JP2005000056A - ホルモン依存性癌疾患マーカー及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】ホルモン依存性癌を反映する疾患マーカー、該疾患マーカーを利用したホルモン依存性癌の検出方法、該疾患の改善に有用な薬物のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及び/又はNRIP1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドを、ホルモン依存性癌の疾患マーカーとして利用する。
【選択図】 なし
【解決手段】ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及び/又はNRIP1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドを、ホルモン依存性癌の疾患マーカーとして利用する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はホルモン依存性癌の診断に有用な疾患マーカーに関する。より詳細には、本発明は、ホルモン依存性癌の診断においてプライマー又は検出プローブとして有効に利用できる疾患マーカーに関する。また本発明は、かかる疾患マーカーを利用したホルモン依存性癌の検出方法(診断方法)に関する。
【0002】
さらに本発明は、上記疾患マーカーを利用して、ホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬として有効な物質をスクリーニングする方法、並びに該方法によって得られる上記物質を有効成分とするホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬に関する。
【0003】
【従来の技術】
癌、すなわち悪性腫瘍は、生体内において元の組織とは形態が異なる腫瘍細胞の塊が、周辺組織とは無関係に過剰に増殖する疾患である。該腫瘍細胞は、生体内の他の組織へ転移し、浸潤する性質を有する。そのため悪性腫瘍に罹患した場合の致死率は非常に高い。癌の中には増殖過程においてホルモン依存性のものがあることが知られており、具体的には、正常細胞がホルモンに反応する組織の場合であり、エストロジェン依存性腫瘍である乳癌、子宮癌、卵巣癌、アンドロジェン依存性腫瘍である前立腺癌が挙げられる(非特許文献1を参照)。
癌の治療方法としては、外科手術により腫瘍を切除する方法、抗癌剤による化学療法、放射線療法、又は免疫賦活療法等が挙げられるが、副作用が強い、有効性が十分でない等の問題点があり、より優れた薬剤が求められている。
一方、ZNF339等の本発明蛋白質とホルモン性癌との関係は明らかではなかった(非特許文献2を参照)。
【非特許文献1】
Molecular Medicine 37(10), p1112−17, 1118−1122, 1124−1129(2000)
【非特許文献2】
Genomics, 80(3), 319−325 (2002)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ホルモン依存性癌の診断及び治療に有用な疾患マーカーを提供することを目的とする。より詳細には、本発明はホルモン依存性癌を特異的に反映した疾患マーカーを提供することを目的とする。さらに本発明は、該疾患マーカーを利用したホルモン依存性癌の検出方法(遺伝子診断方法)、該疾患の改善又は治療に有用な薬物をスクリーニングする方法、並びに該疾患の改善又は治療に有用な薬物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行っていたところ、従来はホルモン依存性癌との関連が明らかではなかったZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及び/又はNRIP1遺伝子(以下、本発明遺伝子と称する場合がある。)がコードする蛋白質が、エストロジェン受容体と相互作用し、かつエストロジェン存在下ではエストロジェンとの結合力が特異的に変動することを見出した。このことから、該蛋白質はエストロジェン受容体の転写制御に関与し、エストロジェン受容体が関与する癌の進行と密接に関連していると考えられた。
更に、本発明遺伝子が、ホルモン依存性癌患者の乳腺、子宮、卵巣又は前立腺組織において、正常組織(正常人の対応する組織)と比較して有意に発現が変動していることを見出した。
【0006】
以上のように本発明者らは、ホルモン依存性癌において、本発明遺伝子及びその発現産物である本発明蛋白質が、優れた疾患マーカーであるとの知見を得た。また、本発明遺伝子の発現制御、又は該遺伝子によりコードされる本発明蛋白質の発現制御や結合制御を指標としたスクリーニング系は、ホルモン依存性癌の予防、改善又は治療薬の探索に有効であるとの知見を得た。
本発明はかかる知見を基礎にして完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記に掲げるものである:
(1) ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及び/又はNRIP1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、ホルモン依存性癌の疾患マーカー。
(2) ホルモン依存性癌の検出においてプローブ又はプライマーとして使用される(1)記載の疾患マーカー。
(3) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ホルモン依存性癌の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと(1)又は(2)に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
(4) 工程(c)におけるホルモン依存性癌の罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が変動していることを指標として行われる、(3)に記載のホルモン依存性癌の検出方法。
(5) ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及び/又はNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質を認識する抗体を含有する、ホルモン依存性癌の疾患マーカー。
(6) ホルモン依存性癌の検出においてプローブとして使用される(5)記載の疾患マーカー。
(7) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むホルモン依存性癌の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製された蛋白質と(5)又は(6)に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来の蛋白質を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
(8) 工程(c)におけるホルモン依存性癌の罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が変動していることを指標として行われる(7)記載のホルモン依存性癌の検出方法。
(9) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むホルモン依存性癌の検出方法:
(a)エストロジェン存在下又は非存在下に、エストロジェン受容体と被験者の生体試料から調製された蛋白質とを接触させる工程、
(b)上記(a)の両条件下におけるエストロジェン受容体とZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの結合の度合を測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
(10) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
(11) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339遺伝子の発現を減少させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞におけるZNF339遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
(12) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現を変動させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する蛋白質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
(13) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現を減少させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞におけるZNF339遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
(14) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、エストロジェン受容体の結合を変動させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質を、エストロジェンとエストロジェン受容体の存在下に、ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかに接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるエストロジェン受容体と前記蛋白質との結合を測定し、該結合を被験物質を接触させない場合のエストロジェン受容体と前記蛋白質との結合と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、エストロジェン受容体と前記蛋白質との結合を変動させる被験物質を選択する工程。
(15) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、エストロジェン受容体の結合を阻害させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質を、エストロジェンとエストロジェン受容体の存在下に、ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質に接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるエストロジェン受容体とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質との結合を測定し、該結合を被験物質を接触させない場合のエストロジェン受容体とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質との結合と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、エストロジェン受容体とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質との結合を阻害する被験物質を選択する工程。
(16) ホルモン依存性癌の改善又は治療剤の有効成分を探索するための方法である、(10)〜(15)のいずれかに記載のスクリーニング方法。
(17) ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(18) ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質が(10)記載のスクリーニング法により得られるものである、(17)記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(19) ZNF339遺伝子の発現を抑制する物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(20) ZNF339遺伝子の発現を抑制する物質が、(11)記載のスクリーニング法により得られるものである、(19)記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(21) ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量又はエストロジェン受容体との結合能を変動させる物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(22) ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量又はエストロジェン受容体との結合能を変動させる物質が、(12)又は(14)に記載のスクリーニング法により得られるものである、(21)記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(23) ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量又はエストロジェン受容体との結合能を抑制させる物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(24) ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量又はエストロジェン受容体との結合能を抑制させる物質が、(13)又は(15)に記載のスクリーニング法により得られるものである、(23)記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(25) ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及び/又はNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質を有効成分として含有するエストロジェン受容体結合蛋白質。
(26) ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質を有効成分として含有するエストロジェン受容体活性化剤。
【0008】
上記のように、本発明によれば、ホルモン依存性癌の疾患マーカー、該疾患の検出系、本発明の遺伝子の発現を変動させる物質のスクリーニング系、本発明の蛋白質の発現もしくは結合を変動させる物質のスクリーニング系、及びこれらの物質を有効成分とするホルモン依存性癌の改善及び治療剤が提供される。
【0009】
本発明は、前述するように、本発明の遺伝子の産物(蛋白質)がエストロジェン受容体と相互作用し、かつ該遺伝子が、癌患者(ホルモン依存性癌)の乳腺、子宮、卵巣又は前立腺組織において、正常組織(正常者の対応する組織)と比較して有意に発現が変動していることを見出したことに基づくものである。従って、これらの遺伝子及びその発現産物〔蛋白質、(ポリ)(オリゴ)ペプチド〕は、ホルモン依存性癌の解明、診断、予防及び治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床学上、有用な情報や手段を得ることができる。さらに、個体(生体組織)における、本発明の遺伝子の発現又はその発現産物の検出、又は該遺伝子の変異又はその発現異常の検出は、ホルモン依存性癌の解明や診断に有効に利用することができる。
【0010】
また、本発明の遺伝子及びその発現産物並びにそれらからの派生物(例えば、遺伝子断片、抗体など)は、本発明の遺伝子の発現を変動させる物質、及び本発明の蛋白質の発現もしくは結合を変動させる物質のスクリーニングに有用であり、該スクリーニングによって得られる物質は、ホルモン依存性癌の予防、改善及び治療薬として有効である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC−IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、及び当該分野における慣用記号に従う。
【0012】
本明細書において「遺伝子」又は「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA及びcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、及びこれらの断片のいずれもが含まれる。また当該「遺伝子」又は「DNA」には、特定の塩基配列(配列番号:1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,及び29)で示される「遺伝子」又は「DNA」だけでなく、これらによりコードされる蛋白質と生物学的機能が同等である改変体(例えば同族体(ホモログやスプライスバリアントなど)、変異体及び誘導体)をコードする「遺伝子」又は「DNA」が包含される。かかる同族体、変異体又は誘導体等の改変体をコードする「遺伝子」又は「DNA」としては、具体的には、後述の(1−1)項に記載のストリンジェントな条件下で、前記の配列番号:1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,及び29で示されるいずれかの特定塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「遺伝子」又は「DNA」を挙げることができる。
【0013】
例えばヒト由来の蛋白質のホモログをコードする遺伝子としては、当該蛋白質をコードするヒト遺伝子に対応するマウスやラットなど他生物種の遺伝子が例示でき、これらの遺伝子(ホモログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E−valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUniGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。結果として得られた他生物種遺伝子とヒト遺伝子との遺伝子ホモログの相関を示したリストから、特定の塩基配列で示されるヒト遺伝子に対応する遺伝子(ホモログ)としてマウスやラットなど他生物種の遺伝子を選抜することができる。
なお、遺伝子又はDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、又はイントロンを含むことができる。
【0014】
従って本明細書において、配列番号:1に記載の遺伝子は、ヒトZNF339(Homo sapiens zinc finger protein 339; GenBank Accession No. NM_021220)をコードする遺伝子であり、その「改変体」とは、配列番号:1に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:3に記載の遺伝子は、ヒトRPL4(Homo sapiens ribosomal protein L4; GenBank Accession No. NM_000968)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:3に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:5に記載の遺伝子は、ヒトBRD3(Homo sapiens bromodomain containing 3; GenBank Accession No. NM_007371)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:5に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。該同族体としては、マウスBRD3(GenBank Accession No. NM_023336)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:7に記載の遺伝子は、ヒトERAP140(GenBank Accession No. AF493978)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:7に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:9に記載の遺伝子は、ヒト ECH1(Homo sapiens enoyl coenzyme A ; GenBank Accession No. NM_001398)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:9に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:11に記載の遺伝子は、ヒト PPARBP(Homo sapiens PPAR binding protein ; GenBank Accession No. NM_004774)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:11に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:13に記載の遺伝子は、ヒト STRN(Homo sapiens striatin calmodulin ; GenBank Accession No. NM_003162)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:13に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:15に記載の遺伝子は、ヒト ZIN(Homo sapiens zinedin ; GenBank Accession No. NM_013403)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:15に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。該同族体としては、マウス ZIN(GenBank Accession No. AF414080)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:17に記載の遺伝子は、ヒト PERC(Homo sapiens PPAR−γ coactivator−1β ; GenBank Accession No. NM_133263)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:17に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。該同族体としては、マウスPERC(GenBank Accession No. NM_133249)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:19に記載の遺伝子は、ヒトNR0B2(Homosapiens nuclear receptor subfamily 0, groupB, member2; GenBank Accession No. NM_021969)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:19に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。該同族体としては、マウスNR0B2(GenBank Accession No. NM_011850)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:21に記載の遺伝子は、ヒト TIF1A(Homo sapiens transcriptional intermediary factor 1 ; GenBank Accession No. NM_003852)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:21に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:23に記載の遺伝子は、ヒト NCOA1(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 1 ; GenBank Accession No. NM_003743)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:23に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:25に記載の遺伝子は、ヒト NCOA2(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 2 ; GenBank Accession No. NM_006540)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:25に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:27に記載の遺伝子は、ヒト NCOA6(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 6 ; GenBank Accession No. NM_014071)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:27に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:29に記載の遺伝子は、ヒト NRIP1(Homo sapiens nuclear receptor interacting protein 1 ; GenBank Accession No. NM_003489)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:29に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
【0015】
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNA及びDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
【0016】
本明細書において「蛋白質」又は「(ポリ)ペプチド」には、特定のアミノ酸配列(配列番号:2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,及び30)で示される「蛋白質」又は「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等であることを限度として、その改変体、すなわち同族体(ホモログやスプライスバリアント)、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などが包含される。ここでホモログとしては、ヒトの蛋白質に対応するマウスやラットなど他生物種の蛋白質が例示でき、これらはHomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定された遺伝子の塩基配列から演繹的に同定することができる。また変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加及び挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、上記変異体としては、変異のない蛋白質又は(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。またアミノ酸修飾体には、天然に存在するアミノ酸修飾体、天然に存在しないアミノ酸修飾体が包含される。
【0017】
従って本明細書において、配列番号:2に記載の蛋白質は、ヒトZNF339(Homo sapiens zinc finger protein 339; GenBank Accession No. NM_021220)であり、その「改変体」とは、配列番号:2に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:4に記載の蛋白質は、ヒトRPL4(Homo sapiens ribosomal protein L4; GenBank Accession No. NM_000968)であり、その改変体とは、配列番号:4に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:6に記載の蛋白質は、ヒトBRD3(Homo sapiens bromodomain containing 3; GenBank Accession No. NM_007371)であり、その改変体とは、配列番号:6に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。該同族体としては、マウスBRD3(GenBank Accession No. NM_023336)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:8に記載の蛋白質は、ヒト ERAP140(GenBank Accession No. AF493978)であり、その改変体とは、配列番号:8に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:10に記載の蛋白質は、ヒト ECH1(Homo sapiens enoyl coenzyme A ; GenBank Accession No. NM_001398)であり、その改変体とは、配列番号:10に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:12に記載の蛋白質は、ヒト PPARBP(Homo sapiens PPAR binding protein ; GenBank Accession No. NM_004774)であり、その改変体とは、配列番号:12に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:14に記載の蛋白質は、ヒト STRN(Homo sapiens strietin calmodulin ; GenBank Accession No. NM_003162)であり、その改変体とは、配列番号:14に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:16に記載の蛋白質は、ヒト ZIN(Homo sapiens zinedin ; GenBank Accession No. NM_013403)であり、その改変体とは、配列番号:16に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。該同族体としては、マウス ZIN(GenBank Accession No. AF414080)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:18に記載の蛋白質は、ヒト PERC(Homo sapiens PPAR−γ coactivator−1β ; GenBank Accession No.NM_013261)であり、その改変体とは、配列番号:18に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。該同族体としては、マウスPERC(GenBank Accession No. NM_133249)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:20に記載の蛋白質は、ヒトNR0B2(Homosapiens nuclear receptor subfamily 0, groupB, member2; GenBank Accession NM_021969)であり、その改変体とは、配列番号:20に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。該同族体としては、マウスNR0B2(GenBank Accession No. NM_011850)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:22に記載の蛋白質は、ヒト TIF1A(Homo sapiens transcriptional intermediary factor 1 ; GenBank Accession No. NM_003852)であり、その改変体とは、配列番号:22に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:24に記載の蛋白質は、ヒト NCOA1(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 1 ; GenBank Accession No. NM_003743)であり、その改変体とは、配列番号:24に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:26に記載の蛋白質は、ヒト NCOA2(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 2 ; GenBank Accession No. NM_006540)であり、その改変体とは、配列番号:26に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:28に記載の蛋白質は、ヒト NCOA6(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 6 ; GenBank Accession No. NM_014071)であり、その改変体とは、配列番号:28に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:30に記載の蛋白質は、ヒト NRIP1(Homo sapiens nuclear receptor interacting protein 1 ; GenBank Accession No. NM_003489)であり、その改変体とは、配列番号:30に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
【0018】
本明細書でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、又はFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
【0019】
本明細書における「ホルモン依存性癌」は、具体的にはエストロジェン受容体陽性のエストロジェン依存性腫瘍である乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌等が挙げられる。
ここで、エストロジェンとは性ホルモンの一種であり、エストラジオールを代表とする、エストロン、エストリオール、エキリン、エキレニンなどのステロイドホルモンとその代謝物、ホモエストロン、エチニルエストラジオール、ドワジノールなどの前記ホルモンの化学的誘導体、スチルベストロール、ヘキセストロールなどの合成非ステロイドエストロジェンがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
本明細書において「疾患マーカー」とは、ホルモン依存性癌の罹患の有無、罹患の程度若しくは改善の有無や改善の程度を診断するために、またホルモン依存性癌の予防、改善又は治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接又は間接的に利用されるものをいう。これには、ホルモン依存性癌の罹患に関連して生体内、特に乳腺、子宮、卵巣又は前立腺組織において、発現が変動する遺伝子又は蛋白質を特異的に認識し、また結合することのできる(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチド又は抗体が包含される。これらの(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチド及び抗体は、上記性質に基づいて、生体内、組織や細胞内などで発現した上記遺伝子及び蛋白質を検出するためのプローブとして、また(オリゴ)ヌクレオチドは生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
【0021】
さらに本明細書において診断対象となる「生体組織」とは、ホルモン依存性癌に伴い本発明の遺伝子の発現が変動する組織を指し、好ましくは癌が疑われる組織(担癌組織)を用いることができる。具体的には乳腺、子宮、卵巣又は前立腺などがあげられるが、これに限定されるものではない。
さらに本明細書において「エストロジェン受容体活性化剤」とは、エストロジェン受容体二量体による転写活性を促進する物質を指し、好ましくはエストラジオール等のエストロジェンがエストロジェン受容体に結合することによる該転写活性を促進する物質を表す。
【0022】
以下、これらのZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子(以下これらの遺伝子を併せて本発明遺伝子と称する場合がある)、並びにこれらの発現産物、及びそれらの派生物について、具体的な用途を説明する。
【0023】
(1)ホルモン依存性癌の疾患マーカー及びその応用
(1−1) ポリヌクレオチド
