JP2013252136A - 肥満化リスク・糖尿病発症リスクの検出方法 - Google Patents
肥満化リスク・糖尿病発症リスクの検出方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2013252136A JP2013252136A JP2013138299A JP2013138299A JP2013252136A JP 2013252136 A JP2013252136 A JP 2013252136A JP 2013138299 A JP2013138299 A JP 2013138299A JP 2013138299 A JP2013138299 A JP 2013138299A JP 2013252136 A JP2013252136 A JP 2013252136A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fstl3
- gene
- expression level
- risk
- obesity
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
- C12Q1/6876—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
- C12Q1/6883—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N33/00—Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
- G01N33/48—Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
- G01N33/50—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
- G01N33/68—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
- G01N33/6893—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids related to diseases not provided for elsewhere
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q2600/00—Oligonucleotides characterized by their use
- C12Q2600/118—Prognosis of disease development
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q2600/00—Oligonucleotides characterized by their use
- C12Q2600/158—Expression markers
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N2333/00—Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature
- G01N2333/435—Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature from animals; from humans
- G01N2333/46—Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature from animals; from humans from vertebrates
- G01N2333/47—Assays involving proteins of known structure or function as defined in the subgroups
- G01N2333/4701—Details
- G01N2333/4728—Details alpha-Glycoproteins
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N2800/00—Detection or diagnosis of diseases
- G01N2800/04—Endocrine or metabolic disorders
- G01N2800/042—Disorders of carbohydrate metabolism, e.g. diabetes, glucose metabolism
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N2800/00—Detection or diagnosis of diseases
- G01N2800/50—Determining the risk of developing a disease
Landscapes
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Analytical Chemistry (AREA)
- Immunology (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Zoology (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Pathology (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Hematology (AREA)
- Urology & Nephrology (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- General Physics & Mathematics (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Food Science & Technology (AREA)
- Cell Biology (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
Abstract
【課題】肥満あるいは糖尿病と診断されていない個体における肥満化リスク・糖尿病発症リスクの検出方法を提供する。
【解決手段】臨床的に肥満と判定されないBMI値が25未満の個体試料におけるフォリスタチン様3(FSTL3)遺伝子発現量を測定し、該測定した発現量を肥満にいたるリスクおよび糖尿病発症に至るリスクの検出と関連付ける方法、さらにインヒビンβB遺伝子の発現量を測定し、FSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比から、肥満もしくは糖尿病の発症に至るリスクの検出と関連づける方法。
【選択図】図2
【解決手段】臨床的に肥満と判定されないBMI値が25未満の個体試料におけるフォリスタチン様3(FSTL3)遺伝子発現量を測定し、該測定した発現量を肥満にいたるリスクおよび糖尿病発症に至るリスクの検出と関連付ける方法、さらにインヒビンβB遺伝子の発現量を測定し、FSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比から、肥満もしくは糖尿病の発症に至るリスクの検出と関連づける方法。
【選択図】図2
Description
本発明は、肥満あるいは糖尿病と診断されていない個体における肥満化リスク・糖尿病発症リスクの検出方法に関するものである。
2型糖尿病の根本的な要因は、高脂肪食や運動不足による肥満とそれに伴うインスリン抵抗性の増大である。また、肥満(特に内臓脂肪型)とインスリン抵抗性は、メタボリックシンドロームにおけるリスク集積の主要な機序でもある。従って、肥満とインスリン抵抗性の原因の解明とそれに立脚した予防法や治療法の確立が、動脈硬化や心血管疾患など2型糖尿病を背景因子に含む疾患の予防・治療のためにきわめて重要であるが、未だ原因解明は完全ではない。
近年、ヒトの脂肪組織における脂肪細胞のサイズの分布、形態変化、種々の遺伝子の発現、及び個体レベルの糖脂質代謝調節の関連性について研究がされている。例えば、特許文献1では、2型糖尿病患者の脂肪細胞の遺伝子発現を解析して上方制御、下方制御される遺伝子の探索を行っている。しかしながら、特許文献1では、網羅的解析によって2型糖尿病患者と健常者間で発現量の変動が確認された遺伝子群を抽出したのみであり、該抽出された遺伝子群と実際の疾患(例えば、肥満やインスリン抵抗性などの病態)との関連性は記載されておらず、該抽出された遺伝子群が、2型糖尿病に関連する遺伝子マーカーとしてどのような挙動を示し、どのような診断に使用できるかは明らかにされていない。
また、特許文献2では、2型糖尿病患者の肝臓組織における遺伝子発現を解析して亢進(上方制御)、減弱(下方制御)される遺伝子の探索を行っている。さらに、探索された遺伝子と2型糖尿病の病態に関する指標(BMI、血清中HbA1c、HOMA-R、MCR)との相関についての解析も行い、抽出された遺伝子群と実際の疾患(例えば、肥満やインスリン抵抗性などの病態)との関連性も検討されている。しかしながら、対象とした個体が2型糖尿病患者であり、抽出された遺伝子発現の変動が、2型糖尿病の病態の原因であるか、結果であるかなどは定かではない。
フォリスタチン様3(follistatin-like 3: FSTL3)は、アクチビン及びミオスタチンと結合する分泌糖タンパク質である(非特許文献1、2)。このタンパク質は、シグナルペプチドならびにフォリスタチン様ドメイン(SMARTアクセッションSM00274)及びKazal様セリンプロテアーゼインヒビタードメイン(SMARTアクセッションSM00280)を含む2つのタンデムセグメントからなる。FSTL3は、主に胎盤、卵巣、子宮及び精巣において発現するが、皮膚、心臓、肺及び腎臓などの組織においても発現する。
アクチビンは、TGF-βスーパーファミリーに属するサイトカインであり、TGF-β等と同様に二量体構造を有する。構成するサブユニット(βサブユニットと呼ばれる)の違いにより二量体ポリペプチド増殖因子である、3つの主なアクチビン形態、アクチビンA(βA-βA)、アクチビンAB(βA-βB)、アクチビンB(βB-βB)が知られている。また、アクチビンBのレセプターであるALK7が膵β細胞機能のネガティブ制御因子であるとの報告もある(非特許文献3)
アクチビンは、TGF-βスーパーファミリーに属するサイトカインであり、TGF-β等と同様に二量体構造を有する。構成するサブユニット(βサブユニットと呼ばれる)の違いにより二量体ポリペプチド増殖因子である、3つの主なアクチビン形態、アクチビンA(βA-βA)、アクチビンAB(βA-βB)、アクチビンB(βB-βB)が知られている。また、アクチビンBのレセプターであるALK7が膵β細胞機能のネガティブ制御因子であるとの報告もある(非特許文献3)
FSTL3の脂肪細胞における発現については、例えば特許文献1では、糖尿病患者において健常人と比較して発現が下方制御されていることが報告されている。しかしながら、FSTL3発現と肥満化リスク、糖尿病発症リスク及び糖尿病患者における種々の病態(インスリン抵抗性、肥満など)との相関については記されておらず、FSTL3の診断マーカーとしての有効性は明らかではない。
J Biol Chem 275: 40788-96(2000)
J Biol Chem 277: 40735-41(2002)
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 May 20; 105(20): 7246-51.
本発明の課題は、未知の点が多い肥満とインスリン抵抗性の原因を解明し、肥満あるいは糖尿病と診断されていない個体における肥満に至るリスク(以下、「肥満化リスク」ということがある)及び/又は糖尿病発症に至るリスク(以下、「糖尿病発症リスク」ということがある)ならびに肥満を経て糖尿病発症に至るリスク、具体的には、潜在的な肥満化リスク及び/又は潜在的な糖尿病発症リスク(詳細にはインスリン抵抗性悪化リスク)、より具体的には、肥満化及び/又は糖尿病発症に至るリスクを早期に検出するために適した、指標(マーカー)としての遺伝子及びポリペプチドを提供することにある。
本発明は、生体試料におけるFSTL3遺伝子発現量を測定し、該測定した発現量を糖尿病発症に至るリスクの検出と関連付ける方法を提供する。また、本発明は、臨床的に肥満と判定されないBMI値が25未満の個体においてFSTL3遺伝子発現量を測定し、該測定した発現量を肥満に至るリスクの検出と関連付ける方法を提供する。さらに、本発明は、BMI値が25未満の個体においてFSTL3遺伝子発現量を測定し、該測定した発現量を糖尿病発症に至るリスクの検出と関連付ける方法を提供する。
さらに本発明は、インヒビンβB遺伝子の発現量を測定し、FSTL3 遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を、肥満もしくは糖尿病の発症に至るリスクの検出と関連づける方法を提供する。
さらに本発明は、インヒビンβB遺伝子の発現量を測定し、FSTL3 遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を、肥満もしくは糖尿病の発症に至るリスクの検出と関連づける方法を提供する。
