルムガイド部材332の下面に配設された摺動部材336と所定の圧接力をもって所定幅の定着ニップ部Nを形成させて相互圧接させてある。335は加圧用剛性ステーである。磁場発生手段の磁性コア334は、定着ニップ部Nに対応位置させて配設してある。
また、加圧ローラ320は、駆動手段としてのモータMにより矢示の時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ320の回転駆動により、加圧ローラ320と定着フィルム331のとの摩擦力で定着フィルム331に回転力が作用する。定着フィルム331は、その内面が定着ニップ部Nにおいてフィルムガイド部材332の下面に配設された摺動部材336と密着して摺動しながら、フィルムガイド部材332に案内されて回転する。回転方向は、同図の矢印で示す反時計方向で、加圧ローラ320の回転周速度に略対応した周速度をもって回転する(加圧ローラ駆動方式)。この状態では、定着フィルム331は内面に密着した摺動部材336の摩擦により、ある程度の抵抗をもって回転する。回転力を受ける側の定着フィルム331が抵抗を持って回転することで、駆動側の加圧ローラ320との間で記録材P上のトナー画像にせん断力を効果的に付与するのに適している。
フィルムガイド部材332は、定着ニップ部Nへの加圧、磁場発生手段としての励磁コイル333と磁性コア334の支持、定着フィルム331の支持、該定着フィルム331の回転時の搬送安定性を図る役目をする。このフィルムガイド部材332は、磁束の通過を妨げない絶縁性の部材であり、高い荷重に耐えられる材料が用いられる。
励磁コイル333は、不図示の励磁回路から供給される交番電流によって交番磁束を発生する。交番磁束は、定着ニップ部Nの位置に対応しているE型の磁性コア334により定着ニップ部Nに集中的に分布し、その交番磁束は、定着ニップ部Nにおいて定着フィルム331の電磁誘導発熱層に渦電流を発生させる。この渦電流は、電磁誘導発熱層の固有抵抗によって電磁誘導発熱層にジュール熱を発生させる。この定着フィルム331の電磁誘導発熱は、交番磁束を集中的に分布させた定着ニップ部Nにおいて集中的に生じて定着ニップ部Nが高効率に加熱される。定着ニップ部Nの温度は、不図示の温度検知手段を含む温調系により励磁コイル333に対する電流供給が制御されることで所定の温度が維持されるように温調される。
このような定着装置9は、図示しない接触式サーミスタにより定着フィルム331の表面が170℃に温調されている。そして、トナー像が転写された記録材が定着ニップ部Nを通過することにより、トナー像を記録材に定着させる。
また、本実施形態の場合、定着装置9は、加圧方向変更手段である加圧方向切替装置340と、この加圧方向切替装置340を制御する制御手段としての加圧方向制御部350とを備える。加圧方向切替装置340は、定着ニップ部Nを通過するトナー像に対し、トナーの積層方向に対して直角なズリ方向に力を付与可能なズリ方向付与手段でもある。加圧方向制御部350は、ズリ方向にトナー像を広げる量が互いに異なる第1モードと第2モードとを実行可能で、第1モードの方が第2モードよりも、ズリ方向にトナー像を広げる量が大きくなるように加圧方向切替装置340を制御する。以下、具体的に説明する。
定着装置9は、加圧方向切替装置340により、摺動部材336の摺動面の法線方向(略トナーの積層方向)Lに対して、加圧方向が角度θを持った方向Lになるように設定できる。加圧方法は特に限定するものではなく、バネ等を用いることができる。具体的には、摺動部材336の定着フィルム331密着面の法線方向がLになるように加熱ユニット330の角度をθに設定した上で、加熱ユニット330に対して加圧手段である加圧バネ341aをL方向に付設する。そして、ガイド部材(不図示)によって、加熱ユニット330がL方向に押し付けられるようにすることで、加圧方向をLにすることができる。以上の構成で加圧力は600Nに設定してある。
図22は、図21の定着装置9を正面(紙が入っていく側)から見た図である。ただし図22は定着フィルム331を透明にしている図である。336は摺動部材、335は加圧用剛性ステー、701はフランジ部材、341は加圧軸である。定着装置9は、加圧バネ341a(図21)により加圧軸341を通してフランジ部材701を加圧する。フランジ部材701は、加圧用剛性ステー335及び摺動部材336と組み合わされており、フランジ部材701が加圧されることにより、加圧用剛性ステー335と、摺動部材336も加圧ローラ320に向けて加圧される。そして、加圧された摺動部材336と加圧ローラ320により定着ニップ部Nが形成される。
図21の定着ニップ部N付近の矢印は、定着ニップ部Nにおいて作用する力の向きであり、L方向の力とその分力を示している。トナーの重なり方向(積層方向)に対して斜め方向に加圧することで、トナーに与えるズリ方向(面内方向)の分力(せん断力)を増やしている。これによってトナーはズリ方向に広がり、特に2次色において異なる色のトナーが重なり合う領域が増加し、彩度、色域が増加する。角度θを増すほどトナーに与えるせん断力が増えるので、効果が大きくなる。しかしながら、角度θを大きくし過ぎるとトナーの重なり方向に押し潰す力が不足するので、定着性の低下が起こる。また、装置構成としても高角度の加圧方向を安定して維持するのは困難になる。このため、角度θは、2次色の発色性と加圧方向の安定性を考慮して決定する。
本実施形態の定着装置9では、トナーをズリ方向に広げる力(せん断力)の大きさを評価する指標として“総ライン幅増加量”を定義した。図23を用いて、総ライン幅増加量について説明する。図23(a)は定着装置9で通常定着を行った場合(θ=0)の、定着前後でのライン画像の状態の一例を示している。また図23(b)は、定着装置9でズリ定着を行った(本実施形態ではθ=60°に設定した)場合の定着前後でのライン画像の状態の一例を示している。黒塗り部分は未定着状態、斜線部分は定着により広がった状態をそれぞれ示している。
図23(a)の通常定着では、トナー重なり方向と略同一方向に加圧されるので、ラインの方向に寄らずほぼ均一に広がる。一方、図23(b)のズリ定着では、せん断力が付与され、その方向により大きくトナーが広がる。この違いを利用して、定着装置9に付与されるせん断力の評価指標を設けた。
記録材Pの搬送方向と同一方向のラインを縦ライン、それとは垂直方向のラインを横ラインとする。そして、トナーの重なり方向に対して力を加えて定着した時(通常定着時)と、せん断力を付与した定着を行った時(ズリ定着時)のライン幅を測定する。縦、横ラインそれぞれについて、ズリ定着時のライン幅から通常定着時のライン幅を差し引き、縦総ライン幅増加量、横ライン増加量とする。さらにせん断力の方向によらない面内方向のトナーの広がりとして捉えるために、“総ライン幅増加量”として、次式を定義した。
図24は、θと総ライン幅増加量の関係と、イエロートナーとシアントナーのベタ画像を重ね合わせてグリーン色の彩度(C*)の関係を示したグラフである。ライン幅は顕微鏡あるいはクオリティー・エンジニアリング・アソシエイツ(QEA)社製のPIASを使って測定した。
彩度C*は、色空間であるCIELAB空間の色座標である(L*、a*、b*)において、C*=√((a*)+(b*))で表される。色座標はGretag Macbeth Spectro Scan(Gretag Macbeth AG;StatusCode A)で測定した値である。
図24より総ライン幅増加量が増加するにつれて彩度が増加する関係にある。総ライン幅増加量が大きいほどトナーにせん断力が作用し、ズリ方向に広がって記録材Pを隠蔽し、特に2次色において異なる色のトナーが重なり合う領域が増加することで発色性が向上する。
しかしながら、角度θを大きくし過ぎるとトナーの重なり方向に押し潰す力が不足するので、定着性の低下が起こり、発色性が低下する。また、装置構成としても高角度の加圧方向を安定して維持するのは困難になる。
以上のことを鑑みて、本実施形態でのズリ定着の条件の一例としては、軸間方向Lと加圧方向Lの成す角度θ=60°に設定した。これにより、θ=0°に比べて2次色の彩度C*は約10程度増加した。このとき、せん断力の大きさの指標である総ライン幅増加量は15μm程度である。
次に、このように、定着装置9で軸間方向Lと加圧方向Lの成す角度θを画像形成モードにより変更する加圧方向切替装置340について説明する。図21に示すように、定着装置9は、加圧方向制御部350と、加圧方向切替装置340と、加熱ユニット330を加圧ローラ320に付勢する加圧バネ341aを有する加圧軸341を備えている。画像制御部52からの信号が加圧方向制御部350に伝達され、加圧方向制御部350は、加圧方向切替装置340で、加圧軸341を動かし、加圧方向を制御している。即ち、加圧方向を、トナーの積層方向に対して傾斜した方向に変更可能である。
