JP2013524839A - リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスの液体/固体分離法 - Google Patents

リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスの液体/固体分離法 Download PDF

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Abstract

リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物が発酵培地に含まれる場合、生体触媒産生から得られるブロスは複雑で低濾過性である。加熱処理は濾過性を増大させて、液体画分の固体画分からの効率的な分離を可能にすることが分かり、液体画分は水の再循環およびシロップ生成のためにさらに処理される。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体を参照によって本明細書に援用する、2010年4月28日に出願された米国仮特許出願第61/328804号明細書の優先権を主張する。
本発明は、発酵プロセス技術分野に関する。具体的には、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスの液体および固体画分への分離効率が加熱処理の適用によって増大することが発見された。
農業残渣、木材、林業廃棄物、製紙業汚泥、および都市および工業固形廃棄物などのセルロースおよびリグノセルロース系原材料および廃棄物は、燃料として使用されるアルコールおよびその他の化学薬品を含む価値ある製品を製造するための、潜在的に大量の再生可能な原材料を提供する。セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンを含んでなる炭水化物ポリマーから構成される、セルロースおよびリグノセルロース系原材料および廃棄物は、概して多様な化学的、機械的、および酵素的手段によって処理して、加水分解生成物中のヘキソースおよびペントース糖類を主として放出させ、次に生体触媒を使用してそれを発酵させて有用な製品を製造し得る。
加水分解生成物は、加水分解バイオマス中に存在する代謝可能な糖類に加えて、生成物単離および後処理過程まで存続した未消化リグニンおよびその他のバイオマス構成要素を含む。主生成物の他に、生体触媒およびその他の発酵ブロス構成要素と混合されたこれらの加水分解生成物構成要素を処理しなくてはならない。特に製造量が非常に大きい燃料アルコール類の製造においては、正味水使用量が重要であり、燃料アルコールを製造するための化石エネルギーの使用量についても同様である。正味水使用量を最小化するために、生成物を除去した発酵ブロスをプロセスの初期段階に再循環してもよく、または固形分をこのブロスから分離し液体ストリームをプロセスの初期段階に再循環してもよい(逆戻し流(back−set)と称される)。また再循環に先だって、液体ストリームを様々な方法によって精製してもよい。リグニンを高比率で含有する固体ストリームは、動物飼料としては栄養価が低いが、製造工程全体で燃焼させてエネルギーを提供する、燃料として使用してもよい。
バイオマス加水分解生成物を含まない標準発酵ブロス、およびバイオマテリアル廃液流については取扱い手順が存在する。これらのシステム内の構成要素の混合物は、バイオマス加水分解生成物発酵ブロス中のものとは異なり、したがって加水分解生成物ブロス混合物の効率的な取り扱いに特に適した方法の開発が必要である。
ドライ製粉工程またはエタノール製造中の液体および固体画分の分離には、典型的に遠心分離が使用される。典型的に使用される高速水平デカンタ型遠心分離機は、懸濁固形分を除去するのには効率的でなく、固形分を脱水するのには効率的でない。国際公開第2008076716号パンフレットは、遠心分離機からの遠心分離液中の固形分凝集を改善して、引き続く固体/液体分離を助ける、アニオン性ポリマー凝集剤の使用を開示する。
英国特許第1413236号明細書にあるように、既知のシステム内の処理において通常は凝集剤の存在下で熱が使用されてもよく、微生物産生L−リジンの回収において、表面活性剤を含む培養ブロス(非加水分解生成物)の70℃〜95℃の温度での10〜30分間の加熱が使用されていてもよい。米国特許第4374981号明細書は、発酵ブロスを90℃〜110℃で5〜10分間加熱するステップと、限外濾過によって分離するステップを含む、発酵ブロス(非加水分解生成物)からイノシンおよびグアノシンを分離する方法を開示する。
US2007017825は、養豚廃棄物、チーズホエー、および家畜バイオマテリアル廃棄物などのバイオマテリアル廃液流を処理する方法を開示する。方法は、バイオマテリアル廃液流の少なくとも一部を分解し、発酵工程に再導入してもよいその他の構成要素または材料にするステップを含む。処理は、pH調節および加熱処理と、それに続く遠心分離沈殿法などによる、密度に基づく沈殿物/凝集体除去を含んでもよい。
特に大量のブロスを処理しなくてはならない場合、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物を含む発酵ブロスからの生産サイドストリームを処理するための、効率的かつ低コストの方法に対する必要性がなおもある。
本発明は、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスの処理における、効率的な液体/固体分離法を提供する。
したがって本発明は、
a)標的生成物を含んでなるリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスを提供するステップと;
b)場合により、(a)のリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスから標的生成物を除去して枯渇ブロスを生成するステップと;
c)それぞれ(a)の出発ブロスまたは(b)の出発枯渇ブロスと比較して、少なくとも約20%低い濾過ケーク抵抗を有するブロスまたは枯渇ブロスを生成するのに十分な温度と時間で、(a)のブロスまたは(b)の枯渇ブロスを処理するステップと;
d)(c)の処理されたブロスまたは枯渇ブロスをフィルターに通過させ、それによって固体画分から液体画分を分離するステップと
を含んでなる、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスから液体画分を分離する方法を提供する
別の実施形態では本発明は、
a)エタノール生成物を含んでなるリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスを提供するステップと;
b)(a)の出発ブロスと比較して、少なくとも約20%低い濾過ケーク抵抗を有する加熱ブロスを生成するのに十分な温度と時間で、(b)の発酵ブロスを処理するステップと;
c)(b)の加熱ブロスをフィルターに通過させ、それによって固体画分から液体画分を分離するステップと;
d)(c)の液体画分を蒸留して、エタノール生成流および残留液体を生成するステップ
を含んでなる、エタノールを製造する方法を提供する。
別の実施形態では本発明は、
a)エタノール生成物を含んでなるリグノセルロース系バイオマス加水分解産物生成物ブロスを提供するステップと;
b)(a)のリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスを蒸留して、エタノール生成流および全蒸留廃液を生成するステップと;
c)(b)の出発全蒸留廃液と比較して、少なくとも約20%低い濾過ケーク抵抗を有する全蒸留廃液を生成するのに十分な温度と時間で、(b)の全蒸留廃液を処理するステップと;
d)(c)の全蒸留廃液をフィルターに通過させ、それによって固体画分から液体画分を分離するステップ
を含んでなる、エタノールを製造する方法を提供する。
さらなる実施形態では本発明は、
a)ブタノール生成物を含んでなるリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスを提供するステップと;
b)(a)のリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスからブタノールを抽出して、ブタノール生成流および枯渇ブロスを生成するステップと;
c)(b)の出発枯渇ブロスと比較して、少なくとも約20%低い濾過ケーク抵抗を有する枯渇ブロスを生成するのに十分な温度と時間で、(b)の枯渇ブロスを処理するステップと;
d)(c)の枯渇ブロスをフィルターに通過させ、それによって固体画分から液体画分を分離するステップ
を含んでなる、ブタノールを製造する方法を提供する。
配列の簡単な説明
以下の配列は、37C.F.R.1.821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列開示を含む特許出願の要件−配列規則」)を満たし、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)およびEPOおよびPCTの配列表要件(規則5.2および49.5(aの2)、および実施細則第208号および附属書C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および型式は、37C.F.R.§1.822で述べられる規則に従う。
表1 糖化で使用されるグリコシルヒドロラーゼのコード領域およびタンパク質の配列番号
Figure 2013524839
寄託株に関する情報
出願人らは、「特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約」の条項に従って、以下の生物学的寄託を行った。
Figure 2013524839
発明の詳細な説明
リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物が発酵培地に含まれる場合、培地中の生体触媒による生成物の製造から得られる発酵ブロスは、生成物、細胞、リグニン、およびその他のバイオマス構成要素の混合物を含む複合スラリーである。リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスからの液体および固体画分分離は重要な加工段階であり、それはスラリー混合物の複雑な組成のために困難である。加熱処理の適用を通じて、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスは、効率的に濾過されて、直接使用されるか、またはさらに処理される液体および固体画分を生成する形態に転換し得る。分離液体画分中の液体は、さらに処理して発酵工程中で再循環させ得る。液体再循環は、商業的方法において、特にバイオ燃料エタノールおよびブタノールの製造をはじめとするセルロース系アルコール製造などにおけるように、高容積の液体を使用する商業的発酵工程において、有益である。
特許請求の範囲および明細書の説明では、以下の定義と略語を使用する。
本明細書の用法では、「comprises」、「comprising」、「includes」、「including」、「has」、「having」、「contains」または「containing」またはあらゆるその他のバリエーションは、非排他的包含をカバーすることが意図される。例えば、構成要件の一覧を構成する組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもこれらの構成要件のみに限定されず、明示的に列挙されない、またはこのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に固有でない、その他の構成要件を含んでもよい。さらに特に断りのない限り、「or」は排他的orでなく、包括的orを指す。例えば条件AまたはBは、以下のいずれかによって満たされる。Aが真で(または存在し)Bが偽であり(または存在せず)、Aが偽で(または存在せず)Bが真であり(または存在する)、AおよびBの双方が真である(または存在する)。
