本発明は、有効な経口活性阻害剤であるポナチニブ(化合物1)及びその薬剤組成物及び用途に関する。化合物1の非常に有望な薬理活性プロフィールは、生化学試験、細胞系実験、動物実験及び現在までのヒトの臨床試験結果に基づいて具体的に明らかとなってきた。
以下により詳細に開示するように、化合物1は、経口活性のマルチターゲット(多標的化)キナーゼ阻害剤である。この化合物は、これまでに報告された最も高効力のBCR−ABL阻害剤であり、他の薬剤には耐性であって現在では治療できないT315I変異体を含む、あらゆる既知の標的変異形態を阻害することができる、最初の汎BCR−ABL阻害剤(pan-BCR-ABL inhibitor)である。この化合物は、第1相(フェーズ1)臨床試験において、ダサチニブ及びニロチニブが有効ではない患者を含む、難治性血液がん患者(多数のCML及びPh+ALL患者を含む)において、魅力ある安全性プロフィールと十分な抗白血病活性とを実証した。
化合物1の薬物動態学的及び薬力学的特性(これは体内でのそのキナーゼ阻害活性、吸収、分布、代謝及び排出の総和を表す)は、標的キナーゼを阻害する(BCR−ABLの場合には、耐性変異体を発現する細胞の増殖を抑制する)のに有効な濃度を達成することができる経口で生物学的利用が可能な化合物の特性を示す。現在までの魅力的な安全性プロフィールは、正常な機能に必要なキナーゼ活性の意図しない不適当な阻害を伴わずにそれらの目的を達成する際の成功をもたらす。
この選択性及び安全性プロフィールの意義は、BCR−ABL及びその変異体を超える多様なキナーゼを阻害する化合物1の強力な活性により強調される。例えば、化合物1はFLT3、FGF受容体ファミリーの4種類すべて、3種類のVEGF受容体のすべて、アンギオポイエチン受容体TIE2を阻害したが、インスリン受容体、オーロラキナーゼ、及びサイクリン依存性キナーゼファミリーを含む数多くの他種類のキナーゼに対して不活性であった。
従って、本発明は、次式で示される3−(イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)−メチル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド(化合物1)又はその薬学的に許容される塩を含有する薬剤組成物及びキット、並びにがん及び他の疾患の治療用へのその治療用途を特徴とする。
よって、本発明の1側面は、被治療者に投与された時に新生物、がん又は過剰増殖性疾患を治療するのに有効な量の化合物1又はその薬学的に許容される塩と1種又は2種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む経口投与に適した薬剤組成物に関する。化合物1又はその薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸塩であることができる。特定の態様では、この薬剤組成物は単位剤形に処方される。或る種の態様では、単位剤形は30〜300mgの化合物1を含有することができる。例示の単位剤形は、化合物1又はその薬学的に許容される塩を5〜100mg、5〜80mg、5〜50mg、5〜20mg、7〜100mg、7〜80mg、7〜50mg、7〜20mg、10〜100mg、10〜80mg、10〜50mg、15〜100mg、15〜80mg、15〜60mg、15〜50mg、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの量で含んでいる。別の態様では、単位剤形の含有量は20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mgとすることができる。単位剤形を例示すると、化合物1又はその薬学的に許容される塩の含有量が5±1mg、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgであるものが挙げられる。
別の態様では、薬剤組成物は固体の単位剤形(例、錠剤、軟カプセル又は硬カプセル)の形態に処方される。或る種の態様では、この単位剤形は30〜300mgの化合物1を含有することができる。例示の単位剤形は、化合物1又はその薬学的に許容される塩を5〜100mg、5〜80mg、5〜50mg、5〜20mg、7〜100mg、7〜80mg、7〜50mg、7〜20mg、10〜100mg、10〜80mg、10〜50mg、15〜100mg、15〜80mg、15〜60mg、15〜50mg、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの量で含んでいる。別の態様では、この単位剤形の含有量は5±1mg、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mgとすることができる。この単位剤形を例示すると、化合物1又はその薬学的に許容される塩の含有量が5±1mg、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgであるものが挙げられる。
別の側面では、本発明は、治療を要する被治療者の新生物、がん又は過剰増殖性疾患の治療方法であって、該被治療者に30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を経口投与することによる方法に関する。例示の単位剤形は、化合物1又はその薬学的に許容される塩を5〜100mg、5〜80mg、5〜50mg、5〜20mg、7〜100mg、7〜80mg、7〜50mg、7〜20mg、10〜100mg、10〜80mg、10〜50mg、15〜100mg、15〜80mg、15〜60mg、15〜50mg、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの量で含んでいる。別の態様では、この単位剤形の含有量は5±1mg、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mgとすることができる。この単位剤形を例示すると、化合物1又はその薬学的に許容される塩の含有量が5±1mg、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgであるものが挙げられる。
特定の態様では化合物1又はその薬学的に許容される塩の30〜300mgの平均日用量(例、化合物1又はその薬学的に許容される塩の20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの平均日用量;又は化合物1又はその薬学的に許容される塩の20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの平均日用量)を単位剤形の形態で被治療者に経口投与する。
化合物1又はその薬学的に許容される塩は、1週間に1日より多く、又は7日ごとに平均で4〜7回(例、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、又は1週間に7回)被治療者に投与することができる。或る種の態様では、化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に毎日投与する。
特定の態様では、被治療者は慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、脊髄異形成症候群、胃がん、子宮体がん、膀胱がん、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、肺がん、大腸がん、腎臓がん、又は神経膠芽腫に罹患している。さらに別の態様では、被治療者はイマチニブ、ニロチニブ又はダサチニブによる治療に抵抗性(難治性)の状態にある。さらなる態様では、被治療者はイマチニブ、ニロチニブ又はダサチニブによる治療に不耐性の状態にある。別の態様では、被治療者はフィラデルフィア染色体陽性状態にある。さらに別の態様では、被治療者はVEGF又はVEGF−R阻害剤又はアンタゴニスト(例、ベバシズマブ、ソラフェニブ、又はスニチニブ)による治療に抵抗性の充実性(固体)がんに罹患している。さらなる態様では、被治療者はVEGF又はVEGF−R阻害剤又はアンタゴニスト(例、ベバシズマブ、ソラフェニブ、又はスニチニブ)による治療に不耐性の状態にある。一部の態様では、被治療者はBCR−ABL変異体(例、BCR−ABLT315I、BCR−ABLF317L、又はBCR−ABF359C)を発現するがんに罹患している。別の態様では、被治療者は、FLT3、KIT、FGFR1、又はPDGFRα変異体(例、FLT3−ITD、c−KIT、FGFR1OP2−FGFR1、又はF1P1L1−PDGFRα)を発現するがんに罹患している。さらなる態様では、化合物1又はその薬学的に許容される塩をmTOR阻害剤と一緒に又は併用して、それぞれ当該新生物、がん、又は過剰増殖性疾患の治療に一緒にした時に有効な量で投与する。一部の態様では、mTOR阻害剤は、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムス、バイオオリムス、ゾタロリムス、LY294002、Pp242、WYE−354,Ku−0063794、XL765、AZD8055、NVP−BEZ235、OSI−027、ワートマンニン、クエルセチン、ミリセンチン(myricentin)、及びスタウロスポリン並びにそれらの薬学的に許容される塩から選ばれる。
さらなる態様では、本発明は、(i)被治療者に投与された時に新生物、がん又は過剰増殖性疾患を治療するのに有効な量の化合物1又はその薬学的に許容される塩と1種又は2種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む経口投与に適した薬剤組成物,並びに(ii)この薬剤組成物を新生物、がん又は過剰増殖性疾患の治療のために被治療者に投与するための使用説明書を備えたキットに関する。一部の態様では、被治療者は慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、脊髄異形成症候群、胃がん、子宮体がん、膀胱がん、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、肺がん、大腸がん、腎臓がん、又は神経膠芽腫に罹患している。
さらに別の側面では、本発明は、治療を要する被治療者の新生物、がん又は過剰増殖性疾患を、5〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を該被治療者に経口投与することにより治療する方法に関する。例示の単位剤形は、化合物1又はその薬学的に許容される塩を5〜100mg、5〜80mg、5〜50mg、5〜20mg、7〜100mg、7〜80mg、7〜50mg、7〜20mg、10〜100mg、10〜80mg、10〜50mg、15〜100mg、15〜80mg、15〜60mg、15〜50mg、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの量で含んでいる。別の態様では、この単位剤形は、化合物1又はその薬学的に許容される塩を5±1mg、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの量で含有しうる。
特定の態様では化合物1又はその薬学的に許容される塩の5〜300mg平均日用量(例、化合物1又はその薬学的に許容される塩の5〜100mg、5〜80mg、5〜50mg、5〜20mg、7〜100mg、7〜80mg、7〜50mg、7〜20mg、10〜100mg、10〜80mg、10〜50mg、15〜100mg、15〜80mg、15〜60mg、15〜50mg、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの平均日用量;又は化合物1又はその薬学的に許容される塩の5±1mg、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの平均日用量)を単位剤形の形態で被治療者に経口投与する。
さらなる態様では、上記方法は、化合物1について40〜600nMの平均定常状態トラフ(trough) 濃度を生ずる量、投与頻度及び投与期間で化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に投与することにより該被治療者のがん細胞の増殖を阻害する;化合物1について40〜600nMの平均定常状態トラフ濃度を生ずる量、投与頻度及び投与期間で化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に投与することにより該被治療者の血管新生を阻害する;30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を、必要とする被治療者に毎日経口投与することにより該被治療者の血管新生を阻害する;化合物1について40〜600nMの平均定常状態トラフ濃度を生ずる量、投与頻度及び投与期間で化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に投与することにより該被治療者のBCR−ABL発現性細胞の増殖を阻害する;BCR−ABL発現性細胞の増殖を、必要とする抵抗性サブクローンの出現を抑制するのに十分な量の化合物1又はその薬学的に許容される塩に該細胞を接触させることによって、抵抗性サブクローンの出現を抑制しながら阻害する;複合変異体(compound mutant)の出現を抑制しながらBCR−ABL発現性細胞の増殖を阻害する、本方法は、複合変異体の出現を抑制するのに十分な量の化合物1又はその薬学的に許容される塩に該細胞を接触させることを含む;30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を、必要とする被治療者に毎日経口投与することにより該被治療者のBCR−ABL発現性細胞又はその変異体の増殖を阻害する;又は30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を、必要とする被治療者に毎日経口投与することにより該被治療者の変異体発現性細胞の増殖を阻害することを含む。
ここに述べた側面のいずれにおいても、単位剤形及び平均日用量における化合物1の量は、より低い投与量(例、小児用のより低い投与量)に変更することができる。一部の態様では、単位剤形は5〜300mg又は平均日用量は5〜300mgを含有する。或る種の態様では、単位剤形は5〜100mg、5〜80mg、5〜50mg、5〜20mg、7〜100mg、7〜80mg、7〜50mg、7〜20mg、10〜100mg、10〜80mg、10〜50mg、15〜100mg、15〜80mg、15〜60mg、15〜50mg、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含有しうる。例示の単位剤形は、5±1mg、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの化合物1またはその薬学的に許容される塩を有するものである。
1側面において、本発明は、30〜300mgの化合物1またはその薬学的に許容されるを含有する単位剤形の形態の経口投与用に処方された薬剤組成物に関する。特定の態様では、この単位剤形形態は、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含有しうる。特定の態様では、単位剤形は20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含有しうる。化合物1又はその薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸塩であることができる。
別の側面において、本発明は、化合物1について40〜600nMの平均定常状態トラフ濃度を生ずる量、投与頻度及び投与期間で化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に投与することにより該被治療者のがん細胞の増殖を阻害する方法に関する。或る種の態様では、この化合物1の平均定常状態トラフ濃度は40〜200nM、50〜200nM、60〜200nM、70〜200nM、80〜200nM、90〜200nM、40〜120nM、50〜120nM、60〜120nM、70〜120nM、80〜120nM、200〜600nM、220〜600nM、240〜600nM、250〜600nM、270〜600nM、280〜600nM、200〜400nM、200〜300nM、250〜400nM、300〜500nM、350〜550nM、400〜600nM、又は450〜600nMである。化合物1又はその薬学的に許容される塩は、7日ごとに平均で4〜7回(例、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、又は1週間に7回)該被治療者に投与することができる。或る種の態様では、化合物1又はその薬学的に許容される塩を該被治療者に毎日投与する。
特定の態様では化合物1又はその薬学的に許容される塩の30〜300mgの平均日用量(例、化合物1又はその薬学的に許容される塩の20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの平均日用量;又は化合物1又はその薬学的に許容される塩の20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの平均日用量)を単位剤形の形態で該被治療者に経口投与する。特定の態様では、被治療者は、胃がん、子宮体がん、膀胱がん、多発性骨髄腫、乳がん、又は本書に記載した他のがんに罹患している。別の態様では、被治療者は慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、又は急性骨髄性白血病に罹患している。さらに別の態様では、被治療者は脊髄異形成症候群(例、第1群芽球過剰の不反応性貧血(RAEBI)又は第2群芽球過剰の不反応性貧血(RAEBII))に罹患している。
別の側面において、本発明は、30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を、必要とする被治療者に毎日経口投与することにより該被治療者のがん細胞の増殖を阻害する方法に関する。或る種の態様では、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に毎日経口投与する。特定の態様では、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に毎日経口投与する。特定の態様では、被治療者は、胃がん、子宮体がん、膀胱がん、多発性骨髄腫、乳がん、又は本書に記載した他のがんに罹患している。別の態様では、被治療者は慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病又は急性骨髄性白血病に罹患している。さらに別の態様では、被治療者は脊髄異形成症候群(例、第1群芽球過剰の不反応性貧血(RAEBI)又は第2群芽球過剰の不反応性貧血(RAEBII))に罹患している。
別の側面では、本発明は、化合物1について40〜600nMの平均定常状態トラフ濃度を生ずる量、投与頻度及び投与期間で化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に投与することにより該被治療者の血管新生を阻害する方法に関する。或る種の態様では、この化合物1の平均定常状態トラフ濃度は40〜200nM、50〜200nM、60〜200nM、70〜200nM、80〜200nM、90〜200nM、40〜120nM、50〜120nM、60〜120nM、70〜120nM、80〜120nM、200〜600nM、220〜600nM、240〜600nM、250〜600nM、270〜600nM、280〜600nM、200〜400nM、200〜300nM、250〜400nM、300〜500nM、350〜550nM、400〜600nM、又は450〜600nMである。化合物1又はその薬学的に許容される塩は、7日ごとに平均で4〜7回(例、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、又は1週間に7回)該被治療者に投与することができる。或る種の態様では、化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に毎日投与する。
特定の態様では化合物1又はその薬学的に許容される塩の30〜300mgの平均日用量(例、化合物1又はその薬学的に許容される塩の20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの平均日用量;又は化合物1又はその薬学的に許容される塩の20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの平均日用量)を単位剤形の形態で被治療者に経口投与する。特定の態様では、被治療者は、前立腺がん、肺がん、乳がん、大腸がん、腎臓がん、又は神経膠芽腫に罹患している。さらに別の態様では、被治療者は、VEGF又はVEGF−R阻害剤又はアンタゴニスト(例、ベバシズマブ、ソラフェニブ、又はスニチニブ)による治療に抵抗性の充実性がんに罹患している。さらに別の態様では、被治療者はVEGF又はVEGF−R阻害剤又はアンタゴニスト(例、ベバシズマブ、ソラフェニブ、又はスニチニブ)による治療に不耐性の充実性がんに罹患している。或る種の態様では、被治療者は、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、慢性炎症、肥満症、黄斑変性症、又は心血管疾患のような病的(aberrant)血管新生に関連する疾患を有する。
別の側面において、本発明は、30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を、必要とする被治療者に毎日経口投与することにより、該被治療者の血管新生を阻害する方法に関する。或る種の態様では、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に毎日経口投与する。特定の態様では、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に毎日経口投与する。特定の態様では、被治療者は、前立腺がん、肺がん、乳がん、大腸がん、腎臓がん、又は神経膠芽腫に罹患している。さらに別の態様では、被治療者は、VEGF又はVEGF−R阻害剤又はアンタゴニスト(例、ベバシズマブ、ソラフェニブ、又はスニチニブ)による治療に抵抗性の充実性がんに罹患している。さらに別の態様では、被治療者はVEGF又はVEGF−R阻害剤又はアンタゴニスト(例、ベバシズマブ、ソラフェニブ、又はスニチニブ)による治療に不耐性の充実性がんに罹患している。或る種の態様では、被治療者は、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、慢性炎症、肥満症、黄斑変性症、又は心血管疾患のような異常(病的な)血管新生に関連する疾患を有する。
