本発明は、200MHzを超える動作周波数における円偏波放射用であって導電性パターンと接地面との間に配された電気絶縁性基板を有するアンテナと、基板上にアンテナ素子パターンを含むアンテナ部品とに関する。
パッチアンテナを使用して円偏波信号を受信することが知られている。このようなアンテナは、平行な平面状の上表面及び下表面を有する誘電性基板を含む。一般的に、上表面は、矩形の輪郭を有する導電層を備えており、下表面は、接地面として機能する別の導電層を有する。この給電構造にしたがうと、アンテナは、上表面に概ね垂直な上方の方向からアンテナに到達する円偏波放射に対して高感度である。
円偏波放射用のもう1つのアンテナは、ターンスタイルアンテナである。ターンスタイルアンテナは、一般的に、共通面内において互いに直角に位置合わせされ、90度ずつずれた位相で給電される、2組のダイポールアンテナを含む。ターンスタイルアンテナは、その軸を垂直にして設置されたときに、垂直方向を最大として、ほぼ無指向性の円偏波放射パターンを提供する。垂直軸ターンスタイルアンテナのダイポール素子の下に、反射器を追加することが知られている。アンテナパターンは、反射器とダイポール素子との間の距離を変えることによって変更することができる。
本発明の目的は、偏波放射を受信及び/又は送信するための改良アンテナを提供することにある。
本発明の一態様にしたがうと、200MHzを超える動作周波数における円偏波放射用のアンテナが提供され、該アンテナは、絶縁性基板と、導電性接地面と、導電性パターンとを含み、基板の少なくとも一部分は、導電性パターンと接地面との間に配され、導電性パターンは、共振リングと、該共振リングに結合されて該共振リングから外向きに伸びる複数の開回路スタブとを含み、複数のスタブは、それらの結合先である共振リングの共振周波数における4分の1波長の電気的長さを有する。導電性共振リングの使用は、共振リングの電気的長さに依存する共振周波数を伴う効率的なアンテナを提供する。共振リングの共振周波数における4分の1波長の電気的長さを有するスタブは、共振リングの共振周波数において各スタブに入射する放射がそのスタブ内において定在波を励起させるゆえに、アンテナの効率を更に向上させる。
好ましくは、導電性パターン及び接地面は、ともに平面状であり、基板の、反対を向いた平行な表面上にめっきされ、又はそれ以外のやり方で層として形成される。スタブは、動径成分及び接線成分の両方を有する方向に、共振リングから外向きに伸びている。具体的には、各スタブは、渦巻き形状を有していてよい。基板は、少なくとも5の比誘電率を有するセラミック材料で作成されると有利である。基板の厚さは、共振リングの共振周波数における波の、基板媒質内での波長の概ね15度未満であり、最も好ましくは10度未満である(すなわち、λgを基板媒質内での電磁波の波長としたときに、約0.04λg未満又は0.0275λg未満ある)。したがって、通常、基板厚さは、Lバンド又はSバンドアンテナの場合に5mm未満である。また、通常、基板厚さは、その平均横断範囲の4分の1未満である。このようなアンテナでは、リング及び4分の1波長スタブは、動作周波数において円偏波共振モードを有する共振構造であって、導電性パターン及び接地面を水平にし、且つ、接地面を導電性パターンの下にしてアンテナが設置されたときに、方位角において実質的に無指向性であり、且つ、上方向に最大値を有する放射パターンを備える共振構造を提供する。
アンテナは、円形の又は正方形のリングの中心に平衡アンテナ給電接続を有してよく、共振リングから給電接続ノード対へは、概ね半径方向内向きに給電経路が伸びている。動作周波数においてアンテナが通電されると、共振リングの周囲に定在波が形成される。もし、共振リングの周囲に等間隔で4つのスタブがある場合は、各スタブは、各隣接するスタブからは90度、反対側のスタブからは180度ずれた位相で共振する。
アンテナの帯域幅は、アンテナの容積を増減させることによって操作することができる。アンテナの基板の厚さは、したがって、アンテナの帯域幅を設定するために使用することができる。放射素子と接地面との間の基板の厚さが小さくなると、導電性パターンの素子のキャパシタンス及びインダクタンスに蓄えられるエネルギが多くなり、したがって、放射されるエネルギが少なくなる。
