JP2004173553A - 心不全の疾患マーカー及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】心不全を反映する疾患マーカー、該疾患マーカーを利用した心不全の検出方法、該疾患の改善に有用な薬物のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】特定の塩基配列を有する259種の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドを、心不全の疾患マーカーとして利用する。
【選択図】なし
【解決手段】特定の塩基配列を有する259種の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドを、心不全の疾患マーカーとして利用する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は心不全の診断に有用な疾患マーカーに関する。より詳細には、本発明は心肥大や心拡張を伴う疾患の遺伝子診断において、プライマーまたは検出プローブとして有効に利用できる疾患マーカーに関する。また本発明は、かかる疾患マーカーを利用した心不全の検出方法(診断方法)に関する。
【0002】
さらに本発明は、上記疾患マーカーを利用して、心不全の改善薬または治療薬として有効な物質をスクリーニングする方法、並びに該方法で調製される上記物質を有効成分とする心不全の改善薬または治療薬に関する。
【0003】
【従来の技術】
心不全は、心臓の収縮力や拡張力が低下し、心臓から身体に送り出される血液の量(心拍出量)が不足する状態をいう。冠動脈疾患、高血圧性心疾患、弁膜疾患、心筋症、先天性心疾患など、循環障害、弁膜障害、心筋障害を引き起こすあらゆる疾患が心不全の原因となり得、様々な心血管系疾患を原因疾患とする複雑な病態である。
【0004】
種々の原因疾患から心不全に至る過程において、特徴的な病理学的変化として組織の再構築(リモデリング)が挙げられ、心臓はしばしば2種の異なる形態(心肥大および心拡張)をとる。心肥大では、心筋細胞の容積増大及び/又は間質の増大による心室壁の肥厚を、また心拡張では、心筋繊維の伸長に伴う心内腔容積の増大を特徴とする。これらは、心臓に対する負荷に対して心拍出量を維持するための代償機構であるが、過剰な負荷が長期間持続すると代償機構が破綻し、最終的には心不全状態に陥る。心筋の肥大は、心収縮力の増大につながるが、多くの酸素や栄養を必要とするため、正常の心臓よりも虚血状態になりやすく、狭心症、心筋梗塞、不整脈などが発生しやすくなる。近年、心肥大は、独立した心血管疾患、心不全、全体死亡率の危険因子とされている。このため、心肥大及び/又は心拡張の発生に関与する遺伝子を同定することで、心肥大、心拡張さらには心不全の発生機序を解明しようとする試みがなされている。
【0005】
欧米における心不全患者数は現在約1700万人といわれており、医療経済上も深刻な社会負担となっている。高齢化社会到来に伴いさらに増加が予想されることから、現在その予防・治療法の開発が望まれている。本疾患に対する現在の治療薬としては、強心薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、β遮断薬などがあるが、これら既存の治療薬によっても心不全患者の生命予後およびQOL(Quality of life)が十分に改善されたとは言い難いのが現状である。また心不全は、その臨床・病理像から、発症機構は多様であり、多くの因子が関与することが予想されること、および様々な心血管系疾患を基礎疾患として発病する複雑な病態であることから、研究が困難である点が多いのが現状である。
【0006】
一方で、最近の医療現場では、心不全に限らず、個々の患者の症状に合わせて治療法を的確に選択することが望まれるようになってきている。高齢化社会でのQOL向上の必要性が認識されてきた近年では、特に、万人に共通した治療ではなく、個々の患者の症状に合わせて適切な治療が施されることが強く求められている。このような所謂テイラーメイド治療を行うためには、個々の疾患について患者の症状やその原因(遺伝的背景)を的確に反映する疾患マーカーが有用であり、その探索並びに開発を目指した研究が精力的に行われているのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、心不全の診断及び治療に有用な疾患マーカーを提供することを目的とする。より詳細には、本発明は心肥大や心拡張を伴う心不全を特異的に反映した疾患マーカーを提供することを目的とする。さらに本発明は該疾患マーカーを利用した心不全の検出方法(遺伝子診断方法)、該疾患の改善または治療に有用な薬物をスクリーニングする方法、並びに該疾患の改善または治療に有用な薬物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行っていたところ、後述する配列表において配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219で示される塩基配列(以下、本明細書において「配列番号:1〜219」ともいう。)を有する遺伝子が、正常の左心室組織における発現に比して心肥大を呈する左心室組織における発現が有意に促進されていること、また配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259で示される塩基配列(以下、本明細書において「配列番号:1〜64、220〜259」ともいう。)を有する遺伝子が、正常の左心室組織における発現に比して心拡張を呈する左心室組織における発現が有意に促進されていること、また配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64で示される塩基配列(以下、本明細書において「配列番号:1〜64」ともいう。)を有する遺伝子が、正常の左心室組織における発現に比して心肥大および心拡張を呈する左心室組織における発現が有意に促進されていることを見出した。これらのことから、本発明者らは、かかる遺伝子が心肥大や心拡張を伴う心不全の疾患マーカーであるとの確信を得た。本発明はかかる知見に基づいて開発されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記項1〜項24に掲げるものである:
項1. 配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、心不全の疾患マーカー。
項2. 心不全の検出においてプローブまたはプライマーとして使用される項1記載の疾患マーカー。
項3. 心肥大を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219で示されるいずれかの塩基配列に基づく疾患マーカーである項1または2に記載の疾患マーカー。
項4. 心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259で示されるいずれかの塩基配列に基づく疾患マーカーである項1または2に記載の疾患マーカー。
項5. 心肥大および心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64で示されるいずれかの塩基配列に基づく疾患マーカーである項1または2に記載の疾患マーカー。
項6. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、心不全の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと項1〜5のいずれかに記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果に基づいて、心不全の罹患を判断する工程。
項7. 心不全の罹患を判断する工程が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として判断するものである項6に記載の心不全の検出方法。
項8. 心肥大を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項3に記載のものである、項6または7に記載の方法。
項9. 心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項4に記載のものである、項6または7に記載の方法。
項10. 心肥大および心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項5に記載のものである、項6または7に記載の方法。
項11. 配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を認識する抗体を有する、心不全の疾患マーカー。
項12. 心不全の検出においてプローブとして使用される項11記載の疾患マーカー。
項13. 心肥大を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271および272で示されるいずれかのアミノ酸配列に基づく疾患マーカーである項11または12に記載の疾患マーカー。
項14. 心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:260、261、262、263、264、265、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285および286で示されるいずれかのアミノ酸配列に基づく疾患マーカーである項11または12に記載の疾患マーカー。
項15. 心肥大および心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:260、261、262、263、264および265で示されるいずれかのアミノ酸配列に基づく疾患マーカーである項11または12に記載の疾患マーカー。
項16. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、心不全の検出方法:
(a) 被験者の生体試料から調製されたタンパク質と、項11〜15のいずれかに記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b) 該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質またはその部分ペプチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の測定結果に基づいて、心不全の罹患を判断する工程。
項17. 心不全の罹患を判断する工程が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として判断するものである項16に記載の心不全の検出方法。
項18. 心肥大を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項13に記載のものである、項16または17に記載の方法。
項19. 心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項14に記載のものである、項16または17に記載の方法。
項20. 心肥大および心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項15に記載のものである、項16または17に記載の方法。
項21. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現を減少させる物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞の、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量を測定し、該発現量を被験物質に接触させない対照細胞の上記対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
項22. 心不全の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、項21に記載のスクリーニング方法。
項23. 配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制する物質を有効成分とする心不全の改善または治療剤。
項24. 配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制する物質が項21に記載のスクリーニング法により得られるものである、項23記載の心不全の改善または治療剤。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC−IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における慣用記号に従う。
【0011】
本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。なお、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
【0012】
また、当該「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば、同族体、変異体、誘導体など)をコードする「遺伝子」または「DNA」が包含される(本明細書においては、これらを総括して上記特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の「ホモログ」ともいう)。かかるホモログとしては、具体的には、後述する(1−1)項に記載のストリンジェントな条件で、前記特定塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の相補鎖とハイブリダイズするものを挙げることができる。
【0013】
例えば同族体をコードする遺伝子(ホモログ)としては、ヒト遺伝子に対応するマウスやラットなどの他生物種の遺伝子が例示できる。これらの遺伝子(ホモログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci.USA., 90: 5873−5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E−valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUniGene (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。結果として得られた他生物種遺伝子とヒト遺伝子との遺伝子ホモログの相関を示したリストから、ヒト遺伝子に該当するマウスやラットなどの他生物種の遺伝子を選抜することができる。なお、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
【0014】
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNAおよびDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
【0015】
本明細書において「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」には、特定の塩基配列で示される「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等である「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」(例えば、同族体、変異体、誘導体など)が包含される。なお、本明細書において、これらを上記特定のアミノ酸配列で示される「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」の「ホモログ」ともいう。例えば、上記同族体(ホモログ)としては、ヒトのタンパク質に該当するマウスやラットなどの他生物種のタンパク質が例示でき、これらはHomoloGene (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定された遺伝子(ホモログ)の塩基配列から演繹的に同定することができる。また、上記変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加および挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、かかる変異体としては、変異のないタンパク質または(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。
【0016】
本明細書でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、またはFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
【0017】
本明細書において「疾患マーカー」とは、心不全の罹患の有無若しくは罹患の程度を診断するために、また、心不全の改善、治療などに有用な候補物質をスクリーニングするために、直接または間接的に利用されるものをいう。これには、心不全の罹患に関連して生体内、特に左心室組織において、発現が変動する遺伝子またはタンパク質を特異的に認識し、また結合することのできる(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドまたは抗体が包含される。これらの(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドおよび抗体は、上記性質に基づいて、生体内、特に左心室組織などで発現した上記遺伝子及びタンパク質を検出するためのプローブとして、また(オリゴ)ヌクレオチドは生体内、特に左心室組織などで発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
【0018】
本明細書において「心不全」とは、心機能不全のみならず、それに至る過程において心肥大および/または心拡張を呈した状態をも指すものである。すなわち本発明の「心不全」は、心肥大(心肥大を伴う疾患)や心拡張(心拡張を伴う疾患)をも含むものである。
【0019】
本発明は、前述するように、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219(配列番号:1〜219)に記載の塩基配列を有する遺伝子(以下、これらの遺伝子を総称して遺伝子Iともいう。)が、心肥大を呈する左心室組織で特異的に発現が増大していること、並びに配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259(配列番号:1〜64、220〜259)に記載の塩基配列を有する遺伝子(以下、これらの遺伝子を総称して遺伝子IIともいう。)が、心拡張を呈する左心室組織で特異的に発現が増大していること、そして配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64(配列番号:1〜64)に記載の塩基配列を有する遺伝子(以下、これらの遺伝子を総称して遺伝子IIIともいう。)が、心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で特異的に発現が増大していることを見出したことに基づくものである。
【0020】
従って、これらの遺伝子及びその発現産物〔タンパク質、(ポリ)(オリゴ)ペプチド〕は、心肥大や心拡張といった心不全の解明、診断、予防及び治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床学上、有用な情報や手段を得ることができる。また、これらの遺伝子及びその発現産物並びにそれらからの派生物(例えば、抗体など)は、上記心不全の治療、並びに該治療に有効に用いられる薬剤の開発に好適に利用することができる。さらに個体、特に個体の左心室組織における、上記遺伝子の発現またはその発現産物の検出、または該遺伝子の変異またはその発現不全の検出は、心不全の解明や診断に有効に利用することができる。
【0021】
以下、これらのポリヌクレオチド、並びにこれらの発現産物やそれらの派生物について、具体的な用途を説明する。
【0022】
(1)心不全の疾患マーカー及びその応用
(1−1) ポリヌクレオチド
本発明は、前述するように、心肥大を呈する左心室組織において、配列番号:1〜219の塩基配列を有する遺伝子が特異的に発現しているか、発現が特異的に増大しているという知見、並びに心拡張を呈する左心室組織において配列番号:1〜64、220〜259の塩基配列を有する遺伝子が特異的に増大しているという知見、並びに心肥大及び心拡張を呈する左心室組織において配列番号:1〜64の塩基配列を有する遺伝子が特異的に増大しているという知見を発端に、これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって上記心不全の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。すなわち、本発明は、被験者における上記遺伝子の発現の有無またはその程度を検出することによって、被験者について心不全の罹患の有無または罹患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用なポリヌクレオチドを提供するものである。
【0023】
また、本発明のポリヌクレオチドは、後述の(3)項に記載するような心不全の予防、改善または治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
【0024】
かかる本発明の疾患マーカーは、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなることを特徴とするものである。
【0025】
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、上記各配列番号に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、または上記各塩基配列において少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:TおよびG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該正鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
【0026】
また、正鎖側のポリヌクレオチドには、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列またはその部分配列を有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
【0027】
さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されてもよい。
【0028】
本発明の心不全の疾患マーカーは、具体的には配列番号:1〜259のいずれかに記載される塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。また、配列番号:1〜259のいずれかで示される遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列若しくはその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、部分配列としては、上記全長配列若しくはその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも15個の連続した塩基長を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0029】
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法においては、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子またはこれらの遺伝子に由来するポリヌクレオチドが特異的に検出できること、またRT−PCR法においては配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはこれらの遺伝子に由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなく、当業者が上記検出物または生成物がこれらの遺伝子に由来するものであると判断できるものであればよい。
【0030】
そのような本発明の疾患マーカーは、検出(認識)する対象の遺伝子(配列番号:1〜259)に応じて、配列番号:1〜259のいずれかに示される塩基配列をもとに、例えばprimer 3(HYPERLINK http://www.genome.wi.mit.edu/cgi−bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。具体的には配列番号:1〜259のいずれかに示される塩基配列をprimer 3またはベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマーまたはプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマーまたはプローブとして使用することができる。
【0031】
本発明で用いる疾患マーカーは、上述するように連続する少なくとも15塩基の長さを有するものであればよいが、具体的にはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定することができる。
【0032】
(1−2)プローブまたはプライマーとしてのポリヌクレオチド
本発明の疾患マーカーは、上記各遺伝子の発現によって生じたRNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、または該RNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。
【0033】
上記疾患マーカーを心不全の検出(遺伝子診断)においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。
【0034】
本発明の疾患マーカーは、ノーザンブロット法、RT−PCR法、in situハイブリダーゼーション法などといった、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーまたはプローブとして利用することができ、これによって心不全に関連する配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することができる。
【0035】