本発明遺伝子はいずれも公知の遺伝子であり、当業者によく知られた方法で取得することができる。取得方法については、Molecular Cloning,第2版, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1989), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985)に記載されている。具体的には、被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の本発明遺伝子の領域が増幅できるように、本発明遺伝子配列に基づいて調製した一対のプライマーをこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、増幅二本鎖DNAを取得する方法を例示することができる。
【0024】
本発明は、前述するように、ホルモン依存性癌に罹患した患者の乳腺、子宮、卵巣又は前立腺組織において、正常組織に比して、本発明遺伝子が特異的に発現変動しているという知見を発端に、これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって上記ホルモン依存性癌の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという知見に基づくものである。
【0025】
従って、上記ポリヌクレオチドは、被験者における上記遺伝子の発現の有無又はその程度を検出することによって、該被験者がホルモン依存性癌に罹患しているか否か又はその罹患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用である。
また上記ポリヌクレオチドは、後述の(3−1)項に記載するようなホルモン依存性癌の予防、改善又は治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、本発明遺伝子の発現を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
【0026】
本発明の疾患マーカーは、本発明遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドからなるものを挙げることができる。
【0027】
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、本発明遺伝子の塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、又は該塩基配列において少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:T及びG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
【0028】
ここで、正鎖側のポリヌクレオチドには、本発明遺伝子の部分配列を有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
【0029】
さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されてもよい。
【0030】
本発明のホルモン依存性癌の疾患マーカーは、本発明遺伝子から選択される、1又は複数の遺伝子の塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。またこれら本発明遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列又はその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、部分配列としては、上記全長配列又はその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも15個の連続した塩基長を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。該塩基長についてはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定することができる。
【0031】
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法においては、本発明の遺伝子、又はこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に検出できること、またRT−PCR法においては、本発明遺伝子、又はこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなく、当業者が上記検出物又は生成物がこれらの遺伝子に由来するものであると判断できるものであればよい。
【0032】
本発明の疾患マーカーは、例えば配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27又は29に記載の塩基配列をもとに、例えばprimer 3( http://www.genome.wi.mit.edu/ cgi−bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。具体的には前記本発明遺伝子の塩基配列を primer 3又はベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマー又はプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマー又はプローブとして使用することができる。
【0033】
(1−2)プローブ又はプライマーとしてのポリヌクレオチド
本発明においてホルモン依存性癌の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に乳腺、子宮、卵巣又は前立腺組織における、本発明遺伝子から選ばれる1又は複数の遺伝子の発現の有無又は発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。この場合、上記本発明の疾患マーカーは、上記遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、又は該RNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。
【0034】
本発明疾患マーカーをホルモン依存性癌の検出(遺伝子診断)においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。
【0035】
本発明の疾患マーカーは、ノーザンブロット法、RT−PCR法、in situハイブリダーゼーション法などといった、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマー又はプローブとして利用することができる。該利用によってホルモン依存性癌における本発明遺伝子の発現の有無又は発現レベル(発現量)を評価することができる。
測定対象試料としては、使用する検出方法の種類に応じて、被験者の癌組織の一部を採取し、そこから常法に従って調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
【0036】
また、生体組織における本発明遺伝子の遺伝子発現レベルは、DNAチップを利用して検出あるいは定量することができる。この場合、本発明の疾患マーカーは当該DNAチップのプローブとして使用することができる(例えば、アフィメトリックス社の Gene Chip Human Genome U95 A,B,C,D,Eの場合、25bpの長さのポリヌクレオチドプローブとして用いられる)。かかるDNAチップを、生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNA又はRNAとハイブリダイズさせ、該ハイブリダイズによって形成された上記プローブ(本発明疾患マーカー)と標識DNA又はRNAとの複合体を、該標識DNA又はRNAの標識を指標として検出することにより、生体組織中での本発明遺伝子の発現の有無又は発現レベル(発現量)が評価できる。
【0037】
上記DNAチップは、本発明遺伝子のいずれかと結合し得る1種又は2種以上の本発明疾患マーカーを含んでいれば良い。複数の疾患マーカーを含むDNAチップの利用によれば、ひとつの生体試料について、同時に複数の遺伝子の発現の有無又は発現レベルの評価が可能である。
【0038】
本発明の疾患マーカーは、ホルモン依存性癌の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用したホルモン依存性癌の診断は、被験者の癌組織と正常者の対応する組織における本発明遺伝子の1又は複数遺伝子の発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。この場合、遺伝子発現レベルの違いには、発現のある/なしの違いだけでなく、被験者の癌組織と正常者の対応する組織の両者ともに発現がある場合でも、両者間の発現量の格差が2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的には本発明の遺伝子がホルモン依存性癌で発現上昇を示す場合、被験者の癌組織で発現しており、該発現量が正常者の対応する組織の発現量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多ければ、被験者についてホルモン依存性癌の罹患が疑われる。あるいは、本発明の遺伝子がホルモン依存性癌で発現減少を示す場合、被験者の癌組織の該発現量が正常者の対応する組織の発現量と比べて0.5倍以下、好ましくは0.3倍以下の値であれば、被験者についてホルモン依存性癌の罹患が疑われる。
【0039】
(1−3)抗体
本発明は、ホルモン依存性癌の疾患マーカーとして、本発明蛋白質を特異的に認識することのできる抗体を提供する。
【0040】
なお、本発明蛋白質は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,及び29)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養及び培養物からの蛋白質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
【0041】
上記抗体は、被験者における上記蛋白質の発現の有無又はその程度を検出することによって、該被験者がホルモン依存性癌に罹患しているか否か又はその疾患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用である。
また上記抗体は、後述の(3−2)項に記載するようなホルモン依存性癌の予防、改善又は治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、本発明蛋白質のいずれかの発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
【0042】
本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、本蛋白質のいずれかを免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよい。さらにこれら本発明蛋白質のアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
【0043】
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current Protocol in Molecular Biology, Chapter 11.12〜11.13(2000))。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本発明蛋白質を用いて、あるいは常法に従ってこれら本発明蛋白質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本発明蛋白質、又はこれら蛋白質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
【0044】
抗体の作製に免疫抗原として使用される本発明蛋白質は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,及び29)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養及び培養物からの蛋白質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
【0045】
具体的には、本発明蛋白質をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的蛋白質を回収することによって、本発明抗体の製造のための免疫抗原としての蛋白質を得ることができる。また、これら本発明蛋白質の部分ペプチドは、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報(配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,及び30)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。
【0046】
なお、本発明蛋白質の「改変体」としては、その同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。該誘導体としては、本発明蛋白質のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ改変前の元の蛋白質と免疫学的に同等の活性を有する蛋白質を挙げることができる。
【0047】
ここで同等の免疫学的活性を有する蛋白質としては、適当な動物あるいはその細胞において特定の免疫反応を誘発し、かつ本発明蛋白質に対する抗体と特異的に結合する能力を有する蛋白質を挙げることができる。
【0048】
なお、蛋白質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その免疫学的活性が保持される限り制限はない。免疫学的活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また置換されるアミノ酸は、置換後に得られる蛋白質がZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、又はNRIP1と同等の免疫学的活性を保持している限り、特に制限されないが、蛋白質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0049】
本発明抗体は、また、本発明蛋白質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて調製されるものであってよい。かかる抗体の製造のために用いられるオリゴ(ポリ)ペプチドは、機能的な生物活性を有することは要しないが、本発明蛋白質と同様な免疫原特性を有するものであることが望ましい。好ましくはこの免疫原特性を有し、且つ本発明蛋白質のアミノ酸配列において少なくとも連続する8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるオリゴ(ポリ)ペプチドを例示することができる。
【0050】
かかるオリゴ(ポリ)ペプチドに対する抗体の製造は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントが含まれる。
【0051】
本発明の抗体は、本発明蛋白質に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した上記蛋白質を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内における本発明蛋白質の発現の有無を検出するためのプローブとして有用である。
【0052】
具体的には、患者の癌組織の一部を採取し、そこから常法に従って蛋白質を調製して、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、上記抗体を常法に従ってプローブとして使用することによって、本発明蛋白質を検出することができる。
【0053】
ホルモン依存性癌の診断に際しては、被験者の癌組織における本発明蛋白質のいずれか少なくとも一つと、正常な対応する組織におけるこれらの蛋白質との量の違いを判定すればよい。この場合、タンパク量の違いには、タンパクのある/なし、あるいはタンパク量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的には、本発明蛋白質がホルモン依存性癌で発現が上昇している場合、該量が正常な対応する組織の発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多いことが判定されれば、ホルモン依存性癌の罹患が疑われる。具体的には、本発明蛋白質がホルモン依存性癌で発現が減少している場合、該量が正常な対応する組織の発現産物量と比べて0.5倍以下、好ましくは0.3倍以下の値であることが判定されれば、ホルモン依存性癌の罹患が疑われる。
【0054】
(2)ホルモン依存性癌の検出方法(診断方法)
本発明は、前述した本発明疾患マーカーを利用したホルモン依存性癌の検出方法(診断方法)を提供するものである。
【0055】
具体的には、本発明の検出方法(診断方法)は、被験者の癌組織に含まれるホルモン依存性癌に関連する本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、ならびにこれらの遺伝子に由来する蛋白質(本発明蛋白質)の量(レベル)を検出し、その発現量又はその蛋白質量を測定することにより、ホルモン依存性癌の罹患の有無又はその程度を診断するものである。また本発明の検出(診断)方法は、例えばホルモン依存性癌患者において、該疾患の改善のために治療薬を投与した場合における、該疾患の改善の有無又はその程度を検出(診断)することもできる。
【0056】
本発明の検出方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含むものである:
(a) 被験者の生体試料と本発明の疾患マーカーを接触させる工程、
(b) 生体試料中の本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、又は本発明蛋白質のいずれかの蛋白質量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の結果をもとに、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
【0057】
ここで用いられる生体試料としては、前記生体組織由来の試料があげられる。具体的には、該組織から調製されるRNA含有試料、若しくはそれからさらに調製されるポリヌクレオチドを含む試料、又は上記組織から調製される蛋白質を含む試料を挙げることができる。かかるRNA、ポリヌクレオチド又は蛋白質を含む試料は、被験者の癌組織の一部を採取し、そこから常法に従って調製することができる。
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
【0058】
(2−1) 測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
測定対象物としてRNAを利用する場合、ホルモン依存性癌の検出は、具体的に下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと、前記本発明の疾患マーカー(本発明遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド)とを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
【0059】
測定対象物としてRNAを利用する場合は、本発明の検出方法(診断方法)は、該RNA中の本発明遺伝子のいずれかの発現レベルを検出し、測定することによって実施される。具体的には、前述のポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカー(本発明遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチド)をプライマー又はプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
【0060】
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプローブとして用いることによって、RNA中の本発明遺伝子のいずれかの発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、本発明の疾患マーカー(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された疾患マーカー(DNA)とRNAとの二重鎖を、疾患マーカーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II、富士フィルム社製)又は蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて、該プロトコールに従って疾患マーカー(プローブDNA)を標識し、被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、疾患マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
【0061】
RT−PCR法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプライマーとして用いることによって、RNA中の本発明遺伝子のいずれかの発現の有無や発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の本発明遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の疾患マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT−PCR Reagents (Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT−PCR反応液を調製し、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems 社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
【0062】
DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをDNAプローブ(1本鎖又は2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに被験者の生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAとハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の疾患マーカーから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。また、上記DNAチップとして、本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベルの検出、測定が可能なDNAチップを用いることもできる。かかる遺伝子の発現レベルを検出、測定することができるDNAチップとしては、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A, B,C, D, Eを挙げることができる。かかるDNAチップを用いた、被験者RNA中の本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベルの検出、測定については、実施例において詳細に説明する。
【0063】
(2−2) 測定対象の生体試料として蛋白質を用いる場合
測定対象物として蛋白質を用いる場合は、本発明のホルモン依存性癌の検出方法(診断方法)は、生体試料中の本発明蛋白質のいずれかを検出し、その量を測定することによって実施される。具体的には下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製された蛋白質と抗体に関する本発明の疾患マーカー(本発明蛋白質を認識する抗体)とを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来の蛋白質を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
【0064】
より具体的には、本発明の疾患マーカーとして抗体(本発明蛋白質を認識する抗体)を用いて、ウエスタンブロット法などの公知方法で、本発明蛋白質のいずれかを検出、定量する方法を挙げることができる。
【0065】
ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシターゼ(HRP)などの酵素等で標識した標識抗体(一次抗体に結合する抗体)を用い、得られる標識化合物の放射性同位元素、蛍光物質などに由来するシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
【0066】
なお、上記において測定対象とする本発明蛋白質は、エストロジェン存在下でエストロジェン受容体結合活性を有しており、本発明蛋白質の量の測定に代えて、該蛋白質のエストロジェン受容体結合活性を測定することもできる。即ち、本発明は、下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むホルモン依存性癌の検出方法を提供する。
(a)エストロジェン存在下又は非存在下に、エストロジェン受容体と被験者の生体試料から調製された蛋白質とを接触させる工程、
(b)上記(a)の両条件下におけるエストロジェン受容体とZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの結合の度合を測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
当該方法は、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を測定する手段によって様々な実施態様をとることができる。
【0067】
本発明において使用されるエストロジェン受容体は、その由来は特に限定されず、いかなる哺乳動物由来のエストロジェン受容体であってもよく、あるいはそれらの自然もしくは人工の突然変異体であってもよい。エストロジェン受容体は、エストロジェンが結合することによりホモ又はヘテロ二量体を形成して働く転写因子として知られている。
本発明におけるエストロジェン受容体は、リガンド及び本発明蛋白質を結合しうる限り、N末及び/又はC末を欠失したフラグメントであってもよい。さらに、本発明のエストロジェン受容体は、His−tag、GST等の、親和性に基づく迅速且つ簡便な分離精製を可能にする配列との融合蛋白質であってもよい。
【0068】
また、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を測定する手段としては、(i) エストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体を直接測定する方法、(ii)エストロジェン応答配列(ERE)を含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子の発現を指標として測定する方法、 (iii) two−hybrid系を用いて測定する方法等が挙げられる。これらの各手段についての具体的態様は、以下の本発明のスクリーニング方法(3−3)において詳述される。
【0069】
(2−3)ホルモン依存性癌の診断
ホルモン依存性癌の診断は、例えば、被験者の癌組織における本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、又はこれらの遺伝子の発現産物である蛋白質(本発明蛋白質)の量もしくはエストロジェン受容体との結合能(以下これらを合わせて「蛋白質レベル」ということがある)を、正常な対応する組織における当該遺伝子発現レベル又は当該蛋白質レベルと比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
【0070】
この場合、正常な対応する組織から採取調製した生体試料(RNA又は蛋白質を含む試料)が必要であるが、これらはホルモン依存性癌に罹患していない人の組織をバイオプシ等で採取することによって取得することができる。なお、ここでいう「ホルモン依存性癌に罹患していない人」とは、少なくともホルモン依存性癌の自覚症状がなく、好ましくは他の検査方法、例えば公知の腫瘍マーカー検査や組織の生検などの結果、ホルモン依存性癌でないと診断された人をいう。なお、当該「ホルモン依存性癌に罹患していない人」を以下、本明細書では単に正常者という場合もある。
【0071】
被験者の癌組織と正常者の対応する組織との遺伝子発現レベル又は蛋白質の量(レベル)の比較は、被験者の生体試料と正常者の生体試料を対象とした測定を並行して行うことで実施できる。並行して行わない場合は、複数(少なくとも2つ、好ましくは3以上、より好ましくは5以上)の正常な組織を用いて均一な測定条件で測定して得られた本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、若しくはこれらの遺伝子の発現産物である蛋白質(本発明蛋白質)の量(レベル)の平均値又は統計的中間値を、正常者の遺伝子発現レベル若しくは蛋白質の量として、比較に用いることができる。
【0072】
被験者が、ホルモン依存性癌であるかどうかの判断は、該被験者の癌組織における本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、又はその発現産物である蛋白質(本発明蛋白質)の量(レベル)が、正常者のそれらのレベルと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上多いことを指標として行うことができる。また、被験者の上記遺伝子発現レベル又は蛋白質レベルが、いかなる正常者のそれらのレベルに比べても高ければ、該被験者はホルモン依存性癌であると判断できるか、該疾患の罹患が疑われる。本明細書実施例のとおり、ホルモン依存性癌に罹患した患者において、ZNF339遺伝子、STRN遺伝子、乳房におけるTIF1A遺伝子、卵巣におけるNCOA2遺伝子及びNRIP1遺伝子の発現レベルが正常者に比べて上昇しているので、ZNF339遺伝子、STRN遺伝子、乳房におけるTIF1A遺伝子、卵巣におけるNCOA2遺伝子、及び/又はNRIP1遺伝子発現レベル、あるいは、その発現産物である蛋白質のレベルが、正常者のそれらのレベルと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上多いことを指標として診断を行うことができる。
【0073】
あるいは、該被験者の癌組織における本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、又はその発現産物である蛋白質(本発明蛋白質)の量(レベル)が、正常者のそれらのレベルと比較して0.5倍以下、好ましくは0.3倍以下少ないことを指標として行うことができる。また、被験者の上記遺伝子発現レベル又は蛋白質の量が、いかなる正常者のそれらのレベルに比べて少なければ、該被験者はホルモン依存性癌であると判断できるか、該疾患の罹患が疑われる。本明細書実施例のとおり、ホルモン依存性癌に罹患した患者において、RPL4遺伝子、PPARBP遺伝子、PERC遺伝子、卵巣におけるTIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、及び子宮内膜におけるNCOA2遺伝子発現レベルが、正常者に比べて減少しているので、RPL4遺伝子、PPARBP遺伝子、PERC遺伝子、卵巣におけるTIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、及び/又は子宮内膜におけるNCOA2遺伝子発現レベル、あるいはその発現産物である蛋白質のレベルが、正常者のそれらのレベルと比較して0.5倍以下、好ましくは0.3倍以下少ないことを指標として診断を行うことができる。
【0074】
(3)候補薬のスクリーニング方法
(3−1) 遺伝子発現レベルを指標とするスクリーニング方法
本発明は、本発明遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質のスクリーニング方法を提供する。
【0075】
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)被験物質と本発明遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞における本発明遺伝子のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、本発明遺伝子のいずれかの発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
【0076】
かかるスクリーニングに用いられる細胞としては、内在性及び外来性を問わず、本発明遺伝子のいずれかを発現する培養細胞全般を挙げることができる。培養細胞においてこれら本発明遺伝子が発現しているか否かは、公知のノーザンブロット法やRT−PCR法にてこれらの遺伝子発現を検出することにより、容易に確認することができる。
【0077】
当該スクリーニングに用いられる細胞の具体例としては、例えば以下の(1)〜(3):
(1) ホルモン依存性癌の動物モデルより単離、調製した癌組織やリンパ系組織由来の細胞、
(2) ホルモン依存性癌患者由来の癌組織やリンパ系組織由来の細胞、
(3) 本発明遺伝子のいずれかを導入した細胞、
等を挙げることができる。
【0078】
ここで前記(1)の動物モデルとしては、ホルモン依存性癌の動物モデルとして周知である如何なる動物モデルをも用いることができる。
また前記(1)の癌組織由来の細胞としては、好ましくは乳癌由来の株化細胞が挙げられる。
【0079】
前記(2)の癌患者由来の細胞としては、好ましくは乳癌由来の株化細胞が挙げられ、より具体的にはMCF−7細胞(乳腺由来、ATCC株番号 HTB−22)T−47D細胞(乳腺由来、ATCC株番号 HTB−133)、ZR−75−1細胞(乳腺由来、ATCC株番号 CRL−1500)等を挙げることができる。
【0080】
前記(3)の遺伝子導入細胞としては、前記(1)及び(2)に挙げた細胞の他、通常遺伝子導入に用いられる宿主細胞、すなわちCOP、L、C127、Sp2/0、NS−1、NIH3T3、ST2等のマウス由来細胞、ラット由来細胞、BHK、CHO等のハムスター由来細胞、COS1、COS3、COS7、CV1、Vero等のサル由来細胞、HeLa、293等のヒト由来細胞、及びSf9、Sf21、High Five等の昆虫由来細胞などが例示される。
さらに、本発明のスクリーニング方法に用いられる細胞には、細胞の集合体である組織なども含まれる。
【0081】
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含む)、ペプチド、蛋白質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質又はこれらを含む試料(被験試料)を上記細胞及び/又は組織と接触させることにより行われる。かかる被験試料としては、被験物質を含む細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0082】
また本発明スクリーニングに際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つ本発明遺伝子を発現できる培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
【0083】
実施例に示すように、ホルモン依存性癌に罹患した患者の癌組織では、正常な対応する組織に比して、特異的に本発明遺伝子の数種(ZNF339遺伝子、STRN遺伝子、乳房におけるTIF1A遺伝子、卵巣におけるNCOA2遺伝子、及びNRIP1遺伝子)が発現上昇している。あるいは、ホルモン依存性癌に罹患した患者の癌組織では、正常な対応する組織に比して、特異的に本発明遺伝子の数種(RPL4遺伝子、PPARBP遺伝子、PERC遺伝子、卵巣におけるTIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、及び子宮内膜におけるNCOA2遺伝子)が発現減少している。この知見から、これら本発明遺伝子の発現変動はホルモン依存性癌と関連していると考えられる。よって本発明のスクリーニング方法には、本発明遺伝子のいずれかの発現レベルを指標として、その発現を変動させる物質を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、ホルモン依存性癌の緩和/抑制作用を有する(ホルモン依存性癌に対して改善/治療効果を発揮する)候補物質を提供することができる。すなわち本発明のスクリーニング方法は、本発明遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質を探索することによって、ホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
【0084】
