JP2013525986A - 符号化された高頻度パルスによる静電式質量分析計 - Google Patents

符号化された高頻度パルスによる静電式質量分析計 Download PDF

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Abstract

開放静電捕捉器(E−Trap)または延長された飛行経路を有する多重経路TOF質量分析計を作動させる方法、装置、およびアルゴリズムが開示される。時間間隔が等しくない開始パルスの列を用いて分析計へのイオンパケットの入射を始動し、長いスペクトルを取得して列全体からイオンを受け入れ、重なっている信号をデータ分析の段階で除去または考慮すると同時にピークの群の論理的な分析を用いることによって実際のスペクトルを再構築する。本方法はスペクトルがまばらな直列型質量分析に特に役立つ。本方法は分析計および検出器の負荷サイクル、ダイナミックレンジ、および空間電荷処理能力を改善し、そのためE−Trap分析計の応答時間が改善される。本方法によりE−Trapの感度を下げることなく飛行延長が可能になる。
【選択図】図2

Description

本発明は一般に質量分析の分野に関し、より詳細には、開放型静電捕捉器または飛行経路が延長された飛行時間型質量分析計を含む静電式質量分析計装置における感度、速度、およびダイナミックレンジの改善に関する。
飛行時間型質量分析計(TOF MS)は、種々の混合物の同定および定量分析のための分析化学に広く用いられている。そのような分析の感度および分解能は、実際の使用にあたっては重要な関心事項である。TOF MSの分解能を上げるため、米国特許第4,072,862号はイオンエネルギに対する飛行時間型合焦を改善するためのイオンミラーを開示しており、参照によって本明細書に組み入れる。連続イオンビームに対してTOF MSを用いるために、国際公開WO09/103071号は直交パルス加速(OA)の方法を開示しており、参照によって本明細書に組み入れる。TOF MSの分解能は飛行経路に対応して上がることから、多重反射(MR−TOF)および多重周回(MT−TOF)質量分析計などの多重経路飛行時間型質量分析計(M−TOF MS)が提案されてきた。ソ連特許第1,725,289号は、二次元無格子平面イオンミラーを用いる折り畳み経路MR−TOF MSを提案しており、参照によって本明細書に組み入れる。英国特許第2,403,063号および米国特許第5,017,780号は、イオンパケットを二次元MR−TOF内に空間的に閉じ込めるための一組の周期レンズを開示しており、参照によって本明細書に組み入れる。国際公開WO2007/044696号は、OAの効率を改善するために二重直交入射を備える方法を提案しており、参照によって本明細書に組み入れる。しかし、OA−MR−TOFの負荷サイクルは1%未満にとどまる。
OA負荷サイクルを改善するため、OA内におけるイオンビームの一時的な圧縮が以下の方法によって実現される:イオンを蓄積しパルス化して直線イオンガイドから放出する(米国特許第5,689,111号、米国特許第6,020,586号、および米国特許第730,986号、参照によって本明細書に組み入れる)、イオン捕捉器からの質量依存型イオン放出を用いる(米国特許第6,504,148号、米国特許第6,794,640号、国際公開WO2005/106,921号、および米国特許第7,582,864号、参照によって本明細書に組み入れる)、またはRFイオンガイド内のイオン速度変調(国際公開WO2007/044696号、参照によって本明細書に組み入れる)。しかし、圧縮すると以下の問題を引き起こす:(a)質量範囲の制限、(b)検出装置の飽和、および(c)自己空間電荷による分析計内のイオンパケットの膨張。空間電荷の影響はM−TOF内のイオンパケットを1,000イオン/ショット/ピーク未満かつ10+6イオン/質量ピーク/秒未満に制限することが知られている。これは最新のイオン源が以下に示す発生可能な数よりかなり少ない:電子噴霧(ESI)、APPI、およびAPCIイオン源の場合の10+9イオン/秒、EIおよびグロー放電(GD)イオン源の場合の10+10イオン/秒、およびICPイオン源の場合の10+11イオン/秒。
OAの負荷サイクルを改善するため、米国特許第6,861,645号は、短いパルス発生周期を用い、短いスペクトルを記録し、スペクトルをピーク幅およびピークパターンの形で、同位体分布すなわち多価ピークのパターンのように復号化する方法を開示しており、参照によって本明細書に組み入れる。国際公開WO2008/087389号は、高速でOAパルスを発生、記録し、OAパルスの異なる周期を有する少なくとも2組のデータを比較する方法を開示しており、参照によって本明細書に組み入れる。両方法とも強いピークを有する低密度スペクトルにのみ効果がある。
米国特許第6,900,431号はアダマール変換(Hadamard Transformation、HT)を直交加速TOF MS(o-TOF MS)と組み合わせた方法を開示しており、参照によって本明細書に組み入れる。直交加速器(OA)の高頻度パルスは、所定の二値符号化削除による周期的配列のように、「疑似的無作為」配列に並べられ、スペクトルが逆HTによって再生される。逆HTの手順には、同じ長いスペクトルの加算と減算の他、符号化の手順に従うスペクトルの移動が含まれる。しかし、この方法では逆HTによってさらに雑音が発生するという問題がある。イオン源の束および検出器の応答がばらつくため、等しい信号を意図どおりに減算しても、実際には再生されたスペクトルに偽ピークが残る。
同時継続出願の国際出願PCT/IB2010/056136は、延長されているが非固定のイオン経路を有する開放E−Trapを開示しており、参照によって本明細書に組み入れる。イオンはパルス化され、多重振動サイクル用の延長されたパルス変換器を介して入射され(イオンミラーの間の反射または静電セクター内の旋回)、ある幅ΔM内の整数M回の振動の後に検出器に到達する。その結果得られるスペクトルでは、各m/z成分は整数回の振動の幅に応じてピーク多重項によって表される。スペクトルの再生によって多重項内の再生可能な強度分布が考慮される。またこの出願は、高速パルス発生を多重項記録と組み合わせることも提案している。しかし、提案された開始パルス列はパルス間に一定の時間間隔を用いており、生スペクトルの復号化の能力は制限される。
本明細書において我々は「静電式質量分析計」(EMS)の用語を提案し、この用語は延長されているが非固定のイオン経路を有する開放型静電捕捉器(E−Trap)および多重経路飛行時間型静電式(E−TOF)質量分析計の両方を意味する。
以上をまとめると、従前のEMSは、分解能は向上しているがパルス変換器の負荷サイクルには制限があり、分析計パラメータを低下させない最新のイオン源からの上記10+7イオン秒大きなイオン流には対応できない。OA負荷サイクルが改善された従前の方法はEMSには適さない。したがって、EMSの感度、速度、ダイナミックレンジ、およびイオン処理能力を改善する必要がある。
本発明者らは、高分解能の静電式質量分析計(EMS)の感度、ダイナミックレンジ、および応答時間を以下によって実質的に改善できると考えてきた。すなわち(a)イオン源またはパルス変換器を高速脈動させる、(b)パルスのいかなる対の間も固有の時間間隔を有する所定のパルス配列を作る、これを本明細書でパルスの符号化と呼ぶ、(c)高速パルスの列のための長いスペクトルを取得する、および(d)データ分析の段階でピークの重なりの論理的分析法を用いると同時にパルス間隔および多重項内の実験的に決定された強度分布に関する情報を用いて、そのようなスペクトルを復号化する。
従前とは異なり、パルスは不均等なパルス間隔で符号化される。すなわち、長い符号化されたスペクトル内で、種々の質量(m/z)成分の間に開始パルスの違いに応じて単一の重なりが現れる場合があるが、本方法ではm/z成分と特定の多重項ピークのいかなる対の体系的な重なりも回避される。スペクトル密度がまばらなとき(時間目盛りの占有割合)、単一の質量(m/z)成分のピークの多くは重ならず、信号の加算に用いられることになる。また、非周期的なパルスは正しい質量(m/z)仮説に対し鋭く共鳴し、その一方で偽仮説はあまり一致を見ないことになる(パズルのピースと類似)。論理的に見つけられた重なりは、ピークを加算する前に取り除かれるか考慮される。
本方法は、スペクトルがまばらで化学的背景雑音が少ない直列型質量分析法にまず適用される。本我々は、直列型質量分析計を広い意味で以下のように定義する。すなわち、差動イオン移動度分析計、移動度分析計、または分裂セルを備える質量分析計など、何らかの気相イオン分離装置と、EMSとを組み合わせたものである。
本出願は、符号化されたパルスの高速発生とスペクトル復号器とを備える優れたEMS装置を開示する。いくつかの具体的な実施形態によって、優れた装置の利点と優れた符号化−復号化法の利点を説明する。本出願はスペクトル再生のための複数の優れたアルゴリズムを開示し、少なくとも100個の質量成分を有するMS−MSスペクトルモデルを基にして、スペクトル再生の模擬的な結果を提示する。
本発明の第1の態様によれば、以下を備える静電式質量分析計(EMS)が提供される。
(a)イオンパケットを形成するパルスイオン源、
(b)イオン検出器、
(c)その中をZ方向に通過するイオンパケット経路およびを局所的に直交する方向Xに等時性のイオン振動を提供する多重経路静電式質量分析計、