本発明者らは、脂肪細胞において、肥満やインスリン抵抗性と関連して発現量が変化する遺伝子の網羅的解析を行い、2型糖尿病とは診断されていない日本人のBMI値22以上の被験者群におけるFSTL3のmRNA発現量が、BMI値22未満の被験者群に比べ亢進していることを見出した。また、ドイツ人の被験者群についてFSTL3のmRNA発現量とBMI値などの肥満の指標とが正の相関をすることを見出し、本発明を完成させるに至った。該FSTL3は、特許文献1において2型糖尿病において下方制御される(産生が低下する)因子として報告されているものである。
すなわち本発明は以下の発明に関する。
(1)以下の工程を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症に至るリスクが高いと判断される。
(2)以下の工程を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症に至るリスクが高いと判断される。
(3)以下の工程を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を肥満に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に肥満に至るリスクが高いと判断される。
(4)以下の工程を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、及び、
(ii)当該生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に糖尿病発症に至るリスクが高いと判断される。
(5)以下の工程を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、及び、
(ii)当該生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に糖尿病発症に至るリスクが高いと判断される。
(6)以下の工程を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を肥満に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、及び、
(ii)当該生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に肥満に至るリスクが高いと判断される。
(7)以下を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(ii)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症に至るリスクが高いことを教示する説明書。
(8)以下を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(ii) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症に至るリスクが高いことを教示する説明書。
(9)以下を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を肥満に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(ii) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に肥満に至るリスクが高いことを教示する説明書。
(10)以下を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、
(ii)生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(iii)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に糖尿病発症に至るリスクが高いことを教示する説明書。
(11)以下を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、
(ii)生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(iii) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に糖尿病発症に至るリスクが高いことを教示する説明書。
(12)以下を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を肥満に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、
(ii) 生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(iii) BMI値25未満の個体由来の当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に肥満に至るリスクが高いことを教示する説明書。
(1)以下の工程を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症に至るリスクが高いと判断される。
(2)以下の工程を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症に至るリスクが高いと判断される。
(3)以下の工程を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を肥満に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に肥満に至るリスクが高いと判断される。
(4)以下の工程を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、及び、
(ii)当該生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に糖尿病発症に至るリスクが高いと判断される。
(5)以下の工程を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、及び、
(ii)当該生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に糖尿病発症に至るリスクが高いと判断される。
(6)以下の工程を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を肥満に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、及び、
(ii)当該生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に肥満に至るリスクが高いと判断される。
(7)以下を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(ii)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症に至るリスクが高いことを教示する説明書。
(8)以下を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(ii) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症に至るリスクが高いことを教示する説明書。
(9)以下を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を肥満に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(ii) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に肥満に至るリスクが高いことを教示する説明書。
(10)以下を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、
(ii)生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(iii)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に糖尿病発症に至るリスクが高いことを教示する説明書。
(11)以下を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、
(ii)生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(iii) BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に糖尿病発症に至るリスクが高いことを教示する説明書。
(12)以下を含む、BMI値25未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を肥満に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、
(ii) 生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(iii) BMI値25未満の個体由来の当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に肥満に至るリスクが高いことを教示する説明書。
本発明を使用すれば、肥満に至るリスク(以下、「肥満化リスク」ということがある)及び/又は糖尿病発症に至るリスク(以下、「糖尿病発症リスク」ということがある)ならびに肥満を経て糖尿病発症に至るリスクを早期に検出することができる。
本発明は、従来、2型糖尿病において下方制御される(産生が低下する)因子として認識されていたFSTL3が、BMI値などの肥満の指標と正の相関をするとの新規な知見に基づき達成されたものである。以下に、本発明を詳細に説明する。
本明細書において下記の語の定義は以下である。
健常者: 「健常者」とは、空腹時血糖値が110mg/dL未満、又はグルコース負荷2時間後血糖値(2 hour PG)が140mg/dL未満であり、BMI値が25未満である個体のことを指す。
BMI: BMI(Body Mass Index)は身長と体重のバランスをみる指標であって(体重(kg))/(身長(m))2の式よって算出される。BMIの値が25以上の場合に、肥満であると判定される。本明細書において「BMI」というときは、主に指標それ自体を指すことを意図しているが、「BMI値」と区別せずに使用している場合もある。
被験者: 本明細書において「被験者」というときは、人及び動物の両者を含む。
一定倍数: 本明細書において「一定倍数」というときは、1より大きい正の実数を意味する。
健常者: 「健常者」とは、空腹時血糖値が110mg/dL未満、又はグルコース負荷2時間後血糖値(2 hour PG)が140mg/dL未満であり、BMI値が25未満である個体のことを指す。
BMI: BMI(Body Mass Index)は身長と体重のバランスをみる指標であって(体重(kg))/(身長(m))2の式よって算出される。BMIの値が25以上の場合に、肥満であると判定される。本明細書において「BMI」というときは、主に指標それ自体を指すことを意図しているが、「BMI値」と区別せずに使用している場合もある。
被験者: 本明細書において「被験者」というときは、人及び動物の両者を含む。
一定倍数: 本明細書において「一定倍数」というときは、1より大きい正の実数を意味する。
(生体試料)
本明細書において「生体試料」というときは、ヒト又は動物の体から除去されており、かつ、同一のヒト又は動物の体に戻されることが無い試料を意味する。好ましい生体試料には、血液、血清、血漿、尿、滑液、髄液、脳脊髄液、精液、又はリンパ液等の体液、ならびに内臓及び皮下の脂肪組織等の体組織が含まれるが、FSTL3 mRNA又はFSTL3タンパク質の産生可能性のあるものであれば制限なく使用できる。これらのうち、血液、血清、血漿、ならびに内臓及び皮下の脂肪組織がさらに好ましい。脂肪組織由来の細胞は、ERCP、セクレチン刺激、細針吸引、細胞学的ブラッシング、及び大口径針生検のような任意の公知の方法によって採取することができる。
本明細書において「生体試料」というときは、ヒト又は動物の体から除去されており、かつ、同一のヒト又は動物の体に戻されることが無い試料を意味する。好ましい生体試料には、血液、血清、血漿、尿、滑液、髄液、脳脊髄液、精液、又はリンパ液等の体液、ならびに内臓及び皮下の脂肪組織等の体組織が含まれるが、FSTL3 mRNA又はFSTL3タンパク質の産生可能性のあるものであれば制限なく使用できる。これらのうち、血液、血清、血漿、ならびに内臓及び皮下の脂肪組織がさらに好ましい。脂肪組織由来の細胞は、ERCP、セクレチン刺激、細針吸引、細胞学的ブラッシング、及び大口径針生検のような任意の公知の方法によって採取することができる。
(FSTL3遺伝子及び/又はインヒビンβB遺伝子発現の検出及び/又は測定)
FSTL3遺伝子及び/又はインヒビンβB遺伝子の検出及び/又は測定には、例えばmRNA(又はcDNA)等の特定の核酸分子の増加、減少、及び/又は欠如の検出、発現されたポリペプチド/タンパク質の測定/検出、ならびに発現されたタンパク質/ポリペプチドの生物活性(又はその欠如)の測定/検出が含まれ得る。生物活性には、酵素活性、例えば抗原認識及びエフェクター事象といったシグナル伝達経路事象に関連する活性が含まれ得る。
FSTL3遺伝子及び/又はインヒビンβB遺伝子の検出及び/又は測定には、例えばmRNA(又はcDNA)等の特定の核酸分子の増加、減少、及び/又は欠如の検出、発現されたポリペプチド/タンパク質の測定/検出、ならびに発現されたタンパク質/ポリペプチドの生物活性(又はその欠如)の測定/検出が含まれ得る。生物活性には、酵素活性、例えば抗原認識及びエフェクター事象といったシグナル伝達経路事象に関連する活性が含まれ得る。