候補物質の選別は、具体的には本発明遺伝子のいずれかが発現している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した上記(1)〜(3)のいずれかの細胞における前記本発明遺伝子の発現レベルが、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなること/高くなることをもって、行うことができる。また、これら本発明遺伝子のいずれかの発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質[例えばリポポリサッカライド(Lipopolysaccharide:LPS)、ホルボールエステル(PMA等)、カルシウムイオノフォア、サイトカイン(IL−1、IL−6、IL−12、IL−18、TNFα、IFNγ等)等]を刺激剤として用いることによって誘導される発現が被験物質の存在によって制御されること、すなわち発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して低くなること/高くなることを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。
【0085】
上記いずれかの遺伝子の発現を抑制(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)する物質の探索は、具体的には被験物質を添加した細胞の本発明遺伝子の発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなることを指標にして行うことができる。また、これら本発明遺伝子のいずれかの発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。
また、上記いずれかの遺伝子の発現を上昇(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)する物質の探索は、具体的には被験物質を添加した細胞の本発明遺伝子の発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して高くなることを指標にして行うことができる。また、これら本発明遺伝子のいずれかの発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して高くなることを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。
【0086】
このような本発明のスクリーニング方法における遺伝子発現レベルの検出及び定量は、前記細胞から調製したRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドと本発明の疾患マーカーとを用いて、前記(2−1)項に記述したように、ノーザンブロット法、RT−PCR法など公知の方法、あるいはDNAチップを利用する方法に従って実施できる。指標とする遺伝子発現レベルの変動(抑制、促進、減少、増加)の程度は、被験物質(候補物質)を接触させた細胞における本発明遺伝子のいずれかの発現が、被験物質(候補物質)を接触させない対照細胞における発現量と比較して10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の変動(抑制、促進、減少、増加)を例示することができる。
【0087】
また本発明遺伝子のいずれかの発現レベルの検出及び定量は、これら本発明遺伝子の発現を変動させる遺伝子領域(発現制御領域)に、例えばルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を用いて、マーカー遺伝子由来の蛋白質の活性を測定することによっても実施できる。本発明遺伝子のいずれかの発現制御物質のスクリーニング方法には、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索する方法も包含されるものであり、この意味において、請求項10に記載する本発明遺伝子の概念には、これら本発明遺伝子の発現制御領域とマーカー遺伝子との融合遺伝子が含まれる。
【0088】
なお、上記マーカー遺伝子としては、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が好ましい。具体的には、上記のルシフェラーゼ遺伝子のほか、分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子などのレポーター遺伝子が例示できる。
また、ここで前記本発明遺伝子の発現制御領域は、例えば該遺伝子の転写開始部位上流約1kb、好ましくは約2kbを用いることができる。
【0089】
本発明遺伝子の発現制御領域は、例えば(i)5’−RACE法(例えば、5’full Race Core Kit(宝酒造社製)等を用いて実施される)、オリゴキャップ法、S1プライマーマッピング等の通常の方法により、5’末端を決定するステップ;(ii)Genome Walker Kit(クローンテック社製)等を用いて5’−上流領域を取得し、得られた上流領域について、プロモーター活性を測定するステップ;を含む手法等により同定することができる。また融合遺伝子の作成、及びマーカー遺伝子由来の活性測定は公知の方法で行うことができる。
【0090】
本発明遺伝子のうち、ZNF339遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、NCOA6遺伝子、PPARBP遺伝子、及びTIF1A遺伝子はその発現産物がエストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を促進する。従って、これらの遺伝子については発現を抑制する物質を選別することが望まれる。一方、NRIP遺伝子については、その発現産物がエストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を抑制するので、この遺伝子については発現を促進する物質を選別することが望まれる。
【0091】
本発明のスクリーニング方法により選別される物質は、本発明遺伝子の少なくとも一種の遺伝子の遺伝子発現制御剤として位置づけることができる。これらの物質が有する本発明遺伝子に対する発現制御作用は、ホルモン依存性癌の発症に深く関わっている。よってこれらの物質は、ホルモン依存性癌を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補物質となる。
【0092】
(3−2)蛋白質の発現量を指標とするスクリーニング方法
本発明は、本発明蛋白質のいずれかの発現を変動させる物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明スクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
【0093】
(a)被験物質と本発明蛋白質のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞における本発明蛋白質のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する蛋白質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、本発明蛋白質のいずれかの発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
【0094】
本発明スクリーニングに用いられる細胞は、内在性及び外来性を問わず、本発明遺伝子のいずれかを発現し、発現産物としての本発明蛋白質のいずれかを有する培養細胞全般を挙げることができる。ここで本発明蛋白質の発現は、遺伝子産物である蛋白質を公知のウエスタン法にて検出することにより、容易に確認することができる。該細胞としては、具体的には、前記(3−1)項の(1)〜(3)に記載したような、ホルモン依存性癌の動物モデルより単離、調製した癌組織やリンパ系組織由来の初代培養細胞、ホルモン依存性癌患者の癌組織やリンパ系組織由来の初代培養細胞若しくは株化細胞、又は本発明遺伝子のいずれかを導入した株化細胞などが挙げられる。また当該細胞の範疇には、その細胞膜画分、細胞質画分、細胞核画分なども含まれる。
【0095】
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含む)、ペプチド、蛋白質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質又はこれらを含む試料(被験試料)を上記細胞や細胞膜画分と接触させることにより行われる。かかる被験試料としては、被験物質を含む細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0096】
実施例に示すように、ホルモン依存性癌に罹患した患者の癌組織では、正常な対応する組織に比して、特異的に本発明遺伝子の発現が変動している。この知見から、これら本発明遺伝子の発現産物(本発明蛋白質)の発現亢進または発現抑制は、ホルモン依存性癌と関連していると考えられる。よって本発明のスクリーニング方法には、これら本発明蛋白質のいずれかのタンパク発現レベルを指標として、その発現量を減少または増加させる物質を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、ホルモン依存性癌の緩和/抑制作用を有する(ホルモン依存性癌に対して改善/治療効果を発揮する)候補物質を提供することができる。
【0097】
すなわち本発明のスクリーニング方法は、本発明蛋白質のいずれかの発現量を変動させる物質を探索することによって、ホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
【0098】
候補物質の選別は、具体的には本発明蛋白質のいずれかを発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における前記本発明蛋白質のタンパク量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して変動する(低くなる/高くなる)ことを指標として、行うことができる。
【0099】
上記いずれかの蛋白質の発現を変動させる物質のうち、発現を低下(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)するように変動させる候補物質の選別は、具体的には本発明蛋白質を発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における本発明蛋白質の蛋白量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して低くなることを指標として、行うことができる。
【0100】
上記いずれかの蛋白質の発現を変動させる物質のうち、発現を上昇(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)するように変動させる候補物質の選別は、具体的には本発明蛋白質を発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における、本発明蛋白質の蛋白量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して高くなることを指標として、行うことができる。
【0101】
本発明蛋白質のうち、ZNF339、NCOA1、NCOA2、NCOA6、PPARBP、及びTIF1Aはエストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を促進する。従って、これらの蛋白質については発現を抑制することが望まれる。一方、NRIPは、エストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を抑制するので、この蛋白質については発現を促進することが望まれる。
【0102】
本発明のスクリーニング方法にかかる本発明蛋白質のいずれかの産生量は、前述したように、例えば抗体に関する本発明疾患マーカー(例えば配列番号:2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,及び30に記載の蛋白質又はそのホモログを認識する抗体)を用いたウエスタンブロット法などの公知方法に従って定量できる。ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシターゼ(HRP)などの酵素等で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を利用して、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
【0103】
(3−3) 蛋白質の結合能を指標とするスクリーニング方法
本発明は、本発明蛋白質とエストロジェン受容体との結合を変動させる物質をスクリーニングする方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)被験物質を、エストロジェンとエストロジェン受容体の存在下に、本発明蛋白質に接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるエストロジェン受容体と前記蛋白質との結合を測定し、該結合を被験物質を接触させない場合のエストロジェン受容体と前記蛋白質との結合と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、エストロジェン受容体と前記蛋白質との結合を変動させる被験物質を選択する工程。
【0104】
本発明のスクリーニング方法においては、エストロジェン存在下に本発明蛋白質のエストロジェン受容体への結合能に基づく如何なる測定方法をも利用することができる。すなわち、本発明蛋白質のエストロジェン受容体結合能測定系に被験物質を添加し、当該本発明蛋白質のエストロジェン受容体結合能を変動させる被験物質を、ホルモン依存性癌に対して改善/治療効果を有する候補物質として選択するスクリーニング方法であれば、本発明のスクリーニング方法の範疇に含まれる。
【0105】
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸、ペプチド、蛋白質(本発明蛋白質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質又はこれらを含む試料(被験試料)を、本発明蛋白質、エストロジェン及びエストロジェン受容体と接触させることにより行われる。被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0106】
本発明蛋白質のうち、ZNF339、NCOA1、NCOA2、NCOA6、PPARBP、及びTIF1Aはエストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を促進する。従って、これらの蛋白質についてはエストロジェン受容体との結合を抑制することが望まれる。一方、NRIPは、エストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を抑制するので、この蛋白質についてはエストロジェン受容体との結合を促進することが望まれる。
【0107】
本スクリーニング方法は、エストロジェン受容体と本発明蛋白質を反応系に提供する手段と、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を測定する手段によって様々な実施態様をとることができる。
【0108】
即ち、エストロジェン受容体及び本発明蛋白質を反応系に提供する手段としては、(i) それらを発現するように操作された宿主細胞から細胞抽出液として提供する方法、(ii) それらを発現するように操作された宿主細胞から分離精製して(例えば、適当なタグを有する融合蛋白質として発現するように操作された宿主細胞から、当該タグと親和性を有する担体を用いて分離精製して)提供する方法、(iii) それらをコードするDNAを含む発現ベクターから無細胞翻訳系を用いてインビトロ合成して提供する方法、(iv) それらを発現するように操作された宿主細胞内で反応を行わせる方法等が挙げられる。
【0109】
また、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を測定する手段としては、(i) エストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体を直接測定する方法、(ii)エストロジェン応答配列(ERE)を含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子の発現を指標として測定する方法、 (iii) two−hybrid系を用いて測定する方法等が挙げられる。これらの各手段についての具体的態様は、以下において詳述される。
【0110】
本スクリーニング系において、エストロジェン受容体は、好ましくは、エストロジェン受容体をコードする遺伝子を含む細胞から、例えば細胞抽出液として提供される。エストロジェン受容体をコードする遺伝子は、当該細胞に内在のエストロジェン受容体遺伝子であってもよいし、所定の宿主細胞に公知の手法を用いて導入された、外来のエストロジェン受容体をコードするDNAであってもよい。いずれの場合においても、当該細胞は、本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターを導入されたものであることが好ましい。
【0111】
エストロジェン受容体はまた、エストロジェン受容体をコードするDNAを含む発現ベクターから、ウサギ網状赤血球抽出液や小麦胚芽抽出液由来の無細胞翻訳系を用いたインビトロ合成により、提供されるものであってもよい。このような場合には、35S−Met等の標識アミノ酸を用いて標識エストロジェン受容体を容易に調製することができる。
【0112】
本スクリーニング方法において使用される本発明蛋白質は、前述の通りであり、エストロジェン存在下にエストロジェン受容体と結合し得るものである限り、その由来は特に限定されず、いかなる哺乳動物由来の本発明蛋白質であってもよく、あるいはそれらの自然もしくは人工の突然変異体であってもよく、ある一部の領域を欠失したフラグメントであってもよい。本発明のスクリーニング系が本発明蛋白質のエストロジェン受容体への結合を指標とするものである場合、本発明蛋白質は、エストロジェン受容体に結合する領域を必ず含む必要がある。さらにまた、本発明蛋白質は、His−tag、GST等の、親和性に基づく迅速且つ簡便な分離精製を可能にする配列との融合蛋白質であってもよい。
【0113】
本発明のスクリーニング系において、本発明蛋白質は、好ましくは、本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターを公知の手法により導入した宿主細胞から、例えば細胞抽出液として提供される。当該宿主細胞は、エストロジェン受容体を内因的に発現する哺乳動物細胞であるか、あるいは外来のエストロジェン受容体をコードするDNAを含む発現ベクターがさらに導入された細胞であることが好ましい。
【0114】
本発明蛋白質はまた、本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターから、ウサギ網状赤血球抽出液や小麦胚芽抽出液由来の無細胞翻訳系を用いたインビトロ合成により、提供されるものであってもよい。このような場合には、35S−Met等の標識アミノ酸を用いて標識本発明蛋白質を容易に調製することができる。
【0115】
エストロジェン受容体及び本発明蛋白質はまた、それらを発現するように操作された宿主細胞として提供されてもよく、この場合、当該宿主細胞自体が反応系を構成する。
【0116】
被験物質の存在下でエストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合が有意に調節されれば、本発明蛋白質によるホルモン依存性癌の増悪度が有意に抑制されるので、当該物質は癌の治療剤又は改善剤の有力な候補となる。
【0117】
本スクリーニング方法の第一の態様は、抗エストロジェン受容体抗体及び/又は抗本発明蛋白質抗体(本発明疾患マーカー)を用いて、あるいはエストロジェン受容体又は本発明蛋白質自体を標識して、エストロジェンの存在下、被験物質の有無におけるエストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体を直接測定することによりエストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合を調べるというものである。B/F(固液)分離を行うアッセイ系であって、エストロジェン受容体又は本発明蛋白質がタグを有する融合蛋白質として提供される場合は、固相化抗体に代えて当該タグと親和性を有する担体を使用することもできる。例えば、His−tagとの融合蛋白質であれば磁性ニッケルビーズ等、GST融合蛋白質であればグルタチオン固相化樹脂等が担体として挙げられる。このようなタグの使用は、エストロジェン受容体や本発明蛋白質を細胞抽出液のまま反応系に投入するのではなく分離精製して提供する場合に、迅速且つ簡便な分離を可能にするのにも有用である。
【0118】
具体的には、以下の方法が例示される。
(1)エストロジェン存在下であって被験物質の存在下及び非存在下にエストロジェン受容体と本発明蛋白質とを接触させて一定時間インキュベートした後、エストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体、遊離エストロジェン受容体及び遊離本発明蛋白質を電気泳動により分離し、標識抗エストロジェン受容体抗体及び標識本発明抗体を用いてエストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体に相当するバンド強度を測定する。例えば、本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターが導入され、かつ内在のエストロジェン受容体を発現する哺乳動物細胞の抽出液、あるいは外来のエストロジェン受容体をコードするDNAを含む発現ベクターと本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターとが導入された宿主細胞の抽出液に、エストロジェンとともに被験物質を添加してあるいはエストロジェンのみを添加してインキュベートした後、各反応液を非変性ゲル電気泳動にかけ、RIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識した各抗体でウェスタンブロッティングを行い、両方の抗体と交叉反応するバンドの強度を比較する。また、エストロジェン受容体及び/又は本発明蛋白質を上述のように無細胞翻訳系を用いて合成する場合、エストロジェン受容体又は本発明蛋白質のいずれか一方を35S−Met等を用いて標識しておけば、標識抗体をプローブとしたウェスタンブロッティングを行う代わりに、泳動ゲルのオートラジオグラフィーを行い、より高分子量の側のバンドの強度を比較すればよい。
【0119】
(2)あるいは、上記(1)において、反応液に抗エストロジェン受容体抗体又は抗本発明蛋白質抗体を加えて免疫沈降させた後で、沈降物を電気泳動して、RIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識した抗本発明蛋白質抗体又は抗エストロジェン受容体抗体を用いてウェスタンブロッティングを行い、検出されるバンドの強度を比較することもできる。免疫沈降は、好ましくは、プラスチックビーズやセファデックス等の不溶性担体に固相化した抗体を用いて行うことができる。また、エストロジェン受容体及び/又は本発明蛋白質を上述のように無細胞翻訳系を用いて合成する場合、エストロジェン受容体又は本発明蛋白質のいずれか一方を35S−Met等を用いて標識しておけば、他方に対する抗体を反応液に加えて免疫沈降させた後で、沈降物を電気泳動して泳動ゲルのオートラジオグラフィーを行い、検出されるバンドの強度を比較すればよい。
【0120】
(3)エストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体の測定は、慣用のイムノアッセイ系を用いて行うこともできる。例えば、反応液に抗エストロジェン受容体抗体又は抗本発明蛋白質抗体を加えて免疫沈降させ、液相を除去した後、RIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識した抗本発明蛋白質抗体又は抗エストロジェン受容体抗体を用いてRIA、EIA、FIA等を行い、検出されるシグナル強度を比較してもよい。また、エストロジェン受容体及び/又は本発明蛋白質を上述のように無細胞翻訳系を用いて合成する場合、エストロジェン受容体又は本発明蛋白質のいずれか一方を35S−Met等を用いて標識しておけば、他方に対する抗体を反応液に加えて免疫沈降させ、液相を除去した後にRIAを行うことによってもエストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体を測定することができる。
【0121】
(4)あるいは、表面プラズモン共鳴、蛍光偏光イムノアッセイ、蛍光消光イムノアッセイ、蛍光エネルギー転移イムノアッセイ等のB/F分離を要しない均一系イムノアッセイを用いれば、反応液から直接的にエストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体を測定することができる。
【0122】
本発明のスクリーニング法の第二の態様は、エストロジェン存在下でのエストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を、エストロジェン受容体に結合する本発明蛋白質量を指標として測定するというものである。被験物質の存在下において、非存在下に比べてエストロジェン受容体に結合する本発明蛋白質量が有意に減少すれば、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合が当該物質により阻害されたことを示す。
【0123】
本発明蛋白質は、エストロジェンと結合したエストロジェン受容体に結合するので、本実施態様においては、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の反応混合液中にさらにエストロジェンが共存する必要がある。エストロジェンには、前記したようにエストラジオール、エストロン、エストリオールなどの様々な種類が知られており、本発明ではいずれを使用してもよい。また、エストロジェンは、エストロジェン受容体に結合し得る限り特に制限はなく、天然由来のものの他、合成品も使用することができる。
【0124】
エストロジェン受容体に結合する本発明蛋白質量の測定は、上述の第一の態様におけるのと同様に、標識抗本発明蛋白質抗体を用いて、あるいは本発明蛋白質自体を標識することにより行うことができる。具体的には、エストロジェン及び本発明蛋白質の反応混合液に、プラスチックビーズやセファデックス等の不溶性担体に固相化したエストロジェン受容体を加えてインキュベートし、B/F分離した後、固相に結合した本発明蛋白質をRIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識した抗本発明蛋白質抗体を用いたイムノアッセイにより測定することができる。また、本発明蛋白質を無細胞翻訳系を用いて合成する場合、本発明蛋白質を35S−Met等を用いて標識しておけば、B/F分離後の固相に結合したRI標識量を測定することにより、エストロジェン受容体に結合した本発明蛋白質量を測定することができる。
【0125】
あるいは、表面プラズモン共鳴、蛍光偏光イムノアッセイ、蛍光消光イムノアッセイ、蛍光エネルギー転移イムノアッセイ等のB/F分離を要しない均一系イムノアッセイを用いれば、反応液から直接的にエストロジェン受容体に結合した本発明蛋白質を測定することができる。
【0126】
好ましい実施態様においては、エストロジェン受容体に結合する本発明蛋白質量は、ゲルシフトアッセイによって測定することができる。即ち、上述のようにして調製されるエストロジェン受容体及び本発明蛋白質の反応混合液に、RIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識したエストロジェン受容体を加えてインキュベートした後、反応液を電気泳動してエストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体と遊離エストロジェン受容体とを分離し、高分子量域に検出されるバンドのシグナル強度を測定することにより調べることができる。
【0127】
本スクリーニング法の第三の態様は、エストロジェン存在下で本発明蛋白質とエストロジェン受容体の結合の度合を、エストロジェン応答配列(ERE)を含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子の発現を指標として測定するというものである。被験物質の存在下において、非存在下に比べて当該レポーター遺伝子の発現が有意に減少すれば、エストロジェン受容体二量体による転写活性化が、被験物質による本発明蛋白質とエストロジェン受容体の結合変動によって抑制されることを示す。
【0128】
本実施態様においては、エストロジェン受容体をコードするDNA、本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクター及びEREを含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子を含む発現ベクターを導入された哺乳動物細胞、あるいは、さらに本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターを導入された宿主細胞を、被験物質の存在下及び非存在下で培養し、得られる培養物におけるレポーター遺伝子の発現を測定し、その発現量を比較する。また、エストロジェン受容体による標的遺伝子の転写活性化はリガンド依存的であるので、培養はエストロジェンの共存下で行う必要がある。
【0129】
宿主哺乳動物細胞としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター等の細胞が挙げられ、就中ヒト由来細胞が好ましい。具体的には、COP、L、C127、Sp2/0、NS−1、NIH3T3、ST2等のマウス由来細胞、ラット由来細胞、BHK、CHO等のハムスター由来細胞、COS1、COS3、COS7、CV1、Vero等のサル由来細胞、およびHeLa、293T等のヒト由来細胞などが例示される。
【0130】
レポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ペルオキシダーゼ等をコードするDNAが挙げられるが、これらに限定されない。プロモーターは、哺乳動物細胞で機能するものであって、近傍にERE配列を含むものであれば特に制限はない。
【0131】
遺伝子導入は、慣用のリポソーム法やエレクトロポレーション法を用いて行うことができる。
【0132】
遺伝子導入された宿主細胞は、例えば、約5〜20%のウシ胎仔血清(望ましくは、活性炭処理により血清中の脂溶性ホルモン類を除去した血清)を含む最少必須培地(MEM)[Science, 122, 501 (1952)]、ダルベッコ改変最少必須培地(DMEM)[Virology, 8, 396 (1959)]、RPMI1640培地[J. Am. Med. Assoc., 199, 519 (1967)]、199培地[Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 73, 1 (1950)]等を用いて培養することができる。培地のpHは約6〜8であるのが好ましく、培養は、通常約30〜約40℃で、エストロジェンの添加後、約3〜約72時間行なわれる。
【0133】
培養終了後、細胞を回収して適当な溶解バッファー中で破砕し、遠心により上清を得て細胞抽出液とし、これを用いてレポーター遺伝子の発現をアッセイすればよい。
【0134】
本発明のスクリーニング法の第四の態様は、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を、いわゆるtwo−hybrid系を用いてレポーター遺伝子の発現や細胞質シグナル伝達系の活性化を指標として測定するというものである。
【0135】
本実施態様においては、エストロジェン受容体をコードするDNA又は本発明蛋白質をコードするDNAの一方を、GAL4等の転写因子のDNA結合ドメイン(BD)との融合蛋白質として発現するように含む発現ベクターと、他方のDNAを、VP16等の転写因子の転写活性化ドメイン(AD)との融合蛋白質として発現するように含む発現ベクターとを宿主細胞に導入し、得られる形質転換体をエストロジェンの存在下であって被験物質の存在下及び非存在下に培養して、得られる培養物におけるレポーター遺伝子の発現量を測定・比較する。当該宿主細胞は、BDが認識・結合し得るシスエレメント(BD応答エレメント)をプロモーター領域に含むレポーター遺伝子を担持するものである。細胞内で発現したBD融合蛋白質はBD応答エレメントに結合するが、エストロジェン受容体と本発明蛋白質が相互作用すれば、BD応答エレメント上にBDとADのhybridが形成され、その下流に位置するレポーター遺伝子の転写が活性化される。
【0136】
宿主細胞としては、上記第三の態様と同様の哺乳動物細胞が例示され、レポーター遺伝子発現ベクターとしては、上記のレポーター遺伝子発現ベクターにおいて、EREをBD応答エレメントに置換したものが例示される。
【0137】
エストロジェン受容体はそれ自体が転写制御因子であることから、レポーター遺伝子の発現を指標とする測定系では、擬陽性又は擬陰性を生じる可能性がある。従って、BD及びADに代えて、例えばSOS蛋白質及びミリスチレーションシグナルを用い、宿主細胞としてcdc25H株等の酵母温度感受性変異株を用いることにより、レポーター遺伝子の発現を指標とせずにエストロジェン受容体と本発明蛋白質の相互作用を検出することもできる。
【0138】
上記(3−1)〜(3−3)に記載する本発明のスクリーニング方法によって選別された候補物質は、さらにホルモン依存性癌のモデル動物として周知であるモデル動物を用いた薬効試験、安全性試験、さらにホルモン依存性癌患者への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的なホルモン依存性癌の改善又は治療薬を取得することができる。このようにして選別された物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)又は遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができる。
【0139】
なお、上記(3−1)〜(3−3)に記載するスクリーニング方法は、ホルモン依存性癌の改善又は治療薬の候補物質を選別するのみならず、ホルモン依存性癌の既存の若しくは新規な改善又は治療薬(候補薬)が、本発明遺伝子のいずれかの発現を変動させるか否か、あるいは本発明蛋白質のいずれかの発現若しくは機能・活性を変動させるか否かを評価、確認するためにも用いることができる。すなわち本発明のスクリーニング方法の範疇には、候補物質の探索のみならず、このような評価あるいは確認を目的とするものも含まれる。
【0140】
また、本発明のスクリーニング方法を実施する前に、上記に掲げる各本発明蛋白質をコードする遺伝子について、あらかじめ実験により、該遺伝子の発現を抑制する物質がホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのか、また発現を誘導する物質がホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのかを判断することは可能であり、その具体的な方法については前述の通りである。当該実験によって本発明遺伝子の発現抑制物質が候補物質になる可能性が高いと判断された場合は、当該遺伝子がコードする本発明蛋白質の機能(活性)の抑制を指標としてスクリーニングを行うことにより、より高い精度で候補物質を選別することができ、また当該実験によって本発明遺伝子の発現誘導物質が候補物質になる可能性が高いと判断された場合は、当該遺伝子がコードする本発明蛋白質の機能(活性)の亢進を指標としてスクリーニングを行うことにより、より高い精度で候補物質を選別することができる。
【0141】
(4)ホルモン依存性癌の改善・治療剤
本発明は、ホルモン依存性癌の改善・治療剤を提供するものである。
本発明は本発明遺伝子及びこれらの遺伝子によりコードされる蛋白質(本発明蛋白質)が、ホルモン依存性癌と関係しているという新たな知見から、これら遺伝子の発現を変動させる物質、あるいは、これら遺伝子によりコードされる蛋白質の発現若しくは結合能を変動させる物質が、上記疾患の改善又は治療に有効であるという考えに基づくものである。すなわち、本発明のホルモン依存性癌の改善・治療剤は本発明遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質、あるいは本発明蛋白質のいずれかの発現若しくは結合能を変動させる物質を有効成分とするものである。
【0142】
例えば、本発明蛋白質のうち、ZNF339、NCOA1、NCOA2、NCOA6、PPARBP、及びTIF1Aはエストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を促進する、エストロジェン受容体活性化剤である。従って、これらの蛋白質については発現を抑制することが望まれる。すなわち、これらの蛋白質及びこれらの蛋白質をコードする遺伝子の発現抑制物質、並びに、これらの蛋白質とエストロジェン受容体の結合を阻害する物質は、エストロジェン受容体機能抑制物質であり、ホルモン依存性癌の改善薬または治療薬の有効成分となる。
一方、NRIPは、エストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を抑制するので、この蛋白質については発現を促進することが望まれる。すなわち、該蛋白質及び該蛋白質をコードする遺伝子の発現促進物質、並びに、該蛋白質とエストロジェン受容体の結合を促進する物質は、エストロジェン受容体機能抑制物質であり、ホルモン依存性癌の改善薬または治療薬の有効成分となる。
【0143】
当該有効成分となる本発明遺伝子のいずれかの発現制御物質、あるいは本発明蛋白質のいずれかの発現若しくは結合能の制御物質は、上記のスクリーニング方法を利用して選別されたもののみならず、選別された物質に関する情報に基づいて常法に従って工業的に製造されたものであってもよい。