別の側面において、本発明は、(i)30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含んでいる単位剤形の形態で経口投与用に処方された薬剤組成物,並びに(ii)がんの治療又は病的血管新生に関する疾患の治療のために被治療者にこの薬剤組成物を投与するための使用説明書を備えたキットに関する。或る種の態様では、前記単位剤形は、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含有しうる。特定の態様では、前記単位剤形は、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含有しうる。特定の態様では、被治療者は、胃がん、子宮体がん、膀胱がん、多発性骨髄腫、乳がん、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、脊髄異形成症候群(例、第1群芽球過剰の不反応性貧血(RAEBI)又は第2群芽球過剰の不反応性貧血(RAEBII))、又は本書に記載した他のがんに罹患している。或る種の態様では、被治療者は、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、慢性炎症、肥満症、黄斑変性症、又は心血管疾患に罹患している。
別の側面では、本発明は、化合物1について40〜600nMの平均定常状態トラフ濃度を生ずる量、投与頻度及び投与期間で化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に投与することにより被治療者のBCR−ABL発現性細胞の増殖を阻害する方法に関する。或る種の態様では、化合物1の平均定常状態トラフ濃度は40〜200nM、50〜200nM、60〜200nM、70〜200nM、80〜200nM、90〜200nM、40〜120nM、50〜120nM、60〜120nM、70〜120nM、80〜120nM、200〜600nM、220〜600nM、240〜600nM、250〜600nM、270〜600nM、280〜600nM、200〜400nM、200〜300nM、250〜400nM、300〜500nM、350〜550nM、400〜600nM、又は450〜600nMである。化合物1またはその薬学的に許容される塩は、耐性サブクローンの出現を抑制するのに十分な量、または複合変異体の出現を抑制するのに十分な量で投与することができる。化合物1又はその薬学的に許容される塩は、7日ごとに平均で4〜7回(例、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、又は1週間に7回)の頻度で、2週間、1カ月、2カ月、4カ月、8カ月、1年、又は18カ月の連続治療を含む期間にわたって被治療者に投与することができる。或る種の態様では、化合物1又はその薬学的に許容される塩は被治療者に毎日投与される。
特定の態様では化合物1又はその薬学的に許容される塩の30〜300mgの平均日用量(例、化合物1又はその薬学的に許容される塩の20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの平均日用量;又は化合物1又はその薬学的に許容される塩の20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの平均日用量)を単位剤形の形態で被治療者に経口投与する。特定の態様では、被治療者は、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、又は急性骨髄性白血病から選ばれた疾患に罹患している。さらに別の態様では、前記疾患は化合物1以外の別のキナーゼ阻害剤による治療に抵抗性(例、イマチニブ、ニロチニブ又はダサチニブによる治療に抵抗性)である。さらに別の態様では、被治療者は、VEGF又はVEGF−R阻害剤又はアンタゴニスト(例、ベバシズマブ、ソラフェニブ、又はスニチニブ)による治療に不耐性の充実性がんに罹患している。
別の側面では、本発明は、BCR−ABL発現性細胞の増殖を、該細胞を抵抗性サブクローンの出現を抑制するのに十分な量の化合物1又はその薬学的に許容される塩と接触させることにより、抵抗性サブクローンの出現を抑制しながら阻害する方法に関する。該細胞は、20〜320nM、30〜320nM、20〜220nM、30〜220nM、20〜120nM、30〜120nM、40〜320nM、40〜220nM、40〜120nM、50〜320nM、50〜220nM、50〜120nM、70〜320nM、70〜220nM、90〜320nM、90〜220nM、110〜320nM、又は110〜220nMの化合物1又はその薬学的に許容される塩と接触させることができる。該細胞と化合物1又はその薬学的に許容される塩との接触は、2週間、1カ月、2カ月、4カ月、8カ月、1年、又は18カ月の連続露出を含む期間にわたって行うことができる。
別の側面では、本発明は、BCR−ABL発現性細胞の増殖を、該細胞を複合変異体の出現を抑制するのに十分な量の化合物1又はその薬学的に許容される塩と接触させることにより、複合変異体の出現を抑制しながら阻害する方法に関する。該細胞は、160nM〜1μM、260nM〜1μM、360nM〜1μM、160〜800nM、260〜800nM、360〜800nM、160〜600nM、260〜600nM、360〜600nM、160〜400nM、260〜400nM、360〜500nM、又は460〜600nMの化合物1又はその薬学的に許容される塩と接触させることができる。該細胞と化合物1又はその薬学的に許容される塩との接触は、2週間、1カ月、2カ月、4カ月、8カ月、1年、又は18カ月の連続露出を含む期間にわたって行うことができる。
上記方法のいずれにおいても、前記細胞は、化合物1以外のキナーゼ阻害剤による治療に抵抗性(例、イマチニブ、ニロチニブ又はダサチニブによる治療に抵抗性)のものであることができる。上記方法のいずれにおいても、前記細胞は、VEGF又はVEGF−R阻害剤又はアンタゴニスト(例、ベバシズマブ、ソラフェニブ、又はスニチニブ)による治療に不耐性のものであることができる。
別の側面において、本発明は、30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を、必要とする被治療者に毎日経口投与することにより該被治療者のBCR−ABL発現性細胞の増殖を阻害する方法に関する。或る種の態様では、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に毎日経口投与する。特定の態様では、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に毎日経口投与する。
化合物1又はその薬学的に許容される塩の投与は、抵抗性サブクローンの出現を抑制するのに十分な量で、又は複合変異体の出現を抑制するのに十分な量で行うことができる。特定の態様では、被治療者は慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病又は急性骨髄性白血病から選ばれた疾患に罹患している。さらに別の態様では、前記疾患は、化合物1以外のキナーゼ阻害剤による治療に抵抗性のもの(例、イマチニブ、ニロチニブ又はダサチニブによる治療に抵抗性の疾患)である。さらに別の態様では、前記疾患は、化合物1以外のキナーゼ阻害剤による治療に不耐性のもの(例、イマチニブ、ニロチニブ又はダサチニブによる治療に不耐性の疾患)である。化合物1又はその薬学的に許容される塩は、7日ごとに平均で4〜7回(例、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、又は1週間に7回)の頻度で、2週間、1カ月、2カ月、4カ月、8カ月、1年、又は18カ月の連続治療を含む期間にわたって被治療者に投与することができる。或る種の態様では、化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に投与することができる。或る種の態様では、化合物1又はその薬学的に許容される塩は被治療者に毎日投与される。
別の側面では、本発明は、(i)30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含んでいる単位剤形の形態で経口投与用に処方された薬剤組成物、並びに(ii)BCR−ABL発現性細胞の増殖に関連する疾患に罹患した被治療者にこの薬剤組成物を投与するための使用説明書、を備えたキットに関する。或る種の態様では、前記単位剤形は、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含有しうる。特定の態様では、前記単位剤形は、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含有しうる。化合物1又はその薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸塩であることができる。特定の態様では、被治療者は慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病又は急性骨髄性白血病から選ばれた疾患に罹患している。さらに別の態様では、前記疾患は、化合物1以外のキナーゼ阻害剤による治療に抵抗性のもの(例、イマチニブ、ニロチニブ又はダサチニブによる治療に抵抗性の疾患)である。さらに別の態様では、前記疾患は、化合物1以外のキナーゼ阻害剤による治療に不耐性のもの(例、イマチニブ、ニロチニブ又はダサチニブによる治療に不耐性の疾患)である。
別の側面において、本発明は、30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を、必要とする被治療者に毎日経口投与することにより該被治療者の変異体発現性細胞の増殖を阻害する方法に関する。或る種の態様では、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に毎日経口投与する。特定の態様では、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を被治療者に毎日経口投与する。
或る種の態様では、前記変異体は、FLT3変異体(例、FLT3−ITD)、KIT変異体(例、c−KIT若しくはN822K),FGFR1変異体(例、FGFR1OP2−FGFR1)、PDGFRα変異体(例、F1P1L1−PDGFRα)、又は本書に記載した任意の変異体である。別の態様では、被治療者は、急性骨髄性白血病又は脊髄異形成症候群(例、第1群芽球過剰の不反応性貧血(RAEBI)又は第2群芽球過剰の不反応性貧血(RAEBII))に罹患している。さらに別の態様では、前記疾患は、化合物1以外のキナーゼ阻害剤による治療に抵抗性のもの(例、イマチニブ、ニロチニブ又はダサチニブによる治療に抵抗性の疾患)である。さらに別の態様では、前記疾患は、化合物1以外のキナーゼ阻害剤による治療に不耐性のもの(例、イマチニブ、ニロチニブ又はダサチニブによる治療に不耐性の疾患)である。化合物1又はその薬学的に許容される塩は、7日ごとに平均で4〜7回(例、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、又は1週間に7回)の頻度で、2週間、1カ月、2カ月、4カ月、8カ月、1年、又は18カ月の連続治療を含む期間にわたって被治療者に投与することができる。或る種の態様では、化合物1又はその薬学的に許容される塩は被治療者に毎日投与される。
1側面において、本発明は、化合物1又はその薬学的に許容される塩をmTOR阻害剤と一緒に又は併用して、それぞれを一緒になった時にがんの治療に有効な量で被治療者に投与することにより、治療を要する被治療者のがんを治療する方法に関する。別の側面では、本発明は、化合物1又はその薬学的に許容される塩をmTOR阻害剤と一緒に又は併用して、それぞれを一緒になった時に新生物の治療に有効な量で被治療者に投与することにより、治療を要する被治療者の新生物を治療する方法に関する。別の側面では、本発明は、化合物1又はその薬学的に許容される塩をmTOR阻害剤と一緒に又は併用して、それぞれを一緒になった時に血管新生の阻害に有効な量で、必要とする被治療者に投与することにより該被治療者の血管新生を阻害する方法に関する。別の側面では、本発明は、化合物1又はその薬学的に許容される塩をmTOR阻害剤と一緒に又は併用して、それぞれを一緒になった時に細胞増殖の阻害に有効な量で細胞と接触させることにより、細胞増殖を阻害する方法に関する。
以上の側面のいずれにおいても、mTOR阻害剤は、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムス、バイオリムス、ゾタロリムス、及びそれらの薬学的に許容される塩から選ばれるラパマイシン系マクロライドでよい。望ましくは、mTOR阻害剤はリダフォロシムス又はその薬学的に許容される塩である。別の態様では、mTOR阻害剤はLY294002、Pp242、WYE−354,Ku−0063794、XL765、AZD8055、NVP−BEZ235、OSI−027、ワートマンニン、クエルセチン、ミリセンチン、及びスタウロスポリン並びにそれらの薬学的に許容される塩から選ばれる非ラパマイシンアナログである。
併用療法としては、化合物1又はその薬学的に許容される塩とmTOR阻害剤とを、他方の投与から12日以内、8日以内、5日以内、4日以内、3日以内、又は2日以内に併用して投与する;化合物1又はその薬学的に許容される塩とmTOR阻害剤とを他方の投与から24時間以内に併用して投与する;又は化合物1又はその薬学的に許容される塩とmTOR阻害剤とを一緒に投与する投与計画を含むことができる。化合物1とmTOR阻害剤とは、本書に記載したいずれかの投与計画を用いて本発明の併用療法として投与することができる。
ある種の態様では、化合物1又はその薬学的に許容される塩を低容量で投与する;又はmTOR阻害剤を低容量で投与する;又は化合物1とmTOR阻害剤とをどちらも低用量で投与する。
特定の態様では、上記併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容される塩を、化合物1について40〜600nMの平均定常状態トラフ濃度を生ずる量、投与頻度及び投与期間で被治療者に投与することを含む。例えば、この化合物1の平均定常状態トラフ濃度は10〜100nM、10〜60nM、15〜100nM、15〜70nM、20〜100nM、40〜200nM、50〜200nM、60〜200nM、70〜200nM、80〜200nM、90〜200nM、40〜120nM、50〜120nM、60〜120nM、70〜120nM、80〜120nM、200〜600nM、220〜600nM、240〜600nM、250〜600nM、270〜600nM、280〜600nM、200〜400nM、200〜300nM、250〜400nM、300〜500nM、350〜550nM、400〜600nM、又は450〜600nMとすることがでる。化合物1又はその薬学的に許容される塩は、7日ごとに平均で4〜7回(例、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、又は1週間に7回)被治療者に投与することができる。或る種の態様では、化合物1又はその薬学的に許容される塩は被治療者に毎日投与される。
特定の態様では化合物1又はその薬学的に許容される塩の30〜300mgの平均日用量(例、化合物1又はその薬学的に許容される塩の10〜70mg、10〜50mg、10〜30mg、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの平均日用量;又は化合物1又はその薬学的に許容される塩の7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの平均日用量)を単位剤形の形態で被治療者に経口投与する。
本発明の併用療法は、膀胱、胸部(乳部)、大腸、腎臓、肝臓、肺、頭頚部、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頚部、甲状腺、前立腺、又は皮膚のがん;扁平上皮がん;子宮内膜がん(子宮体がん);多発性骨髄腫;リンパ系の造血腫瘍(例、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞白血病、T細胞白血病、ホジキン型白血病、非ホジキン型白血病、ヘアリー細胞白血病、若しくはバーキット白血病);骨髄系の造血腫瘍(例、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、若しくは前骨髄球性白血病);間葉由来の腫瘍(例、線維肉腫若しくは横紋筋肉腫);中枢若しくは末梢神経系の腫瘍(例、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、若しくは神経鞘腫);黒色腫(メラノーマ);セミノーマ;奇形がん(テラトカルシノーマ);骨肉腫;又はカポジ肉腫に罹患した被治療者の治療に用いることができる。ある種の態様では、被治療者は、非小細胞型肺がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、唾液腺がん、膵臓がん、子宮体がん、大腸がん、腎臓がん、頭頸部がん、胃がん、多発性骨髄腫、甲状腺濾過胞がん、又は多形性神経膠芽腫に罹患している。
本発明の併用療法は、病的血管新生に関連する疾患を有する被治療者を治療するのに使用することができる。病的血管新生に関連する疾患は、充実性腫瘍(例、前立腺がん、肺がん、乳がん、大腸がん、腎臓がん、神経膠芽腫又は本書に記載したいずれかの充実性腫瘍)、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、慢性炎症、肥満症、黄斑変性症、或いは心血管疾患であってもよい。
関連する側面において、本発明は、化合物1若しくはその薬学的に許容される塩、mTOR阻害剤、並びに薬学的に許容される担体若しくは希釈剤を含む薬剤組成物に関する。或る種の態様では、mTOR阻害剤は、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムス、バイオリムス、ゾタロリムス、及びそれらの薬学的に許容される塩から選ばれるラパマイシン系マクロライドである。望ましくは、mTOR阻害剤はリダフォロシムス又はその薬学的に許容される塩である。別の態様では、mTOR阻害剤はLY294002、Pp242、WYE−354,Ku−0063794、XL765、AZD8055、NVP−BEZ235、OSI−027、ワートマンニン、クエルセチン、ミリセンチン、スタウロスポリン及びそれらの薬学的に許容される塩から選ばれる非ラパマイシンアナログである。
本発明はさらに、(i)30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含んでいる単位剤形の形態で経口投与用に処方された薬剤組成物、並びに(ii)mTOR阻害剤を含んでいる第2の薬剤組成物を備え、第1の薬剤組成物と第2の薬剤組成物とが個々の投与量で別々に処方されているキットに関する。
本発明はまた、30〜300mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩と、mTOR阻害剤、とを含んでいる、単位剤形の形態で経口投与用に処方された薬剤組成物を備えているキットにも関する。
或る種の態様の上記キットでは、上記単位剤形は、10〜70mg、10〜50mg、10〜30mg、20〜100mg、20〜80mg、20〜50mg、30〜100mg、35〜100mg、40〜100mg、50〜100mg、60〜100mg、70〜100mg、30〜80mg、35〜80mg、40〜80mg、50〜80mg、60〜80mg、50〜300mg、60〜300mg、70〜300mg、50〜200mg、60〜200mg、70〜200mg、100〜300mg、120〜300mg、140〜300mg、又は100〜200mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含有しうる。特定の態様では、上記単位剤形は、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、40±8mg、45±9mg、55±11mg、60±12mg、65±13mg、70±14mg、75±15mg、80±16mg、90±18mg、100±20mg、120±24mg、140±28mg、160±32mg、180±36mg、200±40mg、220±44mg、240±48g、又は260±52mgの化合物1又はその薬学的に許容される塩を含有しうる。
或る種の態様の上記キットでは、mTOR阻害剤は、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムス、バイオリムス、ゾタロリムス、及びそれらの薬学的に許容される塩から選ばれるラパマイシン系マクロライドである。別の態様の上記キットでは、mTOR阻害剤はLY294002、Pp242、WYE−354,Ku−0063794、XL765、AZD8055、NVP−BEZ235、OSI−027、ワートマンニン、クエルセチン、ミリセンチン、及びスタウロスポリン並びにそれらの薬学的に許容される塩から選ばれる非ラパマイシンアナログである。
本発明のキットはさらに、化合物1又はその薬学的に許容される塩とmTOR阻害剤とを、がんに罹患した被治療者(例、膀胱、胸部(乳部)、大腸、腎臓、肝臓、肺、頭頚部、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頚部、甲状腺、前立腺、又は皮膚のがん;扁平上皮がん;子宮体がん;多発性骨髄腫;リンパ系の造血腫瘍(例、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞白血病、T細胞白血病、ホジキン型白血病、非ホジキン型白血病、ヘアリー細胞白血病、若しくはバーキット白血病);骨髄系の造血腫瘍(例、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、若しくは前骨髄球性白血病);間葉由来の腫瘍(例、線維肉腫若しくは横紋筋肉腫);中枢若しくは末梢神経系の腫瘍(例、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、若しくは神経鞘腫);黒色腫;セミノーマ;奇形がん;骨肉腫;又はカポジ肉腫に罹患した被治療者)の治療、或いは病的血管新生に関連する疾患(例、充実性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、慢性炎症、肥満症、又は黄斑変性症)に罹患した被治療者の治療用に投与するための使用説明書を備えることができる。
本発明の上記方法において、化合物1及びmTOR阻害剤の投与の用量及び投与頻度は互いに独立して調整することができる。例えば、一方の化合物を毎日経口投与する一方で、他方の化合物は1日に1回静脈内投与することができる。1回の投与で両方の化合物を送りこむように両化合物を一緒に処方することもできる。
mTOR阻害剤及び化合物1の代表的な投与量は、疾患の種類及び程度、被治療者の全般的な健康状態、選択したmTOR阻害剤の治療指数、両化合物の投与経路などの因子に応じて変動しよう。標準的な臨床試験を用いて本発明の任意の具体的な組み合わせに対して用量及び投与頻度を最適化してもよい。