(「検出」ならびに「測定」)
本明細書で用いる「検出」という用語は、mRNA及び/又はポリペプチドの存在を定性的あるいは定量的に決定することをいう。本明細書で用いる「測定」という用語は、生体試料中のmRNA及び/又はポリペプチドの発現量を定量的に決定することをいう。
本明細書で用いる「検出」という用語は、mRNA及び/又はポリペプチドの存在を定性的あるいは定量的に決定することをいう。本明細書で用いる「測定」という用語は、生体試料中のmRNA及び/又はポリペプチドの発現量を定量的に決定することをいう。
(生体試料中のmRNAを検出及び/又は測定する方法)
生体試料中のmRNAを検出及び/又は測定する方法は、当技術分野で周知の方法を利用できる。例えば、FSTL3遺伝子の塩基配列の全部又は一部を含むヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして遺伝子増幅を行い、遺伝子発現の程度を測定すればよい。遺伝子発現の程度は、ノーザンブロット法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、insitu ハイブリダイゼーション法、マイクロアレイ(遺伝子チップなど)を用いた方法等により測定することが可能であり、ここに挙げた方法はいずれも公知の方法で行うことができる。遺伝子の発現は、上記遺伝子の一部から転写されたmRNAの量を測定すればよく、該mRNAにハイブリダイズするヌクレオチドプローブ又はプライマーの使用により測定することができる。プローブ又はプライマーの塩基長は、10〜50ヌクレオチド、好ましくは15〜25ヌクレオチドである。
生体試料中のmRNAを検出及び/又は測定する方法は、当技術分野で周知の方法を利用できる。例えば、FSTL3遺伝子の塩基配列の全部又は一部を含むヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして遺伝子増幅を行い、遺伝子発現の程度を測定すればよい。遺伝子発現の程度は、ノーザンブロット法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、insitu ハイブリダイゼーション法、マイクロアレイ(遺伝子チップなど)を用いた方法等により測定することが可能であり、ここに挙げた方法はいずれも公知の方法で行うことができる。遺伝子の発現は、上記遺伝子の一部から転写されたmRNAの量を測定すればよく、該mRNAにハイブリダイズするヌクレオチドプローブ又はプライマーの使用により測定することができる。プローブ又はプライマーの塩基長は、10〜50ヌクレオチド、好ましくは15〜25ヌクレオチドである。
(生体試料中のポリペプチドを検出及び/又は測定する方法)
生体試料中のポリペプチドを検出及び/又は測定する方法は、当技術分野で周知の方法を利用できる。例えば、ウェスタンブロット法、ELISA法もしくはRIA法、化学発光免疫アッセイ法(CLIA法)、ラテックス免疫比濁法(LTIA法)、電気化学発光を利用した酵素免疫測定法などが含まれるが、これらに限定されない。
生体試料中のポリペプチドを検出及び/又は測定する方法は、当技術分野で周知の方法を利用できる。例えば、ウェスタンブロット法、ELISA法もしくはRIA法、化学発光免疫アッセイ法(CLIA法)、ラテックス免疫比濁法(LTIA法)、電気化学発光を利用した酵素免疫測定法などが含まれるが、これらに限定されない。
(抗体)
ポリペプチド又はペプチド断片を検出する目的で、例えば精製タンパク質をマウスやウサギに免疫することにより、該ポリペプチドもしくはそのペプチド断片を認識するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を作製することができる。また、該ポリペプチドもしくはペプチド断片を認識する既知の抗体を用いることもできる。抗体の調製及び使用法等は、Harlow, E.およびLane, D., Antibodies: A Laboratory Manual, (1988), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
ポリクローナル抗体等の抗体は、ウェスタンブロット法において本発明のペプチドを検出するために用いることができる。マーカーを測定する方法の例としては、抗原を捕捉可能な抗体および捕捉した抗原を検出可能な二次抗体を用いたELISA法が挙げられる。
ポリペプチド又はペプチド断片を検出する目的で、例えば精製タンパク質をマウスやウサギに免疫することにより、該ポリペプチドもしくはそのペプチド断片を認識するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を作製することができる。また、該ポリペプチドもしくはペプチド断片を認識する既知の抗体を用いることもできる。抗体の調製及び使用法等は、Harlow, E.およびLane, D., Antibodies: A Laboratory Manual, (1988), Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
ポリクローナル抗体等の抗体は、ウェスタンブロット法において本発明のペプチドを検出するために用いることができる。マーカーを測定する方法の例としては、抗原を捕捉可能な抗体および捕捉した抗原を検出可能な二次抗体を用いたELISA法が挙げられる。
(健常者の遺伝子発現レベルとの比較)
本発明の1つの態様においては、被験者由来の生体試料中におけるFSTL3遺伝子の発現レベルを、健常者におけるFSTL3遺伝子の発現レベル(標準値SFSTL3)と比較する工程が含まれる。なお、健常者におけるFSTL3遺伝子の発現レベルとしては、例えば複数の健常者のFSTL3遺伝子の発現レベルを統計学的に処理して得た値を用いることが出来る。本発明においては、該標準値と比較して一定倍数以上に増加している場合に肥満や糖尿病発症に至るリスクが高いと判断できる。
また、FSTL3遺伝子の発現量の標準値SFSTL3としては、例えばBMI値が22未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量の平均値を用いることが出来る。
「一定倍数」としては、1000倍、好ましくは100倍、より好ましくは5〜10倍、より好ましくは3倍、より好ましくは2倍、より好ましくは1.5倍増加している場合に糖尿病発症もしくは肥満に至るリスクが高いと判断することができる。
また、後述の実施例2の図3のようにFSTL3 mRNA発現量とBMI値との相関が良好であった場合には、近似曲線の式にBMI値18を代入して得られるFSTL3 mRNA発現量、即ち図3の内臓脂肪の場合は約10ゆえ、例えばFSTL3 mRNA発現量が15以上の場合に糖尿病発症もしくは肥満に至るリスクが高いと判断することができる。
本発明の1つの態様においては、被験者由来の生体試料中におけるFSTL3遺伝子の発現レベルを、健常者におけるFSTL3遺伝子の発現レベル(標準値SFSTL3)と比較する工程が含まれる。なお、健常者におけるFSTL3遺伝子の発現レベルとしては、例えば複数の健常者のFSTL3遺伝子の発現レベルを統計学的に処理して得た値を用いることが出来る。本発明においては、該標準値と比較して一定倍数以上に増加している場合に肥満や糖尿病発症に至るリスクが高いと判断できる。
また、FSTL3遺伝子の発現量の標準値SFSTL3としては、例えばBMI値が22未満の個体由来の生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量の平均値を用いることが出来る。
「一定倍数」としては、1000倍、好ましくは100倍、より好ましくは5〜10倍、より好ましくは3倍、より好ましくは2倍、より好ましくは1.5倍増加している場合に糖尿病発症もしくは肥満に至るリスクが高いと判断することができる。
また、後述の実施例2の図3のようにFSTL3 mRNA発現量とBMI値との相関が良好であった場合には、近似曲線の式にBMI値18を代入して得られるFSTL3 mRNA発現量、即ち図3の内臓脂肪の場合は約10ゆえ、例えばFSTL3 mRNA発現量が15以上の場合に糖尿病発症もしくは肥満に至るリスクが高いと判断することができる。
(健常者のタンパク発現レベルとの比較)
本発明の1つの態様において、被験者由来の生体試料中におけるFSTL3タンパク質の発現レベルを、健常者における発現レベル(標準値SFSTL3)と比較する工程を含む。なお、健常者におけるタンパク質の発現レベルとしては、例えば複数の健常者のFSTL3タンパク質発現レベルを統計学的に処理して得た値を用いることが出来る。本発明においては、該標準値と比較して一定倍数以上に増加している場合に肥満や糖尿病発症に至るリスクが高いと判断できる。
本発明の1つの態様において、被験者由来の生体試料中におけるFSTL3タンパク質の発現レベルを、健常者における発現レベル(標準値SFSTL3)と比較する工程を含む。なお、健常者におけるタンパク質の発現レベルとしては、例えば複数の健常者のFSTL3タンパク質発現レベルを統計学的に処理して得た値を用いることが出来る。本発明においては、該標準値と比較して一定倍数以上に増加している場合に肥満や糖尿病発症に至るリスクが高いと判断できる。
(キット)
本発明は、以下(i)及び(ii)を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット、又は肥満に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキットを提供する。
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(ii)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症に至るリスクが高いこと、又は肥満に至るリスクが高いことを教示する説明書(ここで、教示の内容は、測定目的と対応している)。
また、本発明は、以下(i)乃至(iii)を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット、又は肥満に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキットを提供する。
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、
(ii)生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(iii)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に糖尿病発症に至るリスクが高いこと、又は肥満に至るリスクの高いことを教示する説明書(ここで、教示の内容は、測定目的と対応している)。
上記キットにおける生体試料は、BMI値25未満の個体由来の生体試料であってもよい。
上記したFSTL3遺伝子、及び/又はインヒビンβB遺伝子の発現量を測定するためのプローブは、通常、遺伝子の発現量測定に使用するプローブとしての特異性を具備しているものであれば特に制限はなく、標的とする塩基配列を考慮し、当業者に周知の方法である計算式を使用した手法、あるいは実験的手法により、プローブとして好適な塩基配列と塩基長を選択することができる。好適なプローブの塩基長は、上記「(生体試料中のmRNAを検出及び/又は測定する方法)」の欄にも記載したように10〜50ヌクレオチド、好ましくは15〜25ヌクレオチドである。
上記した糖尿病発症に至るリスクが高いこと、又は肥満に至るリスクの高いことを教示する説明書は、前記教示のほかに、測定目的、測定方法、測定結果を判断するためのガイド等が記載されていてもよく、添付文書や使用説明書等名称の如何を問わない。
本発明は、1つもしくは複数の抗FSTL3モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む、肥満および/又は糖尿病発症に至るリスクの検出が可能なキットを提供する。本発明が提供する別のキットは、FSTL3遺伝子をコードする核酸と特異的に結合することができる1つ又は複数の核酸を含む、肥満や糖尿病発症に至るリスクの検出が可能なキットである。
また、本発明は、1つもしくは複数の抗アクチビンBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む、肥満および/又は糖尿病発症に至るリスクの検出が可能なキットを提供する。本発明が提供する別のキットは、アクチビンBをコードする核酸と特異的に結合することができる1つ又は複数の核酸を含む、肥満や糖尿病発症に至るリスクの検出が可能なキットである。
本発明は、以下(i)及び(ii)を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット、又は肥満に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキットを提供する。
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(ii)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症に至るリスクが高いこと、又は肥満に至るリスクが高いことを教示する説明書(ここで、教示の内容は、測定目的と対応している)。