なお、測定対象試料としては、使用する検出方法の種類に応じて適宜選択することができる。該試料は、例えば、被験者の左心室組織の一部をバイオプシ等で採取し、そこから常法に従って調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
【0036】
また、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の生体組織における発現レベルは、DNAチップを利用して検出あるいは定量することができる。この場合、本発明の疾患マーカーは当該DNAチップのプローブとして使用することができる(例えば、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A, B, C, D,Eの場合、25bpの長さのポリヌクレオチドプローブとして用いられる)。本発明の疾患マーカーをプローブとするDNAチップを、生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNAまたはRNAとハイブリダイズさせることにより、本発明の疾患マーカー(プローブ)と標識DNAまたはRNAとの複合体が形成される。該複合体を該標識DNAまたはRNAの標識を指標として検出することにより、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列からなる遺伝子の生体組織中での発現の有無または発現レベル(発現量)が評価できる。
【0037】
なお、上記DNAチップは、配列番号:1〜259のいずれかで示される塩基配列を有する遺伝子と結合し得る1種または2種以上の本発明疾患マーカーを含んでいればよい。複数の疾患マーカーを含むDNAチップの利用によれば、ひとつの生体試料について、同時に複数の遺伝子の発現の有無または発現レベルの評価が可能である。
【0038】
本発明の疾患マーカーは、心不全の診断や検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用した心不全の診断は、被験者の左心室組織と正常な左心室組織における配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。
【0039】
この場合、遺伝子発現レベルの違いには、発現のある/なしの違いだけでなく、被験者の左心室組織と正常な左心室組織の両者ともに発現がある場合でも、両者間の発現量の格差が2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。
【0040】
より具体的には、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218または219のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子は、心肥大の左心室組織において、正常な左心室組織の発現量と比べて5倍以上の発現増大を示した。従って被験者の左心室組織で特異的に発現しているか、或いは、該発現量が正常な左心室組織の発現量と比べて2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上増大していれば、被験者について、心肥大若しくは当該心肥大を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。この場合の心肥大/心不全の検出(診断)には、上記遺伝子に対応するいずれかに記載の塩基配列(配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218または219のいずれかに記載の塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチドおよび/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0041】
中でも、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、38、39、40、41、42、43、44または45のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心肥大を呈する左心室組織で10倍以上の発現増大を示しており、特に、配列番号:1、2、3、38、39または40のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心肥大を呈する左心室組織で20倍以上の発現増大を示していた。従って、上記遺伝子に対応するいずれかの塩基配列(配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、38、39、40、41、42、43、44または45のいずれかの塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0042】
一方、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比して、心拡張を呈する左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。従って被験者の左心室組織で特異的に発現しているか、或いは、該発現量が正常な左心室組織と比べて2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上増大していれば、被験者について心拡張又は当該心拡張を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。この場合の心拡張/心不全の検出(診断)には、上記遺伝子に対応するいずれかの塩基配列(配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかの塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチドおよび/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0043】
中でも、配列番号:1、2、3、4、6、7、26、38、39、40、42、58または220のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心拡張を呈する左心室組織で10倍以上の発現増大を示しており、特に、配列番号:2または39のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心拡張を呈する左心室組織で20倍以上の発現増大を示していた。従って、これらの遺伝子に対応するいずれかの塩基配列(配列番号:1、2、3、4、6、7、26、38、39、40、42、58または220のいずれかの塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチドおよび/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0044】
さらに、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63または64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比して、心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。従って被験者の左心室組織で特異的に発現しているか、或いは、該発現量が正常な左心室組織と比べて2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上増大していれば、被験者について心肥大、心拡張、又は当該心肥大・心拡張を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。この場合の心肥大/心拡張/心不全の検出(診断)には、上記遺伝子に対応するいずれかの塩基配列(配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63または64のいずれかの塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチド/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0045】
中でも、配列番号:1、2、3、4、6、7、38、39、40または42のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で10倍以上の発現増大を示しており、特に、配列番号:2または39のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で20倍以上の発現増大を示していた。従って、これらの遺伝子に対応するいずれかの塩基配列(配列番号:1、2、3、4、6、7、38、39、40または42のいずれかの塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチドおよび/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0046】
本発明において心不全の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に左心室組織における配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の少なくとも1つの発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。検出(診断)の精度や正確性を高めるためには、上記遺伝子群の2以上、好ましくは複数個の遺伝子、より好ましくは上記遺伝子群の4分の1以上、さらに好ましくは上記遺伝子群の半数以上の遺伝子について、その発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することが望ましい。
【0047】
(1−3)抗体
また本発明は、心不全の疾患マーカーとして配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現産物(タンパク質)を特異的に認識することのできる抗体を提供する。
【0048】
本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、上記タンパク質を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよく、さらには当該タンパク質を構成するアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、更に好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
【0049】
これらのタンパク質としては、具体的には上記配列番号:1〜259に示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、またはこれらの遺伝子のうち、配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質が挙げることができる。なお、後者のタンパク質の具体的な態様としては、配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質が例示できる。
【0050】
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13)。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した上記タンパク質を用いて、または常法に従って当該タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した上記タンパク質、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
【0051】
また、抗体の作製に使用されるタンパク質は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号:1〜259)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。具体的には配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子、より具体的には、例えば配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子)が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって実施することができる。また、これらのタンパク質は、本発明により提供される遺伝子情報(配列番号1〜259)から常法によって得られるアミノ酸配列や本発明により提供されるアミノ酸配列情報(具体的に、例えば配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。
【0052】
なお、本発明のタンパク質には、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質)のみならず、その相同物も包含される。該相同物としては、上記遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列、例えば具体的には上記配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、それぞれのタンパク質の公知の機能と同等の生物学的機能を有するか、及び/または免疫学的活性において同等の活性を有するタンパク質を挙げることができる。
【0053】
なお、ここで配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質)の公知の機能と同等の生物学的機能を有するタンパク質としては、各々対応するタンパク質と生化学的または薬理学的機能において同等の機能を有するタンパク質を挙げることができる。また配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質)と免疫学的活性において同等の活性を有するタンパク質としては、適当な動物あるいはその細胞において特定の免疫反応を誘発し、かつ各対応するタンパク質に対する抗体と特異的に結合する能力を有するタンパク質を挙げることができる。
【0054】
なお、タンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その生物学的機能及び/または免疫学的活性が保持される限り制限はない。生物学的機能や免疫学的活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また置換されるアミノ酸は、置換後に得られるタンパク質が、置換前のタンパク質(配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質))の生物学的機能及び/または免疫学的活性を保持している限り、特に制限されないが、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0055】
また本発明の抗体は、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、具体的には例えば配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質)(または当該タンパク質の相同物)の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて調製されるものであってもよい。かかる抗体誘導のために用いられオリゴペプチドは、機能的な生物活性を有することは要しないが、各々対応する上記のタンパク質と同様な免疫原特性を有するものであることが望ましい。好ましくはかかる特性を有し、配列番号:1〜259のいずれかで示される塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列、具体的には例えば配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかに示されるアミノ酸配列)において少なくとも連続する8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドを例示することができる。
【0056】
かかるポリペプチドに対する抗体の生成は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントなどがある。
【0057】
本発明の抗体は配列番号:1〜259のいずれかで示される塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)(または当該タンパク質の相同物)に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した上記タンパク質(その相同物を含む)を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内における上記タンパク質(その相同物を含む)発現の有無を検出するためのプローブとして有用である。
【0058】
具体的には、患者の左心室組織の一部をバイオプシ等で採取し、そこから常法に従ってタンパク質を調製して、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、上記抗体を常法に従ってプローブとして使用することによって、上記タンパク質を検出することができる。
【0059】
心不全の診断に際しては、被験者の左心室組織における配列番号:1〜259で示される塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)のいずれか少なくとも1つの量と、正常な左心室組織における当該タンパク質の量との違いを判定すればよい。この場合、タンパク量の違いには、タンパク質のある/なし、あるいはタンパク量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。
【0060】
例えば配列番号:1〜219に示される塩基配列を有する遺伝子、より具体的には配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140または147に例示される塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比して、心肥大を呈する左心室組織で5倍以上の発現誘導(増大)を示した。従って被験者の左心室組織の発現産物(上記遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271または272で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)の量が正常な左心室組織の発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上多いことが判定されれば、被験者について、心肥大又は当該心肥大を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。
【0061】
この場合の心肥大/心不全の検出(診断)には、各々に対応する配列番号:1〜219に示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質、より具体的には配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140または147に例示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271または272で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが有用である。
【0062】
中でも配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、38、39、40、41、42、43、44または45に示される塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心肥大を呈する左心室組織で10倍以上の発現誘導(増大)を示していた。このため、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、38、39、40、41、42、43、44または45に示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが心肥大又は当該心肥大を呈した心不全(心機能不全)の検出(診断)に有用であると思われる。
【0063】
一方、配列番号:1〜64、220〜259に示される塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比して、心拡張の左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。従って被験者の左心室組織における該遺伝子の発現産物(上記遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には配列番号:260、261、262、263、264、265、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286によって例示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)の量が正常な左心室組織での発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上多いことが判定されれば、心拡張又は当該心拡張を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。
【0064】
この場合の心拡張/心不全の検出(診断)には、各々に対応する配列番号:1〜64、220〜259に示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質、具体的には配列番号:19、23、29、32、35、36、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に例示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を特異的に認識する抗体を有する本発明の疾患マーカーが有用である。
【0065】
中でも配列番号:1、2、3、4、6、7、26、38、39、40、42、58または220に示される塩基配列を有する遺伝子は心拡張を呈する左心室組織で10倍以上の発現促進(増大)を示していた。このため、特に上記遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には配列番号:273によって例示されるアミノ酸を有するタンパク質を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが、心拡張又は当該心拡張を呈した心不全(心機能不全)の検出(診断)に有用であると思われる。
【0066】
さらに、配列番号:1〜64に示される塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比して、心肥大及び心拡張の左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。従って被験者の左心室組織における該遺伝子の発現産物(上記遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には配列番号:260、261、262、263、264または265によって例示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)の量が正常な左心室組織の発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上多いことが判定されれば、心肥大、心拡張又は当該心肥大・心拡張を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。この場合の心肥大/心拡張/心不全の検出(診断)には、各々に対応する配列番号:1〜64に示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質、具体的には配列番号:19、23、29、32、35または36に例示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264または265で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を特異的に認識する抗体を有する本発明の疾患マーカーが有用である。中でも配列番号:1、2、3、4、6、7、38、39、40または42に示される塩基配列を有する遺伝子は心拡張を呈する左心室組織で10倍以上の発現促進(増大)を示していた。このため、特に上記遺伝子によってコードされるタンパク質を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが、心肥大、心拡張又は当該心肥大、心拡張を呈した心不全(心機能不全)の検出(診断)に有用であると思われる。
【0067】
(2)心不全の検出方法(診断方法)
本発明は、前述する本発明の心不全の疾患マーカーを利用した心不全の診断方法を提供するものである。
【0068】
具体的には、本発明の検出方法は、被験者の生体試料、具体的には例えば左心室組織の一部をバイオプシなどで採取し、そこに含まれる心不全に関連する配列番号:1〜259のいずれかで示される塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル(発現量)、またはこれらの遺伝子に由来するタンパク質を検出し、その発現量またはそのタンパク質量を測定することにより、心不全の罹患の有無またはその程度を検出(診断)するものである。
【0069】
本発明の診断方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含むものである:
(a) 被験者の生体試料と本発明の疾患マーカーを接触させる工程、
(b) 生体試料中の配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル、またこれらいずれかの遺伝子によってコードされるタンパク質の量、具体的には配列番号:260〜286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質の量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の結果をもとに、心不全の罹患を判断する工程。
【0070】
