炭化水素含有安定化界面活性剤の不活性化
反応器における水性媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を安定させるために、重合反応器に加えられる炭化水素含有界面活性剤の不活性化により、界面活性剤のテロゲン性が低下される。不活性化は、好ましくは不活性化助剤の存在下で、炭化水素含有界面活性剤を酸化剤と反応させることによって行われるのが好ましい。酸化反応は、重合反応が中で行われる重合反応器における水性媒体と同じかまたは異なり得る水性媒体中の酸化剤への界面活性剤の曝露を含む。炭化水素含有界面活性剤がアニオン性であることも好ましい。好ましくは、炭化水素含有界面活性剤は、炭化水素界面活性剤である。
一実施形態において、重合反応器において水性重合媒体中に加えられる安定化界面活性剤は、水性媒体中への添加前に不活性化される。好ましくは、安定化界面活性剤は、この実施形態において、界面活性剤を酸化剤と反応させることによって不活性化される。好ましくは、酸化剤は過酸化水素である。界面活性剤を不活性化するための反応は、好ましくは、50℃以下の温度で水性媒体中で行われる。反応のこの温度は、重合反応がほとんどの場合行われる水性媒体の温度、すなわち少なくとも60℃の温度と対照的である。
不活性化から得られる安定化界面活性剤のテロゲン性の低下により、以下のうちの1つ以上を含む改良が得られる:1)凝塊を顕著に増加させずに、水性媒体中の所望のフルオロポリマー固形分を生成するように重合時間を短縮する、および/または2)以下にさらに記載されるように、安定化界面活性剤が水性媒体に加えられ得る前に、重合キックオフ後の遅延の時間を減少させる。したがって、不活性化により、好ましくは、界面活性剤の有効性が向上する。テロゲン性が不活性化によって低下されるが、不活性化された界面活性剤はそれでも、水性媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を安定させるというその界面活性剤機能を果たす。
不活性化は、安定化界面活性剤を水溶液中の過酸化水素と反応させることによって行われ得る。酸化反応用の不活性化助剤は、好ましくは、酸化反応を加速する(触媒する)のにも使用される。この助剤は、好ましくは金属イオンである。好ましくは、金属イオンは、重合反応器において水性媒体に溶解可能な形態で提供される。この溶解性は、金属イオンが塩形態であることによって得ることができ、すなわち、金属イオンは、塩のカチオンである。好ましくは、塩は、無機塩であり、塩のアニオンは、塩に含まれる水和水を用いてまたは用いずに、この溶解性を与える任意のアニオンであり得る。しかしながら、アニオンは、重合反応またはフルオロポリマー生成物に悪影響を与えてはならない。金属塩の好ましいアニオンの例には、硫酸アニオン、亜硫酸アニオン、および塩化物アニオンが挙げられる。
好ましくは、金属イオンの金属は、複数の正原子価を有し、複数の酸化状態と呼ばれることがある。過酸化水素による酸化のための金属イオン触媒の例としては、Fe、MnおよびCuが挙げられる。加速をしても、不活性化反応はゆっくりであり、完了するのに例えば少なくとも30分かかる。酸化を行うための手順は、以下のとおりであり得る:水中の安定化界面活性剤の溶液が形成される。硫酸鉄水和物不活性化助剤としてのFe+2金属イオンが加えられ、この溶液に溶解される。溶液のpHは、酸化反応を促進するための適切な試薬の添加によって調整され得る。溶液は撹拌され、過酸化水素が、溶液にゆっくりと加えられる。Fe+2に対する過酸化物の重量比は、一般に、20:1〜400:1、好ましくは30:1〜300:1、より好ましくは60:1〜200:1であり得る。SDSなどの安定化界面活性剤に対する過酸化物の重量比は、0.15:1〜3.5:1、好ましくは0.3:1〜2.6:1、より好ましくは0.5:1〜1.6:1であり得る。過酸化水素の添加が完了したら、得られる水溶液は、上述されるように重合反応中に水性重合媒体に不活性化された界面活性剤を加えるために使用され得る。したがって、不活性化された界面活性剤とともに反応器に加えられる水が、重合反応または得られるフルオロポリマーに有害でないように、水溶液の水は、水性重合媒体について行われるのと同様に、好ましくは脱気され、脱イオン化される。これらの割合の反応剤および存在する場合不活性化助剤は、フルオロポリマー粒子分散体の安定化について上述される、炭化水素界面活性剤を含む炭化水素含有界面活性剤のいずれかおよび全ての不活性化に適用される。
水性重合媒体と別個に調製される場合、不活性化された界面活性剤は、不活性化反応が中で行われる水溶液中の組成が均一である。これは、反応器水性媒体中に供給される不活性化された界面活性剤の組成が、重合反応の終了時点で、反応器へのその供給の開始の時点での組成と同じであることを意味する。
安定化界面活性剤を不活性化するための過酸化水素の使用は、反応器への不活性化された界面活性剤溶液の供給を伴い得る任意の塩を生成しない。重合反応中に十分な量で存在する場合の塩は、凝塊の増加を生じさせることなどによって有害であり得る。
不活性化反応が酸化剤としての過酸化水素を用いて行われる水溶液の温度は重要である。過酸化物を安定化界面活性剤と酸化反応させるのに有効な好ましい温度範囲は、1〜50℃、好ましくは5〜45℃、最も好ましくは10〜45℃である。温度が45℃から上昇するにつれて、反応性が急激に低下し、50℃を超える温度で実質的に存在しない。したがって、所望の不活性化効果は、60℃以上の通常の重合温度で得られない。したがって、不活性化反応は、好ましくは、水性重合媒体と別個に行われる。
不活性化効果は、異なる水溶液温度で安定化界面活性剤と過酸化水素との酸化反応を行い、その後、フルオロモノマーの重合の際に水性重合媒体に加えられる安定化界面活性剤として不活性化された界面活性剤を使用し、水性重合媒体中の所与のフルオロポリマー固形分を得るのに必要とされる重合(バッチ)時間を比較することによって決定される。好ましくは、不活性化は、バッチ時間が、安定化界面活性剤が不活性化されない同じ重合と比較した際に、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも35%、最も好ましくは少なくとも50%だけ減少されるように有効である。
別の実施形態において、安定化界面活性剤は、過酸化水素と異なる酸化剤を用いた重合反応器における水性媒体への添加前、添加中、または添加後に不活性化され、これらのそれぞれは、不活性化反応のための好ましいタイミングである。実際には、不活性化のこのタイミングは、反応器の外および反応器の中の不活性化である。不活性化は、好ましくは、水性媒体の添加中または添加後に行われる。不活性化は、最も好ましくは、界面活性剤が反応器に入った後に行われるため、水性媒体中の不活性化が反応器中で起こる。この実施形態において、不活性化された安定化界面活性剤は、この界面活性剤と、酸化剤としての水溶性重合開始剤との反応生成物であり、好ましくは、開始剤は、水性媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を形成するために重合反応を引き起こすのに使用される。本方法のこの実施形態において、不活性化は、好ましくは、重合と同じ温度、好ましくは25、40、50、60、または70〜120℃で行われる。
好ましくはこの不活性化反応は、好ましくは、過酸化水素酸化剤と安定化界面活性剤との反応を触媒するのに使用される金属イオンに関して上述される形態でこの反応に供給される金属イオンである不活性化助剤の存在下で行われる。
実験により、金属イオンの存在下で、不活性化がバッチ時間を66%だけ短縮し、STYを実施例1の300%(表1の実験1および2を参照)だけ増加させることが示された。
好ましい金属イオンとしては、元素周期表の第2〜12族のものが挙げられる。このような周期表は、McGraw−Hill Higher Educationによって出版されたM.S.Silverberg,Chemistry,The Molecular Nature of Matter and Change,5 Ed.(2009)の表紙の裏に開示されるものである。この表の族の付番は、「新表記法」と呼ばれることがある2010 IUPAC形式にしたがって1〜18である。この族の付番が、本明細書において言及される。この族の付番は、周期表の元素の縦列に当てはまる。
最も好ましい金属イオンは、遷移金属、特に第3〜12族のものであり、これらのうち、最も好ましいのは、第6〜12のもの、さらにより好ましいのは、第7〜12族、最も好ましいのは第7〜11族のものである。周期表には、1〜7の番号が付けられた周期と呼ばれる元素の横方向の分類もあり、第1族元素のHから開始し、第7周期としての第1族元素のFrで終了する。遷移金属の中でも、横方向の第4周期のものが最も好ましい。「遷移金属」という用語には、「内部遷移金属、すなわち、ランタニドおよびアクチニドが含まれる。
好ましい遷移金属としては、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ce、およびAgが挙げられ、FeおよびCuが最も好ましい。本発明に好ましくは使用される遷移金属の大部分の特性の1つは、それらが、複数の酸化状態と呼ばれることがある複数の正原子価を有することである。例えばFeは、+2および+3の原子価を有し、Cuは、+1および+2の原子価を有する。最も好ましい金属イオンは、第一鉄イオンおよび第一銅イオンである。重合開始剤/安定化界面活性剤の酸化反応を触媒するのに使用される金属イオンは、過酸化水素などの他の酸化剤が使用される場合、安定化界面活性剤の酸化を触媒するのにも使用され得る。
酸化剤が重合開始剤であり、不活性化が重合反応器において行われる場合、金属イオンをもたらす塩が、炭化水素含有界面活性剤の水溶液とともにまたはそれとは独立して、水溶液として重合反応器中の水性媒体に加えられ、水性媒体中への界面活性剤の計量供給とともに水性媒体中に計量供給され、水性媒体中に独立して計量供給され、または全て一度に水性媒体に加えられ得る。後述されるように、重合反応の前に、親油性核形成部位が形成される場合、過剰な凝塊の形成を避けるために、水性媒体への金属イオンとしての不活性化助剤の添加が、好ましくは、これらの部位の形成が少なくとも開始された後まで遅延される。したがって、水性媒体への不活性化助剤としての金属イオンの添加が、好ましくは、重合反応の開始(キックオフ)後まで遅延される。
不活性化助剤とともに重合開始剤を用いた不活性化反応の速さにより、この不活性化反応を、重合反応器における水性媒体への安定化界面活性剤の添加前、添加中または添加後に行うことができる。「添加前」の不活性化反応は、安定化界面活性剤の水溶液用の保持容器中で、不活性化助剤および重合開始剤をこの容器に加えることによって行われ得る。「添加中」の不活性化反応は、安定化界面活性剤、不活性化助剤、および重合開始剤の水溶液を一緒に反応器中に同時に供給して、これらの溶液が反応器への添加中に混合されるようにすることによって行われ得る。この混合中の不活性化反応は、完了されていない場合、全ての3種の成分を含有する反応器供給管路の長さに応じて、少なくとも開始すると考えられる。「添加後」の不活性化反応、すなわち、重合反応器における水性媒体中の不活性化は、前の段落に記載されている。
両方の不活性化実施形態において、炭化水素界面活性剤を含む炭化水素含有界面活性剤は、界面活性剤を酸化剤と反応させることによって不活性化される。両方の不活性化反応において、酸化反応は、好ましくは、酸化反応を触媒する、水性媒体中の金属イオンである不活性化助剤の存在下で好ましくは行われる。金属イオンは、好ましくは、複数の正原子価を有し、好ましい金属イオンは、上述されるようにどの酸化剤が使用されるかに応じて決まる。これに関して、好ましい酸化剤は、重合開始剤と題される節に開示されるものから好ましくは選択される、過酸化水素または水溶性重合開始剤である。不活性化反応のタイミングは、使用される酸化剤に応じて決まり、好ましくは、反応器、すなわち反応器中の水性媒体への安定化界面活性剤の添加前、または反応器へのこの添加中、または反応器へのこの添加後のいずれかである。
不活性化助剤の存在の好ましさは、酸化反応が反応器の外で行われる場合、利用可能な時間がより長いことで、不活性化助剤の必要なく反応を行うことができることを想定している。酸化剤としての過酸化水素の場合、不活性化助剤が反応中に存在している場合でさえ、反応が遅い。反応が、重合反応器を用いて、水性媒体中への安定化界面活性剤の添加中または添加後に行われる場合、酸化反応が起こるのにより少ない時間が利用可能である。その状況下で、不活性化助剤の存在は、酸化反応が非常に速く起こるように酸化反応を触媒し、それによって、重合反応器中の水性媒体への添加後にできるだけ早く安定化界面活性剤のテロゲン性を低下させるのに好ましい。実施例1の表1の実験1および2は、それぞれ、不活性化助剤を使用しない場合および使用する場合を比較する。安定化界面活性剤単独の溶液が、重合反応器中の加熱された水性媒体に加えられる場合(実験1)、重合により、ポリマー粒子の分散体および少ない凝塊形成が生じるが、重合反応が所望の固形分に達するのに比較的長い期間を必要とする。この実施例は、水性媒体への安定化界面活性剤の遅延された添加および界面活性剤のテロゲン性を低下させるための水性媒体中へのこの界面活性剤の計量供給を用いる。しかしながら、実験1において安定化界面活性剤の不活性化を行わないことは、安定化界面活性剤および不活性化助剤の溶液が重合反応器中の加熱された水性媒体に加えられる実験2によって示される。安定化界面活性剤が不活性化されていることは、300%超のSTYの増加によって示され、これは、安定化界面活性剤が加熱された水性媒体に達するときに不活性化助剤の存在から生じる安定化界面活性剤のテロゲン性の大幅な低下を示す。不活性化により、安定化界面活性剤のテロゲン性が低下され、不活性化助剤の存在により、重合反応の条件下で不活性化が適時起こるのが可能になるのが好ましい。
炭化水素含有安定化界面活性剤
本発明の実施に用いられる炭化水素含有界面活性剤は、好ましくは炭化水素界面活性剤である。炭化水素界面活性剤中の炭化水素は、フッ素または塩素などのハロゲンによって置換され得る界面活性剤中に存在する炭素原子が、水素によって代わりに置換され、それによって、炭化水素界面活性剤は、フッ素および塩素などのハロゲンを含まないことを意味する。したがって、炭化水素界面活性剤中、炭化水素界面活性剤の炭素原子上の、周期表の元素としての一価置換基の100%が水素である。
界面活性剤が炭化水素含有界面活性剤である場合、それは、塩素またはフッ素などのハロゲン原子などの、炭素原子上の他の一価置換基を含有することができ、フッ素は、フルオロモノマー重合用の界面活性剤において最も一般的である。このような界面活性剤中のハロゲン原子の存在により、重合の完了後に水性重合媒体から化合物を除去または回収するプロセスを行って、コストおよび環境上の問題を埋め合わせることが望ましくなり得る。
好ましくは、炭化水素含有界面活性剤の炭素原子上の、周期表の元素としての一価置換基は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも95%の水素であり、炭素原子上の残りの一価置換基は、典型的に、フッ素または塩素などのハロゲンである。
炭化水素界面活性剤および炭化水素含有界面活性剤は両方とも、フルオロモノマーの重合の際にテロゲン性であるC−H基を含む。界面活性剤中のフッ素の量が少ないかもしれないにもかかわらず、重合媒体からハロゲン含有界面活性剤を除去または回収するコストを節減するために、炭化水素界面活性剤が、本発明に使用するのに好ましい界面活性剤である。したがって、好ましい安定化界面活性剤は、ハロゲンを含まない。
特に示されない限り、本明細書における炭化水素含有界面活性剤の説明は、炭化水素界面活性剤を含み、また、炭化水素界面活性剤に適用される。
炭化水素含有界面活性剤の機能は、重合反応器中の重合反応の際の水性重合媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を安定させることである。分散されたフルオロポリマー粒子の安定化は、これらの粒子が、凝塊を形成する互いに対する凝集の際ではなく撹拌の際に水性媒体中に分散されることを意味する。この分散は、重合反応の完了時に持続し、撹拌は中断される。
好適な炭化水素含有界面活性剤は、同じ分子上に親水性部分および疎水性部分を有する。アニオン性界面活性剤は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、または硫酸塩などの負に帯電した親水性部分および疎水性部分としてのアルキルなどの長鎖炭化水素部分を有する。炭化水素含有界面活性剤は、粒子に対して配向された界面活性剤の疎水性部分および水相中の界面活性剤の親水性部分でフルオロポリマー粒子を被覆することによってポリマー粒子を安定させる。アニオン性界面活性剤はこの安定化を促進し、フルオロポリマー粒子間の電荷の反発を与えるように帯電されていることを特徴とする。
アニオン性炭化水素界面活性剤の一例は、Resolution Performance ProductsによってVersatic(登録商標)10として供給される高度分枝鎖状C10第3級カルボン酸である。
別の有用なアニオン性炭化水素界面活性剤は、BASFによってAvanel Sシリーズとして供給される直鎖状アルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウムである。エチレンオキシド鎖は、界面活性剤に非イオン特性を与え、スルホン酸基は、特定のアニオン特性を与える。
別の群の炭化水素界面活性剤は、式R−L−M(式中、Rが、6〜17個の炭素原子を含有するアルキル基であり、Lが、−ArSO3 −、−SO3 −、−SO4−、−PO3 −および−COO−からなる群から選択され、Mが、H+、Na+、K+およびNH4 +から選択される一価カチオンである)によって表されるアニオン性界面活性剤である。−ArSO3 −が、アリールスルホン酸塩である。これらの界面活性剤の好ましいものは、式CH3−(CH2)n−L−M(式中、nが、6〜17の整数であり、Lが、−SO3M、−PO3Mまたは−COOMであり、LおよびMが、上記と同じ意味を有する)によって表されるものである。特に好ましいのは、R−L−Mの界面活性剤であり、式中、R基が、12〜16個の炭素原子を有するアルキル基であり、Lが、硫酸塩、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などのそれらの混合物である。商業的利用のために、SDS(場合によりラウリル硫酸ナトリウムと呼ばれる)は、典型的に、ヤシ油またはパーム核油原料から得られ、主に、ドデシル硫酸ナトリウムを含有するが、異なるR基を有する少量の他のR−L−Mの界面活性剤を含有していてもよい。
炭化水素含有水溶性化合物として使用され得る別の群の界面活性剤は、炭化水素含有シロキサン界面活性剤である。このようなシロキサン界面活性剤およびポリジメチルシロキサン(PDMS)界面活性剤は、特に、Silicone Surfactants,R.M.Hill,Marcel Dekker,Inc.,ISBN:0−8247−00104に記載されている。シロキサン界面活性剤の構造は、明確な疎水性部分および親水性部分を含み、後者は、界面活性剤に水溶性を与える。疎水性部分は、1つ以上のジヒドロカルビルシロキサン単位を含み、ここで、ケイ素原子上の置換基が、完全に炭化水素である:
ヒドロカルビル基の炭素原子が、フッ素などのハロゲンによって置換され得る場合に、水素原子によって完全に置換されるという意味では、これらの炭化水素含有シロキサン界面活性剤は、炭化水素界面活性剤とみなすこともでき、すなわち、ヒドロカルビル基の炭素原子上の一価置換基は水素である。
シロキサン界面活性剤の親水性部分は、スルフェート、スルホネート、ホスホネート、リン酸エステル、カルボキシレート、カーボネート、スルホサクシネート、タウレート(遊離酸、塩またはエステルとしての)、ホスフィンオキシド、ベタイン、ベタインコポリオール、または第4級アンモニウム塩などのイオン性基を含む1つ以上の極性部分を含み得る。
シロキサンベースでかつアニオン性である炭化水素界面活性剤の例は、Lubrizol Advanced Materials,Inc.の一部門であるNoveon Consumer Specialties,Incから入手可能なこのような界面活性剤であり、以下のとおりである:
本発明に有用な炭化水素界面活性剤の別の例は、Akzo Nobel Surface Chemistry LLCから入手可能なスルホサクシネート界面活性剤Lankropol(登録商標)K8300である。界面活性剤は、以下のものであると報告される:
ブタン二酸、スルホ−、4−(1−メチル−2−((1−オキソ−9−オクタデセニル)アミノ)エチル)エステル、二ナトリウム塩;CAS No.:67815−88−7
本発明に有用なさらなるスルホサクシネート炭化水素界面活性剤は、ClariantからEmulsogen(登録商標)SB10として入手可能なスルホコハク酸ジイソデシル、Na塩、およびCesapinia ChemicalsからPolirol(登録商標)TR/LNAとして入手可能なスルホコハク酸ジイソトリデシル、Na塩である。
炭素原子上のごく少数の一価置換基が水素の代わりにフッ素である、本発明に有用な炭化水素含有界面活性剤の例は、以下に記載される、Omnova Solutions,Inc.から入手可能なPolyFox(登録商標)界面活性剤である。
MWが約1900であり、X=1〜7である。
MWが約1600であり、X=1〜7である。
炭化水素を含有するかまたは炭化水素であるかにかかわらず、好ましい界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、好ましくはアニオン性炭化水素界面活性剤であり、これらの界面活性剤のうち最も好ましいのは、上記のようなR−L−M界面活性剤などのC6〜C17の脂肪族基を含有するものである。特に好ましくは、上記のような少量で異なるR基のその混合物を含むドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。
