フルオロモノマー/フルオロポリマー
「フルオロポリマー」という用語は、本明細書において集合的な意味を有し、すなわち、この用語は、特に示されない限り、フッ素プラスチックおよびフルオロエラストマーを含む。この用語は、フッ素プラスチックの化学種としてのパーフルオロプラスチックを含むフッ素プラスチックまたはフルオロエラストマーである一般的なポリマーおよび特定のポリマー、ならびにPTFE、PFAおよびFEPなどのこの節において以下に開示される一般的なポリマーおよび特定のポリマーも含む。したがって、フルオロポリマー粒子の分散体を調製するための本発明の重合方法を行うための様々な好ましいものは、以下の節に含まれる一般的なポリマーおよび特定のポリマーのいずれかおよび全ての分散体の調製にも適用可能である。同じことは、親油性核形成部位を調製するのに使用される成分の様々な濃度および属性ならびに炭化水素含有化合物/界面活性剤およびハロゲン含有界面活性剤からの水性重合媒体の実質的自由度に当てはまる。
本発明によって形成されるフルオロポリマー水性分散体は、少なくとも1つのフッ素化モノマー(フルオロモノマー)(すなわち、モノマーの少なくとも1つがフッ素を含有する)、好ましくは、少なくとも1つのフッ素またはパーフルオロアルキル基が二重結合された炭素に結合されたオレフィンモノマーから作製されるフルオロポリマーの粒子を含む。本発明の方法に使用されるフッ素化モノマーおよびそれから得られるフルオロポリマーはそれぞれ、好ましくは少なくとも35重量%のF、好ましくは少なくとも50重量%のFを含有し、フッ素化モノマーは、好ましくは、独立して、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアルキルエチレン、フルオロビニルエーテル、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VF2)、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)およびパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましいパーフルオロアルキルエチレンモノマーは、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)である。好ましいフルオロビニルエーテルとしては、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、およびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)などのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)モノマー(PAVE)が挙げられる。エチレンおよびプロピレンなどの非フッ素化オレフィンコモノマーが、フッ素化モノマーと共重合され得る。
フルオロビニルエーテルとしては、フルオロポリマーに官能基を導入するのに有用なものも挙げられる。これらには、CF2=CF−(O−CF2CFRf)a−O−CF2CFR’fSO2F(式中、RfおよびR’fが、独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0、1または2である)が含まれる。このタイプのポリマーは、米国特許第3,282,875号明細書(CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F、パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド))、ならびに米国特許第4,358,545号明細書および同第4,940,525号明細書(CF2=CF−O−CF2CF2SO2F)に開示されている。別の例は、米国特許第4,552,631号明細書に開示されている、CF2=CF−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2CF2CO2CH3、パーフルオロ(4,7−ジオキサ−5−メチル−8−ノネンカルボン酸)のメチルエステルである。ニトリル、シアネート、カルバメート、およびホスホン酸の官能基を有する同様のフルオロビニルエーテルは、米国特許第5,637,748号明細書;同第6,300,445号明細書;および同第6,177,196号明細書に開示されている。
本発明は、水性媒体中の改質PTFEを含むポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の分散体を生成する場合の重合に特に有用である。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、(a)コモノマーがそれほど存在しない、すなわちホモポリマーである重合テトラフルオロエチレン自体および(b)改質PTFE(得られるポリマーの融点がPTFEの融点よりそれほど低くないような低濃度のコモノマーとTFEとのコポリマーである)を指す。改質PTFEは、処理を向上させるために結晶性を低下させる少量のコモノマー改質剤を含有し、このようなモノマーの例は、パーフルオロオレフィン、特にヘキサフルオロプロピレン(HFP)またはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)(ここで、アルキル基は、1〜5個の炭素原子を含有し、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が好ましい)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、またはかさ高い側基を分子中に導入する他のモノマーなどである。このようなコモノマーの濃度は、PTFE中に存在するTFEおよびコモノマーの総重量を基準にして、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である。有意な効果を与えるための最少量の少なくとも約0.05重量%が使用されるのが好ましい。PTFE(および改質PTFE)は、典型的に、少なくとも約1×106Pa・s、好ましくは少なくとも1×108Pa・sの溶融クリープ粘度を有し、このような高い溶融粘度では、ポリマーは、溶融状態で流動せず、したがって溶融処理可能ポリマーではない。溶融クリープ粘度の測定は、米国特許第7,763,680号明細書の第4欄に開示されている。PTFEの高い溶融粘度は、例えば少なくとも106といった極めて高い分子量(Mn)から生じる。PTFEは、少なくとも330℃(第1の加熱)、通常少なくとも331℃、ほとんどの場合少なくとも332℃(全ての第1の熱)の、その高い溶融温度も特徴とし得る。その非常に高い溶融粘度から生じるPTFEの非溶融流動性はそれ自体、メルトフローレート(MFR)が、ASTM D 1238に準拠して、372℃でおよび5kgのおもりを用いて測定されるときの非溶融流動状態として現れる。この非溶融流動状態は、0のMFRである。PTFEの高い溶融粘度は、溶融PTFEが、第1の加熱から冷却される際に「重合されたままの」結晶構造を改変する能力を低下させる。結果として、この高い溶融粘度は、PTFEを溶融するために第1の熱(例えば少なくとも75J/g)と比較した際に、第2の熱のために得られるはるかに低い融解熱(例えば最大で55J/g)につながり、これは、少なくとも20J/gの融解熱の差を表す。PTFEの高い溶融粘度により、その標準比重(SSG)を、極めて高い分子量の特徴として測定することができる。SSG測定手順(米国特許第4,036,802号明細書にも記載されているASTM D 4894)は、SSG試料の寸法の変化なしでその溶融温度を超えて(封入なしで)自立しているSSG試料の焼結を含む。SSG試料は、焼結の際に流動しない。
本発明の方法は、上記のPTFEと区別するためにPTFE微粉末として一般的に知られている低分子量PTFEを重合するのにも有用である。PTFE微粉末の分子量は、PTFEと比べて低く、すなわち、分子量(Mn)は、一般に、104〜105の範囲である。PTFE微粉末のこのより低い分子量の結果は、PTFE微粉末が、溶融流動性ではないPTFEと対照的に、溶融状態で流動性を有することである。PTFE微粉末は、ASTM D 1238に準拠して、溶融ポリマーに対する5kgのおもりを用いて372℃で測定した際に、少なくとも0.01g/10分、好ましくは少なくとも0.1g/10分、より好ましくは少なくとも5g/10分、さらにより好ましくは少なくとも10g/10分のメルトフローレート(MFR)を特徴とし得る溶融流動性を有する。
低分子量のPTFE微粉末は、ポリマーに溶融流動性を与える一方、PTFE微粉末自体は溶融加工性ではなく、すなわち、PTFE微粉末の溶融物から成形される物品は、極度の脆弱性のために役に立たない。(非溶融流動性PTFEと比べて)その低分子量のため、それは強度を有さない。PTFE微粉末の押出しフィラメントは、非常に脆弱であるため、曲げると破断する。一般に、圧縮成形プラークは、圧縮型から取り外すときに割れるかまたは砕けるため本発明に使用されるPTFE微粉末の引張り試験または屈曲試験用に作製することができず、それによって、引張り特性もMIT屈曲寿命も試験することができない。実際には、このポリマーは、皆無(0)の引張り強さ、およびゼロサイクルのMIT屈曲寿命を有する。これに対し、例えば、少なくとも1000サイクル、好ましくは少なくとも2000サイクルのMIT屈曲寿命(8ミル(0.21mm)の厚さの圧縮成形膜を用いたASTM D−2176)によって示されるように、PTFEは脆弱ではなく可撓性である。
本発明は、溶融加工性でもある溶融処理可能フルオロポリマーの分散体を生成するのに有用である。溶融処理可能は、フルオロポリマーが、溶融状態で処理され得る、すなわち、押出し機および射出成形機などの従来の処理装置を用いて溶融物から、フィルム、繊維、およびチューブなどの成形品に加工され得ることを意味する。溶融加工性は、得られる加工物品が、それらの意図される目的に有用であるように十分な強度および靱性を示すことを意味する。この十分な強度は、フルオロポリマー自体が、上述されるように測定される、少なくとも1000サイクル、好ましくは少なくとも2000サイクルのMIT屈曲寿命を示すことを特徴とし得る。フルオロポリマーの強度は、それが脆弱でないことによって示される。以下に記載されるフルオロポリマーは、特に示されない限り、溶融処理可能かつ溶融加工性である。
このような溶融処理可能フルオロポリマーの例としては、ポリクロロトリフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのホモポリマー、またはテトラフルオロエチレン(TFE)と、コポリマーの融点をPTFEの融点より実質的に低く、例えば、315℃以下の溶融温度に低下させるのに十分な量で通常ポリマー中に存在する少なくとも1つのフッ素化共重合性モノマー(コモノマー)とのコポリマーが挙げられる。
溶融処理可能TFEコポリマーは、典型的に、ASTM D−1238に準拠して、溶融ポリマーに対する5kgのおもりおよび特定のコポリマーに標準的な溶融温度を用いて測定した際に0.1〜200g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するコポリマーを提供するために、ある量のコモノマーをコポリマーに組み込む。MFRは、好ましくは1〜100g/10分、最も好ましくは約1〜約50g/10分の範囲である。さらなる溶融加工性フルオロポリマーは、エチレン(E)またはプロピレン(P)と、TFEまたはCTFEとのコポリマー、特にETFEおよびECTFEである。
本発明の実施に使用するための好ましい溶融加工性コポリマーは、少なくとも40〜99モル%のテトラフルオロエチレン単位および1〜60モル%の少なくとも1つの他のモノマーを含む。さらなる溶融加工性コポリマーは、60〜99モル%のPTFE単位および1〜40モル%の少なくとも1つの他のモノマーを含有するものである。パーフルオロポリマーを形成するためのTFEとの好ましいコモノマーは、パーフルオロモノマー、好ましくは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、および/またはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)(ここで、直鎖状または分枝鎖状アルキル基が1〜5個の炭素原子を含有する)などの3〜8個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィンである。好ましいPAVEモノマーは、アルキル基が1、2、3または4個の炭素原子を含有するものであり、コポリマーは、いくつかのPAVEモノマーを用いて作製され得る。好ましいTFEコポリマーとしては、FEP(TFE/HFPコポリマー)、PFA(TFE/PAVEコポリマー)、TFE/HFP/PAVE(ここで、PAVEが、PEVEおよび/またはPPVEである)、MFA(TFE/PMVE/PAVE(ここで、PAVEのアルキル基が少なくとも2個の炭素原子を有する)およびTHV(TFE/HFP/VF2)が挙げられる。
さらなる有用なポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびフッ化ビニリデンのコポリマーならびにポリフッ化ビニル(PVF)およびフッ化ビニルのコポリマーの皮膜形成ポリマーである。
全てのこれらの溶融加工性フルオロポリマーは、溶融加工性TFEコポリマーについて上に記載されるMFRによって、すなわち、PFAおよびFEPのMFR測定用の可塑度計における溶融ポリマーに対する5kgのおもりを含む、特定のポリマー用の標準条件を用いたASTM 1238の手順によって特性決定され得る。上記のフルオロポリマーの全ては、フルオロエラストマーではなく、パーフルオロプラスチックを含むフッ素プラスチックである。フッ素プラスチックは、フルオロエラストマーの基本特性、すなわち、低い曲げ弾性率、高い伸び、および架橋後の、変形からの迅速な回復の組合せを有さない。パーフルオロプラスチックを含むフッ素プラスチックは、ほとんどの場合、結晶性および溶融温度を示す。好ましいフッ素プラスチックおよびパーフルオロプラスチックは、それらが、ASTM D−4591に準拠して測定した際の少なくとも9J/gmの示差走査熱量測定(DSC)による融解熱を有するかまたは、TFE/PDDコポリマーなど、非結晶質である場合、50℃以上のガラス転移温度を有するほど十分な結晶性を有する。
本発明は、フッ化炭素エラストマー(フルオロエラストマー)の分散体を生成する場合にも有用である。これらのエラストマーは、典型的に、25℃未満のガラス転移温度を有し、室温でほとんどまたは全く結晶性を示さず、溶融温度を示さない。本発明の方法によって作製されるフルオロエラストマーは、典型的に、フルオロエラストマーの総重量を基準にして25〜75重量%の、フッ化ビニリデン(VF2)またはテトラフルオロエチレン(TFE)であり得る第1のフッ素化モノマーの共重合単位を含有するコポリマーである。フルオロエラストマーの残りの単位は、フッ素化モノマー、炭化水素オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、第1のモノマーと異なる1つ以上のさらなる共重合モノマーを含む。本発明の方法によって調製されるフルオロエラストマーは、任意選択的に、1つ以上の硬化部位モノマーの単位も含み得る。存在する場合、共重合された硬化部位モノマーは、典型的に、フッ化炭素エラストマーの総重量を基準にして、0.05〜7重量%のレベルである。好適な硬化部位モノマーの例としては:i)臭素含有、ヨウ素含有、または塩素含有フッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテル;ii)ニトリル基含有フッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテル;iii)パーフルオロ(2−フェノキシプロピルビニルエーテル);およびiv)非共役ジエンが挙げられる。
好ましいTFE系フルオロエラストマーコポリマーとしては、TFE/PMVE、TFE/PMVE/E、TFE/PおよびTFE/P/VF2が挙げられる。好ましいVF2系フッ化炭素エラストマーコポリマーとしては、VF2/HFP、VF2/HFP/TFE、およびVF2/PMVE/TFEが挙げられる。これらのエラストマーコポリマーのいずれも、硬化部位モノマーの単位をさらに含んでいてもよい。
上に開示したフッ素プラスチックから、好ましいフッ素プラスチックはパーフルオロプラスチックであり、これらは、それらの高分子量およびこの高分子量が得られないようにする水性重合媒体中に存在するテロゲン活性に対する感受性のため、作製するのが最も難しい。これは、架橋から強度を得る、はるかに低い分子量のエラストマーと比較した際に、少なくとも1,000,000、通常、2,000,000を超える分子量(Mn)を有するPTFEに特に当てはまる。パーフルオロプラスチックは、コモノマー、末端基、または側基構造を除外できるであろうが、ポリマーの鎖または主鎖を形成する炭素原子上の一価置換基が全てフッ素原子であるポリマーである。好ましくは、コモノマー、末端基、または側基構造は、パーフルオロプラスチックの総重量に対して、2重量%以下のC−H部分、より好ましくは1重量%以下のC−H部分を与える。好ましくは、パーフルオロプラスチックの水素含量は、もしあれば、パーフルオロプラスチックの総重量を基準にして0.2重量%以下である。フルオロエラストマーは、架橋によってそれらの寸法完全性(dimensional integrity)を増し、それによって、寸法完全性は、重合方法により、より低い分子量のポリマーが作製される場合、すなわち、水性重合媒体におけるテロゲン活性の存在が、PTFEよりフルオロエラストマーの作製に対して許容できる場合に十分なものになる。PTFEを作製するための重合は、上述されるようなPTFEの非常に高い分子量のために難しい。本発明の特別な成果は、全体的に炭化水素をベースとする核形成/安定化系、すなわち、核形成部位の前駆体としての炭化水素化合物/界面活性剤および安定化界面活性剤としての炭化水素界面活性剤を用いてこの高分子量PTFEを作製するその能力であり、すなわちハロゲン含有界面活性剤が使用されず、または水性重合媒体中に存在しない。
別の群の好ましいフッ素プラスチックは、ポリマー鎖が、75重量%を超えるパーフルオロモノマー単位、好ましくはTFE、HFP、およびそれらの混合物、好ましくは少なくとも78重量%のこのような繰返し単位、より好ましくは少なくとも80重量%のこのような繰返し単位、最も好ましくは少なくとも85重量%のこのような単位から構成されるものである。TFEは、好ましいパーフルオロモノマー繰返し単位である。コポリマーのうちの合計100重量%になるまでの残りの繰返し単位は、パーフルオロプラスチックを形成するための上記のC−H含有コモノマーまたはハロカーボンコモノマー、好ましくはパーフルオロオレフィンHFPおよびPAVEから選択され得る。好ましいフッ素プラスチックは、25重量%以下のVF2、より好ましくは、20重量%以下、さらにより好ましくは15重量%以下を含む。
キックオフの前の核形成部位形成
本発明の好ましい実施形態の実施の際、核形成部位形成は、重合反応器中で行われ得る。反応器は、内部に水性媒体用の撹拌器を備えており、望ましい反応速度のための、重合反応のキックオフ時およびキックオフ後における遊離基とTFEなどのモノマーとの間で結果的に生じる十分な相互作用ならびに重合反応に用いられる場合のコモノマーの均一な組み込みを提供する。反応温度が制御された温度の熱交換媒体の循環によって好都合に制御され得るように、反応器は、好ましくは、反応器を囲むカバーを含む。
親油性核形成部位の分散体を形成するための典型的なプロセスにおいて、反応器には、充填されるにつれて脱気されるかまたは反応器に充填した後に脱気される脱イオン水が充填される。溶解された開始剤、水溶性炭化水素含有化合物、塩、または安定化界面活性剤を含有するものなどの、反応器に加えられる任意の追加の水も脱イオン化され、脱気される。親油性核形成部位は、水溶性炭化水素含有化合物/界面活性剤を必要な少量で水性充填物(aqueous charge)に加えることによって、反応器に充填されるこの水性媒体中でその場で好都合に形成され得る。好ましくは、水溶性無機塩も、この水性充填物に加えられ、これらの2種の化合物は互いに混合される。水溶性炭化水素含有化合物/界面活性剤は、反応器においておよび水溶性塩の存在下で、水性媒体中の炭化水素含有化合物/界面活性剤を分解することによって、親油性核形成部位に好都合に転化され得る。塩は、分解反応によって必ずしも影響されるとは限らない。溶液中の塩に由来するイオンの存在は、上記の有益な効果をもたらす。分解剤は、好都合には、水性媒体に加えられる少量の水溶性重合開始剤であり得る酸化剤であり得る。水性媒体の温度は、分解反応を引き起こすのに有効な温度であり、一般に、25〜120℃、好ましくは40〜120℃、より好ましくは50〜120℃、さらにより好ましくは60〜120℃、最も好ましくは70〜120℃であり、この同じ温度は、重合が行われるのと同じかまたは同様の温度であり得る。使用される温度は、主に、後の重合工程に望ましい温度に応じて決まり、後の重合工程では、温度はまた、分解剤、好ましくは、重合開始剤が反応性になるのに十分に高い。分解反応は、炭化水素含有化合物/界面活性剤の親水性部分を分解して、化合物/界面活性剤の残基を親油性核形成部位にすることが可能なほど十分に行われる。親油性核形成部位は、親油性であるが、水性媒体中で見えない。核形成部位の分散体の形成は、分解反応の開始とともに開始する。反応器に加えられるフルオロモノマーによって反応器の圧力が上昇して、キックオフに必要な反応器圧力が得られると、この反応が継続し得ると考えられる。核形成部位は、フルオロポリマーが沈殿する位置として、フルオロモノマーの重合が開始する時点で(キックオフの時点で)存在する。