ここで用いられる生体試料は、被験者の左心室組織、該組織から調製されるRNA若しくはそれからさらに調製されるポリヌクレオチド、または上記組織から調製されるタンパク質である。かかるRNA、ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、被験者の左心室組織の一部をバイオプシ等で採取し、そこから常法に従って調製することができる。
【0071】
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
【0072】
(2−1) 測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
診断に用いる生体試料としてRNAを利用する場合は、本発明の検出方法(診断方法)は該RNA中の配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。
【0073】
この場合、本発明の検出方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含むものである:
(a) 被験者の生体試料と本発明の疾患マーカーを接触させる工程、
(b) 上記工程によって本発明の疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを上記疾患マーカーを指標として測定する工程、及び
(c) (b)の結果をもとに、心不全の罹患を判断する工程。
【0074】
本発明の心不全の検出方法(診断方法)は、特に測定対象の生体試料としてRNAを利用して、該RNA中の配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。具体的には、上記検出する遺伝子の塩基配列に応じて、前述する本発明の疾患マーカー(配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチド)をプライマーまたはプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
【0075】
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプローブとして用いることによって、RNA中の配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、本発明の疾患マーカー(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された疾患マーカー(DNA)とRNAとの二重鎖を、疾患マーカーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II、富士フィルム社製)または蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham PharamciaBiotech社製)を用いて、該プロトコールに従って疾患マーカー(プローブDNA)を標識し、被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、疾患マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
【0076】
RT−PCR法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプライマーとして用いることによって、RNA中の配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現の有無や発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の疾患マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT−PCR Reagents (Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT−PCR反応液を調製し、ABI PRIME 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems 社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
【0077】
また、DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをDNAプローブ(1本鎖または2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに被験者の生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAとハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の疾患マーカーから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。また、上記DNAチップとして、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定が可能なDNAチップを用いることもできる。かかる遺伝子の発現レベルを検出、測定することができるDNAチップとしては、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A, B,C, D, Eを挙げることができる。かかるDNAチップを用いた、被験者RNA中の配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定については、実施例において詳細に説明する。
【0078】
(2−2) 測定対象物としてタンパク質を用いる場合
測定対象物としてタンパク質を用いる場合は、本発明の検出方法(診断方法)は生体試料中に存在する、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を検出し、その量(レベル)を測定することによって実施される。具体的には、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を認識する抗体を疾患マーカーとして用いてウエスタンブロット法などの公知方法で、上記タンパク質を検出、定量する方法を挙げることができる。
【0079】
ウエスタンブロット法は、一次抗体として上記の抗体を用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素や蛍光物質などで標識した標識抗体(一次抗体に結合する標識抗体)を用いて、標識し、該放射性同位元素若しくは蛍光物質由来のシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)若しくは蛍光検出器で検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明の上記疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System (Amersham Pharmacia Biotech 社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech 社製)で測定することもできる。
【0080】
(2−3) 心不全の診断
心不全の診断は、具体的には、被験者の左心室組織における配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル、または上記配列番号に示される塩基配列を有する遺伝子の発現産物であるタンパク質(具体的には配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)の量(レベル)を上記と対応する正常な左心室組織における当該遺伝子発現レベルまたは当該タンパク質の量(レベル)と比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
【0081】
この場合、正常な左心室組織から採取調製した生体試料(RNAまたはタンパク質)が必要であるが、これらは心不全に罹患していない人から提供された移植心あるいは死後の心臓等より本人の同意に基づいて採取された左心室組織から得ることができる。なお、ここでいう「心不全に罹患していない人」とは、少なくとも動悸や息切れ、呼吸困難、むくみなどの心不全の自覚症状がなく、他の検査方法、例えば超音波エコー検査、心電図、病理組織学的検査などの検査の結果、心不全でないと診断された人をいう。なお、当該「心不全に罹患していない人」から得られた左心室組織又は生体試料を以下、本明細書では単に正常な左心室組織又は生体試料という場合もある。
【0082】
被験者の左心室組織と正常な左心室組織(心肥大及び/又は心拡張を呈していない左心室組織)との遺伝子発現レベルまたは発現産物(タンパク質)の量(レベル)の比較は、被験者の生体試料と正常な左心室より採取調製された生体試料を対象とした測定を並行して行うことで実施できる。並行して行わない場合は、複数(少なくとも2つ、好ましくは3以上、より好ましくは5以上)の正常な左心室組織を用いて均一な測定条件で測定して得られた上記遺伝子の遺伝子発現レベル、若しくはこれらの遺伝子の発現産物であるタンパク質の量(レベル)の平均値または統計的中間値を予め求めておき、これを正常な左心室組織の遺伝子発現レベルまたはその発現産物(タンパク質)の量(正常値)として、これらを被験者における測定レベルまたは測定値と比較することできる。
【0083】
被験者が心不全であるかどうかの判断は、該被験者の左心室組織における配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベルまたは上記配列番号に示される塩基配列を有する遺伝子の発現産物であるタンパク質、例えば具体的には配列番号:260〜286で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の量(レベル)が、正常な左心室組織のそれらと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上多いか否かを指標として行うことができる。
【0084】
具体的には、被験者において、上記遺伝子のうち配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル、または上記配列番号に示される塩基配列を有する遺伝子の発現産物、例えば配列番号:260〜272で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の量(レベル)が、正常な左心室組織の上記に対応する遺伝子の遺伝子発現レベルまたは発現産物の量に比べて多い場合、該被験者について、心不全(心肥大または当該心肥大を呈した心不全)が疑われる。
また被験者において、前記遺伝子のうち配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル、または上記配列番号に示される塩基配列を有する遺伝子の発現産物、例えば具体的には配列番号:260〜265、273〜286で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の量(レベル)が、正常な左心室組織のそれらに対応する遺伝子の遺伝子発現レベルまたは発現産物の量(レベル)に比べて多い場合には、該被験者について心不全(心拡張または当該心拡張を呈した心不全)が疑われる。
【0085】
さらに、被験者において、前記遺伝子のうち配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル、または上記配列番号に示される塩基配列を有する遺伝子の発現産物、例えば具体的には配列番号:260〜265で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の量が、正常な左心室組織のそれらに対応する遺伝子の遺伝子発現レベルまたは発現産物の量に比べて多い場合には、該被験者について心不全(心肥大、心拡張または当該心肥大・心拡張を呈した心不全)が疑われる。
【0086】
(3)候補薬のスクリーニング方法
本発明は、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現を減少させる物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0087】
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a) 被験物質と配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞について配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) 上記の比較結果に基づいて、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0088】
かかるスクリーニングに用いられる細胞としては、内在性および外来性を問わず、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現する心筋細胞を挙げることができる。細胞としては、具体的には、心臓組織から取得される心筋細胞や繊維芽細胞、あるいはH9c2などの心筋様細胞株(American Type Culture Collectionから入手可能)などを挙げることができる。好ましくは心臓組織から取得される心筋細胞及び/又は繊維芽細胞である。特に、機械的な伸展負荷及び/又はカテコールアミン、エンドセリン、アンギオテンシンなどの液性因子による負荷を与えた心筋細胞及び/又は繊維芽細胞がより好ましい。
さらに本発明のスクリーニングに用いられる細胞の範疇には、細胞の集合体である組織も含まれる。
【0089】
候補物質となりえるものとしては、制限されないが、核酸(配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、スクリーニングは、具体的にはこれらの候補物質となり得る被験物質を含む試料(被験試料)を上記組織及び/または細胞と接触させて行うことができる。かかる被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物、およびこれらの混合物などが挙げられるが、これに制限されない。
【0090】
また、スクリーニングに際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つ本発明遺伝子を発現できる培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
【0091】
実施例に示すように、心肥大を呈する左心室組織においては、正常な左心室組織に比して、特異的に配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219の塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)の発現レベルの上昇(遺伝子発現の誘導・増大)が認められる。この知見から、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)の発現レベルの上昇(遺伝子発現の誘導、増大)は、心肥大または当該心肥大を呈した心不全(心機能不全)と関連していると考えられる。このため本発明には、心不全(心肥大、心不全)の改善または治療薬の探索を目的とした、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法が包含される。このスクリーニング方法によって、心不全の予防、改善ないし治療薬の有効成分となる候補物質が提供できる。
【0092】
なお、当該方法は:
(a) 被験物質と配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞について配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記対応する遺伝子の発現量と比較する工程、及び
(c) 上記の比較結果に基づいて、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を減少させる(遺伝子発現レベルを低下させる)被験物質を選択する工程、
が含まれる。
【0093】
また、実施例に示すように、心拡張を呈する左心室組織においては、正常な左心室組織に比して、特異的に配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259の塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現が誘導(増大)されている。この知見から、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現(促進・増大)は、心拡張又は当該心拡張を呈した心不全(心機能不全)と関連していると考えられる。このため本発明には、心不全(心拡張、心不全)の改善または治療薬の探索を目的とした、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現を抑制する物質のスクリーニング方法が包含される。このスクリーニング方法によって、心不全の予防、改善ないし治療薬の有効成分となる候補物質が提供できる。
【0094】
なお、当該方法は:
(a) 被験物質と配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞について配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、及び
(c) 上記の比較結果に基づいて、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を減少させる被験物質を選択する工程、
が含まれる。
【0095】
また実施例に示すように、心肥大及び心拡張を呈する左心室組織においては、正常な左心室組織に比して、特異的に配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64の塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)の発現が誘導(増大)されている。この知見から、配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)の発現(促進・増大)は、心肥大・心拡張及び当該心肥大・心拡張を呈した心不全(心機能不全)と関連していると考えられる。このため本発明には、心不全(心肥大、心拡張、心不全)の改善または治療薬の探索を目的とした、配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法が包含される。このスクリーニング方法によって、心不全の予防、改善ないし治療薬の有効成分となる候補物質が提供できる。
【0096】
なお、当該方法は:
(a) 被験物質と配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞について配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、及び
(c) 上記の比較結果に基づいて、配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を減少させる被験物質を選択する工程、
が含まれる。
【0097】
すなわち本発明のスクリーニング方法は、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)の発現誘導・増大が心肥大と関連していること、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現誘導・増大が心拡張と関連していること、そして配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)の発現誘導・増大が心肥大及び心拡張と関連していることを利用したものである。よって、これら心不全の緩和/抑制作用を有する(心不全に対して改善/治療効果を発揮する)物質の探求には、上記配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)またはそのホモログの発現レベルの減少若しくは発現抑制が、及び/又は上記配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)またはそのホモログの発現レベルの減少若しくは発現抑制が、及び/又は上記配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)またはそのホモログの発現レベルの減少若しくは発現抑制が指標とされる。
【0098】
すなわち本発明のスクリーニング方法は、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)の発現を抑制・減少させる物質を探索するか、及び/又は配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現を抑制・減少させる物質を探索するか、及び/又は配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)の発現を抑制・減少させる物質を探索するものであり、斯くして得られる物質を心不全の改善薬または治療薬の有効成分となる候補化合物として提供するものである。
【0099】
候補物質の選別は、具体的には配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)、配列番号:1〜64,220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)及び/又は配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)またはこれらのホモログが発現している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における上記各遺伝子の発現レベルが被験物質(候補物質)を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなること、上記各遺伝子の発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質によって誘導される発現が候補物質の存在によって抑制されること、すなわち発現誘導物質存在下で候補物質を接触させた細胞の遺伝子発現が発現誘導物質存在下で候補物質を接触させない対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることをもって、行うことができる。
【0100】
より具体的には、例えば心臓組織から取得される心筋細胞及び/又は繊維芽細胞を用いて心不全の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質をスクリーニングするには、種々の刺激、例えば機械的な伸展負荷及び/又はカテコールアミン、エンドセリン、アンギオテンシンなどの液性因子による負荷を与えた心筋細胞及び/又は繊維芽細胞(対照細胞)と、これらの刺激を与える際に被験物質を同時に加えた心筋細胞及び/又は繊維芽細胞とで、前記本発明遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現レベルを比較し、それぞれ、その発現レベルの減少を指標として候補物質を選別することができる。また、前記の如き種々の刺激を与えて既に本発明各遺伝子またはそのホモログが発現誘導された状態の心筋細胞及び/又は繊維芽細胞に被験物質を添加し、被験物質を添加しない対照の心筋細胞及び/又は繊維芽細胞と前記遺伝子の発現レベルを比較して、その発現レベルの低下を指標として候補物質を選別することもできる。
【0101】
このような遺伝子の発現レベルの検出及び定量は、前述した細胞から調製したRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと本発明疾患マーカーとを用いて、前記(2−1)項に記述したように、ノーザンブロット法、RT−PCR法など公知の方法の他、DNAチップなどを利用して実施できる。指標とする遺伝子発現レベルの変動(発現の抑制・減少又は誘導・増大)の程度は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における遺伝子I、遺伝子IIもしくは遺伝子III、またはこれらのホモログの発現が被験物質(候補物質)を添加しない対照細胞での発現量と比較して10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の変動(減少又は増大)を例示することができる。
【0102】
また本発明遺伝子またはそのホモログの発現レベルの検出及び定量は、当該遺伝子の発現を制御する遺伝子領域(発現制御領域)に、例えばルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を用いて、マーカー遺伝子由来のタンパク質の活性を測定することで実施することもできる。本発明遺伝子の発現抑制物質のスクリーニング方法には、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索する方法も包含されるものである。この意味において、本発明でいう配列番号:1〜259の塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの概念には、該遺伝子の発現制御領域とマーカー遺伝子との融合遺伝子が含まれる。
【0103】
なお、上記マーカー遺伝子としては、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が好ましく、具体的には上記のルシフェラーゼ遺伝子のほか、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子などのレポーター遺伝子もまた使用することができる。ここで本発明遺伝子またはそのホモログの発現制御領域としては、例えば該遺伝子の転写開始部位上流約1kb、好ましくは約2kbを用いることができる。融合遺伝子の作成、およびマーカー遺伝子由来の活性測定は公知の方法で行うことができる。
【0104】