また、本発明は、以下(i)乃至(iii)を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキット、又は肥満に至るリスクの高さの検出と関連付けるためのキットを提供する。
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、
(ii)生体試料中のインヒビンβB遺伝子の発現量を測定するためのプローブ、及び、
(iii)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加しており、かつ、当該生体試料中のFSTL3遺伝子とインヒビンβB遺伝子の発現量の比が、標準値SFSTL3/ActBの一定倍数以上の場合に糖尿病発症に至るリスクが高いこと、又は肥満に至るリスクの高いことを教示する説明書(ここで、教示の内容は、測定目的と対応している)。
上記キットにおける生体試料は、BMI値25未満の個体由来の生体試料であってもよい。
上記したFSTL3遺伝子、及び/又はインヒビンβB遺伝子の発現量を測定するためのプローブは、通常、遺伝子の発現量測定に使用するプローブとしての特異性を具備しているものであれば特に制限はなく、標的とする塩基配列を考慮し、当業者に周知の方法である計算式を使用した手法、あるいは実験的手法により、プローブとして好適な塩基配列と塩基長を選択することができる。好適なプローブの塩基長は、上記「(生体試料中のmRNAを検出及び/又は測定する方法)」の欄にも記載したように10〜50ヌクレオチド、好ましくは15〜25ヌクレオチドである。
上記した糖尿病発症に至るリスクが高いこと、又は肥満に至るリスクの高いことを教示する説明書は、前記教示のほかに、測定目的、測定方法、測定結果を判断するためのガイド等が記載されていてもよく、添付文書や使用説明書等名称の如何を問わない。
本発明は、1つもしくは複数の抗FSTL3モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む、肥満および/又は糖尿病発症に至るリスクの検出が可能なキットを提供する。本発明が提供する別のキットは、FSTL3遺伝子をコードする核酸と特異的に結合することができる1つ又は複数の核酸を含む、肥満や糖尿病発症に至るリスクの検出が可能なキットである。
また、本発明は、1つもしくは複数の抗アクチビンBモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む、肥満および/又は糖尿病発症に至るリスクの検出が可能なキットを提供する。本発明が提供する別のキットは、アクチビンBをコードする核酸と特異的に結合することができる1つ又は複数の核酸を含む、肥満や糖尿病発症に至るリスクの検出が可能なキットである。
[実験材料及び方法]
<ヒト脂肪組織>
美容的皮弁形成術、脂肪吸引術、胃のバンディング術、胆石摘出術、虫垂炎摘出術、又は胃がん手術等の際に、被験者の同意を得た上で術者によって摘出された内臓脂肪、又は皮下脂肪を液体窒素で凍結し、マイナス80℃にて保存した。
<mRNA抽出>
脂肪組織からのmRNAの抽出には、RNeasy(登録商標) Lipid Tissue Midi Kit(Qiagen社製)を用い、推奨されたプロトコールに従って操作した。詳しくは以下の通りである。
最大500mgのヒト脂肪組織を5mLのQIAzol(登録商標) Lysis Reagentに入れてサンプルが均一になるまでホモジナイズした。クロロホルムを1mL添加して激しく攪拌させ、5,000×g、4℃で15分間遠心した。上層を取り出し3mLの70%エタノールと混和させ、コレクションチューブにセットしたカラムに移し、5,000×g、室温で5分間遠心した。カラムを2段階洗浄し、カラムに残ったRNAをRNaseフリー水で抽出し、全RNAとした。
<cDNAマイクロアレイ解析>
Gene Chip測定はAffymetrix社のgene chipと測定装置を用いた。Gene Chipによる遺伝子発現解析は、Affymetrix社が推奨するプロトコールに準拠して行った。以下に手順を示す。
(1)プローブ合成
(i)二本鎖cDNA合成
調製した全RNAから、Gibco BRL社製のSUPERSCRIPTChoice Systemを用い、二本鎖cDNA合成を行った。全RNA 15μg、T7-(dT)24 primer 100pmolをDEPC処理水に溶解し、11μLとした。70℃で10分間反応後、氷冷し、5×1st strand cDNA buffer (Gibco BRL社製) 4μL、0.1×DTT(ジチオスレイトール、Gibco BRL社製)2μL、10mM dNTP mix(Gibco BRL社製)1μLを加え、42℃、2分間保温した。これに逆転写酵素(Superscript II RT,インビトロジェン社製)2μgを加えた後、42℃で1時間反応させた。
前記反応液に、DEPC処理水、5×2nd strandreaction buffer 30μL、10mM dNTP3μL、10U/μL DNAリガーゼ1μL、10U/μL DNAポリメラーゼI 4μL、2U/μL RNaseH 2μL を加えて混合した後、16℃で2時間反応させた。この後、5U/μL T4 DNAポリメラーゼ 2μLを加え、16℃で5分反応させた。これに、0.5M EDTA 10μLを加えた。この反応液に、フェノール:クロロホルム=1:1混合溶液を加え、これらが入ったチューブを上下に振って混ぜ合わせた。この混合液を、15,000rpm、4℃で10分間遠心分離し、水層を新しい遠心チューブに移した。この水層に、3Mの酢酸ナトリウムを1/10量、100%エタノールを3倍量加え、よく混合した。-80℃で10分放置したのち、15,000rpm、4℃で10分間遠心した。沈殿したペレットを70%エタノールで2回リンスし、室温で5分間乾燥した後、DEPC処理水を12μL加えた。
(ii)ビオチン標識cRNAプローブの合成
次に上記で合成した二本鎖cDNAから、Enzo社製BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kitを使用して、ビオチン標識cRNAプローブを合成した。二本鎖cDNA 5μL、DEPC処理水17μL、10×HY buffer 4μL、10×ビオチン標識リボヌクレオチド(Biotinlabeled ribonucleotides)4μL、10×DTT 4μL、10×RNase inhibitor mix 4μL、20×T7 RNAポリメラーゼ2μLを混合し、37℃で4時間反応させた。
次に、上記のようにして合成したビオチン標識cRNAプローブ溶液から、未反応のBiotin labeledribonucleotidesを、Qiagen社製RNeasyを使用して除いた。ビオチン標識cRNAプローブ溶液に、DEPC処理水160μLを加え、RLT buffer 700μLを混合し、ついで100% エタノール500μLを加え、よく混合した。この溶液を、700μLずつRNeasy minispin columnに加え、8,000rpmで15秒間遠心した。溶出液を、再度RNeasy mini spin columnに加え、8,000rpmで15秒間遠心した。次に、RPE buffer 500μLをRNeasy mini spin columnに加え、8,000rpmで15秒間遠心した。再度RPEbuffer 500μLをRNeasy mini spincolumnに加え、15,000rpmで2分間遠心した。
上記のようにしてビオチン標識cRNAプローブを吸着させ、洗浄したRNeasy mini spin columnを、新しい遠心チューブに移した。このRNeasy mini spin columnにDEPC処理水30μLを加え、室温で1分間放置した。8,000rpmで15秒間遠心し、精製されたビオチン標識cRNAプローブ溶液を溶出させた。
次に、精製されたビオチン標識cRNAプローブ溶液の断片化を行った。ビオチン標識cRNAプローブ溶液、5×Fragmentation buffer(最終溶液量の1/5量を加える)を混合して、ビオチン標識cRNAプローブ濃度が0.5μg/μLとなるよう調整し、94℃で35分間反応させた。1% アガロースゲル電気泳動を行い、プローブがおおよそ100塩基前後の長さに断片化されているのを確認した。
(2)ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションは、まずテストチップで断片化ビオチン標識cRNAプローブの出来を評価し、問題がないことを確認した後に本試験を行った。本試験には、HumanGenome U133 Plus 2.0 Array(以下、ヒトチップ)を用いた。テストチップ、ヒトチップのいずれも、以下の手順でハイブリダイゼーションを行った。
断片化ビオチン標識cRNAプローブ 60μg、コントロールoligonucleotide B2(5nM)12μL、100×control cRNA カクテル 12μL、ニシン精子DNA(10mg/mL)12μL、アセチル化BSA(50mg/mg)12μL、2×MESハイブリダイゼーションバッファー600μLを加え、DEPC処理水で1200μLに調整した(以下、「ハイブリダイゼーションカクテル」と呼ぶ)。ハイブリダイゼーションカクテルを99℃、5分加熱して熱変性を行い、45℃に5分間置いた後、15,000rpm、室温で5分間遠心した。上清を、テストチップでは80μL、ヒトチップでは200μL分取し、ハイブリダイゼーションに使用した。
Genechipを室温にもどし、1×MES buffer(テストチップは80μL、ヒトチップは200μL)、45℃で10分、60rpmでプレハイブリダイゼーションを行った。次に、プレハイブリダイゼーション液を除去し、前記の熱変性させたハイブリダイゼーションカクテルを添加し、45℃、16時間、60rpmでハイブリダイゼーションを行った。
(3)洗浄、染色及びスキャニング
各チップからハイブリダイゼーションカクテルを除去し、non stringent wash bufferを入れ、Fluidic station(Affymetrix社製)にて洗浄及び染色を行った。洗浄及び染色終了後、スキャナーにてチップのスキャニングを行い、画像データを取り込んだ。
(4)データ解析
ハイブリダイゼーションのデータ解析は、Affymetrix社の解析ソフトGene Spring(Agilent TechnologiesInc.)を用いて行った。発現量が少ない物や、ミスハイブリを除いた信頼性の高い24293プローブの網羅的発現プロファイルを検討した。
<グルコースクランプ試験>
グルコースクランプ試験は、Am J Physiol. 1979 Sep;237(3):E214-23.に記載の方法に基づいて行った。インスリンのinfusion rateは20mIU/kg/min.とし、グルコース注入率は試験後半30分の注入率とした。
<細胞の溶解>
25 mM Tris-HCl; pH 7.4, 25 mM NaCl, 1 mM Na3VO4, 10 mM NaF, 10 mM Na4P2O7, 1 mM EGTA, 10 nM okadaic acid, 5 mg/mL leupeptin, 5 mg/mL aprotinin and 1 mM phenylmethylsulfonyl fluoride (PMSF) および 1% Nonident-P 40を含む Lysis Bufferを用いて細胞を溶解し、超音波処理後、12,000rpmで20分間遠心してその上清を使用した。
<ウェスタンブロット解析>
細胞から抽出したタンパク質を電気泳動したのち、ゲルをPVDF(poly vinylidene difluoride)メンブレンに転写した。一次抗体にはFLRG(N-18)(Santa Cruze 社製)を二次抗体にはgoat anti-rabbit IgG-HRP (Santa Cruze 社製)をそれぞれ用い、バッファーで洗浄したのち、BM Chemiluminescence Blotting Substrate (POD) (Roche社製)を用いて検出した。
タンパク質のブロッティングにはセミドライ方式を採用し、転写膜にはPVDF膜を用いた。RGSH6タグ保持タンパク質の検出は、1次抗体にはマウスanti-RGSH4(QIAGEN社製)を、2次抗体にはヤギanti-マウスIgG(BIO-RAD社製)をそれぞれ用い、可視化にはケミルミネッセンス法を用いた。ウエスタンブロット解析時の分子量マーカーとして6×His Protein Ladder(分子量100, 75, 50, 30, 15kDa、QIAGEN社製)を用いた。
<ノーザンブロット解析>
脂肪細胞50-100mgに対し1mLのTRIzol(登録商標) Reagent(インビトロジェン社製)中でホモジナイズした。ホモジネートに0.2mLのクロロホルムを添加し、12,000 x g、15分、4℃で遠心分離し、上層の水層を分取した。水層にイソプロパノールを添加して12,000×g、10分、4℃で遠心分離し、液層を除去した。沈殿したRNAを75%エタノールで洗浄し、乾燥させてRNaseフリー水に溶解した。
抽出したRNAを変性ゲル内で電気泳動した後、ナイロン膜(Hybond-N+、GEヘルスケアジャパン社製)に転写した。Takara 6045 Random PrimerDNA Labeling Kitを用いたランダムプライマー法により[α-32P]dCTPラベルしたプローブを用いてハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後のナイロン膜を画像化した。
<組換えアデノウイルスの作製とマウスへの投与>