【0144】
本発明遺伝子のいずれかの発現制御物質、あるいは本発明蛋白質のいずれかの発現若しくは結合能の制御物質は、そのままもしくはそれ自体公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて経口投与又は非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象又は患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、通常、1日投与用量として、数mg〜2g程度、好ましくは数十mg程度を、1日1〜数回にわけて投与することができる。
【0145】
また、上記の物質がDNAによりコードされるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組み込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。更に、上記有効成分物質が本発明遺伝子のいずれかに対するアンチセンスヌクレオチドの場合は、そのままもしくは遺伝子治療用ベクターにこれを組込むことにより、遺伝子治療を行うこともできる。これらの場合も、遺伝子治療用組成物の投与量、投与方法は患者の体重、年齢、症状などにより変動し、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0146】
上記アンチセンスヌクレオチドを利用する遺伝子治療につき詳述すれば、該遺伝子治療は、通常のこの種の遺伝子治療と同様にして、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその化学的修飾体を直接患者の体内に投与することにより目的遺伝子の発現を変動させる方法、もしくはアンチセンスRNAを患者の標的細胞に導入することにより該細胞による目的遺伝子の発現を変動させる方法により実施できる。
【0147】
ここで「アンチセンスヌクレオチド」には、本発明遺伝子の少なくとも8塩基以上の部分に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、アンチセンスDNAなどが含まれる。具体的には、ZNF339遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、NCOA6遺伝子、PPARBP遺伝子、又はTIF1A遺伝子の塩基配列の少なくとも8塩基以上の部分に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、アンチセンスDNAなどが含まれる。
【0148】
また、その化学修飾体には、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホトリエステル、アルキルホスホナート、アルキルホスホアミデートなどの、細胞内への移行性又は細胞内での安定性を高め得る誘導体(”Antisense RNA and DNA” WILEY−LISS刊、1992年、pp.1−50、J. Med. Chem. 36, 1923−1937(1993))が含まれる。これらは常法に従い合成することができる。
【0149】
アンチセンスヌクレオチド又はその化学的修飾体は、細胞内でセンス鎖mRNAに結合して、目的遺伝子の発現、即ち本発明遺伝子の発現を変動させることができ、かくして本発明蛋白質の機能(結合活性)を制御することができる。
【0150】
アンチセンスオリゴヌクレオチド又はその化学的修飾体を直接生体内に投与する方法において、用いられるアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその化学修飾体は、好ましくは5−200塩基、さらに好ましくは8−25塩基、最も好ましくは12−25塩基の長さを有するものとすればよい。その投与に当たり、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はその化学的修飾体は、通常慣用される安定化剤、緩衝液、溶媒などを用いて製剤化され得る。
アンチセンスRNAを患者の標的細胞に導入する方法において、用いられるアンチセンスRNAは、好ましくは100塩基以上、より好ましくは300塩基以上、さらに好ましくは500塩基以上の長さを有するものとすればよい。また、この方法は、生体内の細胞にアンチセンス遺伝子を導入するin vivo法及び一旦体外に取り出した細胞にアンチセンス遺伝子を導入し、該細胞を体内に戻すex vivo法を包含する(日経サイエンス, 1994年4月号, 20−45頁、月刊薬事, 36 (1), 23−48 (1994)、実験医学増刊, 12 (15), 全頁 (1994)など参照)。この内ではin vivo法が好ましく、これには、ウイルス的導入法(組換えウイルスを用いる方法)と非ウイルス的導入法がある(前記各文献参照)。
【0151】
上記組換えウイルスを用いる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルスなどのウイルスゲノムにアンチセンスヌクレオチドを組込んで生体内に導入する方法が挙げられる。この中では、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスなどを用いる方法が特に好ましい。非ウイルス的導入法としては、リポソーム法、リポフェクチン法などが挙げられ、特にリポソーム法が好ましい。他の非ウイルス的導入法としては、例えばマイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法なども挙げられる。
【0152】
遺伝子治療用製剤組成物は、上述したアンチセンスヌクレオチド又はその化学修飾体、これらを含む組換えウイルス及びこれらウイルスが導入された感染細胞などを有効成分とするものである。該組成物の患者への投与形態、投与経路などは、治療目的とする疾患、症状などに応じて適宜決定できる。例えば注射剤などの適当な投与形態で、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することができ、また患者の疾患対象部位に直接投与、導入することもできる。in vivo法を採用する場合、遺伝子治療用組成物は、本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含む注射剤などの投与形態の他に、例えば本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含有するウイルスベクターをリポソーム又は膜融合リポソームに包埋した形態(センダイウイルス(HVJ)−リポソームなど)とすることができる。これらのリポソーム製剤形態には、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤などが含まれる。また、遺伝子治療用組成物は、上記本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含有するベクターを導入されたウイルスで感染された細胞培養液の形態とすることもできる。これら各種形態の製剤中の有効成分の投与量は、治療目的である疾患の程度、患者の年齢、体重などにより適宜調節することができる。通常、本発明遺伝子に対するアンチセンスヌクレオチドの場合は、患者成人1人当たり約0.0001−100mg、好ましくは約0.001−10mgが数日ないし数カ月に1回投与される量とすればよい。アンチセンスヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの場合は、レトロウイルス力価として、1日患者体重1kg当たり約1×103pfu−1×1015pfuとなる量範囲から選ぶことができる。アンチセンスヌクレオチドを導入した細胞の場合は、1×104細胞/body−1×1015細胞/body程度を投与すればよい。
【0153】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0154】
実施例1 本発明蛋白質とERの相互作用(酵母2ハイブリッドシステム)
本実施例は、いわゆる酵母2ハイブリッドシステム(Bartel and Fields, 1997)として報告のある方法に準じて行った。下記に我々が用いた特徴的な部分を記載する。
ベイト(餌)となる蛋白には、エストロジェン受容体のリガンド結合領域を用いた。これはすでに所有していたヒトエストロジェン受容体蛋白コード領域全長発現ベクターを鋳型としてPCR法によりアミノ酸番号280−568の部分をPCR法により増幅した。この増幅したcDNA断片を、酵母発現ベクターであるpGBT.Qに挿入した、なお、pGBT.Qとは、Bartel et al., Nat Genet., 12:72−77 (1996)に記載のあるpGBT.C ベクターの類似ベクターであり、ポリリンカー部分にM13シークエンスサイトが含まれているものである。
構築したベクターを酵母PNY200株(表現系: MATalpha trp1−901 leu2−3,112 ura3−52 his3−200 ade2 gal4deltagal80)にトリプトファン要求性を利用して組み込んだ。組換え酵母株は、ベイトであるヒトエストロジェン受容体部分蛋白を酵母転写因子GAL4(アミノ酸1−147の部分)とのC末端側の融合蛋白として発現するようになっている。
プレイ(獲物)となる蛋白を発現するcDNAライブラリー(ヒト脾臓、ヒト乳癌/前立腺癌、マウス胎児由来)は、酵母BK100株(表現系: MATatrp1−901 leu2−3,112 ura3−52 his3−200 gal4deltagal80 LYS2::GAL−HIS3 GAL2−ADE2 met2::GAL7−lacZ)に、ロイシン要求性を利用して組み込んだ。これらの酵母では、ライブラリー由来の蛋白は酵母転写因子GAL4の転写活性化領域(アミノ酸768−881)と9アミノ酸のHA(hemagglutinin)エピトープタグとの融合蛋白として発現するようになっている。
ベイト蛋白を発現するPNY200株(この株はMATalpha のメイテイングタイプを示す)とプレイ蛋白を発現するBK100株(この株はMATaメイテイングタイプを示す)をメイテイングさせ、蛋白相互作用が生じるとトリプトファン・ロイシン・ヒスチジン・アデニン合成能を有しこれら栄養欠乏下でも生育可能となる性質を利用し、エストロジェン共存下で生育してきた酵母の培養を続けた。生育した各酵母から定法によりDNAを調製し、大腸菌KC8株(Clontech KC8 electrocompetent cells, Catalog No. C2023−1)に電気的に遺伝子導入したのち、ベイト蛋白発現ベクター分離用にはトリプトファン欠乏下で、プレイ蛋白発現ベクター分離用にはロイシン欠乏下で、コロニーを選択した。いずれのDNAについてもシークエンシングにより配列同定を行い、ベイト蛋白発現ベクターに変異が含まれていないことを確認した上で、プレイ蛋白発現ベクターに挿入されている塩基配列を公共データベースによりBLASTサーチした。
同定したプレイ蛋白発現ベクターは、個々に酵母株に導入した。その際、特定の6蛋白(GAL4のDNA結合領域との融合蛋白)を発現するプラスミドを同時に導入した。この際、βガラクトシダーゼ活性陽性のクローンは、擬陽性として除いた。残ったプレイベクターのうち、ベイトベクターと同時に酵母株に導入した際にのみβガラクトシダーゼ活性陽性となったものについては、真の陽性クローンとした。
上記の結果から、エストロジェン受容体とエストロジェン依存的に結合する蛋白質(本発明蛋白質を含む)を同定した。表1に結果を示した。
【表1】
上記の結果から、ZNF339、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、NCOA6、及びNRIP1がエストロジェン受容体とE2依存的に相互作用することがわかった。また、PRL4がエストロジェン受容体と相互作用し、E2存在下で該相互作用が弱くなることがわかった。
【0155】
実施例2 ヒト組織サンプルからトータルRNAの調製
下記患者群のサンプルから、常法に従いトータルRNAを調製した。
U95
Breast_Infil d & l car 乳房 浸潤腺性管癌&浸潤腺小葉
Breast_Infil duct car 乳房 浸潤性腺管癌
Breast_Infil lobular car 乳房 浸潤性小葉癌
Breast_normal 乳房 正常組織
CERVIX_sq 子宮頚部 扁平上皮細胞腫
Cervix_normal 子宮頚部 正常組織
Endometrium_adenocar 子宮内膜腺癌
Endometrium_normal 子宮内膜 正常組織
Ovary_adenocar 卵巣 腺癌
Ovary_cl.cell.adenocar 卵巣 明細胞癌
Ovary_muc.cys.adenocar 卵巣 粘液嚢胞腺腫
Ovary_pap.ser.adenocar 卵巣 乳頭状漿液性腺腫
Ovary_ser.cystadenocar 卵巣 漿液性嚢腺癌
Ovary_normal 卵巣 正常組織
Prostate_adenocar 前立腺 腺癌
Prostate_normal 前立腺 正常組織
U133
Breast_Infil d & l car 乳房 浸潤腺性管癌&浸潤腺小葉癌
Breast_Infil duct car 乳房 浸潤性腺管癌
Breast_Infil lobular car 乳房 浸潤性小葉癌
Breast_intra car 乳房 腺管内癌
Breast_medu car 乳房 髄様癌
Breast_muci adenocar 乳房 粘液腺癌
Breast_papi adenocar 乳房 乳頭状腺癌
Breast_normal 乳房 正常組織
Cervix_adenocar 子宮頚部 腺癌
Cervix_sqcar 子宮頚部 扁平上皮細胞腫
Cervix_normal 子宮頚部 正常組織
Endometrium_adenocar 子宮内膜 腺癌
Endometrium_papi adcar 子宮内膜 乳頭状腺癌
Endometrium_normal 子宮内膜 正常組織
Ovary_adenocar 卵巣 腺癌
Ovary_cl cell car 卵巣 明細胞癌
Ovary_muc.cys.adenocar 卵巣 粘液嚢胞腺腫
Ovary_pap.ser.adenocar 卵巣 乳頭状漿液性腺腫
Ovary_ser.cystadenocar 卵巣 漿液性嚢腺癌
Ovary_normal 卵巣 正常組織
Prostate_adenocar 前立腺 腺癌
Prostate_normal 前立腺 正常組織
【0156】
実施例3 DNAチップ解析
実施例2に示したサンプルより調製したtotal RNAを用いて、DNAチップ解析を行った。なお、DNAチップ解析はAffymetrix社Gene Chip Human Genome U95セット及びU133セットを用いて行った。具体的には、解析は、(1) total RNAからcDNAの調製、(2) 該cDNAからラベル化cRNAの調製、(3) ラベル化cRNAのフラグメント化、(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ、(5) プローブアレイの染色、(6) プローブアレイのスキャン、及び(7) 遺伝子発現解析、の手順で行った。
【0157】
(1) total RNAからcDNAの調製
実施例2で得られた各total RNA 10μgとT7−(dT)24プライマー(Amersham社製)100pmolを含む11μLの混合液を、70℃、10分間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、SuperScript Choice System for cDNA Synthesis(Gibco−BRL社製)に含まれる5×First Strand cDNA Buffer 4μL、該キットに含まれる0.1M DTT (dithiothreitol)2μL、該キットに含まれる10mM dNTP Mix 1μLを添加し、42℃で2分間加熱した。更に、該キットに含まれるSuper ScriptII RT 2μL(400U)を添加し、42℃で1時間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、DEPC処理水(ナカライテスク社製)滅菌蒸留水91μL、該キットに含まれる5×Second Strand Reaction Buffer 30μL、10mM dNTP Mix 3μL、該キットに含まれるE. coli DNA Ligase 1μL(10U)、該キットに含まれるE. coli DNA Polymerase I 4μL(40U)、該キットに含まれるE. coli RNaseH 1μL(2U)を添加し、16℃で2時間反応させた。次いで、該キットに含まれるT4 DNA Polymerase 2μL(10U)を加え、16℃で5分間反応させた後、0.5M EDTA 10μLを添加した。次いで、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液(ニッポンジーン社製)162μLを添加し、混合した。該混合液を、予め室温、14,000rpm、30秒間遠心分離しておいたPhase Lock Gel Light(エッペンドルフ社製)に移し、室温で14,000rpm、2分間遠心分離した後、145μLの水層をエッペンドルフチューブに移した。得られた溶液に、7.5M酢酸アンモニウム溶液72.5μL、エタノール362.5μLを加えて混合した後、4℃で14,000rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、作製したcDNAを含むペレットを得た。その後、該ペレットに80%エタノール0.5mLを添加し、4℃で14,000rpm、5分間遠心分離した後、上清を捨てた。再度同様の操作を行った後、該ペレットを乾燥させ、DEPC処理水12μLに溶解した。以上の操作により実施例1で調製した各トータル RNAから、各cDNAを取得した。
【0158】
(2) cDNAからラベル化cRNAの調製
各cDNA溶液5μLに、DEPC処理水17μL、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10×HY Reaction Buffer 4μL、該キットに含まれる10×Biotin Labeled Ribonucleotides 4μL、該キットに含まれる10×DTT 4μL、該キットに含まれる10×RNase Inhibitor Mix 4μL、該キットに含まれる20×T7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃で5時間反応させて、ラベル化cRNAを調製した。反応後、該反応液にDEPC処理水60μLを加えたのち、RNeasy Mini Kit(GIAGEN社製)を用いて添付プロトコールに従い、調製したラベル化cRNAを精製した。
【0159】
(3) ラベル化cRNAのフラグメント化
各ラベル化cRNA 20μgを含む溶液に、5×Fragmentation Buffer(200mMトリス−酢酸 pH8.1(Sigma社製)、 500mM酢酸カリウム(Sigma社製)、150mM酢酸マグネシウム(Sigma社製))8μLを加えた反応液40μLを、94℃で35分間加熱した後、氷中に置いた。これによって、ラベル化cRNAをフラグメント化した。
【0160】
(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ
各フラグメント化cRNA 40μLに、5nM Control Oligo B2(Amersham社製)4μL、100×Control cRNA Cocktail 4μL、Herring sperm DNA(Promega社製)40μg、Acetylated BSA(Gibco−BRL社製)200μg、2×MES Hybridization Buffer(200mM MES、2M [Na+], 40mM EDTA、0.02% Tween20 (Pierce社製)、pH6.5〜6.7) 200μL、及びDEPC処理水144μLを混合し、400μLのハイブリカクテルを得た。得られた各ハイブリカクテルを99℃で5分間加熱し、更に45℃で5分間加熱した。加熱後、室温で14,000rpm、5分間遠心分離し、ハイブリカクテル上清を得た。
【0161】
一方、1×MESハイブリダイゼーションバッファーで満たしたHuman genome U95プローブアレイ(Affymetrix社製)を、ハイブリオーブン内で、45℃、60rpmで10分間回転させた後、1×MESハイブリダイゼーションバッファーを除去してプローブアレイを調製した。上記で得られたハイブリカクテル上清200μLを該プローブアレイにそれぞれ添加し、ハイブリオーブン内で45℃、60rpmで16時間回転させ、フラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを得た。
【0162】
(5) プローブアレイの染色
上記で得られたハイブリダイズ済みプローブアレイそれぞれからハイブリカクテルを回収除去した後、Non−Stringent Wash Buffer(6×SSPE(20×SSPE(ナカライテスク社製)を希釈)、0.01%Tween20、0.005%Antifoam0−30(Sigma社製))で満たした。次にNon−Stringent Wash BufferおよびStringent Wash Buffer(100mM MES、0.1M NaCl、0.01%Tween20)をセットしたGeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置にフラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを装着した。その後染色プロトコールEuKGE−WS2に従って、1次染色液(10μg/mL Streptavidin Phycoerythrin (SAPE)(MolecμLar Probe社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl(Ambion社製)、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)、 2次染色液(100μg/mL Goat IgG (Sigma社製)、3μg/mL Biotinylated Anti−Streptavidin antibody (Vector Laboratories社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)により染色した。
【0163】
(6) プローブアレイのスキャン、及び (7) 遺伝子発現量解析
染色した各プローブアレイをHP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)に供し、染色パターンを読み取った。染色パターンをもとにGeneChip Workstation System(Affymetrix社製)によってプローブアレイ上の遺伝子の発現を解析した。次に、解析プロトコールに従ってNormalizationを行ったのち、各サンプルにおける各プローブ(各遺伝子)の発現量(average difference)を算出した。同一のプローブにつき、サンプルの種類ごとに遺伝子発現量の平均値を求め、さらに各サンプル種類間における発現量の変化率を求めた。
【0164】
実施例4 ホルモン依存性癌患者組織にて発現が変動している遺伝子の選抜
酵母2ハイブリッドでヒトエストロジェン受容体と相互作用の見られた遺伝子群について、各正常組織に比べて、癌患者の病変組織で発現が変動しているプローブセットのうち、半減以下もしくは倍増以上のものを選択した。
【0165】
表中、Human U95プローブ名は Human Genome U95 Chip におけるプローブ名を示す。またHuman U133プローブ名はHuman Genome U133 Chipにおけるプローブ名を示す。表中 Acc Noは、GenBankデータベースにおけるアクセッション番号を示す。変動倍率は、Human Genome U95 Chip・Human Genome U133 Chipで解析した各正常組織の遺伝子発現量を1とした場合における癌患者病変組織での遺伝子発現量を示す(Human Genome U95 Chip:表2;Human Genome U133 Chip:表3)
【表2】
【表3】
選択された遺伝子の中には、既にエストロジェン受容体との相互作用が知られ、癌との関連が示されているNCOA3(AIB1)が含まれており、上記の選抜方法で確かにホルモン依存性癌患者に特徴的に発現が増加し、かつ治療薬のターゲットとなる遺伝子が選抜されていることが明らかとなった。以上のように、選別された遺伝子群は、正常組織と比較して ホルモン依存性癌患者の病変組織で特異的に発現が変動しており、また病態との関連性の高い遺伝子であった。従ってこれら遺伝子群及びその発現産物(蛋白質)は、ホルモン依存性癌に関する疾患マーカーとして応用可能であると考えられた。また、これらの遺伝子又はその発現産物(蛋白質)を用いることによって、ホルモン依存性癌を緩和、制御する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能であると考えられた。
【0166】
実施例5 本発明遺伝子発現制御剤のスクリーニング
MCF−7細胞(ヒト乳癌由来、ATCC株番号 HTB−22)を、10% 不活性化牛胎児血清(活性炭処理により血清中の脂溶性ホルモン類を除去した血清)、2mMグルタミン、50IU/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン含有Dulbecco’s Modified Eagle培地を用い、37℃、CO2濃度5%の条件下で培養する。計数した前記細胞を24穴組織培養プレートに0.6−1.2x105 cells/cm2で播種し、37℃、CO2濃度5%で培養する。これらの細胞に対して、被験物質含有溶液(100 μM、10 μM、及び 1 μMの各濃度の被験物質を含む溶液)を添加する。ここで対照実験として、被験物質無添加の細胞についても同様の培養を行う(コントロール)。これらの各培養細胞より抽出したRNAを用いて、実施例3に記載された方法で、本発明遺伝子の発現量を調べる。その発現量からコントロールと比べて、本発明遺伝子の発現量が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50% 以上変動している培養系に添加した被験物質を、癌を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
【0167】
実施例6 ヒトエストロジェン受容体とZNF339の相互作用
(細胞培養と遺伝子導入)
ヒト胎児腎臓由来HEK293および子宮頚癌由来HeLa細胞は、10%FCS(シグマ社)含有高グルコースDMEM(シグマ社)で継代培養した。遺伝子導入実験は、以下のように行った。すなわち、上記培地もしくはチャコール処理済み5%FCS(ハイクローン社)およびインスリン10−8M含有フェノールレッド不含高グルコースDMEM(インビトロジェン社)を用い、24穴プレートに細胞を適量植え継いだ。翌日、DNA混合液(ホタルルシフェラーゼレポーターベクター0.1〜0.15μg、発現ベクター0.075〜0.1μg、導入効率補正用ベクター0.01〜0.1μg)を作製し、遺伝子導入試薬LT−1(パンベラ社)もしくはLipofectoamine(インビトロジェン社)・OPTI−MEM1培地(インビトロジェン社)を用いて遺伝子導入を4〜6時間行った。培地交換した後、リガンドを添加し、終夜培養した。培養上清を除き、細胞溶解液(プロメガ社)180μlを添加のち−80℃に凍結保存した。室温で1時間程度放置した後、10μlをDual−luciferase assay system(プロメガ社)もしくはLuciferase assay system(プロメガ社)を用いたアッセイに使用した。各転写活性化能は、ウミシイタケルシフェラーゼ活性もしくはβガラクトシダーゼ活性(ICN社Aurora Gal−XEキットで測定)にて遺伝子導入効率を補正した値を「相対活性化値」として表示した。実験はn=2(各2ウエル)で行い結果は平均値で表した。なお、ベクターは、下記のものを使用した。
レポーターベクター:pFR−Luc(ストラタジーン社)、pERE−Luc(プロメガ社pGL3basicにコンセンサスエストロジェン応答配列とウサギβグロビンプロモーターを挿入したもの)
発現ベクター:hERa(ヒトエストロジェン受容体αコード領域全長発現ベクター)、rERb(ラットエストロジェン受容体βコード領域全長発現ベクター)pM/ER−LBD, pVP/ER−LBD(ヒトエストロジェン受容体αリガンド結合領域(アミノ酸280−568の部分)を、pMあるいはpVPベクター(Clontech社)に挿入)、pM/ZNF339F, pcZ/ZNF339(ヒトZNF339コード領域全長発現ベクター)、pM/ZNF339P(ヒト ZNF339アミノ酸166−272の部分)
【0168】
(ヒトエストロジェン受容体とZNF339の相互作用)
ヒトエストロジェン受容体とZNF339のエストロジェン依存的な相互作用を検討するため、Mammalian 2−hybrid法を用いた。これは、酵母GAL4のDNA結合領域と融合蛋白を発現するベクター(pM)とVP16の転写活性化領域と融合蛋白を発現するベクター(pVP)を用い、pMおよびpVPの下流に挿入された蛋白間に相互作用が生じるとレポーター活性が上昇する実験系である。結果を表4に示した。
【表4】
本系において、pM/ER−LBDのみの発現ではレポーター活性がE2(エストラジオール)依存的に237倍(E2: 0.1nM)および514倍(E2: 1nM)と上昇したが、pVP/ZNF339Pを共発現させると、E2依存的に423倍(E2: 0.1nM)および809倍(E2: 1nM)と上昇し、pM/ER−LBD単独に比べ明らかにレポーター活性が上昇した。
一方、pM側にZNF339、pVP側にER−LBDを用いた場合の結果を表5に示す。
【表5】
pM側にZNF339、pVP側にER−LBDを用いた場合、pMベクターに挿入の無い空ベクターを用いた場合と比較して、pM/ZNF339Pを用いた場合はE2依存的に2.36倍、pM/ZNF339Fを用いた場合でもE2依存的に1.36倍のレポーター活性上昇が認められた。
以上のことから、培養細胞を用いた2ハイブリッド法においても、ヒトエストロジェン受容体蛋白とヒトZNF339蛋白のエストロジェン依存的な相互作用が認められたと結論した。
【0169】
実施例7 エストロジェン情報伝達系におけるZNF339の効果
エストロジェンの作用は、標的遺伝子近傍にあるエストロジェン応答配列(ERE)にエストロジェン受容体が結合して転写活性を調節することで発揮される。ZNF339がエストロジェン情報伝達を調節するか否かを調べるために、レポーターアッセイを行った。すなわち、EREを有するレポーターベクターとエストロジェン受容体発現ベクター・ZNF339発現ベクターを共発現させ、E2(100nM)依存的なレポーター活性の変動を検討した。
その結果、ヒトエストロジェン受容体α・ラットエストロジェン受容体βいずれの場合にも、E2を添加するとレポーター活性が上昇した。ZNF339を共発現させると、さらにその活性が上昇した。この結果から、ZNF339はエストロジェン情報伝達を正に調節することが明らかとなった(図1)。
【0170】
【発明の効果】
本発明によって、ホルモン依存性癌患者の病変組織において、対応する正常組織と比較して特異的に発現変動している遺伝子が明らかになった。更に、本発明遺伝子の発現産物は、エストロジェン存在下でエストロジェン受容体と結合することが明らかになった。かかる遺伝子はホルモン依存性癌の遺伝子診断に用いられるマーカー遺伝子(プローブ、プライマー)として有用である。また、かかるマーカー遺伝子によればホルモン依存性癌であるかどうかを明らかにすることができ(診断精度が向上)、これによりより適切な治療を施すことが可能となる。すなわち、ホルモン依存性癌の適切な治療のためのツールとして利用することができる。
【0171】
また、上記遺伝子の発現変動とホルモン依存性癌との関連性から、該遺伝子の発現を調節する化合物は、ホルモン依存性癌の治療薬として有用と考えられる。従って、これら遺伝子の発現の変動、又は当該遺伝子がコードする蛋白質の発現やエストロジェン受容体との結合能の変動を指標とすることによって、ホルモン依存性癌の治療薬となり得る候補薬をスクリーニングし選別することが可能である。本発明は、このようなホルモン依存性癌治療薬の開発技術をも提供する。
【0172】
【配列表】
【0173】
【図面の簡単な説明】
【図1】エストロジェン受容体発現ベクターおよびZNF339発現ベクターを共発現させ、E2(100nM)依存的なレポーター活性の変動を検討した結果を示す図である。すなわち、ヒトエストロジェン受容体α(hERa)・ラットエストロジェン受容体β(rERb)のいずれの場合にも、E2存在下(+E2)で、E2非存在下(−E2)よりもレポーター活性が上昇することがわかる(pcZの欄参照)。更にZNF339を共発現させた場合にも同様の結果であったが、レポーター活性が更に上昇した(pcZ/ZNF339の欄参照)。
【発明の属する技術分野】
本発明はホルモン依存性癌の診断に有用な疾患マーカーに関する。より詳細には、本発明は、ホルモン依存性癌の診断においてプライマー又は検出プローブとして有効に利用できる疾患マーカーに関する。また本発明は、かかる疾患マーカーを利用したホルモン依存性癌の検出方法(診断方法)に関する。
【0002】
さらに本発明は、上記疾患マーカーを利用して、ホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬として有効な物質をスクリーニングする方法、並びに該方法によって得られる上記物質を有効成分とするホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬に関する。
【0003】
【従来の技術】
癌、すなわち悪性腫瘍は、生体内において元の組織とは形態が異なる腫瘍細胞の塊が、周辺組織とは無関係に過剰に増殖する疾患である。該腫瘍細胞は、生体内の他の組織へ転移し、浸潤する性質を有する。そのため悪性腫瘍に罹患した場合の致死率は非常に高い。癌の中には増殖過程においてホルモン依存性のものがあることが知られており、具体的には、正常細胞がホルモンに反応する組織の場合であり、エストロジェン依存性腫瘍である乳癌、子宮癌、卵巣癌、アンドロジェン依存性腫瘍である前立腺癌が挙げられる(非特許文献1を参照)。
癌の治療方法としては、外科手術により腫瘍を切除する方法、抗癌剤による化学療法、放射線療法、又は免疫賦活療法等が挙げられるが、副作用が強い、有効性が十分でない等の問題点があり、より優れた薬剤が求められている。
一方、ZNF339等の本発明蛋白質とホルモン性癌との関係は明らかではなかった(非特許文献2を参照)。
【非特許文献1】
Molecular Medicine 37(10), p1112−17, 1118−1122, 1124−1129(2000)
【非特許文献2】
Genomics, 80(3), 319−325 (2002)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ホルモン依存性癌の診断及び治療に有用な疾患マーカーを提供することを目的とする。より詳細には、本発明はホルモン依存性癌を特異的に反映した疾患マーカーを提供することを目的とする。さらに本発明は、該疾患マーカーを利用したホルモン依存性癌の検出方法(遺伝子診断方法)、該疾患の改善又は治療に有用な薬物をスクリーニングする方法、並びに該疾患の改善又は治療に有用な薬物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行っていたところ、従来はホルモン依存性癌との関連が明らかではなかったZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及び/又はNRIP1遺伝子(以下、本発明遺伝子と称する場合がある。)がコードする蛋白質が、エストロジェン受容体と相互作用し、かつエストロジェン存在下ではエストロジェンとの結合力が特異的に変動することを見出した。このことから、該蛋白質はエストロジェン受容体の転写制御に関与し、エストロジェン受容体が関与する癌の進行と密接に関連していると考えられた。
更に、本発明遺伝子が、ホルモン依存性癌患者の乳腺、子宮、卵巣又は前立腺組織において、正常組織(正常人の対応する組織)と比較して有意に発現が変動していることを見出した。
【0006】
以上のように本発明者らは、ホルモン依存性癌において、本発明遺伝子及びその発現産物である本発明蛋白質が、優れた疾患マーカーであるとの知見を得た。また、本発明遺伝子の発現制御、又は該遺伝子によりコードされる本発明蛋白質の発現制御や結合制御を指標としたスクリーニング系は、ホルモン依存性癌の予防、改善又は治療薬の探索に有効であるとの知見を得た。
本発明はかかる知見を基礎にして完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記に掲げるものである:
(1) ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及び/又はNRIP1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、ホルモン依存性癌の疾患マーカー。
(2) ホルモン依存性癌の検出においてプローブ又はプライマーとして使用される(1)記載の疾患マーカー。
(3) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ホルモン依存性癌の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと(1)又は(2)に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