本発明のスクリーニング方法は、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)の発現を抑制・減少させる物質を探索するか、及び/又は配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現を抑制・減少させる物質を探索するか、及び/又は配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)の発現を抑制・減少させる物質を探索することによって、心不全の改善薬または治療薬の有効成分となる候補化合物を提供するものである。スクリーニングの精度や正確性を高めるためには、被験物質による遺伝子発現レベルを上記遺伝子の2以上、好ましくは複数個の遺伝子、より好ましくは上記遺伝子群の4分の1以上、さらに好ましくは上記遺伝子群の半数以上の遺伝子について評価し、候補物質を選別することが望ましい。複数個の遺伝子について評価する場合には、個々の遺伝子での評価をスコア化し、総合的に心不全を診断することが可能である。例えば、一つの被験物質を用いて、上記の遺伝子の中から任意の10個の遺伝子について評価を行い、該被験物質がそのうちの9個以上の遺伝子に関して上記基準から心不全の改善薬または治療薬の有効成分となる候補化合物であると評価される場合、該被験物質は候補化合物である可能性が高いと判断できる。この場合、評価する遺伝子数、スコアあるいは判断基準は限定されない。
【0105】
以上のスクリーニング方法により被験物質から選別される物質は、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現抑制剤、または配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現抑制剤、または配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現抑制剤として位置づけることができる。これらの物質は、生体内において配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制・減少するか、または配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制・減少するか、または配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制・減少することによって、心筋細胞及び/又は繊維芽細胞の肥大及び/又は増殖を抑制し得ると考えられる。よって、これらの物質は、心不全を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補物質となる。
【0106】
斯くして選抜取得される被験物質は、心不全を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補となる。
【0107】
上記に記載する本発明のスクリーニング方法によって選別された候補物質は、さらに心不全モデル動物を用いた薬効試験、モデル動物および正常動物を用いた安全性/体内動態試験、さらに心不全患者への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的な心不全改善または治療薬を選別することができる。このようにして選別された物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができる。
【0108】
(4)心不全の改善・治療剤
本発明は、心不全の改善・治療剤を提供するものである。
【0109】
本発明は、配列番号:1〜219の塩基配列を有する遺伝子の発現が心肥大と関連しており、配列番号:1〜64、220〜259の塩基配列を有する遺伝子の発現が心拡張と関連しており、また配列番号1〜64の塩基配列を有する遺伝子の発現が心肥大・心拡張と関連しているという新たな知見から、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制若しくは減少させる物質、より具体的には(1)配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制若しくは減少させる物質、または(2)配列番号1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制若しくは減少させる物質、あるいは(3)配列番号1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制若しくは減少させる物質が、心肥大・心拡張といった心不全の改善または治療に有効であるという考えに基づくものである。すなわち、本発明の心不全の改善・治療剤は配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制若しくは減少させる物質、及び/または配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の抑制若しくは減少させる物質、及び/または配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の抑制若しくは減少させる物質を有効成分とするものである。
【0110】
当該有効成分となる配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現抑制(減少)物質、より具体的には配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現抑制(減少)物質、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現抑制(減少)物質、あるいは配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現抑制(減少)物質は、上記のスクリーニング方法を利用して選別されたもののみならず、選別された物質に関する情報に基づいて常法に従って化学・生化学的手法により、若しくは工業的に製造されたものであってもよい。
【0111】
かかる発現抑制(減少)物質は、そのままもしくは自体公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて経口投与または非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象または患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、1日投与用量として、数mg〜2g、好ましくは数十mg程度を、1日1〜数回にわけて投与することができる。
【0112】
また、上記有効成分とする物質がDNAによりコードされるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組み込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。更に、上記有効成分が配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドの場合は、そのままもしくは遺伝子治療用のベクターにこれを組み込むことにより、遺伝子治療を行うこともできる。これらの場合も、投与量、投与方法は患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0113】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0114】
実施例1 ヒト心肥大/心拡張を呈する左心室とヒト正常左心室での遺伝子発現の変動解析
病理学上心肥大を呈するヒト左心室組織3サンプル、心拡張を呈するヒト左心室組織4サンプルと、病理学上正常なヒト左心室組織3サンプルからtotal RNAを調製し、得られたtotal RNAを用いてDNAチップ解析を行った。DNAチップ解析はAffymetrix社Gene Chip Human Genome U95A,B,C,D,Eを用いて行った。具体的には、解析は、(1) total RNAからcDNAの調製、(2) 該cDNAからラベル化cRNAの調製、(3) ラベル化cRNAのフラグメント化、(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ、(5) プローブアレイの染色、(6) プローブアレイのスキャン、及び(7) 遺伝子発現解析、の手順で行った。
【0115】
(1) total RNAからcDNAの調製
心肥大を呈するヒト左心室組織3サンプル、心拡張を呈するヒト左心室組織4サンプルと正常なヒト左心室組織3サンプルから常法に従って調製した各total RNA 10μgとT7−(dT)24プライマー(Amersham社製)100pmolを含む11μLの混合液を、70℃、10分間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、SuperScript Choice System for cDNA Synthesis(Gibco−BRL社製)に含まれる5×First Strand cDNA Buffer 4μL、該キットに含まれる0.1M DTT (dithiothreitol)2μL、該キットに含まれる10mM dNTP Mix 1μLを添加し、42℃で2分間加熱した。更に、該キットに含まれるSuper ScriptII RT 2μL(400U)を添加し、42℃で1時間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、DEPC処理水(ナカライテスク社製、滅菌蒸留水)91μL、該キットに含まれる5×Second Strand Reaction Buffer 30μL、10mM dNTP Mix 3μL、該キットに含まれるE. coli DNA Ligase 1μL(10U)、該キットに含まれるE. coli DNA Polymerase I 4μL(40U)、および該キットに含まれるE. coli RNaseH 1μL(2U)を添加し、16℃で2時間反応させた。次いで、該キットに含まれるT4 DNA Polymerase 2μL(10U)を加え、16℃で5分間反応させた後、0.5M EDTA 10μLを添加した。次いで、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液(ニッポンジーン社製)162μLを添加し、混合した。該混合液を、予め室温、14,000rpm、30秒間遠心分離しておいたPhase Lock Gel Light(エッペンドルフ社製)に移し、室温で14,000rpm、2分間遠心分離した後、145μLの水層をエッペンドルフチューブに移した。得られた溶液に、7.5M酢酸アンモニウム溶液72.5μL、エタノール362.5μLを加えて混合した後、4℃で14,000rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、作製したcDNAを含むペレットを得た。
【0116】
その後、該ペレットに80%エタノール0.5mLを添加し、4℃で14,000rpm、5分間遠心分離した後、上清を捨てた。再度同様の操作を行った後、該ペレットを乾燥させ、DEPC処理水12μLに溶解した。
【0117】
以上の操作によって、心肥大を呈するヒト左心室組織3サンプル、心拡張を呈するヒト左心室組織4サンプルと正常なヒト左心室組織3サンプルから調製した各total RNAから、各cDNAを取得した。
【0118】
(2) cDNAからラベル化cRNAの調製
各cDNA溶液5μLに、DEPC処理水17μL、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10×HY Reaction Buffer 4μL、該キットに含まれる10×Biotin Labeled Ribonucleotides 4μL、該キットに含まれる10×DTT 4μL、該キットに含まれる10×RNase Inhibitor Mix 4μL、および該キットに含まれる20×T7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃で5時間反応させて、ラベル化cRNAを調製した。反応後、該反応液にDEPC処理水60μLを加えたのち、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて添付プロトコールに従い、調製したラベル化cRNAを精製した。
【0119】
(3) ラベル化cRNAのフラグメント化
各ラベル化cRNA 20μgを含む溶液に、5×Fragmentation Buffer(200mMトリス−酢酸 pH8.1(Sigma社製)、 500mM酢酸カリウム(Sigma社製)、150mM酢酸マグネシウム(Sigma社製))8μLを加えた反応液40μLを、94℃で35分間加熱した後、氷中に置いた。これによって、ラベル化cRNAをフラグメント化した。
【0120】
(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ
各フラグメント化cRNA 40μLに、5nM Control Oligo B2(Amersham社製)4μL、100×Control cRNA Cocktail 4μL、Herring sperm DNA(Promega社製)40μg、Acetylated BSA(Gibco−BRL社製)200μg、2×MES Hybridization Buffer(200mM MES、2M [Na+], 40mM EDTA、0.02% Tween20 (Pierce社製)、pH6.5〜6.7) 200μL、及びDEPC処理水144μLを混合し、400μLのハイブリカクテルを得た。得られた各ハイブリカクテルを99℃で5分間加熱し、更に45℃で5分間加熱した。加熱後、室温で14,000rpm、5分間遠心分離し、ハイブリカクテル上清を得た。
【0121】
一方、1×MESハイブリダイゼーションバッファーで満たしたHuman Genome U95プローブアレイ(Affymetrix社製)を、ハイブリオーブン内で、45℃、60rpmで10分間回転させた後、1×MESハイブリダイゼーションバッファーを除去してプローブアレイを調製した。上記で得られたハイブリカクテル上清200μLを該プローブアレイにそれぞれ添加し、ハイブリオーブン内で45℃、60rpmで16時間回転させ、フラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを得た。
【0122】
(5) プローブアレイの染色
上記で得られたハイブリダイズ済みプローブアレイそれぞれからハイブリカクテルを回収除去した後、Non−Stringent Wash Buffer(6×SSPE(20×SSPE(ナカライテスク社製)を希釈)、0.01%Tween20、0.005%Antifoam0−30(Sigma社製))で満たした。次にNon−Stringent Wash BufferおよびStringent Wash Buffer(100mM MES、0.1M NaCl、0.01%Tween20)をセットしたGeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置にフラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを装着した。その後染色プロトコールEuKGE−WS2に従って、1次染色液(10μg/mL Streptavidin Phycoerythrin (SAPE)(MolecuLar Probe社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl(Ambion社製)、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)、 2次染色液(100μg/mL Goat IgG (Sigma社製)、3μg/mL Biotinylated Anti−Streptavidin antibody (Vector Laboratories社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)により染色した。
【0123】
(6) プローブアレイのスキャン、 及び (7) 遺伝子発現解析
染色した各プローブアレイをHP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)に供し、染色パターンを読み取った。染色パターンをもとにGeneChip Workstation System(Affymetrix社製)によってプローブアレイ上の遺伝子の発現を解析した。次に、解析プロトコールに従ってNormalization、遺伝子発現の比較解析を行った。
【0124】
実施例2 心肥大及び/又は心拡張を呈するヒト左心室と正常ヒト左心室での遺伝子発現の変動解析
実施例1で行ったDNAチップ解析による遺伝子発現の比較解析結果から正常左心室組織に比べ、心肥大及び/又は心拡張を呈する左心室組織で5倍以上の発現増加を示したプローブを選抜した。心肥大、心拡張でそれぞれ発現変動を示したプローブの発現変動の増減および発現変動倍率を表1−3に示す。なお、表中、発現変動倍率は、Human Genome U95 Chipで解析した正常左心室組織の遺伝子発現量を1とした場合における心肥大を呈する左心室組織、心拡張を呈する左心室組織での遺伝子の発現量の増減を比で示すもので、減少の場合はマイナス(−)をつけて示す。表1−3には選抜されたプローブに対応する遺伝子の塩基配列を示す後記配列表の配列番号を併せて示す。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
表1−3の結果からわかるように、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心肥大を呈する左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。また、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心拡張を呈する左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。
配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。
以上に示すように、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心肥大を呈する左心室組織で発現が増大し、また配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心拡張を呈する左心室組織で発現が増大し、また配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で発現が増大していた。よってこれらのいずれかの遺伝子は、心肥大、心拡張またはこれらを伴う心不全に関するマーカー遺伝子として応用可能な遺伝子であると考えられた。また、これらの遺伝子を用いることによって心不全を緩和、抑制する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能である。
【0129】
実施例3 配列番号:1〜219の塩基配列を有する遺伝子の発現抑制剤のスクリーニング
心臓組織から取得される心筋細胞及び/又は繊維芽細胞を以下の条件で培養する。摘出した心臓組織を細切後、パンクレアチン、コラゲナーゼ、またはトリプシンなどの酵素で処理し、ピペッティングにより単細胞懸濁液を調製する。これをDMEM培地(10%非働化ウシ胎児血清含有))で希釈し、ゼラチンやコラーゲンなどでコートしたディッシュに播種し、CO2インキュベーター(5% CO2、37℃)内で30分以上培養後、ディッシュに付着した繊維芽細胞と付着していない心筋細胞に分離する。このようにして得た心筋細胞又は繊維芽細胞を96ウェルのプレートにサブコンフルエントとなるように播種し、CO2インキュベーター(5% CO2、37℃)内で培養する。その後、種々の刺激、例えば機械的な伸展負荷及び/又はカテコールアミン、エンドセリン、アンギオテンシンなどの液性因子による負荷を与え、同時にそれぞれ100μM、10μM、および1μMの濃度に調製した被験物質含有溶液を添加し、37℃、CO2濃度5%で2日間培養する。ここで、対照実験として、被験物質無添加の細胞についても同様に培養する(コントロール)。これらの各培養細胞より抽出したRNAを用いて実施例1に記載された方法で、配列番号:1〜219のいずれかに示される塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量を調べる。コントロールと比べて、配列番号:1〜219のいずれかに示される塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上減少している培養系に添加した被験物質を、心不全を緩和、抑制(改善、治療)する候補化合物として選択する。
実施例4 配列番号:1〜64、220〜259の塩基配列を有する遺伝子の発現誘導剤のスクリーニング
心臓組織から取得される心筋細胞及び/又は繊維芽細胞を以下の条件で培養する。摘出した心臓組織を細切後、パンクレアチン、コラゲナーゼ、またはトリプシンなどの酵素で処理し、ピペッティングにより単細胞懸濁液を調製する。これをDMEM培地(10%非働化ウシ胎児血清含有)で希釈し、ゼラチンやコラーゲンなどでコートしたディッシュに播種し、CO2インキュベーター(5% CO2、37℃)内で30分以上培養後、ディッシュに付着した繊維芽細胞と付着していない心筋細胞に分離する。このようにして得た心筋細胞又は繊維芽細胞を96ウェルのプレートにサブコンフルエントとなるように播種し、CO2インキュベーター(5% CO2、37℃)内で培養する。その後、種々の刺激、例えば機械的な伸展負荷及び/又はカテコールアミン、エンドセリン、アンギオテンシンなどの液性因子による負荷を与え、同時にそれぞれ100μM、10μM、および1μMの濃度に調製した被験物質含有溶液を添加し、37℃、CO2濃度5%で2日間培養する。ここで、対照実験として、被験物質無添加の細胞についても同様に培養する(コントロール)。これらの各培養細胞より抽出したRNAを用いて実施例1に記載された方法で、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかに示される塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量を調べる。コントロールと比べて、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかに示される塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上減少している培養系に添加した被験物質を、心不全を緩和、抑制(改善、治療)する候補化合物として選択する。
【0130】
【発明の効果】
本発明によって、心肥大及び/又は心拡張で発現が特異的に増大している遺伝子が明らかになった。かかる遺伝子は心不全の遺伝子診断に用いられるマーカー遺伝子(プローブ、プライマー)として有用である。かかるマーカー遺伝子によれば心不全であるかどうか、その原因を明らかにすることができ(診断精度が向上)、これによりより適切な治療を施すことが可能となる。すなわち、心不全の適切な治療のためのツールとして利用することができる。
【0131】
また、上記遺伝子の発現増加と心肥大及び/又は心拡張との関連性から、該遺伝子の発現を抑制する化合物は、上記心不全の治療薬として有用であると思われる。従って、本発明の遺伝子によれば、その発現の抑制を指標にすることによって、心不全の治療薬となり得る候補薬をスクリーニング選別することが可能である。すなわち、本発明は、心不全の治療薬の開発に有用である。
【0132】
【配列表】
【発明の属する技術分野】
本発明は心不全の診断に有用な疾患マーカーに関する。より詳細には、本発明は心肥大や心拡張を伴う疾患の遺伝子診断において、プライマーまたは検出プローブとして有効に利用できる疾患マーカーに関する。また本発明は、かかる疾患マーカーを利用した心不全の検出方法(診断方法)に関する。
【0002】
さらに本発明は、上記疾患マーカーを利用して、心不全の改善薬または治療薬として有効な物質をスクリーニングする方法、並びに該方法で調製される上記物質を有効成分とする心不全の改善薬または治療薬に関する。
【0003】
【従来の技術】
心不全は、心臓の収縮力や拡張力が低下し、心臓から身体に送り出される血液の量(心拍出量)が不足する状態をいう。冠動脈疾患、高血圧性心疾患、弁膜疾患、心筋症、先天性心疾患など、循環障害、弁膜障害、心筋障害を引き起こすあらゆる疾患が心不全の原因となり得、様々な心血管系疾患を原因疾患とする複雑な病態である。
【0004】
種々の原因疾患から心不全に至る過程において、特徴的な病理学的変化として組織の再構築(リモデリング)が挙げられ、心臓はしばしば2種の異なる形態(心肥大および心拡張)をとる。心肥大では、心筋細胞の容積増大及び/又は間質の増大による心室壁の肥厚を、また心拡張では、心筋繊維の伸長に伴う心内腔容積の増大を特徴とする。これらは、心臓に対する負荷に対して心拍出量を維持するための代償機構であるが、過剰な負荷が長期間持続すると代償機構が破綻し、最終的には心不全状態に陥る。心筋の肥大は、心収縮力の増大につながるが、多くの酸素や栄養を必要とするため、正常の心臓よりも虚血状態になりやすく、狭心症、心筋梗塞、不整脈などが発生しやすくなる。近年、心肥大は、独立した心血管疾患、心不全、全体死亡率の危険因子とされている。このため、心肥大及び/又は心拡張の発生に関与する遺伝子を同定することで、心肥大、心拡張さらには心不全の発生機序を解明しようとする試みがなされている。
【0005】
欧米における心不全患者数は現在約1700万人といわれており、医療経済上も深刻な社会負担となっている。高齢化社会到来に伴いさらに増加が予想されることから、現在その予防・治療法の開発が望まれている。本疾患に対する現在の治療薬としては、強心薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、β遮断薬などがあるが、これら既存の治療薬によっても心不全患者の生命予後およびQOL(Quality of life)が十分に改善されたとは言い難いのが現状である。また心不全は、その臨床・病理像から、発症機構は多様であり、多くの因子が関与することが予想されること、および様々な心血管系疾患を基礎疾患として発病する複雑な病態であることから、研究が困難である点が多いのが現状である。
【0006】