重合開始剤
本発明にしたがって用いられる重合開始剤は、好ましくは水溶性ラジカル重合開始剤である。この開始剤が、水性重合媒体に加えられて、圧力上昇反応器中の重合反応が開始(キックオフ)される。加えられる開始剤の量は、重合されるフルオロモノマーおよび使用される開始剤のタイプに応じて決まる。
重合反応のキックオフ(kicking off(kickoff))は、重合の開始である。簡単にするために、このキックオフは、反応器圧力の低下、例えば10psi(69kPa)の圧力降下によって示すことができ、この圧力降下は、重合方法におけるフルオロモノマーの消費の開始およびそれによる重合反応の開始を示す。圧力降下のこの量は、圧力降下が、フルオロモノマーの消費によって引き起こされることを意味するものとして解釈される。当業者は、より小さい圧力降下が、重合の開始ではない内部反応器圧力の単なる変動ではないという確信がある場合、より小さい圧力降下に依拠する場合がある。当業者は、重合の開始を示しているとして異なるパラメータに完全に依拠する場合がある。例えば、圧力要求システムにおいて、反応器圧力の低下が、圧力を維持するための反応器へのモノマーの流れによって直ぐに補正される。このシステムにおいて、反応器中への特定の量の圧力要求モノマーの流れは、重合反応の開始を示すものとみなされる。依拠されるパラメータが何であれ、同等の、バッチ時間などの結果を得るために、バッチ間で同じパラメータが使用されるべきである。
しかしながら、TFEからPTFEへの重合のために、好ましい開始剤は、ジコハク酸ペルオキシド(DSP)などの有機過酸であり、これは、キックオフさせるのに、例えば少なくとも200ppm(キックオフの時点での反応器中の水の重量を基準にして)といった大量を、より少量の無機過硫酸塩などの高活性の開始剤とともに必要とする。開始剤の活性は、重合反応が行われる、例えば少なくとも25、40、50、60、または70〜120℃の、反応器中の媒体の温度で、水性重合媒体中で遊離基を形成する開始剤の能力を指す。開始剤および重合温度の選択は、遊離基が熱的に誘導されるかまたはそれらの形成が促進剤または還元剤の存在によって補助されるかにかかわらず、開始剤から生じる遊離基が水性媒体の温度によって生じるように整合されるのが好ましい。キックオフを引き起こすために加えられる開始剤は、重合反応が進行するにつれて必要になり得る追加の開始剤によって補充され得る。キックオフの前に反応器に加えられる重合開始剤は、不活性化助剤として本発明に使用される金属イオンを含まないのが好ましい。
フルオロモノマー/フルオロポリマー
本発明によって形成されるフルオロポリマー水性分散体は、少なくとも1つのフッ素化モノマー(フルオロモノマー)(すなわち、モノマーの少なくとも1つがフッ素を含有する)、好ましくは、少なくとも1つのフッ素またはフルオロアルキル基が二重結合された炭素に結合されたオレフィンモノマーから作製されるフルオロポリマーの粒子を含む。本発明の方法に好ましくは使用されるフッ素化モノマーは、少なくとも35重量%のF、好ましくは少なくとも50重量%のFを含有する。これらの重量%のFは、好ましくは、フッ素化モノマーから得られるフルオロポリマーにも適用される。好ましいモノマーは、独立して、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアルキルエチレン、フルオロビニルエーテル、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VF2)、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)およびパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましいパーフルオロアルキルエチレンモノマーは、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)である。好ましいフルオロビニルエーテルとしては、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、およびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)などのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)モノマー(PAVE)が挙げられる。エチレンおよびプロピレンなどの非フッ素化オレフィンコモノマーが、フッ素化モノマーと共重合され得る。
フルオロビニルエーテルとしては、フルオロポリマーに官能基を導入するのに有用なものも挙げられる。これらには、CF2=CF−(O−CF2CFRf)a−O−CF2CFR’fSO2F(式中、RfおよびR’fが、独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0、1または2である)が含まれる。このタイプのポリマーは、米国特許第3,282,875号明細書(CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F、パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド))、ならびに米国特許第4,358,545号明細書および同第4,940,525号明細書(CF2=CF−O−CF2CF2SO2F)に開示されている。別の例は、米国特許第4,552,631号明細書に開示されている、CF2=CF−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2CF2CO2CH3、パーフルオロ(4,7−ジオキサ−5−メチル−8−ノネンカルボン酸)のメチルエステルである。ニトリル、シアネート、カルバメート、およびホスホン酸の官能基を有する同様のフルオロビニルエーテルは、米国特許第5,637,748号明細書;同第6,300,445号明細書;および同第6,177,196号明細書に開示されている。
本発明は、水性媒体中のその分散体を生成するために改質PTFEを含むポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の分散体を生成する場合の重合に特に有用である。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、(a)コモノマーがそれほど存在しない、すなわちホモポリマーである重合テトラフルオロエチレン自体および(b)改質PTFE(得られるポリマーの融点がPTFEの融点よりそれほど低くないような低濃度のコモノマーとTFEとのコポリマーである)を指す。改質PTFEは、処理を向上させるために結晶性を低下させる少量のコモノマー改質剤を含有し、このようなモノマーの例は、パーフルオロオレフィン、特にヘキサフルオロプロピレン(HFP)またはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)(ここで、アルキル基は、1〜5個の炭素原子を含有し、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が好ましい)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、またはかさ高い側基を分子中に導入する他のモノマーである。このようなコモノマーの濃度は、PTFE中に存在するTFEおよびコモノマーの総重量を基準にして、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である。有意な効果を与えるための最少量の少なくとも0.05重量%が使用されるのが好ましい。PTFE(および改質PTFE)は、典型的に、少なくとも1×106Pa・s、好ましくは少なくとも1×108Pa・sの溶融クリープ粘度を有し、このような高い溶融粘度では、ポリマーは溶融状態で流動せず、したがって溶融処理性ポリマーではない。溶融クリープ粘度の測定は、米国特許第7,763,680号明細書の第4欄に開示されている。PTFEの高い溶融粘度は、例えば少なくとも106、通常、それを大幅に上回る、例えば少なくとも2×106のMnといったその非常に高い分子量(Mn)から生じる。この高分子量のさらなる証拠は以下のとおりである:PTFEは、少なくとも330℃(第1の加熱)、通常少なくとも331℃、ほとんどの場合少なくとも332℃(全ての第1の熱)のその高い溶融温度も特徴とし得る。その非常に高い溶融粘度から生じる、PTFEの非溶融流動性はそれ自体、ASTM D 1238に準拠して、372℃で、5kgのおもりを用いて測定される0のメルトフローレート(MFR)として現れる。PTFEの高い溶融粘度は、溶融PTFEが、第1の加熱から冷却される際に「重合されたままの」結晶構造を改変する能力を低下させる。結果として、この高い溶融粘度は、PTFEを溶融するために第1の熱(例えば少なくとも75J/g)と比較した際に、第2の熱のために得られるはるかに低い融解熱(例えば最大で55J/g)につながり、これは、少なくとも20J/gの融解熱の差を表す。PTFEの高い溶融粘度により、その標準比重(SSG)を、極めて高い分子量の特性決定として測定することができる。SSG測定手順(米国特許第4,036,802号明細書にも記載されているASTM D 4895)は、SSG試料の寸法の変化なしでその溶融温度を超えて(封入なしで)自立しているSSG試料の焼結を含む。SSG試料は、焼結の際に流動しない。
本発明の方法は、上記のPTFEと区別するためにPTFE微粉末として一般的に知られている低分子量PTFEの分散体を重合するのにも有用である。PTFE微粉末の分子量は、PTFEと比べて低く、すなわち、分子量(Mn)は、一般に、104〜105の範囲である。PTFE微粉末のこのより低い分子量の結果は、PTFE微粉末が、溶融流動性ではないPTFEと対照的に、溶融状態で流動性を有することである。PTFE微粉末は、ASTM D 1238に準拠して、溶融ポリマーに対する5kgのおもりを用いて372℃で測定した際に、少なくとも0.01g/10分、好ましくは少なくとも0.1g/10分、より好ましくは少なくとも5g/10分、さらにより好ましくは少なくとも10g/10分のメルトフローレート(MFR)を特徴とし得る溶融流動性を有する。
低分子量のPTFE微粉末は、ポリマーに溶融流動性を与える一方、PTFE微粉末自体は溶融加工性ではなく、すなわち、PTFE微粉末の溶融物から成形される物品は、極度の脆弱性のために役に立たない。(非溶融流動性PTFEと比べて)その低分子量のため、それは強度を有さない。PTFE微粉末の押出しフィラメントは、非常に脆弱であるため、曲げると破断する。一般に、圧縮成形プラークは、圧縮型から取り外すときに割れるかまたは砕けるため、本発明に使用されるPTFE微粉末の引張り試験または屈曲試験用に作製することができず、それによって、引張り特性もMIT屈曲寿命も試験することができない。実際には、このポリマーは、皆無(0)の引張り強さ、およびゼロサイクルのMIT屈曲寿命を有する。これに対し、例えば、少なくとも1000サイクル、好ましくは少なくとも2000サイクルのMIT屈曲寿命(8ミル(0.21mm)の厚さの圧縮成形膜を用いたASTM D−2176)によって示されるように、PTFEは脆弱ではなく可撓性である。
本発明は、溶融加工性でもある溶融処理性フルオロポリマーの分散体を生成するのに有用である。溶融処理性は、フルオロポリマーが、溶融状態で処理され得る、すなわち、押出し機および射出成形機などの従来の処理装置を用いて溶融物から、フィルム、繊維、およびチューブなどの成形品に加工され得ることを意味する。溶融加工性は、得られる加工物品が、それらの意図される目的に有用であるように十分な強度および靱性を示すことを意味する。この十分な強度は、フルオロポリマー自体が、上述されるように測定される、少なくとも1000サイクル、好ましくは少なくとも2000サイクルのMIT屈曲寿命を示すことを特徴とし得る。フルオロポリマーの強度は、それが脆弱でないことによって示される。以下に記載されるフルオロポリマーは、特に示されない限り、溶融処理性かつ溶融加工性である。
このような溶融処理性フルオロポリマーの例としては、ポリクロロトリフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのホモポリマー、またはテトラフルオロエチレン(TFE)と、コポリマーの融点をPTFEの融点より実質的に低く、例えば、315℃以下の溶融温度に低下させるのに十分な量で通常ポリマー中に存在する少なくとも1つのフッ素化共重合性モノマー(コモノマー)とのコポリマーが挙げられる。別の群の好ましいフッ素プラスチックは、ポリマー鎖が、75重量%を超えるパーフルオロモノマー単位、好ましくはTFE、HFP、およびそれらの混合物、好ましくは少なくとも78重量%のこのような繰返し単位、より好ましくは少なくとも80重量%のこのような繰返し単位、最も好ましくは少なくとも85重量%のこのような単位から構成されるものである。TFEは、好ましいパーフルオロモノマー繰返し単位である。コポリマーのうちの合計100重量%になるまでの残りの繰返し単位は、パーフルオロプラスチックを形成するための上記のC−H含有コモノマーまたはハロカーボンコモノマー、好ましくはパーフルオロオレフィンHFPおよびPAVEから選択され得る。好ましいフッ素プラスチックは、25重量%以下のVF2、より好ましくは、20重量%以下、さらにより好ましくは15重量%以下を含む。
溶融処理性TFEコポリマーは、典型的に、ASTM D−1238に準拠して、溶融ポリマーに対する5kgのおもりおよび特定のコポリマーに標準的な溶融温度を用いて測定した際に0.1〜200g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するコポリマーを提供するために、ある量のコモノマーをコポリマーに組み込む。MFRは、好ましくは1〜100g/10分、最も好ましくは約1〜約50g/10分の範囲である。さらなる溶融加工性フルオロポリマーは、エチレン(E)またはプロピレン(P)と、TFEまたはCTFEとのコポリマー、特にETFEおよびECTFEである。
本発明の実施に使用するための好ましい溶融加工性コポリマーは、少なくとも40〜99モル%のテトラフルオロエチレン単位および1〜60モル%の少なくとも1つの他のモノマーを含む。パーフルオロポリマーを形成するためのTFEとの好ましいコモノマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、および/またはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)(ここで、直鎖状または分枝鎖状アルキル基が1〜5個の炭素原子を含有する)などの3〜8個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィンである。好ましいPAVEモノマーは、アルキル基が1、2、3または4個の炭素原子を含有するものであり、コポリマーは、いくつかのPAVEモノマーを用いて作製され得る。好ましいTFEコポリマーとしては、FEP(TFE/HFPコポリマー)、PFA(TFE/PAVEコポリマー)、TFE/HFP/PAVE(ここで、PAVEが、PEVEおよび/またはPPVEである)、MFA(TFE/PMVE/PAVE(ここで、PAVEのアルキル基が少なくとも2個の炭素原子を有する)およびTHV(TFE/HFP/VF2)が挙げられる。
さらなる有用なポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびフッ化ビニリデンのコポリマーならびにポリフッ化ビニル(PVF)およびフッ化ビニルのコポリマーの皮膜形成ポリマーである。
全てのこれらの溶融処理性フルオロポリマーは、溶融加工性TFEコポリマーについて上に記載されるMFRによって、すなわち、PFAおよびFEPのMFR測定用の可塑度計における溶融ポリマーに対する5kgのおもりを含む、特定のポリマー用の標準条件を用いたASTM 1238の手順によって特性決定され得る。上記のフルオロポリマーの全ては、フルオロエラストマーではなく、上に挙げられるPTFE、改質PTFE、PFAおよびFEPなどのパーフルオロプラスチックを含むフッ素プラスチックである。パーフルオロプラスチックは、末端基、コモノマー、またはポリマー主鎖からの側基を除外できるであろうが、ポリマーの鎖または主鎖を形成する炭素原子上の一価置換基が全てフッ素原子であるポリマーである。好ましくは、末端基、コモノマー、または側基構造は、パーフルオロプラスチックの総重量に対して、2重量%以下のC−H部分、より好ましくは1重量%以下のC−H部分を与える。好ましくは、パーフルオロプラスチックの水素含量は、もしあれば、パーフルオロプラスチックの総重量を基準にして0.2重量%以下である。好ましくは、パーフルオロプラスチックの水素含量は、もしあれば、パーフルオロプラスチックの総重量を基準にして0.2重量%以下である。フッ素プラスチックおよびパーフルオロプラスチックは、ほとんどの場合、結晶性および溶融温度を示すため、それらはフルオロエラストマーではない。好ましいフッ素プラスチックおよびパーフルオロプラスチックは、それらが、ASTM D−4591に準拠して測定した際の少なくとも9J/gmの示差走査熱量測定(DSC)による融解熱を有するかまたは、TFE/PDDコポリマーなど、非結晶質である場合、50℃以上のガラス転移温度を有するほど十分な結晶性を有する。フルオロエラストマーとのさらなる差異は、フッ素プラスチックが、25℃未満のガラス転移温度ならびに低い曲げ弾性率、高い伸び、および架橋された際の、変形からの迅速な回復の組合せというフルオロエラストマーの特性を示さないことである。
本発明は、フッ化炭素エラストマー(フルオロエラストマー)の分散体を生成する場合にも有用である。これらのエラストマーは、典型的に、25℃未満のガラス転移温度を有し、室温でほとんどまたは全く結晶性を示さない。本発明の方法によって作製されるフルオロエラストマーは、典型的に、フルオロエラストマーの総重量を基準にして25〜75重量%の、フッ化ビニリデン(VF2)またはテトラフルオロエチレン(TFE)であり得る第1のフッ素化モノマーの共重合単位を含有するコポリマーである。フルオロエラストマーの残りの単位は、フッ素化モノマー、炭化水素オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、第1のモノマーと異なる1つ以上のさらなる共重合モノマーを含む。本発明の方法によって調製されるフルオロエラストマーは、任意選択的に、1つ以上の硬化部位モノマーの単位も含み得る。存在する場合、共重合された硬化部位モノマーは、典型的に、フッ化炭素エラストマーの総重量を基準にして、0.05〜7重量%のレベルである。好適な硬化部位モノマーの例としては:i)臭素含有、ヨウ素含有、または塩素含有フッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテル;ii)ニトリル基含有フッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテル;iii)パーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニルエーテル);およびiv)非共役ジエンが挙げられる。
好ましいTFE系フルオロエラストマーコポリマーとしては、TFE/PMVE、TFE/PMVE/E、TFE/PおよびTFE/P/VF2が挙げられる。好ましいVF2系フッ化炭素エラストマーコポリマーとしては、VF2/HFP、VF2/HFP/TFE、およびVF2/PMVE/TFEが挙げられる。これらのエラストマーコポリマーのいずれも、硬化部位モノマーの単位をさらに含んでいてもよい。
一実施形態において、本発明の方法によって作製されるフルオロポリマー粒子の分散体の好ましいフルオロポリマーは、PTFE、改質PTFE、少なくとも60〜98重量%のテトラフルオロエチレン単位および2〜40重量%の少なくとも1つの他のモノマーを含む溶融処理性コポリマー、ならびにフッ化ビニリデンおよびテトラフルオロエチレンからなる群から選択される第1のフッ素化モノマーの共重合単位25〜70重量%およびフッ素化モノマー、炭化水素オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、第1のモノマーと異なる1つ以上の共重合モノマーの残りの共重合単位を含むフルオロエラストマーコポリマーからなる群から選択される。
上に開示したフルオロポリマーから、好ましいフルオロポリマーはパーフルオロプラスチックであり、これらは、それらの高分子量およびこの高分子量が得られないようにする水性重合媒体中に存在するテロゲン活性に対する感受性のため、作製するのが最も難しい。これらの高分子量フッ素プラスチックの例はPTFEである。本発明の方法における炭化水素界面活性剤の使用は、高分子量のPTFEが得られないようにすることが予想されるであろう。この予想にもかかわらず、少なくとも1,000,000のMnを有するPTFEが、本発明の方法によって得られる。フルオロ−エラストマーは、架橋によってそれらの寸法完全性(dimensional integrity)を増し、それによって、寸法完全性は、重合方法により、より低い分子量のポリマーが作製される場合、すなわち、水性重合媒体におけるテロゲン活性の存在が、パーフルオロプラスチックなどのフッ素プラスチックよりフルオロエラストマーの作製に対して許容できる場合に十分なものになる。フルオロエラストマー(架橋されていない)は、PTFEの分子量のごく一部であるMnを有する。
重合方法