本発明において有用な化合物は、ジアステレオマー及びエナンチオマーのような異性体、異性体混合物、並びにそれらの塩を包含する、それらの薬学的に許容される任意の形態において本書に記載した化合物を包含する。
定義:
本書に用いた「BCR−ABL発現性細胞」なる用語は、野生(非変性)型BCR−ABL、耐性サブクローン、又はBCR−ABLの複合変異体のいずれかを発現する細胞を意味する。
本書に用いた「平均定常状態トラフ濃度」とは、定常状態薬物動態を生ずるのに十分な期間にわたって投与された(例、23日間の毎日の投与)本発明の治療法のための投与計画の一部として1群の被治療者について観察された化合物1の平均血漿中濃度を意味し、ここで平均トラフ濃度は、その投与計画の次に予定された投与直前(例1時間以内)の時点での被治療者全員を通しての平均血中濃度である(例、毎日の投与計画の場合、トラフ濃度は化合物1の投与から約24時間後でその翌日の投与の直前に測定される)。
「複合変異体の出現を抑制するのに十分な量」とは、BCR−ABL発現性細胞の増殖を阻害するのに必要な化合物1の最小濃度で見られる複合変異体の出現率に比較して、in vitro又はin vivoで複合変異体の出現を測定可能に低減する化合物1の量を意味する。
「耐性サブクローンの出現を抑制するのに十分な量」とは、BCR−ABL発現性細胞の増殖を阻害するのに必要な化合物1の最小濃度で見られる耐性サブクローンの出現率に比較して、in vitro又はin vivoで耐性サブクローンの出現を測定可能に低減する化合物1の量を意味する。
「BCR−ABL発現性細胞の増殖を阻害する」とは、in vitro又はin vivoにおけるBCR−ABL細胞の成長速度を測定可能に遅くする、停止させる、又は逆転させることを意味する。望ましくは、この成長速度の遅速率は、細胞成長速度を測定するための適当なアッセイ法(例、本書に記載した細胞成長アッセイ法)を用いて測定した場合で、20%以上、30%以上、50%以上、さらには70%以上である。
「がん細胞の増殖を阻害する」とは、in vitro又はin vivoでがん細胞の成長速度を測定可能に遅くする、停止させる、又は逆転させることを意味する。望ましくは、この成長速度の遅速率は、細胞成長速度を測定するための適当なアッセイ法(例、本書に記載した細胞成長アッセイ法)を用いて測定した場合で、20%以上、30%以上、50%以上、さらには70%以上である。
「細胞の増殖を阻害する」とは、in vitro又はin vivoで細胞の成長速度を測定可能に遅くする、停止させる、又は逆転させることを意味する。望ましくは、この成長速度の遅速率は、細胞成長速度を測定するための適当なアッセイ法(例、本書に記載した細胞成長アッセイ法)を用いて測定した場合で、20%以上、30%以上、50%以上、さらには70%以上である。
「投与」又は「投与する」なる用語は、哺乳動物にある量の薬剤組成物を与える方法を意味し、ここで、該方法は、例えば、経口、静脈内、腹腔内、動脈内、又は筋肉内である。好ましい投与方法は、例えば、薬剤組成物の成分、潜在的又は実際の疾患の部位、並びに疾患の重篤度といった多様な因子に依存して変動しうる。化合物1は一般的には経口投与されるが、他の投与経路も本発明の方法を実施するのに有用でありうる。
「単位剤形」なる用語は、丸剤、錠剤、カプレット剤、硬カプセル又は軟カプセルといった、一体化した投薬形態として適当な物理的に分離した単位を意味する。
本書で用いた「薬学的に許容される塩」なる用語は、製薬業界で慣用されている、無毒な酸付加塩又は金属複合体若しくは錯体といった、いずれかの薬学的に許容される塩を意味する。酸付加塩の例としては、酢酸、乳酸、パモ酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、若しくはトリフルオロ酢酸などの有機酸の塩、並びに塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸の塩が挙げられる。
本書で用いた「治療する」又は「処置する」とは、予防及び/又は治療のために薬剤組成物を投与することを意味する。「疾患の予防」とは、まだ罹病の状態ではないが、ある特定の疾患に対して感受性があるか、又は何らかの他の危険性をもつ被治療者に予防的治療を施すことを意味する。「疾患の治療」又は「治療処置」への使用とは、既にある疾患に罹患している被治療者に対して、被治療者の症状の改善又は安定化のために治療を施すことを意味する。従って、本願の特許請求の範囲及び明細書においては、治療することは、治療又は予防目的で被治療者に投薬することである。
mTOR阻害剤及び化合物1を「併用して」投与するとは、mTOR阻害剤と化合物1とを別々の処方して、互いから2、3、4、5、6又は7日以内に別々に投与することを意味する。
mTOR阻害剤と化合物1とを「一緒に」投与するとは、mTOR阻害剤と化合物1とを単一の薬剤組成物中に一緒に処方し、一緒に投与することを意味する。
本書で用いた、新生物、がん又は過剰増殖性疾患を「治療するのに有効な量」とは、細胞増殖自体を遅らせるか、細胞の発生部位から体内の別の場所への拡がりを遅らせるか、又はその新生物、がん又は過剰増殖性疾患により起こる症状を軽減する化合物1の量を意味する。新生物、がん又は過剰増殖性疾患が本書に記載した治療法に応答した時に軽減される症状は、痛み、並びに他の種類の不快感を包含する。
併用療法に関しては、新生物又はがんを「治療するのに有効な量」とは、細胞増殖自体を遅らせるか、細胞の発生部位から体内の別の場所への拡がりを遅らせるか、又はその新生物又はがんにより起こる症状を軽減する化合物1及びmTOR阻害剤の量を意味する。新生物又はがんが本書に記載した併用療法に応答した時に軽減される症状は、痛み、並びに他の種類の不快感を包含する。
「被治療者」及び「患者」なる用語は、本書では互換可能に使用される。これらの用語は、疾患又は症状(例、がん、新生物、又は病的血管新生)に罹患する可能性があるか又は感受性があるが、その疾患又は異常を有していても、有していなくてもよいヒト又は他の哺乳動物(例、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、又は霊長類)を意味する。或る種の態様では、被治療者はヒトである。
「がん」なる用語は、典型的には制御不可能な細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的症状を意味する。がんの例としては、それらに限られないが、がん腫、りんぱ腫、芽球腫、肉腫、及び白血病が挙げられる。より具体的には、そのようながんの例としては、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、膵臓がん、多形性神経膠芽腫、食道/口腔がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮体がん、前立腺がん、膀胱がん、肝細胞がん、乳がん、大腸若しくは結腸・直腸がん、頭頸部がん、胃がん、多発性骨髄腫、腎がん、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び本書に記載したあらゆる他のがんが挙げられる。
「新生物」なる用語は、典型的には異常な細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的症状を意味する。新生物の制限しない例としては、充実性腫瘍のような、本書に記載したあらゆる腫瘍が挙げられる。より具体的には、新生物の例としては、胃がん若しくは胃・小腸がん、子宮体がん、膀胱がん、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、肺がん、結腸・直腸がん、腎がん、及び多形性神経膠芽腫のような充実性腫瘍が挙げられる。
「過剰増殖性疾患」なる用語は、病的な異常細胞増殖又は異常血管新生に関連する疾患を意味する。病的血管新生に関連する疾患の制限しない例としては、充実性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、慢性炎症、肥満症、黄斑変性症、及び心血管疾患が挙げられる。
「低用量」とは、新生物、がん、又は病的血管新生に関連する疾患の治療に対して、単独療法において被治療者に典型的に投与される薬剤の用量より少ない用量(例、単独療法としての投与量の70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、又は30%以下)を意味する。本発明の併用療法を用いて、この併用療法における個々の薬剤成分の投与量を、単独療法としてmTOR阻害剤又は化合物1を単独で投与することにより得られた同じ効果を達成するのに必要な用量より有意に少ない点まで低減させることができる。化合物1及びmTOR阻害剤の低用量を例示すると次の通りである:化合物1を7〜42mg経口で毎日(例、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、又は35±7mg経口を毎日);リダフォロリムスを7〜28mg経口でQD×5/週<1週間に連続5日>(例、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、20±4mg、又は25±5mg経口をQD×5/週)、エベロリムスを2〜7mg経口で毎日(例、2±0.4mg、3±0.6mg、4±0.8mg、5±0.9mg、又は6±1.2mg経口を毎日);テムシロリムスを3〜21mg静脈内輸注で毎週(例、3±0.6mg、5±1mg、7±1.5mg、10±2mg、15±3mg、又は18±3.5mg静脈内輸注を毎週);シロリムスを0.5〜12mg経口で毎日(例、0.5±0.1mg、1±0.2mg、2±0.4mg、3±0.6mg、4±0.8mg、5±0.9mg、6±1.2mg、8±1.5mg、又は10±2mg経口を毎日);バイオリムスを100〜600μg静脈内輸注で毎日(例、100±20μg、150±30μg、200±40μg、300±50μg、400±50μg、又は500±50μg静脈内輸注を毎日);ゾタロリムスを100〜600μg静脈内輸注で毎日(例、100±20μg、150±30μg、200±40μg、300±50μg、400±50μg、又は500±50μg静脈内輸注を毎日);NVP−BEZ235を5〜50mg経口で毎日(例5±1mg、10±1.5mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、35±7mg、40±8mg、45±9mg、又は50±10mg経口を毎日);ワートマンニンを10〜70mg経口で毎日(例、10±2mg、15±5mg、20±6mg、30±7mg、40±8mg、50±9mg、又は70±10mg経口を毎日);クエルセチン1〜5mg経口を毎日(例、1±0.1mg、2±0.2mg、3±0.3mg、4±0.5mg、又は5±1mg経口を毎日);ミリセンチンを15〜100mg経口で毎日(例、15±5mg、20±6mg、30±7mg、40±8mg、50±9mg、75±10mg、又は100±25mg経口を毎日);並びにスタウロスポリンを10〜50mg経口で毎日(例、10±1.5mg、15±3mg、20±4mg、25±5mg、30±6mg、35±7mg、40±8mg、45±9mg、又は50±10mg経口を毎日)。下記化合物についても、単独療法について現在記載されている用量より低い用量で投与することができる:LY294002、Pp242、WYE−354,Ku−0063794、XL765、AZD8055、及びOSI−027。
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、添付図面及び特許請求の範囲の記載から明らかとなろう。
本発明は、化合物1の投与を利用したがんの治療方法を提供する。がんの制限しない例としては、急性骨髄性白血病、胃若しくは胃腸がん、子宮体がん、膀胱がん、多発性骨髄腫、又は乳がんのような充実性腫瘍を生ずるものが挙げられる。がんの別の例としては、骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、又は脊髄異形成症候群(例、第1群芽球過剰の不反応性貧血(RAEBI)又は第2群芽球過剰の不反応性貧血(RAEBII))が挙げられる。
上述したがんに加えて、本発明の方法及び組成物は、下記種類の部位のがん並びに他のがんの治療に使用することができる:皮膚(例、扁平上皮がん、基底細胞がん若しくは黒色腫)、前立腺、脳及び神経系、頭頸部、精巣、肺、肝臓(例、肝細胞がん)、腎臓、骨、内分泌系(例、甲状腺腫瘍及び下垂体腫瘍)、並びにリンパ系(例、ホジキン型及び非ホジキン型リンパ腫)。本発明の方法を用いて治療することができる別の種類のがんとしては、線維肉腫、神経外胚葉腫瘍、中皮腫、類表皮がん、及びカポジ肉腫が挙げられる。
化合物1は、高い抗血管新生特性を有することが判明し、従って、充実性腫瘍(例、前立腺がん、肺がん、乳がん、大腸がん、腎臓がん、及び神経膠芽腫)、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、慢性炎症、肥満症、黄斑変性症、並びに心血管疾患を包含する病的血管新生に関連する疾患の治療に有用となりうる。
特に、化合物1は、汎BCR−ABL阻害剤である。イマチニブによる発がん性(腫瘍形成性)BCR−ABLチロシンキナーゼの阻害は、慢性期の慢性骨髄性白血病(CML)の多くの患者において永続性のある反応を誘導するが、進行したCML及びPh+急性リンパ芽球性白血病では再発が普通である。イマチニフ耐性は、普通にはBCR−ABLキナーゼドメイン変異に起因し、第2世代のBCR−ABL阻害剤であるニロチニブ及びダサチニブがこれらの患者に対する治療代替薬となる。しかし、BCR−ABLT315I変異及び順次ABLキナーゼ阻害剤療法で選択されたマルチ耐性複合変異体のクロス抵抗が臨床上の懸念のままである。ここに、BCR−ABLT315I及び他の耐性変異体の有効な阻害剤である化合物1のin vitro及びin vivo評価を説明する。化合物1は、不活性形態のBCR−ABLT315Iを阻害することが判明した。細胞系突然変異誘発スクリーンにおいて、化合物1は、T315Iを初めとして、或る種の濃度で耐性を完全に抑制した。経口投与される化合物1のような汎BCR−ABLチロシンキナーゼ阻害剤が利用可能となることは、治療中にBCR−ABLキナーゼドメイン突然変異に基づく薬剤耐性の出現を最小限にすることにより、第1世代薬の能力に重要な治療上の利点をもたらす。
さらに、本発明者らは、mTORと化合物1との組み合わせ(併用)が、病的細胞増殖の治療、血管新生の阻害、及びがん細胞のアポトーシスの増大に対して、ラパマイシンマクロライドの単独療法又は化合物1の単独療法より効果が大きいことを発見した。
本発明の組成物、方法又はキットを用いて治療することができるがんの制限しない例としては、膀胱、胸部(乳部)、大腸、腎臓、肝臓、肺、頭頚部、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頚部、甲状腺、前立腺、又は皮膚のがん;扁平上皮がん;子宮体がん;多発性骨髄腫;リンパ系の造血腫瘍(例、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞白血病、T細胞白血病、ホジキン型白血病、非ホジキン型白血病、ヘアリー細胞白血病、若しくはバーキット白血病);骨髄系の造血腫瘍(例、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、若しくは前骨髄球性白血病);間葉由来の腫瘍(例、線維肉腫若しくは横紋筋肉腫);中枢若しくは末梢神経系の腫瘍(例、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、若しくは神経鞘腫);黒色腫;セミノーマ;奇形がん;骨肉腫;又はカポジ肉腫が挙げられる。
本発明の組成物、方法又はキットを用いて治療することができる病的血管新生に関連する疾患の制限しない例としては、充実性腫瘍(例、前立腺がん、肺がん、乳がん、大腸がん、腎臓がん、若しくは神経膠芽腫)、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、慢性炎症、肥満症、黄斑変性症、及び心血管疾患が挙げられる。
[化合物1の合成及び処方組成物]
化合物1は、下記のスキーム1及びPCT公開WO2007/075869に記載した方法で合成することができる。或いは、工程で利用した酸塩化物を、工程5の変法を記載する下記スキーム2に示すようにメチルエステルに置換することができる。
下記のスキーム1及び2における用語の意味は次の通りである:
Mol. Wt.: 分子量; exchange: 交換; wash: 洗浄; heptane: ヘプタン;
acetylene: アセチレン; oxyalyl chloride: 塩化オキザリル;
3-iodo-4-methylbenzoic acid: 3-ヨード-4-メチル安息香酸; filter: 濾過
Lewatit resin: レバチット樹脂; reslurry: 再スラリー化;
as free base: 遊離塩基形態。
著しく水溶性の低い遊離塩基の代わりに化合物1のモノ塩酸塩が臨床試験の実施に使用された。モノHCl塩は、ある範囲の溶媒から再現性よく形成される結晶性の無水固体であることが認められた。化合物1の塩酸塩の熱力学的溶解度は、非緩衝水中にpH3.7で1.7mg/mLである。
化合物1のさらなる同定情報は下記を含む:
化学名:3−(イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド塩酸塩;
USAN名称:ポナチニブ(INN係属中);
CAS登録番号:1114544−31−8(HCl塩)及び943319−70−8(遊離塩基);
CASインデックス名:ベンズアミド,3−(2−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−[4−[(4−メチル-1-ピペラジニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−塩酸塩(1:1);
分子式:C29H28ClF3N6O(HCl塩)及びC29H27F3N6O(遊離塩基);
分子量:569.02g/mol(HCl塩)及び532.56g/mol(遊離塩基)。
化合物1、又は好ましくはモノHCl塩のような薬学的に許容されるその塩は、経口投与用途に有用な任意の材料及び方法を用いて経口投与用に処方されうる。経口投与用に適した化合物1を含有する薬学的に許容される組成物は、多様なものが周知である慣用の材料及び方法を用いて処方されうる。この組成物は、溶液、懸濁液又はエマルション形態であってもよいが、カプセル剤、錠剤、ゲルキャップ剤等の固体剤形が現時点では最も興味がある。前述した単位剤形を初めとする処方組成物作製のための本技術分野で周知の方法は、例えば、"Remington: The Science and Practice of Pharmacy" (第20版、A.R. nGennaro編、2000、Lippincott William & Wilkins) に見いだせる。化合物1は、カプセル中に単味で供給しても、又は次に例示するように、充填剤、結合剤、安定化剤、保存剤、流動性改善剤(glidants)、崩壊剤、着色剤、フィルムコーティング剤などの1種若しくは2種以上の任意の薬学的に許容される賦形剤と混合して供給してもよい。
例えば、塩酸塩として供給された公称2mgの化合物1遊離塩基を、賦形剤を伴わずに含有する白色不透明カプセル剤が製剤された。塩酸塩として供給された5mg、15mg、又は20mgのの化合物1遊離塩基を、慣用の賦形剤と混合して含有する白色不透明カプセル剤も製剤された。例示のカプセル用ブレンド中に賦形剤として使用された不活性成分としては、充填剤、流動性向上剤、滑剤及び崩壊剤の1種又は2種以上が挙げられる。例えば、カプセル用ブレンドは、化合物1のHCl塩に、コロイド状二酸化ケイ素(約0.3%w/w、流動性向上剤)、無水乳糖(約44.6%w/w、充填剤)、ステアリン酸マグネシウム(約0.5%w/w、滑剤)、微結晶性セルロース(約44.6%w/w、充填剤)、及びグリコール酸澱粉ナトリウム(約5%w/w、崩壊剤)を加えて含有する5、15及び20mgカプセル剤用に調製された。カプセル殻はゼラチン及び二酸化チタンを含有する。
処方方法は慣用の混合及びカプセル化方法及び機械装置を用いた。化合物1の塩酸塩及びステアリン酸マグネシウム以外の全てのブレンド賦形剤成分をVブレンダーで混合し、スクリーニングミル(ふるい分け粉砕装置)を通して粉砕した。ステアリン酸マグネシウムを添加し、材料を再び混合した。Vブレンダー内のブレンドをサンプリングしてブレンドの均一性を測定した。得られたブレンドを、かさ密度、タップ密度、流動性、及び粒度分布について試験した。ブレンドを次いで、単位剤形の強さに応じて、サイズ3、サイズ4又はサイズ1のカプセル殻内に充填してカプセル化した。
化合物1はまた、充填剤若しくは充填剤混合物、崩壊剤、流動性改善剤、滑剤、フィルムコーティング剤及びコーティング溶媒(より高強度のカプセル剤に用いたものに似たブレンド中に使用したもの)の1種又は2種以上を含む慣用の製薬用賦形剤を用いて、錠剤にも処方した。例えば、錠剤の製剤には下記の相対的な量及び割合(重量/重量)を用いて行うことができる:化合物1(90g、HCl塩として供給、15.0%w/w)、コロイド状二酸化ケイ素(1.2g、0.2%w/w)、乳糖一水和物(240.9g、40.15%w/w)、ステアリン酸マグネシウム(3g、0.5%w/w)、微結晶性セルロース(240.9g、40.15%w/w)、及びグリコール酸澱粉ナトリウム(24g、4.0%w/w)。乳糖一水和物の量は使用する薬剤の量に基づいて調整する。
化合物1と賦形剤を、カプセル剤の場合に使用したのと同様の種類の装置及び操作を用いて混合することができる。得られた均一なブレンドを次に回転式打錠プレスのような慣用手段により錠剤に圧縮すればよい。打錠プレスは、所望の錠剤重量(例、45mg錠剤では300mg又は15mg錠剤では100mg)、例えば45mg錠剤では13kp及び15mg錠剤では3kpの平均硬さ、並びに1%以下の破砕性に調整しておく。こうして製造された錠剤コアに、慣用のフィルムコーティング材料(例、OpadryTM II Whiteの水性懸濁液)を噴霧被覆してもよい。それにより、錠剤コアの重量に対して約2.5%程度の重量増加を生ずる。
[mTOR阻害剤]
mTORと通称されている哺乳類ラパマイシン標的(mammalian target of rapamycin)は、細胞成長、細胞増殖、細胞運動性、細胞生存、タンパク質合成、及び転写を調節するセリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。ラパマイシン及びその類似物を含むmTOR阻害剤は、mTORからの、又はmTORを含むキナーゼの混合物(例、PI3K及びmTORの両方の阻害剤として作用する薬剤)からのシグナル伝達を特異的に阻害する、ある種の治療薬である。mTORは、多重マイトジェンシグナル伝達経路(multiple mitogegnic signaling pathway)における主要な媒介となり、正常組織及び新生物形成過程における増殖及び血管新生 (angiogenesis) のモジュレーションにおいて中心的な役割を果たす。ラパマイシンマクロライドと非ラパマイシンアナログという2種類のmTOR阻害性化合物がある。