(d)パルスイオン源またはパルス変換器を、検出器のピーク時間幅ΔT内で固有の任意の対の開始パルス間の時間間隔で始動させるパルス列発生器、
(e)パルス列の継続中に検出器信号を記録し複数のパルス列に対応するスペクトルを加算するデータ取得装置、
(f)データ取得装置およびパルス列発生器の両方を始動させる主パルス発生器、および
(g)検出器信号および開始パルスの所定の時間間隔に関する情報に基づいて質量スペクトルを再構築するスペクトル復号器。
好ましくは、パルス列内で任意の異なる数の開始パルスi、jに対し、開始時間T、Tは以下の群の1つの条件を満たす:(i)|(Ti+1−T)−(Tj+1−T)|>ΔT、(ii)T=j×(T+T×(j−1))。ただし、1us<T<100usかつ5ns<T<1,000nsである。パルス列内の開始パルスの数Sは3まで小さくてもよく、または300を超えてもよい。パルス列の継続時間と一番重いm/zイオンの平均飛行時間の比は0.1まで小さくてもよく、または10以上でもよい。
一実施形態では、多重経路EMS分析計の複数の電極は平行であり、直線的にZ方向に延びて平面対称性の二次元静電場を形成する。別の実施形態では、EMS分析計は平行かつ同軸の複数の環状電極を備えて、円筒対称性の二次元静電場を有するドーナツ状の容積を形成する。好ましくは、ドーナツ状の容積の平均直径は単一振動あたりのイオン経路の1/3よりも大きく、分析計は半径方向のイオン偏向のための少なくとも1つの環状電極を有する。好ましくは、単一反射あたりの正確なイオン変位は3度未満である。EMS分析計は以下の群の電極の一組を備えてもよい:(i)少なくとも2つの静電式イオンミラー、(ii)少なくとも2つの静電セクター、および(iii)少なくとも1つのイオンミラーおよび少なくとも1つの静電セクター。
いくつかの実施形態では、EMS分析計は非固定イオン経路を有する開放E−Trapでもよく、このとき分析計のイオン振動数Mの幅ΔMは2まで小さくてもよく、かつ100まででもよい。好ましくは、振動数Mは3から変化し100を超えてもよい。好ましくは、開始パルスの列の中のパルス数Sを振動数ΔMの広がりによって調整してもよく、そうするとΔM×Sの積である符号化された生スペクトルの中のピークの総数が3から100まで変化してもよい。好ましくは、E−Trap分析計の静電場を調整して、イオンパケットをイオン周期ごとに検出器面X=Xで時間合焦させる。実施形態の別の群では、EMS分析計は固定イオン経路を有する多重経路飛行時間型質量分析計でもよい。多重経路TOF分析計はZ方向のイオン発散を制限するための以下の群の1つの手段を有してもよい:(i)一組の周期レンズ、(ii)Z方向に変調された静電ミラーまたは静電セクター、および(iii)少なくとも2つのスリット。
一実施形態では、パルスイオン源は本質的に以下の群のパルス源の1つを備えてもよい:(i)MALDI源、(ii)DE MALDI源、(iii)パルス抽出を有する分裂セル、(iv)パルス抽出を有する電子衝突、および(iv)SIMS源。別の実施形態では、連続イオン源を用いるために、パルス源は以下の群の直交パルス加速器(OA)の1つを備えてもよい:(i)直交パルス加速器、(ii)無格子直交パルス加速器、(iii)パルス化直交抽出を有する高周波イオンガイド、(iv)パルス化直交抽出を有する静電式イオンガイド、および(v)上流に高周波イオンガイドを重ねた上記加速器のいずれか。好ましくは、上流の気体RFイオンガイドからのイオン抽出を、パルス列を始動させる主発生器によって同期化してもよく、同時にパルス列の継続時間がOA内へのイオンの到着時間の広がりに相当するよう選択される。OAは、E−TrapEMS分析計内の単一イオン周期あたりのイオンパケット変位Zよりも長くてもよい。OAは分析計のX−Z対称軸からずれてもよく、そのときイオンパケットはパルス偏向器によってX−Z対称軸上に戻される。OAをZ軸に対し相対的に傾けてもよく、イオンがEMS分析計内で少なくとも1回反射または旋回した後に、追加の偏向器がイオンパケットを同じ角度に誘導する。
前記データ取得装置は、搭載型スペクトル加算またはデータ記録方式内のバスを介したデータ転送によりADCまたはTDC(時間測定回路)を備えてもよく、このとき閾値を超えるデジタル化信号はメモリーバッファおよびインターフェースバスを通過し、同時に信号分析および加算がPC内で実行される。スペクトル復号器は複数の演算素子を搭載したPC(multi-core PC)を備えてもよい。代わりに、スペクトル復号器を、複数の演算素子によりスペクトルを並行して復号化する高速プログラマブルゲートアレイ(programmable gate array)のデータ取得基板によって実行してもよい。
本発明は種々の直列型質量分析計に適用できる。好ましくは、装置は上流にクロマトグラフをさらに備えて、EMSに先立ち試料分離を行ってもよい。装置は以下のようなイオン分離手段を先にさらに備えてもよい:(i)イオン移動度分析計、(ii)差動移動度分析計、および(iii)質量フィルタ、(iv)イオン捕捉器としての連続イオン放出を有する連続分離器、または飛行時間型質量分析計が後に続く捕捉器、および(iv)分裂セルが後に続く上記イオン分離手段のいずれか。事前の分離手段を有する装置は追加の符号化発生器をさらに備え、符号化された開始パルスの第2の列を提供して事前の分離手段を始動させてもよい。
本発明の第2の態様によれば、以下の工程を含む質量スペクトル分析法が提供される。
(a)パルス源を頻繁に脈動させる工程、
(b)不均等な間隔の複数のパルス列により信号を符号化する工程、
(c)イオンパケットを、パケットが直交するX方向に等時性振動するように、静電式分析計内でZ方向に通過させる工程、
(d)列の継続時間に対応する長いスペクトルを取得する工程、および
(e)所定の不均等なパルス間隔に関する情報を用いてスペクトルを復号化する工程。
本方法は以下の群の1つの工程をさらに備えてもよい:(i)列の間の重なっているピークを廃棄する工程、および(ii)関連する列の中の重なっていないピークから推定される情報に基づいて部分的に重なっているピークを分離し、そのように分離されたピークを関連する列に割り当てる工程。好ましくは、パルス列内で任意の異なる数の開始パルスi、jに対し、開始時間T、Tは以下の群の1つの条件を満たす:(i)|(Ti+1−T)−(Tj+1−T)|>ΔT、(ii)T=i×(T+T×(j−1))、ただしT>>T、(iii)Tは10〜100usかつTは5〜100ns。代わりに、数字iが添えられたパルスTの時間をT=i×T+T×j×(j−1)と定義し、整数の指数jを変化させて間隔の変動経過を滑らかにする。パルス列内の開始パルスSの数は3まで小さくてもよく、最大1,000でもよい。
いくつかの方法(開放E−Trap質量分光分析)では、分析計によるイオン経路が2から少なくとも100まで変化する幅ΔM内の整数回の振動Mに等しくなるように、イオンパケットをX軸に対してある角度で静電場に入射してもよい。反射の回数Mは3でもよく、または1,000まででもよい。開始パルスの列の中のパルス数Sを反射の回数ΔM内の広がりに応じて調整してもよく、そうすると符号化された生スペクトルの中のピークの総数N=ΔM×Sは3でもまたは100まででもよい。静電場内のイオン飛行時間は0.1msまで短くてもよく、または10msまででもよい。静電場内のイオン飛行経路は3mまで短くてもよく、または100mまででもよい。好ましくは、パルス源および分析計の静電場を調整してイオンパケットをイオンサイクルごとに検出器面X=Xで時間合焦させてもよい。
別のいくつかの方法(M−TOF質量分光分析)では、EMS分析計内のイオン経路を、イオンパルス源およびEMS分析計のパラメータを調整することによって固定してもよい。本方法は以下の群の工程の少なくとも1つを含む:(i)イオン源の放射力を20mmeV未満に調整する工程、(ii)3kVを超える電位までイオンを加速して20mm×mrad未満の角度的−空間的発散を提供する工程、(iii)少なくとも1つのレンズによってパケットの発散を1mrad未満に調整する工程、および(iv)EMS分析計内の少なくとも2つのスリットまたは一組の周期レンズによって角度的発散を制限する。
本方法は静電式分析計の種々の静電場に適用できる。好ましくは、静電場は以下の群の静電場の少なくとも1つを含んでもよい:(i)X方向にイオンを反射しY方向にイオンを空間的合焦させるイオンミラーの静電場、(ii)イオンの軌跡を環状にする円筒型偏向静電場、(iii)無静電場空間、および(iv)楕円イオン捕捉用の放射対称性の静電場。静電式分析計の静電場は平面対称性の二次元でもよく、またはZ方向に直線的に延在してもよい。代わりに、静電式分析計の静電場は円筒対称性の二次元でもよく、円形Z軸に沿って環状に延在してもよい。
好ましくは、分析計の静電場は電位が異なる少なくとも4つの電極によって形成され、静電場は、テイラー展開の第n次までのイオンパケットの空間的、角度的、およびエネルギ的拡散における小さなずれに対し相対的に中心イオン軌跡に沿った飛行時間型合焦を提供するように、加速レンズの少なくとも1つの空間的合焦静電場を備え、かつ収差補償の次数は以下の群の1つでもよい:(i)少なくとも1次、(ii)全ての広がりに対し相対的にかつ公差項を含む少なくとも2次、(iii)イオンパケットのエネルギ的広がりに対し相対的に少なくとも3次。