アデノウイルスは、pcDNA3.1/V5-HisA(インビトロジェン社製)にマウスのFSTL3のcDNA全長を入れ、これをHindIIIとEcoRVで切り出し、これをTakaraAdenovirus Expression Vector Kit(Takara社製)の方法に則ってインサートして作製した。また、HEK293細胞へのアデノウイルスのトランスフェクションは、CellPhect(登録商標) Transfection Kit(GE Healthcare社製)を用いて リン酸カルシウム法で行った。トランスフェクション後のHEK293細胞を96穴プレートにまき、細胞死を認めるものを選び出し、徐々に大きなプレートの293細胞に感染させて大量のアデノウイルスを作製した。そして、7週齢 雄 B6マウスを1週間馴化した後、5.0×1010pfuの前記アデノウイルスをPBS 150μLに溶解して尾静脈より投与(8週目、9週目)した。その1週間後にグルコース負荷試験を実施した。
<アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与>
7週齢 雄 B6マウスを1週間馴化した後、antisense oligonucleotideを週に2回ずつ、合計8回腹腔内投与(80mg/body)し、最終投与の翌週(投与初日から28日後)にグルコース負荷試験を実施した。使用したオリゴヌクレオチドは次の通りである。
・ Sequence/Modification (= OligoA)
5’-mG*mG* mG*mU*mU*G*G*A*A*G*G*T*A*C*T*G*G*G*C*mA*mG*mG*mG*mC-3’
・ Control
5’-mC*mG*mG*mG*mA*C*G*G*G*T*C*A*T*G*G*A*A*G*G*mU*mU*mG*mG*mG-3’
(但し、*=Phosphorothioate Bonds, mN=2’-O-Methyl RNA base(2'-O-Me)
<Aktのリン酸化測定>
各々200mgの肝臓と骨格筋を1% Nonident-P 40を含むLiver Buffer(組成は表2)にてホモジナイズした。Liver Bufferを、肝臓は7mL、骨格筋は4mL使用した。3,000rpm、10分、4℃にて遠心を行い、上清をチューブに取り分けた。分取した上清を55,000rpm、1時間、4℃にて超遠心を行い、上清をピペットで吸ってチューブに取り分けた。タンパク定量したのち、10% ゲルでSDS PAGEを行った。Blockingを30分行い、2000分の1に希釈した一次抗体(Phospho-Akt(Ser473): cell signaling #92715)を室温にて一晩反応させた。5000分の1に希釈した2次抗体(goat antiRabbit IgG HRP(Santa Cruse sc-2054))を室温で2時間反応させた。
全ての試薬を混合した後、pHを7.4に調整した。実験に使用する前にNonident-P 40を添加した。
[実施例1]
<ヒト脂肪組織>
美容的皮弁形成術、脂肪吸引術、胃のバンディング術、胆石摘出術、虫垂炎摘出術、又は胃がん手術等の際に、被験者の同意を得た上で術者によって摘出された内臓脂肪、又は皮下脂肪を液体窒素で凍結し、マイナス80℃にて保存した。
<mRNA抽出>
脂肪組織からのmRNAの抽出には、RNeasy(登録商標) Lipid Tissue Midi Kit(Qiagen社製)を用い、推奨されたプロトコールに従って操作した。詳しくは以下の通りである。
最大500mgのヒト脂肪組織を5mLのQIAzol(登録商標) Lysis Reagentに入れてサンプルが均一になるまでホモジナイズした。クロロホルムを1mL添加して激しく攪拌させ、5,000×g、4℃で15分間遠心した。上層を取り出し3mLの70%エタノールと混和させ、コレクションチューブにセットしたカラムに移し、5,000×g、室温で5分間遠心した。カラムを2段階洗浄し、カラムに残ったRNAをRNaseフリー水で抽出し、全RNAとした。
<cDNAマイクロアレイ解析>
Gene Chip測定はAffymetrix社のgene chipと測定装置を用いた。Gene Chipによる遺伝子発現解析は、Affymetrix社が推奨するプロトコールに準拠して行った。以下に手順を示す。
(1)プローブ合成
(i)二本鎖cDNA合成
調製した全RNAから、Gibco BRL社製のSUPERSCRIPTChoice Systemを用い、二本鎖cDNA合成を行った。全RNA 15μg、T7-(dT)24 primer 100pmolをDEPC処理水に溶解し、11μLとした。70℃で10分間反応後、氷冷し、5×1st strand cDNA buffer (Gibco BRL社製) 4μL、0.1×DTT(ジチオスレイトール、Gibco BRL社製)2μL、10mM dNTP mix(Gibco BRL社製)1μLを加え、42℃、2分間保温した。これに逆転写酵素(Superscript II RT,インビトロジェン社製)2μgを加えた後、42℃で1時間反応させた。
前記反応液に、DEPC処理水、5×2nd strandreaction buffer 30μL、10mM dNTP3μL、10U/μL DNAリガーゼ1μL、10U/μL DNAポリメラーゼI 4μL、2U/μL RNaseH 2μL を加えて混合した後、16℃で2時間反応させた。この後、5U/μL T4 DNAポリメラーゼ 2μLを加え、16℃で5分反応させた。これに、0.5M EDTA 10μLを加えた。この反応液に、フェノール:クロロホルム=1:1混合溶液を加え、これらが入ったチューブを上下に振って混ぜ合わせた。この混合液を、15,000rpm、4℃で10分間遠心分離し、水層を新しい遠心チューブに移した。この水層に、3Mの酢酸ナトリウムを1/10量、100%エタノールを3倍量加え、よく混合した。-80℃で10分放置したのち、15,000rpm、4℃で10分間遠心した。沈殿したペレットを70%エタノールで2回リンスし、室温で5分間乾燥した後、DEPC処理水を12μL加えた。
(ii)ビオチン標識cRNAプローブの合成
次に上記で合成した二本鎖cDNAから、Enzo社製BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kitを使用して、ビオチン標識cRNAプローブを合成した。二本鎖cDNA 5μL、DEPC処理水17μL、10×HY buffer 4μL、10×ビオチン標識リボヌクレオチド(Biotinlabeled ribonucleotides)4μL、10×DTT 4μL、10×RNase inhibitor mix 4μL、20×T7 RNAポリメラーゼ2μLを混合し、37℃で4時間反応させた。
次に、上記のようにして合成したビオチン標識cRNAプローブ溶液から、未反応のBiotin labeledribonucleotidesを、Qiagen社製RNeasyを使用して除いた。ビオチン標識cRNAプローブ溶液に、DEPC処理水160μLを加え、RLT buffer 700μLを混合し、ついで100% エタノール500μLを加え、よく混合した。この溶液を、700μLずつRNeasy minispin columnに加え、8,000rpmで15秒間遠心した。溶出液を、再度RNeasy mini spin columnに加え、8,000rpmで15秒間遠心した。次に、RPE buffer 500μLをRNeasy mini spin columnに加え、8,000rpmで15秒間遠心した。再度RPEbuffer 500μLをRNeasy mini spincolumnに加え、15,000rpmで2分間遠心した。
上記のようにしてビオチン標識cRNAプローブを吸着させ、洗浄したRNeasy mini spin columnを、新しい遠心チューブに移した。このRNeasy mini spin columnにDEPC処理水30μLを加え、室温で1分間放置した。8,000rpmで15秒間遠心し、精製されたビオチン標識cRNAプローブ溶液を溶出させた。
次に、精製されたビオチン標識cRNAプローブ溶液の断片化を行った。ビオチン標識cRNAプローブ溶液、5×Fragmentation buffer(最終溶液量の1/5量を加える)を混合して、ビオチン標識cRNAプローブ濃度が0.5μg/μLとなるよう調整し、94℃で35分間反応させた。1% アガロースゲル電気泳動を行い、プローブがおおよそ100塩基前後の長さに断片化されているのを確認した。
(2)ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションは、まずテストチップで断片化ビオチン標識cRNAプローブの出来を評価し、問題がないことを確認した後に本試験を行った。本試験には、HumanGenome U133 Plus 2.0 Array(以下、ヒトチップ)を用いた。テストチップ、ヒトチップのいずれも、以下の手順でハイブリダイゼーションを行った。
断片化ビオチン標識cRNAプローブ 60μg、コントロールoligonucleotide B2(5nM)12μL、100×control cRNA カクテル 12μL、ニシン精子DNA(10mg/mL)12μL、アセチル化BSA(50mg/mg)12μL、2×MESハイブリダイゼーションバッファー600μLを加え、DEPC処理水で1200μLに調整した(以下、「ハイブリダイゼーションカクテル」と呼ぶ)。ハイブリダイゼーションカクテルを99℃、5分加熱して熱変性を行い、45℃に5分間置いた後、15,000rpm、室温で5分間遠心した。上清を、テストチップでは80μL、ヒトチップでは200μL分取し、ハイブリダイゼーションに使用した。
Genechipを室温にもどし、1×MES buffer(テストチップは80μL、ヒトチップは200μL)、45℃で10分、60rpmでプレハイブリダイゼーションを行った。次に、プレハイブリダイゼーション液を除去し、前記の熱変性させたハイブリダイゼーションカクテルを添加し、45℃、16時間、60rpmでハイブリダイゼーションを行った。
(3)洗浄、染色及びスキャニング
各チップからハイブリダイゼーションカクテルを除去し、non stringent wash bufferを入れ、Fluidic station(Affymetrix社製)にて洗浄及び染色を行った。洗浄及び染色終了後、スキャナーにてチップのスキャニングを行い、画像データを取り込んだ。
(4)データ解析
ハイブリダイゼーションのデータ解析は、Affymetrix社の解析ソフトGene Spring(Agilent TechnologiesInc.)を用いて行った。発現量が少ない物や、ミスハイブリを除いた信頼性の高い24293プローブの網羅的発現プロファイルを検討した。
<グルコースクランプ試験>
グルコースクランプ試験は、Am J Physiol. 1979 Sep;237(3):E214-23.に記載の方法に基づいて行った。インスリンのinfusion rateは20mIU/kg/min.とし、グルコース注入率は試験後半30分の注入率とした。
<細胞の溶解>
25 mM Tris-HCl; pH 7.4, 25 mM NaCl, 1 mM Na3VO4, 10 mM NaF, 10 mM Na4P2O7, 1 mM EGTA, 10 nM okadaic acid, 5 mg/mL leupeptin, 5 mg/mL aprotinin and 1 mM phenylmethylsulfonyl fluoride (PMSF) および 1% Nonident-P 40を含む Lysis Bufferを用いて細胞を溶解し、超音波処理後、12,000rpmで20分間遠心してその上清を使用した。
<ウェスタンブロット解析>
細胞から抽出したタンパク質を電気泳動したのち、ゲルをPVDF(poly vinylidene difluoride)メンブレンに転写した。一次抗体にはFLRG(N-18)(Santa Cruze 社製)を二次抗体にはgoat anti-rabbit IgG-HRP (Santa Cruze 社製)をそれぞれ用い、バッファーで洗浄したのち、BM Chemiluminescence Blotting Substrate (POD) (Roche社製)を用いて検出した。
タンパク質のブロッティングにはセミドライ方式を採用し、転写膜にはPVDF膜を用いた。RGSH6タグ保持タンパク質の検出は、1次抗体にはマウスanti-RGSH4(QIAGEN社製)を、2次抗体にはヤギanti-マウスIgG(BIO-RAD社製)をそれぞれ用い、可視化にはケミルミネッセンス法を用いた。ウエスタンブロット解析時の分子量マーカーとして6×His Protein Ladder(分子量100, 75, 50, 30, 15kDa、QIAGEN社製)を用いた。
<ノーザンブロット解析>
脂肪細胞50-100mgに対し1mLのTRIzol(登録商標) Reagent(インビトロジェン社製)中でホモジナイズした。ホモジネートに0.2mLのクロロホルムを添加し、12,000 x g、15分、4℃で遠心分離し、上層の水層を分取した。水層にイソプロパノールを添加して12,000×g、10分、4℃で遠心分離し、液層を除去した。沈殿したRNAを75%エタノールで洗浄し、乾燥させてRNaseフリー水に溶解した。
抽出したRNAを変性ゲル内で電気泳動した後、ナイロン膜(Hybond-N+、GEヘルスケアジャパン社製)に転写した。Takara 6045 Random PrimerDNA Labeling Kitを用いたランダムプライマー法により[α-32P]dCTPラベルしたプローブを用いてハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後のナイロン膜を画像化した。