重合方法は、重合反応器中で行われる。反応器は、内部に水性媒体用の撹拌器を備えており、望ましい反応速度のための、重合反応のキックオフ時およびキックオフ後における遊離基とTFEなどのモノマーとの間で結果的に生じる十分な相互作用ならびに重合反応に用いられる場合のコモノマーの均一な組み込みを提供する。反応温度が制御された温度の熱交換媒体の循環によって好都合に制御され得るように、反応器は、好ましくは、反応器を囲むカバーを含む。水性媒体は、好ましくは脱イオン化脱気水である。同じことが、重合開始剤、不活性化助剤としての金属イオン、および水性重合媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を安定させる界面活性剤を含有する溶液などの、反応器に加えられる任意の溶液中の水に当てはまる。反応器の温度ひいては水性媒体の温度は、25〜120℃、好ましくは40〜120℃、より好ましくは50〜120℃、さらにより好ましくは60〜120℃、最も好ましくは70〜120℃であろう。
操作中、反応器は、フルオロモノマーによって圧力上昇される。反応器の圧力上昇は、フルオロモノマーを反応器に加えることで、反応器内圧を、重合反応が開始するかおよび/または行われる圧力(動作圧力)までまたはそれに近い圧力まで上昇させることである。使用されることになる典型的な動作圧力は、30〜1000psig(0.3〜7.0MPa)、好ましくは1〜800psig(0.1〜5.6MPa)であろう。次に、ラジカル重合開始剤の水溶液が、重合反応をキックオフ、すなわち重合反応を開始させるのに十分な量で反応器中にポンプ注入され得、重合反応の開始の証拠は上述されている。TFEなどとの、重合反応における共重合を目的とする、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの比較的不活性のフルオロモノマーが、より活性のTFEフルオロモノマーによる圧力上昇の前に反応器中に既に存在し得る。キックオフ後、動作圧力において反応器の内圧を維持するために、追加のフルオロモノマーが反応器に供給される。水性媒体は、必要とされる、重合反応速度および存在する場合コモノマーの均一な組み込みを得るように撹拌される。
本発明の好ましい形態によれば、不活性化助剤としての金属イオンの存在は、実際に、炭化水素含有界面活性剤のテロゲン活性を低下させる。本発明の一実施形態において、安定化界面活性剤の添加は、キックオフが起こった後まで遅延される。遅延の量(タイミング)は、使用される界面活性剤および重合されるフルオロモノマーに応じて決まる。炭化水素含有界面活性剤の機能は、重合方法中に形成されるパーフルオロポリマー粒子を安定させることである。本発明の好ましい形態において、水性重合媒体への炭化水素含有界面活性剤の添加は、重合中に形成されるフルオロポリマー粒子の分散体に安定化効果を与えるように表面活性を維持しつつ、そのテロゲン活性を低下させる、重合方法における時間および速度で行われる。
重合が進行するにつれて炭化水素含有界面活性剤が反応器中に供給され、すなわち、計量供給される本発明の好ましい実施形態では、重合反応のキックオフが起こった後まで、水性重合媒体への炭化水素含有界面活性剤の添加の開始が遅延されるのが好ましい。この遅延は、重合に対する界面活性剤のテロゲン効果を低下させるのに有益である。この遅延は、水性媒体への安定化界面活性剤の添加が開始する前に(開始した時点で)水性重合媒体中で形成されるフルオロポリマーの濃度について測定され得、下式によって表され得る:
フルオロポリマーの濃度(重量%)=([A÷(B+A)]×100、
式中、Aが、界面活性剤の添加が開始する前に形成される分散されたフルオロポリマーの重量であり、Bが、安定化界面活性剤の添加が開始した時点での重合反応器中の水の重量である。反応器への(上式における)Bを含む水の添加は、開始剤などの溶解された成分を含んでいてもよい。簡単にするために、水の添加はそれぞれ、溶解された成分の重量を考慮に入れずに、全て水からなるとみなされる。例として、実施例の一般的な重合手順で記載される水のリットル当たり0.5gmの過硫酸アンモニウム開始剤を含有する80mlの溶液は、上記の式中に存在する水の総量の測定において単に80gmの水とみなされる。重合反応においてそれほど早期に凝塊が形成されないため、Aは、界面活性剤の添加が開始する時点までに消費されるフルオロモノマーの量(重量)によって測定され得る。フルオロモノマーが、反応器中の重合方法の(動作)圧力を維持するモノマーである場合、消費されるフルオロモノマーの量は、安定化界面活性剤の添加が開始するまでこの圧力を維持するために反応器に供給される量(補充)である。コモノマーが存在し、その量が、圧力を維持するための補充によって測定されない場合、フルオロポリマー中へのコモノマーの組み込みが均一であると仮定される。次に、生成されるポリマー(A)の量が、反応器に供給された、消費されたフルオロモノマー、例えばTFEを1で除算した値から、フルオロポリマーにおけるコモノマーの重量分率を減算することによって計算され得る。Bは、界面活性剤の添加が開始するまでの反応器への全ての水の添加の重量の合計である。したがって、Bは、反応器に充填される水の初期量の重量、ならびに界面活性剤の添加が開始する時点まで水性媒体中にポンプ注入される、開始剤の溶液の形態などの全ての追加の水の充填量を含む。
水性重合媒体への炭化水素含有安定化界面活性剤の早期の添加が、フルオロポリマー、特にフッ素プラスチック、特にPTFEなどのパーフルオロプラスチックへのフルオロモノマーの重合を過度に阻害することが分かった。したがって、水性重合媒体中のフルオロポリマーの濃度は、界面活性剤の添加が開始する前に、少なくとも0.6重量%、より好ましくは少なくとも0.7、または少なくとも0.8、または少なくとも1重量%に達することが好ましい。さらにより好ましくは、フルオロポリマー濃度は、少なくとも1.2重量%であり、最も好ましくは少なくとも1.6重量%である。FEPおよびPFAなどの溶融処理性パーフルオロプラスチックでは、濃度は、好ましくは少なくとも2重量%であり、PTFEでは、濃度は、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも1.6重量%である。安定化界面活性剤の計量供給の開始の最大遅延は、重合されるフルオロモノマーおよび得られる分散体の固形分について許容可能とみなされる凝塊の重量%に応じて決まる。
重合反応器中の水性重合媒体への、炭化水素含有安定化界面活性剤、好ましくは炭化水素界面活性剤の添加が開始するとき、この添加は、水性重合媒体中のフルオロポリマー粒子の安定した分散体を形成するために表面活性を維持しながら、安定化界面活性剤のテロゲン活性を低下させる速度で水性媒体中に界面活性剤を計量供給することによって行われるのが好ましい。計量供給速度の例は、0.005〜1.4g/l−時、多くの場合0.005〜1.0g/l−時、より多くの場合0.01〜0.8g/l−時である。g/l−時という表記において、gは、界面活性剤自体の重量のグラムであり、lは、反応器の体積のリットルであり、時は、時間の単位である。計量供給速度は、重合反応器において水性媒体に加えられる際に界面活性剤が中に存在する水溶液にではなく、界面活性剤に適用される。界面活性剤の添加の時間増分は、好ましくは少なくとも20分毎、より好ましくは少なくとも10分毎、より好ましくは少なくとも5分毎、および/または最も好ましくは、重合反応中連続している。加えられる界面活性剤の量および添加のそのタイミングは、重合されるフルオロモノマーに応じて決まる。少なすぎる界面活性剤は、凝塊を増加させ、多すぎる界面活性剤は、重合反応を減速させる。これらの計量供給速度のそれぞれは、界面活性剤の添加の開始について上述されるフルオロポリマーの重量%濃度のそれぞれとともに使用され得る。
遅延される添加および計量供給が、本発明に係る方法において水性重合媒体に界面活性剤を加える際の好ましい実施であるが、遅延および計量供給は、フルオロポリマー粒子の分散体に必要とされる安定化効果を与えるように適切であるのが望ましい。重合反応の開始の後に水性重合媒体に安定化界面活性剤を計量供給することによって得られるテロゲン性の低下により、不活性化が重合の際に重合反応器の外で行われるかまたは反応器中で行われるかにかかわらず、安定化界面活性剤の不活性化および安定化界面活性剤に伴う水性重合媒体中の不活性化助剤、好ましくは金属イオンの存在にさらなるかなりの利益が得られるのが好ましい。
上述されるように、安定化界面活性剤の不活性化および酸化反応を触媒し、不活性化を促進する、金属イオンなどの不活性化助剤の好ましい存在によるテロゲン性挙動の低下は、少なくとも10%のSTYの増加を特徴とし得る。好ましくは、STYの増加は、安定化界面活性剤が不活性化されていない以外は同じ重合と比較して、より好ましくは少なくとも20%であり、最も好ましくは少なくとも30%である。以下の実施例の実験2により、300%を超えるSTYの改良が得られる。好ましくは、不活性化助剤、好ましくは金属イオンの属性、および使用される量は、特に上記の定量的生産性の増加によって、テロゲン性挙動を低下させるのに有効であるように選択される。重合の完了時に反応器中に存在する水の総重量を基準にして25ppmもの不活性化助剤としての金属イオンを用いて改良が得られる一方、より少ない量、例えば最大で20ppm、または最大で15ppm、または好ましくは最大で10ppmを用いた場合も優れた結果が得られる。金属イオンの最少量は、そのタイプ、重合条件、および所望の改良結果に応じて決まる。一般に、上記と同じものを基準にして少なくとも0.5ppm、好ましくは少なくとも1ppmの金属イオンが望ましい。金属イオンのこれらの最少量のそれぞれは、金属イオンについての好ましい範囲を配合するための上記の金属イオンの最大量のいずれかとともに使用され得る。全てのこれらの量および範囲は、一般に不活性化助剤、すなわち、安定化界面活性剤の不活性化の結果としての界面活性剤に対するテロゲン性挙動の低下を促進するその該当する部分に適用され得る。
本発明に係る、水性重合媒体中への、金属イオンなどの不活性化助剤の添加およびその存在は、好ましくは制御された活性であり、すなわち、助剤は、水性媒体に測定された量で加えられる。したがって、このような添加および存在は、好ましくは、例えば反応器に加えられるかまたは反応器自体からの不純水の可能性からの重合環境に起因しないか、またはその重合環境によって変化される。
上記の説明から、不活性化助剤、好ましくは金属イオンの好ましい量が、重合反応器中に存在する水と比べて少ないことが明らかである。使用される安定化界面活性剤の量と比べた、不活性化助剤、好ましくは金属イオンの量も、好ましくは少ない。好ましくは、このような量は、全重合反応中に使用される安定化界面活性剤の重量の1.5重量%以下、より好ましくは1.25重量%以下である。不活性化助剤、好ましくは金属イオンのこれらの量が少ないことにもかかわらず、結果は、STYの増加をもたらす、重合方法に対する大きなプラス効果である。
キックオフ時に存在するフルオロモノマーの量および属性は、作製されるフルオロポリマーに応じて決まる。改質PTFEの場合、改質モノマーは、一般に、反応器への事前充填の時点で全て加えられるであろう。同じことが、溶融処理性のフルオロポリマーを形成するためのTFEとの重合に使用されるコモノマーに当てはまり得るが、コモノマーは、重合反応が進行するにつれて加えられ得る。重合が開始してから、所望の反応器圧力を維持するために追加のTFE(およびもしあればコモノマー)が加えられる。分子量制御が必要とされる場合、連鎖移動剤が加えられ得る。重合によっては、追加の重合開始剤が、重合中に加えられ得る。
重合の完了(典型的に数時間)後、所望の量の分散されたフルオロポリマーまたは固形分が得られた場合、供給が停止され、反応器が通気され、反応器中のフルオロポリマー粒子の未処理の分散体が、冷却容器または保持容器に移される。重合の完了は、重合反応のために反応器圧力を維持するのに使用される補充モノマーの量によって定量化される。公知の固形分を与える該当する量に達したとき、モノマー供給の停止および水性媒体の撹拌の中断が、重合反応の完了を示す。上述されるような本発明の一実施形態において、重合方法は、バッチプロセスである。別の実施形態において、重合方法は、連続していてもよい。
本発明の方法によって生成されるフルオロポリマー粒子の分散体の固形分は、好ましくは少なくとも約10重量%、好ましくは16重量%超である。より好ましくは、フルオロポリマー固形分は、少なくとも20重量%である。固形分は、これらのフルオロポリマー粒子および反応器中の水性媒体に加えられる全ての水を合わせた重量を基準にした、水性媒体中に分散されたフルオロポリマー粒子の重量%である。全ての水は、重合反応のキックオフの前に反応器に加えられるあらゆる水を含む、重合方法中に加えられる水の総量である。固形分の計算は以下のとおりである:100×[分散体中のフルオロポリマー粒子の重量÷(フルオロポリマー粒子の重量+水の総重量)]。開始剤溶液などの、水性媒体に加えられる成分の溶液は、固形分の計算において全て水からなるとみなされる。最大で33〜35重量%の固形分が、本発明のいずれかの方法によって得られる。意外にも、実施例8に記載されるように、例えば45重量%および45重量%超のはるかに多い固形分も得られる。最大で60重量%およびさらには最大で65重量%の固形分が得られる。実施例において、固形分は、分散体の固形分%として、または単に固形分%として報告される。
好ましくは、上述されるように金属イオンであり得る不活性化助剤が、分散体を不安定にしない。分散体を不安定にしないことは、重合の完了時の水性媒体中の凝塊が、作製されるフルオロポリマーの総量の5重量%以下であることを特徴とし得る。本発明の好ましい方法において、重合は、3重量%以下、さらにより好ましくは2または1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下の、凝塊として存在するフルオロポリマーを生成する。これらの少ない凝塊含量は、界面活性剤が水性重合媒体にどのように加えられるかおよびいつ加えられるかにかかわらず、不活性化された安定化界面活性剤の安定化有効性から得られる。これらの凝塊含量も、本明細書に開示される固形分のいずれかを指す。最大固形分は、上述されるように形成される凝塊の量を最小限に抑えるように制御されるのが好ましい。水性媒体に加えられる量および時期および方法における、不活性化助剤、好ましくは金属イオンを伴う酸化剤は、フルオロポリマー分散体を不安定にせずに安定化界面活性剤のテロゲン性挙動を低下させるのに好ましくは有効であり、それによって、これらの少ない凝塊量を得ることができる。言い換えると、テロゲン性が不活性化によって低下される一方、不活性化された界面活性剤は、水性媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を安定させるというその界面活性剤の機能を依然として果たす。その水性分散体中のフルオロポリマー粒子の好ましい粒径(Dv(50))は、好ましくは100〜300nmである。
重合方法は、ハロゲン含有界面活性剤、すなわち一価元素と置換される界面活性剤の炭素原子上の置換基としてフッ素または塩素を含有する界面活性剤を実質的に含まない水性媒体中で行われるのが好ましい。典型的に、これらの置換基の少なくとも70%が、ハロゲン原子であろう。ハロゲン置換基がフッ素である場合、界面活性剤は、典型的に、フッ素系界面活性剤と呼ばれる。フルオロポリマー粒子の得られる分散体も、ハロゲン含有界面活性剤を実質的に含まない。フッ素系界面活性剤などのハロゲン含有界面活性剤が存在する場合、その量は少なくすべきであり、すなわち50ppm以下、好ましくは40または30ppm以下、より好ましくは20ppm未満、好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満である。これらのppmは、重合の完了時に反応器中に(加えられて)存在する水の重量を基準にする。開始剤溶液などの、水性媒体に加えられる成分の溶液は、固形分の計算において全て水からなるとみなされる。最も好ましくは、フッ素系界面活性剤を含むハロゲン含有界面活性剤が、重合反応器中の水性媒体に加えられない。
重合されたままの分散体を分散体濃縮操作に移すことができ、分散体濃縮操作は、公知の方法によって非イオン性炭化水素界面活性剤を用いて典型的に安定される濃縮分散体を生成する。重合の完了後に水性媒体中の分散体の濃縮が行われるため、炭化水素界面活性剤が、この目的のために使用され得る。濃縮分散体の固形分は、典型的に、35〜70重量%、より多くの場合45〜65重量%である。実施例8は、水性媒体中の粒子の分散体のフルオロポリマーがポリテトラフルオロエチレンである場合、45重量%以上の固形分が、重合から直接得られ、それによって何らの濃縮工程も必要でないことを開示している。あるいは、成形用樹脂として使用するために、フルオロポリマー樹脂が、通常、凝固によってフルオロポリマー分散体から単離され、水性媒体が除去される。フルオロポリマーは、乾燥されてから、その後の溶融処理操作に使用するために、フレーク、チップまたはペレットなどの好都合な形態へと処理される。特定のグレードのPTFE分散体が、微粉末の生成のために作製される。この使用のために、分散体は凝固され、水性媒体は除去され、PTFEは乾燥されて、微粉末が生成される。
重合核形成部位
好ましい実施形態は、重合方法の結果として水性媒体中にその分散体を形成するフルオロポリマー粒子のサイズを減少させるために、重合方法のキックオフ(開始)の前に、水性媒体中に重合核形成部位を提供することである。これらの核形成部位は、フルオロポリマーの沈殿のための部位となり、部位の数は、このような部位が存在しない場合より多く、これにより、所与の固形分パーセントについてのより小さいフルオロポリマー粒径が得られる。この沈殿後、フルオロポリマーのその後の沈殿が、好ましくは同じ部位で行われ、重合反応の完了までポリマー粒子を成長させる。
これらの重合部位を形成する一方法は、重合反応のキックオフの前に水性重合媒体中に存在する既に重合された粒子から開始することである。これらの既に重合された粒子は、ポリマーシード(polymer seed)と呼ばれることが多い。シードは、界面活性剤の存在下でのフルオロモノマーのラジカル開始重合によって形成されてもよく、それによって、ポリマーシードは、それらが中に形成される水性媒体中に分散されたままになる。ポリマーシードの分散体が既に存在する水性媒体中の重合反応のその後のキックオフは、新たなフルオロモノマー、および新たな重合開始剤を反応器に加えて、キックオフおよびその後の重合を引き起こす工程を含む。
ポリマーシードを水性媒体中に分散させるのに使用される界面活性剤は、最小のテロゲン活性を有するかないしはテロゲン活性を有さない、フッ素系界面活性剤などのハロゲン含有界面活性剤であり得、それによって、その後のキックオフおよびフルオロポリマーを形成する重合反応を阻害しない。このハロゲン含有界面活性剤は、ポリマーシードの重合中のその使用により存在し得る。フッ素系界面活性剤の例は、米国特許第3,391,099号明細書に開示されるように、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、ω−ヒドロヘキサデカフルオロノナン酸アンモニウム、および3,6ジオキサ−2,5−ジ(トリフルオロメチル)ウンデカフルオロノナン酸アンモニウムである。好適なフルオロエーテル界面活性剤の例は、Garrisonに付与された米国特許第3,271,341号明細書;Hintzer et al.への米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、同第2007/0015865号明細書、および同第2007/0015866号明細書;丸谷ら(Maruya et al.)への米国特許出願公開第2005/0090613号明細書および守田ら(Morita et al.)への同第2006/0281946号明細書;樋口ら(Higuchi et al.)へのPCT特許公報の国際公開第2007046345号パンフレット、船木ら(Funaki et al.)への同第2007046377号パンフレット、星川ら(Hoshikawa et al.)への同第2007046482号パンフレット、および松岡ら(Matsuoka et al.)への同第2007/049517号パンフレットに記載されている。さらなるフッ素系界面活性剤は、Brothers et al.に付与された米国特許第7,705,074号明細書に開示されており、これは、少なくとも800g/モルの数平均分子量を有するフルオロポリエーテルと、下式で表される短鎖フッ素系界面活性剤との組合せである。
[R1−On−L−A−]Y+ (I)
式中:
R1が、エーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化された脂肪族基であり;
nが、0または1であり;
Lが、非フッ素化、部分フッ素化または完全フッ素化されていてもよく、エーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状アルキレンであり;
A−が、カルボキシレート、スルホネート、スルホンアミドアニオン、およびホスホネートからなる群から選択されるアニオン性基であり;
Y+が、水素、アンモニウムまたはアルカリ金属カチオンであり;
ただし、R1−On−L−の鎖長が、6個以下の原子である。
本出願に使用される際の「鎖長」は、本発明の方法に用いられるフッ素系界面活性剤の疎水性尾部における最長の直鎖中の原子の数を指す。鎖長は、界面活性剤の疎水性尾部の鎖中の炭素に加えて酸素原子などの原子を含むが、最長直鎖の分枝を含まず、またはアニオン性基の原子を含まず、例えば、カルボキシレート中の炭素を含まない。本出願に使用される際の「短鎖」は、6以下の鎖長を指す。「長鎖」は、6を超える鎖長を指し、例えば、7〜14個の原子の鎖長を有するフッ素系界面活性剤である。
好ましくは、R1−On−L−の鎖長は、3〜6個の原子である。本発明の好ましい一形態によれば、R1−On−L−の鎖長は、4〜6個の原子である。本発明の別の好ましい形態によれば、R1−On−L−の鎖長は、3〜5個の原子である。最も好ましくは、R1−On−L−の鎖長は、4〜5個の原子である。
好ましい短鎖界面活性剤は、式C3F7O−CF(CF3)−COOHで表されるヘキサフルオロプロピレンエポキシドの二量体酸である。
