図1は、概略図で図式的に示す燃焼機関1において2つの異なる燃料を高圧で噴射するための噴射装置を示している。エンジン1はディーゼルエンジンであってもよい。燃料を高圧で噴射することにより、エンジン1からの排気ガスの排出が低減される。噴射システムおよびエンジン1は大型車両に取り付けられてもよい。この噴射システムは、第1燃料をエンジン1に供給するための第1燃料システムを具備する。この第1燃料システムは、第1燃料タンク3から燃料を供給する第1燃料経路2を具備する。第1フィードポンプ4が、第1燃料を第1燃料タンク3からフィルタ5を介して高圧ポンプ6に移送する第1燃料経路2に設けられる。この高圧ポンプ6は、いわゆるコモンレールの形態をとる第1蓄圧タンク7に燃料を高圧で給送するために燃料を加圧するようになされている。第1蓄圧タンク内の圧力は、約350〜1600バールであってもよい。第1燃料は、第1蓄圧タンク7から複数の入口経路8を介してエンジンのそれぞれの気筒の噴射装置9に導かれる。第1噴射システムは、燃焼に使用していない第1燃料を第1蓄圧タンク7および噴射装置9から回収し、この第1燃料を第1燃料タンク3に戻す戻り経路システム10を具備する。
噴射システムは、第2燃料をエンジン1に供給するための第2燃料システムを具備する。この第2燃料システムは、第2燃料タンク12から燃料を供給する第2燃料経路11を具備する。第2フィードポンプ13が、第2燃料を第2燃料タンク12からフィルタ14を介して、同じようにいわゆるコモンレールの形態をとってもよい第2蓄圧タンク15に移送する第2燃料経路11に設けられる。このフィードポンプ13は、第2燃料を第2蓄圧タンク15内で比較的小さい正圧で貯留するために使用される。第2蓄圧タンク15内の第2燃料の圧力は、約4〜6バールであってもよい。第2燃料は、第2蓄圧タンク15から入口経路16を介してエンジン1のそれぞれの気筒内の噴射装置9に導かれる。第2噴射システムは、燃焼に使用していない第2燃料を第2蓄圧タンク15および噴射装置9から回収し、この第2燃料を第2燃料タンク12に戻す戻り経路システム17を具備する。
電気制御装置18が、第1フィードポンプ4、高圧ポンプ6、第2フィードポンプ13および噴射装置9の動作を制御するようになされている。この制御装置18は、これらのための適切なソフトウェアを備えるコンピュータユニットの形態をとってもよい。第1圧力センサー7aが、第1蓄圧タンク7に取り付けられる。この第1圧力センサー7aは、第1蓄圧タンク7内の第1燃料の圧力に関する情報を含む信号を検出して制御装置18に送信するようになされている。第2圧力センサー15aが、第2蓄圧タンク15に取り付けられる。この第2圧力センサー15aは、第2蓄圧タンク15内の第2燃料の圧力に関する情報を含む信号を検出して制御装置18に送信するようになされている。エンジン1の運転中、制御装置18はエンジンのパラメータ(例えば、エンジンの負荷および速度)に関する制御信号を実質的に連続的に受信する。制御装置18は、エンジン1の気筒に供給する必要のある第1燃料および第2燃料の量を算出するためにこの情報を利用する。制御装置18は、第1燃料および第2燃料が所望時期にかつ算出された量でエンジン1のそれぞれの燃焼空間に噴射されるように噴射装置9を制御する。
図2は、噴射装置9のうちの1つをさらに詳細に図示している。第1燃料は、第1蓄圧タンク7から入口経路8を介して噴射装置9に導かれる。噴射装置9では、第1燃料が2つの燃料ダクト19、22に導かれる。この燃料ダクト19は、一方向弁21を介して第1燃料を噴射室20に導く。いくつかの状況では、第1燃料はまた、燃料ダクト22を介して燃料空間23に導かれる。第2燃料は、第2蓄圧タンク15から入口経路16を介して噴射装置9に導かれる。噴射装置9では、第2燃料が一方向弁25を備える燃料ダクト24を介して燃料空間26に導かれる。第2燃料は、燃料空間26からダクト27および一方向弁28を介して噴射室20に導かれてもよい。