核形成部位の存在は、同じ量の分散されたフルオロポリマー粒子、すなわち、水性媒体中の同じ分散された固形分を形成するために、重合が親油性核形成部位の非存在下で行われる場合より小さいサイズのフルオロポリマー粒子を生成するその後の重合結果によって確認される。核形成部位の数が多くなるほど、重合反応によって形成される所与の量(重量)のフルオロポリマー粒子についてのフルオロポリマー粒径が小さくなる。
水溶性炭化水素含有化合物/界面活性剤は、親水性の低下によって親油性核形成部位を形成する分解反応に対応して選択される。界面活性剤である炭化水素含有化合物は、炭化水素含有界面活性剤であり、その例が以下に示される。
界面活性剤は、同じ分子上に親水性部分および疎水性部分を有する。これらは、カチオン性、非イオン性またはアニオン性のいずれかであり得る。典型的なカチオン性界面活性剤は、アルキル化臭化アンモニウムなどのアルキル化ハロゲン化アンモニウムなどの正に帯電した親水性部分、および長鎖脂肪酸などの疎水性部分を有する。アニオン性界面活性剤は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、または硫酸塩などの負に帯電した親水性部分および疎水性部分としての、アルキルなどの長鎖炭化水素部分を有する。非イオン性界面活性剤は、帯電した基を含まず、典型的に、他の2種の界面活性剤と同様に長鎖炭化水素である疎水性部分を有する。非イオン性界面活性剤の親水性部分は、典型的に、エチレンオキシドとの重合から誘導されるエチレンエーテルの鎖などの水溶性官能基を含む。水溶性は、水からのプロトンとエーテル酸素原子の水素結合による。安定化の文脈において、界面活性剤は、粒子に対して配向された界面活性剤の疎水性部分および水相中の界面活性剤の親水性部分で粒子を被覆することによって安定する。帯電した界面活性剤の場合、いくらかの安定性は、粒子間の電荷の反発にもよる。界面活性剤は、典型的に、界面活性剤が中に溶解される水性媒体の表面張力を著しく低下させる。界面活性剤が、親油性核形成部位の分散体の形成のための前駆体である文脈において、疎水性および親水性部分は、理由は異なるが、界面活性剤の重要な部分である。親水性部分は、界面活性剤に水溶性を与え、疎水性部分は、界面活性剤の親水性が分解されると親油性核形成部位になる。親油性核形成部位の形成のための前駆体としての好ましい界面活性剤は、エトキシ含有界面活性剤である。典型的に、このような界面活性剤は、非イオン性、カチオン性、およびアニオン性界面活性剤であり、非イオン性界面活性剤が最も好ましい。好ましくは、界面活性剤は、核形成部位の唯一の前駆体であり、芳香族部分を含まない。
後述される界面活性剤の例は、特に示されない限り、核形成前駆体界面活性剤である。これらの界面活性剤は、単独でまたは組み合わせて使用されてもよい。
非イオン性炭化水素核形成界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、グリセロールエステル、それらの誘導体などが挙げられる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの例は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどであり;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの例は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどであり;ポリオキシエチレンアルキルエステルの例は、ポリエチレングリコールモノラウリレート(polyethylene glycol monolaurylate)、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレートなどであり;ソルビタンアルキルエステルの例は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート(polyoxyethylene sorbitan monolaurylate)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどであり;ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルの例は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどであり;グリセロールエステルの例は、モノミリスチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロールなどである。また、それらの誘導体の例は、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニル−ホルムアルデヒド凝縮物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェートなどである。特に好ましいのは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルエステルである。このようなエーテルおよびエステルの例は、10〜18のHLB値を有するものである。より具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO:5〜20。EOは、エチレンオキシド単位を表す)、ポリエチレングリコールモノステアレート(EO:10〜55)およびポリエチレングリコールモノオレエート(EO:6〜10)がある。
好適な非イオン性核形成炭化水素界面活性剤としては、Dow Chemical Companyによって供給されるTriton(登録商標)Xシリーズなどのオクチルフェノールエトキシレートが挙げられる:
Triton(登録商標)
X15(n〜1.5)
X45(n〜4.5)
X100(n〜10)
好ましい非イオン性核形成炭化水素界面活性剤は、Dow Chemical Companyによって供給されるTergitol(登録商標)15−Sシリーズなどの分枝鎖状アルコールエトキシレートおよびやはりDow Chemical Companyによって供給されるTergitol(登録商標)TMNシリーズなどの分枝鎖状第2級アルコールエトキシレートである:
Tergitol(登録商標)
TMN−6(n〜8)
TMN−10(n〜11)
TMN−100(n〜10)
Dow Chemical Companyによって供給されるTergitol(登録商標)Lシリーズ界面活性剤などのエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーは、本発明の非イオン性核形成界面活性剤としても有用である。
さらに別の有用な群の好適な非イオン性核形成炭化水素界面活性剤は、以下のものなどの、BASFからPluronic(登録商標)Rシリーズとして供給される二官能基ブロックコポリマーである:
Pluronic(登録商標)R
31R1(m〜26、n〜8)
17R2(m〜14、n〜9)
10R5(m〜8、n〜22)
25R4(m〜22、n〜23)
別の群の好適な非イオン性核形成炭化水素界面活性剤は、BASF CorporationからIconol(登録商標)TDAシリーズとして供給されるトリデシルアルコールアルコキシレートである。
Iconol(登録商標)
TDA−6(n=6)
TDA−9(n=9)
TDA−10(n=10)
別の実施形態において、炭化水素核形成界面活性剤は、アニオン性炭化水素界面活性剤である。1つのこのような例は、Resolution Performance ProductsによってVersatic(登録商標)10として供給される高度分枝鎖状C10第3級カルボン酸である。
Versatic(登録商標)10
ネオデカン酸(n+m=7)
別の有用なアニオン性核形成炭化水素界面活性剤は、BASFによってAvanel Sシリーズとして供給されるナトリウム直鎖状アルキルポリエーテルスルホネートである。エチレンオキシド鎖は、界面活性剤に非イオン特性を与え、スルホン酸基は、特定のアニオン特性を与える。
Avanel(登録商標)
S−70(n=7、m=11〜14)
S−74(n=3、m=8)
別の群の炭化水素核形成界面活性剤は、式R−L−M(式中、Rが、6〜17個の炭素原子を含有する直鎖状アルキル基であり、Lが、−ArSO3 −、−SO3 −、−SO4−、−PO3 −および−COO−からなる群から選択され、Mが、好ましくはH+、Na+、K+およびNH4 +から選択される一価カチオンであり、−ArSO3 −が、アリールスルホン酸塩である)によって表されるアニオン性界面活性剤である。これらの界面活性剤の好ましいものは、式CH3−(CH2)n−L−M(式中、nが、6〜17の整数であり、Lが、−SO3M、−PO3Mまたは−COOMであり、LおよびMが、上記と同じ意味有する)によって表されるものである。特に好ましいのは、R−L−Mの界面活性剤であり、式中、R基が、12〜16個の炭素原子を有するアルキル基であり、Lが、硫酸塩、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などのそれらの混合物である。商業的利用のために、SDS(場合によりラウリル硫酸ナトリウムと呼ばれる)は、典型的に、ヤシ油またはパーム核油原料から得られ、主に、ドデシル硫酸ナトリウムを含有するが、異なるR基を有する少量の他のR−L−Mの界面活性剤を含有していてもよい。
これらの界面活性剤の全ては、親水性部分および親油性である疎水性部分を有する。親水性部分は、界面活性剤が、親油性核形成部位を形成するのに使用される濃度で水溶性であるほど十分に優勢である。
炭化水素含有水溶性化合物として使用され得る別の群の核形成界面活性剤は、炭化水素含有シロキサン界面活性剤である。このようなシロキサン界面活性剤およびポリジメチルシロキサン(PDMS)界面活性剤は、特に、Silicone Surfactants,R.M.Hill,Marcel Dekker,Inc.,ISBN:0−8247−00104に記載されている。シロキサン界面活性剤の構造は、明確な疎水性部分および親水性部分を含み、後者は、界面活性剤に水溶性を与える。疎水性部分は、1つ以上のジヒドロカルビルシロキサン単位を含み、ここで、シリコーン原子上の置換基が、完全に炭化水素である:
ヒドロカルビル基の炭素原子が、フッ素などのハロゲンによって置換され得る場合に、水素原子によって完全に置換されるという意味では、これらのシロキサン界面活性剤は、炭化水素界面活性剤とみなすこともでき、すなわち、ヒドロカルビル基の炭素原子上の一価置換基は水素である。
シロキサン界面活性剤の親水性部分は、スルフェート、スルホネート、ホスホネート、リン酸エステル、カルボキシレート、カーボネート、スルホサクシネート、タウレート(遊離酸、塩またはエステルとしての)、ホスフィンオキシド、ベタイン、ベタインコポリオール、または第4級アンモニウム塩などのイオン性基を含む1つ以上の極性部分を含み得る。イオン性疎水性部分は、高分子電解質を含むイオン的に官能化されたシロキサングラフトも含み得る。このような基を含有するシロキサン界面活性剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン−グラフト−(メタ)アクリル酸塩、ポリジメチルシロキサン−グラフト−ポリアクリレート塩およびポリジメチルシロキサングラフト化第4級アミンが挙げられる。
シロキサン核形成界面活性剤の親水性部分の極性部分は、ポリエチレンオキシド(PEO)、および混合されたポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドポリエーテル(PEO/PPO)などのポリエーテル;単糖類および二糖類;およびピロリジノンなどの水溶性複素環によって形成される非イオン性基を含み得る。エチレンオキシド対プロピレンオキシド(EO/PO)の比率は、混合されたポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドポリエーテルにおいて変化され得る。
シロキサン核形成界面活性剤の親水性部分は、イオン性部分と非イオン性部分との組合せも含み得る。このような部分としては、例えば、イオン的に末端官能化されたまたはランダムに官能化されたポリエーテルまたはポリオールが挙げられる。本発明の実施に好ましいのは、非イオン性部分を有するシロキサン、すなわち、非イオン性シロキサン界面活性剤である。
シロキサン界面活性剤の構造の疎水性および親水性部分の配置は、ジブロックポリマー(AB)、トリブロックポリマー(ABA)(ここで、「B」は、分子のシロキサン部分を表す)、またはマルチブロックポリマーの形態をとってもよい。あるいは、シロキサン界面活性剤は、グラフトポリマーを含んでいてもよい。「グラフトポリマー」という用語は、側鎖としてポリマー主鎖に結合されるポリマー官能基の1つ以上の種を有する分子を含むポリマーを指し、ここで、側鎖、またはグラフトは、ポリマー主鎖の特性と異なる構造特性または機能特性を有する。ポリマー主鎖へのポリマー官能基の各グラフトは、「側基」である。グラフトの構造は、直鎖状、分枝鎖状または環状であり得る。
シロキサン界面活性剤についてのさらなる詳細は、米国特許第6,841,616号明細書(Wille et al.)に開示されており、本発明の実施に有用なシロキサン界面活性剤の代表例が、この特許の表1に挙げられている。
シロキサンベースでかつアニオン性である炭化水素界面活性剤の例は、Lubrizol Advanced Materials,Inc.の一部門であるNoveon(登録商標)Consumer Specialtiesから入手可能なこのような界面活性剤であり、以下のとおりである:
本発明に有用なアニオン性炭化水素界面活性剤の別の例は、Akzo Nobel Surface Chemistry LLCから入手可能なスルホサクシネート界面活性剤Lankropol(登録商標)K8300である。界面活性剤は、以下のものであると報告される:
ブタン二酸、スルホ−、4−(1−メチル−2−((1−オキソ−9−オクタデセニル)アミノ)エチル)エステル、二ナトリウム塩;CAS No.:67815−88−7
本発明に有用なさらなるスルホサクシネート炭化水素界面活性剤は、ClariantからEmulsogen(登録商標)SB10として入手可能なスルホコハク酸ジイソデシル、Na塩、およびCesapinia ChemicalsからPolirol(登録商標)TR/LNAとして入手可能なスルホコハク酸ジイソトリデシル、Na塩である。
上記の界面活性剤は、フッ素によって置換され得る存在する全ての炭素原子が、水素によって代わりに置換されることから、水溶性炭化水素化合物および炭化水素界面活性剤の両方(まとめて−炭化水素化合物/界面活性剤)である。炭素原子上の周期表の元素としての一価置換基の全てが水素である。これらの炭素原子上にフッ素を含まないまたは塩素を含まないなど、ハロゲン置換基を含まない代わりに、少数の上記の炭素原子が、これらのハロゲン原子を含有し得る。しかしながら、好ましいのは、上記の水溶性炭化水素含有化合物/界面活性剤が、炭化水素化合物/界面活性剤であることである。
炭素原子上のごく少数の一価置換基が水素の代わりにフッ素である、本発明に有用な炭化水素含有核形成界面活性剤の例は、以下に記載される、Omnova Solutions,Inc.から入手可能なPolyFox(登録商標)界面活性剤である。
MWが約1900であり、X=1〜7である。
MWが約1600であり、X=1〜7である。
親油性核形成部位を形成するために水性媒体に加えられる少量の炭化水素含有化合物/界面活性剤および炭化水素化合物/界面活性剤は、好ましくは50ppm以下、好ましくは40ppm以下、さらにより好ましくは30ppm以下、最も好ましくは20ppm以下であり、これらは全て、核形成部位の形成時に存在する水性媒体中の水の重量を基準にする。水性媒体中に存在する親油性の核形成部位のppm量は、親水性部分を分解する酸化反応によって水性媒体に加えられることが本明細書に開示されるppm量より少ないであろう。同じことが、分解後の炭化水素含有化合物に当てはまり、それはもはや元々加えられた化合物ではない。したがって、核形成部位の量は、上述されるように、それぞれ、50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満であろう。核形成部位が分子として存在すると考えられるため、ごく少量の炭化水素含有化合物/界面活性剤または炭化水素化合物/界面活性剤が、大量の親油性核形成部位を生成することができる。したがって、1ppmほどのこのような化合物/界面活性剤を水性媒体に加えることで、有益な効果を与えることができる。
核形成部位形成プロセスを補助するように働く水溶性無機塩の例としては、NaおよびKまたはNH4+などのアルカリ金属カチオンおよび−SO3 −、−HSO3 −、−NO3 −、−CL−、−CO3 −、−B4O7 −、および−HPO4 −などのアニオンを含有するものが挙げられる。重合によって作製されるフルオロポリマーが溶融押出しによって加工される場合、塩は、好ましくはアンモニウム塩である。
塩は、上記の有益な効果を与えるのに有効なように選択され、開始剤を非活性化せず、それによって、分解反応が起こるのを防ぎ、開始剤が炭化水素含有化合物/界面活性剤と反応するのを防ぐために開始剤と反応せず、結果として生じる重合を阻害しない。したがって、塩が使用されない場合より少量の炭化水素含有化合物/界面活性剤が、親油性核形成部位を形成するのに使用され得る。これは、最も高い分子量のフルオロポリマー、PTFEを作製するための重合方法において特に重要である。塩は、還元剤であってもよいが、必ずしもそうであるわけではない。水溶性無機塩の存在下における、炭化水素含有化合物/界面活性剤と分解剤、好ましくは重合開始剤との間の分解または酸化反応の実行は、塩が酸化/還元反応などの何らかの変換を起こす可能性も含む。水性媒体中の塩のイオン化は、核形成部位の形成に対する良い影響を与えることが明らかである。しかしながら、塩の量が多すぎる場合、結果はマイナスになり得、すなわち、核形成部位の数が減少され、フルオロポリマー粒径が増大される。良い影響から悪影響へのこの移行がいつ起こるかは主に塩の量に左右されるが、一般にこの移行は、核形成部位を形成する時点での反応器中の水の重量を基準にして125ppmを超える塩で起こる。
一般に、核形成部位形成プロセスに利益を与え、核形成部位形成プロセスまたはフルオロモノマーのその後の重合に有害でないために、酸化反応の時点で水性媒体中に存在する水溶性無機塩の量は、好ましくは100ppm以下、好ましくは75ppm以下、さらにより好ましくは50ppm以下、最も好ましくは25ppm以下、好ましくは少なくとも1ppmである。
親油性の核形成工程における分解剤として使用され得る水溶性ラジカル重合開始剤の例は、所望の親油性核形成部位を形成するために重合反応器中で得られる水性媒体の温度で水溶性炭化水素含有化合物/界面活性剤を高速で酸化するものである。界面活性剤を実質的に含まない水性媒体中にこの時点で存在する得られる親油性核形成部位が、分散体として重合反応に利用可能であり得るように高速反応が必要とされる。この目的のための好ましい開始剤は、無機過酸などの無機開始剤の高活性の水溶性塩である。好ましい開始剤は、過硫酸塩、例えば、過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムである。好ましい過硫酸塩開始剤は、金属イオンを実質的に含まず、最も好ましくはアンモニウム塩である。本発明の実施に有用なさらなる開始剤は、アゾアミジン化合物などの水溶性有機アゾ化合物である。