ラパマイシン(シロリムス)は、ストレプトミセス・ハイグロスコピクス(Streptomyces hygroscopics)が産生する免疫抑制性のラクタムマクロライドである。例えば、J.B. McAlpine et al., J. Antibiotics, 1991, 44: 688; S.L. Schreiber et al., J. Am. Chem. Soc., 1991, 113; 及び米国特許第3,929,992号 (これらを参考文献として援用する) を参照されたい。
ラパマイシン及びその類似物の原子の番号付けに受容されている慣行が複数あるので、本明細書で使用する番号付けの慣行を下記に示す。
参考のために、いくつかの化合物についてのR基を次の表に示す。
化合物 −R
ラパマイシン −OH
AP23573 −OP(O)(Me)2
テムシロリムス −OC(O)C(CH3)(CH2OH)2
エベロリムス −OCH2CH2OH
バイオリムス −OCH2CH2OEt
ABT−578 −テトラゾール
本発明の併用療法に使用するのに望ましいラパマイシンマクロライドとしては、これらに制限されないが、ラパマイシン(シロリムス若しくはラパミューン(Wyeth社)、テムシロリムス若しくはCCI−779(Wyeth社、米国特許第5,362,718号及び第6,277,983号を参照、それらの内容をここに参考文献として援用)、エベロリムス若しくはRAD001(Novartis社)、リダフォロリムス若しくはAP23573(Ariad社)、バイオリムス(Nobori社)、並びにゾタロリムス若しくはABT578(Abobott Labs.社)が挙げられる。
テムシロリムスは、ラパマイシンの可溶性エステルプロドラッグであり、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42エステルであって、米国特許第5,362,718号に開示されている。テムシロリムスはin vitroとin vivoの両モデルにおいて腫瘍成長に対する顕著な阻害効果を実証した。テムシロリムスは、細胞毒性特性とは異なり、細胞増殖抑制性を示し、腫瘍が悪化するまで又は再発するまでの時間を遅延させうる。WO 00/240000に開示されているように、CCI−779は腎臓、胸部(乳部)、子宮頸管、子宮、頭頸部、肺、前立腺、膵臓、卵巣、結腸、リンパ腫及び黒色腫を含む各種部位起源のがんの治療に有用でありうる。
エベロリムスは、40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンであり、その構造及び合成はWO 94/09010に開示されている。強力な免疫抑制剤であることが示されている (米国特許第5,665,772号) エベロリムスも、抗新生物特性の証拠を示す (例、A. Boulay et al., Cancer Res., 2004, 64: 252-261を参照)。これらの特性の結果、エベロリムスは同種移植拒絶反応予防用の免疫抑制剤として数カ国で現在市販され (B. Nashan, Ther. Drug. Monit., 2002、 24: 53-58)、抗がん剤として臨床試験を受けている (S. Huang and P.J. Houghton, Curr. Opin. Invest. Drugs, 2002, 3: 295-304; M.M. Mita et al., Clin. Breast Cancer, 2003, 4: 126-137; 及びM. Hidalgo and E.J. Rowinsky, Oncogene, 2000, 19: 6680-6686)。
ゾタロリムスは、WO 99/15530に開示されているように、その43−エピ異性体であり、又はWO98/02441及びWO 05/016252に開示されているようにラパマイシン類似物である。
リダフォロリムスは、リン含有ラパマイシン誘導体である (WO 03/064383、その実施例9を参照)。テムシロリムス及びエベロリムスと同様に、リダフォロリムスは、神経膠芽細胞腫、前立腺がん、乳がん、膵臓がん、肺がん及び結腸がんを含む多様なPTEN欠陥腫瘍細胞系において抗増殖活性を実証された (E.K. Rowinsky, Curr. Opin. Oncol., 2004, 16: 564-575)。リダフォロリムスは、米国食品医薬品局から、軟組織及び骨肉腫の治療用の優先審査医薬として指定を受けた。リダフォロリムスは、血液悪性腫瘍(例、白血病類及びリンパ腫類)及び充実性(固体)腫瘍(例、肉腫、前立腺がん、及び多形性神経膠芽腫)を標的とする複数の臨床試験において試験されている。
多くのラパマイシンマクロライドが本技術分野において知られている。本発明の方法、キット及び組成物において使用できるラパマイシンマクロライドとしては、例えば、WO 2006/095185に開示されているようなラパマイシンの42−デスメトキシ誘導体 (該公報では、そこの番号付け系に基づいて「39−デスメトキシ」化合物と記載されている) 及びその各種類似化合物が挙げられる。このラパマイシン誘導体は、本発明の実施において現在特に興味があるものである。
また、典型的には別の発酵生成物として及び/又は合成研究の成果として得られた多数の他のラパマイシン構造変更化合物がこれまでに報告されている。例えば、ラパマイシンに構造的に関係する類似物(アナログ)、同族物(ホモログ)、誘導体、及び他の化合物([ラパログ]と総称)に関する大量の文献としては、とりわけ、ラパマイシンに対して下記の変更の1種又は2種以上を有するラパマイシンの構造変更化合物が挙げられる:C7、C42及び/若しくはC29のメトキシ基の脱メチル化、除去若しくは置換;C13,C43及び/若しくはC28のヒドロキシル基の除去、誘導体化若しくは置換;C14、C24及び/若しくはC30のケトン基の還元、除去若しくは誘導体化;6員のピペコレート環の5員プロリル環による置換;シクロヘキシル環上の別の置換若しくはシクロヘキシル環の置換シクロペンチル環による置換;C28ヒドロキシル基のエピマー化;並びにリン含有部分による置換。
従って、mTOR阻害剤としては、例えば、下記特許文献(これらすべてを参考文献として援用する)に記載されているものを包含する、ラパマイシンの43−及び/若しくは28−エステル、エーテル、カーボネート、カルバメート等が挙げられる:ラパマイシンのアルキルエステル(米国特許第4,316,885号);アミノアルキルエステル(米国特許第4,650,803号);フッ素化エステル(米国特許第5,100,883号);アミドエステル(米国特許第5,118,677号);カルバメートエステル(米国特許第5,118,678号);シリルエステル(米国特許第5,120,842号);アミノジエステル(米国特許第5,162,333号);スルホネート及びサルファートエステル(米国特許第5,177,203号);エステル(米国特許第5,221,670号);アルコキシエステル(米国特許第5,233,036号);O-アリール、−アルキル、−アルケニル、及び−アルキニルエーテル(米国特許第5,258,389号);カーボネートエステル(米国特許第5,260,300号);アリールカルボニル及びアルコキシカルボニルカルバメート(米国特許第5,262,423号);カルバメート(米国特許第5,302,584号);ヒドロキシエステル(米国特許第5,362,718号);ヒンダートエステル(米国特許第5,385,908号);複素環エステル(米国特許第5,385,909号);ジェム(gem-)二置換エステル(米国特許第5,385,910号);アミノアルカン酸エステル(米国特許第5,389,639号);ホスホリルカルバメートエステル(米国特許第5,391,730号);カルバメートエステル(米国特許第5,411,967号);カルバメートエステル(米国特許第5,434,260号);アミジノカルバメートエステル(米国特許第5,463,048号);カルバメートエステル(米国特許第5,480,988号);カルバメートエステル(米国特許第5,480,989号);カルバメートエステル(米国特許第5,489,680号);ヒンダードN-オキシドエステル(米国特許5,491,231号);ビオチンエステル(米国特許第5,504,091号);O-アルキルエーテル(米国特許第5,665,772号);及びPEGエステル(米国特許第5,780,462号)。やはり包含されるのは、ラパマイシン及び前述したいずれかの化合物の還元生成物である、24−ジヒドロ、30−ジヒドロ、及び24,30−テトラヒドロラパマイシン類似物並びに28−エピ類似物(例、WO 01/14387を参照)、並びに前記のいずれかのエステル若しくはエーテル並びに非還元化合物のオキシム、ヒドラゾン、及びヒドロキシアミンである。例えば、米国特許第5,373,014号、5,378,836号、5,023,264号、5,563,145号及び5,023,263号を参照。
非ラパマイシンアナログ型のmTOR阻害性化合物としては、それらに限られないが、LY294002、Pp242(Chemdea Cat. No. CD0258)、WYE−354(Chemdea Cat. No. CD0270)、Ku−0063794(Chemdea Cat. No. CD0274)、XL765(Exelixis; J. Clin. Oncol., 2008, 2008 ASCO Annual Meeting Proceedings 26: 15S)、AZD8055(Assrazeneca社)、NVP−BEZ235(Sauveur-Michel et al., Mol. Cancer Ther., 2008, 7: 1851)、OSI−027(ODI Pharmaceuticals社)、ワートマンニン、クェルセチン、ミリセチン、スタウロスポリン、及びATP競合性阻害剤(米国特許出願番号11/361,213及び11/361,599を参照、それぞれの全体を参考文献としてここに援用)が挙げられる。
本発明の方法、キット及び組成物に使用できる他の非ラパマイシンアナログのmTOR阻害性化合物としては、下記のPCT公開番号に記載のものが挙げられる:WO2009/008992; WO2009/007750; WO2009/007751; WO2009/007749; WO2009/007748; WO2008/032060; WO2008/032036; WO2008/032033; WO2008/032089; WO2008/032091; WO2008/032064; WO2008/032077; WO2008/032041; WO2008/023159; WO2008/023180; WO2007/135398; WO2007/129044; WO2007/080382; 及びWO2006/090169 (それぞれを参考文献としてここに援用)。
[薬剤組成物]
例えば、シロリムス、テムシロリムス、ラダフォロリムス、及びエベロリムスの経口投与に適した固体剤形並びにテムシロリムス及びリダフォロリムスの静脈内投与用の他の組成物をはじめとするmTOR阻害剤の処方組成物は、本技術分野では非常によく知られている。非マクロライド系mTOR阻害剤の処方組成物は、上掲の特許文献に開示されている。化合物1はmTOR阻害剤と一緒に処方することもできるが、より典型的には、製剤過程の複雑化を避けるとともに、2種類の薬剤の独立した投与スケジュール及び投与計画を可能にして、どちらの薬剤の投与についてもその後の調節をより簡易にするために、両者は別個に処方されよう。
[用量及び投与]
本発明の方法、キット及び組成物によると、治療は1回の投与又はある期間にわたる複数会の投与からなることができる。化合物1は単独で、又はmTOR阻害剤の投与と同時に投与しうる。或いは、化合物1とmTOR阻害剤とを順番に投与してもよい。例えば、化合物1をmTOR阻害剤の投与前又は投与後に(例、1日以上前に及び/又は1日以上後に)投与することができる。
投与は、1日若しくは1週間に1回若しくは2回以上(又はそれ以外の何らかの複数日間隔で)或いは間欠的スケジュールでよく、そのサイクルを所定の回数(例、2〜10サイクル)又は不定回数で反復しうる。
投与経路に応じて、治療する被治療者(個体)の体重、体表面積、又は臓器サイズに従って有効用量を算出することができる。適当な投与量の最適化は、ヒトの臨床試験で判明した薬物動態学データに照らして当業者が容易に実施することができる。最終的な投与計画は、例えば、薬剤の特異的活性、被治療者の損傷の重篤度及び反応性、被治療者の年齢、症状、体重、性別及び食事内容、現在の感染があればその重篤度、投与期間、併用する療法の有無、並びに他の臨床因子といった薬剤の作用を変質させる各種の因子を考慮して主治医により決定されよう。本発明の組み合わせ(併用療法)を用いて研究が実施されているので、適当な用量レベル及び治療継続期間についてはさらなる情報が今後も出てくるであろう。
本発明の併用療法では、化合物1は典型的には、10〜500mgの合計日用量を毎日経口投与するサイクルの反復で投与される。mTOR阻害剤は、化合物1の前、後、又はそれと同時に、同一又は異なる投与スケジュールで、かつ同一又は異なる投与経路で投与することができる。この併用療法におけるmTOR阻害剤の用量レベルは、一般的には治療1週間あたりの合計量で10〜800mgの範囲内であり、場合によっては35〜250mg/週であろう。このような合計週用量レベルは、多様な投与経路及び投与スケジュールを用いて達成しうる。投与スケジュールは、間欠的であってもよい。「間欠的」投与とは、例えば、1日おきの投与、2日おきの投与、又はより一般的には、投与と投与の間に1日以上又は1週間以上の「休日」を挟んだスケジュールといった、投与間に投与しない期間があるスケジュールでの投与を意味する。このような間欠的投与の制限しない例としては、1週間あたり6日以下の投与、並びに1週間はQD×4、QD×5、QD×6若しくは毎日の投与の後、例えば、1、2若しくは3週間の薬剤を投与しない期間があり、その翌週は薬剤治療を再開した後、1週間若しくは数週間は薬剤治療をしない、といった投与サイクルが挙げられる。別の例を示すと、1週間おきの60mgのQD×6投与は、間欠的基準(すなわち、一週間おき)で360mgの薬剤の週用量を与える。
例えば、経口投与の場合で、2〜160mgの薬剤を1週間に1日以上、例えば、毎日(QD×7)、1週間に6日(QD×6)、1週間に5日(QD×5)などのスケジュールで投与することができる。例えば、エベロリムスは3〜20mg/日、例えば、5mg又は10mg/日の用量でQD×7投与することができる。リダフォリムスは、10〜25mg/日、例えば、10mg、12.5mg、又は15mg/日の用量でQD×7p.o.投与することができる。また、シロリムスは2又は4mgp.o.QD×7、場合によっては、6、8又は10mgの負荷用量で投与することができる。投与スケジュールは、QD×4、QD×5又はQD×6スケジュールにより例示されるように間欠的であってもよい。例としては、30〜100mgQD×5又はQD×6でのmTOR阻害剤の経口投与が挙げられる。例えば、本発明の実施において、リダフォロリムス、エベロリムス、テムシロリムス又はシロリムスを10〜50mgQD×5のレベルで経口投与してもよい。ある種の適応症については、30〜50mg経口の用量レベルでリダフォロリムスをQD×5投与することが望ましいことがある。
また、mTOR阻害剤への所望の総露出レベルを、各種スケジュールでの非経口送給により達成することもできる。そのような場合、10〜250mgのmTOR阻害剤を、例えば15〜60分間、多くは30〜60分間の静脈内輸注により、1〜4週間に1回以上の間隔で投与する。そのような手法の1例では、mTOR阻害剤を、4週間ごとのサイクルで、1週間に1回の30〜60分間での静脈内輸注を3又は4週間投与する。このような静脈内送給は、特にリダフォロリムス、シロリムス及びテムシロリムスの場合に興味があり、これらは例えば10〜250mgの週用量(例、25、50、75、100、150、200又は250mg/週)で4週間ごとのサイクルで3又は4週間にわたって投与することができる。50mg及び75mgの用量レベルが現時点では特に興味がある。別の手法では、隔週に5〜25mgの薬剤をQD×5静脈内輸注(例、第2週目ごとに月曜から金曜までの静脈内輸注)によりmTOR阻害剤を投与する。10、12.5、15、17.5及び20mgの用量が現時点で特に興味がある。
特に興味があるのは、単独療法におけるmTOR阻害剤に対して既に認可されたか、又は臨床試験中の用量レベル及び投与スケジュールを、本書に記載した化合物1との併用療法の一部として投与することである。
やはり興味あるのは、用量レベル又は投与スケジュールがmTOR阻害剤及び/又は化合物の低用量(すなわち、単独療法について用いる用量より少ない用量)での被治療者への投与を生ずる併用療法である。
[適応症]
本発明の方法、キット及び組成物を用いて、新生物、がん、及び病的血管新生に関連する疾患のような病的細胞増殖に関連する疾患を治療することができる。本発明の組成物、方法、又はキットを用いて治療することができる病的(異常)血管新生に関連する疾患の制限しない例としては、充実性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、慢性炎症、肥満症、及び黄斑変性症が挙げられる。
本発明の方法、キット及び組成物は、原発性及び/若しくは転移性のがん、並びに他のがん症状の治療に使用することができる。例えば、本発明の組成物及び方法は、充実性腫瘍の縮小、腫瘍成長若しくは転移の阻止、各種リンパ性がんの治療、並びに/又はこれらの疾患に罹患した哺乳動物(ヒトを含む)の生存期間の延長に有用となる筈である。
BCR−ABL発現性細胞の増殖に関連する疾患の具体的な例としては、本書に記載したいずれかの「がん」のような「がん」が挙げられる。追加のがんとしては、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、及び急性骨髄性白血病が挙げられる。
FLT−3変異発現性細胞の増殖に関連する疾患の具体例としては、本書に記載した何れかのがんのような「がん」及びがんに関連する疾患が挙げられる。FLT3の活性化変異は、急性骨髄性白血病(AML)に最も普通にみられる種類の遺伝子変質である。これらの突然変異の大半は、該受容体の膜近接領域における遺伝子内縦列重複(ITD)から起こる。キナーゼ活性化ループにおける活性化点変異も起こるが、頻度はより低い。FLT3−ITD突然変異は、標準的治療法で治療した場合に再発及び総合生存率の両面でAML患者の予後を悪くしてきた。別の疾患としては、不反応性貧血、芽球過剰による不反応性貧血(RAEB)(例、芽球5〜9%のRAEBI及び芽球10〜19%のRAEBII)、環状鉄赤芽球による不反応性貧血、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、及び非定型慢性骨髄性白血病(a−CML)のような骨髄異形成症候群(MDS)が挙げられる。
疾患の他の例としては、FGFR1、PDGFRα、及びKITに関連するものが挙げられる。FGFR1及びPDGFRαの活性に影響する転座は、稀な骨髄増殖性新生物(MPN)の亜集団に見られる。FGFR1遺伝子及び或る範囲の他の染色体パートナー(例、FGFR1OP2遺伝子)を含む転座は、大部分の患者が最終的かつ急速にAML進行する8p11骨髄増殖性症候群(EMS)の特徴である。FIP1L1−PDGFRα融合たんぱく質は、慢性好酸球性白血病/突発性好酸球増加症(CEL/HEL)の患者の約10〜20%に見られ、これらの患者はPDGFR阻害によく反応することが報告されている。また、PDGFRαのT674I変異は、BCR−ABLのT315Iゲートキーパー残基に類似の位置で変異する。KITの活性化変異(例、cKIT又はN822K)もAMLに見られる。KIT変異はあまり普通ではなく、2〜8%の総合的頻度でAMLの特定の細胞遺伝的亜集団に見られる。
他の症例としては、例えば充実性腫瘍を生ずるがん細胞のようながん細胞の増殖に関連するものが挙げられる。充実性腫瘍を例示すると、胃若しくは胃腸がん、子宮体がん、膀胱がん、多発性骨髄腫、乳がん、前立腺がん、肺がん、大腸がん、腎臓がん、及び多形性神経膠芽腫が挙げられる。
治療することができるがん及びがん症状の例としては、それらに限られないが、脳及び中枢神経系の腫瘍(例、髄膜、脳、脊髄、脳神経、並びに神経膠芽腫若しくは骨髄芽細胞腫のようなCNSの他部分の腫瘍);頭部及び/若しくは頸部のがん;胸部腫瘍(乳がん);循環系の腫瘍(例、心臓、中角膜及び胸膜、並びに他の胸腔内器官、血管の腫瘍、並びに腫瘍関連血管組織);血液及びリンパ系の腫瘍(例、ホジキン病、非ホジキン病型リンパ腫、バーキット白血病、エイズ関連リンパ腫、悪性免疫増殖性疾患、多発性骨髄腫、悪性プラズマ(形質)細胞新生物、リンパ性白血病、骨髄性白血病、急性若しくは慢性リンパ球性白血病、単球性白血病、特異的細胞型の他の白血病、非特異的細胞型の白血病、リンパ球の非特異的悪性新生物、造血及び関連組織、例えば、びまん性大細胞性リンパ腫、T細胞リンパ腫、又は皮膚T細胞リンパ腫);排出系(例、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、及び他の泌尿器)の腫瘍;胃腸管(例、食道、異、小腸、結腸、結腸直腸、直腸S状結腸移行部、直腸、肛門、及び肛門管)の腫瘍;肝臓並びに肝内胆管、胆嚢、及び胆管の他の部分、膵臓、及び他の消化器に関連する腫瘍;口腔(例、口唇、舌、歯肉、口底、口蓋、耳下腺、唾液腺、扁桃、中咽頭、鼻咽頭、梨状陥凹、下咽頭、及び他の口腔部位)の腫瘍;生殖器系(例、外陰、膣、子宮頸部、子宮、卵巣、及び女性生殖器に関連する他部位、胎盤、陰茎、前立腺、精巣、及び男性生殖器に関連する他部位)の腫瘍;気道(例、鼻腔、中耳、副鼻腔、気管、気管支、及び肺)の腫瘍(例、小細胞肺がん及び非小細胞肺がん);骨格系(例、四肢の骨及び関節軟骨、骨関節軟骨、及び他の部位)の腫瘍;皮膚の腫瘍(例、皮膚の悪性黒色腫、非黒色腫皮膚がん、皮膚の基底細胞がん、皮膚の扁平上皮がん、中皮腫、及びカポジ肉腫);並びに、末梢神経及び自律神経系、結合及び軟組織、後腹膜及び腹膜、眼及び付属器、甲状腺、副腎、及び他の内分泌腺及び関連構造体、呼吸器系及び消化器系の続発性悪性新生物及び他の部位の続発性悪性新生物を含む、他の組織に関連する腫瘍が挙げられる。
より具体的には、本発明のキット、組成物、及び方法は、肉腫の治療に使用することができる。一部の態様では、本発明の組成物及び方法は膀胱がん、乳がん、慢性リンパ性白血病、頭頸部がん、子宮体がん、非ホジキンリンパ種、非小細胞肺がん、卵巣がん、膵臓がん、及び前立腺がんの治療に使用される。