また、本発明の構成要件または構成要素に先立つ不定冠詞「a」および「an」は、構成要件または構成要素の事例(すなわち発生)数に関して非制限的であることが意図される。したがって「a」または「an」は、1つまたは少なくとも1つを含むものと解釈すべきであり、構成要件または構成要素の単数形は、数が単数であることを明らかに意味する場合を除いて、複数もまた含む。
「発明」または「本発明」という用語は、本明細書の用法では非限定的用語であり、特定の発明のいずれかの単一の実施形態を指すことは意図されず、本明細書および特許請求の範囲に記載される全ての可能な実施形態を網羅する。
本明細書の用法では、用いられる本発明の成分または反応物質の量を修飾する「約」という用語は、例えば実際に濃縮物または調製溶液を製造するために使用される典型的な測定および液体取り扱い手順を通じて;これらの手順における不注意による誤りを通じて;組成物を製造しまたは方法を実施するのに用いられる成分の、製造または原料または純度の違いを通じて、生じ得る数量の変動を指す。「約」という用語はまた、特定の初期混合物に起因する組成物の異なる平衡条件が原因で、異なっている量を網羅する。「約」という用語によって修飾されるか否かを問わず、特許請求の範囲は、量の同等物を含む。一実施形態では、「約」という用語は、報告される数値の10%以内、好適には報告される数値の5%以内を意味する。
「発酵性糖」という用語は、発酵過程で微生物が炭素源として使用し得る、オリゴ糖類および単糖類を指す。
「リグノセルロース系」という用語は、リグニンおよびセルロースの双方を含んでなる組成物を指す。リグノセルロース系材料はまた、ヘミセルロースを含んでなってもよい。
「セルロース系」という用語は、セルロースと、ヘミセルロースをはじめとする追加的構成要素とを含んでなる組成物を指す。
「糖化」という用語は、多糖類からの発酵性糖の生成を指す。
「前処理バイオマス」という用語は、糖化に先だって前処理されたバイオマスを意味する。前処理は、物理的、熱的または化学的処理、およびそれらの組み合わせの形態をとってもよい。
「ブタノール」という用語という用語は、イソブタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、またはそれらの組み合わせを指す。
「リグノセルロース系バイオマス」という用語は、あらゆるリグノセルロース系材料を指し、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、デンプン、オリゴ糖類および/または単糖類を含んでなる材料を含む。バイオマスはまた、タンパク質および/または脂質などの追加的構成要素を含んでなってもよい。バイオマスは単一起源に由来してもよく、またはバイオマスは1つ以上の起源に由来する混合物を含んでなり得る。例えばバイオマスは、トウモロコシ穂軸およびトウモロコシ茎葉、または草および葉の混合物を含んでなることもあり得る。リグノセルロース系バイオマスとしては、バイオエネルギー作物、農業残渣、都市固形廃棄物、工業固形廃棄物、製紙業汚泥、庭ごみ、木材および林業廃棄物が挙げられるが、これに限定されるものではない。バイオマスの例としては、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ苞葉やトウモロコシ茎葉などの農作物残渣、草、小麦藁、大麦藁、干し草、稲藁、スイッチグラス、古紙、サトウキビバガス、ソルガム植物材料、ダイズ植物材料、穀類の製粉から得られる構成要素、樹木、枝、根、葉、木片、おがくず、灌木および低木、野菜、果物、および花卉が挙げられるが、これに限定されるものではない。
「リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物」という用語は、リグノセルロース系バイオマスの糖化から得られる生成物を指す。バイオマスはまた、糖化に先だって前処理または予備加工されてもよい。
「リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロス」という用語は、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物を含んでなる培地中における、生体触媒の増殖と産生から得られる生成物を含有するブロスである。このブロスは、生体触媒によって消費されないリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物の構成要素、ならびに生体触媒それ自体、および生体触媒によって生じる生成物を含む。
「スラリー」という用語は、不溶性物質と液体の混合物を指す。スラリーはまた、高レベルの溶解固形分を含有してもよい。スラリーの例として、糖化ブロス、発酵ブロス、および全蒸留廃液が挙げられる。
「全蒸留廃液」という用語は、蒸留缶出液を指す。全蒸留廃液は、高沸点物質および蒸留供給ストリームのあらゆる固形分を含有する。全蒸留廃液は、枯渇ブロスの一種である。
「薄い蒸留廃液」という用語は、全蒸留廃液、発酵ブロス、または生成物枯渇発酵ブロスの固体/液体分離から得られる液体画分を指す。
「標的生成物」という用語は、本明細書の用法では、発酵中に産生微生物宿主細胞によって産生されるあらゆる生成物を指す。標的生成物は、宿主細胞中の遺伝子改変酵素経路の結果であってもよく、または内在経路によって生成されてもよい。典型的な標的生成物としては、酸、アルコール類、アルカン、アルケン、芳香族、アルデヒド、ケトン、バイオポリマー、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ビタミン、抗生物質、および医薬品が挙げられるが、これに限定されるものではない。
「生成物枯渇ブロス」または「枯渇ブロス」という用語は、本明細書では、生成流除去後のリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスを指す。
「濾過ケーク抵抗」または「ケーク比抵抗」という用語は、スラリー濾過性を定量化する高さ特定値を指す。本値は、スラリー濃度、粘度、圧力、および濾過面積から独立している。本値はRuthの式を使用して計算され、濾過装置の規模の変更に使用し得る。
Ruthの式:dt/dV=(μαavC/Δp)V+μRmΔ
式中、tは濾過時間(s)であり、Vはフィルター単位面積当たり濾液量(m3/m2)であり、Δpは濾過加圧力(Pa)であり、μは液体粘度(kg/ms)であり、μαavはケーク平均比抵抗m/kg)であり、Rmは濾材抵抗(m-1)であり、Cは濾液単位容積当たりの形成されたケーク質量(kg/m3)である。Yim et al.(Korean M.Chem.Eng.,18(5),741,(2001))を参照されたい。
「Xyn3」は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のGH10ファミリーキシラナーゼである。Xyn3(配列番号1;コード配列番号5)は、酵素の組み合わせが前処理バイオマスに、または単離ヘミセルロースに作用した際に、キシロビオシダーゼの存在下で、キシロースモノマー産生を増大させるその能力によって、エンドキシラナーゼ活性を有することが間接的に示された。
「Fv3A」は、フザリウム・ベルチシリオイデス(Fusarium verticillioides)のGH3ファミリー酵素である。Fv3A(配列番号2;コード配列番号6)は、p−ニトフェニル−β−キシロピラノシド、キシロビオース、ヘミセルロースからの混合直鎖キシロオリゴマーおよび分枝アラビノキシランオリゴマーを基質としたアッセイによって、β−キシロシダーゼ活性を有することが示された。
「Fv43D」は、フザリウム・ベルチシリオイデス(Fusarium verticillioides)のGH43ファミリー酵素である。Fv43D(配列番号3;コード配列番号7)は、p−ニトフェニル−β−キシロピラノシド、キシロビオース、または混合直鎖キシロオリゴマーを基質としたアッセイによって、β−キシロシダーゼ活性を有することが示された。
「Fv51A」は、フザリウム・ベルチシリオイデス(Fusarium verticillioides)のGH51ファミリー酵素である。Fv51A(配列番号4;コード配列番号8)は、p−ニトフェニル−α−L−アラビノフラノシドを用いたアッセイによって、および、エンドキシラナーゼの作用によってヘミセルロースから放出されたオリゴマーの組からのアラビノースの放出によって、L−α−アラビノフラノシダーゼ活性を有することが示された。
効率的な液体/固体濾過
本発明は、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスの処理、特に再循環のための液体ストリームの分離に関する。発酵培地中に発酵性糖類を提供するための、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物の使用は、製造工程全体中の液体ストリームの処理に困難さをもたらす。リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスは、発酵中に産生生体触媒によって代謝されないリグニンおよびその他のバイオマス構成要素を含有し、バイオマス加水分解生成物を含有しない発酵ブロスに典型的に見られるのとは異なる諸特性があるブロスがもたらされる。典型的に、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスは、非常に高い濾過ケーク抵抗(rc)を有し、約E17を上回るrc値を有して、液体/固体分離のためのブロスの濾過を非常に非効率的なものにする。形成された濾過ケークの高い流動抵抗のために、濾過は急速に妨げられて、液体はわずかしかフィルターを通過しない。この場合、機械的手段または逆流などによって濾過ケークを除去しなくてはならず、液体/固体分離工程の非効率を引き起こす。
本処理方法を使用することで、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスの濾過ケーク抵抗は少なくとも約20%低下し、それによって濾過効率が増大される。濾過ケーク抵抗は、下述するように、使用される特定処理条件次第で、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%以上低下させてもよい。濾過ケーク抵抗の50%の低下によって、濾過速度は約2倍増大する。濾過ケーク抵抗の75%の低下によって、濾過速度は約4倍増大する。したがって本加熱処理に従って、濾過速度のかなりの増大を達成し得て、それはリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスからの液体ストリーム処理の効率増大に実質的に寄与する。
リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロス
バイオマス加水分解生成物
リグノセルロース系バイオマスは、加水分解生成物中で発酵性糖類を製造するために当業者に知られているあらゆる方法によって処理してもよい。典型的には、バイオマスは、物理的および/または化学的処理を使用して前処理され、酵素的に糖化される。物理的および化学的処理としては、粉砕、製粉、切断、アンモニアまたはNaOHなどによる塩基処理、および酸処理が挙げられるが、これに限定されるものではない。参照によって本明細書に援用する、同一譲受人の同時係属中の米国特許出願公開第20070031918A1号明細書で開示されるように、特に有用なのは、アンモニアを含んでなる水溶液にバイオマスを接触させて、バイオマス−水性アンモニア混合物を形成する低アンモニア前処理であり、アンモニア濃度はバイオマス−水性アンモニア混合物のアルカリ性pHを保つのに十分であるが、バイオマス乾燥重量に対して約12質量%未満であり、バイオマスの乾燥重量はバイオマス−水性アンモニア混合物重量に対して少なくとも約15質量%固形分である。バイオマスはまた、典型的には前処理に先だって粒度が低減される。