一方で、最近の医療現場では、心不全に限らず、個々の患者の症状に合わせて治療法を的確に選択することが望まれるようになってきている。高齢化社会でのQOL向上の必要性が認識されてきた近年では、特に、万人に共通した治療ではなく、個々の患者の症状に合わせて適切な治療が施されることが強く求められている。このような所謂テイラーメイド治療を行うためには、個々の疾患について患者の症状やその原因(遺伝的背景)を的確に反映する疾患マーカーが有用であり、その探索並びに開発を目指した研究が精力的に行われているのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、心不全の診断及び治療に有用な疾患マーカーを提供することを目的とする。より詳細には、本発明は心肥大や心拡張を伴う心不全を特異的に反映した疾患マーカーを提供することを目的とする。さらに本発明は該疾患マーカーを利用した心不全の検出方法(遺伝子診断方法)、該疾患の改善または治療に有用な薬物をスクリーニングする方法、並びに該疾患の改善または治療に有用な薬物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行っていたところ、後述する配列表において配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219で示される塩基配列(以下、本明細書において「配列番号:1〜219」ともいう。)を有する遺伝子が、正常の左心室組織における発現に比して心肥大を呈する左心室組織における発現が有意に促進されていること、また配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259で示される塩基配列(以下、本明細書において「配列番号:1〜64、220〜259」ともいう。)を有する遺伝子が、正常の左心室組織における発現に比して心拡張を呈する左心室組織における発現が有意に促進されていること、また配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64で示される塩基配列(以下、本明細書において「配列番号:1〜64」ともいう。)を有する遺伝子が、正常の左心室組織における発現に比して心肥大および心拡張を呈する左心室組織における発現が有意に促進されていることを見出した。これらのことから、本発明者らは、かかる遺伝子が心肥大や心拡張を伴う心不全の疾患マーカーであるとの確信を得た。本発明はかかる知見に基づいて開発されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記項1〜項24に掲げるものである:
項1. 配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、心不全の疾患マーカー。
項2. 心不全の検出においてプローブまたはプライマーとして使用される項1記載の疾患マーカー。
項3. 心肥大を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219で示されるいずれかの塩基配列に基づく疾患マーカーである項1または2に記載の疾患マーカー。
項4. 心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259で示されるいずれかの塩基配列に基づく疾患マーカーである項1または2に記載の疾患マーカー。
項5. 心肥大および心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64で示されるいずれかの塩基配列に基づく疾患マーカーである項1または2に記載の疾患マーカー。
項6. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、心不全の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと項1〜5のいずれかに記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果に基づいて、心不全の罹患を判断する工程。
項7. 心不全の罹患を判断する工程が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として判断するものである項6に記載の心不全の検出方法。
項8. 心肥大を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項3に記載のものである、項6または7に記載の方法。
項9. 心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項4に記載のものである、項6または7に記載の方法。
項10. 心肥大および心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項5に記載のものである、項6または7に記載の方法。
項11. 配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を認識する抗体を有する、心不全の疾患マーカー。
項12. 心不全の検出においてプローブとして使用される項11記載の疾患マーカー。
項13. 心肥大を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271および272で示されるいずれかのアミノ酸配列に基づく疾患マーカーである項11または12に記載の疾患マーカー。
項14. 心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:260、261、262、263、264、265、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285および286で示されるいずれかのアミノ酸配列に基づく疾患マーカーである項11または12に記載の疾患マーカー。
項15. 心肥大および心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:260、261、262、263、264および265で示されるいずれかのアミノ酸配列に基づく疾患マーカーである項11または12に記載の疾患マーカー。
項16. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、心不全の検出方法:
(a) 被験者の生体試料から調製されたタンパク質と、項11〜15のいずれかに記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b) 該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質またはその部分ペプチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の測定結果に基づいて、心不全の罹患を判断する工程。
項17. 心不全の罹患を判断する工程が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として判断するものである項16に記載の心不全の検出方法。
項18. 心肥大を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項13に記載のものである、項16または17に記載の方法。
項19. 心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項14に記載のものである、項16または17に記載の方法。
項20. 心肥大および心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが項15に記載のものである、項16または17に記載の方法。
項21. 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現を減少させる物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞の、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量を測定し、該発現量を被験物質に接触させない対照細胞の上記対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
項22. 心不全の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、項21に記載のスクリーニング方法。
項23. 配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制する物質を有効成分とする心不全の改善または治療剤。
項24. 配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制する物質が項21に記載のスクリーニング法により得られるものである、項23記載の心不全の改善または治療剤。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC−IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における慣用記号に従う。
【0011】
本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。なお、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
【0012】
また、当該「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば、同族体、変異体、誘導体など)をコードする「遺伝子」または「DNA」が包含される(本明細書においては、これらを総括して上記特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の「ホモログ」ともいう)。かかるホモログとしては、具体的には、後述する(1−1)項に記載のストリンジェントな条件で、前記特定塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の相補鎖とハイブリダイズするものを挙げることができる。
【0013】
例えば同族体をコードする遺伝子(ホモログ)としては、ヒト遺伝子に対応するマウスやラットなどの他生物種の遺伝子が例示できる。これらの遺伝子(ホモログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci.USA., 90: 5873−5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E−valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUniGene (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。結果として得られた他生物種遺伝子とヒト遺伝子との遺伝子ホモログの相関を示したリストから、ヒト遺伝子に該当するマウスやラットなどの他生物種の遺伝子を選抜することができる。なお、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
【0014】
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNAおよびDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
【0015】
本明細書において「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」には、特定の塩基配列で示される「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等である「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」(例えば、同族体、変異体、誘導体など)が包含される。なお、本明細書において、これらを上記特定のアミノ酸配列で示される「タンパク質」または「(ポリ)ペプチド」の「ホモログ」ともいう。例えば、上記同族体(ホモログ)としては、ヒトのタンパク質に該当するマウスやラットなどの他生物種のタンパク質が例示でき、これらはHomoloGene (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定された遺伝子(ホモログ)の塩基配列から演繹的に同定することができる。また、上記変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加および挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、かかる変異体としては、変異のないタンパク質または(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。
【0016】
本明細書でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、またはFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
【0017】
本明細書において「疾患マーカー」とは、心不全の罹患の有無若しくは罹患の程度を診断するために、また、心不全の改善、治療などに有用な候補物質をスクリーニングするために、直接または間接的に利用されるものをいう。これには、心不全の罹患に関連して生体内、特に左心室組織において、発現が変動する遺伝子またはタンパク質を特異的に認識し、また結合することのできる(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドまたは抗体が包含される。これらの(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチドおよび抗体は、上記性質に基づいて、生体内、特に左心室組織などで発現した上記遺伝子及びタンパク質を検出するためのプローブとして、また(オリゴ)ヌクレオチドは生体内、特に左心室組織などで発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
【0018】
本明細書において「心不全」とは、心機能不全のみならず、それに至る過程において心肥大および/または心拡張を呈した状態をも指すものである。すなわち本発明の「心不全」は、心肥大(心肥大を伴う疾患)や心拡張(心拡張を伴う疾患)をも含むものである。
【0019】
本発明は、前述するように、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219(配列番号:1〜219)に記載の塩基配列を有する遺伝子(以下、これらの遺伝子を総称して遺伝子Iともいう。)が、心肥大を呈する左心室組織で特異的に発現が増大していること、並びに配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259(配列番号:1〜64、220〜259)に記載の塩基配列を有する遺伝子(以下、これらの遺伝子を総称して遺伝子IIともいう。)が、心拡張を呈する左心室組織で特異的に発現が増大していること、そして配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64(配列番号:1〜64)に記載の塩基配列を有する遺伝子(以下、これらの遺伝子を総称して遺伝子IIIともいう。)が、心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で特異的に発現が増大していることを見出したことに基づくものである。
【0020】
従って、これらの遺伝子及びその発現産物〔タンパク質、(ポリ)(オリゴ)ペプチド〕は、心肥大や心拡張といった心不全の解明、診断、予防及び治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床学上、有用な情報や手段を得ることができる。また、これらの遺伝子及びその発現産物並びにそれらからの派生物(例えば、抗体など)は、上記心不全の治療、並びに該治療に有効に用いられる薬剤の開発に好適に利用することができる。さらに個体、特に個体の左心室組織における、上記遺伝子の発現またはその発現産物の検出、または該遺伝子の変異またはその発現不全の検出は、心不全の解明や診断に有効に利用することができる。
【0021】
以下、これらのポリヌクレオチド、並びにこれらの発現産物やそれらの派生物について、具体的な用途を説明する。
【0022】
(1)心不全の疾患マーカー及びその応用
(1−1) ポリヌクレオチド
本発明は、前述するように、心肥大を呈する左心室組織において、配列番号:1〜219の塩基配列を有する遺伝子が特異的に発現しているか、発現が特異的に増大しているという知見、並びに心拡張を呈する左心室組織において配列番号:1〜64、220〜259の塩基配列を有する遺伝子が特異的に増大しているという知見、並びに心肥大及び心拡張を呈する左心室組織において配列番号:1〜64の塩基配列を有する遺伝子が特異的に増大しているという知見を発端に、これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって上記心不全の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという発想に基づくものである。すなわち、本発明は、被験者における上記遺伝子の発現の有無またはその程度を検出することによって、被験者について心不全の罹患の有無または罹患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用なポリヌクレオチドを提供するものである。
【0023】
また、本発明のポリヌクレオチドは、後述の(3)項に記載するような心不全の予防、改善または治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
【0024】
かかる本発明の疾患マーカーは、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなることを特徴とするものである。
【0025】
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、上記各配列番号に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、または上記各塩基配列において少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:TおよびG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該正鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
【0026】
また、正鎖側のポリヌクレオチドには、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列またはその部分配列を有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
【0027】
さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されてもよい。
【0028】
本発明の心不全の疾患マーカーは、具体的には配列番号:1〜259のいずれかに記載される塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。また、配列番号:1〜259のいずれかで示される遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列若しくはその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、部分配列としては、上記全長配列若しくはその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも15個の連続した塩基長を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0029】
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法においては、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子またはこれらの遺伝子に由来するポリヌクレオチドが特異的に検出できること、またRT−PCR法においては配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはこれらの遺伝子に由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなく、当業者が上記検出物または生成物がこれらの遺伝子に由来するものであると判断できるものであればよい。
【0030】
そのような本発明の疾患マーカーは、検出(認識)する対象の遺伝子(配列番号:1〜259)に応じて、配列番号:1〜259のいずれかに示される塩基配列をもとに、例えばprimer 3(HYPERLINK http://www.genome.wi.mit.edu/cgi−bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。具体的には配列番号:1〜259のいずれかに示される塩基配列をprimer 3またはベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマーまたはプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマーまたはプローブとして使用することができる。
【0031】
本発明で用いる疾患マーカーは、上述するように連続する少なくとも15塩基の長さを有するものであればよいが、具体的にはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定することができる。
【0032】
(1−2)プローブまたはプライマーとしてのポリヌクレオチド
本発明の疾患マーカーは、上記各遺伝子の発現によって生じたRNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、または該RNAまたはそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。
【0033】
上記疾患マーカーを心不全の検出(遺伝子診断)においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。
【0034】
本発明の疾患マーカーは、ノーザンブロット法、RT−PCR法、in situハイブリダーゼーション法などといった、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマーまたはプローブとして利用することができ、これによって心不全に関連する配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することができる。
【0035】
なお、測定対象試料としては、使用する検出方法の種類に応じて適宜選択することができる。該試料は、例えば、被験者の左心室組織の一部をバイオプシ等で採取し、そこから常法に従って調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
【0036】
また、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の生体組織における発現レベルは、DNAチップを利用して検出あるいは定量することができる。この場合、本発明の疾患マーカーは当該DNAチップのプローブとして使用することができる(例えば、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A, B, C, D,Eの場合、25bpの長さのポリヌクレオチドプローブとして用いられる)。本発明の疾患マーカーをプローブとするDNAチップを、生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNAまたはRNAとハイブリダイズさせることにより、本発明の疾患マーカー(プローブ)と標識DNAまたはRNAとの複合体が形成される。該複合体を該標識DNAまたはRNAの標識を指標として検出することにより、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列からなる遺伝子の生体組織中での発現の有無または発現レベル(発現量)が評価できる。
【0037】
なお、上記DNAチップは、配列番号:1〜259のいずれかで示される塩基配列を有する遺伝子と結合し得る1種または2種以上の本発明疾患マーカーを含んでいればよい。複数の疾患マーカーを含むDNAチップの利用によれば、ひとつの生体試料について、同時に複数の遺伝子の発現の有無または発現レベルの評価が可能である。
【0038】
本発明の疾患マーカーは、心不全の診断や検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用した心不全の診断は、被験者の左心室組織と正常な左心室組織における配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。
【0039】
この場合、遺伝子発現レベルの違いには、発現のある/なしの違いだけでなく、被験者の左心室組織と正常な左心室組織の両者ともに発現がある場合でも、両者間の発現量の格差が2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。
【0040】
より具体的には、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218または219のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子は、心肥大の左心室組織において、正常な左心室組織の発現量と比べて5倍以上の発現増大を示した。従って被験者の左心室組織で特異的に発現しているか、或いは、該発現量が正常な左心室組織の発現量と比べて2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上増大していれば、被験者について、心肥大若しくは当該心肥大を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。この場合の心肥大/心不全の検出(診断)には、上記遺伝子に対応するいずれかに記載の塩基配列(配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218または219のいずれかに記載の塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチドおよび/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0041】
中でも、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、38、39、40、41、42、43、44または45のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心肥大を呈する左心室組織で10倍以上の発現増大を示しており、特に、配列番号:1、2、3、38、39または40のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心肥大を呈する左心室組織で20倍以上の発現増大を示していた。従って、上記遺伝子に対応するいずれかの塩基配列(配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、38、39、40、41、42、43、44または45のいずれかの塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチド及び/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0042】