本発明の組成物及び方法を用いて有利に治療できる腫瘍として、PTEN欠損腫瘍(例えば、M.S. Neshat et al., PNAS, 2001, 98: 10314-10319; K. Podsypanina et al., PNAS 2001, 98: 10320-10325; G.B. Mills et al., PNAS, 2001, 98: 10031-10033; 及びM. Hidalgo and E.K. Rowinski, Ondogene, 2000, 19: 6680-6686を参照)が挙げられる。既に上述したように、FRAP/mTORキナーゼは、PTEN腫瘍抑制遺伝子の欠損のために複数のがんを増大方向に調節するホスファチジルイノシトール3−キナーゼ/Aktシグナル伝達経路の下流に位置する。PTEN欠損腫瘍は、遺伝子型分析及び/又はin vitro培養及び生検腫瘍検体の試験を用いて同定しうる。ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ/Akt−mTOR経路の異常に関連するがんの制限しない例としては、それらに限られないが、異常成長因子受容体(例、EGFR、PDGFR、IGF−R及びIL−2)に関連する肺、膀胱、卵巣、子宮内膜、前立腺、若しくは子宮頸部の腫瘍、神経膠腫、及びリンパ腫;P13キナーゼの異常に関連する卵巣腫瘍、PTENの異常に関連する黒色腫及び胸部、前立腺若しくは子宮内膜の腫瘍;Aktの異常に関連する胸部、胃、卵巣、膵臓及び前立腺がん;elF−4Eの異常に関連するリンパ腫、胸部若しくは膀胱のがん、及び頭頸部のがん;サイクリンDの異常に関連する外套細胞リンパ腫、乳がん、及び頭頸部がん;並びにP16の異常に関連する家族性黒色腫及び膵臓がんが挙げられる。
本発明のキット、組成物、及び方法はまた糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、慢性炎症、肥満症、黄斑変性症、又は心血管疾患のような病的血管新生に関連する疾患の治療にも使用することができる。
[薬剤キット]
本発明の実施には多様な他のパッケージの選択肢も利用可能である。本発明の薬剤キットとしては、化合物1単独又はmTOR阻害剤と化合物1との一緒若しくは同時の投与を可能にする、化合物1及び/又はmTOR阻害剤を含有する薬剤組成物の1種又は2種以上の成分を収容した1又は2以上の容器(例、バイアル、アンプル、試験管、フラスコ、又はビン)を備える。本キットは場合により用量決定、投与及び/又は治療する患者集団・患者数についての指示を含む。
1つの薬剤パッケージにおける個々の異なる成分を固体(例、凍結乾燥)又は液体形態で供給することができる。各成分は一般に、そのそれぞれの容器内で等分に分けるのに適した形態又は濃縮形態で供給されよう。薬剤パック又はキットは凍結乾燥成分を再構成する(元に戻す)ための媒質を備えていてもよい。キットの個々の容器は、市販のために密閉状態に保持することが好ましい。
或いは、化合物1とmTOR阻害剤の両者が経口投与用に処方される(例、キットは化合物1を経口投与用の単位剤形の形態で、リダフォロリムス、シロリムス又はエベロリムスのいずれかも経口投与用の単位剤形の形態で含む)。経口投与用に処方された製品、例えば、カプセル剤、錠剤等は、ブリスターパックに入れてパッケージされ、このパックは、選択された投与スケジュールに従ってレイアウト及び/又はラベル貼りされうる。
以下の実施例は、本発明の方法及び化合物をいかに実施、製造及び評価するかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するように提示したものであり、本発明の純粋な例示を意図し、本発明の範囲を制限する意図はない。
慢性骨髄性白血病のためのBCR−ABLおよび変異体の阻害
(実験操作)
阻害剤:イマチニブをPBSに溶解して10.0mMの保存溶液を作製し、10μL 部分に分けて、−20℃で保存した。化合物1、ニロチニブおよびダサチニブをDMSOに溶解して10.0mMの保存溶液を作製し、10μL 部分に分けて、−20℃で保存した。10.0mMの保存溶液の連続希釈を各実験での使用直前に行った。化合物1(3−(イミダゾ〔1.2b〕ビリダジン−3−イルエチニル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド)は本明細書に記載のようにして調製できる。
ABL T315I :化合物1複合体の結晶化および構造決定:マウスABLT315I のキナーゼドメイン(残基229−515)を大腸菌(E.coli)においてYopHプロテインチロシンホスファターゼと共発現させ、既報(Ref.)のようにして精製した。ABLT315I の精製は、化合物1の存在下で、金属アフィニティ−:MonoQおよびサイズ排除クロマトグラフィーカラムの組み合わせを用いて行い、ほぼ均質(>95%)とした。化合物1と結合した最終精製ABLT315I の典型的収率は約1mg/Lであった。ABLT315I および化合物1の共結晶を、等量の化合物1:ABLT315I 複合体(25mg/mL)とウエル溶液(30%w/vポリエチレン4000、0.2M酢酸ナトリウム、0.1Mトリス−HCl、pH8.5)とを混合することにより、4℃での懸滴蒸気拡散法により成長させた。1〜2日後、結晶が50×50×300μm3 の典型的サイズに達し、凍結防止剤として30%v/vグリセロールを添加した母液中に回収した。X線回折データを100Kでビームライン(beam line)19BMにおいて集めた(Advanced Photon Service 、アルゴンヌ、イリノイ) 。データをHKL2000パッケージを用いることによりスペースグループP21においてインデクセーションおよびスケーリングを行った。ABLT315I との複合体中の化合物1の構造を、イマチニブと結合した野生型ABL(PDBコード:1IEP)の構造を用いてAMoReによる分子置換によって決定した。非対称単位に2つのABLT315I 分子が存在した。Quanta(Accelrys Inc. 、サンディエゴ、カリフォルニア) におけるマニュアルリビルディングと組み合わせたCNXによって構造をさらに正確なものとし、リファインメントおよびモデルビルディングの数サイクルの後、化合物1をデンシティ(density)中に構築した。さらにリファインメントおよびモデルビルディングをコンバージェンス(convergence)に達するまで行った。1.95Åにリファインされた最終モデルは、不規則な活性化ループ中の386−397を除いて、残基228−511からなる。結合した阻害剤である化合物1およびI315の側鎖についての電子密度は、両複合体において、阻害剤の結合様式にあいまいさを残さず十分解像された。
ABL T315I の自動リン酸化分析:全長チロシン−脱リン酸化ABLおよびABLT315I (Invitrogen;サンディエゴ、CA)を用いたキナーゼ自動リン酸化分析を、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブまたは化合物1の存在下で既報(O'Hare et al., Blood 104:2532(2004))のようにして行った。使用した阻害剤の濃度は0、0.1、1、10、100、1000nMであった。
細胞系:Ba/F3トランスフェクタント(全長の野生型BCR−ABLまたは1つのキナーゼドメイン変異をもつBCR−ABLを発現する)を10%FCS、1unit/mL ペニシリンG、および1mg/mL ストレプトマイシンを添加したRPMI1640培地(完全培地)中に37℃、5%CO2 で維持した。BCR−ABLT315A を発現するBa/F3細胞系は、Dr. Neil Shah, USCF の好意により供与された。Ba/F3親細胞にはWEHI−調整培地により提供されるIL−3が補充された。細胞増殖アッセイの前に、各Ba/F3細胞系よりRNAを分離し、RT−PCR、次いでMutation Surbeyor ソフトウェア(SoftGenetics, State College, PA)を用いるDNA配列分析によりキナーゼドメイン変異を確認した。
細胞増殖アッセイ:Ba/F3細胞系を96−ウェルプレート(4×103 細胞/ウェル)に分配し、漸増する濃度の化合物1と共に72時間インキュベートした。野生型または変異型のBCR−ABLのいずれかを発現する系においてIC50測定に使用する阻害剤の濃度は、0、0.04、0.2、1、5、25、125および625nMであった。Ba/F3親細胞においてIC50測定に使用する阻害剤の濃度は、0、1、5、25、125、625、3125および10,000nMであった。増殖は、メタンチオスルホネート(MTS)系の生存率分析(CellTiter96 Aqueous One Solution Reagent; Promega,マディソン、WI) を用いて測定した。IC50値は4回反復した3つの独立した実験の平均値として報告される。CMLまたは正常な初代細胞を用いる細胞増殖実験には、CML骨髄性急性転化(M−BC)患者の末梢血からまたは健康な個人からFicollグラディエント(GE Healthcare )上で単核細胞を分離した。細胞を96−ウエルプレート中(5×104 細胞/ウエル)、10%FBS、L−グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび100μMβ−メルカプトエタノールを加えたRPMI中の漸増させた濃度(0〜1000nM)の化合物1上に播種した。72時間のインキュベーション後、細胞をMTSアッセイに付すことにより細胞生存率を評価した。すべての値は薬剤を含まない対称ウエルに対して正規化した。
Ba/F3細胞系におけるCrkLリン酸化:野生型BCR−ABL又はBCR−ABLT315I のいずれかを発現するBa/F3細胞(5×106 細胞/ウエル)を、阻害剤の不存在下またはイマチニブ(2000nM)、ダサチニブ(50nM)、ニロチニブ(500nM)もしくは化合物1(0. 1〜1000nM)の存在下、10%FBS、L−グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシンを加えたRPMI中で4時間培養した。細胞を、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を加えた沸騰SDS−PAGEローディング緩衝液中に入れて直接溶解させた。溶解物をSDS−PAGEにかけ、抗CrkL抗体C−20(Santa Cruz) でイムノブロッティングを行った。リン酸化および非リン酸化CrkLを示差的バンド移動度により区別し、そしてバンドシグナル強度をLumi Imager (Roche) でデンシトメトリーにより定量し、リン酸化CrkL率 (%) として示した。
BCR−ABL T315I 患者試料の化合物1へのex vivo 暴露:インフォームドコンセントを得た後、BCR−ABLT315I 変異を有するリンパ性急性転化におけるCML(CML L−BC)患者由来の末梢血単核細胞を、Ficoll遠心分離により分離した。RT−PCRおよび配列決定分析により、試料が主にBCR−ABLT315I 変異を含んでいることを確認した。単核細胞(5×106 細胞/ウエル)を、阻害剤の不存在下またはイマチニブ(1000nM)、ダサチニブ(50nM)、ニロチニブ(200nM)もしくは化合物1(50nM、500nM)の存在下、20%BIT (Stem Cell)、40μg/mLヒト低密度リポタンパク質および100 μM β- メルカプトエタノールを加えた無血清IMDM培地(Invitrogen) で一晩培養した。細胞を、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を加えた沸騰SDS−PAGEローディング緩衝液中に入れて直接溶解させた。溶解物をSDS−PAGEにかけ、抗CrkL抗体C−20(Santa Cruz) でイムノブロッティングを行った。リン酸化および非リン酸化CrkLを示差的バンド移動度により区別した。バンドシグナル強度をLumi Imager (Roche) でデンシトメトリーにより定量した。
FACSによる全体のチロシンリン酸化:単核細胞(2×105 ) を阻害剤の不存在下またはイマチニブ(1000nM)、ダサチニブ(50nM)、ニロチニブ(200nM)もしくは漸増させた濃度の化合物1(50nM、500nM)の存在下、無血清培地で一晩培養した。細胞を固定、および製造者(Caltag、サンディエゴ、CA) の指示により透過処理し、2μgの抗ホスホチロシン4G10−FITC抗体(BD Biosciences、サンホゼ、CA) と共に1時間インキュベーションを行い、1%BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを加えたPBSで2回洗浄し、1%ホルムアルデヒド中に固定した。FITCシグナル強度をFACSAria装置(BD)で分析し、平均蛍光強度(MFI)を算出した。値は、非染色の対称に対するMFIの増大倍率として報告する。
初代CML細胞および正常骨髄の造血性コロニー形成アッセイ:BCR−ABLT315I をもつ初代CML細胞および正常な造血性前駆体に対する化合物1の影響を評価するために、フィコール密度遠心分離により分離された骨髄単核細胞を漸増させた濃度の化合物1(CML患者:0、10、25、50nM;健康な個人:0、100、200、500、1000nM)と共に培養した。顆粒球/マクロファージコロニー形成(CFU−GM)を評価するために、細胞を、50ng/mLのSCF、10ng/mLのGM−CSF、および10ng/mLのIL−3を含むIMDM:メチルセルロース培地(1:9v/v)(Methocult GF H4534; Stem Cell Technologies、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア、カナダ)1mL中で3組培養した(5×104 細胞/プレート) 。細胞を加湿したインキュベーター中37℃で14〜18日培養した。>50細胞/コロニーを陽性コロニースコアリングの基準としてコロニーを計測した。結果は未処理対照±SEMに対するコロニーの割合として報告する。
薬物動態学:化合物1(クエン酸塩緩衝液中、pH2.74)の薬物動態プロフィールを、経口強制栄養によって1回量を投与した後CD−1雌マウスにおいて評価した。血液試料を各種時点で集め、血漿中の化合物1の濃度を、タンパク質沈降およびブランクマウス血漿中で調製された較正標準を用いる内部標準LC/MS/MS法により測定した。報告された濃度は3−マウス/時間/用量群からの平均値である。
Ba/F3生存モデル:野生型BCR−ABL又はBCR−ABLT315I を発現するBa/F3細胞を、SCID雌マウスの尾静脈内に注射した(無血清培地中の1×107 細胞/mL懸濁液100μL )。72時間後から、マウスを、ビヒクル(25mMクエン酸塩緩衝液、pH2.75)、化合物1、またはダサチニブでの経口強制栄養により1日1回、連続19日間まで処置した。動物をIACUCガイドラインにより瀕死となったら致死させ、剖検でのマウスの評価は腫瘍細胞浸潤で生じる脾腫による死亡と一致した。生存データをKaplan-Meier法を用いて分析し、統計的有意性を各処置群とビヒクル群の生存時間を比較することによりLog-rank試験(GraphPad PRISM) で評価した。p <0.05の値は統計的に有意であり、p <0.01は統計的に高度に有意であると考えられた。
Ba/F3腫瘍モデル:BCR−ABLT315I を発現するBa/F3細胞を雌のヌードマウスの右の側腹部に皮下移植した(無血清培地中の1×107 細胞/mL細胞懸濁液100μL )。効果の分析のために、マウスを、平均腫瘍体積が500mm3 に達したら異なる処置群に無作為に割り当てた。マウスを連続19日間ビヒクル(25mMクエン酸塩緩衝液、pH2.75)又は化合物1による経口強制栄養によって1日に1回処置した。以下の式を用いて腫瘍体積(mm3 ) を算出した:腫瘍体積=L×W2 ×0.5。処置期間が終了した時の腫瘍増殖阻害を測定するために、腫瘍体積の変化率を式:ΔV=(Tfinal −Tinitial )/Tinitial ×100 (ここでTinitial は処置開始時の腫瘍体積であり、Tfinal は動物を致死させた時の体積である) を用いて全動物について算出した。各処置群の平均腫瘍体積変化を、一方向ANOVA試験(GraphPad PRISM) を用いて他の全部の群と、およびダネット検定(Dunnett's test)を用いて統計的有意性についてビヒクル処置群と比較し、ここでp<0. 05の値は統計的に有意であり、p <0.01は統計的に高度に有意であると考えられた。チロシン−リン酸化BCR−ABLおよびCrkLのレベルの分析のために、腫瘍をもつ動物(平均腫瘍サイズ:500mm3 )を、経口強制栄養によりビヒクル又は30mg/kgの化合物1のいずれかの1回量で処置した。マウスへの投薬から6時間後(N=3/群)、動物を致死させ、腫瘍サンプルをpBCR−ABLおよびeIF4Eに対する抗体(Cell Signaling Technology )によるウエスタンブロット分析および全CrkL(C−20;Santa Cruz)のために集めた。
化合物1の単独剤による促進細胞系変異誘発スクリーニング:野生型BCR−ABLを発現するBa/F3細胞を、N−エチル−N−ニトロソウレア(ENU;50μg/mL)で一晩処理し、小球状とし、新鮮培地に再懸濁し、漸増させた濃度の化合物1を加えた200μL の完全培地中1×105 細胞/ウエルの密度で96−ウエルプレートに分配した。28日の実験の間2日毎に、倒立顕微鏡での目視検査による細胞増殖および培地の色の変化についてウエルを観察した。細胞のアウトグロウス(outgrowth)が観察されたウエルの内容物を、最初の96−ウエルプレートと同じ濃度の化合物1を加えた完全培地2mLを含む24−ウエルプレートに移した。ある条件のウエルすべてにおいて同時に増殖が観察されたら、24の代表ウエルをさらに分析するために拡張させた。コンフルエンシー(confluency) の状態で、24−ウエルプレートの細胞を遠心分離により集めた。DNEasy Tissueキット(QIAGEN, Inc.バレンシア、CA)を用いて、DNAを細胞ペレットから抽出した。BCR−ABLキナーゼドメインをプライマーB2A(5'TTCAGAAGCTTCTCCCTGACAT3') およびABL4317R(5'AGCTCTCCTGGAGGTCTCC3')を用いて増幅し、PCR産物をプライマーABL3335F(5'ACCACGCTCCATTATCCAGCC3')およびABL4275R(5'CCTGCAGCAAGGTAGTCA3') を用いて業者(Agencourt Bioscience Corporation、ベヴァリー、MA)により2方向に配列決定し、クロマトグラムをMutation Surveyor ソフトウェア (SoftGenetics、State College 、PA) を用いて変異について分析した。このスクリーニングの結果は3回の独立実験からの累積データとして報告される(表2)。1回の独立実験においてBCR−ABLT315I ( 表3参照)またはBCR−ABLE255V (表4参照)を発現するBa/F3細胞で開始する化合物1単独剤についても上記と同様に変異誘発スクリーニングを行った。
(結果)
(1) ABL T315I との複合体中の化合物1のX線結晶解析
最近のX線結晶学的検討により、ABL変異体のキナーゼドメインにおけるT315I 変異は、野生型ABL中のT315側鎖でなされるはずの水素結合を形成することをイマチニブ、ニロチニブおよびダサチニブのそれぞれが妨げる単一の点変異として作用することが明らかにされた。化合物1の結合のDFG−アウトモード(out-mode) およびタンパク質接触の全体ネットワークはイマチニブのものと似ているが、少なくとも1つの重要な違いがある:化合物1のエチニル結合が、他の阻害剤で見られる立体的衝突を避けるような位置に分子を置き、I315との生産的ファンデアワールス相互作用を可能にする。
(2) 化合物1はABL T315I の触媒活性を阻害する。
精製した脱リン酸化全長野生型ABLキナーゼおよびABLT315I キナーゼタンパク質を用いた生化学的アッセイにおいてイマチニブ、ニロチニブおよびダサチニブと比較した化合物1の活性を試験した。全長ABLT315I キナーゼのvitro[γ-32 P]-ATP自動リン酸化により測定して、各阻害剤が野生型ABLの酵素活性を減少させたのに対し、化合物1のみがABLT315I 変異体に対して有効であった。化合物1による類似の効力ある阻害が、ABLG250E 、ABLY253F およびABLE255K を含む、試験した追加の臨床的に関連するイマチニブ耐性ABL変異体について見られた。これらの結果は、化合物1 が野生型およびABLT315I キナーゼ変異体を含むキナーゼドメイン変異体ABLキナーゼを直接標的とすることを実証した。
(3) 化合物1は野生型またはBCR−ABL T315I を含む変異体BCR−ABLを発現するBa/F3細胞の増殖を阻害する。
Ba/F3親細胞および、野生型BCR−ABL、またはキナーゼドメインに単一の変異(M224V, G250E, Q252H, Y253F, Y253H, E255K, E255V, T315A, T315I, F317L, F317V, M351T, F359V, またはH396P)をもつBCR−ABLを発現するBa/F3細胞を用いて細胞増殖アッセイを行った。化合物1は野生型BCR−ABL (IC50:0.5nM)を発現するBa/F3細胞の増殖を強く阻害した。特に、BCR−ABLT315I 変異体 (IC50:11nM)を含む試験したすべてのBCR−ABL変異体は化合物1に感受性のままであった (IC50:0.5-36nM;表1) 。アネキシン(Annexin)Vでの染色により、化合物1による増殖の阻害はアポトーシスの誘導と関連していることが示された(データ示さず)。Ba/F3親細胞の増殖阻害は、1713nMの化合物1濃度までIC50に達さず、これは阻害効果がBCR−ABL阻害に関連していることを示唆する。
また、患者由来のBCR−ABL陽性および陰性細胞系のパネルに対しても化合物1を試験した。K562、KY01およびLAMA細胞(急性転化のCML患者由来)の強い増殖阻害が見られたが、3種の異なるBCR−ABL陰性白血病細胞系に対して有意な活性は見られず、IC50はBa/F3親細胞のものに匹敵するかそれ以上であった(表1)。
(4) 化合物1はBCR−ABL T315I を発現する細胞のBCR−ABL媒介シグナリングを阻害する。
野生型BCR−ABLまたはBCR−ABLT315I を発現するBa/F3細胞の標的阻害を確認するために、BCR−ABLおよび直接のBCR−ABL基質CrkLのチロシンリン酸化状態を調べた(図1)。CrkLチロシンリン酸化状態のモニタリングは、初代ヒト細胞でのBCR−ABLキナーゼ活性を評価する便利な手段を提供し、新規BCR−ABLを含むCML臨床試験での好ましい薬力学アッセイである(Druker et al., N Engl J Med 344:1031 (2001) ; Talpaz et al., N Engl J Med 354:2531 (2006) 。というのは、リン酸化BCR−ABLチロシンリン酸化状態の直接測定は、タンパク質分解の不安定さにより初代細胞溶解物中ではできないためである。比較のため、臨床的ABL阻害剤であるイマチニブ、ニロチニブおよびダサチニブを含有させた。CrkLゲルシフトアッセイにおいて、チロシン−リン酸化CrkLの割合はBCR−ABLの阻害に直接応答して減少する。試験した阻害剤のすべてが野生型BCR−ABLを発現するBa/F3細胞に対して有効であった (図1A)のに対し、化合物1のみT315I 変異体に対する活性を実証した(図1B)。野生型BCR−ABLまたはBCR−ABLT315I を発現するBa/F3細胞中の並行試験においてBCR−ABLリン酸化の阻害が見られた。BCR−ABLリン酸化は、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブまたは化合物1で一晩処理された野生型BCR−ABLまたはBCR−ABLT315I のいずれかを発現するBa/F3細胞において評価された。pBCR−ABL及びeIF4Eに対する抗体(ローディング・コントロール)によるイムノブロット分析により試料を分析した。