加圧方向切替装置340は、加圧軸341を加圧方向A側に設定することにより、θ=0°に設定される。つまりトナーの重なり方向に対して同方向に加圧する、通常定着条件となる。一方、加圧方向切替装置340は、加圧軸341を加圧方向B側に設定することにより、θ=60°に設定される。つまりトナーの重なり方向に対して斜め方向に加圧する、ズリ定着条件となる。
図25を用いて、加圧方向切替装置340の構成について説明する。図25では、加圧方向がA方向、即ち、通常定着状態を示している。図25の362はモータであり、モータ362の軸先端には小ギア361が取り付けられている。モータ362が回転することにより、小ギア361が回転駆動する。小ギア361は大ギア360と噛み合っており、小ギア361が回転することにより大ギア360も回転する。また、大ギア360と加圧軸341とは、切替軸301を介して一体成形されている。大ギア360の回転軸中心は図中に示したKである。大ギア360は回転軸中心Kをもとに回転すると、加圧軸341も回転する。
加圧方向を図示のA方向からB方向に切り替える場合には、モータ362を矢印イ方向に回転駆動する。すると、小ギア361が矢印ロ方向に回転し、大ギア360が矢印ハ方向に回転する。この結果、加圧軸341がA方向からB方向に移動し、加圧方向がB方向に設定される。
なお、図25の363は加圧方向留め部材であり、加圧方向留め部材363の先端B側になると上記で示したθ=60°の加圧方向になる。また、加圧方向留め部材363はストッパの役割をし、加圧軸341がθ=60°以上になることを阻止する。
また、加圧方向切替装置340は、加熱ユニット330の両端部についており、両端部を同じ駆動をすることにより加圧方向を切り替える。また、加圧方向B側から加圧方向A側にするためには、モータ362の駆動方向を上述の場合と逆方向にすればよい。
このような加圧方向切替装置は、上述の構成以外としても良く、例えば、図26に示すような構成とすることもできる。図26の加圧方向切替装置340Aは、電気エネルギーを機械的な直線運動に変換する電磁機能部品であるソレノイド365により加圧軸341の角度を変更するようにしている。そして、ソレノイド365に電圧を印加しない状態であれば、加圧方向A方向となり、ソレノイド365に電圧を印加すれば、ソレノイド365の先端軸が飛び出し、加圧方向B方向となるようにしている。なお、この関係は逆であっても良い。
何れの構造であっても、本実施形態では、スタンバイ時における定着装置9の加圧方向はA方向、即ち、摺動部材336の摺動面の法線方向(略トナーの重なり方向)Lに対する加圧する方向の角度であるθは0°とする。
なお、上述の説明では、加熱ユニット330を加圧ローラ320に向けて加圧する構成を示しているが、加圧ローラ320を加熱ユニット330に向けて加圧するようにしても良い。この場合、加圧ローラ320に加圧する方向を上述のように加圧方向切替装置により変更可能とする。要は、加熱ユニット330と加圧ローラ320とのうちの一方の部材を他方の部材に向けて加圧する構成であれば良く、その加圧方向を切り換えられれば良い。
次に、このように構成される本実施形態の画像形成動作の流れについて、図27を用いて説明する。画像形成動作をスタートすると、まず、制御部50が、原稿画像がカラー画像かモノクロ画像かを判断する(S100)。原稿画像がカラー画像であるか否かを判断する方法は、上述の図6や図7で説明した通りである。なお、この判断は、制御部50が読取画像或いはPCから送られた画像から自動的に判断する場合の他、ユーザにより選択された画像モードから設定される場合もある。いずれにしても、S100で、カラー画像の画像形成を実行すると判断した場合にはフルカラーモードに、モノクロ画像の画像形成を実行する判断した場合にはモノクロモードに、それぞれなる。
ここで、フルカラーモードは、前述したように、発色性を優先する発色優先モード(第1モード)であり、モノクロモードは、線画像の再現性を高める線画像優先モード(第2モード)である。本実施形態では、フルカラーモード(第1モード)の方がモノクロモード(第2モード)よりも、ズリ方向にトナー像を広げる量が大きくなるように設定されている。
具体的には、S100で「No」(モノクロモード)であれば、前回転動作を開始(S101)し、モノクロモードであることを画像制御部52を通して、加圧方向制御部350に情報を伝達する。加圧方向制御部350はモノクロモードであるので、加圧方向切替装置340を駆動せず、非画像形成時の時と同じように加熱ユニット330の加圧方向をA側のままに設定している。つまり軸間方向Lと加圧方向Lの成す角度θ=0°に設定している(S102)。その後、画像形成動作及び定着(S103)を行い、後回転動作(S104)を行って終了する。
一方、S100で「Yes」(フルカラーモード)であれば、前回転動作を開始(S111)し、フルカラーモードであることを画像制御部52を通して、加圧方向制御部350に情報を伝達する。加圧方向制御部350はフルカラーモードであるので、前回転動作開始と画像形成動作開始前の間で、加圧方向切替装置340を駆動して、加熱ユニット330の加圧方向をB側に移動させる。つまり軸間方向Lと加圧方向Lの成す角度θ=60°に設定する(S112)。上記の角度θの変更動作は、画像形成動作開始前には終了している。
その後、画像形成動作及び定着(S113)を行い、後回転動作(S114)を行う。後回転動作時、S112でθ=60°に設定した定着装置の加圧方向を、加圧方向制御部350が加圧方向切替装置340により、A側方向つまりθ=0°に変更して終了するようにしている(S115)。後回転時に加圧方向をθ=0°に戻す目的は、加圧方向がθ=60°であると、加熱ユニット330にもせん断力がかかり、加熱ユニット330のPFA等表層に傷をつける恐れがあるためである。
また前回転動作とは、画像信号受信後から画像形成動作開始前に行なわれる画像形成の準備回転をさしており、感光ドラムの電位安定化と転写ローラの抵抗検知など、印字に必要な準備の動作のことである。画像形成動作とは、感光ドラム上に1色目となる潜像形成開始点が帯電器によって帯電されてから4色目のトナー像が転写材へ転写終了するまでの動作を示す。後回転動作とは、画像形成動作が終わった後のかたづけの動作で、プリントされた紙の排紙トレイまでの排紙、転写ローラのクリーニング、感光ドラム上の残トナーのクリーニング、感光ドラムの感度履歴の解消等を図る動作のことである。
本実施形態の場合、低トナー載り量システムであっても、ズリ方向にトナー像を広げる量が互いに異なる第1モードと第2モードとを実行可能であるため、形成する画像に適したモードを選択することにより、所望の画像を得られる。即ち、2次色などの発色性が要求されるフルカラーモードの場合に、ズリ方向にトナー像を広げる量を大きくすることにより発色性を確保できる。一方、線画像などの再現性が要求されるモノクロモードの場合に、フルカラーモードよりもズリ方向にトナー像を広げる量を小さくすることで、線画像などの再現性を確保できる。この結果、発色性の確保と線画像などの再現性の確保とを両立できる。
具体的には、文字やライン画像が多いモノクロモードは、トナーの重なり方向に対して力を加える定着を行い(通常定着)、文字/ラインの太りや尾引きを少なくし、文字品位を高めている。一方、高色域な画像が好まれるフルカラーモードにおいては、トナーの重なり方向に対して斜め方向に力を加える量を多くし、発色性の高い画像を取得することを優先し、ぞれぞれの画像モードに適した定着条件に設定している。
なお、トナーにかかるせん断力と記録材Pの搬送方向が同じ向きでも効果が得られるが、図21に示すように、トナーにかかるせん断力と記録材Pの搬送方向が逆向きである方が、相対的にトナーを面内方向に広げる力が増すので、より効果的である。また、発色性向上効果の大きさは、主に載り量、定着条件、記録材によって異なる。載り量が少なく、トナーが重なり合う領域が少ない状態において特に効果が大きい。また、トナーが十分溶融する定着条件、例えば高温、高圧、長時間(低速度)、低粘度トナーであるほど、トナーが面内方向に広がり、効果が大きくなる。さらに、表面の平滑な記録材であるほど、定着部材と記録材の密着度が増し、面内方向の分力が無駄なくトナーに伝わるので、効果が大きくなる。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図28及び図29を用いて説明する。なお、定着装置以外の画像形成動作については、第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
図28は、定着装置9Aの概略断面図である。定着装置9Aは、熱源を有し回転可能な加熱部材としての加熱ローラ410と、加熱ローラ410に圧接して定着ニップ部Nを形成するニップ形成部材としての回転可能な加圧ローラ420とを有する。そして、定着ニップ部Nでトナー画像を担持した記録材Pを挟持搬送しながら、トナー画像を加熱・加圧して記録材P上に定着させる。