好ましくは、酸化反応を行うために水性媒体に加えられる分解剤/開始剤の量は、反応器中で行われる結果として生じる重合反応のキックオフを引き起こし得る量より少ない。このような量は、好ましくはペルオキシ−O−O−基を含む使用される分解剤/開始剤の分子量に応じて決まる。核形成部位形成工程において分解剤として使用される過度に多い分解剤/開始剤は、フルオロモノマーがキックオフまで圧力上昇させるために反応器に加えられて、より多いフルオロポリマー粒子が重合工程において形成されるにつれて、フルオロモノマーの未成熟重合とともに核形成部位の不安定化を引き起こし得る。したがって、水性媒体に加えられる分解剤/開始剤の量は、核形成部位形成工程の時点での反応器中の水の重量を基準にして、好ましくは40ppm以下、より好ましくは30ppm以下、さらにより好ましくは20ppm以下、最も好ましくは約15ppm以下である。水性媒体に加えられる分解剤/開始剤の最少量は、1ppmほどであり得る。核形成部位の分散体の形成後に水性媒体中に存在する分解剤/開始剤のppm量は、開始剤の分解を引き起こす分解反応によって水性媒体に加えられることが本明細書に開示されるppm量より少ない。これらの量は、分解剤としての重合開始剤以外の分解剤に適用される。
上に挙げられる炭化水素含有化合物/界面活性剤、水溶性無機塩、および分解剤のこれらの量のそれぞれは、挙げられる量の任意の組合せで使用され得る。したがって、フルオロモノマーの重合をキックオフさせるのに不十分である分解剤/開始剤の量が、上に挙げられる炭化水素含有化合物/界面活性剤および塩の量のいずれかを用いて使用され得、化合物/界面活性剤および塩の量は、上に挙げられるその量の任意の組合せであり得る。同じことが、分解剤/開始剤の数量が特定される場合(例えば50ppm以下)に当てはまる。例として、成分の以下の組合せが、水性媒体に加えられ得る:
(a)以下の量のいずれかの分解剤/開始剤(50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、または15ppm以下)とともに、以下の量のいずれかの水溶性無機塩(125ppm以下、100ppm以下、75ppm以下、50ppm以下、または25ppm以下)を伴う、40ppm以下の炭化水素含有化合物/界面活性剤;
(b)以下の量のいずれかの分解剤/開始剤(50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、または15ppm以下)とともに、以下の量のいずれかの炭化水素含有化合物/界面活性剤(50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、または20ppm以下)を伴う、100ppm以下の水溶性無機塩;および
(c)以下の量のいずれかの水溶性無機塩(125ppm以下、100ppm以下、75ppm以下、50ppm以下、または25ppm以下)とともに、以下の量のいずれかの炭化水素含有化合物/界面活性剤(50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、または20ppm以下)を伴う、30ppm以下の分解剤/開始剤など。
各成分の量のこれらの組合せのそれぞれにおいて、少なくとも1ppmの各成分が存在する。これらの成分の好ましい組合せは、100ppm以下の塩成分と20ppm以下の炭化水素含有化合物/界面活性剤であり、分解剤/開始剤に関して、フルオロモノマーの重合をキックオフさせるのに不十分な量または以下の量50ppm、40ppm、30ppm、20ppmまたは15ppmのいずれか以下である。
少なくとも、核形成部位形成工程の開始および親油性核形成部位の分散体の同時形成の時点で、反応性フルオロモノマーが反応器中に実質的に全く存在しないことも好ましく、すなわち、これらの部位の形成が、酸化剤として使用される少量の開始剤と反応するフルオロモノマーの非存在下で行われるのが好ましい。
以下は、本発明のいくつかの実施形態である:
本発明の一実施形態において、親油性核形成部位の分散体が形成される水性媒体は、重合事前充填組成物として特徴付けることができ、水性媒体は、水溶性炭化水素含有化合物/界面活性剤から作製される親油性重合核形成部位の分散体を含有し、化合物/界面活性剤は、親水性部分および疎水性部分を含み、親水性部分は、化合物に水溶性を与え、疎水性部分は、化合物の親水性部分の分解の際に親油性核形成部位を形成する。この組成物の事前充填性は、重合反応のキックオフの前にそれが存在することを意味する。この実施形態は、重合用の親油性核形成部位の分散体を含有する水性媒体を含む重合事前充填組成物として要約することができ、これらの部位は、親水性部分および疎水性部分を含む炭化水素含有水溶性化合物から作製され、親水性部分は、水性媒体中の化合物の溶解性を与え、疎水性部分は、親水性部分の分解の際に親油性核形成部位を形成する。化合物は、好ましくは界面活性剤である。水性媒体に加えられるこのような化合物/界面活性剤の量が、50ppm以下または40ppm以下または30ppm以下または20ppm以下または15ppm以下であり得るのと同様に、核形成部位の量はそれぞれ、これらの量のそれぞれより少ないであろう。
本発明の別の実施形態において、事前充填組成物は、水性媒体に加えられる、疎水性部分および親水性部分を含む50ppm以下の水溶性炭化水素含有化合物/界面活性剤、125ppm以下の水溶性無機塩、および50ppm以下の分解剤を含む、水性重合媒体中の反応混合物としても特徴付けられ得る。この事前充填組成物は、分解剤が化合物/界面活性剤と反応して、親水性部分を分解する温度まで加熱することができ、それによって、疎水性部分は、水性媒体中の親油性核形成部位の分散体になる。分解剤は、好ましくは重合開始剤である。この実施形態は、親油性核形成部位が化合物の添加の結果である上記の(a)で記載される重合事前充填組成物、すなわち、水性媒体への化合物を分解するための薬剤として記載することもでき、化合物は、界面活性剤であり得、分解剤は、上記の重合開始剤であり得る。好ましくは、水性媒体に加えられる化合物および分解剤の量はそれぞれ、50ppm以下であり得る。水溶性無機塩も、好ましくは親油性核形成部位の形成の前に、好ましくは120ppm以下の量で、事前充填組成物中に存在し得る。
本発明の別の実施形態において、親油性核形成部位を作製する方法は、フルオロモノマーを重合し、水性媒体を含むための反応器を提供する工程と、水性媒体中で、疎水性部分および親水性部分を含む水溶性炭化水素含有化合物/界面活性剤を、分解剤、好ましくは重合開始剤と、親水性部分を分解するのに有効であるが、フルオロモノマーによる反応器の圧力上昇の際にフルオロモノマーを重合させるのに有効でない任意の量で反応させる工程とを特徴とすることができ、親水性部分の分解により、疎水性部分が、フルオロモノマーの重合用の親油性核形成部位の分散体になることができる。反応は、好ましくは、上記の水溶性無機塩の存在下で行われる。
本発明の別の実施形態において、本方法は、疎水性部分および親水性部分を含む炭化水素含有化合物/界面活性剤、およびもしあれば水溶性無機塩を水性重合媒体に加える(事前充填する)工程と、次に分解剤、好ましくは重合開始剤をこの水性媒体に加える工程と、分解剤を炭化水素含有化合物/界面活性剤と反応させて、水溶性炭化水素含有化合物/界面活性剤の疎水性部分から親油性核形成部位の分散体を形成する工程とを特徴とすることもできる。
これらの実施形態のそれぞれは、重合反応のキックオフの前に関するものであり、成分(化合物/界面活性剤、塩、および分解剤、好ましくは重合開始剤)の属性、反応の温度およびそれらの量は、上に開示されるこれらの態様のいずれかであり得、界面活性剤を実質的に含まない、分散体が中に形成される水性媒体を含む親油性核形成部位の分散体をもたらす。重合反応のキックオフの前に、好ましくは、重合されるフルオロモノマーによる重合反応器が圧力上昇され、ラジカル重合開始剤が、重合をキックオフさせるのに十分な量で水性媒体に加えられる。
上記の組成物および実施形態の全てにおいて、好ましい炭化水素含有化合物/界面活性剤は、炭化水素化合物/界面活性剤である。したがって、好ましい親油性核形成部位は、炭化水素親油性核形成部位である。
重合反応のキックオフ
初期期間中の重合反応器における水性媒体中の親油性核形成部位の分散体の開始および/または形成の後、反応器は、付加重合によって重合されるフルオロモノマーによって圧力上昇される。圧力上昇は、TFEなどの気体フルオロモノマーを、反応器中の水性媒体の表面の上に存在する、反応器中の蒸気空間に注入することによって起こる。この注入は、少なくとも重合反応を開始させるのに必要な、反応器中の圧力(通常、重合が行われる圧力(動作圧力)である)を得るために行われる。TFEなどとの、重合反応における共重合を目的とする、HFPなどの比較的不活性のフルオロモノマーが、より活性のフルオロモノマーによる圧力上昇の前に反応器中に既に存在し得る。使用されることになる重合反応を行うための典型的な動作圧力は、30〜1000psig(0.3〜7.0MPa)、好ましくは1〜800psig(0.1〜5.6MPa)であろう。次に、水溶性ラジカル重合開始剤の水溶液が、重合反応をキックオフさせるのに十分な量で反応器中にポンプ注入され得る。このキックオフは、重合反応の開始である。簡単にするために、この開始の証拠は、反応器圧力の低下、例えば10psi(69kPa)の圧力降下によって示すことができ、この圧力降下は、重合方法におけるフルオロモノマーの消費の開始およびそれによる重合反応の開始を示す。圧力降下のこの量は、圧力降下が、反応器中の温度変動によってではなく、フルオロモノマーの消費によって引き起こされることを意味するものとして解釈される。当業者は、より小さい圧力降下が、重合の開始ではない内部反応器圧力の単なる変動ではないという確信がある場合、より小さい圧力降下に依拠する場合がある。当業者は、重合の開始を示しているとして異なるパラメータに完全に依拠する場合がある。例えば、圧力要求システムにおいて、反応器圧力の低下が、圧力を維持するための反応器へのモノマーの流れによって直ぐに補正される。このシステムにおいて、反応器中への特定の量の圧力要求モノマーの流れは、重合反応の開始を示したものとみなされる。依拠されるパラメータが何であれ、同等の、バッチ時間などの結果を得るために、バッチ間で同じパラメータが使用されるべきである。
水性媒体は、必要とされる、重合反応速度および存在する場合コモノマーの均一な組み込みを得るように撹拌される。安定化期間は、好ましくは初期期間の後である。得られる形成されるフルオロポリマー粒子を安定させるための界面活性剤の添加のタイミングおよび量は、使用される界面活性剤に応じて決まる。フルオロポリマー粒子の分散体の安定化は、これらの粒子が、重合の際に水性媒体中に分散され、それに、凝塊を形成するための互いに対する凝集ではなく撹拌が伴うことを意味する。この分散体は、重合反応の完了時に残り、撹拌が中断される。
水性媒体は、好ましくは、重合反応のキックオフの時点で界面活性剤を実質的に含まず、好ましくは、フルオロポリマーを沈殿させるための親油性核形成部位の分散体の親和性を妨げる水性媒体中に存在する何らかの表面活性化合物があったとしてもほとんどない。親油性核形成部位の前駆体として少量で使用される炭化水素含有界面活性剤は、これらの部位への移行の際にその表面活性の実質的にほとんどを喪失している。水性重合媒体への安定化界面活性剤の添加は、この目的のための界面活性剤の実質的に第1の添加である。
付加重合反応をキックオフさせるために水性重合媒体に加えられる水溶性ラジカル重合開始剤は、フルオロモノマーによる反応器の圧力上昇の後、重合されるフルオロモノマーに応じて分解剤として使用される開始剤と同じかまたは異なり得る。好ましい実施形態において、重合反応をキックオフさせるための重合開始剤の添加は、開始剤が分解剤でもある場合、水性媒体への開始剤の第2の添加であり、第1の添加は、親油性核形成部位を形成させるための炭化水素含有化合物/界面活性剤の分解に必要とされる少量である。好ましいラジカル重合開始剤は、無機過酸などの無機開始剤の高活性の水溶性塩である。好ましい開始剤は、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、または過硫酸カリウム(KPS)などの過硫酸塩である。好ましい過硫酸塩開始剤は、金属イオンを実質的に含まず、最も好ましくはアンモニウム塩である。TFEからPTFEへの重合のために、好ましい開始剤は、ジコハク酸ペルオキシド(DSP)などの有機過酸であり、これは、キックオフさせるのに、例えば少なくとも200ppmといった大量を、場合により、より少量の過硫酸塩などの高活性の開始剤とともに必要とする。分解剤がAPSであり、キックオフ開始剤がDSP/APSである場合、重合を引き起こす開始剤は、実際には、分解剤として使用されるAPS開始剤と異なるであろう。しかしながら、DSP/APS重合開始剤のAPS成分は、反応器中の水性媒体へのAPSの第2の添加であろう。重合開始剤による活性への言及は、上述されるように、25、40、50、60、または70〜120℃の、反応器中の媒体の温度で、水性重合媒体中で重合を開始させることが可能な遊離基を形成する開始剤の能力を指す。開始剤および重合温度の選択は、遊離基が熱的に誘導されるかまたはそれらの形成が促進剤または還元剤の存在によって補助されるかにかかわらず、開始剤から生じる遊離基が水性媒体の温度によって生じるように整合されるのが好ましい。重合開始剤は、好ましくは、アルカリ金属イオンを含まない。キックオフを引き起こすために加えられる開始剤は、重合反応が進行するにつれて必要になり得る追加の開始剤によって補充され得る。
好ましい重合工程において、安定化界面活性剤は、炭化水素含有界面活性剤、好ましくは炭化水素界面活性剤である。重合のキックオフは、実質的に炭化水素含有界面活性剤または炭化水素界面活性剤の非存在下で行われ、水性媒体への界面活性剤の添加は遅延されるのが好ましい。この遅延は、重合に対する安定化界面活性剤の何らかのテロゲン効果を減少させるのに有益である。この遅延は、水性媒体への安定化界面活性剤の添加が開始したときに水性重合媒体中で形成されるフルオロポリマーの濃度について測定され得、下式によって表され得る:
フルオロポリマーの濃度(重量%)=([A÷(B+A)]×100、
式中、Aが、界面活性剤の添加が開始する前に形成される分散されたフルオロポリマーの重量であり、Bが、安定化界面活性剤の添加が開始した時点での重合反応器中の水の重量である。反応器への(上式における)Bを含む水の添加は、開始剤などの溶解された成分を含んでいてもよい。簡単にするために、水の添加はそれぞれ、実施例1に示されるパーフルオロポリマーの濃度の計算によって示されるように、全て水からなるとみなされる。形成される全てのフルオロポリマーは、水性媒体中にあるものとみなされる。重合反応においてそれほど早期に凝塊が形成されないため、Aは、界面活性剤の添加が開始する時点までに消費されるフルオロモノマーの量(重量)によって測定され得る。フルオロモノマーが、反応器中の重合方法の(動作)圧力を維持するモノマーである場合、消費されるフルオロモノマーの量は、安定化界面活性剤の添加が開始するまでこの圧力を維持するために反応器に充填される量(補充)である。コモノマーが存在し、その量が、圧力を維持するための補充によって測定されない場合、フルオロポリマー中へのコモノマーの組み込みが均一であると仮定される。次に、生成されるポリマー(A)の量が、反応器に供給された、消費されたフルオロモノマー、例えばTFEを1で除算した値から、フルオロポリマーにおけるコモノマーの重量分率を減算することによって計算され得る。Bは、界面活性剤の添加が開始するまでの反応器への全ての水の添加の重量の合計である。したがって、Bは、反応器に充填される水の初期量の重量、ならびに安定化界面活性剤の添加が開始する時点まで水性媒体中にポンプ注入される、核形成界面活性剤、塩(存在する場合)、分解剤、重合反応のキックオフのための開始剤、および追加の開始剤の溶液の形態などの全ての追加の水の充填量を含む。
水性重合媒体への炭化水素含有安定化界面活性剤の早期の添加が、フルオロポリマーへのフルオロモノマーの重合を過度に阻害することが分かった。したがって、水性重合媒体中のフルオロポリマーの濃度は、界面活性剤の添加が開始する前に、少なくとも0.6重量%、より好ましくは少なくとも0.7、または少なくとも0.8、または少なくとも1重量%であるのが好ましい。さらにより好ましくは、フルオロポリマー濃度は、少なくとも1.2重量%であり、最も好ましくは少なくとも1.6重量%である。FEPおよびPFAなどの溶融処理可能パーフルオロプラスチックでは、濃度は、好ましくは少なくとも2重量%であり、PTFEでは、濃度は、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも1.6重量%である。安定化界面活性剤の計量供給の開始の最大遅延は、重合されるフルオロモノマーおよび得られる分散体の固形分について許容可能とみなされる凝塊の重量%に応じて決まる。
使用され得る好ましい炭化水素含有安定化界面活性剤は、親油性核形成部位の形成のための出発材料である核形成界面活性剤(前駆体)について上述されるアニオン性界面活性剤である。最も好ましい界面活性剤は、上記のR−L−Mの界面活性剤、特にドデシル硫酸ナトリウムである。親油性核形成部位のための核形成界面活性剤前駆体としての非イオン性炭化水素界面活性剤、好ましくは、重合工程における安定化界面活性剤としてのアニオン性炭化水素界面活性剤の好ましい使用が、その遅延された添加により、許容可能な反応速度、フルオロポリマー粒子の小さい粒径、および重合工程中の少ない凝塊形成をもたらすことが分かった。
炭化水素含有安定化界面活性剤、好ましくは炭化水素界面活性剤の添加が、重合のキックオフ後に上述されるような遅延を伴って開始する場合、計量供給は、水性重合媒体中のフルオロポリマー粒子の安定した分散体を形成するために表面活性を維持しながら、安定化界面活性剤のテロゲン活性を低下させる速度で行われる。計量供給速度の例は、0.005〜1.4g/l−時、より好ましくは0.005〜1.0g/l−時、さらにより好ましくは0.01〜0.8g/l−時である。g/l−時という表記において、gは、界面活性剤自体の重量のグラムであり、lは、反応器の体積のリットルであり、時は、時間の単位である。計量供給速度は、重合反応器において水性媒体に加えられる際に界面活性剤が中に存在する水溶液にではなく、界面活性剤に適用される。炭化水素含有安定化界面活性剤の添加の時間増分は、好ましくは少なくとも20分毎、好ましくは少なくとも10分毎、より好ましくは少なくとも5分毎、および/または最も好ましくは、重合反応中連続している。加えられるこのような界面活性剤の量および添加のそのタイミングは、重合されるフルオロモノマーに応じて決まる。少なすぎる界面活性剤は、凝塊を増加させ、多すぎる界面活性剤は、重合反応を減速させる。これらの計量供給速度のそれぞれは、界面活性剤の添加の開始について上述される重量%濃度のそれぞれとともに使用され得る。
炭化水素含有界面活性剤、特に炭化水素界面活性剤が、本発明に使用するのに好ましい安定化界面活性剤である一方、ハロゲン含有界面活性剤が使用されないかまたは存在しない場合、重合工程中に形成されるフルオロポリマー粒子の安定化に必要な界面活性剤は、フッ素系界面活性剤などのハロゲン含有界面活性剤を含み得ることが考えられる。フッ素系界面活性剤を含むハロゲン含有界面活性剤は、界面活性剤中の炭素原子上で置換されたフッ素原子を含むハロゲン原子に水素原子を加えた総数の少なくとも約50%がハロゲン原子である界面活性剤である。より好ましくは、ハロゲン含有界面活性剤中のハロゲン原子および水素原子の総数の少なくとも約75%、最も好ましくは少なくとも約90%がハロゲン原子である。過フッ素化界面活性剤(炭素原子上で置換された水素原子がない)が、本発明の安定化(重合)工程に使用され得る。
一実施形態において、フッ素系界面活性剤は、単独でまたは他の界面活性剤と組み合わせて使用され得る短鎖フルオロ酸(fluoroacid)または塩である。他の界面活性剤とともに使用される場合、組合せは、重合工程において形成される高濃度の分散されたフルオロポリマー粒子を安定させるのに必要とされる表面活性を提供し得る。安定化を補助する他の材料の例は、長鎖フッ素系界面活性剤、または炭化水素含有界面活性剤、好ましくは炭化水素界面活性剤である。炭化水素含有界面活性剤の使用は、フルオロポリマー粒子の分散体の安定化に必要とされるフッ素系界面活性剤の量を最小限に抑える。
短鎖安定化フッ素系界面活性剤は、下式によって特徴付けられ得る:
[R1−On−L−A−]Y+ (I)
式中:
R1が、エーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化された脂肪族基であり;
nが、0または1であり;
Lが、非フッ素化、部分フッ素化または完全フッ素化されていてもよく、エーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であり;