本方法は(i)MALDI、(ii)DE MALDI、(iii)SIMS、(iv)LD、および(v)パルス抽出を伴うEIイオン化のような種々のパルスイオン化法に適用できる。代わりに、イオンパケット形成の工程は、以下の群の直交パルス加速の方法の1つが後に続く連続的なまたは疑似連続的なイオンビーム形成を含んでもよい:(i)無静電領域へイオンを入射し、その後直交パルス加速、(ii)RFイオンガイド経由でイオンを伝播し、その後パルス直交抽出、(iii)RFイオンガイド内でイオンを捕捉し、その後直交イオン抽出、および(iv)パルス直交抽出を備える静電式イオンガイド経由のイオンビーム伝播。直交イオン加速の工程の前に、イオン蓄積および主発生器と同期したRFイオンガイドからのイオン束のパルス抽出の工程を行ってもよい。好ましくは、符号化されたパルスの列の継続時間は直交加速器領域へのイオン到着時間の広がりに相当する。直交加速器領域は、負荷サイクルの改善のため、E−Trap分析計内の単一のイオンサイクルあたりのイオンパケットの変位Zより長くてもよい。好ましくは、直交加速器領域は中心イオン軌跡平面(すなわち表面)からずれてもよく、このときイオンパケットはパルス偏向によって表面に戻される。
本方法は直列型質量分析法に特に適する。スペクトルの復号化はスペクトルがまばらな場合はさらに正確である。さらに高速パルス発生によってEMSの前のイオン量の瞬時追跡が可能になる。好ましくは、本方法は、イオン化工程の前に試料のクロマトグラフ分離の工程をさらに備えてもよい。好ましくは、本方法はパルスパケット形成の工程の前に以下の群のイオン分離の工程の1つをさらに含んでもよい:(i)イオン移動度分離工程、(ii)差動移動度分離工程、(iii)親イオン質量フィルタ工程、(iv)イオン捕捉後に質量依存型の連続放出工程、(v)飛行時間型質量分離を有するイオン捕捉工程、および(vi)後にイオン分裂の工程がある上記分離法の工程のいずれか。事前のイオン分離の工程は、事前のイオン分離の工程を同期化するために、開始パルスの第2の列による追加の符号化工程をさらに備えてもよい。この第2の列のパルス間隔は不均等であり、第2の列の継続時間は事前のイオン分離の継続時間に相当し、ここに主パルス期間が第2の列とデータ取得とを同期させている。好ましくは、本方法は、イオン蓄積の工程と、重ねられたRFイオンガイドまたは分裂セルの片方からパルスを抽出する工程とをさらに備えてもよい。好ましくは、パルス抽出は開始パルス列の始まりと同期がとられ、列の継続時間はイオンパケット継続時間に従って調整される。
本発明の第3の態様によれば、符号化された高速パルス発生で多重経路静電式質量分析におけるスペクトルを復号化するためのアルゴリズムが提供され、本アルゴリズムは以下の工程を含む。
(a)符号化されたスペクトル内のピークを選択する工程、
(b)パルス配列に従ってまたは多重項形成によって複数のピークを時間的に相隔たる複数の群に集める工程、
(c)複数の群を群の特性および符号化されたスペクトルの特性を基に検証する工程、
(d)各群内の個々のピークをピーク特性の相関関係を基に検証する工程、
(e)群の間でピークの重なりを見つけ、重なりを廃棄する工程、および
(f)重ならないピークを用いてスペクトルを再生する工程。
好ましくは、ピークを複数の範囲のピーク強度に分類してもよく、ここで特定された高強度のピークは低強度範囲のスペクトルの分析時に取り除かれる。群を検証する工程は、符号化された信号のダイナミックレンジおよび各強度範囲内のスペクトル密度の程度を基にしたアルゴリズムパラメータの自動選択を備えてもよい。群を検証する工程は以下の検証基準の群の演算を含んでもよい:(i)群の確認用の群内のピークの最小数、(ii)ピーク強度内の許容広がり、および(iii)群内のピーク間の許容時間偏差および許容幅偏差。群内のピークを検証する工程は、ピーク強度、ピーク幅、および重心ならびに群内相関の偏差に一貫性があるかどうかを調べる群内分布の分析を備えてもよい。好ましくは、本アルゴリズムは以下の群の追加工程の少なくとも1つをさらに備える:(i)スペクトルの復号化に先立ち直列型質量分析スペクトルの中の背景雑音減算工程、および(ii)スペクトルの復号化に先立ちクロマト質量分光分析データの解析工程。分離スペクトルのいずれかを複数の演算素子で並行して復号化するか何らかの復号化工程によって、スペクトル処理の速度を向上してもよい。
本発明の第4の態様によれば、符号化された高速パルス発生で多重反射質量分析における低強度スペクトルを復号化するためのアルゴリズムが提供され、本復号化アルゴリズムは以下の工程を含む。
(a)符号化されたスペクトルの全ての範囲に対し、開始パルス間隔に従って相隔たる信号を加算する工程、
(b)所定の閾値未満の非ゼロ(0)の信号をいくつか有する合計を除去する工程、
(c)加算されたスペクトル内のピークを検出して正しいピークの仮説を立する工程、
(d)符号化されたスペクトルから各仮説に対応する信号の群を集める工程、
(e)符号化されたスペクトルの全体特性を基に群を検証する工程、
(f)群の間でピークの重なりを見つけ、重なりを廃棄する工程、
(g)重ならない信号を用いて正しいスペクトルを再構築する工程、および
(h)多重項内のピーク分布が解るスペクトルをさらに再構築するする工程。
好ましくは、本アルゴリズムの適用に関する決定は、解析された符号化されたスペクトルが、符号化の開始ごとにおよびピークごとに0.1〜100イオンの範囲の信号を持つことを確認することによって自動的に行われる。群を検証する工程は、以下の群の工程の1つを含んでもよい:(i)群内のピークの最小数の自動計算工程、許容閾値は符号化されたスペクトルの統計値および信号の強度分布に基づいて自動的に決定される、および(ii)加算され範囲化された群の中の信号の繰り返し周波数の解析工程および観察された信号強度および時間的広がりの統計的確率を計算する工程。範囲の加算による範囲によって、次のパルス列内へ広がる信号を考慮してもよい(スペクトル追い越し)。複数の範囲をピーク幅にほぼ相当するさらに大きな幅の範囲にまとめることによって、加算工程を加速してもよい。
本発明の種々の態様を単に説明目的の配置と共に、添付図面を参照して例示的に説明する。
直交加速器内に周期的な後方パルスを備える従前の多重反射M−TOFのブロック図および同期図である。 本発明の静電式質量分析計(EMS)のブロック図および同期図である。 タイミングチャートおよびパルス列を符号化する例を示す図である。 本発明の静電式分析計の好ましい実施形態を表す図である。 本発明の好ましい方法の主な工程を備える図である。 本発明の好ましい復号化アルゴリズムの図である。 イオン移動度分析計(IMS)が直列接続されたEMSの概略およびIMS符号化のタイミングチャートを示す図である。 イオン移動度分析計(IMS)が直列接続されたEMSの概略および相関m/z移動度イオン選別のタイミングチャートを示す図である。 アルゴリズムの試験を説明し、強い信号の場合のスペクトルの符号化および復号化の異なる段階に対応するスペクトルを表す図である。 ダイナミックレンジの5.5桁内の質量スペクトル再生の結果を表す図である。 アルゴリズムの試験を説明し、弱いMS−MS信号の場合のスペクトルの符号化および復号化の異なる段階に対応するスペクトルを表す図である。 アルゴリズムの試験を説明し、質量スペクトル再生の結果を表す図である。
従来技術。図1を参照すると、飛行経路が延長された従前のMR−TOF質量分析計11は、イオンミラー12Mを有するMR−TOF分析計12、直交加速器OA13、前置増幅器16を有するTOF検出器15、および加速器13とアナログ−デジタル変換器(ADC)17の両方を始動させる周期的パルスの主発生器14を備え、必要に応じて基板に取り付けられたスペクトル加算を備える。
動作中は、連続イオンビーム(白矢印で示す)が直交加速器13にZ軸に沿って入る。イオンビームの断片が周期的にパルス化され、X方向に沿って加速され、そのように形成されたイオンパケットがM−TOF分析計12に入る。イオンパケットは、MR−TOF内で複数回反射した後、一般にはMCPまたはSEMである検出器15に衝突する。検出器信号が高速増幅器16によって増幅され、ADC17によって記録される。信号は複数回の主開始ごとに加算される。通常、ADCは周知の「アナログ集計」モードで作動し、ここに単一のイオンの振幅は少なくとも複数のADCビット(一般に5〜8ビット)に設定され、ADC雑音および物理的雑音は1〜2ビット閾値によって除去される。信号強度が小さい場合、信号はTDCによって取得される。OAパルスが0.5〜1msごとに周期的に印加される(18)。パルス周期は一番重いm/z成分の飛行時間よりもいくらか長くなるように選ばれて、全てのイオンが開始と開始の間に分析計を通過できるようにする(19)。反復する信号が複数の開始パルスごとに加算される(20)。OAが希にパルスを発生することによって、経路が長いM−TOFの負荷サイクルが1%未満に制限される。
一番重い質量成分の飛行時間よりも短い開始周期を用いれば、TOF MSの感度とダイナミックレンジが改善する可能性がある。しかし、従前の技術は符号化−復号化の十分な方法を提案しない。米国特許第6,861,645号および国際公開WO2008/087389号では、多数のパルスが周期的に印加され、多数のピークの重なりを引き起こす短いスペクトルが記録され、参照によって本明細書に組み入れる。これらの方法は共に低密度スペクトルおよび強いピークのみに機能する場合がある。米国特許第6,900,431号では、アダマール変換(HT)が開始と開始の間の信号のばらつきによって、その結果である再生スペクトルに疑似ピークを誘発し、参照によって本明細書に組み入れる。同時継続の国際出願PCT/IB2010/056136では、開放E−Trap内の高速パルス発生はパルス間に一定の時間間隔を用いており、これが復号化に影響を与え、参照によって本明細書に組み入れる。