一方、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比して、心拡張を呈する左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。従って被験者の左心室組織で特異的に発現しているか、或いは、該発現量が正常な左心室組織と比べて2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上増大していれば、被験者について心拡張又は当該心拡張を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。この場合の心拡張/心不全の検出(診断)には、上記遺伝子に対応するいずれかの塩基配列(配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかの塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチドおよび/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0043】
中でも、配列番号:1、2、3、4、6、7、26、38、39、40、42、58または220のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心拡張を呈する左心室組織で10倍以上の発現増大を示しており、特に、配列番号:2または39のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心拡張を呈する左心室組織で20倍以上の発現増大を示していた。従って、これらの遺伝子に対応するいずれかの塩基配列(配列番号:1、2、3、4、6、7、26、38、39、40、42、58または220のいずれかの塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチドおよび/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0044】
さらに、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63または64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比して、心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。従って被験者の左心室組織で特異的に発現しているか、或いは、該発現量が正常な左心室組織と比べて2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上増大していれば、被験者について心肥大、心拡張、又は当該心肥大・心拡張を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。この場合の心肥大/心拡張/心不全の検出(診断)には、上記遺伝子に対応するいずれかの塩基配列(配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63または64のいずれかの塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチド/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0045】
中でも、配列番号:1、2、3、4、6、7、38、39、40または42のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で10倍以上の発現増大を示しており、特に、配列番号:2または39のいずれかの塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で20倍以上の発現増大を示していた。従って、これらの遺伝子に対応するいずれかの塩基配列(配列番号:1、2、3、4、6、7、38、39、40または42のいずれかの塩基配列)において、連続する少なくとも15塩基長を有するポリヌクレオチドおよび/またはそれに相補的なポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカーが有用である。
【0046】
本発明において心不全の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に左心室組織における配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の少なくとも1つの発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。検出(診断)の精度や正確性を高めるためには、上記遺伝子群の2以上、好ましくは複数個の遺伝子、より好ましくは上記遺伝子群の4分の1以上、さらに好ましくは上記遺伝子群の半数以上の遺伝子について、その発現の有無または発現レベル(発現量)を評価することが望ましい。
【0047】
(1−3)抗体
また本発明は、心不全の疾患マーカーとして配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現産物(タンパク質)を特異的に認識することのできる抗体を提供する。
【0048】
本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、上記タンパク質を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよく、さらには当該タンパク質を構成するアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、更に好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
【0049】
これらのタンパク質としては、具体的には上記配列番号:1〜259に示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、またはこれらの遺伝子のうち、配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質が挙げることができる。なお、後者のタンパク質の具体的な態様としては、配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質が例示できる。
【0050】
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13)。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した上記タンパク質を用いて、または常法に従って当該タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した上記タンパク質、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
【0051】
また、抗体の作製に使用されるタンパク質は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号:1〜259)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。具体的には配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子、より具体的には、例えば配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子)が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって実施することができる。また、これらのタンパク質は、本発明により提供される遺伝子情報(配列番号1〜259)から常法によって得られるアミノ酸配列や本発明により提供されるアミノ酸配列情報(具体的に、例えば配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。
【0052】
なお、本発明のタンパク質には、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質)のみならず、その相同物も包含される。該相同物としては、上記遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列、例えば具体的には上記配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、それぞれのタンパク質の公知の機能と同等の生物学的機能を有するか、及び/または免疫学的活性において同等の活性を有するタンパク質を挙げることができる。
【0053】
なお、ここで配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質)の公知の機能と同等の生物学的機能を有するタンパク質としては、各々対応するタンパク質と生化学的または薬理学的機能において同等の機能を有するタンパク質を挙げることができる。また配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質)と免疫学的活性において同等の活性を有するタンパク質としては、適当な動物あるいはその細胞において特定の免疫反応を誘発し、かつ各対応するタンパク質に対する抗体と特異的に結合する能力を有するタンパク質を挙げることができる。
【0054】
なお、タンパク質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その生物学的機能及び/または免疫学的活性が保持される限り制限はない。生物学的機能や免疫学的活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また置換されるアミノ酸は、置換後に得られるタンパク質が、置換前のタンパク質(配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質))の生物学的機能及び/または免疫学的活性を保持している限り、特に制限されないが、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0055】
また本発明の抗体は、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、具体的には例えば配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質)(または当該タンパク質の相同物)の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて調製されるものであってもよい。かかる抗体誘導のために用いられオリゴペプチドは、機能的な生物活性を有することは要しないが、各々対応する上記のタンパク質と同様な免疫原特性を有するものであることが望ましい。好ましくはかかる特性を有し、配列番号:1〜259のいずれかで示される塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列、具体的には例えば配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかに示されるアミノ酸配列)において少なくとも連続する8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドを例示することができる。
【0056】
かかるポリペプチドに対する抗体の生成は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントなどがある。
【0057】
本発明の抗体は配列番号:1〜259のいずれかで示される塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)(または当該タンパク質の相同物)に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した上記タンパク質(その相同物を含む)を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内における上記タンパク質(その相同物を含む)発現の有無を検出するためのプローブとして有用である。
【0058】
具体的には、患者の左心室組織の一部をバイオプシ等で採取し、そこから常法に従ってタンパク質を調製して、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、上記抗体を常法に従ってプローブとして使用することによって、上記タンパク質を検出することができる。
【0059】
心不全の診断に際しては、被験者の左心室組織における配列番号:1〜259で示される塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)のいずれか少なくとも1つの量と、正常な左心室組織における当該タンパク質の量との違いを判定すればよい。この場合、タンパク量の違いには、タンパク質のある/なし、あるいはタンパク量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。
【0060】
例えば配列番号:1〜219に示される塩基配列を有する遺伝子、より具体的には配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140または147に例示される塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比して、心肥大を呈する左心室組織で5倍以上の発現誘導(増大)を示した。従って被験者の左心室組織の発現産物(上記遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271または272で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)の量が正常な左心室組織の発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上多いことが判定されれば、被験者について、心肥大又は当該心肥大を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。
【0061】
この場合の心肥大/心不全の検出(診断)には、各々に対応する配列番号:1〜219に示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質、より具体的には配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140または147に例示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271または272で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが有用である。
【0062】
中でも配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、38、39、40、41、42、43、44または45に示される塩基配列を有する遺伝子は正常な左心室組織に比べて心肥大を呈する左心室組織で10倍以上の発現誘導(増大)を示していた。このため、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、38、39、40、41、42、43、44または45に示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが心肥大又は当該心肥大を呈した心不全(心機能不全)の検出(診断)に有用であると思われる。
【0063】
一方、配列番号:1〜64、220〜259に示される塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比して、心拡張の左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。従って被験者の左心室組織における該遺伝子の発現産物(上記遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には配列番号:260、261、262、263、264、265、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286によって例示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)の量が正常な左心室組織での発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上多いことが判定されれば、心拡張又は当該心拡張を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。
【0064】
この場合の心拡張/心不全の検出(診断)には、各々に対応する配列番号:1〜64、220〜259に示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質、具体的には配列番号:19、23、29、32、35、36、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に例示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を特異的に認識する抗体を有する本発明の疾患マーカーが有用である。
【0065】
中でも配列番号:1、2、3、4、6、7、26、38、39、40、42、58または220に示される塩基配列を有する遺伝子は心拡張を呈する左心室組織で10倍以上の発現促進(増大)を示していた。このため、特に上記遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には配列番号:273によって例示されるアミノ酸を有するタンパク質を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが、心拡張又は当該心拡張を呈した心不全(心機能不全)の検出(診断)に有用であると思われる。
【0066】
さらに、配列番号:1〜64に示される塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比して、心肥大及び心拡張の左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。従って被験者の左心室組織における該遺伝子の発現産物(上記遺伝子によってコードされるタンパク質、具体的には配列番号:260、261、262、263、264または265によって例示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)の量が正常な左心室組織の発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上多いことが判定されれば、心肥大、心拡張又は当該心肥大・心拡張を呈した心不全(心機能不全)の罹患が疑われる。この場合の心肥大/心拡張/心不全の検出(診断)には、各々に対応する配列番号:1〜64に示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質、具体的には配列番号:19、23、29、32、35または36に例示される塩基配列を有する遺伝子がコードするタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264または265で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を特異的に認識する抗体を有する本発明の疾患マーカーが有用である。中でも配列番号:1、2、3、4、6、7、38、39、40または42に示される塩基配列を有する遺伝子は心拡張を呈する左心室組織で10倍以上の発現促進(増大)を示していた。このため、特に上記遺伝子によってコードされるタンパク質を特異的に認識する抗体を有する疾患マーカーが、心肥大、心拡張又は当該心肥大、心拡張を呈した心不全(心機能不全)の検出(診断)に有用であると思われる。
【0067】
(2)心不全の検出方法(診断方法)
本発明は、前述する本発明の心不全の疾患マーカーを利用した心不全の診断方法を提供するものである。
【0068】
具体的には、本発明の検出方法は、被験者の生体試料、具体的には例えば左心室組織の一部をバイオプシなどで採取し、そこに含まれる心不全に関連する配列番号:1〜259のいずれかで示される塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル(発現量)、またはこれらの遺伝子に由来するタンパク質を検出し、その発現量またはそのタンパク質量を測定することにより、心不全の罹患の有無またはその程度を検出(診断)するものである。
【0069】
本発明の診断方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含むものである:
(a) 被験者の生体試料と本発明の疾患マーカーを接触させる工程、
(b) 生体試料中の配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル、またこれらいずれかの遺伝子によってコードされるタンパク質の量、具体的には配列番号:260〜286のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質の量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の結果をもとに、心不全の罹患を判断する工程。
【0070】
ここで用いられる生体試料は、被験者の左心室組織、該組織から調製されるRNA若しくはそれからさらに調製されるポリヌクレオチド、または上記組織から調製されるタンパク質である。かかるRNA、ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、被験者の左心室組織の一部をバイオプシ等で採取し、そこから常法に従って調製することができる。
【0071】
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
【0072】
(2−1) 測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
診断に用いる生体試料としてRNAを利用する場合は、本発明の検出方法(診断方法)は該RNA中の配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。
【0073】
この場合、本発明の検出方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含むものである:
(a) 被験者の生体試料と本発明の疾患マーカーを接触させる工程、
(b) 上記工程によって本発明の疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを上記疾患マーカーを指標として測定する工程、及び
(c) (b)の結果をもとに、心不全の罹患を判断する工程。
【0074】
本発明の心不全の検出方法(診断方法)は、特に測定対象の生体試料としてRNAを利用して、該RNA中の配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。具体的には、上記検出する遺伝子の塩基配列に応じて、前述する本発明の疾患マーカー(配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチド)をプライマーまたはプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
【0075】
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプローブとして用いることによって、RNA中の配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、本発明の疾患マーカー(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された疾患マーカー(DNA)とRNAとの二重鎖を、疾患マーカーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II、富士フィルム社製)または蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham PharamciaBiotech社製)を用いて、該プロトコールに従って疾患マーカー(プローブDNA)を標識し、被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、疾患マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
【0076】
RT−PCR法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプライマーとして用いることによって、RNA中の配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現の有無や発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の疾患マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT−PCR Reagents (Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT−PCR反応液を調製し、ABI PRIME 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems 社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
【0077】