酵素的糖化は、典型的にはセルロースおよびヘミセルロースを分解して、グルコース、キシロース、およびアラビノースをはじめとする糖類を含有する加水分解生成物生成するために、酵素共同体を利用する。糖化酵素については、Lynd,L.R.,et al.(Microbiol.Mol.Biol.Rev.,66:506−577,2002)でレビュ−される。
少なくとも1つの酵素が使用され、典型的には1つまたは複数のグリコシダーゼを含む糖化酵素共同体が使用される。グリコシダーゼは、二糖類、オリゴ糖類、および多糖類のエーテル結合を加水分解して、一般酵素群「ヒドロラーゼ」(EC3.)の酵素分類EC3.2.1.x(それぞれEnzyme Nomenclature 1992,Academic Press,San Diego,CA with Supplement 1(1993),Supplement 2(1994),Supplement 3(1995,Supplement 4(1997),およびSupplement 5[in Eur.J.Biochem.,223:1−5,1994;Eur.J.Biochem.,232:1−6,1995;Eur.J.Biochem.,237:1−5,1996;Eur.J.Biochem.,250:1−6,1997;およびEur.J.Biochem.,264:610−650 1999])に含まれる。本方法で有用なグリコシダーゼは、それらが加水分解するバイオマス構成要素によって分類し得る。本方法のために有用なグリコシダーゼとしては、セルロース−加水分解グリコシダーゼ(例えばセルラーゼ、エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β−グリコシダーゼ)、ヘミセルロース−加水分解グリコシダーゼ(例えばキシラナーゼ、エンドキシラナーゼ、エキソキシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、アラビノ−キシラナーゼ、マンナーゼ、ガラクターゼ、ペクチナーゼ、グルクロニダーゼ)、およびデンプン−加水分解グリコシダーゼ(例えば、アミラーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、イソアミラーゼ)が挙げられる。これに加えて、糖化酵素共同体に、ペプチダーゼ(EC3.4.x.y)、リパーゼ(EC3.1.1.xおよび3.1.4.x)、リグニナーゼ(EC1.11.1.x)、およびフェルロイルエステラーゼ(EC3.1.1.73)などのその他の活性を添加して、バイオマスのその他の構成要素からの多糖類放出を助けることが有用かもしれない。多糖類加水分解酵素を産生する微生物は、異なる基材特異性を有するいくつかの酵素または1群の酵素によって触媒される、セルロース分解などの活性を示すことが多いことが、当該技術分野で良く知られている。したがって微生物からの「セルラーゼ」は1群の酵素を含んでなってもよく、それらの全てがセルロース分解活性に寄与してもよい。セルラーゼなどの商業的または非商業的酵素製剤は、酵素を得るために使用される精製スキーム次第で多数の酵素を含んでなってもよい。
Spezyme(登録商標)CPセルラーゼ、Multifect(登録商標)キシラナーゼ、Accelerase(登録商標)1500、およびAccellerase(登録商標)DUET(Danisco U.S.Inc.,Genencor International,Rochester,NY)などの糖化酵素は、商業的に得られてもよい。これに加えて糖化酵素は未精製であってもよく、細胞抽出物またはホールセル調製品の一種として提供されてもよい。酵素は、複数の糖化酵素を発現するように遺伝子操作された組換え微生物を使用して製造されてもよい。
本発明で特に価値があるのは、GH3、GH39、GH43、GH51、GH10、およびGH11ファミリーなどのグリコシドヒドロラーゼのクラスである。GHは、2つ以上の炭水化物間の、または炭水化物と非炭水化物部分間のグリコシド結合を加水分解する1群の酵素である。GHファミリーは配列類似性に基づいて分類されており、炭水化物活性酵素(CAZy)データベース(Cantarel et al.(2009)Nucleic Acids Res.37(データベース発行):D233−238)で利用できる。これらの酵素はいくつかの基質に作用でき、糖化プロセスにおいて効果的である。グリコシドヒドロラーゼファミリー3(「GH3」)酵素は、いくつかの既知の活性を有する:β−グルコシダーゼ(EC:3.2.1.21);β−キシロシダーゼ(EC:3.2.1.37);N−アセチルβ−グルコサミニダーゼ(EC:3.2.1.52);グルカンβ−1,3−グルコシダーゼ(EC:3.2.1.58);セロデキストリナーゼ(EC:3.2.1.74);エキソ−1,3−1,4−グルカナーゼ(EC:3.2.1);およびβ−ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.23)。グリコシドヒドロラーゼファミリー39(「GH39」)酵素は、α−L−イズロニダーゼ(EC:3.2.1.76)またはβ−キシロシダーゼ(EC:3.2.1.37)活性を有する。グリコシドヒドロラーゼファミリー43(「GH43」)酵素は以下の活性を有する:L−α−アラビノフラノシダーゼ(EC3.2.1.55);β−キシロシダーゼ(EC3.2.1.37);エンドアラビナナーゼ(EC3.2.1.99);およびガラクタン1,3−β−ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.145)。グリコシドヒドロラーゼファミリー51(「GH51」)酵素は、L−α−アラビノフラノシダーゼ(EC3.2.1.55)またはエンドグルカナーゼ(EC3.2.1.4)活性を有する。グリコシドヒドロラーゼファミリー10(「GH10」)については、Schmidt et al.,1999,Biochemistry 38:2403−2412およびLo Leggio et al.,2001,FEBS Lett 509:303−308)でより詳しく述べられ、グリコシドヒドロラーゼファミリー11(「GH11」)についてはHakouvainen et al.,1996,Biochemistry 35:9617−24でより詳しく述べられる。
酵素共同体中で特に有用なのは、グリコシルヒドロラーゼ(GH)Xyn3、Fv3A、Fv51A、およびFv43Dである。Xyn3(配列番号:1)はトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)からのGH10ファミリーキシラナーゼであり、Fv3A(配列番号:2)はフザリウム・ベルチシリオイデス(Fusarium verticillioides)からのGH3ファミリー酵素であり、Fv43D(配列番号:3)はフザリウム・ベルチシリオイデス(Fusarium verticillioides)からのGH43ファミリー酵素であり、Fv51A(配列番号:4)はフザリウム・ベルチシリオイデス(Fusarium verticillioides)からのGH51ファミリー酵素である。
これらの酵素は、それらの天然の宿主生物から単離されてもよく、または産生のために遺伝子操作された宿主生物中で発現されてもよい。例えば当業者に知られている標準法を使用して、標的発現宿主細胞中で活性のプロモーターを含有するキメラ遺伝子、上述のGHをコードする配列、および終結シグナルがプラスミドベクターから発現され、または標的発現宿主細胞のゲノムに組み込まれる。使用されるコード配列は、発現のために使用される特定宿主について、コドン最適化されてもよい。典型的に使用される発現宿主細胞としては、エシェリキア(Escherichia)、バチルス(Bacillus)、乳酸桿菌(Lactobacillus)、シュードモナス(Pseudomonas)、およびストレプトミセス(Streptomyces)などの細菌;サッカロミセス(Saccharomyces)、分裂酵母(Schizosaccharomyces)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、ピキア(Pichia)、クリヴェロミセス(Kluyveromyces)、およびファフィア(Phaffia)などの酵母;およびアクレモニウム(Acremonium)、アスペルギルス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、ブジェルカンデラ(Bjerkandera)、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、コプリナス(Coprinus)、カワラタケ(Coriolus)、コリナスカス(Corynascus)、ケトミウム(Chaetomium)(Chaertomium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、フィロバシジウム(Filobasidium)、フザリウム(Fusarium)、ジベレラ(Gibberella)、フミコラ(Humicola)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ケカビ(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ケカビ(Mucor)、ネオカリマスティクス(Neocallimastix)、ニューロスポラ(Neurospora)、ペシロミセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、ファネロカエテ(Phanerochaete)、シワタケ(Phlebia)、ピロミセス(Piromyces)、ヒラタケ(Pleurotus)、シタリジウム(Scytalidium)(Scytaldium)、スエヒロタケ(Schizophyllum)、スポロトリカム(Sporotrichum)、タラロミセス(Talaromyces)、サーモアスクス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、ホウロクタケ(Trametes)、およびトリコデルマ(Trichoderma)などの糸状菌が挙げられる。
どのようにして共同体中で使用される酵素の有効量を判定し、最適酵素活性のために条件を調節するかは、当業者なら認識するであろう。当業者はまた、共同体中で必要とされる酵素活性クラスをどのように最適化して、選択条件下で所定の前処理生成物の最適糖化を得るかを認識するであろう。糖化の一例は米国特許第20070031918A1号明細書に記載される。
発酵に先だって、糖化混合物を例えば蒸発により濃縮して、発酵性糖の濃度を増大させてもよい。
糖化に続いて、糖化生成物中の液体が、例えばバッチ法または連続法でリグニンなどの固形物から分離されていてもよい。発酵に先だって、液体または全糖化生成物が滅菌されていてもよい。発酵中に使用される生体触媒と、糖化中に使用されるpH次第で、pHを発酵に適したものに調節してもよい。
発酵性糖類を含有するリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物は、典型的には培地の部分として発酵培地に含まれ、生体触媒増殖と生成物産生のための炭素源の全部または一部を提供する。リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵培地中の加水分解生成物は、少なくとも全容積の約25%であり、少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上であってもよい。発酵培地の40%または80%として使用される加水分解生成物の例は、参照によって本明細書に援用するUS20070031918A1の実施例9に提供される。加水分解生成物中の発酵性糖類濃度に応じて、培地に追加的糖類を添加してもよい。例えば約80g/Lのグルコースと約50g/Lのキシロースを含有する加水分解生成物が発酵培地に40%含まれる場合、追加的なグルコースとキシロースを添加して、所望の最終糖類濃度にしてもよい。当業者には良く知られているように、加水分解生成物に加えて、発酵培地は、生成物産生のために使用される特定生体触媒による増殖および産生に必要とされる、その他の栄養素、塩、および要素を含有してもよい。補足物質としては、例えば酵母抽出物、特定のアミノ酸、リン酸、窒素源、塩、および微量元素が挙げられる。酵素触媒反応に必要なプラスミドまたは補助因子を維持するための抗生物質など、特定生体触媒によって作られる特定生成物産生に必要とされる構成要素もまた含まれてもよい。本明細書で使用される発酵培地中において、加水分解生成物は全容積の90%である。