パーフルオロポリエーテル(PFPE)酸またはその塩は、分子の主鎖中の酸素原子が、1〜3個の炭素原子を有する飽和フッ化炭素基によって隔てられる任意の鎖構造を有し得る。2種以上のフッ化炭素基が、分子中に存在し得る。代表的な構造は、下式に表される繰り返し単位を有する:
(−CFCF3−CF2−O−)n (VII)
(−CF2−CF2−CF2−O−)n (VIII)
(−CF2−CF2−O−)n−(−CF2−O−)m (IX)
(−CF2−CFCF3−O−)n−(−CF2−O−)m (X)
これらの構造は、Kasaiによって、J.Appl.Polymer Sci.57,797(1995)に記載されている。この文献に開示されているように、このようなPFPEが、1つの末端または両方の末端にカルボン酸基またはその塩を有し得る。同様に、このようなPFPEは、1つの末端または両方の末端にスルホン酸またはホスホン酸基またはその塩を有し得る。さらに、両方の末端に酸官能基を有するPFPEは、各末端に異なる基を有し得る。単官能性のPFPEについては、分子の他方の末端は、通常、過フッ素化されているが、水素または塩素原子を含有し得る。本発明に使用するための1つの末端または両方の末端に酸基を有するPFPEは、少なくとも2つのエーテル酸素、好ましくは少なくとも4つのエーテル酸素、さらにより好ましくは少なくとも6つのエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも1つ、より好ましくは、このようなフッ化炭素基の少なくとも2つは、2または3個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも50%は、2または3個の炭素原子を有する。また、好ましくは、PFPEは、合計で少なくとも15個の炭素原子を有し、例えば、上記の繰り返し単位構造中のnまたはn+mの好ましい最小値は、少なくとも5である。1つの末端または両方の末端に酸基を有する2つ以上のPFPEが、本発明に係る方法に使用され得る。典型的に、1つの特定のPFPE化合物を製造するのに特別な配慮が用いられない限り、PFPEは、平均分子量の分子量範囲内で可変の割合で複数の化合物を含有し得る。フルオロポリエーテル酸または塩の数平均分子量は、好ましくは、6000g/モル未満の数平均分子量を有する。
シードポリマーの粒径が小さい(例えば1〜50nm)ため、ごく少量の、フッ素系界面活性剤などのハロゲン含有界面活性剤が、通常、その後の重合反応のキックオフまで分散体としてポリマーシードを維持するのに必要である。この少量は、ハロゲン含有界面活性剤を実質的に含まない水性重合媒体に関して上述される量と同じであり得る。これは、フルオロポリマー粒子の分散体を形成するための重合の完了後の水性重合媒体からのハロゲン含有界面活性剤の除去または回収が、必要でなくてもよく、または、必要に応じて、最小限にされ得ることを意味する。
重合部位としてポリマーを提供する別の例は、米国特許出願公開第2010/0160490号明細書(Leffew et al.)に開示されており、この文献において、重合部位は、フッ素化イオノマーの粒子である。
好ましくは、重合部位は、重合のキックオフの前に水性媒体中で形成される親油性核形成部位によって提供される。これらの親油性核形成部位は、水性媒体中に分散され、これらの部位におけるフルオロポリマーの沈殿を微細に分散させることが可能であり、それによって、炭化水素安定化界面活性剤の計量供給が、重合結果に不利益を与えずに遅延され得る。親油性核形成部位は、重合のキックオフ前に、疎水性部分および親水性部分を含む、水溶性炭化水素含有化合物、好ましくは炭化水素含有界面活性剤、および分解剤、好ましくは酸化剤を、水性媒体に少量加えることによって形成されるのが好ましい。分解剤、好ましくは酸化剤により、炭化水素含有化合物が、親水性部分を分解する反応に供され、それによって、化合物の疎水性部分が親油性核形成部位になることができる。したがって、親油性核形成部位は、水溶性有機化合物の親油性部分を含み、水溶性有機化合物は、典型的に界面活性剤であり、親油性部分および親水性部分を含み、後者は上述されるように分解されて、それらの親油性の性質を示す部位が得られる。水性媒体中に分散されるこれらの親油性核形成部位は、ポリマーシードではない。したがって、形成されるこれらの部位は、好ましくは重合フルオロモノマーを含まない。
炭化水素含有化合物、好ましくは炭化水素含有界面活性剤の親水性部分の好ましい酸化分解により、化合物の親水性および任意の界面活性剤効果が失われる。これにより、重合反応のその後のキックオフが、炭化水素含有界面活性剤(および炭化水素界面活性剤)を実質的に含まずに行われる条件が得られる。したがって、親油性核形成部位の分散体も、炭化水素含有界面活性剤(および炭化水素界面活性剤)を実質的に含まない。重合反応のその後のキックオフまで分散体としての親油性核形成部位を維持するのに界面活性剤は必要でない。
しかしながら、重合反応のキックオフに悪影響を与えない限り、少量の炭化水素含有界面活性剤が、親油性核形成部位の分散体とともに存在し得る。許容できる量は、界面活性剤に応じて決まる。
親油性核形成部位の分散体およびこの分散体を含有する水性媒体が、炭化水素界面活性剤などの炭化水素含有界面活性剤を実質的に含まないのに加えて、この分散体および水性媒体はまた、ハロゲン含有界面活性剤を実質的に含まない、すなわち、上記の全ての界面活性剤を実質的に含まないのが好ましい。
炭化水素含有安定化界面活性剤、特に炭化水素安定化界面活性剤の使用とともに、重合キックオフの前の分解または酸化反応に親油性核形成部位の前駆体としての炭化水素含有界面活性剤、特に炭化水素界面活性剤を使用することにより、核形成部位の生成および結果として得られるフルオロポリマー粒子分散体の安定化のために、水性重合媒体中のハロゲンを含まない系が得られる。
分散されるこれらの部位を維持するための界面活性剤の補助を用いない親油性核形成部位の分散体の存在は予想されない。しかしながら、どのようにこれらの部位が形成されるかによって、この相反する状態を得ることができる。親油性核形成部位の分散体は、好ましくは、化合物に水溶性を与える親水性部分および疎水性部分を含む水溶性炭化水素含有化合物、好ましくは炭化水素含有界面活性剤を分解、好ましくは酸化することによって形成される。したがって、これらの部位は、分解反応、好ましくは酸化反応の生成物である。このような分解の前、化合物の親水性部分は、疎水性部分を親水性で覆い、それによって、化合物は水溶性になることができる。化合物の親水性、すなわち化合物の親水性部分の分解は、炭化水素含有化合物の疎水性部分が十分に分散された親油性核形成部位になるのを可能にするのに有効である。したがって、これらの部位は、炭化水素を含有するため、炭化水素含有核形成部位とも呼ばれ得る。炭化水素化合物または界面活性剤が、核形成部位の前駆体である場合、それらは炭化水素核形成部位である。これらの部位は、重合方法のキックオフ時に形成されるフルオロポリマーとしてのフルオロモノマーの沈殿に利用しやすく、それに対する親和性を有する。この親和性は、フルオロポリマーを沈殿させるための核形成部位の引力である。核形成部位の好ましい前駆体は、炭化水素界面活性剤であり、好ましい核形成部位は、炭化水素核形成部位である。
核形成部位が化合物の親水性の分解の際に凝集しないことは、親油性核形成部位が、水性媒体に溶解可能な有機化合物(界面活性剤)から誘導される結果である。溶解される炭化水素含有界面活性剤の分布は、水性媒体中の分子基盤による。界面活性剤から得られる親油性核形成部位は、この同じ分布を有し、それによって、親油性核形成部位の分散体を維持するのに界面活性剤が必要なくなる。
親油性核形成部位の分散体の前駆体として好ましくは使用される炭化水素含有界面活性剤または炭化水素界面活性剤と炭化水素含有安定化界面活性剤を区別するために、前駆体界面活性剤は、核形成界面活性剤と呼ばれ得る。
核形成部位の性能は、これらの核形成部位が存在しない状態で重合反応を行うのと比較して、フルオロポリマー粒子の小さい粒径によって主に判定される。この性能は、重合キックオフの時点で核形成部位の分散体の存在を示す。
親油性核形成部位の分散体のキックオフ前(pre−kick off)条件および炭化水素含有界面活性剤および好ましくは分散体からの任意の他の界面活性剤を実質的に含まない水性重合媒体を得るために、例えば50ppm以下といった、好ましくはごく少量(重量)の、核形成界面活性剤としての炭化水素含有界面活性剤が、核形成部位前駆体として使用される。親油性核形成部位の分散体の形成に関して本明細書に開示される全てのppm量は、この事象の時点で存在する水の量を指す。核形成界面活性剤溶液などの、水性媒体に加えられる成分の溶液は、ppmの計算において全て水からなるとみなされる。親油性核形成部位の形成時に存在する水の量は、重合をキックオフさせるために加えられる重合開始剤、キックオフ後に形成されるフルオロポリマー粒子を安定させるのに使用される不活性化された炭化水素含有安定化界面活性剤、および不活性化助剤の水溶液の形態などの、後で追加される水を含まない。少量の核形成界面活性剤と、その親水性の酸化分解との組合せにより、テロゲン性が低下または消失される。
親油性核形成部位を形成するために水性媒体に加えられる少量の核形成界面活性剤は、好ましくは40ppm以下、さらにより好ましくは30ppm以下、最も好ましくは20ppm以下であり、これらは全て、前の段落に記載されるような核形成部位の形成時に存在する水性媒体中の水の重量を基準にする。水性媒体中に存在する親油性の核形成部位のppm量は、親水性部分を分解する分解または酸化反応によって水性媒体に加えられることが本明細書に開示されるppm量より少ないであろう。したがって、核形成部位の量は、上述されるように、それぞれ、50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満の量であろう。核形成部位が分子として存在すると考えられるため、ごく少量の炭化水素含有化合物、好ましくは核形成界面活性剤が、大量の親油性核形成部位を生成することができる。したがって、1ppmほどのこのような化合物または界面活性剤を水性媒体に加えることで、有益な効果を与えることができる。上記の量は、核形成界面活性剤としてのおよび酸化反応における前駆体としての炭化水素含有界面活性剤および炭化水素界面活性剤の使用ならびに得られる炭化水素含有および炭化水素親油性核形成部位にも同様に当てはまる。核形成界面活性剤は、個々にまたは組み合わせて使用され得る。
親油性核形成部位の分散体の形成の前駆体として使用される核形成界面活性剤は、炭化水素含有安定化界面活性剤に関して上に開示される界面活性剤のいずれかであり得る。さらなる炭化水素含有界面活性剤には、米国特許第7,897,682号明細書(Brothers et al.)および同第7,977,438号明細書(Brothers et al.)に開示されるものなどのシロキサン界面活性剤を含む、非イオン性およびカチオン性界面活性剤が含まれる。
好ましい核形成界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、特に非イオン性炭化水素界面活性剤である。したがって、上記の核形成部位形成工程が使用される本発明の方法において、核形成界面活性剤は、好ましくは非イオン性炭化水素界面活性剤であり、炭化水素安定化界面活性剤は、好ましくはアニオン性である。核形成界面活性剤はまた、好ましくは芳香族部分を含まない。
非イオン性炭化水素核形成界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、グリセロールエステル、それらの誘導体などが挙げられる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの例は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどであり;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの例は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどであり;ポリオキシエチレンアルキルエステルの例は、ポリエチレングリコールモノラウリレート(polyethylene glycol monolaurylate)、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレートなどであり;ソルビタンアルキルエステルの例は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート(polyoxyethylene sorbitan monolaurylate)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどであり;ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルの例は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどであり;グリセロールエステルの例は、モノミリスチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロールなどである。また、それらの誘導体の例は、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニル−ホルムアルデヒド凝縮物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェートなどである。特に好ましいのは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルエステルである。このようなエーテルおよびエステルの例は、10〜18のHLB値を有するものである。より具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO:5〜20。EOは、エチレンオキシド単位を表す)、ポリエチレングリコールモノステアレート(EO:10〜55)およびポリエチレングリコールモノオレエート(EO:6〜10)がある。
好適な非イオン性炭化水素核形成界面活性剤としては、Dow Chemical Companyによって供給されるTriton(登録商標)Xシリーズなどのオクチルフェノールエトキシレートが挙げられる:
好ましい非イオン性炭化水素核形成界面活性剤は、Dow Chemical Companyによって供給されるTergitol(登録商標)15−Sシリーズなどの分枝鎖状アルコールエトキシレートおよびやはりDow Chemical Companyによって供給されるTergitol(登録商標)TMNシリーズなどの分枝鎖状第2級アルコールエトキシレートである:
Dow Chemical Companyによって供給されるTergitol(登録商標)Lシリーズ界面活性剤などのエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーも、本発明の非イオン性核形成界面活性剤として有用である。
さらに別の有用な群の好適な非イオン性炭化水素核形成界面活性剤は、以下のものなどの、BASFからPluronic(登録商標)Rシリーズとして供給される二官能基ブロックコポリマーである:
別の群の好適な非イオン性炭化水素核形成界面活性剤は、BASF CorporationからIconol(登録商標)TDAシリーズとして供給されるトリデシルアルコールアルコキシレートである。
カチオン性界面活性剤は、核形成界面活性剤としても使用され得る。典型的なカチオン性界面活性剤は、アルキル化臭化アンモニウムなどのアルキル化ハロゲン化アンモニウムなどの正に帯電した親水性部分、および長鎖脂肪酸などの疎水性部分を有する。アニオン性界面活性剤は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、または硫酸塩などの負に帯電した親水性部分および疎水性部分としての、アルキルなどの長鎖炭化水素部分を有する。
使用され得る別の群の核形成界面活性剤は、炭化水素含有シロキサン界面活性剤、好ましくは炭化水素界面活性剤であり、ここで、上記のヒドロカルビル基は、フッ素などのハロゲンによって置換され得る場合に、水素原子によって完全に置換され、それによって、これらのシロキサン界面活性剤は、炭化水素界面活性剤とみなすこともでき、すなわち、ヒドロカルビル基上の一価置換基は水素である。核形成界面活性剤として好ましいのは、非イオン性部分を有する炭化水素シロキサン、すなわち、非イオン性炭化水素(シロキサン)界面活性剤である。
親油性核形成部位を形成するための好ましい実施形態において、炭化水素含有化合物、好ましくは核形成界面活性剤のための酸化剤として使用される分解剤は、フルオロモノマーの重合にも有用である水溶性重合開始剤であるのが好ましい。このような重合開始剤は、適切な量で使用される場合にフルオロモノマーの重合に有害であることは知られておらず、それによって、炭化水素含有化合物または核形成界面活性剤の酸化を引き起こすための水性媒体中へのそれらの導入は、その後の重合反応にいかなる問題も引き起こさないはずである。さらに、分解剤として使用される開始剤の量は好ましくは少ないが、親油性核形成部位の分散体を形成するために核形成界面活性剤の所望の酸化をもたらすのになお有効である。水性重合媒体に加えられる開始剤の量は、その後の重合反応のキックオフを引き起こすのに不十分であるのが好ましい。親油性核形成部位の分散体を形成するための核形成界面活性剤の酸化の後に水性媒体中に残っている開始剤の量はまた、重合反応のキックオフを引き起こすのに不十分であるのが好ましい。これにより、フルオロモノマーによる重合反応器の初期の圧力上昇中に重合が起こるのが避けられ、その後、追加の水溶性ラジカル重合が水性媒体に加えられるときに重合反応のキックオフが起こる。
さらなるラジカル重合開始剤が、重合反応をキックオフさせるために圧力上昇反応器中の水性媒体に加えられる。親油性核形成部位が用いられる場合、これは、水性重合媒体への重合開始剤の第2の添加になるであろう。
親油性の核形成工程における分解剤として使用され得る重合開始剤の例は、所望の親油性核形成部位を形成するために重合反応器中で得られる水性媒体の温度で核形成界面活性剤を高速で酸化するものである。界面活性剤を実質的に含まない水性媒体中にこの時点で存在する得られる親油性核形成部位が、分散体として重合反応に利用可能であり得るように高速反応が必要とされる。この目的のために好ましい開始剤は、無機過酸などの無機開始剤の高活性の水溶性塩である。好ましい開始剤は、過硫酸塩、例えば、過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムである。好ましい過硫酸塩開始剤は、金属イオンを実質的に含まず、最も好ましくはアンモニウム塩である。本発明の実施に有用なさらなる開始剤は、アゾアミジン化合物などの水溶性有機アゾ化合物である。
水性媒体に加えられる、分解剤、好ましくは重合開始剤の量は、酸化部分、好ましくはペルオキシ−O−O−基を含む使用される開始剤の分子量に応じて決まる。核形成部位形成工程に使用される過度に多い分解剤、好ましくは開始剤は、キックオフまで反応器を圧力上昇させるフルオロモノマーの未成熟重合とともに核形成部位の不安定化を引き起こし、より大きいフルオロポリマー粒子が、重合工程において形成され得る。分解剤、好ましくは開始剤の量は、動作圧力に達する前に重合反応をキックオフさせるのに必要な量より少ないのが好ましく、好ましくは50ppm以下、より好ましくは40ppm以下、より好ましくは30ppm以下、さらにより好ましくは20ppm以下、最も好ましくは15ppm以下、または10ppm以下、または5ppm以下であり、これらは全て、核形成部位形成工程の時点での反応器中の水の重量を基準にする。水性媒体に加えられる分解剤、好ましくは開始剤の最少量は、1ppmほどであり得る。核形成界面活性剤溶液などの、水性媒体に加えられる成分の溶液は、ppmの計算において全て水からなるとみなされる。核形成部位の分散体の形成後に水性媒体中に存在する分解剤、好ましくは開始剤のppm量は、水溶性炭化水素含有化合物の分解を引き起こす酸化反応によって水性媒体に加えられることが本明細書に開示されるppm量より少ない。
重合部位を形成する好ましい実施形態では、親油性核形成部位は、炭化水素含有または炭化水素親油性核形成部位のいずれかであり、これらは、疎水性部分および親水性部分をそれぞれが含む、核形成界面活性剤としての界面活性剤、または炭化水素界面活性剤であるのが好ましい炭化水素含有化合物を水性重合媒体に加え、化合物または界面活性剤を、水性媒体中での分解、好ましくは酸化にかけて、親水性部分を分解し、それによって、親水性部分が、炭化水素含有、好ましくは炭化水素親油性核形成部位の分散体を形成するのを可能にすることによって作製される。本発明の好ましい重合方法にしたがって、この核形成部位形成工程は、重合反応のキックオフの前に行われる。
好ましくは、水性媒体に加えられる核形成界面活性剤の量は50ppm以下であり、このような量は、その後の重合反応に悪影響を与えないように選択される、上記のより少ない量のいずれかであり得る。
好ましくは、核形成界面活性剤のこの分解は、分解剤を水性媒体に加え、分解剤を水性媒体中の核形成界面活性剤と反応させることによって行われ、分解剤の量は、フルオロモノマーの重合のキックオフを引き起こすのに不十分な量である。好ましくは、分解剤は、ラジカル重合開始剤であり、分解剤または開始剤の量は50ppm以下である。
好ましくは、上記の親油性核形成部位の分散体の形成には、核形成界面活性剤を分解にかける前に水溶性無機塩を水性媒体に加える追加の工程が伴う。分解の時点で、水溶性無機塩も、水性媒体中に存在して、親油性核形成部位の分散体の形成に役立つ。