A−が、カルボキシレート、スルホネート、スルホンアミドアニオン、およびホスホネートからなる群から選択されるアニオン性基であり;
Y+が、水素、アンモニウムまたはアルカリ金属カチオンであり;
ただし、R1−On−L−の鎖長が、6個以下の原子である。
本出願に使用される際の「鎖長」は、本発明の方法に用いられるフッ素系界面活性剤の疎水性尾部における最長の直鎖中の原子の数を指す。鎖長は、界面活性剤の疎水性尾部の鎖中の炭素に加えて酸素原子などの原子を含むが、最長直鎖の分枝を含まず、またはアニオン性基の原子を含み、例えば、カルボキシレート中に炭素を含まない。本出願に使用される際の「短鎖」は、6以下の鎖長を指す。「長鎖」は、6を超える鎖長を指し、例えば、7〜14個の原子の鎖長を有するフッ素系界面活性剤である。
好ましくは、R1−On−L−の鎖長は、3〜6個の原子である。本発明の好ましい一形態によれば、R1−On−L−の鎖長は、4〜6個の原子である。本発明の別の好ましい形態によれば、R1−On−L−の鎖長は、3〜5個の原子である。最も好ましくは、R1−On−L−の鎖長は、4〜5個の原子である。
安定化フッ素系界面活性剤の種類の1つは、フルオロエーテル酸または塩であり、すなわち、上式Iにおいて、nが1である。本発明に係るこのようなフルオロエーテル酸または塩は、式I(式中:R1が、エーテル結合を含み得る1〜3個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化アルキル基であり;Lが、−CX(R2)−から選択されるアルキレン基であり、R2が、フッ素またはパーフルオロメチルであり、Xが、水素またはフッ素である)、および−CZ1Z2CZ3Z4−(式中、Z1、Z2、Z3、およびZ4が、独立して、水素またはフッ素から選択される)で表されるフッ素系界面活性剤である。
別の実施形態において、式IのLは、−CF(CF3)−、−CF2−、−CF2CF2−、−CHFCF2−、および−CF2CHF−から選択されるアルキレン基である。
安定化フッ素系界面活性剤は、R1またはLがエーテル結合を含む場合、ジエーテルであり得る。このような化合物は、例えば、国際公開第01/46116 A1号パンフレット(Hintzer et al.)における教示によって作製される。好ましいフルオロエーテル酸または塩は、R1およびLがエーテル結合を含まない場合、フルオロモノエーテルである。
さらに別の実施形態において、式IのR1は、2〜3個の炭素原子を有する直鎖状の部分または完全フッ素化アルキル基である。R1は、完全フッ素化され得る。
本発明の別の実施形態において、フッ素系界面活性剤は、式:
[CF3CF2CF2OCF(CF3)COO−]Y+ (II)
(式中、Y+が、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属カチオンである)の化合物である。これは、式I(式中、R1が、CF3CF2CF2−であり;Lが、−CF(CF3)−であり;A−が、カルボキシレートであり;Y+が、水素、アンモニウムまたはアルカリ金属カチオンである)によって表される化合物である。好ましくは、Y+が、水素またはアンモニウムである。
本発明の別の実施形態において、フッ素系界面活性剤は、式:
[CF3CF2OCF(CF3)COO−]Y+ (III)
(式中、Y+が、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属カチオンである)の化合物である。
本発明の別の実施形態において、フッ素系界面活性剤は、式:
[CF3CF2CF2OCF2CF2COO−]Y+ (IV)
(式中、Y+が、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属カチオンである)の化合物である。
本発明の別の好ましい実施形態において、フッ素系界面活性剤は、式I(式中、nが、0およびR1であり;Lが、共同して、4〜6個の炭素を有するパーフルオロアルキル基を構成し;A−が、スルホネートおよびスルホンアミドアニオンである)の化合物である。本発明のこの形態の好ましい実施形態において、A−が、スルホンアミドアニオンであり、式IVのスルホンアミド化合物は以下のとおりであり:
[CF3CF2SO2N−CH2CH2OH]Y++ (V)
式中、Y+が、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属カチオンである。
アンモニウム塩としてのこの式の界面活性剤は、NOVEC(商標)4200の商品名で3Mから市販されている。
本発明の別の実施形態によれば、フッ素系界面活性剤は、式:
[CF3CF2CF2CF2CH2CH2SO2 −]Y+ (VI)
(式中、Y+が、水素、アンモニウム、またはアルカリ金属カチオンである)の化合物である。
これらの短鎖フッ素系界面活性剤についてのさらなる詳細が、米国特許第7,705,074号明細書(Brothers et al.)に開示されている。短鎖フッ素系界面活性剤と組み合わせて使用され得る長鎖フルオロポリエーテル酸または塩の例も、この特許に開示されている。好ましくは、フルオロポリエーテルは、パーフルオロポリエーテル酸またはその塩である。フルオロポリエーテル酸またはその塩の酸基は、好ましくは、カルボン酸、スルホン酸、スルホンアミド、ホスホン酸から選択される酸基である。好ましい実施形態において、フルオロポリエーテル酸または塩の酸基は、カルボン酸である。好ましくは、フルオロポリエーテル酸は、重合の際に塩として、最も好ましくは、アンモニウム塩として用いられる。
好ましいパーフルオロポリエーテル(PFPE)酸またはその塩は、分子の主鎖中の酸素原子が、1〜3個の炭素原子を有する飽和フッ化炭素基によって隔てられる任意の鎖構造を有し得る。2種以上のフッ化炭素基が、分子中に存在し得る。代表的な構造は、下式に表される繰り返し単位を有する:
(−CFCF3−CF2−O−)n (VII)
(−CF2−CF2−CF2−O−)n (VIII)
(−CF2−CF2−O−)n−(−CF2−O−)m (IX)
(−CF2−CFCF3−O−)n−(−CF2−O−)m (X)
これらの構造は、Kasaiによって、J.Appl.Polymer Sci.57,797(1995)に記載されている。この文献に開示されているように、このようなPFPEが、1つの末端または両方の末端にカルボン酸基またはその塩を有し得る。同様に、このようなPFPEは、1つの末端または両方の末端にスルホン酸またはホスホン酸基またはその塩を有し得る。さらに、両方の末端に酸官能基を有するPFPEは、各末端に異なる基を有し得る。単官能性のPFPEについては、分子の他方の末端は、通常、過フッ素化されているが、水素または塩素原子を含有し得る。本発明に使用するための1つの末端または両方の末端に酸基を有するPFPEは、少なくとも2つのエーテル酸素、好ましくは少なくとも4つのエーテル酸素、さらにより好ましくは少なくとも6つのエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも1つ、より好ましくは、このようなフッ化炭素基の少なくとも2つは、2または3個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも50%は、2または3個の炭素原子を有する。また、好ましくは、PFPEは、合計で少なくとも15個の炭素原子を有し、例えば、上記の繰り返し単位構造中のnまたはn+mの好ましい最小値は、少なくとも5である。1つの末端または両方の末端に酸基を有する2つ以上のPFPEが、本発明に係る方法に使用され得る。典型的に、1つの特定のPFPE化合物を製造するのに特別な配慮が用いられない限り、PFPEは、およそ平均分子量の分子量範囲内で可変の割合で複数の化合物を含有し得る。
フルオロポリエーテル酸またはその塩は、本発明に係る方法における重合剤としてのフルオロモノエーテル酸または塩と組み合わせて機能できるようにする平均分子量を有する。本発明のこの実施形態にしたがって用いられるフルオロポリエーテル酸または塩の数平均分子量は、約800g/モルを超える。約800g/モルを超える数平均分子量を有するフルオロポリエーテル酸または塩は、本特許出願中で「高分子フルオロポリエーテル」であると定義される。非常に高い分子量を有するフルオロポリエーテル酸または塩は、一般に、水性重合媒体に分散しにくいため、用いられるフルオロポリエーテル酸または塩の数平均分子量は、通常、約6000g/モル未満である。より好ましくは、本発明にしたがって用いられるフルオロポリエーテル酸またはその塩は、約800〜約3500g/モル、最も好ましくは1000〜約2500g/モルの数平均分子量を有する。
親油性核形成部位の前駆体として上述される、炭化水素含有界面活性剤、好ましくは、炭化水素界面活性剤は、安定化界面活性剤としての短鎖または長鎖フッ素系界面活性剤と組み合わせて使用され得る。
短鎖フッ素系界面活性剤が、それ自体でまたは安定化界面活性剤としての長鎖フルオロポリエーテル酸または塩と組み合わせて使用される場合、水性媒体へのこの組合せの添加の際に遅延は必要なく、すなわち、この組合せは、キックオフ時に存在するように水性媒体に加えられ得る。炭化水素含有界面活性剤が、短鎖または長鎖フッ素系界面活性剤と組み合わせて安定化界面活性剤として使用される場合、炭化水素含有安定化界面活性剤の添加が少なくともキックオフ後まで上述されるように遅延されるのが好ましい。
キックオフ時に存在するフルオロモノマーの量および属性は、作製されるフルオロポリマーに応じて決まる。改質PTFEの場合、改質モノマーは、一般に、反応器への事前充填の時点で全て加えられるであろう。同じことが、溶融処理可能のフルオロポリマーを形成するためのTFEとの重合に使用されるコモノマーに当てはまり得るが、コモノマーは、重合反応が進行するにつれて加えられ得る。重合が開始してから、所望の反応器圧力を維持するために追加のTFE(およびもしあればコモノマー)が加えられる。分子量制御が必要とされる場合、連鎖移動剤が加えられ得る。水性媒体に不溶性のパラフィンワックスが、典型的に、PTFEを作製するための重合中に水性媒体中の凝塊の捕捉剤(scavenger)として用いられ、典型的に、反応器への事前充填物に加えられる。コハク酸も、凝塊形成を減少させるために水性媒体に加えられてもよい。
重合媒体は、好ましくは、重合キックオフ時にフルオロポリマーシードを実質的に含まない。重合部位は、重合されるフルオロモノマーの少なくとも1つの重合シードによってではなく、上記の親油性核形成部位によって形成される。本発明のこの好ましい形態において、フルオロポリマーシード、すなわち、分散体形態の別々に重合される小さいフルオロポリマー粒子が、水性媒体に加えられない。
重合によっては、追加の開始剤および/または安定化界面活性剤が、重合中に加えられてもよい。
重合の完了(典型的に数時間)後、所望の量のポリマーまたは固形分が得られた場合、撹拌が中断され、供給が停止され、したがって重合反応が停止される。反応器が通気され、反応器中のフルオロポリマー粒子の未処理の分散体が、冷却容器または保持容器に移される。親油性核形成部位の分散体の形成、それに続く重合反応のキックオフおよび反応を完了するためのその実行は、典型的にバッチプロセスであろう。
本発明の方法によって生成されるフルオロポリマー分散体の固形分は、好ましくは少なくとも約10重量%、好ましくは少なくとも16重量%である。好ましくは、フルオロポリマー固形分は、少なくとも約20重量%である。固形分は、反応器中の分散されたフルオロポリマー粒子の総重量に水の総重量を加えた重量を基準にした、水性媒体中に分散されたフルオロポリマー粒子の重量%である。その水性分散体中のフルオロポリマー粒子の好ましい粒径(Dv(50))は、好ましくは100〜300nmである。固形分についての主な制限は、凝塊の形成;より多い固形分、増加した量の凝塊を形成する傾向の増大である。
好ましくは、凝塊は、作製されるフルオロポリマーの総量の5重量%以下である。本発明の好ましい方法において、重合工程は、3重量%以下、さらにより好ましくは2重量%以下または1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下の凝塊を生成する。最も好ましくは、凝塊は、これらの量のそれぞれより少ない。最大固形分は、好ましくは、凝塊を上記の量まで最小限に抑えるように制御される。凝塊(重量%)=[凝塊/生成される全ポリマーの重量]×100。生成される全ポリマーは、凝塊および分散されたフルオロポリマー粒子を合わせた重量である。全ての重量は、乾燥ポリマーの測定値である。
重合されたままの分散体を分散体濃縮操作に移すことができ、分散体濃縮操作は、公知の方法によって非イオン性炭化水素界面活性剤を用いて典型的に安定される濃縮分散体を生成する。重合が完了したため、炭化水素含有界面活性剤が、この目的のために使用され得る。濃縮分散体の固形分は、典型的に、約35〜約70重量%である。あるいは、成形用樹脂として使用するために、フルオロポリマー樹脂が、通常、凝固によって分散体から単離され、水性媒体が除去される。フルオロポリマーは、乾燥されてから、その後の溶融処理操作に使用するために、フレーク、チップまたはペレットなどの好都合な形態へと処理される。特定のグレードのPTFE分散体が、微粉末の生成のために作製される。この使用のために、分散体は凝固され、水性媒体は除去され、PTFEは乾燥されて、微粉末が生成される。
炭化水素含有安定化界面活性剤の不活性化
反応器における水性媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を安定させるために重合反応器に加えられる炭化水素含有界面活性剤の不活性化により、界面活性剤のテロゲン性が低下される。不活性化は、好ましくは不活性化助剤の存在下で、界面活性剤を酸化することによって行われる。酸化反応は、重合反応が中で行われる重合反応器における水性媒体と同じかまたは異なり得る水性媒体中の酸化剤への界面活性剤の曝露を含む。不活性化される安定化界面活性剤がアニオン性であることも好ましい。
一実施形態において、重合反応器において水性重合媒体中に加えられる安定化界面活性剤は、水性媒体中への添加前に不活性化される。好ましくは、不活性化される安定化界面活性剤は、この界面活性剤と過酸化水素などの酸化剤との反応生成物である。この反応生成物を形成する反応は、好ましくは、50℃以下の温度で水性媒体中で行われる。反応のこの温度は、重合反応がほとんどの場合行われる水性媒体の温度、すなわち少なくとも60℃の温度と対照的である。
不活性化から得られる安定化界面活性剤のテロゲン性の低下により、以下のうちの1つ以上を含む改良が得られる:1)凝塊を顕著に増加させずに、水性媒体中の所望のフルオロポリマー固形分を生成するように重合時間を短縮する、および/または2)以下にさらに記載されるように、安定化界面活性剤が水性媒体に加えられ得る前に、重合キックオフ後の遅延の時間を減少させる。したがって、不活性化により、界面活性剤の有効性が向上する。テロゲン性が不活性化によって低下されるが、不活性化された界面活性剤はそれでも、水性媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を安定させるというその界面活性剤機能を果たす。
不活性化は、安定化界面活性剤を水溶液中の過酸化水素と反応させることによって行われ得る。酸化反応用の水溶性不活性化助剤は、好ましくは、酸化反応を加速する(触媒する)のにも使用される。この助剤は、好ましくは、重合反応器において水性媒体に溶解可能な形態で好ましくは提供される金属イオンである。この溶解性は、金属イオンが塩形態であることによって得ることができ、すなわち、金属イオンは、塩のカチオンである。好ましくは、塩は、無機塩であり、塩のアニオンは、塩に含まれる水和水を用いてまたは用いずに、この溶解性を与える任意のアニオンであり得る。しかしながら、アニオンは、重合反応またはフルオロポリマー生成物に悪影響を与えてはならない。金属塩の好ましいアニオンの例には、硫酸アニオン、亜硫酸アニオン、および塩化物アニオンが挙げられる。
好ましくは、金属イオンの金属は、複数の正原子価を有し、複数の酸化状態と呼ばれることがある。過酸化水素による酸化のための金属イオン触媒の例としては、Fe、MnおよびCuが挙げられる。
加速をしても、酸化反応はゆっくりであり、完了するのに例えば少なくとも30分かかる。酸化を行うための手順は、以下のとおりであり得る:水中の安定化界面活性剤の溶液が形成される。硫酸鉄水和物不活性化助剤としてのFe+2金属イオンが加えられ、この溶液に溶解される。溶液のpHは、酸化反応を促進するための適切な試薬の添加によって調整され得る。溶液は撹拌され、過酸化水素が、溶液にゆっくりと加えられる。Fe+2に対する過酸化物の重量比は、一般に、20:1〜400:1、好ましくは30:1〜300:1、より好ましくは60:1〜200:1であり得る。SDSなどの安定化界面活性剤に対する過酸化物の重量比は、0.15:1〜3.5:1、好ましくは0.3:1〜2.6:1、より好ましくは0.5:1〜1.6:1であり得る。過酸化水素の添加が完了したら、得られる水溶液は、上述されるように重合反応中に水性重合媒体に不活性化された界面活性剤を加えるために使用され得る。したがって、不活性化された界面活性剤とともに反応器に加えられる水が、重合反応または得られるフルオロポリマーに有害でないように、水溶液の水は、水性重合媒体について行われるのと同様に、好ましくは脱気され、脱イオン化される。これらの割合の反応剤および存在する場合不活性化助剤は、フルオロポリマー粒子分散体の安定化について上述される、炭化水素界面活性剤を含む炭化水素含有界面活性剤のいずれかおよび全ての不活性化に適用される。
水性重合媒体と別個に調製される場合、不活性化された界面活性剤は、不活性化反応が中で行われる水溶液中の組成が均一である。これは、反応器水性媒体中に供給される不活性化された界面活性剤の組成が、重合反応の終了時点で、反応器へのその供給の開始の時点での組成と同じであることを意味する。
安定化界面活性剤を不活性化するための過酸化水素の使用は、反応器への不活性化された界面活性剤溶液の供給を伴い得る任意の塩を生成しない。重合反応中に十分な量で存在する場合の塩は、凝塊の増加を生じさせることなどによって有害であり得る。
不活性化反応が酸化剤としての過酸化水素を用いて行われる水溶液の温度は重要である。過酸化物を安定化界面活性剤と酸化反応させるのに有効な好ましい温度範囲は、1〜50℃、好ましくは5〜45℃、最も好ましくは10〜45℃である。温度が45℃から上昇するにつれて、反応性が急激に低下し、50℃を超える温度で実質的に存在しない。したがって、所望の不活性化効果は、60℃以上の通常の重合温度で得られない。したがって、過酸化水素を用いた不活性化反応は、好ましくは、水性重合媒体と別個に行われる。
不活性化効果は、異なる水溶液温度で安定化界面活性剤と過酸化水素との酸化反応を行い、その後、フルオロモノマーの重合の際に水性重合媒体に加えられる安定化界面活性剤として不活性化された界面活性剤を使用し、水性重合媒体中の所与のフルオロポリマー固形分を得るのに必要とされる重合(バッチ)時間を比較することによって決定される。好ましくは、不活性化は、バッチ時間が、安定化界面活性剤が不活性化されない同じ重合と比較した際に、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも35%、最も好ましくは少なくとも50%だけ減少されるように有効である。重合方法の生産性の増加の別の尺度は、重合反応の空時収量(STY)の増加である。STYにおいて、空間は、反応器の体積であり、時間は、重合反応のキックオフからそれが完了するまでの時間であり、収量は、形成される分散ポリマーの重量である。STYは、本明細書において(分散ポリマーの)gm/l−時として表される。実施例10の表1の実験1および2において、バッチ時間は、約66%だけ減少し、STYは、約300%だけ増加する。
別の実施形態において、安定化界面活性剤は、過酸化水素と異なる酸化剤を用いた重合反応器における水性媒体への添加前、添加中、または添加後に不活性化され、これらのそれぞれは、不活性化反応のための好ましいタイミングである。実際には、不活性化のこのタイミングは、反応器の外および反応器の中の不活性化である。不活性化は、最も好ましくは、界面活性剤が反応器に入った後で起こるため、水性媒体中の不活性化が反応器中で起こる。この実施形態において、不活性化された安定化界面活性剤は、この界面活性剤と、酸化剤としての水溶性重合開始剤との反応生成物であり、好ましくは、開始剤は、水性媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を形成するために重合反応を引き起こすのに使用される。