アンテナのQ因子は、サイクルごとに散逸されるエネルギに対する蓄えられているエネルギの比として説明することができる。要するに、基板の厚さが小さくなると、アンテナのQ因子は大きくなる。
前述のように、アンテナのパターンは、接地面(反射器)と導電性パターンとの間の距離を変えることによって変更することができる。接地面と導電性パターンとが近いほど、反射後進放射波及び前進放射波のベクトル加算が大きくなる。前進放射波を最大にするためには、したがって、基板の厚さが最小にされることが望ましい。
アンテナの基板の比誘電率を一般的に5よりも大きくすると、アンテナの基板の誘電率が、取り付けの際にアンテナを取り巻く可能性が最も高い、例えば構造用プラスチックなどの材料よりも大きくなる。基板におけるこのより大きい誘電率は、アンテナの誘電体装荷ゆえにアンテナの効率を向上させる。
本発明の一実施形態では、アンテナは、中心給電接続から共振リングに向かって半径方向外向きに伸びて共振リングに結合する2本の給電経路を有する。給電経路は、互いに同一の特性インピーダンスを有する。給電経路は、共振リングの定在波の2分の1波長で相隔てられた点において、すなわち概ね直径方向に相対する場所において、共振リングに結合し、内側端において、アンテナが機器に取り付けられた際に更なる電気回路が接続される給電接続を形成する。更なる電気回路は、アンテナの一部を構成しない。接続は、アンテナの上表面上の導電性パターンから、基板及び接地面を経て、接地面の下に位置する機器配線へなされることが好ましい。この配置では、接地面は、接地面の下の配線によって放射される信号から導電性パターンを遮断し、その逆もまた同様である。導電性パターンと接地面の下に位置する配線との間を接続するためには、基板及び接地面に設けられた1つの孔又は開口を使用するか、或いは基板及び接地面の両方に設けられた2つの別々の孔を使用するかのいずれかが可能である。1つの孔の場合は、共振リングを起点として放射状の給電経路を形成する線路は、接地面の下に提供された電気回路まで、基板に空いた孔の両側面にめっきされた線路として続くことができる。もし、2つの孔が使用される場合は、共振リングから、接地面の下に提供された電気回路まで、各孔内をそれぞれ1本の給電経路のみが伝って続いていき、各孔がめっきビアを構成する。
本発明の更なる一実施形態では、導電性パターンは、アンテナの最上面上の給電経路を含まない。その代わりに、共振リングは、接地面の下の電気回路に、基板内及び接地面内の2つの孔を通じて直接的に結合される。この実施形態では、孔は、共振リングと位置を合わせて配置され、給電経路は、孔のめっき壁を含んでいる。このような一実施形態では、給電経路は、基板の裏側にめっきされた放射状の線路を含むことができる。
上述された2つの実施形態では、給電経路は、基板に空いた孔又は各孔の側面を伝って伸びるが、導電性パターンから接地面の下の電気回路まで、その他の手段を使用して接続がなされることも可能である。例えば、基板の上の共振リング及び接地面の下に提供された電気回路の両方に取り付けられたワイヤが、基板に空いた孔の側面を伝って伸びる区間の給電経路に取って代わることができる。
導体における交流信号の周波数が増すにつれて、それに関連した電流が導体の縁又は表面の近くに集中することが知られている。UHF及びそれ以上では、導体の縁又は表面が、電荷の大半を帯びている。このような状況において、もし、共振リングが十分な幅の導電性線路として形成されるならば、リングは、異なる電気的長さを有することによって異なる共振周波数を有する内側の共振経路及び外側の共振経路を有効に含むことができる。したがって、1つの共振リングが、例えば、内側の縁に関連付けられた第1の共振周波数と、より長い外側の縁に関連付けられたより低い第2の共振周波数のように、複数の共振周波数を有することができる。
代替として、第2の共振リングを伴う導電性パターンを形成することによって、複数の共振経路を提供することが可能である。したがって、一般的に、第2の共振リングは、第1の共振リングとは異なる電気的長さを有し、第1の共振リング及び一部の開回路スタブに結合される。第1の共振リング及び第2の共振リングは、それぞれ円形及び正方形であってよく、また、同心であってよい。この実施形態では、一般的に、内側の共振リングが、外側の共振リングよりも高い共振周波数を有する。各共振リングは、自身に接続された対応する開回路スタブ群を有している。各スタブは、その接続先である共振リングの共振周波数における4分の1波長に等しい電気的長さを有する。