加水分解生成物を調製し、それを発酵培地に添加して、次に発酵を実施する代わりに、同時糖化発酵(SSF)工程を使用して、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスを生成してもよい。この工程では、バイオマスが産生生体触媒によって代謝されるにつれて、糖類がそれから生成する。
生体触媒発酵および標的生成物
リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵培地中の発酵性糖類は、適切な生体触媒によって代謝されて標的生成物が生じる。発酵工程中に糖類を生体触媒に接触させて、生体触媒によって作られる標的生成物が生じる条件下で生体触媒を増殖させる。使用される特定の生体触媒に有用な条件次第で、温度および/またはヘッドスペースガスを発酵のために調節してもよい。発酵は好気性であっても嫌気性であってもよい。これらの条件、および温度とpHをはじめとするその他の条件が、使用される特定の生体触媒について調節される。
典型的には、生体触媒は標的生成物を生成するように改変されるが、生体触媒は天然で標的生成物を産生してもよい。生体触媒を使用して発酵により製造してもよい標的生成物としては、例えば酸、アルコール類、アルカン、アルケン、芳香族、アルデヒド、ケトン、バイオポリマー、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ビタミン、抗生物質、および医薬品が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、および1,3−プロパンジオールlが挙げられるが、これに限定されるものではない。酸としては、酢酸、乳酸、プロピオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、酪酸、グルコン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸、およびレブリン酸が挙げられるが、これに限定されるものではない。アミノ酸としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、メチオニン、リジン、グリシン、アルギニン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンが挙げられる。追加的標的生成物としては、メタン、エチレン、アセトン、および工業酵素が挙げられる。特に適切な生成物は、エタノールと、イソブタノール、2−ブタノール、および1−ブタノールをはじめとするブタノールである。
糖類の標的生成物への発酵は、一段階または多段階発酵中で、1つまたは複数の適切な生体触媒によって実施されてもよい。生体触媒は、細菌、糸状菌、および酵母から選択される微生物であってもよい。生体触媒は野性型微生物または組換え微生物であってよく、例えば、エシェリキア(Escherichia)、ザイモモナス(Zymomonas)、サッカロミセス(Saccharomyces)、カンジダ(Candida)、ピキア(Pichia)、ストレプトミセス(Streptomyces)、バチルス(Bacillus)、乳酸桿菌(Lactobacillus)、およびクロストリジウム(Clostridium)が挙げられる。別の実施形態では、生体触媒は、組換え大腸菌(Escherichia coli)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)(Clostridia thermocellum)、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、およびピキア・スティピティス(Pichia stipitis)からなる群から選択されてもよい。
標的生成物を製造するために発酵で使用される多数の生体触媒については記載されており、その他のものも発見され、突然変異を通じて生成され、または組換え手段を通じて遺伝子改変されるであろう。リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物培地中の発酵性糖類を使用するあらゆる生体触媒を使用して、それが生成することが知られている標的生成物を作成してもよく、それによって本方法を使用した処理のためのリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物ブロスが生成される。リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵培地中の製造で特に有用なのは、ブタノールおよびエタノールなど、燃料として使用してもよいアルコール生成物である。
溶剤産生クロストリジウム(Clostridia)による炭水化物のアセトン、ブタノール、エタノールへの発酵(ABE発酵)は、良く知られている(Jones and Woods(1986)Microbiol.Rev.50:484−524)。クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)変異株を使用して、高レベルのブタノールを製造し、アセトンおよびエタノールもまた製造する発酵工程が、米国特許第5192673号明細書に記載される。高レベルのブタノールを製造し、アセトンおよびエタノールもまた製造するためのクロストリジウム・ベイジェリンキイ(Clostridium beijerinckii)変異株の使用が、米国特許第6358717号明細書に記載される。遺伝子改変酵母によるブタノールの製造は、例えばUS20070092957 A1で開示される。大腸菌(E.coli)の遺伝子改変株はまた、エタノール製造のための生体触媒としても使用されている(Underwood et al.,(2002)Appl.Environ.Microbiol.68:6263−6272)。エタノールは、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵培地中で、遺伝子改変ザイモモナス(Zymomonas)によって製造されている(US20070031918 A1)。エタノール産生が改善されたザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)遺伝子改変株が、US2003/0162271 A1およびUS2009/0246846 A1に記載される。
米国特許第7504250号明細書では、1,3−プロパンジオールを産生する組換え微生物が開示される。
大腸菌(E.coli)組換え株(Zhou et al.,(2003)Appl.Environ.Microbiol.69:399−407)、バチルス(Bacillus)天然株(米国特許第20050250192号明細書)、およびリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)(Tay and Yang(2002)Biotechnol.Bioeng.80:1−12)によって、発酵中に乳酸が製造されている。大腸菌(E.coli)組換え株が、1,3プロパンジオール(米国特許第6013494号明細書、米国特許第6514733号明細書)、およびアジピン酸(Niu et al.,(2002)Biotechnol.Prog.18:201−211)を製造する発酵中の生体触媒として使用されている。組換えクロストリジウム(Clostridia)(Cheryan et al.,(1997)Adv.Appl.Microbiol.43:1−33)、および新たに同定された酵母株(Freer(2002)World J.Microbiol.Biotechnol.18:271−275)を使用して、発酵によって酢酸が作られている。組換え大腸菌(E.coli)とその他の細菌によるコハク酸製造が米国特許第6159738号明細書で、変異組換え大腸菌(E.coli)によるコハク酸製造がLin et al.,(2005)Metab.Eng.7:116−127)で開示されている。変異トルロプシス・グラブラタ(Torulopsis glabrata)酵母(Li et al.,(2001)Appl.Microbiol.Technol.55:680−685)、および突然変異大腸菌(E.coli)(Yokota et al.,(1994)Biosci.Biotech.Biochem.58:2164−2167)によって、ピルビン酸が製造されている。大腸菌(E.coli)組換え株が、パラ−ヒドロキシケイ皮酸(US20030170834)およびキナ酸(US20060003429)を製造するための生体触媒として使用されている。
プロピオニバクテリウム・アシディプロピオニッチ(Propionibacterium acidipropionici)の突然変異体がプロピオン酸を生成する発酵で使用されており(Suwannakham and Yang(2005)Biotechnol.Bioeng.91:325−337)、クロストリジウム・チロブチリカム(Clostridium tyrobutyricum)によって酪酸が作られている(Wu and Yang(2003)Biotechnol.Bioeng.82:93−102)。クロストリジウム(Clostridium)種17cr1株により、発酵によってスレオニンからプロピオネートおよびプロパノールが作られている(Janssen(2004)Arch.Microbiol.182:482−486)。酵母様アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)を使用して(Anantassiadis et al.,(2005)Biotechnol.Bioeng.91:494−501)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(Aspergillis niger)変異体によって(Singh et al.,(2001)Indian J.Exp.Biol.39:1136−43)、グルコン酸が作られている。5−ケト−D−グルコン酸がグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)の突然変異体によって作られ(Elfari et al.,(2005)Appl Microbiol.Biotech.66:668−674)、イタコン酸がアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)突然変異体によって産生され(Reddy and Singh(2002)Bioresour.Technol.85:69−71)、クエン酸がアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)変異株によって産生され(Ikram−Ul−Haq et al.,(2005)Bioresour.Technol.96:645−648)、キシリトールがカンジダ・ギリエルモンジィ(Candida guilliermondii)FTI20037によって産生された(Mussatto and Roberto(2003)J.Appl.Microbiol.95:331−337)。大量の3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸もまた含有する、4−ヒドロキシ吉草酸含有バイオポリエステルが、組換えシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)およびラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)によって産生される(Gorenflo et al.,(2001)Biomacromolecules 2:45−57)。L−2,3−ブタンジオールが、組換え大腸菌(E.coli)によって作られた(Ui et al.,(2004)Lett.Appl.Microbiol.39:533−537)。
コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、およびセラチア(Serratia)の栄養要求性株およびアミノ酸アナログ耐性株を使用して、発酵によるアミノ酸製造が達成された。例えば、ヒスチジンアナログ耐性株を使用したヒスチジンの製造が、日本特許出願公開第56008596号公報報に記載され、組換え株の使用が欧州特許第136359号明細書に記載される。トリプトファンアナログ耐性株を使用したトリプトファンの製造が、日本特許出願公開第47004505号公報および日本特許出願公開第51019037号公報に記載される。イソロイシンアナログ耐性株を使用したイソロイシンの製造が、日本特許出願公開第47038995号公報、日本特許出願公開第51006237号公報、および日本特許出願公開第54032070号公報に記載される。フェニルアラニンアナログ耐性株を使用したフェニルアラニンの製造が、日本特許出願公開第56010035号公報に記載される。成長のためにフェニルアラニンを必要とするチロシン耐性株(Agr.Chem.Soc.Japan 50(1)R79−R87(1976)、または組換え株(欧州特許第263515号明細書、欧州特許第332234号明細書)を使用したチロシンの製造、およびL−アルギニンアナログ耐性株を使用したアルギニンの製造(Agr.Biol.Chem.(1972)36:1675−1684、日本特許出願公開第54037235号公報および日本特許出願公開第57150381号公報)について記述されている。フェニルアラニンはまた、大腸菌ATCC31882、31883、および31884株中における発酵によっても製造された。組換えコリネ型細菌中におけるグルタミン酸の生成が、米国特許第6962805号明細書に記載される。大腸菌(E.coli)変異株によるスレオニンの製造が、Okamoto and Ikeda(2000)J.Biosci Bioeng.89:87−79に記載される。メチオニンがコリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)変異株によって産生された(Kumar et al,(2005)Bioresour.Technol.96:287−294)。
有用なペプチド、酵素、およびその他のタンパク質もまた、生体触媒によって作られている(例えば米国特許第6,861,237号明細書、米国特許第6,777,207号明細書、米国特許第6,228,630号明細書)。
リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロス中で良好に増殖して、高い産生量を有するためには、生体触媒は、バイオマス加水分解生成物中に存在する酢酸などの阻害物質に対して、より高い耐性を有するように選択され、または遺伝子改変されてもよい。例えば、ザイモモナス(Zymomonas)がリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロス中で遭遇するようなストレス条件下における、キシロース利用およびエタノール産生の改善が、参照によって本明細書に援用する、同一譲受人の同時係属中の米国特許出願公開第20110014670号明細書で開示される。同明細書では、キシロース、酢酸、酢酸アンモニウム、およびエタノールを含有する培地中における、ザイモモナス(Zymomonas)細胞の継続的成長と、ZW705などのザイモモナス(Zymomonas)株の改善された単離が開示される。
リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスの処理方法
本方法では、液体および固体ストリームを分離する濾過に先だって、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスに加熱処理が適用される。リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスは、発酵後直ちに、または生成物除去段階に続いて、処理されてもよい。例えば、標的生成物(エタノールまたはブタノール)が生体触媒によって作られて、本処理に先だって、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスから除去されてもよい。ブタノールはまた、ガスストリッピングなどによって発酵培地を抽出することで、または国際公開第2009/149270号パンフレットで開示されるように、水非混和性有機抽出剤を使用してブタノール含有有機相を水相から分離することで、発酵ブロスから除去してもよい。この場合、生成物が除去されたリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスである、枯渇ブロスが生じる。エタノールは、典型的にビールカラムを使用して、蒸留によって発酵ブロスから分離または除去してもよい。この場合、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロス蒸留からの全蒸留廃液流が生じる。したがって全蒸留廃液は、枯渇ブロスの一種である。
リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロス、または蒸留塔からの全蒸留廃液などの枯渇ブロスは、ブロス、または全蒸留廃液などの枯渇ブロスの濾過ケーク抵抗が少なくとも約20%低下する条件下で加熱処理される。ブロス、または全蒸留廃液などの枯渇ブロスは、約70℃〜約150℃の温度で、約30秒間〜210分間処理される。範囲内のより低い温度でより長時間が使用され、範囲内のより高い温度でより短時間が使用される。例えば本明細書の実施例では、全蒸留廃液の70℃で60分間の加熱は、濾過ケーク抵抗を24%低下させるのに十分であり;110℃で30秒間の加熱は、濾過ケーク抵抗を21%低下させるのに十分であり;145℃で30秒間の処理は、濾過ケーク抵抗を45%低下させた。特に有用なのは、約30秒間〜30分間などのより短時間で効果がある、約95℃〜約150℃の温度である。短時間の処理では、約30秒間〜2分間にわたる約110℃〜約150℃の温度が特に有用である。少なくとも約20%の濾過ケーク抵抗低下のために、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスおよびその他の各種枯渇ブロスの処理は、同様の時間にわたる同様の温度範囲内であってもよい。
加熱処理は、所望の時間にわたり温度を維持できる、あらゆるシステム内で実施してもよい。例えば、加熱は保温ジャケット付き容器内または熱交換器内にあってもよく、引き続いて容器内またはパイプループ内で保持される。
当業者は、本明細書で提供される実施例の結果の知識を持って、特定の工程全体に適した所与の範囲内の温度および時間を判定し得る。例えば、110℃〜145℃で30秒間の処理は、滞留時間パイプループを使用して容易に達成し得て、これは連続プロセスを使用できるようにし、ジャケット付き容器は不要であり、この特定の機構を経済的に魅力的なものにする。代替方法としては、常圧蒸留からの全蒸留廃液温度である95℃〜100℃の使用など、より低い温度が所望される場合、約15〜30分間の時間が使用される。この場合、先の工程段階が原因で、全蒸留廃液またはブロスの温度が所望の温度以上であれば、さらなる加熱は必要ないかもしれず;ブロスまたは全蒸留廃液を断熱容器内に必要な時間入れておくことで、温度が所望時間にわたり維持される。
所定温度で濾過ケーク抵抗を少なくとも約20%低下させる所要時間はまた、処理されるブロス、枯渇ブロス、または全蒸留廃液のpHに応じて変動してもよい。濾過ケーク抵抗のより大きな低下はより低いpHで得られ、pH6以下が特に有用である。発酵で使用される生体触媒次第で、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスのpHは、既にpH6以下であってもよい。代案としては、加熱処理に先だってまたはその最中に、ブロス、枯渇ブロス、またはブロスからの全蒸留廃液のpHを約6、5、4、または3に調節してもよい。pH調節用酸の均一な分散のために、ブロスまたは全蒸留廃液のpH調節中に混合または撹拌することが、特に有用である。これに加えて、均一な温度制御のために、加熱処理中に混合を使用してもよい。連続的であっても非連続的であってもよい混合は、典型的にはインペラを使用するものなどの撹拌器システムによって実施される。
ゼータ電位は、分散体中で隣接する同様の荷電を持つ粒子間の反発程度の基準であり、したがってコロイド分散体の安定性の指標である。リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスの蒸留からの全蒸留廃液pHを低下させることは、ゼータ電位の大きさを低下させることが分かった。しかしpH7における−21.85mVからpH5.5における−16.17mV、そしてpH3.9における−12.58mVへの観察されたゼータ電位の大きさの低下(本明細書の実施例2)は、約+/−5mV以下のゼータ電位で起きる迅速な凝固または軟凝集への移行の徴候ではない。したがって観察されたゼータ電位低下は、濾過ケーク抵抗の強度の変化を説明し得ない。
本方法では、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロス、枯渇ブロス、または全蒸留廃液に、凝集剤などの処理剤は添加されない。加熱処理材料は濾過されて、液体画分または薄い蒸留廃液と、固体画分とが分離される。ベルトフィルター、ベルトプレス、スクリュープレス、ドラムフィルター、ディスクフィルター、ヌッチェフィルター、フィルタープレスまたは濾過遠心分離機などの様々な濾過装置を使用してもよい。真空、圧力、または遠心力の適用などによって、濾過を助けてもよい。特に有用なのは、フィルタープレスである。ブロス、枯渇ブロス、または全蒸留廃液は、それをフィルタープレスを通過させるのに先だって、典型的に約65℃などに冷却される。
固体画分またはウェットケークを燃焼させて、製造工程にエネルギーを供給してもよい。ウェットケークは、燃焼に先だって風乾などにより乾燥させて、水分を低下させてもよい。
再循環のためのさらなる液体処理
生成流は、加熱処理リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスの液体/固体濾過に続いて、除去してもよい。例えば、エタノール生成流と残留液体を生じる蒸留など、液体ストリームを抽出または蒸留して、生成流を作り出してもよい。
濾過に続いて、液体画分中に溶解および懸濁固形分が残る。逆戻し流として直接使用するために、液体画分の全部または一部を再循環させてもよい。前処理、糖化、または生体触媒種培養生成など、淡水が必要とされる工程のあらゆる時点で、逆戻し流として液体を添加してもよい。液体画分の残りまたは全部を蒸発によってさらに精製し、再循環し得る水と、シロップとを生成してもよい。参照によって本明細書に援用する、同一譲受人同時係属米国仮特許出願第61/328799号明細書で開示されるように、薄い蒸留廃液液体画分の蒸発を使用して、少なくとも約40%固形分のシロップを生成してもよい。薄い蒸留廃液液体ストリームは懸濁固形分が非常に低く、1,000ppm、または0.1%未満である。薄い蒸留廃液の低い懸濁固形分濃度のために、引き続く蒸発工程中に低粘度が保たれる。粘度は蒸発全体を通じて約100センチポアズ未満に保たれ、約40%固形分以上に蒸発させる。得られた少なくとも約40%固形分のシロップを燃焼させてエネルギーを提供することができ、追加的乾燥工程は必要ない。典型的には、トウモロコシ穀粒乾燥粉砕エタノールプロセス中で生成されるシロップは約35%以下の固形分を有し、乾燥、次に燃焼で使用されるのよりも大きなエネルギーを提供しない。