好ましい方法。静電式質量分析計(開放E−TrapおよびM−TOF)の感度、速度、ダイナミックレンジ、および空間電荷処理能力を上げるために、本発明の好ましい方法は以下の工程を含む:(a)パルス源が頻繁にパルスを発生する工程、(b)不均等な間隔を有するパルス列を備える信号を符号化する工程、(c)イオンパケットを静電式分析計にZ方向に通過させて、パケットが直交X方向に等時的に振動するようにする工程、(d)列の継続時間に対応する長いスペクトルを取得する工程、および(e)所定の不均等なパルス間隔に関する情報を用いて後続スペクトルを復号化する工程。
好ましい実施形態。図2を参照すると、本発明の質量分析計21の好ましい実施形態は以下を備える:静電式質量分析計22(ここでは平面開放M−TOFまたはE−Trap分析計として示す)、直交加速器23、主パルス発生器24、前置増幅器26を有する高速応答検出器25、スペクトル加算を有するADC27、スペクトル復号器29、および開始パルスの間隔が不均等な列開始パルスの発生器28。主発生器24はADC取得および列発生器28の両方を始動させる一方、復号器29は列内の開始パルスの時間間隔に関する情報を考慮する。列発生器28はOA23を始動させる。
図3を参照すると、発生器24の非常に高速のパルスで始まる実験的時間で描かれた一組のタイミングチャート32〜34、および発生器24の各パルスで始まるDAS時間で描かれたタイミングチャート35、36によってEMS21の動作が説明されている。チャート34〜36では、m/zの3つのモデル種およびM−TOF静電式分析計の場合(ΔM=1)のみが考慮されている。チャート32は周期T(37)を有する主発生器のトリガを示す。チャート33は時間0、t、t、・・・t=Tに開始する列発生器の時間を示す。番号jのパルスの時間は、列パルスの時間間隔が等しくないように選ばれる。そのような時間の例はt=i×T+T×i×(i−1)である。チャート34は検出器25のイオン信号を示す。チャート35は主発生器24のパルス間の周期ごとに加算されたADC信号を示す。チャート36は復号化されたスペクトルを示し、S=1のときのTOFのスペクトルのように見えるが、OAの負荷サイクルがかなり大きいときに得られる。
不均等な開始配列によってm/z成分のいかなる特定の対に対しても系統的なピークの重なりが取り除かれることが原則的に重要なことである。偶発的に重なりが発生する場合もあるが、他の開始パルスに再発することは無いことになる。これらの偶発的な重なりは系統的ピーク列とは区別しやすく、スペクトルの復号化段階において考慮または廃棄が必要になる。非周期性によって開始パルスと対応するピーク間の明確な割り付けが可能になることから、非周期的パルス配列によってピークの列の間で起こり得る混乱が除去されることも原則的に重要なことである。符号化および復号化の問題は本発明の中心的事項である。
開始パルスの各対の時間間隔を唯一なものとするのに、非周期性は僅かで十分である。単一のm/z成分あたりの信号ピークの数はほぼN=S×ΔMであり、ここにSは列の中の開始パルスの数、ΔMは開放E−Trapにおける多重項内のピークの数である。符号化されたスペクトルは普通のTOFスペクトルに比べて密度がN倍大きいため、復号化は下記の符号化−復号化アルゴリズムの詳細によって決まる。
本発明の重要な特徴は高速パルスの時間間隔に反復性が無いことである。すなわち、どの対の開始パルスの間隔も固有であり、少なくとも1つのピーク幅だけ異なる。いかなるi、j、k、lに対しても||t−tj|−|t−t||>ΔT×Cであり、ここにΔTはピーク幅、Cは係数、C>1である。間隔が固有の配列の一例はTj=j×T+T×j×(j-1)であり、ここに時間Tは約T/N、T<<TかつT>ΔT×C、C>1である。
飛行時間が1msのE−TrapおよびM−TOFおよびピークが3〜5nsと狭い場合、Tの好ましい値は1〜100usであり、Tの好ましい値は5〜100nsである。TおよびTの値はスペクトル密度に基づく列内のパルスNの妥当な最大数に基づいて最適化してもよい。別の例はTi=i×T+T×j×(j−1)であり、ここに指数jを0からNまで変化させて間隔変化の推移を滑らかにする。パルス間隔が不均等である複数の他の配列を用い、さらに正しい仮説に対し鋭い共鳴がある復号化を行ってもよい。
EMSの静電場構造。静電式質量分析計は、イオンが分析計内のZ方向に通過できかつ直交面内で等時性振動ができさえすれば、種々の静電場構造を用いてもよい。例えば、(i)イオンをX方向に再発生する2つの静電式イオンミラーで構築された分析計、(ii)軌跡を環状にXY面内に閉じ込める少なくとも2つの静電式偏向セクターで構築された多重周回分析計、および(iii)イオンの軌跡をXY面の終端で反射させて湾曲させる少なくとも1つの静電セクターと少なくとも1つのイオンミラーで構築された複合型分析計がある。必要に応じてZ軸は全体に曲げられ、湾曲面は全体にイオンの中心軌跡の面に対し任意の角度を成す。静電式分析計内のイオンの軌跡は任意の湾曲した複雑な形状でもよく、以下の群の文字形状の1つを有する螺旋状の突起を備える任意の螺旋形状でもよい:(i)O、(ii)C、(iii)S、(iv)X、(v)V、(vi)W、(vii)UU、(viii)VV、(ix)Ω、(x)γ、および(xi)8の字型の軌跡形状。
分析計の型。開放E−TrapおよびM−TOFの両方に同じ型の静電場構造を用いてもよく、その構造はイオン源およびイオンの軌跡の配列によって決まる。いくつかの実施形態では、静電式分析計は開放静電捕捉器であり、この開放静電捕捉器はイオンパケットを分析計内にX軸に対してある角度で入射させることによって配置され、そのためパルスイオン源と検出器の間のイオン経路は距離ΔM内で整数回の振動Mに等しく、振動数の広がりΔMは以下の群の1つである:(i)1、(ii)2〜3、(iii)3〜10、(iv)10〜30、および(v)30〜100。好ましくは、振動数Mは以下の群の1つである:(i)1、(ii)3未満、(iii)10未満、(iv)30未満、(v)100未満、および(vi)100を超える。好ましくは、開始パルスの列のパルス数Sは振動数ΔM内の広がりによって調整されるため、積ΔM×Sである符号化された生スペクトル内のピークの総数は以下の群の1つである:(i)3〜10、(ii)10〜30、および(iii)30〜100。好ましくは、E−Trap分析計の静電場は、イオンパケットがイオンサイクルごとに検出器面X=Xにおいて時間的に合焦するように調整される。
別の複数の実施形態では、静電式分析計は以下の群の多重経路飛行時間型(M−TOF)質量分析計の1つを備える:(i)飛行経路が不規則なMR−TOF分析計、(ii)飛行経路が螺旋状のMT−TOF分析計、および(iii)楕円型TOF分析計。好ましくは、M−TOFは、以下の群のZ方向の空間的合焦の手段の1つを備える:(i)無静電領域内の一組の周期レンズ、(ii)空間的に変調されたイオンミラー、および(iii)イオンミラー静電場を空間的に変調する少なくとも1つの補助電極。代わりに、Z方向の角度的発散を、一組の周期レンズまたは一組の周期スリットの片方によって制限する(2スリット超)。
同時継続出願特許「Electrostatic trap(静電捕捉器)」は、二次元静電場のどちらかを有する複数の分析計を説明しており、その二次元静電場は、E−Trap電極が並行かつZ方向に直線的に延在する平面対称性の二次元静電場、またはE−Trap電極が円形でありドーナツ状の静電場容積が円形のZ軸に沿って延びる円筒対称性の二次元静電場のどちらかである。
図4を参照すると、最も好ましいEMSはドーナツ状の静電式分析計41であって、無静電場空間43によって隔てられた2つの平行かつ同軸のイオンミラー42を備える。分析計は開放E−TrapおよびM−TOFの2つの方式に用いることができ、イオンパケットのZ寸法、イオンのX軸に対する傾き角度、およびイオンの角度的広がりΔαによって決まる。M−TOFの場合、分析計はイオンパケットのZ方向の広がりを制限する一組の周期レンズまたは周期スリット(共に44で示す)のどちらかを備える。ミラー42のそれぞれは電極42A、42Bの同軸の組を2つ備える。好ましくは、電極の組42A、42Bのそれぞれは、ミラーの入り口に加速レンズ45を形成する電位が異なる少なくとも3つの環状電極を備えるため、エネルギ的広がりに対しては相対的に少なくとも3次までの公差項を、かつイオンパケットの空間的、角度的、およびエネルギ的拡散における小さい変位に対しては相対的に少なくとも2次までの公差項を含んで、飛行時間型合焦が可能になる。さらに好ましくは、電極の組42Aまたは42Bの少なくとも1つは、イオンを半径方向に偏向する追加の環状電極46を備える。従前の平面分析計に比べると、ドーナツ状分析計41は小型の分析計筐体において円形のZ方向に延びる。ドーナツ形状に関連する追加の収差を防ぐため、ドーナツ状静電場容積の半径Rはキャップ間距離Lの1/6よりも大きくし、かつX軸に対するイオンの傾きを3度未満にして、分解能の収差限度が100,000を超えるようにしなければならない。参照番号47は直交加速器OA48と結合されたドーナツ状分析計のイオンの光学的シミュレーションを説明する。OAのための空間を提供するため、OAはZ軸に対して角度γだけ傾けられ、イオンが1回反射した後、追加の誘導板49がビームを角度γ方向に誘導する。