加熱ローラ410は、熱伝導性の良い金属(アルミニウムや鉄など)の中空芯金411と、この外側にシリコンゴムなどの弾性層412と、この弾性層412の表面を被覆するPFAなどの離型層413を設けている。中空芯金411の内側には熱源としてハロゲンヒータ414が配置されている。ハロゲンヒータ414の動作は温度制御装置415で制御される。温度制御装置415はサーミスタ416で検知された加熱ローラ410の表面温度に基づき、ハロゲンヒータ414の動作に対する出力制御を行う。本実施形態では、定着装置9Aは接触式サーミスタにより加熱ローラ410の表面は170℃に温調されている。
加圧ローラ420は、金属(アルミあるいは鉄など)の芯金421と、この芯金421の外側にシリコンゴムなどの弾性層422と、この弾性層422の表面を被覆するPFAなどの離型性層423からなる。
加熱ローラ410と加圧ローラ420はそれぞれ駆動用モータM1、M2によって独立に回転駆動する。即ち、加熱ローラ410と加圧ローラ420とは、定着ニップ部Nに挟持された記録材Pを搬送する方向に回転可能である。そして、加熱ローラ410は、第1駆動手段としての駆動用モータM1により回転駆動され、加圧ローラ420は、第2駆動手段としての駆動用モータM2により回転駆動される。ズリ方向付与手段は、このような駆動用モータM1、M2により構成される。
図28中の定着ニップ部N付近の矢印は、定着ニップ部Nにおいて作用する力の向きであり、加熱ローラ410と加圧ローラ420の回転力と、その相対差から生じる力を示している。本実施形態では、加熱ローラ410と加圧ローラ420の回転速度に差(周速差)を設けることで、ズリ定着のための定着ニップ部Nでのせん断力を付与するようにしている。回転速度差が大きいほどせん断力が大きくなり、トナーを面内方向に広げるので、発色性向上効果が大きくなる。しかしながら、回転速度差を大きくし過ぎると、過度にトナーがずれ、特に文字やライン画像の乱れが顕著に表れる。
以上のことを鑑みて、本実施形態では、ズリ定着を行う場合、加圧ローラ420の回転速度245mm/secに対して加熱ローラ410の回転速度を240mm/secとした(加圧ローラ回転速度の約2%減)。このとき、約10mmの定着ニップ部Nを記録材Pが通過する時間内において、加熱ローラ410は加圧ローラ420に対して相対的におよそ200μm程度滑っている。またこのとき、記録材Pも加熱ローラ410に対して滑りながら搬送される。つまり定着装置9Aにおいても、トナーの重なり方向に対して、斜めに力を加えてトナーを記録材に定着している。
その結果として、加圧ローラ420と加熱ローラ410が同じ周速のときと、周速差を2%つけたときと比較して、周速差を2%つけた場合は総ライン幅増加量が約15μmに相当するせん断力が付与され、2次色の彩度は10程度増加した。
次に、加圧ローラ420と加熱ローラ410の周速差の変更機構について説明する。定着装置9Aは画像制御部52からの信号を受け、加熱ローラ410と加圧ローラ420の周速を独立に制御するためにCPUを内包した制御手段としての周速制御部440を有する。周速制御部440は、駆動用モータM1、M2の回転速度を制御して、加圧ローラ420と加熱ローラ410との周速差を可変である。そして、周速差をモードに応じて設定する。なお、スタンバイ時における加熱ローラ410と加圧ローラ420の周速差はゼロである。
このような本実施形態の定着装置9Aにおいても、文字やライン画像が多いモノクロモードは、総ライン幅増加量がほぼゼロの定着を行い(通常定着)、文字/ラインの太りや尾引きを少なくし、文字品位を高めることを優先する。一方、高色域な画像が好まれるフルカラーモードにおいては、総ライン幅増加量が大きくなるような定着(ズリ定着)を行い、発色性の高い画像を取得することを優先する。
次に、このように構成される本実施形態の画像形成動作の流れについて、図29を用いて説明する。画像形成動作をスタートすると、まず、制御部50が、原稿画像がカラー画像かモノクロ画像かを、第1の実施形態の図27と同様に判断する(S200)。S200で、カラー画像の画像形成を実行すると判断した場合にはフルカラーモードに、モノクロ画像の画像形成を実行する判断した場合にはモノクロモードに、それぞれなる。
S200で「No」(モノクロモード)であれば、前回転動作を開始(S201)し、モノクロモードであることを画像制御部52を通して、周速制御部440に情報を伝達する。周速制御部440はモノクロモードであるので、スタンバイ時と同様に加熱ローラ410と加圧ローラ420とを同速度(周速差ゼロ)で回転させるように設定する(S202)。その後、画像形成動作及び定着(S203)を行い、後回転動作(S204)を行って終了する。
一方、S200で「Yes」(フルカラーモード)であれば、前回転動作を開始(S211)し、フルカラーモードであることを画像制御部52を通して、周速制御部440に情報を伝達する。周速制御部440はフルカラーモードであるので、前回転動作開始と画像形成動作開始前の間で、加熱ローラ410の速度を加圧ローラ420の速度に対して2%遅くして(周速差2%で)回転させる(S212)。その後、画像形成動作及び定着(S213)を行い、後回転動作(S214)を行う。後回転動作時、S212で加熱ローラ410を加圧ローラ420に対して速度を2%遅めて回転させていた制御を、速度差をゼロに変更する制御を行うようにしている(S215)。後回転時に加熱ローラ410と加圧ローラ420の速度差をゼロに戻す目的は、周速差がついていると、加熱ローラ410にもせん断力がかかり、加熱ローラ410のPFA等表層に傷をつける恐れがあるためである。
なお、定着装置9Aの構成は上記の内容に限定するものではなく、記録材Pを挟持搬送する2つの部材間で回転速度差を設けてあれば良い。例えば定着装置の方式としては熱ローラ方式、フィルム(ベルト)方式や、これらの組み合わせでも良い。加熱方法としてはハロゲンヒータ、電磁誘導加熱、セラミックヒータなどがあり、複数の加熱源を用いるなどしても良い。
このように、本実施形態の場合も、文字やライン画像が多いモノクロモードは、トナーの重なり方向に対して力を加える定着を行い(通常定着)、文字/ラインの太りや尾引きを少なくし、文字品位を高めている。一方、高色域な画像が好まれるフルカラーモードにおいては、トナーの重なり方向に対して斜め方向に力を加える量を多くし、発色性の高い画像を取得することを優先し、ぞれぞれの画像モードに適した定着条件に設定している。
トナーにかかるせん断力と記録材Pの搬送方向が同じ向きでも効果が得られるが、図28に示すように、トナーにかかるせん断力と記録材Pの搬送方向が逆向きである方が、相対的にトナーを面内方向に広げる力が増すので、より効果的である。なお、発色性向上効果の大きさは、主に載り量、定着条件、記録材によって異なる。載り量が少なく、トナーが重なり合う領域が少ない状態において特に効果が大きい。また、トナーが十分溶融する定着条件、例えば高温、高圧、長時間(低速度)、低粘度トナーであるほど、トナーが面内方向に広がり、効果が大きくなる。さらに、表面の平滑な記録材であるほど、定着部材と記録材の密着度が増し、面内方向の分力が無駄なくトナーに伝わるので、効果が大きくなる。
また、効果を得るために必要な回転速度差は、記録材Pとそれに接する定着部材、加圧部材との滑り性(摩擦力)によって異なるが、結果として記録材P上のトナー画像を面内方向に広げることができれば、発色性向上の効果が得られる。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図30ないし図34を用いて説明する。なお、定着装置以外の画像形成動作については、第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
定着装置9Bは、図30に示す上下に圧接した回転体対としての加熱ローラ201と加圧ローラ202とで記録材を挟持搬送しながら回転して記録材にトナー像を加熱する。ここで、加熱ローラ201が加熱部材、加圧ローラ202がニップ形成部材である。定着装置9は、後述するように、加熱ローラ201の母線方向と、加圧ローラ202の母線方向とが平行の関係から相対的に傾斜させられるように構成されている。即ち、加熱ローラ201の母線方向と加圧ローラ202の母線方向とを、捩れの関係とすることができる。
加熱ローラ201は、基層としての鉄、アルミニウム等のパイプ状の芯金と、芯金上に設けた弾性層としての耐熱シリコンゴム層と、弾性層上に表層として設けた高離型性材料であるフッ素樹脂層との3層構造になっている。この表層は、定着時にトナーが加熱ローラ201にオフセットしてしまうのを抑制する機能を果たしている。従ってこの表層はフッ素樹脂層とすることが好ましい。フッ素樹脂としては、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などが挙げられる。