蒸発は、流下薄膜、上昇薄膜、強制循環、プレートまたは機械的および熱蒸気再加圧システムなどのいずれの蒸発システムで行ってもよい。蒸発は、連続的またはバッチ式であってもよく、多重効用蒸発器を使用してもよい。蒸発水は、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵工程全体で再循環させてもよい。
本発明を以下の実施例でさらに定義する。これらの実施例は本発明の好ましい実施態様を示しながら、例証としてのみ提供されるものと理解すべきである。上の考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特徴を見極め得て、その範囲と精神を逸脱することなく本発明に様々な変更と修正を加えて、それを様々な用途と条件に適応させ得る。
使用される略語の意味は、次のとおりである。「s」は秒であり、「min」は分を意味し、「h」または「hr」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「m」はメートルであり、「nm」はナノメートルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「μm」はマイクロメートルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「kg」はキログラムであり、「rpm」は毎分回転数を意味し、「C」は摂氏であり、「ppm」は百万分の一を意味し、「cP」はセンチポアズである。NTUは比濁計濁度単位であり、psiは平方インチ当たりポンドである。
一般方法:
糖化酵素
Accellerase(登録商標)1500(A1500)およびMultifect(登録商標)キシラナーゼは、Danisco U.S.Inc.,Genencor,International(Rochester,NY)から得た。
セルラーゼおよびヘミセルラーゼ産生株
229株:変異誘発と高セルラーゼ産生についての選択とを通じて、RL−P37から誘導されたトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)株(Sheir−Neiss and Montenecourt,1984,Appl.Microbiol.Biotechnol.20:46−53)をPEG媒介形質転換(Penttila et al.,1987,Gene 61(2):155−64)を使用して、β−グルコシダーゼ発現カセット(cbh1プロモーター、T.リーゼイ(T.reesei)β−グルコシダーゼ遺伝子、cbh1ターミネーター、およびamdSマーカー)β−グルコシダーゼ遺伝子、cbh1ターミネーター、およびamdSマーカー)、エンドキシラナーゼ発現カセット(cbh1プロモーター、T.リーゼイ(T.reesei)xyn3、およびcbh1ターミネーター)を用いて同時形質転換した。多数の形質転換体を単離して、β−グルコシダーゼおよびエンドキシラナーゼ産生について調べた。T.リーゼイ(T.reesei)#229株と称される1形質転換体を本明細書に記載される特定の研究で使用した。
H3A株:エレクトロポレーションを使用して、T.リーゼイ(T.reesei)229株をβ−キシロシダーゼFv3A発現カセット(cbh1プロモーター、Fv3A遺伝子、cbh1ターミネーター、およびalsRマーカー)、β−キシロシダーゼFv43D発現カセット(egl1プロモーター、Fv43D遺伝子、天然Fv43Dターミネーター)、およびFv51Aα−アラビノフラノシダーゼ発現カセット(egl1プロモーター、Fv51A遺伝子、Fv51A天然ターミネーター)を用いて同時形質転換した。クロリムロンエチルを含有するフォーゲル寒天プレート上で形質転換体を選択した。多数の形質転換体を単離して、β−キシロシダーゼ、およびL−α−アラビノフラノシダーゼ産生について調べた。T.リーゼイ(T.reesei)β−グルコシダーゼ1、T.リーゼイ(T.reesei)xyn3、Fv3A、Fv51A、およびFv43Dを組換え的に発現するT.リーゼイ(T.reesei)統合発現H3A株を単離した。
H3A株の発酵中に生成する細胞外タンパク質を遠心分離によって細胞集団から分離し、Millipore 10kD分子カットオフ重量膜を通過させる膜限外濾過により濃縮して、pH4.8に調節した。WeichselbaumおよびGornallによって修正された修正ビウレット法を使用して、ウシ血清アルブミンを較正物質として使用して総タンパク質量を測定した(Weichselbaum,1960,Amer.J.Clin.Path.16:40;Gornall et al.,1949 J.Biol.Chem 177:752)。このH3A細胞外タンパク質調製品は、本明細書でH3Aタンパク質と称され、セルラーゼおよびヘミセルラーゼの組み合わせ調製品として使用されて、SSF中に複合糖質の加水分解をもたらした。
生体触媒および種菌の調製
発酵で使用されるザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)株の起源
これらの実施例のようにして処理されるリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスは、代案の生体触媒を使用して作成されてもよい。これらの実施例では例示的な株が使用され、下で説明される。代案として、ATCC PTA−7858として寄託されたZW658株を使用して、処理するリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスを生成してもよい。
ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ZW705株は、本明細書に簡潔に述べるように、参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2011−0014670号明細書で詳述される方法によってZW801−4株から作り出された。Z.モビリス(Z.mobilis)ZW801−4株の培養は、次のようにしてストレス条件下で成長させた。ZW801−4は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,741,119号明細書に記載される、Z.モビリス(Z.mobilis)の組換えキシロース利用株である。全て米国特許第7,741,119号明細書に記載されるように、ZW801−4株はZW800株に由来し、それはZW658株に由来する。ZW658は、逐次遺伝子転位事象と、それに続くキシロース含有選択培地上での適応によって、キシロースイソメラーゼ、キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼ、およびトランスケトラーゼをコードする4つのキシロース利用遺伝子を含有する2つのオペロンPgapxylABおよびPgaptaltktを、ZW1(ATCC#31821)のゲノムに組み込むことにより構築される。ZW658は、ATCC#PTA−7858として寄託された。ZW658中では、宿主媒介二重交叉相同的組換えと、選択可能なマーカーとしてスペクチノマイシン耐性とを使用して、グルコース−果糖酸化還元酵素をコードする遺伝子を挿入的に不活性化して、ZW800を作り出した。Creリコンビナーゼを使用した部位特異的組換えによって、loxP部位によって区切られるスペクチノマイシン耐性マーカーを除去し、ZW801−4を作り出した。
撹拌しながら、pHおよび温度制御された250ml発酵槽(Sixfors;Bottmingen,Switzerland)内でZW801−4の連続培養を実施した。発酵のための基礎培地は、5g/L酵母抽出物、15mMリン酸アンモニウム、1g/L硫酸マグネシウム、10mMソルビトール、50g/Lキシロース、および50g/Lグルコースであった。高濃度の酢酸およびアンモニアの存在下における成長への適応は、97日間にわたり、比希釈率によって測定される確立された増殖率を保ちながら、上記連続培養培地に添加する酢酸アンモニウム濃度を徐々に増大させることで達成された。酢酸アンモニウムは160mMの濃度に増大された。アンモニウムイオン濃度のさらなる増大は、139日間の連続培養の終わりまでにリン酸アンモニウムを最終総アンモニウムイオン濃度210mMに添加することで達成された。ZW705株を平板培養して単一コロニーにし、1つの選択されたコロニーを増幅させることで、適応集団から単離した。
参照によって本明細書に援用する、同一譲受人の同時係属中の米国仮特許出願第61/424077号明細書で開示されるように、トウモロコシ穂軸加水分解生成物培地中での成長へのさらなる適応によって、ZW705株からAR3 7−31株が作られた。培養濁度が規定の狭い範囲内に保たれるように、培養中への培地の流入量を制御することで培養中の細胞濃度が一定に保たれる、連続流動培養装置である、タービドスタット(米国特許第6,686,194号明細書;Heurisko USA,Inc.Newark,DE)内で、ZW705を培養した。連続培養装置内の増殖培養には、休止培地(培地A)およびチャレンジ培地(培地B)の2種の培地が利用できた。培養をグロースチャンバー内の休止培地上で濁度設定点に成長させ、次にその細胞密度を保つように設定された希釈率で希釈した。10分毎に1回、規定の容積で培地を添加することによって希釈を実施した。タービドスタットが培地チャレンジモードに入ると、先の培地添加後に設定点に復元する速度に基づいて、チャレンジ培地または休止培地の添加を選択した。グロースチャンバー内の培地の定常状態濃度は、培地Aと培地Bの混合であり、2つの培地の比率は、設定希釈率で設定細胞密度が維持できる、各培地からの抜き取り速度に依存する。グロースチャンバー内の集団を代表する細胞サンプルをタービドスタットの流出物から、1週間間隔で(トラップチャンバー内に)回収した。細胞サンプルをMRM3G6培地内で一度培養し、グリセロール貯蔵液として−80℃で保存する。
培養物が流入培地中に存在するグルコースの全部とキシロースのおよそ半分を使用して設定希釈率における設定細胞密度に達したことを示す、任意の濁度設定点までZW705を増殖させた。50%HYAc/YEおよび50%MRM3G6.5X4.5NH4Ac12.3である休止培地、およびHYAc/YEであるチャレンジ培地を使用。3週間後に単離された株を、休止培地としてHYAc/YEおよびチャレンジ培地としてHYAc/YE+9質量%エタノールを使用した、別の一連のタービドスタット適応で使用した。AR3 7−31株が2週間後に単離され、加水分解生成物培地中におけるキシロースおよびグルコース利用が改善され、ならびにエタノール産生も改善された株として特徴付けられた。配列分析により、AR37−31は、膜輸送タンパク質の特徴を有して、フザリン酸耐性タンパク質をコードするとアノテートされるタンパク質をコードする、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ゲノムORF中に突然変異を有することが分かった。
培地
MRM3は、1リットル当たり以下を含有する:酵母抽出物(10g)、KH2PO4(2g)、およびMgSO40.7H2O(1g)
MRM3G6は、60g/Lグルコースを含有するMRM3である。
MRM3G6.5X4.5NH4Ac12.3は、65g/Lグルコース、45g/Lキシロース、12.3g/L酢酸アンモニウムを含有するMRM3である。
HYAc/YEは、遠心分離によってそれから固形分が除去された穂軸加水分解生成物を含有し、濾過滅菌されて、68g/Lグルコース、46g/Lキシロース、および5g/L酢酸を含有し、6.2g/L酢酸アンモニウム、および0.5%酵母抽出物が添加されて、pH5.8に調節された。
ケーク比抵抗
ケーク比抵抗は、ケーク高さ単位当たりの濾過ケーク抵抗の変化を定量化する。本値は、スラリー濃度、粘度、圧力、および濾過面積から独立している。本値は、上述のようにRuthの式から得られる。[Yim et al.,Korean M.Chem.Eng.,18(5),741,(2001)を参照されたい]
加熱処理装置
加熱処理実験は、3種類のシステム内で実施した。
・ 10プレートガラスOldershaw 2Lバッチ蒸留機構。