パルス源。本発明は、本質的にパルス化する種々のイオン源、例えばMALDI、DE MALDI、SIMS、LD、またはパルス抽出を備えるEIなどに適用できる。具体的な一実施形態では、DE MALDI源は、反復速度が1〜10kHzのNd:YAGレーザーを用いて試料の分析を加速する。この実施形態は、本分析の分解能を改善するための飛行経路の約40〜50mへの延長および100kDaイオンの飛行時間の10msへの延長を妨げない。同様にSIMSパルス源の場合、初期のイオン化パルスを約100kHzの速度で印加でき(10us周期)、その間分析計内を飛行するには約1msかかる。さらに高速のパルス発生を表面または内部の分析用途に用いることもできる。EI蓄積源の場合、抽出パルスを高速で発生させて電子ビーム飽和を低減することによって、分析のダイナミックレンジが改善される。符号化−復号化の優れた方法によって長い飛行時間を用いることが可能になり、そのようにしてパルス発生周波数すなわち速度および感度を制限せずに分解能が改善される。
パルス変換器。直交パルス加速器またはイオン蓄積とパルス放出を備える高周波捕捉器などのパルス変換器を用いる場合、種々の連続的または疑似連続的パルス源を用いてもよい。複数の直交加速器(OA)が以下のような変換器を結合する:片方の窓を格子で覆った一対のパルス電極、スリットを備える複数の板を用いる無格子のOA、パルス化直交抽出を備えるRFイオンガイド、およびパルス化直交抽出を備える静電式イオンガイド。OAの負荷サイクルを改善するため、開放E−Trapによって、E−Trap内のイオンサイクルごとのイオンパケット変位Zよりも長く延長されたOAを用いることが可能になる。
蓄積イオンガイド。好ましくはいかなるパルス変換器も、RFイオン多極、RFイオンチャンネル、およびイオン多極またはイオンチャンネルのRF配列などの前置の気体RFイオンガイド(RFG)をさらに備える。好ましくは、気体RFイオンガイドはイオン蓄積およびイオン束のパルス抽出のための手段を備え、抽出はOAパルスと同期される。さらに好ましくは、開始パルス列の継続時間はOA内へのイオン到着時間の広がりに相当するように選ばれる。さらに好ましくは、スペクトルの「追い越し」を避けるため、主発生器の周期はスペクトル内の一番重いm/zの飛行時間よりも長い。この配置によってOA全体の負荷サイクルが改善される。検出器の飽和を低減するために、RFG蓄積モードにRFG通過モードが交互に配置される。
イオンパケットの誘導。EMS分析計内のイオンの軌跡の小さな傾き角度α(1〜3度)を集計し特殊な測定を行って、(a)イオンを最初に傾けることなく傾き角度を調整し、(b)イオンパケットを戻してイオン源または変換器の空間的干渉を回避しなければならない。一方法では、イオン源または変換器は分析計のX−Z対称軸からずれており、イオンパケットは少なくとも1つのパルス偏向器によってX−Z対称軸上に戻される。別の方法では、平行放射源(MALDI、SIMS、半径方向放射を備えるイオン捕捉器など)は角度α/2に傾けられ、その結果イオンパケットは角度α/2で前方に誘導されてX軸に対する傾き角度αを調整する。
図4に戻って、別の方法がOAパルス変換器48に合わせられており、到達する連続イオンビームに対し相対的に90−βの傾き角度でイオンを放射する。角度βは連続イオンビームU内の加速電圧およびパルス加速Uで定義され、β=(Uz/Ux)/2である。この方法では、OA48は(Z軸に対し)角度γで逆に傾けられており、その結果分析計内でイオンが少なくとも1回反射した後、イオンパケットが角度γで逆に誘導され、ここに角度γ=(β−α)/2である。この傾きおよび誘導が最初の回転を互いに補償する。OAの大きなイオン変位はOAにさらに余裕を与える。
イオンパケットの発散。角度的発散が大きなイオン源の場合、開放E−Trap分析計を用いることが好ましい。しかし、我々による複数の現実的なパルス源および変換器による分析は、イオンパケットが1mrad未満の低発散で形成されてもよく、これによってM−TOF分析計の使用が可能になることを示す。イオン源が複数の場合、2つの横断方向の推定される放射力はΦ<1mmeVであり、
・半径方向速度が200m/s未満時の100kDa未満のM/zに対し、DE MALDI源のΦは1mmeV未満、
・RFガイドを通過したOA変換器の場合、Φは熱イオンエネルギで0.1mmeV未満、
・パルスRF捕捉器の場合、熱イオンエネルギで2kDa未満のM/zに対しΦは0.01mmeV未満である。
最初に形成されるイオンパケットの横寸法は0.1mm未満と小さいため、驚くほど小さな放射力が現れる。放射対称性イオン源の場合、イオンパケットを10keVのエネルギまで加速することによって、1mmeVの最大放射力がD<20mm×mradよりも小さい角度的−空間的発散に変換される。そのような発散を、レンズ装置によってイオンミラーが許すZY面内で2mm×10mrad発散より小さくなるまで、かつXZ面内で20mm×1mardより小さくなるまで適切に形成し直すことができ、MR−TOF静電式分析計内を伝達してもよく、イオンの損失が無くかつZ方向に再度合焦させる必要がない。
最適なパルス列。スペクトルの効率的な復号化のために複数の開始スペクトルの全体密度を20〜30%未満に保ちつつ、列内のパルスの数Sを最適化してパルス変換器の負荷サイクル(DC)を再生してもよい。一例として、開始ごとのDCが1%であるM−TOFの場合、開始の数をS=50にして、OA内の活用されていない空間によって制限される最大可能なDC約50%に到達させてもよい。OAが5倍延長された開放E−Trapの場合、DCは5%まで改善する一方、多重項の数はΔM=5まで増える。その結果、開始の最適数はS=10である。高周波ガイド内にイオン蓄積を用いる場合、OA内のイオンパケットの継続時間に合わせて遅れずにパルス列を圧縮しなければならない。どのような場合も、感度利得=ΔM×Sである。一方、スペクトル内のピークの数Nも同じ積N=ΔM×Sに等しい。同様に、検出器のダイナミックレンジはNに比例して改善される。すなわち、M−TOFの場合も開放E−Trapの場合も共に、DCを最大化するようにピークの数Nを選びながらスペクトル密度を20%未満に保って、スペクトルを効率的に復号化する。
LC−MSの場合、主要ピークのスペクトル密度は1%未満であると予測される。しかし、小さなピークの再生は約30〜70%のスペクトル密度を有する化学的背景雑音によって制限される。化学的背景雑音は以下のような方法で低減してもよい:イオン分子の化学反応、すなわちイオン搬送インターフェース内での持続的かつ穏やかなイオン加熱による有機イオン群の除去、差動イオン移動度分離、中間の弱い分裂を伴う二重工程質量分離、単独に荷電されたイオンを検出器の閾値で抑制、単独に荷電されたイオンをRFQイオンガイドの出口にある弱い障壁で抑制、等。
直列型。四重極フィルタ、直線イオン捕捉器、質量依存連続放射を備えるイオン捕捉器、または飛行時間型質量分離器を備えるイオン捕捉器等の場合、さらに以下の群の試料分離の工程を用いるときはスペクトル密度を下げてもよい:クロマトグラフまたは二重クロマトグラフ分離、イオン移動度分離または差動イオン移動度分離、またはイオンの質量分析分離。MS−MS目的の場合、イオン分離器の後にイオン分裂セルが続く。
図7を参照すると、直列型質量分析計71は、イオン源72、第1の符号化パルス発生器78によって始動されるイオン捕捉器73、例示的イオン分離器としてのイオン移動度分析計(IMS)74、第2の符号化パルス発生器79によって始動されるOA75、EMS分析計76、およびスペクトル復号器77を備える。作動中は、パルス列発生器78、79は共に同期し、例えば第1の発生器78を、T=j×T+T×j×(j−1)のような時間列を有する第2の発生器79のn番目の開始ごとに始動して、両方の始動列内の時間間隔を確実に不均等にしてもよい。発生器78からのIMS列が、イオン捕捉器73からIMS74へのイオン入射を始動する。列の継続時間を約10msにしてIMS分離時間に一致させてもよく、パルス間隔を約1msにしてIMSの空間電荷処理能力を改善してもよい。IMS分離の後、継続時間が100〜200usのイオン束が形成される。イオンはOA75内へ取り込まれ、OA75は、第2の発生器79からのOAパルス列によって約10usの不均等な時間間隔で始動される。EMS検出器において信号がIMSの全体周期に対して取得され、複数のIMS周期に対して加算される。結果として、各イオン成分が約10個のIMSピークと約100個のEMSピークによって表わされることになり、検出器のダイナミックレンジが従来のIMS−TOFMS分析に比べて100倍改善される。