好ましくは、この不活性化反応は、好ましくは、過酸化水素と安定化界面活性剤との反応を触媒するのに使用される金属イオンに関して上述される形態でこの反応に供給される金属イオンである不活性化助剤の存在下で行われる。
実験により、金属イオンの存在が、バッチ時間を実施例10の66%(表1の実験1および2を参照)だけ短縮することもできることが示された。
好ましい金属イオンとしては、元素周期表の第2〜12族のものが挙げられる。このような周期表は、McGraw−Hill Higher Educationによって出版されたM.S.Silverberg,Chemistry,The Molecular Nature of Matter and Change,5 Ed.(2009)の表紙の裏に開示されるものである。この表の族の付番は、「新表記法」と呼ばれることがある2010 IUPAC形式にしたがって1〜18である。この族の付番が、本明細書において言及される。この族の付番は、周期表の元素の縦列に当てはまる。
最も好ましい金属イオンは、遷移金属、特に第3〜12族のものであり、これらのうち、最も好ましいのは、第6〜12族のもの、さらにより好ましいのは、第7〜12族、最も好ましいのは第7〜11族のものである。周期表には、1〜7の番号が付けられた周期と呼ばれる元素の横方向の分類もあり、第1族元素のHから開始し、第7周期としての第1族元素のFrで終了する。遷移金属の中でも、横方向の第4周期のものが最も好ましい。「遷移金属」という用語には、「内部遷移金属、すなわち、ランタニドおよびアクチニドが含まれる。
好ましい遷移金属としては、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ce、およびAgが挙げられ、FeおよびCuが最も好ましい。本発明に好ましくは使用される遷移金属の大部分の特性の1つは、それらが、複数の酸化状態と呼ばれることがある複数の正原子価を有することである。例えばFeは、+2および+3の原子価を有し、Cuは、+1および+2の原子価を有する。最も好ましい金属イオンは、第一鉄イオンおよび第一銅イオンである。重合開始剤/安定化界面活性剤の酸化反応を触媒するのに使用される金属イオンは、一般に安定化界面活性剤の酸化を触媒するのにも使用され得る。
金属イオンをもたらす塩が、炭化水素含有界面活性剤の水溶液とともにまたはそれとは独立して、水溶液として重合反応器中の水性媒体に加えられ、水性媒体中への界面活性剤の計量供給とともに水性媒体中に計量供給され、水性媒体中に独立して計量供給され、または全て一度に水性媒体に加えられる。後述されるように、重合反応の前に、親油性核形成部位が形成される場合、水性媒体への金属イオンとしての不活性化助剤の添加が、好ましくは、これらの部位の形成が過剰な凝塊の形成を避けるために少なくとも開始された後まで遅延される。したがって、水性媒体への不活性化助剤としての金属イオンの添加が、好ましくは、重合反応の開始(キックオフ)後まで遅延される。
不活性化助剤とともに重合開始剤を用いた酸化反応の速さにより、この不活性化反応を、重合反応器における水性媒体への安定化界面活性剤の添加前、添加中または添加後に行うことができる。「添加前」の不活性化の酸化反応は、安定化界面活性剤の水溶液用の保持容器中で、不活性化助剤および重合開始剤をこの容器に加えることによって行われ得る。「添加中」の不活性化の酸化反応は、安定化界面活性剤、不活性化助剤、および重合開始剤の水溶液を一緒に反応器中に同時に供給して、これらの溶液が反応器への添加中に混合されるようにすることによって行われ得る。この混合中の酸化反応は、完了されていない場合、全ての3種の成分を含有する反応器供給管路の長さに応じて、少なくとも開始すると考えられる。「添加後」の不活性化反応、すなわち、重合反応器における水性媒体中の不活性化は、前の段落に記載されている。
両方の不活性化実施形態において、炭化水素界面活性剤を含む炭化水素含有界面活性剤は、界面活性剤を酸化剤と反応させることによって不活性化される。両方の不活性化反応において、酸化反応は、好ましくは、酸化反応を触媒する、水性媒体中の金属イオンである不活性化助剤の存在下で好ましくは行われる。金属イオンは、好ましくは、複数の正原子価を有し、好ましい金属イオンは、上述されるようにどの酸化剤が使用されるかに応じて決まる。これに関して、好ましい酸化剤は、重合反応のキックオフと題された節に開示されるものから好ましくは選択される、過酸化水素または水溶性重合開始剤である。
本発明の方法に使用される不活性化助剤は、好ましくは非常に少ない。例えば、金属イオンであり得る不活性化助剤の濃度は、重合反応の完了時の水性媒体中の炭化水素含有界面活性剤の重量を基準にして、好ましくは2重量%以下である。界面活性剤および金属イオンが、水溶液に一緒に加えられる場合、溶液中の不活性化助剤の同じ濃度が適用されるであろう。重合の完了の際の、水性媒体中の金属イオンであり得る不活性化助剤の量は、重合の完了の際に反応器中に存在する水の量を基準にして、好ましくは25ppm以下である。金属イオンのこれらの量も、他の不活性化助剤が使用される場合に適用され、すなわち、低下されたテロゲン性挙動の利点を炭化水素含有界面活性剤に与えるその部分に適用される。不活性化反応のタイミングは、使用される酸化剤に応じて決まり、好ましくは、反応器、すなわち反応器中の水性媒体への安定化界面活性剤の添加前、または反応器へのこの添加中、または反応器へのこの添加後のいずれかである。
本発明の好ましい実施形態は、重合反応器において、フルオロモノマーを重合して、水性媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を形成するための方法として記載することもでき、本方法は、(i)反応器に水性媒体を提供する工程と、(ii)親水性部分および疎水性部分を含む水溶性炭化水素含有化合物を水性媒体に加える工程と、(iii)水溶性ラジカル開始剤を水性媒体に加える工程と、(iv)重合を行うのに必要な圧力まで、フルオロモノマーを用いて反応器を圧力上昇させる工程と、(v)キックオフを引き起こすのに有効な量で、水溶性ラジカル重合開始剤を水性媒体に加えることによって重合をキックオフさせる工程であって、工程(iii)において水性媒体に加えられるラジカル開始剤の量が、キックオフを引き起こすのに不十分である工程と、(vi)フルオロモノマーの重合を継続する工程と、(vii)界面活性剤を水性媒体に加えて、フルオロポリマー粒子の得られる分散体を安定させる工程とを含み、工程(ii)および(iii)の実行により、工程(ii)および(iii)が省略された場合に得られるサイズより小さい粒子のサイズが得られる。
この好ましい実施形態において:
工程(ii)における炭化水素含有化合物は、炭化水素含有界面活性剤および炭化水素界面活性剤ならびに上述されるこれらの化合物および界面活性剤についての好ましいものを含む炭化水素含有化合物のいずれかであり得る。
工程(iii)におけるラジカル開始剤は、工程(ii)で記載される化合物を分解する任意の開始剤であり得、それによって、疎水性部分が、工程(v)および(vi)における重合用の親油性核形成部位になる。典型的に、開始剤は、その分解機能が重合機能でないとしても重合開始剤である。親油性核形成部位を生成するための上述される開始剤のいずれかが使用され得る。
上記の水溶性無機塩は、好ましくは、工程(iii)の前に水性媒体に加えられる。上記のような塩のいずれかが、上記の有益な効果を得るのに使用され得る。
工程(ii)における化合物/界面活性剤の量、工程(iii)におけるラジカル開始剤および前の段落に記載される塩は、上記の量および組合せのいずれかであり得る。
工程(vii)で加えられる安定化界面活性剤は、上記のもののいずれかであり得る。好ましいこのような界面活性剤は、炭化水素含有界面活性剤、より好ましくは炭化水素であり、工程(vii)の実行は、工程(v)のキックオフ後まで遅延され、添加は、界面活性剤を水性媒体中に計量供給することによる。遅延および計量供給の態様は、上記のもののいずれかであり得る。
安定化界面活性剤は、好ましくは、上述されるように不活性化される。
工程(ii)における化合物/界面活性剤は、非イオン性、アニオン性またはカチオン性であり得るが、非イオン性界面活性剤が好ましい。工程(vii)における好ましい安定化界面活性剤はアニオン性である。好ましい組合せは、工程(ii)において非イオン性界面活性剤であり、工程(vii)においてアニオン性界面活性剤であり、両方の界面活性剤は、好ましくは炭化水素界面活性剤である。
重合によって形成される分散体の粒子のフルオロポリマーは、好ましいフッ素プラスチックおよびパーフルオロプラスチックを含む上記のもののいずれかであり得る。
固形分および凝塊レベルが上述されるとおりである限り、結果のいずれかを得るために重合が行われ得る。
以下の炭化水素界面活性剤が、実施例に使用される。親油性核形成部位を形成するために使用される場合、これらの界面活性剤は、実施例において核形成剤と呼ばれる。
Pluronic(登録商標)31R1は、本明細書においてPluronic(登録商標)R界面活性剤として既に特定された両面非イオン性界面活性剤である。それは、3250の平均分子量を有する。界面活性剤(化合物)の両端は疎水性であり、中心は親水性である。
Avanel(登録商標)S−70は、本明細書において既に特定されたエチレンオキシド基を含有するアニオン性界面活性剤である。
Silwet(登録商標)L7600は、GE Siliconeから入手可能な非イオン性ペンダント型ポリエチレンオキシド改質ポリジメチルシロキサンである。
Tergitol(登録商標)100は、Tergitol(登録商標)TMNシリーズの界面活性剤の1つとして本明細書において既に特定されたTMN 6/TMN 10の70/30重量%ブレンドである。Tergitol(登録商標)TMNシリーズの界面活性剤は、分枝鎖状の非イオン性界面活性剤である。
CTMABは、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CH3(CH2)15N(CH3)3Br)、カチオン性界面活性剤である。
SDSは、ドデシル硫酸ナトリウム、エチレンオキシド基を有さない直鎖状のアニオン性炭化水素界面活性剤である。
SOSは、オクチルスルホン酸ナトリウムである。
Triton(登録商標)X−100は、上で特定されたオクチルフェノールポリエトキシアルコールである非イオン性界面活性剤である。
実施例に使用されるワックスは、パラフィンワックスである。
フルオロポリマー粒子の未処理の分散体の粒径を、Malvern Instrumentsによって製造されるZetasizer Nano−ZSによるレーザー光散乱を用いて測定する。分析用の試料を、10×10×45mmのポリスチレンキュベット中で調製し、蓋をして、分析用のデバイスに入れる。試料の調製は以下のとおりである。脱イオン化脱気水を、固定した先端を有する10ccのガラス製の皮下注射器中に取り込むことによって、キュベットをフラッシュするのに使用され、また、分散体試料を希釈するのに使用される水が、粒子を実質的に含まないようにする。Whatmanの0.02ミクロンフィルタ(Cat.No.6809−2002)を、注射器の固定した先端に取り付け、圧力をかけて、水をフィルタに通し、キュベットに入れる。約1.5mlの水をキュベットに入れ、キュベットに蓋をし、振とうし、蓋を開ける。水をキュベットから注ぎ出して、キュベットが粒子を含まないようにする。約2.5gmのろ過された水をキュベットに入れる。分析される1滴のフルオロポリマー分散体をキュベットに加える。キュベットに蓋をし、振とうして、フルオロポリマー粒子を水中で完全に混合する。試料を、Dv(50)の測定のためにNano−ZSに入れる。Dv(50)は、体積粒径分布に基づく中央粒径、すなわち、その下に集団の体積の50%が存在する粒径である。
メルトフローレート(MFR)を、ASTM D 1228の手順ならびに特定のポリマーについてのASTM手順に示されるようなポリマーの標準である溶融温度および可塑度計ピストン重量条件を用いて測定する。
溶融温度を、ASTM D 4591の手順にしたがって示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter)(DSC)によって測定する。ASTM D−4591−87にしたがって、PTFE DSC溶融温度が、ポリマーが加熱されて溶融温度を初めて超えたときに得られる(第1の熱とも呼ばれる)。報告される溶融温度は、第1の溶融における吸熱のピーク温度である。
本明細書におけるppmの定義(計算)は、成分の重量を、ppm単位での濃度が測定されるときの事象の時点で反応器中に存在する水の重量で除算した値になる。重合反応器への事前充填組成物中の、水溶性炭化水素含有化合物/核形成界面活性剤(化合物/核形成界面活性剤)、もしあれば塩、および分解剤/開始剤のppmは、化合物/核形成界面活性剤、存在する場合は塩、および分解剤/開始剤成分のそれぞれを含有する反応器に最初に充填される水および充填される任意の追加の水の重量を基準にする。したがって、親油性核形成部位を形成する時点で反応器中に存在する水の量は、化合物/核形成界面活性剤、もしあれば塩、および分解剤/開始剤のppmが測定される基準になる水の重量である。この量は、重合反応のキックオフまたは水性媒体への安定化界面活性剤の添加を提供するために水性媒体に加えられる重合開始剤用の溶媒として加えられる水を含まないであろう。加えられる水のこの量は、重合キックオフの時点で水性媒体中に存在する任意の界面活性剤のppm計算に含まれるであろう。簡単にするために、反応器に加えられる水が、化合物/核形成界面活性剤、塩、分解剤/開始剤などの溶解された成分を含有する場合、得られる溶液は、ppm計算のために全て水からなるとみなされる。
本明細書における「〜以下(no greater than)」などの数量の開示は、同じ数量が特定の量以下(or less)であると示されているのと同じ意味を有する。したがって、50ppm以下(no greater than)は、50ppm以下(or less)と同じ意味を有する。同様に、本明細書における「少なくとも」などの数量の開示は、同じ数量が特定の量以上であると示されているのと同じ意味を有する。したがって、少なくとも20重量%は、20重量%以上と同じ意味を有する。
本明細書に使用される核形成剤という用語は、親油性核形成部位が水性媒体中の界面活性剤の酸化によって得られる界面活性剤を指す。
本明細書に開示される反応器圧力は、特にゲージ圧(psig)であると示されない限り、絶対圧力である。psigゲージ圧に対応するように開示されるMPaおよびKPa圧力は絶対圧力である。
実施例1
この実施例は、塩の存在がある場合とない場合の、親油性核形成部位の分散体の形成を伴う場合および伴わない場合の重合の実験、ならびに様々な水溶性炭化水素含有化合物(核形成剤)および塩の使用を含む。
重合キックオフの前に核形成部位形成工程がない場合の重合の一般的手順:2枚羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、5700gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回真空にする。オートクレーブ撹拌器を65RPMに設定する。オートクレーブを90℃まで加熱し、TFEをオートクレーブに充填して、オートクレーブ圧力を400psig(2.86MPa)にする。時間ゼロの時点で、0.05gmの過硫酸アンモニウム(APS)および3.5gmのジコハク酸ペルオキシド(DSP)を含有する脱イオン化脱気水の150mlの開始剤溶液を、80ml/分で注入する。キックオフ時間(表Aの「KO時間」)を、充填開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下するのに必要な時間(時間ゼロからの)として測定する。キックオフ時に、オートクレーブ圧力を、TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。キックオフしてから100gmのTFEを供給した後、安定剤界面活性剤溶液を、4ml/分(0.28g/l−時)の速度でオートクレーブにポンプ注入する。水性媒体への界面活性剤添加を開始する際のこの遅延は、この添加が開始する前の1.68重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応する(計算:100gmのTFE÷[100+5700+150]×100)。安定剤溶液の調製を以下に示す。キックオフしてから750gmのTFEをオートクレーブに加えた後、バッチ時間(表A)を記録し、撹拌器を停止し、オートクレーブを大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。冷ましてから、ワックスを分散体から分離する。PTFE分散体は、2.8のpH、11.75の固形分%および198ナノメートルのDv(50)を有する(表Aの実験A−1)。PTFEは、332℃(第1の加熱)のDSC溶融温度および76J/g(第1の加熱)対47.5J/g(第2の加熱)のDSC融解熱によって示されるように、少なくとも1,000,000の高分子量(Mn)を有し、これは、第1の加熱からの冷却の際に起こる再結晶化の量を減少させるPTFEの非常に高い溶融粘度を反映している。PTFEはまた、ASTM D 1238試験において流れを示さない、すなわち0のMFRを示す。
上記の手順に使用される界面活性剤安定化溶液中の界面活性剤を、以下の手順によって不活性化する:1リットルの被覆された丸底フラスコに、681.74gmの脱イオン化脱気水、10.5gmのドデシル硫酸ナトリウム(ACS Reagent、>99.0%)および0.315gmの硫酸鉄(II)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで、内容物を撹拌する。12〜14滴の濃硫酸を用いて、溶液pHを2.0〜2.5に調整する。37.34gmの30重量%の過酸化水素水溶液を、撹拌混合物にゆっくりと加える。撹拌を室温(22〜23℃)で1時間継続し、その後、水溶液中の得られる酸化された界面活性剤を、上記の重合手順に使用する。
上記の重合手順は、重合キックオフの前の核形成工程を含まず、重合結果が、表AのA−1として報告される。
5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスがオートクレーブへの初期充填物である以外は、上記の重合手順を繰り返すことによって、核形成工程を実施する。次に、0.085gmの界面活性剤(Nucleant、表A)および0.4gmの亜硫酸ナトリウム水溶性無機塩を含有する500gmの脱イオン化脱気水を、オートクレーブに加える。オートクレーブを重合温度まで加熱した後であるが、TFEを充填してオートクレーブを動作圧力にする前に、脱イオン化脱気水のリットル当たり0.5gmのAPSを含有する50mlの水溶液を加える。得られる水性媒体中の、界面活性剤の濃度は、14.8ppm(計算:(計算:(0.085÷5750)×100)であり、塩濃度は70ppmであり、開始剤濃度は4.3ppmであり、4ppmの開始剤濃度を提供する。水性媒体(事前充填組成物)中に存在する条件/添加剤の下で、APSは、炭化水素界面活性剤の酸化反応を起こさせ、水性媒体中に分散された親油性核形成部位が形成される。これらの部位の存在は、非イオン性、アニオン性、およびカチオン性界面活性剤を用いた、実験A−3〜A−9についての表Aに報告されるPTFE粒子のより小さい粒径(Dv(50)によって示される。実験A−9についての重合キックオフまでの長い時間は、この界面活性剤中に存在する芳香族部分に起因し、使用される他の界面活性剤は非芳香族であり、すなわち芳香族部分を含まない。使用されるこの界面活性剤の量を減少させることによってこのキックオフ時間を短縮することができると考えられる。表A中の実験A−3〜A−9として報告されるこの繰り返し実験における遅延は、安定化界面活性剤の添加が開始する前の1.67重量%のフルオロポリマー濃度である(計算:100gのTFE÷[100+5200+500+50+150]×100)。表Aに報告される全ての実験についての遅延の実際の時間は、キックオフの後で、安定化界面活性剤の添加が開始する前の4.4〜6分間の範囲である。
実験A−2は、亜硫酸ナトリウム塩が表Aに示される量で加えられる以外は、核形成界面活性剤が存在しない上記の重合手順の結果である。塩が存在し、核形成界面活性剤が存在しないことにより、はるかに大きいPTFE粒径が得られ、これは、塩がより少ないポリマー粒子を重合の初期段階中に形成させていることを示唆している。
上記の重合を、重合の一連のスクリーニング(screening series)として行い、すなわち、重合媒体の総重量を基準にして約11〜13重量%の分散体PTFE固形分(粒子)になるまで行い、これは、キックオフ後にわずか750gmのTFEを重合反応用のオートクレーブに供給することから得られる。