ポット温度は、加熱マントルを制御するポット内の熱電対を使用して制御される。沸騰速度は、手動Variacの使用によって制御される。
還流比は、塔上部で凝縮した材料を生成物回収容器に送達するか、または還流としてカラムに後退させ得るガラス製分配器によって制御される。材料が還流してカラムに後退する時間を材料が生成物回収に入る時間で除したものが、還流比率である。加熱処理では、ユニットは全還流で実験する。
・ 50ガロンのオイルヒーター装着ジャケット付き容器。
ユニットは、ジャケット付き50ガロン容器および撹拌器からなる。ユニットには熱電対が装着されており、容器内の熱が制御される。熱源は電気オイルヒーターであり、ジャケットを通って油が循環する。
・ 熱交換器および滞留時間パイプループを用いた実験室高温短時間機構。
ユニットは、2つの熱交換器とそれらの間のパイプループからなり、それは最高160℃でおよそ20〜60秒間の保持時間を可能にする。第1の熱交換器は、材料を適切な温度に加熱する。次に材料をその温度に保持し、機構から出す前に冷ます。
分離挙動の記述に使用される分析法
濁度
濁度はASTM D7315−07a(静止モードで1濁度単位(TU)を超える濁度を測定するための標準試験法)に従って、測定される。濁度を測定するために使用した外部装置は、HACH 2100ANTurbidimeter(VWR International,West Chester,PA)であった。最大測定可能濁度は、10000NTU(比濁計濁度単位)である。0〜4000NTUが透過モードモードで測定されるのに対し、それを超える値は後方散乱によって測定される。
Filtratest
Filtratest(BOKELA GmbH,Tullastr.64,76131 Karlsruhe,Germany)は、迅速なバッチ濾過試験を可能にする、即時評価能力があるLab−Nutschフィルターである。仕様の概要を下に示す。
・ フィルター面積:20cm2
・ 充填容積500cm3
・ 最大濾過圧力=11バール(1100キロパスカル)(欧州標準)
・ 最大実験操作温度120℃(この実施形態では60℃)
・ 二重ジャケット(2×3/8インチ連結)による加熱可能
・ のぞき窓付き蝶番式迅速開閉蓋
・ バヨネットタイプ接続金具がある下部(片手使用)
・ スナップジョイントによる圧搾空気接続
・ 材料1.4301またはその他
・ 寸法:420×700×180mm
・ 重量:およそ30kg
フィルター培地をフィルターホルダ内に入れ、それをバヨネットタイプ接続金具を使用して閉鎖する。サンプルをNutsch本体内に充填したら、蓋を締めて事前調節された差圧を印加する。装置は、データを取得するためにコンピュータに接続される、天秤、圧力センサー、および空気流量計を特徴とする。コンピュータ記録された濾液質量対時間は、ケーク比抵抗を計算するためのさらなる評価のためにエクセルにエクスポートし得て、または評価はFiltratestシステムと共に提供されるソフトウェア中のアルゴリズムを使用して実施してもよい。
460mm Netzsch FilterPress
以下の市販されるプレパイロット規模のプレスを使用した:
1.0 Pre Squeeze容量を有するNetzsch 470/SP メンブランフィルタープレスMix Pack Membrane(ANDRITZAG,Stattegger Strasse 18,A−8045 Graz,Austria)。適切な数の供給用バルブ付きManual Piping、コアブロー、ケークブロー、メンブランブローバック、および濾液ブロックが含まれている。
液体/固形分の分離には、470mmプレスを使用する。装置は、2つの操作スキッドからなる;1つ目は2つの撹拌供給タンクとプレスに供給するための空気ポンプを有し、2つ目のカートはプレスそれ自体である。
・ フィルター面積:6800cm2
・ チャンバー数:2
・ 最大濾過圧力=7バール(700キロパスカル)
・ 最大操作温度85℃
・ 開閉装置:水圧ラム
・ 材料供給:圧縮空気駆動式ダイヤフラムポンプ
・ 寸法:1300×1500×600mm
・ 重量:およそ250kg
プレスは加圧下で流体を処理する。スラリーを最大で100psi(689.5キロパスカル)でプレスに供給する。フィルタープレートスタックを6,000psi(41.4メガパスカル)で圧搾する水圧ラムがある。また機械的圧搾のために、最高で225psi(1551.3キロパスカル)の絞り圧力をプレスに提供する、別個の空気シリンダーもある。
実施例1
リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスの製造
前処理
発酵バッチFRF6
Jaygo水平パドル反応装置(およそ170L)を使用して、サイズが全て<1/2インチ(1.27cm)である、4バッチの穂軸片を前処理した。穂軸を反応装置に装填し、水酸化アンモニウム溶液の装入に先だって容器を真空にして0.1バール(10キロパスカル)絶対圧にして、バイオマス乾燥重量に対して、約4(2バッチ)、6(1バッチ)または8(1バッチ)質量%のNH3を提供した。蒸気を添加して、温度を約145℃にした。この温度を20分間保った。前処理の終わりに、反応装置を制御された方式で圧抜きして大気圧にし、次に引き続いて真空にして、容器内圧力を約0.1バール(10キロパスカル)絶対圧に戻した。反応装置を出た前処理穂軸片は、約55質量%乾燥バイオマスであった。穂軸片を1.0mmスクリーン付き微粉砕機(モデル番号1SH,シリアル番号10019;Pulverizing Machinery Division of Mikropul Corporation;Summit,NJ)内でサイズを1mm未満に低下させた。
発酵バッチFRF7〜10
穂軸バッチの前処理のために、容器本体および側面本体周囲に蒸気を通過させるジャケットを有する、水平Littleford Day 130L反応装置容器(Littleford Day,Inc.,Florence,KY)を使用した。各バッチ毎に、容器に穂軸を装填した(サイズ1mm未満)。1.0mmスクリーン付き微粉砕機(モデル番号1SH,シリアル番号10019;Pulverizing Machinery Division of Mikropul Corporation; Summit,NJ)で処理して、穂軸片のサイズを低下させた。異なる前処理バッチで使用した穂軸の%水分を表2に示す。
容器上部近くへの28.9質量%水酸化アンモニウム溶液および水の装入に先だって、容器を真空にして0.1気圧にし、バイオマス乾燥重量に対して6質量%のNH3を提供した。容器の上部近くに蒸気を装入して、容器内部温度を145℃に上昇させた。この温度を20分間保った。前処理の終わりに、ベントコンデンサを通じて反応装置を圧抜きし、大気圧にした。引き続いて15分間真空(およそ1気圧未満)にして、温度を60℃未満に低下させた。各前処理バッチがその中で使用された発酵バッチと並べて、各前処理バッチの最終%固形分を表2に示す。
表2 穂軸、前処理および発酵バッチ
Figure 2013524839
FRF6〜10の糖化実施
200LのSartorius Biostat D200内で72時間にわたり糖化を実施したが、バッチ#9だけは24時間糖化した。固体装填率は、20%〜25%であった。前処理穂軸バイオマスのpHをH2SO4で5.3に調節した。添加した酵素は、A1500、Xyn3、Fv3A、Fv51A、およびFv43Dの共同体であり、それを#6〜9では21.3mgタンパク質/gグルカン+キシランで添加したが、操作#6ではMultifect(登録商標)キシラナーゼでXyn3を置換し、操作#10ではH3A抽出物(一般方法に記載される)を14mg/gグルカン+キシランで使用した。糖化は47℃で実施した。
種培養調製
復活培養として、2mLの凍結ZW705保存株(一般方法に記載される株)をMRM3G6(10g/LのBBL酵母抽出物、2g/LのKH2PO4、1g/LのMgSO4・7H2O、60g/Lのグルコース)中で、振盪せずに33℃で8時間培養した。1LのMRM3G10培地(MRM3G6と同一であるが100g/Lグルコースを添加)を含有する振盪フラスコに、20mLの復活培養を接種して、33℃で振盪しながら13〜16時間培養した。OD600が1.5〜3.1になるまで増殖させた。十分な振盪フラスコ培養物を使用して、0.1(FRF7〜10)または0.35(FRF6)の初期OD600で、10Lの種発酵槽に接種した。
MaxSMG20またはMaxSGM15(20g/Lの酵母抽出物、2g/LのKH2PO4、5g/LのMgSO4・7H2O、10mMのソルビトール、および200g/L)
のグルコース中の種発酵。種発酵を33℃およびpH5.8(FRF6および7)または5.5(FRF8〜10)で実施した。85g/L未満へのグルコースの低下が初めて観察された後に、種培養を収穫し、グルコースはYSI 2700 SELECT(商標)Biochemistry Analyzer(YSI Life Sciences;Yellow Springs,OH)を使用して測定された。
発酵
180Lのバイオマス加水分解生成物と20LのZW705種培養を含有する200L Sartorius BiostatD200内で、表2に列挙する発酵バッチを実施した。pHをNaOHで5.8に調節した。実験操作は30℃〜33℃で80時間(FRF6、7)、90時間(FRF8、10)または120時間(FRF9)保った。
実施例2
濾過ケーク抵抗に対する全蒸留廃液の加熱処理の効果
リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロス調製品FRF6、7、および8は、実験室規模機構(一般方法)内で、約8分間のカラム内滞留時間で、大気圧における連続蒸留によって、それぞれ蒸留される。得られたpH6の全蒸留廃液サンプルを加熱処理試験で使用した。一般方法に記載される、10プレートガラスOldershaw 2Lバッチ蒸留ポット内で特定温度を保つことにより、加熱処理を異なる温度(70℃、80℃、95℃)で実施した。加熱処理全体を通じて、サンプルはバッチ蒸留ポットから採取した。各サンプルを濾過し、濾過ケーク比抵抗を測定した。一般方法に記載されるFiltratest装置内の濾過操作を使用して、濾過性の変化を測定した。セルロース系エタノール製造からの全蒸留廃液を使用して、合計で25を超える加熱処理を実施した。濾過ケーク抵抗の変化を温度の関数として、表3に示す。表は、入手可能データの代表的選択を示す。実験操作Aおよび実験操作BではFRF8からの全蒸留廃液を使用し、実験操作CではFRF6からの全蒸留廃液を使用した。
表3 Filtratestを使用して異なる温度で様々な時間加熱した全蒸留廃液サンプルの濾過ケーク抵抗の変化
Figure 2013524839
*nd=測定せず
0分は、未処理全蒸留廃液スラリーである、加熱処理の最初のサンプル(初期サンプル)を指す。百分率は、初期サンプルと比較したケーク比抵抗の相対変化を示す。30分間の加熱処理後、濾過性に劇的な変化があり、それはより高い温度でより大きかった。210分間の加熱処理時間後、70℃の操作では34%低下したケーク比抵抗を示したのに対し、95℃の場合は73%であった。
FRF7発酵バッチを95℃で210分間加熱処理し、結果を表4に示す。460mmフィルタープレスを使用して、ケーク比抵抗の39%の低下が達成された。加熱処理は一般方法に記載されるように、油再循環加熱ジャケット付き50ガロン容器内で実施した。
表4 460nmフィルタープレスを使用した加熱全蒸留廃液サンプルの濾過ケーク抵抗の変化
Figure 2013524839
実施例3
全蒸留廃液の濾過ケーク抵抗に対するpHおよび加熱処理の効果
この実施例では、蒸留前に発酵ブロスのpHを調節し、次に蒸留とそれに続く加熱処理および濾過によって、いくつかの実験操作を実施した。実施例1に記載されるFRF10からの発酵ブロスサンプルを蒸留に先だってpH5、6、または7に調節した。蒸留は、実施例1に記載されるとおりであった。蒸留塔からの全蒸留廃液を95℃で様々な時間保ち、実施例1にあるように濾過して結果を表5に示す。百分率は、pH7の0分間サンプルと比較したケーク比抵抗の相対変化である。いくつかの試験実験操作が実施され、表は代表的な例を示す。