(5) 化合物1によるCML初代細胞の処理は細胞増殖を阻害する。
BCR−ABLによる白血病の患者由来の初代細胞への化合物1の効果を評価するために、CML骨髄性急性転化患者由来、または健康な個人由来の単核細胞を漸増させた濃度の化合物1に暴露し、72時間後の生存細胞を評価した。生化学的および細胞系生存率データと一致して、化合物1は正常細胞に比べ、初代CML細胞における約500倍低いIC50で生存細胞数の選択的減少を引き起こした(図2A)。
(6) 化合物1は初代CML細胞におけるBCR−ABL T315I キナーゼ活性およびコロニー生成を阻害し、正常細胞に対しては最小毒性を有する。
T315I 変異をもつCML骨髄性急性転化患者由来の単核細胞の化合物1へのex vivo 暴露後の標的阻害を評価するために、Ba/F3細胞系について記載したと同様のアッセイを行った。ここで細胞は阻害剤の存在下で一晩インキュベートし、回収し、溶解させ、そしてイムノブロットによりCrkLリン酸化について分析した。化合物1に暴露すると、リン酸化CrkLシグナルにおける減少が生じ、一方、他の3種の臨床ABL阻害剤はいずれも何ら効果を示さず(図2B)、FACSによる全チロシンリン酸化についてはこの患者由来の細胞を分析すると同様の結果が得られた(図2C)。
また、BCR−ABLT315I をもつCML加速相の患者由来および健康な個人由来の単核細胞を用いて骨髄性コロニー生成アッセイにおいて化合物1の効果を評価した。細胞を阻害剤の存在下メチルセルロース中に播種し、約14〜18日間培養し、そして倒立顕微鏡で計測した。ニロチニブもダサチニブもT315I 患者由来の細胞に対して何ら効果を示さなかったが、化合物1は濃度依存的にコロニーの生成を阻害した(図3A)。対照的に化合物1は500nM以下の濃度では正常な造血細胞に何ら毒性を示さなかった(図3B)が、これは正常細胞を用いて行った細胞増殖アッセイと一致する(図2A)。
(7) 経口での化合物1はBCR−ABL T315I 依存性疾患のマウスにおいて生存を延ばし腫瘍負荷を低減する。
化合物1のin vivo 薬物動態プロフィールを調べるために、マウスに経口強制栄養により化合物1の1回量(2.5または30mg/kgのいずれか)を投与し、化合物1の血漿中濃度を投与後2、6および24時間においてLC/MS/MSによって測定した。化合物1は経口で生物利用が可能であり、2.5mg/kgの用量で処置したマウスは2、6および24時間においてそれぞれ89.6、58.2および1.9nMの平均血漿中レベルを達成した。30mg/kgの増加させた用量では、平均血漿中レベルが2、6および24時間においてそれぞれ781.7、561.3および7.9nMを達成した。用量−暴露比例が、2.5mg/kg(AUC0-24h :767 nmol-h/mL) および30mg/kg(AUC0-24h :7452 nmol-h/mL)用量の間で見られた。また、これらのデータは、試験したすべてのBCR−ABL変異体についてin vitroでのIC50値を超える化合物1の血中濃度を、適度な経口用量で数時間維持できることを実証する。
次いで、CMLの十分確立したいくつかのマウスモデルにおいて化合物1のin vitro活性を評価した。まず、野生型BCR−ABLを発現するBa/F3細胞をマウスの尾静脈内に静脈内注射した生存モデルにおいて活性を調べた。図4Aに示すように、化合物1またはダサチニブのいずれかでの処置により、ビヒクル処置マウスでの19日間の半数生存期間(median survival)に比べ、生存期間が延びた。ダサチニブの経口日用量5mg/kg−これは効果的な投与計画として報告されてきた(Lombardo et al., J Med Chem 47:6658 (2004)) −は半数生存期間を27日に延ばした(p<0.01)。同様に、化合物1の経口日用量2.5および5mg/kgは半数生存期間をそれぞれ27.5および30日に延ばした(両用量レベルについてp<0.01)。
次いで、BCR−ABLT315I を発現するBa/F3細胞を用いるこの同じ生存モデルにおいて、化合物1の活性を評価した。16日の半数生存期間であるビヒクル処置マウスに比べ、化合物1での処置(19日間まで)により用量依存的に生存期間が延びた(図4B)。化合物1の経口日用量2.5mg/kgでは半数生存期間を0.5日延ばしただけだが(p>0.05)、5、15および25mg/kgで投薬した化合物1では、半数生存期間をそれぞれ19.5、26および30日に延ばした(3つの用量レベルすべてについてp<0.01)。対照的に、このT315I 生存モデルを用いる独立した並行実験により、ビヒクルまたはダサチニブで処置したマウス間の半数生存期間の違いは確認されなかった(図5)。
化合物1の抗腫瘍活性を、BCR−ABLT315I を発現するBa/F3細胞をマウスに皮下注射した異種移植モデルにおいてさらに評価した。腫瘍増殖は、ビヒクル処置マウスに比べ用量依存的に(図4C)化合物1により阻害され、10および30mg/kgの経口日用量で腫瘍増殖は有意に抑制された(%T/C=それぞれ68%および20%、両用量レベルについてp<0.01)。化合物1を50mg/kgで毎日経口投薬すると、有意な腫瘍退縮を生じ(%T/C=0.9%、p<0.01)、処置開始時に比べ最終測定時には平均腫瘍体積が96%減少した。標的阻害を確認するために、ビヒクルまたは化合物1の1回の投薬の6時間後に回収したマウス由来の腫瘍において、リン酸化BCR−ABLT315I およびリン酸化CrkLのレベルを評価した。図4Cに示すように、30mg/kgの経口1回量によりリン酸化BCR−ABLおよびリン酸化CrkLのレベルが顕著に低下した。
(8) 化合物1の単独薬剤は耐性サブクローンのアウトグロウスを完全に抑制するのに十分である。
細胞増殖Ba/F3パネルにおいて探査されなかった抵抗性に敏感な可能な部位、特に化合物1−特異的変異(例えば、阻害剤−酵素接触残基)を調べるため、および化合物1が他の阻害剤単独薬剤を上回る利点を提供するかどうかを評価するために、本発明者らがこれまでイマチニブ、ニロチニブおよびダサチニブに対して実証してきた、確立された促進変異誘発アッセイにおいてこの化合物を試験した。
野生型BCR−ABLを発現するBa/F3細胞から開始する一連の実験において、いくつかの濃度の化合物1(5−40nM)で抵抗性プロフィールを確立し、アウトグロウスを有するウエルのパーセンテージおよび観察された変異の範囲の両方において濃度依存的減少を見出した(図6A)。5nMの化合物1において、すべてのウエル(576/576)はアウトグロウスを示し、配列決定された代表的サブクローンの90%が野生型BCR−ABLを発現した(表2)。化合物1の濃度を10nMに上げると、アウトグロウスの顕著な減少(168/1440ウエル、11.7%)および変異したサブクローンの頻度の増加(33.1%、表2)の両方を生じた。回収された変異は、いくつかのP−ループ残基(G250、Q252、Y253およびE255)での発生、C−ヘリックス(K285、E292およびL298)またはその近くでのクラスター、およびT315(T315I)、F317、V339、F359、L387およびS438を含んでいた。回収された変異の中で、そのほとんどがイマチニブ抵抗性(またはニロチニブもしくはダサチニブ抵抗性)において以前に報告されていた(O'Hare et al., Blood 110:2242 (2007)で概説) 。化合物1に特異的な新規な変異には出会わなかった。Y253、T315およびF317の位置は接触残基であり、K285は水素結合の寄与に欠かせないE286に隣接する。
T315I を完全に抑制する濃度で存続している変異は、化合物1への抵抗性に重要性を示すようであるので、次に20nMの化合物1を調べ、アウトグロウスが急速に縮小する(3/1440ウエル、0.2%、図6A、表2)ことを見出し、E255V およびT315I の2 つの変異だけが残った。このように、本発明者らの広範な調査の中で、化合物1に高レベルの抵抗性を与える得る、これまでに未発見の変異を同定した。Ba/F3親細胞でのIC50よりも40倍以上低い濃度である40nMの化合物1で、in vitro抵抗性の完全な抑制が達成された。この抵抗性アウトグロウスの欠如を、より高濃度の化合物1(80、160、320nM、データは示さず)においてさらに確認した。本発明者らの知る限り、他のBCR−ABL阻害剤単独薬剤でこの能力を有するものは示されていない。
(9) 化合物1の複合変異体に対する影響
化合物1での療法は、イマチニブおよび少なくとも1つのサルベージ療法(FDA−認可第2ラインのABLキナーゼ阻害剤など)の不首尾の設定において試験されるようなので、T315I およびその他の抵抗性付与変異が予め存在する可能性がかなりある。これまで希少であり少数の症例でしか報告されていないが、患者は同じ対立遺伝子中に予め存在する変異と関連した第2のキナーゼドメイン変異を含む複合BCR−ABL変異により成功しないこともありうる(Khorashad et al., Blood 111:2378 (2008); Shah et al., J Clin Invest 117:2562 (2007); Stagno et al., Leuk Res 32:673 (2008)) 。単一のキナーゼドメイン変異のレベルにおける非常に限定された抵抗性感受性を見出し、複合変異への化合物1の敏感さの検討を必要とした。
主にT315I サブクローンをもつ患者を処置するために化合物が使用される状況を模するために、再び促進変異誘発アッセイを行い、今回は存在するT315I 変異のバックグラウンドで開始した(図8Bおよび表3)。やはり濃度依存の階層があり、阻害剤はすべての試験した複合変異体を制御できることを見出した。Y253H/T315I およびE255V/T315I を除くすべての複合変異体を160 nMの濃度の化合物1で除去した。320nMにおいては、唯一の残った複合変異体は、2つの最も抵抗性の単一変異体を結合させるE255V/T315I であり、アウトグロウスは、最も高い試験濃度(640nM)であるが、Ba/F3親細胞でのIC50のほぼ3倍以下での濃度で完全に抑制された。この抵抗性プロフィールは、化合物1に対し最も抵抗性の単一BCR−ABLキナーゼドメイン変異であるBCR−ABLE255V のバックグラウンドから開始した引き続くスクリーニングにおいて確認され、E255V/T315I 複合変異体が320 nMで残り、640 nMで除去された (表4)。
(考察)
化合物1は、ABLおよびABLT315I のキナーゼドメインの不活性なDFG外(DFG−out)の構造に結合し、T315I 変異に近接する炭素−炭素三重結合を特徴づけるABLキナーゼ阻害剤である。X線結晶学的検討により、化合物1はDFG外結合様式でABLT315I に結合することが確認された。化合物1 は広い水素結合網を維持し、またイマチニブの結合部位と有意に重複するキナーゼの領域を占めていた。化合物1は、多数のヴァン・デル・ヴァールス接触と共に、キナーゼへの5つの水素結合を形成し、キナーゼの強い阻害を生じた(ABLT315I IC50:2.0nM;野生型ABLIC50:0.37nM)。さらに、三重結合自体は、T315の側鎖と生産的疎水性接触を生じるのに最適なように位置し、一方、その線状の形と剛直な結合構造は、立体的接触を避け、化合物1の他の2つの部分をその確立された結合ポケットに位置させる柔軟性のない結合部として作用する構造的制約を強いる。
細胞増殖アッセイでの化合物1の評価により、野生型またはBCR−ABLT315I を含むキナーゼドメインBCR−ABL変異体を発現する細胞に対する強い汎BCR−ABL阻害、およびフィラデルフィア染色体(Ph) 陽性細胞のPh陰性細胞に対するよりも高い選択性が確認された(表1)。Ba/F3細胞においては、これは野生型BCR−ABLを発現する細胞および親細胞との間で選択性の3000倍以上の差となる(野生型IC50:0.5nM;親細胞IC50:1713nM)。結果は、細胞アッセイ(図2)および造血コロニー形成アッセイ(図3)において、化合物1でex vivo 処理した初代CML細胞対正常細胞についても一致した。試験したBCR−ABLキナーゼドメイン変異体の中で、E255V変異体が最も化合物1に対して耐性であった(IC50:36nM)。この変異はイマチニブに対して高レベルの耐性を、ニロチニブおよびダサチニブの両方に対して中レベルの耐性を与えることが報告されている(O'Hare et al., Blood 110:2242 (2007)) 。しかし、特に、残基Y253およびF359における変異(これはニロチニブでの不成功(Kantarjian et al., Blood 110:3540 (2007))の際に報告されている)、およびF317における変異(ダサチニブに対する臨床的耐性に関与(Burgess et al., Proc Natl Acad Sci USA 102:3395 (2005)) は、化合物1により、T315I 細胞に匹敵するかそれ以下のIC50値で強く阻害された(表1)。
BCR−ABLシグナリングの再活性化は、特に慢性相の疾患の患者における、臨床的ABL阻害剤に対するキナーゼドメイン変異で媒介される耐性というよくみられる特徴であるので、BCR−ABLT315I 発現性細胞をCrkLリン酸化−野生型および変異型BCR−ABLの確立された直接基質−についてのイムノブロット分析により分析した。in vitroでのBa/F3細胞およびex vivo での初代CML BCR−ABLT315I 細胞の両方において、化合物1での処理はpCrkLの割合(%)の著しい減少を生じ、一方、3種の臨床的ABL阻害剤は何ら効果を示さなかった(図1Bおよび図2B)。Ba/F3細胞においてpBCR−ABLおよびpBCR−ABLT315I のレベルを調べると同様の阻害がみられ、pCrkLの割合(%)読み出しの有効性が確認された。このCrkLシフトアッセイはABLキナーゼ阻害剤の薬力学的効力を試験する好ましい手段であり、その第1相評価において化合物1に使用されるであろう。
化合物1は、野生型BCR−ABLおよびBCR−ABLT315I により引き起こされるCMLの一連のマウスモデルにおいて経口投与した後の強い活性を実証した。野生型BCR−ABLを発現するBa/F3細胞を用いた生存モデルにおいて、化合物1は2.5および5mg/kgの低用量で著しく生存期間を延ばした(図4A)。ダサチニブを5mg/kg用いて同様の効果がみられ、これは同じ用量レベルでは野生型BCR−ABLに対するマウスでの化合物1のin vitro活性はダサチニブに匹敵することを示した。重要なことは、BCR−ABLT315I を発現するBa/F3細胞を用いる生存および皮下CMLモデルの両方において、化合物1が5、15、および25mg/kgでマウスの生存期間を顕著に延長したことである(図4B)。
腫瘍の停止および退縮は皮下腫瘍モデルにおいては30および50mg/kgで生じ、BCR−ABLシグナリング抑制は30mg/kgの用量でみられた(図4C)。化合物1はこれらの試験で用いたすべての用量レベルで十分に許容された。これらの結果はいくつかの意味をもつ。まず、化合物1が経口的に生物利用可能である事実は臨床においてこれまで試みられてきた他のT315I 阻害剤を上回る利点を提供する。特に、ABL/Auroraキナーゼ阻害剤MK−0457およびPHA−739358の両方は、BCR−ABL活性を阻害するのに十分な用量を達成するのに静脈投与を必要とする(Giles et al., Blood 109:500 (2007); Gontarewicz et al., Blood 111:4355 (2008))。さらに、これらの阻害剤の両方とも正常細胞およびBCR−ABLT315I 細胞の両方を同様の濃度で阻害する。対照的に、本発明者らのin vivo データでは、化合物1は、BCR−ABLT315I に依存性のCML動物モデルにおいて5 〜50mg/kgの広い治療範囲を有することが示唆される。
本発明者らはイマチニブ、ニロチニブおよびダサチニブに対する臨床的耐性を与えるBCR−ABLキナーゼドメイン変異のスペクトルを予測するために以前、本発明者らの促進細胞系変異誘発スクリーニングを用いた(Bradeen et al., Blood 108:2332 (2006))。第2ラインの各ABL阻害剤で処置したCML患者における追加の追跡データが利用可能となりつつあり、いくかの変異がニロチニブ (L248R, Y253H, E255K/V, T315I, F359I/V; (Kantarjian et al., Blood 110:3540 (2007)) またはダサチニブ (V299L, T315I, F317I/L; (Shah et al.,J Clin Invest 117:2562 (2007))−これらは本発明者らのin vitroプロファイリングとかなり一致する−のいずれかの不成功と関連して報告されてきた。化合物1についての本発明者らの促進変異誘発スクリーニングでは、アウトグロウスを有するウエルの割合と観察された変異の範囲の両方に濃度依存性の減少が見出された。10nMの化合物1では13の異なる残基にわたり16の異なる置換がみられたが、濃度を20nMに急激に上げると観察された全アウトグロウス(10nMで11.7%、20nMで0.2%)および回収された変異型(図6Aおよび表2)の両方が減少した。20nMで回収された耐性サブクローンのみがT3151IまたはE255V変異をもっており、40nM以上の化合物1ではアウトグロウスの完全な抑制がみられた(図6Aおよび表2)。本発明者らのデータは、適宜レベルで投与された化合物1は、単一変異による耐性に対する感受性から免れるのかもしれないことを示唆する。化合物1単独薬剤を用いたこの結果は、ニロチニブまたはダサチニブといずれかと前臨床T315I 阻害剤との2剤の併用の存在下でのみこのアッセイで達成されていた(O'Hare et al., Pro Natl Acad Sci USA 105:5507 (2008)) 。
耐性アウトグロウスを抑制する化合物1の能力の程度をさらに探求するために、2つの個々の最も抵抗性の変異体、BCR−ABLT315I またはBCR−ABLE255V のいずれかを発現するBa/F3細胞のバックグラウンドから開始する促進変異誘発スクリーニングを行った。この予測的アッセイでは、ある種の複合変異、とくに化合物1に対する中〜高レベルの耐性であるY253H,E255VおよびT315Iからなる組の任意の2つを示した(表3および4)。これらの中でY253H/T315IおよびE255V/T315Iが化合物1に関して最も耐性の組み合わせであると予測される(図6Bおよび表3および4)。特に、T315I要素の存在により、現在認可されている臨床的BCR−ABL阻害剤のいずれもこれらの変異体に対して活性でないことが示唆される。このように、化合物1は、その他すべての阻害剤に耐性が高いと予測されるであろうT315IおよびE255Vを含む複合変異を除去する能力がある。現在、BCR−ABLのキナーゼドメイン内の複合変異は稀である(表5)が、患者の生存期間が延び、連続的ABLキナーゼ阻害剤処置を受ける患者がより多くなったことで、その優位性が向上すると考えられ、現在それらをもつ患者にとっては大きな問題をもたらす。完全に網羅的でありうる変異誘発スクリーニングはないが、本発明者らのデータから、化合物1への結合を完全に排除するであろう変異は十分なキナーゼ活性の保存と両立しないであろうことが示唆される。このモデルでは、阻害から逃げることは「機能的自殺」の犠牲をはらって生じるであろう。
本発明者らの生化学的、細胞系およびin vivo 実験の結果を組み合わせると、適宜量で投与された化合物1は、汎BCR−ABL阻害剤として単独薬剤での使用を考慮することを保証するための、野生型BCR−ABLおよび試験された全BCR−ABL変異体に対する十分な活性を示す。
さらに、本発明者らの結果は、化合物1がT315I を含む複合変異体を制御するための見込みがあることを示すが、単一変異段階では耐性サブクローンを除去することが有利であるという認識を高める。
臨床研究
化合物1はBCR−ABLT315I 、野生型酵素および試験した他のすべての変異体の酵素活性を強力に阻害する経口利用可能なチロシンキナーゼ阻害剤である。これはまた、<40nMのIC50でこれらのBCR−ABL変異体を発現する細胞系の生存も阻害する。
第1相臨床試験を、化合物1の安全性を評価し、臨床的活性の予備的評価を得るために行った。試験はオープンラベル・ドーズ・エスカレーション・デザイン(open-label dose escalation design)を用いた。化合物1を合成し、本明細書に記載のように処方した。
治療に抵抗性の(または再発した、あるいは利用できる標準治療がない)血液の悪性腫瘍をもつ患者(ECOG状態≦2、QTcF≦450ms、適切な肝臓および腎臓機能、および正常な心臓機能)が適格であり、化合物1の経口日用量の1回量を投与された。血液の悪性腫瘍にはCML(任意の相)、ALL,AML,MDS,MMまたはCLLがある。さらに、患者は登録前に、21日以上の化学療法を受けたり、または14日以上研究用薬剤を飲んでいてはいけなかった。
57人の患者(女性30人)を登録して処置し、年齢中央値が61歳(26〜85歳の範囲)で診断からの年数の中央値が5.4年(0〜21年)であった。診断はCML50人(慢性〔CP〕37人、促進〔AP〕7人、ブラスト相〔BP〕6人)、Ph+ ALL3人、およびその他の悪性腫瘍4人(骨髄線維症2人、骨髄腫1人、およびMDS1人)であった。48人のPh+ 患者(Ph+ pt)のBCR−ABLにおける変異の状態は変異のない患者14人、変異のある患者34人(T315Iが14、F317Lが5、G250Eが4、2以上の変異が3、および残りはF359CおよびF359Vを含むその他の変異を示した)。他の特異的変異はM351T,L273M/F359V,G250E,E279K,F359C,L387FおよびE453Kであった)。53人のPh+ pt(CMLおよびALL)における事前治療はイマチニブ(患者の96%)、ダサチニブ(87%)およびニロチニブ(57%)であり、ここで35ptは≧3の事前TKI、50ptは≧2の事前TKIであった。
患者を次の用量レベルで処置した:2mg(3pt)、4mg(6pt)、8mg(7pt)、15mg(8pt)、30mg(7pt)、45mg(13pt)、および60mg(13pt)。45mgはさらなる検討のための最大許容用量(MTD)として同定された。患者内用量漸増が許容された。
予備的な安全性および効力のデータは次の通りであった:2〜30mgコホート(集団):DLTなし;45mgコホート:患者1人に可逆性発疹がみられた;および60mgコホート:4人の患者がDLTに関連した可逆性膵臓(膵炎)を発症した。各グレードの最も共通した薬剤関連有害事象(AE)は血小板減少(25%)、貧血、リパーゼ低下、悪心および発疹(各12%)、および関節痛、疲労および膵炎(各11%)であった。