弾性層の厚みは、1mm以上〜5mm以下とすることが好ましい。弾性層の厚みが1mm未満場合、加熱ローラ201の硬度が高く、耐熱シリコンゴムを変形させてニップ幅を取ることができないため、弾性層としては不適当な厚みである。逆に、弾性層の厚みが5mmを超えると、熱源が基層である芯金内にあるため、基層と表層との温度差が大きくなり、耐熱シリコンゴムが劣化し易くなる。したがって、弾性層の厚みは、1mm〜5mm程度が好ましい。
本実施形態の加熱ローラ201は、直径が60mm、厚みが3mm、内径が54mmのアルミニウム製の筒状芯金を用い、外周に弾性層としてJIS−A硬度で20度の厚さ2.5mmのシリコンゴムを設けてある。そして、その弾性層の外周には、表層であるPFA(パーフロロアルコキシ樹脂)製の厚さが50μmのチューブを被覆してある。なお、表層のチューブは、PFA、PTFE製であってもよい。
加熱ローラ201は、チューブ状に成形したPFA樹脂製の表層と、この表層に挿入された芯金との間に弾性層となるJIS−A硬度10度の液状のシリコンゴムを注入して、焼成することによって、形成されている。
加圧ローラ202は、加熱ローラ201と同じように鉄、アルミニウム等のパイプ状の芯金と、芯金上に設けた弾性層としての耐熱シリコンゴム層と、弾性層上に表層として設けた高離型性材料であるフッ素樹脂層との3層構造になっている。
芯金上に厚み2mmのシリコンゴムの弾性層を設け、その外周にフッ素樹脂の離型層としての表層を設けて形成されている。この加圧ローラ202は、不図示の駆動機構によって回転する加熱ローラ201との間にニップ部を形成して、加熱ローラ201に従動回転するようになっている。
加圧ローラ202の弾性層202bは、加熱ローラ201と加圧ローラ202との間にニップを形成できるようにするため、LTV若しくはHTVのシリコンゴムを用いて芯金上に形成されている。ここで、LTVとは、Low Temperature Vulcanizationで、HTVとは、High Temperature Vulcanizationである。
弾性層202bは弾性が小さいと、トナー像の凹部の未定着や、トナーの潰れによる画像の解像度の低下をもたらすので、適当な大きさの弾性を備えている必要がある。以上の構成で、必要なニップ幅(記録材の搬送方向の長さ)を10mmにするため、加熱ローラ201への加圧ローラ202の圧接力(加圧力)を800Nに設定してある。
加熱ローラ201の芯金は、中空の筒体に形成されており、その中空内には発熱部としてのハロゲンヒータ203が内在されている。ハロゲンヒータ203が定着に必要な熱を加熱ローラ201に供給するようになっている。加熱ローラ201には、加熱ローラ201の温度を測定するサーミスタ(温度検知素子)204が接触している。加熱ローラ201の温度制御は、まず、温度変化にともなうサーミスタ204の抵抗値変化から加熱ローラ201の温度を検知する。そして、不図示の制御装置により、ハロゲンヒータ203のON/OFFを制御し、加熱ローラ201の温度を所定の温度に維持するようになっている。本実施形態では、定着装置9Bは、サーミスタにより加熱ローラの表面は170℃に温調されている。
図31及び図32に示すように、加熱ローラ201と加圧ローラ202は、各々の芯金軸線が平行な状態から捻りの関係を持っている。図31は加熱ローラ201と加圧ローラ202を上から見た投影図であり、加熱ローラ201と加圧ローラ202の芯金軸線は交差角θの角度で捻りの関係を持っている。
図32の斜視図に、説明のために交差角θを大きく表現した図を示す。図中のFuは加熱ローラ軸線に直角な方向で、紙面上面に加わる力を示す。同じように図中のFdは加圧ローラ軸線に直角な方向で、紙面下面に加わる力を示す。FsはFdとFuの差分ベクトルであり、定着ニップ部内で加わるズリ応力の方向を示している。すなわち定着ニップ部内のトナーはFsの方向にズリ応力を受けながら加熱定着されることになり、このズリ応力によって紙面内方向に広がりやすくなる。
交差角θが大きくなると、定着ニップ部内で発生するズリ応力が大きくなるので、トナーの面内に掛かる力が大きくなり、面内での広がり効果は大きくなる。しかし、紙面内のズリ応力が大きくなると、加熱ローラや加圧ローラの表面のストレスが大きくなるので、表層の耐久性が問題となる。
通常は薄肉芯金の加熱ローラと加圧ローラを加圧すると、各々の軸心が撓みの影響をうけ、両端部のニップ形状が太い逆クラウン形状のニップとなる。一方で、交差角をつけると、幾何学的に両端部のニップが狭くなるので、交差角θは、両端部のニップ幅が中央部のニップ幅よりも略同等以上の幅となるように設定することが好ましい。もし加熱ローラおよび加圧ローラの撓みに以上に交差角θが大きく設定すると、両端部のニップ幅が中央部よりも細くなるため、紙シワなどの問題が発生する。
そのため交差角θは約0.15度から3度の範囲が望ましく、本実施形態においては約3.0度に設定することによって、中央部のニップ幅が10mm、両端部のニップ幅が10.5mmとした。つまり本実施形態の定着装置9Bにおいても、トナーの重なり方向に対して、斜めに力を加えてトナーを記録材に定着している。その結果として、交差角をつけない通常定着と、交差角を3度つけたズリ定着を比較して、交差角が3度のときの定着条件は、総ライン幅増加量が約15μmに相当するせん断力が付与され、2次色の彩度は10程度増加した。
次に、交差角θの変更の機構について説明する。図33は、傾斜手段としての、加圧ローラ202の交差角調整機構210を示す斜視図である。以下、図33を用いて加圧ローラ202の交差角を調整する機構について説明する。なお、交差角調整機構210はズリ方向付与手段でもある。
図33において、加圧ローラ202の軸202aは、不図示の側板に固定された長軸受212に回転可能に軸支されている。長軸受212には、軸202aに対して図中V方向にのみ嵌合し、V方向と垂直な矢印R1及びR2方向にのみ移動を許容する長穴212aが設けてある。さらに加圧ローラ202からみて長軸受212の反対側には、軸受211が軸202aに嵌合されている。一方、不図示の側板には電気エネルギーを機械的な直線運動に変換する電磁機能部品であるソレノイド213が固定されている。このソレノイド213の先端部には、リードが設けられた出力軸213aが取り付けられていて、その出力軸213aの先端部が軸受211に当接している。出力軸213aの先端部からみて軸受211の反対側には、不図示のバネ部材が軸受211に当接しており、軸受211を出力軸213aに押し付けている。
ソレノイド213は、電圧を印加すると矢印L2方向に移動する。すなわち、加圧ローラ202の前側は、ソレノイド213に電圧を印加することにより矢印R1又はR2の方向へ動かすことができる。上記の構成が、加圧ローラ202の左右についており、片方のソレノイドだけに電圧を印加することにより交差角を調整することができる。このようなソレノイド213は、制御手段である交差角制御部240により制御され、加圧ローラ202と加熱ローラ201の交差角を変更する。スタンバイ時などの画像形成装置の停止時における定着装置9の加熱ローラ201と加圧ローラ202の交差角θはゼロである。なお、このような交差角調整機構210は、加熱ローラ201側に設けても良い。要は、加熱ローラ201と加圧ローラ202とを相対的に傾斜させられれば良い。
本実施形態の定着装置9Bにおいても、文字やライン画像が多いモノクロモードは、総ライン幅増加量がほぼゼロの定着を行い(通常定着)、文字/ラインの太りや尾引きを少なくし、文字品位を高めることを優先する。一方、高色域な画像が好まれるフルカラーモードにおいては、総ライン幅増加量が大きくなるような定着(ズリ定着)を行い、発色性の高い画像を取得することを優先する。
次に、このように構成される本実施形態の画像形成動作の流れについて、図34を用いて説明する。画像形成動作をスタートすると、まず、制御部50が、原稿画像がカラー画像かモノクロ画像かを、第1の実施形態の図27と同様に判断する(S300)。S300で、カラー画像の画像形成を実行すると判断した場合にはフルカラーモードに、モノクロ画像の画像形成を実行する判断した場合にはモノクロモードに、それぞれなる。
S300で「No」(モノクロモード)であれば、前回転動作を開始(S301)し、モノクロモードであることを画像制御部52を通して、交差角制御部240に情報を伝達する。交差角制御部240はモノクロモードであるので、スタンバイ時と同様に加熱ローラ201と加圧ローラ202との交差角を0°になるように設定する(S302)。その後、画像形成動作及び定着(S303)を行い、後回転動作(S304)を行って終了する。
一方、S300で「Yes」(フルカラーモード)であれば、前回転動作を開始(S311)し、フルカラーモードであることを画像制御部52を通して、交差角制御部240に情報を伝達する。交差角制御部240はフルカラーモードであるので、前回転動作開始と画像形成動作開始前の間で、加熱ローラ201と加圧ローラ202との交差角を3度にするために駆動を開始する。そして、画像形成動作前には、交差角の変更動作を終了する(S312)。その後、画像形成動作及び定着(S313)を行い、後回転動作(S314)を行う。後回転動作時、S312で加熱ローラ201と加圧ローラ202との交差角を3度に設定していたものを、交差角をゼロに変更する制御を行うようにしている(S315)。後回転時に加熱ローラ201と加圧ローラ202の交差角をゼロに戻す目的は、交差角がついていると、加熱ローラ201にもせん断力がかかり、加熱ローラ201のPFA等表層に傷をつける恐れがあるためである。