また、DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをDNAプローブ(1本鎖または2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに被験者の生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAとハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の疾患マーカーから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。また、上記DNAチップとして、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定が可能なDNAチップを用いることもできる。かかる遺伝子の発現レベルを検出、測定することができるDNAチップとしては、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A, B,C, D, Eを挙げることができる。かかるDNAチップを用いた、被験者RNA中の配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定については、実施例において詳細に説明する。
【0078】
(2−2) 測定対象物としてタンパク質を用いる場合
測定対象物としてタンパク質を用いる場合は、本発明の検出方法(診断方法)は生体試料中に存在する、配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を検出し、その量(レベル)を測定することによって実施される。具体的には、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、または配列番号:19、23、29、32、35、36、71、102、113、122、133、140、147、220、221、223、224、225、226、231、233、236、237、241、242、243または246に具体的に例示されるいずれかの塩基配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質(配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)を認識する抗体を疾患マーカーとして用いてウエスタンブロット法などの公知方法で、上記タンパク質を検出、定量する方法を挙げることができる。
【0079】
ウエスタンブロット法は、一次抗体として上記の抗体を用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素や蛍光物質などで標識した標識抗体(一次抗体に結合する標識抗体)を用いて、標識し、該放射性同位元素若しくは蛍光物質由来のシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)若しくは蛍光検出器で検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明の上記疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System (Amersham Pharmacia Biotech 社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech 社製)で測定することもできる。
【0080】
(2−3) 心不全の診断
心不全の診断は、具体的には、被験者の左心室組織における配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル、または上記配列番号に示される塩基配列を有する遺伝子の発現産物であるタンパク質(具体的には配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質)の量(レベル)を上記と対応する正常な左心室組織における当該遺伝子発現レベルまたは当該タンパク質の量(レベル)と比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
【0081】
この場合、正常な左心室組織から採取調製した生体試料(RNAまたはタンパク質)が必要であるが、これらは心不全に罹患していない人から提供された移植心あるいは死後の心臓等より本人の同意に基づいて採取された左心室組織から得ることができる。なお、ここでいう「心不全に罹患していない人」とは、少なくとも動悸や息切れ、呼吸困難、むくみなどの心不全の自覚症状がなく、他の検査方法、例えば超音波エコー検査、心電図、病理組織学的検査などの検査の結果、心不全でないと診断された人をいう。なお、当該「心不全に罹患していない人」から得られた左心室組織又は生体試料を以下、本明細書では単に正常な左心室組織又は生体試料という場合もある。
【0082】
被験者の左心室組織と正常な左心室組織(心肥大及び/又は心拡張を呈していない左心室組織)との遺伝子発現レベルまたは発現産物(タンパク質)の量(レベル)の比較は、被験者の生体試料と正常な左心室より採取調製された生体試料を対象とした測定を並行して行うことで実施できる。並行して行わない場合は、複数(少なくとも2つ、好ましくは3以上、より好ましくは5以上)の正常な左心室組織を用いて均一な測定条件で測定して得られた上記遺伝子の遺伝子発現レベル、若しくはこれらの遺伝子の発現産物であるタンパク質の量(レベル)の平均値または統計的中間値を予め求めておき、これを正常な左心室組織の遺伝子発現レベルまたはその発現産物(タンパク質)の量(正常値)として、これらを被験者における測定レベルまたは測定値と比較することできる。
【0083】
被験者が心不全であるかどうかの判断は、該被験者の左心室組織における配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベルまたは上記配列番号に示される塩基配列を有する遺伝子の発現産物であるタンパク質、例えば具体的には配列番号:260〜286で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の量(レベル)が、正常な左心室組織のそれらと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上多いか否かを指標として行うことができる。
【0084】
具体的には、被験者において、上記遺伝子のうち配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル、または上記配列番号に示される塩基配列を有する遺伝子の発現産物、例えば配列番号:260〜272で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の量(レベル)が、正常な左心室組織の上記に対応する遺伝子の遺伝子発現レベルまたは発現産物の量に比べて多い場合、該被験者について、心不全(心肥大または当該心肥大を呈した心不全)が疑われる。
また被験者において、前記遺伝子のうち配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル、または上記配列番号に示される塩基配列を有する遺伝子の発現産物、例えば具体的には配列番号:260〜265、273〜286で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の量(レベル)が、正常な左心室組織のそれらに対応する遺伝子の遺伝子発現レベルまたは発現産物の量(レベル)に比べて多い場合には、該被験者について心不全(心拡張または当該心拡張を呈した心不全)が疑われる。
【0085】
さらに、被験者において、前記遺伝子のうち配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現レベル、または上記配列番号に示される塩基配列を有する遺伝子の発現産物、例えば具体的には配列番号:260〜265で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の量が、正常な左心室組織のそれらに対応する遺伝子の遺伝子発現レベルまたは発現産物の量に比べて多い場合には、該被験者について心不全(心肥大、心拡張または当該心肥大・心拡張を呈した心不全)が疑われる。
【0086】
(3)候補薬のスクリーニング方法
本発明は、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現を減少させる物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0087】
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a) 被験物質と配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞について配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) 上記の比較結果に基づいて、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0088】
かかるスクリーニングに用いられる細胞としては、内在性および外来性を問わず、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現する心筋細胞を挙げることができる。細胞としては、具体的には、心臓組織から取得される心筋細胞や繊維芽細胞、あるいはH9c2などの心筋様細胞株(American Type Culture Collectionから入手可能)などを挙げることができる。好ましくは心臓組織から取得される心筋細胞及び/又は繊維芽細胞である。特に、機械的な伸展負荷及び/又はカテコールアミン、エンドセリン、アンギオテンシンなどの液性因子による負荷を与えた心筋細胞及び/又は繊維芽細胞がより好ましい。
さらに本発明のスクリーニングに用いられる細胞の範疇には、細胞の集合体である組織も含まれる。
【0089】
候補物質となりえるものとしては、制限されないが、核酸(配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、スクリーニングは、具体的にはこれらの候補物質となり得る被験物質を含む試料(被験試料)を上記組織及び/または細胞と接触させて行うことができる。かかる被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物、およびこれらの混合物などが挙げられるが、これに制限されない。
【0090】
また、スクリーニングに際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つ本発明遺伝子を発現できる培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
【0091】
実施例に示すように、心肥大を呈する左心室組織においては、正常な左心室組織に比して、特異的に配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219の塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)の発現レベルの上昇(遺伝子発現の誘導・増大)が認められる。この知見から、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)の発現レベルの上昇(遺伝子発現の誘導、増大)は、心肥大または当該心肥大を呈した心不全(心機能不全)と関連していると考えられる。このため本発明には、心不全(心肥大、心不全)の改善または治療薬の探索を目的とした、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法が包含される。このスクリーニング方法によって、心不全の予防、改善ないし治療薬の有効成分となる候補物質が提供できる。
【0092】
なお、当該方法は:
(a) 被験物質と配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞について配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記対応する遺伝子の発現量と比較する工程、及び
(c) 上記の比較結果に基づいて、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を減少させる(遺伝子発現レベルを低下させる)被験物質を選択する工程、
が含まれる。
【0093】
また、実施例に示すように、心拡張を呈する左心室組織においては、正常な左心室組織に比して、特異的に配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259の塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現が誘導(増大)されている。この知見から、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現(促進・増大)は、心拡張又は当該心拡張を呈した心不全(心機能不全)と関連していると考えられる。このため本発明には、心不全(心拡張、心不全)の改善または治療薬の探索を目的とした、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現を抑制する物質のスクリーニング方法が包含される。このスクリーニング方法によって、心不全の予防、改善ないし治療薬の有効成分となる候補物質が提供できる。
【0094】
なお、当該方法は:
(a) 被験物質と配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞について配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、及び
(c) 上記の比較結果に基づいて、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を減少させる被験物質を選択する工程、
が含まれる。
【0095】
また実施例に示すように、心肥大及び心拡張を呈する左心室組織においては、正常な左心室組織に比して、特異的に配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64の塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)の発現が誘導(増大)されている。この知見から、配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)の発現(促進・増大)は、心肥大・心拡張及び当該心肥大・心拡張を呈した心不全(心機能不全)と関連していると考えられる。このため本発明には、心不全(心肥大、心拡張、心不全)の改善または治療薬の探索を目的とした、配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法が包含される。このスクリーニング方法によって、心不全の予防、改善ないし治療薬の有効成分となる候補物質が提供できる。
【0096】
なお、当該方法は:
(a) 被験物質と配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞について配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞の上記遺伝子の発現量と比較する工程、及び
(c) 上記の比較結果に基づいて、配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現量を減少させる被験物質を選択する工程、
が含まれる。
【0097】
すなわち本発明のスクリーニング方法は、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)の発現誘導・増大が心肥大と関連していること、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現誘導・増大が心拡張と関連していること、そして配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)の発現誘導・増大が心肥大及び心拡張と関連していることを利用したものである。よって、これら心不全の緩和/抑制作用を有する(心不全に対して改善/治療効果を発揮する)物質の探求には、上記配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)またはそのホモログの発現レベルの減少若しくは発現抑制が、及び/又は上記配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)またはそのホモログの発現レベルの減少若しくは発現抑制が、及び/又は上記配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)またはそのホモログの発現レベルの減少若しくは発現抑制が指標とされる。
【0098】
すなわち本発明のスクリーニング方法は、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)の発現を抑制・減少させる物質を探索するか、及び/又は配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現を抑制・減少させる物質を探索するか、及び/又は配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)の発現を抑制・減少させる物質を探索するものであり、斯くして得られる物質を心不全の改善薬または治療薬の有効成分となる候補化合物として提供するものである。
【0099】
候補物質の選別は、具体的には配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)、配列番号:1〜64,220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)及び/又は配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)またはこれらのホモログが発現している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における上記各遺伝子の発現レベルが被験物質(候補物質)を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなること、上記各遺伝子の発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質によって誘導される発現が候補物質の存在によって抑制されること、すなわち発現誘導物質存在下で候補物質を接触させた細胞の遺伝子発現が発現誘導物質存在下で候補物質を接触させない対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることをもって、行うことができる。
【0100】
より具体的には、例えば心臓組織から取得される心筋細胞及び/又は繊維芽細胞を用いて心不全の改善薬または治療薬の有効成分となる候補物質をスクリーニングするには、種々の刺激、例えば機械的な伸展負荷及び/又はカテコールアミン、エンドセリン、アンギオテンシンなどの液性因子による負荷を与えた心筋細胞及び/又は繊維芽細胞(対照細胞)と、これらの刺激を与える際に被験物質を同時に加えた心筋細胞及び/又は繊維芽細胞とで、前記本発明遺伝子またはそのホモログの遺伝子発現レベルを比較し、それぞれ、その発現レベルの減少を指標として候補物質を選別することができる。また、前記の如き種々の刺激を与えて既に本発明各遺伝子またはそのホモログが発現誘導された状態の心筋細胞及び/又は繊維芽細胞に被験物質を添加し、被験物質を添加しない対照の心筋細胞及び/又は繊維芽細胞と前記遺伝子の発現レベルを比較して、その発現レベルの低下を指標として候補物質を選別することもできる。
【0101】
このような遺伝子の発現レベルの検出及び定量は、前述した細胞から調製したRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと本発明疾患マーカーとを用いて、前記(2−1)項に記述したように、ノーザンブロット法、RT−PCR法など公知の方法の他、DNAチップなどを利用して実施できる。指標とする遺伝子発現レベルの変動(発現の抑制・減少又は誘導・増大)の程度は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における遺伝子I、遺伝子IIもしくは遺伝子III、またはこれらのホモログの発現が被験物質(候補物質)を添加しない対照細胞での発現量と比較して10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の変動(減少又は増大)を例示することができる。
【0102】
また本発明遺伝子またはそのホモログの発現レベルの検出及び定量は、当該遺伝子の発現を制御する遺伝子領域(発現制御領域)に、例えばルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を用いて、マーカー遺伝子由来のタンパク質の活性を測定することで実施することもできる。本発明遺伝子の発現抑制物質のスクリーニング方法には、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索する方法も包含されるものである。この意味において、本発明でいう配列番号:1〜259の塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの概念には、該遺伝子の発現制御領域とマーカー遺伝子との融合遺伝子が含まれる。
【0103】
なお、上記マーカー遺伝子としては、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が好ましく、具体的には上記のルシフェラーゼ遺伝子のほか、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子などのレポーター遺伝子もまた使用することができる。ここで本発明遺伝子またはそのホモログの発現制御領域としては、例えば該遺伝子の転写開始部位上流約1kb、好ましくは約2kbを用いることができる。融合遺伝子の作成、およびマーカー遺伝子由来の活性測定は公知の方法で行うことができる。
【0104】
本発明のスクリーニング方法は、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子I)の発現を抑制・減少させる物質を探索するか、及び/又は配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子II)の発現を抑制・減少させる物質を探索するか、及び/又は配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子(遺伝子III)の発現を抑制・減少させる物質を探索することによって、心不全の改善薬または治療薬の有効成分となる候補化合物を提供するものである。スクリーニングの精度や正確性を高めるためには、被験物質による遺伝子発現レベルを上記遺伝子の2以上、好ましくは複数個の遺伝子、より好ましくは上記遺伝子群の4分の1以上、さらに好ましくは上記遺伝子群の半数以上の遺伝子について評価し、候補物質を選別することが望ましい。複数個の遺伝子について評価する場合には、個々の遺伝子での評価をスコア化し、総合的に心不全を診断することが可能である。例えば、一つの被験物質を用いて、上記の遺伝子の中から任意の10個の遺伝子について評価を行い、該被験物質がそのうちの9個以上の遺伝子に関して上記基準から心不全の改善薬または治療薬の有効成分となる候補化合物であると評価される場合、該被験物質は候補化合物である可能性が高いと判断できる。この場合、評価する遺伝子数、スコアあるいは判断基準は限定されない。
【0105】
以上のスクリーニング方法により被験物質から選別される物質は、配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現抑制剤、または配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現抑制剤、または配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の遺伝子発現抑制剤として位置づけることができる。これらの物質は、生体内において配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制・減少するか、または配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制・減少するか、または配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制・減少することによって、心筋細胞及び/又は繊維芽細胞の肥大及び/又は増殖を抑制し得ると考えられる。よって、これらの物質は、心不全を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補物質となる。
【0106】
斯くして選抜取得される被験物質は、心不全を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補となる。
【0107】
上記に記載する本発明のスクリーニング方法によって選別された候補物質は、さらに心不全モデル動物を用いた薬効試験、モデル動物および正常動物を用いた安全性/体内動態試験、さらに心不全患者への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的な心不全改善または治療薬を選別することができる。このようにして選別された物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができる。
【0108】
(4)心不全の改善・治療剤
本発明は、心不全の改善・治療剤を提供するものである。
【0109】
本発明は、配列番号:1〜219の塩基配列を有する遺伝子の発現が心肥大と関連しており、配列番号:1〜64、220〜259の塩基配列を有する遺伝子の発現が心拡張と関連しており、また配列番号1〜64の塩基配列を有する遺伝子の発現が心肥大・心拡張と関連しているという新たな知見から、配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制若しくは減少させる物質、より具体的には(1)配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制若しくは減少させる物質、または(2)配列番号1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制若しくは減少させる物質、あるいは(3)配列番号1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制若しくは減少させる物質が、心肥大・心拡張といった心不全の改善または治療に有効であるという考えに基づくものである。すなわち、本発明の心不全の改善・治療剤は配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制若しくは減少させる物質、及び/または配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の抑制若しくは減少させる物質、及び/または配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の抑制若しくは減少させる物質を有効成分とするものである。