上述されたいずれの実施形態も、全て同じ回転方向を有する渦巻き形状の1つ以上の開回路スタブ群を有することが可能である。このようなアンテナは、渦巻き形状の回転方向に応じ、左旋円偏波又は右旋円偏波のいずれかの電磁放射を受信するのに適している。
本発明の代替の一実施形態として、アンテナが、渦巻き形状の第1及び第2の開回路スタブ群を有し、第2の群のスタブが、第1の群のスタブと反対の回転方向を有してもよい。このようなアンテナは、左旋円偏波及び右旋円偏波の両方の電磁放射に対して応答性である。
スタブは、対応する共振リングに直接的に接続されるか、又は切り替え手段によって少なくとも幾つかのスタブが選択的に共振リングに結合されるかのいずれかにしてもよい。このような切り替え手段は、例えば容量性MEMS(微小電気機械システム)スイッチなどの複数の切り替え機器を含むことが可能である。
容量性MEMSスイッチは、その両端でキャパシタンスを変動させることができる機器である。大きいキャパシタンスを有する状態にある容量性MEMSスイッチに無線周波数の信号が印加されたときは、その印加された信号が、スイッチを伝わるのに対し、もし、小さいキャパシタンスを有する状態にある容量性MEMSスイッチに無線周波数の信号が印加されたときは、その印加された信号は、スイッチを伝わらない。容量性MEMSスイッチは、したがって、機器に印加される無線周波数信号に対してスイッチとして機能することができる。
導電性パターンが第1及び第2の開回路スタブ群と共振リング構造とを含むアンテナでは、アンテナは、スタブを共振リング構造に選択的に結合するように配置された一体式の切り替え機器を含むことが好ましい。
切り替え機器に接続された制御システムは、各切り替え機器の導電状態を決定するように動作する。制御手段は、通常は、アンテナとは別に提供された電気回路を含むことができる。
第1及び第2の開回路スタブ群の両方を提供し、各スタブが渦巻き形状であり、各スタブ群が他方のスタブ群と反対の回転方向を有する本発明の実施形態では、制御システムは、第1又は第2の開回路スタブ群のいずれかを対応する共振リングに選択的に結合するように動作可能である。この実施形態は、2つの制御状態、すなわち、第1の群のスタブが共振リング構造に接続され、第2の群のスタブが切り離されている第1の制御状態と、第2の群のスタブが共振リング構造に接続され、第1の群のスタブが切り離されている第2の制御状態とを提供する。
本発明の別の一態様にしたがうと、200MHzを超える動作周波数における円偏波放射用のアンテナは、反対を向いた主要面を有する絶縁性基板と、主要面のうちの一方の主要面上の導電性アンテナ素子パターンと、主要面のうちのもう一方の主要面上の導電性接地面であって、反射器として機能するために、導電性アンテナ素子パターンの少なくとも一部と位置を合わせた導電性接地面とを含み、導電性アンテナ素子パターンは、共振リングと、該共振リング上の相隔てられた場所において共振リングに結合されて共振リングから外向きに伸びる複数の細長い開回路放射素子と、を含み、上記放射素子の少なくとも幾本かの電気的長さは、それらの素子が共振リングの共振周波数において共振するような長さである。
アンテナは、単一の部品として又は複数部品の組み合わせとして具現化することが可能である。後者の場合は、アンテナの一方の部品が、基板と導電性パターンとを含む一方で、もう一方の部品は、導電性パターンを備えている面とは反対側の基板の一面が固定される導電性接地面を提供するホストアセンブリを含む。本発明は、したがって、200MHzを超える動作周波数における円偏波放射用の誘電体装荷アンテナの一部を形成するためのアンテナ部品も提供し、該部品は、反対を向いた主要面を有する誘電性基板と、主要面のうちの一方の主要面上の導電性アンテナ素子パターンとを含み、導電性アンテナ素子パターンは、共振リングと、該共振リング上の相隔てられた場所において共振リングに結合された複数の細長い開回路放射素子とを含み、上記放射素子の少なくとも幾本かのそれぞれは、動径成分及び接線成分の両方を有する方向に共振リングから外向きに伸び、上記放射素子の少なくとも幾本かのそれぞれの電気的長さは、その放射素子が共振リングの共振周波数において共振するような長さである。