水溶性無機塩の効果は、(a)親油性核形成部位の数を増加させ、それによって、より小さいフルオロポリマー粒子が得られることおよび/または(b)核形成界面活性剤から形成される親油性核形成部位の量を、所与の粒径のために減少させることができることである。(a)に関して、フルオロポリマー粒径のこの減少は、分解反応中に存在する所与の少量の核形成界面活性剤に関する。(b)に関して、これにより、より少量の核形成界面活性剤が酸化反応中に存在することが可能になり、それによって、酸化反応の生成物がその後の重合反応においてテロゲン性になる可能性が低下する。水溶液中の塩に由来するイオンの存在により、有益な効果が得られる。
核形成部位形成プロセスを補助するように働き得る水溶性無機塩の例としては、NaおよびKまたはNH4+から選択されるアルカリ金属カチオンおよび−SO3 −、−HSO3 −、−NO3 −、−CL−、−CO3 −、−B4O7 −、および−HPO4 −から選択されるアニオンを含有するものが挙げられる。重合によって作製されるフルオロポリマーが溶融押出しによって加工される場合、塩は、好ましくはアンモニウム塩である。
塩は、上記の有益な効果(a)または(b)を与えるのに有効なように選択され、分解剤、好ましくは開始剤を非活性化せず、それによって、分解反応が起こるのを防ぎ、開始剤が核形成界面活性剤と反応するのを防ぐために開始剤と反応せず、結果として生じる重合を阻害しない。これにより、塩が使用されない場合より少量の核形成界面活性剤を、親油性核形成部位を形成するのに使用することができる。これは、最も高い分子量のフルオロポリマー、PTFEを作製するための重合方法において特に重要である。塩は、還元剤であってもよいが、必ずしもそうであるわけではない。水溶性無機塩の存在下における、水溶性炭化水素含有化合物、好ましくは核形成界面活性剤と、分解剤、好ましくは開始剤との間の酸化反応の実行は、塩が酸化/還元反応などの何らかの変換を起こす可能性も含む。水性媒体中の塩のイオン化は、核形成部位の形成に対する良い影響を与えることが明らかである。しかしながら、塩の量が多すぎる場合、結果はマイナスになり得、すなわち、核形成部位の数が減少され、フルオロポリマー粒径が増大される。水性媒体に加えられるこの水溶性無機塩の量は、有益な結果を得るのに有効な量である。この量はまた、親油性核形成部位の性能またはその後の重合反応に悪影響を与えないように少ない。良い影響から悪影響へのこの移行がいつ起こるかは主に使用される塩の量に左右されるが、一般にこの移行は、核形成部位を形成する時点での反応器中の水の重量を基準にして125ppmを超える塩で起こる。
一般に、核形成部位形成プロセスに利益を与え、核形成部位形成プロセスまたはフルオロモノマーのその後の重合に有害でないために、酸化反応の時点で水性媒体中に存在する水溶性無機塩の量は、好ましくは100ppm以下、好ましくは75ppm以下、さらにより好ましくは50ppm以下、最も好ましくは25ppm以下、好ましくは少なくとも1ppmである。核形成界面活性剤溶液などの、水性媒体に加えられる成分の溶液は、ppmの計算において全て水からなるとみなされる。
重合キックオフの前に実施される親油性核形成部位形成プロセスにおいて、上述される、水溶性炭化水素含有化合物、好ましくは核形成界面活性剤、水溶性無機塩、および分解剤、好ましくは開始剤のこれらの量のそれぞれは、記載される量の任意の組合せで使用され得る。
少なくとも、核形成部位形成工程の開始および親油性核形成部位の分散体の同時形成の時点で、反応性フルオロモノマーが反応器中に実質的に全く存在しないことも好ましく、すなわち、これらの部位の形成が、分解剤として使用される少量の開始剤と優先的に反応し得るフルオロモノマーの非存在下で行われるのが好ましい。
親油性核形成部位の分散体を形成するための典型的なプロセスにおいて、反応器には、脱イオン化脱気水が充填される。親油性核形成部位は、水溶性炭化水素含有化合物、好ましくは核形成界面活性剤を必要な少量で水性充填物(aqueous charge)に加えることによって、反応器に充填されるこの水性媒体中でその場で好都合に形成され得る。好ましくは、水溶性無機塩も、この水性充填物に加えられ、これらの2種の化合物は互いに混合される。核形成界面活性剤は、反応器においておよび水溶性塩の存在下で、水性媒体中の炭化水素含有化合物、好ましくは核形成界面活性剤を分解することによって、親油性核形成部位に好都合に転化され得る。分解剤は、好都合には、水性媒体に加えられる少量の水溶性重合開始剤であり得る。水性媒体の温度は、酸化反応を引き起こすのに有効な温度であり、一般に、25〜120℃、好ましくは40〜120℃、より好ましくは50〜120℃、さらにより好ましくは60〜120℃、最も好ましくは70〜120℃であり、同じ温度は、その後の重合が行われるのと同じかまたは同様の温度であり得る。使用される温度は、主に、後の重合工程に望ましい温度に応じて決まり、後の重合工程では、温度はまた、分解剤または開始剤が、炭化水素含有化合物、好ましくは核形成界面活性剤に対して酸化的に反応性になるのに十分に高い。酸化反応は、炭化水素含有化合物または核形成界面活性剤の親水性部分を分解して、酸化された化合物の残基を親油性核形成部位にすることが可能なほど十分に行われるのが好ましい。親油性核形成部位は、親油性であるが、水性媒体中で見えない。核形成部位の分散体の形成は、酸化反応の開始とともに開始する。反応器に加えられるフルオロモノマーによって反応器の圧力が上昇して、キックオフに必要な反応器圧力が得られると、この反応が継続し得ると考えられる。その後、重合されるフルオロモノマーによる反応器の圧力上昇、続いて、好ましくは炭化水素含有界面活性剤の実質的な非存在下における、開始剤によって開始される重合反応のキックオフ、および炭化水素含有安定化界面活性剤の遅延された添加、および上述されるように重合反応器中または反応器の外で不活性化される安定化界面活性剤の添加を含む、本発明の方法の重合工程が行われる。
安定化界面活性剤のテロゲン性挙動を低下させるために安定化界面活性剤と酸化剤との間の不活性化反応を触媒するために加えられる、金属イオンなどの不活性化助剤は、親油性核形成部位の形成に使用される塩と異なる。この塩は、親油性核形成部位形成に良い影響を与える。不活性化助剤としての金属イオンを含有する塩は、バッチの開始の時点で水に加えられる場合、核形成部位形成に悪影響を与え、それによって、水性媒体へのこの不活性化助剤、好ましくは金属イオンの添加が、少なくとも親油性核形成部位の形成の開始後まで、より好ましくは重合反応の開始後まで遅延されるのが好ましい。核形成部位がシード重合によって形成される場合、同じ措置が好ましい。
メルトフローレート(MFR)を、ASTM D 1228の手順ならびに特定のポリマーについてのASTM手順に示されるようなポリマーの標準である、溶融温度および通常5kgの可塑度計ピストン重量条件を用いて測定する。
溶融温度を、ASTM D 4591の手順にしたがって示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter)(DSC)によって測定する。ASTM D−4591−87にしたがって、PTFE DSC溶融温度が、ポリマーが加熱されて溶融温度を初めて超えたときに得られる(第1の熱とも呼ばれる)。報告される溶融温度は、第1の溶融における吸熱のピーク温度である。
本明細書におけるppmの定義(計算)は、成分の重量を、濃度(ppm)が測定されるときの事象の時点で反応器中に存在する水の重量で除算した値になる。重合反応器への事前充填組成物中の、核形成界面活性剤、もしあれば塩、および開始剤のppmは、核形成界面活性剤、存在する場合は塩、および開始剤成分のそれぞれを含有する反応器に最初に充填される水および充填される任意の追加の水の重量を基準にする。したがって、親油性核形成部位を形成する時点で反応器中に存在する水の量は、核形成界面活性剤、もしあれば塩、および開始剤のppmが測定される基準になる水の重量である。この量は、重合反応のキックオフまたは水性媒体への安定化界面活性剤の添加を提供するために水性媒体に加えられる開始剤用の溶媒として加えられる水を含まないであろう。加えられる水のこの量は、重合キックオフの時点で水性媒体中に存在する任意の界面活性剤のppm計算に含まれるであろう。簡単にするために、反応器に加えられる水が、核形成界面活性剤、塩、重合開始剤などの溶解された成分を含有する場合、得られる溶液は、ppm計算のために全て水からなるとみなされる。ppmのこの測定方法に対して表される例外は、実施例8に記載されるように、重合反応の完了時に分散体中に存在するフルオロポリマー粒子の総量を基準にした安定化界面活性剤の濃度の測定である。
本明細書における「〜以下」などの数量の開示は、同じ数量が特定の量以下であると示されているのと同じ意味を有する。したがって、50ppm以下(no greater than)は、50ppm以下(or less)と同じ意味を有する。同様に、本明細書における「少なくとも」などの数量の開示は、同じ数量が特定の量以上であると示されているのと同じ意味を有する。したがって、少なくとも45重量%は、45重量%以上と同じ意味を有する。
本明細書に開示される反応器圧力は、特にゲージ圧(psig)であると示されない限り、絶対圧力である。psigゲージ圧に対応するように開示されるMPaおよびKPa圧力は絶対圧力である。
実施例に使用される一般的な重合手順は、特に示されない限り以下のとおりである:
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼反応器に、5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。反応器に、0.085gmのPluronic(登録商標)31R1、および0.4gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器を密閉し、真空下に置く。反応器圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回真空にする。撹拌器速度を65RPMに設定し、反応器を90℃まで加熱する。水のリットル当たり0.5gmの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を含有する80mlの溶液を反応器に加え、6.9ppmの、反応器にこれまでに加えられる水中のAPS濃度を得る。この段階で、Pluronic(登録商標)31R1の濃度は14.7ppmであり、亜硫酸ナトリウムの濃度は6.9ppmである。これは、親油性核形成部位が重合反応のキックオフの前に形成される反応の段階である。上記の水性媒体に加えられる成分のppmは、この時点までに反応器中に存在する水の総量を基準にする。成分の溶液は、このppm計算において全て水からなるとみなされる。
次に、TFEを反応器に充填して、反応器圧力を400psig(2.86MPa)にする。11.67gm(70%活性)のジコハク酸ペルオキシド、0.17gmの過硫酸アンモニウムおよび488.3gmの脱イオン水から構成される150mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填する。重合反応のキックオフは、開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力からの10psi(69kPa)の降下の後起こったとみなされる。反応器圧力を、補充TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、補充TFEの連続添加によって、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。キックオフしてから、水性媒体中の1.68重量%のPTFE濃度に相当する100gmのTFEを供給した後、金属イオンを含むかまたは含まない界面活性剤溶液を、実行の終了まで、すなわち、反応器への補充TFEの添加を停止するまで4ml/分(0.288g/l−時の金属イオン)の速度で反応器にポンプ注入する。規定の量の補充TFEを反応器に加えた後、撹拌器を停止し、これにより、重合反応の完了を確定する。反応器の通気(未反応TFEの除去)後、ポリマー分散体を排出する。冷ましてから、液体ワックスを分散体から分離し、分散体をろ過して、非分散固形分を除去する。反応器を開け、全ての付着されたポリマーを反応器から除去する。反応器除去物(cleanout)をろ過された固形分と組み合わせて、真空オーブン中で乾燥させる。
ポリマーを遠心分離し、ブロッティングしてワックスを除去することによって、乾燥したろ過された固形分および付着したポリマーから液体ワックスをさらに除去することによって、凝塊(全非分散固形分)を得る。凝塊(重量%)=[凝塊の重量/生成される全ポリマー]×100であり、式中、生成される全ポリマーは、凝塊および分散されたフルオロポリマー粒子を合わせた重量である。全ての重量は、乾燥ポリマーの測定値である。
分散体水を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウム水溶液を加えた後、ポリマーが水から完全に分離するまで激しく撹拌することによって、ポリマー分散体を凝固させる。得られるポリマーを、真空オーブン中110℃で12時間乾燥させる。このポリマーの融点および融解熱を、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter)(DSC)によって測定する。ポリマーは、少なくとも1,000,000の分子量(Mn)を有するPTFEである。分散されたポリマーの粒径を、レーザー光散乱によって、以下のように測定する:フルオロポリマー粒子の未処理の分散体の粒径を、Malvern Instrumentsによって製造されるZetasizer Nano−ZSによるレーザー光散乱を用いて測定する。分析用の試料を、10×10×45mmのポリスチレンキュベット中で調製し、蓋をして、分析用のデバイスに入れる。試料の調製は以下のとおりである。脱イオン化脱気水を、固定した先端を有する10ccのガラス製の皮下注射器中に取り込むことによって、キュベットをフラッシュするのに使用され、また、分散体試料を希釈するのに使用される水が、粒子を実質的に含まないようにする。Whatmanの0.02ミクロンフィルタ(Cat.No.6809−2002)を、注射器の固定した先端に取り付け、圧力をかけて、水をフィルタに通し、キュベットに入れる。約1.5mlの水をキュベットに入れ、キュベットに蓋をし、振とうし、蓋を開ける。水をキュベットから注ぎ出して、キュベットが粒子を含まないようにする。約2.5gmのろ過された水をキュベットに入れる。1滴の分析されるフルオロポリマー分散体をキュベットに加える。キュベットに蓋をし、振とうして、フルオロポリマー粒子を水中で完全に混合する。試料を、Dv(50)の測定のためにNano−ZSに入れる。Dv(50)は、体積粒径分布に基づく中央粒径、すなわち、その下に集団の体積の50%が存在する粒径である。
実施例に報告される粒径を比較するための根拠を与えるために、11.75の固形分%に対して重合されるPTFEについての198nmのDv(50)を、下式によって34%の固形分%における311nmのDv(50)粒径に外挿する:
D2=[P2×(D1)3/P1]1/3
式中、P1が、Dv(50)粒径D1(ナノメートル)を有する生成されるポリマーの実際の量(グラム)であり;P2が、予測される、生成されるポリマー(グラム)に等しく、D2が、P2ポリマーの予測される粒径(ナノメートル)である。311nmの粒径は、過度の凝塊を生じさせる傾向にあるという意味で大きすぎる。同じ固形分%についての好ましいDv(50)粒径は、198nm未満、例えば113nmである。上式を用いた176nmのDv(50)へのこの外挿は以下のとおりである:
D2=(3200×1133/849)1/3=(5438481.04)1/3=176nm
実施例1
この実施例は、炭化水素界面活性剤とともに、不活性化助剤としての金属イオン、硫酸鉄(II)、FeSO4・7H2Oによって提供されるFe+2の存在下および非存在下で行われる重合方法を比較する。
実験1および2において反応器に加えられる補充TFEの総量は、それぞれの実験で1250gである。これらの実験の界面活性剤は、上述されるようにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。界面活性剤を、表1に記載される塩中に金属イオンも含有する水溶液として反応器中で水性媒体に加える。SDSおよび塩を含有するストック溶液(実験2)は、水100g当たり1.439gのSDSおよび0.0432gの塩を含有する。実験1のためのストック溶液は、実験2と同じ量のSDSのみを含有する。
表1の列の見出しに関して、界面活性剤の「水におけるppm」は、重合の完了までに重合反応器に加えられる水の総重量に加えられる界面活性剤の総重量である。「水におけるカチオンppm」は、全プロセス(核形成部位形成および重合)中、すなわち、重合反応の完了までに反応器に加えられる水の総量中のFe+2の重量ppmである。「界面活性剤におけるカチオン重量%」は、重合中に水性媒体に加えられる溶液中の界面活性剤の総重量と比較した際の金属イオンの総重量を基準にする。バッチ時間は、キックオフから撹拌の中断が伴う補充TFE添加の終了(重合反応の完了)までの時間として測定される。「分散体固形分%」は、重合反応の完了の時点で存在する分散されたポリマー粒子の総重量+水の総重量の合計を基準にした、水性媒体中に分散されるポリマー粒子の重量%である。「凝塊(重量%)」は、[凝塊の重量/生成される全ポリマー]×100であり、式中、生成される全ポリマーは、凝塊および分散されたフルオロポリマー粒子の合わせた重量である。全ての重量は、乾燥ポリマーの測定値である。
STYは、上記の意味を有する。列の見出しのこれらの説明は、後続の実施例の他の表中の同じ列の見出しに適用される。
実験1は、長いバッチ時間および予測される比較的低いSTYを代償にするものの、不活性化されていないSDS自体が、分散体固形分%に対する小さい粒径および少ない凝塊%を生じさせることを示す。Fe+2カチオンが、重合反応中にSDSとともに存在する場合、バッチ時間は、実験1のバッチ時間のわずか約1/3であり、STYは、約300%だけ増加される。Fe+2カチオンは、はるかに少ないSDSの使用によってほぼ同じ量の固形分%および凝塊の形成を可能にすることによって、SDS界面活性剤の有効性も向上させる。この実施例において形成されるPTFEのDSC溶融温度は、実験1および2についてそれぞれ334.69℃および334.01℃である。実験1についてのPTFEの融解熱は、75.65J/gm(第1の熱)および38.43J/Gm(第2の熱)である。実験2については、融解熱は74.36J/gm(第1の熱)および41.73J/gm(第2の熱)である。
実施例2
この実施例は、表2に報告されるような安定化界面活性剤としてのSDSおよびSDSとともに加えられる不活性化助剤としての様々な量の金属カチオンを用いた重合結果を比較する。金属カチオンは、硫酸鉄(II)、FeSO4・7H2Oによって提供されるFe+2である。
「界面活性剤溶液の濃度」は、反応器への溶液供給におけるSDSおよびFeSO4・7H2O濃度である。「塩gm/L」は、塩の濃度、すなわち、金属カチオンの重量を含むその総重量である。この意味は、後続の表の同じ列の見出しに適用可能である。TFE補充TFEの総量は1000gである。実験4の重合は、最小のPTFE粒径、最少量の凝塊%および高いSTYの組合せの点で最良の結果をもたらす。これらの実験において生成されるPTFEの溶融温度(第1の熱)は全て332℃を超え、第1の熱から第2の熱溶融への融解熱の減少は全て27J/gmを超える。
実施例3
この実施例では、より高い固形分%を生成するためにより多い量の補充TFEを使用する以外は、実施例1の重合を行う。実験6および7では、2200gの補充TFEを用い、実験8では、3100gの補充TFEを用いる。実施例1と同様に、安定化界面活性剤はSDSであり、金属カチオンは、FeSO4・7H2Oとして提供されるFe+2または硫酸銅(II)、CuSO4・5H2Oによって提供されるCu+2のいずれかである。結果を表3に報告する。
これらの重合の全ては、高い固形分%をもたらし、比較実験1と比較した際に比較的低い凝塊%および高いSTYとともに、この高い固形分%に対する小さい粒径を伴う。これらの実験において形成されるPTFEの溶融温度は335℃を超え、第1の熱から第2の熱溶融への融解熱の減少は25J/gmを超える。実験7のPTFEは、336.76℃の溶融温度(第1の熱)、R.C.Doban et al.,“Formula from molecular weight of Polytetrafluoroethylene”,ASC Meeting,Atlantic City,N.J.September 1956(国際公開第2009/013214号パンフレットのp.15にも公開されている)によって記載されている式にしたがって測定される2,700,000の分子量(Mn)に相当する2.212のSSG(標準比重)を有する。
実施例4
この実施例は、SDS安定化界面活性剤溶液とともに加えられる不活性化助剤として異なる金属イオンを用いた重合結果を比較する。結果を表4に報告する。
これらの実験において、加えられる補充TFEは1000gである。これらの重合の全ては、比較実験1と比較した際に比較的低い凝塊%および高いSTYをもたらす。さらに、これらの重合の全ては、332℃を超える溶融温度および28J/gmを超える第1の熱から第2の熱溶融への融解熱の減少を有するPTFEを生成する。
Naイオンを、重合反応の完了時の水の総重量を基準にして1.3ppmのNa+イオン濃度を提供するような量でカチオン(Na2SO3塩として供給される)として使用することを除いて、これらの実験のプロセスを繰り返す場合、結果は、9%を超える凝塊の形成である。
実施例5
この実施例は、TFEの補充を1250gに増加させることを除いて、実施例4と同様の様々な金属カチオンを用いた重合結果を比較する。結果を表5に報告する。