【0110】
当該有効成分となる配列番号:1〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現抑制(減少)物質、より具体的には配列番号:1〜219のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現抑制(減少)物質、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現抑制(減少)物質、あるいは配列番号:1〜64のいずれかの塩基配列を有する遺伝子の発現抑制(減少)物質は、上記のスクリーニング方法を利用して選別されたもののみならず、選別された物質に関する情報に基づいて常法に従って化学・生化学的手法により、若しくは工業的に製造されたものであってもよい。
【0111】
かかる発現抑制(減少)物質は、そのままもしくは自体公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて経口投与または非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象または患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、1日投与用量として、数mg〜2g、好ましくは数十mg程度を、1日1〜数回にわけて投与することができる。
【0112】
また、上記有効成分とする物質がDNAによりコードされるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組み込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。更に、上記有効成分が配列番号:1〜259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドの場合は、そのままもしくは遺伝子治療用のベクターにこれを組み込むことにより、遺伝子治療を行うこともできる。これらの場合も、投与量、投与方法は患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0113】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0114】
実施例1 ヒト心肥大/心拡張を呈する左心室とヒト正常左心室での遺伝子発現の変動解析
病理学上心肥大を呈するヒト左心室組織3サンプル、心拡張を呈するヒト左心室組織4サンプルと、病理学上正常なヒト左心室組織3サンプルからtotal RNAを調製し、得られたtotal RNAを用いてDNAチップ解析を行った。DNAチップ解析はAffymetrix社Gene Chip Human Genome U95A,B,C,D,Eを用いて行った。具体的には、解析は、(1) total RNAからcDNAの調製、(2) 該cDNAからラベル化cRNAの調製、(3) ラベル化cRNAのフラグメント化、(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ、(5) プローブアレイの染色、(6) プローブアレイのスキャン、及び(7) 遺伝子発現解析、の手順で行った。
【0115】
(1) total RNAからcDNAの調製
心肥大を呈するヒト左心室組織3サンプル、心拡張を呈するヒト左心室組織4サンプルと正常なヒト左心室組織3サンプルから常法に従って調製した各total RNA 10μgとT7−(dT)24プライマー(Amersham社製)100pmolを含む11μLの混合液を、70℃、10分間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、SuperScript Choice System for cDNA Synthesis(Gibco−BRL社製)に含まれる5×First Strand cDNA Buffer 4μL、該キットに含まれる0.1M DTT (dithiothreitol)2μL、該キットに含まれる10mM dNTP Mix 1μLを添加し、42℃で2分間加熱した。更に、該キットに含まれるSuper ScriptII RT 2μL(400U)を添加し、42℃で1時間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、DEPC処理水(ナカライテスク社製、滅菌蒸留水)91μL、該キットに含まれる5×Second Strand Reaction Buffer 30μL、10mM dNTP Mix 3μL、該キットに含まれるE. coli DNA Ligase 1μL(10U)、該キットに含まれるE. coli DNA Polymerase I 4μL(40U)、および該キットに含まれるE. coli RNaseH 1μL(2U)を添加し、16℃で2時間反応させた。次いで、該キットに含まれるT4 DNA Polymerase 2μL(10U)を加え、16℃で5分間反応させた後、0.5M EDTA 10μLを添加した。次いで、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液(ニッポンジーン社製)162μLを添加し、混合した。該混合液を、予め室温、14,000rpm、30秒間遠心分離しておいたPhase Lock Gel Light(エッペンドルフ社製)に移し、室温で14,000rpm、2分間遠心分離した後、145μLの水層をエッペンドルフチューブに移した。得られた溶液に、7.5M酢酸アンモニウム溶液72.5μL、エタノール362.5μLを加えて混合した後、4℃で14,000rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、作製したcDNAを含むペレットを得た。
【0116】
その後、該ペレットに80%エタノール0.5mLを添加し、4℃で14,000rpm、5分間遠心分離した後、上清を捨てた。再度同様の操作を行った後、該ペレットを乾燥させ、DEPC処理水12μLに溶解した。
【0117】
以上の操作によって、心肥大を呈するヒト左心室組織3サンプル、心拡張を呈するヒト左心室組織4サンプルと正常なヒト左心室組織3サンプルから調製した各total RNAから、各cDNAを取得した。
【0118】
(2) cDNAからラベル化cRNAの調製
各cDNA溶液5μLに、DEPC処理水17μL、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10×HY Reaction Buffer 4μL、該キットに含まれる10×Biotin Labeled Ribonucleotides 4μL、該キットに含まれる10×DTT 4μL、該キットに含まれる10×RNase Inhibitor Mix 4μL、および該キットに含まれる20×T7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃で5時間反応させて、ラベル化cRNAを調製した。反応後、該反応液にDEPC処理水60μLを加えたのち、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて添付プロトコールに従い、調製したラベル化cRNAを精製した。
【0119】
(3) ラベル化cRNAのフラグメント化
各ラベル化cRNA 20μgを含む溶液に、5×Fragmentation Buffer(200mMトリス−酢酸 pH8.1(Sigma社製)、 500mM酢酸カリウム(Sigma社製)、150mM酢酸マグネシウム(Sigma社製))8μLを加えた反応液40μLを、94℃で35分間加熱した後、氷中に置いた。これによって、ラベル化cRNAをフラグメント化した。
【0120】
(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ
各フラグメント化cRNA 40μLに、5nM Control Oligo B2(Amersham社製)4μL、100×Control cRNA Cocktail 4μL、Herring sperm DNA(Promega社製)40μg、Acetylated BSA(Gibco−BRL社製)200μg、2×MES Hybridization Buffer(200mM MES、2M [Na+], 40mM EDTA、0.02% Tween20 (Pierce社製)、pH6.5〜6.7) 200μL、及びDEPC処理水144μLを混合し、400μLのハイブリカクテルを得た。得られた各ハイブリカクテルを99℃で5分間加熱し、更に45℃で5分間加熱した。加熱後、室温で14,000rpm、5分間遠心分離し、ハイブリカクテル上清を得た。
【0121】
一方、1×MESハイブリダイゼーションバッファーで満たしたHuman Genome U95プローブアレイ(Affymetrix社製)を、ハイブリオーブン内で、45℃、60rpmで10分間回転させた後、1×MESハイブリダイゼーションバッファーを除去してプローブアレイを調製した。上記で得られたハイブリカクテル上清200μLを該プローブアレイにそれぞれ添加し、ハイブリオーブン内で45℃、60rpmで16時間回転させ、フラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを得た。
【0122】
(5) プローブアレイの染色
上記で得られたハイブリダイズ済みプローブアレイそれぞれからハイブリカクテルを回収除去した後、Non−Stringent Wash Buffer(6×SSPE(20×SSPE(ナカライテスク社製)を希釈)、0.01%Tween20、0.005%Antifoam0−30(Sigma社製))で満たした。次にNon−Stringent Wash BufferおよびStringent Wash Buffer(100mM MES、0.1M NaCl、0.01%Tween20)をセットしたGeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置にフラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを装着した。その後染色プロトコールEuKGE−WS2に従って、1次染色液(10μg/mL Streptavidin Phycoerythrin (SAPE)(MolecuLar Probe社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl(Ambion社製)、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)、 2次染色液(100μg/mL Goat IgG (Sigma社製)、3μg/mL Biotinylated Anti−Streptavidin antibody (Vector Laboratories社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)により染色した。
【0123】
(6) プローブアレイのスキャン、 及び (7) 遺伝子発現解析
染色した各プローブアレイをHP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)に供し、染色パターンを読み取った。染色パターンをもとにGeneChip Workstation System(Affymetrix社製)によってプローブアレイ上の遺伝子の発現を解析した。次に、解析プロトコールに従ってNormalization、遺伝子発現の比較解析を行った。
【0124】
実施例2 心肥大及び/又は心拡張を呈するヒト左心室と正常ヒト左心室での遺伝子発現の変動解析
実施例1で行ったDNAチップ解析による遺伝子発現の比較解析結果から正常左心室組織に比べ、心肥大及び/又は心拡張を呈する左心室組織で5倍以上の発現増加を示したプローブを選抜した。心肥大、心拡張でそれぞれ発現変動を示したプローブの発現変動の増減および発現変動倍率を表1−3に示す。なお、表中、発現変動倍率は、Human Genome U95 Chipで解析した正常左心室組織の遺伝子発現量を1とした場合における心肥大を呈する左心室組織、心拡張を呈する左心室組織での遺伝子の発現量の増減を比で示すもので、減少の場合はマイナス(−)をつけて示す。表1−3には選抜されたプローブに対応する遺伝子の塩基配列を示す後記配列表の配列番号を併せて示す。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
表1−3の結果からわかるように、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心肥大を呈する左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。また、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心拡張を呈する左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。
配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で5倍以上の発現増大を示した。
以上に示すように、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心肥大を呈する左心室組織で発現が増大し、また配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心拡張を呈する左心室組織で発現が増大し、また配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64の塩基配列を有する遺伝子は、正常な左心室組織に比べて、心肥大及び心拡張を呈する左心室組織で発現が増大していた。よってこれらのいずれかの遺伝子は、心肥大、心拡張またはこれらを伴う心不全に関するマーカー遺伝子として応用可能な遺伝子であると考えられた。また、これらの遺伝子を用いることによって心不全を緩和、抑制する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能である。
【0129】
実施例3 配列番号:1〜219の塩基配列を有する遺伝子の発現抑制剤のスクリーニング
心臓組織から取得される心筋細胞及び/又は繊維芽細胞を以下の条件で培養する。摘出した心臓組織を細切後、パンクレアチン、コラゲナーゼ、またはトリプシンなどの酵素で処理し、ピペッティングにより単細胞懸濁液を調製する。これをDMEM培地(10%非働化ウシ胎児血清含有))で希釈し、ゼラチンやコラーゲンなどでコートしたディッシュに播種し、CO2インキュベーター(5% CO2、37℃)内で30分以上培養後、ディッシュに付着した繊維芽細胞と付着していない心筋細胞に分離する。このようにして得た心筋細胞又は繊維芽細胞を96ウェルのプレートにサブコンフルエントとなるように播種し、CO2インキュベーター(5% CO2、37℃)内で培養する。その後、種々の刺激、例えば機械的な伸展負荷及び/又はカテコールアミン、エンドセリン、アンギオテンシンなどの液性因子による負荷を与え、同時にそれぞれ100μM、10μM、および1μMの濃度に調製した被験物質含有溶液を添加し、37℃、CO2濃度5%で2日間培養する。ここで、対照実験として、被験物質無添加の細胞についても同様に培養する(コントロール)。これらの各培養細胞より抽出したRNAを用いて実施例1に記載された方法で、配列番号:1〜219のいずれかに示される塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量を調べる。コントロールと比べて、配列番号:1〜219のいずれかに示される塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上減少している培養系に添加した被験物質を、心不全を緩和、抑制(改善、治療)する候補化合物として選択する。
実施例4 配列番号:1〜64、220〜259の塩基配列を有する遺伝子の発現誘導剤のスクリーニング
心臓組織から取得される心筋細胞及び/又は繊維芽細胞を以下の条件で培養する。摘出した心臓組織を細切後、パンクレアチン、コラゲナーゼ、またはトリプシンなどの酵素で処理し、ピペッティングにより単細胞懸濁液を調製する。これをDMEM培地(10%非働化ウシ胎児血清含有)で希釈し、ゼラチンやコラーゲンなどでコートしたディッシュに播種し、CO2インキュベーター(5% CO2、37℃)内で30分以上培養後、ディッシュに付着した繊維芽細胞と付着していない心筋細胞に分離する。このようにして得た心筋細胞又は繊維芽細胞を96ウェルのプレートにサブコンフルエントとなるように播種し、CO2インキュベーター(5% CO2、37℃)内で培養する。その後、種々の刺激、例えば機械的な伸展負荷及び/又はカテコールアミン、エンドセリン、アンギオテンシンなどの液性因子による負荷を与え、同時にそれぞれ100μM、10μM、および1μMの濃度に調製した被験物質含有溶液を添加し、37℃、CO2濃度5%で2日間培養する。ここで、対照実験として、被験物質無添加の細胞についても同様に培養する(コントロール)。これらの各培養細胞より抽出したRNAを用いて実施例1に記載された方法で、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかに示される塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量を調べる。コントロールと比べて、配列番号:1〜64、220〜259のいずれかに示される塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上減少している培養系に添加した被験物質を、心不全を緩和、抑制(改善、治療)する候補化合物として選択する。
【0130】
【発明の効果】
本発明によって、心肥大及び/又は心拡張で発現が特異的に増大している遺伝子が明らかになった。かかる遺伝子は心不全の遺伝子診断に用いられるマーカー遺伝子(プローブ、プライマー)として有用である。かかるマーカー遺伝子によれば心不全であるかどうか、その原因を明らかにすることができ(診断精度が向上)、これによりより適切な治療を施すことが可能となる。すなわち、心不全の適切な治療のためのツールとして利用することができる。
【0131】
また、上記遺伝子の発現増加と心肥大及び/又は心拡張との関連性から、該遺伝子の発現を抑制する化合物は、上記心不全の治療薬として有用であると思われる。従って、本発明の遺伝子によれば、その発現の抑制を指標にすることによって、心不全の治療薬となり得る候補薬をスクリーニング選別することが可能である。すなわち、本発明は、心不全の治療薬の開発に有用である。
【0132】
【配列表】
Claims (24)
- 配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/または該ポリヌクレチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、心不全の疾患マーカー。
- 心不全の検出においてプローブまたはプライマーとして使用される請求項1記載の疾患マーカー。
- 心肥大を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218および219で示されるいずれかの塩基配列に基づく疾患マーカーである請求項1または2に記載の疾患マーカー。
- 心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259で示されるいずれかの塩基配列に基づく疾患マーカーである請求項1または2に記載の疾患マーカー。
- 心肥大および心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64で示されるいずれかの塩基配列に基づく疾患マーカーである請求項1または2に記載の疾患マーカー。
- 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、心不全の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドと請求項1〜5のいずれかに記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに特異的に結合した生体試料由来のRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)(b)の測定結果に基づいて、心不全の罹患を判断する工程。 - 心不全の罹患を判断する工程が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として判断するものである請求項6に記載の心不全の検出方法。
- 心肥大を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが請求項3に記載のものである、請求項6または7に記載の方法。
- 心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが請求項4に記載のものである、請求項6または7に記載の方法。
- 心肥大および心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが請求項5に記載のものである、請求項6または7に記載の方法。
- 配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285または286に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を認識する抗体を有する、心不全の疾患マーカー。
- 心不全の検出においてプローブとして使用される請求項11記載の疾患マーカー。
- 心肥大を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271および272で示されるいずれかのアミノ酸配列に基づく疾患マーカーである請求項11または12に記載の疾患マーカー。
- 心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:260、261、262、263、264、265、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285および286で示されるいずれかのアミノ酸配列に基づく疾患マーカーである請求項11または12に記載の疾患マーカー。
- 心肥大および心拡張を伴う疾患の疾患マーカーであって、配列番号:260、261、262、263、264および265で示されるいずれかのアミノ酸配列に基づく疾患マーカーである請求項11または12に記載の疾患マーカー。
- 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、心不全の検出方法:
(a) 被験者の生体試料から調製されたタンパク質と、請求項11〜15のいずれかに記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b) 該疾患マーカーに結合した生体試料由来のタンパク質またはその部分ペプチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の測定結果に基づいて、心不全の罹患を判断する工程。 - 心不全の罹患を判断する工程が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が増大していることを指標として判断するものである請求項16に記載の心不全の検出方法。
- 心肥大を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが請求項13に記載のものである、請求項16または17に記載の方法。
- 心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが請求項14に記載のものである、請求項16または17に記載の方法。
- 心肥大および心拡張を伴う疾患の検出方法であり、且つ疾患マーカーが請求項15に記載のものである、請求項16または17に記載の方法。
- 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現を減少させる物質のスクリーニング方法:
(a) 被験物質と配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b) 被験物質を接触させた細胞の、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258または259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量を測定し、該発現量を被験物質に接触させない対照細胞の上記対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c) (b)の比較結果に基づいて、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子またはそのホモログの発現量を減少させる被験物質を選択する工程。 - 心不全の改善または治療剤の有効成分を探索するための方法である、請求項21に記載のスクリーニング方法。
- 配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制する物質を有効成分とする心不全の改善または治療剤。
- 配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258および259のいずれかに記載の塩基配列を有する遺伝子の発現を抑制する物質が請求項21に記載のスクリーニング法により得られるものである、請求項23記載の心不全の改善または治療剤。
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JP2008515416A (ja) * | 2004-10-08 | 2008-05-15 | ユニベルシテ・ジョセフ・フーリエール(グルノーブル 1) | 複雑な混合物中の植物材料を検出する及び同定するための普遍的なプライマー及びその使用 |
JP2010504089A (ja) * | 2006-09-25 | 2010-02-12 | ユニフェルジテイト・マーストリヒト | 心不全を発生させる危険がある被検者を診断および/または処置するための手段および方法 |
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2002
- 2002-11-26 JP JP2002342235A patent/JP2004173553A/ja active Pending
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