この適用において、「放射素子」は、アンテナが送信用に使用されるときは、空間にエネルギを放射する素子を意味すると見なされる。このような素子は、アンテナが信号の受信用に使用されるときは、相互的に空間からエネルギを受信する。
本発明は、次に、図面を参照にして例を挙げて説明される。
本発明にしたがった第1の単一周波数アンテナを上方の一方の側から示した斜視図である。
図1Aのアンテナを下方の一方の側から示した斜視図である。
本発明にしたがった二重周波数アンテナを示した斜視図である。
本発明にしたがった代替の二重周波数アンテナを示した平面図である。
本発明にしたがった二重偏波アンテナを上方の一方の側から示した斜視図である。
図3Aのアンテナを示した底面図である。
図3A及び図3Bのアンテナの変形を示した底面図である。
図3A、図3B、及び図3Cのアンテナ、並びに関連の機器電気回路を示した回路図である。
図1A及び図1Bのアンテナの第1の変形を示した正面図である。
図1A及び図1Bのアンテナの第2の変形を下方の一方の側から示した斜視図である。
図1A及び図1Bのアンテナの第3の変形を示した正面図である。
図6Aに示された第3の変形を下方の一方の側から示した斜視図である。
図1A及び図1Bを参照すると、本発明にしたがった第1のアンテナ1は、3枚の層、すなわち導電性パターン2と、導電性接地面3と、導電性パターン2と接地面3との間に配された基板4とを有する。
基板4の好ましい形態は、平面状である上方及び下方の主要面4A及び4Bを有する円盤状のタイルである。効率化及び小型化のために、基板4の材料は、本実施形態では比誘電率10を有する高誘電率セラミック材料である。アンテナの動作周波数は、GPS L1周波数のそれ、すなわち1575.42MHzである。この周波数では、基板円盤の直径は50mmであり、基板の厚さは3mmである。その他の材料が使用されてもよく、通常は、より高い比誘電率を有する材料である。例えば、比誘電率21を有する代替のセラミック材料は、タイルの平均横寸法(円盤である場合の直径)が20mm程度で厚さが約1.2mmであるアンテナを作り出す。
導電性パターン2は、基板4の上方主要面4A上にめっきされ、共振リング5と、4本の外向きに伸びる開回路スタブ、すなわちモノポール素子6とを含む。共振リング5は、内側の共振縁4Aと、外側の共振縁5Bとを有する。リング5を形成している線路の幅は、この実施形態では比較的小さいので、リングは、単一の共振周波数を有すると見なされ、この共振周波数は、リング周囲の平均の電気的長さによって決定され、該長さは、その物理的長さと、基板材料の比誘電率とに依存する。スタブ6は、共振リングの外側の縁5Bの周囲の等間隔位置において、共振リング5に結合する。この場合は、共振リング5は円形であり、各スタブ6は、共振リング5の半径に等しい半径を有する弧又は四分円である。スタブ6は、全て、共振リング5から外向きに伸びており、同じ回転方向を有するように方向付けられる。
共振リング5の中心には、基板4に空いた穴11がある。穴11の開口から共振リング5へ、めっきされた給電経路7の対が半径方向に反対に伸びている。これらの給電経路7は、穴11の壁の両側にめっきされた線路の形で、穴11の開口から穴11を通って基板円盤のもう一方の主要面まで続く。図1Bに示されるように、給電経路7は、めっきされた接続パッド7Pの対において終結しており、接地面3への電気的接続をなすことなく不図示の追加の電気回路にアンテナを接続するための平衡給電ノードを形成している。
通常、このような追加の電気回路は、給電ノード間を横切るようにシャント接続された整合キャパシタンスを含み、これは、給電経路7の比較的狭い経路によって形成されたインダクタンスと組み合わさって、この実施形態では50オームのソースインピーダンスを作り出すインピーダンス整合回路を構成する。
図2を参照すると、2つの周波数における信号を受信するのに適したアンテナは、第1の共振リング5−1と、第2の共振リング5−2とを有する。第1の共振リング5−1が円形である一方で、第2の共振リング5−2は正方形であり、後者は、第1の共振リング5−1及び第2の共振リング5−2が同心であるように、両リングの周囲に等間隔で位置する4つの点において、前者に結合される。