アデノウイルスは、pcDNA3.1/V5-HisA(インビトロジェン社製)にマウスのFSTL3のcDNA全長を入れ、これをHindIIIとEcoRVで切り出し、これをTakaraAdenovirus Expression Vector Kit(Takara社製)の方法に則ってインサートして作製した。また、HEK293細胞へのアデノウイルスのトランスフェクションは、CellPhect(登録商標) Transfection Kit(GE Healthcare社製)を用いて リン酸カルシウム法で行った。トランスフェクション後のHEK293細胞を96穴プレートにまき、細胞死を認めるものを選び出し、徐々に大きなプレートの293細胞に感染させて大量のアデノウイルスを作製した。そして、7週齢 雄 B6マウスを1週間馴化した後、5.0×1010pfuの前記アデノウイルスをPBS 150μLに溶解して尾静脈より投与(8週目、9週目)した。その1週間後にグルコース負荷試験を実施した。
<アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与>
7週齢 雄 B6マウスを1週間馴化した後、antisense oligonucleotideを週に2回ずつ、合計8回腹腔内投与(80mg/body)し、最終投与の翌週(投与初日から28日後)にグルコース負荷試験を実施した。使用したオリゴヌクレオチドは次の通りである。
・ Sequence/Modification (= OligoA)
5’-mG*mG* mG*mU*mU*G*G*A*A*G*G*T*A*C*T*G*G*G*C*mA*mG*mG*mG*mC-3’
・ Control
5’-mC*mG*mG*mG*mA*C*G*G*G*T*C*A*T*G*G*A*A*G*G*mU*mU*mG*mG*mG-3’
(但し、*=Phosphorothioate Bonds, mN=2’-O-Methyl RNA base(2'-O-Me)
<Aktのリン酸化測定>
各々200mgの肝臓と骨格筋を1% Nonident-P 40を含むLiver Buffer(組成は表2)にてホモジナイズした。Liver Bufferを、肝臓は7mL、骨格筋は4mL使用した。3,000rpm、10分、4℃にて遠心を行い、上清をチューブに取り分けた。分取した上清を55,000rpm、1時間、4℃にて超遠心を行い、上清をピペットで吸ってチューブに取り分けた。タンパク定量したのち、10% ゲルでSDS PAGEを行った。Blockingを30分行い、2000分の1に希釈した一次抗体(Phospho-Akt(Ser473): cell signaling #92715)を室温にて一晩反応させた。5000分の1に希釈した2次抗体(goat antiRabbit IgG HRP(Santa Cruse sc-2054))を室温で2時間反応させた。
[実施例1]
メタボリックシンドロームの鍵分子を同定するために、日本人被験者113症例の脂肪組織について、肥満やインスリン抵抗性で発現が変化する遺伝子を網羅的に解析した。これらの症例は、20歳代から80歳代までの幅広い年代から構成されていた。被験者のBMI平均値は22.2であった。通常BMI値25以上が肥満とされるが、本解析ではBMI値22(通常、標準体重とされる)以上の症例を肥満群(Overweight group、OW)とし、BMI値が22未満の症例を正常群(Normal weight、NW)と分類し、臨床情報及び発現情報を統合的に解析することによりメタボリックシンドロームの鍵分子の同定を試みた(図1参照)。
本研究の対象者の臨床情報を表3に示す。
本研究の対象者の臨床情報を表3に示す。
全113症例のうち、18症例が男性で、95症例が女性であった。年齢、BMI、収縮期血圧(mmHg)、拡張期血圧(mmHg)、ウエスト周囲径(cm)、空腹時血糖値(mg/dL)、HOMA-IR、HbA1c(%)総コレステロール(mg/dL)、HDLコレステロール(mg/dL)、及び、中性脂肪(mg/dL)の数値又は価を表に示す。表中の数字は平均値±標準誤差を表す。
BMI値に基づく肥満判定基準は絶対的なものではないが、日本肥満学会では、BMI値が22の場合を標準体重としており、BMI値が25以上の場合を肥満、BMI値が18.5未満である場合を低体重としている。表3の数値から明らかなように、本研究の対象者には、BMI値に関して肥満とされる範囲の症例も含まれているが、全体としては正常者(血糖値、肥満度に関して)が中心である。例えば、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IR値は、ある基準では、2を超えるとインスリン抵抗性が存在すると判断されるが、本研究の対象者の平均は1.46であり、糖尿病の発症には至っていない症例が殆どである。
本発明者らは、これらの症例では、代謝状態の悪化による二次的変化が存在する可能性が低く、肥満の初期に特異的に出現するような遺伝子を同定できる可能性があると考えた。
上記の各症例について、採取した皮下脂肪からmRNAを抽出し、cDNAマイクロアレイ解析を行った。
その結果、肥満により発現が増加する遺伝子として、以前に報告されているレプチン、IL-18などが検出された。また、肥満により発現が減少する遺伝子として、以前に報告されているアディポネクチンが検出された。これらの既知の遺伝子群が予想された挙動を示したことから、本研究のcDNAマイクロアレイの実験系がうまく働いていることが示唆された(図2参照)。
驚いたことに、特許文献1において「糖尿病において下方制御される遺伝子」として報告(段落0058及び0059)されているフォリスタチン様3(follistatin-like 3, FSTL3)が、本研究においては肥満により発現が増加する遺伝子として同定された。これは一見して、相矛盾する結果のように思われる。
BMI値に基づく肥満判定基準は絶対的なものではないが、日本肥満学会では、BMI値が22の場合を標準体重としており、BMI値が25以上の場合を肥満、BMI値が18.5未満である場合を低体重としている。表3の数値から明らかなように、本研究の対象者には、BMI値に関して肥満とされる範囲の症例も含まれているが、全体としては正常者(血糖値、肥満度に関して)が中心である。例えば、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IR値は、ある基準では、2を超えるとインスリン抵抗性が存在すると判断されるが、本研究の対象者の平均は1.46であり、糖尿病の発症には至っていない症例が殆どである。
本発明者らは、これらの症例では、代謝状態の悪化による二次的変化が存在する可能性が低く、肥満の初期に特異的に出現するような遺伝子を同定できる可能性があると考えた。
上記の各症例について、採取した皮下脂肪からmRNAを抽出し、cDNAマイクロアレイ解析を行った。
その結果、肥満により発現が増加する遺伝子として、以前に報告されているレプチン、IL-18などが検出された。また、肥満により発現が減少する遺伝子として、以前に報告されているアディポネクチンが検出された。これらの既知の遺伝子群が予想された挙動を示したことから、本研究のcDNAマイクロアレイの実験系がうまく働いていることが示唆された(図2参照)。
驚いたことに、特許文献1において「糖尿病において下方制御される遺伝子」として報告(段落0058及び0059)されているフォリスタチン様3(follistatin-like 3, FSTL3)が、本研究においては肥満により発現が増加する遺伝子として同定された。これは一見して、相矛盾する結果のように思われる。
[実施例2]
実施例1の結果を検証するために、本発明者らは、前記の113症例とは独立したドイツ人被験者188症例について、FSTL3 mRNAの発現量とBMIの相関を調べた。188症例の内訳は、平均年齢 55.3±15.2歳、男性108人、女性80人であり、糖尿病なし145人、IGT 5人、2型糖尿病38人である。内臓脂肪及び皮下脂肪のいずれの試料についても、FSTL3 mRNAの発現量とBMIの間に強い正の相関が確認された(図3参照)。同様に、内臓脂肪及び皮下脂肪のいずれの試料についても、FSTL3 mRNAの発現量と腹囲の間に強い正の相関が確認された(図4参照)。一方で、FSTL3 mRNAの発現量とインスリン感受性(クランプGIR)の間には有意な負の相関が確認された(図5参照)。図3〜図5より、FSTL3 mRNAの発現量が高いと、BMI値が高い傾向であること、FSTL3 mRNAの発現量が高いと、腹囲が大きい傾向であること、及びFSTL3 mRNAの発現量が高いと、インスリン感受性が低い傾向にあることが明らかである。よって、FSTL3 mRNAの発現量の標準値を設定して、これと比較してFSTL3 mRNAの発現量が一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症もしくは肥満に至るリスクが高いと判断することが可能であることが判った。なお、FSTL3 mRNAの発現量は、同一サンプル中の18sRNAの発現量を1とした場合の倍数で表したものである。
上に記載したBMI、腹囲(ウエスト)、及びインスリン感受性(クランプGIR)に加えて、体脂肪、内臓脂肪面積(V)、皮下脂肪面積(S)、HbA1c、HOMA-IR、及びHOMA-βとFSTL3mRNAの発現量との相関を調べた。これら全ての指標についてFSTL3 mRNAの発現量との間に有意な相関が見られた。この結果を表4に示す。
特許文献1においては使用した生体試料及び症例群についての開示が無いため、当該文献と本研究の相違が如何なる要因によるものか、必ずしも明らかではない。しかし、特許文献1段落0115の「図面の簡単な説明」において「II型糖尿病患者」と記載されていることから、本研究で使用された正常から肥満の症例と異なり、前記特許文献においては、既に糖尿病を発症した患者の試料が用いられたと判断することができる。
実施例1の結果を検証するために、本発明者らは、前記の113症例とは独立したドイツ人被験者188症例について、FSTL3 mRNAの発現量とBMIの相関を調べた。188症例の内訳は、平均年齢 55.3±15.2歳、男性108人、女性80人であり、糖尿病なし145人、IGT 5人、2型糖尿病38人である。内臓脂肪及び皮下脂肪のいずれの試料についても、FSTL3 mRNAの発現量とBMIの間に強い正の相関が確認された(図3参照)。同様に、内臓脂肪及び皮下脂肪のいずれの試料についても、FSTL3 mRNAの発現量と腹囲の間に強い正の相関が確認された(図4参照)。一方で、FSTL3 mRNAの発現量とインスリン感受性(クランプGIR)の間には有意な負の相関が確認された(図5参照)。図3〜図5より、FSTL3 mRNAの発現量が高いと、BMI値が高い傾向であること、FSTL3 mRNAの発現量が高いと、腹囲が大きい傾向であること、及びFSTL3 mRNAの発現量が高いと、インスリン感受性が低い傾向にあることが明らかである。よって、FSTL3 mRNAの発現量の標準値を設定して、これと比較してFSTL3 mRNAの発現量が一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症もしくは肥満に至るリスクが高いと判断することが可能であることが判った。なお、FSTL3 mRNAの発現量は、同一サンプル中の18sRNAの発現量を1とした場合の倍数で表したものである。
上に記載したBMI、腹囲(ウエスト)、及びインスリン感受性(クランプGIR)に加えて、体脂肪、内臓脂肪面積(V)、皮下脂肪面積(S)、HbA1c、HOMA-IR、及びHOMA-βとFSTL3mRNAの発現量との相関を調べた。これら全ての指標についてFSTL3 mRNAの発現量との間に有意な相関が見られた。この結果を表4に示す。
[実施例3]
本発明者らは、FSTL3 mRNAの組織特異的な発現を調べるために、腎臓、骨格筋、膵臓、肝臓、皮下脂肪、内臓脂肪、脳、及び精巣から抽出したmRNAを用いてノーザンブロット解析を行った。遺伝的肥満モデルであるdb/dbマウス(db/db:BKS.Cg-+ Leprdb/+ Leprdb/Jcl*Leprdb/+Leprdb、8週齢で肥満・糖尿病状態)及びコントロールマウス(mysty:BKS.Cg-m +/+ Leprdb/Jcl*m)について、当該解析を行った。
コントロール及びdb/dbマウスの両者において、腎臓及び精巣における組織特異的なFSTL3 mRNAの発現が確認された(図6参照)。一方、皮下脂肪及び内臓脂肪においては、db/dbマウスにおいてのみ組織特異的なFSTL3 mRNAの発現が見られた。この結果から、ヒトとマウスという種の違いを超えて、肥満の個体においては皮下脂肪及び内臓脂肪におけるFSTL3 mRNAの発現が上昇していることが明らかとなった。
本発明者らは、FSTL3 mRNAの組織特異的な発現を調べるために、腎臓、骨格筋、膵臓、肝臓、皮下脂肪、内臓脂肪、脳、及び精巣から抽出したmRNAを用いてノーザンブロット解析を行った。遺伝的肥満モデルであるdb/dbマウス(db/db:BKS.Cg-+ Leprdb/+ Leprdb/Jcl*Leprdb/+Leprdb、8週齢で肥満・糖尿病状態)及びコントロールマウス(mysty:BKS.Cg-m +/+ Leprdb/Jcl*m)について、当該解析を行った。
コントロール及びdb/dbマウスの両者において、腎臓及び精巣における組織特異的なFSTL3 mRNAの発現が確認された(図6参照)。一方、皮下脂肪及び内臓脂肪においては、db/dbマウスにおいてのみ組織特異的なFSTL3 mRNAの発現が見られた。この結果から、ヒトとマウスという種の違いを超えて、肥満の個体においては皮下脂肪及び内臓脂肪におけるFSTL3 mRNAの発現が上昇していることが明らかとなった。