(4) 工程(c)におけるホルモン依存性癌の罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が変動していることを指標として行われる、(3)に記載のホルモン依存性癌の検出方法。
(5) ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及び/又はNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質を認識する抗体を含有する、ホルモン依存性癌の疾患マーカー。
(6) ホルモン依存性癌の検出においてプローブとして使用される(5)記載の疾患マーカー。
(7) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むホルモン依存性癌の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製された蛋白質と(5)又は(6)に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来の蛋白質を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
(8) 工程(c)におけるホルモン依存性癌の罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が変動していることを指標として行われる(7)記載のホルモン依存性癌の検出方法。
(9) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むホルモン依存性癌の検出方法:
(a)エストロジェン存在下又は非存在下に、エストロジェン受容体と被験者の生体試料から調製された蛋白質とを接触させる工程、
(b)上記(a)の両条件下におけるエストロジェン受容体とZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの結合の度合を測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
(10) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
(11) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339遺伝子の発現を減少させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞におけるZNF339遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
(12) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現を変動させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する蛋白質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
(13) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現を減少させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞におけるZNF339遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
(14) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、エストロジェン受容体の結合を変動させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質を、エストロジェンとエストロジェン受容体の存在下に、ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかに接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるエストロジェン受容体と前記蛋白質との結合を測定し、該結合を被験物質を接触させない場合のエストロジェン受容体と前記蛋白質との結合と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、エストロジェン受容体と前記蛋白質との結合を変動させる被験物質を選択する工程。
(15) 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、エストロジェン受容体の結合を阻害させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質を、エストロジェンとエストロジェン受容体の存在下に、ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質に接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるエストロジェン受容体とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質との結合を測定し、該結合を被験物質を接触させない場合のエストロジェン受容体とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質との結合と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、エストロジェン受容体とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質との結合を阻害する被験物質を選択する工程。
(16) ホルモン依存性癌の改善又は治療剤の有効成分を探索するための方法である、(10)〜(15)のいずれかに記載のスクリーニング方法。
(17) ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(18) ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質が(10)記載のスクリーニング法により得られるものである、(17)記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(19) ZNF339遺伝子の発現を抑制する物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(20) ZNF339遺伝子の発現を抑制する物質が、(11)記載のスクリーニング法により得られるものである、(19)記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(21) ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量又はエストロジェン受容体との結合能を変動させる物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(22) ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量又はエストロジェン受容体との結合能を変動させる物質が、(12)又は(14)に記載のスクリーニング法により得られるものである、(21)記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(23) ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量又はエストロジェン受容体との結合能を抑制させる物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(24) ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量又はエストロジェン受容体との結合能を抑制させる物質が、(13)又は(15)に記載のスクリーニング法により得られるものである、(23)記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
(25) ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及び/又はNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質を有効成分として含有するエストロジェン受容体結合蛋白質。
(26) ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質を有効成分として含有するエストロジェン受容体活性化剤。
【0008】
上記のように、本発明によれば、ホルモン依存性癌の疾患マーカー、該疾患の検出系、本発明の遺伝子の発現を変動させる物質のスクリーニング系、本発明の蛋白質の発現もしくは結合を変動させる物質のスクリーニング系、及びこれらの物質を有効成分とするホルモン依存性癌の改善及び治療剤が提供される。
【0009】
本発明は、前述するように、本発明の遺伝子の産物(蛋白質)がエストロジェン受容体と相互作用し、かつ該遺伝子が、癌患者(ホルモン依存性癌)の乳腺、子宮、卵巣又は前立腺組織において、正常組織(正常者の対応する組織)と比較して有意に発現が変動していることを見出したことに基づくものである。従って、これらの遺伝子及びその発現産物〔蛋白質、(ポリ)(オリゴ)ペプチド〕は、ホルモン依存性癌の解明、診断、予防及び治療に有効に利用することができ、かかる利用によって医学並びに臨床学上、有用な情報や手段を得ることができる。さらに、個体(生体組織)における、本発明の遺伝子の発現又はその発現産物の検出、又は該遺伝子の変異又はその発現異常の検出は、ホルモン依存性癌の解明や診断に有効に利用することができる。
【0010】
また、本発明の遺伝子及びその発現産物並びにそれらからの派生物(例えば、遺伝子断片、抗体など)は、本発明の遺伝子の発現を変動させる物質、及び本発明の蛋白質の発現もしくは結合を変動させる物質のスクリーニングに有用であり、該スクリーニングによって得られる物質は、ホルモン依存性癌の予防、改善及び治療薬として有効である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC−IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、及び当該分野における慣用記号に従う。
【0012】
本明細書において「遺伝子」又は「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書において遺伝子(DNA)とは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA及びcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、及びこれらの断片のいずれもが含まれる。また当該「遺伝子」又は「DNA」には、特定の塩基配列(配列番号:1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,及び29)で示される「遺伝子」又は「DNA」だけでなく、これらによりコードされる蛋白質と生物学的機能が同等である改変体(例えば同族体(ホモログやスプライスバリアントなど)、変異体及び誘導体)をコードする「遺伝子」又は「DNA」が包含される。かかる同族体、変異体又は誘導体等の改変体をコードする「遺伝子」又は「DNA」としては、具体的には、後述の(1−1)項に記載のストリンジェントな条件下で、前記の配列番号:1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,及び29で示されるいずれかの特定塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「遺伝子」又は「DNA」を挙げることができる。
【0013】
例えばヒト由来の蛋白質のホモログをコードする遺伝子としては、当該蛋白質をコードするヒト遺伝子に対応するマウスやラットなど他生物種の遺伝子が例示でき、これらの遺伝子(ホモログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E−valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUniGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。結果として得られた他生物種遺伝子とヒト遺伝子との遺伝子ホモログの相関を示したリストから、特定の塩基配列で示されるヒト遺伝子に対応する遺伝子(ホモログ)としてマウスやラットなど他生物種の遺伝子を選抜することができる。
なお、遺伝子又はDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、又はイントロンを含むことができる。
【0014】
従って本明細書において、配列番号:1に記載の遺伝子は、ヒトZNF339(Homo sapiens zinc finger protein 339; GenBank Accession No. NM_021220)をコードする遺伝子であり、その「改変体」とは、配列番号:1に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:3に記載の遺伝子は、ヒトRPL4(Homo sapiens ribosomal protein L4; GenBank Accession No. NM_000968)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:3に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:5に記載の遺伝子は、ヒトBRD3(Homo sapiens bromodomain containing 3; GenBank Accession No. NM_007371)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:5に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。該同族体としては、マウスBRD3(GenBank Accession No. NM_023336)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:7に記載の遺伝子は、ヒトERAP140(GenBank Accession No. AF493978)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:7に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:9に記載の遺伝子は、ヒト ECH1(Homo sapiens enoyl coenzyme A ; GenBank Accession No. NM_001398)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:9に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:11に記載の遺伝子は、ヒト PPARBP(Homo sapiens PPAR binding protein ; GenBank Accession No. NM_004774)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:11に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:13に記載の遺伝子は、ヒト STRN(Homo sapiens striatin calmodulin ; GenBank Accession No. NM_003162)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:13に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:15に記載の遺伝子は、ヒト ZIN(Homo sapiens zinedin ; GenBank Accession No. NM_013403)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:15に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。該同族体としては、マウス ZIN(GenBank Accession No. AF414080)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:17に記載の遺伝子は、ヒト PERC(Homo sapiens PPAR−γ coactivator−1β ; GenBank Accession No. NM_133263)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:17に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。該同族体としては、マウスPERC(GenBank Accession No. NM_133249)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:19に記載の遺伝子は、ヒトNR0B2(Homosapiens nuclear receptor subfamily 0, groupB, member2; GenBank Accession No. NM_021969)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:19に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。該同族体としては、マウスNR0B2(GenBank Accession No. NM_011850)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:21に記載の遺伝子は、ヒト TIF1A(Homo sapiens transcriptional intermediary factor 1 ; GenBank Accession No. NM_003852)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:21に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:23に記載の遺伝子は、ヒト NCOA1(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 1 ; GenBank Accession No. NM_003743)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:23に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:25に記載の遺伝子は、ヒト NCOA2(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 2 ; GenBank Accession No. NM_006540)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:25に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:27に記載の遺伝子は、ヒト NCOA6(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 6 ; GenBank Accession No. NM_014071)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:27に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
また、本明細書において、配列番号:29に記載の遺伝子は、ヒト NRIP1(Homo sapiens nuclear receptor interacting protein 1 ; GenBank Accession No. NM_003489)をコードする遺伝子であり、その改変体とは、配列番号:29に記載の遺伝子の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などをコードする遺伝子(DNA)を表す。
【0015】
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNA及びDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
【0016】
本明細書において「蛋白質」又は「(ポリ)ペプチド」には、特定のアミノ酸配列(配列番号:2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,及び30)で示される「蛋白質」又は「(ポリ)ペプチド」だけでなく、これらと生物学的機能が同等であることを限度として、その改変体、すなわち同族体(ホモログやスプライスバリアント)、変異体、誘導体、成熟体及びアミノ酸修飾体などが包含される。ここでホモログとしては、ヒトの蛋白質に対応するマウスやラットなど他生物種の蛋白質が例示でき、これらはHomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定された遺伝子の塩基配列から演繹的に同定することができる。また変異体には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加及び挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。なお、上記変異体としては、変異のない蛋白質又は(ポリ)ペプチドと、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを挙げることができる。またアミノ酸修飾体には、天然に存在するアミノ酸修飾体、天然に存在しないアミノ酸修飾体が包含される。
【0017】
従って本明細書において、配列番号:2に記載の蛋白質は、ヒトZNF339(Homo sapiens zinc finger protein 339; GenBank Accession No. NM_021220)であり、その「改変体」とは、配列番号:2に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:4に記載の蛋白質は、ヒトRPL4(Homo sapiens ribosomal protein L4; GenBank Accession No. NM_000968)であり、その改変体とは、配列番号:4に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:6に記載の蛋白質は、ヒトBRD3(Homo sapiens bromodomain containing 3; GenBank Accession No. NM_007371)であり、その改変体とは、配列番号:6に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。該同族体としては、マウスBRD3(GenBank Accession No. NM_023336)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:8に記載の蛋白質は、ヒト ERAP140(GenBank Accession No. AF493978)であり、その改変体とは、配列番号:8に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:10に記載の蛋白質は、ヒト ECH1(Homo sapiens enoyl coenzyme A ; GenBank Accession No. NM_001398)であり、その改変体とは、配列番号:10に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:12に記載の蛋白質は、ヒト PPARBP(Homo sapiens PPAR binding protein ; GenBank Accession No. NM_004774)であり、その改変体とは、配列番号:12に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:14に記載の蛋白質は、ヒト STRN(Homo sapiens strietin calmodulin ; GenBank Accession No. NM_003162)であり、その改変体とは、配列番号:14に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:16に記載の蛋白質は、ヒト ZIN(Homo sapiens zinedin ; GenBank Accession No. NM_013403)であり、その改変体とは、配列番号:16に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。該同族体としては、マウス ZIN(GenBank Accession No. AF414080)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:18に記載の蛋白質は、ヒト PERC(Homo sapiens PPAR−γ coactivator−1β ; GenBank Accession No.NM_013261)であり、その改変体とは、配列番号:18に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。該同族体としては、マウスPERC(GenBank Accession No. NM_133249)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:20に記載の蛋白質は、ヒトNR0B2(Homosapiens nuclear receptor subfamily 0, groupB, member2; GenBank Accession NM_021969)であり、その改変体とは、配列番号:20に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。該同族体としては、マウスNR0B2(GenBank Accession No. NM_011850)が挙げられる。
また、本明細書において、配列番号:22に記載の蛋白質は、ヒト TIF1A(Homo sapiens transcriptional intermediary factor 1 ; GenBank Accession No. NM_003852)であり、その改変体とは、配列番号:22に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:24に記載の蛋白質は、ヒト NCOA1(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 1 ; GenBank Accession No. NM_003743)であり、その改変体とは、配列番号:24に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:26に記載の蛋白質は、ヒト NCOA2(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 2 ; GenBank Accession No. NM_006540)であり、その改変体とは、配列番号:26に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:28に記載の蛋白質は、ヒト NCOA6(Homo sapiens nuclear receptor coactivator 6 ; GenBank Accession No. NM_014071)であり、その改変体とは、配列番号:28に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
また、本明細書において、配列番号:30に記載の蛋白質は、ヒト NRIP1(Homo sapiens nuclear receptor interacting protein 1 ; GenBank Accession No. NM_003489)であり、その改変体とは、配列番号:30に記載の蛋白質の同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。
【0018】
本明細書でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、又はFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
【0019】
本明細書における「ホルモン依存性癌」は、具体的にはエストロジェン受容体陽性のエストロジェン依存性腫瘍である乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌等が挙げられる。
ここで、エストロジェンとは性ホルモンの一種であり、エストラジオールを代表とする、エストロン、エストリオール、エキリン、エキレニンなどのステロイドホルモンとその代謝物、ホモエストロン、エチニルエストラジオール、ドワジノールなどの前記ホルモンの化学的誘導体、スチルベストロール、ヘキセストロールなどの合成非ステロイドエストロジェンがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
本明細書において「疾患マーカー」とは、ホルモン依存性癌の罹患の有無、罹患の程度若しくは改善の有無や改善の程度を診断するために、またホルモン依存性癌の予防、改善又は治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接又は間接的に利用されるものをいう。これには、ホルモン依存性癌の罹患に関連して生体内、特に乳腺、子宮、卵巣又は前立腺組織において、発現が変動する遺伝子又は蛋白質を特異的に認識し、また結合することのできる(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチド又は抗体が包含される。これらの(ポリ)(オリゴ)ヌクレオチド及び抗体は、上記性質に基づいて、生体内、組織や細胞内などで発現した上記遺伝子及び蛋白質を検出するためのプローブとして、また(オリゴ)ヌクレオチドは生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
【0021】
さらに本明細書において診断対象となる「生体組織」とは、ホルモン依存性癌に伴い本発明の遺伝子の発現が変動する組織を指し、好ましくは癌が疑われる組織(担癌組織)を用いることができる。具体的には乳腺、子宮、卵巣又は前立腺などがあげられるが、これに限定されるものではない。
さらに本明細書において「エストロジェン受容体活性化剤」とは、エストロジェン受容体二量体による転写活性を促進する物質を指し、好ましくはエストラジオール等のエストロジェンがエストロジェン受容体に結合することによる該転写活性を促進する物質を表す。
【0022】
以下、これらのZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子(以下これらの遺伝子を併せて本発明遺伝子と称する場合がある)、並びにこれらの発現産物、及びそれらの派生物について、具体的な用途を説明する。
【0023】
(1)ホルモン依存性癌の疾患マーカー及びその応用
(1−1) ポリヌクレオチド
本発明遺伝子はいずれも公知の遺伝子であり、当業者によく知られた方法で取得することができる。取得方法については、Molecular Cloning,第2版, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1989), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985)に記載されている。具体的には、被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の本発明遺伝子の領域が増幅できるように、本発明遺伝子配列に基づいて調製した一対のプライマーをこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、増幅二本鎖DNAを取得する方法を例示することができる。
【0024】
本発明は、前述するように、ホルモン依存性癌に罹患した患者の乳腺、子宮、卵巣又は前立腺組織において、正常組織に比して、本発明遺伝子が特異的に発現変動しているという知見を発端に、これらの遺伝子発現の有無や発現の程度を検出することによって上記ホルモン依存性癌の罹患の有無や罹患の程度が特異的に検出でき、該疾患の診断を正確に行うことができるという知見に基づくものである。
【0025】
従って、上記ポリヌクレオチドは、被験者における上記遺伝子の発現の有無又はその程度を検出することによって、該被験者がホルモン依存性癌に罹患しているか否か又はその罹患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用である。
また上記ポリヌクレオチドは、後述の(3−1)項に記載するようなホルモン依存性癌の予防、改善又は治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、本発明遺伝子の発現を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
【0026】
本発明の疾患マーカーは、本発明遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドからなるものを挙げることができる。
【0027】
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、本発明遺伝子の塩基配列からなるポリヌクレオチドの全長配列、又は該塩基配列において少なくとも連続した15塩基長の塩基配列を有するその部分配列(ここでは便宜上、これらを「正鎖」ともいう)に対して、A:T及びG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係を有するものであってもよい。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
【0028】
ここで、正鎖側のポリヌクレオチドには、本発明遺伝子の部分配列を有するものだけでなく、上記相補鎖の塩基配列に対してさらに相補的な関係にある塩基配列からなる鎖を含めることができる。
【0029】
さらに上記正鎖のポリヌクレオチド及び相補鎖(逆鎖)のポリヌクレオチドは、各々一本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されても、また二本鎖の形態で疾患マーカーとして使用されてもよい。
【0030】
本発明のホルモン依存性癌の疾患マーカーは、本発明遺伝子から選択される、1又は複数の遺伝子の塩基配列(全長配列)からなるポリヌクレオチドであってもよいし、その相補配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。またこれら本発明遺伝子もしくは該遺伝子に由来するポリヌクレオチドを選択的に(特異的に)認識するものであれば、上記全長配列又はその相補配列の部分配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。この場合、部分配列としては、上記全長配列又はその相補配列の塩基配列から任意に選択される少なくとも15個の連続した塩基長を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。該塩基長についてはマーカーの用途に応じて、長さを適宜選択し設定することができる。
【0031】
なお、ここで「選択的に(特異的に)認識する」とは、例えばノーザンブロット法においては、本発明の遺伝子、又はこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に検出できること、またRT−PCR法においては、本発明遺伝子、又はこれらに由来するポリヌクレオチドが特異的に生成されることを意味するが、それに限定されることなく、当業者が上記検出物又は生成物がこれらの遺伝子に由来するものであると判断できるものであればよい。
【0032】
本発明の疾患マーカーは、例えば配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27又は29に記載の塩基配列をもとに、例えばprimer 3( http://www.genome.wi.mit.edu/ cgi−bin/primer/primer3.cgi)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。具体的には前記本発明遺伝子の塩基配列を primer 3又はベクターNTIのソフトウエアにかけて得られる、プライマー又はプローブの候補配列、若しくは少なくとも該配列を一部に含む配列をプライマー又はプローブとして使用することができる。
【0033】
(1−2)プローブ又はプライマーとしてのポリヌクレオチド
本発明においてホルモン依存性癌の検出(診断)は、被験者の生体組織、特に乳腺、子宮、卵巣又は前立腺組織における、本発明遺伝子から選ばれる1又は複数の遺伝子の発現の有無又は発現レベル(発現量)を評価することによって行われる。この場合、上記本発明の疾患マーカーは、上記遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し増幅するためのプライマーとして、又は該RNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するためのプローブとして利用することができる。