このように、本実施形態の場合も、文字やライン画像が多いモノクロモードは、トナーの重なり方向に対して力を加える定着を行い(通常定着)、文字/ラインの太りや尾引きを少なくし、文字品位を高めている。一方、高色域な画像が好まれるフルカラーモードにおいては、トナーの重なり方向に対して斜め方向に力を加える量を多くし、発色性の高い画像を取得することを優先し、ぞれぞれの画像モードに適した定着条件に設定している。その他の構造及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態について、図35ないし図41を用いて説明する。なお、定着装置以外の画像形成動作については、第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
本実施形態の定着装置9Cは、加熱部材としての加熱ローラ550を回転方向と同時に加熱ローラ長手方向にも移動させて、未定着トナーを溶かしながらずらしている。そして、未定着のトナー量が少ない場合(トナー層が少ない)においても、2次色の発色性を少なくとも従来と同等レベルにすることができる。以下詳細に説明する。
図35に示すように、加熱ローラ550は、外径φ40mmであり、φ36mmのアルミ製の芯金554の外側にシリコンゴムからなる弾性層555が形成されている。弾性層555の上には、トナー離型層としてパーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)からなる不図示の離型層が30μm形成されている。本実施形態では耐久性の優れるチューブを使用した。離型層の材質としては、PFAの他に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン樹脂(FEP)等のフッ素樹脂を用いても良い。
ニップ形成部材としての加圧ローラ551は、加熱ローラ550と同様の構成のものを用いた。つまり外径φ40mmであり、φ36mmのアルミ製の芯金554の外側にシリコンゴムからなる弾性層555が形成され、最表層には不図示のPFAからなる離型層が設けられている。加圧ローラ551は加圧バネ553によって図中矢印A1方向に400[N]の力で加圧され、加熱ローラ550に接触し幅9mmの定着ニップ部Nを形成している。さらに加圧ローラ551は、不図示の回転手段により図中矢印R1方向に、加圧ローラ表面速度117mm/secで回転する。加圧ローラ551の回転に従動して、加熱ローラ550も表面速度117mm/secで回転する(図中矢印R2)。
加熱ローラ550と加圧ローラ551の内部にはそれぞれハロゲンヒータ552が具備されている。ハロゲンヒータ552に通電することにより、ハロゲンヒータ552が加熱し、その熱が輻射伝熱や空気を介した伝熱により、芯金554が温まりその後順に弾性層555と離型層が温まる。不図示の温度検知素子が加熱ローラ550の表面に接触して配置されており、この温度検知素子の信号に応じてハロゲンヒータに流す電流を制御することで、加熱ローラ550の表面温度を調整している。本実施形態の定着装置9Cは、図示しない接触式サーミスタにより加熱ローラの表面は170℃に温調されている。
未定着トナー像Tが転写された記録材Pが不図示の搬送手段により、定着ニップ部Nに搬送されると、加熱ローラ550の熱が未定着トナー像Tと記録材Pに伝わり、記録材Pの表面にトナー像Tが定着される。
次いで、未定着トナー像Tを溶かしながらずらす手段について以下に説明する。図36は、加熱ローラ550を長手方向にスライドさせる方式の定着装置の正面断面図である。加圧ローラ551が回転手段561によって矢印R1方向に回転し、加熱ローラ550は矢印R2方向に従動回転する。加熱ローラ550も加圧ローラ551も両端部のベアリング561aによって滑らかに回転する。加圧ローラ551は長手方向に固定されているが、加熱ローラ550は長手方向に移動(スライド)可能である。
加熱ローラ550を長手方向、即ち、記録材Pを搬送する方向及びトナーの積層方向にそれぞれ直交する方向に、加圧ローラ551に対してスライドさせる移動手段としての移動装置599について説明する。加熱ローラ550の両端部には側板金556が設けられており、側板金556はさらに移動支持板金557に固定されている。移動支持板金557にシャフト558が貫通しており、シャフト558の片端部はシャフト558を回転させるためのモータ559Aが配置されている。モータ559Aが矢印R3方向に回転すると、シャフト558も矢印R3方向に回転し、シャフト558の回転に伴い、移動支持板金557が矢印A2方向にスライドレール560に沿って滑らかに移動する。したがって移動支持板金557に固定されている加熱ローラ550も矢印A2方向にスライドする。またモータ559Aが逆回転(矢印R4方向)すると、上記と同様の仕組みで加熱ローラ550が矢印A3方向にスライドする。
モータ559Aは、制御手段であるスライド量制御部599Bにより制御され、加熱ローラ550の移動方向及び移動量を制御する。なお、このような移動装置599は、加圧ローラ551側に設けても良い。要は、加熱ローラ550と加圧ローラ551とを相対的に移動させられれば良い。
このように加熱ローラ550を長手方向にスライドさせながら記録材Pを定着ニップ部Nに通過させ、記録材P上の未定着トナーを定着させる。この時、記録材Pが定着ニップ部Nを通過中に、加熱ローラ550をスライドさせたことによって、記録材P上に加熱ローラ550の表層が接触しなくなる領域がないようにしなければならない。そのためスライドさせる量に応じて、加熱ローラ550の長手方向の長さを加圧ローラ551よりも長くしておく必要がある。図36に示したように、本実施形態では、加熱ローラ550の長さを加圧ローラ551よりも2L(=L+L)だけ長くしている。ここでLは、加熱ローラ500と加圧ローラ501の長手方向の中央を揃えた時に、加圧ローラ501端部から加熱ローラ550端部までの長さを表している。Lの設定については後述する。
加熱ローラ550が矢印A2方向あるいは矢印A3方向にスライドする時、加圧ローラ551は長手方向に固定されスライドしないため、定着ニップ部Nにおいて記録材P上のトナーに加熱ローラ550の移動方向と平行なせん断力が作用する。加熱ローラ550を長手方向にスライドさせない構成では、記録材上のトナーには記録材に垂直な加圧力のみがトナーに作用するため、前述のメカニズムにより、トナー量が少ない時は2次色の発色性が著しく低下する。一方、本実施形態のように加圧ローラ551を長手方向に固定して、加熱ローラ550を長手方向にスライドさせた場合、記録材に垂直な加圧力以外に記録材に平行なズリ方向のせん断力がトナーに作用する。したがって、トナーを溶かしながら長手方向にずらすことができるため、前述のメカニズムにより、トナー量が少ない場合においても2次色の発色性を上げることが可能となる。
図37で、記録材Pの未定着トナーが定着ニップ部Nを通過する時に、加熱ローラ550がスライドする量とイエローとシアンとの2次色(グリーン)の発色性との関係と総ライン幅増加分との関係を示す。加熱ローラのスライド量が増加するとグリーンの発色性と総ライン幅増加分も増加する。ただしスライド量を増加していくと、ある値以上で彩度は飽和傾向になるため、彩度が飽和傾向を示し始めるスライド量を作用させれば十分な効果が得られる。図37の結果を得るために行った実験では、定着ニップ部Nの搬送方向の幅(定着ニップ幅)が6.5mmであったので、定着ニップ幅の約3%のスライド量(約200μm)で彩度が飽和することがわかる。つまり、記録材P上のトナーが定着ニップを通過中に、加熱ローラ550を長手方向に200μm(定着ニップ部の幅の約3%の量)スライドさせれば、十分な彩度アップ効果が得られる。つまり本実施形態の定着装置においても、トナーの重なり方向に対して、斜めに力を加えて定着している。
そのため、本実施形態の定着装置9C(スライド定着)のスライド量は、定着ニップ部の幅が6.5mmあるので、スライド量(約200μm)に設定している。その結果として、総ライン幅増加量が約15μmに相当するせん断力が付与され、2次色の彩度は10程度増加した。
ここで注意しなければならないことは、記録材Pが定着ニップ部Nを通過する間に、加熱ローラ550のスライド方向を変えてしまうと、スライド方向の向きを変える短い時間、加熱ローラは長手方向に移動しない。その結果、定着された画像において、スライドの向きを変えた部分の2次色の発色性が低下してしまう。したがって、1枚の記録材Pが定着ニップ部Nを通過する間は、加熱ローラ550のスライド方向を一方向(A2方向あるいはA3方向)に固定する必要がある。