上記の重合から得られるスクリーニング結果を、重合が約34重量%の分散体固形分を生成するために3200gのTFEを消費するまで延長された場合の重合結果に外挿することができる。この外挿された結果を括弧内のDv(50)として表Aに報告する。下式を用いてこの外挿を行うことができる:
D2=[P2×(D1)3/P1]1/3
式中、P1が、Dv(50)粒径D1(ナノメートル)を有する生成されるポリマーの実際の量(グラム)であり;P2が、予測される、生成されるポリマー(グラム)に等しく、D2が、P2ポリマーの予測される粒径(ナノメートル)である。実験A3についての試料計算は以下のとおりである。
D2=(3200×1133/849)1/3=(5438481.04)1/3=176
実験A−1は比較実験であり、核形成界面活性剤も塩も使用せず、すなわち、上記の核形成工程手順を使用しない。実験A−2も比較実験であり、塩を使用するが、核形成界面活性剤を使用しない。実験A−1のDv(50)結果と実験A−3〜A−10との比較は、より小さいフルオロポリマー粒径の提供に対する、実験A−3〜A−10中に存在する親油性核形成部位の影響を示す。実験A−2は、単独での塩の使用が、実験A−1よりはるかに大きい、はるかに大きいDv(50)粒径としてのより劣った結果をもたらすことを示す。
実験B−4における核形成部位形成工程中に塩が存在しないことを除いて、異なる塩(実験B−1〜B−3)を用いた重合手順に核形成工程が含まれる一連の実験において上記の重合手順を繰り返す。核形成界面活性剤は、14.8ppmのPluronic(登録商標)31R1である。塩の量は70ppmであり、APS開始剤の量は4ppmである。安定化界面活性剤の添加を開始する際の遅延は、水性媒体中の1.67重量%のPTFE濃度である。結果を表Bに報告する。
表Bに示されるように、異なる塩は全て、小さいPTFE粒径をもたらす。実験A−4は、核形成界面活性剤を使用するが、塩を使用しない場合のDv(50)結果を示す。
全ての3つの重合で作製されるPTFEは、この実施例において上述される特性を示す。
実施例2
この実施例は、親油性核形成部位の分散体の形成に様々な塩を用いた実験を含む。
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、5300gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。オートクレーブに、0.075gmのPluronic(登録商標)31R1および表Cに示される様々な量の塩を含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、大気圧になるまで通気する。オートクレーブを、窒素を用いて加圧し、さらに2回通気する。反応器撹拌器を65RPMに設定する。脱イオン化脱気水のリットル当たり1.0gmの過硫酸アンモニウム(APS)を含有する50mlの開始剤溶液を、反応器に加えて、8.5ppmのAPS濃度を得る。界面活性剤濃度は12.8ppmである。これは、親油性核形成部位の分散体が中に形成される事前充填組成物である。
反応器を80℃まで加熱し、TFEを反応器に充填して、反応器圧力を330psig(2.45MPa)にする。次に、75mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填してから、ポンプ速度を重合の持続時間にわたって1.0ml/分に低下させる。キックオフ時に(10psi(69kPa)の圧力降下)、オートクレーブ圧力を、TFEを用いて330psig(2.45MPa)に戻し、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。キックオフ時に、250mlの溶液を加えてしまうまで、100gmの流体当たり2.0gmのHFPO二量体酸および1.0gmのコハク酸を含有する脱イオン化脱気水中の水溶液を、10ml/分で反応器に加える。1800gmのTFEを反応器に加えた後、撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。冷ましてから、ワックスを分散体から分離し、分散体をろ過する。反応器を清浄化し、清浄化中に反応器から除去される全てのポリマーを、ろ過された固形分と組み合わせて、真空オーブン中で乾燥させて、凝塊(非分散ポリマー)の測定値を得る。このように作製されるPTFE分散体は、2.7の公称pHを有し、粒径および固形分%について分析される。ある量の分散体を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウムの水溶液を加え、激しく撹拌して、水相からポリマーを分離することによって、ポリマー試料を得る。ポリマーを、さらなる分析の前に、真空オーブン中110℃で約12時間乾燥させる。重合の結果を表Cに報告する。この実施例で作製されるPTFEは、実施例1においてPTFEについて記載されるような特性を示す。PTFEは、106を超える分子量(Mn)および106Pa.sを超える溶融クリープ粘度も有する。
実験C−20は比較実験である。140ppmにおける塩含量は過度に高く、重合の固形分についての劣った大きい粒径Dv(50)および多い凝塊が得られる。
実施例3
この実施例は、改質PTFEの調製を提供する。
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。オートクレーブに、0.02gmのPluronic(登録商標)31R1および0.4gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、大気圧になるまで通気する。オートクレーブを、窒素を用いて加圧し、さらに2回通気する。撹拌器速度を65RPMに設定し、反応器を90℃まで加熱する。水のリットル当たり0.5gmの過硫酸アンモニウム(APS)を含有する40mlの開始剤溶液を反応器に加える。これが事前充填組成物である。水性媒体中のPluronic界面活性剤、塩および開始剤の濃度はそれぞれ、3.5ppm、69.6ppm、3.5ppmである。
12.0gmのヘキサフルオロプロピレン(HFP)および650gmのTFEを反応器に充填して、反応器圧力を400psig(2.86MPa)にすることによって反応器を圧力上昇させる。時間ゼロの時点で、11.67gmのジコハク酸ペルオキシド溶液(70重量%のDSP)、0.17gmの過硫酸アンモニウムおよび488.3gmの脱イオン化脱気水から構成される150mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填する。開始剤の注入の開始から2.0分後、反応器圧力は、開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下する。オートクレーブ圧力を、TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。キックオフしてから100gmのTFEを供給した後、後述されるように調製される安定化界面活性剤溶液を、実行の終了まで4ml/分(0.28g/l−時)の速度で反応器にポンプ注入する。水性媒体への界面活性剤添加を開始する際のこの遅延は、水性媒体中の改質PTFEの1.67重量%の濃度に対応する。キックオフしてから155.6分後、3100gmのTFEおよび688mlの安定化界面活性剤溶液を反応器に加えた。撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。冷ましてから、液体ワックスを分散体から分離し、分散体をろ過して、非分散固形分(凝塊)を除去する。反応器を開け、全ての凝塊を反応器から除去する。反応器除去物(cleanout)をろ過された固形分と組み合わせて、真空オーブン中で乾燥させる。凝塊(全非分散固形分)の測定値を得るために、このポリマーに付着している液体ワックスを、ポリマーを遠心分離し、ブロッティングすることによってさらに除去する。この場合、全凝塊が120.4gmであると測定される。回収される全液体ワックスは208.7gmである。分散されたフルオロポリマー粒子は、この分散体を含有する32.8重量%の水性媒体を構成する。分散された粒子は、255nmの体積基準による平均粒径、Dv(50)を有する。分散体を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウム水溶液を加えた後、ポリマー粒子が水から完全に分離するまで激しく撹拌することによって、これらの粒子を凝固させる。ポリマーを、真空オーブン中110℃で12時間乾燥させる。第1の熱についてDSCによって測定されるこのポリマーの融点は335℃である。FTIRによる組成分析により、0.5重量%のHFPが示される。この改質PTFEは、106を超える分子量(Mn)、0のMFR、および106Pa・sを超える溶融クリープ粘度を有する。
安定化界面活性剤溶液を以下のように調製する:1リットルの被覆された丸底フラスコに、492.5gmの脱イオン化脱気水、7.5gmのドデシル硫酸ナトリウム(ACS Reagent、>99.0%)および0.225gmの硫酸Fe(+2)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで内容物を撹拌する。2滴の濃硫酸を用いて、溶液のpHを3.22に調整する。18.75gmの30重量%の過酸化水素を混合物に加える。混合物を、撹拌しながら40℃まで加熱し、その温度で2時間保持する。溶液を排出し、氷浴中で冷却して、急速に流体を周囲温度にする。最終的な混合物は、2.76のpHを有する。
実施例4
この実施例は、PFAの調製を提供する。
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、7500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブに、0.025gmのPluronic(登録商標)31R1および0.2gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回排気する。撹拌を開始させ、撹拌器速度を70RPMに設定する。100mlのPPVEおよび0.1gmのエタンを反応器に加える。水性媒体中の界面活性剤、塩および開始剤の濃度はそれぞれ、3.1ppm、25ppm、11.6である。脱イオン化脱気水のリットル当たり6.2gmの過硫酸アンモニウムを含有する15mlの開始剤溶液を反応器に加え、すなわち、事前充填組成物中のAPSの量は11.2ppmである。反応器を85℃まで加熱し、次に、TFE(約290gm)を反応器に充填して、反応器圧力を300psig(2.17MPa)にする。時間ゼロの時点で、100mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填し、次に、開始剤を、実行の終了まで0.6ml/分で連続的にポンプ注入する。反応器圧力が開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下するときに、開始剤の注入の開始から1.5分後にキックオフが起こる。キックオフ時に、反応器温度制御装置の設定点を、85℃から75℃に低下させる。オートクレーブ圧力を、TFEならびに重合の持続時間にわたって供給されるTFEのグラム当たり0.03mlのPPVEの添加によって300psig(2.17MPa)に制御する。キックオフしてから1000gmのTFEを供給した後、安定化界面活性剤としての100gの脱イオン化脱気水当たり0.5gmのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有する脱イオン化脱気水中の界面活性剤溶液を、実行の終了まで1ml/分の速度で反応器中にポンプ注入する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始する際のこの遅延は、以下で計算される、水性媒体中のPFAの11.6重量%の濃度に対応する。時間遅延は50分間である。安定化界面活性剤の計量供給速度は0.025g/l−時である。キックオフしてから135分後、2300gmのTFEおよび86mlの界面活性剤溶液を反応器に加えた。撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。水性媒体中の22.1重量%の固形分および114nmの未処理の分散体の粒径を有する10.68kgの水性分散体を生成する。チーズクロスを通した分散体のろ過および反応器の清浄化から得られる凝塊を、真空オーブン中で乾燥させると、63gm(0.6重量%)になる。分散体試料の凍結、それに続く解凍、ろ過、洗浄および乾燥によってPFAポリマーを単離する。ポリマーは、FTIRによって測定した際に6.0重量%のPPVEを含有し、10.8gm/10分のMFRを有する。
水性媒体中の重量%(フルオロポリマー)濃度の計算:
A=生成されるポリマーの総重量
B=反応器中の水の総重量
A=供給されるTFE重量/(1−フルオロポリマー中のPPVEの重量分率)
A=1000/(1−0.06)=1063.8
B=反応器に加えられる水の総重量
B=7500+500+15+100+(0.6×50)=8145
濃度の重量%=[A/(A+B)]×100
=[1063.8/(1063.8+8145)]×100=11.6
以下を除いてこの実験を繰り返す:反応器を85℃まで加熱する前に15mlの開始剤溶液を加えるのではなく、反応器を加熱した後でかつ反応器を300psig(2.17MPa)にするためにTFEを充填する前に開始剤溶液を加える。キックオフ時間は2.6分間であり、バッチ時間は138分間であり、89mlの界面活性剤溶液を反応器に加える。22.0重量%の固形分および128nmの未処理の分散体の粒径を有する10.52kgの水性分散体を生成する。チーズクロスを通した分散体のろ過および反応器の清浄化から得られる凝塊を、真空オーブン中で乾燥させると、95gmになる。単離されたポリマーは、FTIRによって測定した際の5.4重量%のPPVEを含有し、12.0gm/10分のMFRを有する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始する際の遅延は、キックオフ後の49.5分間であり、11.5重量%のPFA濃度に対応する。
実施例5
実施例は、FEPの調製を提供する。
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、6000gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブに、0.015gmのPluronic(登録商標)31R1および0.1gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回排気する。撹拌を開始させ、撹拌器速度を75RPMに設定する。反応器を95℃まで加熱する。脱イオン化脱気水のリットル当たり22gmの過硫酸アンモニウムを含有する2.6mlの開始剤溶液を反応器に加える。水性媒体中の界面活性剤、塩および開始剤の濃度はそれぞれ、2.3ppm、15.4ppm、8.8ppmである。
反応器圧力を435psig(3.10MPa)にするために、HFPおよびTFEを、1.857/1のHFP/TFEの重量比で反応器に充填する。時間ゼロの時点で、30mlの上記の開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填し、次に、開始剤を、実行の終了まで1.5ml/分で連続的にポンプ注入する。反応器圧力が425psig(3.03MPa)まで降下するときに、開始剤注入の開始から3.5分後にキックオフが起こる。実行の持続時間にわたって、TFEの添加によってオートクレーブ圧力を425psig(3.03MPa)に制御する。キックオフしてから300gmのTFEを供給した後、100gmの溶液当たり1.45gmの不活性化ドデシル硫酸ナトリウムを含有する界面活性剤溶液を、実行の終了まで0.75ml/分の速度で反応器にポンプ注入する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始する際の遅延は37.5分間であり、4.9重量%の水性媒体中のFEP濃度に対応する。水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は、0.054g/l−時である。安定化界面活性剤(SDS)の不活性化処理は、実施例3に記載されるのと同じである。キックオフしてから248分後、2000gmのTFEおよび158mlの界面活性剤溶液を反応器に加えた。撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。23.2重量%の固形分および165nmの未処理の分散体の粒径を有する8.70kgの水性分散体を生成する。チーズクロスを通した分散体のろ過および反応器の清浄化から得られる凝塊を、真空オーブン中で乾燥させると、270gmになる。分散体試料の凍結、それに続く解凍、ろ過、洗浄および乾燥によってポリマーを単離する。ポリマーは、FTIRによって測定した際に10.6重量%のHFPを含有し、273℃の融点を有する。
実施例6
この実施例は、水性重合媒体中に安定化界面活性剤を導入するために、重合キックオフ後の様々な遅延を用いることによって、実施例1のPTFEの特性を有するPTFEを調製するための重合結果を比較する。
重合条件の概要は以下のとおりである:5700gmの脱イオン化脱気水を、0.085gmのPluronic(登録商標)31R1、0.02gmのTriton X−100および0.4gmのNa2SO3とともに反応器に充填し、90℃まで加熱する。次に、6.9ppmのAPS濃度を提供する80ml(0.04gmのAPS)を水性媒体に加える。水性媒体中の界面活性剤の濃度はそれぞれ、14.7ppmおよび3.4ppmであり、塩の濃度は69ppmであり、開始剤の濃度は6.9ppmである。660gmのTFEの添加によって、反応器を400psig(2.86MPa)まで圧力上昇させる。重合を開始させるために、脱イオン化脱気水のリットル当たり0.33gmのAPSおよび22.33g(70%活性のDSP)を含有する150mlの開始剤溶液を反応器に加える。キックオフ(KO)後、TFEの添加によって、圧力を2.86MPaに維持する。22gmのTFE供給(実験D−3およびD−4)または300gmのTFE供給(実験D−1およびD−2において、水性重合媒体中へのSDSまたはSOS安定化界面活性剤の導入を開始させる。界面活性剤添加を開始させる前に消費される22gmのTFEの遅延は、0.37重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応する。界面活性剤添加を開始させる前に消費される300gmのTFEの遅延は、5.06重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応する。安定剤界面活性剤溶液を、1000gmのTFE供給まで2ml/分の速度で水性媒体中にポンプ注入する。このポンプ注入速度は、0.14g/l−時の計量供給速度である。次に、ポンプ速度を3ml/分(0.22g/l−時)まで上昇させる。ポンプ溶液中のSDSまたはSOSの濃度は、100gmの流体当たり1.445gmである。
この表に示される結果は、22gm(0.37重量%)の遅延が、464分間の長い重合時間によって示されるように、SDSおよびSOSの両方にとって短すぎることである。界面活性剤添加を開始させる前に消費される22gmのTFEのこの遅延は、VF2/HFPコポリマーを作製する米国特許第7,521,513号明細書の実施例1において実施される0.36重量%の遅延と同様である(計算:[90÷(25000+100+90)×100]。464分間のバッチ時間に達したら、TFEモノマー供給が2200gmのPTFE目標に達しないように、重合反応を停止する。実験D−1が最良の結果をもたらし、2200gmのPTFE目標を実験D−2〜D−4よりはるかに短いバッチ時間で達成することができる。
以下の変更を伴い上記の重合を繰り返す:開始剤ポンプ速度がより速く(4.0ml/分)、安定剤界面活性剤供給の遅延が、キックオフ後の反応器への100gmのTFE補充供給までである。この遅延は、1.66重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応する。重合の繰り返しにおけるこれらの変化は、後述されるように不活性化される安定化界面活性剤の利点(テロゲン性の低下)を考えてなされる。ポンプ注入は、実行の終了まで継続する。結果を表Eに示す。MFRを、この実施例のPTFEについて測定し、結果は溶融流れなしである。