[実施例4]
次に、正常マウス(C57/BL6マウス)に普通食(日本医科学動物資源研究所 マウス飼料MF)又は高脂肪食(クレア High Fat Diet 32 粗脂肪含量32%、脂肪由来カロリー60%)を与えた場合の皮下脂肪及び内臓脂肪中のFSTL3 mRNAの発現を、RT-PCR法及びノーザンブロット解析により調べた。当該マウスは、高脂肪食により肥満の状態に置かれたが、皮下脂肪及び内臓脂肪試料の採取は空腹時に行った。これは、摂食による一時的な発現上昇の可能性を排除するためである。RT-PCR法及びノーザンブロット解析いずれの検出系においても、高脂肪食を摂取した群ではFSTL3mRNAの発現の上昇が観察された。皮下脂肪と内臓脂肪では、内臓脂肪でより発現が検出された(図7参照)。
次に、正常マウス(C57/BL6マウス)に普通食(日本医科学動物資源研究所 マウス飼料MF)又は高脂肪食(クレア High Fat Diet 32 粗脂肪含量32%、脂肪由来カロリー60%)を与えた場合の皮下脂肪及び内臓脂肪中のFSTL3 mRNAの発現を、RT-PCR法及びノーザンブロット解析により調べた。当該マウスは、高脂肪食により肥満の状態に置かれたが、皮下脂肪及び内臓脂肪試料の採取は空腹時に行った。これは、摂食による一時的な発現上昇の可能性を排除するためである。RT-PCR法及びノーザンブロット解析いずれの検出系においても、高脂肪食を摂取した群ではFSTL3mRNAの発現の上昇が観察された。皮下脂肪と内臓脂肪では、内臓脂肪でより発現が検出された(図7参照)。
[実施例5]
マウス胎仔由来の線維芽細胞である3T3-L1細胞は、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化を誘導することが出来る。3T3-L1細胞をATCCから入手した。試験用の培地組成は、DMEM(GIBCO 11995)、10% FBS(GIBCO 10437)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)で、培養はCO2濃度5%、温度37.0℃で行った。この3T3-L1細胞に1μM デキサメタゾン、167nMインスリン、及び100μM イソブチルメチルキサンチンを投与して(day1)、11日間培養し、成熟脂肪細胞へと分化させた(day12)。この細胞及び細胞の培養液上清を回収し、FSTL3タンパク質が発現しているか否かをウェスタンブロットで確認した。分化誘導前の3T3-L1細胞では(day0)、FSTL3タンパク質の発現は見られないか又はごく僅かであったのに対し、成熟脂肪細胞へと分化した後では(day12)、細胞及び培養液上清の両者においてFSTL3タンパク質が発現していることが確認された(図8参照)。この結果から、FSTL3は成熟脂肪細胞から細胞外へと分泌とされるアディポカインであることが分かった。
FSTL3タンパク質が脂肪細胞の細胞外の空間に分泌されるという事実は、FSTL3タンパク質又はその代謝産物を肥満の診断マーカーとして用いる場合に、被験者の体液(例えば、血液、血清など)を用いて検査できることを意味する。これは、皮下脂肪や内臓脂肪の採取と比較して非侵襲的な方法であり、日常の検査に用いるためには有利である。
マウス胎仔由来の線維芽細胞である3T3-L1細胞は、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化を誘導することが出来る。3T3-L1細胞をATCCから入手した。試験用の培地組成は、DMEM(GIBCO 11995)、10% FBS(GIBCO 10437)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)で、培養はCO2濃度5%、温度37.0℃で行った。この3T3-L1細胞に1μM デキサメタゾン、167nMインスリン、及び100μM イソブチルメチルキサンチンを投与して(day1)、11日間培養し、成熟脂肪細胞へと分化させた(day12)。この細胞及び細胞の培養液上清を回収し、FSTL3タンパク質が発現しているか否かをウェスタンブロットで確認した。分化誘導前の3T3-L1細胞では(day0)、FSTL3タンパク質の発現は見られないか又はごく僅かであったのに対し、成熟脂肪細胞へと分化した後では(day12)、細胞及び培養液上清の両者においてFSTL3タンパク質が発現していることが確認された(図8参照)。この結果から、FSTL3は成熟脂肪細胞から細胞外へと分泌とされるアディポカインであることが分かった。
FSTL3タンパク質が脂肪細胞の細胞外の空間に分泌されるという事実は、FSTL3タンパク質又はその代謝産物を肥満の診断マーカーとして用いる場合に、被験者の体液(例えば、血液、血清など)を用いて検査できることを意味する。これは、皮下脂肪や内臓脂肪の採取と比較して非侵襲的な方法であり、日常の検査に用いるためには有利である。
[実施例6]
実施例1〜5の各結果より、FSTL3 が糖尿病発症もしくは肥満に至るリスクの判断に有用であることが判った。FSTL3はアクチビンと結合することでアクチビンが受容体に結合することを阻害することが知られているタンパク質である。これより、本発明者らは、アクチビンの挙動にも注目した。アクチビンをコードする遺伝子の一つであるインヒビンβB遺伝子の挙動について、先ず、初期肥満におけるインヒビンβB mRNAの発現量とBMI値との間の相関を調べた。インヒビンβB 遺伝子の産物同士がホモダイマーを形成したものが、アクチビンBと呼ばれる。初期肥満におけるインヒビンβB mRNAの発現量とBMI値との間には、有意な正の相関が見られた(図9左上参照)。
さらに、マウスに対し、インヒビンβB遺伝子で組み換えたアデノウイルスを投与し、内臓脂肪中のFSTL3 mRNAの発現量を調べた。内臓脂肪においてアクチビンBを発現させた場合に、コントロールマウス(lacZ)と比較してFSTL3 mRNAの発現が上昇することが観察された(図9右上参照)。
FSTL3がアクチビンBと結合して、アクチビンBの受容体への結合を阻害することにより、アクチビンBの抗糖尿病作用を抑制する、という分子機構(図10参照。本発明者らの未発表データ)を考慮すると、アクチビンBがFSTL3を上方制御するという上記の結果は驚くべきものである。これらのデータを総合的に考慮すると、アクチビンBは、アクチビンBの受容体(例えば、ALK7など。非特許文献3参照)への結合を介してSmadを活性化し、FSTL3の発現を上方制御すると考えられる。一方で、FSTL3は、アクチビンBと結合することにより、アクチビンBの受容体への結合を阻害し、アクチビンBの作用を抑制すると考えられる。
即ち、正常な生理的状態においては、アクチビンBとFSTL3との間にネガティブフィードバックの機構が働き、両者のバランスが取られていると考えられる。ここで、アクチビンBとFSTL3の拮抗する作用を考慮すると、アクチビンBの発現量とFSTL3の発現量の比を肥満の程度の指標として用いることは、有効なアプローチである。
実施例1〜5の各結果より、FSTL3 が糖尿病発症もしくは肥満に至るリスクの判断に有用であることが判った。FSTL3はアクチビンと結合することでアクチビンが受容体に結合することを阻害することが知られているタンパク質である。これより、本発明者らは、アクチビンの挙動にも注目した。アクチビンをコードする遺伝子の一つであるインヒビンβB遺伝子の挙動について、先ず、初期肥満におけるインヒビンβB mRNAの発現量とBMI値との間の相関を調べた。インヒビンβB 遺伝子の産物同士がホモダイマーを形成したものが、アクチビンBと呼ばれる。初期肥満におけるインヒビンβB mRNAの発現量とBMI値との間には、有意な正の相関が見られた(図9左上参照)。
さらに、マウスに対し、インヒビンβB遺伝子で組み換えたアデノウイルスを投与し、内臓脂肪中のFSTL3 mRNAの発現量を調べた。内臓脂肪においてアクチビンBを発現させた場合に、コントロールマウス(lacZ)と比較してFSTL3 mRNAの発現が上昇することが観察された(図9右上参照)。
FSTL3がアクチビンBと結合して、アクチビンBの受容体への結合を阻害することにより、アクチビンBの抗糖尿病作用を抑制する、という分子機構(図10参照。本発明者らの未発表データ)を考慮すると、アクチビンBがFSTL3を上方制御するという上記の結果は驚くべきものである。これらのデータを総合的に考慮すると、アクチビンBは、アクチビンBの受容体(例えば、ALK7など。非特許文献3参照)への結合を介してSmadを活性化し、FSTL3の発現を上方制御すると考えられる。一方で、FSTL3は、アクチビンBと結合することにより、アクチビンBの受容体への結合を阻害し、アクチビンBの作用を抑制すると考えられる。
即ち、正常な生理的状態においては、アクチビンBとFSTL3との間にネガティブフィードバックの機構が働き、両者のバランスが取られていると考えられる。ここで、アクチビンBとFSTL3の拮抗する作用を考慮すると、アクチビンBの発現量とFSTL3の発現量の比を肥満の程度の指標として用いることは、有効なアプローチである。
[実施例7]
ドイツ人被験者188症例について、FSTL3 mRNAの発現量とインヒビンβB mRNA量との比を求め、BMI値との関係を調べた。
その結果、BMI値が25以上の個体では、(FSTL3 mRNAの発現量)/(インヒビンβB mRNA発現量)比が1を超えている頻度が極めて高いことが確認された(図11参照)。これより、生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を肥満や糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けられることが判った。なお、FSTL3 mRNAの発現量は、同一サンプル中の18sRNAの発現量を1とした場合の倍数であり、インヒビンβB mRNA発現量は、同一サンプル中のcyclophilin Aの発現量を1とした場合の倍数で表したものである。
ドイツ人被験者188症例について、FSTL3 mRNAの発現量とインヒビンβB mRNA量との比を求め、BMI値との関係を調べた。
その結果、BMI値が25以上の個体では、(FSTL3 mRNAの発現量)/(インヒビンβB mRNA発現量)比が1を超えている頻度が極めて高いことが確認された(図11参照)。これより、生体試料中のFSTL3遺伝子及びインヒビンβB遺伝子の発現量の比を肥満や糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付けられることが判った。なお、FSTL3 mRNAの発現量は、同一サンプル中の18sRNAの発現量を1とした場合の倍数であり、インヒビンβB mRNA発現量は、同一サンプル中のcyclophilin Aの発現量を1とした場合の倍数で表したものである。
[実施例8]
C57BL/6Jマウスを用い、アデノウイルスでFSTL3遺伝子を肝臓に発現させたマウスとコントロールマウス(lacZ)の、グルコース負荷試験における120分後までの血糖値を比較した。
その結果、FSTL3遺伝子を肝臓に発現させることにより耐糖能の悪化が認められた(図12参照)。
C57BL/6Jマウスを用い、アデノウイルスでFSTL3遺伝子を肝臓に発現させたマウスとコントロールマウス(lacZ)の、グルコース負荷試験における120分後までの血糖値を比較した。
その結果、FSTL3遺伝子を肝臓に発現させることにより耐糖能の悪化が認められた(図12参照)。
[実施例9]
肥満・糖尿病モデルであるdb/dbマウスを用い、FSTL 3アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与したdb/dbマウスと、投与しないコントロールdb/dbマウスの、グルコース負荷試験における120分後までの血糖値を比較した。
その結果、アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与したマウスでは、コントロールマウスに比べ耐糖能の改善が認められた(図13参照)。
肥満・糖尿病モデルであるdb/dbマウスを用い、FSTL 3アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与したdb/dbマウスと、投与しないコントロールdb/dbマウスの、グルコース負荷試験における120分後までの血糖値を比較した。
その結果、アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与したマウスでは、コントロールマウスに比べ耐糖能の改善が認められた(図13参照)。
[実施例10]
FSTL3アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与したdb/dbマウスとコントロールdb/dbマウスの肝臓及び骨格筋におけるAktリン酸化シグナルを測定した。実施例9で用いたマウスに関し、投与初日から31日後に解剖して肝臓及び骨格筋を摘出し、各部位におけるAktリン酸化シグナルの測定を行った。
その結果、FSTL3アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与されたマウスにおいては肝臓、骨格筋ともにAktのリン酸化が確認された(図14参照)。すなわち、FSTL3は、Aktを経由するインスリンシグナル伝達阻害を通じてインスリン抵抗性の惹起に関与していることが示唆され、肥満化及び/又は糖尿病発症に至るリスクを早期に検出するために適した指標(マーカー)であることが判った。