薬物動態学および薬力学的(PK/PD)検討は、内部標準としての重水素化化合物1を用いた血漿分析(PK)、および全レベルに対するBCR−ABLの基質であるCRKLのリン酸化レベル(p−CRKL)の測定(PD)を含んだ。最初の24時間をとおして、サイクル1(C1)の8、15および22日目(D)、およびC2のD1での投与前(サイクル=28日)にサンプリングを行った。PD効果の分類は、評価できない(ベースラインでp−CRKL≦20%または分析試料が少なすぎる)、一時的(2以上の投薬後時点でp−CRKL阻害≧50%* 、しかしサイクル1中持続しない)、持続的(2以上の投薬後時点でp−CRKL阻害≧50%* 、サイクル1中持続)、または効果なし(上記基準でp−CRKL阻害なし)を含んだ。* は、≧50%の減少を信頼性をもって定量するのにベースラインのp−CRKLが低すぎる(例えば、35%)場合、≧25%阻害が許容されることを示す。
薬物動態のデータは、化合物1の半減期が19〜45時間であることを実証した。≧30mgの用量では、半減期は18時間である。図7Aおよび7Bは、投薬範囲を超えて投薬するためのCmax およびAUCの直線関係を示す。図7Cおよび7Dは濃度時間プロフィールを示す。30mg用量での1日目のCmax は約55nMであった。投薬を繰り返した後、評価可能な患者において1.5〜3倍の蓄積がみられた。
化合物1を毎日60mg投与された患者の薬物動態データを表6に示す。
毎日60mg投与された場合の平均定常状態トラフレベル(1回の28日サイクル後の投薬24時間後でのレベル)は約45ng/mLであった。これは約90nMの循環血漿中濃度に相当し、これらの被治療者の抵抗性サブクローンの出現を抑制するために有用でありうる循環濃度である。30mg以上の用量では、トラフレベルは40nM(21ng/mL)を超え、これは変異アッセイで、出現するクローンの完全な抑制が実証された濃度である(図6Aのように)。
PDデータは8mg以上の用量でのCrkLリン酸化の阻害を実証している。図8Aに示すように、持続的標的阻害が全体の集団では≧8mg用量で、T315I患者では≧15mg用量でみられた。図8B〜8Eは各種用量および異なる変異をもつ患者での薬力学的データを示す。全体的な最良の血液学的反応は、新規であり基準のCHRを含む、22CP患者中22人(85%)での完全な血液学的反応(CHR)であり、主要な血液学的反応(MHR)は12AP、BPまたはALL患者中の5人であった。細胞遺伝学的反応は8人の完全細胞遺伝学的反応(CCyR)および12人のMCyRであった。T315Iサブセット中の最良の血液学的反応は、新規であり基準のCHRを含む、9CPpt中の8人(89%)におけるCHR、および8人のAP、BPまたはALL患者中の3人におけるMHRであった。12人のT315I患者中9人はCyRについて評価可能であり、5人のCPおよび1人のAP、BPまたはALL患者はCCyRを達成し、6人のCPおよび3人のAP、BPまたはALL患者はMCyRを達成した。分子的反応は32人のCP AML患者において8人のMMRがあった(基準値においてT315I患者中4人)。
結論:化合物1の30mgまではDLTはみられず、可逆性DLTがより高い用量でみられた。PKおよびPDは、30mgでの血中レベルはT315Iを含む耐性の変異BCR−ABLイソフォームのin vitro阻害に必要なレベルを超えることを実証する。予備的分析により、BCR−ABLのT315I変異をもつ患者を含む、認可された第2ラインのTKI、ダサチニブおよびニロチニブへの耐性をもつ患者における臨床的抗腫瘍活性の証拠が明らかにされた。これまでに得られた結果は、(1) 全集団において8mg以上の用量でみられる一貫した持続的標的阻害、(2) 15mg以上の用量でみられるT315I患者における持続的標的阻害、(3) 45mgの化合物1のMTDとしての同定、および(4) 治療を受ける患者での耐性サブクローンの出現を抑制するのに必要なより高い用量が顕著な有害事象がなく許容された。トラフ薬剤濃度は、化合物1の汎用BCR−ABL活性の閾値を超え、≧30mgでみられる。≧15 mgの用量では、T315Iを含む種々の変異をもつ患者でBCR−ABLの持続的阻害があった。また、これらの結果は、現在利用可能なTKI で成功しなかった難治性Ph+ 患者での抗白血病活性の臨床的証拠とよく関連している。
急性骨髄性白血病のためのFLT3変異体の阻害
(実験操作)
細胞系、抗体および試薬:MV4−11,RS4;11,Kasumi−1およびKG1細胞はAmerican Type Cultur Collection ( マナッサス、VA) から、EOL1細胞はDSMZ(ブラウンシュバイク、独)から入手した。細胞を、10%FBS(Kasumi−1細胞では20%FBS)を加えたRPMI1640を用いて標準法に従って5%(v/v)CO2 中37℃で維持し培養した。化合物1をARIAD Phamaceuticals ( ケンブリッジ、MA) において合成し、ソラフェニブおよびスニチニブはAmerican Custom Chemical Corporation (サンディエゴ、CA) より購入した。全化合物をDMSO中の10mM保存溶液として調製した。使用する抗体は以下の通りであった:Santa Cruz Biotechnology (サンタクルーズ、CA) 製のphospho-PDGFR α,PDGFRα,FLT3, FGFR1およびGAPDH ;Cell Signaling Technology ( ベヴァリー、MA) 製のSTAT5, KIT, phospho-KIT, phospho-FGFR および phospho- FLT3;BD Biosciences (サンホセ、CA) 製のphospho-STAT5 。
細胞生存アッセイ:細胞生存率をCell Titer 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay (Promega、マディソン、WI) を用いて評価した。指数的に増殖している細胞系を96- ウエルプレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。播種24時間後、細胞を化合物またはビヒクル(DMSO)で72時間処理した。Wallac Victor マイクロプレートリーダー (PerkinElmer 、ウォールサム、MA) を用いて蛍光を測定した。データをビヒクル処理細胞に対する生存率としてプロットし、IC50 (50%阻害を生じる濃度)をマイクロソフトエクセルのXLfit バージョン4.2.2 を用いて算出した。データは、それぞれ3回試験した、別々の3実験からの平均(±SD)として示す。
イムノブロット分析:受容体チロシンキナーゼシグナリングの阻害を調べるために、細胞をある濃度範囲(0.03〜100nM)にわたり化合物1で1時間処理した。細胞を氷冷SDS溶解緩衝液(0.06Mトリス−HCL,1%SDSおよび10%グリセロール)中で溶解させ、タンパク質濃度をBCA Proteinアッセイ(Thermo Scientific,ロックフォード、IL) を用いて測定した。細胞溶解液(50μg)を電気泳動により分離し、NuPage試薬 (Invitrogen, カールスバッド、CA) を用いてニトロセルロース膜に移した。膜をリン酸化抗体でイムノブロットし、次いでRestore Wester Blot Stripping Buffer (Thermo Scientific)で剥がし、全タンパク質抗体でイムノブロットした。IC50値をビヒクル処理細胞に対する化合物1処理細胞におけるリン酸化タンパク質の割合をプロットすることにより算出した。
アポトーシスアッセイ:カスパーゼ活性の測定のために、MV4−11細胞を黒色の壁の96−ウエルプレートに1×104 細胞/ウエル中で24時間培養し、次いで化合物1で表示した時間処理した。Apo-One Homogenous Caspase 3/7試薬 (Promega,マディソン、WI) を製造者のプロトコルに従って添加し、Wallac Victor マイクロプレートリーダーで蛍光を測定した。PARP開裂を測定するために、MV4−11細胞を6−ウエルプレートに播種し、次の日に化合物1で24時間処理した。処理の最後に細胞をSDS緩衝液で溶解させ、全PARPおよび開裂PARP発現の両方について測定するためにイムノブロットした(Cell Sinaling Technology) 。
皮下異種移植モデル:MV4−11ヒト腫瘍異種移植効力の検討を、Piedmont Research Center (モリスビル、NC)によって行った。簡単に述べると、腫瘍異種移植を、CB.17SCID雌マウスの右側腹部へのMV4−11細胞(50%マトリゲル中1×107 )の皮下移植により確立し、投薬を平均腫瘍体積が約200mm3 に達した時に開始した。化合物1を25mMクエン酸緩衝液(pH=2.75)のビヒクル中で希釈し、マウスに1日1回4週間経口で投薬した。腫瘍をミリメートル単位でキャリパーにより二次元で(長さおよび幅)測定した。腫瘍体積(mm3 )を次の式で算出した:腫瘍体積=(長さ×幅2 )/2。腫瘍成長阻害(TGI)を次の式で算出した:TGI=(1−ΔT/ΔC)×100、ここでΔTは各処置群の平均腫瘍体積変化を表し、ΔCは対照群の平均腫瘍体積変化を示す。腫瘍体積データを集め、群間の全体的な差を決定するために1方向ANOVA試験(GraphPad Prism、サンディエゴ、CA) により分析した。さらに、各化合物1処置群を、ダネット(Dunnett's )多重比較試験を用いて統計的有意性についてビヒクル群と比較した。p値<0. 05は統計的に有意であり、p値<0. 01は統計的に高度に有意であると考えられた。
薬物動態および薬力学:MV4−11異種移植腫瘍の確立後、マウスに化合物1の経口1回量を投与し、6時間後に腫瘍を採取した。個々の腫瘍を、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含む氷冷RIPA緩衝液中にホモジナイズし、遠心分離により清澄化した。試料をSDS−PAGEにより分離し、ニトロセルロース膜に移し、全体およびリン酸化FLT3およびSTAT5に対する抗体でイムノブロットした。血漿中の化合物1の濃度を、タンパク質沈降およびブランクのマウス血漿中で作製した較正標準を用いる内部標準LC/MS/MS法により測定した。定量限界以下(BQL)=<1.2ng/mL化合物1。報告される濃度は4マウス/群からの平均値である。
ex vivo での初代AML患者試料の処理:全患者試料を個人が特定されないようにし(de-identified)、Institution Review Board of Oregon Health & Scientific University から認可されたインフォームドコンセントにより集めた。急性骨髄性白血病の患者からの末梢血より、Ficollグラディエントおよび赤血球溶解により単核細胞を分離した。Guava ViaCount試薬およびGuava Personal Cell Analysisフローサイトメーター (Guava Technologies、ヘイワード、CA) を用いて細胞を定量した。細胞を96−ウエルプレート(5×104 /ウエル) 中、10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、L−グルタミン、フンギソンおよび10-4M2−メルカプトエタノールを加えたRPMI中の漸増させた濃度(1〜1000nM)の化合物1上に播種した。72時間のインキュベーション後、細胞の生存率を評価するために細胞をMTSアッセイ(Cell Titer Aqueous One Solution Cell Prolifiration Assay, Promega)にかけた。全部の値を、薬剤なしで播種した細胞の生存率に対して正規化し、生存率(%)を用いて各試料について化合物1のIC50を決定した。FLT3ステータスを各患者由来のゲノムでのPCRにより決定した。
(結果)
(1) 化合物1は、構成的に活性なFLT3、KIT、FGFR1およびPDGFRα変異体により引き起こされる造血細胞系におけるシグナリングおよび増殖を阻害した。
化合物1はFLT3、KIT、FGFR1およびPDGFRαのin vitroキナーゼ活性をそれぞれ13、13、2、および1nMのIC50で阻害する。ここで、化合物1の活性は、FLT3(FLT3−ITD;MV4−11細胞)およびKIT(N822K;Kasumi-1細胞) における活性化変異またはFGFR1(FGFR1OP2−FGFR1;KG−1細胞)およびPDGFRα(FIPIL1−PDGFRα;EOL−1細胞)の活性化融合物をもつ白血病細胞系のパネルにおいて評価された。化合物1は0.3〜20nMのIC50の範囲で用量依存的に4種すべてのRTKのリン酸化を阻害した(表7)。
これらの活性化受容体が白血病誘発に重要である(Chalandon et al., Haematologica 90:949-968 (2005))ことに一致して、化合物1は0.5〜17nMのIC50で4細胞系すべての生存も強く阻害した(図9、表7)。これに対し、これらの4種の受容体における活性化変異をもたないRS4;11細胞の阻害のIC50は>100nMであった。これらのデータは、化合物1がこれらの異常RTKの1つを発現する白血病細胞を選択的に標的化することを示す。
次に、化合物1の効力および活性化プロフィールを、同じ細胞系パネルの生存率に対するその効果を並行して調べることにより、他の2つの多標的化キナーゼ阻害剤、ソラフェニブおよびスニチニブのものと比較した。ソラフェニブおよびスニチニブの強い阻害活性がFLT3(それぞれ4および12nMのIC50)およびPDGFRα(0.5および3nM)に対してみられたのに対し、化合物1がKIT(59および56nM)またはFGFR1(>100および>100nM)に対して有する高い効力はいずれの化合物も示さなかった(表7)。
(2) 化合物1のMV4−11細胞に対する強いアポトーシス効果
AMLにおけるFLT3−ITD変異の主要な臨床的関連性を考慮し、次の実験はこの標的に対する化合物1の活性の特性決定に焦点を当てた。化合物1のFLT3−ITDにより生じるMV4−11細胞の生存率に対する影響の根拠を調べるために、アポトーシスの2つのマーカーに対するその影響を測定した。カスパーゼ3/7活性の用量および時間依存性の増加が観察され、最大の誘導(4倍まで)が10〜30nMの化合物1による16時間以内の処置でみられた(図10)。同様に、≧10nM濃度では、化合物1はPARP開裂の最大に近い誘導、および付随するSTAT5〔変異FLT3−ITDキナーゼの直接下流の基質であり(Choudhary et al., Blood, 110:370-374 (2007) ) 細胞生存の重要な調節剤である〕のリン酸化の阻害を示した。これらのデータを併せると、化合物1によるFLT3−ITDの阻害はアポトーシスの誘導を通じてMV4-11細胞の生存を阻害するという結論を裏付ける。
(3) in vivo 効力および薬力学的検討
化合物1のFLT3−ITDにより生じるin vivo 腫瘍成長に対する影響を調べるため、化合物1(1〜25mg/kg)またはビヒクルをMV4−11異種移植マウスに1日1回経口で28日間投与した。図11Aに示すように、化合物1は用量依存的に腫瘍成長を強く阻害した。試験した最小の用量である1mg/kgの投与では、腫瘍成長の著しい阻害(TGI=46%、p<0.01)を生じ、25mg/kg以上の用量では腫瘍の退縮を引き起こした。特に、10または25mg/kgでの投薬では、完全な持続的腫瘍退縮が生じ、31日の追跡では触知可能な腫瘍は検出されなかった。
in vivo での標的変化を確認するために、MV4−11異種移植片マウスにビヒクルまたは化合物1を1、2.5、5または10mg/kgの経口の1回量を投与した。6時間後に腫瘍を採取し、リン酸化FLT3およびSTAT5をイムノブロット分析により評価した。1mg/kg化合物1の1回量はFLT3シグナリングに中程度の阻害効果を示し、p−FLT3およびp−STAT5のレベルを約30%低下させた。化合物1の用量を増加させると、5および10mg/kg用量でシグナリングの阻害が増大し、それぞれシグナリングを約75および80%阻害した。薬物動態分析により、血漿中の化合物1濃度とFLT3−ITDシグナリング阻害の間に正の関連があることが実証された(図11B)。これらのデータは、化合物1によるシグナリングの阻害が効力の程度と関連し(図11A)、FLT3−ITDシグナリングの阻害がこのモデルでの化合物1の抗腫瘍活性を説明するという結論を裏付ける。
(4) 初代AML細胞での化合物1の活性
AML患者由来の初代細胞での化合物1の活性を評価するために、4人の患者から末梢血芽細胞を得た;3つは野生型FLT3を発現し、1つはFLT3−ITD変異をもつ。FLT3ステータスを各患者からのゲノムDNAでのPCRにより確認した。細胞生存率を、化合物1に72時間暴露した後測定した(図12)。細胞系で得られた結果と一致して、化合物1はFLT3−ITD陽性初代芽細胞の生存を4nMのIC50で低下させ、一方、野生型芽細胞は試験した濃度(100nM以下)では生存率の減少を示さなかった。これらの知見を併せると、化合物1がFLT3−ITD変異をもつ白血病細胞に対して選択的に細胞傷害性であるという結論を裏付ける。
(考察)
ここに本発明者らは、これらの受容体のそれぞれの活性化形態を含む白血病細胞系を用いて、化合物1が血液悪性腫瘍の病因に関連する別々のキナーゼ群(FLT3、KITおよびFGFRおよびPDGFRファミリーのメンバー)に対して、BCR−ABLでみられたと同様の効力で、即ち標的タンパク質リン酸化および細胞生存の阻害について、それぞれ0.3〜20nMおよび0.5〜17nMのIC50で活性を示すことを示す。他の多標的化キナーゼ阻害剤、例えばソラフェニブおよびスニチニブ、はこれらのキナーゼのサブセットに対して阻害活性を有することがこれまで示されてきた。しかし、本発明者らは、化合物1が4種すべてのキナーゼの活性を高い効力で阻害する能力において独特であることを見出した。化合物1はここで試験したモデルにおいてFLT3、KIT、FGFR1およびPDGFRαに対して同等に効力を示すので、化合物1はこれらのキナーゼが役割を果たす疾患の処置に有用でありうる。
FGFR1およびPDGFRαの遺伝的転位を有するMPNは稀であると考えられている;しかし得られる融合タンパク質はこれらの疾患の病因において主要な役割を果たしていることが実証されてきた(Gotlib et al., Leukemia 22:1999-2010 (2008); Macdonald et al., Acta Haematol 107:101-107 (2002))。EMSは治療しない場合はAMLに迅速に変わる進行性の疾患である。ここに本発明者らは、化合物1が、FGFR1OP2−FGFR1融合タンパク質により生じるAML KGI細胞系の生存を強く阻害することを示し、これは化合物1のこのタイプの疾患への臨床的適用を裏付ける。PDGFRα融合物を有するHEL/CEL患者は、PDGFR阻害剤のイマチニブで治療すると劇的な血液学的応答を達成し(Gotlib et al., Leukemia 22:1999-2010 (2008))、そして本発明者らは化合物1が、白血病EOL細胞系で実証されたようにFIP1L1−PDGFRα融合タンパク質に対して強い活性を有することを示した。しかし、BCR−ABLにおけるT315Iゲートキーパー残基に類似した位置で変異したPDGFRαのT674I変異体は患者においてイマチニブへの耐性を与えることが実証されている(Gotlib et al., Leukemia 22:1999-2010 (2008))。重要なことに、化合物1がPDGFRαのT674I変異体キナーゼに対して強い活性(3nMのIC50)を有し、これはこの融合タンパク質をもつ患者の治療に化合物1を適用することを裏付ける。
AMLにおけるFLT3−ITDの変化の発生および予知の重要性は、このキナーゼが疾患の病因に重要な役割を果たし(Levis et al., Leukemia 17:1738-1752 (2003)) 、従って治療的介入に主要な標的となることを示す。FLT3−ITD発現細胞系MV4−11をを用いた本明細書に報告した検討において、本発明者らはin vitroおよびin vivo の両方におけるFLT3活性の阻害と腫瘍細胞生存率との間の密接な関係を示す。in vitroでは低いnM濃度(即ち、<10nM)の化合物1はFLT3リン酸化の減少、生存率の低下、およびアポトーシスのマーカーにおける増加を生じさせた。in vivo 異種移植モデルでは、1mg/kgの経口日用量によって、腫瘍成長の顕著な阻害を、5mg/kg以上の用量では腫瘍の退縮を生じた。腫瘍成長への影響がFLT3の阻害によることに一致して、化合物1の1mg/kgの1回量によって、FLT3−ITDおよびSTAT5リン酸化の部分的阻害が生じ、一方、5および10mg/kgの用量では実質的阻害を生じた。最後に、化合物1はFLT3−ITD陽性AMI患者から分離した初代芽細胞の生存を,強く阻害した(4nMのIC50)が、3人のFLT3野生型患者から分離したものはそうではなかった(IC50>100nM)。
FLT3活性をもつ多くの化合物が報告され、いくつかは既に患者で評価され、比較的低い臨床活性がこれまで報告されている(例、Stirewalt et al., Nat. Rev. Cancer 3:650-665 (2003); Chu et al., Drug Resist. Updat. 12:8-16 (2009); Weisberg et al., Oncogene Jul 12 2010) 。FLT3依存性AML細胞を殺すにはFLT3阻害が持続されることが必要との臨床前の検討に基づき、最大の治療的利益を達成するには、連続的でほぼ完全なFLT3キナーゼの阻害が必要かもしれないとの見解が現れた(Pratz et al., Blood 113:3938-3946 (2009)) 。本発明者らのin vitroでの検討は、完全、即ち持続した実質的なFLT3リン酸化および機能の阻害が≦10nM濃度で得られることを実証する。重要なのは、化合物1の薬物動態的特性の予備的分析により、許容できるレベルで投薬した場合に、40nMを超えるトラフレベル(即ち、次の日用量の前)が証明ざれたことである。これらのデータは、化合物1の効力および薬理学的特性により患者においてFLT3の連続的でほぼ完全な阻害が許容されるという結論を支持する。
化合物1は、FLT3の強い阻害を示し、FLT3−ITD変異を有するAML細胞に対し細胞傷害性である多標的化キナーゼ阻害剤である。重要なことに、この薬剤は、追加のRTKであるFGFR1、KITおよびPDGFRαに対して活性を示し、これらはまた血液悪性腫瘍の病因において役割を果たすことが示されてきた。特に、これらのRTKに対するin vitroでの化合物1の効力およびヒトで観察される化合物1の血漿中レベルは、これらの標的に対する化合物1の臨床的役割を裏付ける。これらの所見は一緒に、AMLおよび他の血液悪性腫瘍(KIT、FGFR1またはPDGFRαにより引き起こされるものなど)に対する新規な治療法としての化合物1の開発の強い臨床前裏付けを提供する。
FLT3変異をもつAML患者での予備的結果