アクチュエータ29は、適切な動力手段により噴射装置9の凹部30内において、上方位置と下方位置との間で往復移動可能であるように配設されている。概略図に示していないが、動力手段は、例えば、圧電素子であってもよい。凹部30は、下端部にボール弁31と絞りダクト32への接続部を具備する。この絞りダクト32は、凹部30を制御室33に接続する。この制御室33は、ニードル弁34の頭部34aによって上部と下部に分けられる。制御室33の上部は、絞りダクト35を介して燃料ダクト19に接続される。ニードル弁34は、ニードル弁34が下方位置にあるときに噴射室20と噴射ノズル36との間の通路を閉鎖するような形状とされた下端部を有する。噴射ノズル36は、燃料の噴射に適した形状の複数の開口部を具備する。ばね手段37が、ニードル弁34を下方位置に下降させるように働くばね力を発揮するように、制御室33の上部に固定される。アクチュエータ29は、アクチュエータ29が上方位置にあるときに、燃料ダクト22を燃料空間23に接続するように位置付けられる、アクチュエータ29を貫通する孔38を有する。アクチュエータ29が下方位置にあるとき、この孔38が燃料ダクト22に対して再配置されて、アクチュエータ29が燃料ダクト22と燃料空間23との間の接続を遮断する。この状況では、孔38は、絞りダクト39と共に燃料空間23と戻り経路システム10の経路との間の接続を確立する。
ピストン手段40の形態の昇圧機が、第1燃料用の燃料空間23と第2燃料用の燃料空間26との間に設けられる。このピストン手段40は、燃料空間26内の第2燃料と接触する第2表面a2よりも大きい、燃料空間23内の第1燃料と接触する第1表面a1を具備する。ピストン手段40は、ばね手段41によって上方位置に向けてばね荷重される。ピストン手段40は、燃料空間23内の第1燃料の一部を空間43に導くために絞りダクト42を具備する。アクチュエータ29は、アクチュエータ29が上方位置にあるときに、空間43内の燃料を戻り経路システム10の経路に接続する、アクチュエータ29を貫通する孔44を有する。したがって、アクチュエータ29が上方位置にあるときに、燃料室23内の余剰となった第1燃料を、絞りダクト42、空間43、孔44および戻り経路システム10を介して第1燃料タンク3に戻すことができる。同様に、燃料空間26内の余剰となった第2燃料を、戻り経路システム17の経路を介して第2燃料タンク12に戻すことができる。
エンジン1に燃料を噴射しないときには、制御装置18が、アクチュエータ29を図2に図示する下方位置に位置付ける。このアクチュエータ29の位置により、第1蓄圧タンク7と燃料空間23との間の接続が遮断される。それゆえ、燃料空間23内の圧力が第1蓄圧タンク7内に広がる圧力よりもかなり低下するが、第1燃料は、燃料経路19および一方向弁21を介して噴射室20に実質的に非減圧で導かれる。第2蓄圧タンク15からの第2燃料は、第2蓄圧タンクから入口経路16、燃料経路24および一方向弁25を介して燃料空間26に導かれる。噴射室20内の第1燃料が燃料空間26内の第2燃料よりもかなり高圧であるので、第2燃料が一方向弁28を通過して噴射室20内に導かれることが防止される。アクチュエータ29が下方位置にあるときは、制御室33内のニードル弁頭部34aの両側に実質的に同じ圧力が広がる。そのため、ばね手段37は、ばね力でニードル弁34を下方位置に維持して、ニードル弁の下端部が噴射室20と噴射ノズル36との間の通路を閉鎖する。それゆえ、アクチュエータ29がこの下方位置にあるときは、噴射装置9は燃焼空間に燃料を噴射しない。
制御装置18は、燃料噴射工程が行われると判断したとき、動力手段を作動させてアクチュエータ29を上方位置に移動させる。絞りダクト32が絞りダクト35よりも多くの燃料の流れを制限することにより、ニードル弁頭部34aより下に位置する制御室33下部の圧力に対して、ニードル弁頭部34aより上に位置する制御室33上部の圧力が低下する。この圧力差によりニードル弁34が上方位置に上昇する。噴射室20と噴射ノズル36との間の通路が開き、第1燃料が燃焼空間に高圧で噴霧される。