第2の共振リング5−2の平均電気的長さは、第1の共振リング5−のそれよりも大きく、したがって、第1の共振リング5−1よりも低い共振周波数を定めている。
第1及び第2の共振リング5−1、5−2には、複数のスタブが結合される。第1のスタブ6−1群が、第1の共振リング5−1の電気的長さの4分の1の電気的長さを有する一方で、第2のスタブ6−2群は、第2の共振リング5−2の電気的長さの4分の1の電気的長さを有する。第1のスタブ6−1群は、第1の共振リング51の周囲に位置する等距離点において、第1の共振リング5−1に結合される。第2のスタブ6−1群は、第2の共振リング5−1の周囲に位置する等距離点において、第2の共振リング5−1に結合される。第1及び第2のスタブ6−1、6−2群は、ともに、第1及び第2の共振リング5−1、5−2から外向きに伸びている。スタブ6−1、6−2は、全て、同じ回転方向を有するように方向付けられる。
第1及び第2の共振リング5−1、5−2の中心には、図1A及び図1Bを参照にして上述されたアンテナと同様に、基板4に空いた穴11があり、給電経路7は、やはり上述のように、中心の開口、すなわち穴11を通って接続パッド7Pまで続いている。
この第2のアンテナは、GPS L1周波数及びL2周波数における使用を意図され、共振リング5−2及び関連した長い方のスタブ6−2は、GPS L2周波数、すなわち1227.6MHzにおける円偏波共振を定めている。
図2Aのアンテナの変形では、第1の共振リング5−1と第2の共振リング5−2との間の4つの象限儀形空間9が、図2Bに示されるようにめっきされており、したがって、アンテナは、物理的な観点からすると、長さが大幅に異なる内側の縁5Aと外側の縁5Bとを伴う1つのリングを有し、それぞれ、アンテナの2つの共振周波数を決定する内側及び外側の共振経路を作り出している。
次に、図3A及び図3Bを参照すると、本発明にしたがった第4のアンテナは、図1A及び図1Bを参照にして上述されたアンテナと同様に、1つの共振リング5を伴う導電性パターン2を有し、単一の共振周波数を定めている。しかしながら、このアンテナでは、導電性パターン2は、図3Aに示されるように、回転方向が反対の第1及び第2のスタブ群6−3、6−4を有する。上述されたアンテナのように、共振リング5の中心には、基板4に空いた穴11が位置している。繰り返し述べるが、基板4の下方主要面4B上には、接地面3がある。基板4の材料の比誘電率は、10である。
第1及び第2のスタブ群6−3、6−4のいずれのスタブも、共振リング5から外向きに伸びている。スタブ6−3、6−4及びスタブの双方は、渦巻き形状であり、共通の場所12において共振リングに結合する。各結合場所12では、第1の群のなかの1つのスタブ6−3と第2の群のなかの1つのスタブ6−4とが共振リング5に結合され、全部で8つのスタブ6−3、6−4がある。
スタブ6−3、6−4は、渦巻き形状であるが、反対の回転方向を有する。第1の群のスタブ6−3の経路が、リングとの結合点12から反時計回り方向に外向きに回転している一方で、第2の群のスタブ6−4の経路は、リング5との結合点12から外向きに回転している。
スタブ6−3、6−4は、長さが等しく、それぞれ、共振リング5との結合点からその開回路端にわたり、共振リング5の電気的長さの4分の1である電気的長さを有する。
スタブ6−3、6−4は、それぞれのMEMS切り替え素子13を通じて共振リング5に結合され、各スタブ6−3、6−4は、対応するMEM素子13を有している。これらのスイッチを、一の動作モードでは第1の群のスタブ6−3のみがリング5に結合され、別の動作モードでは第2の群のスタブ6−4のみがリング5に結合されるように動作させることによって、アンテナは、スイッチに供給される制御信号にしたがって、それぞれ左旋円偏波用に及び右旋円偏波用に動作するように構成することができる。このようなアンテナの用途は、1つには、一般的に2.1〜2.2GHzの帯域で伝送されるSバンド信号であるDVB SH(デジタルビデオブロードキャスティング:携帯機器向けの衛星サービス)を受信するためであり、異なるチャンネルは、それぞれ左旋円偏波及び右旋円偏波を有している。