【0034】
本発明疾患マーカーをホルモン依存性癌の検出(遺伝子診断)においてプライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。
【0035】
本発明の疾患マーカーは、ノーザンブロット法、RT−PCR法、in situハイブリダーゼーション法などといった、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマー又はプローブとして利用することができる。該利用によってホルモン依存性癌における本発明遺伝子の発現の有無又は発現レベル(発現量)を評価することができる。
測定対象試料としては、使用する検出方法の種類に応じて、被験者の癌組織の一部を採取し、そこから常法に従って調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
【0036】
また、生体組織における本発明遺伝子の遺伝子発現レベルは、DNAチップを利用して検出あるいは定量することができる。この場合、本発明の疾患マーカーは当該DNAチップのプローブとして使用することができる(例えば、アフィメトリックス社の Gene Chip Human Genome U95 A,B,C,D,Eの場合、25bpの長さのポリヌクレオチドプローブとして用いられる)。かかるDNAチップを、生体組織から採取したRNAをもとに調製される標識DNA又はRNAとハイブリダイズさせ、該ハイブリダイズによって形成された上記プローブ(本発明疾患マーカー)と標識DNA又はRNAとの複合体を、該標識DNA又はRNAの標識を指標として検出することにより、生体組織中での本発明遺伝子の発現の有無又は発現レベル(発現量)が評価できる。
【0037】
上記DNAチップは、本発明遺伝子のいずれかと結合し得る1種又は2種以上の本発明疾患マーカーを含んでいれば良い。複数の疾患マーカーを含むDNAチップの利用によれば、ひとつの生体試料について、同時に複数の遺伝子の発現の有無又は発現レベルの評価が可能である。
【0038】
本発明の疾患マーカーは、ホルモン依存性癌の診断、検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)に有用である。具体的には、該疾患マーカーを利用したホルモン依存性癌の診断は、被験者の癌組織と正常者の対応する組織における本発明遺伝子の1又は複数遺伝子の発現レベルの違いを判定することによって行うことができる。この場合、遺伝子発現レベルの違いには、発現のある/なしの違いだけでなく、被験者の癌組織と正常者の対応する組織の両者ともに発現がある場合でも、両者間の発現量の格差が2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的には本発明の遺伝子がホルモン依存性癌で発現上昇を示す場合、被験者の癌組織で発現しており、該発現量が正常者の対応する組織の発現量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多ければ、被験者についてホルモン依存性癌の罹患が疑われる。あるいは、本発明の遺伝子がホルモン依存性癌で発現減少を示す場合、被験者の癌組織の該発現量が正常者の対応する組織の発現量と比べて0.5倍以下、好ましくは0.3倍以下の値であれば、被験者についてホルモン依存性癌の罹患が疑われる。
【0039】
(1−3)抗体
本発明は、ホルモン依存性癌の疾患マーカーとして、本発明蛋白質を特異的に認識することのできる抗体を提供する。
【0040】
なお、本発明蛋白質は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,及び29)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養及び培養物からの蛋白質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
【0041】
上記抗体は、被験者における上記蛋白質の発現の有無又はその程度を検出することによって、該被験者がホルモン依存性癌に罹患しているか否か又はその疾患の程度を診断することのできるツール(疾患マーカー)として有用である。
また上記抗体は、後述の(3−2)項に記載するようなホルモン依存性癌の予防、改善又は治療に有用な候補物質のスクリーニングにおいて、本発明蛋白質のいずれかの発現変動を検出するためのスクリーニングツール(疾患マーカー)としても有用である。
【0042】
本発明の抗体は、その形態に特に制限はなく、本蛋白質のいずれかを免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよい。さらにこれら本発明蛋白質のアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体も、本発明の抗体に含まれる。
【0043】
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current Protocol in Molecular Biology, Chapter 11.12〜11.13(2000))。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本発明蛋白質を用いて、あるいは常法に従ってこれら本発明蛋白質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本発明蛋白質、又はこれら蛋白質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
【0044】
抗体の作製に免疫抗原として使用される本発明蛋白質は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,及び29)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養及び培養物からの蛋白質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
【0045】
具体的には、本発明蛋白質をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的蛋白質を回収することによって、本発明抗体の製造のための免疫抗原としての蛋白質を得ることができる。また、これら本発明蛋白質の部分ペプチドは、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報(配列番号2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,及び30)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。
【0046】
なお、本発明蛋白質の「改変体」としては、その同族体(ホモログ)、変異体及び誘導体などを表す。該誘導体としては、本発明蛋白質のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ改変前の元の蛋白質と免疫学的に同等の活性を有する蛋白質を挙げることができる。
【0047】
ここで同等の免疫学的活性を有する蛋白質としては、適当な動物あるいはその細胞において特定の免疫反応を誘発し、かつ本発明蛋白質に対する抗体と特異的に結合する能力を有する蛋白質を挙げることができる。
【0048】
なお、蛋白質におけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その免疫学的活性が保持される限り制限はない。免疫学的活性を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また置換されるアミノ酸は、置換後に得られる蛋白質がZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、又はNRIP1と同等の免疫学的活性を保持している限り、特に制限されないが、蛋白質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0049】
本発明抗体は、また、本発明蛋白質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを用いて調製されるものであってよい。かかる抗体の製造のために用いられるオリゴ(ポリ)ペプチドは、機能的な生物活性を有することは要しないが、本発明蛋白質と同様な免疫原特性を有するものであることが望ましい。好ましくはこの免疫原特性を有し、且つ本発明蛋白質のアミノ酸配列において少なくとも連続する8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるオリゴ(ポリ)ペプチドを例示することができる。
【0050】
かかるオリゴ(ポリ)ペプチドに対する抗体の製造は、宿主に応じて種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を高めることによって行うこともできる。限定はされないが、そのようなアジュバントには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、並びにリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノールのような表面活性物質、BCG(カルメット−ゲラン桿菌)やコリネバクテリウム−パルヴムなどのヒトアジュバントが含まれる。
【0051】
本発明の抗体は、本発明蛋白質に特異的に結合する性質を有することから、該抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した上記蛋白質を特異的に検出することができる。すなわち、当該抗体は被験者の組織内における本発明蛋白質の発現の有無を検出するためのプローブとして有用である。
【0052】
具体的には、患者の癌組織の一部を採取し、そこから常法に従って蛋白質を調製して、例えばウェスタンブロット法、ELISA法など公知の検出方法において、上記抗体を常法に従ってプローブとして使用することによって、本発明蛋白質を検出することができる。
【0053】
ホルモン依存性癌の診断に際しては、被験者の癌組織における本発明蛋白質のいずれか少なくとも一つと、正常な対応する組織におけるこれらの蛋白質との量の違いを判定すればよい。この場合、タンパク量の違いには、タンパクのある/なし、あるいはタンパク量の違いが2倍以上、好ましくは3倍以上の場合が含まれる。具体的には、本発明蛋白質がホルモン依存性癌で発現が上昇している場合、該量が正常な対応する組織の発現産物量と比べて2倍以上、好ましくは3倍以上多いことが判定されれば、ホルモン依存性癌の罹患が疑われる。具体的には、本発明蛋白質がホルモン依存性癌で発現が減少している場合、該量が正常な対応する組織の発現産物量と比べて0.5倍以下、好ましくは0.3倍以下の値であることが判定されれば、ホルモン依存性癌の罹患が疑われる。
【0054】
(2)ホルモン依存性癌の検出方法(診断方法)
本発明は、前述した本発明疾患マーカーを利用したホルモン依存性癌の検出方法(診断方法)を提供するものである。
【0055】
具体的には、本発明の検出方法(診断方法)は、被験者の癌組織に含まれるホルモン依存性癌に関連する本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、ならびにこれらの遺伝子に由来する蛋白質(本発明蛋白質)の量(レベル)を検出し、その発現量又はその蛋白質量を測定することにより、ホルモン依存性癌の罹患の有無又はその程度を診断するものである。また本発明の検出(診断)方法は、例えばホルモン依存性癌患者において、該疾患の改善のために治療薬を投与した場合における、該疾患の改善の有無又はその程度を検出(診断)することもできる。
【0056】
本発明の検出方法は次の(a)、(b)及び(c)の工程を含むものである:
(a) 被験者の生体試料と本発明の疾患マーカーを接触させる工程、
(b) 生体試料中の本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、又は本発明蛋白質のいずれかの蛋白質量を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c) (b)の結果をもとに、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
【0057】
ここで用いられる生体試料としては、前記生体組織由来の試料があげられる。具体的には、該組織から調製されるRNA含有試料、若しくはそれからさらに調製されるポリヌクレオチドを含む試料、又は上記組織から調製される蛋白質を含む試料を挙げることができる。かかるRNA、ポリヌクレオチド又は蛋白質を含む試料は、被験者の癌組織の一部を採取し、そこから常法に従って調製することができる。
本発明の診断方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じて、具体的には下記のようにして実施される。
【0058】
(2−1) 測定対象の生体試料としてRNAを利用する場合
測定対象物としてRNAを利用する場合、ホルモン依存性癌の検出は、具体的に下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと、前記本発明の疾患マーカー(本発明遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド)とを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
【0059】
測定対象物としてRNAを利用する場合は、本発明の検出方法(診断方法)は、該RNA中の本発明遺伝子のいずれかの発現レベルを検出し、測定することによって実施される。具体的には、前述のポリヌクレオチドからなる本発明の疾患マーカー(本発明遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチド)をプライマー又はプローブとして用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法を行うことにより実施できる。
【0060】
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプローブとして用いることによって、RNA中の本発明遺伝子のいずれかの発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、本発明の疾患マーカー(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された疾患マーカー(DNA)とRNAとの二重鎖を、疾患マーカーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II、富士フィルム社製)又は蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて、該プロトコールに従って疾患マーカー(プローブDNA)を標識し、被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、疾患マーカーの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
【0061】
RT−PCR法を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをプライマーとして用いることによって、RNA中の本発明遺伝子のいずれかの発現の有無や発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、被験者の生体組織由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の本発明遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の疾患マーカーから調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT−PCR Reagents (Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT−PCR反応液を調製し、ABI PRISM 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems 社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
【0062】
DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記疾患マーカーをDNAプローブ(1本鎖又は2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに被験者の生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAとハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の疾患マーカーから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。また、上記DNAチップとして、本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベルの検出、測定が可能なDNAチップを用いることもできる。かかる遺伝子の発現レベルを検出、測定することができるDNAチップとしては、Affymetrix社のGene Chip Human Genome U95 A, B,C, D, Eを挙げることができる。かかるDNAチップを用いた、被験者RNA中の本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベルの検出、測定については、実施例において詳細に説明する。
【0063】
(2−2) 測定対象の生体試料として蛋白質を用いる場合
測定対象物として蛋白質を用いる場合は、本発明のホルモン依存性癌の検出方法(診断方法)は、生体試料中の本発明蛋白質のいずれかを検出し、その量を測定することによって実施される。具体的には下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む方法によって実施することができる:
(a)被験者の生体試料から調製された蛋白質と抗体に関する本発明の疾患マーカー(本発明蛋白質を認識する抗体)とを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来の蛋白質を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
【0064】
より具体的には、本発明の疾患マーカーとして抗体(本発明蛋白質を認識する抗体)を用いて、ウエスタンブロット法などの公知方法で、本発明蛋白質のいずれかを検出、定量する方法を挙げることができる。
【0065】
ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシターゼ(HRP)などの酵素等で標識した標識抗体(一次抗体に結合する抗体)を用い、得られる標識化合物の放射性同位元素、蛍光物質などに由来するシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで検出し、測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を用いて、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
【0066】
なお、上記において測定対象とする本発明蛋白質は、エストロジェン存在下でエストロジェン受容体結合活性を有しており、本発明蛋白質の量の測定に代えて、該蛋白質のエストロジェン受容体結合活性を測定することもできる。即ち、本発明は、下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むホルモン依存性癌の検出方法を提供する。
(a)エストロジェン存在下又は非存在下に、エストロジェン受容体と被験者の生体試料から調製された蛋白質とを接触させる工程、
(b)上記(a)の両条件下におけるエストロジェン受容体とZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの結合の度合を測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。
当該方法は、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を測定する手段によって様々な実施態様をとることができる。
【0067】
本発明において使用されるエストロジェン受容体は、その由来は特に限定されず、いかなる哺乳動物由来のエストロジェン受容体であってもよく、あるいはそれらの自然もしくは人工の突然変異体であってもよい。エストロジェン受容体は、エストロジェンが結合することによりホモ又はヘテロ二量体を形成して働く転写因子として知られている。
本発明におけるエストロジェン受容体は、リガンド及び本発明蛋白質を結合しうる限り、N末及び/又はC末を欠失したフラグメントであってもよい。さらに、本発明のエストロジェン受容体は、His−tag、GST等の、親和性に基づく迅速且つ簡便な分離精製を可能にする配列との融合蛋白質であってもよい。
【0068】
また、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を測定する手段としては、(i) エストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体を直接測定する方法、(ii)エストロジェン応答配列(ERE)を含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子の発現を指標として測定する方法、 (iii) two−hybrid系を用いて測定する方法等が挙げられる。これらの各手段についての具体的態様は、以下の本発明のスクリーニング方法(3−3)において詳述される。
【0069】
(2−3)ホルモン依存性癌の診断
ホルモン依存性癌の診断は、例えば、被験者の癌組織における本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、又はこれらの遺伝子の発現産物である蛋白質(本発明蛋白質)の量もしくはエストロジェン受容体との結合能(以下これらを合わせて「蛋白質レベル」ということがある)を、正常な対応する組織における当該遺伝子発現レベル又は当該蛋白質レベルと比較し、両者の違いを判定することによって行うことができる。
【0070】
この場合、正常な対応する組織から採取調製した生体試料(RNA又は蛋白質を含む試料)が必要であるが、これらはホルモン依存性癌に罹患していない人の組織をバイオプシ等で採取することによって取得することができる。なお、ここでいう「ホルモン依存性癌に罹患していない人」とは、少なくともホルモン依存性癌の自覚症状がなく、好ましくは他の検査方法、例えば公知の腫瘍マーカー検査や組織の生検などの結果、ホルモン依存性癌でないと診断された人をいう。なお、当該「ホルモン依存性癌に罹患していない人」を以下、本明細書では単に正常者という場合もある。
【0071】
被験者の癌組織と正常者の対応する組織との遺伝子発現レベル又は蛋白質の量(レベル)の比較は、被験者の生体試料と正常者の生体試料を対象とした測定を並行して行うことで実施できる。並行して行わない場合は、複数(少なくとも2つ、好ましくは3以上、より好ましくは5以上)の正常な組織を用いて均一な測定条件で測定して得られた本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、若しくはこれらの遺伝子の発現産物である蛋白質(本発明蛋白質)の量(レベル)の平均値又は統計的中間値を、正常者の遺伝子発現レベル若しくは蛋白質の量として、比較に用いることができる。
【0072】
被験者が、ホルモン依存性癌であるかどうかの判断は、該被験者の癌組織における本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、又はその発現産物である蛋白質(本発明蛋白質)の量(レベル)が、正常者のそれらのレベルと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上多いことを指標として行うことができる。また、被験者の上記遺伝子発現レベル又は蛋白質レベルが、いかなる正常者のそれらのレベルに比べても高ければ、該被験者はホルモン依存性癌であると判断できるか、該疾患の罹患が疑われる。本明細書実施例のとおり、ホルモン依存性癌に罹患した患者において、ZNF339遺伝子、STRN遺伝子、乳房におけるTIF1A遺伝子、卵巣におけるNCOA2遺伝子及びNRIP1遺伝子の発現レベルが正常者に比べて上昇しているので、ZNF339遺伝子、STRN遺伝子、乳房におけるTIF1A遺伝子、卵巣におけるNCOA2遺伝子、及び/又はNRIP1遺伝子発現レベル、あるいは、その発現産物である蛋白質のレベルが、正常者のそれらのレベルと比較して2倍以上、好ましくは3倍以上多いことを指標として診断を行うことができる。
【0073】
あるいは、該被験者の癌組織における本発明遺伝子のいずれかの遺伝子発現レベル、又はその発現産物である蛋白質(本発明蛋白質)の量(レベル)が、正常者のそれらのレベルと比較して0.5倍以下、好ましくは0.3倍以下少ないことを指標として行うことができる。また、被験者の上記遺伝子発現レベル又は蛋白質の量が、いかなる正常者のそれらのレベルに比べて少なければ、該被験者はホルモン依存性癌であると判断できるか、該疾患の罹患が疑われる。本明細書実施例のとおり、ホルモン依存性癌に罹患した患者において、RPL4遺伝子、PPARBP遺伝子、PERC遺伝子、卵巣におけるTIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、及び子宮内膜におけるNCOA2遺伝子発現レベルが、正常者に比べて減少しているので、RPL4遺伝子、PPARBP遺伝子、PERC遺伝子、卵巣におけるTIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、及び/又は子宮内膜におけるNCOA2遺伝子発現レベル、あるいはその発現産物である蛋白質のレベルが、正常者のそれらのレベルと比較して0.5倍以下、好ましくは0.3倍以下少ないことを指標として診断を行うことができる。
【0074】
(3)候補薬のスクリーニング方法
(3−1) 遺伝子発現レベルを指標とするスクリーニング方法
本発明は、本発明遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質のスクリーニング方法を提供する。
【0075】
本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)被験物質と本発明遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞における本発明遺伝子のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、本発明遺伝子のいずれかの発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
【0076】
かかるスクリーニングに用いられる細胞としては、内在性及び外来性を問わず、本発明遺伝子のいずれかを発現する培養細胞全般を挙げることができる。培養細胞においてこれら本発明遺伝子が発現しているか否かは、公知のノーザンブロット法やRT−PCR法にてこれらの遺伝子発現を検出することにより、容易に確認することができる。
【0077】
当該スクリーニングに用いられる細胞の具体例としては、例えば以下の(1)〜(3):
(1) ホルモン依存性癌の動物モデルより単離、調製した癌組織やリンパ系組織由来の細胞、
(2) ホルモン依存性癌患者由来の癌組織やリンパ系組織由来の細胞、
(3) 本発明遺伝子のいずれかを導入した細胞、
等を挙げることができる。
【0078】
ここで前記(1)の動物モデルとしては、ホルモン依存性癌の動物モデルとして周知である如何なる動物モデルをも用いることができる。
また前記(1)の癌組織由来の細胞としては、好ましくは乳癌由来の株化細胞が挙げられる。
【0079】
前記(2)の癌患者由来の細胞としては、好ましくは乳癌由来の株化細胞が挙げられ、より具体的にはMCF−7細胞(乳腺由来、ATCC株番号 HTB−22)T−47D細胞(乳腺由来、ATCC株番号 HTB−133)、ZR−75−1細胞(乳腺由来、ATCC株番号 CRL−1500)等を挙げることができる。
【0080】
前記(3)の遺伝子導入細胞としては、前記(1)及び(2)に挙げた細胞の他、通常遺伝子導入に用いられる宿主細胞、すなわちCOP、L、C127、Sp2/0、NS−1、NIH3T3、ST2等のマウス由来細胞、ラット由来細胞、BHK、CHO等のハムスター由来細胞、COS1、COS3、COS7、CV1、Vero等のサル由来細胞、HeLa、293等のヒト由来細胞、及びSf9、Sf21、High Five等の昆虫由来細胞などが例示される。
さらに、本発明のスクリーニング方法に用いられる細胞には、細胞の集合体である組織なども含まれる。
【0081】
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含む)、ペプチド、蛋白質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質又はこれらを含む試料(被験試料)を上記細胞及び/又は組織と接触させることにより行われる。かかる被験試料としては、被験物質を含む細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0082】
また本発明スクリーニングに際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つ本発明遺伝子を発現できる培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
【0083】
実施例に示すように、ホルモン依存性癌に罹患した患者の癌組織では、正常な対応する組織に比して、特異的に本発明遺伝子の数種(ZNF339遺伝子、STRN遺伝子、乳房におけるTIF1A遺伝子、卵巣におけるNCOA2遺伝子、及びNRIP1遺伝子)が発現上昇している。あるいは、ホルモン依存性癌に罹患した患者の癌組織では、正常な対応する組織に比して、特異的に本発明遺伝子の数種(RPL4遺伝子、PPARBP遺伝子、PERC遺伝子、卵巣におけるTIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、及び子宮内膜におけるNCOA2遺伝子)が発現減少している。この知見から、これら本発明遺伝子の発現変動はホルモン依存性癌と関連していると考えられる。よって本発明のスクリーニング方法には、本発明遺伝子のいずれかの発現レベルを指標として、その発現を変動させる物質を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、ホルモン依存性癌の緩和/抑制作用を有する(ホルモン依存性癌に対して改善/治療効果を発揮する)候補物質を提供することができる。すなわち本発明のスクリーニング方法は、本発明遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質を探索することによって、ホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
【0084】
候補物質の選別は、具体的には本発明遺伝子のいずれかが発現している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した上記(1)〜(3)のいずれかの細胞における前記本発明遺伝子の発現レベルが、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなること/高くなることをもって、行うことができる。また、これら本発明遺伝子のいずれかの発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質[例えばリポポリサッカライド(Lipopolysaccharide:LPS)、ホルボールエステル(PMA等)、カルシウムイオノフォア、サイトカイン(IL−1、IL−6、IL−12、IL−18、TNFα、IFNγ等)等]を刺激剤として用いることによって誘導される発現が被験物質の存在によって制御されること、すなわち発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して低くなること/高くなることを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。
【0085】
上記いずれかの遺伝子の発現を抑制(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)する物質の探索は、具体的には被験物質を添加した細胞の本発明遺伝子の発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して低くなることを指標にして行うことができる。また、これら本発明遺伝子のいずれかの発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して低くなることを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。
また、上記いずれかの遺伝子の発現を上昇(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)する物質の探索は、具体的には被験物質を添加した細胞の本発明遺伝子の発現レベルが、被験物質を添加しない細胞のそのレベルに比して高くなることを指標にして行うことができる。また、これら本発明遺伝子のいずれかの発現に発現誘導物質を必要とする細胞を用いる場合は、発現誘導物質の存在下で被験物質を接触させた細胞の遺伝子発現が、発現誘導物質存在下で被験物質を接触させなかった対照細胞(正のコントロール)に比して高くなることを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。
【0086】
このような本発明のスクリーニング方法における遺伝子発現レベルの検出及び定量は、前記細胞から調製したRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドと本発明の疾患マーカーとを用いて、前記(2−1)項に記述したように、ノーザンブロット法、RT−PCR法など公知の方法、あるいはDNAチップを利用する方法に従って実施できる。指標とする遺伝子発現レベルの変動(抑制、促進、減少、増加)の程度は、被験物質(候補物質)を接触させた細胞における本発明遺伝子のいずれかの発現が、被験物質(候補物質)を接触させない対照細胞における発現量と比較して10%、好ましくは30%、特に好ましくは50%以上の変動(抑制、促進、減少、増加)を例示することができる。
【0087】
また本発明遺伝子のいずれかの発現レベルの検出及び定量は、これら本発明遺伝子の発現を変動させる遺伝子領域(発現制御領域)に、例えばルシフェラーゼ遺伝子などのマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を用いて、マーカー遺伝子由来の蛋白質の活性を測定することによっても実施できる。本発明遺伝子のいずれかの発現制御物質のスクリーニング方法には、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索する方法も包含されるものであり、この意味において、請求項10に記載する本発明遺伝子の概念には、これら本発明遺伝子の発現制御領域とマーカー遺伝子との融合遺伝子が含まれる。
【0088】
なお、上記マーカー遺伝子としては、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が好ましい。具体的には、上記のルシフェラーゼ遺伝子のほか、分泌型アルカリフォスファターゼ遺伝子、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子などのレポーター遺伝子が例示できる。
また、ここで前記本発明遺伝子の発現制御領域は、例えば該遺伝子の転写開始部位上流約1kb、好ましくは約2kbを用いることができる。
【0089】
本発明遺伝子の発現制御領域は、例えば(i)5’−RACE法(例えば、5’full Race Core Kit(宝酒造社製)等を用いて実施される)、オリゴキャップ法、S1プライマーマッピング等の通常の方法により、5’末端を決定するステップ;(ii)Genome Walker Kit(クローンテック社製)等を用いて5’−上流領域を取得し、得られた上流領域について、プロモーター活性を測定するステップ;を含む手法等により同定することができる。また融合遺伝子の作成、及びマーカー遺伝子由来の活性測定は公知の方法で行うことができる。
【0090】
本発明遺伝子のうち、ZNF339遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、NCOA6遺伝子、PPARBP遺伝子、及びTIF1A遺伝子はその発現産物がエストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を促進する。従って、これらの遺伝子については発現を抑制する物質を選別することが望まれる。一方、NRIP遺伝子については、その発現産物がエストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を抑制するので、この遺伝子については発現を促進する物質を選別することが望まれる。
【0091】