FSTL3アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与したdb/dbマウスとコントロールdb/dbマウスの肝臓及び骨格筋におけるAktリン酸化シグナルを測定した。実施例9で用いたマウスに関し、投与初日から31日後に解剖して肝臓及び骨格筋を摘出し、各部位におけるAktリン酸化シグナルの測定を行った。
その結果、FSTL3アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与されたマウスにおいては肝臓、骨格筋ともにAktのリン酸化が確認された(図14参照)。すなわち、FSTL3は、Aktを経由するインスリンシグナル伝達阻害を通じてインスリン抵抗性の惹起に関与していることが示唆され、肥満化及び/又は糖尿病発症に至るリスクを早期に検出するために適した指標(マーカー)であることが判った。
[実施例11]
実施例2の188例中、BMI値が25未満である50例について、インスリン感受性(クランプ試験によるGlucose infusion rate)と内臓脂肪中FSTL3 mRNA発現量の関係を解析した。FSTL3 mRNAの発現量とGlucose infusion rateとの関係は図15に示した如くである。
スピアマン順位相関係数は-0.6175、P<0.0001と有意な負の相関が確認された。このことから、BMI値が25未満(肥満に関して正常値域)の個体におけるFSTL3 mRNAの発現量を、糖尿病の前段階、あるいは肥満の前段階の指標とすることは、有効なアプローチであると考えられた。
実施例2の188例中、BMI値が25未満である50例について、インスリン感受性(クランプ試験によるGlucose infusion rate)と内臓脂肪中FSTL3 mRNA発現量の関係を解析した。FSTL3 mRNAの発現量とGlucose infusion rateとの関係は図15に示した如くである。
スピアマン順位相関係数は-0.6175、P<0.0001と有意な負の相関が確認された。このことから、BMI値が25未満(肥満に関して正常値域)の個体におけるFSTL3 mRNAの発現量を、糖尿病の前段階、あるいは肥満の前段階の指標とすることは、有効なアプローチであると考えられた。
本発明により、肥満あるいは糖尿病と診断されていない個体における肥満に至るリスク及び/又は糖尿病発症に至るリスクならびに肥満を経て糖尿病発症に至るリスク、具体的には、潜在的な肥満化リスク及び/又は潜在的な糖尿病発症リスク(詳細にはインスリン抵抗性悪化リスク)、より具体的には、肥満化及び/又は糖尿病発症に至るリスクを早期に検出するために適した、指標(マーカー)としての遺伝子及びポリペプチドを提供することが可能となった。
Claims (1)
- 以下の工程を含む、生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を糖尿病発症に至るリスクの高さの検出と関連付ける方法:
(i)生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量を測定する工程、
ここで当該生体試料中のFSTL3遺伝子の発現量が、標準値SFSTL3と比較して一定倍数以上に増加している場合に糖尿病発症に至るリスクが高いと判断される。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013138299A JP2013252136A (ja) | 2010-05-27 | 2013-07-01 | 肥満化リスク・糖尿病発症リスクの検出方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010122148 | 2010-05-27 | ||
JP2010122148 | 2010-05-27 | ||
JP2013138299A JP2013252136A (ja) | 2010-05-27 | 2013-07-01 | 肥満化リスク・糖尿病発症リスクの検出方法 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012517332A Division JP5422799B2 (ja) | 2010-05-27 | 2011-05-27 | 肥満化リスク・糖尿病発症リスクの検出方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013252136A true JP2013252136A (ja) | 2013-12-19 |
Family
ID=45004040
Family Applications (2)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012517332A Active JP5422799B2 (ja) | 2010-05-27 | 2011-05-27 | 肥満化リスク・糖尿病発症リスクの検出方法 |
JP2013138299A Withdrawn JP2013252136A (ja) | 2010-05-27 | 2013-07-01 | 肥満化リスク・糖尿病発症リスクの検出方法 |
Family Applications Before (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012517332A Active JP5422799B2 (ja) | 2010-05-27 | 2011-05-27 | 肥満化リスク・糖尿病発症リスクの検出方法 |
Country Status (4)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20130143748A1 (ja) |
EP (2) | EP2921562B1 (ja) |
JP (2) | JP5422799B2 (ja) |
WO (1) | WO2011149057A1 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA2988980A1 (en) * | 2015-06-11 | 2016-12-15 | Astute Medical, Inc. | Methods and compositions for diagnosis and prognosis of renal injury and renal failure |
CN108779454A (zh) * | 2016-03-15 | 2018-11-09 | 绵引 | 肥胖风险的诊断试剂盒和肥胖发病风险的分析方法 |
JP7251722B2 (ja) * | 2018-09-27 | 2023-04-04 | 国立大学法人九州大学 | 糖尿病に関する情報を取得する方法及びその利用 |
Family Cites Families (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20050123938A1 (en) * | 1999-01-06 | 2005-06-09 | Chondrogene Limited | Method for the detection of osteoarthritis related gene transcripts in blood |
EP1560025A3 (en) * | 2003-10-03 | 2011-09-07 | F. Hoffmann-La Roche AG | Specific markers for diabetes |
JP2005253434A (ja) * | 2004-03-15 | 2005-09-22 | Hokkaido Technology Licence Office Co Ltd | 2型糖尿病の診断方法 |
JP2006296346A (ja) * | 2005-04-22 | 2006-11-02 | Kanazawa Univ | 糖尿病の病態と関連して発現変動する遺伝子およびその利用 |
US20080207594A1 (en) * | 2005-05-04 | 2008-08-28 | Davelogen Aktiengesellschaft | Use of Gsk-3 Inhibitors for Preventing and Treating Pancreatic Autoimmune Disorders |
US8236751B2 (en) * | 2007-03-07 | 2012-08-07 | The Johns Hopkins University | Methods of increasing muscle mass using follistatin-like related gene (FLRG) |
-
2011
- 2011-05-27 EP EP15163160.3A patent/EP2921562B1/en active Active
- 2011-05-27 US US13/699,806 patent/US20130143748A1/en not_active Abandoned
- 2011-05-27 EP EP11786754.9A patent/EP2578699A4/en not_active Withdrawn
- 2011-05-27 JP JP2012517332A patent/JP5422799B2/ja active Active
- 2011-05-27 WO PCT/JP2011/062226 patent/WO2011149057A1/ja active Application Filing
-
2013
- 2013-07-01 JP JP2013138299A patent/JP2013252136A/ja not_active Withdrawn
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPWO2011149057A1 (ja) | 2013-07-25 |
EP2921562A1 (en) | 2015-09-23 |
EP2921562B1 (en) | 2017-03-08 |
US20130143748A1 (en) | 2013-06-06 |
WO2011149057A1 (ja) | 2011-12-01 |
JP5422799B2 (ja) | 2014-02-19 |
EP2578699A4 (en) | 2013-11-06 |
EP2578699A1 (en) | 2013-04-10 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100999261B1 (ko) | 여성호르몬 결핍으로 초래되는 여성 피부의 노화 억제제 스크리닝 방법 | |
KR101872965B1 (ko) | C―maf를 이용하는 전립선암 전이의 진단, 예후 및 치료 방법 | |
KR20150122731A (ko) | 암 전이의 예후 및 치료 방법 | |
TW201217787A (en) | Urine markers for detection of bladder cancer | |
KR20120047334A (ko) | 자궁내막암 마커 | |
JP7134359B2 (ja) | 卵巣の卵胞刺激ホルモン(fsh)に対する反応性の診断用または予測用のバイオマーカー、及びその用途 | |
JP5422799B2 (ja) | 肥満化リスク・糖尿病発症リスクの検出方法 | |
KR101560706B1 (ko) | 비만 진단용 조성물 | |
JP2004187620A (ja) | 腎疾患の疾患マーカーおよびその利用 | |
EP2799546B1 (en) | Radiation exposure diagnostic marker igfbp-5 and method for diagnosing radiation exposure by measuring the expression level of the marker | |
CN111549114B (zh) | 心力衰竭的生物标志物及其应用 | |
JP4120778B2 (ja) | 骨代謝異常疾患マーカー及びその利用 | |
JP2005000056A (ja) | ホルモン依存性癌疾患マーカー及びその利用 | |
CN111197088A (zh) | Adamtsl3作为腹主动脉瘤诊治标志物的应用 | |
WO2010084668A1 (ja) | ネフローゼ症候群の検査方法、並びにネフローゼ症候群の予防又は治療薬およびそのスクリーニング方法 | |
KR20180099123A (ko) | 항암제에 대한 저항성 예측용 바이오마커 | |
CN106906286B (zh) | 用于诊治舌鳞癌的基因标志物 | |
WO2007088971A1 (ja) | がん予後判定に利用できる遺伝子群 | |
WO2017054759A1 (zh) | 过表达gpr160的癌症的预防、诊断和治疗 | |
WO2020116567A1 (ja) | 関節リウマチ治療薬の奏効を予測する方法及びそれに用いるバイオマーカー | |
KR101360602B1 (ko) | 여성 호르몬 결핍으로 초래되는 여성 피부 노화 억제제 스크리닝 방법 | |
KR101317024B1 (ko) | 여성 호르몬 결핍으로 초래되는 여성 피부 노화 억제제 스크리닝 방법 | |
JP2024045047A (ja) | 肥満改善剤の有効性予測方法 | |
JP5083800B2 (ja) | 肥満の検査方法及び肥満の予防又は治療薬のスクリーニング方法 | |
JP2004173553A (ja) | 心不全の疾患マーカー及びその利用 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20140805 |