MEMSスイッチは、好ましくは、制御電圧にしたがって約1pF及び100pFの直列キャパシタンスを交互に有することができる、Wispryによって作成されるような容量性装置であり、これらの値は、アンテナの動作周波数における開回路状態及び閉回路状態をそれぞれ表している。
上述のように、MEMSスイッチ13を動作させることによって、それぞれのスタブ6−3、6−4は、各場合に、スイッチ13の状態にしたがって有効にリング5に接続されるか又はリング5から絶縁されるかのいずれかである。したがって、一方の群のスタブを電気的に接続する一方でもう一方の群のスタブを絶縁することによって、アンテナをそれぞれ右旋円偏波用又は左旋円偏波用に構成することが可能である。
MEMSスイッチ13のための制御線は、一般的に、アンテナの下方導電層に、すなわち下方主要面4Aの下に提供され、図3Bに示されるように、下方層の線路を上方主要面4A上のMEMSスイッチ13への接続に結合するために、ビア14が提供される。図示されるように、アンテナの裏側に、制御線終端パッド16が提供される。図3Bに示されたバージョンでは、制御線は、接地面と同じ導電層の一部を形成する。接地面がこのような割り込みを受けないことが好ましいならば、基板は、図3Cに示されるように、追加の導電層を有して、一方の導電層が接地面3を含み、もう一方の導電層が、重ねられて形成された絶縁層17上に、適切なビア及び接続パッドが提供されるようにめっきされた制御線を含むようにしてもよい。この変形では、接地面3は、制御線ビア14Aの周囲、及び給電パッド7Pと基板の上面4A上の給電経路7との間の接続の周囲を撤去した開口(不図示)を除き連続している。アンテナの裏側1Uの第5のパッド16Gは、MEMSスイッチ制御回路のための接地として地面3への接続を提供する。
図3Dを参照すると、適切な追加の電気回路は、制御入力線19に供給される制御電圧を、第1の群のスタブ6−3に関連付けられたスイッチ13及び第2の群のスタブ6−4に関連付けられたスイッチ13に交互に結合するための外部モード制御スイッチ18を含む。追加の電気回路は、また、シャント整合キャパシタンス22と平衡入力を有するレシーバフロントエンド24とを有する。
次に、図4、図5、図6A、及び図6Bを参照にして、アンテナの更なる変形が説明される。図4は、図1A及び図1Bのアンテナの変形であり、この場合は、アンテナ1が接続される別の構造内にシャント整合コンデンサが提供されるのではなく、給電経路7の内側端の間においてアンテナの上方主要面4A上の通し穴11に隣接するように整合キャパシタンスが提供される。より具体的には、シャントキャパシタンスは、穴11Aの両側で上方主要面4A上に位置する2つのチップコンデンサ30と、関連するコンデンサ接続線路31とによって構成される。図5を参照にすると、一方の給電経路7の内側端7Cは、図のように、この場合は穴11の下側の開口において接地面3に直接的に接続されてもよい。もう一方の給電経路7は、絶縁された接続パッド7Pにおいて終結する。更なる変形
として、給電経路7は、図6A及び図6Bに示されたアンテナのように、下方主要面4B上に形成されてもよい。したがって、この場合は、リング5上において直径方向に相対する場所にビア34が提供される。図6Bに示されるように、裏側では、給電経路は、ビア34から一体式中心接続パッド36までの線路として半径方向内向きに伸びている。この場合は、中心穴は不要である。別の代案として、ビア34は、ビアのすぐ隣りの接続パッドにおいて終結されてもよく、すると、給電経路は、接地面3に割り込む代わりに、取り付けの際にアンテナが装着されるホスト基盤内又はその他のホスト構造内に形成される。
以上に述べられたように、接地面は、基板4上に形成されることが必須ではない。その代わり、取り付けの際に基板下面4Bが固定されるホスト基盤上又はその他のホスト構造上の導電層によって構築されることが可能であり、この場合は、接続は、取り付けの際に共振リング又は給電経路とホスト構造内の導体との間でなされる。同様に、図3Aから3Dを参照にして上述されたような切り替え式アンテナにおけるMEMSスイッチのための制御線は、ホスト構造に組み込まれてもよく、すると、それぞれのMEMSスイッチのための個々の接続が、基板4とホスト構造との間で提供される。