アクチュエータ29を上方位置に移動させることにより、アクチュエータ29を貫通する孔38が燃料経路22に通じる位置となる。したがって、燃料通路が第1蓄圧タンク7と燃料空間23との間に確立される。第1燃料は、第1蓄圧タンク7内に広がる圧力と実質的に同様の圧力を燃料空間23に発生させるような量で燃料空間23に供給される。第1燃料の高圧力によりばね手段37の作用に抗してピストン40を下降させて、燃料室23内の第1燃料が燃料空間26内の第2燃料を加圧するようにする。第1燃料と接触するピストン40の第1表面a1が第2燃料と接触するピストン40の第2表面a2よりも大きいので、燃料室26内の第2燃料は、燃料室23内の第1燃料より高圧になる。燃料室26内の第2燃料の圧力が噴射室20内の第1燃料の圧力よりも大きくなると、一方向弁28が開いて第2燃料が噴射室20に流入する。それゆえ、噴射室内の圧力は燃料経路19内の第1燃料の圧力よりも高圧に上昇する。したがって、一方向弁21が閉じて第1燃料が噴射室20に到達するのが防止される。噴射室20内の第1燃料が完全に空になる前に、極めて短時間、第1燃料と第2燃料の混合物が燃焼空間に噴射される可能性がある。その後、噴射ノズル36を介して第2燃料のみが燃焼空間に噴射される。
第2燃料の噴射が停止すると、制御装置18は、動力手段を作動させてアクチュエータ29を下方位置に移動させる。このアクチュエータ29の位置により、ニードル弁頭部34aの両側の制御室33内に実質的に同じ圧力が生じる。そのため、ばね手段37はニードル弁34を下方位置に移動させて、ニードル弁が噴射室20と噴射ノズル36との間の通路を閉鎖する。したがって、第2燃料の噴射が停止する。同時に、孔38が燃料経路22に対して再配置されて、第1蓄圧タンク7と燃料空間23との間の燃料通路が閉鎖される。したがって、アクチュエータ29が下方位置にあるとき、孔38は、絞りダクト39と共に燃料空間23を戻り経路システム10の経路に接続するような位置となる。したがって、燃料空間23内の圧力が低下する。ばね手段41がピストン40を初期位置に上昇させると同時に、第2燃料空間26内の圧力が低下する。
図3は、図2に図示する噴射装置9の噴射サイクルの間に、燃料噴射量qが時間tと共にどのように変化し得るかを示している。第1燃料f1の噴射が時間t1で開始する。第2燃料f2の噴射が時間t2で開始する。第2燃料の噴射は時間t3で終了する。この場合、第2燃料の噴射は、第1燃料の噴射開始に対して時間遅延Δtを伴って開始する。この遅延Δtは、第2燃料を加圧するのに必要な時間の長さに実質的に関係する。この時間遅延Δtは、実質的に一定であり、とりわけそれぞれの燃料の流路が噴射装置9内でどのような寸法となされているかによって決まる。この場合、第1燃料は、主燃料としての役割を果たす第2燃料よりも少ない量qで添加される1次燃料である。この1次燃料は有利には着火し易い燃料である。それゆえ、(上述のように極めて着火し難くてもよい)主燃料の着火性が高まる。
図4は、ここでは第1アクチュエータ45および第2アクチュエータ29という2つのアクチュエータを具備する他の噴射装置9を図示している。第1燃料の噴射を開始するために第1アクチュエータ45を使用し、第2燃料の噴射を開始するために第2アクチュエータ29を使用する。エンジンの運転中、制御装置18は、エンジン1に燃料を噴射しないときは、図4に図示するように、第1アクチュエータ45を下方位置にかつ第2アクチュエータ29を下方位置に位置付ける。したがって、第1燃料は、第1蓄圧タンク7から入口経路8、燃料経路19および一方向弁21を介して噴射室20に移送される。第2燃料は、第2蓄圧タンク15から入口経路16、燃料経路24および一方向弁25を介して燃料空間26に移送される。第1燃料は噴射室20内において燃料空間26内の第2燃料よりもさらに高圧であるので、第2燃料が一方向弁28を通過して噴射室20内に導かれ得ない。第1アクチュエータ29が下方位置にあるときは、制御室33内のニードル弁頭部34aの両側に実質的に同じ圧力が広がる。そのため、ばね手段37は、ばね力でニードル弁34を下方位置に維持して、ニードル弁が噴射室20と噴射ノズル36との間の通路を閉鎖する。