本発明のスクリーニング方法により選別される物質は、本発明遺伝子の少なくとも一種の遺伝子の遺伝子発現制御剤として位置づけることができる。これらの物質が有する本発明遺伝子に対する発現制御作用は、ホルモン依存性癌の発症に深く関わっている。よってこれらの物質は、ホルモン依存性癌を緩和、抑制(改善、治療)する薬物の有力な候補物質となる。
【0092】
(3−2)蛋白質の発現量を指標とするスクリーニング方法
本発明は、本発明蛋白質のいずれかの発現を変動させる物質をスクリーニングする方法を提供する。
本発明スクリーニング方法は、次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
【0093】
(a)被験物質と本発明蛋白質のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞における本発明蛋白質のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する蛋白質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、本発明蛋白質のいずれかの発現量を変動させる被験物質を選択する工程。
【0094】
本発明スクリーニングに用いられる細胞は、内在性及び外来性を問わず、本発明遺伝子のいずれかを発現し、発現産物としての本発明蛋白質のいずれかを有する培養細胞全般を挙げることができる。ここで本発明蛋白質の発現は、遺伝子産物である蛋白質を公知のウエスタン法にて検出することにより、容易に確認することができる。該細胞としては、具体的には、前記(3−1)項の(1)〜(3)に記載したような、ホルモン依存性癌の動物モデルより単離、調製した癌組織やリンパ系組織由来の初代培養細胞、ホルモン依存性癌患者の癌組織やリンパ系組織由来の初代培養細胞若しくは株化細胞、又は本発明遺伝子のいずれかを導入した株化細胞などが挙げられる。また当該細胞の範疇には、その細胞膜画分、細胞質画分、細胞核画分なども含まれる。
【0095】
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸(本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含む)、ペプチド、蛋白質、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質又はこれらを含む試料(被験試料)を上記細胞や細胞膜画分と接触させることにより行われる。かかる被験試料としては、被験物質を含む細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0096】
実施例に示すように、ホルモン依存性癌に罹患した患者の癌組織では、正常な対応する組織に比して、特異的に本発明遺伝子の発現が変動している。この知見から、これら本発明遺伝子の発現産物(本発明蛋白質)の発現亢進または発現抑制は、ホルモン依存性癌と関連していると考えられる。よって本発明のスクリーニング方法には、これら本発明蛋白質のいずれかのタンパク発現レベルを指標として、その発現量を減少または増加させる物質を探索する方法が包含される。このスクリーニング方法によって、ホルモン依存性癌の緩和/抑制作用を有する(ホルモン依存性癌に対して改善/治療効果を発揮する)候補物質を提供することができる。
【0097】
すなわち本発明のスクリーニング方法は、本発明蛋白質のいずれかの発現量を変動させる物質を探索することによって、ホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬の有効成分となる候補物質を提供するものである。
【0098】
候補物質の選別は、具体的には本発明蛋白質のいずれかを発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における前記本発明蛋白質のタンパク量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して変動する(低くなる/高くなる)ことを指標として、行うことができる。
【0099】
上記いずれかの蛋白質の発現を変動させる物質のうち、発現を低下(発現レベルの減少、発現誘導の抑制)するように変動させる候補物質の選別は、具体的には本発明蛋白質を発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における本発明蛋白質の蛋白量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して低くなることを指標として、行うことができる。
【0100】
上記いずれかの蛋白質の発現を変動させる物質のうち、発現を上昇(発現レベルの増加、発現誘導の亢進)するように変動させる候補物質の選別は、具体的には本発明蛋白質を発現産生している細胞を用いる場合は、被験物質(候補物質)を添加した細胞における、本発明蛋白質の蛋白量(レベル)が、被験物質(候補物質)を添加しない細胞のその量(レベル)に比して高くなることを指標として、行うことができる。
【0101】
本発明蛋白質のうち、ZNF339、NCOA1、NCOA2、NCOA6、PPARBP、及びTIF1Aはエストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を促進する。従って、これらの蛋白質については発現を抑制することが望まれる。一方、NRIPは、エストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を抑制するので、この蛋白質については発現を促進することが望まれる。
【0102】
本発明のスクリーニング方法にかかる本発明蛋白質のいずれかの産生量は、前述したように、例えば抗体に関する本発明疾患マーカー(例えば配列番号:2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,及び30に記載の蛋白質又はそのホモログを認識する抗体)を用いたウエスタンブロット法などの公知方法に従って定量できる。ウエスタンブロット法は、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシターゼ(HRP)などの酵素等で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器(BAS−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで測定することによって実施できる。また、一次抗体として本発明疾患マーカーを用いた後、ECL Plus Western Blotting Detction System (アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を利用して、該プロトコールに従って検出し、マルチバイオイメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
【0103】
(3−3) 蛋白質の結合能を指標とするスクリーニング方法
本発明は、本発明蛋白質とエストロジェン受容体との結合を変動させる物質をスクリーニングする方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は次の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)被験物質を、エストロジェンとエストロジェン受容体の存在下に、本発明蛋白質に接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるエストロジェン受容体と前記蛋白質との結合を測定し、該結合を被験物質を接触させない場合のエストロジェン受容体と前記蛋白質との結合と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、エストロジェン受容体と前記蛋白質との結合を変動させる被験物質を選択する工程。
【0104】
本発明のスクリーニング方法においては、エストロジェン存在下に本発明蛋白質のエストロジェン受容体への結合能に基づく如何なる測定方法をも利用することができる。すなわち、本発明蛋白質のエストロジェン受容体結合能測定系に被験物質を添加し、当該本発明蛋白質のエストロジェン受容体結合能を変動させる被験物質を、ホルモン依存性癌に対して改善/治療効果を有する候補物質として選択するスクリーニング方法であれば、本発明のスクリーニング方法の範疇に含まれる。
【0105】
本発明スクリーニング方法によってスクリーニングされる被験物質(候補物質)は、制限されないが、核酸、ペプチド、蛋白質(本発明蛋白質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、本発明スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質又はこれらを含む試料(被験試料)を、本発明蛋白質、エストロジェン及びエストロジェン受容体と接触させることにより行われる。被験試料としては、被験物質を含む、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0106】
本発明蛋白質のうち、ZNF339、NCOA1、NCOA2、NCOA6、PPARBP、及びTIF1Aはエストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を促進する。従って、これらの蛋白質についてはエストロジェン受容体との結合を抑制することが望まれる。一方、NRIPは、エストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を抑制するので、この蛋白質についてはエストロジェン受容体との結合を促進することが望まれる。
【0107】
本スクリーニング方法は、エストロジェン受容体と本発明蛋白質を反応系に提供する手段と、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を測定する手段によって様々な実施態様をとることができる。
【0108】
即ち、エストロジェン受容体及び本発明蛋白質を反応系に提供する手段としては、(i) それらを発現するように操作された宿主細胞から細胞抽出液として提供する方法、(ii) それらを発現するように操作された宿主細胞から分離精製して(例えば、適当なタグを有する融合蛋白質として発現するように操作された宿主細胞から、当該タグと親和性を有する担体を用いて分離精製して)提供する方法、(iii) それらをコードするDNAを含む発現ベクターから無細胞翻訳系を用いてインビトロ合成して提供する方法、(iv) それらを発現するように操作された宿主細胞内で反応を行わせる方法等が挙げられる。
【0109】
また、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を測定する手段としては、(i) エストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体を直接測定する方法、(ii)エストロジェン応答配列(ERE)を含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子の発現を指標として測定する方法、 (iii) two−hybrid系を用いて測定する方法等が挙げられる。これらの各手段についての具体的態様は、以下において詳述される。
【0110】
本スクリーニング系において、エストロジェン受容体は、好ましくは、エストロジェン受容体をコードする遺伝子を含む細胞から、例えば細胞抽出液として提供される。エストロジェン受容体をコードする遺伝子は、当該細胞に内在のエストロジェン受容体遺伝子であってもよいし、所定の宿主細胞に公知の手法を用いて導入された、外来のエストロジェン受容体をコードするDNAであってもよい。いずれの場合においても、当該細胞は、本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターを導入されたものであることが好ましい。
【0111】
エストロジェン受容体はまた、エストロジェン受容体をコードするDNAを含む発現ベクターから、ウサギ網状赤血球抽出液や小麦胚芽抽出液由来の無細胞翻訳系を用いたインビトロ合成により、提供されるものであってもよい。このような場合には、35S−Met等の標識アミノ酸を用いて標識エストロジェン受容体を容易に調製することができる。
【0112】
本スクリーニング方法において使用される本発明蛋白質は、前述の通りであり、エストロジェン存在下にエストロジェン受容体と結合し得るものである限り、その由来は特に限定されず、いかなる哺乳動物由来の本発明蛋白質であってもよく、あるいはそれらの自然もしくは人工の突然変異体であってもよく、ある一部の領域を欠失したフラグメントであってもよい。本発明のスクリーニング系が本発明蛋白質のエストロジェン受容体への結合を指標とするものである場合、本発明蛋白質は、エストロジェン受容体に結合する領域を必ず含む必要がある。さらにまた、本発明蛋白質は、His−tag、GST等の、親和性に基づく迅速且つ簡便な分離精製を可能にする配列との融合蛋白質であってもよい。
【0113】
本発明のスクリーニング系において、本発明蛋白質は、好ましくは、本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターを公知の手法により導入した宿主細胞から、例えば細胞抽出液として提供される。当該宿主細胞は、エストロジェン受容体を内因的に発現する哺乳動物細胞であるか、あるいは外来のエストロジェン受容体をコードするDNAを含む発現ベクターがさらに導入された細胞であることが好ましい。
【0114】
本発明蛋白質はまた、本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターから、ウサギ網状赤血球抽出液や小麦胚芽抽出液由来の無細胞翻訳系を用いたインビトロ合成により、提供されるものであってもよい。このような場合には、35S−Met等の標識アミノ酸を用いて標識本発明蛋白質を容易に調製することができる。
【0115】
エストロジェン受容体及び本発明蛋白質はまた、それらを発現するように操作された宿主細胞として提供されてもよく、この場合、当該宿主細胞自体が反応系を構成する。
【0116】
被験物質の存在下でエストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合が有意に調節されれば、本発明蛋白質によるホルモン依存性癌の増悪度が有意に抑制されるので、当該物質は癌の治療剤又は改善剤の有力な候補となる。
【0117】
本スクリーニング方法の第一の態様は、抗エストロジェン受容体抗体及び/又は抗本発明蛋白質抗体(本発明疾患マーカー)を用いて、あるいはエストロジェン受容体又は本発明蛋白質自体を標識して、エストロジェンの存在下、被験物質の有無におけるエストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体を直接測定することによりエストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合を調べるというものである。B/F(固液)分離を行うアッセイ系であって、エストロジェン受容体又は本発明蛋白質がタグを有する融合蛋白質として提供される場合は、固相化抗体に代えて当該タグと親和性を有する担体を使用することもできる。例えば、His−tagとの融合蛋白質であれば磁性ニッケルビーズ等、GST融合蛋白質であればグルタチオン固相化樹脂等が担体として挙げられる。このようなタグの使用は、エストロジェン受容体や本発明蛋白質を細胞抽出液のまま反応系に投入するのではなく分離精製して提供する場合に、迅速且つ簡便な分離を可能にするのにも有用である。
【0118】
具体的には、以下の方法が例示される。
(1)エストロジェン存在下であって被験物質の存在下及び非存在下にエストロジェン受容体と本発明蛋白質とを接触させて一定時間インキュベートした後、エストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体、遊離エストロジェン受容体及び遊離本発明蛋白質を電気泳動により分離し、標識抗エストロジェン受容体抗体及び標識本発明抗体を用いてエストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体に相当するバンド強度を測定する。例えば、本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターが導入され、かつ内在のエストロジェン受容体を発現する哺乳動物細胞の抽出液、あるいは外来のエストロジェン受容体をコードするDNAを含む発現ベクターと本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターとが導入された宿主細胞の抽出液に、エストロジェンとともに被験物質を添加してあるいはエストロジェンのみを添加してインキュベートした後、各反応液を非変性ゲル電気泳動にかけ、RIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識した各抗体でウェスタンブロッティングを行い、両方の抗体と交叉反応するバンドの強度を比較する。また、エストロジェン受容体及び/又は本発明蛋白質を上述のように無細胞翻訳系を用いて合成する場合、エストロジェン受容体又は本発明蛋白質のいずれか一方を35S−Met等を用いて標識しておけば、標識抗体をプローブとしたウェスタンブロッティングを行う代わりに、泳動ゲルのオートラジオグラフィーを行い、より高分子量の側のバンドの強度を比較すればよい。
【0119】
(2)あるいは、上記(1)において、反応液に抗エストロジェン受容体抗体又は抗本発明蛋白質抗体を加えて免疫沈降させた後で、沈降物を電気泳動して、RIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識した抗本発明蛋白質抗体又は抗エストロジェン受容体抗体を用いてウェスタンブロッティングを行い、検出されるバンドの強度を比較することもできる。免疫沈降は、好ましくは、プラスチックビーズやセファデックス等の不溶性担体に固相化した抗体を用いて行うことができる。また、エストロジェン受容体及び/又は本発明蛋白質を上述のように無細胞翻訳系を用いて合成する場合、エストロジェン受容体又は本発明蛋白質のいずれか一方を35S−Met等を用いて標識しておけば、他方に対する抗体を反応液に加えて免疫沈降させた後で、沈降物を電気泳動して泳動ゲルのオートラジオグラフィーを行い、検出されるバンドの強度を比較すればよい。
【0120】
(3)エストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体の測定は、慣用のイムノアッセイ系を用いて行うこともできる。例えば、反応液に抗エストロジェン受容体抗体又は抗本発明蛋白質抗体を加えて免疫沈降させ、液相を除去した後、RIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識した抗本発明蛋白質抗体又は抗エストロジェン受容体抗体を用いてRIA、EIA、FIA等を行い、検出されるシグナル強度を比較してもよい。また、エストロジェン受容体及び/又は本発明蛋白質を上述のように無細胞翻訳系を用いて合成する場合、エストロジェン受容体又は本発明蛋白質のいずれか一方を35S−Met等を用いて標識しておけば、他方に対する抗体を反応液に加えて免疫沈降させ、液相を除去した後にRIAを行うことによってもエストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体を測定することができる。
【0121】
(4)あるいは、表面プラズモン共鳴、蛍光偏光イムノアッセイ、蛍光消光イムノアッセイ、蛍光エネルギー転移イムノアッセイ等のB/F分離を要しない均一系イムノアッセイを用いれば、反応液から直接的にエストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体を測定することができる。
【0122】
本発明のスクリーニング法の第二の態様は、エストロジェン存在下でのエストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を、エストロジェン受容体に結合する本発明蛋白質量を指標として測定するというものである。被験物質の存在下において、非存在下に比べてエストロジェン受容体に結合する本発明蛋白質量が有意に減少すれば、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合が当該物質により阻害されたことを示す。
【0123】
本発明蛋白質は、エストロジェンと結合したエストロジェン受容体に結合するので、本実施態様においては、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の反応混合液中にさらにエストロジェンが共存する必要がある。エストロジェンには、前記したようにエストラジオール、エストロン、エストリオールなどの様々な種類が知られており、本発明ではいずれを使用してもよい。また、エストロジェンは、エストロジェン受容体に結合し得る限り特に制限はなく、天然由来のものの他、合成品も使用することができる。
【0124】
エストロジェン受容体に結合する本発明蛋白質量の測定は、上述の第一の態様におけるのと同様に、標識抗本発明蛋白質抗体を用いて、あるいは本発明蛋白質自体を標識することにより行うことができる。具体的には、エストロジェン及び本発明蛋白質の反応混合液に、プラスチックビーズやセファデックス等の不溶性担体に固相化したエストロジェン受容体を加えてインキュベートし、B/F分離した後、固相に結合した本発明蛋白質をRIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識した抗本発明蛋白質抗体を用いたイムノアッセイにより測定することができる。また、本発明蛋白質を無細胞翻訳系を用いて合成する場合、本発明蛋白質を35S−Met等を用いて標識しておけば、B/F分離後の固相に結合したRI標識量を測定することにより、エストロジェン受容体に結合した本発明蛋白質量を測定することができる。
【0125】
あるいは、表面プラズモン共鳴、蛍光偏光イムノアッセイ、蛍光消光イムノアッセイ、蛍光エネルギー転移イムノアッセイ等のB/F分離を要しない均一系イムノアッセイを用いれば、反応液から直接的にエストロジェン受容体に結合した本発明蛋白質を測定することができる。
【0126】
好ましい実施態様においては、エストロジェン受容体に結合する本発明蛋白質量は、ゲルシフトアッセイによって測定することができる。即ち、上述のようにして調製されるエストロジェン受容体及び本発明蛋白質の反応混合液に、RIもしくは非RI(酵素、蛍光等)標識したエストロジェン受容体を加えてインキュベートした後、反応液を電気泳動してエストロジェン受容体−本発明蛋白質複合体と遊離エストロジェン受容体とを分離し、高分子量域に検出されるバンドのシグナル強度を測定することにより調べることができる。
【0127】
本スクリーニング法の第三の態様は、エストロジェン存在下で本発明蛋白質とエストロジェン受容体の結合の度合を、エストロジェン応答配列(ERE)を含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子の発現を指標として測定するというものである。被験物質の存在下において、非存在下に比べて当該レポーター遺伝子の発現が有意に減少すれば、エストロジェン受容体二量体による転写活性化が、被験物質による本発明蛋白質とエストロジェン受容体の結合変動によって抑制されることを示す。
【0128】
本実施態様においては、エストロジェン受容体をコードするDNA、本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクター及びEREを含むプロモーター領域の制御下にあるレポーター遺伝子を含む発現ベクターを導入された哺乳動物細胞、あるいは、さらに本発明蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターを導入された宿主細胞を、被験物質の存在下及び非存在下で培養し、得られる培養物におけるレポーター遺伝子の発現を測定し、その発現量を比較する。また、エストロジェン受容体による標的遺伝子の転写活性化はリガンド依存的であるので、培養はエストロジェンの共存下で行う必要がある。
【0129】
宿主哺乳動物細胞としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター等の細胞が挙げられ、就中ヒト由来細胞が好ましい。具体的には、COP、L、C127、Sp2/0、NS−1、NIH3T3、ST2等のマウス由来細胞、ラット由来細胞、BHK、CHO等のハムスター由来細胞、COS1、COS3、COS7、CV1、Vero等のサル由来細胞、およびHeLa、293T等のヒト由来細胞などが例示される。
【0130】
レポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ペルオキシダーゼ等をコードするDNAが挙げられるが、これらに限定されない。プロモーターは、哺乳動物細胞で機能するものであって、近傍にERE配列を含むものであれば特に制限はない。
【0131】
遺伝子導入は、慣用のリポソーム法やエレクトロポレーション法を用いて行うことができる。
【0132】
遺伝子導入された宿主細胞は、例えば、約5〜20%のウシ胎仔血清(望ましくは、活性炭処理により血清中の脂溶性ホルモン類を除去した血清)を含む最少必須培地(MEM)[Science, 122, 501 (1952)]、ダルベッコ改変最少必須培地(DMEM)[Virology, 8, 396 (1959)]、RPMI1640培地[J. Am. Med. Assoc., 199, 519 (1967)]、199培地[Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 73, 1 (1950)]等を用いて培養することができる。培地のpHは約6〜8であるのが好ましく、培養は、通常約30〜約40℃で、エストロジェンの添加後、約3〜約72時間行なわれる。
【0133】
培養終了後、細胞を回収して適当な溶解バッファー中で破砕し、遠心により上清を得て細胞抽出液とし、これを用いてレポーター遺伝子の発現をアッセイすればよい。
【0134】
本発明のスクリーニング法の第四の態様は、エストロジェン受容体と本発明蛋白質の結合の度合を、いわゆるtwo−hybrid系を用いてレポーター遺伝子の発現や細胞質シグナル伝達系の活性化を指標として測定するというものである。
【0135】
本実施態様においては、エストロジェン受容体をコードするDNA又は本発明蛋白質をコードするDNAの一方を、GAL4等の転写因子のDNA結合ドメイン(BD)との融合蛋白質として発現するように含む発現ベクターと、他方のDNAを、VP16等の転写因子の転写活性化ドメイン(AD)との融合蛋白質として発現するように含む発現ベクターとを宿主細胞に導入し、得られる形質転換体をエストロジェンの存在下であって被験物質の存在下及び非存在下に培養して、得られる培養物におけるレポーター遺伝子の発現量を測定・比較する。当該宿主細胞は、BDが認識・結合し得るシスエレメント(BD応答エレメント)をプロモーター領域に含むレポーター遺伝子を担持するものである。細胞内で発現したBD融合蛋白質はBD応答エレメントに結合するが、エストロジェン受容体と本発明蛋白質が相互作用すれば、BD応答エレメント上にBDとADのhybridが形成され、その下流に位置するレポーター遺伝子の転写が活性化される。
【0136】
宿主細胞としては、上記第三の態様と同様の哺乳動物細胞が例示され、レポーター遺伝子発現ベクターとしては、上記のレポーター遺伝子発現ベクターにおいて、EREをBD応答エレメントに置換したものが例示される。
【0137】
エストロジェン受容体はそれ自体が転写制御因子であることから、レポーター遺伝子の発現を指標とする測定系では、擬陽性又は擬陰性を生じる可能性がある。従って、BD及びADに代えて、例えばSOS蛋白質及びミリスチレーションシグナルを用い、宿主細胞としてcdc25H株等の酵母温度感受性変異株を用いることにより、レポーター遺伝子の発現を指標とせずにエストロジェン受容体と本発明蛋白質の相互作用を検出することもできる。
【0138】
上記(3−1)〜(3−3)に記載する本発明のスクリーニング方法によって選別された候補物質は、さらにホルモン依存性癌のモデル動物として周知であるモデル動物を用いた薬効試験、安全性試験、さらにホルモン依存性癌患者への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的なホルモン依存性癌の改善又は治療薬を取得することができる。このようにして選別された物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)又は遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができる。
【0139】
なお、上記(3−1)〜(3−3)に記載するスクリーニング方法は、ホルモン依存性癌の改善又は治療薬の候補物質を選別するのみならず、ホルモン依存性癌の既存の若しくは新規な改善又は治療薬(候補薬)が、本発明遺伝子のいずれかの発現を変動させるか否か、あるいは本発明蛋白質のいずれかの発現若しくは機能・活性を変動させるか否かを評価、確認するためにも用いることができる。すなわち本発明のスクリーニング方法の範疇には、候補物質の探索のみならず、このような評価あるいは確認を目的とするものも含まれる。
【0140】
また、本発明のスクリーニング方法を実施する前に、上記に掲げる各本発明蛋白質をコードする遺伝子について、あらかじめ実験により、該遺伝子の発現を抑制する物質がホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのか、また発現を誘導する物質がホルモン依存性癌の改善薬又は治療薬の有効成分(候補物質)として有用なのかを判断することは可能であり、その具体的な方法については前述の通りである。当該実験によって本発明遺伝子の発現抑制物質が候補物質になる可能性が高いと判断された場合は、当該遺伝子がコードする本発明蛋白質の機能(活性)の抑制を指標としてスクリーニングを行うことにより、より高い精度で候補物質を選別することができ、また当該実験によって本発明遺伝子の発現誘導物質が候補物質になる可能性が高いと判断された場合は、当該遺伝子がコードする本発明蛋白質の機能(活性)の亢進を指標としてスクリーニングを行うことにより、より高い精度で候補物質を選別することができる。
【0141】
(4)ホルモン依存性癌の改善・治療剤
本発明は、ホルモン依存性癌の改善・治療剤を提供するものである。
本発明は本発明遺伝子及びこれらの遺伝子によりコードされる蛋白質(本発明蛋白質)が、ホルモン依存性癌と関係しているという新たな知見から、これら遺伝子の発現を変動させる物質、あるいは、これら遺伝子によりコードされる蛋白質の発現若しくは結合能を変動させる物質が、上記疾患の改善又は治療に有効であるという考えに基づくものである。すなわち、本発明のホルモン依存性癌の改善・治療剤は本発明遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質、あるいは本発明蛋白質のいずれかの発現若しくは結合能を変動させる物質を有効成分とするものである。
【0142】
例えば、本発明蛋白質のうち、ZNF339、NCOA1、NCOA2、NCOA6、PPARBP、及びTIF1Aはエストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を促進する、エストロジェン受容体活性化剤である。従って、これらの蛋白質については発現を抑制することが望まれる。すなわち、これらの蛋白質及びこれらの蛋白質をコードする遺伝子の発現抑制物質、並びに、これらの蛋白質とエストロジェン受容体の結合を阻害する物質は、エストロジェン受容体機能抑制物質であり、ホルモン依存性癌の改善薬または治療薬の有効成分となる。
一方、NRIPは、エストロジェン受容体と相互作用して当該受容体の転写活性を抑制するので、この蛋白質については発現を促進することが望まれる。すなわち、該蛋白質及び該蛋白質をコードする遺伝子の発現促進物質、並びに、該蛋白質とエストロジェン受容体の結合を促進する物質は、エストロジェン受容体機能抑制物質であり、ホルモン依存性癌の改善薬または治療薬の有効成分となる。
【0143】
当該有効成分となる本発明遺伝子のいずれかの発現制御物質、あるいは本発明蛋白質のいずれかの発現若しくは結合能の制御物質は、上記のスクリーニング方法を利用して選別されたもののみならず、選別された物質に関する情報に基づいて常法に従って工業的に製造されたものであってもよい。
【0144】
本発明遺伝子のいずれかの発現制御物質、あるいは本発明蛋白質のいずれかの発現若しくは結合能の制御物質は、そのままもしくはそれ自体公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて経口投与又は非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象又は患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、通常、1日投与用量として、数mg〜2g程度、好ましくは数十mg程度を、1日1〜数回にわけて投与することができる。
【0145】
また、上記の物質がDNAによりコードされるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組み込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。更に、上記有効成分物質が本発明遺伝子のいずれかに対するアンチセンスヌクレオチドの場合は、そのままもしくは遺伝子治療用ベクターにこれを組込むことにより、遺伝子治療を行うこともできる。これらの場合も、遺伝子治療用組成物の投与量、投与方法は患者の体重、年齢、症状などにより変動し、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0146】
上記アンチセンスヌクレオチドを利用する遺伝子治療につき詳述すれば、該遺伝子治療は、通常のこの種の遺伝子治療と同様にして、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその化学的修飾体を直接患者の体内に投与することにより目的遺伝子の発現を変動させる方法、もしくはアンチセンスRNAを患者の標的細胞に導入することにより該細胞による目的遺伝子の発現を変動させる方法により実施できる。
【0147】
ここで「アンチセンスヌクレオチド」には、本発明遺伝子の少なくとも8塩基以上の部分に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、アンチセンスDNAなどが含まれる。具体的には、ZNF339遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、NCOA6遺伝子、PPARBP遺伝子、又はTIF1A遺伝子の塩基配列の少なくとも8塩基以上の部分に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、アンチセンスDNAなどが含まれる。
【0148】
また、その化学修飾体には、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホトリエステル、アルキルホスホナート、アルキルホスホアミデートなどの、細胞内への移行性又は細胞内での安定性を高め得る誘導体(”Antisense RNA and DNA” WILEY−LISS刊、1992年、pp.1−50、J. Med. Chem. 36, 1923−1937(1993))が含まれる。これらは常法に従い合成することができる。
【0149】
アンチセンスヌクレオチド又はその化学的修飾体は、細胞内でセンス鎖mRNAに結合して、目的遺伝子の発現、即ち本発明遺伝子の発現を変動させることができ、かくして本発明蛋白質の機能(結合活性)を制御することができる。
【0150】
アンチセンスオリゴヌクレオチド又はその化学的修飾体を直接生体内に投与する方法において、用いられるアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその化学修飾体は、好ましくは5−200塩基、さらに好ましくは8−25塩基、最も好ましくは12−25塩基の長さを有するものとすればよい。その投与に当たり、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はその化学的修飾体は、通常慣用される安定化剤、緩衝液、溶媒などを用いて製剤化され得る。
アンチセンスRNAを患者の標的細胞に導入する方法において、用いられるアンチセンスRNAは、好ましくは100塩基以上、より好ましくは300塩基以上、さらに好ましくは500塩基以上の長さを有するものとすればよい。また、この方法は、生体内の細胞にアンチセンス遺伝子を導入するin vivo法及び一旦体外に取り出した細胞にアンチセンス遺伝子を導入し、該細胞を体内に戻すex vivo法を包含する(日経サイエンス, 1994年4月号, 20−45頁、月刊薬事, 36 (1), 23−48 (1994)、実験医学増刊, 12 (15), 全頁 (1994)など参照)。この内ではin vivo法が好ましく、これには、ウイルス的導入法(組換えウイルスを用いる方法)と非ウイルス的導入法がある(前記各文献参照)。
【0151】
上記組換えウイルスを用いる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルスなどのウイルスゲノムにアンチセンスヌクレオチドを組込んで生体内に導入する方法が挙げられる。この中では、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスなどを用いる方法が特に好ましい。非ウイルス的導入法としては、リポソーム法、リポフェクチン法などが挙げられ、特にリポソーム法が好ましい。他の非ウイルス的導入法としては、例えばマイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法なども挙げられる。