ここで具体例として、A4サイズの記録材Pを横方向に定着ニップ部に通紙する場合について説明する。前述の理由から必要なスライド量を定着ニップ幅の3%とすると、A4サイズ紙1枚が横方向に定着ニップ部を通過するまでに、図36の状態から加熱ローラ550を矢印A2方向に6.3mm(=210mm×3%)スライドさせることになる。なお、移動方向は、矢印A3方向であっても良い。このとき、加熱ローラ550をスライドさせる速度はプロセススピードの3%となるため、本実施形態では7.4mm/sec(=245mm/sec×3%)となる。
図38に1枚定着し終わった後の定着装置9Cの状態を示した。連続して2枚目を定着する場合は、逆にA3方向(1枚目にA3方向に移動した場合はA2方向)に6.3mmスライドさせれば図36の状態に戻る。さらに3枚目を連続して定着する場合は、1枚目と同様にA2方向にスライドさせてもよい。しかし、加熱ローラ550の長手方向の同じ部分のみが記録材と接触すると、その部分の劣化が早まってしまう問題がある。したがって、3枚目を通紙する時は加熱ローラ550を矢印A3方向にスライドさせるのが好ましい。図39に上記の加熱ローラ550の一連の動作(a)→(b)→(c)→(d)→(a)を示した。ただし記録材Pが定着ニップ部Nを通過する様子は図示していない。
図38に示したように、通紙前に加熱ローラ550の端部と加圧ローラ551の端部を揃えておけば、A2方向に最大2Lのスライド量が確保できる。Lの設定は製品の仕様に応じて決めればよい。本実施形態の場合、使用する最大の記録材が19インチであるため、14.5mm(=19×25.4mm×3%)が2Lの値となり、Lは約7.2mmとなる。このLの値だけ加圧ローラ551よりも加熱ローラ550を長くすれば良い。
加熱ローラ550と加圧ローラ551の長手中央部を揃えた状態、つまり図39の一連の動作で定着可能な紙サイズは、A4、B5、レター、リーガル等になる。そしてそれ以外の19インチまでの大きな紙サイズの場合は、1枚目を通紙する時に図38の状態から矢印A3方向にスライドさせることになる。連続して2枚目以降を通紙するときの一連の動作を図40で示した。ただしここでも記録材Pが定着ニップ部Nを通過する様子は図示していない。上記のような手順で定着する場合は、定着する紙サイズに応じて、1枚目を通紙する前に加熱ローラ550と加圧ローラ551の位置関係を図39(a)か、図40(a)に制御しておかなければならない。
上記の動作以外に例えばLを14.5mmにすると、19インチまでのどの紙サイズにおいても、図39で示した動作で連続して定着が可能となる。この時は、定着後に加熱ローラ550と加圧ローラ551を長手中央で合わせるようにしておけば良い。ただし加熱ローラ550の長手方向の長さは、定着装置を配置するスペースなどによって制約され、かつあまり長くすると加熱ローラ端部からの放熱により省エネ性が損なわれてしまう。したがって定着装置を搭載する製品の仕様に合わせてスライド手段を決めていく必要がある。本実施形態ではスライド量を定着ニップ幅の3%としたが、製品の仕様によって3%以下にしても良いし、効果の振れを考慮して3%以上にしても良い。
前述までは加熱ローラ550を長手方向にスライドさせる例を説明したが、加熱ローラ550を長手方向に固定し、加圧ローラ551を長手方向にスライドさせる構成を用いてもよい。その場合、加熱ローラ550を周方向に駆動(回転)させ、加圧ローラ551を加熱ローラ550に従動させる。また、加圧ローラ551をスライドさせるため、加熱ローラ550よりも加圧ローラ551の長さを長くしなければならない。構成は図36の上下を逆にしたものになり、効果に関しても同様であるため、詳細説明は省略する。
ここまでは、加熱ローラ550あるいは加圧ローラ551のどちらかを長手方向に固定し、固定されていない方を長手方向にスライドさせる構成について説明した。せん断力を作用させるために、加熱ローラ550と加圧ローラ551の両方をスライドさせても良い。ただし加熱ローラ550と加圧ローラ551が同じ方向かつ同期させてスライドした場合、当然せん断力は発生しないので効果は得られない。加熱ローラ550と加圧ローラ551を逆方向、あるいは同方向でも非同期にスライドさせれば剪断力は発生し同様の効果が得られる。加熱ローラ550あるいは加圧ローラ551のどちらかをスライドさせる場合には、定着ニップ部Nを通過する際に記録材が多少蛇行するが、加熱ローラ550と加圧ローラ551を逆方向に同じ量だけスライドさせる場合には記録材の蛇行が抑制される利点がある。
以上説明したように、加熱ローラ550と加圧ローラ551の長手方向に相対的に移動させれば、定着ニップ部Nにおいて長手方向にせん断力が発生し、2次色の混色アップが可能となる。
なお、以上説明した構成においては、加熱側も加圧側もローラを用いた構成であるが、前述の本発明の効果を得られるのであればローラ構成に限ったものではない。また加熱源においても本実施例ではハロゲンヒータを用いたが、IHやセラミックヒータなどを、使用する構成に合わせて選択すればよい。
本実施形態では、スタンバイ時における定着装置9Cの加熱ローラはスライド動作させていない。そこで、本実施形態の定着装置9Cにおいても、文字やライン画像が多いモノクロモードは、総ライン幅増加量がほぼゼロの定着を行い(通常定着)、文字/ラインの太りや尾引きを少なくし、文字品位を高めることを優先する。一方、高色域な画像が好まれるフルカラーモードにおいては、総ライン幅増加量が大きくなるような定着(ズリ定着)を行い、発色性の高い画像を取得することを優先する。スタンバイ時における定着装置9Cはスライド動作させずに温調している。
次に、このように構成される本実施形態の画像形成動作の流れについて、図41を用いて説明する。画像形成動作をスタートすると、まず、制御部50が、原稿画像がカラー画像かモノクロ画像かを、第1の実施形態の図27と同様に判断する(S400)。S400で、カラー画像の画像形成を実行すると判断した場合にはフルカラーモードに、モノクロ画像の画像形成を実行する判断した場合にはモノクロモードに、それぞれなる。
S400で「No」(モノクロモード)であれば、前回転動作を開始(S401)し、モノクロモードであることを画像制御部52を通して、スライド量制御部599Bに情報を伝達する。スライド量制御部599Bはモノクロモードであるので、スタンバイ時と同様に加熱ローラ550をスライドさせない。その後、画像形成動作及び定着(S402)を行い、後回転動作(S403)を行って終了する。
一方、S400で「Yes」(フルカラーモード)であれば、前回転動作を開始(S411)し、フルカラーモードであることを画像制御部52を通して、スライド量制御部599Bに情報を伝達する。スライド量制御部599Bはフルカラーモードであるので、前回転動作開始と画像形成動作開始前の間で、加熱ローラ550を加圧ローラ551に対して、7.4[mm/sec]の速度でスライド動作を開始させる(S412)。その後、画像形成動作及び定着(S413)を行い、定着動作が終了したら、即ち、記録材Pの搬送方向後端が定着ニップ部Nを抜けるタイミングでスライド動作を停止する(S414)。そのご、後回転動作(S415)を行って終了する。
このように、本実施形態の場合も、文字やライン画像が多いモノクロモードは、トナーの重なり方向に対して力を加える定着を行い(通常定着)、文字/ラインの太りや尾引きを少なくし、文字品位を高めている。一方、高色域な画像が好まれるフルカラーモードにおいては、トナーの重なり方向に対して斜め方向に力を加える量を多くし、発色性の高い画像を取得することを優先し、ぞれぞれの画像モードに適した定着条件に設定している。その他の構造及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
<第5の実施形態>
本発明の第5の実施形態について、図42ないし図44を用いて説明する。本実施形態の画像形成装置では、文字又は地図画像において、文字の輪郭を鮮明に出力する文字又は地図モードと、写真画像において、グラデーションを滑らかに出力する写真モードを有している。
ここで、写真モードは、発色性を優先する発色優先モード(第1モード)であり、文字又は地図モードは、線画像の再現性を高める線画像優先モード(第2モード)である。本実施形態では、写真モード(第1モード)の方が文字又は地図モード(第2モード)よりも、ズリ方向にトナー像を広げる量が大きくなるように設定されている。
図42に示した画像形成装置のコントロールパネル1000の画像モード変更ボタン1005に反応して、文字又は地図モードや写真モードなど原稿画像に適した画像処理モードをユーザにより選択可能にすることができる。