制御装置18は、第1燃料が噴射されると判断すると、図示しない動力手段の作動を開始して第1アクチュエータ45を上方位置に移動させる。したがって、ニードル弁頭部34aより下に位置する制御室33部分の圧力に対して、ニードル弁頭部34aより上に位置する制御室33部分の圧力が低下する。この圧力差によりニードル弁34が上方位置に上昇する。噴射室20と噴射ノズル36との間の通路が開き、第1燃料が噴射ノズル36の開口部を介して燃焼空間に高圧で噴霧される。第2アクチュエータ29は、下方位置にあるとき、加圧された燃料が第1蓄圧タンク7から燃料空間23に導かれるのを防止する。第1燃料の噴射が終了するとき、制御装置18は、動力手段を作動させて第1アクチュエータ45を下方位置に移動させ、ニードル弁頭部34aの両側の制御室33内に実質的に同じ圧力を生じさせる。そのため、ばね手段37はニードル弁34を下方位置に移動させて、ニードル弁が噴射室20と噴射ノズル36との間の通路を閉鎖する。したがって、第2燃料の噴射が停止する。
第2燃料が噴射されるとき、制御装置18は、図示しない動力手段の作動を開始して、噴射装置9の凹部30の範囲内で第2アクチュエータ29を上方位置に移動させる。この第2アクチュエータ29の位置により、アクチュエータを貫通する孔38が燃料経路22に通じる位置となる。したがって、第1蓄圧タンク7は、入口経路8、燃料経路22および上記孔38を介して燃料空間23に接続される。それゆえ、第1蓄圧タンク7からの加圧された第1燃料が燃料空間23に流入し、燃料空間23内の加圧された第1燃料により、ピストン40が燃料空間26内の第2燃料を加圧する。第1燃料と接触するピストン40の作用領域a1が第2燃料と接触するピストンの領域a2よりも大きいので、燃料空間26内の第2燃料は、燃料空間23および噴射室20内の第1燃料の圧力よりも高圧になる。それゆえ、一方向弁28が開いて第1燃料が噴射室20に導かれる。それゆえ、噴射室20内の圧力は燃料経路19内の第1燃料の圧力よりも高圧に上昇する。したがって、一方向弁21は第1燃料が噴射室20に到達するのを防止する。
第1燃料の噴射が終了した場合、制御装置18は、ニードル弁34が開くように動力手段を作動させて第1アクチュエータ45を上方位置に移動させる。次いで、第2燃料が噴射室20から噴射ノズル36に導かれ、噴射ノズル36が燃焼空間に第2燃料を噴射する。第2燃料の噴射が終了するとき、ニードル弁34が閉じるように第1アクチュエータ45を下方位置に移動させる。有利には、同時に第2アクチュエータ29を下方位置に移動させる。この第2アクチュエータ29の位置により、孔38が、絞りダクト39と共に燃料空間23を戻り経路10に接続するような位置となる。したがって、燃料空間23内の圧力が降下する。ばね手段41がピストン40を初期位置に上昇させると同時に、第2燃料空間26内の圧力が第2蓄圧タンク15内に広がる圧力に低下する。
図5は、噴射サイクルの間に燃料噴射量qがどのように変化するかを示している。第1燃料f1の噴射が時間t1で開始する。第2燃料f2の噴射が時間t2で開始する。この場合、第1燃料f1の噴射は、第2燃料f2の噴射が開始する前に終了する。図示の例では、実質的に同量qの各燃料が噴射される。しかしながら、第1燃料f1の噴射と同時に第2アクチュエータ29を上方位置に移動させることが可能であり、その場合、第1燃料f1の噴射は、第2燃料f2が燃料室26内でより高圧に到達したときに終了する。それぞれの燃料の噴射を開始するために別々のアクチュエータ29、45を使用することで、それぞれの燃料噴射間の時間遅延Δtを変化させることが可能となる。