【0152】
遺伝子治療用製剤組成物は、上述したアンチセンスヌクレオチド又はその化学修飾体、これらを含む組換えウイルス及びこれらウイルスが導入された感染細胞などを有効成分とするものである。該組成物の患者への投与形態、投与経路などは、治療目的とする疾患、症状などに応じて適宜決定できる。例えば注射剤などの適当な投与形態で、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することができ、また患者の疾患対象部位に直接投与、導入することもできる。in vivo法を採用する場合、遺伝子治療用組成物は、本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含む注射剤などの投与形態の他に、例えば本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含有するウイルスベクターをリポソーム又は膜融合リポソームに包埋した形態(センダイウイルス(HVJ)−リポソームなど)とすることができる。これらのリポソーム製剤形態には、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤などが含まれる。また、遺伝子治療用組成物は、上記本発明遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを含有するベクターを導入されたウイルスで感染された細胞培養液の形態とすることもできる。これら各種形態の製剤中の有効成分の投与量は、治療目的である疾患の程度、患者の年齢、体重などにより適宜調節することができる。通常、本発明遺伝子に対するアンチセンスヌクレオチドの場合は、患者成人1人当たり約0.0001−100mg、好ましくは約0.001−10mgが数日ないし数カ月に1回投与される量とすればよい。アンチセンスヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの場合は、レトロウイルス力価として、1日患者体重1kg当たり約1×103pfu−1×1015pfuとなる量範囲から選ぶことができる。アンチセンスヌクレオチドを導入した細胞の場合は、1×104細胞/body−1×1015細胞/body程度を投与すればよい。
【0153】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0154】
実施例1 本発明蛋白質とERの相互作用(酵母2ハイブリッドシステム)
本実施例は、いわゆる酵母2ハイブリッドシステム(Bartel and Fields, 1997)として報告のある方法に準じて行った。下記に我々が用いた特徴的な部分を記載する。
ベイト(餌)となる蛋白には、エストロジェン受容体のリガンド結合領域を用いた。これはすでに所有していたヒトエストロジェン受容体蛋白コード領域全長発現ベクターを鋳型としてPCR法によりアミノ酸番号280−568の部分をPCR法により増幅した。この増幅したcDNA断片を、酵母発現ベクターであるpGBT.Qに挿入した、なお、pGBT.Qとは、Bartel et al., Nat Genet., 12:72−77 (1996)に記載のあるpGBT.C ベクターの類似ベクターであり、ポリリンカー部分にM13シークエンスサイトが含まれているものである。
構築したベクターを酵母PNY200株(表現系: MATalpha trp1−901 leu2−3,112 ura3−52 his3−200 ade2 gal4deltagal80)にトリプトファン要求性を利用して組み込んだ。組換え酵母株は、ベイトであるヒトエストロジェン受容体部分蛋白を酵母転写因子GAL4(アミノ酸1−147の部分)とのC末端側の融合蛋白として発現するようになっている。
プレイ(獲物)となる蛋白を発現するcDNAライブラリー(ヒト脾臓、ヒト乳癌/前立腺癌、マウス胎児由来)は、酵母BK100株(表現系: MATatrp1−901 leu2−3,112 ura3−52 his3−200 gal4deltagal80 LYS2::GAL−HIS3 GAL2−ADE2 met2::GAL7−lacZ)に、ロイシン要求性を利用して組み込んだ。これらの酵母では、ライブラリー由来の蛋白は酵母転写因子GAL4の転写活性化領域(アミノ酸768−881)と9アミノ酸のHA(hemagglutinin)エピトープタグとの融合蛋白として発現するようになっている。
ベイト蛋白を発現するPNY200株(この株はMATalpha のメイテイングタイプを示す)とプレイ蛋白を発現するBK100株(この株はMATaメイテイングタイプを示す)をメイテイングさせ、蛋白相互作用が生じるとトリプトファン・ロイシン・ヒスチジン・アデニン合成能を有しこれら栄養欠乏下でも生育可能となる性質を利用し、エストロジェン共存下で生育してきた酵母の培養を続けた。生育した各酵母から定法によりDNAを調製し、大腸菌KC8株(Clontech KC8 electrocompetent cells, Catalog No. C2023−1)に電気的に遺伝子導入したのち、ベイト蛋白発現ベクター分離用にはトリプトファン欠乏下で、プレイ蛋白発現ベクター分離用にはロイシン欠乏下で、コロニーを選択した。いずれのDNAについてもシークエンシングにより配列同定を行い、ベイト蛋白発現ベクターに変異が含まれていないことを確認した上で、プレイ蛋白発現ベクターに挿入されている塩基配列を公共データベースによりBLASTサーチした。
同定したプレイ蛋白発現ベクターは、個々に酵母株に導入した。その際、特定の6蛋白(GAL4のDNA結合領域との融合蛋白)を発現するプラスミドを同時に導入した。この際、βガラクトシダーゼ活性陽性のクローンは、擬陽性として除いた。残ったプレイベクターのうち、ベイトベクターと同時に酵母株に導入した際にのみβガラクトシダーゼ活性陽性となったものについては、真の陽性クローンとした。
上記の結果から、エストロジェン受容体とエストロジェン依存的に結合する蛋白質(本発明蛋白質を含む)を同定した。表1に結果を示した。
【表1】
上記の結果から、ZNF339、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、NCOA6、及びNRIP1がエストロジェン受容体とE2依存的に相互作用することがわかった。また、PRL4がエストロジェン受容体と相互作用し、E2存在下で該相互作用が弱くなることがわかった。
【0155】
実施例2 ヒト組織サンプルからトータルRNAの調製
下記患者群のサンプルから、常法に従いトータルRNAを調製した。
U95
Breast_Infil d & l car 乳房 浸潤腺性管癌&浸潤腺小葉
Breast_Infil duct car 乳房 浸潤性腺管癌
Breast_Infil lobular car 乳房 浸潤性小葉癌
Breast_normal 乳房 正常組織
CERVIX_sq 子宮頚部 扁平上皮細胞腫
Cervix_normal 子宮頚部 正常組織
Endometrium_adenocar 子宮内膜腺癌
Endometrium_normal 子宮内膜 正常組織
Ovary_adenocar 卵巣 腺癌
Ovary_cl.cell.adenocar 卵巣 明細胞癌
Ovary_muc.cys.adenocar 卵巣 粘液嚢胞腺腫
Ovary_pap.ser.adenocar 卵巣 乳頭状漿液性腺腫
Ovary_ser.cystadenocar 卵巣 漿液性嚢腺癌
Ovary_normal 卵巣 正常組織
Prostate_adenocar 前立腺 腺癌
Prostate_normal 前立腺 正常組織
U133
Breast_Infil d & l car 乳房 浸潤腺性管癌&浸潤腺小葉癌
Breast_Infil duct car 乳房 浸潤性腺管癌
Breast_Infil lobular car 乳房 浸潤性小葉癌
Breast_intra car 乳房 腺管内癌
Breast_medu car 乳房 髄様癌
Breast_muci adenocar 乳房 粘液腺癌
Breast_papi adenocar 乳房 乳頭状腺癌
Breast_normal 乳房 正常組織
Cervix_adenocar 子宮頚部 腺癌
Cervix_sqcar 子宮頚部 扁平上皮細胞腫
Cervix_normal 子宮頚部 正常組織
Endometrium_adenocar 子宮内膜 腺癌
Endometrium_papi adcar 子宮内膜 乳頭状腺癌
Endometrium_normal 子宮内膜 正常組織
Ovary_adenocar 卵巣 腺癌
Ovary_cl cell car 卵巣 明細胞癌
Ovary_muc.cys.adenocar 卵巣 粘液嚢胞腺腫
Ovary_pap.ser.adenocar 卵巣 乳頭状漿液性腺腫
Ovary_ser.cystadenocar 卵巣 漿液性嚢腺癌
Ovary_normal 卵巣 正常組織
Prostate_adenocar 前立腺 腺癌
Prostate_normal 前立腺 正常組織
【0156】
実施例3 DNAチップ解析
実施例2に示したサンプルより調製したtotal RNAを用いて、DNAチップ解析を行った。なお、DNAチップ解析はAffymetrix社Gene Chip Human Genome U95セット及びU133セットを用いて行った。具体的には、解析は、(1) total RNAからcDNAの調製、(2) 該cDNAからラベル化cRNAの調製、(3) ラベル化cRNAのフラグメント化、(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ、(5) プローブアレイの染色、(6) プローブアレイのスキャン、及び(7) 遺伝子発現解析、の手順で行った。
【0157】
(1) total RNAからcDNAの調製
実施例2で得られた各total RNA 10μgとT7−(dT)24プライマー(Amersham社製)100pmolを含む11μLの混合液を、70℃、10分間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、SuperScript Choice System for cDNA Synthesis(Gibco−BRL社製)に含まれる5×First Strand cDNA Buffer 4μL、該キットに含まれる0.1M DTT (dithiothreitol)2μL、該キットに含まれる10mM dNTP Mix 1μLを添加し、42℃で2分間加熱した。更に、該キットに含まれるSuper ScriptII RT 2μL(400U)を添加し、42℃で1時間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、DEPC処理水(ナカライテスク社製)滅菌蒸留水91μL、該キットに含まれる5×Second Strand Reaction Buffer 30μL、10mM dNTP Mix 3μL、該キットに含まれるE. coli DNA Ligase 1μL(10U)、該キットに含まれるE. coli DNA Polymerase I 4μL(40U)、該キットに含まれるE. coli RNaseH 1μL(2U)を添加し、16℃で2時間反応させた。次いで、該キットに含まれるT4 DNA Polymerase 2μL(10U)を加え、16℃で5分間反応させた後、0.5M EDTA 10μLを添加した。次いで、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液(ニッポンジーン社製)162μLを添加し、混合した。該混合液を、予め室温、14,000rpm、30秒間遠心分離しておいたPhase Lock Gel Light(エッペンドルフ社製)に移し、室温で14,000rpm、2分間遠心分離した後、145μLの水層をエッペンドルフチューブに移した。得られた溶液に、7.5M酢酸アンモニウム溶液72.5μL、エタノール362.5μLを加えて混合した後、4℃で14,000rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、作製したcDNAを含むペレットを得た。その後、該ペレットに80%エタノール0.5mLを添加し、4℃で14,000rpm、5分間遠心分離した後、上清を捨てた。再度同様の操作を行った後、該ペレットを乾燥させ、DEPC処理水12μLに溶解した。以上の操作により実施例1で調製した各トータル RNAから、各cDNAを取得した。
【0158】
(2) cDNAからラベル化cRNAの調製
各cDNA溶液5μLに、DEPC処理水17μL、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10×HY Reaction Buffer 4μL、該キットに含まれる10×Biotin Labeled Ribonucleotides 4μL、該キットに含まれる10×DTT 4μL、該キットに含まれる10×RNase Inhibitor Mix 4μL、該キットに含まれる20×T7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃で5時間反応させて、ラベル化cRNAを調製した。反応後、該反応液にDEPC処理水60μLを加えたのち、RNeasy Mini Kit(GIAGEN社製)を用いて添付プロトコールに従い、調製したラベル化cRNAを精製した。
【0159】
(3) ラベル化cRNAのフラグメント化
各ラベル化cRNA 20μgを含む溶液に、5×Fragmentation Buffer(200mMトリス−酢酸 pH8.1(Sigma社製)、 500mM酢酸カリウム(Sigma社製)、150mM酢酸マグネシウム(Sigma社製))8μLを加えた反応液40μLを、94℃で35分間加熱した後、氷中に置いた。これによって、ラベル化cRNAをフラグメント化した。
【0160】
(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ
各フラグメント化cRNA 40μLに、5nM Control Oligo B2(Amersham社製)4μL、100×Control cRNA Cocktail 4μL、Herring sperm DNA(Promega社製)40μg、Acetylated BSA(Gibco−BRL社製)200μg、2×MES Hybridization Buffer(200mM MES、2M [Na+], 40mM EDTA、0.02% Tween20 (Pierce社製)、pH6.5〜6.7) 200μL、及びDEPC処理水144μLを混合し、400μLのハイブリカクテルを得た。得られた各ハイブリカクテルを99℃で5分間加熱し、更に45℃で5分間加熱した。加熱後、室温で14,000rpm、5分間遠心分離し、ハイブリカクテル上清を得た。
【0161】
一方、1×MESハイブリダイゼーションバッファーで満たしたHuman genome U95プローブアレイ(Affymetrix社製)を、ハイブリオーブン内で、45℃、60rpmで10分間回転させた後、1×MESハイブリダイゼーションバッファーを除去してプローブアレイを調製した。上記で得られたハイブリカクテル上清200μLを該プローブアレイにそれぞれ添加し、ハイブリオーブン内で45℃、60rpmで16時間回転させ、フラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを得た。
【0162】
(5) プローブアレイの染色
上記で得られたハイブリダイズ済みプローブアレイそれぞれからハイブリカクテルを回収除去した後、Non−Stringent Wash Buffer(6×SSPE(20×SSPE(ナカライテスク社製)を希釈)、0.01%Tween20、0.005%Antifoam0−30(Sigma社製))で満たした。次にNon−Stringent Wash BufferおよびStringent Wash Buffer(100mM MES、0.1M NaCl、0.01%Tween20)をセットしたGeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置にフラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを装着した。その後染色プロトコールEuKGE−WS2に従って、1次染色液(10μg/mL Streptavidin Phycoerythrin (SAPE)(MolecμLar Probe社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl(Ambion社製)、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)、 2次染色液(100μg/mL Goat IgG (Sigma社製)、3μg/mL Biotinylated Anti−Streptavidin antibody (Vector Laboratories社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl、0.05%Tween20、0.005%Antifoam0−30)により染色した。
【0163】
(6) プローブアレイのスキャン、及び (7) 遺伝子発現量解析
染色した各プローブアレイをHP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)に供し、染色パターンを読み取った。染色パターンをもとにGeneChip Workstation System(Affymetrix社製)によってプローブアレイ上の遺伝子の発現を解析した。次に、解析プロトコールに従ってNormalizationを行ったのち、各サンプルにおける各プローブ(各遺伝子)の発現量(average difference)を算出した。同一のプローブにつき、サンプルの種類ごとに遺伝子発現量の平均値を求め、さらに各サンプル種類間における発現量の変化率を求めた。
【0164】
実施例4 ホルモン依存性癌患者組織にて発現が変動している遺伝子の選抜
酵母2ハイブリッドでヒトエストロジェン受容体と相互作用の見られた遺伝子群について、各正常組織に比べて、癌患者の病変組織で発現が変動しているプローブセットのうち、半減以下もしくは倍増以上のものを選択した。
【0165】
表中、Human U95プローブ名は Human Genome U95 Chip におけるプローブ名を示す。またHuman U133プローブ名はHuman Genome U133 Chipにおけるプローブ名を示す。表中 Acc Noは、GenBankデータベースにおけるアクセッション番号を示す。変動倍率は、Human Genome U95 Chip・Human Genome U133 Chipで解析した各正常組織の遺伝子発現量を1とした場合における癌患者病変組織での遺伝子発現量を示す(Human Genome U95 Chip:表2;Human Genome U133 Chip:表3)
【表2】
【表3】
選択された遺伝子の中には、既にエストロジェン受容体との相互作用が知られ、癌との関連が示されているNCOA3(AIB1)が含まれており、上記の選抜方法で確かにホルモン依存性癌患者に特徴的に発現が増加し、かつ治療薬のターゲットとなる遺伝子が選抜されていることが明らかとなった。以上のように、選別された遺伝子群は、正常組織と比較して ホルモン依存性癌患者の病変組織で特異的に発現が変動しており、また病態との関連性の高い遺伝子であった。従ってこれら遺伝子群及びその発現産物(蛋白質)は、ホルモン依存性癌に関する疾患マーカーとして応用可能であると考えられた。また、これらの遺伝子又はその発現産物(蛋白質)を用いることによって、ホルモン依存性癌を緩和、制御する治療薬の候補薬をスクリーニングすることが可能であると考えられた。
【0166】
実施例5 本発明遺伝子発現制御剤のスクリーニング
MCF−7細胞(ヒト乳癌由来、ATCC株番号 HTB−22)を、10% 不活性化牛胎児血清(活性炭処理により血清中の脂溶性ホルモン類を除去した血清)、2mMグルタミン、50IU/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン含有Dulbecco’s Modified Eagle培地を用い、37℃、CO2濃度5%の条件下で培養する。計数した前記細胞を24穴組織培養プレートに0.6−1.2x105 cells/cm2で播種し、37℃、CO2濃度5%で培養する。これらの細胞に対して、被験物質含有溶液(100 μM、10 μM、及び 1 μMの各濃度の被験物質を含む溶液)を添加する。ここで対照実験として、被験物質無添加の細胞についても同様の培養を行う(コントロール)。これらの各培養細胞より抽出したRNAを用いて、実施例3に記載された方法で、本発明遺伝子の発現量を調べる。その発現量からコントロールと比べて、本発明遺伝子の発現量が10%、好ましくは30%、特に好ましくは50% 以上変動している培養系に添加した被験物質を、癌を緩和、制御(改善、治療)する候補化合物として選択する。
【0167】
実施例6 ヒトエストロジェン受容体とZNF339の相互作用
(細胞培養と遺伝子導入)
ヒト胎児腎臓由来HEK293および子宮頚癌由来HeLa細胞は、10%FCS(シグマ社)含有高グルコースDMEM(シグマ社)で継代培養した。遺伝子導入実験は、以下のように行った。すなわち、上記培地もしくはチャコール処理済み5%FCS(ハイクローン社)およびインスリン10−8M含有フェノールレッド不含高グルコースDMEM(インビトロジェン社)を用い、24穴プレートに細胞を適量植え継いだ。翌日、DNA混合液(ホタルルシフェラーゼレポーターベクター0.1〜0.15μg、発現ベクター0.075〜0.1μg、導入効率補正用ベクター0.01〜0.1μg)を作製し、遺伝子導入試薬LT−1(パンベラ社)もしくはLipofectoamine(インビトロジェン社)・OPTI−MEM1培地(インビトロジェン社)を用いて遺伝子導入を4〜6時間行った。培地交換した後、リガンドを添加し、終夜培養した。培養上清を除き、細胞溶解液(プロメガ社)180μlを添加のち−80℃に凍結保存した。室温で1時間程度放置した後、10μlをDual−luciferase assay system(プロメガ社)もしくはLuciferase assay system(プロメガ社)を用いたアッセイに使用した。各転写活性化能は、ウミシイタケルシフェラーゼ活性もしくはβガラクトシダーゼ活性(ICN社Aurora Gal−XEキットで測定)にて遺伝子導入効率を補正した値を「相対活性化値」として表示した。実験はn=2(各2ウエル)で行い結果は平均値で表した。なお、ベクターは、下記のものを使用した。
レポーターベクター:pFR−Luc(ストラタジーン社)、pERE−Luc(プロメガ社pGL3basicにコンセンサスエストロジェン応答配列とウサギβグロビンプロモーターを挿入したもの)
発現ベクター:hERa(ヒトエストロジェン受容体αコード領域全長発現ベクター)、rERb(ラットエストロジェン受容体βコード領域全長発現ベクター)pM/ER−LBD, pVP/ER−LBD(ヒトエストロジェン受容体αリガンド結合領域(アミノ酸280−568の部分)を、pMあるいはpVPベクター(Clontech社)に挿入)、pM/ZNF339F, pcZ/ZNF339(ヒトZNF339コード領域全長発現ベクター)、pM/ZNF339P(ヒト ZNF339アミノ酸166−272の部分)
【0168】
(ヒトエストロジェン受容体とZNF339の相互作用)
ヒトエストロジェン受容体とZNF339のエストロジェン依存的な相互作用を検討するため、Mammalian 2−hybrid法を用いた。これは、酵母GAL4のDNA結合領域と融合蛋白を発現するベクター(pM)とVP16の転写活性化領域と融合蛋白を発現するベクター(pVP)を用い、pMおよびpVPの下流に挿入された蛋白間に相互作用が生じるとレポーター活性が上昇する実験系である。結果を表4に示した。
【表4】
本系において、pM/ER−LBDのみの発現ではレポーター活性がE2(エストラジオール)依存的に237倍(E2: 0.1nM)および514倍(E2: 1nM)と上昇したが、pVP/ZNF339Pを共発現させると、E2依存的に423倍(E2: 0.1nM)および809倍(E2: 1nM)と上昇し、pM/ER−LBD単独に比べ明らかにレポーター活性が上昇した。
一方、pM側にZNF339、pVP側にER−LBDを用いた場合の結果を表5に示す。
【表5】
pM側にZNF339、pVP側にER−LBDを用いた場合、pMベクターに挿入の無い空ベクターを用いた場合と比較して、pM/ZNF339Pを用いた場合はE2依存的に2.36倍、pM/ZNF339Fを用いた場合でもE2依存的に1.36倍のレポーター活性上昇が認められた。
以上のことから、培養細胞を用いた2ハイブリッド法においても、ヒトエストロジェン受容体蛋白とヒトZNF339蛋白のエストロジェン依存的な相互作用が認められたと結論した。
【0169】
実施例7 エストロジェン情報伝達系におけるZNF339の効果
エストロジェンの作用は、標的遺伝子近傍にあるエストロジェン応答配列(ERE)にエストロジェン受容体が結合して転写活性を調節することで発揮される。ZNF339がエストロジェン情報伝達を調節するか否かを調べるために、レポーターアッセイを行った。すなわち、EREを有するレポーターベクターとエストロジェン受容体発現ベクター・ZNF339発現ベクターを共発現させ、E2(100nM)依存的なレポーター活性の変動を検討した。
その結果、ヒトエストロジェン受容体α・ラットエストロジェン受容体βいずれの場合にも、E2を添加するとレポーター活性が上昇した。ZNF339を共発現させると、さらにその活性が上昇した。この結果から、ZNF339はエストロジェン情報伝達を正に調節することが明らかとなった(図1)。
【0170】
【発明の効果】
本発明によって、ホルモン依存性癌患者の病変組織において、対応する正常組織と比較して特異的に発現変動している遺伝子が明らかになった。更に、本発明遺伝子の発現産物は、エストロジェン存在下でエストロジェン受容体と結合することが明らかになった。かかる遺伝子はホルモン依存性癌の遺伝子診断に用いられるマーカー遺伝子(プローブ、プライマー)として有用である。また、かかるマーカー遺伝子によればホルモン依存性癌であるかどうかを明らかにすることができ(診断精度が向上)、これによりより適切な治療を施すことが可能となる。すなわち、ホルモン依存性癌の適切な治療のためのツールとして利用することができる。
【0171】
また、上記遺伝子の発現変動とホルモン依存性癌との関連性から、該遺伝子の発現を調節する化合物は、ホルモン依存性癌の治療薬として有用と考えられる。従って、これら遺伝子の発現の変動、又は当該遺伝子がコードする蛋白質の発現やエストロジェン受容体との結合能の変動を指標とすることによって、ホルモン依存性癌の治療薬となり得る候補薬をスクリーニングし選別することが可能である。本発明は、このようなホルモン依存性癌治療薬の開発技術をも提供する。
【0172】
【配列表】
【0173】
【図面の簡単な説明】
【図1】エストロジェン受容体発現ベクターおよびZNF339発現ベクターを共発現させ、E2(100nM)依存的なレポーター活性の変動を検討した結果を示す図である。すなわち、ヒトエストロジェン受容体α(hERa)・ラットエストロジェン受容体β(rERb)のいずれの場合にも、E2存在下(+E2)で、E2非存在下(−E2)よりもレポーター活性が上昇することがわかる(pcZの欄参照)。更にZNF339を共発現させた場合にも同様の結果であったが、レポーター活性が更に上昇した(pcZ/ZNF339の欄参照)。
Claims (26)
- ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及び/又はNRIP1遺伝子の塩基配列において、連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又は該ポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる、ホルモン依存性癌の疾患マーカー。
- ホルモン依存性癌の検出においてプローブ又はプライマーとして使用される請求項1記載の疾患マーカー。
- 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ホルモン依存性癌の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチドと請求項1又は2に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来のRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。 - 工程(c)におけるホルモン依存性癌の罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が変動していることを指標として行われる、請求項3に記載のホルモン依存性癌の検出方法。
- ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及び/又はNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質を認識する抗体を含有する、ホルモン依存性癌の疾患マーカー。
- ホルモン依存性癌の検出においてプローブとして使用される請求項5記載の疾患マーカー。
- 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むホルモン依存性癌の検出方法:
(a)被験者の生体試料から調製された蛋白質と請求項5又は6に記載の疾患マーカーとを結合させる工程、
(b)該疾患マーカーに結合した生体試料由来の蛋白質を、上記疾患マーカーを指標として測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。 - 工程(c)におけるホルモン依存性癌の罹患の判断が、被験者について得られる測定結果を正常者について得られる測定結果と対比して、疾患マーカーへの結合量が変動していることを指標として行われる請求項7記載のホルモン依存性癌の検出方法。
- 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むホルモン依存性癌の検出方法:
(a)エストロジェン存在下又は非存在下に、エストロジェン受容体と被験者の生体試料から調製された蛋白質とを接触させる工程、
(b)上記(a)の両条件下におけるエストロジェン受容体とZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの結合の度合を測定する工程、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、ホルモン依存性癌の罹患を判断する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現量を変動させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339遺伝子の発現を減少させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339遺伝子を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339遺伝子の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞におけるZNF339遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現を変動させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかを発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する蛋白質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量を変動させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現を減少させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質を発現可能な細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞におけるZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない対照細胞におけるZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、エストロジェン受容体の結合を変動させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質を、エストロジェンとエストロジェン受容体の存在下に、ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかに接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるエストロジェン受容体と前記蛋白質との結合を測定し、該結合を被験物質を接触させない場合のエストロジェン受容体と前記蛋白質との結合と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、エストロジェン受容体と前記蛋白質との結合を変動させる被験物質を選択する工程。 - 下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、エストロジェン受容体の結合を阻害させる物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質を、エストロジェンとエストロジェン受容体の存在下に、ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質に接触させる工程、
(b)上記(a)の工程に起因して生じるエストロジェン受容体とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質との結合を測定し、該結合を被験物質を接触させない場合のエストロジェン受容体とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質との結合と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、エストロジェン受容体とZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質との結合を阻害する被験物質を選択する工程。 - ホルモン依存性癌の改善又は治療剤の有効成分を探索するための方法である、請求項10〜15のいずれかに記載のスクリーニング方法。
- ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
- ZNF339遺伝子、RPL4遺伝子、BRD3遺伝子、ERAP140遺伝子、ECH1遺伝子、PPARBP遺伝子、STRN遺伝子、ZIN遺伝子、PERC遺伝子、NR0B2遺伝子、TIF1A遺伝子、NCOA1遺伝子、NCOA2遺伝子、 NCOA6遺伝子、及びNRIP1遺伝子の塩基配列を含む遺伝子のいずれかの発現を変動させる物質が請求項10記載のスクリーニング法により得られるものである、請求項17記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
- ZNF339遺伝子の発現を抑制する物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
- ZNF339遺伝子の発現を抑制する物質が、請求項11記載のスクリーニング法により得られるものである、請求項19記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
- ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量又はエストロジェン受容体との結合能を変動させる物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
- ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及びNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質のいずれかの発現量又はエストロジェン受容体との結合能を変動させる物質が、請求項12又は14に記載のスクリーニング法により得られるものである、請求項21記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
- ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量又はエストロジェン受容体との結合能を抑制させる物質を有効成分とする、ホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
- ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質の発現量又はエストロジェン受容体との結合能を抑制させる物質が、請求項13又は15に記載のスクリーニング法により得られるものである、請求項23記載のホルモン依存性癌の改善又は治療剤。
- ZNF339、RPL4、BRD3、ERAP140、ECH1、PPARBP、STRN、ZIN、PERC、NR0B2、TIF1A、NCOA1、NCOA2、 NCOA6、及び/又はNRIP1のアミノ酸配列からなる蛋白質を有効成分として含有するエストロジェン受容体結合蛋白質。
- ZNF339のアミノ酸配列からなる蛋白質を有効成分として含有するエストロジェン受容体活性化剤。
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2003
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