0分間の欄(加熱処理のないサンプル)に見られるように、pH調節単独では、42%のケーク比抵抗の違いが生じた。加熱処理は、性能をさらに改善した。
pH5および180分間または210分間の場合、濾過ケーク比抵抗の70%の低下が繰りし達成された。
表5 pH調節され95℃で様々な時間加熱された発酵ブロスからの全蒸留廃液サンプルの濾過ケーク抵抗の変化
Figure 2013524839
pH6に調節された発酵ブロスからの濾液を、硫酸を使用して段階的にpH調節した。目視観測結果では、pHが低下すると、最初に透明であったサンプルが濁るようになった。表6に列挙する各pHで、一般方法に記載のとおりに濁度を分析した。表6の結果は、pHが低下すると濁度が増大したことを示す。したがってpHが下がるに連れて、先に溶解した物質が沈殿した。
表6 様々なpHにおける全蒸留廃液濾液の濁度
Figure 2013524839
pH7に調節された発酵ブロスからの全蒸留廃液を、硫酸を使用して段階的にpH調節した。表7に列挙した各pHで、ゼータ電位を分析した。表7の結果は、pHが低下すると蒸留廃液が動電学的により不安定になったが、迅速な凝固または軟凝集をサポートすると予期されるレベルにはならなかったことを示す(ゼータ電位0〜+/−5mV)。
表7 様々なpHにおける全蒸留廃液濾液のゼータ電位
Figure 2013524839
実施例4
短時間かつ高温を使用した全蒸留廃液の加熱処理
これらの実験では、長時間の比較的低温の加熱処理の代わりに、短時間の高温加熱処理を実施した。
全蒸留廃液は、一般方法に記載される高温短時間(HTST)機構内で処理された。サンプルを110℃または145℃のどちらかで30秒間保ち、実施例に1に記載されたようにして、各サンプルについてケーク比抵抗の相対変化を測定した。表8の結果は、短時間の高温が長時間の低温実験操作と同じ規模の抵抗低下を達成できたことを示す。110℃で30秒間で、既に抵抗に21%の低下があった。145℃で30秒間では、ケーク抵抗に45%の低下が観察された。
表8 高温で短時間加熱された全蒸留廃液サンプル中の濾過ケーク抵抗の変化
Figure 2013524839
実施例5
発酵ブロスの濾過ケーク抵抗に対する加熱処理の効果
この実施例では、FRF7発酵ブロスの加熱処理と、それに続く濾過を用いて実験操作を実施した。一般方法に記載される10プレートガラスOldershaw 2Lバッチ蒸留機構を全還流モードで使用して、いかなる留出物も除去せずに加熱処理を実施した。
FRF7発酵ブロスを約5℃での保存から取り出し、769グラムを2Lバッチポットに装入し、次に材料を93℃に加熱した。ポットをエタノール含有発酵ブロスの沸点である93℃に150分間保った。加熱処理が完結した後、濾過測定のためのFiltratest計器に輸送するための蓋付き瓶内に、ポット内の加熱処理した材料を全て入れた。濾過試験に先だってサンプル温度を維持するために、ボトルは蓋付きデュワー瓶内で輸送した。対応する非加熱処理FRF7発酵ブロスサンプルもまた、0分間サンプルとして提供した。
各サンプルを濾過し、濾過ケーク比抵抗を測定した。一般方法に記載されるFiltratest装置内での濾過操作を使用して、濾過性の変化を測定した。濾過ケーク抵抗の変化を表9に示す。
表9 Filtratestを使用した加熱発酵ブロスサンプルの濾過ケーク抵抗の変化
Figure 2013524839
百分率は、初期サンプルと比較したケーク比抵抗の相対変化を示す。93℃で150分間の加熱処理時間後、ケーク比抵抗は95%低下した。
実施例6
試験工場規模におけるリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスの製造
前処理
試験工場規模前処理装置(およそ370L)を使用して、1/8インチ(3.125mm)に粉砕されているトウモロコシ茎葉バッチを前処理した。茎葉を反応装置に装填し、水酸化アンモニウム溶液の装入に先だって容器を真空にして0.1バール(10キロパスカル)絶対圧にして、バイオマスの乾燥重量に対して、約8質量%のNH3を提供した。蒸気を添加して、温度を約140℃にした。この温度を30分間保った。前処理の終わりに、反応装置を制御された方式で圧抜きして大気圧にし、次に引き続いて真空にして、容器内圧力を約0.1バール(10キロパスカル)絶対圧に戻した。反応装置を出た前処理茎葉片は、約65質量%乾燥バイオマスであった。
糖化
バイオマス加水分解生成物を生じる糖化を1000L糖化容器内で実施した。固体装填率は25%であった。5質量%のH2SO4で、前処理トウモロコシ茎葉バイオマスのpHを5.3に調節した。酵素混合物を14mgのタンパク質/gグルカン+キシランで添加した。糖化酵素は、一般方法に記載されるH3A株調製品に類似した、RL−P37に由来するトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)株中で発現されるセルラーゼとヘミセルラーゼの混合物(Sheir−Neiss and Montenecourt(1984)Appl.Microbiol.Biotechnol.20:46−53)であり、H3A株調製品もまた使用し得る。糖化は47℃で72時間実施して、バイオマス加水分解生成物を生成した。
種培養調製
復活培養として、2mLの凍結ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)AR3 7−31保存株をMRM3G6(10g/LのBBL酵母抽出物、2g/LのKH2PO4、1g/LのMgSO4・7H2O、60g/Lのグルコース)中で、振盪せずに33℃で8時間培養した。1.5LのMRM3G10培地(MRM3G6と同一であるが100g/Lグルコースを添加)を含有する2Lの振盪フラスコに、10mLの復活培養を接種して、33℃で振盪しながら14〜16時間培養した。OD600が1.5〜3.1になるまで増殖させた。振盪フラスコ培養物を全て使用して、およそ0.05の初期OD600で、100L種培養発酵槽に接種した。
100L発酵槽内で、10g/Lの酵母抽出物、2g/LのKH2PO4、5g/LのMgSO4・7H2O、10mMのソルビトール、および150g/Lのグルコースと共に、種培養発酵を実施した。種培養発酵は、33℃およびpH5.5で実施した。50g/L未満へのグルコースの低下が初めて観察された後に、種培養を収穫し、グルコースはYSI 2700 SELECT(商標)Biochemistry Analyzer(YSI Life Sciences;Yellow Springs,OH)を使用して測定された。
発酵
発酵は、900Lのバイオマス加水分解生成物および100LのAR3 7−31種培養を含有する、1000Lパイロット規模発酵槽内で実施した。種培養の接種前に、10mMのソルビトールをバイオマス加水分解生成物に添加した。20質量%のNaOHによってpHを5.8に調節して維持した。実験操作中30℃〜33℃に48〜72時間保った。得られた最終発酵ブロスを加熱処理および濾過のための最終区域へ冷蔵輸送して、5℃で保存した。
実施例7
濾過ケーク抵抗に対するトウモロコシ茎葉からの発酵ブロスの加熱処理の効果
この実施例では、Y013発酵ブロスの加熱処理と、それに続く濾過を用いて操作を実施した。一般方法に記載される10プレートガラスOldershaw 2Lバッチ蒸留機構を全還流モードで使用して、いかなる留出物も除去せずに加熱処理を実施した。
Y013発酵ブロスを約5℃で保存から取り出し、676グラムを2Lバッチポットに装入し、次に材料を93℃に加熱した。ポットをエタノール含有発酵ブロスの沸点である93℃に180分間保った。蓋付き試料瓶を使用して、サンプルを93℃到達時、93℃で30分後、93℃で60分後、および93℃で180分後に採取した。濾過試験に先だってサンプル温度を維持するために、各ボトルは蓋付きデュワー瓶内で即座に輸送した。対応する非加熱処理Y013発酵ブロスサンプルは、標準試料としても提供した。
各サンプルを濾過し、濾過ケーク比抵抗を測定した。一般方法に記載されるFiltratest装置内の濾過操作を使用して、濾過性の変化を測定した。
加熱処理に先だって、pHをpH5.03に調節して試験を反復した。この場合、636グラムのpH調節した発酵ブロスを蒸留ポットに装入した。
濾過ケーク抵抗の変化を表10に示す。
表10 Filtratestを使用した加熱発酵ブロスサンプルの濾過ケーク抵抗の変化
Figure 2013524839
百分率は、初期サンプルと比較したケーク比抵抗の相対変化を示す。pH5.83およびpH5.03の場合、93℃で180分間の加熱処理後に、ケーク比抵抗は99%低下した。

Claims (11)

  1. a)エタノール、ブタノール、および1,3−プロパンジオールからなる群から選択される標的生成物を含んでなるリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスを提供するステップと;
    b)場合により、前記(a)のリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスから前記標的生成物を除去して枯渇ブロスを生成するステップと;
    c)それぞれ前記(a)の出発ブロスまたは前記(b)の出発枯渇ブロスと比較して、少なくとも約20%低い濾過ケーク抵抗を有するブロスまたは枯渇ブロスを生成するのに十分な温度と時間で、前記(a)のブロスまたは前記(b)の枯渇ブロスを処理するステップと;
    d)前記(c)の処理されたブロスまたは前記枯渇ブロスをフィルターに通過させ、それによって固体画分から液体画分を分離するステップ
    を含んでなる、リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスから液体画分を分離する方法。
  2. (c)の処理が約70℃〜約150℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 温度が約95℃〜約150℃である、請求項2に記載の方法。
  4. ステップ(c)の処理時間が約30秒間〜約210分間である、請求項1に記載の方法。
  5. ステップ(c)の処理が約110℃〜約150℃の温度において約30秒間〜約2分間行われる、請求項1に記載の方法。
  6. (a)のリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスまたは(b)の枯渇ブロスが、(c)の処理前または(c)の処理中に約pH6以下のpHに達する、請求項1に記載の方法。
  7. (d)のフィルターを通過させるステップが真空濾過または加圧濾過による、請求項1に記載の方法。
  8. 標的生成物がエタノールであり、ステップ(b)でエタノールが蒸留によってリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスから除去されて、全蒸留廃液である枯渇ブロスが生じる、請求項1に記載の方法。
  9. 標的生成物がブタノールであり、ステップ(b)でブタノールが溶剤抽出によってリグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスから除去されて、全蒸留廃液である枯渇ブロスが生じる、請求項1に記載の方法。
  10. リグノセルロース系バイオマス加水分解生成物発酵ブロスが、スイッチグラス、古紙、製紙業汚泥、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ苞葉、トウモロコシ茎葉、草、小麦、麦藁、干し草、大麦藁、稲藁、サトウキビバガス、穀類の加工から得られる構成要素、樹木、枝、根、葉、木片、おがくず、灌木および低木、野菜、果物、および花卉からなる群から選択されるバイオマスから生成される、請求項1に記載のシロップ。
  11. ステップ(d)の液体画分が再循環される、請求項1に記載の方法。
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