図6は、アクチュエータ29、第1噴射ノズル46および第2噴射ノズル36を具備するさらなる噴射装置9を示している。第1燃料と第2燃料の両方の噴射を開始するために第1アクチュエータ29を使用する。第1燃料を噴射するために第1噴射ノズル46を使用し、第2燃料を噴射するために第2噴射ノズル36を使用する。エンジン1に燃料を噴射しないときには、制御装置18が、アクチュエータ29を図6に示す下方位置に位置付ける。このアクチュエータ29の位置により、第1蓄圧タンク7と燃料空間23との間の接続が遮断される。したがって、加圧された第1燃料を燃料空間23に導くことができない。しかしながら、第1燃料は、燃料経路19および一方向弁21を介して噴射室20に導かれる。第2燃料は、入口経路16から燃料経路24および一方向弁25を介して燃料空間26に導かれる。アクチュエータ29が下方位置にあるときは、制御室33内のニードル弁頭部34aの両側に実質的に同じ圧力が広がる。そのため、ばね手段37は、ばね力でニードル弁34を下方位置に維持して、ニードル弁の下端部が噴射室20と第1噴射ノズル46との間の通路を閉鎖する。それゆえ、アクチュエータ29が下方位置にあるときは、噴射ノズル46は燃焼空間に燃料を噴射しない。
制御装置18は、燃料噴射工程が開始されると判断すると、図示しない動力手段を作動させてアクチュエータ29を上方位置に移動させる。絞りダクト32が絞りダクト35よりも多く絞るので、ニードル弁頭部34aより下に位置する制御室33下部の圧力に対して、ニードル弁頭部34aより上に位置する制御室33上部の圧力が低下する。この圧力差によりニードル弁34が上方位置に上昇する。噴射室20と第1ノズル46との間の通路が開き、第1燃料が燃焼空間に高圧で噴霧される。アクチュエータ29を上方位置に移動させることにより、アクチュエータ29を貫通する孔38が燃料経路22に通じる位置となる。それゆえ、第1燃料は、第1蓄圧タンク7から入口経路8、燃料経路22および孔38を介して燃料空間23に導かれる。第1燃料は燃料空間23内でピストン40に圧力を発揮し、この圧力でばね手段41の力に抗してピストン40を下降させる。したがって、ピストン40は、燃料室23内の第1燃料によって燃料空間26内の第2燃料を加圧する。第1燃料と接触するピストン40の第1表面a1が第2燃料と接触するピストン40の第2表面a2よりも大きいので、燃料室26内の第2燃料は、燃料室23内の第1燃料よりも高圧になる。燃料空間23内の燃料のごく一部が、絞りダクト42を通って空間43に導かれる。アクチュエータ29が上方位置にあるとき、アクチュエータ29を貫通する孔44は、空間43を戻り経路システム10の経路に接続するような位置となる。その結果、アクチュエータがこの位置にあるときに、空間43に到達した第1燃料は第1燃料タンク3に戻される。
この場合、燃料空間26は、第2噴射室47に接続される。したがって、燃料空間26および第2噴射室47は、第2燃料を同じ圧力で収容する。第2ニードル弁48が、噴射室47を貫通して延びる。ばね手段49が、第2ニードル弁48の上端部にしっかりと固定される。このばね手段49は、ニードル弁48を下方位置に向けて移動させるように働くばね力を発揮する。下方位置で、ニードル弁48は、第2噴射室47と第2噴射ノズル36との間の通路を閉鎖する。したがって、第2ニードル弁48は、下方位置にあるときに、第2噴射ノズル36が燃焼空間に第2燃料を噴射するのを防止する。燃料空間26内ひいては第2噴射室47内の圧力が所定値に到達すると、第2ニードル弁48が、ばね手段49の作用に抗して上昇する。噴射室47と第2噴射ノズル36との間の通路が開き、第2燃料が燃焼空間に高圧で噴霧される。この場合、第2燃料の噴射は、第1燃料の噴射開始に対して一定の時間遅延Δtを伴って開始する。この時間遅延は、主として、第2燃料がニードル弁48を開放するのに必要な圧力にどれだけ速く到達するかによって決まる。