SDSおよびSOS安定化界面活性剤を、以下の手順にしたがって、水性重合媒体中への導入の前に不活性化する:1Lのガラス瓶中で、10.5gmのドデシル硫酸ナトリウムを681.74gmの脱気水に加え、全ての固形分が溶解され、溶液が透明になるまで、撹拌子を用いてさらに撹拌する。0.315gmの硫酸鉄(+2)七水和物を室温でこの溶液に加える。次に、12〜14滴の濃H2SO4を用いて、pHを2.0〜2.5に調整する。この瓶の内容物を、温度計およびオーバーヘッド撹拌器を備えた加熱/冷却ジャケットを有する3つ口の1Lのガラス反応器に移す。次に、37.34gmのH2O2(30%溶液)を、この撹拌溶液にゆっくりと加える。H2O2添加が完了した後、次に、溶液を、室温でさらに60分間、さらに撹拌する。次に、得られる不活性化SDS反応物を含有する溶液を1Lのガラス瓶中に排出し、これが、安定化界面活性剤を重合反応中にポンプ注入するのに使用される溶液である。Witconate(登録商標)NAS−8界面活性剤として入手可能な、水に溶解させた溶液としてILのガラス瓶に加えることを除いて、同じ不活性化手順をSOSに使用して、同じ10.5gmのSOSを得る。
SDSおよびSOS安定化界面活性剤の不活性化により、より多い量のPTFEを作製するためのバッチ時間がはるかに短くなる。
実施例7
この実施例は、様々な温度で不活性化される安定化界面活性剤からの重合結果を比較する。不活性化手順は以下のとおりである:1リットルの被覆された丸底フラスコに、681.74gmの脱イオン化脱気水、10.5gmのドデシル硫酸ナトリウム(ACS Reagent、>99.0%)および0.315gmの硫酸Fe(+2)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで内容物を撹拌する。12〜18滴の濃硫酸を用いて、溶液のpHを2.0〜2.5に調整する。温度が調節された水をフラスコジャケットに通して循環させることによって、所望の不活性化温度(PT)(表F中の実験F−1、F−2、およびF−3)に混合物を保持しながら、37.34gmの30重量%の過酸化水素を混合物に加える。混合物を、排出する前に1時間撹拌し、必要に応じて、氷浴を用いて室温まで急冷する。
重合手順は以下のとおりである:2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。オートクレーブに、0.085gm(14.9ppm)のPluronic(登録商標)31R1、0.02gm(3.5ppm)のTriton(登録商標)X−100および0.4gm(70ppm)の亜硫酸ナトリウムを含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回真空にする。撹拌器速度を65RPMに設定し、反応器を90℃まで加熱する。0.04gのAPS開始剤を、次に、加熱された水性媒体(脱イオン化脱気水中、80mlの0.5g/l開始剤溶液)に充填して、6.9ppmの事前充填物中のAPS濃度を得る。界面活性剤濃度はそれぞれ、14.7ppmおよび3.5ppmであり、塩濃度は、水性媒体中70ppmである。TFEを反応器に充填して、反応器圧力を400psig(2.86MPa)にする。時間ゼロの時点で、11.67gmの(70%活性)ジコハク酸ペルオキシド、0.17gmの過硫酸アンモニウム(APS)および488.3gmの脱イオン化脱気水から構成される150mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填する。開始剤注入の開始から約7分間で、反応器圧力は、開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下する。オートクレーブ圧力を、補充TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、補充TFEの連続添加によって、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。キックオフしてから100gmのTFEを供給した後、界面活性剤溶液を、実行の終了まで4ml/分の速度で反応器にポンプ注入する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始させる際のこの遅延は、1.66重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応し、水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は0.29g/l−時である。バッチ時間(キックオフから補充TFEの添加の終了までの時間)を下表に示す。3100gmの補充TFEを反応器に加えた後、撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。冷ましてから、液体ワックスを分散体から分離し、分散体をろ過して、非分散固形分を除去する。反応器を開け、全ての付着されたポリマーを反応器から除去する。反応器除去物をろ過された固形分と組み合わせて、真空オーブン中で乾燥させる。凝塊(全非分散固形分)の測定値を得るために、このポリマーに付着している液体ワックスを、ポリマーを遠心分離し、ブロッティングすることによってさらに除去する。これらの実施例においてこのように得られる凝塊は35〜38グラムである。生成される水性分散体は、9.7kgであり、34%の固形分および下表Fに示されるように体積基準による平均粒径、Dv(50)を有する。分散体を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウム水溶液を加えた後、ポリマーが水から完全に分離するまで激しく撹拌することによって、ポリマーを凝固させる。ポリマーを、真空オーブン中110℃で12時間乾燥させる。PTFEは、実施例2に記載されるPTFEの分子量および溶融クリープ粘度特性を示す。
バッチ時間は、40℃における安定化界面活性剤の不活性化からより低い温度における不活性化へと急激に減少する。
実施例8
この実施例は、不活性化された安定化界面活性剤および不活性化されていない安定化界面活性剤を用いた重合性能を比較する。
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。オートクレーブに、0.075gmのPluronic(登録商標)31R1および0.2gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回真空にした。反応器撹拌器を65RPMに設定する。反応器を90℃まで加熱し、脱イオン化脱気水のリットル当たり0.5gmのAPSを含有する100mlの開始剤を反応器に加え、事前充填組成物中8.6ppmのAPS濃度を得る。界面活性剤の濃度は12.9ppmであり、塩の濃度は、水性媒体中34.5ppmである。
690gmのTFEを反応器に加えて、反応器圧力を400psig(2.86MPa)にする。時間ゼロの時点で、脱イオン化脱気水のリットル当たり0.5gmのAPSを含有する150mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填し、次に、ポンプ速度を、重合の持続時間にわたって1.0ml/分に低下させる。充填開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下するのに必要な時間(時間ゼロからの)としてキックオフを測定する。キックオフは2分で起こり、オートクレーブ圧力を、補充TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、補充TFEの連続添加によって、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。300gmの補充TFEを反応器に加えた後、水のリットル当たり8.0gmのドデシル硫酸ナトリウムを含有するポンプ溶液を、合計300gmの溶液を加えてしまうまで、2.0ml/分の速度で反応器に加える。キックオフとSDS添加の開始との間の時間遅延は9.3分間であり、この時間遅延の終了の時点での水性媒体中のPTFEの濃度は4.79重量%であり、界面活性剤の計量供給速度は0.08g/l−時である。時間ゼロから197分後、2200gmの補充TFEを反応器に加えてから、撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。このように作製されるPTFE分散体は、28%の固形分および213nmの未処理の分散体の粒径を有する。ある量の分散体を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウムの水溶液を加え、激しく撹拌して、水相からポリマーを分離することによって、ポリマー試料を得る。ポリマーを脱イオン水で洗浄し、真空オーブン中110℃で約12時間乾燥させてからさらに分析する。PTFEは、実施例2に記載されるようなPTFEの特性を示す。
300gmの補充TFEを反応器に加えた後、水のリットル当たり14.4gmの不活性化されたドデシル硫酸ナトリウムを含有するポンプ溶液を、2200gmの補充TFEを反応器に加えた時点の実行の終了まで1.67ml/分の速度で反応器に加えることを除いて、上記の実験を繰り返す。水性媒体への不活性化されたSDSの添加を開始させる際の遅延は9.7分間であり、遅延の終了の時点でのPTFE濃度は4.79重量%であり、水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は0.12g/l−時である。加えられる不活性化されたドデシル硫酸ナトリウム溶液の合計量は115mlである。79分間のバッチ時間は、前の段落における不活性化されていない実験より著しく少ない。分散体は26.5%の固形分であり、175nmの未処理の分散体の粒径を有する。PTFEは、実施例2に記載されるようなPTFEの特性を示す。
SDSの不活性化を、以下の手順によって行う:1リットルの被覆された丸底フラスコ中に、681.74gmの脱イオン化脱気水、10.5gmのドデシル硫酸ナトリウム(ACS Reagent、>99.0%)および0.315gmの硫酸鉄(+2)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで内容物を撹拌する。12〜18滴の濃硫酸を用いて、溶液のpHを2.0〜2.5に調整する。温度が調節された水をフラスコジャケットに通して循環させることによって、混合物を22℃に保持しながら、37.34gmの30重量%の過酸化水素を混合物に加える。混合物を、不活性化された安定化界面活性剤の溶液として重合に使用するために排出する前に1時間撹拌する。
実施例9
この実施例は、安定化界面活性剤としてエトキシ化アニオン性界面活性剤を用いてPTFEを作製するための重合を開示する。
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブに、5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。オートクレーブに、0.085gmのPluronic(登録商標)31R1、0.02gmのTriton(登録商標)X−100および0.4gmのNa2SO3を含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。オートクレーブを密閉し、真空下に置く。オートクレーブ圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回真空にする。反応器撹拌器を65RPMに設定し、反応器を90℃まで加熱する。脱イオン化脱気水のリットル当たり0.5gmの過硫酸アンモニウム(APS)を含有する80mlの開始剤溶液を反応器に加え、6.9ppmの水性事前充填物中のAPS濃度を得る。水性媒体中の界面活性剤の濃度はそれぞれ、14.7ppmおよび3.5ppmであり、塩の濃度は69.2ppmである。TFEを反応器に充填して、反応器圧力を400psig(2.86MPa)にする。時間ゼロの時点で、水のリットル当たり0.33gmのAPSおよび23.33gmの70重量%の活性ジコハク酸ペルオキシド(DSP)を含有する脱イオン化脱気水中の150mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填する。キックオフ時間を、時間ゼロの時点に開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力から10psi(69kPa)降下するのに必要な時間(時間ゼロからの)として測定する。キックオフは6.8分で起こる。オートクレーブ圧力を、補充TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、重合の持続時間にわたって補充TFE流れを調整することによって、その圧力に維持する。100gmの補充TFEを供給した後、Avanel(登録商標)S70を含有する不活性化された安定化溶液を、実行の終了まで4ml/分の速度でポンプ注入する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始させる際のこの遅延は7.9分間であり、重量%の遅延は、1.66重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応し、水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は0.288g/l−時である。時間ゼロから2200gmのTFEを反応器に加えた後、撹拌器を停止し、反応器を大気圧になるまで通気し、分散体を排出する。得られる水性分散体は、178nmの体積基準による平均粒径、Dv(50)を有する24.7%の固形分を有する。分散体を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウム水溶液を加えた後、ポリマーが水から完全に分離するまで激しく撹拌することによって、ポリマーを凝固させる。PTFEを真空オーブン中110℃で12時間乾燥させると、それが実施例2のPTFEの特性を示すことが分かる。
Avanel(登録商標)界面活性剤を不活性化させるための手順は以下のとおりである:1リットルのガラス瓶に、30gmのAvanel(登録商標)S70溶液(10.5gmの活性界面活性剤)、662.24gmの脱イオン化脱気水および0.315gmの硫酸鉄(+2)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで混合物を撹拌する。12〜16滴の濃硫酸を用いて、この混合物のpHを2.0〜2.5に調整する。撹拌し、22〜23℃に保持しながら、37.34gmの30重量%の過酸化水素を、1〜2分間かけて混合物にゆっくりと加える。過酸化水素の添加の後、撹拌を1時間継続してから、得られる不活性化された界面活性剤溶液を上記の重合に使用する。
実施例10
この実施例は、炭化水素界面活性剤とともに、硫酸鉄(II)、FeSO4・7H2Oによって提供される金属イオン、Fe+2の存在のある場合とない場合の重合方法を比較する。
この実施例に使用される一般的な重合手順は、特に示されない限り、以下のとおりである:
2羽根撹拌器を備えた、12リットルの、水平に配置された、被覆されたステンレス鋼反応器に、5200gmの脱イオン化脱気水および250gmの液体ワックスを加える。反応器に、0.085gmのPluronic(登録商標)31R1、および0.4gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の500gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器を密閉し、真空下に置く。反応器圧力を、窒素を用いて30psig(310kPa)まで上昇させ、3回真空にする。撹拌器速度を65RPMに設定し、反応器を90℃まで加熱する。水のリットル当たり0.5gmの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を含有する80mlの溶液を反応器に加え、6.9ppmの、反応器にこれまでに加えられる水中のAPS濃度を得る。この段階で、Pluronic(登録商標)31R1の濃度は14.7ppmであり、亜硫酸ナトリウムの濃度は6.9ppmである。これは、親油性核形成部位が重合反応のキックオフの前に形成される反応の段階である。上記の水性媒体に加えられる成分のppmは、この時点までに反応器中に存在する水の総量を基準にする。成分の溶液は、このppm計算において全て水からなるとみなされる。
次に、TFEを反応器に充填して、反応器圧力を400psig(2.86MPa)にする。11.67gmの(70%活性)ジコハク酸ペルオキシド、0.17gmの過硫酸アンモニウムおよび488.3gmの脱イオン水から構成される150mlの開始剤溶液を、80ml/分で反応器に充填する。重合反応のキックオフは、開始剤溶液の注入の際に観測される最高圧力からの10psi(69kPa)の降下の後に起こったとみなされる。反応器圧力を、補充TFEを用いて400psig(2.86MPa)に戻し、補充TFEの連続添加によって、重合の持続時間にわたってその圧力に維持する。キックオフしてから100gmのTFEを供給した後、金属イオンを含むかまたは含まない界面活性剤溶液を、実行の終了まで、すなわち、反応器への補充TFEの添加を停止するまで4ml/分(0.288g/l−時の金属イオン)の速度で反応器にポンプ注入する。規定の量の補充TFEを反応器に加えた後、撹拌器を停止し、これにより、重合反応の完了を確定する。反応器の通気(未反応TFEの除去)後、ポリマー分散体を排出する。冷ましてから、液体ワックスを分散体から分離し、分散体をろ過して、非分散固形分を除去する。反応器を開け、全ての付着されたポリマーを反応器から除去する。反応器除去物をろ過された固形分と組み合わせて、真空オーブン中で乾燥させる。
ポリマーを遠心分離し、ブロッティングしてワックスを除去することによって、乾燥したろ過された固形分および付着したポリマーから液体ワックスをさらに除去することによって、凝塊(全非分散固形分)を得る。分散体水を約10重量%の固形分になるまで希釈し、炭酸アンモニウム水溶液を加えた後、ポリマーが水から完全に分離するまで激しく撹拌することによって、ポリマー分散体を凝固させる。得られるポリマーを、真空オーブン中110℃で12時間乾燥させる。このポリマーの融点および融解熱を、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter)(DSC)によって測定する。ポリマーは、少なくとも1,000,000の分子量(Mn)を有するPTFEである。分散されたポリマーの粒径を、レーザー光散乱によって、以下のように測定する:フルオロポリマー粒子の未処理の分散体の粒径を、Malvern Instrumentsによって製造されるZetasizer Nano−ZSによるレーザー光散乱を用いて測定する。分析用の試料を、10×10×45mmのポリスチレンキュベット中で調製し、蓋をして、分析用のデバイスに入れる。試料の調製は以下のとおりである。脱イオン化脱気水を、固定した先端を有する10ccのガラス製の皮下注射器中に取り込むことによって、キュベットをフラッシュするのに使用され、また、分散体試料を希釈するのに使用される水が、粒子を実質的に含まないようにする。Whatmanの0.02ミクロンフィルタ(Cat.No.6809−2002)を、注射器の固定した先端に取り付け、圧力をかけて、水をフィルタに通し、キュベットに入れる。約1.5mlの水をキュベットに入れ、キュベットに蓋をし、振とうし、蓋を開ける。水をキュベットから注ぎ出して、キュベットが粒子を含まないようにする。約2.5gmのろ過された水をキュベットに入れる。1滴の分析されるフルオロポリマー分散体をキュベットに加える。キュベットに蓋をし、振とうして、フルオロポリマー粒子を水中で完全に混合する。試料を、Dv(50)の測定のためにNano−ZSに入れる。Dv(50)は、体積粒径分布に基づく中央粒径、すなわち、その下に集団の体積の50%が存在する粒径である。
実験1および2において反応器に加えられる補充TFEの総量は、それぞれの実験で1250gである。これらの実験の界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。界面活性剤を、表1に記載される塩中に金属イオンも含有する水溶液として反応器中で水性媒体に加える。SDSおよび塩を含有するストック溶液(実験2)は、水100g当たり1.439gのSDSおよび0.0432gの塩を含有する。実験1のためのストック溶液は、実験2と同じ量のSDSのみを含有する。