これらの実験の条件下で、金属イオンFe+2およびCu+2が、粒径凝塊%およびSTYについての結果の最良の組合せを示す。PTFEの溶融温度は全て333℃を超え、第1の熱から第2の熱溶融への融解熱の減少は、実験2、16、17、および18についてそれぞれ、32.6J/gm、32.0J/gm、37.3J/gm、37.3J/gmである。
実施例6
この実施例は、全てが2200gのTFE補充量を用いた、様々な安定化界面活性剤および不活性化助剤としての金属カチオンの両方を用いた重合結果を比較する。結果を表6に報告する。
重合の全ては、少ない凝塊%および良好ないし比較実験1より良好なSTYとともに、得られる高い固形分%において小さい粒子を生成した。生成されるPTFEの溶融温度は全て335℃を超え、第1の熱から第2の熱溶融への融解熱の減少は全て29J/gmを超える。
実施例7
この実施例は、反応器における水性媒体への不活性化助剤としての金属カチオンの添加についての異なるタイミングによる重合結果を比較する。SDSが安定化界面活性剤であり、FeSO4−7H2Oが、金属カチオンを供給する塩である。TFE補充の量は1250gmである。
実験2は、塩(金属カチオン)を溶解された安定化界面活性剤とともに溶液中の水性重合媒体に加える上記の一般的な重合手順にしたがう。得られる溶液は、表1に記載されるとおりである。
全量の塩を、水性重合媒体に、この媒体への界面活性剤溶液の添加が開始するのと同時に加えることを除いて、実験22は、一般的な重合手順にしたがう。したがって、水性重合媒体に加えられる界面活性剤溶液は、その中に溶解されるSDSのみを有する。水性媒体に加えられるSDSの総量は、重合の完了時に水性媒体中に存在する水の総量を基準にして382ppmのSDSの濃度を提供する。水性重合媒体に加えられるFe+2カチオンの量は、実験2についての2.6ppmと比較して、重合反応の完了時に水性媒体中に存在する水の総量を基準にして2.8ppmの濃度を提供する。
反応器への初期充填物の5200gmの水の添加とともに、水性重合媒体に実験22と同じ量の全量の塩を加えることを除いて、実験23は、一般的な重合手順にしたがう。したがって、SDSの添加は、実験22の手順にしたがう。
表7に報告される結果は、プロセス(実験23)における早すぎる塩の添加により、形成される固形分%についての粒径が大きくなり、凝塊%が高くなることを示す。実験2および22の結果は両方とも、実験23より向上している。
上記の実験において得られるPTFEは全て、0のMFR(ASTM D 1238、372℃、5kgのおもり)を示し、これは、非常に高い分子量のためのPTFEの非溶融流動性を示している。
実施例8
この実施例は、重合による、PTFE粒子の高固形分水性分散体(すなわち、45重量%および45重量%超、好ましくは50重量%および50重量%超、より好ましくは55重量%および55重量%超、および最大で60重量%または65重量%の固形分)の調製に関する本発明の実施形態の態様A、B、およびCを開示し、ここで、不活性化された安定化界面活性剤は、炭化水素含有界面活性剤である。この実施例のこれ以降の開示は、これらの高固形分のそれぞれに当てはまる。「固形分」中の「固体」は、分散されたPTFE粒子である。固形分の重量%は、分散体中のポリテトラフルオロエチレン粒子および水性媒体の形態で加えられる水の総重量を合わせた重量を基準にした、水性媒体中に分散されるPTFE粒子の重量%である。
この実施形態の態様Aの実施は、重合反応中にPTFE分散体を安定させるために水性媒体に計量供給される、はるかに多い量の炭化水素含有界面活性剤、好ましくは炭化水素界面活性剤の使用を含む。例えば、以下の表8の対照実験は、33.9%(34重量%)の水性媒体中の分散体固形分を得るために分散されたPTFE粒子の総重量を基準にして724ppmの全安定化界面活性剤濃度を使用する。米国特許第3,000,892号明細書の「これらの分散剤[炭化水素分散剤]は、通常、テトラフルオロエチレンの重合を阻害する」(第1欄、65〜66行)という警告にもかかわらず、態様Aは、この量の1.5倍超、好ましくはこの量の少なくとも2倍、より好ましくはこの量の少なくとも3倍、最も好ましくはこの量の少なくとも4倍を使用する。‘892の実施例IIは、TFEをPTFE分散体に重合するために分散された粒子として存在するPTFEの総重量を基準として2645ppmのラウリル硫酸ナトリウム(SDS)を使用し、その際、固形分は8.4重量%に達するに過ぎない。
意外にも、態様Aにおける大量の炭化水素含有安定化界面活性剤の使用は、重合反応の空時収量(STY)によって判定され得る、反応器の生産性の大幅な減少を伴わない。34重量%の固形分を得るための炭化水素含有界面活性剤の総量がより少ないことを除いて、好ましくは、少なくとも45重量%の固形分を生成するためのSTYは、同じ重合方法のSTYの少なくとも90%である。34重量%(33〜35重量%)を得るためのより少量のこのような界面活性剤の使用は、重合反応に対するテロゲン効果を低下させるために全界面活性剤の量を減少させる必要性から生じる。より好ましくは、重合反応のこのようなSTYの減少はない。より好ましくは、意外にも、STYは、34重量%の固形分を得るための上記の重合と比較して増加され、この増加は、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%である。
‘892の実施例IIにおける8.4重量%の固形分に対する制限は、この低い固形分で得られる0.23マイクロメートルのPTFE粒径である。これは、わずか8.4重量%の固形分によって表される、ごく早期の粒子成長段階にしては大きい粒径である。重合により固形分が増加する場合、0.23マイクロメートルからの粒径の増加が、本出願における情報から分かる。具体的には、本出願の実施例1の実験A−1は、重合が34重量%の固形分になるまで続けられる場合、11.75重量%の固形分における198nmの粒径は、311nmの粒径になるまで成長することを報告している。このような大きい粒径は、粒子の分散体の安定性を低下させ、凝塊の形成を促進するため、望ましくない。これに対し、表8に報告される高固形分の分散体のPTFE粒径は、45重量%以上のはるかに高い固形分についてはるかに小さいPTFE粒径を示す。
合計してはるかに多い量の界面活性剤になるように、重合中に水性重合媒体に炭化水素含有界面活性剤を計量供給することにより、重合反応のSTYによって示される生産性をそれほど犠牲にせずに、かなり多い固形分を有する安定した分散体を生成するように重合を行うことができることが発見された。本発明のこの実施形態に使用される増加した量の炭化水素含有安定化界面活性剤が、PTFEを作製するためのTFEの重合を阻害することが予想されながらも、このような重合を阻害しないというさらなる意外なことがこの発見に伴う。水性重合媒体中の分散された粒子を形成する得られるPTFEは、高分子量のものであり、すなわち、非溶融流動性および少なくとも332℃のDSC溶融温度(第1の熱)によって示される際に、少なくとも1,000,000の分子量を有する。
したがって、この実施例の実施形態の態様Aは、重合反応器において、水性媒体中のフルオロモノマーを重合して、媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を形成する工程であって、(i)重合開始剤および(ii)反応器における水性媒体中の分散体を安定させる炭化水素含有界面活性剤の存在下で行われ、炭化水素含有界面活性剤が不活性化されて、炭化水素含有界面活性剤のテロゲン性挙動が低下され、フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである工程と、その結果として、水性媒体の45重量%以上を占めるポリテトラフルオロエチレン粒子の分散体を得る工程とを含む重合方法として記載することができる。重合反応器中の水性媒体に加えられる界面活性剤は、この高固形分を得るのに有効な量である。この量は、重合反応の完了時の分散体中のPTFE粒子の総重量の重量を基準にして好ましくは少なくとも3000ppmである。
本発明にしたがって重合によって作製されるフルオロポリマー粒子のより少ない固形分の分散体と同様に、炭化水素含有核形成界面活性剤が、重合キックオフの前に水性媒体に加えられて、親油性核形成部位へと酸化分解されたかもしれないにもかかわらず、水性媒体は、フルオロモノマーの重合のキックオフの前に炭化水素含有界面活性剤を実質的に含まない。重合キックオフの前に、水性媒体はまた、好ましくはハロゲン含有界面活性剤を実質的に含まず、好ましくはこのような界面活性剤が、重合反応のキックオフ中またはキックオフ後に重合媒体に加えられない。重合の完了時の、すなわち重合されたままの、PTFE粒子の分散体を含有する水性媒体はまた、好ましくは、フッ素系界面活性剤などのハロゲン含有界面活性剤を実質的に含まない。より好ましくは、水性媒体は、フッ素系界面活性剤を含むハロゲン含有界面活性剤を含まず、これは、このような界面活性剤が、水性媒体に加えられなかったことを意味する。反応器中の水性媒体に加えられる炭化水素含有界面活性剤は、実質的に、重合されたままの高固形分PTFE粒子水性分散体を安定させる界面活性剤のみである。
本特許出願において上述される発明の概要および発明を実施するための形態における開示は、本発明の態様の全てを含むこの実施例の実施形態に適用される。したがって、フルオロモノマー/フルオロポリマーの節において、本出願において上述されるPTFEの説明は、この実施形態のPTFEに適用可能である。本明細書において上述される重合方法および重合開始剤の節における開示も、例えば、炭化水素安定化界面活性剤の添加が開始される前の重合キックオフ後の遅延、この添加の計量供給速度、炭化水素含有界面活性剤の属性、使用される重合開始剤、凝塊の量を含め、この実施形態に適用可能であるが、以下のことを除く:PTFE固形分の重量%は、重合方法に記載されるものより多く、分散体をより高い固形分になるまで濃縮するのを可能にするための、重合が完了した後に界面活性剤を水性分散体に加える濃縮工程が不要である。高い固形分は、米国特許第3,037,953号明細書(MarksおよびWhipple)に開示されるものなどの濃縮工程を必要とせずに、重合によって直接得られる。水性媒体中のPTFE粒子の分散体はまた、‘953にしたがって分散体を濃縮するのを可能にするために重合後に水性分散体に加えられるアニオン性界面活性剤の代替物であることが米国特許出願公開第2007/0282044A号明細書に開示されるアニオン性高分子電解質を含まないのが好ましい。45重量%および45重量%超の固形分によって表される高い固形分では、何らかの凝塊形成は、好ましくは非常に少なく、例えば2重量%または2重量%未満、より好ましくは1重量%または1重量%未満である。これは、水性分散体の固形分が高くなるほど、凝塊の重量%も増加する傾向が高くなるという意外な結果である。この実施例の実施形態の高固形分PTFE分散体は、表8に示されるように、非常に少ない凝塊の重量%で得ることができる。
重合方法のこれらの節のそれぞれに開示される好ましいものは、この実施例の実施形態にも適用可能である。以下に開示される好ましいものを含む、炭化水素含有安定化界面活性剤における炭化水素含有界面活性剤および炭化水素含有安定化界面活性剤の不活性化における不活性化の開示が、この実施形態にも適用可能である。
以下に開示される好ましいものを含む、重合核形成部位に開示されるような重合キックオフの前の水性媒体中の重合部位の形成は、この実施例の実施形態にも適用可能である。親油性核形成部位である重合部位の形成についての好ましいものは、少量の炭化水素含有化合物、好ましくは炭化水素含有界面活性剤(核形成界面活性剤)、好ましくは50ppm以下の炭化水素含有化合物、好ましくは核形成界面活性剤を水性媒体に加えて酸化分解させ、重合核形成部位に記載されるように重合反応のキックオフの時点で水性媒体が核形成界面活性剤を実質的に含まないようにすることを含む。
態様Aの実施において、好ましくは、水性媒体に加えられる不活性化された炭化水素含有安定化界面活性剤の総量は、固形分が、少なくとも45重量%であるか、少なくとも50重量%であるかまたは少なくとも55重量%であるかにかかわらず、分散された粒子として存在するPTFEの総重量を基準にして、3000ppmおよび3000ppm超、より好ましくは3500ppmおよび3500ppm超、最も好ましくは4000ppmおよび4000ppm超である。重合は、これらの量の不活性化された安定化界面活性剤の存在下で行われるものと考えられ得る。固形分が45重量%を超えて増加されると、安定化界面活性剤の好ましい総量も増加する。34重量%のPTFEの固形分を生成するのに必要とされるものと比較してより多い量の安定化界面活性剤は、34重量%の固形分をもたらすPTFE粒子の分散体を得るのに好ましい計量供給との2つの相違、すなわち、計量供給量の増加および計量供給の持続時間の増加を含み、好ましくはSTYの犠牲を伴わない。その代わりに、STYの増加、例えば少なくとも10%の増加が得られる(計算:[100−(34重量%の固形分の場合のSTY/60重量%の場合のSTY)]×100)。水性媒体中への安定化界面活性剤の好ましい計量供給速度は、本出願においてPTFEを作製するための上述される実施例に開示されるはるかに低い計量供給速度と比較して、0.7g/l−時〜1.4g/l−時である。炭化水素含有安定化界面活性剤の最大総量は、所望のSTYおよび最小限に抑えられた凝塊の重量%とともに必要とされる高固形分によって確定される。最大総量は、上述されるようにSTYに不利益を与えてはならず、2重量%または2重量%未満、より好ましくは1重量%または1重量%未満の凝塊の重量%を生成すべきである。一般に、水性媒体に加えられる炭化水素含有安定化界面活性剤の総量は、PTFEの分散された粒子の重量を基準にして5500ppm以下であろう。
この実施例の実施形態の態様Bは、以下のとおりに記載され得る:重合反応器において、水性媒体中のPTFE粒子の分散体は、45重量%または45重量%超の水性媒体中の粒子の固形分を有し、分散体は、不活性化された炭化水素含有界面活性剤によって水性媒体中で安定した状態で維持される。「安定した状態で維持される」とは、炭化水素含有安定化界面活性剤の存在がない場合、分散体は不安定であること、すなわち、PTFEの粒子が、重合反応の際に反応器中で凝固することを意味する。重合反応中の凝固は、例えば2〜4重量%の少量の凝塊が形成されると、凝塊の形成が、より速い速度でより多い凝塊の重量%になるまでその後増加される傾向にあるという意味で指数関数的(exponential)である。PTFE水性分散体の40重量%未満の固形分に一般に制限された重合を有するのは凝塊の重量%のこの指数関数的な増加である。任意の他の界面活性剤が水性分散体中に存在する場合、このような他の界面活性剤は、PTFE粒子の分散体を安定させない。分散体は、重合反応に伴う撹拌中および反応の完了時に撹拌が停止された後に安定しており、この実施例において上述されるような低い凝塊の重量%および分散体に損害を与えずに、反応器から分散体を除去し、それを貯蔵する能力が得られる。
この実施例の実施形態の態様Cは、以下のとおりに記載され得る:水性媒体中のPTFE粒子の分散体が、少なくとも45重量%の水性媒体中の粒子の固形分を有し、分散体は、不活性化された炭化水素含有界面活性剤によって水性媒体中で安定した状態で維持される。
態様A、B、およびCにおいて、好ましい炭化水素含有安定化界面活性剤は、アニオン性炭化水素界面活性剤、例えば上に開示されるもののいずれかである。態様A、BおよびCにおいて、水性媒体に加えられるかまたは水性媒体中に存在する界面活性剤、好ましくはイオン性界面活性剤の好ましい量は、固形分が、少なくとも45重量%であるか、少なくとも50重量%であるかまたは少なくとも55重量%であるかにかかわらず、分散された粒子として存在するPTFEの総重量を基準にして、3000ppmまたは3000ppm超、より好ましくは3500ppmまたは3500ppm超、最も好ましくは4000ppmまたは4000ppm超である。これらの量は、記載される好ましいアニオン性界面活性剤R−L−M、特にCH3−(CH2)n−L−Mにも適用され、式中、n、L、およびMが上述されるとおりであり、最も特にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。態様BおよびCにおいて、水性媒体は、PTFE粒子の高固形分の分散体を安定させる炭化水素含有界面活性剤以外の炭化水素含有界面活性剤を実質的に含まない。態様AおよびBの実施において、フルオロモノマーの重合のキックオフの前に水性媒体に加えられる任意の炭化水素含有界面活性剤は、重合キックオフの前に親油性核形成部位に酸化分解される。態様Bにおいて、重合の完了時の水性媒体はまた、それぞれフッ素系界面活性剤などの、ハロゲン含有界面活性剤を好ましくは実質的に含まず、最も好ましくはハロゲン含有界面活性剤を含まない。これは、態様CのPTFE粒子の水性分散体にも適用される。本特許出願において上述される「実質的に含まない」という記載は、この実施例8に適用される。態様Cの水性分散体も好ましくは重合されたままである。態様AおよびBにおいて、炭化水素含有界面活性剤は、実質的に、好ましくは重合されたままの、水性媒体中の高固形分PTFE粒子分散体の安定性を維持する界面活性剤のみである。
この実施例の実施形態の実施の例は、以下の実験である。
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼反応器に、3100gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。反応器に、0.120gmのPluronic(登録商標)31R1および0.07gmのTergitol(登録商標)TMN−6を含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器を密閉し、真空下に置く。反応器圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、大気圧になるまで通気する。反応器を、窒素を用いて加圧し、さらに2回通気する。撹拌器速度を65RPMに設定し、反応器を90℃まで加熱する。水のリットル当たり2.0gmの過硫酸アンモニウム(APS)を含有する160mlの開始剤溶液を反応器に加える。948gmのTFEを反応器に充填して、反応器圧力を400psig(2.86MPa)にする。時間ゼロの時点で、14.58gmのジコハク酸ペルオキシド、0.18gmの過硫酸アンモニウムおよび485.2gmの脱イオン水から構成される150mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に予め充填する。開始剤の注入の開始から2.6分後、反応器圧力は、開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下する。反応器圧力を、TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。キックオフしてから、水性媒体中の1.68重量%のPTFE濃度に相当する100gmのTFEを供給した後、水100g当たり7.0gmの、炭化水素安定化界面活性剤としてのSDSおよび0.043gmの硫酸鉄七水和物を含有する界面活性剤溶液を、実行の終了まで3ml/分(1.05gm/l−時のSDS)の速度で反応器にポンプ注入する。キックオフしてから153分後、6500gmのTFEおよび444mlの界面活性剤溶液を反応器に加えた。撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。冷ましてから、液体ワックスを分散体から分離し、分散体をろ過して、非分散固形分を除去する。反応器を開け、全ての付着されたポリマーを反応器から除去する。反応器除去物をろ過された固形分と組み合わせて、真空オーブン中で乾燥させる。凝塊(全非分散固形分)の測定値を得るために、このポリマーに付着している液体ワックスを、ポリマーを遠心分離することによってさらに除去する。この場合、全凝塊が29.1gmであると測定される。6461gmの分散されたPTFE粒子は、59.1%の水性媒体中の固形分および233nmの体積基準による平均粒径、Dv(50)を提供する。水性媒体に加えられるSDSの総量は、分散体のPTFE粒子の重量を基準にして4810ppmである。STYは208.8g/l−時である。分散体を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウム水溶液を加えた後、ポリマーが水から完全に分離するまで激しく撹拌することによって、PTFE粒子の分散体を凝固させる。PTFEを、真空オーブン中110℃で12時間乾燥させる。第1の熱についてDSCによって測定されるPTFEの融点は337.8℃である。この実験は、以下の表8中のG−16である。
水性媒体への炭化水素界面活性剤の総量を変化させる以外は上記の重合手順に実質的にしたがって多数の重合を行い、得られた結果を以下の表8に報告する。
表8において、界面活性剤はSDSであり、対照は、33.9重量%の固形分を得るために724ppmのSDSを用いた重合である。界面活性剤のppmは、生成される全分散PTFEを基準にする。
表8中の結果は、SDSの総量(全界面活性剤ppm)が724ppmを超えて増加するにつれて、凝塊の重量%が、約2000ppmのSDSまで急増し、その後、2000〜3000ppmのSDS範囲の低下が続き、凝塊の重量%は、高い重量%固形分の分散体に望ましい重量%より高いことを示す。例えば、8〜5の凝塊の重量%は、対照実験の77gmの凝塊と比較して、211gmの凝塊に相当する。3000〜4000ppmのSDS範囲内で、凝塊の重量%には、実質的に2.0重量%〜1.0重量%未満の凝塊の重量%の推移がある。水性媒体(8−7)に加えられる3012ppmの全SDSにおいて、凝塊%は2.0重量%である一方、水性媒体に加えられる3881ppmの全SDSにおいて、凝塊の重量%はわずか0.7重量%である。全分散PTFEを基準にした少なくとも4000ppmの総SDS量において、凝塊の重量%は一貫して低く、7つのうちの6つが1.0凝塊重量%未満である。実験8−16は、59%の固形分の分散体が、1よりかなり低い凝塊の重量%を有し得ることを示す。同じことが、実験8−17の60.4重量%の固形分に当てはまる。実験8−1〜8−6は、例えば、8−10などの重合を繰り返すが、45重量%または50重量%などのより低い固形分において重合を停止(完了)させることによって、凝塊の重量%に関して改良され得る。このようなより低い固形分に達して重合が停止されるとき、8−10についての0.7の凝塊の重量%は、より高くはないであろう。