第1燃料のこの位置での噴射が終了するとき、制御装置18は、動力手段を作動させてアクチュエータ29を下方位置に移動させる。このアクチュエータ29の位置により、ニードル弁頭部34aの両側の制御室内に実質的に同じ圧力が生じる。そのため、ばね手段37がニードル弁34を下方位置に移動させて、ニードル弁が噴射室20と噴射ノズル46との間の通路を閉鎖する。したがって、第1燃料の噴射が停止する。アクチュエータ29を下方位置に移動させることにより、孔38が第1蓄圧タンク7と燃料空間との間の接続を遮断するような位置となる。しかしながら、この状況では、孔38が、アクチュエータ29を貫通して延びる絞りダクト39を介して戻り経路システム10の経路と燃料空間23との間の接続を確立する。したがって、燃料空間23内の圧力が低下する。ばね手段41がピストン40を上昇させると同時に、第2燃料空間26内の圧力が低下する。第2燃料空間および噴射室47内の圧力が所定値よりも降下すると、ばね手段49が第2ニードル弁48を下方位置に移動させる。第2ニードル弁48は、第2燃料の噴射が停止するように第2噴射室47と第2噴射ノズル36との間の通路を閉鎖する。燃料噴射量qおよびそれぞれの燃料の噴射開始時間が、例えば、図3または図5に示すものと一致してもよい。この場合、第2燃料の噴射は、実質的に一定である時間遅延Δtを伴って開始する。時間遅延Δtは、第2燃料が第2ニードル弁48の開放圧力に到達するのに必要な時間量に実質的に相当する。この場合、第2燃料の噴射が開始する前に、第2燃料に第1燃料よりも高い圧力を付与する必要はない。
図7は、この場合には第1アクチュエータ45、第2アクチュエータ29、第1噴射ノズル46、および第2噴射ノズル36を具備するさらなる噴射装置9を示している。第1燃料の噴射を開始するために第1アクチュエータ45を使用する。第2燃料の噴射を開始するために第2アクチュエータ29を使用する。第1燃料を噴射するために第1噴射ノズル46を使用し、第2燃料を噴射するために第2噴射ノズル36を使用する。エンジン1に燃料を噴射しないときには、制御装置18は、図7に示すように、第1アクチュエータ45を下方位置にかつ第2アクチュエータ29を下方位置に位置付ける。この第2アクチュエータ29の位置により第1蓄圧タンク7と燃料空間23との間の接続が遮断されるが、加圧された第1燃料は燃料経路19および一方向弁21を介して噴射室20に導かれる。第1アクチュエータ45が下方位置にあるときは、制御室33内のニードル弁頭部34aの両側に実質的に同じ圧力が広がる。そのため、ばね手段37は、ばね力でニードル弁34を下方位置に維持して、ニードル弁の下端部が噴射室20と第1噴射ノズル46との間の通路を閉鎖する。したがって、第1アクチュエータ45が下方位置にあるとき、第1噴射ノズル46は燃焼空間に第1燃料を噴射しない。
第2燃料は、入口経路16から燃料経路24および一方向弁25を介して燃料空間26および第2噴射室47に導かれる。下方位置では、第2ニードル弁48が、第2噴射室47と第2噴射ノズル36との間の通路を閉鎖する。したがって、第2ニードル弁48は、下方位置にあるときに、第2噴射ノズル36が燃焼空間に第2燃料を噴射するのを防止する。制御装置18は、燃料噴射工程が開始されると判断すると、動力手段を作動させて第1アクチュエータ45を上方位置に移動させる。これにより、ニードル弁頭部34aよりも下に位置する制御室33下部の圧力に対して、ニードル弁頭部34aより上に位置する制御室33上部の圧力が低下する。この圧力差によりニードル弁34が上方位置に上昇する。噴射室20と第1噴射ノズル46との間の通路が開き、第1燃料が燃焼空間に高圧で噴霧される。第1燃料の噴射が終了するとき、制御装置18は、動力手段を作動させて第1アクチュエータ45を下方位置に移動させる。この第1アクチュエータ45の位置により、ニードル弁頭部34aの両側の制御室33内に実質的に同じ圧力が生じる。そのため、ばね手段37がニードル弁34を下方位置に移動させて、ニードル弁が噴射室20と第1噴射ノズル46との間の通路を閉鎖する。したがって、第1燃料の噴射が停止する。