以下にそれぞれのモードにおいて、画像形成装置の動作について説明する。図43は、画像制御部52(図1など参照)の内部構成を示すブロック図である。同図において、2201はA/Dコンバータ、2202はシェーディング補正回路、2203は濃度変換回路、2204はマスキング・UCR回路、2205はフィルタ回路、2206はγ補正回路である。原稿を読み取るためのCCDラインセンサ2101から入力された赤・緑・青(R,G,B)の色分解画像信号は、A/Dコンバータ2201によりデジタル信号に変換される。そして、シェーディング補正回路2202により光量分布やCCDラインセンサ2101の感度ムラの補正を受けた後、濃度変換回路2203によって明暗の信号RGBからシアン・マゼンタ・イエロー(C,M,Y)の濃度信号へと変換される。
マスキング・UCR回路2204は、CMY信号から黒信号(K)を生成するとともに、色補正のためのマスキング演算と下色除去(UCR)を実行する。こうして得られたCMYKの信号に対して、フィルタ回路2205は、エッジ強調あるいはスムージング(平坦化)処理を行ない、γ補正回路2206からの出力の非線型性を補正する。
フィルタ回路2205は、画像データ中の画素に対しエッジ強調処理又は平滑化処理等を施す。フィルタ回路2205は、文字又は地図モードが選択された場合は、エッジ強調処理を行い、写真モードが選択された場合は、平滑化処理を行う。
具体的には、エッジ強調処理は、次のように行う。エッジ強調処理を行うべき画素の検出は、注目画素を中心とした一定の領域(例えば7×7や9×9画素)の画素の有する濃度階調(例えば、モノクロ256階調ならば0〜255の値)が代入されたマトリクスを形成する。そして、フィルタと呼ばれるマトリクスを掛け合わせることでなされる。そして、フィルタは注目画素を整数倍し、周囲の画素の階調値に係数を乗じて引くようなフィルタ(微分フィルタ)が選択される。もし、所定の閾値を超えるほど算出された値が大きければ、周囲の画素と濃度が大きく異なる(即ち、エッジ部分)と判断でき、注目画素の濃度を高める処理を行う。これにより、文字の輪郭が鮮明な画像形成を行うことができる。
一方、平滑化処理は、注目画素を中心とした一定の領域(例えば7×7や9×9画素)の画素の有する濃度階調が代入されたマトリクスを形成する。そして、このマトリクスに注目画素及び周囲の画素をそれぞれ分数倍して(分数を全て足すと1となる)足すようなマトリクス(積分フィルタ)を乗じる。これにより、注目画素と周囲の画素との濃度差が少なくなるように注目画素の濃度階調を変更し、画像の濃度変化をなだらかにすることができ、写真画像において、美しいグラデーションを有するカラー画像を形成できる。
そこで、本実施形態では、文字やライン画像を高品位に出力するための文字又は地図モードは、第1の実施形態でも説明したように、総ライン幅増加量がほぼゼロの定着を行う(通常定着)。そして、文字/ラインの太りや尾引きを少なくし、文字品位を高めることを優先する。一方、高色域な画像を出力するための写真モードにおいては、総ライン幅増加量が大きくなるような定着(ズリ定着)を行い、発色性の高い画像を取得することを優先する。本実施形態の画像形成装置及び定着装置の構成は、上述の第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
次に、このように構成される本実施形態の画像形成動作の流れについて、図44を用いて説明する。画像形成動作をスタートすると、まず、制御部50が、ユーザが選択したモードが写真モードか文字又は地図モードか判別する(S500)。S500で「No」(文字又は地図モード)であれば、前回転動作を開始(S501)し、文字又は地図モードであることを画像制御部52を通して、加圧方向制御部350に情報を伝達する。加圧方向制御部350は文字又は地図モードであるので、加圧方向切替装置340を駆動せず、非画像形成時の時と同じように加熱ユニット330の加圧方向をA側のままに設定している。つまり軸間方向Lと加圧方向Lの成す角度θ=0°に設定している(S502)。その後、画像形成動作及び定着(S503)を行い、後回転動作(S504)を行って終了する。
一方、S500で「Yes」(写真モード)であれば、前回転動作を開始(S511)し、写真モードであることを画像制御部52を通して、加圧方向制御部350に情報を伝達する。加圧方向制御部350は写真モードであるので、前回転動作開始と画像形成動作開始前の間で、加圧方向切替装置340を駆動して、加熱ユニット330の加圧方向をB側に移動させる。つまり軸間方向Lと加圧方向Lの成す角度θ=60°に設定する(S512)。上記の角度θの変更動作は、画像形成動作開始前には終了している。
その後、画像形成動作及び定着(S513)を行い、後回転動作(S514)を行う。後回転動作時、S512でθ=60°に設定した定着装置の加圧方向を、加圧方向制御部350が加圧方向切替装置340により、A側方向つまりθ=0°に変更して終了するようにしている(S515)。後回転時に加圧方向をθ=0°に戻す目的は、加圧方向がθ=60°であると、加熱ユニット330にもせん断力がかかり、加熱ユニット330のPFA等表層に傷をつける恐れがあるためである。
このように、本実施形態の場合には、文字やライン画像が多い文字又は地図モードは、トナーの重なり方向に対して力を加える定着を行い(通常定着)、文字/ラインの太りや尾引きを少なくし、文字品位を高めている。一方、高色域な画像が好まれる写真モードにおいては、トナーの重なり方向に対して斜め方向に力を加える量を多くし、発色性の高い画像を取得することを優先し、ぞれぞれの画像モードに適した定着条件に設定している。その他の構造及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
<第6の実施形態>
本発明の第6の実施形態について、図45及び図46を用いて説明する。本実施形態では、出力する画像印字率に応じて、ズリ定着を行うか、通常定着を行うか切り替えている。画像印字率とは、記録材1枚(1ページ分)の画像形成領域に対して画像が形成される領域の割合である。即ち、1ページ分の画像データについて、1ページ分の画像形成領域内で、画像のない白紙の状態を印字率0%とし、トナーで埋め尽くされている状態を100%とする。そして、画像形成領域における画像形成面積と非画像形成面積の割合として画像印字率を定義する。例えば、白一色の画像は印字率0%であり、全領域が白以外の単一色のベタ画像は印字率100%であり、印字領域内の半分の面積が白色部分の無い画像で残りが白色画像の場合は印字率50%である。式で表すと黒画素数/総画素数(白画素数+黒画素数)×100が印字率となる。
ここで、画像印字率(ビデオカウント数)の算出方法について、以下に説明する。図45は画像印字率を説明するための、画像形成部のブロック図である。まず、図45に示したパルス幅変調回路92から発信される印字画素画像信号に対応するレーザ駆動パルスによりレーザ80が駆動される。そして、レーザ80からのレーザ光が回転多面鏡81により走査され、fθレンズ82及び反射鏡83を介して感光ドラム3の表面に照射される。一方、レーザ駆動パルスは、ANDゲート93の一方の入力に供給され、このANDゲート93の他方の入力にはクロックパルス発振器94からのクロックパルスが供給される。従って、ANDゲート93から各画素の濃度に対応した数のクロックパルスが出力される。このクロックパルス数は各画像毎にカウンタ95によって積算され、ビデオカウント数が算出される。かくして、このカウンタ95からの各画像毎のパルス積算信号(ビデオカウント数)は、原稿のトナー像を1つ形成するために現像器1(図3など参照)から消費されるトナー量に対応している。
そのため、ビデオカウント数が多いと、画像印字率が高く、トナー消費量が多いことになる。そのため、高発色性の画像を出力したいと判断できる。また、文字文章等を出力する場合は、画像印字率は10[%]未満になることが多い。
そこで、本実施例の画像形成装置では、画像印字率に応じて、トナーの重なり方向に対して斜め方向に力を加えて定着(ズリ定着)するのか、トナーの重なり方向に対して力を加えて定着(通常定着)するのかを使い分けている。
画像印字率が高く、比較的高発色性を要求される高画像印字率モードではズリ定着を、画像印字率が低く文字文章等の画像を出力する低画像印字率モードでは通常定着に設定される。
即ち、高画像印字率モードは、発色性を優先する発色優先モード(第1モード)であり、低画像印字率モードは、線画像の再現性を高める線画像優先モード(第2モード)である。本実施形態では、高画像印字率モード(第1モード)の方が低画像印字率モード(第2モード)よりも、ズリ方向にトナー像を広げる量が大きくなるように設定されている。
具体的には、画像印字率が10%未満の画像を出力する場合は、低画像印字率モードとして、総ライン幅増加量がほぼゼロの定着(通常定着)を行い、文字/ラインの太りや尾引きを少なくし、高精細な画像を出力することを優先する。一方、画像印字率が10%以上の高色域な画像を出力する場合は、高画像印字率モードとして、総ライン幅増加量が大きくなるような定着(ズリ定着)を行い、発色性の高い画像を取得することを優先する。本実施形態の画像形成装置及び定着装置の構成は、上述の第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