図7に戻って、実施形態71はIMS74とOA75の間に分裂セル80をさらに備えてもよい。分裂には、衝突誘起分離(CID)、表面誘起分離(SID)、光誘起分離(PID)、電子伝達分離(ETD)、電子捕捉分離(ECD)、および励起されたリュードベリ原子(Ridberg atom)またはオゾンによる分裂のような従来の分裂法を用いてもよい。タイミングチャートは同じで、OAは符号化されたパルスを頻繁に発生しながら(約100kHz)作動して、セル80の後のイオン流の素早い変化を追跡する。その結果、直列型71は全質量に疑似MS−MSを提供できる。そのような組み合わせでは、IMSは親イオンの大雑把だが高速の分離に用いられ(分解能は50〜100)、EMSは分裂スペクトルのさらに高速の取得に用いられる。必要に応じて、穏やかなイオン流の場合は第1の発生器の符号化を停止させてもよい。好ましくは、分裂セル(一般にRF装置)はイオン蓄積およびパルス抽出のための手段を備え、OAパルス列は抽出されたイオン束の継続時間に対して同期される。
図8を参照すると、直列型質量分析計の別の具体的な実施形態81は、イオン源82、主パルス発生器88によって始動されるイオン捕捉器83、IMS84、第2の符号化列発生器89によって始動されるOA85、M−TOF分析計86、スペクトル復号器87、およびM−TOF分析計86内の時間ゲート質量選別器90を備え、時間ゲート選別器は遅延列89Dによって始動される。作動中は、主パルス発生器88はIMS分離時間に一致する約10msの周期Tを有する。OA列発生器89は間隔が不均等でかつ主発生器の総継続時間T=tであるN個のパルスの列を形成する。遅延列89DはOA列発生器88と同期するが、時間tに比例する番号jのパルスτ−tの変化しやすい遅延を有する。時間選択ゲート90(例えばパルス化された双曲電線の組)はM−TOF86の1つのイオンサイクルの後に置かれ、イオンの(m/z)1/2に比例してイオンを飛行時間の特定の範囲を通過させることができる。その結果、選択されたイオンm/z範囲はIMS分離時間tと相関性を持つことになり、特定範囲の成分すなわち本方法が化学的雑音を低減する特定の荷電状態を分離する。
復号化アルゴリズム。符号化されたスペクトルの密度は一番の関心事項である。LC−MSおよびGC−MS分析の場合、我々は符号化されたスペクトルの密度を1〜10%と予測し、IMS−MSおよびMS−MSの場合、予測密度は0.01〜1%である。最適なピーク多重性Nはピーク多重性の起源に関わらず、スペクトル密度によって10s〜100sの範囲にばらつく。これは多重項形成または頻繁に符号化されるパルスのためである。
図6を参照すると、符号化された高速パルス発生による静電式質量分析におけるスペクトルの復号化のアルゴリズムが提供されており、以下の工程を含む:(a)パルス列が不均等な高速スペクトルを符号化する工程、(b)符号化されたスペクトル内のピークを抽出する工程、(b)複数のピークを開始パルス配列に従ってまたは多重項形成によって時間的に相隔たる複数の群に集める工程、(c)群内のピークの数および符号化されたスペクトルの総合特性を基に群を検証する工程、(d)群内のピークの特性の相関関係を基に個々のピークを検証する工程、(e)群の間のピークの重なりを見つけ、重なりを考慮または廃棄する工程、および(g)重ならないピークを用いてスペクトルを再生して復号されたスペクトルを得る工程。
ピーク抽出の工程とは、符号化されたスペクトル内のピークを見つけ、その時間重心、ピーク幅、積分を求めることを意味する。ピークの情報を集めて表にし、生スペクトルではなく表にされたピーク特性によって後続の工程が作動する。ピークを集めて群にする次の工程は、開始パルスの既知のタイミングおよび予測され校正された多重項形成を用い、そのためアルゴリズムは適宜相隔たるピークを探す。いくつかのピークは低強度の群の中で失われる可能性があること、またはピークの限られた部分が群の間の重なりに影響を受ける可能性があるがことが予測される。そのため、収集のアルゴリズムによって、全てのピークに対し多重項内で開始番号およびピーク数の複数の仮説が試される。アルゴリズムを実際に実施する場合、工程を加速するために、データ基準および指標化の原理を用いてもよい。好ましくはピーク収集の工程は、ピークを予め強度が重複する複数範囲に分類することによって加速される。範囲の幅は強度によって決まるが、低強度では広い統計的広がりが現れるためである。代わりに、収集の工程は相関アルゴリズムを用いる。
群の検証の次の工程は個々のm/z種に対応しそうな群を集めるために適用される。無関係な群から取られたピークとの弱い共鳴によって存在しない主要なm/z成分に対する間違った仮説が立てられる場合があるため、本工程が必要である。無関係な群との重なりによって形成される群の大多数をフィルタで除去するために、および無作為な雑音信号から形成される群を取り除くためにも、有効な群の中のピークの最小数に対する閾値を設定しなければならない。有効な群の中のピークの最小数のそのような基準は、符号化されたスペクトルの総合特性に基づいて形成されてもよく、そのような特性には全ての信号強度に対して測定される密度または特定のダイナミックレンジの幅内で測定される密度などがある。
群内の個々のピークを検証する工程は、他の群との重なりに由来する偽ピークをこれより前にフィルタで除去するために用いられる。群の特性を分析することによって、間違って取られたピークをこれより前に検出するために、以下の種々の基準を用いてもよい:そのようなピークは特徴のある強度をもちやすい(これらは複数の強度範囲の中の複数のピークを集める前工程においてフィルタで除去してもよい)、そのようなピークの幅は大きくなりやすい、またはその重心は群内の残りのピークと比べるとずれている。選別には群相関の原理を用いてもよい。強いピークをこれより前に分析することによって、および後続の分析のための総合ピーク表からそれらを除去することによって、間違って取られたピークの選別を支援してもよい(上記の方法は降順の強度範囲で機能する)。この選別を、主要な成分を判定する過程が完了した後に反復して繰り返してもよい。
本アルゴリズムを、画像基板のような複数の演算素子を搭載した基板または複数の演算素子を搭載したPC内の並行処理を用いることによって加速することができる。そのような並行処理は、例えば群の検証の工程またはピークを降順の強度範囲の群に集める工程に適用できる(各演算素子が別々の強度範囲を分析する)。代わりに、群の間を、広い時間間隔を基にした粗いスペクトルに分解することによって分割できる。一例として、開始パルスの間隔が10〜11usの間で変化すると、10.5usだけ隔てられた1usの間にスペクトルを分析できることがわかる。
基準。群の検証に対し(重なりを除去または最終的に部分的な重なりを解析する前に)、符号化されたスペクトルの総合特性に基づいて基準を選択しなければならない。基準は、観察されたスペクトル密度強度Dおよび記録された符号化されたスペクトル内のイオンの総数に基づくことができる(全体信号から評価される)。次にそのような基準を用いて、群内のピークの必要な最小数を計算して正しい群を検討するか、言い換えれば偶発的な重なりだけが集められた誤った群の可能性を妥当な程度に最小化する。群内の誤った抽出の平均数は、Hは約P×N×W/TまたはHは約P×N/Bと推定することができ、ここにPは記録された符号化されたスペクトル内のイオンピークの数、Nは予測されるピークの多重性すなわち多重項ΔM内のピーク数と列内のパルスの数Sの積、すなわちN=ΔM×S、Wは強いピークの基部の幅、Tはスペクトル長さ、およびBはそのスペクトル長さ内で可能なピークの場所の数、すなわちB=T/Wである。しかし、群ごとに実際に発生する誤った抽出数には統計的なばらつきがあり、誤った仮説のうちのほとんどを除去するには(試験される群は多数)群内のピークの最小数Cの統計的な基準閾値を推定して、検証された群を検討しなければならない。単純な推定としては、平均がHに等しいポアソン分布において、Cが当たる確率はP(H、C)=H×exp−H/C!である。さらに詳しく計算して誤りの群を1個未満しか抽出しないためには、以下の基準を満足しなければならない。
B×C ×CB−N P−C<C
ここにC はn個の要素によるm個の要素の組による二項係数である。
ピークの重なりを廃棄する工程は、データを基にした方法を用いて実行してもよく、すなわち種々の群のスペクトルのピークにポインタを積み重ねることによって実行してもよい。本アルゴリズムの信頼性は、重なりを廃棄した後にピークの群の有効性を更新し、主要要素を見つけるというサイクルを繰り返すことによって改善される。性能を上げるために、試験されたピークの強度範囲を減らして本アルゴリズムを繰り返してもよい。背景雑音減算またはクロマト質量分析データの解析の前工程によって復号化を改善してもよい。
MS−MSのためのアルゴリズム。上記アルゴリズムは主に、強いピークを有する符号化されたスペクトルの分析用に作成される。時間的効果がある方法では、MS−MSスペクトル内の小数のイオンを活用してもよい。本発明の4番目の態様によれば、時間−符号化された高速パルス発生を用いる静電式分析計(E−TrapおよびM−TOF)の低強度スペクトルを復号化するためのアルゴリズムが提供される。復号化のアルゴリズムは以下の工程を含む:(a)符号化されたスペクトル内の全ての範囲に対するパルス配列に従って相隔たる信号を加算する工程、(b)所定の閾値未満の非ゼロ信号をいくつか有する合計を除去する工程、(c)加算されたスペクトル内でピークを検出して正しいピークの仮説を立てる工程、(d)各仮説に対応する信号の群を符号化されたスペクトルから抽出する工程、(e)群の間の信号の重なりを論理的に分析し廃棄する工程、および(f)重ならない信号を用いて正しいスペクトルを再構築する工程、さらにE−Trapの場合には(g)多重項内のピーク分布を考慮するスペクトルをさらに再構築する工程。