これらの実行において生成されるPTFEポリマーの全ては、少なくとも336℃のDSC第1の熱溶融温度を有する高分子量の非溶融加工性ポリマーである。
実施例9
この実施例は、重合キックオフの前に重合部位の形成を伴う場合および伴わない場合の重合を比較する。安定化界面活性剤を、重合反応器へのその添加の前に不活性化する。
重合キックオフの前に重合部位形成部位がない場合の重合の一般的手順:2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、5700gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回真空にする。オートクレーブ撹拌器を65RPMに設定する。オートクレーブを90℃まで加熱し、TFEをオートクレーブに充填して、オートクレーブ圧力を400psig(2.86MPa)にする。時間ゼロの時点で、0.05gmの過硫酸アンモニウム(APS)および3.5gmのジコハク酸ペルオキシド(DSP)を含有する脱イオン化脱気水の150mlの開始剤溶液を、80ml/分で注入する。キックオフ時間(表Aの「KO時間」)を、充填開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下するのに必要な時間(時間ゼロからの)として測定する。キックオフ時に、オートクレーブ圧力を、TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。キックオフしてから100gmのTFEを供給した後、安定剤界面活性剤溶液を、4ml/分(0.28g/l−時)の速度でオートクレーブにポンプ注入する。水性媒体への界面活性剤添加を開始する際のこの遅延は、この添加が開始する前の1.68重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応する。安定剤溶液の調製を以下に示す。キックオフしてから750gmのTFEをオートクレーブに加えた後、バッチ時間(表A)を記録し、撹拌器を停止し、オートクレーブを大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。冷ましてから、ワックスを分散体から分離する。PTFE分散体は、2.8のpH、11.75の固形分%および198ナノメートルのDv(50)を有する(実験A−1)。PTFEは、332℃(第1の加熱)のDSC溶融温度および76J/g(第1の加熱)対47.5J/g(第2の加熱)のDSC融解熱によって示されるように、高分子量を有し、これは、第1の加熱からの冷却の際に起こる再結晶化の量を減少させるPTFEの非常に高い溶融粘度を反映している。
上記の手順に使用される界面活性剤安定化溶液中の界面活性剤を、以下の手順によって不活性化する:1リットルの被覆された丸底フラスコに、681.74gmの脱イオン化脱気水、10.5gmのドデシル硫酸ナトリウム(ACS Reagent、>99.0%)および0.315gmの硫酸鉄(II)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで、内容物を撹拌する。12〜14滴の濃硫酸を用いて、溶液pHを2.0〜2.5に調整する。37.34gmの30重量%の過酸化水素水溶液を、撹拌混合物にゆっくりと加える。撹拌を室温(22〜23℃)で1時間継続し、その後、水溶液中の得られる酸化された界面活性剤を、上記の重合手順に使用する。
上記の重合手順は、重合キックオフの前に重合部位を形成する工程を含まず、重合結果が、表AのA−1として報告される。
5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスが、オートクレーブへの初期充填物である以外は、上記の重合手順を繰り返すことによって、重合部位を形成する工程を実施する。次に、0.085gmの界面活性剤(核形成剤、表A)および0.4gmの亜硫酸ナトリウム水溶性無機塩を含有する500gmの脱イオン化脱気水を、オートクレーブに加える。オートクレーブを重合温度まで加熱した後であるが、TFEを充填してオートクレーブを動作圧力にする前に、脱イオン化脱気水のリットル当たり0.5gmのAPSを含有する50mlの水溶液を加える。水性媒体中の界面活性剤濃度は14.8ppm(計算:[0.085÷5750]×106)であり、塩濃度は70ppmであり、開始剤濃度は4.3ppmである。水性媒体(事前充填組成物)中に存在する条件/添加剤の下で、APSは、炭化水素界面活性剤の酸化反応を起こさせ、水性媒体中に分散された親油性核形成部位が形成される。これらの部位の存在は、非イオン性、アニオン性、およびカチオン性界面活性剤を用いた、実験A−3〜A−9についての表Aに報告されるPTFE粒子のより小さい粒径(Dv(50)によって示される。実験A−9についての重合キックオフまでの長い時間は、この界面活性剤中に存在する芳香族部分に起因し、使用される他の界面活性剤は非芳香族であり、すなわち芳香族部分を含まない。使用されるこの界面活性剤の量を減少させることによってこのキックオフ時間を短縮することができると考えられる。表A中の実験A−3〜A−9として報告されるこの繰り返し実験における遅延は、安定化界面活性剤添加が開始する前の1.67重量%のフルオロポリマー濃度である(計算:100gmのTFE÷[100+5200+500+50+150]×100)。表Aに報告される全ての実験についての遅延の実際の時間は、キックオフの後で、安定化界面活性剤の添加が開始する前の4.4〜6分間の範囲である。
実験A−2は、亜硫酸ナトリウム塩が表Aに示される量で加えられる以外は、核形成界面活性剤が存在しない上記の重合手順の結果である。塩が存在し、核形成界面活性剤が存在しないことにより、はるかに大きいPTFE粒径が得られ、これは、塩がより少ないポリマー粒子を重合の初期段階中に形成させていることを示唆している。
表Aの核形成剤は以下の属性を有する:Silwet(登録商標)L7600は、GE Siliconeから入手可能な非イオン性ペンダント型ポリエチレンオキシド改質ポリジメチルシロキサンである。Tergitol(登録商標)100は、上に示される構造を有する分枝鎖状の非イオン性界面活性剤である、Tergitol(登録商標)TMNシリーズの界面活性剤の1つとして本明細書において既に特定されたTMN 6/TMN 10の70/30重量%ブレンドである。CTMABは、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CH3(CH2)15N(CH3)3Br)、カチオン性界面活性剤である。Triton(登録商標)X−100は、上に示される構造を有するオクチルフェノールポリエトキシアルコールである非イオン性界面活性剤である。
上記の重合を、重合の一連のスクリーニング(screening series)として行い、すなわち、重合媒体の総重量を基準にして約11〜13重量%の分散体PTFE固形分(粒子)になるまで行い、これは、キックオフ後にわずか750gmのTFEを重合反応用のオートクレーブに供給することから得られる。重合が、約34重量%の分散体固形分を生成するために3200gのTFEを消費するまで延長される場合、上記の重合から得られるこのスクリーニング結果を、重合結果に外挿することができる。この外挿は、本明細書において上述される実施例の節に説明されている。この外挿された結果を、括弧内のDv(50)として表Aに報告する。
実験A−1は、重合反応が進行するのに伴う界面活性剤の遅延された添加およびその計量供給を使用する。核形成剤も塩も使用せず、すなわち、上記の核形成工程手順を使用しない。実験A−2は、核形成部位の形成がない場合、すなわち核形成界面活性剤を使用せずに、塩の添加のみを用いた際の欠点を示す。実験A−2により、実験A−1よりはるかに大きい、はるかに大きいDv(50)粒径としてのより劣った結果が得られる。実験A−1のDv(50)結果と実験A−3〜A−10との比較は、より小さいフルオロポリマー粒径の提供に対する、実験A−3〜A−10)中に存在する親油性核形成部位の影響を示す。実験A−1のバッチ時間は、実験A−3〜A10のバッチ時間と同等であり、これは、水性媒体への界面活性剤のその後の添加の計量供給とともに、水性媒体への不活性化された安定化界面活性剤の遅延された添加が、不活性化された炭化水素界面活性剤のテロゲン性を低下させるのに有効であったことを示す。
一連の実験において上記の重合手順を繰り返し、ここで、核形成工程および異なる塩が重合手順(実験B−1〜B−3)に含まれ、無機塩が、実験B−4における核形成部位形成工程中に加えられない。核形成剤は、14.8ppmのPluronic(登録商標)31R1である。塩の量は70ppmであり、APS開始剤の量は4.3ppmである。安定化界面活性剤の添加を開始する際の遅延は、水性媒体中の1.67重量%のPTFE濃度である。結果を表Bに報告する。
表Bに示されるように、異なる無機塩は全て、小さいPTFE粒径をもたらす。実験B−4は、核形成界面活性剤を使用するが、無機塩を使用しない場合のDv(50)結果を示す。
全てのこれらの重合で作製されるPTFEは、この実施例において上述される特性を示す。
実施例10
この実施例は、不活性化されていない安定化界面活性剤、および不活性化された安定化界面活性剤を水性重合媒体中に導入するために、重合キックオフ後に様々な遅延を用いて、実施例9のPTFEの特性を有するPTFEを調製するための重合結果を比較する。
重合条件の概要は以下のとおりである:5700gmの脱イオン化脱気水を、0.085gmのPluronic(登録商標)31R1、0.02gmのTriton X−100および0.4gmのNa2SO3とともに反応器に充填し、90℃まで加熱する。次に、80ml(0.04gmのAPS)を水性媒体に加える。水性媒体中の界面活性剤の濃度はそれぞれ、14.7ppmおよび3.4ppmであり、塩の濃度は69ppmであり、開始剤の濃度は6.9ppmである。660gmのTFEの添加によって、反応器を400psig(2.86MPa)まで圧力上昇させる。重合を開始させるために、脱イオン化脱気水のリットル当たり0.33gmのAPSおよび22.33g(70%活性のDSP)を含有する150mlの開始剤溶液を反応器に加える。キックオフ(KO)後、TFEの添加によって、圧力を2.86MPaに維持する。22gmのTFE供給(実験C−3およびC−4)または300gmのTFE供給(実験C−1およびC−2において、水性重合媒体中へのSDSまたはSOS安定化界面活性剤の導入を開始させる。界面活性剤添加を開始させる前に消費される22gmのTFEの遅延は、0.37重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応する。界面活性剤添加を開始させる前に消費される300gmのTFEの遅延は、5.06重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応する。安定剤界面活性剤溶液を、1000gmのTFE供給まで2ml/分の速度で水性媒体中にポンプ注入する。このポンプ注入速度は、0.14g/l−時の計量供給速度である。次に、ポンプ速度を3ml/分(0.22g/l−時)まで上昇させる。ポンプ溶液中のSDSまたはSOSの濃度は、100gmの流体当たり1.445gmである。
この表に示される結果は、22gm(0.37重量%の形成されるフルオロポリマー)の遅延が、界面活性剤の添加が開始する前により高い重量%のフルオロポリマーを生成するまで延長されるのが好ましく、さもなければ、464分間のバッチ時間は、生成される固形分%に必要とされるより長いということである。このバッチ時間に達したら、TFEモノマー供給が2200gmのPTFE目標に達しないように、重合反応を停止する。実験C−1が最良の結果をもたらし、2200gmの目標を実験C−2〜C−4よりはるかに短いバッチ時間で達成することができる。
以下の変更を伴い上記の重合を繰り返す:安定剤(安定化界面活性剤)を不活性化する。開始剤ポンプ速度がより速く(4.0ml/分)、安定剤界面活性剤供給の遅延が、キックオフ後の反応器への100gmのTFE補充供給までである。この遅延は、1.66重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応する。重合の繰り返しにおけるこれらの変化は、後述されるように不活性化される安定化界面活性剤の利点(テロゲン性の低下)を考えてなされる。ポンプ注入は、実行の終了まで継続する。結果を表Dに示す。
SDSおよびSOS(オクチルスルホン酸ナトリウム)安定化界面活性剤を、以下の手順にしたがって、水性重合媒体中への導入の前に不活性化する:1Lのガラス瓶中で、10.5gmのドデシル硫酸ナトリウムを681.74gmの脱気水に加え、全ての固形分が溶解され、溶液が透明になるまで、撹拌子を用いてさらに撹拌する。0.315gmの硫酸鉄(+2)七水和物を室温でこの溶液に加える。次に、12〜14滴の濃H2SO4を用いて、pHを2.0〜2.5に調整する。この瓶の内容物を、温度計およびオーバーヘッド撹拌器を備えた加熱/冷却ジャケットを有する3つ口の1Lのガラス反応器に移す。次に、37.34gmのH2O2(30%溶液)を、この撹拌溶液にゆっくりと加える。H2O2添加が完了した後、溶液を、室温でさらに60分間、さらに撹拌する。次に、得られる不活性化SDS反応物を含有する溶液を1Lのガラス瓶中に排出し、これが、安定化界面活性剤を重合反応中にポンプ注入するのに使用される溶液である。Witconate(登録商標)NAS−8界面活性剤として入手可能な、水に溶解させた溶液としてILのガラス瓶に加えることを除いて、同じ不活性化手順をSOSに使用して、同じ10.5gmのSOSを得る。
SDSおよびSOS安定化界面活性剤の不活性化により、より多い量の分散されたPTFEを作製するためのバッチ時間がはるかに短くなる。
実施例11
この実施例は、改質PTFEの調製を提供する。安定化界面活性剤の不活性化を、重合反応器へのその添加の前に行う。
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。オートクレーブに、0.02gmのPluronic(登録商標)31R1および0.4gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、大気圧になるまで通気する。オートクレーブを、窒素を用いて加圧し、さらに2回通気する。撹拌器速度を65RPMに設定し、反応器を90℃まで加熱する。水のリットル当たり0.5gmの過硫酸アンモニウム(APS)を含有する40mlの開始剤溶液を反応器に加える。これが事前充填組成物である。Pluronic界面活性剤、塩、および開始剤の濃度はそれぞれ、3.4ppm、69.6ppm、3.5ppmである。
12.0gmのヘキサフルオロプロピレン(HFP)および650gmのTFEを反応器に充填して、反応器圧力を400psig(2.86MPa)にすることによって、反応器を圧力上昇させる。時間ゼロの時点で、11.67gmのジコハク酸ペルオキシド溶液(70重量%のDSP)、0.17gmの過硫酸アンモニウムおよび488.3gmの脱イオン化脱気水から構成される150mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填する。開始剤の注入の開始から2.0分後、反応器圧力は、開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下する。オートクレーブ圧力を、TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。キックオフしてから100gmのTFEを供給した後、安定化界面活性剤溶液(後述される調製)を、実行の終了まで4ml/分(0.28g/l−時)の速度で反応器にポンプ注入する。水性媒体への界面活性剤添加を開始する際のこの遅延は、水性媒体中の改質PTFEの1.67重量%の濃度に対応する。キックオフしてから155.6分後、3100gmのTFEおよび688mlの安定剤界面活性剤溶液を反応器に加えた。撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。冷ましてから、液体ワックスを分散体から分離し、分散体をろ過して、非分散固形分(凝塊)を除去する。反応器を開け、全ての凝塊を反応器から除去する。反応器除去物をろ過された固形分と組み合わせて、真空オーブン中で乾燥させる。凝塊(全非分散固形分)の測定値を得るために、このポリマーに付着している液体ワックスを、ポリマーを遠心分離し、ブロッティングすることによってさらに除去する。この場合、全凝塊が120.4gmであると測定される。回収される全液体ワックスは208.7gmである。分散されたフルオロポリマー粒子は、この分散体を含有する32.8重量%の水性媒体を構成する。分散された粒子は、255nmの体積基準による平均粒径、Dv(50)を有する。分散体を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウム水溶液を加えた後、ポリマー粒子が水から完全に分離するまで激しく撹拌することによって、これらの粒子を凝固させる。ポリマーを、真空オーブン中110℃で12時間乾燥させる。第1の熱についてDSCによって測定されるこのポリマーの融点は335℃である。FTIRによる組成分析により、0.5重量%のHFPが示される。この改質PTFEは、106を超える分子量(Mn)および106Pa・sを超える溶融クリープ粘度および334℃(第1の加熱)を超える溶融温度を有する。
安定剤界面活性剤溶液を以下のように調製する:
1リットルの被覆された丸底フラスコに、492.5gmの脱イオン化脱気水、7.5gmのドデシル硫酸ナトリウム(ACS Reagent、>99.0%)および0.225gmの硫酸Fe(+2)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで内容物を撹拌する。2滴の濃硫酸を用いて、溶液のpHを3.22に調整する。18.75gmの30重量%の過酸化水素を混合物に加える。混合物を、撹拌しながら40℃まで加熱し、その温度で2時間保持して、SDSを不活性化する。溶液を排出し、氷浴中で冷却して、急速に流体を周囲温度にする。最終的な混合物は、2.76のpHを有する。
実施例12
この実施例は、重合反応器への添加の前に様々な温度で不活性化される安定化界面活性剤からの重合結果を比較する。不活性化手順は以下のとおりである:1リットルの被覆された丸底フラスコに、681.74gmの脱イオン化脱気水、10.5gmのドデシル硫酸ナトリウム(ACS Reagent、>99.0%)および0.315gmの硫酸Fe(+2)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで内容物を撹拌する。12〜18滴の濃硫酸を用いて、溶液のpHを2.0〜2.5に調整する。温度が調節された水をフラスコジャケットに通して循環させることによって、表E中の実験E−1、E−2、およびE−3について示されるような所望の不活性化温度(PT)に混合物を保持しながら、37.34gmの30重量%の過酸化水素を混合物に加える。混合物を、排出する前に1時間撹拌し、氷浴を用いて室温まで急冷する。
重合手順は以下のとおりである:2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。オートクレーブに、0.085gmのPluronic(登録商標)31R1、0.02gmのTriton(登録商標)X−100および0.4gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回真空にする。撹拌器速度を65RPMに設定し、反応器を90℃まで加熱する。0.04gのAPS開始剤を、次に、加熱された水性媒体(脱イオン化脱気水中、80mlの0.5g/l開始剤溶液)に充填して、6.9ppmの事前充填物中のAPS濃度を得る。界面活性剤濃度はそれぞれ、14.7ppmおよび3.5ppmであり、塩濃度は、水性媒体中70ppmである。TFEを反応器に充填して、反応器圧力を400psig(2.86MPa)にする。時間ゼロの時点で、11.67gm(70%活性)のジコハク酸ペルオキシド、0.17gmの過硫酸アンモニウム(APS)および488.3gmの脱イオン化脱気水から構成される150mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填する。開始剤注入の開始から約7分間で、反応器圧力は、開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下する。オートクレーブ圧力を、補充TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、補充TFEの連続添加によって、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。キックオフしてから100gmのTFEを供給した後、界面活性剤溶液を、実行の終了まで4ml/分の速度で反応器にポンプ注入する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始させる際のこの遅延は、1.66重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応し、水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は0.29g/l−時である。バッチ時間(キックオフから補充TFEの添加の終了までの時間)を下表に示す。3100gmの補充TFEを反応器に加えた後、撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。冷ましてから、液体ワックスを分散体から分離し、分散体をろ過して、非分散固形分を除去する。反応器を開け、全ての付着されたポリマーを反応器から除去する。反応器除去物をろ過された固形分と組み合わせて、真空オーブン中で乾燥させる。凝塊(全非分散固形分)の測定値を得るために、このポリマーに付着している液体ワックスを、ポリマーを遠心分離し、ブロッティングすることによってさらに除去する。これらの実施例においてこのように得られる凝塊は35〜38グラムである。生成される水性分散体は、9.7kgであり、34%の固形分および下表Eに示されるように体積基準による平均粒径、Dv(50)を有する。分散体を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウム水溶液を加えた後、ポリマーが水から完全に分離するまで激しく撹拌することによって、ポリマーを凝固させる。ポリマーを、真空オーブン中110℃で12時間乾燥させる。PTFEは、実施例11に記載されるPTFEの分子量および溶融クリープ粘度特性を示す。