表1の列の見出しに関して、界面活性剤の「水におけるppm」は、重合の完了までに重合反応器に加えられる水の総重量に加えられる界面活性剤の総重量である。「水におけるカチオンppm」は、全プロセス(核形成部位形成および重合)中、すなわち、重合反応の完了までに反応器に加えられる水の総量中のFe+2の重量ppmである。「界面活性剤におけるカチオン重量%」は、重合中に水性媒体に加えられる溶液中の界面活性剤の総重量と比較した際の金属イオンの総重量を基準にする。バッチ時間は、キックオフから撹拌の中断が伴う補充TFE添加の終了(重合反応の完了)までの時間として測定される。「分散体固形分%」は、重合反応の完了の時点で存在する分散されたポリマー粒子の総重量+水の総重量の合計を基準にした、水性媒体中に分散されるポリマー粒子の重量%である。凝塊(coag.)は、形成されるフルオロポリマーの総重量を基準にした、非分散ポリマーの重量%である。STYは、上記の意味を有する。列の見出しのこれらの説明は、後続の実施例の他の表中の同じ列の見出しに適用される。
実験1は、長いバッチ時間および予測される比較的低いSTYを代償にするものの、SDS自体が分散体固形分%に対する小さい粒径および少ない凝塊%を生じさせることを示す。Fe+2カチオンが、重合反応中にSDSとともに存在する場合、バッチ時間は、実験1のバッチ時間のわずか約1/3であり、STYは、約300%だけ増加される。Fe+2カチオンは、はるかに少ないSDSの使用によってほぼ同じ量の固形分%および凝塊の形成を可能にすることによって、SDS界面活性剤の有効性も向上させる。この実施例において形成されるPTFEのDSC溶融温度は、実験1および2についてそれぞれ334.69℃および334.01℃である。実験1についてのPTFEの融解熱は:75.65J/gm(第1の熱)および38.43J/Gm(第2の熱)である。実験2については、融解熱は74.36J/gm(第1の熱)および41.73J/gm(第2の熱)である。
実施例11
この実施例は、表2に報告されるような安定化界面活性剤としてのSDSおよびSDSとともに加えられる様々な量の金属カチオンを用いた実施例10の手順による重合結果を比較する。金属カチオンは、硫酸鉄(II)、FeSO4・7H2Oによって提供されるFe+2である。
「界面活性剤溶液の濃度」は、反応器への溶液供給におけるSDSおよびFeSO4・7H2O濃度である。「塩gm/L」は、塩の濃度、すなわち、金属カチオンの重量を含むその総重量である。この意味は、後続の表の同じ列の見出しに適用可能である。TFE補充TFEの総量は1000gである。実験4の重合は、最小のPTFE粒径、最少量の凝塊%および高いSTYの組合せの点で最良の結果をもたらす。これらの実験において生成されるPTFEの溶融温度(第1の熱)は全て332℃を超え、第1の熱から第2の熱溶融への融解熱の減少は全て27J/gmを超える。
実施例12
この実施例では、より高い固形分%を生成するためにより多い量の補充TFEを使用する以外は、実施例10の重合を行う。実験6および7では、2200gの補充TFEを用い、実験8では、3100gの補充TFEを用いる。実施例10と同様に、安定化界面活性剤はSDSであり、金属カチオンは、FeSO4・7H2Oとして提供されるFe+2または硫酸銅(II)、CuSO4・5H2Oによって提供されるCu+2のいずれかである。結果を表3に報告する。
これらの重合の全ては、比較実験1と比較した際に比較的低い凝塊%および高いSTYとともに、高い固形分%と、それに伴うこの高い固形分%に対する小さい粒径をもたらす。これらの実験において形成されるPTFEの溶融温度は335℃を超え、第1の熱から第2の熱溶融への融解熱の減少は25J/gmを超える。実験7のPTFEは、336.76℃の溶融温度(第1の熱)、R.C.Doban et al.,“Formula from molecular weight of Polytetrafluoroethylene”,ASC Meeting,Atlantic City,N.J.September 1956(国際公開第2009/013214号パンフレットのp.15にも公開されている)によって記載されている式にしたがって測定される2,700,000の分子量(Mn)に相当する2.212のSSG(標準比重)を有する。
実施例13
実施例10の重合手順にしたがって、この実施例は、SDS安定化界面活性剤溶液とともに加えられる様々な金属イオンを用いた重合結果を比較する。結果を表4に報告する。
これらの実験において、加えられる補充TFEは1000gである。これらの重合の全ては、比較実験1と比較した際に比較的低い凝塊%および高いSTYをもたらす。さらに、これらの重合の全ては、332℃を超える溶融温度および28J/gmを超える第1の熱から第2の熱溶融への融解熱の減少を有するPTFEを生成する。
重合反応の完了時の水の総重量を基準にして1.3ppmのNa+イオン濃度を提供するような量でNaイオンをカチオン(Na2SO3塩として供給される)として使用することを除いて、これらの実験のプロセスを繰り返す場合、結果は、9%を超える凝塊の形成である。
実施例14
実施例10の重合手順にしたがって、この実施例は、TFEの補充を1250gに増加させることを除いて実施例13と同様の様々な金属カチオンを用いた重合結果を比較する。結果を表5に報告する。
これらの実験の条件下で、金属イオンFe+2およびCu+2が、粒径凝塊%およびSTYについての結果の最良の組合せを示す。PTFEの溶融温度は全て333℃を超え、第1の熱から第2の熱溶融への融解熱の減少は、実験2、16、17、および18についてそれぞれ、32.6J/gm、32.0J/gm、37.3J/gm、37.3J/gmである。
実施例15
実施例10の重合手順にしたがって、この実施例は、全てが2200gのTFE補充量を用いた、様々な安定化界面活性剤および金属カチオンの両方を用いた重合結果を比較する。結果を表6に報告する。
重合の全ては、少ない凝塊%および良好ないし比較実験1より良好なSTYとともに、得られる高い固形分%において小さい粒子を生成した。生成されるPTFEの溶融温度は全て335℃を超え、第1の熱から第2の熱溶融への融解熱の減少は全て29J/gmを超える。
実施例16
実施例10の重合手順にしたがって、この実施例は、反応器における水性媒体への金属カチオンの添加についての異なるタイミングによる重合結果を比較する。SDSが安定化界面活性剤であり、FeSO4−7H2Oが、金属カチオンを供給する塩である。TFE補充の量は1250gmである。
実験2は、塩(金属カチオン)を溶解された安定化界面活性剤とともに溶液中の水性重合媒体に加える上記の一般的な重合手順にしたがう。得られる溶液は、表1に記載されるとおりである。
全量の塩を、水性重合媒体に、この媒体への界面活性剤溶液の添加が開始するのと同時に加えることを除いて、実験22は、一般的な重合手順にしたがう。したがって、水性重合媒体に加えられる界面活性剤溶液は、その中に溶解されるSDSのみを有する。水性媒体に加えられるSDSの総量は、重合の完了時に水性媒体中に存在する水の総量を基準にして382ppmのSDSの濃度を提供する。水性重合媒体に加えられるFe+2カチオンの量は、実験2についての2.6ppmと比較して、重合反応の完了時に水性媒体中に存在する水の総量を基準にして2.8ppmの濃度を提供する。
反応器への初期充填物の5200gmの水の添加とともに、水性重合媒体に実験22と同じ全量の塩を加えることを除いて、実験23は、一般的な重合手順にしたがう。したがって、SDSの添加は、実験22の手順にしたがう。
表7に報告される結果は、プロセス(実験23)における早すぎる塩の添加により、形成される固形分%についての粒径が大きくなり、凝塊%が高くなることである。実験2および22の結果は両方とも、実験23より向上している。
上記の実験において得られるPTFEは全て、0のMFR(ASTM D 1238、372℃、5kgのおもり)を示し、これは、非常に高い分子量のためのPTFEの非溶融流動性を示している。
実施例17
この実施例は、安定化界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを用いてVF2/HFP/TFEのフルオロエラストマーを作製するための重合を開示する。安定化界面活性剤の不活性化を、重合反応器へのその添加の前に行う。
40リットルの、垂直に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブ反応器に、23000gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器に、0.04gmのPluronic(登録商標)31R1および2.02gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の2016gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器を、出発モノマー混合物(4.0重量%のフッ化ビニリデン(VF2)、86.0重量%のヘキサフルオロプロペン(HFP)、および10.0重量%のテトラフルオロエチレン(TFE))で410kPaになるまでパージし、排気する。反応器中の酸素が100ppm未満になるまでこのパージ手順を繰り返す。1重量%の過硫酸アンモニウムおよび5重量%のリン酸二ナトリウム七水和物の16mlの開始剤溶液を反応器に加える。反応器を80℃まで加熱する。反応器を、2120グラムの出発モノマー(上記の組成を有する)を用いて加圧する。加圧の終了の時点で、反応器圧力は2068kPaである。時間ゼロの時点で、1重量%の過硫酸アンモニウムおよび5重量%のリン酸二ナトリウム七水和物の50mlの開始剤溶液を反応器に加えて、重合を開始させる。反応器圧力が降下するにつれて、35.0重量%のVF2と、37.0重量%のHFPと、28.0重量%のTFEとの新鮮な原料モノマー混合物を反応器に供給して、2068kPaの圧力を維持する。追加の開始剤溶液を、30分毎に10mlの増分で加えて、重合速度を維持する。200gmの新鮮な原料モノマー混合物を供給した後、後述されるように調製される安定化界面活性剤溶液を、7916gmの新鮮な原料モノマーを供給するまで3000gmのモノマー当たり233mlの速度で反応器にポンプ注入する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始する際のこの遅延は、0.79重量%の水性媒体中のポリマー濃度に対応し、水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は0.01g/l−時である。合計510mlの開始剤溶液および23.5時間に相当する、合計8333gmの増分の新鮮な原料モノマーを供給した後、モノマーおよび開始剤の供給を中断する。反応器を冷却し、反応器中の圧力を大気圧まで低下させる。得られるフルオロエラストマーラテックスは、23.6重量%固形分の固形分、3.17のpH、および260nmの平均粒径を有する。ラテックスを、硫酸アルミニウム溶液を用いて凝固させ、脱イオン水で洗浄し、乾燥させる。フルオロエラストマーは、0.57dl/gの固有粘度、118の、121℃におけるムーニー粘度、ML(1+10)を有し、33.5重量%のVF2、38.4重量%のHFP、および28.1重量%のTFEを含有する。
安定化界面活性剤溶液を以下のように調製する:1リットルの被覆された丸底フラスコに、492.5gmの脱イオン化脱気水、7.5gmのドデシル硫酸ナトリウム(ACS Reagent、>99.0%)および0.225gmの硫酸Fe(+2)七水和物を加える。全ての固形分が溶解されるまで内容物を撹拌する。2滴の濃硫酸を用いて、溶液のpHを3に調整する。18.75gmの30重量%の過酸化水素を混合物に加える。混合物を、撹拌しながら40℃まで加熱し、その温度で2時間保持する。溶液を排出し、氷浴中で冷却して、急速に流体を周囲温度にする。最終的な混合物は、3のpHを有する。
この実施例において、不活性化助剤、Fe+2の量は、重合反応器に加えられる、炭化水素含有界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウムの総重量を基準にして0.603重量%である。バッチの終了時の反応器中の水を基準にしたFe+2の量は2.0ppmである。
実施例18
この実施例は、安定化界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを用いてTFE/PMVEのフルオロエラストマーを作製するための重合を開示する。安定化界面活性剤の不活性化を、重合反応器へのその添加の前に行う。
40リットルの、垂直に配置された、被覆されたステンレス鋼オートクレーブ反応器に、23000gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器に、0.04gmのPluronic(登録商標)31R1および2.02gmの亜硫酸ナトリウムを含有する追加の2016gmの脱イオン化脱気水を加える。反応器を、出発モノマー混合物(25.0重量%のテトラフルオロエチレン(TFE)および75.0重量%のパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE))で410kPaになるまでパージし、排気する。反応器中の酸素が100ppm未満になるまでこのパージ手順を繰り返す。1重量%の過硫酸アンモニウムおよび5重量%のリン酸二ナトリウム七水和物の16mlの開始剤溶液を反応器に加える。反応器を80℃まで加熱する。反応器を、2344グラムの出発モノマー(上記の組成を有する)を用いて加圧する。加圧の終了の時点で、反応器圧力は2068kPaである。時間ゼロの時点で、1重量%の過硫酸アンモニウムおよび5重量%のリン酸二ナトリウム七水和物の50mlの開始剤溶液を反応器に加えて、重合を開始させる。反応器圧力が降下するにつれて、50.0重量%のTFEと50.0重量%のPMVEとの新鮮な原料モノマー混合物を反応器に供給して、2068kPaの圧力を維持する。追加の開始剤溶液を、30分毎に10mlの増分で加えて、重合速度を維持する。200gmの新鮮な原料モノマー混合物を供給した後、実施例15に記載されるように調製される安定化界面活性剤溶液を、7916gmの新鮮な原料モノマーを供給するまで3000gmのモノマー当たり233mlの速度で反応器にポンプ注入する。水性媒体への安定化界面活性剤の添加を開始する際のこの遅延は、0.79重量%の水性媒体中のPTFE濃度に対応し、水性媒体中への界面活性剤の計量供給速度は0.0065g/l−時である。合計760mlの開始剤溶液および36時間に相当する、合計8333gmの増分の新鮮な原料モノマーを供給した後、供給されるモノマーおよび開始剤を中断する。反応器を冷却し、反応器中の圧力を大気圧まで低下させる。得られるフルオロエラストマーラテックスは、22.9重量%固形分の固形分、3.2のpH、および336nmの平均粒径を有する。ラテックスを、硫酸アルミニウム溶液を用いて凝固させ、脱イオン水で洗浄し、乾燥させる。フルオロエラストマーは、94の、175℃におけるムーニー粘度、ML(1+10)を有し、50.9重量%のTFEおよび49.1重量%のPMVEを含有する。
この実施例において、不活性化助剤、Fe+2の量は、重合反応器に加えられる、炭化水素含有界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウムの総重量を基準にして0.603重量%である。バッチの終了時の反応器中の水を基準にしたFe+2の量は1.98ppmである。
本発明は以下の実施の態様を含むものである。
1.重合反応器において、フルオロモノマーを重合して、水性媒体中のフルオロポリマー粒子の分散体を形成するための方法であって、前記方法が、前記重合反応器に:
(a)水性媒体、
(b)水溶性炭化水素含有化合物、
(c)分解剤、
(d)フルオロモノマー、および
(e)重合開始剤
を加える工程を含む初期期間を含み、
前記初期期間中、フッ素系界面活性剤は加えられず、前記分解剤が、前記重合開始剤の前に加えられる方法。
2.前記フルオロモノマー(d)が、前記重合開始剤(e)の前に加えられる、前記1.に記載の方法。
3.前記水溶性炭化水素含有化合物が、50ppm以下の量、好ましくは40ppm以下の量で加えられる、前記1.または2.に記載の方法。
4.前記水溶性炭化水素含有化合物が、少なくとも1つの親水性部分および少なくとも1つの疎水性部分を含む、前記1.〜3.のいずれかに記載の方法。
5.前記水溶性炭化水素含有化合物が、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびアニオン性界面活性剤から選択される、前記1.〜4.のいずれかに記載の方法。
6.前記水溶性炭化水素含有化合物がエトキシ含有界面活性剤である、前記1.〜4.のいずれかに記載の方法。
7.前記分解剤が、前記重合開始剤と同じかまたは異なる、好ましくは前記重合開始剤と同じ化合物である、前記1.〜6.のいずれかに記載の方法。
8.前記分解剤が、前記水溶性炭化水素含有化合物を実質的に含まない水性媒体を得るのに十分な量で加えられる、前記1.〜7.のいずれかに記載の方法。
9.分解剤の前記添加が、前記水溶性炭化水素含有化合物の分解による親油性核形成部位の形成を引き起こす、前記1.〜8.のいずれかに記載の方法。
10.前記水溶性炭化水素含有化合物が、50ppm以下の量で加えられる、前記1.〜9.のいずれかに記載の方法。
11.水溶性無機塩が、前記分解剤の前に前記重合反応器に加えられる、前記1.〜10.のいずれかに記載の方法。
12.前記水溶性無機塩が、125ppm以下の量で前記重合反応器に加えられる、前記1.〜11.のいずれかに記載の方法。
13.前記フルオロモノマーがパーフルオロモノマーである、前記1.〜12.のいずれかに記載の方法。
14.前記フルオロモノマーが、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアルキルエチレン、フルオロビニルエーテル、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VF2)、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)およびそれらの混合物、好ましくはテトラフルオロエチレンから選択される、前記1.〜12.のいずれかに記載の方法。
15.前記初期期間の後の安定化期間を含む、前記1.〜14.のいずれかに記載の方法。
16.前記安定化期間中の炭化水素含有界面活性剤の添加を含む、前記15.に記載の方法。
17.前記安定化期間中に加えられる前記炭化水素含有界面活性剤が、前記初期期間中に加えられる前記炭化水素含有化合物と異なる、前記16.に記載の方法。
18.前記炭化水素含有界面活性剤が、炭化水素界面活性剤である、前記16.または17.に記載の方法。
19.前記炭化水素含有界面活性剤がアニオン性である、前記16.〜18.のいずれかに記載の方法。
20.前記炭化水素含有界面活性剤が、式R−L−M(式中、Rが、6〜17個の炭素原子を含有するアルキル基であり、Lが、−ArSO 3 - 、−SO 3 - 、−SO 4 −、−PO 3 - および−COO - からなる群から選択され、ここで、Arが、アリール基であり、Mが一価のカチオンであり、好ましくはH + 、Na + 、K + およびNH 4 + から選択される)の化合物である、前記16.〜19.のいずれかに記載の方法。
21.フッ素系界面活性剤が前記安定化期間中に加えられない、前記15.〜20.のいずれかに記載の方法。
22.ハロゲン含有界面活性剤がプロセス中に加えられず、好ましくは、フッ素系界面活性剤が前記プロセス中に加えられない、前記1.〜21.のいずれかに記載の方法。
23.前記1.〜22.のいずれかに記載の方法によって得られるフルオロポリマー分散体。
24.前記23.に記載のフルオロポリマー分散体からの単離によって得られるフルオロポリマー樹脂。
25.フルオロポリマーが、PTFE、改質PTFE%、少なくとも60〜98重量%のテトラフルオロエチレン単位および2〜40重量%の少なくとも1つの他のモノマーを含む溶融処理可能コポリマー、ならびにフッ化ビニリデンおよびテトラフルオロエチレンからなる群から選択される第1のフッ素化モノマーの共重合単位25〜70重量%およびフッ素化モノマー、炭化水素オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、前記第1のモノマーと異なる1つ以上の共重合モノマーの残りの共重合単位を含むフッ化炭素エラストマーコポリマーからなる群から選択される、前記23.または24.に記載のフルオロポリマー分散体および/または樹脂。
26.重合反応器において水性媒体中のフルオロモノマーを重合するための方法において、前記媒体中の炭化水素含有親油性核形成部位の分散体を形成する工程であって、前記分散体が、界面活性剤を実質的に含まない工程と、その後、前記フルオロモノマーの前記重合をキックオフさせて、前記親油性核形成部位においてフルオロポリマー粒子の分散体を形成する工程とを含む方法。