信号を加算する工程(a)は直線掃引のように実行してもよく、符号化されたスペクトル内の各時間範囲に対し、パルス間隔に対応する間隔を有する信号が加算される。そのような加算は次のパルス列内に広がる信号すなわち加算されたスペクトルの中のスペクトルの追い越しを考慮しなければならない。各範囲あたり100個を加算した10+6個の範囲全体の掃引を複数の筋に分割して並行処理することができる。具体的な一アルゴリズムでは、ピーク基部の幅に等しい大きな範囲に分けることによって加算をさらに加速してもよい。
一般的なMS−MS符号化スペクトルの場合、1,000イオンが時間目盛りの0.1%を占める。群内で1回の誤りの抽出の確立は列の中の100パルスに対して10%未満であるため、群の中での誤りの抽出の平均数は0.1未満である。したがって、直接加算には、予想される重なりを入念に分析せずにまず主要要素を同定(すなわち群の同定)することが期待される。この段階では、単一のイオン信号を1ビットの信号に変換するのが好ましく、そのようにして単一のイオンあたりの検出器の応答による付加的雑音を除去する。代わりに、信号をTDCによって記録することもできる。群あたりの平均抽出数を1未満と仮定すると、群の中に8個の偽ピークがある確立は10−5未満であるから、10+5個の潜在的なピーク位置を考慮すると、1つ未満の偽の群が現れることになる。偽の群は群を検証する段階、ピークを検証する段階、または群の重なりを考慮する段階で除去される可能性が高い。すなわち本アルゴリズムは、開始列あたり合計で約8イオンの信号を有する開始ごとに0.08イオンしか有しない種を信頼性高く検出できる。これは特筆すべき成績であって、符号化し復号化するにも関わらず、開放E−Trapのピーク検出の閾値が従来のTOFの感度(約5イオン/ピーク)に近づくと同時に、符号化された高速パルスを発生するEMSがパルス変換器のさらに高い負荷サイクルおよび検出器のさらに大きなダイナミックレンジをもたらす。両方の利得は約N=ΔM×Sである。
アルゴリズムを試験する。我々の試験では、図5に示す本アルゴリズムは1msスペクトルに約10秒かかる。しかし、この処理時間はNVIDIA TESLA M2070などの複数の演算素子を搭載する基板で並行処理することによって3〜4桁短縮されると予測される。一例として、各演算素子コアが、個々の加算された符号化されたスペクトルすなわち時間的に隔てられたスペクトル区分を分析してもよく、または少なくとも別々のピーク群を並行して検証してもよい。その結果、スペクトルの復号化は、高速MS−MS、表面プロファイィング、またはIMS−MSなどのいかなる予測される用途に対しても、もはや取得速度を制限することはない。
図9を参照すると、上記アルゴリズムを大きなピーク強度のMS−MSスペクトルの例に適用した高分解能TOFスペクトル復号化の結果が示されている。開裂片の総数が152に等しいa、b、x、およびy開裂片の可能性を仮定して、ペプチドYEQTVFQおよびLDVDRVLVMの配列に基づいてスペクトルが発生される。主要開裂片のスペクトルの強度は、0.01〜3,000イオン/ピーク/開始(複数の列で累積)の5.5桁の変化の範囲に不規則に分布する。FWHM=3nsのガウスピーク形状を仮定して、開始パルスごとの信号が統計的に発生される。不均等な100パルスの配列がT=j×T+j×(j−1)Tのスペクトルの符号化に適用され、ここにT=10usおよびT=5nsである。復号化のアルゴリズムは開始の時間間隔の知識と共に用いられ、元のスペクトルのいかなる知識も不要である。グラフAは単一の開始パルスあたり統計的に発生されたスペクトルの1つを示す。縦の目盛りはピーク高さに対応し、イオンの数である。そのようなスペクトルは後方パルスを有する従来技術のM−TOFに対応することになる。グラフBは100個の個々のスペクトルの純粋な加算を符号化せずに示す。そのようなスペクトルは従来のM−TOFで長い取得で得ることができる。グラフCは100個の不均等に分布したパルスの列によって符号化されたスペクトルを示す。時間目盛りの全体的な密度はわずか3%である。グラフDはスペクトル密度の視覚的印象を提供するために、符号化されたスペクトルを水平方向に拡大して示す。スペクトルを復号化するために、我々は図5のアルゴリズムを2段階で用いた。第1の段階では、ピーク検出が3イオンのイオン閾値を用いて行われた。群の妥当性に対しては、我々は群の中の30を超えるピークの存在を必要とする。この段階では、本アルゴリズムは110の質量成分を検出した。次に、対応するピークが符号化されたスペクトルから除去された。第2の段階では、閾値が0.5イオンに設定され、群の妥当性の基準が群の中に5個のピークに設定された。第2の段階によって、他に24の質量成分が検出できた。本アルゴリズムは開始あたり0.05イオン未満の範囲にある18の質量成分を検出しなかった。
図10−Aを参照すると、復号化の結果が2つの対称位置にあるスペクトルによって示されており、上のスペクトルは真の合計(あたかもM−TOFがスペクトルを100倍長く取得しているような)に対応し、下のスペクトルは符号化/復号化スペクトルに対応する。本アルゴリズムは除去された重なりピークの強度を補償しないためにわずかな強度の低下があるものの、全ての強い質量成分は再生されている。図10−Bを参照すると、各強度範囲内のイオンの数を示すヒストグラムが示されている。ヒストグラムの暗い部分は再生された実際のピークに対応し、ヒストグラムの網掛け部分は実際に加算されたスペクトルの中には現れない再生されなかったピークに対応する。これらのピークは5.5桁の中に分布している(水平軸は対数軸)。この分布は高強度側では変わらないが(5〜10+6イオン)、100パルス周期あたり5イオン未満の低強度側ではいくつかのピークが失われている。これは0.05イオン/開始の信号の信頼性が高い検出に対応する。すなわち本発明は、直交加速器の負荷サイクルが1%未満である従来のM−TOFに比べて感度で約100倍の利得をもたらす。本アルゴリズムによって、高強度信号の場合にダイナミックレンジの少なくとも5桁の範囲で信頼性のあるスペクトルの復号化が可能になる。LC−MS分析の場合、ダイナミックレンジは溶媒およびイオン源材料からの化学的雑音による制限を受けやすい。それでもなお、本発明による方法はデータ取得の速度を上げ、これはLC−IMS−MS LC−FAIMS−MS、またはMS−MSのような直列構成にとって、または試料のプロファイリングにとって重要である。
図11を参照すると、0.01〜10イオン/開始の低いピーク強度のMS−MSスペクトル例におけるE−TOF(ΔM=1)スペクトル復号化の結果が示されている。このスペクトルは開裂片の総数が100に等しいペプチドYEQTVFQの配列に基づいて発生される。開裂片の強度は不規則に3桁の範囲に分布する。スペクトルを符号化するために不均等な100個のパルスの配列が適用される。上記試験と同様に、グラフAは単一の開始パルスあたり統計的に発生されたスペクトルの例を示し、グラフBは100個の個々のスペクトルを符号化せず単に加算したものを示し、グラフCは100個のパルスが不均等に分布しかつ時間目盛りの全体密度が1.25%である列によって符号化されたスペクトル示し、グラフDは、スペクトル密度の視覚的印象を提供するために符号化されたスペクトルを拡大したものを示す。スペクトルを復号化するために、我々は図5に示す工程が1つの同じアルゴリズムを適用し、ここに群の妥当性に対しては群の中に3を超えるピークの存在だけを必要とする。
図12−Aを参照すると、復号化の結果が2つの対称位置にあるスペクトルによって示されており、上のスペクトルは真の合計(あたかもM−TOFがスペクトルを100倍長く取得しているような)に対応し、下のスペクトルは符号化/復号化スペクトルに対応する。図12−Bは、低強度のピークの外観とはいくらか異なる縦の目盛りの拡大を示す。図12−Cは信号再生のヒストグラムを示し、ここに水平の対数目盛りは、係数2にほぼ対応するピーク強度範囲を表す。ヒストグラムの暗い部分は再生された実際のピークに対応し、ヒストグラムの網掛け部分は実際に加算されたスペクトルの中には現れない再生されなかったピークに対応する。この分布は高強度側では変わらないが(5〜1,000イオン)、複数ピークの約半分が3〜5イオンの強度範囲で失われている。
試験されたアルゴリズムは、開示されたアルゴリズムを単純化したものである。これらの試験の中で我々は、ピークの範囲分け、群内の除去済みピークの分析、重なっているピークのダイナミックレンジの違いのを考慮しておらず、分解可能なピークであっても部分的な重なりの再生その他を試みていない。同時に、本試験はLC−MSデータにとって典型的な現実に起こる化学的雑音を考慮しておらず、単一のイオンごとの検出器の応答の変動を考慮していない。それでもなお、本試験によって本方法の実現可能性が確認され、符号化されたピークが10+4個存在するときでさえ、まばらなスペクトルを高分解能のスペクトルに形成できることが証明された。
好ましい態様を参照して本発明を説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく形状および細部の種々の変形例が可能であることは同業者には明らかである。

Claims (23)

  1. (a)イオンパケットを形成するパルスイオン源と、
    (b)イオン検出器と、