バッチ時間は、40℃における安定化界面活性剤の不活性化からより低い温度における不活性化へと急激に減少する。
実施例13
この実施例は、不活性化された安定化界面活性剤および不活性化されていない安定化界面活性剤を用いた重合性能を比較する。安定化界面活性剤の不活性化を、重合反応器への添加の前に行う。
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。オートクレーブに、0.075gmのPluronic(登録商標)31R1および0.2gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回真空にする。反応器撹拌器を65RPMに設定する。反応器を90℃まで加熱し、脱イオン化脱気水のリットル当たり0.5gmのAPSを含有する100mlの開始剤を反応器に加え、事前充填組成物中8.6ppmのAPS濃度を得る。界面活性剤の濃度は12.9ppmであり、塩の濃度は34.5ppmである。
690gmのTFEを反応器に加えて、反応器圧力を400psig(2.86MPa)にする。時間ゼロの時点で、脱イオン化脱気水のリットル当たり0.5gmのAPSを含有する150mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填し、次に、ポンプ速度を、重合の持続時間にわたって1.0ml/分に低下させる。充填開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下するのに必要な時間(時間ゼロからの)としてキックオフを測定する。キックオフは2分で起こり、オートクレーブ圧力を、補充TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、補充TFEの連続添加によって、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。300gmの補充TFEを反応器に加えた後、水のリットル当たり8.0gmの不活性化されていないドデシル硫酸ナトリウムを含有するポンプ溶液を、合計300gmの溶液を加えてしまうまで、2.0ml/分の速度で反応器に加える。キックオフとSDS添加の開始との間の時間遅延は9.3分間であり、この時間遅延の終了の時点での水性媒体中のPTFEの濃度は4.79重量%であり、界面活性剤の計量供給速度は0.08g/l−時である。時間ゼロから197分後、2200gmの補充TFEを反応器に加えてから、撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。このように作製されるPTFE分散体は、28%の固形分および213nmの未処理の分散体の粒径を有する。ある量の分散体を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウムの水溶液を加え、激しく撹拌して、水相からポリマーを分離することによって、ポリマー試料を得る。ポリマーを脱イオン水で洗浄し、真空オーブン中110℃で約12時間乾燥させてからさらに分析する。PTFEは、実施例11に記載されるようなPTFEの特性を示す。
300gmの補充TFEを反応器に加えた後、水のリットル当たり14.4gmの不活性化されたドデシル硫酸ナトリウムを含有するポンプ溶液を、2200gmの補充TFEを反応器に加えた時点の実行の終了まで1.67ml/分の速度で反応器に加えることを除いて、上記の実験を繰り返す。水性媒体への活性化されたSDSの添加を開始させる際の遅延は9.7分間であり、遅延の終了の時点でのPTFE濃度は4.79重量%であり、水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は0.12g/l−時である。加えられる不活性化されたドデシル硫酸ナトリウム溶液の合計量は115mlである。79分間のバッチ時間は、前の段落における不活性化されていない実験より著しく少ない。分散体は26.5%の固形分であり、175nmの未処理の分散体の粒径を有する。PTFEは、実施例11に記載されるようなPTFEの特性を示す。
SDSの不活性化を、以下の手順によって行う:1リットルの被覆された丸底フラスコ中に、681.74gmの脱イオン化脱気水、10.5gmのドデシル硫酸ナトリウム(ACS Reagent、>99.0%)および0.315gmの硫酸鉄(+2)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで内容物を撹拌する。12〜18滴の濃硫酸を用いて、溶液のpHを2.0〜2.5に調整する。温度が調節された水をフラスコジャケットに通して循環させることによって、混合物を22℃に保持しながら、37.34gmの30重量%の過酸化水素を混合物に加える。混合物を、不活性化された安定化界面活性剤の溶液として重合に使用するために排出する前に1時間撹拌する。
この実施例において、不活性化助剤、Fe+2の量は、重合反応器に加えられる、炭化水素含有界面活性剤、SDSの総重量を基準にして0.603重量%である。バッチの終了時の反応器中の水を基準にしたFe+2の量は1.62ppmである。
実施例14
この実施例は、安定化界面活性剤としてエトキシ化アニオン性界面活性剤を用いてPTFEを作製するための重合を開示する。安定化界面活性剤の不活性化を、重合反応器へのその添加の前に行う。
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。オートクレーブに、0.085gmのPluronic(登録商標)31R1、0.02gmのTriton(登録商標)X−100および0.4gmのNa2SO3を含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回真空にする。反応器撹拌器を65RPMに設定し、反応器を90℃まで加熱する。脱イオン化脱気水のリットル当たり0.5gmの過硫酸アンモニウム(APS)を含有する80mlの開始剤溶液を反応器に加え、6.9ppmの水性事前充填物中のAPS濃度を得る。水性媒体中の界面活性剤の濃度はそれぞれ、14.7ppmおよび3.5ppmであり、塩の濃度は69.2ppmである。TFEを反応器に充填して、反応器圧力を400psig(2.86MPa)にする。時間ゼロの時点で、水のリットル当たり0.33gmのAPSおよび23.33gmの70重量%の活性ジコハク酸ペルオキシド(DSP)を含有する脱イオン化脱気水中の150mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填する。キックオフ時間を、時間ゼロの時点に開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下するのに必要な時間(時間ゼロからの)として測定する。キックオフは6.8分で起こる。オートクレーブ圧力を、補充TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、重合の持続時間にわたって補充TFE流れを調整することによって、その圧力に維持する。100gmの補充TFEを供給した後、Avanel(登録商標)S70を含有する不活性化された安定化溶液を、実行の終了まで4ml/分の速度でポンプ注入する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始させる際のこの遅延は7.9分間であり、重量%の遅延は、1.66重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応し、水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は0.288g/l−時である。時間ゼロから2200gmのTFEを反応器に加えた後、撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。得られる水性分散体は、178nmの体積基準による平均粒径、Dv(50)を有する24.7%の固形分を有する。分散体を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウム水溶液を加えた後、ポリマーが水から完全に分離するまで激しく撹拌することによって、ポリマーを凝固させる。PTFEを、真空オーブン中110℃で12時間乾燥させ、それが実施例11のPTFEの特性を示すことが分かる。
Avanel(登録商標)界面活性剤を不活性化させるための手順は以下のとおりである:
1リットルのガラス瓶に、30gmのAvanel(登録商標)S70溶液(10.5gmの活性界面活性剤)、662.24gmの脱イオン化脱気水および0.315gmの硫酸鉄(+2)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで混合物を撹拌する。12〜16滴の濃硫酸を用いて、この混合物のpHを2.0〜2.5に調整する。撹拌し、22〜23℃に保持しながら、37.34gmの30重量%の過酸化水素を、1〜2分間かけて混合物にゆっくりと加える。過酸化水素の添加の後、撹拌を1時間継続してから、得られる不活性化された界面活性剤溶液を上記の重合に使用する。
この実施例において、不活性化助剤、Fe+2の量は、重合反応器に加えられる、炭化水素含有界面活性剤、Avanel(登録商標)S70の総重量を基準にして0.603重量%である。バッチの終了時の反応器中の水を基準にしたFe+2の量は6.84ppmである。
上記の実施例において得られるPTFEおよび改質PTFEは全て、0のMFR(ASTM D 1238、372℃、5kgのおもり)を示し、これは、非常に高い分子量のためのPTFEの非溶融流動性を示している。
実施例15
この実施例は、安定化界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを用いてVF2/HFP/TFEのフルオロエラストマーを作製するための重合を開示する。安定化界面活性剤の不活性化を、重合反応器へのその添加の前に行う。
40リットルの、垂直に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブ反応器に、23000gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器に、0.04gmのPluronic(登録商標)31R1および2.02gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の2016gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器を、出発モノマー混合物(4.0重量%のフッ化ビニリデン(VF2)、86.0重量%のヘキサフルオロプロペン(HFP)、および10.0重量%のテトラフルオロエチレン(TFE))で410kPaになるまでパージし、排気する。反応器中の酸素が100ppm未満になるまでこのパージ手順を繰り返す。1重量%の過硫酸アンモニウムおよび5重量%のリン酸二ナトリウム七水和物の16mlの開始剤溶液を反応器に加える。反応器を80℃まで加熱する。反応器を、2120グラムの出発モノマー(上記の組成を有する)を用いて加圧する。加圧の終了の時点で、反応器圧力は2068kPaである。時間ゼロの時点で、1重量%の過硫酸アンモニウムおよび5重量%のリン酸二ナトリウム七水和物の50mlの開始剤溶液を反応器に加えて、重合を開始させる。反応器圧力が降下するにつれて、35.0重量%のVF2と、37.0重量%のHFPと、28.0重量%のTFEとの新鮮な原料モノマー混合物を反応器に供給して、2068kPaの圧力を維持する。追加の開始剤溶液を、30分毎に10mlの増分で加えて、重合速度を維持する。200gmの新鮮な原料モノマー混合物を供給した後、後述されるように調製される安定化界面活性剤溶液を、7916gmの新鮮な原料モノマーを供給するまで3000gmのモノマー当たり233mlの速度で反応器にポンプ注入する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始する際のこの遅延は、0.79重量%の水性媒体中のポリマー濃度に対応し、水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は0.01g/l−時である。合計510mlの開始剤溶液および23.5時間に相当する、合計8333gmの増分の新鮮な原料モノマーを供給した後、モノマーおよび開始剤の供給を中断する。反応器を冷却し、反応器中の圧力を大気圧まで低下させる。得られるフルオロエラストマーラテックスは、23.6重量%固形分の固形分、3.17のpH、および260nmの平均粒径を有する。ラテックスを、硫酸アルミニウム溶液を用いて凝固させ、脱イオン水で洗浄し、乾燥させる。フルオロエラストマーは、0.57dl/gの固有粘度、118の、121℃におけるムーニー粘度、ML(1+10)を有し、33.5重量%のVF2、38.4重量%のHFP、および28.1重量%のTFEを含有する。
安定化界面活性剤溶液を以下のように調製する:1リットルの被覆された丸底フラスコに、492.5gmの脱イオン化脱気水、7.5gmのドデシル硫酸ナトリウム(ACS Reagent、>99.0%)および0.225gmの硫酸Fe(+2)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで内容物を撹拌する。2滴の濃硫酸を用いて、溶液のpHを3に調整する。18.75gmの30重量%の過酸化水素を混合物に加える。混合物を、撹拌しながら40℃まで加熱し、その温度で2時間保持する。溶液を排出し、氷浴中で冷却して、急速に流体を周囲温度にする。最終的な混合物は、3のpHを有する。
この実施例において、不活性化助剤、Fe+2の量は、重合反応器に加えられる、炭化水素含有界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウムの総重量を基準にして0.603重量%である。バッチの終了時の反応器中の水を基準にしたFe+2の量は2.0ppmである。
実施例16
この実施例は、安定化界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを用いてTFE/PMVEのフルオロエラストマーを作製するための重合を開示する。安定化界面活性剤の不活性化を、重合反応器へのその添加の前に行う。
40リットルの、垂直に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブ反応器に、23000gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器に、0.04gmのPluronic(登録商標)31R1および2.02gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の2016gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器を、出発モノマー混合物(25.0重量%のテトラフルオロエチレン(TFE)および75.0重量%のパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE))で410kPaになるまでパージし、排気する。反応器中の酸素が100ppm未満になるまでこのパージ手順を繰り返す。1重量%の過硫酸アンモニウムおよび5重量%のリン酸二ナトリウム七水和物の16mlの開始剤溶液を反応器に加える。反応器を80℃まで加熱する。反応器を、2344グラムの出発モノマー(上記の組成を有する)を用いて加圧する。加圧の終了の時点で、反応器圧力は2068kPaである。時間ゼロの時点で、1重量%の過硫酸アンモニウムおよび5重量%のリン酸二ナトリウム七水和物の50mlの開始剤溶液を反応器に加えて、重合を開始させる。反応器圧力が降下するにつれて、50.0重量%のTFEと50.0重量%のPMVEとの新鮮な原料モノマー混合物を反応器に供給して、2068kPaの圧力を維持する。追加の開始剤溶液を、30分毎に10mlの増分で加えて、重合速度を維持する。200gmの新鮮な原料モノマー混合物を供給した後、実施例15に記載されるように調製される安定化界面活性剤溶液を、7916gmの新鮮な原料モノマーを供給するまで3000gmのモノマー当たり233mlの速度で反応器にポンプ注入する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始する際のこの遅延は、0.79重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応し、水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は0.0065g/l−時である。合計760mlの開始剤溶液および36時間に相当する、合計8333gmの増分の新鮮な原料モノマーを供給した後、供給されるモノマーおよび開始剤を中断する。反応器を冷却し、反応器中の圧力を大気圧まで低下させる。得られるフルオロエラストマーラテックスは、22.9重量%固形分の固形分、3.2のpH、および336nmの平均粒径を有する。ラテックスを、硫酸アルミニウム溶液を用いて凝固させ、脱イオン水で洗浄し、乾燥させる。フルオロエラストマーは、94の、175℃におけるムーニー粘度、ML(1+10)を有し、50.9重量%のTFEおよび49.1重量%のPMVEを含有する。
この実施例において、不活性化助剤、Fe+2の量は、重合反応器に加えられる、炭化水素含有界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウムの総重量を基準にして0.603重量%である。バッチの終了時の反応器中の水を基準にしたFe+2の量は1.98ppmである。
実施例17
実施例は、FEPの調製を提供する。
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼反応器に、6000gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器に、0.015gmのPluronic(登録商標)31R1および0.1gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器を密閉し、真空下に置く。反応器圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回排気する。撹拌を開始させ、撹拌器速度を75RPMに設定する。反応器を95℃まで加熱する。脱イオン化脱気水のリットル当たり22gmの過硫酸アンモニウムを含有する2.6mlの開始剤溶液を反応器に加える。界面活性剤、塩および開始剤の濃度はそれぞれ、2.3ppm、15.4ppm、8.8ppmである。
反応器圧力を435psig(3.10MPa)にするために、HFPおよびTFEを、1.857/1のHFP/TFEの重量比で反応器に充填する。時間ゼロの時点で、30mlの上記の開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填し、次に開始剤を、実行の終了まで1.5ml/分で連続してポンプ注入する。反応器圧力が425psig(3.03MPa)まで降下するときに、開始剤注入の開始から3.5分後にキックオフが起こる。実行の持続時間にわたって、TFEの添加によって反応器圧力を425psig(3.03MPa)に制御する。キックオフしてから300gmのTFEを供給した後、100gmの溶液当たり1.45gmの不活性化ドデシル硫酸ナトリウムを含有する界面活性剤溶液を、実行の終了まで0.75ml/分の速度で反応器にポンプ注入する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始する際の遅延は37.5分間であり、4.9重量%の水性媒体中のFEP濃度に対応する。水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は、0.054g/l−時である。安定化界面活性剤(SDS)の不活性化処理は、実施例9に記載されるのと同じである。キックオフしてから248分後、2000gmのTFEおよび158mlの界面活性剤溶液を反応器に加えた。撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。23.2重量%の固形分および165nmの未処理の分散体の粒径を有する8.70kgの水性分散体を生成する。チーズクロスを通した分散体のろ過および反応器の清浄化から得られる凝塊を、真空オーブン中で乾燥させると、270gmになる。分散体試料の凍結、それに続く解凍、ろ過、洗浄および乾燥によってポリマーを単離する。ポリマーは、FTIRによって測定した際に10.6重量%のHFPを含有し、273℃の融点を有する。