実施例3で考察した非常に有意義な細胞を用いた結果を超え、予備的臨床試験結果は、毎日経口で投与する45mgの化合物1での処置後のFLT3−ITDを有する難治性AML患者における完全な反応を含む。全体として、これらの結果はFLT3−ITDによるAMLおよび他の血液悪性腫瘍をもつ患者における化合物1の開発を支持する。さらに、他のキナーゼに対する阻害的プロフィールを考慮すると、ポナチニブはまた、KIT、FGFR1またはPDGFRαまたはその他のキナーゼ(野生型または変異型)により引き起こされる種々のがんに対して重要な役割ももつ。
化合物1のキナーゼ選択性プロフィール
試薬:化合物1は本明細書に記載のようにして合成した。以下の化合物は購入した:PDI173074(Calbiochem、ギブスタウン、NL) 、BMS−540215(American Custom Chemical、サンディエゴ、CA) 、CHIR−258およびBIBF−1120(Selleck Chemical Co.、ロンドン ON 、カナダ) 。
キナーゼアッセイ:IC50を測定するためのキナーゼ阻害アッセイはReaction BiologyCorporation (RBC、モルヴァン、PA、米国) において実施された。1μM から開始した3倍連続希釈物での10点カーブを用いて10μM ATPにおいて化合物を試験した。2回のアッセイからの平均データを示す。
細胞増殖アッセイ:細胞増殖をCell Titer 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay (Promega、マディソン、WI) またはCyQuant Cell Proliferation Assay (Invitrogen、カールスバッド、CA) のいずれかを用いて評価した。細胞を播種して24時間後、細胞を化合物で処理し、72時間培養した。50%増殖阻害 (GI50) を引き起こす濃度を、時間0 (処理時間) での細胞数について補正すること、およびマイクロソフトエクセルのXLfit バージョン4.2.2 を用いてビヒクル (ジメチルスルホキシド、DMSO) 処理細胞に対する増殖率としてデータをプロットすることにより測定した。データは、3回試験した、別々の3実験からの平均(±SD)として示す。
軟寒天コロニー形成アッセイ:軟寒天アッセイを、CytoSelect 96-Well Cell Transformation Assay (Cell Biolabs、サンディエゴ、CA) を用いて行った。簡単に述べると、細胞を0.08%寒天中に再懸濁し、96- ウエルプレート中の0.06%寒天上に播種した。細胞を播種した時点で化合物1で1回処理し、8〜10日間インキュベートした。細胞をヨードニトロテトラゾリウムクロリド(Sigma 、セントルイス、MO) で染色するか、可溶化し、製造者のプロトコルに従ってCyQuant Dye で定量した。「ND」は測定せずを意味する。
ウエスタンイムノブロッティング:細胞を、播種24時間後に処理し、阻害剤と共に1時間インキュベートした。細胞をSDS緩衝液またはPhospho-Sasfe TM緩衝液 (Novagen 、ギブスタウン、NJ) 中で溶解させ、タンパク質溶解物を一晩免疫沈降させ、および/または記載の抗体でイムノブロットした。タンパク質発現を、Qantity One ソフトウエア (BioRad、ハークルス、CA) を用いて定量した。IC50値 (50%阻害を引き起こす濃度) をXLfit4を用いて、全タンパク質シグナルに対して正規化したホスホ- シグナルの阻害率 (%) をプロットすることにより算出した。表に示したデータは2〜3回のアッセイからの平均値である。
皮下腫瘍モデル:AN3CA細胞をヌードマウスの右側腹部に移植した。効果の分析のために、平均腫瘍体積が約200mm3 に達したら、阻害剤を12日間毎日経口投薬により投与した。平均腫瘍体積(±SE;腫瘍体積=L×W2 ×0.5)を各処置群について算出した。
薬物動態/薬力学:薬力学的分析のために腫瘍試料を採取したら凍結し、Phospho-SafeTM緩衝液中にホモジナイズし、ウエスタンイムノブロッティングにより分析した。血漿中の阻害剤濃度をタンパク質沈降およびブランクのマウス血漿中で作製した較正標準を用いる内部標準LC/MS/MSにより測定した。示したデータは3マウス/時点/群からの平均値である。
化合物1のin vitroでの効力および選択性をマルティプル組換えキナーゼドメインおよびペプチド基質を用いたキナーゼアッセイにおいて評価した(表8)。化合物1は、受容体チロシンキナーゼのPDGFR、FGFRおよびVEGFRファミリーのメンバー(FLT1、FLT4およびKDRなど)を阻害することが見出された(表1)。化合物1は、4種すべてのFGF受容体:FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、およびFGFR1(V561M)およびFGFR2(N549H)の強い阻害剤であり(表8)、これは4種すべてのFGFRは阻害しない他の多標的化キナーゼ阻害剤(例、スニチニブ、ソラフェニブ、およびダサチニブ)と比べた場合に独特である。しかし、特に、化合物1はAuroraまたはインスリンキナーゼファミリーのメンバーは阻害せず、またシクリン(cyclin) 依存性キナーゼ2(CDK2)/CyclinEも阻害しなかった。
がんの細胞モデルにおけるの化合物1の効果
化合物1は各種がん細胞系で細胞活性に影響を及ぼした。実験操作は実施例5に記載の通りに行った。FGFR1−FGFR1OP2融合遺伝子を発現した急性骨髄性白血病由来のKG1細胞系において、化合物1は細胞増殖およびFGFR1のリン酸化を阻害した。図13Aは、10nMという限定されたGI50での化合物1のKG1細胞系に対する増殖阻害を示す。化合物1は10nMのGI50でFGFR1のリン酸化を阻害し、これは化合物1で処理されたKG1細胞でのP−FGFR1、T−FGFR1およびグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(「GADPH」)の発現のウエスタンイムノブロット分析により測定した。
化合物1はまた、正常細胞に比較し、がん細胞の細胞活性に選択的に影響しうる。化合物1は、wtFGFR2 SNU1細胞に比べ、増幅したFGFR2をもつSNU16胃癌細胞を選択的に阻害した(図14)。化合物1は、SNU16胃癌細胞でのタンパク質発現についてのウエスタンイムノブロット分析において、低下させたリン酸化FGFR2、FRS2aおよびErk1/2の存在により測定すると、SNU16でのシグナリングを阻害した。化合物1は、wtFGFR2 SNU1細胞に比べた場合、軟寒天でのSNU16コロニー形成も選択的に阻害した(図15)。表9は、wtFGFR2 SNU1細胞系と比べた、胃癌細胞系SNU16およびKatoIIIにおける化合物1の活性のまとめを示す。化合物1は、wtSNU1に比べ、細胞増殖および胃癌細胞SNU16およびKatoIIIのFRS2aおよびErk1/2のリン酸化を選択的に阻害した。
化合物1は、wtFGFR2 HeclB細胞に比べた場合、変異体FGFR2(N549K)をもつ子宮体がん(子宮内膜がん)細胞AN3CAを選択的に阻害した。化合物1は、490nMのGI50のHeclB細胞に比べると、30nMのGI50でAN3CA細胞の細胞増殖を阻害した(図16)。化合物1はまた、化合物1で処理された子宮体がん細胞AN3CAでのタンパク質発現のウエスタンイムノブロット分析により測定して、AN3CA細胞でのシグナリング、特にFRS2aおよびErk1/2のリン酸化も選択的に阻害した。表10は、wtFGFR2 HeclBおよびRL95細胞系に比べた、子宮体がん細胞系AN3CAにおける化合物1の活性のまとめを示す。
化合物1は、膀胱がんおよび多発性骨髄腫(MM)の細胞モデルにおいてFGFR3を阻害した。化合物1は、wtFGFR3 RT112細胞に比べた場合、変異体FGFR3b(Y375C)を発現する膀胱がん細胞MGH−U3の増殖を選択的に阻害した(図17)。化合物1はまた、化合物1で処理されたMGH−U3細胞でのタンパク質発現のウエスタンイムノブロット分析により測定して、MGH−U3でのFRS2aのシグナリングを阻害した(P−FRS2aについてIC50=41nM)。化合物1は、wtFGFR3 NCI−H929細胞に比べた場合、t(4;14)転座を有し変異体FGFR3(K650E)を発現するOPM2 MM細胞の増殖を選択的に阻害した(図18)。FGFR3シグナリングは、化合物1で処理されたOPM2 MM細胞でのタンパク質発現のウエスタンイムノブロット分析により測定して、OPM2細胞において化合物1により阻害された(データ示さず)さらに化合物1は、OPM2においてFRS2aのシグナリングを阻害した(P−FRS2aについてIC50=65nM)。
化合物1は、乳がんの細胞モデルにおいてFGFR4を阻害した。変異体FGFR4(Y367C)を発現するMDA−MB−453乳がん細胞に対する化合物1の効果は、細胞増殖の阻害(図19)、および化合物1で処理されたMDA−MB−453細胞でのタンパク質発現のウエスタンイムノブロット分析により測定した、FGFR4およびFRS2aの細胞シグナリングの阻害(P−FGFR4についてIC50=12nMおよびP−FRS2aについてIC50=14nM)を含む。
表11は、CHIR−258,BIBF−1120,BMS−540215およびPD173074を含む各種キナーゼの阻害のFGFRモデルにおけるRTK阻害剤活性の比較を示す。IC50(nM)データはRBCにより行われたキナーゼアッセイについて示され、GI50(nM)データは細胞増殖アッセイについて示される。
(結論)
化合物1はキナーゼおよび細胞アッセイにおいて4種すべてのFGF受容体に対して強い活性を示す経口的に活性なキナーゼ阻害剤である。シグナリングおよび増殖は4種すべてのFGFRを発現するモデルにおいて阻害され、FGFR1およびFGFR2に対して最も強い活性がみられた。化合物1の活性は、胃がん、子宮体がん、膀胱がん、および多発性骨髄腫を含む多数のがん種においてみられた。化合物1の活性は、臨床で評価されている既知のFGFR活性をもつ他のRTK阻害剤に匹敵した。
化合物1の経口送達はFGFR2が引き起こすAN3CAの異種移植モデルでの充実性腫瘍成長の低減に有効であった
化合物1は10および30mg/kgの経口用量でAN3CA腫瘍成長をそれぞれ36%および62%阻害した(図20)。日用量の投与計画が示されるが、間欠的な用量の投与計画も有効であるかもしれない。
in vivo の薬力学および薬物動態の関連も測定し、ここで化合物1の血漿中レベルは投薬6時間後ウエスタンイムノブロット分析により測定した(図21)。化合物1の経口投薬はAN3CA異種移植においてFRS2aおよびErk1/2シグナリングを阻害した(図21)。
化合物1の経口送達は、臨床的に関連するFGFR2(N549K)変異を発現した子宮体がんモデルにおいて腫瘍成長を強力に阻害した。細胞増殖の阻害は腫瘍における下流シグナリングの阻害と関連した。これらのデータは、FGF受容体の変化により特徴付けられる多くの腫瘍型の処置に化合物1を使用することを裏付ける。
化合物1とリダフォロリムスとの併用治療
試薬:化合物1およびリダフォロリムス(AP23573,MK−8669)はARIAD Pharmaceuticals により合成された。以下の化合物は購入した:BMS−540215(American Custom Chemical、サンディエゴ、CA) 、CHIR−258,AZD2171およびBIBF−1120(Selleck Chemical Co.、ロンドン ON 、カナダ) 。
キナーゼアッセイ:IC50を測定するためのキナーゼ阻害アッセイはReaction BiologyCorporation (RBC、モルヴァン、PA、米国) において実施した。1μM から開始した3倍連続希釈物での10点カーブを用いて10μM ATPにおいて化合物を試験した。2回のアッセイからの平均データを示す。
細胞増殖アッセイ:細胞増殖をCell Titer 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay (Promega、マディソン、WI) またはCyQuant Cell Proliferation Assay (Invitrogen、カールスバッド、CA) のいずれかを用いて評価した。細胞を播種して24時間後、細胞を化合物で処理し、72時間培養した。50%増殖阻害 (GI50) を引き起こす濃度を、時間0 (処理時間) での細胞数について補正すること、およびマイクロソフトエクセルのXLfit バージョン4.2.2 を用いてビヒクル (DMSO) 処理細胞に対する増殖率(%)としてデータをプロットすることにより測定した。
併用アッセイおよび分析:試験した各化合物について50%最大阻害での有効用量(ED50)を測定し、1xとして定義した。使用した薬剤濃度は固定したED比で0.125×から8×の範囲であった。細胞増殖に対する組み合わせ効果をChouおよびTalalay法(CalcuSynソフトウエア、Biosoft)により分析した。
ウエスタンイムノブロッティング:細胞を、播種の24時間後に処理し、阻害剤と共に1時間インキュベートした。細胞をSDS緩衝液またはPhospho-Safe緩衝液 (Novagen 、ギブスタウン、NJ) 中で溶解させ、タンパク質溶解物を一晩免疫沈降させ、および/または記載の抗体でイムノブロットした。タンパク質発現を、Qantity One ソフトウエア (BioRad、ハークルス、CA) を用いて定量した。IC50値 (50%阻害を引き起こす濃度) をXLfit4を用いて、全タンパク質シグナルに対して正規化したホスホ−シグナルの阻害率 (%) をプロットすることにより算出した。表に示したデータは2〜3回のアッセイからの平均値である。
皮下腫瘍モデル:AN3CA細胞をヌードマウスの右側腹部に移植した。効力の分析のために、平均腫瘍体積が約200mm3 に達したら、化合物1を21日間毎日経口投薬するか、またはQDX5を3週間腹腔内投薬して、阻害剤を投与した。平均腫瘍体積(±SE;腫瘍体積=L×W2 ×0.5)を各処置群について算出した。
薬物動態/薬力学:薬力学的分析のために腫瘍試料を採取したら凍結し、Phospho-Safe中にホモジナイズし、ウエスタンイムノブロッティングにより分析した。血漿中の阻害剤濃度をタンパク質沈降およびブランクのマウス血漿中で作製した較正標準を用いる内部標準LC/MS/MS法により測定した。示したデータは3マウス/時点/群からの平均値である。
化合物1は各種がん細胞系において細胞活性に影響を及ぼした。表12は、AZD2171,CHIR−258,BIBF−1120およびBMS−540215を含む各種キナーゼ阻害剤についての、FGFR細胞モデルでのRTF阻害剤活性の比較を示す。化合物1はFGFR1〜FGFR4に対する強い阻害剤である。キナーゼアッセイについてのIC50(nM)データはRBCにより得られた。表12は、細胞増殖アッセイについてはGI50 (nM) を、シグナリングについてはIC50 (nM) を示す。
化合物1は、FGFR2−変異子宮体がん細胞系の増殖およびシグナリングを選択的に阻害した。化合物1は、wtFGFR2Hec−1−BおよびRL95−2細胞系に比べて、子宮体がん細胞系AN3CAおよびMFE−296を阻害した(図22)。化合物1は、各種濃度の化合物1のAN3CAに対する影響についてのウエスタンイムノブロット分析により測定して、AN3CA細胞でのシグナリング、特にFRS2aおよびErk1/2のリン酸化を阻害した。表13は、wtFGFR2Hec−1−BおよびRL95−2細胞系に比べた、子宮体がん細胞系AN3CAおよびMFE−296での化合物1の活性のまとめを示す。
化合物1の経口送達はFGFR−2変異AN3CA子宮体がん異種移植の成長を阻害した。化合物1は10および30mg/kgでAN3CA腫瘍成長をそれぞれ49%および82%阻害した(図23)。化合物1は投薬6時間後に薬力学マーカーを阻害した。化合物1の経口投薬は、リン酸化および非リン酸化FRS2a、リン酸化および非リン酸化Erk1/2および対照としてのグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼについての投薬6時間後のウエスタンイムノブロット分析により測定して、AN3CA異種移植におけるFRS2aおよびErk1/2のリン酸化を阻害した(データ示さず)。
これらのデータは、化合物1が経口利用可能な強力な汎FGFR阻害剤であることを示す。活性は、胃がん、子宮体がん、膀胱がん、および多発性骨髄腫を含む多数のがん種においてみられた。化合物1の活性は、臨床で評価中の既知のFGFR活性をもつ他の阻害剤に匹敵した。さらに、経口での化合物1は、FGFR2について臨床的に関連するN549K変異を発現する子宮体がんモデルにおいて腫瘍成長を強く阻害する。
がんモデルにおける化合物1のmTOR阻害剤との相乗的抗腫瘍活性
図24Aは、各種濃度のリダフォロリムス、化合物1、および化合物1とリダフォロリムスとの併用についてAN3CA細胞系での化合物1の増殖阻害を示す。図24Bは、各種濃度のリダフォロリムス、化合物1、および化合物1とリダフォロリムスとの併用についてMFE−296細胞系での化合物1の増殖阻害を示す。濃度はEC50の関数として示す。化合物1とリダフォロリムスとの併用は、いずれかの化合物単独に比べ、FGFR2変異子宮体がん細胞系AN3CAおよびMFE−296に相乗効果を発揮した。AN3CA細胞系での化合物1とリダフォロリムスの併用のメジアン効果分析は、AN3CA細胞系(図25A)およびMFE−296細胞系(図25B)について示される。AN3CA細胞系については、4.3〜1000nMの化合物1および0.05〜13nMのリダフォロリムスの濃度範囲内で相乗効果がみられた(図25A)。MFE−296細胞系については、14〜750nMの化合物1および0.14〜7.5nMのリダフォロリムスの濃度範囲内で相乗効果がみられた(図25B)。
細胞周期分析を、リダフォロリムス、化合物1、および化合物1とリダフォロリムスとの併用で24時間処理した後AN3CAにおいて行った。化合物1とリダフォロリムスの併用で処理した場合、未処理または1つの化合物単独で処理した細胞に比べ、G0−G1サイクルの間、細胞周期の停止が増加するのが観察された (図26) 。
AN3CA細胞系での各種シグナリング分子に対する化合物1とリダフォロリムスの影響を投薬24時間後のウェスタンイムノブロット分析により測定した。化合物1(30nMまたは300nM)とリダフォロリムス(0.5nMまたは5nM)の併用はFRS2a、Erk1/2およびS6シグナリングの阻害を生じた(データ示さず)。
図27はFGFR2およびmTOR経路の考えられるモデルを示す概略図である。理論に拘束されることは意図せず、このモデルにおいて化合物1はFGFR2/MAPK経路を阻害し、リダフォロリムスはmTOR経路を阻害するようである。
化合物1とリダフォロリムスを併用して経口送達すると、FGFR2変異AN3CA腫瘍異種移植において抗腫瘍活性の向上がみられた。図28Aは、低用量の化合物1(10mg/kg)とリダフォロリムス(0.3mg/kgまたは1.0mg/kg)の併用についてのAN3CA腫瘍成長の阻害を示す。図28Bは、高用量の化合物1(30mg/kg)とリダフォロリムス(0.3mg/kgまたは1.0mg/kg)の併用についてのAN3CA腫瘍成長の阻害を示す。結果は、化合物1の毎日の(図28Aおよび28Bにおける黒色の線)およびリダフォロリムスの週5日の(図28Aおよび28Bにおける灰色の線)経口投薬について示す。表14はAN3CA異種移植モデルにおける化合物1およびリダフォロリムスの効力のまとめを示し、ここで「TGI」はビヒクルに対する腫瘍成長阻害を意味する。
in vivo の薬力学および薬物動態の関連についても投薬6時間後に測定した(図29)。投薬6時間後化合物1の血漿中レベルも示す(図29)。
化合物1とリダフォロリムスの相乗活性が、FGFR2変異子宮体がん細胞の成長に対してみられた。これらのデータは、化合物1とリダフォロリムスが、FGFR2変異子宮体がんモデルにおいて強い組み合わせ活性を有することを示す。理論に拘束されることは意図せず、化合物1およびリダフォロリムスにより、それぞれFGFR2/MAPKおよびmTOR経路を通して強い二重の阻害が達成された。化合物1とリダフォロリムスの併用の相乗効果が、in vitro細胞増殖アッセイおよびin vivo 誘導腫瘍退縮を介して観察された。
化合物1はFGFRによる多数の腫瘍のモデルにおいて強い活性を有する汎用FGFR阻害剤である。化合物1によるFGFR2シグナリングおよびリダフォロリムスなどのmTOR阻害剤によるmTORシグナリングの二重の阻害により、FGFR2が起こす子宮体がんのin vitroモデルおよびin vivo 腫瘍退縮において相乗活性が生じる。
これらのデータは、新生物、がんおよび病的血管新生に関連する病状などの病的細胞増殖に関連する疾患の処置のための、mTOR阻害剤と併用した化合物の使用に対する裏付けを提供する。本発明の組成物、方法またはキットを用いて処置しうるがんの制限されない例としては、膀胱がん、乳がん、大腸がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、頭部および頸部のがん、胆嚢がん、卵巣がん、膵臓がん、胃がん、子宮頚がん、甲状腺がん、前立腺がん、又は皮膚のがん;扁平上皮がん;子宮体がん;多発性骨髄腫;リンパ系の造血腫瘍(例、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞白血病、T細胞白血病、ホジキン型白血病、非ホジキン型白血病、ヘアリー細胞白血病、若しくはバーキット白血病);骨髄系の造血腫瘍(例、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、若しくは前骨髄球性白血病);間葉由来の腫瘍(例、線維肉腫若しくは横紋筋肉腫);中枢若しくは末梢神経系の腫瘍(例、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、若しくは神経鞘腫);黒色腫;セミノーマ;テトラカルシノーマ;骨肉腫;又はカポジ肉腫が挙げられる。
本発明の組成物、方法又はキットを用いて処置することができる病的血管新生に関連する疾患の制限しない例としては、充実性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、慢性炎症、肥満症、黄斑変性症、及び心血管疾患が挙げられる。
〔その他の実施態様〕
本明細書に述べたすべての刊行物、特許および特許出願は、各独立した刊行物または特許出願が具体的かつ個々に記載され援用されたと同じ程度にここに参照として援用される。米国特許仮出願No. 61/256,669(2009年10月30日出願)、No. 61/256,690(2009年10月30日出願)およびNo. 61/261,014(2009年11月13日出願)はここに参照として援用される。
本発明はその具体的態様に関連して記載されているが、さらなる改変が可能であることは当然であり、本出願は、一般的に本発明の原理に従いそして本発明の属する分野内で既知または慣用の実施の範囲に入り上記で開示した必須の要件に適用され得る、本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用または適応を含み、そして特許請求の範囲に記載されている。
その他の態様は特許請求の範囲の範囲内である。