    (c)多重経路静電式質量分析計であって、その中をZ方向に通過するイオンパケット経路および局所的に直交する方向Xに等時性のイオン振動を提供する多重経路静電式質量分析計と、
    (d)前記パルスイオン源またはパルス変換器を、前記検出器のピーク時間幅ΔT内で固有の任意の対の開始パルス間の時間間隔で始動させるパルス列発生器と、
    (e)パルス列の継続時間に検出器信号を記録し、複数の前記パルス列に対応するスペクトルを加算するデータ取得装置と、
    (f)前記データ取得装置および前記パルス列発生器の両方を始動させる主パルス発生器と、
    (g)前記検出器信号および前記開始パルスの所定の時間間隔に関する情報に基づいて質量スペクトルを再構築するスペクトル復号器と、
    を備える静電式質量分析計。
  2. パルス列内で任意の異なる数の開始パルスi、jに対し、開始時間T、Tは以下の条件の群:(i)|(Ti+1−T)−(Tj+1−T)|>ΔT、および(ii)T=j×(T+T×(j−1))(ただし1us<T<100usかつ5ns<T<1,000ns)のうちの1つを満たす、請求項1に記載の装置。
  3. 前記静電式分析計の複数の電極は平行でZ方向に直線的に延びて平面対称性の二次元静電場を形成する、請求項1および2の何れか1項に記載の装置。
  4. 前記静電式分析計は平行かつ同軸の複数の環状電極を備えて、円筒対称性の二次元静電場を有するドーナツ状の容積を形成する、請求項1および2の何れか1項に記載の装置。
  5. 前記ドーナツ状の容積の平均半径は単一振動あたりのイオン経路の1/6よりも大きく、前記分析計は半径方向のイオン偏向のための少なくとも1つの環状電極を有する、請求項4に記載の装置。
  6. 前記静電式分析計は以下の電極の組の群:(i)無電場領域によって隔てられた少なくとも2つの静電式イオンミラー、(ii)少なくとも2つの静電セクター、および(iii)少なくとも1つのイオンミラーおよび少なくとも1つの静電セクターのうちの1つを備える、請求項1〜5の何れか1項に記載の装置。
  7. 前記静電式分析計は非固定イオン経路を有する開放イオン捕捉器であって、前記分析計内のイオン振動数Mは以下の幅ΔMの群:(i)2〜3、(ii)3〜10、(iii)10〜30、および(iv)30〜100のうちの1つを有する、請求項1〜6の何れか1項に記載の装置。
  8. 前記静電式分析計は、固定飛行経路を有する多重経路飛行時間型質量分析計ならびに、Z方向のイオン発散を制限するための以下の手段の群:(i)一組の周期レンズ、(ii)前記Z方向に変調された静電ミラー(iii)前記Z方向に変調された静電セクター、および(iv)少なくとも2つのスリットのうちの1つを備える、請求項1〜7の何れか1項に記載の装置。
  9. 前記パルス源は以下の直交パルス変換器の群:(i)直交パルス加速器、(i)無格子直交パルス加速器、(iii)パルス化直交抽出を有する高周波イオンガイド、(iv)パルス化直交抽出を有する静電式イオンガイド、および(v)上流に高周波イオンガイドを重ねた上記加速器のうちの1つを備える、請求項1〜8の何れか1項に記載の装置。
  10. 前記変換器は前記Z軸に対し相対的に傾けられ、イオンが前記静電式分析計内で少なくとも1回反射または旋回した後に、追加の偏向器が前記イオンパケットを同じ角度に誘導する、請求項9に記載の装置。
  11. 質量スペクトルを分析する方法であって、
    (a)パルス源を頻繁に脈動させる工程、
    (b)不均等な間隔の複数のパルス列により信号を符号化する工程、
    (c)イオンパケットを、前記パケットが直交するX方向に等時性振動するように、静電式分析計内をZ方向に通過させる工程、
    (d)列の継続時間に対応する複数の長いスペクトルを取得する工程、および
    (e)所定の不均等なパルス間隔に関する情報を用いて後続のスペクトルを復号化する、
    工程を含む方法。
  12. 以下の工程の群:(i)前記列の間の重なっているピークを廃棄する工程、および(ii)関連する前記列の中の重ならないピークから推定される情報に基づいて部分的に重なっているピークを分離し、そのように分離されたピークを前記関連する列に割り当てる工程のうちの1つをさらに含む、請求項11に記載の方法。
  13. 前記パルス列内で任意の異なる数の開始パルスi、jに対し、開始時間T、Tは以下の条件の群:(i)||Ti+1-T|-|Tj+1-T||>ΔT、および(ii)Tj=j×T+T×j×(j-1)(ただしT>>T、Tは10〜100usかつTは5〜100ns)のうちの1つを満たす、請求項11および12の何れか1項に記載の方法。
  14. 前記パルス列内の開始パルスSの数が以下の群:(i)3〜10、(ii)10〜30、(iii)30〜100、(iv)100と300の間、および(v)300を超える数のうちの1つである、請求項11〜13の何れか1項に記載の方法。
  15. 前記パルスイオン源と前記検出器の間のイオン経路は距離ΔM内の整数回の振動Mに等しく、反射の数の中の前記広がりΔMは以下の群:(i)2〜3、(ii)3〜10、(iii)10〜30、および(iv)30〜100のうちの1つである、請求項11〜14の何れか1項に記載の方法。
  16. 以下の工程の群:(i)イオン源の放射力を20mmeV未満に調整する工程、(ii)20mm×mrad未満の角度的−空間的発散を提供するまで加速する工程、(iii)少なくとも1つのレンズによってパケットの発散を1mrad未満に調整する工程、および(iv)前記静電式分析計内の少なくとも2つのスリットによって角度的発散を制限する工程のうちの少なくとも1つを含む、請求項11〜15の何れか1項に記載の方法。
  17. 前記静電式分析計の静電場は電位が異なる少なくとも4つの電極によって形成され、前記静電場は、テイラー展開の第n次までのイオンパケットの空間的、角度的、およびエネルギ的拡散における小さなずれに対し相対的に飛行時間型合焦を提供するように、加速レンズの少なくとも1つの空間的合焦静電場を備え、かつ収差補償の前記次数は以下の群:(i)少なくとも1次、(ii)全ての広がりに対し相対的にかつ公差項を含む少なくとも2次、および(iii)イオンパケットのエネルギ的広がりに対し相対的に少なくとも3次のうちの1つである、請求項11〜16の何れか1項に記載の方法。
  18. 前記パルスパケット形成の工程の前にイオン分離工程をさらに含み、前記上流の分離の工程は、以下のイオン分離の工程の群:(i)イオン移動度分離工程、(ii)差動移動度分離工程、(iii)1回に1つのm/z成分を通過させるフィルタ質量分析計の工程、(iv)イオン捕捉後に質量依存型の連続放出工程、(v)飛行時間型質量分離を有するイオン捕捉工程、および(vi)後にイオン分裂が続く上記分離工程のうちの少なくとも1つを含む、請求項11〜17の何れか1項に記載の方法。
  19. 前記先行するイオン分離工程を同期させるために開始パルスの列の追加的な第2の符号化列を含み、前記第2の列のパルス間隔は不均等であり、前記第2の列の継続時間は前記先行するイオン分離の継続時間に相当する、請求項18に記載の方法。
  20. 符号化された高速パルス発生で静電式質量分析におけるスペクトルを復号化するためのアルゴリズムであって、
    (a)符号化されたスペクトル内のピーク選択工程、
    (b)パルス配列に従ってまたは多重項形成によって複数のピークを時間的に相隔たる複数の群に集める工程、
    (c)前記複数の群を、前記群の特性および前記符号化されたスペクトルの特性を基に検証する工程、
    (d)前記各群の中の個々のピークをピーク特性の相関関係を基に検証する工程、
    (e)前記群の間でピークの重なりを見つけ、前記重なりを廃棄する工程、および
    (f)重ならないピークを用いてスペクトルを再生する工程、
    を含むアルゴリズム。
  21. 前記ピークは複数の範囲のピーク強度に分類され、特定された高強度のピークは低強度範囲の分析時に除かれる、請求項20に記載のアルゴリズム。
  22. 以下の追加の工程の群:(i)前記スペクトルの復号化に先立つ直列型質量分析スペクトルの中の背景雑音減算工程、(ii)スペクトルの復号化に先立つクロマト質量分光分析データの解析工程、および(iii)個々のピークの間の相関関係の判定工程のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項20および21の何れか1項に記載のアルゴリズム。
  23. 符号化された高速パルス発生で静電式質量分析測定における低強度スペクトルを復号化するためのアルゴリズムであって、
    (a)符号化されたスペクトルの全ての範囲に対し、開始パルス間隔に従って相隔たる信号を加算する工程、
    (b)所定の閾値未満の非ゼロ(0)の信号をいくつか有する合計を除去する工程、
    (c)前記加算されたスペクトル内のピークを検出して正しいピークの仮説を立てる工程、
    (d)前記符号化されたスペクトルから各仮説に対応する信号の群を集める工程、
    (e)前記符号化されたスペクトルの全体特性を基に前記群を検証する工程、
    (f)前記群の間でピークの重なりを見つけ、前記重なりを廃棄する工程、および
    (g)重ならない信号を用いて正しいスペクトル再構築する工程、
    を含むアルゴリズム。
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