制御装置18は、第2燃料の噴射が開始すると判断すると、動力手段を作動させて第2アクチュエータ29を上方位置に移動させる。この第2アクチュエータ29の位置により、貫通する孔38が燃料経路22に通じる位置となる。したがって、第1蓄圧タンク7からの第1燃料は、入口経路8、燃料経路22および孔38を介して燃料空間23に導かれる。第1燃料は燃料空間23内でピストン40に圧力を発揮し、この圧力でばね手段41の作用に抗してピストン40を下降させる。したがって、燃料室23内の第1燃料が、ピストン40を介して燃料空間26内の第2燃料を加圧する。第1燃料と接触するピストン40の第1表面a1が第2燃料と接触するピストン40の第2表面a2よりも大きいので、燃料室26内の第2燃料が、燃料室23内の第1燃料よりも高圧になる。
燃料空間26は、第2噴射室47に接続される。それゆえ、第2噴射室47内の圧力は、燃料空間26内の圧力上昇と同じ割合で上昇する。第2ニードル弁48は、第2噴射室47内の圧力が所定値に到達すると、ばね手段49の作用に抗して上昇する。噴射室47と第2噴射ノズル36との間の通路が開き、第2燃料が燃焼空間に高圧で噴霧される。第2燃料の噴射が終了するとき、制御装置18は、動力手段を作動させて第2アクチュエータ29を下方位置に移動させる。第2アクチュエータ29を上方位置から移動させることにより、孔38が燃料経路22に対して異なる位置となる。第1蓄圧タンク7と燃料空間23との間の接続が途絶える。第2アクチュエータ29が下方位置に移動すると、孔38は、絞りダクト39と共に燃料空間23を戻り経路システム10の経路に接続するような位置となる。それにより、燃料空間23内の圧力が低下する。ばね手段41がピストン40を上昇させると同時に、第2燃料空間26内の圧力が低下する。圧力が所定値よりも降下すると、ばね手段49が第2ニードル弁48を下方位置に移動させる。第2ニードル弁48が第2噴射室47と第2噴射ノズル36との間の通路を閉鎖するとすぐに、第2燃料の噴射が停止する。
この場合、第1アクチュエータ45により第1燃料の噴射が制御され、第2アクチュエータ29により第2燃料の噴射が制御される。したがって、第1燃料および第2燃料の噴射が互いに独立して行われてもよい。それゆえ、燃料噴射量および燃料噴射時間を所望通りに変化させてもよい。ここでは、特定の期間、第1燃料と第2燃料を同時に噴射することも可能である。第1燃料よりも先に第2燃料を噴射することも可能である。
上述の噴射装置9の共通の特徴は、第2蓄圧タンク15内で比較的小さい正圧である第2燃料を加圧するために、第1蓄圧タンク7内で極めて高圧である第1燃料を使用することである。したがって、第2燃料もまた同様の高圧で噴射される。これはつまり、第2燃料システムでは高圧ポンプを使用する必要がないことを意味する。第2蓄圧器もまた、比較的小さい正圧で燃料を収容するだけの簡単な構成であってもよい。第2燃料システムの他の構成要素(経路など)もまた、第1燃料システムにおける同様の構成要素と同じ高圧にさらされない比較的簡単な構成であってもよい。第2燃料もまた燃焼空間に噴射するために、第2燃料を短時間だけ第2燃料空間26内で加圧される。それ以外の時間では、燃料空間26内の第2燃料は、第2蓄圧タンク15内の第2燃料と実質的に同じ圧力である。
本発明は、図面で示す実施形態に決して限定されるものではなく、請求項の範囲内で自由に変更することができる。