次に、このように構成される本実施形態の画像形成動作の流れについて、図46を用いて説明する。画像形成動作をスタートすると、画像読取部31が原稿を読み取る(S600)。その後、上記で説明したように原稿情報から画像印字率を算出する(S601)。なお、PCが画像情報が送られる場合も同様に画像印字率を算出する。制御部50は、算出された画像印字率が10%以上であるか否かを判断する(S602)。S602においてNo(画像印字率が10%未満、低画像印字率モード)であれば、前回転動作を開始(S611)し、低画像印字率モードであることを画像制御部52を通して、加圧方向制御部350に情報を伝達する。加圧方向制御部350は低画像印字率モードであるので、加圧方向切替装置340を駆動せず、非画像形成時の時と同じように加熱ユニット330の加圧方向をA側のままに設定している。つまり軸間方向Lと加圧方向Lの成す角度θ=0°に設定している(S612)。その後、画像形成動作及び定着(S613)を行い、後回転動作(S614)を行って終了する。
一方、S602で「Yes」(画像印字率が10%以上、高画像印字率モード)であれば、前回転動作を開始(S621)し、高画像印字率モードであることを画像制御部52を通して、加圧方向制御部350に情報を伝達する。加圧方向制御部350は高画像印字率モードであるので、前回転動作開始と画像形成動作開始前の間で、加圧方向切替装置340を駆動して、加熱ユニット330の加圧方向をB側に移動させる。つまり軸間方向Lと加圧方向Lの成す角度θ=60°に設定する(S622)。上記の角度θの変更動作は、画像形成動作開始前には終了している。
その後、画像形成動作及び定着(S623)を行い、後回転動作(S624)を行う。後回転動作時、S622でθ=60°に設定した定着装置の加圧方向を、加圧方向制御部350が加圧方向切替装置340により、A側方向つまりθ=0°に変更して終了するようにしている(S625)。後回転時に加圧方向をθ=0°に戻す目的は、加圧方向がθ=60°であると、加熱ユニット330にもせん断力がかかり、加熱ユニット330のPFA等表層に傷をつける恐れがあるためである。
このように、本実施形態の場合には、画像印字率が10%未満で高精細な画像を出力する低画像印字率モードは、トナーの重なり方向に対して力を加える定着を行う(通常定着)。そして、文字/ラインの太りや尾引きを少なくし、高精細な画像を出力させることを優先させている。一方、画像印字率が10%以上の高色域な画像を出力する高画像印字率モードにおいては、トナーの重なり方向に対して斜め方向に力を加える量を多くし、発色性の高い画像を取得することを優先している。そして、ぞれぞれの画像モードに適した定着条件に設定している。その他の構造及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
なお、上述の各実施形態は、適宜組み合わせて、或いは、組み合わせを変えて実行可能である。また、本発明は、感光ドラムから記録材にトナー像が直接転写する構造にも適用可能である。この場合、感光ドラムが像担持体となる。
1(1a、1b、1c、1d)、現像器、2(2a、2b、2c、2d)・・・帯電ローラ、3(3a、3b、3c、3d)・・・感光ドラム、5(5a、5b、5c、5d)・・・露光装置、24(24a、24b、24c、24d)・・・1次転写ローラ、9、9A、9B、9C・・・定着装置、14・・・2次転写ローラ(転写手段)、30・・・中間転写ベルト(像担持体)、320・・・加圧ローラ(ニップ形成部材)、330・・・加熱ユニット(加熱部材)、340・・・加圧方向切替装置(加圧方向変更手段、ズリ方向付与手段)、350・・・加圧方向制御部(制御手段)、410・・・加熱ローラ(加熱部材)、420・・・加圧ローラ(ニップ形成部材)、M1・・・駆動用モータ(第1駆動手段、ズリ方向付与手段)、M2・・・駆動用モータ(第2駆動手段、ズリ方向付与手段)、440・・・周速制御部(制御手段)、201・・・加熱ローラ(加熱部材)、202・・・加圧ローラ(ニップ形成部材)、210・・・交差角調整機構(傾斜手段、ズリ方向付与手段)、240・・・交差角制御部(制御手段)、550・・・加熱ローラ(加熱部材)、551・・・加圧ローラ(ニップ形成部材)、599・・・移動装置(移動手段、ズリ方向付与手段)、599B・・・スライド量制御部(制御手段)、N・・・定着ニップ部

Claims (9)

  1. 記録材にトナー像を形成する像形成手段と、
    加熱部材と、前記加熱部材に当接して定着ニップ部を形成するニップ形成部材とを有し、トナー像が形成された記録材が前記定着ニップ部を通過することにより、トナー像を記録材に定着させる定着装置と、を備え、
    前記像形成手段は、トナーの体積平均粒径をL(μm)、トナーの密度をρ(g/cm)、単色のトナー像の記録材上での単位面積あたりの最大のトナー載り量をM(mg/cm)とした場合に、
    M≦ρπL/(30√3)
    の関係を満たすようにトナー像を形成し、
    前記定着装置は、前記定着ニップ部を通過するトナー像に対し、トナーの積層方向に対して直角なズリ方向に力を付与可能なズリ方向付与手段と、前記ズリ方向にトナー像を広げる量が互いに異なる第1モードと第2モードとを実行可能で、前記第1モードの方が前記第2モードよりも、前記ズリ方向にトナー像を広げる量が大きくなるように前記ズリ方向付与手段を制御する制御手段と、を有する、
    ことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記第1モードは、発色性を優先する発色優先モードであり、
    前記第2モードは、線画像の再現性を高める線画像優先モードである、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記第1モードは、複数色のトナーで画像形成を行うフルカラーモードであり、
    前記第2モードは、単色のトナーで画像形成を行うモノクロモードである、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
  4. 前記第1モードは、写真画像の画像形成を行う写真モードであり、
    前記第2モードは、文字又は地図画像の画像形成を行う文字又は地図モードである、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
  5. 記録材1枚の画像形成領域に対して画像が形成される領域の割合を画像印字率とした場合に、
    前記第1モードは、画像印字率が10%以上の高画像印字率で画像形成を行う高画像印字率モードであり、
    前記第2モードは、画像印字率が10%未満の低画像印字率で画像形成を行う低画像印字率モードである、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
  6. 前記ズリ方向付与手段は、前記加熱部材と前記ニップ形成部材とのうちの一方の部材を他方の部材に向けて加圧する加圧方向を、トナーの積層方向に対して傾斜した方向に変更可能な加圧方向変更手段であり、
    前記制御手段は、前記加圧方向変更手段を制御する、
    ことを特徴とする、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
  7. 前記加熱部材と前記ニップ形成部材とは、前記定着ニップ部に挟持された記録材を搬送する方向に回転可能であり、
    前記ズリ方向付与手段は、前記加熱部材を回転駆動する第1駆動手段と、前記ニップ形成部材を回転駆動する第2駆動手段と、を有し、
    前記制御手段は、前記第1駆動手段と前記第2駆動手段とを制御して、前記加熱部材と前記ニップ形成部材との周速差を可変である、
    ことを特徴とする、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
  8. 前記ズリ方向付与手段は、前記加熱部材の母線方向と前記ニップ形成部材の母線方向とを相対的に傾斜させる傾斜手段であり、
    前記制御手段は、前記傾斜手段を制御する、
    ことを特徴とする、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
  9. 前記ズリ方向付与手段は、前記加熱部材と前記ニップ形成部材とを、記録材を搬送する方向及びトナーの積層方向にそれぞれ直交する方向に、相対的に移動させる移動手段であり、
    前記制御手段は、前記移動手段を制御する、
    ことを特徴とする、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
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